説明

画像形成装置

【課題】リサイクルトナーを用いる際の混色が発生する問題に鑑み、混色を確実に防止してリサイクルトナーの使用を可能にする構成を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】ブラック画像以外の色画像の作像部を中間転写ベルトの展張面に並置し、ブラック画像の作像部Kは他の色画像の作像部と独立して配置され、ブラック画像用転写手段12に転写された画像を転写材にそのまま転写する構成を備えた画像形成装置において、ブラック画像用転写手段12から回収される転写残トナーのうちで、紙粉が含まれている転写残トナーは現像装置に還流される搬送路とは別に設けられている廃棄路に向け搬送する構成13を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、さらに詳しくは、転写後の転写残トナー(以下、便宜上、未転写トナーともいう)をリサイクルする回収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタあるいはファクシミリ装置や印刷機などの画像形成装置においては、潜像担持体である感光体に対して形成された静電潜像を現像装置により可視像処理し、可視像をシートなどに転写することにより記録出力を得ることができる。
【0003】
感光体は、単一色のみを対象として1個設ける構成だけでなく、複数の色毎の画像を形成するために複数設置されている作像部にそれぞれ設けられた構成とする場合があり、後者の場合にはフルカラー画像を含む多色画像を形成する場合に用いられる。
【0004】
例えば、フルカラー画像を得る方式としては、色分解に対する補色関係にある色のトナーにより可視像処理されたトナー像を記録紙などの転写材に対して順次直接転写する方式や、転写材の代わりに中間転写ベルトなどの中間転写体を設けてこの中間転写体にトナー像を順次転写し、重畳転写された画像を記録紙などの転写材に対して一括転写する方式がある。
【0005】
一方、複数の感光体を用いる場合の構成の一つとして、中間転写体が用いられる構成には、中間転写体の移動方向に沿って色毎の画像を形成可能な感光体が装備されている作像ユニットが並列された構成があり、この構成は、タンデム方式と称されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
画像形成装置、特に、フルカラー画像を形成可能な画像形成装置においては、常にフルカラー画像が求められるわけではなく、例えば、モノクロ画像やピクトリアルフルカラー画像あるいは色調を整える等の目的で黒色トナーを頻繁に用いる場合がある。
【0007】
近年、資源の確保を目的として、転写後の像担持体に残留するトナーを回収して再度、現像に用いるリサイクルトナーの使用が実用化されてきている。
【0008】
リサイクルトナーの使用は、フルカラー画像形成を対象とした場合にも適用される。
トナーの色の数だけ像担持体を設けたタンデム方式の場合、各クリーニング手段では像担持体に対応した色のトナーをクリーニングするので、回収したトナーをその色の現像装置に戻して画像形成に再使用することは容易である。
しかし、各色の画像形成システムが互いに独立しているため、タンデム方式では理想的には混色が起こらないはずであるが、現実にはこの混色は避けられない状況となっている。この混色は、像担持体から転写材への各色のトナー像の転写工程で生じる。
【0009】
以下、混色の発生理由について説明する。
フルカラー画像形成のための方式の一つであるタンデム方式においては、転写ベルトで搬送される転写材上に、各色の像担持体からトナー像を重複転写して転写材上にカラー画像を形成する場合を例にとると、2色目以降の像担持体上のトナー(トナー像)を転写材へ転写するとき、転写材上には転写材移動方向上流側で転写された色のトナーが載った状態となっている。
【0010】
この転写材上の上流色トナーが、下流色の転写時に転写材から像担持体へ逆転写し、この逆転写されたトナーが下流色のクリーニングで回収され、下流色のクリーニング手段で回収されたトナーには上流色が混入し、(例えば、1色目のトナーが2色目の像担持体に逆転写し、1色目のトナーが2色目のクリーニング手段で回収される)混色が生じる。この混色は中間転写体を用いた中間転写方式においても同様に生じる。
このように、従来のカラー画像形成装置では、各色の像担持体からトナーを回収し、この回収トナーをそのまま回収元の像担持体に対応する現像手段にリサイクルすると、作像時間の経過とともに、現像手段中のトナーの色相が混色のない状態から次第に大きく変化してしまうという問題が生じる。
【0011】
そこで、このような不具合に対する対策として、従来では、転写順序において最初の位置(最上流側)に設けられて混色が生じないブラック画像を対象とする像担持体からの回収トナーをブラック用の現像装置に回収して再利用する構成(例えば、特許文献1)、混色が生じたトナーの全てをブラックトナーに混ぜて使用するようにした構成(例えば、特許文献2)、回収トナーを適宜、使用する場合と全てを廃棄する場合とを選択できるようにした構成(例えば、特許文献3)、混色トナー専用の現像装置を設けた構成(例えば、特許文献4,5)が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
現在、市場におけるカラー画像形成が可能な画像形成装置の稼動状況をみると、モノクロ画像の占める割合は7〜8割程度であり、フルカラー画像形成時にもブラックトナーが消費されていることを考えると、廃トナー中のブラックトナー比率がかなり高いことがわかる。
【0013】
このため、特許文献1のように、ブラックトナーだけを他の色のトナーが混色しないようにして回収トナーを再利用したとしても、ほとんどの回収トナーを破棄しないで済むので実用的である。
【0014】
しかしながら、特許文献1に開示されている構成では、図12に示すように、ブラックに対応する像担持体100B及び現像装置を最上流に配置しているため、転写紙への転写位置Sから最も遠い位置にある。図12において、100Yはイエローに対応する像担持体、100Mはマゼンタに対応する像担持体、100Cはシアンに対応する像担持体、150は中間転写ベルトを示している。
【0015】
このため、市場で最も稼働率の高いモノクロ画像形成時において、ブラックトナーの顕像化が行なわれてから転写紙に転写されるまで時間がかかるという問題がある。このため、操作者がプリント実行をしてから実際に転写紙が排出されるまでの待ち時間が長いというだけでなく、各作像装置の空転時間が長いことにより、無駄に空転動作している部品の摩耗スピードを早め、部品寿命を短くしてしまうという不具合があった。また、操作者がプリント実行をしてから実際に転写紙が排出されるまでの待ち時間が長いというだけでなく、モノクロ画像画像形成に必要の無い他の色の各作像装置の空転時間が長いことにより、無駄に空転動作している部品の摩耗スピードを早め、部品寿命を短くしてしまうという不具合があった。
【0016】
また、特許文献2に開示されている構成では、混色トナーをブラック現像装置で再利用するために、回収トナーの量が予め定められた混入量以下に制限するようにしているが、やはりどうしても混色トナーの混入によりブラックの色調が変わってしまうなど画質が劣化することは免れない。
【0017】
特許文献3に開示されている構成では、回収トナーの再利用と破棄をトナー搬送スクリュの回転方向の切替えにより行なうものであるが、クリーニング装置4の内部には混色トナーが貯留されており、画素カウントにより各画像毎に使用される各トナー使用量を把握できたとしても、実際はその積分値を扱うことになるので、回収トナー中の混色度合いを正確に推定することは困難である。
【0018】
特許文献4、5では、混色トナー専用の現像装置、像担持体などを設けて通常の画像形成ユニット数よりもユニットを多く設置しなければならないので、機械の大きさが大きくなるとともに、製造コストの上昇を招いてしまうという不具合があった。
【0019】
そこで、図13に示すように、イエロー、シアン、マゼンタ(以下、YCMと略する)の3つの作像部(画像形成ユニット)が中間転写ベルト(便宜上、本発明の実施形態に用いる図1に用いた符号1を用いる)に沿って直列に配置されたタンデム方式とし、前記タンデム配列とは独立して、ブラックの作像部(画像形成ユニット)Kを、ブラック画像以外の色の画像を対象とした一括転写が行われる一括転写用の転写手段(図1に示した符号7Bを用いる)の前に転写が行える位置に配置した構成が考えられる。
なお、図13において、符号Y,C,Mは、イエロー、シアン、マゼンタの各色画像のセク像部を示しており、各作像部に用いられている符号2,3,4,5は、感光体ドラム、帯電装置、現像装置および感光体ドラムを対象としたクリーニング装置を示している。
【0020】
このように、ブラック画像以外の色の画像が転写材に転写される前の位置でブラック画像のみを独立して転写材に転写する構成を用いることにより、ブラック画像のみの複写出力を得る際には、ブラック画像用転写手段に転写されたブラック画像が搬送手段との対向位置で転写材に静電転写されるだけで済むので、中間転写ベルトに対してブラック画像を含めた各色の画像を重畳転写してから転写材に転写する場合に比べて作業時間を短縮することができる。
【0021】
しかし、ブラック作像部Kでは、他の色の作像部のように中間転写ベルト1に接触する構成と違って、感光体ドラム2Kからトナー像を転写されたブラック画像用転写手段が転写材と直接接触してブラック画像を転写しているので、ブラック画像以外の色の画像を対象とする作像部に比べてブラック画像用転写手段の表面に多くの紙粉が付着している場合がある。
【0022】
特に、感光体ドラムでの最大通紙幅よりも小さい幅を持つ転写材が繰り返し搬送された場合には、クリーニング装置に備えられているブレードの同じ位置に紙粉が堆積しやすくなる。このような紙粉が生じやすい転写材としては、リサイクル紙、中質紙、添加物の多い紙などがある。
【0023】
このため、ブラック画像の作像部に設けてある現像装置に対して転写後の転写残トナーをリサイクルしようとした場合、紙粉も一緒に回収されてしまい、現像装置内で紙粉の蓄積によって次のような不具合が発生する虞がある。
