説明

真空処理装置

【課題】SOI基板の最表面の露出状態にあるSi層を凝集が生じる温度以上に加熱昇温する場合に、当該Si層が凝集するのを防止でき、さらにSOI基板上に保護膜を形成することなく凝集を抑制することができる真空処理装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態では、Si基板31上に絶縁層32とSi層33が順次積層されて成るSOI基板27で、露出状態にあるSi層を加熱昇温するとき、加熱昇温過程で水素化物ガスを供給する。これにより、Si層が凝集する前に、凝集前の温度で水素化物ガスが解離してSi層のダングリングボンド41をH等の所定原子で終端させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空処理装置に関し、特に、SOI基板を加熱昇温するとき、最表面のSi層で凝集が生じるのを防止する真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、SOI(Silicon On Insulator)基板上に電界効果トランジスタ等の半導体素子を形成することが行われている(特許文献1)。SOI基板は、一般的に、Si(シリコン)基板と、その上に堆積された絶縁層(SiO2層)と、この絶縁層上にさらに堆積された結晶性のSi層とから成る積層構造によって構成されている。
【0003】
かかるSOI基板は、LSI(Large Scale Integrated Circuit)等の処理能力の高速性と低消費電力の両立を可能にし、次世代の半導体基板として注目されている。SOI基板では、現在、MOSトランジスタ等において寄生容量を低減するため、Si層の薄膜化(15nm以下)が進んでいる。
【0004】
近年、SOI基板ではSi層の薄膜化に伴って次のような問題が提起される。
【0005】
SOI基板の最表面のSi層の厚みが10nm程度の場合、このSi層を事情に応じて加熱昇温すると、或る温度条件のときにSi層が凝集するという現象が起きる。このような加熱昇温の過程の一例として、SOI基板の最表面のSi層の上に加熱昇温過程によりSiエピタキシャル膜を成長させようとする場合がある。この場合には、上記のSi層で凝集作用が生じ、当該Si層の上にSiエピタキシャル膜を成長させることが困難となるという問題が生じる。
【0006】
また他の例として、CVD成膜法を利用してSi層の上に成膜を行う場合であって、当該成膜工程で600℃程度の加熱昇温過程が行なわれる場合には、その加熱昇温過程の段階でSi層の凝集が起きることが知られている。
【0007】
上記のごとくSi層の凝集が生じる理由は、Si層が10nm程度の薄膜になると、当該Si層が数原子層の膜厚となる結果、膜層状態を安定に維持することが困難となるからと予想されている。しかしながら、現在の段階では、Si層の凝集が起きる正確な原因は十分に解明されていない。
【0008】
そこで特許文献1では上記のSi層の凝集の問題を取り扱っている。特許文献1による半導体装置の製造方法によれば、Si層の凝集を防ぐために2つの方法が提案されている。
【0009】
第1の方法として、Si層を形成した基板を非酸化性雰囲気中において熱処理する際、Si層の表面が露出している場合には、その熱処理温度をSi層の凝集温度より低い温度までしか昇温しないようにしている(特許文献1、段落[0009]等)。しかしながら、当該基板を凝集温度以上に昇温させる必要がある場合も生じる。この場合には、第2の方法として、Si層の表面を保護膜で覆うことによって昇温を行うようにする。この第2の方法では、凝集温度以上で熱処理を行う前に、Si層の表面にSiO2やSi34等の保護膜を形成する(特許文献1、段落[0010]等)。
【0010】
ところで、前述のごとく例えばSOI基板の最表面のSi層の上にSiエピタキシャル層を成長させる場合には、Si層の凝集温度以上の温度に昇温する必要があり、かつ当該Si層の表面を露出させておく必要がある。このような場合には、特許文献1による方法では、上記凝集の問題を解決することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−353426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のごとく例えばSOI基板の最表面のSi層の上にSiエピタキシャル膜を成膜する場合、最表面のSi層は必然的に露出状態であり、かつSi層の凝集温度以上に加熱昇温しなければならないので、前述したSi層の凝集の問題が起きることになる。そこで本発明が解決しようとする課題は、そのような場合であっても、加熱昇温過程においてSi層の凝集原因が生じない条件を作ることにより、Si層の凝集現象を抑制しようとするものである。
