説明

画像形成装置

【課題】光走査領域の近傍に設置しても、大きな光走査領域を確保することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置100は、レーザー光LLを出射する光出射部200と、光出射部200から出射したレーザー光LLを反射する光反射部22を有し、光反射部22を互いに直交する回動中心軸X1、Y1にそれぞれ回動させて、光反射部22で反射したレーザー光LLを回動中心軸X1、Y1にそれぞれ走査する光スキャナー1と、回動中心軸X1、Y1の交点と光出射部200との相対的位置関係を一定に保ちつつ、光スキャナー1を所定の軸線まわりに回動させる駆動手段300とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、レーザープリンター等にて光走査により描画を行うための光スキャナーとして、捩り振動子で構成されアクチュエーターを用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、一対の永久磁石が設けられた絶縁基板と、一対の永久磁石の間に位置するように絶縁基板に支持されたスキャナー本体とを有するアクチュエーターが開示されている。また、スキャナー本体は、枠状の支持部と、支持部の内側に設けられた枠状の外側可動板と、外側可動板の内側に設けられた内側可動板(ミラー)とを有している。また、外側可動板は、X軸方向に延在する一対の第1トーションバーを介して支持部に連結されており、内側可動板は、X軸方向と直交するY軸方向に延在する第2トーションバーを介して外側可動板に連結している。また、外側可動板および内側可動板には、それぞれコイルが設けられている。
【0003】
このような構成のアクチュエーターでは、通電により各コイルから発生する磁界と一対の永久磁石間に発生する磁界とを作用させることにより、外側可動板が内側可動板とともに第1トーションバーを中心軸としてX軸まわりに回動し、内側可動板が第2トーションバーを中心軸としてY軸まわりに回動する。このように、特許文献1のアクチュエーターでは内側可動板を2次元的に回動させることにより、内側可動板で反射した光を2次元的に走査する。このような構成は、1つの光スキャナーで2次元的に光を走査することができる点で有効である。
【0004】
しかしながら、特許文献1のアクチュエーターでは、内側可動板の回動角に限界があるため、光を走査することのできる領域を大きくするのが困難である。特許文献1のアクチュエーターを用いて光走査領域を大きく設定するには、例えば、光走査領域とアクチュエーターの離間距離を長くすることが考えられるが、これでは、光走査領域とアクチュエーターの間に人間などの障害物が侵入し易く、光が前記侵入物によって遮られてしまうおそれが高く、また、設置条件も限られてしまうという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−181395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、光走査領域の近傍に設置しても、大きな光走査領域を確保することのできる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の画像形成装置は、光を出射する光出射部と、
前記光出射部から出射した光を反射する光反射部を有し、該光反射部を互いに直交する第1の軸および第2の軸にそれぞれ回動させて、前記光反射部で反射した前記光を前記第1の軸および前記第2の軸にそれぞれ走査する光スキャナーと、
前記第1の軸および第2の軸の交点と前記光出射部との相対的位置関係を一定に保ちつつ、前記光スキャナーを所定の軸線まわりに回動させる駆動手段とを有し、
前記光スキャナーは、前記光反射部を備える可動板と、前記可動板を支持する支持部と、前記可動板および前記支持部を連結する4つの連結部とを有し、
前記4つの連結部は、前記可動板の平面視にて、前記可動板の外周に、周方向に沿って90度間隔で設けられており、
各前記連結部は、前記可動板と離間配置され前記支持部に対して回動可能な駆動部と、前記可動板および前記駆動部を連結する軸部とを有し、
各前記連結部の前記軸部は、前記駆動部の回動によって、前記可動板との離間方向の途中で前記可動板の厚さ方向に屈曲変形するように構成されており、
各前記軸部を独立して前記屈曲変形させることにより、前記可動板が前記第1の軸および前記第2の軸のそれぞれの軸まわりに回動するように構成されていることを特徴とする。
これにより、光走査領域の近傍に設置しても、大きな光走査領域を確保することのできる画像形成装置を提供することができる。
【0008】
本発明の画像形成装置では、前記光スキャナーは、前記光反射部で反射した光を照射する表示面上の異なる2点間を結ぶ線分を順次形成するベクター走査により前記光を走査することが好ましい。
このような走査方法(ベクタースキャン)によれば、光を照射したい領域にのみ光を走査することができるため、効率的に、画像を表示することができる。
【0009】
本発明の画像形成装置では、前記光出射部および前記光スキャナーを互いの相対的位置関係を維持した状態で支持する支持部を有し、
前記駆動手段は、前記光出射部および前記光スキャナーを前記支持部ごと回動可能に構成されていることが好ましい。
これにより、光出射部と光スキャナーのアライメント調整を要することなく、光の走査領域(画像が表示される領域)を変更することができる。
本発明の画像形成装置では、前記駆動手段は、モーターを備えることが好ましい。
これにより、画像形成装置を比較的簡単かつ安価なものとすることができる。
【0010】
本発明の画像形成装置では、前記可動板の平面視にて直交する2軸をX軸およびY軸としたとき、
前記4つの連結部は、前記可動板を介してX軸方向に対向する第1の連結部および第2の連結部と、前記可動板を介してY軸方向に対向する第3の連結部および第4の連結部を有し、
前記第1の連結部および前記第2の連結部は、それぞれ、前記可動板とX軸方向に離間配置された前記駆動部と、前記可動板と前記駆動部とを連結しX軸方向に延在する前記軸部である第1の軸部と、前記駆動部と前記支持部とを連結しY軸方向に延在する第2の軸部とを有し、
前記第3の連結部および前記第4の連結部は、それぞれ、前記可動板とY軸方向に離間配置された前記駆動部と、前記可動板と前記駆動部とを連結しY軸方向に延在する前記軸部である第1の軸部と、前記駆動部と前記支持部とを連結しX軸方向に延在する第2の軸部とを有していることが好ましい。
これにより、可動板を安定した状態で支持することができる。また、可動板を互いに直交する2つの軸のそれぞれ軸まわりの回動を独立して行うことができる。そのため、ベクタースキャンに適した光スキャナーとなる。
【0011】
本発明の画像形成装置では、前記X軸および前記Y軸に直交する軸をZ軸としたとき、
前記4つの連結部の前記第1の軸部は、それぞれ、Z軸方向の一方側に凸のV字状となるように屈曲する第1の変形と、Z軸方向の他方側に凸のV字状となるように屈曲する第2の変形とをし得ることが好ましい。
このように各第1の軸部を屈曲させることにより、可動板を効率的に変位させることができる。
【0012】
本発明の画像形成装置では、前記第1の連結部の前記第1の軸部に前記第1の変形をさせるとともに、前記第2の連結部の前記第1の軸部に前記第2の変形をさせる状態と、前記第1の連結部の前記第1の軸部に前記第2の変形をさせるとともに、前記第2の連結部の前記第1の軸部に前記第1の変形をさせる状態とを交互に繰り返すことにより、前記可動板を前記Y軸まわりに回動させ、
前記第3の連結部の前記第1の軸部に前記第1の変形をさせるとともに、前記第4の連結部の前記第1の軸部に前記第2の変形をさせる状態と、前記第3の連結部の前記第1の軸部に前記第2の変形をさせるとともに、前記第4の連結部の前記第1の軸部に前記第1の変形をさせる状態とを交互に繰り返すことにより、前記可動板を前記X軸まわりに回動させることが好ましい。
これにより、可動板をスムーズに回動させることができる。
【0013】
本発明の画像形成装置では、前記4つの連結部の前記第1の軸部は、それぞれ、前記可動板と前記駆動部の間に設けられた応力緩和部と、前記応力緩和部と前記可動板とを連結する可動板側軸部と、前記応力緩和部と前記駆動部とを連結する駆動部側軸部とを有し、前記応力緩和部で屈曲することが好ましい。
これにより、可動板側軸部が受ける応力を応力緩和部で緩和することができ、駆動部側軸部へ伝わるのを防止または抑制することができる。
【0014】
本発明の画像形成装置では、前記4つの連結部の前記可動板側軸部は、それぞれ、該可動板側軸部の中心軸まわりに捩じり変形することが好ましい。
これにより、4つの連結部のうちの対向する一対の連結部を軸とした可動板の回動を他の一対の連結部の可動板側軸部が捩じり変形することにより許容することができる。そのため、可動板を互いに直交する2軸のそれぞれの軸まわりにスムーズに回動させることができる。
【0015】
本発明の画像形成装置では、前記4つの連結部の前記駆動部側軸部は、それぞれ、変形しないことが好ましい。
これにより、駆動部の回動によって生じる応力を効率よく可動板の回動に用いることができる。そのため、可動板を大きい回動角度で、しかも省電力で変位させることができる。
【0016】
本発明の画像形成装置では、前記4つの連結部の前記応力緩和部は、それぞれ、前記可動板の平面視にて、可動板側軸部および駆動部側軸部の延在方向に直交する方向に延在し、中心軸まわりに捩じり変形する変形部を有していることが好ましい。
これにより、変形部が捩じり変形することにより第1の軸部に加わる応力を効果的に緩和することができる。
【0017】
本発明の画像形成装置では、前記4つの連結部の前記応力緩和部は、それぞれ、前記変形部を一対有し、
前記一対の変形部のうちの一方の前記変形部は、前記可動板側軸部に連結され、他方の前記変形部は、前記駆動部側軸部に連結されていることが好ましい。
これにより、変形部が捩じり変形することにより第1の軸部に加わる応力を効果的に緩和することができる。
【0018】
本発明の画像形成装置では、前記4つの連結部の前記応力緩和部は、それぞれ、前記一対の変形部の間に設けられ、前記変形部の延在方向と平行な方向に延在し、中心軸まわりに捩じり変形しない非変形部を有していることが好ましい。
これにより、各連結部において、非変形部を軸にして第1の軸部を屈曲させることができる。そのため、各連結部の第1の軸部を簡単かつ確実に屈曲させることができ、可動板を安定して変位させることができる。
【0019】
本発明の画像形成装置では、前記4つの連結部の前記応力緩和部は、それぞれ、前記X軸方向および前記Y軸方向に交互に延在して蛇行する部位を有していることが好ましい。
これにより、可動板側軸部が受ける応力を応力緩和部で緩和することができ、駆動部側軸部へ伝わるのを防止または抑制することができる。
本発明の画像形成装置では、前記4つの連結部の前記応力緩和部は、それぞれ、前記X軸方向に延在する複数の延在部と、Y軸方向に延在する複数の延在部とを有し、前記複数の延在部は、それぞれ、中心軸まわりに捩じり変形可能であるとともに湾曲変形可能であることが好ましい。
これにより、各延在部が捩じり変形および湾曲変形の少なくとも一方の変形をすることにより第1の軸部に加わる応力を効果的に緩和することができる。
【0020】
本発明の画像形成装置では、前記4つの連結部は、それぞれ、第1のSi層、SiO層および第2のSi層をこの順で積層してなるSOI基板から形成されていることが好ましい。
これにより、各連結部を簡単に形成することができる。
本発明の画像形成装置では、前記4つの連結部の前記非変形部、駆動部側軸部および駆動部は、それぞれ、前記第1のSi層、前記SiO層および前記第2のSi層で構成されており、前記可動板側軸部、前記変形部および前記第2の軸部は、それぞれ、前記第2のSi層で構成されていることが好ましい。
これにより、各連結部を簡単に形成することができる。
【0021】
本発明の画像形成装置では、前記可動板を前記支持部に対して変位させる変位手段を有し、
前記変位手段は、前記4つの連結部に対応して4つ設けられていることが好ましい。
これにより、各連結部の動きを独立して制御することができる。
