説明

発振器における加熱構造、発振器、及び、電子機器

【課題】 原子発振器や恒温槽制御水晶発振器等の高精度基準発振器の消費電力量を抑える。
【解決手段】 原子発振器が備える発振部31において、セル41を、断熱性を有する上フレーム71、下フレーム72、側面上フレーム73及び側面下フレーム74によってカプセル40内に固定するとともに、セル41を加熱するヒータ43にヒータ駆動体47を設け、このヒータ駆動体47により、ヒータ43が、セル41の加熱時にセル41に接触し、非加熱時にはセル41から離隔される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器における加熱構造、この加熱構造を有する発振器、及び、この発振器を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子時計においては、基準発振器から出力される基準クロック信号を分周して例えば1Hzの信号を生成し、この1Hzの信号に基づいて時刻を計時するものがある。基準発振器としては水晶発振器が多く用いられるが、より高精度の基準発振器として、恒温槽制御水晶発振器(OCXO:Oven Controlled Crystal Oscillator)が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、近年では、原子発振器を使った標準発振器が提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【特許文献1】特開昭59−169209号公報
【特許文献2】米国特許第6806784号
【特許文献3】米国特許第6265945号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の恒温槽制御水晶発振器は、恒温槽の温度を保つためのヒータを備えるため、通常の水晶発振器に比べて電力消費が大きい。また、原子発振器においては、原子を封入したセルを高温(例えば、80℃)に保つ必要があり、セルの加熱に要する電力消費が大きい。従って、電池駆動される電子時計にこれら高精度基準発振器を用いた場合、電池の消耗が激しく、長時間の連続駆動が難しいという問題があった。
そこで、本発明の目的は、原子発振器や恒温槽制御水晶発振器等の高精度基準発振器の消費電力量を抑えることが可能な発振器における加熱構造、発振器、及び、電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明は、被加熱体をヒータで加熱する構成を備えた発振器における加熱構造であって、前記被加熱体は断熱性を有する支持体によってケース内に固定され、前記ヒータは前記被加熱体に対して接離可能に構成され、前記被加熱体の加熱時に前記ヒータを前記被加熱体に接触させ、非加熱時に前記ヒータを前記被加熱体から離隔させるヒータ変位手段を設けたことを特徴としている。
上記構成によれば、被加熱体が断熱性を有する支持体によってケース内に固定され、さらに、被加熱体を加熱するヒータが非加熱時に被加熱体から離隔するので、被加熱体からの放熱によるエネルギーのロスが極めて小さく抑えられ、発振器において被加熱体の加熱に要する電力を著しく低減させることができる。
【0005】
また、本発明は、被加熱体をヒータで加熱する構成を備えた発振器において、前記被加熱体は断熱性を有する支持体によってケース内に固定され、前記ヒータは前記被加熱体に対して接離可能に構成され、前記被加熱体の加熱時に前記ヒータを前記被加熱体に接触させ、非加熱時に前記ヒータを前記被加熱体から離隔させるヒータ変位手段を設けたことを特徴としている。
上記構成によれば、被加熱体が断熱性を有する支持体によってケース内に固定され、さらに、被加熱体を加熱するヒータが非加熱時に被加熱体から離隔するので、被加熱体からの放熱によるエネルギーのロスが極めて小さく抑えられ、被加熱体の加熱に要する電力を著しく低減させ、消費電力の小さい発振器を提供できる。
【0006】
この場合において、前記発振器は、前記被加熱体として媒体原子を封入したセルを備えた原子発振器としてもよい。また前記被加熱体は水晶発振器としてもよい。また、前記ヒータ変位手段は圧電素子を用いて構成されるものとしてもよい。さらに、前記ケースの内部は真空とされた構成としてもよい。また、前記被加熱体に接する前記支持体の先端が先細りに形成されたものとしてもよい。
【0007】
さらにまた、前記被加熱体に常時接して前記被加熱体を加熱する固定ヒータと、当該発振器の使用開始時に前記固定ヒータと前記ヒータとによって前記被加熱体を加熱させる一方、前記被加熱体の使用開始後には前記固定ヒータのみによって前記被加熱体を加熱させる加熱制御手段とを備えた構成としてもよい。
また、前記被加熱体の温度を測定する温度測定手段を備え、前記加熱制御手段は、前記温度測定手段により測定された温度に基づいて、前記固定ヒータ及び前記ヒータによる加熱を制御するようにしてもよい。
【0008】
また、本発明は、被加熱体をヒータで加熱する構成を備えた発振器を具備する電子機器において、前記発振器は、前記被加熱体を、断熱性を有する支持体によってケース内に固定し、前記ヒータを前記被加熱体に対して接離可能に構成し、前記被加熱体の加熱時に前記ヒータを前記被加熱体に接触させ、非加熱時に前記ヒータを前記被加熱体から離隔させるヒータ変位手段を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、発振器が備える被加熱体が断熱性を有する支持体によってケース内に固定され、さらに、被加熱体を加熱するヒータが非加熱時に被加熱体から離隔するので、被加熱体からの放熱によるエネルギーのロスが極めて小さく抑えられ、発振器において被加熱体の加熱に要する電力を著しく低減させることができるため、電子機器の消費電力の低減を図ることができる。
【0009】
上記構成において、前記電子機器は、前記発振器により生成される発振信号に基づいて時刻を表示する時刻表示部を有する時計として構成してもよい。