さらに上記特許文献1では、他の問題点として、(1)凝集抑制のために形成された保護膜の上にエピタキシャル膜を形成することができない(エピタキシャル膜は本来的に鏡面加工されたSOI基板上に形成されるものであるから)、(2)エピタキシャル膜以外の他のプロセスを行う場合でも、前述の保護膜を除去しなければならず、余分な工程を要するという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、SOI基板の最表面の露出状態にあるSi層を凝集が生じる温度以上に加熱昇温する場合に、当該Si層が凝集するのを防止でき、さらにSOI基板上に保護膜を形成することなく凝集を抑制することができる真空処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るSi層凝集抑制方法は、上記目的を達成するために、次のように構成される。
【0015】
Si層の凝集が生じる前の最適な段階で所要の水素化物ガスを成膜室に導入し、水素化物ガスを解離させ、解離した水素化物ガスでSi層の凝集が起きない条件を作り出し、これによりSi層の凝集を防止する。
上記のSi層凝集抑制方法では、加熱昇温過程でSi層の凝集が生じる前の段階で、水素化物ガスが解離され、その水素原子がSi層の多数のダングリングボンドに接続され、これらのダングリングボンドを終端させる。これによりSi層の凝集を防止することが可能となる。
この方法によれば、昇温中に水素化合物ガスを導入してもハロゲン原子を含むガスのエッチング作用によって、昇温中での水素化物ガスによるSi層上の成膜を阻止することが可能となる。
【0016】
本発明は、上記目的を達成するために、真空処理装置であって、真空排気可能な真空容器と、水素化物ガス及びハロゲン原子を含むガス夫々供給可能なガス導入手段と、基板を所望の温度に加熱可能な加熱装置と、表面にSi層を有するSOI基板の、該Si層をエピタキシャル成長温度まで加熱昇温するための加熱昇温過程であって、エピタキシャル成長の前に行われる加熱昇温過程では、水素化物ガス及びハロゲン原子を含むガスを供給し、前記加熱昇温過程後では、前記ハロゲン原子を含むガスの供給を停止し、前記水素化物ガスにより前記加熱昇温されたSOI基板上に半導体層をエピタキシャル成長させるように前記ガス導入手段及び加熱装置を制御するコントローラとを有することを特徴とする。
【0017】
単結晶Si層はその厚さが約10nm以下であり、第1の温度は400℃より低いものであり、成膜材料ガスは所定の堆積温度以下で分解するものであってSi又はGeの水素化合物、例えばSi26であり、ハロゲンガスは塩素ガスであて、成膜はSOI基板上のエピタキシャル層である例が、本発明の実施例である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、加熱昇温過程でSi層の凝集を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るSOI基板の凝集抑制方法が実施される成膜装置の一例を示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】SOI基板の構造を示す断面図である。
【図4】Si層のダングリングボンドの終端状態を示す図である。
【図5】SOI基板上にSiエピタキシャル層の成長させる時の温度変化状態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
図1と図2に、本発明に係るSOI基板の凝集抑制方法が実施される成膜装置の一例としてCVD装置を示す。図1はCVD装置の平面図、図2は図1におけるA−A線断面図である。本実施形態によれば、一例として、CVD装置の成膜室の内部にSOI基板が搬入され、当該SOI基板における最表面の露出状態の単結晶Si層の上にSi(シリコン)のエピタキシャル成長膜が形成される。なお本発明の方法が適用されるSi層は単結晶Si層又は結晶性Si層に限定されるものではなく、又成膜装置はCVD装置に限定されない。
【0022】
図1と図2において、このCVD装置は、SOI基板を外部の大気環境と真空室内との間で出し入れするための2つの交換室11,12と、真空環境内でSOI基板を搬送する搬送機構13を備える搬送室14と、Siのエピタキシャル膜を成膜する2つの成膜室15,16とを備えている。交換室11,12は、複数枚の例えば8インチのSOI基板を収容することができる。交換室11,12と搬送室14の間、搬送室14と2つの成膜室15,16の間には、それぞれ、ゲートバルブ17が設けられている。各真空室は、独立したターボ分子ポンプで排気される。