本発明の画像形成装置では、前記4つの変位手段は、それぞれ、対応する前記駆動部に設けられた永久磁石と、前記永久磁石に作用する磁界を発生するコイルとを有していることが好ましい。
これにより、変位手段の構成が簡単となる。また、電磁駆動であるため大きな力を発生することができる。
【0022】
本発明の画像形成装置では、前記4つの変位手段において、前記永久磁石は、前記可動板の厚さ方向に両極が対向するように設けられており、前記コイルは、前記可動板の厚さ方向に直交する方向の磁界を発生させるように設けられていることが好ましい。
これにより、可動板を安定して変位させることができる。
本発明の画像形成装置では、前記4つの変位手段の前記永久磁石は、それぞれ、前記駆動部を貫通して設けられていることが好ましい。
これにより、可動板を安定して変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の画像形成装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図3】図1に示す画像形成装置が有する光スキャナーの平面図である。
【図4】図3に示す光スキャナーの断面図(図3中A−A線断面図)である。
【図5】図3に示す光スキャナーが有する連結部の斜視図である。
【図6】図3に示す光スキャナーが有する振動系の製造方法を説明する断面図である。
【図7】図3に示す光スキャナーが有する振動系の製造方法を説明する断面図である。
【図8】図3に示す光スキャナーが有する変位手段を説明する図である。
【図9】図3に示す光スキャナーの駆動を説明する図である。
【図10】図3に示す光スキャナーの駆動を説明する図である。
【図11】図3に示す光スキャナーの駆動を説明する図である。
【図12】図3に示す光スキャナーの駆動を説明する図である。
【図13】図1に示す画像形成装置が有する駆動手段を示す断面図である。
【図14】図13に示す駆動手段の駆動を説明するための上視図である。
【図15】図1に示す画像形成装置の作動を示す図である。
【図16】本発明に係る第2実施形態の画像形成装置が有する光スキャナーの平面図である。
【図17】本発明に係る第3実施形態の画像形成装置が有する光スキャナーの平面図である。
【図18】本発明に係る第4実施形態の画像形成装置が有する光スキャナーの斜視図である。
【図19】本発明に係る第5実施形態の画像形成装置が有する光スキャナーの断面図である。
【図20】本発明の第6実施形態にかかる画像形成装置が有する光スキャナーを示す平面図である。
【図21】図20に示す光スキャナーが有する連結部の拡大斜視図である。
【図22】本発明に係る第6実施形態の画像形成装置が有する光スキャナーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の画像形成装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の画像形成装置の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の画像形成装置の第1実施形態を示す図、図2は、図1に示す画像形成装置の概略構成を示す図、図3は、図1に示す画像形成装置が有する光スキャナーの平面図、図4は、図3に示す光スキャナーの断面図(図3中A−A線断面図)、図5は、図3に示す光スキャナーが有する連結部の斜視図、図6および図7は、それぞれ、図3に示す光スキャナーが有する振動系の製造方法を説明する断面図、図8は、図3に示す光スキャナーが有する変位手段を説明する図、図9は、図3に示す光スキャナーの駆動を説明する図、図10、図11および図12は、それぞれ、図3に示す光スキャナーの駆動を説明する図、図13は、図1に示す画像形成装置が有する駆動手段を示す断面図、図14は、図13に示す駆動手段の駆動を説明するための上視図、図1に示す画像形成装置の作動を示す図である。
【0025】
なお、以下では、説明の便宜上、図3中の左側を「左」、右側を「右」と言い、図4〜図12中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図3に示すように互いに直交する3軸を、X軸(第1の軸)、Y軸(第2の軸)およびZ軸とし、非駆動状態の可動板の面と、X軸およびY軸で形成される面とが一致し(平行であり)、可動板の厚さ方向とZ軸とが一致する。また、以下では、X軸に平行な方向を「X軸方向」と言い、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」と言い、Z軸方向に平行な方向を「Z軸方向」と言う。
【0026】
図1に示す画像形成装置100は、例えばビル等の建物内また屋外に設置されたスクリーン(表示対象物)Sに、静止画や動画等の所定の画像を表示する装置である。このような画像形成装置100は、図2に示すように、レーザー光(光)を出射する光出射部200と、光出射部200から出射した光を反射する光スキャナー1と、光スキャナー1を所定の軸線まわりに回動させる駆動手段300とを有している。
【0027】
スクリーンSの構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、アクリル系樹脂、ABS樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これにより、画像の視認性を向上させることができる。なお、スクリーンSは、省略してもよく、例えば、建物の壁面や床面に直接、画像を表示してもよい。
【0028】
以下、画像形成装置の各構成について順次、詳細に説明する。
(光出射部200)
図2に示すように、光出射部(光源ユニット)200は、各色のレーザー光源210r、210g、210bと、各色のレーザー光源210r、210g、210bに対応して設けられたコリメーターレンズ220r、220g、220bおよびダイクロイックミラー230r、230g、230bとを備えている。
【0029】
各色のレーザー光源210r、210g、210bは、それぞれ、赤色、緑色および青色のレーザー光RR、GG、BBを出射する。レーザー光RR、GG、BBは、それぞれ、図示しない制御部から送信される駆動信号に対応して変調された状態で出射され、コリメート光学素子であるコリメーターレンズ220r、220g、220bによって平行化されて細いビームとされる。
ダイクロイックミラー230r、230g、230bは、それぞれ、赤色レーザー光RR、緑色レーザー光GG、青色レーザー光BBを反射する特性を有し、各色のレーザー光RR、GG、BBを結合して1つのレーザー光LLを出射する。
【0030】
なお、コリメーターレンズ220r、220g、220bに代えてコリメーターミラーを用いることができ、この場合も、平行光束の細いビームを形成することができる。また、各色のレーザー光源210r、210g、210bから平行光束が出射される場合、コリメーターレンズ220r、220g、220bは、省略することができる。さらに、レーザー光源210r、210g、210bについては、同様の光束を発生する発光ダイオード等の光源に置換することができる。また、図2の各色のレーザー光源210r、210g、210b、コリメーターレンズ220r、220g、220b、およびダイクロイックミラー230r、230g、230bの順番はあくまで1例であり、各色の組み合わせ(赤色はレーザー光源210r、コリメーターレンズ220r、ダイクロイックミラー230r、緑色はレーザー光源210g、コリメーターレンズ220g、ダイクロイックミラー230g、青色はレーザー光源210b、コリメーターレンズ220b、ダイクロイックミラー230b)を保持したままその順序は自由に設定できる。例えば、光スキャナー1に近い順に、青色、赤色、緑色という組み合わせも可能である。
【0031】
(光スキャナー)
次に、光スキャナー1について説明する。
光スキャナー1は、光源ユニット200から出射したレーザー光LLをスクリーンSの表面(表示面)に対し、ラスタースキャン、ベクタースキャン等の走査法を用いて走査する装置である。ここで、ラスタースキャンとは、レーザー光LLを水平方向に走査すると共に、垂直方向に走査することで2次元的に走査する手法であり、スクリーンSに表示すべき画像に関係なく、一律に表示面の全域にレーザー光LLを規則的に走査する。一方のベクタースキャンとは、レーザー光LLをスクリーンSの表面上の異なる2点を結ぶ線分を順次形成するように走査する手法であり、表示面に表示すべき画像に合わせて表示面の必要な箇所のみにレーザー光LLを不規則に走査する。なお、本実施形態で用いている光スキャナー1は、ラスタースキャンおよびベクタースキャンのいずれにおいてもレーザー光LLを走査することができるが、その構成上、ベクタースキャンによってレーザー光LLを走査することが好ましい。
【0032】
図3および図4に示すように、光スキャナー1は、可動板2、可動板2を支持する支持部3および可動板2と支持部3とを連結する4つの連結部4、5、6、7で構成された振動系11と、振動系11を支持する基台12と、可動板2を変位させる変位手段8とを有している。以下、光スキャナー1の各構成について順次詳細に説明する。なお、互いに直交する3軸を、X軸、Y軸およびZ軸とし、非駆動状態の可動板の面と、X軸およびY軸で形成される面とが一致し(平行であり)、可動板の厚さ方向とZ軸とが一致する。また、以下では、X軸に平行な方向を「X軸方向」と言い、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」と言い、Z軸方向に平行な方向を「Z軸方向」と言う。
【0033】
[振動系11]
本実施形態では、振動系11は、SOI基板の不要部位をドライエッチングおよびウェットエッチング等の各種エッチング法により除去することにより一体的に形成されている。なお、振動系11の製造方法については後に詳述する。
支持部3は、可動板2を支持する機能を有する。このような支持部3は、枠状をなしており、可動板2の周囲を囲むように設けられている。なお、支持部3の形状としては、可動板2を支持することができれば、特に限定されず、例えば、可動板2を介してX軸方向またはY軸方向に対向するように一対設けられていてもよい。
【0034】
支持部3の内側には、可動板2が設けられている。可動板2は、平板状をなし、一方の面(基台12と反対側の面)21には、光反射性を有する光反射部22が形成されている。光反射部22は、例えば、面21上に金、銀、アルミニウム等の金属膜などを蒸着等により形成することにより得られる。
なお、本実施形態では、可動板2の平面視形状は、円形であるが、可動板2の平面視形状としては、特に限定されず、例えば長方形、正方形等の多角形、楕円形等であってもよい。
【0035】
このような可動板2は、4つの連結部4、5、6、7によって支持部3に連結されている。4つの連結部4、5、6、7は、可動板2の平面視にて、可動板2の周方向に沿って等間隔、すなわち90度間隔で配置されている。
そして、4つの連結部4、5、6、7のうち、連結部4、6は、可動板2を介してX軸方向に対向しかつ可動板2に対して対称的に形成されており、連結部5、7は、可動板2を介してY軸方向に対向しかつ可動板2に対して対称的に形成されている。このような連結部4、5、6、7によって可動板2を支持することにより、可動板2を安定した状態で支持することができる。また、後述するように、可動板2の回動中心軸X1まわりの回動と、回動中心軸Y1まわりの回動とをそれぞれ独立して行うことができる。
【0036】
4つの連結部4、5、6、7は、互いに同様の構成をなしている。
具体的には、連結部(第1の連結部)4は、駆動板(駆動部)41と、駆動板41と可動板2とを連結する第1の軸部42と、駆動板41と支持部3とを連結する一対の第2の軸部43とを有している。また、連結部(第3の連結部)5も、駆動板51と、駆動板51と可動板2とを連結する第1の軸部52と、駆動板51と支持部3とを連結する一対の第2の軸部53とを有している。また、連結部(第2の連結部)6も、駆動板61と、駆動板61と可動板2とを連結する第1の軸部62と、駆動板61と支持部3とを連結する一対の第2の軸部63とを有している。また、連結部(第4の連結部)7も、駆動板71と、駆動板71と可動板2とを連結する第1の軸部72と、駆動板71と支持部3とを連結する一対の第2の軸部73とを有している。なお、前記「同様の構成」とは、連結部を構成する要素が共通しているということである。したがって、外形形状については一致している必要はない。