【0010】
なお、上記において、断熱性を有する支持体とは、被加熱体との間に所定以上の熱抵抗を有するよう構成されたものを指し、熱伝導率が低い材料により構成されたものだけでなく、その形状(断面積、長さ)により熱抵抗を高めたものを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被加熱体の加熱に要する電力を抑えることにより、限られた容量の電池を電源とした場合であっても、長時間の連続駆動を実現できる。また、発振器を間欠的に動作させる場合に、非動作時の放熱を防ぎ、次回起動させる際の起動時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明を適用した第1の実施形態における時計の概略構成図である。
本発明の電子機器としての時計10は腕時計として構成され、ケース21を備える。このケース21は、金属(チタン、ステンレス、アルミなど)或いは樹脂で形成されている。特に原子発振器13の周囲の全部または一部は断熱材(図示略)で構成されており、用いる断熱材としては、例えばアクリル、ポリエチレン、ポリスチレン等の樹脂が挙げられる。また、このケース21の原子発振器13の周囲にDLC(Diamond Like Carbon:イオンを利用した気相合成法により合成されるダイヤモンドに類似した高硬度・電気絶縁性・赤外線透過性等を持つカーボン薄膜)等をコーティングし、或いはセラミックや樹脂のコーティング等を施して断熱構造としても良い。
このケース21の中央部分には、断熱材で形成された中枠22が収納されている。この中枠22の材料としては、アクリル、ポリエチレン、ポリスチレン等の樹脂、セラミック、ソーダガラス、鉛ガラス等が挙げられる。この中枠22内には、電源としての電池23と、動作モジュール12を構成する水晶発振器11と、時計用IC24と、モータ17とが収納され、さらに、モータ17の動力により駆動される5番車51、4番車52、3番車53、2番車54、日の裏車55及び筒車からなる輪列が収納されている。また、時計10は、後述する指針部19(図5)を構成する秒針、分針、及び時針(いずれも図示略)を備えている。
モータ17のロータ17Aは、5番車51に噛み合っており、この5番車51のカナ51Aには、4番車52が噛み合っている。
この4番車52の回転軸には秒針が取り付けられており、4番車52の回転に伴って秒針が駆動されることとなる。
【0013】
そして、4番車52のカナ52Aには、3番車53が噛み合っており、3番車53のカナ53Aには、2番車54が噛み合っている。この2番車54の回転軸には分針が取り付けられており、2番車54の回転に伴って分針が駆動されることとなる。また、2番車54のカナ54Aには、日の裏車55が噛み合っている。日の裏車の回転軸には、図示しない筒車が噛み合っており、この筒車が回転することにより、筒車の回転軸に取り付けられた時針が駆動されることとなる。
さらに日の裏車55は、日の裏中間車56に噛み合っている。この日の裏中間車56は、時刻修正輪列57を介してリュウズ58につながっている。
また、ケース21には、水晶発振器11よりも高精度の発振信号を生成する原子発振器13が内蔵されている。動作モジュール12と、原子発振器13とは、3次元空間的に分離されて配置されており、より詳細には、動作モジュール12および原子発振器13の所定平面(表示面に平行な平面)に対する正射影が重ならないように配置されている。
この原子発振器13は、大別すると、本発明の発振器としての発振部31と、局部発振器32と、制御回路部33と、を備えており、制御回路部33と、動作モジュール12とは、フレキシブル基板34を介して電気的に接続されている。
【0014】
原子発振器13と動作モジュール12との間で信号のやり取りを行うためにフレキシブル基板を用いた理由は、原子発振器13と動作モジュール12とが熱的に分離された状態とするためである。
後述するように、原子発振器13が備える発振部31は、その動作中に、セシウム原子を封入したセル41(図2)を高温に保つ。このセル41の熱が原子発振器13から動作モジュール12に伝わることで、動作モジュール12を構成する構造材、歯車等の材料の変形・変質、歯車等に塗布された潤滑油の変質、電池の劣化、回路の変形・変質等の不具合を招く可能性が考えられる。
ここで、原子発振器13と動作モジュール12とを結ぶ素材の熱伝導率をλ、断面積をA、両者間の距離をxとすると、両者間の熱抵抗Rは次式により表される。
R=x/(λ・A)
従って、原子発振器13と動作モジュール12と熱的に分離するためには熱抵抗Rを大きくすれば良いので、両者を結ぶ場合には、距離xを大きくし、熱伝導率λが小さく、断面積Aを小さくするのが好ましい。
しかしながら、原子発振器13と動作モジュール12との間で信号のやり取りを行うために設けられる信号線は、微小な信号伝送を行う必要上、すなわち、不要なノイズ等を拾わないように、距離xはあまり大きくすることはできない。
そこで、本実施形態では、熱伝導率λが小さく、断面積Aも小さなフレキシブル基板34を用いている。これにより、本実施形態における時計10では、原子発振器13と動作モジュール12とを熱的に分離して、上記した不具合を確実に防止できるようになっている。
【0015】
原子発振器13が備える発振部31は、ガラス管にアルカリ金属(セシウム)が封入された被加熱体としてのセル41と、レーザ光を出射するレーザダイオード42と、セル41を加熱する複数のヒータ43と、セル41から出射された光を受光するフォトダイオード44とを備え、ヒータ43によって所定温度に加熱されたセル41に対し、レーザダイオード42から励起用のレーザ光を出射し、セル41を透過したレーザ光をフォトダイオード44によって受光するセシウム原子発振器である。
【0016】
図2及び図3は、原子発振器が備える発振部の構成を詳細に示す図であり、図2は一部破断斜視図、図3は図2のA−A´線における断面視図である。
