磁気的に駆動されるマイクロポンプ
【課題】 小さい流体体積を取り扱うための磁気的に駆動されるマイクロポンプの提供。
【解決手段】 第一のチャンバ及び第二のチャンバを含むマイクロポンプであって、可撓性膜が第一のチャンバと第二のチャンバの間に配列され、可撓性膜は、膜を変位させるためのアクチュエータに磁気的に連結される。
【解決手段】 第一のチャンバ及び第二のチャンバを含むマイクロポンプであって、可撓性膜が第一のチャンバと第二のチャンバの間に配列され、可撓性膜は、膜を変位させるためのアクチュエータに磁気的に連結される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、2009年2月12日に出願された米国仮出願番号61/152,165の優先権を請求するものであり、その全文は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、小さい流体体積を取り扱うための磁気的に駆動されるマイクロポンプに関する。特に、本開示は、流体を変位させるための磁気的に作動される膜を含むマイクロポンプに関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体工学の分野は、一般的に数ナノリッターのオーダーの非常に小さい流体体積を取り扱うことを包含する。マイクロ流体工学は、生命科学及び化学分析のような分野において増々重要な用途を有する。マイクロメカニカルシステム(MEMS)としても知られるマイクロ流体工学デバイスは、流体制御、流体測定、医療試験、DNA及び蛋白質の分析、インビボ薬物送達、並びにその他の生物医学用途のためのデバイスを含む。
【0004】
マイクロポンプの代表的流体流速は、毎分約0.1μlから、毎分数(80〜180)mlの範囲に亘る。このオーダーの流速は、使い捨ての微小化学物質分析システム(μTAS)又は化学及び生物学の分析用のラボオンチップ(lab-on-a-chip)(LOC)、医
療診断試験のためのポイントオブケア検査(POCT)、細かな程度の規制及び正確な制御を要求する(インスリンのような)薬物用のインプラント可能な薬物送達システム、及び血液の輸送及び加圧のための心臓病学システムのような用途において有用である。
【0005】
大部分のMEMS処理技術がマイクロエレクトロニクスから進化したため、最初のシリコンマイクロポンプは、主に、制御されたインスリンの送達システムにおける使用のための1890年代における薄膜の圧電作動に基づいていた。この研究はシリコン系マイクロポンプの実現可能性を論証し、そしてシリコンマイクロポンプの広汎な研究を動機付けた。同様に、医薬品及び臨床治療分野を通したインスリンの送達及び治療薬の投与用に、数種の市販品として入手可能なインプラント可能なシリコンマイクロポンプが報告された。
【0006】
最近、低コスト、統合されたそして小型化された使い捨てμTAS用途の成長傾向に対して、多くのポリマー材料、及びソフトリソグラフィー、マイクロステレオリソグラフィー、マイクロ成形及びポリマー表面マイクロマシニングのような新しいマイクロ加工技術が研究されそして開発されてきた。プラスチック及びエラストマーを含む多くのポリマー材料は、その卓越した機械的性質、良好な耐薬品性、及び低い加工コスト故に、基板、構造膜及び機能膜として他のマイクロデバイス内に増々組み込まれるようになってきた。最もポピュラーなポリマーの中で、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が、卓越した生体適合性、簡単な加工プロセス(成形及び可逆的接合)及び光学的透明性(モニタリング及び尋問(interrogating)を容易にする)、並びに弾性(良好なシール性及び接合性)故
に、マイクロ流体デバイスにおいて広く使用されてきた。
【0007】
シリコン系及びプラスチック系のバルブレスマイクロポンプがポリマー系マイクロポンプと比較するための例として使われる。シリコン系マイクロポンプの加工プロセスは、三つの引き続く深掘り反応性イオンエッチィング(DRIE)工程及び一つのシリコン−ガラス陽極接合工程を含み、他方で、LIGA、マイクロ射出、又はホットエンボス成形、及び接着剤又はボルトを用いる多数の薄板アセンブリがプラスチックポンプのために含まれていた。一方、PDMS系マイクロポンプに対しては、多層ソフトリソグラフィープロセス及びPDMS−PDMS接合技術のみが要求される。加工コストの点からいえば、PDMS系マイクロポンプは、前記二つのタイプのマイクロポンプよりかなり安い。
【0008】
更に、プラスチックマイクロポンプの主要課題は、薄いプラスチック層の表面粗さに起因する高い流体漏れである。ボルト組立は、ボルトが接続された層の間の界面上に応力が集中するため、事態を更に悪くする。接着剤接合も微細構造の詰まりの一因になる傾向にある。従ってPDMSはマイクロポンプのための実用的(処理時間が短くそして低コスト)材料である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Zhou et al., Fluid Damping Effects on Resonant Frequency of an Electromagnetically-Actuated Valveless Micropump, International Journal of Advanced Manufacturing Technology, April 24, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本明細書に開示されたマイクロポンプは、振動している膜がチャンバ中の圧力変化をもたらし、それがパッシブバルブの形態によって流体導管の動的流れを方向付けるという原理に従って操作される。しばしば、パッシブバルブは、往復するマイクロポンプの入口及び出口における逆止弁として、カンチレバーフラップ、ブリッジ膜、球状ボール、可動構造、ノズル/ディフューザー又はテスラ(Tesla)エレメントの形態で取りこまれる。し
かしながら、ノズル/ディフューザーエレメントを統合しているバルブレスマイクロポンプは、懸濁粒子の詰まりのリスク、可動機械的部品の摩耗と疲労が減らすことができて、そして実用的に取り除かれ得るので、生物医学及び生化学におけるような使い捨てμTAS用途に対して特別に関心があるものである。更に、ノズル/ディフューザーの簡単な実現及び平面的な特長によって、使い捨て用途向けのマイクロポンプの低コスト化及び小型化を可能にする。
【0011】
本開示のバルブレスマイクロポンプは、ノズル及びディフューザーエレメント、流体チャンバ並びに振動する作動膜から成る。小さなバルク磁石と統合された膜は、大きな引き合う又は反発する磁力及び膜のゆがみという利点を持つ。膜上の交流垂直磁力は大きな体積ストロークを生みだし、それは高流速のマイクロポンプに対して望まれる。また、磁気的作動は、マイクロポンプがエアギャップによって制御される、外部でかけられた場である。このように、マイクロポンプ上にかけられた電流又は電圧のための電気的コネクターが避けることができ、それによってμTAS用途におけるような小型化の可能性も供される。
【0012】
その全文が本明細書に参照することにより取り込まれている、非特許文献1に、本開示の主題の原理及び操作が完全に説明されている。
【0013】
本開示の一つの態様は流体を送達するためのマイクロポンプを含む。マイクロポンプは、第一の流動体流路を画成する第一のポンプ本体を有するポンプ組立体含む。第一のポンプ本体は、第一のチャンバ、ここで第一のチャンバが第一のチャンバ壁及び第一の側壁を含む;第一の入口及び第一の出口、ここで第一の入口及び第一の出口が第一のチャンバと流体連通している、を含む。ポンプ組立体は第二の流動体流路を画成する第二のポンプ本体も含む。第二のポンプ本体は、第二のチャンバ、ここで第二のチャンバ壁及び第二の側壁を含む;第二の入口及び第二の出口、ここで第二の入口及び第二の出口が第二のチャンバと流体連通している、を含む。ポンプ組立体は、第一のチャンバと第二のチャンバの間に配列された可撓性膜も含む。マイクロポンプは ポンプ組立体と協動するために構成されたアクチュエータ組立体も含む。アクチュエータ組立体は、膜と磁気的に連結された駆動体(driver)、及び膜の位置を検出するために構成されたセンサ、ここで駆動体が膜に磁力をかけて、膜をゆがませ、そしてここで膜のそのようなゆがみによって第一のチャンバ及び第二のチャンバ内の圧力を変化させ、そうすることによって流体の流れを起こす、を含む。
【0014】
本開示の別の態様は、流体リザーバから流体を送達するためのマイクロポンプ組立体を含み、ここでマイクロポンプ組立体はポンプカートリッジを含む。ポンプカートリッジは、第一のチャンバ、ここで第一のチャンバが第一のチャンバ壁及び第一の側壁を含む;第一の入口及び第一の出口、ここで第一の入口及び第一の出口が第一のチャンバと流体連通している、を画成する。ポンプカートリッジは第二のチャンバを画成する第二のポウプハウジング、ここで第二のチャンバは、第二のチャンバ壁及び第二の側壁、第二の入口及び第二の出口を含む、ここで第二の入口及び第二の出口が第二のチャンバと流体連通している、及び第一のチャンバと第二のチャンバの間に配列された可撓性膜、ここでポンプカートリッジが流体リザーバから第一のチャンバ及び第二の一チャンバの少なくとも一つに液体流通を可能ならしめるために構成される、を含む。マイクロポンプ組立体は、マイクロポンプカートリッジと協動するために構成されたアクチュエータ組立体を取り囲むハウジングを更に含む。アクチュエータ組立体は、膜と磁気的に連結された駆動体、及び膜の位置を検出するために構成された第一のセンサを含み、ここで駆動体が膜に磁力をかけて、膜をゆがませ、そしてここで膜のそのようなゆがみによって第一のチャンバ及び第二のチャンバ内の圧力を変化させ、そうすることによって流体の流れを起こす。マイクロポンプ組立体は、駆動体に連結され、そして第一のセンサからの入力を受け取り、そして駆動体によってかけられる磁力を調節することによって膜の位置を制御するために構成されるコントローラーを更に含む。マイクロポンプ組立体は、駆動体及びコントローラーにエネルギを与えるために構成される電源供給部を更に含み、ここでハウジングは、マイクロポンプカートリッジがアクチュエータ組立体内に挿入され得て、そしてその内に保持され得るように構成される。
【0015】
本開示の別の態様は、マイクロポンプの加工方法である。本方法は、次の工程を含む:シリコンウエハ上へ第一のポリマー層をスピンコーティングし、そして第一のポリマー層を硬化させる、磁性材料を第一のポリマー層の上に置く、磁性材料の周りに第二のポリマー層を塗布し、そして第二のポリマー層を硬化させる、及び第三のポリマー層を塗布し、そして第三のポリマー層を硬化させる、工程を含む、ポリマー材料からの可撓性膜の加工;流体チャンバ、入口チャンネル及び出口チャンネルを形成するために構成された金型内に液体ポリマー材料を注入し、そして液体ポリマーを硬化させることによる剛直ポンプ本体の加工;可撓性膜と剛直ポンプ本体の整列;及び剛直ポンプ本体への可撓性ポリマー膜の付着。
【0016】