各連結部4、5、6、7をこのような構成とすることにより、連結部の構成が簡単となるとともに、後述するように可動板2の回動中心軸X1、Y1まわりの回動等をスムーズに行うことができる。
【0037】
以下、連結部4、5、6、7について具体的に説明するが、連結部4、5、6、7の構成は、互いに同様であるため、連結部4について代表して説明し、他の連結部5、6、7については、その説明を省略する。なお、連結部5、7は、可動板2の平面視にて、連結部4に対して90度回転した状態で配置されている。そのため、連結部5、7については、下記の連結部4の説明中の「Y軸方向」を「X軸方向」とし、「X軸方向」を「Y軸方向」とすることで説明することもできる。
【0038】
図5に示すように、一対の第2の軸部43は、駆動板41を介してY軸方向に対向配置されており、駆動板41を両持ち支持している。また、一対の第2の軸部43は、それぞれ、Y軸方向に延在する棒状をなしている。また、一対の第2の軸部43は、中心軸まわりに捩じり変形可能となっている。このような一対の第2の軸部43は、同軸的に設けられており、この軸(以下、「回動中心軸Y2」とも言う)を中心として、一対の第2の軸部43が捩じり変形するとともに駆動板41が回動する。
【0039】
駆動板41は、可動板2に対してX軸方向に離間して設けられている。また、駆動板41は、前述したように一対の第2の軸部43によって両持ち支持されている。このような駆動板41には貫通孔411が形成されており、この貫通孔に永久磁石811が挿通、固定されている。永久磁石811は、例えば、嵌合(圧入)や、接着剤によって、駆動板41に固定されている。永久磁石811は、変位手段8の構成の一部であるため、後に説明する。
【0040】
また、本実施形態では、駆動板41の平面視形状は、Y軸方向を長手とする長方形である。駆動板41をこのような形状とすることにより、永久磁石811を固定するスペースを確保しつつ、駆動板41の幅(X軸方向の長さ)を抑えることができる。駆動板41の幅を抑えることにより、駆動板41が回動中心軸Y2まわりに回動する際に発生する慣性モーメントを抑えることができ、駆動板41の反応性が高まり、より高速な回動が可能となる。また、駆動板41の反応性が高まると、駆動板41の回動(特に回動方向が切り替わる切り返しの時)によって、不本意な振動が発生するのを抑えることができる。そのため、光スキャナー1を安定して駆動することができる。
なお、駆動板41の平面視形状としては、特に限定されず、例えば、正方形や五角形以上の多角形であってもよいし、円形であってもよい。
【0041】
このような駆動板41は、第1の軸部42によって可動板2と連結している。第1の軸部42は、全体的にX軸方向に延在するように設けられている。このような第1の軸部42は、駆動板41と可動板2との間に設けられた応力緩和部421と、応力緩和部421と可動板2とを連結する可動板側軸部422と、応力緩和部421と駆動板41とを連結する駆動板側軸部(駆動部側軸部)423とを有している。
【0042】
可動板側軸部422および駆動板側軸部423は、それぞれ、X軸方向に延在する棒状をなしている。また、可動板側軸部422および駆動板側軸部423は、同軸的に設けられている。
これら2つの軸部のうちの駆動板側軸部423は、光スキャナー1の駆動時に大きな変形が起こらない硬さに設定されているのが好ましく、実質的に変形しない硬さに設定されているのがより好ましい。これに対して可動板側軸部422は、その中心軸まわりに捩じり変形可能となっている。このように、第1の軸部42が実質的に変形しない硬い部分およびその先端側に位置する捩じり変形可能な部位を有することにより、後述するように、可動板2をX軸およびY軸のそれぞれの軸まわりに安定して回動させることができる。なお、前記「変形しない」とは、Z軸方向への屈曲または湾曲および中心軸まわりの捩じり変形が実質的に起きないことを言う。
このような可動板側軸部422および駆動板側軸部423は、応力緩和部421を介して連結している。応力緩和部421は、第1の軸部42が屈曲変形する際の節となる機能と、可動板側軸部422の捩じり変形により発生するトルクを緩和(吸収)し、前記トルクが駆動板側軸部423に伝わるのを防止または抑制する機能とを有している。
【0043】
図5に示すように、応力緩和部421は、一対の変形部4211、4212と、これらの間に設けられた非変形部4213と、変形部4211を非変形部4213に接続する一対の接続部4214と、変形部4212を非変形部4213に接続する一対の接続部4215とを有している。
非変形部4213は、Y軸方向に延在する棒状をなしている。このような非変形部4213は、光スキャナー1の駆動時に実質的に変形しない硬さに設定されている。これにより、後述するように、非変形部4213の中心軸Y4を中心に第1の軸部42を屈曲させることができ、応力緩和部421に節としての機能を確実に発揮させることができ、光スキャナー1を安定して駆動させることができる。
【0044】
このような非変形部4213に対して対称的に一対の変形部4211、4212が配置されている。変形部4211、4212は、それぞれ、Y軸方向に延在する棒状をなしている。また、変形部4211、4212は、互いにX軸方向に離間して並設されている。このような変形部4211、4212は、それぞれ、その中心軸まわりに捩じり変形可能となっている。
【0045】
可動板2側に位置する変形部4211は、その長手方向のほぼ中央にて可動板側軸部422の一端と連結しているとともに、その両端部にて一対の接続部4214を介して非変形部4213に連結している。同様に、駆動板41側に位置する変形部4212は、その長手方向のほぼ中央にて駆動板側軸部423の一端と連結しているとともに、その両端部にて一対の接続部4215を介して非変形部4213に連結している。
【0046】
一対の接続部4214の一方の接続部は、変形部4211および非変形部4213の一端部同士を連結し、他方の接続部は、変形部4211および非変形部4213の他端部同士を連結している。また、一対の接続部4215の一方の接続部は、変形部4212および非変形部4213の一端部同士を連結し、他方の接続部は、変形部4212および非変形部4213の他端部同士を連結している。
このような各接続部4214、4215は、X軸方向に延在する棒状をなしている。また、各接続部4214、4215は、Z軸方向に湾曲可能でかつその中心軸まわりに捩じり変形可能となっている。
以上、振動系11の構成について具体的に説明した。
【0047】
前述したように、このような構成の振動系11は、SOI基板から一体的に形成されている。これにより、振動系11の形成が容易となる。具体的には、前述したように、振動系11には、積極的に変形させる部位と、変形させない(変形させたくない)部位とが混在している。一方、SOI基板は、第1のSi層と、SiO層と、第2のSi層とがこの順に積層した基板である。そこで、変形させない部位を前記3つの層の全てで構成するとともに、積極的に変形させる部位を第2のSi層のみで構成することにより、すなわち、SOI基板の厚さを異ならせることにより、変形させる部位と変形させない部位が混在する振動系11を簡単に形成することができる。なお、積極的に変形させる部位は、第2のSi層とSiO層の2層で構成されていてもよい。
【0048】
前記「変形させる部位」には、第2の軸部43、53、63、73、可動板側軸部422、522、622、722、変形部4211、4212、5211、5212、6211、6212、7211、7212および接続部4214、4215、5214、5215、6214、6215、7214、7215が含まれる。
一方、前記「変形させない部位」には、可動板2、支持部3、駆動板41、51、61、71、駆動板側軸部423、523、623、723および非変形部4213、5213、6213、7213が含まれる。
【0049】
以下、図6および図7に基づいて、振動系11の製造方法の一例を簡単に説明する。なお、図6および図7は、それぞれ、図3中A−A線断面図に対応する断面図である。また、振動系11の製造方法は、これに限定されない。
まず、図6(a)に示すように、第1のSi層510と、SiO層520と、第2のSi層530とがこの順で上側から積層してなるSOI基板(シリコン基板)500を用意する。
【0050】
次いで、図6(b)に示すように、SOI基板500の両面にSiO膜M1、M2を形成する。次いで、図6(c)に示すように、SiO膜M2をエッチングすることにより、可動板2、支持部3および連結部4、5、6、7の平面視形状にパターニングするとともに、SiO膜M1をエッチングすることにより、可動板2、支持部3、駆動板41、51、61、71、駆動板側軸部423、523、623、723および非変形部4213、5213、6213、7123に対応する形状にパターニングする。
【0051】
次いで、図7(a)に示すように、SiO膜M1を介してSOI基板500をエッチングする。この際、SOI基板500の中間層たるSiO層520は、前記エッチングのストップ層として機能する。このエッチングが終了した後、今度は、SiO膜M2を介してSOI基板500をエッチングする。この際も、SOI基板500の中間層たるSiO層520は、前記エッチングのストップ層として機能する。
【0052】
なお、エッチング方法としては、特に限定されず、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、以下の各工程におけるエッチングにおいても、同様の方法を用いることができる。
【0053】
次いで、図7(b)に示すように、BFH(バッファードフッ酸)等によって、SiO膜M1、M2およびSiO層520の露出している部分をエッチング除去することにより、可動板2、支持部3および連結部4、5、6、7の外形形状に加工される。
さらに、図7(c)に示すように、可動板2の上面21に金属膜を形成し、光反射部22を形成する。金属膜(光反射部22)の形成方法としては、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、金属箔の接合等が挙げられる。
このようにして振動系11が得られる。
【0054】
[基台12]
図4に示すように、基台12は、平板状の基部121と、基部121の縁部に沿って設けられた枠部122とを有しており、箱状(枡状)をなしている。このような基台12は、枠部122にて振動系11の支持部3の下面と接合されている。これにより、基台12によって振動系11が支持される。このような基台12は、例えば、ガラスやシリコンを主材料として構成されている。なお、基台12と支持部3の接合方法としては、特に限定されず、例えば接着剤を用いて接合してもよく、陽極接合等の各種接合方法を用いてもよい。
【0055】
[変位手段8]
図3に示すように、変位手段8は、永久磁石811、コイル812および電源813を有する第1の変位手段81と、永久磁石821、コイル822および電源823を有する第2の変位手段82と、永久磁石831、コイル832および電源833を有する第3の変位手段83と、永久磁石841、コイル842および電源843を有する第4の変位手段84とを有している。
そして、第1の変位手段81は、連結部4に対応して設けられており、第2の変位手段82は、連結部5に対応して設けられており、第3の変位手段83は、連結部6に対応して設けられており、第4の変位手段84は、連結部7に対応して設けられている。
【0056】
このような構成によれば、変位手段8の構成が簡単となる。また、変位手段8を電磁駆動とすることにより、比較的大きな力を発生させることができ、可動板2をより確実に回動させることができる。また、各連結部4、5、6、7に1つの変位手段が設けられているため、各連結部4、5、6、7を独立して変形させることができる。そのため、後述するように、可動板2を様々な態様で変位させることができる。
【0057】