図2に示すように、発振部31は、略円筒形状のケースとしてのカプセル40内に、セル41、レーザダイオード42、ヒータ43、フォトダイオード44の各部を収容した構成となっている。
図3に示すように、カプセル40は、外側に断熱材の外層40Aが配され、内側に防磁性材料(金属等)の内層40Bが配された2層構造の壁を有する中空容器であり、内部は真空となっている。外層40Aに用いる断熱材の材料としては、アクリル、ポリエチレン、ポリスチレン等の樹脂、セラミック、ソーダガラス、鉛ガラス等が挙げられる。
カプセル40内には、ほぼ中心に位置するように略円筒形状のセル41が配設され、セル41の一方側(図中では下側)にレーザダイオード42が配され、他方側(図中では上側)にフォトダイオード44が配される。すなわち、セル41、レーザダイオード42及びフォトダイオード44は、カプセル40の軸上に並べて配置され、この軸に沿って、レーザダイオード42からレーザ光が出射される。
なお、以下の説明においては、カプセル40の図2中上側、すなわちフォトダイオード44側を上とし、図2中下側すなわちレーザダイオード42側を、下として説明する。
【0017】
カプセル40の底面には、レーザダイオード42に対向する位置にレーザ温度センサ45が配設される。レーザ温度センサ45は非接触温度センサであって、レーザダイオード42の温度を測定する。また、カプセル40の内側面には、セル41の側面に対向して、温度測定手段としてのセル温度センサ46が配設される。セル温度センサ46は非接触温度センサであって、セル41の温度を測定する。
セル41は、カプセル40の内面に立設された支持体としての12本のフレームにより、カプセル40内に固定される。これら12本のフレームは、カプセル40の天面から下向きに立設された3本の上フレーム71と、カプセル40の底面から上向きに立設された3本の下フレーム72と、カプセル40の内側面からセル41の側面に向けて立設された3本の側面上フレーム73及び3本の側面下フレーム74とからなる。
3本の側面上フレーム73は、セル41の高さ方向中央よりも上において、カプセル40の内周面に略等間隔に配設される。また、3本の側面下フレーム74は、いずれもセル41の高さ方向中央よりも下において、カプセル40の内周面に略等間隔に配設される。
図3に詳細に示すように、側面上フレーム73と側面下フレーム74とは、カプセル40の横断面に対する正射影が重ならないように配設されると、より効果的にセル41を支持できるので好ましい。この図3に示す状態において、隣接する側面上フレーム73と側面上フレーム73、及び側面下フレーム74と側面下フレーム74とは、それぞれ約120度の角をなし、隣接する側面上フレーム73と側面下フレーム74とは約60度の角をなしている。
【0018】
これら上フレーム71、下フレーム72、側面上フレーム73及び側面下フレーム74の各フレームは、セル41の熱が所定量以上伝わらないよう、断熱性を有する構成となっている。
後述するように、原子発振器13は所定時間(例えば3時間)毎に間欠駆動され、駆動毎に、高精度の発振信号を出力する。この高精度の発振信号は、水晶発振器11により生成される発振信号を補正するために用いられるので、常時原子発振器13を駆動する必要はなく、例えば、1回の駆動毎に10秒間だけ発振部31から発振信号が出力されればよい。
原子発振器13が高精度の発振信号を出力するためには、セル41の温度が所定温度範囲(例えば、80±0.1℃)内で安定していることが必要である。そこで、原子発振器13は、その動作を開始する際にヒータ43によってセル41を加熱し、セル41の温度が上記所定温度範囲内に達した後は、ヒータ43による加熱を適宜行って、セル41の温度を所定温度範囲において保持する。その保持時間は、原子発振器13から発振信号を出力する時間に相当し、上記の例では10秒間である。
【0019】
セル41の温度はカプセル40の内外に位置する他の構成部品に比べて高温であるため、セル41から周囲の構成部品への放熱が生じる。この放熱の大部分は、上記各フレーム、及び、ヒータ43を介したものである。
そこで、本実施形態では、上フレーム71、下フレーム72、側面上フレーム73及び側面下フレーム74の各フレームを、熱伝導率の低い材料により構成し、かつ、これら各フレーム先細りの形状とすることで、高い断熱性を有する構成とし、各フレームを介したセル41からの放熱を上記所定量以下に抑える。この所定量とは、ヒータ43による加熱時間の短縮が可能な量であり、具体的には、セル41が加熱されて上記所定温度範囲に達してから、発振部31の駆動時間(上記の例では10秒間)中、ヒータ43による加熱をしなくてもセル41が上記所定温度範囲より低温にならないことが望ましい。また、発振部31の駆動時間(上記の例では10秒間)中、ヒータ43による加熱が短時間で済めば、好ましいといえる。
【0020】
上フレーム71、下フレーム72、側面上フレーム73及び側面下フレーム74の材料としては、熱伝導率λが低く、かつ、セル41を確実に固定・支持可能な強度を有するものが望ましく、少なくとも、カプセル40を構成する金属(例えば、SUS304(熱伝導率λ=16.3[W/(m・K)])、SUS430(熱伝導率λ=26.2[W/(m・K)])等のステンレス)に比べて著しく熱伝導率λが低いものがよい。より好ましくは、熱伝導率λが0.5以下、さらに好ましくは熱伝導率λが0.25以下の材料が挙げられる。具体的には、例えばポリスチレン(λ=0.25[W/(m・K)]、引張り強さ:17[N/mm2]。単位は以下同じ。)、ポリエチレン(λ=0.08、引張り強さ:53、圧縮強さ:74[N/mm2(以下同じ)])、アクリル樹脂(λ=0.17、引張り強さ:60、圧縮強さ:125)等が最も好ましい例としてあげられ、この他に、ポリカーボネート(λ=0.19、引張り強さ:98、圧縮強さ:102)、ポリエステル(λ=0.15、引張り強さ:38、圧縮強さ:218)、PTFEやPFA等のフッ素樹脂(λ=0.25、引張り強さ:401、圧縮強さ:394)を用いてもよく、その他の合成樹脂を用いることも可能である。
