説明

異方性導電材料及びその製造方法、並びに実装体及びその製造方法

【課題】プロセスマージンを改善させ、高い接続信頼性を得る。
【解決手段】膜形成樹脂と、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂と、ラジカル重合性樹脂と、ラジカル重合開始剤とを含有する接着剤組成物に導電性粒子が分散された異方性導電材料において、メルトフローレートが400g/10min以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子が分散された異方性導電材料及びその製造方法、並びに実装体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ラジカル硬化系の異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)が用いられ、短時間で接合を行うことが推進されている。しかし、ラジカル硬化系のACF接合は、ボンディング時の温度・圧力・熱ツール落下速度などのプロセスマージンが狭く、バインダ樹脂が押し退けられない間に硬化してしまうなどの不都合が多発している。
【0003】
また、ラジカル硬化系のACFは、一般的に硬化収縮率が高く内部応力が大きいため、接着強度が低下する傾向にある。このため、アクリルゴムなどのゴム成分を含有させることにより、内部応力を低下させ、接着力を向上させている(例えば、特許文献1、2参照。)。しかし、ゴム成分を含有させると、ACFの溶融粘度が高くなるため、プロセスマージンがさらに狭くなってしまい、高い接続信頼性を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−203427号公報
【特許文献2】特開2008−111092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、プロセスマージンを改善させ、高い接続信頼性を得ることができる異方性導電材料及びその製造方法、並びに実装体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件発明者らは、鋭意検討を行った結果、ラジカル系接着剤組成物に所定のメルトフローレートのエチレン−酢酸ビニル共重合体を配合することにより、プロセスマージンが改善することを見出した。
【0007】
すなわち、本発明に係る異方性導電材料は、膜形成樹脂と、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂と、ラジカル重合性樹脂と、ラジカル重合開始剤とを含有する接着剤組成物に導電性粒子が分散され、前記エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂のメルトフローレートが、400g/10min以上であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る異方性導電材料の製造方法は、膜形成樹脂と、メルトフローレートが400g/10min以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂と、ラジカル重合性樹脂と、ラジカル重合開始剤とを含有する接着剤組成物に導電性粒子を分散させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る実装体は、膜形成樹脂と、メルトフローレートが400g/10min以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂と、ラジカル重合性樹脂と、ラジカル重合開始剤とを含有する接着剤組成物に分散された導電性粒子を介して絶縁性基板の電極と電子部品の電極とが接続されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る実装体の製造方法は、絶縁性基板の電極上に、膜形成樹脂と、メルトフローレートが400g/10min以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂と、ラジカル重合性樹脂と、ラジカル重合開始剤とを含有する接着剤組成物に導電性粒子が分散された異方性導電材料、電子部品を順に配置し、前記電子部品の上面から熱圧着ヘッドにて押圧し、前記絶縁性基板の電極と前記電子部品の電極とを導電性粒子を介して接続するとともに、前記異方性導電材料を硬化させることを特徴とする。
【0011】
ここで、メルトフローレート(MFR:Melt Flow Rate)は、JIS−K7210の条件D(試験温度190℃、荷重2.16kg)に示されるものと略同じ試験方法により測定されたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂が、プロセスマージンを改善させ、高い接続信頼性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.異方性導電材料及びその製造方法
2.実装体及びその製造方法
3.実施例
【0014】
<1.異方性導電材料及びその製造方法>
本発明の具体例として示す異方性導電材料は、ラジカル系接着剤組成物に導電性粒子を分散させて構成される。また、異方性導電材料はペースト又はフィルム形状であり、目的に応じて適宜選択することができる。
