説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置のランニングコストを抑制する。
【解決手段】タンデム配列された複数の感光体(61A、62A)と、複数の現像器および複数の現像剤収容器(100、62G)とを筐体(10)内に位置決めして保持するとともに筐体の開口部を通ってタンデム配列方向に引き出し可能な保持部材(65)を、前記複数の感光体、前記複数の現像器および前記複数の現像剤収容器がすべて前記筐体内に収容される第1の位置と、少なくとも、前記複数の現像剤収容器のうち前記引き出し方向において最も奥側に配置された現像剤収容器が交換可能となる第2の位置との間をスライド移動可能とする。引き出し方向において最も奥側に配置された現像剤収容器(100)は、対応する現像器と分離して単独で交換可能に構成され、黒色の現像剤を収容しており、それ以外の現像剤収容器(62G)は、対応する現像器と一体で交換可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、記録シートに画像を形成する画像形成装置に関し、特に、複数の感光体をタンデム配列して、対応する現像器および現像剤収容器とともに、当該タンデム配列方向に引き出し可能な保持部材に位置決め保持させた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録シートにカラー画像を形成するレーザプリンタ等の画像形成装置として、複数の感光体を対応する現像カートリッジ(現像器および現像剤収容器が一体化されたもの)とともにタンデム配列して保持部材に位置決め保持させ、装置の筐体から保持部材をそのタンデム配列方向に引き出すことで部品や消耗品等の交換ができるようにした画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−181077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザプリンタ等の画像形成装置では、ランニングコストの抑制の観点から、現像剤収容器(トナーカートリッジ)を現像器や感光体から分離して単独で交換可能とすると有利である。しかし、このようなトナーカートリッジ分離式の現像装置を特許文献1に開示されているようなタンデム配列方向引き出し型の画像形成装置に採用しようとすると、トナーカートリッジ着脱時のシャッタの開閉動作の際に引き出した状態の保持部材にかかる力によって保持部材が破損したり装置本体が転倒したりする虞がある。
【0005】
このような技術的課題に着目した本発明者は、現像装置にトナーカートリッジ分離式を採用することによるランニングコスト抑制の効果が得られるとともに、引き出した状態の保持部材にかかる力によって保持部材が破損したり装置本体が転倒したりする危険性のないタンデム配列方向引き出し型の画像形成装置を提供しようとする研究の過程で本発明を創案するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様としての画像形成装置は、開口部を有する筐体と、複数の感光体と、前記複数の感光体にそれぞれ対応させて設けられた複数の現像器と、前記複数の現像器にそれぞれ現像剤を供給する複数の現像剤収容器と、タンデム配列された前記複数の感光体と、前記複数の現像器および前記複数の現像剤収容器とを前記筐体内に位置決めして保持するとともに、前記開口部を通って前記タンデム配列方向に引き出し可能な保持部材と、を備え、前記複数の現像剤収容器は、対応する現像器と分離して単独で交換可能に構成された第1の現像剤収容器と、対応する現像器と一体で交換可能に構成された第2の現像剤収容器とを含み、前記保持部材は、前記複数の感光体、前記複数の現像器および前記複数の現像剤収容器がすべて前記筐体内に収容される第1の位置と、少なくとも、前記複数の現像剤収容器のうち前記引き出し方向において最も奥側に配置された現像剤収容器が、交換可能となる第2の位置との間をスライド移動可能に構成され、前記複数の現像剤収容器のうち前記引き出し方向において最も奥側に配置された現像剤収容器は、前記第1の現像剤収容器であって、黒色の現像剤を収容しており、前記複数の現像剤収容器のうち前記引き出し方向において最も奥側に配置された現像剤収容器以外の現像剤収容器は、前記第2の現像剤収容器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