さらに、上フレーム71、下フレーム72、側面上フレーム73及び側面下フレーム74は、いずれも、セル41に接する先端が先細りに形成され、セル41の表面に接する部分の断面積が極めて小さくされている。
このように、セル41と上記各フレームとの接点においては、熱伝導率λが小さく、断面積Aが小さいことから、上記式により求められる熱抵抗Rは極めて大きくなる。すなわち、これら各フレームは高い断熱性を有する構成とされているので、セル41から上記各フレームを介して逃げる熱を所定量以下に抑えている。
【0021】
セル41の側面には、セル41を加熱する複数のヒータ43が配設される。ヒータ43は、カプセル40の天面から下向きに立設された3本の上ヒータ43Aと、カプセル40の底面から上向きに立設された3本の下ヒータ43Bとによって構成される。
図4の斜視図に示すように、上ヒータ43A及び下ヒータ43Bは、いずれもその先端部が幅広に構成される。この幅広の先端部は通電時に発熱する発熱体により構成され、この発熱体はセル41の側面に沿って位置する。このヒータ43の先端の発熱体は、金属やセラミックを用いることができる。なお、ヒータ43の、先端部を除く部分を断熱材により構成してもよい。
また、図4に示すように、上ヒータ43A及び下ヒータ43Bには、それぞれ、ヒータ変位手段としてのヒータ駆動体47が配設される。ヒータ駆動体47はピエゾ素子により構成され、後述する制御回路48の制御によって電圧が引加されることで変形する。なお、ヒータ駆動体47の構成及び材料は任意であって、制御回路48の制御により通電されることで変形或いは変位するものであれば好ましく、例えばバイメタル等を用いてもよい。
上ヒータ43A及び下ヒータ43Bは、ヒータ駆動体47の変形に伴って変位可能に構成され、ヒータ駆動体47の非通電時にはヒータ43はセル41から離隔し、ヒータ駆動体47が通電されて変形すると、ヒータ43がセル41に当接する構成となっている。
【0022】
また、ヒータ43及びヒータ駆動体47に対する通電を制御する加熱制御手段としての制御回路48(図6)は、後述するように、セル41を加熱する場合にヒータ43の一部または全部を選択し、選択したヒータ及びそのヒータに配設されたヒータ駆動体47を通電させる。これにより、6個のヒータ43は、それぞれ加熱時にのみセル41に接触し、非加熱時にはセル41から離隔されるので、ヒータ43を介したセル41からの放熱を著しく小さく抑えている。
【0023】
続いて、本実施形態における時計の制御について説明する。
図5は、時計の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
以下の説明においては、動作モジュール12が有する水晶発振器11により生成される発振信号を第1発振信号SX1とし、原子発振器13が生成する発振信号を第2発振信号SX2とする。第2発振信号SX2は、第1発振信号SX1よりも周波数精度及び周波数安定度が高い発振信号である。
動作モジュール12は、上述したように、5番車51、4番車52、3番車53、2番車54、日の裏車55及び筒車(いずれも図1参照)からなる輪列18と、水晶発振器11と、モータ17とを備え、時針、分針及び秒針からなる指針部19に接続される。さらに、動作モジュール12は、第1発振信号SX1と第2発振信号SX2の周波数および位相を比較する周波数・位相比較回路14と、第1発振信号SX1を周波数・位相比較回路14の比較結果に基づいて分周して、基準クロック信号CLKを生成し、出力する分周回路15と、基準クロック信号CLKに基づいてモータ17を駆動する時計駆動回路16とを備える。これら周波数・位相比較回路14、分周回路15及び時計駆動回路16は、時計用IC24(図1)に実装される。
【0024】
水晶発振器11は、音叉型水晶振動子を発振させる構成を採っており、例えば32.768kHzの第1発振信号SX1を出力する。
分周回路15は、論理緩急量を付与すべく機能するデータセット機能付き1/2分周回路を含む複数の分周器を多段に接続して構成されており、第1発振信号SX1を、第2発振信号SX2を補正基準として1Hzまで分周し、1Hzのクロック信号CLKを出力する。
【0025】
図6は、原子発振器の回路構成を示す説明図である。
原子発振器13は、発振部31としてセシウム原子発振器を備え、例えば9.2GHzの発振信号を生成して出力する。
制御回路部33は、レーザ温度センサ45の測定したレーザダイオードの温度に基づいてレーザダイオード42の出力制御を行い、セル温度センサ46の測定したセル41の温度にも基づいてヒータ43の制御を行い、フォトダイオード44の出力信号を処理する制御回路48と、制御回路48を介して出力されるフォトダイオード44の出力信号の周波数を所定周波数までダウンコンバートして出力する局部発振器49と、局部発振器49の出力信号を分周して、第2発振信号SX2として出力する分周回路50と、を備えている。
【0026】
ここで、制御回路部33は、セル41に対して、セシウム原子の励起に伴う励起状態のエネルギー準位と、基底状態のエネルギー準位とのエネルギー差に相当する周波数を参照するとともに、ヒータ43を制御しセル41の温度を所定温度範囲(例えば80±0.1℃)内に維持している。より詳細には、レーザダイオード42は、その出力の上側サイドバンドと下側サイドバンドの周波数差がセシウム原子の固有振動数に一致するように変調されており、セル41内の透過レーザ光量は上側サイドバンドと下側サイドバンドの周波数差がセシウム原子の固有周波数と一致したときに最も大きくなるので、フォトダイオード44の出力が最大となるようにレーザダイオード42の変調周波数を調整することにより、変調周波数がセシウム原子の固有周波数を基準として安定化される。その結果、第2発振信号SX2もセシウム原子の固有周波数を基準として安定化されることとなる。
【0027】