以下、第1の変位手段81、第2の変位手段82、第3の変位手段83および第4の変位手段84について説明するが、これらはそれぞれ同様の構成であるため、以下では、第1の変位手段81について代表して説明し、第2の変位手段82、第3の変位手段83および第4の変位手段84については、その説明を省略する。なお、第2の変位手段82および第4の変位手段84は、可動板2の平面視にて、第1の変位手段81に対して90度回転した状態で配置されている。そのため、第2の変位手段82および第4の変位手段84については、下記の第1の変位手段81の説明中の「Y軸方向」を「X軸方向」とし、「X軸方向」を「Y軸方向」とすることで説明することもできる。
【0058】
図8に示すように、永久磁石811は、棒状をなしており、その長手方向に磁化している。すなわち、永久磁石811は、その長手方向の一端側がS極となっており、他端側がN極となっている。このような永久磁石811は、駆動板41に形成された貫通孔411に挿通されており、長手方向のほぼ中央で駆動板41に固定されている。そして、永久磁石811が、駆動板41の上下に同じ長さだけ突出し、かつ駆動板41(回動中心軸Y2)を介してS極とN極が対向する。これにより、後述するように、可動板2を安定して変位させることができる。
【0059】
また、永久磁石811は、その長手方向が駆動板41の面方向に直交するように設けられている。また、永久磁石811は、その中心軸が回動中心軸Y2と交わるように設けられている。
このような永久磁石811としては、特に限定されず、例えば、ネオジウム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、ボンド磁石などの、硬磁性体を着磁したものを好適に用いることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、永久磁石811は、棒状をなしているが、永久磁石の形状としては、特に限定されず、例えば、板状をなしていてもよい。この場合には、永久磁石811を面方向に磁化し、その面方向がX軸方向と直交するように駆動板41に固定すればよい。これにより、永久磁石811のX軸方向長さを短くすることができるため、駆動板41の回動に伴って発生する慣性モーメントを抑えることができる。
【0061】
コイル812は、永久磁石811に作用する磁界を発生する。このようなコイル812は、振動系11の外側近傍に、X軸方向にて永久磁石811と対向するように配置されている。また、コイル812は、X軸方向の磁界を発生させることができるように、すなわち、コイル812の永久磁石811側がN極となりその反対側がS極となる状態と、コイル812の永久磁石811側がS極となりその反対側がN極となる状態とを発生させることができるように設けられている。
【0062】
本実施形態の光スキャナー1は、振動系11の外側に基台12と固定的に設けられたコイル固定部85を有しており、このコイル固定部85が有するX軸方向に延在する突出部851にコイル812が巻き付けられている。このような構成とすることにより、コイル812を振動系11に対して固定でき、かつ、簡単に前述のような磁界を発生させることができる。また、突出部851を鉄などの軟磁性体で構成することにより、突出部851をコイル812の磁心して用いることができ、前述のような磁界をより効率的に発生させることもできる。
【0063】
電源813は、コイル812に電気的に接続されている。そして、電源813からコイル812に所望の電圧を印加することにより、コイル812から前述したような磁界を発生させることができる。本実施形態では、電源813は、交番電圧および直流電圧を選択して印加できるようになっている。また、交番電圧を印加する際には、その強さ、周波数を変更できるようになっており、さらにオフセット電圧(直流電圧)を重畳させることもできるようになっている。
【0064】
以上、光スキャナー1の構成について説明した。次いで、光スキャナー1の作動について説明する。
上述のような構成の光スキャナー1では、少なくとも、可動板2を回動させるパターンと、可動板2を振動させるパターンと、可動板2を所定位置で静止させるパターンとを選択することができる。このように、光スキャナー1が種々のパターンで駆動することができるのは、後述するように、各連結部4、5、6、7の第1の軸部42、52、62、72を屈曲変形させることにより得られる効果である。
【0065】
以下、これら3つのパターンについて順次説明する。なお、以下では、説明の便宜上、永久磁石811、821、831、841が全てN極を上側にして配置された構成について代表して説明する。
[回動]
<Y軸まわりの回動>
図9に基づいて、可動板2のY軸まわりの回動について説明する。なお、図9は、図3中A−A線断面図に対応する断面図である。
まず、コイル812の永久磁石811側がN極、コイル832の永久磁石831側がS極となる第1の状態と、コイル812の永久磁石811側がS極、コイル832の永久磁石831側がN極となる第2の状態とが交互にかつ周期的に切り替わるように、電源813、833からコイル812、832に交番電圧を印加する。電源813、833からコイル812、832に印加される交番電圧は、互いに同じ波形(強さおよび周波数が同じ)であるのが好ましい。
【0066】
図9(a)に示す第1の状態では、永久磁石811のS極がコイル812に引き付けられるとともにN極がコイル812から遠ざかるため、一対の第2の軸部43を捩じり変形させつつ、駆動板41がその上面を可動板2側に向けるように回動中心軸Y2まわりに傾斜する。これとともに、永久磁石831のN極がコイル832に引き付けられるとともにS極がコイル832から遠ざかるため、一対の第2の軸部63を捩じり変形させつつ、駆動板61がその下面を可動板2側に向けるように回動中心軸Y3まわりに傾斜する。すなわち、駆動板41、61がともに図9(a)中時計回りに傾斜する。
【0067】
この駆動板41、61の傾斜とともに、駆動板側軸部423が可動板2側の端を下側に向けるように傾斜し、駆動板側軸部623が可動板2側の端を上側に向けるように傾斜する。これにより、駆動板側軸部423、623の可動板2側の端同士がZ軸方向にずれた状態となる。
そして、駆動板側軸部423、623の可動板2側の端同士がZ軸方向にずれることによって、変形部4211、4212、6211、6212をその中心軸まわりに捩じり変形させるとともに各接続部4214、4215、6214、6215を湾曲変形させながら、可動板側軸部422、622および可動板2が一体的に図9(a)中反時計回りに傾斜する。
【0068】
このように、第1の状態では、連結部4の第1の軸部42がその途中にある応力緩和部421で下側に凸のV字状に屈曲変形(第1の変形)するとともに、連結部6の第1の軸部62がその途中にある応力緩和部621で上側に凸のV字状に屈曲変形(第2の変形)することにより、回動中心軸Y1を中心として、可動板2が図9(a)中反時計回りに傾斜する。
【0069】
一方、図9(b)に示す第2の状態では、前述した第1の状態と逆の変形が起こる。すなわち、第2の状態では、連結部4の第1の軸部42が応力緩和部421で上側に凸のV字状に屈曲変形(第2の変形)するとともに、連結部6の第1の軸部62が応力緩和部621で下側に凸のV字状に屈曲変形(第1の変形)する。これにより、回動中心軸Y1を中心として、可動板2が図7(b)中反時計回りに傾斜する。
このような第1の状態と、第2の状態とを交互にかつ周期的に切り替えることによって、可動板2を回動中心軸Y1まわりに回動させることができる。なお、可動板2の回動中心軸Y1まわりの回動は、連結部5、7が有する可動板側軸部522、722がその中心軸まわりに捩じり変形することによって許容される。
【0070】
なお、コイル812、832に印加する交番電圧の周波数としては特に限定されず、可動板2および連結部4、5、6、7で構成される振動系の共振周波数と等しくても異なっていてもよいが、前記共振周波数と異なっているのが好ましい。すなわち、光スキャナー1を非共振で駆動するのが好ましい。これにより、光スキャナー1のより安定した駆動が可能となる。
【0071】
<X軸まわりの回動>
次いで、図10に基づいて、可動板2のX軸まわりの回動について説明する。なお、図10は、図3中B−B線断面図に対応する断面図である。
まず、コイル822の永久磁石821側がN極、コイル842の永久磁石841側がS極となる第1の状態と、コイル822の永久磁石821側がS極、コイル842の永久磁石841側がN極となる第2の状態とが交互にかつ周期的に切り替わるように、電源823、843からコイル822、842に交番電圧を印加する。電源823、843からコイル822、842に印加される交番電圧は、互いに同じ波形であるのが好ましい。
【0072】
前述した可動板2の回動中心軸Y1まわりの回動と同様に、図10(a)に示す第1の状態では、連結部5の第1の軸部52がその途中にある応力緩和部521で下側に凸のV字状に屈曲変形(第1の変形)するとともに、連結部7の第1の軸部72がその途中にある応力緩和部721で上側に凸のV字状に屈曲変形(第2の変形)することにより、回動中心軸X1を中心として、可動板2が図10(a)中反時計回りに傾斜する。
【0073】
一方、図10(b)に示す第2の状態では、前述した第1の状態と逆の変形が起こる。すなわち、第2の状態では、連結部5の第1の軸部52が応力緩和部521で上側に凸のV字状に屈曲変形(第2の変形)するとともに、連結部7の第1の軸部72が応力緩和部721で下側に凸のV字状に屈曲変形(第1の変形)することにより、回動中心軸X1を中心として、可動板2が図10(b)中反時計回りに傾斜する。
このような第1の状態と、第2の状態とを交互にかつ周期的に切り替えることによって、可動板2を回動中心軸X1まわりに回動させることができる。なお、可動板2の回動中心軸X1まわりの回動は、連結部4、6が有する可動板側軸部422、622がその中心軸まわりに捩じり変形することにより許容される。
【0074】
なお、コイル822、842に印加する交番電圧の周波数としては特に限定されず、可動板2および連結部4、5、6、7で構成される振動系の共振周波数と等しくても異なっていてもよいが、前記共振周波数と異なっているのが好ましい。すなわち、光スキャナー1を非共振で駆動するのが好ましい。これにより、光スキャナー1のより安定した駆動が可能となる。
【0075】
<X軸およびY軸のそれぞれの軸まわりの回動>
前述したようなX軸まわりの回動と、Y軸まわりの回動とを同時かつ独立して行うことにより、可動板2を回動中心軸Y1および回動中心軸X1のそれぞれの軸まわりに2次元的に回動させることができる。前述したように、可動板2の回動中心軸Y1まわりの回動は、可動板側軸部522、722がその中心軸まわりに捩じり変形することによって許容され、可動板2の回動中心軸X1まわりの回動は、可動板側軸部422、622がその中心軸まわりに捩じり変形することにより許容される。
【0076】
X軸およびY軸のそれぞれの軸まわりの回動では、コイル812、822、832、842に印加する交番電圧の周波数としては特に限定されず、可動板2および連結部4、5、6、7で構成される振動系の共振周波数と等しくても異なっていてもよいが、前記共振周波数と異なっているのが好ましい。すなわち、光スキャナー1を非共振で駆動するのが好ましい。これにより、光スキャナー1のより安定した駆動が可能となる。
【0077】
また、可動板2を回動中心軸Y1まわりに回動させるためにコイル812、832に印加する交番電圧の周波数と、可動板2を回動中心軸X1まわり回動させるためにコイル822、842に印加する交番電圧の周波数とは等しくてもよいし異なっていてもよい。例えば、可動板2を回動中心軸X1よりも回動中心軸Y1まわりに速く回動させたい場合には、コイル812、832に印加する交番電圧の周波数を、コイル822、842に印加する交番電圧の周波数よりも高く設定すればよい。
【0078】
また、コイル812、832に印加する交番電圧の強さと、コイル822、842に印加する交番電圧の強さは、等しくても異なっていてもよい。例えば、可動板2を回動中心軸X1よりも回動中心軸Y1まわりに大きく回動させたい場合には、コイル812、832に印加する交番電圧の強さを、コイル822、842に印加する交番電圧の強さよりも強くすればよい。
【0079】