つまり、紙粉が混在した場合には、現像装置内に設けてある現像剤担持体とこれの表面での現像剤の層厚を規定するドクターブレードとの間の隙間内に紙粉が挟まるやすくなり、紙粉が挟まっている部分では現像剤が堰き止められることにより現像剤の汲み上げ量の低下を招いて画像中に白筋などの異常画像が発生する。
また、ドクターブレードにより堰き止められていた紙粉が吐き出されると、転写材表面に現像剤が付着した紙粉により黒汚れが発生して画像劣化を招くこともある。このような不具合を解決するにはブラック画像の作像部に設けられている現像装置の交換をブラック画像以外の作像部の現像装置よりも早めなければならず、これにより画像形成装置のランニングコストの上昇を招く結果となる。
【0024】
一方、ブラック画像の作像部Kでは、ブラック画像以外の作像部で行われるような、中間転写ベルト1への1次転写を介して重畳画像を転写材に一括転写が行われる構成と違って、ブラック画像の作像部に装備されているブラック画像用転写手段から転写材に転写が行われる構成であるので、転写材の表面性の違いによる影響を受けやすい。
つまり、転写材は、エンボス紙などのように表面の凹凸が大きいものや、わら半紙のように表面が平滑でないものがある。転写材の表面性は転写電界に影響し、転写電界のバラツキによって転写効率が異なることが原因して転写材に転写された画像に濃度ムラなどの異常状態が発生しやすい。
【0025】
中間転写装置では、これに用いられる転写体の表面に弾性層を設けて上述した転写材の表面に対しての接触性を高めることができるが、弾性層として用いられる材質によっては直接接触による転写電界を形成しにくくなる場合がある。
転写材と直接接触するブラック画像用転写手段を備えたブラック画像の作像部Kでは、ブラック画像用転写手段に対する転写材の表面性の違いがブラック画像以外の画像を転写材に転写する場合に比べて劣ることになる。
【0026】
本発明の目的は、上記従来の画像形成装置における問題に鑑み、混色や紙粉などの異物混入による異常画像の発生およびブラック画像転写時での転写性の悪化を解消できる構成を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
この目的を達成するため、本発明は、次の構成よりなる。
(1)複数色の画像形成が可能な作像部を並置し、各作像部の並置方向に沿った展張面を有して各作像部から順次画像が転写される中間転写装置を備え、該中間転写装置に重畳転写された画像を転写材に一括転写可能な構成を備えた画像形成装置において、
前記作像部のうちで、ブラック画像を対象とする作像部は、前記中間転写装置の展張面に沿って並置されている作像部とは独立した別の位置に設けられ、
該ブラック画像の作像部には、前記中間転写装置とは独立して該ブラック画像の作像部に設けられている潜像担持体に形成されたブラック画像を転写されるとともに、該転写されたブラック画像を前記転写材に転写可能なブラック画像用転写手段が対向して配置され、
前記ブラック画像の作像部に設けられている潜像担持体および前記ブラック画像用転写手段にはそれぞれクリーニング装置が設けられ、少なくとも、前記ブラック画像の作像部に有する潜像担持体から転写後に除去されたブラックトナーを対象として、該ブラック画像の作像部に設けられている現像装置に回収することを特徴とする画像形成装置。
【0028】
(2)(1)記載の画像形成装置において、
前記ブラック画像用転写手段は、前記一括転写が行われる前に前記転写材に対してブラック画像を転写できる位置に設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【0029】
(3)(1)または(2)記載の画像形成装置において、
前記ブラック画像用転写手段に設けられているクリーニング装置は、該ブラック画像用転写手段から回収したトナーや紙粉を廃棄することを特徴とする画像形成装置。
【0030】
(4)(1)乃至(3)の何れかに記載の画像形成装置において、
前記ブラック画像用転写手段の表面には弾性層が設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【0031】
(5)(1)乃至(5)の何れかに記載に画像形成装置において、
前記トナーは、円形度が0.92以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【0032】
(6)(1)乃至(5)の何れかに記載の画像形成装置において、
前記トナーは、形状係数SF−1で100〜180の範囲にあり、かつ形状係数SF−2で100〜180の範囲にあることを特徴とする画像形成装置。
【0033】
(7)(1)乃至(6)の何れかに記載に画像形成装置において、
前記トナーは、体積平均粒径(Dv)が3〜8μmの範囲にあり、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)で定義される分散度が1.05〜1.40の範囲にあることを特徴とする画像形成装置。
【0034】
(8)(1)乃至(7)の何れかに記載の画像形成装置において、
前記トナーは、長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5〜1.0の範囲で、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7〜1.0の範囲であって、長軸r1≧短軸r2≧厚さr3の関係を満足することを特徴とする画像形成装置。
【0035】
(9)(1)乃至(8)の何れかに記載の画像形成装置において、
前記トナーは、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤を含むトナー組成物を水系媒体中で樹脂微粒子の存在下で架橋及び/又は伸長反応させるトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【0036】
(10)(1)乃至(9)の何れかに記載の画像形成装置において、
中間転写装置の展張面に沿って並置されているブラック画像以外の作像部および前記ブラック画像用転写手段に対向しているブラック画像の作像部には、前記潜像担持体および帯電装置、現像装置、クリーニング装置の中から選択される1以上の装置とが纏めて収容されたプロセスカートリッジが設けられ、該プロセスカートリッジは、画像形成装置に対して着脱可能に設けられ、該プロセスカートリッジのうちで、前記ブラック画像の作像部に用いられるプロセスカートリッジ内の現像装置には、該プロセスカートリッジ内の潜像担持体から除去されたブラックトナーがリサイクルトナーとして回収されることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、ブラック画像の作像部を他の色の作像部とは独立して転写材に画像転写が行える構成を対象として、ブラック画像の作像部に設けられている潜像担持体およびブラック画像用転写手段のそれぞれにクリーニング装置を設けているので、潜像担持体からの転写残トナーの回収およびブラック画像用転写手段からの転写残トナーの回収を行いその現像装置に還流することによりリサイクルトナーとして再使用が可能となる。特に、リサイクルトナーとして回収されるトナーのうちでブラック画像用転写手段からの回収トナーに紙粉が含まれている場合には、リサイクルトナーとして回収する場合とは別に、廃棄することができるので、紙粉が含まれているトナーが現像装置に回収されて再使用される際の問題を解決することができる。
【0038】
また、他の色の作像部とは独立してブラック画像の作像部を設け、この作像部においてブラック画像用転写手段を介して転写材への転写が行われるので、ブラック画像用転写手段でのクリーニングにより、ブラック画像用転写手段に残存している、紙粉を含んだ転写残トナーが潜像担持体側に移行するのを抑制できる。これにより、潜像担持体からは、紙粉がほとんどない転写残トナーが回収されやすくなり、リサイクルトナーとしての再生率を低下させないようにできる。
【0039】
さらに、中間転写体を弾性体とすることで、転写材への接触性を向上させて転写材の表面状態にかかわらず、転写効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態による画像形成装置の構成を説明するための模式図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に用いられる制御部の構成を説明するためのブロック図である。
【図3】図2に示した制御部に接続されている操作パネルの一部を示す図である。
【図4】図1に示したブラック画像の作像部の構成を説明するための模式図である。
【図5】図4に示した作像部に用いられる現像装置の要部構成での現像剤の移動状態を説明するための模式図である。
【図6】図4において矢印(6)で示す方向の現像剤搬送経路を説明するための模式図である。
【図7】図4に示した作像部に用いられるブラック画像用転写手段のクリーニング装置に装備されている回収部の構成を説明するための模式図である。
【図8】図4に示した作像部における現像装置の一部変形例を示す模式図である。
【図9】図2に示した制御部の作用を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態による画像形成装置に用いられるトナーの形状係数を説明するための模式図である。
【図11】本発明の実施形態による画像形成装置に用いられるトナーの外観および断面を示す図である。
【図12】タンデム方式の画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図13】ブラック画像の作像部を他の色画像の作像部から独立して設けた作像部の構成を説明するための模式図である。
【図14】図1に示したブラック画像の作像部の構成に関する変形例を説明するための模式図である。
【図15】図14に示したブラック画像の作像部を装備した画像形成装置の全体構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面により本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明による画像形成装置の構成を示す模式図である。
同図に示す画像形成装置100は、タンデム方式を用いる画像形成装置であるが、通常のタンデム方式と異なり、4色の画像形成が可能な作像部の全てが中間転写体として用いられるベルトの展張面に並置されてはいない。