制御回路48は、セル41の温度を上記所定温度範囲に保つため、セル温度センサ46により検出したセル41の温度に基づいて、ヒータ43を通電させ、セル41を加熱させる。この場合、制御回路48は、複数のヒータ43の全てを通電させてセル41を加熱させることも、或いは、一部のヒータ43のみを通電させてセル41を加熱させることも可能である。例えば、原子発振器13が停止状態から動作を開始した場合のように、セル41の温度が上記所定温度範囲より著しく低い場合、制御回路48は全てのヒータ43を通電させてセル41を加熱させる。また、例えば、セル41の温度が上記所定温度範囲に近い温度である場合に、一部のヒータ43のみを通電させてセル41を加熱させる。さらに、制御回路48は、ヒータ43を通電させてセル41を加熱させる場合に、当該ヒータ43に配設されたヒータ駆動体47を通電させて、ヒータ43をセル41に当接させる。
【0028】
次に、時計10の動作について説明する。
本実施形態においては、腕時計等の小型携帯型時計を前提としているため、消費電力低減の観点から、原子発振器13を間欠駆動(本実施形態では、3時間毎に駆動)している。
【0029】
図7は、発振動作を中心とした動作フローチャートである。
前回の間欠動作終了後、図示しないカウンタをリセットして計時を開始させ(ステップS1)、当該カウンタのカウント値に基づいて原子発振器13の駆動停止期間(3時間)が経過したか否かを判定する(ステップS2)。
そして、ステップS2の判別において、未だ原子発振器13の駆動停止期間である場合には(ステップS2;n)、分周回路15は、データセット機能付き1/2分周回路(図示略)に前回設定された補正データ(あるいは初回の場合には、所定の補正データ)に基づいて、第1発振信号SX1の論理緩急を行いつつ、第1発振信号SX1の周波数を分周し、1Hzのクロック信号CLKを時計駆動回路16に出力する。
これにより、時計駆動回路16は、モータ17を駆動する。
【0030】
この結果、モータ17のロータ17Aは、5番車51を回転駆動し、5番車51のカナ51Aを介して4番車52を駆動する。そして、この4番車52の回転に伴って秒針が駆動されることとなる。
さらに、4番車52のカナ52Aを介して3番車53が駆動され、この3番車53のカナ53Aを介して2番車54が駆動される。そして、この2番車54の回転に伴って分針が駆動されることとなる。
さらにまた、2番車54のカナ54Aに噛み合っている日の裏車55が駆動され、図示しない筒車が駆動されることにより、時針が駆動されることとなる。
以上の結果、現在時刻が表示されることとなる。
【0031】
一方、ステップS2の判別において、原子発振器13の駆動停止期間が経過した場合には(ステップS2;y)、原子発振器13に電力が供給され、発振部31の発振を開始させる(ステップS3)。このステップS3において、発振部31は停止状態から電力供給が開始され、いわゆるコールドスタートを行う。この場合、セル41の温度は、安定動作時の動作温度(上記所定温度範囲)よりも大幅に低いので、制御回路部33は全てのヒータ43及びヒータ駆動体47を通電させてセル41を加熱させる。その後、セル41の温度が上記所定温度範囲に近づいた時点で、制御回路部33は一部のヒータ43及びヒータ駆動体47のみを通電させてセル41を加熱させ、セル41の温度を上記所定温度範囲内に保つ。
【0032】
続いて、セル41の温度が上記所定温度範囲内において安定し、原子発振器13に対する電力供給開始から原子発振器13の発振周波数が安定するのに十分な時間が経過した後に、周波数・位相比較回路14は、第1発振信号SX1と第2発振信号SX2の周波数差および位相差を測定し(ステップS4)、周波数差および位相差に基づいて補正データを分周回路15に出力する。
分周回路15のデータセット機能付1/2分周回路に出力し、補正データを格納させる。
【0033】
その後、原子発振器13への電力供給を開始してから上述の処理が完了するに十分な駆動期間(例えば、10秒)が経過すると、原子発振器13への電力供給を再び遮断し、再び、処理をステップS1に移行する(ステップS7)。以下、同様にして、原子発振器13の動作停止中は、データセット機能付1/2分周回路に記憶された補正データ(論理緩急量)に基づいて、1Hzのクロック信号CLKの位相ずれ量が補正されるとともに、3時間経過毎に、原子発振器13の出力する第2発振信号SX2および水晶発振器11の出力する第1発振信号SX1との周波数差および位相差に基づいて、補正データ(論理緩急量)が更新され、クロック信号CLKの位相ずれ量が補正される、という処理が繰り返される。
【0034】
これと並行して、分周回路15は新たに設定された補正データに基づいて、第1発振信号SX1の論理緩急を行いつつ、第1発振信号SX1の周波数を分周し、1Hzのクロック信号CLKを時計駆動回路16に出力する。
これにより、時計駆動回路16は、モータ17を駆動する。
この結果、モータ17のロータ17Aは、5番車51を回転駆動し、5番車51のカナ51Aを介して4番車52を駆動する。そして、この4番車52の回転に伴って秒針が駆動されることとなる。
さらに、4番車52のカナ52Aを介して3番車53が駆動され、この3番車53のカナ53Aを介して2番車54が駆動される。そして、この2番車54の回転に伴って分針が駆動されることとなる。
【0035】
以上の説明のように、本実施形態によれば、原子発振器13が備える発振部31において、周囲の構成部品よりも高温に保持されるセル41を、上フレーム71、下フレーム72、側面上フレーム73及び側面下フレーム74からなるフレームによって保持する構成とし、これら各フレームの先端を先細り形状とした上で各フレームに熱伝導率の低い材料を用いることによって断熱性を有するものとしたので、上記各フレームを介した放熱を著しく小さく抑えることが可能となる。