本開示の別の態様は、流体を送達するためのマイクロポンプである。本マイクロポンプは、第一のチャンバを画成する第一のポンプ本体を有するポンプ組立体を含む。第一のチャンバは、第一のチャンバ壁及び第一の側壁、第一の入口及び第一の出口、ここで第一の入口及び第一の出口が第一のチャンバと流体連通している、及び第一のチャンバの壁の反対側に第一のチャンバに亘って配列される第一の可撓性膜を含む。ポンプ組立体は第二のチャンバを画成する第二のポンプ本体、ここで第二のチャンバは第二のチャンバ壁及び第二の側壁、第二の入口及び第二の出口、ここで第二の入口及び第二の出口が第二のチャンバと流体連通している;及び第二のチャンバ壁の反対側の第二のチャンバに亘って配列された第二の可撓性膜を含む。ポンプ組立体は、第一のポンプ本体と第二のポンプ本体の間に配列される少なくとも第三のポンプ本体を更に含む。第三のポンプ本体は、第三の側壁、第三のチャンバ、第三の入口及び第三の出口を画成し、ここで第三の入口及び第三の出口は第三のチャンバと流体連通しており、ここで少なくとも第三のチャンバは第一のチャンバ及び第二のチャンバに隣接する。マイクロポンプ組立体は、ポンプ組立体と協動するために構成されたアクチュエータ組立体を更に含む。アクチュエータ組立体は、第一の膜及び第二の膜と磁気的に連結された駆動体、及び第一の膜及び第二の膜の位置を検出するために構成された少なくとも一つのセンサを含み、ここで駆動体は第一の膜及び第二の膜に磁力をかけて、第一の膜及び第二の膜をゆがませ、そしてここで膜のそのようなゆがみによって第一のチャンバ、第二のチャンバ及び第三のチャンバ内の圧力を変化させ、そうすることによって流体の流れを起こす。
【0017】
添付図面を参照して本開示を以下に述べるが、それは非限定な例としてのみ与えられる:
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本開示のマイクロポンプ組立体の実施態様の斜視図である。
【図2】図1のマイクロポンプ組立体の展開図である。
【図3】一方向流を生みだすためのノズル/ディフューザー流れエレメントを有するポンプ本体の斜視図である。
【図4】裁頭円錐台構成を有するノズル/ディフューザー流れエレメントの模式図である。
【図5】裁頭ピラミッド台構成を有するノズル/ディフューザー流れエレメントの模式図である。
【図6】流体流路を図示している単一チャンバマイクロポンプの模式図である。
【図7】組み合された平行流路を示す本開示の二重チャンバマイクロポンプの組立体の断面図である。
【図8】本開示のマイクロポンプ組立体の実施態様の斜視図である。
【図9】図8のマイクロポンプ組立体の展開斜視図である。
【図10】マイクロポンプカートリッジ及びアクチュエータ組立体リセプタクルの斜視図である。
【図11】本開示のマイクロポンプの膜の実施態様の有限要素モデルの図(plot)である。
【図12】本開示のマイクロポンプの膜の実施態様の有限要素モデルの図(plot)である。
【図13】本開示のマイクロポンプの膜の実施態様の有限要素モデルの図(plot)である。
【図14】本開示のマイクロポンプの膜の実施態様の有限要素モデルの図(plot)である。
【図15】本開示のバルブレスマイクロポンプの実施態様に対するディフューザーの縦横比と共に変化する共鳴周波数の図である。
【図16】本開示のバルブレスマイクロポンプの実施態様に対するディフューザー開口角と共に変化する共鳴周波数の図である。
【図17】本開示のバルブレスマイクロポンプの実施態様に対するディフューザー高アスペクト比と共に変化する共鳴周波数の図である。
【図18】本開示のバルブレスマイクロポンプの実施態様に対するチャンバ深さと膜厚みの厚み比と共に変化する共鳴周波数の図である。
【図19】本開示のマイクロポンプの実施態様に対する膜移動対時間の図である。
【図20】排出モードにおいて最大移動を示す本開示のバルブレスマイクロポンプの例示的実施態様の有限要素モデルである。
【図21】吸引モードにおいて最大移動を示す本開示のバルブレスマイクロポンプの例示的実施態様の有限要素モデルである。
【図22】本開示のマイクロポンプと共に使用するためのマイクロ流体工学コネクターを図示する。
【図23】最大ポンピング流速が、異なる作動電流に対する励起周波数に依存することを示す図である。
【図24】異なる作動電流振幅に対する最大流速の図である。
【図25】最大ポンピング流速の比較である。
【図25A】アクチュエータの装填(loading)前後での方形波励起信号の図である。
【図26】励起周波数と共に変化する流速を示す図である。
【図27】励起周波数と共に変化する流速を示す図である。
【図28】励起周波数と共に変化する流速を示す図である。
【図29】アクチュエータの温度の時間経過の図である。
【図30】操作中の本開示のマイクロポンプの実施態様の模式図である。
【図31】操作中の本開示のマイクロポンプの実施態様の模式図である。
【図32】操作中の本開示のマイクロポンプの実施態様の模式図である。
【図33】磁石位置センサの場所の模式図である。
【図34】作動コイル及び磁石のそれぞれの磁場密度の代表的な図である。
【図35】作動コイル及び磁石のそれぞれの磁場密度の代表的な図である。
【図36】磁場摂動の図である。
【図37】磁場強度の図である。
【図38】センサによって測定された磁場摂動の図である。
【図39】センサによって測定された磁場強度の図である。
【図40】電圧パルスに対するセンサ応答の図である。
【図41】摂動測定の図である。
【図42】磁石の位置の関数としての測定された磁場の図である。
【図43】本開示の制御システム実施態様の略図である。
【図44】本開示のフィードバックループの略図である。
【図45】図43の制御システムの詳細な略図である。
【図46】感知モードにおける本開示の制御システムの操作のフローチャートである。
【図47】校正(calibration)モードにおける本開示の制御システムの操作のフローチャートである。
【図48】本開示のマイクロポンプ実施態様に対するヒステリシス図である。
【図49】本開示の閉ループ制御システムにおける位置及び設定点の図である。
【図50】本開示のマイクロポンプと共に使用され得る逆止弁を描いている。
【図51】本開示のマイクロポンプと共に使用され得る逆止弁を描いている。
【図52】本開示のマイクロポンプと共に使用され得る逆止弁を描いている。
【図53】本開示のマルチチャンバマイクロポンプの例示的実施態様である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで図1及び2を参照すると、本開示のマイクロポンプは、第一のポンプ本体12及び第二のポンプ本体24並びにその間に配列された可撓性膜36を有するポンプ組立体10を含む。第一のポンプ本体12は第一の本体流路を画成し、そして第一のチャンバ壁16及び第一の側壁18を有する第一のチャンバ14を含む。第一のポンプ本体12は、第一のチャンバ14と流体連通している第一の入口20及び第一の出口22を更に含む。同様に、第二のポンプ本体24は第二の本体流路を画成し、そして第二のチャンバ壁28及び第二の側壁30を有する第二のチャンバ26を含む。第二のポンプ本体24は第二のチャンバ26と流体連通している第二の入口32及び第二の出口34を更に含む。
【0020】
本開示のマイクロポンプは、可撓性膜36に磁気的に連結された駆動体も含む。図1及び2において示された実施態様において、駆動体は第一の磁気コイル38及び第二の磁気コイル40を含む。磁気コイル38、40は、磁石42、44との電磁気的連結を通して可撓性膜36上に磁力を付与するために構成される。
【0021】
本開示のマイクロポンプは、流体に一方向流れを付与するように意図されている。そのような一方向流れは逆止弁を使用して又は使用せずに達成され得る。マイクロポンプの代表的操作流速は、略毎分2、3μlからmlの範囲である(非機械的マイクロポンプに対しては10μl/分未満、一方、機械的マイクロポンプに対しては平均流速が数mlまでである)。このように、インプラント可能な薬物送達、化学的及び生物的検出、並びに心臓病学システムにおける血液の輸送用の、流体の細かな規制及び正確な制御システムのような用途において、広範囲の生物医学用途が見出される。
【0022】
しかしながら、高い圧力損失、固体粒子に対する感度並びに可動バルブの摩耗及び疲労のような、逆止弁に伴う問題がある。従って、逆止弁の必要性を取り除くために、逆止弁を代替するために及び流れを整流化するために、ノズル/ディフューザー構成が使用され得る。このように、好ましい方向に流れを向けるためのノズル/ディフューザーエレメントを通る流れの抵抗の違いを利用したマイクロポンプは、本明細書では「バルブレスマイクロポンプ」と呼ばれる。
【0023】
本開示の一つの例示的マイクロポンプにおいて、一方向性の整流された流体流れは、入口20、32及び出口22、34で、ノズル/ディフューザー流路を使用することによって、逆止弁なしで達成される。第二のポンプ本体24の実施態様を示している図3を参照しながら、バルブレス実施態様の特長を説明する。第一のポンプ本体が同一の特長を有し、そして簡明を期すために省かれていることが明白であろう。この実施態様において、入口32及び出口34は、それぞれ入口ディフューザー46及び出口ディフューザー48を含み、これらは第二のチャンバ26と流体連通している。
【0024】
入口ディフューザー46を特別に参照すると、ディフューザーエレメントは、第二の入口32を第二のチャンバ26に接続している一対の壁50、52を含む。壁50、52は、角度θで配列され、そして長さがLのものである。壁50、52は幅W1を有する入口
のど部(inlet throat)54、及び幅W2を有する出口端56を画成し、ここでW2はW1
より大きい。図3において示された実施態様において、入口及び出口のディフューザー46、48の深さは第二のチャンバ26の深さと等しく、それは簡略化された製造を可能にすることが分かったが、図4において示された裁頭円錐台構成及び図5において示された裁頭ピラミッド台構成を含む他の構成も受け入れ得る。
【0025】
図4の裁頭円錐台のディフューザーは、直径D1の入口のど部54及び直径D2の出口端56を含み、ここでD2はD1より大きい。裁頭円錐台のディフューザーは、2θの角度で配列された壁58も含む。同様に、図5の裁頭ピラミッド台のディフューザーは、断面積A1の入口のど部54及び断面積A2の出口端56を含み、ここでA2はA1より大きい。裁頭ピラミッド台のディフューザーは、2θの角度で配列された壁セグメント60も含む。
【0026】
簡略化するために、図6は、単一チャンバ62、単一磁石64、及び電力供給部68によって力を与えられる単一電磁コイル66を有するマイクロポンプの略図を示す。流体リザーバ70中に含有される流体は、入口チューブ(tubing)72を通って入口ディフューザー46へ進みチャンバ62内に流れ、ここでそれは出口チューブ74を通って、出口ディフューザー48を通ってその意図された使用のためにポンプ注入される(pumped)。
【0027】
図7を参照すると、本開示のバルブレスマイクロポンプの実施態様は、組み合された平行流路を含み得て、ここで二重チャンバマイクロポンプ10が、共通入口76及び共通出口78と流体連通している第一のチャンバ14及び第二のチャンバ26を有するように構成される。勿論、明らかなように、図7において描かれているマイクロポンプ7の実施態様は、別々の平行流路を有するように構成され得る。別々の平行流路は、二つの異なる流体の同時流れを可能にするであろう。
【0028】