つまり、複数の色のうちで、ブラック画像以外の画像形成を行う作像部が前記ベルトの展張面に沿って並置され、ブラック画像の形成を行う作像部は、これ以外の作像部とは独立してブラック画像を直接転写されるブラック画像用転写手段12に対向して配置されている。以下、詳しい構成を説明する。
【0042】
図1において、画像形成装置100は、中間転写装置の中間転写体として用いられる中間転写ベルト1の下方に上述した各色の作像部(便宜上、補色を意味するY,C,M,Kで示す)が配置されている。
【0043】
中間転写ベルト1は、複数のローラに掛け回されて矢印で示す方向に移動可能な展張面を備えている。
ローラの一つ(便宜上、符号1Aで示す)は、中間転写ベルト1の駆動支持部材として用いられるローラであり、後述する搬送手段7側に配置されている一括転写用の転写手段7Bに対向している。
【0044】
中間転写ベルト1は、弾性体で構成され、その展張面には、各色の作像部のうちでブラック以外の作像部が並置されている。
【0045】
ブラック画像以外の作像部は、いずれも同じ構成を備えており、イエロー(Y)画像の作像部を対象としてその構成を説明すると次の通りである。
【0046】
作像部Yには、潜像担持体として、図1において時計方向に回転可能なドラムが用いられる感光体2Yが設けられており、感光体2Yの周囲には、回転方向に沿って画像形成処理を実行する帯電装置3Y,現像装置4Y,クリーニング装置5Yが配置されている。
【0047】
一方、ブラック画像の作像部Kは、ブラック画像以外の作像部とは独立して、ブラック画像以外の色画像が一括転写されるよりも先に転写材への転写が可能な位置に配置されている。換言すれば、転写材の移動方向において、ブラック画像以外の画像の一括転写位置よりも上流側に相当する位置に配置されている。
このような配置構成により、ブラック画像以外の色画像に含まれるトナーがブラック画像用転写手段に混色することがないようにできる。
【0048】
ブラック画像の作像部Kに用いられる感光体2Kは、ブラック画像以外の色の作像部に設けてある感光体と違って、図1において反時計方向に回転するようになっており、この回転方向に順じて後述するブラック画像用転写手段12と協働して転写材を挟持しながら直接転写材にブラック画像を転写できるようになっている。
【0049】
図1において符号KT,YT,CTおよびMTはトナー補給タンクを示しており各色のトナー補給タンクと現像装置とは補給パイプ(図1において符号KT1,YT1,CT1,KT1で示す部材)を介して接続され、現像装置内でのトナーが不足した場合にトナーの補給を行うことで現像剤濃度を一定に維持するようになっている。
【0050】
上述した各作像部では、感光体と、帯電装置、現像装置そしてクリーニング装置のいずれか一つを対象としてあるいは全てを対象として纏めてプロセスカートリッジに収容されており、プロセスカートリッジは、画像形成装置100に対して着脱可能に設けられている。
【0051】
各作像部では、帯電装置を用いて感光体への一様帯電が行われ、書き込み装置6を介して画像情報に応じた静電潜像が形成される。静電潜像は、現像装置から供給される現像剤によって可視像処理されてトナー像とされる。
【0052】
本実施形態においては、各作像部に装備されている感光体に対して同じ方向に書き込み装置6からの書き込み光が照射できる構成とされており、これにより、書き込み光路の複雑化を避けるようになっている。
【0053】
ブラック画像の作像部Kには、感光体2Kに担持されているブラック画像がブラック画像用転写手段12に転写され、他の色の画像転写と違って重畳転写されることなくそのまま転写材に転写される。
【0054】
ブラック画像の転写に用いられるブラック画像用転写手段12は、感光体2Kと協働して転写材の挟持搬送が可能な方向に回転可能なローラが用いられ、軸心を挟んで感光体2Kと反対側では、搬送手段7と対向当接している。
【0055】
ブラック画像用転写手段12は、感光体2Kからのブラック画像を静電転写されるとともに、転写材への静電転写を行う機能を備えている。静電転写を行うためにブラック画像用転写手段12には、転写材との間での静電転写が可能な極性およびバイアス電位が設定されるようになっている。
【0056】
ブラック画像用転写手段12に対向して設けられている搬送手段7は、一対のローラに掛け回されており、中間転写ベルト1側に配置されている駆動ローラ1Aに対向する展張面を有した搬送ベルトが用いられている。
【0057】
搬送手段7として用いられる搬送ベルトを挟んで中間転写ベルト1の駆動支持部材として用いられるローラ1Aと対向する位置には、一括転写用の転写手段7Bが配置されており、さらに、ブラック画像用転写手段12と対向する位置に配置されているローラ7Aは、転写材への画像転写に際して転写バイアスを印加する部材として機能するようにもなっている。なお、ローラ7Aに対する転写バイアスは、ブラック画像用転写手段12における転写バイアスとの関係に基づき設定されるようになっている。
【0058】
例えば、ブラック画像用転写手段12において転写材へのトナー転写を行わせるための転写バイアスが印加されない場合には、転写材にブラック画像用転写手段12に担持されているブラック画像を構成するトナーを静電引力により静電転写できるバイアス極性が設定されている。これとは別に、ブラック画像用転写手段12において担持したブラック画像を転写材に転移させるバイアス極性が付与されて静電斥力により転写するような場合には、その転写を助長するバイアス極性が設定されたり電気的にフロート状態とされることもある。
【0059】
なお、バイアス手段としての転写手段7Bと同じ機能を有する転写装置として、中間転写ベルト1を挟んでブラック画像以外の作像部に設けてある感光体に対向する転写ローラ(便宜上、作像部Yを対象として符号TRで示す)がある。
【0060】
搬送手段7には、クリーニング手段8が配置されており、搬送手段7として用いられるベルトに付着しているトナーや紙粉などを除去できるようになっている。
【0061】
搬送手段7に対しては、転写材を収容可能な複数の給紙カセット9A、9Bを備えた給紙装置9に装備されている転写材がレジストローラ10を介して導入可能であり、導入された場合にはブラック画像をブラック画像用転写手段12を介して転写材に転写される場合およびブラック画像を転写された転写材に対して中間転写ベルト1に重畳転写された画像を一括転写できる場合が得られるようになっている。
【0062】
本実施形態における画像形成装置100においては、ブラック画像のみを転写材に転写する場合には、前述したように、ブラック画像の作像部Kで形成されたブラック画像を転写材に対してブラック画像用転写手段12を介して転写する一方、フルカラー画像を転写材に転写する場合には、ブラック画像以外の画像が中間転写ベルト1に対して重畳転写されたうえで、ブラック画像の作像部Kにおいてブラック画像を転写された転写材に対して転写手段7Bを介して一括転写されるようになっている。
なお、フルカラー画像を転写材に転写する方式として、上述した転写材を対象とした重畳転写に限らず、ブラック画像用転写手段12に転写されたブラック画像を搬送手段7に転写し、搬送手段7に転写されたブラック画像を中間転写ベルト1に重畳転写されているブラック画像以外の画像に重畳転写した後、転写材への一括転写を行う方式を採用することも可能である。この場合の搬送手段7から中間転写ベルト1への転写は転写手段7Bによるバイアス効果が用いられる。
【0063】
中間転写ベルト1に重畳転写された画像を合わせて一括転写された転写材あるいはブラック画像のみを直接転写された転写材は、一括転写位置の上方に配置されている定着装置11によりトナー像を定着されて排出されるようになっている。なお、図1において符号Tは、廃トナータンクを示している。
【0064】
一方、転写後の感光体に残留する転写残トナーは、各作像部に設けられているクリーニング装置5Y,5C,5M,5Kにより除去され、また、ブラック画像用転写手段12においても、クリーニング装置13により除去されるようになっている。
図1に示したタンデム方式において、ブラック画像の作像部が転写材の移動方向において一括転写位置よりも上流側に配置されていることにより、ブラック画像用転写手段での混色が生じないようにできる利点がある。
【0065】
本実施形態では、作像部、特にブラック画像の作像部Kでの転写残トナーのリサイクル方式に特徴がある。
つまり、ブラック画像の作像部Kでは、感光体2Kおよびブラック画像用転写手段12にそれぞれクリーニング装置5K,13が設けられており、クリーニング装置5K,13によって回収された転写残トナーを現像装置4Kに向けて還流させるが、次の理由により、転写残トナーに含まれる紙粉の量によって環流される場合と環流されずに廃棄される場合とが選択されるようになっている。
【0066】
ブラック画像用転写手段12は、前述したように、ブラック画像以外の作像部のように、中間転写ベルト1に画像を重畳転写した後、転写材に一括転写する手順と違って担持されたブラック画像がそのまま転写材に転写される構成であるので、転写材の紙粉などが付着しやすい部材である。このため、クリーニング装置13により除去された転写残トナー中には紙粉が混入している場合もある。
紙粉が混入していると、現像装置に環流した際に、現像剤の層厚規定のために用いられるドクターブレードとの間の隙間に挟まって所定の層厚規定が行えなくなったり、その隙間に堰き止められていた紙粉が吐き出されるとトナーが付着した紙粉が転写材に付着して汚れの原因となることは前述したとおりである。
【0067】
そこで、本実施形態では、紙粉発生量が多い転写材が用いられる場合あるいは、紙粉の混入による画質低下が発生するような場合には、原則として、ブラック画像用転写手段12から除去した転写残トナーを現像装置4Kに環流させないで廃棄し、感光体2Kから除去された転写残トナーのみを現像装置4Kに環流するようにしている。これにより、現像装置4Kに環流されてリサイクルトナーとして用いられるトナー中には紙粉が混入しない状態とされ、上述した紙粉による不具合を解消することができる。
なお、紙粉の発生量が少ない転写材を用いる場合や転写残トナーの廃棄量を低減させる場合には、ブラック画像用転写手段12から除去された転写残トナーを現像装置4Kに環流させるようにすることも可能である。