また、発振部31においてセル41を加熱する複数のヒータ43にヒータ駆動体47を配設し、ヒータ駆動体47への通電を制御することにより、ヒータ43が、加熱時にのみセル41に接し、非加熱時にはセル41から離隔される構成としたので、ヒータ43を介した放熱を極めて小さく抑えることが可能となる。特に、制御回路48の制御により、セル41の温度が望ましい所定温度範囲に近い場合には一部のヒータ43のみをセル41に当接させて加熱させ、セル41の温度が上記所定範囲より著しく低い場合には全てのヒータ43によりセル41を加熱させるので、必要最小限の数のヒータ43のみがセル41に接することとなり、ヒータ43を介した放熱は非常に小さく抑えられる。
加えて、カプセル40の内部が真空とされていることから、セル41の表面からカプセル40内部の空間を伝わって逃げる熱も、極めて小さく抑えられる。
これにより、セル41からの放熱によるエネルギーのロスを抑制することが可能となり、セル41の温度保持に要する電力を抑え、効率よくセル41の温度を保持することができ、限られた容量の電池23を用いて長時間の連続駆動を行える。そして、原子発振器13による水晶発振器11の第1発振信号SX1の補正を行い、より一層の時刻表示精度の高精度化を図ることが可能となり、精度が要求される地下鉄等の鉄道駅員や列車運転者が使用する鉄道時計に十分に適用することが可能になる。
【0036】
さらに、セル41から周囲の構成部品への放熱が抑えられているので、原子発振器13の周囲に配設された動作モジュール12等の各種部材に対し、熱による影響を及ぼすことがない。このため、例えば動作モジュール12を構成する構造材、歯車等の材料の変形や変質防止、歯車等に塗布された潤滑油の変質防止、電池23の劣化防止、回路の変形・変質防止が図れるため、これらに起因する時刻表示精度の低下を防止することができる。
このように、本実施形態によれば、構成部品の劣化等の不具合及び消費電力量の増大に伴う連続駆動時間の短縮を確実に回避しつつ、時刻表示精度の高精度化を達成できる。
【0037】
また、発振部31の消費電力が0.1Wの場合には、3時間(10800秒)当たり10秒しか駆動させないため、原子発振器42で消費される電力を、10/10800倍、つまり、約1/1000倍の消費電力(10-4W)に抑えることができ、低容量の電池23を用いた場合でも、長時間の駆動を行える。
【0038】
[第2の実施形態]
図8は、本発明を適用した第2の実施形態における発振部の構成を示す一部破断斜視図である。
この図8に示す発振部31は、上記第1の実施形態における発振部31(図2)の構成に、さらに、固定ヒータとしての上ヒータ75及び下ヒータ76を設けたものである。なお、図8においては、上フレーム71、下フレーム72、側面上フレーム73及び側面下フレーム74の各フレームの図示を省略する。また、上ヒータ75及び下ヒータ76を除く各部については同符号を付して説明を省略する。
【0039】
上ヒータ75及び下ヒータ76は、セル41の上面及び下面に各々接する円盤状のヒータであり、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜若しくはこの透明導電膜が形成されたガラス基板またはプラスチック基板により構成され、レーザダイオード42から出射されるレーザ光及びセル41を透過したレーザ光を透過させるものである。上ヒータ75及び下ヒータ76は、制御回路48(図6)により通電されることで発熱し、セル41を加熱するヒータとして機能する。
【0040】
制御回路48は、セル41の温度を所定温度範囲に保持するため、ヒータ43に加えて上ヒータ75及び下ヒータ76に通電させてセル41を加熱する。詳細には、制御回路48は、セル41の温度が上記所定温度範囲より大幅に低い場合、制御回路48は全てのヒータ43と上ヒータ75及び下ヒータ76とを通電させてセル41を加熱し、セル41の温度が上記所定範囲に近く、或いは上記所定範囲内である場合には、上ヒータ75及び下ヒータ76のみに通電させてセル41を加熱させる。つまり、上ヒータ75及び下ヒータ76を主に使用し、ヒータ43はコールドスタート時等の補助ヒータとして利用する。
一般的なヒータ43に比べ、上ヒータ75及び下ヒータ76の熱伝導率は小さく、上ヒータ75及び下ヒータ76を介した放熱は軽微である。このため、全てのヒータ43をセル41から離隔させ、上ヒータ75及び下ヒータ76のみによってセル41を加熱すれば、セル41からの放熱を小さく抑えることができる。
従って、上記第1の実施形態における効果に加えて、より効率よくセル41の温度を保持できるという利点がある。
なお、この第2の実施形態において、制御回路48は、セル温度センサ46により測定されるセル41の温度に応じて、ヒータ43の全部を通電させるか、ヒータ43の一部のみを通電させるかを切り替えるようにしてもよい。このようにきめ細かくヒータ43の通電状態を制御することによって、より効率よくセル41を所定温度範囲内に保持できる。
【0041】
[第3の実施形態]
図9は、本発明を適用した第3の実施形態における時計の概略構成を示す断面図である。
上記第1及び第2の各実施形態において、電池23、動作モジュール12及び指針部19からなるムーブメントと、原子発振器13とは、平面視でムーブメントの周囲に原子発振器13が配置された状態であったが、第3の実施形態は、原子発振器13をムーブメント(図9中符号M)の裏面側に重ねて配置した態様である。この場合において、原子発振器13は、中枠22の内側において、ムーブメントMの裏面側(指針部19とは反対側)に、裏蓋60と金属等の防磁性を有する材料からなるカバー25との間に収納されており、裏蓋60に載置されている。この状態において、原子発振器13の周囲は断熱材61により囲まれている。
そしてムーブメントM内の動作モジュール12(図1参照)と原子発振器13とは、コイルばね62により電気的に接続され、信号伝送がなされている。特に、コイルばねを用いる場合には、第2発振信号SX2の出力周波数を変更して商品展開する場合であっても、コイルの線径、巻数、外径のいずれかまたは全てを変更することによって、他の構成部品を変更することなくコイルばね62のみを変更するだけで最適な信号伝送を容易に形成することが可能となる。