前記態様によれば、複数の現像剤収容器のうち、一般に最も消費の早い黒色の現像剤の現像剤収容器を単独で交換することができるので、顕著なランニングコスト抑制効果が期待できる。また、この黒色の現像剤を収容する現像剤収容器は、最も奥側に配置されており、保持部材を「第2の位置」まで引き出したとき装置本体の重心に最も近い位置で交換可能なので、構造上の堅牢性と操作の安全性および容易性とが十分に確保された画像形成装置の商品化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の一例としてのカラー複合機の概略構成を示す断面図である。
【図2】保持ケースの収容位置(第1の位置)を説明する断面図である。
【図3】保持ケースの着脱位置(第2の位置)を説明する断面図である。
【図4】プロセスユニットの交換を説明する断面図である。
【図5】シャッタが閉じた状態のトナーカートリッジおよび現像器を示す模式図である。
【図6】シャッタが開いた状態のトナーカートリッジおよび現像器を示す模式図である。
【図7】プロセスユニット交換時の本体筐体における保持ケースの支持構造を示す模式図であり、(a)に保持ケースの後端部近傍、(b)に本体筐体の前端部近傍を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、まず、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例としてのカラー複合機の概略構成について説明した後、特に、黒色の現像剤を収容する現像剤収容器を備えるプロセスユニットの詳細な構成について説明する。
【0010】
<カラー複合機の概略構成>
図1に示すように、カラー複合機1は、本体筐体10と、フラットベッドスキャナ20とを備えている。また、カラー複合機1は、本体筐体10内に、記録シートの一例としての用紙Pを供給する給紙部30と、供給された用紙Pに画像を形成する画像形成部40と、画像が形成された用紙Pを排出する排紙部90とを主に備えている。
【0011】
なお、以下の説明において、方向は、カラー複合機1が使用されるときのユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における右側を「前」または「手前」、左側を「後」または「奥」とし、紙面手前側を「左」、奥側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0012】
フラットベッドスキャナ20は、本体筐体10の上方に設けられた公知の原稿読取装置である。このフラットベッドスキャナ20は、複写などの際に、セットされた原稿に光を照射して画像を読み取ることで画像データを生成する。
【0013】
給紙部30は、本体筐体10内の下部に設けられ、用紙Pを収容する給紙トレイ31と、給紙トレイ31から用紙Pを画像形成部40に搬送する給紙機構32とを主に備えている。給紙トレイ31内の用紙Pは、給紙機構32によって1枚ずつ分離されて画像形成部40に搬送される。
【0014】
画像形成部40は、露光装置の一例としての露光ユニット50と、4つのプロセスユニット61、62と、転写ユニット70と、定着ユニット80とから主に構成されている。
【0015】
露光ユニット50は、本体筐体10内の上部に設けられ、図示しないレーザ光源、ポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。レーザ光源から出射されたレーザ光は、ポリゴンミラーや反射鏡で反射し、レンズを通過して、各感光体ドラム61A、62Aの表面を高速走査する。
【0016】
4つのプロセスユニット61、62は、給紙部30と露光ユニット50との間に配置され、前後方向に並べて配列(タンデム配列)され、保持部材の一例としての保持ケース65に保持されている。
【0017】
保持ケース65は、例えば、底のない枠状に形成されており、本体筐体内部に形成されたレール10R(図3参照)に沿って、前後方向に平行移動可能に構成されている。保持ケース65は、図2に示すように、本体筐体10の前側(開口部)に設けられたフロントカバー11を開き、ハンドル65Hを引くことで、本体筐体10から引き出し可能である。カラー複合機1では、保持ケース65を引き出すことで、本体筐体10のプロセスユニット61、62の部品を交換することができる。
【0018】
なお、以下の説明において、図2に示す保持ケース65の引き出す前の位置を「収容位置」(または「第1の位置」)、図3に示す保持ケースの引き出した後の位置を「着脱位置」(または「第2の位置」)と称する。第1の位置とは、保持ケース65の保持するすべてのプロセスユニット61、62が本体筐体10内に収容される位置である。第2の位置とは、4つのプロセスユニット61、62のうち引き出し方向において最も奥側に配置されたプロセスユニット61の現像剤収容器(トナーカートリッジ100)が交換可能となる位置である。
【0019】
保持ケース65の引き出し操作と、第1の位置または第2の位置における位置決め支持とを可能にする構造の詳細については、後述する。