ここで図8及び9を参照すると、本開示の別の実施態様において、前述のようなマイクロポンプ10はデバイス200の部分として含まれ、そしてハウジング202、204内に囲まれる。ハウジング202、204は、コントローラー(示されていない)を含むように構成される。コントローラーは制御パネル206に接続されて、使用者が流速などの操作パラメーターを入力できるようにする。制御パネル206はディスプレイ208及び一つ又はそれ以上の入力ボタン210を含む。ハウジング204は、マイクロポンプ10の流体リザーバとして働くガラス瓶212を受け取るように構成される。例示的実施態様において、ガラス瓶212はインスリン、又は如何なる他の薬物、生物製剤又は化合物を含有し得る。ハウジング204は、ハウジング内に挿入された際に、ガラス瓶212がマイクロポンプ10と流体連通しているように構成される。ハウジング204は、アクチュエータ及びコントローラー用の電源供給部として電池214を受け取るようにも構成される。図9において示された実施態様において、バッテリは標準の9Vバッテリとして描かれている。しかしながら、用途次第で、他のタイプのバッテリも受け入れ得て、例えば、3Vのコイン電池(時計型)バッテリが、全体サイズが重要事項である用途に使用され得る。
【0029】
ここで図10を参照すると、図1のマイクロポンプ10は、駆動体90内に挿入可能なポンプカートリッジ80として構成され得る。ポンプカートリッジ80は、第一のポンプ本体12、第二のポンプ本体24及びその間に配列された可撓性膜36を含む。ポンプカートリッジ80は、場合により逆止弁マニホールド82を含み得る。あるいは、ポンプカートリッジ80は本明細書に開示された通りのバルブレス設計のものであり得る。次いで、入口及び出口のチューブ72、74は逆止弁マニホールド、又はバルブレスマイクロポンプの場合においては、第一の及び第二のポンプ本体の入口20、32及び出口22、34に直接、接続される。
【0030】
駆動体90は第一の支持体92及び第二の支持体94を含み、ここで第二の支持体94は第一の支持体92とは別にそして離れて配列される。第一の及び第二の支持体92、94各々は、ソレノイド又は活性化コイル(示されていない)を受け取るために各々構成される凹部96、98をそれぞれ含む。第一の及び第二の支持体92、94はポンプカートリッジ80を受け取るために構成されたリセプタクル100を画成する。
【0031】
マイクロポンプのための幾つかの提案された機構が既に報告されており、主として圧電的、静電的、電磁気的及び熱空気的な作動、並びに形状記憶合金などを含む。マイクロポンプの大部分は圧電的又は静電的な作動を採用し、それは比較的高い周波数で操作され、そして最小の膜移動に対して数百から数千の大きさの高い電圧を必要とする。電磁気的作動に関しては、大きな移動、早い応答時間及び比較的に低い電力消費が高度に望まれるとき、それは他の作動方法に対してそれが有利であることが示される。統合された磁石を有する膜の磁気的作動は、数百μN及び大きな膜のゆがみを生みだすことができる。これらの望ましい性質は多くの医療用途に対して非常に魅力的である。従って、電磁気的に駆動されるバルブレスマイクロポンプの共鳴周波数に及ぼす流体−膜連結効果を以下のセクションにおいて詳細に論じる。
【0032】
作動力はポンプ中の作用媒体を駆動するために振動する膜を通してかけられる。従って、マイクロポンプの信頼性及び性能は複合膜の動的特性に依存する。
【0033】
振動する膜に対して、密度、ヤング率及びポアソン比などの材料物性が、膜の固有周波数に著しく影響を及ぼすであろう。例えば、MEMSデバイスにおいて、殆どの膜は、幾つかの感知膜層又は作動膜層を含む統合された複合層である。この特定の例において、特性は個々の材料の膜から全く異なる。このように、複合層の同等の密度が適切に得られなければならない。
【0034】
磁気的に作動される膜マイクロポンプにとって、機能膜を作出するための二つのスキームがある。一つは電気メッキされたソフト磁性材料であり、又は膜の上面に付着された永久磁石を用いて、幾つかの永久磁石が手動でPDMS膜内に組立てられる。次いで、膜の動きを制御するために、永久磁石又は基板中に統合された平面マイクロコイルのどちらかによって、外部磁場がかけられる。膜中に埋め込まれたバルク磁石の寸法及びレイアウトが電磁場及び膜の剛性の分布に影響を及ぼし得るので、本明細書においては、複合膜が磁気的性質で加工される。
【0035】
ケイ素、窒化ケイ素及び薄い金属板はマイクロポンプ用の膜材料として適している。例えば、数ミクロンの範囲にある薄いケイ素膜は、現在のマイクロマシニング技術を用いて実現することができる。しかしながら、ケイ素のヤング率は190Gpaであり、それが往復ポンプに対するその適用を制限する。パリレン、ポリアミド、ポリイミド、SU−8及びPDMSなどの可撓性材料を用いてポンプ膜が得られる。これらの膜は小さな作動圧力しか必要とせず、そして大きなゆがみ及び大きなストローク体積を有する。本開示の例示的実施態様において、PDMS(Silgard184,ダウコーニング社製)はマイクロポンプ本体及び作動膜の両方用に使用される。
【0036】
その低弾性率並びにケイ素及びガラス基板の良好な相溶性故に、PDMS (Sylgard184 Silicon Elastomer、ダウコーニング社)は、例示的実施態様において膜材料として選択される。硬いバリウムフェライト粉末(UMBS-1B: Unimagnet Industry社、中国)はPDMS内に混合され(重量比で1:1)作動膜を開発する(develop)。複合膜は均一か
つ等方的な材料物性を有し、そして外部磁場において二方向性のゆがみを生みだすことができる。本開示の例示的実施態様の成分に対する材料物性を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
加工の主たる課題は薄い複合膜を生産することである。バルク磁石を有する薄い複合膜は、加工プロセス中に金型から取り出されるときに割れやすく、然るに、厚い膜は磁場の下でゆがみが限られるという不利な点を課せられる。例示的実施態様において、0.15mmの厚みのPDMS層がシリコンウエハ上にスピンコートされ、そして75℃で2時間、硬化される。第一のPDMS層の中央部に磁石が置かれる。次いで、液体PDMSが磁石の周りに注入されて0.5mmの厚みの層を形成する。余分のPDMSを除くためにガラススライドが使用される。膜は100℃の熱板上に30分間置かれる。最後に、0.15mmの三番目のPDMS層が最上部上にカバーされ、そして75℃で2時間、硬化される。
【0039】
複合膜の極性は、バルク磁石の極性に依存する。このように、膜上の磁力は、磁場が切り替わるにつれて反転される。振動する膜の振幅及び周波数は、ソレノイドアクチュエータにかけられたAC方形波入力電流によって制御される。電磁力は膜解析のために直接、測定される。複合膜上で異なる電流を用いて全静的電磁力が測定されそして表2にリストアップされる。吸吸引力から生じるエアギャップが減少することから、吸引力が反発力より大きいことが分かる。このように、複合膜は、磁力と膜の弾性力の間のバランスがとられるまで動きを止めないであろう。膜上の最大吸吸引力及び反発力は、0.2Aの電流下で、それぞれ23.7mN及び21.7mNであり、それは複合膜の最大ゆがみ及び応力分布をFEAによって推定するために使用されるであろう。
【0040】
【表2】
【0041】
共鳴周波数
市販品のソフトウエアANSYS10.0が複合膜をモデル化するために使用される。二つのタイプの3Dエレメントタイプが主として使用される:Solid45及びShell63。Solid45は、埋め込まれたバルクNdFeB磁石(厚さ:0.5mm)用のエレメント、及び磁石の周りのPDMS層(厚さ:0.5mm)のエレメントとして使用される。複合構造の最上部及び最下部上に被覆された0.15mmの厚さを有する別の二つのPDMS層は、図11において示された通り、エレメントタイプShell63とかみ合わされる(meshed)。このモデルにおいて、1917のノード及び2208のエレメントがある。計算のために使用された膜の材料物性を表3に示す。膜の直径(7mm)に比べてマイクロ溝の端部幅(0.38mm)が小さいので、本明細書においては、複合膜の全ての固定された端部境界条件が仮定される。
【0042】
【表3】
【0043】
複合膜の台形の断面積及び34.34μmの最大ゆがみが図12において観察される。この値は流体チャンバの深さより小さい。このように、特に、流体が装填されて流体の抵抗が膜に影響を及ぼすときに、膜はチャンバの底に触れない。複合膜の異なる材料物性のために、磁力はバルク磁石領域上に集中される。膜の応力分布を図13に示す。バルク磁石の四角い形状のために、集中された応力領域は、基本的に磁石の4つのコーナー上に分布される。膜における最大応力は約0.1425MPaであり、これはPDMS材料のせん断応力より小さい。膜の静的解析によって、マイクロポンプの操作の安全性及び信頼性が確保される。
【0044】
図14は可撓性膜の第一の及び第二のモード形状を示す。埋め込まれたブルク磁石のために、基本モードにおいて膜が一つの方向に曲がり、そして中央領域においてピークが生じることが観察される。第二のモードに対しては二つのピークがあり、一つは上向き、そして他方は下向きである。高ポンピング流速を得るために最大ストローク体積が要求されるので、第一のモードが好まれる。この解析によって、第二の振動モード下でなぜ流速が前者より低いかも説明される。流体がチャンバ中に装填されるとき、膜の動的特性に及ぼす追加質量及び減衰効果の故に、共鳴周波数が低下する。
【0045】
共鳴周波数のこの近似は、膜の弾性がばねによって表され、そしてチャンバ中の流体が質量によって表される、質量−ばね類推法を使用することによって単純化され得る。しかしながら、計算された周波数と測定された周波数の間の不一致は、36%と大きい(計算された周波数と測定された周波数:それぞれ734Hz、540Hz;4238Hz、3350Hz)。それはノズル/ディフューザーエレメントにおける非線形挙動を無視して、共鳴周波数の過大評価に導く。近似モデルは、一組の偏微分法方程式に基づいて、ポンピングチャンバ中の膜の振動及び流体並びにノズル/ディフューザーエレメントを連結する。厚みh、質量密度ρmを有する薄い円形膜の、膜−流体連結支配方程式は次の通りである:
【数1】
ここで
【数2】
は曲げ剛性;
【数3】
は、極座標におけるラプラシアン演算子;v及びEはそれぞれポアソン比及びヤング率である。
【0046】
膜のゆがみは膜の特性長に比べてかなり小さい。このように、薄板の小ゆがみ理論が膜マイクロポンプにおいてやはり適用できる。板は、線形の弾性のある、均一なそして等方的材料でできており、そしてせん断変形の影響は無視されると仮定される。この解は以下の形態を取る:
【数4】
ここで
【数5】
ここでmとnは節円及び直径線の数であり;Amn、Bmn、Cmn及びDmnは境界条件によって定められるモード形状定数である。Jm、Ymは第一の種及び第二の種のベッセル関数であり、Im、Kmは第一の種及び第二の種の修正されたベッセル関数であり;そしてRは膜の半径である。
【0047】
流体側上で、我々は、流体流れを非圧縮性の層流として考える。更に、我々は、流体の装填が、有効質量及び減衰を加えるであろうものの、モード形を変化させないと仮定する。従って、図3において図示された各エレメント内部での流体の流れを述べるために、ナビエ−ストークス(Navier-Stokes)方程式及び質量連続方程式が使用される。
【数6】
ここで
【数7】
は、x、y、z方向における流体速度である。動圧pは、ポンピング相中の膜振動と流体の流れの連結を表す。
【0048】
入口及び出口を通る体積流は、内部から外部に向かってQn及びQdとして表すことができる。圧力損失は
【数8】
として表すことができ、ここでξは損失係数、そして
【数9】
はノズル/ディフューザーエレメントののど部領域を通る平均流速を意味する。膜のゆがみwは、以下のように表される流体体積の変動に繋がる:
【数10】
従って、体積変化の速度は以下によって与えられる:
【数11】
【0049】
特別な場合に対して、圧力差がなく、入力圧がゼロで、そして励起力が正弦的であると仮定される。式(1)〜(6)を解くと、流体効果を考慮した共鳴周波数の元の式は(11)において得られ、そして以下の形態として書き替えることができる:
【数12】
ここで、βは有効流体質量と膜の質量の間の比に対応し、それは流体と膜の密度比、振動する膜の面積Am、及びディフューザーエレメントの寸法変数(図3において示される通りの、チャンバ高さH、ディフューザーエレメントの長さL及びのど部セクションの幅W)を関係付ける。ここでf0は締め付けられた端部の薄板の基本周波数である。従って、式(7)は、膜マイクロポンプの共鳴周波数が、膜のモーダル性質、流体と膜の間の密度比、並びにマイクロポンプの幾何形状及びサイズに関係することを意味する。
【0050】
スウェーデン、ストックホルムのCOSMOL AB社によるCOSMOLモデリングソフトウエアにおける音響学及び構造力学のモジュールの組合せは、連結された流体−弾性構造の相互作用の問題を取り扱うことができる。マルチフィジックスカップリング(multiphysics coupling)において、音響解析によって構造に対する負荷(圧力)が供され、そして構造解析によって音響解析が加速される。ここで、圧力は、流体中の音速を通して密度に関係する。膜は外側端部で締め付けられ、そこでは移動及び速度がゼロであると仮定される。電磁場の下で膜が曲っているとき、流体からの音響圧力が正規の負荷として作用している。流体部分に対して、マイクロポンプの基板が完全に剛直な壁であり、従って正規の加速がディフューザー/ノズルエレメントの壁及び流体チャンバの壁で消えると我々は仮定する。流体−壁インターフェイスで滑らない条件が設定され、そして入口と出口で圧力境界条件が無いと設定される。全ての境界条件は前に論じたものと同じに設定される。
【0051】
式(7)〜(11)は、多くの影響パラメーターが共鳴周波数の変化に寄与することを示唆している。このように、これらの因子を同定するために、Buckingham II定理を用いて無次元変数を確立することが必要である。
【数13】
ここで、L/W1はディフューザーの縦横比として定義され;θはディフューザーの開口角度であり;H/W1はディフューザーの高いアスペクト比であり;H/hは厚み比である。このように、流体−膜連結を有する膜マイクロポンプの共鳴周波数と幾何学的影響パラメーターの間の相関を直接示すために、W及びhが特定された後、解析解及び数値解が図15〜18においてプロットされている。この例においては水が使用される。
【0052】
図15〜18において示される通り、共鳴周波数とディフューザーの縦横比(L/W1)の間の逆比例関係、及び共鳴周波数と開口角(20)、高アスペクト比(H/W1)及び厚み比の間の正比例関係が、有限要素法及び解析解の両方において観察される。更に、FEA解は解析予測と大きさにおいてよく一致する。解析解はFEA解の20%以内である。比較のために、試験のために空気が装填されたとき、この違いは10%と小さく低減することができる。前述の解析に基づいて、特定のマイクロポンプモデルの寸法(逆止弁なし)が図4において選択され、そして作用流体の室温での性質が表5においてリストアップされる。
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
この作動膜の最初の二つの共鳴周波数は、流体が装填されていないとき、約138.106Hz及び287.222Hzである。空気が装填されているとき、共鳴周波数は、少し低下して104.762Hz及び284.198Hzになる。水が試験用に使用されるとき、周波数はそれぞれ5.531Hz及び65.269Hzである。この比較は、システムに加えられた質量による密度の増加によって共鳴周波数が低下し、そして流体密度が高いほど減衰効果がより明らかであることを示している。円形膜は、第一の共鳴周波数の下、一方向に曲がり、膜の中央において一つのピークを有することが観察され、そしてそれはマイクロポンプ作動において好まれる。これは流体の装填がモーダル形状を変化させないという仮定と一致する。
【0056】
流体減衰効果がポンピング作用中に起きることを証明するための別の観点は膜の移動である。マイクロポンプの過渡解析がある期間に実施され、そして作動膜の流体減衰又は流体無装填との比較が図19において示される。0.05秒及び0.15秒で、膜の最大移動が反対方向に起こり、そして図20及び図21において示される通り、マイクロデバイスはポンプモード及び供給モードにそれぞれある。作動膜のゆがみ振幅は0.4Aの励起電流で87.691μmであり、流体がチャンバ中に全く連結されていないときの104.5μmより小さい。このように、膜のゆがみ振幅は16.09%だけ小さくなる。これは流体の減衰効果がポンピング作用中に起こることを再び暗示する。
【0057】
よりよい性能及び信頼性を考慮すると、マイクロ溝を有する剛直な流体チャンバであり、一方、デバイスに対しては可撓性な作動膜が望まれる。ソフトで可撓性なポリマーチャンバがマイクロポンプ全体を通して振動を引き起こすであろう。混合物中の硬化剤の割合を増すと、PDMSの剛性が増大する。従って、流体チャンバ用の剛直基板を供するために、PDMS混合物中の硬化剤は約5:1(PDMS:硬化剤)の比率で添加される。膜に対するこの比率はPDMS対硬化剤で10:1である。次いで、液状PDMSがSU−8金型に注入され、そして硬化されて望みの微細構造が得られる。最後に、二つの層が注意深く配列され、そして一緒にプレスされる。
【0058】
接合技術については、室温及び常圧のような通常の作用条件が低コスト加工に対して好まれる。多層PDMSマイクロデバイスが過去数年において増々関心を持たれにつれて、幾つかの異なるPDMS接合技術が報告されており、そしてそれらの接合力が比較されてきた。迅速だが高価な酸素プラズマ接合は、PDMS層を付着させるために依然として広く使用されている方法であり、一方、未硬化PDMS接着剤は、酸素プラズマ接合に対する効果的でかつ簡単な代替法を供する。これらの方法の両方共、本開示の実施態様の作動膜及び流体チャンバ基板の組立に対して受け入れることができる。未硬化PDMSの非常に薄いフィルムが、成形された流体チャンバPDMS基板の表面に100℃の熱板上で20分間、塗布される。あるいは、酸素プラズマ処理(Spacemaker II(登録商標)、電子レンジ、10%酸素で10秒間)も、流体チャンバ及び入口/出口マイクロ溝をつシールするための二つのPDMS層の間の非常に強い接合法を供する。マイクロポンプの重量を測定したところ約1.47グラムである。
【0059】
マイクロポンプが組み立てられた後、直面する別の課題は、マイクロデバイスと、マクロシリンジ及びチューブなどの標準流体装置の間の相互接続性である。マイクロ流体工学は、ミリメーター又はそれより小さいオーダーの寸法を含み、そのため異なるサイズのチューブを収容するための容易に入手可能なマイクロ流体的接続はない。中央貫通穴、及びマイクロ流体的デバイスとプラスチック取り付け部品302を接続するための両面接着剤を含むPDMSコネクター300は、図22において示されるCNC機械加工によって加工される。取り付け部品(fitting)302は、チューブ306に接合された一つの小さな端部304を含み、そして他方の円錐端部308は軟質ポリマーデバイス内にプレスされる。
【0060】
ある期間に亘る平均体積束はマイクロポンプの最も重要な特性の一つである。本明細書において、ノズル/ディフューザーエレメント及び流体チャンネルにおける慣性効果及びエネルギ損失、並びに作動膜における損失が考慮される。周波数依存型の流速は流体−膜連結支配式(1)〜(4)及び流体体積式(5)〜(6)に基づいて導かれた。
【数14】
項C1は膜の慣性効果を表し;C2はポンプ内部の流体の慣性力を考慮し;C3はノズル/ディフューザーエレメント中の粘性損失効果を反映し;C4はノズル/ディフューザーエレメント内部の流体の慣性効果を表し;Cは流体及び膜の全ての慣性の寄与を関係付ける。Fは無次元の作動力であり、そして入口と出口の間には圧力差は全くない。図10において示される通り、もし平行二重流体チャンバ構成が使用されるならば、項C2、C3及びC4はそれに対応して倍にされる。
【0061】
上で展開された理論は、圧力損失係数の間の比(ξn/ξd)が、ポンピングストローク効率を最大化するために、できるだき大きくあるべきであることを示す。従って、ノズル/ディフューザーポンプは、各ポンピングサイクルに対して、ノズルからディフューザーへの正味の流れを生じ得るであろう。これらの式から、我々は、流速が三つの因子によって影響されることを観察する:つまり、励起周波数と膜の基本周波数の比(ω/ω0)、
密度比(Rρ)及び損失係数(α及びβ)を定める幾何学的サイズ比。なお、Buckingham II理論によると圧力低下は主として無次元変数に依存するので、圧力損失係数(ξn=1.01そしてξd=0.449)は、低いレイノルズ数で有限要素解析(FEA)を使用することによって数値的に導かれる。再び:
【数15】
【0062】
一方、ノズル/ディフューザーエレメント内部の表面粗度は圧力低下にもある程度寄与する。しかしながら、もしマイクロポンプが既に加工されおり、そして流速が直接、測定され得るならば、マイクロノズル/ディフューザーの幾何学的サイズを正確に測定し、そして損失係数を計算することは必要でない。従って、FEAは、概念設計段階中の、損失係数を計算するための、そしてポンピング流速を予測するための効果的な手法である。セクション3における解析及び励起周波数の実際の要求事項に基づいて、表4において示された望まれた寸法を有するバルブレスマイクロポンプが、周波数依存性能を調べるために使用される。
【0063】
図23において示されるグラフは、マイクロポンプのポンピング流速が、0Hzから20Hzまで変わる励起周波数の関数であることを示す。流速は、低い周波数範囲では励起周波数と共に殆ど直線的に増加し、そして次いで流体の減衰と共に作動膜の共鳴周波数で最大流速に達する。流速のピークの後、ポンピング速度はより高い周波数で急激に低下する。図24を参照すると、最大ポンピング速度は作動電圧振幅と共に直線的に増大する。0.4A及び2Aでの最大流速は、それぞれ19.61μl/分及び43.86μl/分である。電圧振幅の増大は膜の変形の増大に繋がる。例えば、薬物送達システムにおいて同じ入力電力エネルギを保持しつつ高い流速の要求を満すために、平行二重チャンバ構成が図7において図示される。しかしながら、逆相で作用する後者に対して流体体積が二倍になるけれども、励起周波数が3Hz、入力電流が0.4Aの条件下で最大流速が27.73μl/分前後であることは興味深い。これは図25において示される通り、同じ電流の大きさだが4.36Hzの励起周波数で操作される前者の19.61μl/分の二倍より小さい。両方のチャンバ内部の流体が効いているので、この結果も合理的である。
【0064】
本開示のマイクロポンプの例示的実施態様において、複雑で厳密な加工プロセスを避けるために、マイクロコイルを統合する代わりに、磁気的作動のための、低コストで簡単なソレノイドが開発される。外部磁気アクチュエータの構造がその用途に制限を課すけれども、大きな力、迅速な対応及び低い電力消費が高く望まれ、一方でサイズは二次的考慮要素である場合、電磁作動はやはり他の作動方法に対して有利であることを示す。簡単な設計で加工が容易であるため、電磁石は、ソフトな円筒状鉄棒(直径5mm×10mm)の周りに巻き付けられた電磁誘導コイル、及び統合された小さなバルクNdFeB磁石(寸法:3×3×0.5mm3及び重量が0.03g:ドイツ、ベルリンのNeotexx社製)を有する可動膜から成る。非常に短い距離に亘って典型的には弱いものの、電磁気駆動体は制御可能な磁場を作動回路によって直接、作出することができる。このように、磁場が反転され、それが膜のゆがみを周期的に生みだすときに、この複合膜上で交互に替わる吸引力及び反発力が誘発される。