【0068】
上述したクリーニング装置のうちで、ブラック画像用転写手段12からの転写残トナーの搬送形態による環流設定は、例えば、画像形成装置に設けられている操作パネル1001(図2参照)を用いた制御部1000での制御によって設定することが可能である。
つまり、図2は、本実施形態による画像形成装置に用いられる制御部1000の構成を示すブロック図であり、同図において本実施形態と関連する構成として、上述した操作パネル1001が入力側に接続され、出力側には、後述するが、ブラック画像用転写手段12のクリーニング装置13内に設けられているブラック画像用転写手段トナー回収スクリュー130の駆動部と、このブラック画像用転写手段トナー回収スクリュー130が内蔵されている転写残トナー回収路13Bの長手方向一方側と廃棄トナータンクTとの間に延長されている転写残トナー廃棄路(便宜上、図4において(廃棄路)と表示してある)に内蔵されている廃棄路搬送スクリュー131(図4参照)の駆動部と、転写残トナー回収路13Bの長手方向他方側と現像装置4Kの攪拌室H1との間に延長されたブラック画像用転写残トナー回収路13Aに設けられている回収トナー搬送スクリュー132の駆動部がそれぞれ接続されている。
【0069】
制御部1000の出力側には、上述した各スクリューの駆動部に加えて、感光体2K側のクリーニング装置5Kに設けられているブラック画像感光体トナー回収路51K(図4参照)に内蔵されているブラック画像用感光体トナー回収スクリュー51K1(図4参照)の駆動部および、ブラック画像感光体トナー回収路51Kと現像装置4Kの攪拌室H1との間に延長されたトナー回収路50K(図4参照)に設けられているブラック画像感光体トナーリサイクルスクリュー50K1(図4参照)の駆動部も接続されている。
【0070】
操作パネル1001には、図3に示すように、転写材の類別キー1001A、画質モード選択キー1001Bが設けられている。
転写材の類別キー1001Aは、使用する転写材の材質を指定するキーであり、紙粉の発生量の多少判断に用いられる。この場合に指定される転写材の種類は、バージンペーパ(図では、新規普通紙と表示されている)の他に、リサイクル紙、中質紙、添加物の多い紙などがある。なお、紙粉量の多少判別に用いられるデータは、実験などによって得た情報を系列化してマップ化したデータが用いられ、このマップデータは、制御部1000に登録されている。
画質モード選択キー1001Bは、画質重視モードと通常モードとを選択するキーである。
画質重視モードは、紙粉が混ざりにくいトナーを回収できる状態が得られるモードであり、通常モードは、回収されるトナーの量を多くする状態が得られるモードである。
操作パネル1001において選択される情報は、ブラック画像用転写手段12から回収される転写残トナーの搬送形態を設定するために用いられ、紙粉発生量が多い場合には転写残トナーのリサイクルを行わないで廃棄し、これ以外の場合には転写残トナーをリサイクルすることができる搬送形態がそれぞれ設定される。
【0071】
一方、図4は、上述したクリーニング装置から転写残トナーを現像装置に向け還流するために用いられる構成を示す図である。
同図において、還流のための構成を説明する前に、ブラック画像の作像部Kの構成を説明すると次の通りである。
感光体2Kの周囲には、帯電装置3K,現像装置4K,ブラック画像用転写手段12および転写後の感光体2Kから転写残トナーを除去するクリーニング装置5Kが配置されている。
【0072】
感光体2Kは、帯電装置3Kにより一様帯電された後に書き込み装置6(図では、書き込み光に図1で示した符号6が付けられている)からの書き込み光により画像情報に応じた静電潜像が形成される。
感光体2Kに形成された静電潜像は、現像装置4Kから供給されるトナーおよびキャリアを混合した2成分系現像剤により可視像処理される。
【0073】
現像剤中のトナーにより可視像処理されたトナー像は、ブラック画像用転写手段12に転写され、ブラック画像用転写手段12とこれに対向する搬送手段7とで挟持搬送される転写材に対して転写される。
【0074】
ブラック画像用転写手段12への転写が終了した感光体2Kは、クリーニング装置5Kにより転写残トナーを回収される。
クリーニング装置5Kには、後述する現像装置4Kとの間に設けられたトナー回収路50Kおよび、この回収路に配置されている回収スクリュー50K1が備えられている。
【0075】
現像装置4Kは、内部に磁気ブラシ形成磁極、搬送磁極および剤離れ磁極を構成する複数の磁石が内蔵され、現像バイアスを印加可能な現像スリーブを備えている。
現像装置4Kの現像槽の内部には、仕切り壁によって現像スリーブ4K1内の剤離れ磁極の反撥磁界により現像スリーブ4K1の周面から落下する現像剤が収容される攪拌室H1と、攪拌室H1に連通する搬送室H3と、搬送室H2に連通する供給室H3とを形成されている。
【0076】
攪拌室H1には攪拌スクリュー40K1,攪拌パドル40K2が配置され、搬送室H2には搬送スクリュー40K3が配置され、そして供給室H3には現像スリーブ4K1に向け現像剤を供給する供給スクリューが40K4が配置されている。
攪拌室H1,搬送室H2および供給室H3は、図5に示すように、一部で連通している。
【0077】
図5において現像剤の流動状態を説明すると次の通りである。
攪拌室H1では、攪拌スクリュー40K1による搬送方向(図示矢印方向)下流側に位置する連通口に達した現像剤が搬送室H2に導入される。
攪拌室H1から搬送室H2への現像剤の移動は、搬送スクリュー40K3が自身の軸線の一部が、図6に示すように、紙面手前側から奥側に向けて攪拌スクリュー40K1の軸心よりも下方に位置するように傾斜させた構成を利用している。つまり、攪拌スクリュー40K1による搬送方向下流側では搬送スクリュー40K3が攪拌スクリュー40K1よりも下側に位置するようになっている。このため、搬送スクリュー40K3が配置されている搬送室H2の一部が攪拌室H1の攪拌スクリュー40K1における下周面よりも低くされている。
これにより、攪拌室H1において搬送される現像剤が重力によって搬送室H2内に流れ落ちることになる。
【0078】
一方、搬送室H2から供給室H3への現像剤の移動は、搬送スクリュー40K3の傾斜方向に沿って上流側から下流側に向けて次第に押し上げられ、連通口に達した時点で後続の現像剤が押し上げられる状態で連通口から供給室H3に向けられるという順序で行われる。
供給室H3では、現像スリーブと平行する供給スクリュー40K4によって現像剤が搬送されながら跳ね上げられあるいは持ち上げられて現像スリーブ4K1に現像剤が供給される。搬送方向下流側に達した現像剤は、その位置に設けられている連通口を通過して搬送室H2内に還流する。
【0079】
図4において攪拌室H1には、符号KT1で示す新規トナーの供給路が接続されるとともに、回収される転写残トナーの還流路の一つに相当する、感光体2Kのクリーニング装置5Kから延長されたトナー回収路50Kが接続されている。
トナー回収路50Kの内部には、回収トナー搬送スクリュー50K1(図では一部のみが示されている)が配置されており、このスクリューの軸方向一端側には、クリーニング装置5K内に設けられている転写残トナー回収部51Kの延長方向(実施形態では紙面手前側から奥側)の一端が連通している。転写残トナー回収部51Kの内部には、トナー回収路50Kとの連通部(図示されず)に向けて転写残トナーを搬送する搬送スクリュー50K1(図では、一部のみが示されている)が配置されている。
このような攪拌室H1では、新たに供給される補給トナーやクリーニング装置5Kから回収された転写残トナーがキャリアと攪拌混合される。
【0080】
一方、攪拌室H1には、上述した感光体2Kを対象とするクリーニング装置5Kからの回収路50Kに加えて、回収される転写残トナーの還流路の他の一つに相当である、ブラック画像用転写残トナー回収路13Aが接続されている。
ブラック画像用転写残トナー回収路13Aは、ブラック画像用転写手段12に設けられているクリーニング装置13と現像装置4Kの攪拌室H1との間に延長されている。
【0081】
図4において、クリーニング装置13の内部には、クリーニング装置13と現像装置4Kの攪拌室H1との間に配置されているブラック画像用転写残トナー回収路13Aの延長方向一端が接続されており、その延長方向一端には、転写残トナー回収部13Bが連通している。
転写残トナー回収部13Bには、図4を示す紙面の手前側から奥側に長手方向を有し、長手方向一方端には上述したブラック画像用転写残トナー回収路13Aが連通し、長手方向他方端には廃トナータンクT(図1参照)との間に配置されている廃棄路(図4では(廃棄路)と表示されている)の延長方向一端が連通している。
【0082】
転写残トナー回収部13Bの内部には、ブラック画像用転写手段12から回収した転写残トナーを搬送するために正逆回転可能なブラック画像用転写手段トナー回収スクリュー130が、ブラック画像用転写残トナー回収路13Aおよび廃棄路が連通する長手方向両端部の間で、各連通部への転写残トナーの移送ができるように配置されている。なお、転写残トナーの搬送部材として用いられるスクリュー部材としては、廃棄路内に配置された廃棄路搬送スクリュー131およびブラック画像用転写残トナー回収路13A内に配置された回収トナー搬送スクリュー132がある。
【0083】
正逆回転可能なブラック画像用転写手段トナー回収スクリュー130は、図7に示すように、逆転することにより回収された転写残トナーをトナー回収路13Aに向け搬送し、正転することにより回収された転写残トナーを廃棄路に向け搬送するようになっている。従って、ブラック画像用転写手段12から回収された転写残トナーは、ブラック画像用転写手段トナー回収スクリュー130の回転方向に基づき、現像装置4Kの攪拌室H1に還流される場合と廃棄路に向け搬送される場合とを選択される。転写残トナーの搬送形態の設定は、後述するが、図2に示した制御部1000により行われる。
【0084】
なお、図4に示した構成において、上述した搬送スクリューの傾斜や攪拌室H1の構成として、図8に示すように、搬送スクリューの軸線を傾斜させないようにしたりあるいは攪拌パドルをなくして構成の小型化を図ることも可能である。