【0020】
4つのプロセスユニットのうち最も奥側に配置されたプロセスユニット61は、感光体の一例としての感光体ドラム61Aと、帯電器61Bと、現像ローラ61Cと、供給ローラ61Dと、層厚規制ブレード61Eと、黒色のトナー(現像剤)を収容する第1の現像剤収容器の一例としてのトナーカートリッジ100とを備えて構成されている。これらのうち、現像ローラ61C、供給ローラ61Dおよび層厚規制ブレード61Eが、現像器200を構成する。プロセスユニット61の詳細な構成については後述する。
【0021】
なお、プロセスユニット61の感光体ドラム61Aや帯電器61Bは、保持ケース65に対して一体で着脱可能(交換可能)であってもよいし、保持ケース65に固定されて保持ケース65とともに1つのユニットを形成していてもよい。また、現像器200を構成する現像ローラ61C、供給ローラ61Dおよび層厚規制ブレード61Eは、一体のユニットとして、保持ケース65に対して着脱可能としてもよく、感光体ドラム61Aや帯電器61Bとともに、保持ケース65に固定されて保持ケース65とともに一つのユニットを形成するものとしてもよい。尚、現像器200は、保持ケース65に着脱可能である場合、感光体ドラム61Aや帯電器61Bと一体で着脱可能でもよく、感光体ドラム61Aや帯電器61Bとは分離して着脱可能としてもよい。
【0022】
4つのプロセスユニットのうち手前側の3つのプロセスユニット62は、それぞれ、感光体の一例としての感光体ドラム62Aと、帯電器62Bと、現像ローラ62Cと、供給ローラ62Dと、層厚規制ブレード62Eと、現像剤収容器62G(第2の現像剤収容器)とを備えて構成されている。現像剤収容器62Gには、それぞれ、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のいずれかのトナー(現像剤)が収容される。プロセスユニット62の現像器(現像ローラ62C、供給ローラ62D、層厚規制ブレード62E)は、現像剤収容器62Gと一体に構成されて、保持ケースに対して着脱可能とされている(図4参照)。
【0023】
プロセスユニット62の感光体ドラム62Aや帯電器62Bも、プロセスユニット61の感光体ドラム61Aや帯電器61Bと同様に、保持ケース65に対して着脱可能(交換可能)であってもよいし、保持ケース65に固定されて保持ケース65とともに1つのユニットを形成していてもよい。尚、プロセスユニット62(感光体ドラム62Aと、帯電器62Bと、現像ローラ62Cと、供給ローラ62Dと、層厚規制ブレード62Eと、現像剤収容器62G)は、一体で保持ケースに対して着脱可能としてもよい。
【0024】
転写ユニット70は、給紙部30と4つのプロセスユニット61、62との間に設けられ、駆動ローラ71と、従動ローラ72と、駆動ローラ71および従動ローラ72の間に張設された無端状の搬送ベルト73と、4つの転写ローラ74とを主に備えている。搬送ベルト73は、外側の面が各感光体ドラム61Aに接しており、その内側には各転写ローラ74が各感光体ドラム61Aとの間で搬送ベルト73を挟持するように配置されている。
【0025】
搬送ベルト73の下部には、搬送ベルト73に付着したトナーや紙粉などの付着物を除去するために搬送ベルト73に当接して付着物を回収するクリーニングユニット75が設けられている。
【0026】
定着ユニット80は、4つのプロセスユニット61、62および転写ユニット70の後方に設けられ、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向配置されて加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを主に備えている。
【0027】
画像形成部40では、感光体ドラム61A、62Aの表面が、帯電器61B、62Bにより一様に帯電された後、露光ユニット50からのレーザ光の高速走査によって露光されることで、感光体ドラム61A、62A上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、現像剤収容器62Gまたはトナーカートリッジ100内のトナーは、供給ローラ61D、62Dを介して現像ローラ61C、62Cに供給され、現像ローラ61C、62Cと層厚規制ブレード61E、62Eとの間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ61C、62C上に担持される。
【0028】