上記では、コイル812、822、832、842に交番電圧を印加する駆動方法について説明したが、次のような駆動方法によっても可動板2を回動させることができる。すなわち、電源813、823、833、843からコイル812、822、832、842に印加される交番電圧に(+)または(−)のオフセット電圧(直流電圧)を重畳してもよい。言い換えれば、永久磁石811、821、831、841のN極がコイル812、822、832、842に引き付けられる強さ(以下、単に「N極引き付け強さ」とも言う)と、永久磁石811、821、831、841のS極がコイル812、822、832、842に引き付けられる強さ(以下、単に「S極引き付け強さ」とも言う)とを異ならせてもよい。
【0080】
以下、具体的に説明するが、前述したような、N極引き付け強さおよびS極引き付け強さが等しい状態を「通常状態」と言う。
コイル812、822、832、842のS極引き付け強さがN極引き付け強さよりも大きい場合には、通常状態と比較して、駆動板41、51、61、71の回動の上死点および下死点(回動方向が切り替わる点)が上側に移動する。その結果、図11に示すように、可動板2の回動中心軸X1、Y1が通常状態に比べて上側に移動する。逆に、コイル812、822、832、842のS極引き付け強さがN極引き付け強さよりも弱い場合には、通常状態と比較して、駆動板41、51、61、71の回動の上死点および下死点がそれぞれ下側に移動するため、可動板2の回動中心軸X1、Y1が通常状態に比べて下側に移動する。
【0081】
このように、電源813、823、833、843からコイル812、822、832、842に印加される交番電圧にオフセット電圧を重畳することにより、可動板2の回動中心軸X1、Y1をZ軸方向にずらすことができる。これにより、例えば、画像形成装置100において、当該画像形成装置100を組み立てた後でも、光源ユニット200から出射されるレーザー光LLの可動板2までの光路長を調整することができる。画像形成装置100の組み立て時には、光源ユニット200と可動板2との位置決めを精密に行うが、仮にこれらの位置が設定値に対してずれしまった場合でも、組み立て後に、光源ユニット200と可動板2との位置を補正することができる。
【0082】
[振動]
まず、コイル812、822、832、842の永久磁石811、821、831、841側がそれぞれN極となる第1の状態と、コイル812、822、832、842の永久磁石811、821、831、841側がそれぞれS極となる第2の状態とが、交互にかつ周期的に切り替わるように、電源813、823、833、843からコイル812、822、832、842に交番電圧を印加する。電源813、823、833、843からコイル812、822、832、842に印加される交番電圧は、互いに同じ波形であるのが好ましい。
【0083】
図12(a)に示す第1の状態では、前述した回動の場合と同様にして、駆動板41、51、61、71は、それぞれ、その上面を可動板2側に向けるように回動中心軸Y2、X2、Y3、X3まわりに傾斜する。このような駆動板41、51、61、71の傾斜に伴って、駆動板側軸部423、523、623、723は、それぞれ、可動板2側の端が下側を向くように傾斜する。これにより、第1の軸部42、52、62、72が応力緩和部421、521、621、721で屈曲しながら、可動板側軸部422、522、622、722および可動板2が一体的にかつ可動板2の姿勢(すなわち面方向)を一定に保ちつつ下側に移動する。
【0084】
一方、図12(b)に示す第2の状態では、駆動板41、51、61、71は、それぞれ、その下面を可動板2側に向けるように回動中心軸Y2、X2、Y3、X3まわりに傾斜する。このような駆動板41、51、61、71の傾斜に伴って、駆動板側軸部423、523、623、723は、それぞれ、可動板2側の端が上側を向くように傾斜する。これにより、第1の軸部42、52、62、72が応力緩和部421、521、621、721で屈曲しながら、可動板側軸部422、522、622、722および可動板2が一体的にかつ可動板2の姿勢を一定に保ちつつ上側に移動する。
このような第1の状態と、第2の状態とを交互に切り替えることによって、可動板2をその姿勢を保ちつつ、すなわち光反射部22の表面をX−Y平面と平行に保ちつつ、Z軸方向に振動させることができる。
【0085】
なお、コイル812、822、832、842に印加する交番電圧の周波数としては特に限定されず、可動板2および連結部4、5、6、7で構成される振動系の共振周波数と等しくても異なっていてもよいが、前記共振周波数と等しいのが好ましい。すなわち、光スキャナー1を共振で駆動するのが好ましい。これにより、光スキャナー1のより安定した駆動が可能となる。
このような振動パターンでも、前述した回動パターンと同様に、コイル812、822、832、842に印加する交番電圧にオフセット電圧を重畳させることにより、自然状態からZ軸方向にシフトして可動板2を振動させることができる。
【0086】
[静止]
例えば、コイル812、822、832、842の永久磁石811、821、831、841側がそれぞれN極となる状態となるように電源813、823、833、843からコイル812、822、832、842に直流電圧を印加する。電源813、823、833、843からコイル812、822、832、842に印加される直流電圧は、互いに同じ強さであるのが好ましい。このような電圧をコイル812、822、832、842に印加すると図12(a)に示すような状態で可動板2が静止する。
逆に、コイル812、822、832、842の永久磁石811、821、831、841側がそれぞれS極となる状態となるように電源813、823、833、843からコイル812、822、832、843に直流電圧を印加すると、図12(b)に示すような状態で可動板2が静止する。
【0087】
このように、可動板2を自然状態とは異なる位置に維持することができる。このような駆動によれば、例えば光反射部22で反射したレーザー光LLの光路を自然状態のときに対してずらすことができるため、例えば、光スキャナー1を光スイッチとして利用するときに特に有効である。
また、例えば、画像形成装置100において、光源ユニット200から異常なレーザー光LLが出射されるなどの理由から、レーザー光LLの装置外部への出射を停止しなければならない場合に、可動板2を自然状態とは異なる位置(レーザー光LLの光路と交わらない位置)に退避させることにより、光反射部22によるレーザー光LLの反射を防止する。これにより、装置外部へのレーザー光LLの出射を防止することができる。また、可動板2を変位させることにより光反射部22で反射されたレーザー光LLの光路を変更することにより、装置外部へのレーザー光LLの出射を防止してもよい。これにより、このような問題を解決するための安全機構を別途組み込まなくてもよくなり、画像形成装置100の製造工程が簡易化されるとともに、製造コストを削減することができる。
【0088】
このような可動板2の静止駆動を応用し、コイル812、822、832、842に印加する直流電圧の強さを互いに異ならせることにより、可動板2を自然状態に対して傾けた状態で維持することもできる。また、コイル812、822、832、842に印加する直流電圧の強さをそれぞれ独立してかつ経時的に変化させることにより、可動板2を連続的または段階的に不規則に変位させることもできる。このような駆動方法は、前述したベクタースキャンによりレーザー光LLを走査する際に有効である。
【0089】
以上、光スキャナー1の駆動について詳細に説明した。
このような光スキャナー1では、可動板2の回動中心軸Y1まわりの回動と回動中心軸X1まわりの回動とを同じ機構で行うことができる。また、光スキャナー1では、可動板2の回動中心軸Y1まわりの回動と回動中心軸X1まわりの回動とを独立して行うことができる。すなわち、光スキャナー1では、回動中心軸Y1の回動が回動中心軸X1まわりの回動に影響を受けず、逆に、回動中心軸X1の回動も回動中心軸Y1まわりの回動に影響を受ない。そのため、光スキャナー1によれば、回動中心軸Y1および可動中心軸X1のそれぞれの軸まわりに可動板2を安定して回動させることができる。
【0090】
また、前述したように、光スキャナー1では、可動板2の回動中心軸Y1まわりの回動は、可動板側軸部522、722がその中心軸まわりに捩じり変形することによって許容され、可動板2の回動中心軸X1まわりの回動は、可動板側軸部422、622がその中心軸まわりに捩じり変形することにより許容される。このように、各連結部4、5、6、7が中心軸まわりに捩じり変形可能な可動板側軸部422、522、622、722を有しているため、可動板2を回動中心軸Y1、X1のそれぞれの軸まわりにスムーズに回動させることができる。
さらには、光スキャナー1では、可動板側軸部422、522、622、722が直接、可動板2に接続されているため、よりスムーズに、可動板2を回動中心軸Y1、X1のそれぞれの軸まわりに回動させることができたり、Z軸方向へ振動させたりすることができる。
【0091】
また、光スキャナー1では、連結部4において、前述のように捩じり変形する可動板側軸部422と変形させたくない駆動板側軸部423との間に応力緩和部421を設けている。そのため、前述の捩じり変形により生じた応力は、応力緩和部421の変形部4211、4212や接続部4214、4215が変形することにより吸収・緩和され、駆動板側軸部423に伝わらない。すなわち、応力緩和部421を設けることにより、可動板2の回動中に駆動板側軸部423がその中心軸まわりに捩じり変形してしまうのを確実に防止することができる。このことは、連結部4以外の他の連結部5、6、7についても同様である。そのため、可動板2を可動板2を回動中心軸Y1、X1のそれぞれの軸まわりにスムーズに回動させることができる。
【0092】
さらには、各駆動板側軸部423、523、623、723の破壊が効果的に防止される。すなわち、棒状の部材において、自然状態からZ軸方向の応力が加わったときの破壊強度よりも、中心軸まわりの捩じり変形が生じている状態からZ軸方向の応力が加わったときの破壊強度の方が低いことが技術的に明らかになっている。そのため、上述のように、応力緩和部421、521、621、721を設け、駆動板側軸部423、523、623、723に捩じり変形を生じさせないことにより、駆動板側軸部423、523、623、723の破壊を効果的に防止することができる。
【0093】
また、連結部4において、駆動板側軸部423が実質的に変形しないため、駆動板41の回動によって生じる応力を効率よく可動板2の回動に用いることができる。このことは連結部5、6、7についても同様である。そのため、可動板2を大きい回動角度でしかも省電力で回動させることができたり、大きい振幅でZ軸方向に振動させたりすることができる。
【0094】
また、連結部4において、応力緩和部421が非変形部4213を有しているため、この非変形部4213を軸にして第1の軸部42を屈曲させることができる。このことは、連結部5、6、7についても同様である。そのため、各連結部4、5、6、7の第1の軸部42、52、62、72を簡単かつ確実に屈曲させることができ、可動板2を安定して回動、振動させることができる。
【0095】
また、連結部4において、応力緩和部421が可動板側軸部422と連結する変形部4211と、駆動板側軸部423と連結する変形部4212とを有し、第1の軸部42の屈曲時に、変形部4211、4212がその中心軸まわりに捩じり変形することにより、屈曲により発生する応力を効果的に緩和している。このことは、連結部5、6、7についても同様である。そのため、各連結部4、5、6、7の第1の軸部42、52、62、72を確実に屈曲させることができるとともに、第1の軸部42、52、62、72の破壊を防止することができる。すなわち、光スキャナー1を安定して駆動することができる。
【0096】
また、連結部4において、応力緩和部421が一対の変形部4211、4212を有しているため、次のような効果も発揮することができる。すなわち、例えば、通電によりコイル812から発生する熱や光反射部22に照射されるレーザー光LLによって生じる熱等による可動板側軸部422および駆動板側軸部423の熱膨張を、変形部4211、4212が変形することにより許容することができる。このことは、連結部5、6、7についても同様である。そのため、光スキャナー1は、振動系11に応力が残留してしまうのを防止または抑制することができ、温度によらずに所望の振動特性を発揮することができる。