上述した感光体2Kを対象とするクリーニング装置5K,ブラック画像用転写手段12を対象としたクリーニング装置13では、感光体2Kおよびブラック画像用転写手段12に当接するクリーニングブレードを用いて転写残トナーが掻き取られ、掻き取られた転写残トナーが回収路や回収部に導入されて搬送されるようになっている。
【0085】
また、図14に示すように、現像装置4Kを感光体2Kの上方に、そしてクリーニング装置13を感光体2Kの下方に配置する構成とすることも可能である。
【0086】
図14に示す構成においては、転写残トナー回収部51Kから現像装置4K内に向けてトナー回収路50Kを介して上方に転写残トナーが搬送される。なお、図14において感光他2Kの回転方向は時計方向とされ、ブラック用画像転写手段12の回転方向は反時計方向とされている。
また、図14に示した構成の現像装置を利用した場合の画像形成装置全体図は図15に示すものとなる。
【0087】
本実施形態は、以上のような構成であるから、ブラック画像のみを転写材に転写する場合には、ブラック画像以外の作像部での画像形成および転写は行われず、ブラック画像の作像部Kにおいて形成されたブラック画像がブラック画像用転写手段12を介して転写材に転写される。
なお、ブラック画像のみの形成時には、中間転写ベルト1およびブラック画像以外の作像部の各装置は動作を停止している。これにより、ブラック画像以外の作像部に装備されている各装置の寿命を延ばすことができる利点がある。 また、中間転写ベルト1に対して当接している搬送手段7のベルトも中間転写ベルト1から離間した状態を維持することが中間転写ベルト1への不用意なブラック画像の転写を防止する上で望ましい。
【0088】
転写材は、ブラック画像用転写手段12と搬送手段7のベルトとにより挟持搬送される過程でブラック画像を構成するトナーが転写される。なお、搬送手段7においては、転写材を吸着搬送することができるバイアスを印加することも可能である。
【0089】
転写後のブラック画像の作像部Kでは、感光体2Kに残った転写残トナーがクリーニング装置5Kにより除去され、除去された転写残トナーが現像装置4Kに環流されてリサイクルされることになる。
一方、ブラック画像用転写手段12では、転写後、クリーニング装置13により転写残トナーが回収されるが、上述したように、回収された転写残トナーの搬送形態が制御部1000により設定される。
【0090】
図9は、図2に示した制御部1000での作用を説明するためのフローチャートを示している。
制御部1000では、操作パネル1001において選択された項目に応じてブラック画像用転写手段12から回収した転写残トナーの搬送形態を設定するようになっており、操作パネル1001において、ユーザが転写材の種類を選択した場合と画質モードを選択した場合との両方に対応して搬送形態を設定する。具体的には次の処理が行われる。
【0091】
図9において、ユーザが転写材の選択を行ったかどうかが判別され、(ST1)、選択がされていない場合には、画質モードの選択判別に移行する(ST2)。
転写材の選択が行われた場合には、選択された転写材の材質に基づき、予め、制御部1000に登録されている紙粉の多少を系列化したマップデータを用いて紙粉の多少を判断し、その結果に応じて後述する画質重視モードおよび通常モードでの転写残トナーの搬送形態が設定される(ST3,4)。
【0092】
ステップST2において操作パネル1001において画質重視モードが選択された場合には、転写残トナー回収部13Bに内蔵されているブラック画像用転写手段トナー回収スクリュー130が正転する(ST5)。これにより、転写残トナー回収部13B内の転写残トナーは、図7に示したように、廃棄路に向け搬送されることになる。
【0093】
ブラック画像用転写手段トナー回収スクリュー130が正転すると、廃棄路に内蔵されている廃棄路搬送スクリュー131が廃トナータンクTに向けて転写残トナーを搬送する方向に回転駆動される(ST6)。これにより、紙粉が含まれている転写残トナーは、現像装置4K側に還流されることなく廃棄される。従って、画質重視モードの場合には、紙粉が含まれている転写残トナーのリサイクルが抑制されるので、紙粉による不具合によって画質が低下(白スジや汚染の発生)するのを防止することができる。
【0094】
図9において、感光体2Kから回収された転写残トナーは、トナー回収路50Kに内蔵されているブラック画像感光体トナーリサイクルスクリュー50K1およびブラック画像感光体トナー回収路51Kに内蔵されているブラック画像感光体トナー回収スクリュー51K1によって現像装置4Kの攪拌室H1に還流されてリサイクルトナーとして用いられる(ST7)。
【0095】
一方、ステップST2において画質重視モードが選択されない場合には、通常モードとして、ブラック画像用転写手段12から回収される転写残トナーのリサイクル量を増やす処理が実行される。
【0096】
図9において、画質重視モードでない場合には、上述した廃棄の場合とは違って、ブラック画像用転写手段トナー回収スクリュー130が逆転する(ST8)。これにより、転写残トナー回収部13B内の転写残トナーは、現像装置4Kに向けた連通路であるブラック画像用転写残トナー回収路13Aに向け搬送されることになる。
【0097】
ブラック画像用転写手段トナー回収スクリュー130が逆転すると、ブラック画像用転写残トナー回収路13Aに内蔵されている回収トナー搬送スクリュー132が駆動される(ST9)。これにより、紙粉がほとんど含まれていない転写残トナーが現像装置4Kに還流されてリサイクルトナーとして用いられる。また、感光体2Kから回収された転写残トナーは、ステップST7で示した場合と同様に現像装置4Kに向けて還流されてリサイクルトナーとして用いられる。
【0098】
以上のような実施形態においては、ユーザによる転写材の種類指定や画質モードの選択が前提となってブラック画像用転写手段12から回収される転写残トナーの搬送形態を設定しているが、本発明は、この方法に限定されるものではない。
例えば、制御部に対する入力情報としては、上述した画質モードのみを用いることも可能である。
また、このような情報入力とは別に、転写材に含まれる紙粉の量を自動的に認識することも可能である。例えば、給紙カセット9A、9Bに収容されている転写材が搬送される際の転写材の向き、つまり、短辺を先頭にして搬送される向きや、長辺を先頭にして搬送される向きを検知したり、転写材のサイズ、特に、搬送方向と直角な方向である転写材の幅方向のサイズを検知することも可能である。
【0099】
このような検知は、背景技術の説明において述べたように、感光体の軸方向に沿ったクリーニングブレードの長手方向長さよりも短い範囲に転写材が収まるような場合にクリーニングブレードの一部に紙粉が堆積しやすくなることを考慮したことが理由である。つまり、このような条件を満足した場合には、紙粉の堆積が顕著となるので、回収された転写残トナーに紙粉が多く含まれることになる。このため、転写残トナーに紙粉が多く含まれる条件が得られた場合には、現像装置への還流は行わないで廃棄する。
【0100】
また、転写材のサイズとクリーニングブレードの長さとの比較とは別に、転写材の搬送路に紙粉の付着量や飛散量を検知するセンサを設け、損の検知結果により転写残トナーの搬送形態を設定することも可能である。特に、紙粉が多いと判断した場合には画質重視モードと同様な搬送形態を設定すればよい。
【0101】
一方、フルカラー画像形成時には、ブラック画像の作像部Kにおいてブラック画像を転写された転写材が中間転写ベルト1における一括転写位置である、ローラ1Aと転写手段7Bとの対向位置に搬送され、中間転写ベルト1に重畳転写された画像が重ねて転写される。
【0102】
ブラック画像が転写材に転写された後のブラック画像用転写手段12は、上述したように、転写材の選択条件あるいは画質モードに対応してクリーニング装置13から回収される転写残トナーの搬送形態が設定される。
【0103】
このように、ブラック画像の作像部において感光体2Kから除去された転写残トナーのみが現像装置4Kに環流されてブラック画像用転写手段12から除去された転写残トナーは現像装置4Kに環流されることがないので、現像装置4K内に紙粉の混入がほとんどない状態とされる。この結果、紙粉が混入した転写残トナーの環流時に発生する現像剤層厚の規定不良や転写材への紙粉付着による汚損を防止することができる。
【0104】
次に、本発明の別実施例について説明する。
本実施形態は、ブラック画像用転写手段12の表面に弾性層を設けたことを特徴としている。
つまり、ブラック画像用転写手段12の表面は、転写材の表面に凹凸がある場合や平滑でない場合においても転写材と均一接触できるように、弾性体が設けられている。これにより、ブラック画像用転写手段12の表面と転写材の表面との均一接触を確保することができる。この結果、均一接触による転写電界効果を維持することができ、転写ムラのない画像を得ることができる。
【0105】
本実施形態においては、弾性層が設けられたブラック画像用転写手段12として、ゴムローラあるいは弾性体フィルムを表層部に有するローラが用いられる。
【0106】
次に本実施形態による画像形成装置に用いられるトナーについて説明する。
トナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤によって構成され、摩擦を低減する潤滑剤がトナー表面に外添されるが、その他に、トナーの帯電性を制御する荷電制御剤、定着装置に対する離型性を向上させる離型剤等を含有し、流動性を付与する外添剤を有してもよい。
【0107】
結着樹脂としては、エステル樹脂、ビニル系樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等からなり、特にビニル系樹脂が好ましく、具体的にはポリスチレン、ポリP−クロルスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単独重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体等を用いることができる。
【0108】
着色剤としては、染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15%、好ましくは3〜10%である。
【0109】