【0015】
ラジカル系接着剤組成物は、膜形成樹脂と、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA:Ethylene Vinyl Acetate Copolymer)と、ラジカル重合性樹脂と、ラジカル重合開始剤とを含有する。
【0016】
膜形成樹脂は、平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000〜80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂などの種々の樹脂が挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも膜形成状態、接続信頼性などの観点からポリエステルウレタン樹脂が好適に用いられる。膜形成樹脂の含有量は、ラジカル系接着剤組成物100質量部に対して、通常30〜80質量部、好ましくは40〜70質量部である。
【0017】
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)は、エチレンと酢酸ビニルとが共重合した熱可塑性樹脂であり、その含有量は、ラジカル系接着剤組成物100質量部に対して、通常1〜30質量部、好ましくは5〜20質量部である。
【0018】
EVAは、酢酸ビニル(VA:Vinyl Acetate)の含有率が増加するにつれて結晶性が低下し、柔軟性が増加する。EVAのメルトフローレート(MFR:Melt Flow Rate)(JIS K7210:条件D)は、400g/10min以上であることが好ましい。MFRが400g/10min以上であることにより、ボンディング時の溶融流動性が良好となる。これにより、絶縁基板上の電子部品を十分に押し込むことができ、導電性粒子を十分に変形させることができるため、接続抵抗を低下させ、また、接着強度を向上させることができる。また、絶縁基板上の電子部品を十分に押し込むことができるため、低圧/低速の接合条件においても、通常の接合条件と同等の接続抵抗及び接着強度を得ることができ、プロセスマージンを改善することができる。
【0019】
また、EVA中のVA含有率(JIS K7192)は、10wt%以上であることが好ましく、25wt%以上であることがより好ましい。VA含有率を増加させることにより、ゴムに近い性質を示すようになり、内部応力を低下させ、接着強度を向上させることができる。
【0020】
このようなEVAは、次のような合成により得ることができる。例えば、オートクレーブ型反応器を用いて、エチレンと酢酸ビニルモノマーを所定の混合質量比で混合して供給し、所定の反応条件で、開始剤を供給して重合を行う。そして、固形分を溶解、沈殿させ、沈殿物を回収/乾燥させることにより、所定のMFR及び所定のVAを有するEVAを得ることができる。また、市販品として、三井・デュポンポリケミカル社製の「EV410」、「EV205W」、東ソー社製の「ウルトラセン735」などを、所望のMFR及び所望のVAに応じて適宜使用することができる。
【0021】
ラジカル重合性樹脂は、ラジカルにより重合する官能基を有する物質であり、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどが挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも、本実施の形態では、エポキシアクリレートが好ましく用いられる。ラジカル重合性樹脂の含有量は、ラジカル系接着剤組成物100質量部に対して、通常10〜60質量部、好ましくは20〜50質量部である。
【0022】
ラジカル重合開始剤は、公知のものを使用することができ、中でも有機過酸化物を好ましく使用することができる。有機過酸化物としては、パーオキシケタール類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、シリルパーオキサイド類などが挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも、本実施の形態では、パーオキシケタール類が好ましく用いられる。ラジカル重合開始剤の含有量は、ラジカル系接着剤組成物100質量部に対して、通常0.1〜30質量部、好ましくは1〜20質量部である。
【0023】
また、ラジカル系接着剤組成物は、無機基材への密着性を向上させるために、シランカップリング剤、リン酸(メタ)アクリレートなどをさらに含有することが好ましい。
【0024】
シランカップリング剤としては、メタクリロキシ系、エポキシ系、アミノ系、ビニル系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などが挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも、本実施の形態では、メタクリロキシ系シランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0025】