【0065】
銅コイル(28AWG、460回捲き)の抵抗及びインダクタンスは、100Hzの条件下で約4.40Ω及び3.49mHである。ソレノイドにおける0.5Aを超える電流は熱を非常に早く生みだす。このように、作動の実際の電流は0.5Aより下に制御されるべきである。二つのタイプの作動電流が共通的に使用される:正弦波電流及び方形波電流。同じピークピーク値を用いて、方形波電流は大きなゆがみを維持することができ、そして磁力に変換することができるより多くのエネルギを運ぶことができる。最大−30/+30Vの電圧(BK Precision 1672)のDC電力供給及び方形波発生回路が、図25Aにおいて示された方形波電流を生みだすために使用され得る。コイルのインダクタンス故に、ソレノイドアクチュエータが装填された後、方形波信号は、少し変化する。電池によって代替することができるDC電力供給はマイクロポンプの携帯用途の可能性を有する。信号の周波数は回路中の電位差計の抵抗の細かな調整によって制御することができる。
【0066】
伝導コイル(conducted coil)によって永久磁石上に作用する垂直電磁力Fzは以下の式で与えられる
【数16】
ここでHzはコイルによって生み出される磁場の垂直成分であり、Brは磁石の残留磁気であり、そして、Sm、hmはそれぞれ磁石の表面積及び厚みである。
【数17】
は磁場の勾配である。この式は、電磁力が垂直磁場の変化及び磁石の体積に比例することを示す。
【0067】
本開示のマイクロポンプの例示的実施態様において、表6においてリストアップされた設計パラメーターが使用された。
【0068】
【表6】
【0069】
用途における流速の要求に従い、体積ストローク及び励起周波数がある膜に対して推定することができ、従って作動及び電気入力信号に対して必要な磁力も設計段階中に導き出すことができる。しかしながら、実験によってこれらのパラメーターを推定することは非常に実用的でない。このように、膜の幾何学的様相、流体チャンバの構造、マイクロ溝及び流体の性質が共鳴周波数を定め、その結果マイクロポンプの流速に関係するので、これらのパラメーターを概略推定するために周波数依存型流速式が使用される。
【数18】
ここで
【数19】
はストローク体積であり、
【数20】
はポンプストローク効率として定義され、一方、
【数21】
はディフューザー整流効率であり、そしてfは励起周波数である。
【0070】
次いで、このデバイスにおいて、設計パラメーターは表1における通り定められる。注目すべきは、ストローク体積の増加及びデッドボリュームの減少がポンプの性能を改善する。直径が7mmで、深さが500μmを有するこのポンプの全体積は0.01924mlである。
【0071】
本開示の例示的実施態様に対して、作用流体としてエタノールが使用される。20℃、1気圧での本媒体の物性は表7においてリストアップされている。この例において、セットアップは流体リザーバ(シリンジ)、マイクロポンプ、作動回路基板及び電磁アクチュエータ並びにCCDカメラを有する光学顕微鏡から成る。流体チャンバ内部のエタノール及びポンピングプロセス中に発生した気泡を観察するために顕微鏡が利用される。
【0072】
【表7】
【0073】
入口及び出口チューブは、市販品のTYGON(登録商標)チューブである。入口チューブは流体リザーバに接続される。流体が前方に動いているとき、流体リザーバは流体チャンバを自動的にプライミング(prime)する。自己プライミング能力及び気泡許容度は圧縮比(ポンプの体積ストロークΔVと全デッドボリュームの間の比)から定めることができる。マイクロポンプが加工されたとき、マイクロポンプの全体積は一定であるので、体積ストロークが圧縮比を定めた。この場合、自己プライミング及び気泡許容液体マイクロポンプに対して、圧縮比は、最小圧縮比0.075よりも小さい約0.068であった。
【0074】
マイクロポンプの操作中に、出口チューブ中の流体流れ及び流体の重量が測定される。流体流れに対するチューブの摩擦は特に重要なものである。チューブ中の圧力低下を考慮することが必要である。しばしば、生物医学用途に対するマイクロポンプの当該流速は1ml/分未満であり、そしてレイノルズ数は8.72と推定することができる。このように、チューブを通過する流れは層流である。入口/出口チューブ中の摩擦損失による圧力変化は、ハーゲン−ポアズイユ方程式によって以下のように評価することができる:
【数22】
ここでΔpは流れ抵抗であり;μは流体的粘度であり;ΔL、aはチューブの長さ及び
内径であり;Qは流速である。
【0075】
各流体媒体の圧力低下は、無視することができ(試験におけるチューブの長さは約5cm、圧力低下は約2.1Pa)、そしてマイクロポンプの性能に著しくは影響しないであろう。
【0076】
最大流速は、ポンプが背圧セロで作用している時の流速である。これらの異なる電流試験に対する入口と出口の間の圧力差は全くない。共鳴周波数で操作中のマイクロポンプは、増大する移動、より高い流速及びより高い変換効率をもたらすことができて、所要電力(power requirements)を低減する。従って、システムの有効励起周波数を制御することが非常に重要になる。励起周波数の範囲における流速を試験するために、0.14A、0.16A及び0.18Aの電流が使用される。結果は図26〜28に図示されている。
【0077】
流れは、マイクロポンプに接続される出口チューブの始まりに近い位置の周りで振動し、そして、周波数が15Hz未満であるとき、ポンプは流体の輸送に失敗する。これは、両方向の低い流体的インピーダンスのためであり、そしてバルブレスポンプがある程度の逆流を蒙るためである。従って、もし励起周波数が低すぎるならば、入口から出口へと十分な正味の流れを蓄積することは困難である。更に、流体流れは脈動的であり、そしてこのバルブレス整流ポンプにおける駆動周波数が20Hz未満であるとき、一定の流速を維持することは困難である。これは、磁気作動においてかけられる方形波信号の周期的な性質からもたらされる。更に、例のこれらの三つのグループの例に対して二つの流速ピークがある。これは、振動する膜の共鳴周波数の最初の二つのモードが達成されるためである。
【0078】
図14において示される通り、膜は一方向にのみ曲がり、一方、膜の半分は上方に、そして残りの半分は下方に曲がる。第一のモードは第二のモードよりもより高い体積ストロークを生みだす。従って、通常、第二のピークでの流速は第一のピークより低い。
【0079】
異なる電流振幅でのこれらの3つのグループの試験の流速曲線において幾らかの違いがある。第一のに、効果的な作用周波数は、安定な流速に対して20Hz〜34Hzの範囲であり、そして二つの共鳴周波数は、第一のグループに対してそれぞれ、25.01Hz及び30.04Hzである。20Hz〜47.5Hz及び20Hz〜50Hzがそれぞれ、第二の及び第三のグループに対周波数範囲である。二つの共鳴周波数は第二のグループに対して25.9及び36.1Hz、そして第三のグループに対して26.1及び37.5Hzである。後の二つのグループの値は非常に近く、一方、第一のグループは少し外れている。流速は、0.14Aの電流で小さく、そしてチューブ中の摩擦が主要な因子になるので、測定誤差が他の二つのグループに比べてより大きい。第二のに、第一の流速ピークに達する前に、流速は励起周波数と共に増大し、次いで急激な低下を伴う。第一のピークより少し低い第二のピークは、励起周波数の増大と共に再び現れる。第三のに、流速は周波数が増えるにつれて低下する。この結果は、流速が当該励起周波数内で制御することができることを暗示する。
【0080】
背圧は通常、流体システムにおける障害物による、自由運動流に抗する圧力を意味する。このように、本開示のマイクロポンプにおいて、最大背圧(Pmax)は、ポンプの流速
がゼロになるとき、流体上に作用する反対圧力として定義される。
【0081】
長期間において一定の連続ポンピングを達成することは、信頼できるマイクロポンプの重要な指標である。チャンバ中に生成する小さな気泡が流速に著しく影響を及ぼし得るので、流体チャンバにおける温度上昇は重要な特性である。更に、高温は、生化学又は生命科学用途における生きた細胞又は鋭敏な粒子を含む流体を損傷しかねない。しかしながら、流体チャンバ内部の温度変化を測定することは容易ではない。むしろ磁性アクチュエータが電流駆動型であり、そしてコイルの温度は迅速に上がるであろう故に、流体温度を推定するために磁性アクチュエータの温度上昇が測定される。流体の真の温度は磁性アクチュエータの温度より少し低くあるべきである。このように、1時間内の温度上昇は、励起周波数が0.18Aで25Hz(共鳴周波数)、そして電磁石と振動する膜の間のエアギャップが約1mmで測定される。図29において示される通り、温度は非線形曲線において21.3℃から38.1℃へと着実に上がる。この温度は、殆どの生物学的流体試料に対する臨界温度より十分低い。本開示のマイクロポンプの実施態様の特性が表8にリストアップされる。
【0082】
【表8】
【0083】
このように、磁気的に作動された軟質ポリマー(PDMS)マイクロポンプの実施態様が、この例において提示されている。流体の流れ方向は、このマイクロデバイスの入口及び出口において異なる流体抵抗を有する二つのノズル/ディフューザーエレメントに依存する。このマイクロポンプ実施態様に伴う幾つかの利点がある。簡単な加工プロセス及び面構造の特長によって、μTASデバイスへの統合が容易にでき、そのことによって全体のマイクロ流体システムの小型化が可能になる。全ての加工プロセスはクリーンルーム施設の外で実施することができるため、コストが著しく低減される。その上、低い電圧及び電力消費の要求のせいで、小さい電池によって電力を供給することができる携帯型医療デバイスにおける使用に対して本開示のマイクロポンプが好適になる。長期間における一定の連続流速及び低い温度上昇が、提示された設計及び加工方法に基づく、良好な信頼性及び生体適合性を有する生物医学用途におけるこのソフトPDMSマイクロポンプの実現可能性を証明する。
【0084】
本開示の実施態様において、制御システムはセンサ及びコントローラーを含む。ホール効果センサであるセンサは、アクチュエータコイルに近接して置かれている。図30〜32を参照すると、可撓性膜は電磁コイルのかけられた磁場(B)に反応して動く。磁石の位置によって、従って膜のゆがみ及び両チャンバの各体積によって、ホール効果センサによって採取される磁場構成が修正される。例として、好適なセンサはAllegro Microsystems社製の、2.5mV/ガウスの感度を有するA1301線形ホール効果センサである。位置情報はコントローラーに提供され、そして磁石の位置を0.05mmの精度内で定めるために使用される。
【0085】
コントローラーは、使用者に選択された流速要求に基づいて、磁石の動きを規定する。正確な投与のための低速モード、又は高い体積流速のための高速モードなどの幾つかの操作モードが構成され得る。
【0086】