現像ローラ61C、62C上に担持されたトナーは、現像ローラ61C、62Cから感光体ドラム61A、62A上の静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化されて感光体ドラム61A、62A上にトナー像(画像)が形成される。その後、搬送ベルト73上に搬送された用紙Pが、感光体ドラム61A、62Aと搬送ベルト73(転写ローラ74)の間を搬送されることで、各感光体ドラム61A、62A上のトナー像が用紙P上に順次重ね合わせて転写される。そして、用紙Pが加熱ローラ81と加圧ローラ82の間を搬送されることで、用紙P上のトナー像が熱定着される。
【0029】
排紙部90は、定着ユニット80の出口から上方に向かって延び、前方に方向転換するように形成された排紙経路91と、用紙Pを排出する排紙ローラ92とを主に備えている。トナー像が熱定着された用紙Pは、定着ユニット80から排紙経路91に搬送され、排紙ローラ92によって本体筐体10の上部に設けられた排紙トレイ15上に排出される。
【0030】
<プロセスユニットの詳細構成>
次に、主に図5および図6を参照しながら、プロセスユニット61(トナーカートリッジ100および現像器200)の詳細な構成を、プロセスユニット62と対比しつつ説明する。なお、図5、6においては、トナーカートリッジ100を下から見上げ、現像器200を上から見下ろすように表している。
【0031】
[トナーカートリッジの構成]
プロセスユニット61は、図2〜4に示すように、トナーカートリッジ100が、現像器200に対して着脱可能に構成されており、現像器200に装着された状態において現像器200の上方に隣接して配置される。
【0032】
図5および図6に示すように、トナーカートリッジ100は、略円筒状の容器であり、左右両端は側壁110で閉塞されている。トナーカートリッジ100の円筒状の壁には、トナーカートリッジ100内から現像器200内へトナーを供給するための第1供給口111が形成されている。
【0033】
トナーカートリッジ100には、その円筒状の壁を覆う円筒状の第1シャッタ120が設けられている。この第1シャッタ120を周方向に沿って回動させることで、第1供給口111を開閉することができる。すなわち、第1シャッタ120には、その開位置においてトナーカートリッジ100の第1供給口111と完全に重なる位置に第1シャッタ供給口121が形成されており(図6参照)、周方向に所定のストロークで回動させて閉位置まで変位させることで、第1供給口111が完全に閉塞される(図5参照)。
【0034】
トナーカートリッジ100の左右の側壁110には、それぞれ、その外側の面に中心から径方向に外縁部まで延在する断面長方形の突条部110Pが設けられている。そして、第1シャッタ120には、突条部110Pと同一の断面形状を有する突起部120Pが設けられている。
【0035】
突起部120Pは、第1シャッタ120を閉位置にセットすると、突条部110Pの外側端部に繋がって一体となり、後述の現像器200への装着を案内する一条のガイドレールとなるよう構成されている(図5参照)。そして、第1シャッタ120が開位置にセットされると、突起部120Pは、現像器200の収容凹部側壁部に設けられた溝部210Rの第2溝部R2(詳細は後述)内を周方向に移動して、トナーカートリッジ100が現像器200に結合(ロック)される(図6参照)よう構成されている。
【0036】
第1シャッタ120の外周面には、図1に示す現像器200への装着姿勢(第1シャッタ120の開位置)における上部位置から後方に向かって水平に延出する操作部材の一例としてのハンドル120Hが設けられている。装着姿勢のトナーカートリッジ100本体に対してハンドル120Hを水平な位置から上方へ回動操作することにより、第1シャッタ120が閉まるとともに、現像器200との結合(ロック)が解除され、トナーカートリッジ100が着脱可能となる(図3参照)。
【0037】
また、トナーカートリッジ100内には、公知の撹拌部材としてのアジテータ140が設けられている(図1参照)。アジテータ140は、左右の側壁110に回転可能に支持された回転軸と、回転軸に固定された可撓性を有するシート状の複数の撹拌翼とから主に構成されている。
【0038】
このようなアジテータ140は、回転軸に対して、本体筐体10内に設けられた図示しないモータから駆動力が付与されることで、トナーカートリッジ100内を回転する。このとき、撹拌翼の先端が、回転軸に対して斜めになりながらトナーカートリッジ100の内周面に摺接することで、トナーを撹拌するとともに、第1供給口111に向けてトナーを搬送する。
【0039】
[現像器の構成]
図1に示すように、現像器200には、現像ローラ61Cや供給ローラ61D、層厚規制ブレード61Eなどが設けられている。現像器200の構成および配置は、現像剤収容器としてのトナーカートリッジ100が着脱可能であり、供給ローラ61Dに対向する位置にトナーカートリッジ100が装着される収容凹部210S(図6参照)が形成されていることを除き、他のプロセスユニット62の現像器と同様である。