【0023】
図2において、成膜室15には上記ターボ分子ポンプ21が設けられ、成膜室15の天井部15a等の壁部の外側には加熱用ヒータ22が設けられている。ヒータ22は成膜室15を加熱するためのものであり、メンテナンス等の大気暴露後に加熱することによって真空容器壁に吸着した水分を脱離させる。成膜室15の内部は例えば5×10-7Paの超高真空まで排気される。サセプタ23の内部には基板加熱用の2つのヒータ24が設けられる。2つのヒータ24のそれぞれには給電機構24Aによって加熱用電力が供給される。サセプタ23は、熱電対25でその温度状態を検出され、ヒータ24の加熱状態を制御することにより所要の温度に制御される。成膜室15の外側には放射温度計26が装備され、これによってサセプタ23上に搭載されたSOI基板27の温度が測定される。
【0024】
SOI基板27は、サセプタ23の上で、デバイス形成面を上側にして配置される。サセプタ23には、例えば直径7mmの穴が3点開いており、これを通して石英製ピン(不図示)が上下し、SOI基板27を搬送機構13からサセプタ23に載せ代える。SOI基板27がサセプタ23の上に載せられた後は、上記の穴はSOI基板自身により塞がれる。
【0025】
さらに、成膜室15には、原料ガスを導入するための原料ガス導入部28が設けられている。原料ガスとしては、この実施形態では、SOI基板27の上にSiエピタキシャル膜を成長させるため、後述するごとく、水素化物ガスおよび/またはハロゲンガスが導入される。水素化物ガスは例えばジシランガス(Si26)であり、ハロゲンガスは例えば塩素ガス(Cl2)である。この実施形態では、ジシランガス(Si26)と塩素ガス(Cl2)が導入される。
なお、成膜装置にはコントローラ140が設けられており、ヒータ24への電力供給を行う給電機構24A、ガス導入部28、ヒータ22、ターボ分子ポンプ21などの動作をコントロールする。コントローラはコンピュータなどを備えて構成され、プログラムの実行によりこれらの動作を実現する。
【0026】
次に、上記CVD装置の成膜室15において、SOI基板27の上に、例えばSiエピタキシャル膜を成膜する例について説明する。
【0027】
図3に示すごとく、SOI基板27は、Si基板31と、その上に堆積された絶縁膜であるSiO2膜32と、さらにその上に堆積された最表面のSi層33とから構成されている。最表面のSi層33はSOI基板27において露出している。
【0028】
SOI基板27の最表面に位置するSi層33は、大気中の酸素や水分などによる自然酸化、あるいは金属成分や有機物成分を除去するため、塩酸過酸化水混合液やアンモニア過酸化水素水等で洗浄処理されている。このため、一般的に、Si層33の表面上には1mm程度のシリコン酸化膜(SiO2膜)が形成されている。このシリコン酸化膜は、希釈フッ化水素酸水溶液中にて予めエッチング除去しておく。この希釈フッ化水素酸水溶液で処理されたSi層33の表面は水素(H)によって終端されている。
【0029】
上記SOI基板27は、前述のごとく交換室11および搬送室14を経由して成膜室15のサセプタ23の上に搭載される。成膜室15の内部は例えば5×10-7Paの超高真空まで排気されている。成膜室15において、サセプタ23上に設置されたSOI基板27は、その最表面の露出状態のSi層の上にSiエピタキシャル膜を成長させるため、さらにヒータ24によって400℃程度に加熱昇温させ、その直後から本発明実施例では、原料ガス導入部28から水素化合物ガスであるジシランガス(Si26)とハロゲンガスである塩素ガス(Cl2)を共に導入する。
【0030】
通常、上記の加熱昇温過程では、典型的に400℃を越えた温度の段階から、Si層33の表面では上記の終端されている水素原子が脱離する。その後、水素原子の脱離状態のままで加熱昇温過程を継続すると、温度600℃に到る経過時間中(図5の時間帯51)にSOI基板27の最表面の露出したSi層33が超高真空中で加熱され、その結果、薄膜のSi層33は凝集することになる。
【0031】
そこで本発明実施例では、SOI基板27に対する加熱処理過程で400℃程度になったとき、すなわちSi層33の凝集が起きる前の段階から(即ち600℃に至る前の段階)、前述の通り図3に示すごとくジシランガスと共に塩素ガスを導入し、これらのガスをSi層33の表面に対して供給し、露出したSi層33の表面のダングリングボンドを所定の原子で終端させる。この終端状態を図4に示す。このような終端状態を保って600℃まで加熱昇温過程を継続し、SOI基板27のSi層33に対して加熱処理を行う。なお図5のグラフ52は、温度の変化特性を示している。