磁石の実時間位置を測定する能力は、それによって閉ループ流速制御が可能であり、磁石とチャンバ壁の間の衝突を防ぎ、その結果、衝突損傷が排除されてノイズが低減し、そして高効率で制御された共鳴操作モードが可能になるため、重要である。本開示のマイクロポンプは二つの分離された部分から成るので、非接触感知システムが必要である。磁石によって生みだされた磁場を測定することによって、磁石の位置、従って膜の位置を定めることがコスト効率に優れる方法で容易に達成されることが見出された。この方法を実行するための主たる欠点は、電磁駆動コイル故の磁気的ノイズであり、それは抑制されなければならない。従って、センサは、磁気的ノイズが最小化されるように位置付けられる。
【0087】
信号及び磁気的摂動の振幅は、センサの位置と向きに強く依存する。センサの場所で、コイル磁場はできる限り低くなければならず、そして磁石の磁場はできるだけ高くなければならない。両方の要求を満足する場所がある(図33、34、35を参照)。各コイルの側に沿って、Brcoilは弱く、一方、Brmagnetは強い。この位置はサイド位置と称される。この位置は、磁場感知のための如何なる他の可能な位置よりも、よりよい信号/ノイズ比を供する。図36において、コイル及び磁石によって作出された磁場が比較される:(i)サイド位置でのBr及び(ii)古典的な標準位置(つまり、コイルの中心)でのBz。
【0088】
このサイド位置は、コイルの磁場Bcoilに非常に鈍感であるが、磁石の磁場Bmagnetにはまだ鋭敏であることが証明される。図37について、サイド位置での信号が中央でのそれより約3倍少ないことが示されるが、コイルの摂動は約12倍少ないため、信号/ノイズ比はサイド位置での方がより良好である。
【0089】
例示的実施態様において、(Bmagnet)min /(Bcoil)maxの最小信号/ノイズ比率は45であり、そして感度比ΔBmagnet /Δzは75〜100ガウス/mm(位置に依存して)〜220mV/mmであると定められ、ここでzは磁石の位置である(最大距離を8mm、そしてコイルを通る最大電流を0.3Aと考えて)。図38、39において示される通り、センサがサイド位置にあるときの性能及びコイル摂動が測定された。
【0090】
選択された場所は、信号/ノイズ比の最適化を可能にするが、コイルの磁気的摂動を完全に抑制することはできない。これを正確に達成するために、パルスの使用のおかげで、磁場のコイル及び磁石成分の分離に基づいて、ノイズ抑制システムが構成されなければならない。
【0091】
コイルに段階的電圧が、t=t0でかけられるとき、システムの応答は以下のようにな
る:
【数23】
ここでΔBcoil+ΔBmagnet_displacementは、段階的電圧がかけられた後の、センサによって測定された半径方向の磁場の全変化ΔBsensorである。ΔBcoilはコイルによる磁気的摂動であり、これはこの変化に対するコイルの寄与である(コイルが磁場を作出するため);ΔBmagnet_displacementはこの変化に対する磁石の寄与である(磁石が動き、その結果センサまでの距離が変わり、そしてセンサによって測定された測定された磁場が変わるため)。
【0092】
これら二つの項は異なる固有応答時間を有する。ΔBcoilはコイル中に流れる電流Iに比例し、従って電気的応答時間τI =L/Rを有する。ΔBmagnet_displacementは磁石
の移動の結果である。一旦、磁場がかけられると、磁石は、それらが略一定速度に達するまで、加速する。この一定速度に達するまでに必要な時間は、機械的応答時間τMであろ
う。本開示においてはτI<<τMである。これは、段階的電圧がかけられると、ΔBcoilは最終値に到達し、一方、ΔBmagnet_displacementはまだ無視できることを意味する。
従って、次式が導かれる:
【数24】
ここでt1>τIそしてt1<<τMである。本件の場合、t1は約0.2ミリ秒が最適値である。
【0093】
式(19)は、磁石がポンプ内部にある間でさえ、かけられたパルス信号のせいで、磁石が動く時間を持つ前に時間t1で応答を測定することによってコイルの摂動を独立に導くことができることを示す。
【0094】
この原理に基づいて、電圧パルスに対するセンサ応答(図40を参照)が測定され、そしてコイルの磁気的摂動ΔBcoil(I)を計算するために使用された(図41を参照)。センサ応答は、磁石をポンプから除くことによって、コイルのみから直接、測定された、実際の値と比較された(図Kを参照)。なお、固有のセンサノイズレベル及びこのレベルの精度での限定されたCAN転換精度故に、この測定はノイズが多い(1ガウス=センサの測定範囲の1/2000)。
【0095】
以下のプロトコールは、再現性がありそして正確な値に導く(図41を参照):10ミリ秒当たり1回、1ミリ秒継続で、+10ボルトを5パルスかけられ;10ミリ秒当たり1回、1ミリ秒継続で、−10ボルトで5パルスかけられる。電流及び磁場が測定される。パルスの平均コイル摂動因子は次の式に従って計算される:
【数25】
【0096】
Acoilが計算された後、Acoilが、測定中の実時間において使用され、ここで:
【数26】
【0097】
提案された摂動測定法は正確かつ迅速であり、そして、磁石が既にマイクロポンプ内部にあるその場で使用することができる。これは感知システムの自動校正プロセス第一の部分である。第二の部分は以下のように述べられる。
【0098】
一旦、コイル摂動が抑制されると、測定された信号は、センサレベルで磁石によって作出された磁場Brmagnetに対応する。測定された信号は、磁石位置の線形関数ではない。従って、位置決定アルゴリズムが使用され、それがセンサ信号を磁石位置に変換する。
【0099】
磁化がMである磁石は、磁石の外部の点r’で次の磁場を作出する:
【数27】
ここで、rは、(20)における体積積分おいて使用された、磁石の体積Vmagnetにおける素量(elementary volume)dVの座標である。
【0100】
本例において、磁石は、各磁石に対して以下のような軸対称な幾何寸法を有する:
【数28】
ここで、参照(000)はポンプチャンバの中心であり;Bremは磁石内部の残留磁場であり;(rs,zs)はセンサの中心の座標であり;Rは磁石の半径であり;hは磁石の厚みであり;Zbottomは磁石の底の座標である。
【0101】
一旦、コイルの効果が抑制されると、センサによって測定された磁場は両方の磁石の磁場の重ね合わせになる。
【0102】
【数29】
【0103】
式(21)は、その積分が何らの解析解をも与えず、従って(21)の逆関数を得ることができないために、それ自身、磁石の中心の位置Zm(従って膜の位置)を定めるために使用することができない。(21)の参照テーブル(lookup table)及び対応する逆参照テーブルが作出されなければならない。
【0104】
現実のシステムは理想的ではなく、そして式のパラメーターは限定された精度でのみ知ることができる。従って、Bmeasuredの関数としてのzm のシミュレーション値は真値とは異なるであろう。しかしながら、以下の式を使用することによって真値とシミュレーション値の間の違いを強く低減することが可能である:
【数30】
【0105】
式(22)は、もし二つの場合において真のBrmagnetが分かれば、磁石の位置を正確に定めるために、真値と非常に近い補正されたシミュレーション値を使用することができる:磁石が下方壁(zBmax)及び上方壁(zBmin)をヒットするとき、zBmax及びzBmin・zBmax及びzBminに対しては、それらが磁石の位置であるため、得ることが容易である。
【0106】
この原理に従って、以下のプロトコールを通して磁石の位置を得ることができる:
(a)ポンプの寸法、センサの位置並びに磁石のサイズ及び材料に従って、式(21)を用いてオフラインでシミュレーションが行われる;
(b)プログラムの実行中にマイクロコントローラーメモリ中において参照テーブルが作出されそして記録される;
(c)ポンプのスイッチが再度入れられる、又は新しいポンプ部分が挿入される時間毎に、最大位置及び最小位置が探索され、そして対応する磁場が測定される;
(d)参照テーブルを修正し、そして次いでBmeasuredの関数としてzmを与える逆参照テーブルを作出するために式(22)が使用され;そして
(e)逆参照テーブル上の線形回帰を使用することによって、実時間においてBmeasuredからzmが得られる;
ここで工程c及びdは自動的に行われ、そして1秒を超えない。
【0107】
磁石によって作出された磁場は、磁石の位置の関数として、センサによって測定される(図42を参照)。図42において、磁場が以下の関数としてプロットされている:(i)シミュレーションされた磁場;(ii)式(22)に従って訂正されたシミュレーションされた値;及び(iii)前述のプロトコールを用いて作出された参照テーブル上の実時間線形回帰。
【0108】
真値と計算された逆参照テーブル値の間の最大誤差は以下のように測定された:Errormax=0.03mm=ポンプ内部の磁石の全範囲の0.75%、つまりチャンバ体積の0.75%の精度を有する。
【0109】
制御システム300は本開示の例示的実施態様中に含まれる。図43を参照すると、制御システム300は、使用者入力304を受け取るように構成された中央演算処理装置(CPU)302を含む。液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイ306は、流速、体積、電力、電池充電などのような種々のパラメーターの値を使用者が見ることを可能にするために供される。CPU302は、デジタル/アナログ変換器(D/A)306及び信号処理装置308を通過する作動信号を供する。前述の通り、磁石コイルに隣接するホール効果位置センサ310に加えて、本開示のマイクロポンプの実施態様は、マイクロポンプの出口上の流れセンサ312及び流体リザーバ上の体積センサ314も含む。値は、CPU302に供される前に、アナログ/デジタル変換器(A/D)316を通過させられる。図44において示される通り、もしこれらのパラメーターが所定の値を超えるならば、これらのセンサから得られた値は、流速を最適化するために及び/又は警報又は警告条件を供するための、追加のフィードバックをコントローラーに供するために比較され得る。
【0110】
本開示の例示的実施態様において、二つの異なるPIDコントローラーが使用された:(i)第一のPIDは電流Iに対する設定点及び出力電圧Uを含む;(ii)第二のPIDは磁石xの位置に対する設定点及び電流Iの出力を含む。感知システムは電流センサ318からの信号の物理的入力を有し、そして(前に論じた通り)ノイズ抑制の後、それを磁石の位置xに変換する。
【0111】
制御システム構造の例示的実施態様が、図45において示される。コントローラー300は、感知モード及び校正モードにおける操作のために、感知モジュール320及び校正管理装置(calibration manager)330からの入力を受け取り得る。更に、感知モジュ
ール320によって供された信号は、コントローラー300によって処理される前にフィルターモジュール340を通過し得る。
【0112】
校正モードにおいて操作されるとき、校正トリガー356又は要求事項は使用者インターフェイスによって供される。校正管理装置330は、校正信号をPWM変換器352に送ることによって、可撓性膜上の磁石の位置を制御する。磁石の位置は記録されそしてコントローラーパラメーターが修正される。次いで操作は更新されたパラメーター及び校正を用いてコントローラーに戻される。校正モードにおける操作の簡略化されたフローチャートを図47において示す。
【0113】