【0040】
図5および図6に示すように、現像器200には、収容凹部210Sのアーチ状(断面視円弧状)に湾曲した壁におけるトナーカートリッジ100の第1供給口111に対応する位置に、トナーカートリッジ100内から現像器200内へトナーを供給するための第2供給口211が形成されている。
【0041】
現像器200には、収容凹部210Sのアーチ状の壁を覆う第2シャッタ220がさらに設けられている。この第2シャッタ220を周方向に沿って回動させることで、第2供給口211を開閉することができる。すなわち、第2シャッタ220には、その開位置において現像器200の第2供給口211と完全に重なる位置に第2シャッタ供給口221が形成されており(図6参照)、周方向に所定のストロークで回動させて閉位置まで変位させることで、第2供給口211が完全に閉塞される(図5参照)。
【0042】
現像器200のトナーカートリッジ100が装着される収容凹部210Sの左右両側壁には、その内側の面に、溝部210Rが形成されている。溝部210Rは、収容凹部210Sの曲率中心から下方(径方向)に向かう第1溝部R1と、第1溝部R1の下端から周方向(前後両方向)に沿って延在する第2溝部R2と、第1溝部R1の上端に形成され、トナーカートリッジ100の装着時に、突条部110Pと突起部120Pにより構成されたガイドレール状の部分が容易に挿入できるように、漏斗状に拡がっている漏斗部R3とからなる。
【0043】
第2溝部R2には、第2シャッタ220の左右の端部に形成された内周突条部220Pが摺動可能に係合している。内周突条部220Pには、第2シャッタ220が閉位置にあるとき第1溝部R1の下端部に対向する部分に切り欠き部220Qが設けられ、トナーカートリッジ100の装着時に、突起部120Pが切り欠き部220Qに入り込むようになっている。
【0044】
なお、本実施形態では、プロセスユニット61のトナーカートリッジ100に収容される黒色トナーとしては、プロセスユニット62の現像剤収容器62Gに収容されるカラートナーに採用されているケミカルトナーではなく、粉砕トナーが採用されている。
【0045】
ここで、「ケミカルトナー」とは、機械的粉砕方法により製造される旧世代トナーとは対照的に、化学的方法により製造されるトナーを指す。ケミカルトナーは、例えば、乳化重合凝集法、懸濁重合法、乳化凝集法および溶解懸濁法を含む種々の方法により製造できる。また、「粉砕トナー」には、機械的粉砕方法により製造された旧世代トナーの他に、この機械的粉砕方法により製造されたトナーを化学処理して円形度を高くしたものも含む。
【0046】
ケミカルトナーより流動性が低い粉砕トナーを採用することで、現像器200においてトナー漏れしにくくなり、トナー漏れ防止シール構造の寿命に大きく依存する現像器200の耐用印字枚数をさらに延ばすことができる。
【0047】
<保持ケースの引き出し操作と位置決め支持>
次に、図2〜4および図7(a)および(b)を参照しつつ、本体筐体10に対して保持ケース65を引き出し操作して位置決め支持するための構造について説明する。図7(a)および(b)は、それぞれ、保持ケース65が図4に示す着脱位置(第2の位置)にあるときの、後支持構造SRおよび前支持構造SFを模式的に示すものである。
【0048】
保持ケース65には、その左右の側壁の上縁部を外側に折り曲げて形成した前後方向に延在するフランジ部65Rが設けられている。そして、保持ケース65の後端部、フランジ部65Rの後方には、コロ65Kが設けられている(図7(a)参照)。
【0049】
一方、本体筐体10内部の保持ケース65が収容されるスペースの左右両側には、保持ケース65の引き出し方向への平行移動を案内するレール10Rが設けられている。レール10Rの前端部には、傾斜部10Sおよびコロ10Kが設けられており、そのやや後方上部にコロ10Jが設けられている(図7(b)参照)。
【0050】
また、本体筐体10内部の保持ケース65が収容されるスペースの左右両側には、図3、図4および図7(a)に示すように、保持ケース65が着脱位置にあるときに、少なくともその後支持構造SR部分が配置される位置においてフランジ部65Rの上方への移動を規制する規制フレーム10Fが、レール10Rと平行に設けられている。
【0051】
また、本体筐体10のレール10Rの後端部には、傾斜部10Nおよび位置決め部10Mが設けられている(図2および図3参照)。
【0052】
収容位置(第1の位置)においては、図2に示すように、保持ケース65の後端部のコロ65Kが、本体筐体10側の位置決め部10Mに収容され、位置決めされている。このとき、保持ケース65のフランジ部65Rが本体筐体10のレール10R上に載置され安定的に位置決め支持されている。この位置で、カラー複合機1の運転が行われる。