【0097】
ここで、光スキャナー1の構成の説明に戻るが、連結部4、6について、回動中心軸Y1と非変形部4213の中心軸Y4の離間距離および回動中心軸Y1と非変形部6213の中心軸Y5の離間距離をそれぞれL1とし、中心軸Y5と回動中心軸Y2の離間距離および中心軸Y5と回動中心軸Y3の離間距離をそれぞれL2としたとき、L1とL2の大小関係は特に限定されず、L1>L2の関係を満たしていてもよく、L1=L2の関係を満たしていてもよく、L1<L2の関係を満たしていてもよい。
【0098】
L1=L2の場合には、回動中心軸Y1まわりに可動板2を回動させた際、すなわち第1の軸部42が屈曲した際のX軸に対する可動板側軸部422の傾きと駆動板側軸部423の傾きが等しくなる。そのため、この場合には、応力緩和部421の一対の変形部4211、4212にほぼ等しいトルクがかかることとなる。また、駆動板41の回動角と可動板2の回動角がほぼ等しくなる。このことは、連結部6の第1の軸部62についても同様である。したがって、第1の軸部42、62をより効率的に屈曲させることができ、また、可動板2の回動角の制御を行い易いため、可動板2を回動中心軸Y1まわりに安定して回動等させることができる。
【0099】
また、L1=L2の場合には、前述したように、変形部4211、4212にほぼ等しいトルクがかかることとなるため、変形部4211、4212を互いに同じ形状で、互いに同じ物理的特性(捩じり変形のし易さ)を示すように構成するのが好ましい。これにより、変形部4211、4212のいずれか一方に過度な捩じれが生じたり、反対にいずれか一方の捩じれが不足したりするのを防止でき、第1の軸部42をスムーズに屈曲することができる。このことは、連結部6についても同様である。
【0100】
L1>L2の場合には、L1=L2の場合と比較して可動板2の回動角が小さくなるが、可動板2の姿勢をより高精度に制御することができる。すなわち、この場合には、第1の軸部42が屈曲した際のX軸に対する可動板側軸部422の傾きが駆動板側軸部423の傾きよりも小さくなる。このことは、連結部6についても同様である。そのため、駆動板41、61を回動角に対して可動板2の回動角が小さくなる。これにより、可動板2の回動角や静止時の傾きを高精度に制御することができる。
【0101】
また、L1>L2の場合には、前述したように、第1の軸部42が屈曲した際のX軸に対する駆動板側軸部423の傾きが可動板側軸部422の傾きよりも大きくなるため、変形部4212に加わるトルクが、変形部4211に加わるトルクよりも大きくなる。したがって、この場合には、変形部4212が変形部4211よりも捩じり変形し易くなるように構成するのが好ましい。具体的には、例えば、変形部4212の幅を捩じり変形部4211の幅よりも細くするのが好ましい。これは、前述したように、連結部4は、SOI基板500をその厚さ方向にエッチングすることにより形成されるため、SOI基板500の面方向と一致する幅の制御は、簡単かつ、工程を増やさずに行うことができるためである。このことは、連結部6についても同様である。
【0102】
L1<L2の場合には、L1=L2の場合と比較して可動板2の回動角を大きくすることができる。すなわち、この場合には、第1の軸部42が屈曲した際のX軸に対する可動板側軸部422の傾きが駆動板側軸部423の傾きよりも大きくなる。このことは、連結部6についても同様である。そのため、駆動板41、61を回動角に対して可動板2の回動角が大きくなる。これにより、可動板2の回動角や静止時の傾きを大きくすることができる。
また、L1<L2の場合には、L1>L2の場合とは逆に、変形部4211が変形部4212よりも捩じり変形し易くなるように構成するのが好ましい。このことは、連結部6についても同様である。
【0103】
以上、連結部4、6について説明したが、連結部5、7についても同様のことが言える。すなわち、回動中心軸X1と非変形部5213の中心軸X4の離間距離および回動中心軸X1と非変形部7213の中心軸X5の離間距離をそれぞれL3とし、中心軸X4と回動中心軸X2の離間距離および中心軸X5と回動中心軸X3の離間距離をそれぞれL4としたとき、L3とL4の大小関係は特に限定されず、L3>L4の関係を満たしていてもよく、L3=L4の関係を満たしていてもよく、L3<L4の関係を満たしていてもよい。なお、L3>L4、L3=L4およびL3<L4の場合の効果は、それぞれ、上述したL1>L2、L1=L2およびL1<L2の場合の効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0104】
L1、L2の関係とL3、L4の関係は、一致していてもよいし、一致していなくてもよい。すなわち、L1=L2かつL3=L4、L1>L2かつL3>L4、L1<L2かつL3<L4であってもよいし、L1=L2かつL3>L4、L1>L2かつL3=L4、L1>L2かつL3<L4等であってもよい。また、L1とL3およびL2とL4は、それぞれ、等しくても異なっていてもよい。
このように、光スキャナー1では、L1、L2、L3、L4の長さや関係を変化させることにより、異なる効果を発揮することができる。そのため、光スキャナー1は、優れた利便性を有している。Lなお、1、L2、L3、L4の長さや関係は、光スキャナー1の使用用途(求められる特性)に基づいて適宜設定すればよい。
【0105】
(駆動手段300)
次に、駆動手段300について説明する。
図13に示すように、画像形成装置100では、光源ユニット200および光スキャナー1が支持部400に支持されている。この支持部400は、軸部410を有し、この軸部410が軸受420を介して、取り付け部430に取り付けられている。取り付け部430は、例えば、画像形成装置100の筐体(図示せず)に固定的に設けられている。そして、駆動手段300は、光源ユニット200および光スキャナー1を支持部400ごと所定の軸線Jまわりに回動させる。このように光源ユニット200および光スキャナー1を一体的に回動させることにより、光源ユニット200および可動板2(回動中心軸X1、Y1の交点)の相対的位置関係を保ったまま、すなわち光源ユニット200および光スキャナー1のアライメント調整を要することなく、レーザー光LLの走査領域(画像が表示される領域)を変更することができる。
なお、所定の軸線Jは、例えば、光スキャナー1の回動中心軸X1、Y1のいずれか一方と直交するように設けられていてもよいし、ずれにも直交せずかつ平行でもないように設けられていてもよい。
【0106】
駆動手段300は、前述した支持部400に設けられた第1ギア310と、この第1ギア310に噛合する第2ギア320と、第2ギア320を回転させるモーター330とで構成されている。第1ギア310は、軸部410の周方向に沿って形成された複数の歯を有している。一方、第2ギア320は、モーター330の軸部331に取り付けられ、軸部331の周方向に沿って形成された複数の歯を有し、この歯が第1ギア310に噛合している。
【0107】
モーター330は、取り付け部430に取り付けられ、第2ギア320を回転させる。より具体的に説明すると、図14(a)に示すように、モーター330が第2ギア320を反時計回りに所定角度回転させることにより、支持部400を軸部410まわりに時計回りに回転させ、第1の状態とする。一方、図14(b)に示すように、モーター330が第2ギア320を時計回りに所定角度回転させることにより、支持部400を軸部410まわりに反時計回りに回転させ、第2の状態とする。
このようなモーター330を備える駆動手段300は、画像形成装置100を比較的簡単かつ安価なものとすることができる。
【0108】
以上、画像形成装置100の構成について説明した。このような画像形成装置100では、駆動手段300が設けられているため、以下に詳述するように、光スキャナー1をスクリーンSの近傍に設置しつつ、レーザー光LLを走査(照射)することのできる領域(光走査領域)を大きくすることができる。
すなわち、図15に示すように、例えば駆動手段300を駆動させず支持部400を固定した状態で光スキャナー1によってレーザー光LLを走査することのできる領域がS1であるのに対して、駆動手段300を駆動し支持部400を回動させながら光スキャナー1によってレーザー光LLを走査することのできる領域はS2である。このように、画像形成装置100によれば、従来のもの(駆動手段300が設けられていないもの)と比較して、光走査領域を大きくすることができる。また、画像形成装置100は、駆動手段300を駆動させるか否か、駆動させる場合には、支持部400の回動角を何度にするのかを適宜設定することにより光走査領域の大きさをS1からS2の間で適宜変更することができる点で利便性に優れてもいる。
【0109】
このような画像形成装置100は、例えば、次のようにしてスクリーンSに画像を表示する。図15に示すように、スクリーンS上に「SEIKO EPSON」なる文字列を表示したい場合には、画像形成装置100は、駆動手段300を駆動して支持部400を回動させるとともに、この支持部400の回動と同期して光源ユニット200から所望の色のレーザー光LLを出射し光スキャナー1でベクタースキャンすることにより、スクリーンS上に「SEIKO EPSON」なる文字列を表示する。この際、光スキャナー1は、可動板2を回動中心軸X1、Y1のそれぞれの軸周りに不規則に回動させ、「SEIKO EPSON」の各文字をなぞるように、または各文字の輪郭をなぞるようにレーザー光LLを走査する。このような走査方法(ベクタースキャン)によれば、レーザー光LLを照射したい領域にのみレーザー光を走査することがえきるため、効率的に、スクリーンS上に画像を表示することができる。
【0110】
<第2実施形態>
次に、本発明の画像形成装置の第2実施形態について説明する。
図16は、本発明に係る第2実施形態の画像形成装置が有する光スキャナーの平面図である。
以下、第2実施形態の画像形成装置について、前述した実施形態の画像形成装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0111】
第2実施形態の画像形成装置は、光スキャナーが有するコイル固定部の構成が異なる以外は、第1実施形態の画像形成装置とほぼ同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
本実施形態の光スキャナー1では、コイル固定部85Aは、コイル812および永久磁石811を囲むように(第1の軸部42に当たる部分を欠損させて)形成された本体部852Aを有している。このような本体部852Aは、コイル812から発生する磁力が永久磁石811に作用しつつ、コイル固定部85Aの外側に漏れ出すのを防止または抑制する。すなわち、本体部852Aは、防磁性を有している。これにより、例えば、コイル812から発生した磁界が反対側の永久磁石821、831、841に作用するのを防止することができ、光スキャナー1を安定して駆動することができる。
【0112】
本体部852Aの構成は、前述の効果を発揮することができれば特に限定されず、例えば、防磁性の材料で構成されていてもよいし、表面に防磁性の塗料が塗布されていてもよい。
なお、コイル822、832、842を固定する図示しないコイル固定部についても、コイル固定部85Aと同様の構成である。
このような第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0113】
<第3実施形態>
次に、本発明の画像形成装置の第3実施形態について説明する。
図17は、本発明に係る第3実施形態の画像形成装置が有する光スキャナーの平面図である。
以下、第3実施形態の画像形成装置について、前述した実施形態の画像形成装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0114】