感知モードにおいて操作されるとき、使用者インターフェイス350は流速の要求事項を供し、次いでそれらがコントローラー300によって、可撓性膜上に配列された磁石のための移動コマンドに変換される。これらのコマンドは次いでコントローラー300に対する設定点として使用される。コントローラーは、磁石の位置の設定点と実際の位置を実時間において比較する。この比較に基づいて、コントローラー300はパルス幅モジュュレーション(PWM)変換器352に電圧信号を送る。次いでPWM変換器352はコントローラーからの電圧信号をPWM信号に変換し、それは次いで、アクチュエータコイルに流れる電流を制御するH−ブリッジ回路354に供給される。感知モードにおける操作の簡略化されたフローチャートが図46において示される。
【0114】
本開示のマイクロポンプの例示的実施態様は、膜上に配列された磁石によって生み出される磁場の強さを通して、可撓性膜の位置を検出するためにホール効果センサを使用するので、信号は位置の値に変換される必要がある。例示的実施態様は、磁場強度の関数として磁石の位置を供するために、電磁場モデルに基づいて、参照テーブルを使用する。電磁場モデルは、前述の通り、部品の寸法及び使用される材料などのパラメーターに基づいて、コントローラーをプログラミングする前に計算される。これらの計算結果は物理的実施態様の近似であるため、計算は、実際の位置/磁場の関連を、ほぼ0.03mmの精度でシステムが感知することを可能にする。
【0115】
PWM駆動回路及び磁場の性質を使用する故に、感知モジュール320によって供されるフィードバック信号はノイズを含む。従って、信号中のノイズを抑制するためにフィルターモジュール340が使用される。フィルターモジュールは二つのフィルターを含む:速いフィルター342及び遅いフィルター344。速いフィルター342は精度が落ちるが、積分などの、ノイズ振動により鋭敏でない操作に対して適合される。遅いフィルター344は、精度がより高い;しかしながら、精度を上げると遅れ時間も増える。遅れを考慮すると、磁石の速度の測定に対して遅いフィルターが適している
【0116】
本システムは明確な機械的ヒステリシスを有する:更に、コイルの加熱のせいで、図48において示される通り、電流は、従って磁場は、線形でもなく、電圧の一義的関数でもない。このせいで、開ループ信号を用いてそれを制御することが妨げられる。通常、ヒステリシス振幅よりもより良い結果を得ることを妨げるヒステリシスにも拘わらず、プロトタイプの応答は迅速(高い振幅設定点の変化に対する時間応答)かつ正確であり(静的誤差=0);最大オーバーシュート誤差は、図49において示される通り、2%である。
【0117】
上述の、本開示のバルブレスマイクロポンプ実施態様に加えて、別の実施態様では一方向の流動体流路を供するために逆止弁が採用され得る。図50〜52を参照すると、本開示のマイクロポンプと共に使用される逆止弁400の例示的実施態様は、いっしょに接合された一対の本体部品404、406から形成され得るバルブ本体402を含む。本体部品404、406はチャンバ408内に配列された膜414のための台座として作用する、離れて互いに面して配列された一対の実質的に平らな表面410、412を有するチャンバ408を画成する。逆止弁400は、チャンバ408と流体連通している入口ポート416及び出口ポート418も含む。膜414はチャンバ408内に浮かぶように構成され、そして例示的実施態様においては、チャンバ408より約20%小さい。入口ポート416に隣接して位置付けられる台座410は固い。出口ポート418に隣接して位置付けられる台座412は、流体を通過させ得る多くの開口部420を含む。例示的実施態様において、そのような開口部420はロゼットパターンで台座412内に機械加工されるが、流通弁400を通した流れを可能とし、一方で膜414が台座412に対して座する如何なるパターンも受け入れ可能である。
【0118】
ここで図51及び52を参照すると、入口ポート416での流体圧力よりも大きい流体圧力が出口ポート418で存在する如何なる点でも、矢印Rによって図51において示される通り、逆流体流れ条件が生じるであろう。この逆流は入口台座410に向かって膜414を掃引するように作用する。膜414が入口台座410に対して座した後、膜414は入口ポート416を覆って更なる逆流を防ぐ。
【0119】
入口ポート416で、出口ポート418での流体圧よりも大きな流体圧が存在する如何なる点でも、図52における矢印Fによって示される通り、前進流体流れ条件が生じるであろう。この前進流は膜414を出口台座412に向かって掃引する。出口台座412は開口部420を含むので、流体はこれらの開口部420を通過して膜414の周りを流れることが可能になり、そうすることによって、流体は出口ポート418を通して前方流体流れF方向に流れることが可能になる。
【0120】
ここで図53を参照すると、本開示の別の実施態様は、複数チャンバのマイクロポンプ510を含む。複数チャンバのマイクロポンプ510は駆動体590内に挿入されるために構成された多くのポンプカートリッジ580A、580B、580Cとして構成され得る。三つのポンプカートリッジが示されているが、より多くの又はより少ないカートリッジが本開示の範囲内にあり、そして本開示のマイクロポンプの用途に依存して変わり得ることは明らかである。ポンプカートリッジ580A、580B及び580Cの各々は他のものと同じであり、従ってポンプカートリッジ580Aが例示的実施態様として述べられるであろう。
【0121】
ポンプカートリッジ580Aは第一のポンプ本体512、第二のポンプ本体524及びその中に配列される可撓性膜536を含む。ポンプカートリッジは、場合により、逆止弁マニホールド582を含み得る。あるいは、カートリッジ580Aは本明細書で開示された通りのバルブレス設計のものであり得る。ポンプカートリッジ580Aは入口520、532及び出口522、534も含む。次いで、流体送達のために、チューブが入口520、532及び出口522、534に接続され得る。
【0122】
駆動体590は、ポンプカートリッジ580A、580B、580Cの数に対応する多くのレシーバーモジュール590A、590B、590Cを含む。例示的実施態様として、レシーバーモジュール590Aは第一の支持部592及び第二の支持部594を含む。第一の及び第二の支持部592、594は各々、ソレノイド又は活性化コイルを受け取るように構成された凹部598を含む。各レシーバーモジュール590A、590B、590Cは、ポンプカートリッジ580A、580B、580Cを受け取るように構成されたリセプタクル500を画成する。図53において示される通り、受け取りモジュールは積み重ねられた配置で構成され得るか、又は望まれる用途に応じて、背中あわせで、隣り合って、又はその組合せのような他の構成で配置され得る。
【0123】
上記は、請求された発明の原理の例示としてのみ考慮されている。更に、多くの修正及び変更が、当業者にとって容易に思いつくであろうから、請求された本開示をここで示されそして述べられた正確な構造及び操作に制限することは望まれず、従って、全ての適切な修正及び同等物が用いられ得て、請求された発明の範囲内に包含され得る。
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、2009年2月12日に出願された米国仮出願番号61/152,165の優先権を請求するものであり、その全文は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、小さい流体体積を取り扱うための磁気的に駆動されるマイクロポンプに関する。特に、本開示は、流体を変位させるための磁気的に作動される膜を含むマイクロポンプに関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体工学の分野は、一般的に数ナノリッターのオーダーの非常に小さい流体体積を取り扱うことを包含する。マイクロ流体工学は、生命科学及び化学分析のような分野において増々重要な用途を有する。マイクロメカニカルシステム(MEMS)としても知られるマイクロ流体工学デバイスは、流体制御、流体測定、医療試験、DNA及び蛋白質の分析、インビボ薬物送達、並びにその他の生物医学用途のためのデバイスを含む。
【0004】
マイクロポンプの代表的流体流速は、毎分約0.1μlから、毎分数(80〜180)mlの範囲に亘る。このオーダーの流速は、使い捨ての微小化学物質分析システム(μTAS)又は化学及び生物学の分析用のラボオンチップ(lab-on-a-chip)(LOC)、医
療診断試験のためのポイントオブケア検査(POCT)、細かな程度の規制及び正確な制御を要求する(インスリンのような)薬物用のインプラント可能な薬物送達システム、及び血液の輸送及び加圧のための心臓病学システムのような用途において有用である。
【0005】
大部分のMEMS処理技術がマイクロエレクトロニクスから進化したため、最初のシリコンマイクロポンプは、主に、制御されたインスリンの送達システムにおける使用のための1890年代における薄膜の圧電作動に基づいていた。この研究はシリコン系マイクロポンプの実現可能性を論証し、そしてシリコンマイクロポンプの広汎な研究を動機付けた。同様に、医薬品及び臨床治療分野を通したインスリンの送達及び治療薬の投与用に、数種の市販品として入手可能なインプラント可能なシリコンマイクロポンプが報告された。
【0006】
最近、低コスト、統合されたそして小型化された使い捨てμTAS用途の成長傾向に対して、多くのポリマー材料、及びソフトリソグラフィー、マイクロステレオリソグラフィー、マイクロ成形及びポリマー表面マイクロマシニングのような新しいマイクロ加工技術が研究されそして開発されてきた。プラスチック及びエラストマーを含む多くのポリマー材料は、その卓越した機械的性質、良好な耐薬品性、及び低い加工コスト故に、基板、構造膜及び機能膜として他のマイクロデバイス内に増々組み込まれるようになってきた。最もポピュラーなポリマーの中で、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が、卓越した生体適合性、簡単な加工プロセス(成形及び可逆的接合)及び光学的透明性(モニタリング及び尋問(interrogating)を容易にする)、並びに弾性(良好なシール性及び接合性)故
に、マイクロ流体デバイスにおいて広く使用されてきた。
【0007】
シリコン系及びプラスチック系のバルブレスマイクロポンプがポリマー系マイクロポンプと比較するための例として使われる。シリコン系マイクロポンプの加工プロセスは、三つの引き続く深掘り反応性イオンエッチィング(DRIE)工程及び一つのシリコン−ガラス陽極接合工程を含み、他方で、LIGA、マイクロ射出、又はホットエンボス成形、及び接着剤又はボルトを用いる多数の薄板アセンブリがプラスチックポンプのために含まれていた。一方、PDMS系マイクロポンプに対しては、多層ソフトリソグラフィープロセス及びPDMS−PDMS接合技術のみが要求される。加工コストの点からいえば、PDMS系マイクロポンプは、前記二つのタイプのマイクロポンプよりかなり安い。
【0008】