【0053】
この位置から、保持ケース65を引き出すと、保持ケース65の後端部側では、コロ65Kが傾斜部10Nを乗り越えてレール10R上を転がり、その前端部側では、フランジ部65Rが傾斜部10Sを越えて転動するコロ10Kの上を滑動することで前方に案内される。
【0054】
そして、保持ケース65が、図3に示す着脱位置(第2の位置)に来ると、図7(b)に示すように、保持ケース65のフランジ部65Rに装着された板ばね65Sが、本体筐体10側のコロ10Jに当接し、保持ケース65の引き出し方向への移動をストップする。この位置で、プロセスユニット61のトナーカートリッジ100やプロセスユニット62の現像剤収容器62G(および現像ローラ62C、供給ローラ62D、層厚規制ブレード62E)を交換することができる。
【0055】
図3および図4に示すように、保持ケース65が着脱位置(第2の位置)にあるとき、プロセスユニット61が本体筐体10内に位置している。また、このとき、プロセスユニット61は、前支持構造SFおよび後支持構造SRの間に位置しており、保持ケース65が前支持構造SFおよび後支持構造SRにおいて本体筐体10に支持されている。
【0056】
具体的には、図7(a)に示すように、後支持構造SRにおいては、保持ケース65は、コロ65Kがレール10R上に載置されているので下方への移動が規制され、コロ65Kおよびフランジ部65Rの上側に規制フレーム10Fが配置されているので上方への移動が規制されている。
【0057】
また、図7(b)に示すように、前支持構造SFにおいては、保持ケース65は、フランジ部65Rがコロ10Kの上に載置されているので下方への移動が規制され、フランジ部65Rの上側にコロ10Jが配置されているので上方への移動が規制されている。
【0058】
着脱位置(第2の位置)に保持ケース65を位置決めする板ばね65Sは、中央部分がなだらかに上方に膨出し、前側の端部がフランジ部65Rに埋め込まれ、後側の端部が、フランジ部65Rの上面に設けられた凹部内を摺動可能に設けられているので、図示された状態から、ユーザがさらに力を加えて保持ケース65を前方に引き出すと、板ばね65Sが弾性変形してコロ10Jの下を通過するよう構成されている。
【0059】
したがって、着脱位置を越えて保持ケース65を引き出すと、保持ケース65の後端部のコロ65Kが、傾斜部10Sとコロ10Kを乗り越えることで、保持ケース65を完全に本体筐体10から抜き出すことができる。このようにして、保持ケース65を取り出すことで、感光体ドラム61A、62Aや帯電器61B、62Bなどの修理や交換が行われる。
【0060】
<現像剤収容器(トナーカートリッジ)の交換のための操作>
次に、以上のように構成されたプロセスユニット61において、トナーカートリッジ100を交換するための操作について説明する。
【0061】
プロセスユニット61は、図1および図2に示す位置において、トナーカートリッジ100が現像器200に結合・ロックされ、第1シャッタ120および第2シャッタ220が開いた状態にある。すなわち、図6に示すように、第1シャッタ120の突起部120Pが突条部110Pとずれた位置にあって現像器200の溝部210Rの周方向延在部分である第2溝部R2に入り込んでおり、装着されたトナーカートリッジ100が現像器200から外れないようしっかりと固定されている。
【0062】
黒色のトナーが消費されたときなど、トナーカートリッジ100を交換する場合には、ユーザは、まず、フロントカバー11を開いてハンドル65Hを把持し、保持ケース65を前方に引き出して着脱位置に位置決めしてから、トナーカートリッジ100のハンドル120Hを奥側に回動させることでトナーカートリッジ100と現像器200のシャッタ(第1シャッタ120および第2シャッタ220)を閉鎖するとともに現像器200に対するトナーカートリッジ100のロックを解除する(図3参照)。そして、本体筐体10内からトナーカートリッジ100を取り出す。
【0063】
具体的には、ハンドル120Hの奥側への回動操作によって、第1シャッタ120および第2シャッタ220が図6の位置から図5の位置に変位すると、第1シャッタ120および第2シャッタ220が閉じた状態になるとともに、第1シャッタ120の突起部120Pが突条部110Pと揃った位置に来る。その結果、突起部120Pが現像器200の溝部210Rの径方向延在部である第1溝部R1を通過可能となり、トナーカートリッジ100は、図4に示すように取り外し可能となる。
【0064】
新たにトナーカートリッジ100を装着する際には、図3に示すように、フロントカバー11を開いて、保持ケース65を前方に引き出して着脱位置に位置決めしてから、トナーカートリッジ100を投入し、セットする。