リン酸(メタ)アクリレートとしては、リン酸エステル骨格を有する(メタ)アクリレートであれば、モノエステル、ジエステル、トリエステルなどを用いることができる。例えば、エチレンオキシド変性フェノキシ化リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ブトキシ化リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性オクチルオキシ化リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0026】
また、その他の添加組成物として、無機フィラーを含有することが好ましい。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウムなどを用いることができる。無機フィラーの含有量により、流動性を制御し、粒子捕捉率を向上させる。
【0027】
これらを溶解させる有機溶剤としては、トルエン、酢酸エチル、又はこれらの混合溶剤、その他各種有機溶剤を用いることができる。
【0028】
また、ラジカル系接着剤組成物に分散させる導電性粒子は、例えば、ニッケル、金、銅などの金属粒子、樹脂粒子に金めっきなどを施したものなどを用いることができる。また、導電性粒子の平均粒径は、接続信頼性の観点から、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜10μmである。また、ラジカル系接着剤組成物中の導電性粒子の平均粒子密度は、接続信頼性及び絶縁信頼性の観点から、好ましくは1000〜50000個/mm、より好ましくは5000〜30000個/mmである。
【0029】
フィルム形状の異方性導電材料を得る場合、上記により調整した異方性導電組成物をフィルム化させることにより、異方性導電フィルムを得る。以下、異方性導電フィルムの製造方法について説明する。
【0030】
本実施の形態における異方性導電フィルムの製造方法は、膜形成樹脂と、メルトフローレートが400g/10min以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂と、ラジカル重合性樹脂と、ラジカル重合開始剤とを含有する接着剤組成物に導電性粒子を分散させるものである。
【0031】
具体的には、先ず、上述した異方性導電材料を調整後、バーコーター、塗布装置などを用いて剥離基材上に塗布する。剥離基材は、例えば、シリコーンなどの剥離剤をPET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などに塗布した積層構造からなり、異方性導電材料中の樹脂の乾燥を防ぐとともに、樹脂の形状を維持する。
【0032】
次に、剥離基材上に塗布された異方性導電材料を熱オーブン、加熱乾燥装置などにより乾燥させる。これにより、厚さ5〜50μm程度の異方性導電フィルムが製造される。
【0033】
<2.実装体及びその実装方法>
次に、上述した異方性導電フィルムを用いた電子部品の実装方法について説明する。本実施の形態における電子部品の実装方法は、絶縁性基板の電極上に、膜形成樹脂と、メルトフローレートが400g/10min以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂と、ラジカル重合性樹脂と、ラジカル重合開始剤とを含有する接着剤組成物に導電性粒子が分散された異方性導電フィルム、電子部品を順に配置し、電子部品の上面から熱圧着ヘッドにて押圧し、絶縁性基板の電極と電子部品の電極とを導電性粒子を介して接続するとともに、異方性導電フィルムを硬化させるものである。これにより、接着剤組成物に分散された導電性粒子を介して絶縁性基板の電極と電子部品の電極とが接続された実装体が得られる。
【0034】
本実施の形態では、異方性導電フィルムにメルトフローレートが400g/10min以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂が含まれているため、熱圧着ヘッドにて押圧する際の接合条件を、温度120〜220℃、圧力1〜10MPa、接続時間1〜10sec、ツール落下速度0.5〜20mm/secとすることができ、広いプロセスマージンで接合を行うことができる。具体的には、例えば、接合条件190℃−2MPa−5sec、熱Tool落下速度1mm/secの低圧/低速圧着においても、通常の接合条件190℃−4MPa−5sec、熱Tool落下速度10mm/secと同等の接続抵抗及び接着強度を得ることができる。
【実施例】
【0035】
<3.実施例>
以下、本発明の実施例について説明する。ここでは、先ず、比較例1〜4及び実施例1〜9の異方性導電フィルムを作製し、この異方性導電フィルムを用いて接合条件が異なる第1の実装体及び第2の実装体を完成させた。そして、第1の実装体及び第2の実装体の接続抵抗及び接着強度を測定した。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)を次のように合成した。6リットルのオートクレーブ型反応器を用いて、エチレンと酢酸ビニルモノマーを所定の混合質量比で混合して150〜200kg/hrの流量で供給し、反応圧力160MPa、生産速度20kg/hrの条件で、開始剤としてパーオキサイドを100g/hr供給してEVAの重合を行った。続けて、固形分を熱ヘキサンに溶解させ、2−プロパノール(IPA)に沈殿させ、沈殿物を回収/乾燥させ、所定のMFR、及び所定のVAを有するEVA1〜EVA9を得た。
【0037】
[比較例1]