このコイルばね62を用いることにより、原子発振器13と動作モジュール12との間の距離xをより大きくとることができ、断熱性の向上が図れる。
このコイルばね62に代えて、導電性ゴムを用いるように構成することも可能である。
裏蓋60は、金属あるいは金属に断熱コーティングとして、セラミック、DLCあるいは樹脂がコーティングされたものが用いられる。この場合に、原子発振器13を構成するセル41を金属ケースで覆うようにしてもよい。
断熱材61の材料としては、アクリル、ポリエチレン、ポリスチレン等の樹脂、セラミック、ソーダガラス、鉛ガラス等が挙げられる。
【0042】
なお、この第3の実施形態においては原子発振器13をムーブメントMの裏面側に重ねて配置するものであったが、原子発振器13を文字板65側に配置してもよい。この場合、文字板65の裏面には、DLCやセラミック、あるいは樹脂がコーティングされたものを用いれば、より効果的である。
【0043】
また、上記した第1から第3の各実施形態の態様に限らず、例えば、原子発振器13を時計バンド67内に収納した構成としてもよい。この場合、時計バンド67が断熱材で構成されているか、あるいは、原子発振器13が断熱材で覆われているようにされると好ましい。時計バンド67を断熱材で構成する場合には、アクリル、ポリエチレン、ポリスチレン等の樹脂、セラミック等で構成する。また、時計バンド67を金属で構成する場合には、DLCやセラミック、樹脂等のコーティングを施すようにしてもよい。この場合においては、原子発振器13と動作モジュールを含むムーブメントMとの距離が離れているため、信号線が長くなり、ノイズ等を拾いやすくなるため、原子発振器13内に信号増幅用のアンプを備えるのが望ましい。
【0044】
[実施形態の変形例]
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形が可能である。
[第1変形例]
以上の説明では、水晶発振器11の出力する第1発振信号SX1と原子発振器13の出力する第2発振信号SX2との周波数・位相比較を行う場合を例示したが、第1発振信号SX1と第2発振信号SX2の周波数が一致している場合であれば、位相のみを比較するように構成することも可能である。
また、第1発振信号SX1と第2発振信号SX2との周波数比較を行い、原子発振器13の出力する第2発振信号SX2の周波数を基準に水晶発振器11の出力する第1発振信号SX1の発振周波数を補正してもよい。
【0045】
[第2変形例]
以上の説明では、クロック信号CLKの補正方式として、論理緩急方式を採用していたが、論理緩急方式と水晶発振器の容量可変方式とを併用するように構成してもよい。この場合、論理緩急方式と容量可変方式とを併用することで、クロック信号CLKの調整範囲を広げることができる。なお、容量可変方式の水晶発振回路内に容量可変用のコンデンサを設ける場合に限らず、水晶発振回路の外に、容量可変用のコンデンサを設けるようにしてもよい。
【0046】
[第3変形例]
以上の説明では、原子発振器13の駆動停止期間を3時間に設定し、駆動期間を10秒に設定する場合を例示したが、これに限らず、任意の時間で構わない。
また、間欠駆動周期を等間隔にせずに、例えば、駆動停止期間を昼間時間帯は短くし(例えば2時間)、夜間時間帯は長くする(例えば4時間)等、間欠駆動周期を不等間隔にしてもよい。
さらに、上記構成において水晶発振器11を排し、常時原子発振器13を駆動させ、水晶発振器11に代えて原子発振器13が出力する発振信号に基づいて動作モジュール12を駆動するようにしてもよい。
【0047】
[第4変形例]
以上の説明では、原子発振器の発振部31として、セシウム原子発振器を用いていたが、それ以外の原子発振器(例えばルビジウム原子発振器)を使用してもよい。また、水晶発振器11は、年差時計又は月差時計等で使用される発振器等の任意の水晶発振器でよい。
[第5変形例]
以上の説明では、原子発振器を備えた時計としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、恒温槽制御水晶発振器を備えた時計に本発明を適用することが可能である。この場合において、恒温槽制御水晶発振器が備える恒温槽をセル41に置き換えて、被加熱体として、恒温槽、及び/又は、恒温槽(ケース)に封入された水晶発振器に本発明を適用し、この恒温槽を上記実施形態及び変形例で示したヒータ43等により加熱する構成とすれば、上述した各実施形態及び変形例と同様に、恒温槽からの放熱によるエネルギーのロスを極めて小さく抑えることが可能となり、恒温槽の温度保持に要する電力を抑えることができ、限られた容量の電池を用いて長時間の連続駆動を行える上、より一層の時刻表示精度の高精度化を図ることが可能となる。
【0048】
[第6変形例]
以上においては、電池23として、リチウム電池や銀電池等のコイン型の一次電池が適用されるものとして説明したが、ソーラパネルや、重力等により回転運動する回転錘の運動エネルギーを発電機のロータに伝達して運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電装置等の発電手段を配置し、電池23として、二次電池を用いるようにしてもよい。
が適用される。
[第7変形例]
以上の説明では、腕時計の場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、置き時計に適用してもよいし、針以外の表示手段を用いて時刻表示を行うデジタル時計、カレンダ機構を具備する時計、タイムコードが重畳された電波を受信してタイムコードに基づき時刻を補正する電波時計、懐中時計、置き時計及び掛け時計等の時計全般、若しくは、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)、携帯型計測器、携帯型GPS(Global Positioning System)装置等の携帯可能な電子機器、又は、標準発振器、ノート型パーソナルコンピュータ等の商用電源以外で駆動可能な電子機器に広く適用が可能である。さらには、前記基準クロック信号に基づいて動作する動作モジュール(時計モジュールを含んでも含まなくてもよい)を備え、商用電源で駆動可能な電子機器にも広く本発明を適用することが可能である。