荷電制御剤としては、例えば、サリチル酸化合物、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩化合物、アルキルピリジニウム化合物等を用いることができる。含有量はトナーに対して通常0.1〜5%、好ましくは1〜3%である。
【0110】
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体等のポリオレフィンワックス、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸高級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル等のエステル系ワックス、アミド系ワックス等を用いることができる。含有量はトナーに対して通常0.5〜10%、好ましくは1〜5%である。
【0111】
また、トナーの形状は、円形度が0.92以上あることが好ましい。円形度SR=(粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長)× 100%で定義され、トナーが真球に近いほど100%に近い値となる。従来の画像形成装置において、このようなトナーを使用するとクリーニングブレード等のクリーニング部材の当接で十分掻き取れない場合が発生する。これはトナーが感光体上で転がりやすくなることに起因する。この場合、対策としてはクリーニングブレードでより強い力で感光体に当接させることが考えられるが、感光体の回転もしくは移動精度に影響を与え、バンディングの原因となる。
これに対し、潤滑剤塗布手段とトナーとの双方から感光体表面に潤滑剤を塗布し、感光体表面の摩擦係数を低減させることで、転写時における転写率を高めて残留するトナー低減してクリーニングブレードによるクリーニングの負担を減らし、かつ、クリーニングブレードを強い力で当接してもバンディングせずにクリーニングすることが可能となる。
【0112】
この円形度は、乾式粉砕で製造されるトナーでは、熱的又は機械的に球形化処理する。熱的には、例えば、アトマイザーなどに熱気流とともにトナー母体粒子を噴霧することで球形化処理を行うことができる。また、機械的にはボールミル等の混合機に比重の軽いガラス等の混合媒体とともに投入して攪拌することで、球形化処理することができる。ただし、熱的球形化処理では凝集し粒径の大きいトナー母体粒子又は機械的球形化処理では微粉が発生するために再度の分級工程が必要になる。また、水系溶媒中で製造されるトナーでは、溶媒を除去する工程で強い攪拌を与えることで、形状を制御することができる。
【0113】
さらに、トナーには、流動性付与剤を添加してもよい。流動性付与剤としては、シリカ、チタニア、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、フェライト、マグネタイト等の金属酸化物の微粒子及びそれら微粒子をシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ジルコアルミネートで処理した金属酸化物微粒子である。カップリング剤で疎水化処理されたシリカ、チタニアが好ましい。シリカの1次粒子径が小さいことで、流動性を付与する効果が大きい。また、チタニアはトナー帯電量を制御することができる。これらを組み合わせて添加することがさらに好ましい。
また、トナーに外添される潤滑剤の添加量は、0.1〜2.0%の範囲にあることが好ましい。潤滑剤の添加量が0.1%未満では感光体1に供給される量が少なく感光体1の摩擦係数を低下させるのが困難であり、2.0%を越えると感光体1から帯電装置に用いられるローラ等に付着して異常画像の原因となることがある。
【0114】
また、トナーの体積平均粒径Dvは、小さい方が細線再現性を向上させることができるために、大きくとも8μm以下のトナーを用いる。しかし、粒径が小さくなると現像性、クリーニング性が低下するために、小さくとも3μm以上が好ましい。さらに、3μm未満では、キャリア又は現像ローラの表面に現像されにくい微小粒径のトナーが多くなるために、その他のトナーにおけるキャリアまたは現像ローラとの接触・摩擦が不十分となり逆帯電性トナーが多くなり地かぶり等の異常画像を形成するため好ましくない。
【0115】
また、体積平均粒径Dvと数平均粒径Dnとの比(Dv/Dn)で表される粒径分布は、1.05〜1.40の範囲であることが好ましい。粒径分布をシャープにすることで、トナー帯電量分布が均一にすることができる。Dv/Dnが1.40を越えると、トナーの帯電量分布も広く、逆帯電トナーT1が多くなるために高品位な画像を得るのが困難になる。Dv/Dnが1.05未満では、製造が困難であり、実用的ではない。トナーの粒径は、コールターカウンターマルチサイザー(コールター社製)を用いて、測定するトナーの粒径に対応させて測定用穴の大きさが50μmのアパーチャーを選択して用い、50,000個の粒子の粒径の平均を測定することで得られる。
【0116】
トナーは、円形度のうち形状係数SF−1が100以上180以下の範囲にあり、形状係数SF−2が100以上180以下の範囲にあることが好ましい。
図10は、トナーの形状を模式的に表した図であり、図10(a)は形状係数SF−1、図10(b)は形状係数SF−2を説明するための図である。
【0117】
形状係数SF−1は、トナー形状の丸さの割合を示すものであり、下記式(1)で表される。トナーを2次元平面に投影してできる形状の最大長MXLNGの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
SF−1={(MXLNG)/AREA}×(100π/4)・・・式(1)
SF−1の値が100の場合トナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。
【0118】
また、形状係数SF−2は、トナーの形状の凹凸の割合を示すものであり、下記式(2)で表される。トナーを2次元平面に投影してできる図形の周長PERIの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
SF−2={(PERI)/AREA}×(100/4π)・・・式(2)
SF−2の値が100の場合トナー表面に凹凸が存在しなくなり、SF−2の値が大きくなるほどトナー表面の凹凸が顕著になる。
形状係数の測定は、具体的には、走査型電子顕微鏡(S−800:日立製作所製)でトナーの写真を撮り、これを画像解析装置(LUSEX3:ニレコ社製)に導入して解析して計算した。
【0119】
トナーの形状が球形に近くなると、トナーとトナー又は感光体との接触が点接触になるために、トナー同士の吸着力が弱くなり、その結果流動性が高くなり、また、トナーと感光体との吸着力が弱くなって、転写率が高くなり、また、逆帯電トナーを回収しやすくなる。
【0120】
トナーの形状係数SF−1とSF−2は100以上がよい。また、SF−1とSF−2が大きくなると逆帯電トナーT1が多くなり、また、トナーの帯電量分布が広くなり、回収部に対する負荷が大きくなる。このために、SF−1は180を越えない方が好ましく、SF−2は180を越えない方が好ましい。
【0121】
さらに、この画像形成装置に用いるトナーは、略球形であってもよい。
図11は、トナーの外形形状を示す概略図であり、図11(a)はトナーの外観であり、図11(b)はトナーの断面図である。図11(a)では、X軸がトナーの最も長い軸の長軸r1を、Y軸が次に長い軸の短軸r2を、Z軸に最も短い軸の厚さr3を表し、長軸r1≧短軸r2≧厚さr3の関係を有している。
【0122】
このトナーは、長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5〜1.0で、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7〜1.0で表される略球形の形状を有している。長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5未満では、不定形状に近づくために帯電量分布が広くなる。
【0123】
厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7未満では、不定形状に近づくために帯電量分布が広くなる。特に、厚さと短軸との比(r3/r2)が1.0では、略球形の形状になるために、帯電量分布が狭くなる。
なお、これまでのトナーの大きさは、走査型電子顕微鏡(SEM)で、視野の角度を変え、その場観察しながら測定した。
【0124】
トナーの形状は、製造方法により制御することができる。例えば、乾式粉砕法によるトナーは、トナー表面も凸凹で、トナー形状が一定しない不定形になっている。この乾式粉砕法トナーであっても、機械的又は熱的処理を加えることで真球に近いトナーにすることができる。懸濁重合法、乳化重合法により液滴を形成してトナーを製造する方法によるトナーは、表面が滑らかで、真球形に近い形状になることが多い。また、溶媒中の反応途中で攪拌して剪断力を加えることで楕円にすることができる。
【0125】
このような略球形の形状のトナーとしては、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤を含むトナー組成物を水系媒体中で樹脂微粒子の存在下で架橋及び/又は伸長反応させるトナーが好ましい。
以下に、トナーの構成材料及び好適な製造方法について説明する。
(ポリエステル)
ポリエステルは、多価アルコール化合物と多価カルボン酸化合物との重縮合反応によって得られる。
多価アルコール化合物(PO)としては、2価アルコール(DIO)および3価以上の多価アルコール(TO)が挙げられ、(DIO)単独、または(DIO)と少量の(TO)との混合物が好ましい。2価アルコール(DIO)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上の多価アルコール(TO)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0126】