フィルム形成材としてポリエステルウレタン樹脂(品名:UR8200、東洋紡績社製、メチルエチルケトン/トルエン=50/50の混合溶媒にて20質量%に溶解したもの)を固形分換算で60質量部、ラジカル重合性樹脂(品名:EB−600、ダイセル・サイテック社製)を34質量部、シランカップリング剤(品名:KBM−503、信越化学社製)を1質量部、リン酸アクリレート(品名:P−1M、共栄社化学社製)を1質量部、及びラジカル重合開始剤(品名:パーヘキサC、日本油脂社製)を4質量部として構成された全体が100質量部の接着剤組成物に対して導電性粒子(品名:AUL704、積水化学工業社製)の平均粒子密度が10000個/mmになるように分散させた。この異方性導電接続材料をPETフィルム上にバーコーターを用いて塗布し、オーブンで乾燥させ、厚さ15μmの比較例1の異方性導電フィルムを作製した。
【0038】
[比較例2]
フィルム形成材としてポリエステルウレタン樹脂(品名:UR8200、東洋紡績社製、メチルエチルケトン/トルエン=50/50の混合溶媒にて20質量%に溶解したもの)を固形分換算で50質量部、応力緩和成分としてアクリルゴム(品名:SG−600LB、ナガセケムテックス社製)を10質量部とした以外は、比較例1と同様にして比較例2の異方性導電フィルムを作製した。
【0039】
[比較例3]
フィルム形成材としてポリエステルウレタン樹脂(品名:UR8200、東洋紡績社製、メチルエチルケトン/トルエン=50/50の混合溶媒にて20質量%に溶解したもの)を固形分換算で50質量部、上述した合成により得られたMFR=150、VA=19%のEVA1を10質量部とした以外は、比較例1と同様にして比較例3の異方性導電フィルムを作製した。
【0040】
[比較例4]
上述した合成により得られたMFR=150、VA=28%のEVA2を10質量部とした以外は、比較例3と同様にして比較例4の異方性導電フィルムを作製した。
【0041】
[実施例1]
上述した合成により得られたMFR=400、VA=19%のEVA3を10質量部とした以外は比較例3と同様にして実施例1の異方性導電フィルムを作製した。
【0042】
[実施例2]
上述した合成により得られたMFR=800、VA=19%のEVA4を10質量部とした以外は、比較例3と同様にして実施例2の異方性導電フィルムを作製した。
【0043】
[実施例3]
上述した合成により得られたMFR=400、VA=25%のEVA5を10質量部とした以外は、比較例3と同様にして実施例3の異方性導電フィルムを作製した。
【0044】
[実施例4]
上述した合成により得られたMFR=400、VA=28%のEVA6を10質量部とした以外は、比較例3と同様にして実施例4の異方性導電フィルムを作製した。
【0045】
[実施例5]
上述した合成により得られたMFR=400、VA=33%のEVA7を10質量部とした以外は、比較例3と同様にして実施例5の異方性導電フィルムを作製した。
【0046】
[実施例6]
上述した合成により得られたMFR=800、VA=28%のEVA8を10質量部とした以外は、比較例3と同様にして実施例6の異方性導電フィルムを作製した。
【0047】
[実施例7]
上述した合成により得られたMFR=1000、VA=28%のEVA9を10質量部とした以外は、比較例3と同様にして実施例7の異方性導電フィルムを作製した。
【0048】
[実施例8]
ポリエステルウレタン樹脂(品名:UR8200、東洋紡績社製、メチルエチルケトン/トルエン=50/50の混合溶媒にて20質量%に溶解したもの)を固形分換算で57質量部、上述した合成により得られたMFR=400、VA=25%のEVA5を3質量部とした以外は、比較例3と同様にして実施例8の異方性導電フィルムを作製した。
【0049】
[実施例9]
ポリエステルウレタン樹脂(品名:UR8200、東洋紡績社製、メチルエチルケトン/トルエン=50/50の混合溶媒にて20質量%に溶解したもの)を固形分換算で55質量部、上述した合成により得られたMFR=400、VA=25%のEVA5を5質量部とした以外は、比較例3と同様にして実施例9の異方性導電フィルムを作製した。
【0050】
表1に、比較例1〜4及び実施例1〜9の配合例を示す。
【0051】
【表1】

【0052】
<評価>
比較例1〜4及び実施例1〜9を用いて、COF(Chip On Film)の接合を行った、COF(50μmP、Cu8μmt−Snメッキ、38μmt、品名:Sperflex、住友金属鉱山社製)と、IZO(Indium Zinc Oxide)コーティングガラス(全表面IZOコート、ガラス厚0.7mm)との接合を行った。
【0053】
比較例1〜4及び実施例1〜9の異方性導電フィルムを1.5mm幅にスリットしてIZOコーティングガラスに貼り付けた。その上にCOFを仮固定した後、ヒートツール1.5mm幅で緩衝材100μmtのテフロン(商標)を用いて、接合条件190℃−2MPa−5sec、熱Tool落下速度1mm/secで接合を行い、第1の実装体を完成させた。
【0054】
また、接合条件190℃−4MPa−5sec、熱Tool落下速度10mm/secで接合を行い、第2の実装体を完成させた。
【0055】
このようにして得られた第1の実装体及び第2の実装体について、接続抵抗及び接着強度を測定し、評価した。表2に評価結果を示す。なお、接続抵抗及び接着強度の測定は、次のように行った。
【0056】
[接続抵抗]