【0049】
特に、電波時計に適用した場合、電波を受信できない状況、例えば、電波が届かない場所(ビルの中、地下、水中、ノイズ源の近く)であったり、電波のない場所(標準時報局のない場所、宇宙等)であったり、アンテナの向きが不適切、電波の定期点検中、電波周波数やタイムコードが異なっていたり、気象上の電界強度低下等の状況が生じている場合でも、十分に正確な時刻を表示することが可能になり、様々な状況下でも高精度な電波時計を提供することが可能になる。また、携帯電話機等のデータ通信機器に適用した場合には、発振部40からのクロック信号を通信ビットレート用決定用基準信号として使用することで、高信頼でかつ高速な通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1の実施形態における時計の概略構成を示す説明図である。
【図2】原子発振器が備える発振部の構成を示す一部破断斜視図である。
【図3】図2のA−A´線における断面図である。
【図4】ヒータの構成を示す斜視図である。
【図5】第1の実施形態における時計の制御系を示すブロック図である。
【図6】原子発振器の構成を示すブロック図である。
【図7】第1の実施形態における時計の動作を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態の説明図である。
【図9】第3の実施形態の説明図である。
【符号の説明】
【0051】
10…時計(電子機器)、11…水晶発振器、12…動作モジュール、13…原子発振器、14…周波数・位相比較回路、15…分周回路、16…時計駆動回路、17…モータ、18…輪列、19…指針部、31…発振部(発振器)、40…カプセル(ケース)、41…セル(被加熱体)、42…レーザダイオード、43…ヒータ、44…フォトダイオード、46…セル温度センサ(温度測定手段)、47…ヒータ駆動体(ヒータ変位手段)、48…制御回路(加熱制御手段)、49…局部発振器、50…分周回路、71…上フレーム(支持体)、72…下フレーム(支持体)、73…側面上フレーム(支持体)、74…側面下フレーム(支持体)、75…上ヒータ(固定ヒータ)、76…下ヒータ(固定ヒータ)、SX1…第1発振信号、SX2…第2発振信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱体をヒータで加熱する構成を備えた発振器における加熱構造であって、
前記被加熱体は断熱性を有する支持体によってケース内に固定され、
前記ヒータは前記被加熱体に対して接離可能に構成され、
前記被加熱体の加熱時に前記ヒータを前記被加熱体に接触させ、非加熱時に前記ヒータを前記被加熱体から離隔させるヒータ変位手段を設けたこと、
を特徴とする発振器における加熱構造。
【請求項2】
被加熱体をヒータで加熱する構成を備えた発振器において、
前記被加熱体は断熱性を有する支持体によってケース内に固定され、
前記ヒータは前記被加熱体に対して接離可能に構成され、
前記被加熱体の加熱時に前記ヒータを前記被加熱体に接触させ、非加熱時に前記ヒータを前記被加熱体から離隔させるヒータ変位手段を設けたこと、
を特徴とする発振器。
【請求項3】
前記被加熱体として媒体原子を封入したセルを備えた原子発振器であることを特徴とする請求項2記載の発振器。
【請求項4】
前記被加熱体がケースに封入された水晶発振器であることを特徴とする請求項2に記載の発振器。
【請求項5】
前記ヒータ変位手段は圧電素子を用いて構成されることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の発振器。
【請求項6】
前記ケースの内部は真空とされたことを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の発振器。
【請求項7】
前記被加熱体に接する前記支持体の先端が先細りに形成されたことを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の発振器。
【請求項8】
前記被加熱体に常時接して前記被加熱体を加熱する固定ヒータと、
当該発振器の使用開始時に前記固定ヒータと前記ヒータとによって前記被加熱体を加熱させる一方、前記被加熱体の使用開始後には前記固定ヒータのみによって前記被加熱体を加熱させる加熱制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項2から7のいずれかに記載の発振器。
【請求項9】
前記被加熱体の温度を測定する温度測定手段を備え、
前記加熱制御手段は、前記温度測定手段により測定された温度に基づいて、前記固定ヒータ及び前記ヒータによる加熱を制御することを特徴とする請求項8記載の発振器。
【請求項10】
被加熱体をヒータで加熱する構成を備えた発振器を具備する電子機器において、
前記発振器は、
前記被加熱体を、断熱性を有する支持体によってケース内に固定し、
前記ヒータを前記被加熱体に対して接離可能に構成し、
前記被加熱体の加熱時に前記ヒータを前記被加熱体に接触させ、非加熱時に前記ヒータを前記被加熱体から離隔させるヒータ変位手段を備えたこと、
を特徴とする電子機器。
【請求項11】
前記電子機器は、前記発振器により生成される発振信号に基づいて時刻を表示する時刻表示部を有する時計として構成されていることを特徴とする請求項10記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−36555(P2007−36555A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215721(P2005−215721)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】