【0065】
そして、図5に示す状態において、トナーカートリッジ100の左右両側の突条部110Pおよび突起部120Pを現像器200の左右両側の溝部210Rに位置合わせし向きを揃えて挿入し、トナーカートリッジ100の全体を現像器200の収容凹部210Sにセットする。その後、ハンドル120Hを前方(下方)に回動して、図6に示すように第1シャッタ120および第2シャッタ220が完全に開いた位置まで動かす。
【0066】
すると、第1シャッタ120の突起部120Pが現像器200の溝部210Rの第2溝部R2に入り込んで突条部110Pとずれた位置に来るので、装着されたトナーカートリッジ100が現像器200から外れないようしっかりと固定される。
【0067】
このように、現像器200の第2シャッタ220は、ハンドル120Hによる第1シャッタ120の開閉に連動して第2供給口211および第2戻し口212を開閉するので、第1シャッタ120および第2シャッタ220を一度の操作で簡単に開閉することができる。また、ハンドル120Hによるシャッタの閉位置への切換操作によって、連動してトナーカートリッジ100の現像器200との結合が解除され、ハンドル120Hのシャッタの閉位置への切換操作によって、連動してトナーカートリッジ100が現像器200に対してロックされるよう構成されており、操作の安全性と簡便性が実現されている。
【0068】
シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のいずれかのトナーが消費されたときなど、該当するプロセスユニット62の現像剤収容器62Gを現像器(現像ローラ62C、供給ローラ62D、層厚規制ブレード62E)とともに交換する場合も、図4に示すように、フロントカバー11を開き、ハンドル65Hを把持して保持ケース65を引き出してから、取り外しおよび装着を行う。
【0069】
なお、プロセスユニット61およびプロセスユニット62の部品交換は、保持ケース65を本体筐体10から完全に取り出してから行うこともできる。
【0070】
図4に示すように、保持ケース65の両側壁の内側の面には、保持ケース65に対して着脱される現像剤収容器62Gおよび現像器(現像ローラ62C、供給ローラ62D、層厚規制ブレード62E)の上下方向のスライド移動を案内するとともに、下端部において、装着時に現像器(特に、現像ローラ62C)を位置決め保持するガイド溝65Gが設けられている。このような着脱構造によって、プロセスユニット62の部品の交換を円滑容易に実施できる。
【0071】
以上のように構成された本実施形態のカラー複合機1は、主として次のような利点を有するものとして顕著な効果を奏するものである。
【0072】
複数の現像剤収容器を備えるタンデム引き出し型の装置において、黒色の現像剤を収容するトナーカートリッジ100が分離可能に設けられたプロセスユニット61を、引き出し方向最も奥側の、保持ケース65を引き出して着脱位置(第2の位置)に位置決めした状態において最も安定的に操作可能な位置に配置することで、黒色現像剤のトナーカートリッジ100の交換が容易かつ安全に実施することができるとともに、ランニングコストの低減を可能にした。
また、現像器と現像剤収容器を一体で保持部材から分離可能としたカラーのプロセスユニット62を、引き出し方向の手前側に配置した。これにより、プロセスユニット62において現像剤収容器のシャッタの開閉がなくなり、プロセスユニット62の交換が容易かつ安全に実施することができる。
【0073】
複数の現像剤収容器のうち、一般に最も消費の早い黒色の現像剤の現像剤収容器をトナーカートリッジ100として単独で交換することができるよう構成したので、顕著なランニングコスト抑制効果が期待できる。
【0074】
トナーカートリッジ100が分離可能に設けられたプロセスユニット61を、保持ケース65を引き出して着脱位置(第2の位置)に位置決めした状態において、本体筐体10内に位置するよう構成したので、トナーカートリッジ100着脱時のシャッタの開閉動作の際に引き出した状態の保持ケース65にかかる力により保持ケース65が破損したり装置本体が転倒したりするリスクを大幅に低減することができる。
【0075】
また、プロセスユニット61は、保持ケース65を引き出して着脱位置(第2の位置)に位置決めした状態において、手前側(前支持構造SF)と奥側(後支持構造SR)の2箇所において本体筐体10に支持されるよう構成したので、トナーカートリッジ100着脱時のシャッタの開閉動作を、より安全かつ容易に行うことができる。
【0076】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0077】