【0032】
上記の処理・作用に基づき、SOI基板27の最表面の露出したSi層33の表面では、ジシランガスおよび塩素ガスから解離した水素(H)原子、シリコン(Si)原子、塩素(Cl)原子によりそのダングリングボンドが終端され、Si層33が凝集するのを防止・抑制することができる。この場合において、例えば、ジシランガスは12sccm、塩素ガスは0.5sccmが用いられた。
【0033】
上記の現象は、ミクロ的に見ると、図4に示すごとくSi層33のダングリングボンド(dangling bond:化学結合手)41がH,Si,Clのいずれかで終端されるものと推測される。こうしてSOI基板27のSi層33は安定化し、その凝集を抑制することが可能となる。例えばジシランガス(Si26)は400℃程度で解離するので、解離したジシランガス(Si26)はダングリングボンド41を終端するものと考えられる。Siを終端する原子がないと、隣接するSi同士が余った手で結合して凝集が起きると考えられる。ダングリングボンドが終端されることで原子が10nm以下のSi層でも凝集が生じなかったと推測される。
【0034】
より厳密には、Si膜33の凝集防止は、ジシランガスガスのみを導入するだけでも可能である。
【0035】
しかしながら、ジシランガスだけでは昇温中にSi層33の上にSi膜が成長する可能性があるので、本実施形態では、この成膜を防止するために塩素ガスを同時に導入し、Si層33上のSi膜の成長を抑制するようにしている。従ってこの時間帯51での加熱昇温過程の段階では、好ましくは、ジシランガス(Si26)と塩素ガス(Cl2)を供給することにより、Si層33の凝集を防止すると共に、Si膜エピタキシャル膜の成膜を防止する。
【0036】
上記において、Si層33のダングリングボンドを上記所定原子で終端させれば、Si層の凝集を抑制できるので、上記のジシランガス以外のガス、例えばゲルマンガス、モノシランガス、トリシランガスであっても、代表的に400〜600℃の温度範囲程度で分解するものであれば、適切なタイミングで導入することにより同様な作用・効果を達成することができる。
【0037】
上記のごとくして、SOI基板27の最表面のSi層33上にSiエピタキシャル膜を成長させる前の段階でSi層33の凝集を抑制し、SOI基板27の温度が堆積温度(ここでは、ジシランガスを用いたシリコンの堆積温度である600℃程度)になるまで加熱昇温を行い、その温度が安定した後には、原料ガス導入部28で導入される原料ガスのうち塩素ガスの導入を次第に低減し、最終的には供給を止め、ジシランガスのみを例えば24sccmの条件で導入して引き続きSiエピタキシャル層の成長を行わせる。
【0038】
なお、前述の通りジシランガスはSi膜堆積の原料ガスであり、かつ塩素ガスはSi膜のエッチングガスでもあるので、制御温度600℃への加熱昇温途中においてもSiエピタキシャル膜、または、Si層33がエッチングされ、Si層33の初期の膜厚が制御されない可能性がある。しかしながら、本実施形態で用いたジシランガス12sccm、塩素ガス0.5sccmの成膜速度は、600℃以下において0.1nm/分以下と十分に小さいため、初期の膜厚に影響を与えることはない。もちろん、水素化物ガスとハロゲン原子を含むエッチングガスの導入を段階的に行ってもよい。つまり、Si層が凝集する比較的低い温度付近では水素化物ガスを導入し、Siの堆積温度付近になったときにハロゲン原子を含むエッチングガスを導入するようにしてもよい。Siの堆積とSiのエッチングが均衡するように、水素化物ガスとエッチングガスの導入量を調整することが好ましい。
【0039】
上記の処理・作用に基づき、SOI基板27の最表面の露出したSi層33の表面では、ジシランガスおよび塩素ガスから解離した水素(H)原子、シリコン(Si)原子、塩素(Cl)原子によりそのダングリングボンドが終端され、Si層33が凝集するのを防止抑制することができる。つまり、シリコン原子は、水素原子よりもSi層33表面からの脱離温度が高いため、シリコンの水素化物を含むガスを導入することで、堆積温度までの昇温過程でも安定的にダングリングボンドを終端するための原子を供給することができ、Si層33の凝集を抑制できる。一方で、堆積温度よりも低い温度でシリコン原子をSi層33表面に堆積させてしまうと、その堆積膜は特性が劣るものとなる。従って、同時にエッチングガスを導入することで、シリコン原子の堆積を抑制しつつ、Si層33の凝集を防止できる。各ガスの導入量は、このような均衡がたもたれるように調整することが好ましい。この場合において、本実施例ではジシランガスは12sccm、塩素ガスは0.5sccmが用いられた。