第3実施形態の画像形成装置は、光スキャナーが有する変位手段の構成が異なる以外は、前述した画像形成装置とほぼ同様である。なお、本実施形態では、変位手段が有する第1の変位手段、第2の変位手段、第3の変位手段および第4の変位手段の構成が互いに同様であるため、第1の変位手段について代表して説明し、第2の変位手段、第3の変位手段および第4の変位手段については、その説明を省略する。また、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0115】
図17に示すように、第1の変位手段81Bは、永久磁石811Bと、コイル812Bと、電源813Bとを有している。永久磁石811Bは、平板状をなしており、駆動板41の下面(基台12側の面)に固定されている。また、永久磁石811Bは、駆動板41に固定された状態で、回動中心軸Y2に対してS極とN極とが対向するように設けられている。
【0116】
コイル812Bは、永久磁石811Bの下側に設けられている。このコイル812Bは、電源813Bから電圧が印加されることにより、X軸方向の磁界を発生させることができる。そして、コイル812Bから発生した磁界の作用により、永久磁石811BのS極およびN極の一方をコイル812Bに引き寄せ、他方をコイル812Bから遠ざけることにより、駆動板41を回動中心軸Y2まわり傾斜させることができる。
このような第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0117】
<第4実施形態>
次に、本発明の画像形成装置の第4実施形態について説明する。
図18は、本発明に係る第4実施形態の画像形成装置が有する光スキャナーの斜視図である。
以下、第4実施形態の画像形成装置について、前述した実施形態の画像形成装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0118】
第4実施形態の画像形成装置は、光スキャナーが有する各連結部の応力緩和部の非変形部の構成が異なる以外は、前述した画像形成装置とほぼ同様である。なお、本実施形態では、各連結部4、5、6、7における非変形部の構成が互いに同様であるため、連結部4について代表して説明し、連結部5、6、7については、その説明を省略する。また、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0119】
図18に示すように、連結部4Cの応力緩和部421Cでは、非変形部4213Cが一対設けられている。一対の非変形部4213Cは、互いにY軸方向に離間し、Y軸と平行な1つの軸線上に位置している。このような構成の連結部4Cでも、一対の非変形部4213C結んだ線分を軸にして第1の軸部42Cを局所的に屈曲させることができる。
このような第4実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0120】
<第5実施形態>
次に、本発明の画像形成装置の第5実施形態について説明する。
図19は、本発明に係る第5実施形態の画像形成装置が有する光スキャナーの断面図である。
以下、第5実施形態の画像形成装置について、前述した実施形態の画像形成装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第5実施形態の画像形成装置は、光スキャナーが有する振動系の向きおよび可動板の構成が異なる以外は、前述した画像形成装置とほぼ同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0121】
図19に示すように、本実施形態では、振動系11の向きが前述した実施形態に対して逆になっている。すなわち、前述した実施形態で基台12側に位置していた面が基台12と反対側に位置し、基台12と反対側に位置していた面が基台12側に位置するように設けられている。
また、本実施形態では、可動板2Dは、各連結部4、5、6、7と連結する基部23Dと、柱部24Dを介して基部23Dに固定された光反射板25Dとを有している。このような可動板2Dでは、光反射板25Dの上面に光反射部22が設けられている。可動板2をこのような構成とすることにより、光スキャナー1の大型化を防止しつつ、光反射部22の面積を大きくすることができる。これにより、光反射部22で、より光束の太いレーザー光LLを反射することができる。また、光反射部22での光反射によって発生する熱を各連結部4、5、6、7に伝達し難くすることができ、連結部4、5、6、7の熱膨張を抑制することができる。各連結部4、5、6、7への熱の伝達を防止するという観点からすれば、柱部24Dを優れた断熱性を有する材料で構成してもよい。
【0122】
なお、光反射板25Dの形状および大きさとしては、光スキャナー1の駆動を阻害しない限り、如何なるものであってもよいが、例えば、X軸方向において一対の非変形部4213、6213間に収まり、Y軸方向において一対の非変形部5213、7213間に収まるような形状および大きさであるのが好ましい。これにより、各連結部4、5、6、7の第1の軸部42、52、62、72が屈曲した際、駆動板側軸部423、523、623、723のいずれかと光反射板25Dとが接触してしまうのを確実に防止することができる。
【0123】
具体的に、光反射板25Dの平面視形状としては、例えば、一対の非変形部4213、6213の離間距離よりも小さい直径の円形であることが好ましい。また、X軸方向の長さが一対の非変形部4213、6213の離間距離より短く、Y軸方向の長さが一対の非変形部5213、7213の離間距離より短い矩形でることも好ましい。
このような第5実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0124】
<第6実施形態>
次に、本発明の画像形成装置の第6実施形態について説明する。
図20は、本発明の第6実施形態にかかる画像形成装置が有する光スキャナーを示す平面図、図21は、図20に示す光スキャナーが有する連結部の拡大斜視図である。
以下、第6実施形態の画像形成装置について、前述した実施形態の画像形成装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第6実施形態の画像形成装置は、光スキャナーが有する応力緩和部の構成が異なる以外は、前述した光スキャナーとほぼ同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0125】
図20に示すように、各連結部4、5、6、7が有する応力緩和部421E、521E、621E、721Eは、それぞれ、X軸方向およびY軸方向に交互に延在するように蛇行したミアンダー構造をなしている。これら応力緩和部421E、521E、621E、721Eは、互いに同様の構成であるため、以下では、応力緩和部421Eについて代表して説明し、他の応力緩和部521E、621E、721Eについては、その説明を省略する。
【0126】
図21に示すように、応力緩和部421Eは、可動板側軸部422に接続され、X軸方向に延在する第1の延在部4211Eと、第1の延在部4211Eの端部からY軸方向に向けて延出する第2の延在部4212Eと、第2の延在部4212Eの端部からX軸方向に向けて延出する第3の延在部4213Eと、第3の延在部4213Eの端部からY軸方向に向けて延出する第4の延在部4214Eと、第4の延在部4214Eの端部からX軸方向に延出する第5の延在部4215Eと、第5の延在部4215Eの端部からY軸方向に延出する第6の延在部4216Eと、第6の延在部4216Eの端部からX軸方向に延出し駆動板側軸部423に接続される第7の延在部4217Eとを有している。
【0127】
X軸方向に延在する4つの延在部4211E、4213E、4215E、4217Eのうちの第1の延在部4211E、4217Eは、それぞれ、XY平面視にて回動中心軸X1上に設けられており、第3の延在部4213Eおよび第5の延在部4215Eは、XY平面視(図15の平面視)にて、回動中心軸X1に対して互いに反対側に設けられている。なお、第3の延在部4213Eおよび第5の延在部4215Eの回動中心軸X1との離間距離は互いに等しいことが好ましい。
【0128】
一方、Y軸方向に延在する3つの延在部4212E、4214E、4216Eのうちの第4の延在部4214Eは、XY平面視にて、回移動中心軸X1を跨いで設けられており、第2の延在部4212Eおよび第6の延在部4216Eは、XY平面視にて、回動中心軸X1に対して互いに反対側に設けられている。なお、これら3つの延在部4212E、4214E、4216Eは、X軸方向に等ピッチで並んでいるのが好ましい。すなわち第2の延在部4212Eと第4の延在部4214Eの離間距離と、第4の延在部4214と第6の延在部4216Eの離間距離が等しいことが好ましい。
【0129】
以上説明した7つの延在部4211E〜4217Eは、それぞれ、その中心軸まわりに捩じり変形可能であり、また湾曲変形可能でもある。例えば、これら7つの延在部4211E〜4217Eは、それぞれ、前述した第1実施形態の図6および図7で示す第2のSiO基板530にて構成されている。
このような応力緩和部421Eでは、各延在部4211E〜4217Eが捩じり変形および湾曲変形の少なくとも一方の変形をすることにより、第4の延在部4214Eを軸にして第1の軸部42を屈曲させることができ、また、可動板側軸部422の捩じり変形により生じる応力を緩和することができる。
以上、応力緩和部421Eについて説明した。
【0130】
本実施形態では、応力緩和部721E、521E、621Eは、それぞれ、応力緩和部421Eを図20中時計回りに90°、180°、270°回転させた構成となっている。すなわち、可動板2を介して対向する応力緩和部421E、621Eが可動板2に対して回転対称であり、可動板2を介して対向する応力緩和部521E、721Eが可動板2に対いて回転対称である。
【0131】
なお、応力緩和部421Eは、7本の延在部がX軸方向とY軸方向に交互に延在する構成であるが、延在部の本数は、これに限定されず、例えば、11本や15本であってもよい。ただし、X軸方向に延在する複数の延在部のうち、回動中心軸X1に対して一方側にある延在部の数と、他方側にある延在部の数とが等しいことが好ましい。
このような第6実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0132】
<第7実施形態>
次に、本発明の画像形成装置の第6実施形態について説明する。
図22は、本発明に係る第6実施形態の画像形成装置が有する光スキャナーを示す斜視図である。
以下、第6実施形態の画像形成装置について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第6実施形態の画像形成装置は、光スキャナーを回動させる機構が異なる以外は、第1実施形態とほぼ同様である。なお、図22にて、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0133】
図22に示すように、本実施形態では、光スキャナー1のみが支持部400に支持されている。すなわち、前述した第1実施形態とは異なり、光源ユニット200は、支持部400に支持されていない。この支持部400は、モーター330の軸部331に取り付けられ、光スキャナー1を支持部400ごと所定の軸線J2まわりに回動するようになっている。また、本実施形態では、軸線J2まわりの光スキャナー1の回動は、光スキャナー1の可動板2の回動中心軸X1および回動中心軸Y2の交点と、光源ユニット200との相対的位置関係(すなわち、レーザー光LLの光路長)を一定に保ちつつ行われるように設計されている。これにより、光源ユニット200および光スキャナー1のアライメント調整を要することなく、レーザー光LLの走査領域を変更することができる。
このような第7実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0134】
以上、本発明の画像形成装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の画像形成装置では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。また、本発明の画像形成装置では、前述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0135】