多価カルボン酸(PC)としては、2価カルボン酸(DIC)および3価以上の多価カルボン酸(TC)が挙げられ、(DIC)単独、および(DIC)と少量の(TC)との混合物が好ましい。2価カルボン酸(DIC)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上の多価カルボン酸(TC)としては、炭素数9〜20の芳香族多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、多価カルボン酸(PC)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いて多価アルコール(PO)と反応させてもよい。
【0127】
多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の重縮合反応は、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。ポリエステルの水酸基価は5以上であることが好ましく、ポリエステルの酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすく、さらには記録紙への定着時、記録紙とトナーの親和性がよく低温定着性が向上する。しかし、酸価が30を超えると帯電の安定性、特に環境変動に対し悪化傾向がある。
また、重量平均分子量1万〜40万、好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量が1万未満では、耐オフセット性が悪化するため好ましくない。また、40万を超えると低温定着性が悪化するため好ましくない。
【0128】
ポリエステルには、上記の重縮合反応で得られる未変性ポリエステルの他に、ウレア変性のポリエステルが好ましく含有される。ウレア変性のポリエステルは、上記の重 縮合反応で得られるポリエステルの末端のカルボキシル基や水酸基等と多価イソシアネート化合物(PIC)とを反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得、これとアミン類との反応により分子鎖が架橋及び/又は伸長されて得られるものである。
【0129】
多価イソシアネート化合物(PIC)としては、脂肪族多価イソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアネート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0130】
多価イソシアネート化合物(PIC)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、ウレア変性ポリエステルを用いる場合、そのエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の多価イソシアネート化合物(PIC)構成成分の含有量は、通常0.5〜40wt%、好ましくは1〜30wt%、さらに好ましくは2〜20wt%である。0.5wt%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40wt%を超えると低温定着性が悪化する。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有されるイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0131】
次に、ポリエステルプレポリマー(A)と反応させるアミン類(B)としては、2価アミン化合物(B1)、3価以上の多価アミン化合物(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
【0132】
2価アミン化合物(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチル トルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上の多価アミン化合物(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0133】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超えたり、1/2未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
また、ウレア変性ポリエステル中には、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0134】
ウレア変性ポリエステルは、ワンショット法、などにより製造される。多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これに多価イソシアネート(PIC)を反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)を得る。さらにこの(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア変性ポリエステルを得る。
【0135】
(PIC)を反応させる際、及び(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、芳香族溶剤(トルエン、キシレンなど);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エステル類(酢酸エチルなど);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)およびエーテル類(テトラヒドロフランなど)などのイソシアネート(PIC)に対して不活性なものが挙げられる。
【0136】
また、ポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との架橋及び/又は伸長反応には、必要により反応停止剤を用い、得られるウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステル等の数平均分子量は、先の未変性ポリエステルを用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。ウレア変性ポリエステルを単独で使用する場合は、その数平均分子量は、通常2000〜15000、好ましくは2000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0137】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを併用することで、低温定着性およびフルカラー画像形成装置100に用いた場合の光沢性が向上するので、ウレア変性ポリエステルを単独で使用するよりも好ましい。尚、未変性ポリエステルはウレア結合以外の化学結合で変性されたポリエステルを含んでも良い。
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは、少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとは類似の組成であることが好ましい。
また、未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとの重量比は、通常20/80〜95/5、好ましくは70/30〜95/5、さらに好ましくは75/25〜95/5、特に好ましくは80/20〜93/7である。ウレア変性ポリエステルの重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0138】
未変性ポリエステルとウレア変性ポリエステルとを含むバインダ樹脂のガラス転移点(Tg)は、通常45〜65℃、好ましくは45〜60℃である。45℃未満ではトナーの耐熱性が悪化し、65℃を超えると低温定着性が不十分となる。
また、ウレア変性ポリエステルは、得られるトナー母体粒子の表面に存在しやすいため、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。なお、ここで、着色剤、帯電制御剤、離型剤、外添剤等は、既述の物質を用いることができる。
【0139】
次に、トナーの製造方法について説明する。ここでは、好ましい製造方法について示すが、これに限られるものではない。
(トナーの製造方法)
1)着色剤、未変性ポリエステル、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー、離型剤を有機溶媒中に分散させトナー材料液を作る。
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、トナー母体粒子形成後の除去が容易である点から好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。有機溶媒の使用量は、ポリエステルプレポリマー100重量部に対し、通常0〜300重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは25〜70重量部である。
【0140】
2)トナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。水系媒体は、水単独でも良いし、アルコール(メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などの有機溶媒を含むものであってもよい。トナー材料液100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー材料液の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。また、水系媒体中の分散を良好にするために、界面活性剤、樹脂微粒子等の分散剤を適宜加える。
【0141】
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0142】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0143】
また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0144】