【0040】
なおSOI基板27のSi層の上に堆積されるエピタキシャル膜はSiエピタキシャル膜に限定されない。Siエピタキシャル膜以外の膜の場合においても、SOI基板の最表面の露出したSi層が凝集しないように、一般的に水素化物ガスを利用して凝集を抑制する。さらにエピタキシャル膜が堆積される層は、Si層に限られず、例えばGe層の他の層であってもよい。またSOI基板上にエピタキシャル層の成長を行うことによりSi層以外の別の層(例えばGe層)を形成する場合でも、本発明を適用することができる。また上記の実施形態において、SOI基板を凝集温度以上で熱処理したとき、熱処理の際または熱処理の後に他の異なるプロセスを行うように構成することもできる。また、SOI層に限らず、薄いSi層(シリコンからなる層、特に結晶性のもの)を最表面に形成した積層体にも本発明を適用可能である。
【0041】
水素化物ガスには、Siの水素化物ガス、Geの水素化物ガス、あるいはSiと塩素原子等のハロゲン原子を含むガス等が適宜に用いられる。
【0042】
なお、SOI基板のSi層の凝集を抑制するため、塩素等のハロゲン原子を含むガスのみを用いることも可能である。
【0043】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、さらに数値および各構成の組成(材質)については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
なお、上記のようにして加熱昇温したSOI基板に、例えば、p型又はn型Si層をエピタキシャル成長させることで、半導体装置であるFETを形成することができる。FETの形成方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、Si層にイオン注入法や熱拡散法により不純物を選択的にドープしてウェル領域を形成し、Si層上にゲート絶縁膜を形成し、この上にゲート電極を形成する。また、SOI基板の作製も、公知の方法を用いることができ、SIMOX(Separation by IMplantation of OXygen)式や、張り合わせ方式により形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、SOI基板の最表面の露出したSi層に対して加熱昇温するとき当該Si層の凝集を抑制するのに利用される。
【符号の説明】
【0045】
15,16 成膜室
24 ヒータ
26 放射温度計
27 Si基板
31 SOI基板
33 Si層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気可能な真空容器と、
水素化物ガス及びハロゲン原子を含むガス夫々供給可能なガス導入手段と、
基板を所望の温度に加熱可能な加熱装置と、
表面にSi層を有するSOI基板の、該Si層をエピタキシャル成長温度まで加熱昇温するための加熱昇温過程であって、エピタキシャル成長の前に行われる加熱昇温過程では、水素化物ガス及びハロゲン原子を含むガスを供給し、前記加熱昇温過程後では、前記ハロゲン原子を含むガスの供給を停止し、前記水素化物ガスにより前記加熱昇温されたSOI基板上に半導体層をエピタキシャル成長させるように前記ガス導入手段及び加熱装置を制御するコントローラと
を有することを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
前記コントローラは、Siの堆積温度以上ではハロゲン原子を含むガスの供給を停止して、半導体層をエピタキシャル成長させることを特徴とする請求項1に記載の真空処理装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記堆積温度以下で、前記Si層の堆積とSi層のエッチングが均衡するように、前記水素化物ガス及びハロゲン原子を含むガスの導入量を調整することを特徴とする請求項2に記載の真空処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−135808(P2010−135808A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297916(P2009−297916)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【分割の表示】特願2009−523630(P2009−523630)の分割
【原出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】