前記第1の実施形態および第2の実施形態では、記録シートとして、普通紙やはがきなどの用紙Pを例示したが、これに限定されず、例えば、OHPシートなどであってもよい。
【0078】
その他、露光装置、保持部材、感光体、現像剤収容器、操作部材(ハンドル)等、画像形成装置を構成する具体的な部品の構成と配置は、前記した実施形態に例示したものに限らず、適宜変更可能である。
【0079】
前記実施形態では、本発明のプロセスユニットを備えた画像形成装置として、カラー複合機1を例示したが、これに限定されず、例えば、複写機やプリンタなどであってもよい。また、前記実施形態では、4つのプロセスユニット61を備える画像形成装置を例示したが、本発明はこれに限定されず、黒色の現像剤を収容するものを含む複数の現像剤収容器を備える画像形成装置であれば、好適に実施可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 カラー複合機
10 本体筐体
11 フロントカバー
61、62 プロセスユニット
61A、62A 感光体ドラム(感光体)
61B、62B 帯電器
61C、62C 現像ローラ
61D、62D 供給ローラ
62G 現像剤収容器(第2の現像剤収容器)
65 保持ケース(保持部材)
100 トナーカートリッジ(第1の現像剤収容器)
200 現像器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する筐体と、
複数の感光体と、
前記複数の感光体にそれぞれ対応させて設けられた複数の現像器と、
前記複数の現像器にそれぞれ現像剤を供給する複数の現像剤収容器と、
タンデム配列された前記複数の感光体と、前記複数の現像器および前記複数の現像剤収容器とを前記筐体内に位置決めして保持するとともに、前記開口部を通って前記タンデム配列方向に引き出し可能な保持部材と、を備え、
前記複数の現像剤収容器は、対応する現像器と分離して単独で交換可能に構成された第1の現像剤収容器と、対応する現像器と一体で交換可能に構成された第2の現像剤収容器とを含み、
前記保持部材は、前記複数の感光体、前記複数の現像器および前記複数の現像剤収容器がすべて前記筐体内に収容される第1の位置と、少なくとも、前記複数の現像剤収容器のうち前記引き出し方向において最も奥側に配置された現像剤収容器が、交換可能となる第2の位置との間をスライド移動可能に構成され、
前記複数の現像剤収容器のうち前記引き出し方向において最も奥側に配置された現像剤収容器は、前記第1の現像剤収容器であって、黒色の現像剤を収容しており、
前記複数の現像剤収容器のうち前記引き出し方向において最も奥側に配置された現像剤収容器以外の現像剤収容器は、前記第2の現像剤収容器である
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の現像剤収容器は、対応する現像器へ現像剤を供給する供給口と、当該供給口を開閉可能なシャッタと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の現像剤収容器は、前記シャッタを開位置と閉位置との間で切替操作するための操作部をさらに備え、
前記保持部材が前記第2の位置にあるとき前記操作部による前記シャッタの閉位置への切替操作によって前記第1の現像剤収容器の前記対応する現像器との結合が解除されて前記保持部材に前記対応する現像器が保持された状態で前記第1の現像剤収容器が交換可能となり、前記保持部材が前記第2の位置にあるとき前記操作部による前記シャッタの開位置への切替操作によって前記第1の現像剤収容器が前記対応する現像器に対してロックされるよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の現像剤収容器は、前記保持部材が前記第2の位置にあるとき、前記筐体内に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記保持部材は、前記第2の位置にあるとき、前記第1の現像剤収容器の、少なくとも手前側と奥側の2箇所において前記筐体に支持されるよう構成されていることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1の現像剤収容器が収容する現像剤は粉砕トナーであり、
前記第2の現像剤収容器が収容する現像剤はケミカルトナーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−150178(P2011−150178A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12058(P2010−12058)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】