樹脂微粒子は、水系媒体中で形成されるトナー母体粒子を安定化させるために加えられる。このために、トナー母体粒子の表面上に存在する被覆率が10〜90%の範囲になるように加えられることが好ましい。例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子1μm、及び3μm、ポリスチレン微粒子0.5μm及び2μm、ポリ(スチレン―アクリロニトリル)微粒子1μm、商品名では、PB−200H(花王社製)、SGP(総研社製)、テクノポリマーSB(積水化成品工業社製)、SGP−3G(総研社製)、ミクロパール(積水ファインケミカル社製)等がある。また、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等の無機化合物分散剤も用いることができる。
【0145】
上記の樹脂微粒子、無機化合物分散剤と併用して使用可能な分散剤として、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸−β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−β−ヒドロキシエチル、アクリル酸−β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの含窒素化合物、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン、ラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0146】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。この中でも、分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。
【0147】
3)乳化液の作製と同時に、アミン類(B)を添加し、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)との反応を行わせる。この反応は、分子鎖の架橋及び/又は伸長を伴う。反応時間は、ポリエステルプレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)との反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0148】
4)反応終了後、乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。
有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に層流の攪拌状態で昇温し、一定の温度域で強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うことで紡錘形のトナー母体粒子が作製できる。また、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、トナー母体粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
【0149】
5)上記で得られたトナー母体粒子に、帯電制御剤を打ち込み、ついで、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機微粒子を外添させ、トナーを得る。外添剤、潤滑剤を添加して現像剤を調製する際には、これらを同時に又は別々に添加して混合してもよい。外添剤等の混合は一般の粉体の混合機が用いられるがジャケット等装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。使用できる混合設備の例としては、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられる。混合条件である回転数、転動速度、時間、温度などを変化させて、外添剤の埋め込み、潤滑剤のトナー表面の薄膜形成を防止することが好ましい。
これにより、小粒径であって、粒径分布のシャープなトナーを容易に得ることができる。さらに、有機溶媒を除去する工程で強い攪拌を与えることで、真球状から紡錘形状の間の形状を制御することができ、さらに、表面のモフォロジーも滑らかなものから梅干形状の間で制御することができる。
【0150】
本実施形態による画像形成装置に用いられるトナーは、磁性キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合、現像剤中のキャリアとトナーとのトナー濃度は、キャリア100重量部に対してトナー1〜10重量部が好ましい。また、本発明のトナーはキャリアを使用しない一成分系の磁性トナー或いは、非磁性トナーとしても用いることができる。
【0151】
なお、本実施形態では、感光体にクリーニング装置としてブレードクリーニング方式を用いているが、これに代えて、ファーブラシや磁気ブラシを用いた方式を採用することも可能であり、また、書き込み装置としては、レーザ方式あるいはLEDを用いた選択照射が可能な構成とすることが可能である。
【符号の説明】
【0152】
1 中間転写ベルト
1A 駆動支持部材としてのローラ
2 感光体
4 現像装置
5 クリーニング装置
7 搬送手段
12 ブラック画像用転写手段
13 クリーニング装置
100 画像形成装置
Y,C,M,K 作像部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0153】
【特許文献1】特開2002−357938
【特許文献2】特許第3366969号
【特許文献3】特開2002−365995
【特許文献4】特開2000−35703
【特許文献5】特開2006−30519

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色の画像形成が可能な作像部を並置し、各作像部の並置方向に沿った展張面を有して各作像部から順次画像が転写される中間転写装置を備え、該中間転写装置に重畳転写された画像を転写材に一括転写可能な構成を備えた画像形成装置において、
前記作像部のうちで、ブラック画像を対象とする作像部は、前記中間転写装置の展張面に沿って並置されている作像部とは独立した別の位置に設けられ、
該ブラック画像の作像部には、前記中間転写装置とは独立して該ブラック画像の作像部に設けられている潜像担持体に形成されたブラック画像を転写されるとともに、該転写されたブラック画像を前記転写材に転写可能なブラック画像用転写手段が対向して配置され、
前記ブラック画像の作像部に設けられている潜像担持体および前記ブラック画像用転写手段にはそれぞれクリーニング装置が設けられ、少なくとも、前記ブラック画像の作像部に有する潜像担持体から転写後に除去されたブラックトナーを対象として、該ブラック画像の作像部に設けられている現像装置に回収することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記ブラック画像用転写手段は、前記一括転写が行われる前に前記転写材に対してブラック画像を転写できる位置に設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像形成装置において、
前記ブラック画像用転写手段に設けられているクリーニング装置は、該ブラック画像用転写手段から回収したトナーや紙粉を廃棄することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の画像形成装置において、
前記ブラック画像用転写手段の表面には弾性層が設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載に画像形成装置において、
前記トナーは、円形度が0.92以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れかに記載の画像形成装置において、
前記トナーは、形状係数SF−1で100〜180の範囲にあり、かつ形状係数SF−2で100〜180の範囲にあることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかに記載に画像形成装置において、
前記トナーは、体積平均粒径(Dv)が3〜8μmの範囲にあり、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)で定義される分散度が1.05〜1.40の範囲にあることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の画像形成装置において、
前記トナーは、長軸と短軸との比(r2/r1)が0.5〜1.0の範囲で、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.7〜1.0の範囲であって、長軸r1≧短軸r2≧厚さr3の関係を満足することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の画像形成装置において、
前記トナーは、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤を含むトナー組成物を水系媒体中で樹脂微粒子の存在下で架橋及び/又は伸長反応させるトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載の画像形成装置において、
前記中間転写装置の展張面に沿って並置されているブラック画像以外の作像部および前記ブラック画像用転写手段に対向しているブラック画像の作像部には、前記潜像担持体および帯電装置、現像装置、クリーニング装置の中から選択される1以上の装置とが纏めて収容されたプロセスカートリッジが設けられ、該プロセスカートリッジは、画像形成装置に対して着脱可能に設けられ、該プロセスカートリッジのうちで、前記ブラック画像の作像部に用いられるプロセスカートリッジ内の現像装置には、該プロセスカートリッジ内の潜像担持体から除去されたブラックトナーがリサイクルトナーとして回収されることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−28194(P2011−28194A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188657(P2009−188657)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】