第1の実装体及び第2の実装体について、初期(Initial)の抵抗と、温度85℃、湿度85%RH、500時間のTHテスト(Thermal Humidity Test)後の抵抗を測定した。測定は、デジタルマルチメータ(デジタルマルチメータ7555、横河電機社製)を用いて4端子法にて電流1mAを流したときの接続抵抗を測定した。
【0057】
[接着強度]
第1の実装体及び第2の実装体について、初期(Initial)の接着強度と、温度85℃、湿度85%RH、500時間のTHテスト(Thermal Humidity Test)後の接着強度を測定した。接着強度は、引張り試験機(品番:RTC1201、AND社製)を用いて測定速度50mm/secでCOFを引き上げたときの接着強度を測定した。
【0058】
【表2】

【0059】
表2から分かるように、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)のメルトフローレートが400g/10min以上である実施例1〜9は、第1の実装体及び第2の実装体においても、THテスト後の接続抵抗が5.0Ω以下、且つTHテスト後の接着強度が3.0N/cm以上の結果を得ることができた。すなわち、EVAのメルトフローレートが400g/10min以上である実施例1〜9は、広いプロセスマージンを持つことが分かった。
【0060】
一方、EVAを含有しない、又はEVAのメルトフローレートが400g/10min未満である比較例1〜4は、第1の実装体及び第2の実装体の両方において、THテスト後の接続抵抗が5.0Ω以下、且つTHテスト後の接着強度が3.0N/cm以上の結果を得ることができなかった。
【0061】
また、EVAのVAの含有率が25wt%未満である実施例1、2は、THテスト後の接着強度が6.0N/cm以上の結果が得られなかったが、EVAの酢酸ビニル(VA)の含有率が25wt%以上である実施例3〜7は、THテスト後の接着強度が6.0N/cm以上の結果を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜形成樹脂と、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂と、ラジカル重合性樹脂と、ラジカル重合開始剤とを含有する接着剤組成物に導電性粒子が分散され、
前記エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂のメルトフローレートが、400g/10min以上である異方性導電材料。
【請求項2】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂は、酢酸ビニルの含有率が25wt%以上である請求項1記載の異方性導電材料。
【請求項3】
前記膜形成樹脂は、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂からなる群から選択される少なくとも1以上である請求項1又は2に記載の異方性導電材料。
【請求項4】
前記ラジカル重合性樹脂は、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1以上である請求項1乃至3のいずれかに記載の異方性導電材料。
【請求項5】
前記ラジカル重合開始剤は、パーオキシケタール、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドからなる群から選択される少なくとも1以上である請求項1乃至4のいずれかに記載の異方性導電材料。
【請求項6】
前記異方性導電材料は、フィルム形状である請求項1乃至5のいずれかに記載の異方性導電材料。
【請求項7】
膜形成樹脂と、メルトフローレートが400g/10min以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂と、ラジカル重合性樹脂と、ラジカル重合開始剤とを含有する接着剤組成物に導電性粒子を分散させる異方性導電材料の製造方法。
【請求項8】
膜形成樹脂と、メルトフローレートが400g/10min以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂と、ラジカル重合性樹脂と、ラジカル重合開始剤とを含有する接着剤組成物に分散された導電性粒子を介して絶縁性基板の電極と電子部品の電極とが接続された実装体。
【請求項9】
絶縁性基板の電極上に、膜形成樹脂と、メルトフローレートが400g/10min以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂と、ラジカル重合性樹脂と、ラジカル重合開始剤とを含有する接着剤組成物に導電性粒子が分散された異方性導電材料、電子部品を順に配置し、
前記電子部品の上面から熱圧着ヘッドにて押圧し、
前記絶縁性基板の電極と前記電子部品の電極とを導電性粒子を介して接続するとともに、前記異方性導電材料を硬化させる実装体の製造方法。

【公開番号】特開2010−232191(P2010−232191A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−140502(P2010−140502)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】