また、前述した実施形態では、光スキャナーが有する変位手段の構成として永久磁石と電磁コイルとを用いた電磁駆動を採用した構成について説明したが、可動板を前述のように変位させることができれば、これに限定されず、例えば、変位手段として、静電駆動、圧電駆動を採用してもよい。
また、前述した実施形態では、光スキャナーが有する各連結部の第1の軸部が応力緩和部を有する構成について説明したが、これに限定されず、応力緩和部を省略してもよい。すなわち、各連結部の第1の軸部は、可動板側軸部と駆動板側軸部とが直接接続されていてもよい。
【0136】
また、前述した実施形態では、光スキャナーの駆動時に、各連結部の駆動板側軸部が変形しない構成について説明したが、これに限定されず、例えば、Z軸方向に曲げ変形(湾曲変形)するように構成されていてもよい。
また、前述した実施形態では、SOI基板の厚さを異ならせることにより各連結部の変形させる部位(第2の軸部、可動板側軸部、変形部および接続部)と変形させない部位(駆動板、駆動板側軸部および非変形部)とを作り分けているが、これに限定させず、例えば、幅を異ならせることにより、変形させる部位と変形させない部位とを作り分けてもよい。
【符号の説明】
【0137】
1……光スキャナー 11……振動系 12……基台 121……基部 122……枠部 2、2D……可動板 21……面 22……光反射部 23D……基部 24D……柱部 25D……光反射板 3……支持部 4、4C、5、6、7……連結部 41、51、61、71……駆動板 42、42C、52、62、72……第1の軸部 421、421C、421E、521、521E、621、621E、721、721E……応力緩和部 4211、4212、5211、5212、6211、6212、7211、7212……変形部 4213、4213C、5213、6213、7213……非変形部 4214、4215、5214、5215、6214、6215、7214、7215……接続部 4211E……第1の延在部 4212E……第2の延在部 4213E……第3の延在部 4214E……第4の延在部 4215E……第5の延在部 4216E……第6の延在部 4217E……第7の延在部 422、522、622、722……可動板側軸部 423、523、623、723……駆動板側軸部 43、53、63、73……第2の軸部 8……変位手段 81、81B……第1の変位手段 82……第2の変位手段 83……第3の変位手段 84……第4の変位手段 811、811B、821、831、841……永久磁石 812、812B、822、832、842……コイル 813、813B、823、833、843……電源 85、85A……コイル固定部 851……突出部 852A……本体部 100……画像形成装置 200……光源ユニット 210r……赤色光源装置 210g……青色光源装置 210b……緑色光源装置 220r、220g、220b……コリメーターレンズ 230r、230g、230b……ダイクロイックミラー 300……駆動手段 310……第1ギア 320……第2ギア 330……モーター 331……軸部 400……支持部 410……軸部 411…貫通孔 420……軸受 430……取り付け部 500……SOI基板 510……第1のSi層 520……SiO層 530……第2のSi層 M1、M2……SiO膜 X1〜X3、Y1〜Y3……回動中心軸 X4、X5、Y4、Y5……中心軸 J1、J2……所定の軸線 S……スクリーン S1、S2……光走査領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光出射部と、
前記光出射部から出射した光を反射する光反射部を有し、該光反射部を互いに直交する第1の軸および第2の軸にそれぞれ回動させて、前記光反射部で反射した前記光を前記第1の軸および前記第2の軸にそれぞれ走査する光スキャナーと、
前記第1の軸および第2の軸の交点と前記光出射部との相対的位置関係を一定に保ちつつ、前記光スキャナーを所定の軸線まわりに回動させる駆動手段とを有し、
前記光スキャナーは、前記光反射部を備える可動板と、前記可動板を支持する支持部と、前記可動板および前記支持部を連結する4つの連結部とを有し、
前記4つの連結部は、前記可動板の平面視にて、前記可動板の外周に、周方向に沿って90度間隔で設けられており、
各前記連結部は、前記可動板と離間配置され前記支持部に対して回動可能な駆動部と、前記可動板および前記駆動部を連結する軸部とを有し、
各前記連結部の前記軸部は、前記駆動部の回動によって、前記可動板との離間方向の途中で前記可動板の厚さ方向に屈曲変形するように構成されており、
各前記軸部を独立して前記屈曲変形させることにより、前記可動板が前記第1の軸および前記第2の軸のそれぞれの軸まわりに回動するように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記光スキャナーは、前記光反射部で反射した光を照射する表示面上の異なる2点間を結ぶ線分を順次形成するベクター走査により前記光を走査する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記光出射部および前記光スキャナーを互いの相対的位置関係を維持した状態で支持する支持部を有し、
前記駆動手段は、前記光出射部および前記光スキャナーを前記支持部ごと回動可能に構成されている請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、モーターを備える請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記可動板の平面視にて直交する2軸をX軸およびY軸としたとき、
前記4つの連結部は、前記可動板を介してX軸方向に対向する第1の連結部および第2の連結部と、前記可動板を介してY軸方向に対向する第3の連結部および第4の連結部を有し、
前記第1の連結部および前記第2の連結部は、それぞれ、前記可動板とX軸方向に離間配置された前記駆動部と、前記可動板と前記駆動部とを連結しX軸方向に延在する前記軸部である第1の軸部と、前記駆動部と前記支持部とを連結しY軸方向に延在する第2の軸部とを有し、
前記第3の連結部および前記第4の連結部は、それぞれ、前記可動板とY軸方向に離間配置された前記駆動部と、前記可動板と前記駆動部とを連結しY軸方向に延在する前記軸部である第1の軸部と、前記駆動部と前記支持部とを連結しX軸方向に延在する第2の軸部とを有している請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記X軸および前記Y軸に直交する軸をZ軸としたとき、
前記4つの連結部の前記第1の軸部は、それぞれ、Z軸方向の一方側に凸のV字状となるように屈曲する第1の変形と、Z軸方向の他方側に凸のV字状となるように屈曲する第2の変形とをし得る請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1の連結部の前記第1の軸部に前記第1の変形をさせるとともに、前記第2の連結部の前記第1の軸部に前記第2の変形をさせる状態と、前記第1の連結部の前記第1の軸部に前記第2の変形をさせるとともに、前記第2の連結部の前記第1の軸部に前記第1の変形をさせる状態とを交互に繰り返すことにより、前記可動板を前記Y軸まわりに回動させ、
前記第3の連結部の前記第1の軸部に前記第1の変形をさせるとともに、前記第4の連結部の前記第1の軸部に前記第2の変形をさせる状態と、前記第3の連結部の前記第1の軸部に前記第2の変形をさせるとともに、前記第4の連結部の前記第1の軸部に前記第1の変形をさせる状態とを交互に繰り返すことにより、前記可動板を前記X軸まわりに回動させる請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記4つの連結部の前記第1の軸部は、それぞれ、前記可動板と前記駆動部の間に設けられた応力緩和部と、前記応力緩和部と前記可動板とを連結する可動板側軸部と、前記応力緩和部と前記駆動部とを連結する駆動部側軸部とを有し、前記応力緩和部で屈曲する請求項5ないし7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記4つの連結部の前記可動板側軸部は、それぞれ、該可動板側軸部の中心軸まわりに捩じり変形する請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記4つの連結部の前記駆動部側軸部は、それぞれ、変形しない請求項8または9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記4つの連結部の前記応力緩和部は、それぞれ、前記可動板の平面視にて、可動板側軸部および駆動部側軸部の延在方向に直交する方向に延在し、中心軸まわりに捩じり変形する変形部を有している請求項8ないし10のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記4つの連結部の前記応力緩和部は、それぞれ、前記変形部を一対有し、
前記一対の変形部のうちの一方の前記変形部は、前記可動板側軸部に連結され、他方の前記変形部は、前記駆動部側軸部に連結されている請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記4つの連結部の前記応力緩和部は、それぞれ、前記一対の変形部の間に設けられ、前記変形部の延在方向と平行な方向に延在し、中心軸まわりに捩じり変形しない非変形部を有している請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記4つの連結部の前記応力緩和部は、それぞれ、前記X軸方向および前記Y軸方向に交互に延在して蛇行する部位を有している請求項5ないし7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記4つの連結部の前記応力緩和部は、それぞれ、前記X軸方向に延在する複数の延在部と、Y軸方向に延在する複数の延在部とを有し、前記複数の延在部は、それぞれ、中心軸まわりに捩じり変形可能であるとともに湾曲変形可能である請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記4つの連結部は、それぞれ、第1のSi層、SiO層および第2のSi層をこの順で積層してなるSOI基板から形成されている請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記4つの連結部の前記非変形部、駆動部側軸部および駆動部は、それぞれ、前記第1のSi層、前記SiO層および前記第2のSi層で構成されており、前記可動板側軸部、前記変形部および前記第2の軸部は、それぞれ、前記第2のSi層で構成されている請求項16に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記可動板を前記支持部に対して変位させる変位手段を有し、
前記変位手段は、前記4つの連結部に対応して4つ設けられている請求項5ないし17のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記4つの変位手段は、それぞれ、対応する前記駆動部に設けられた永久磁石と、前記永久磁石に作用する磁界を発生するコイルとを有している請求項18に記載の画像形成装置。
【請求項20】
前記4つの変位手段において、前記永久磁石は、前記可動板の厚さ方向に両極が対向するように設けられており、前記コイルは、前記可動板の厚さ方向に直交する方向の磁界を発生させるように設けられている請求項19に記載の画像形成装置。
【請求項21】
前記4つの変位手段の前記永久磁石は、それぞれ、前記駆動部を貫通して設けられている請求項19または20に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−175045(P2011−175045A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37998(P2010−37998)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】