更に、プラスチックマイクロポンプの主要課題は、薄いプラスチック層の表面粗さに起因する高い流体漏れである。ボルト組立は、ボルトが接続された層の間の界面上に応力が集中するため、事態を更に悪くする。接着剤接合も微細構造の詰まりの一因になる傾向にある。従ってPDMSはマイクロポンプのための実用的(処理時間が短くそして低コスト)材料である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Zhou et al., Fluid Damping Effects on Resonant Frequency of an Electromagnetically-Actuated Valveless Micropump, International Journal of Advanced Manufacturing Technology, April 24, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本明細書に開示されたマイクロポンプは、振動している膜がチャンバ中の圧力変化をもたらし、それがパッシブバルブの形態によって流体導管の動的流れを方向付けるという原理に従って操作される。しばしば、パッシブバルブは、往復するマイクロポンプの入口及び出口における逆止弁として、カンチレバーフラップ、ブリッジ膜、球状ボール、可動構造、ノズル/ディフューザー又はテスラ(Tesla)エレメントの形態で取りこまれる。し
かしながら、ノズル/ディフューザーエレメントを統合しているバルブレスマイクロポンプは、懸濁粒子の詰まりのリスク、可動機械的部品の摩耗と疲労が減らすことができて、そして実用的に取り除かれ得るので、生物医学及び生化学におけるような使い捨てμTAS用途に対して特別に関心があるものである。更に、ノズル/ディフューザーの簡単な実現及び平面的な特長によって、使い捨て用途向けのマイクロポンプの低コスト化及び小型化を可能にする。
【0011】
本開示のバルブレスマイクロポンプは、ノズル及びディフューザーエレメント、流体チャンバ並びに振動する作動膜から成る。小さなバルク磁石と統合された膜は、大きな引き合う又は反発する磁力及び膜のゆがみという利点を持つ。膜上の交流垂直磁力は大きな体積ストロークを生みだし、それは高流速のマイクロポンプに対して望まれる。また、磁気的作動は、マイクロポンプがエアギャップによって制御される、外部でかけられた場である。このように、マイクロポンプ上にかけられた電流又は電圧のための電気的コネクターが避けることができ、それによってμTAS用途におけるような小型化の可能性も供される。
【0012】
その全文が本明細書に参照することにより取り込まれている、非特許文献1に、本開示の主題の原理及び操作が完全に説明されている。
【0013】
本開示の一つの態様は流体を送達するためのマイクロポンプを含む。マイクロポンプは、第一の流動体流路を画成する第一のポンプ本体を有するポンプ組立体含む。第一のポンプ本体は、第一のチャンバ、ここで第一のチャンバが第一のチャンバ壁及び第一の側壁を含む;第一の入口及び第一の出口、ここで第一の入口及び第一の出口が第一のチャンバと流体連通している、を含む。ポンプ組立体は第二の流動体流路を画成する第二のポンプ本体も含む。第二のポンプ本体は、第二のチャンバ、ここで第二のチャンバ壁及び第二の側壁を含む;第二の入口及び第二の出口、ここで第二の入口及び第二の出口が第二のチャンバと流体連通している、を含む。ポンプ組立体は、第一のチャンバと第二のチャンバの間に配列された可撓性膜も含む。マイクロポンプは ポンプ組立体と協動するために構成されたアクチュエータ組立体も含む。アクチュエータ組立体は、膜と磁気的に連結された駆動体(driver)、及び膜の位置を検出するために構成されたセンサ、ここで駆動体が膜に磁力をかけて、膜をゆがませ、そしてここで膜のそのようなゆがみによって第一のチャンバ及び第二のチャンバ内の圧力を変化させ、そうすることによって流体の流れを起こす、を含む。
【0014】
本開示の別の態様は、流体リザーバから流体を送達するためのマイクロポンプ組立体を含み、ここでマイクロポンプ組立体はポンプカートリッジを含む。ポンプカートリッジは、第一のチャンバ、ここで第一のチャンバが第一のチャンバ壁及び第一の側壁を含む;第一の入口及び第一の出口、ここで第一の入口及び第一の出口が第一のチャンバと流体連通している、を画成する。ポンプカートリッジは第二のチャンバを画成する第二のポウプハウジング、ここで第二のチャンバは、第二のチャンバ壁及び第二の側壁、第二の入口及び第二の出口を含む、ここで第二の入口及び第二の出口が第二のチャンバと流体連通している、及び第一のチャンバと第二のチャンバの間に配列された可撓性膜、ここでポンプカートリッジが流体リザーバから第一のチャンバ及び第二の一チャンバの少なくとも一つに液体流通を可能ならしめるために構成される、を含む。マイクロポンプ組立体は、マイクロポンプカートリッジと協動するために構成されたアクチュエータ組立体を取り囲むハウジングを更に含む。アクチュエータ組立体は、膜と磁気的に連結された駆動体、及び膜の位置を検出するために構成された第一のセンサを含み、ここで駆動体が膜に磁力をかけて、膜をゆがませ、そしてここで膜のそのようなゆがみによって第一のチャンバ及び第二のチャンバ内の圧力を変化させ、そうすることによって流体の流れを起こす。マイクロポンプ組立体は、駆動体に連結され、そして第一のセンサからの入力を受け取り、そして駆動体によってかけられる磁力を調節することによって膜の位置を制御するために構成されるコントローラーを更に含む。マイクロポンプ組立体は、駆動体及びコントローラーにエネルギを与えるために構成される電源供給部を更に含み、ここでハウジングは、マイクロポンプカートリッジがアクチュエータ組立体内に挿入され得て、そしてその内に保持され得るように構成される。
【0015】
本開示の別の態様は、マイクロポンプの加工方法である。本方法は、次の工程を含む:シリコンウエハ上へ第一のポリマー層をスピンコーティングし、そして第一のポリマー層を硬化させる、磁性材料を第一のポリマー層の上に置く、磁性材料の周りに第二のポリマー層を塗布し、そして第二のポリマー層を硬化させる、及び第三のポリマー層を塗布し、そして第三のポリマー層を硬化させる、工程を含む、ポリマー材料からの可撓性膜の加工;流体チャンバ、入口チャンネル及び出口チャンネルを形成するために構成された金型内に液体ポリマー材料を注入し、そして液体ポリマーを硬化させることによる剛直ポンプ本体の加工;可撓性膜と剛直ポンプ本体の整列;及び剛直ポンプ本体への可撓性ポリマー膜の付着。
【0016】
本開示の別の態様は、流体を送達するためのマイクロポンプである。本マイクロポンプは、第一のチャンバを画成する第一のポンプ本体を有するポンプ組立体を含む。第一のチャンバは、第一のチャンバ壁及び第一の側壁、第一の入口及び第一の出口、ここで第一の入口及び第一の出口が第一のチャンバと流体連通している、及び第一のチャンバの壁の反対側に第一のチャンバに亘って配列される第一の可撓性膜を含む。ポンプ組立体は第二のチャンバを画成する第二のポンプ本体、ここで第二のチャンバは第二のチャンバ壁及び第二の側壁、第二の入口及び第二の出口、ここで第二の入口及び第二の出口が第二のチャンバと流体連通している;及び第二のチャンバ壁の反対側の第二のチャンバに亘って配列された第二の可撓性膜を含む。ポンプ組立体は、第一のポンプ本体と第二のポンプ本体の間に配列される少なくとも第三のポンプ本体を更に含む。第三のポンプ本体は、第三の側壁、第三のチャンバ、第三の入口及び第三の出口を画成し、ここで第三の入口及び第三の出口は第三のチャンバと流体連通しており、ここで少なくとも第三のチャンバは第一のチャンバ及び第二のチャンバに隣接する。マイクロポンプ組立体は、ポンプ組立体と協動するために構成されたアクチュエータ組立体を更に含む。アクチュエータ組立体は、第一の膜及び第二の膜と磁気的に連結された駆動体、及び第一の膜及び第二の膜の位置を検出するために構成された少なくとも一つのセンサを含み、ここで駆動体は第一の膜及び第二の膜に磁力をかけて、第一の膜及び第二の膜をゆがませ、そしてここで膜のそのようなゆがみによって第一のチャンバ、第二のチャンバ及び第三のチャンバ内の圧力を変化させ、そうすることによって流体の流れを起こす。
【0017】
添付図面を参照して本開示を以下に述べるが、それは非限定な例としてのみ与えられる:
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本開示のマイクロポンプ組立体の実施態様の斜視図である。
【図2】図1のマイクロポンプ組立体の展開図である。
【図3】一方向流を生みだすためのノズル/ディフューザー流れエレメントを有するポンプ本体の斜視図である。
【図4】裁頭円錐台構成を有するノズル/ディフューザー流れエレメントの模式図である。
【図5】裁頭ピラミッド台構成を有するノズル/ディフューザー流れエレメントの模式図である。
【図6】流体流路を図示している単一チャンバマイクロポンプの模式図である。
【図7】組み合された平行流路を示す本開示の二重チャンバマイクロポンプの組立体の断面図である。
【図8】本開示のマイクロポンプ組立体の実施態様の斜視図である。
【図9】図8のマイクロポンプ組立体の展開斜視図である。
【図10】マイクロポンプカートリッジ及びアクチュエータ組立体リセプタクルの斜視図である。
【図11】本開示のマイクロポンプの膜の実施態様の有限要素モデルの図(plot)である。
【図12】本開示のマイクロポンプの膜の実施態様の有限要素モデルの図(plot)である。
【図13】本開示のマイクロポンプの膜の実施態様の有限要素モデルの図(plot)である。
【図14】本開示のマイクロポンプの膜の実施態様の有限要素モデルの図(plot)である。
【図15】本開示のバルブレスマイクロポンプの実施態様に対するディフューザーの縦横比と共に変化する共鳴周波数の図である。
【図16】本開示のバルブレスマイクロポンプの実施態様に対するディフューザー開口角と共に変化する共鳴周波数の図である。
【図17】本開示のバルブレスマイクロポンプの実施態様に対するディフューザー高アスペクト比と共に変化する共鳴周波数の図である。
【図18】本開示のバルブレスマイクロポンプの実施態様に対するチャンバ深さと膜厚みの厚み比と共に変化する共鳴周波数の図である。
【図19】本開示のマイクロポンプの実施態様に対する膜移動対時間の図である。
【図20】排出モードにおいて最大移動を示す本開示のバルブレスマイクロポンプの例示的実施態様の有限要素モデルである。
【図21】吸引モードにおいて最大移動を示す本開示のバルブレスマイクロポンプの例示的実施態様の有限要素モデルである。
【図22】本開示のマイクロポンプと共に使用するためのマイクロ流体工学コネクターを図示する。
【図23】最大ポンピング流速が、異なる作動電流に対する励起周波数に依存することを示す図である。
【図24】異なる作動電流振幅に対する最大流速の図である。
【図25】最大ポンピング流速の比較である。
【図25A】アクチュエータの装填(loading)前後での方形波励起信号の図である。
【図26】励起周波数と共に変化する流速を示す図である。
【図27】励起周波数と共に変化する流速を示す図である。
【図28】励起周波数と共に変化する流速を示す図である。
【図29】アクチュエータの温度の時間経過の図である。
【図30】操作中の本開示のマイクロポンプの実施態様の模式図である。
【図31】操作中の本開示のマイクロポンプの実施態様の模式図である。
【図32】操作中の本開示のマイクロポンプの実施態様の模式図である。
【図33】磁石位置センサの場所の模式図である。
【図34】作動コイル及び磁石のそれぞれの磁場密度の代表的な図である。
【図35】作動コイル及び磁石のそれぞれの磁場密度の代表的な図である。
【図36】磁場摂動の図である。
【図37】磁場強度の図である。
【図38】センサによって測定された磁場摂動の図である。
【図39】センサによって測定された磁場強度の図である。
【図40】電圧パルスに対するセンサ応答の図である。
【図41】摂動測定の図である。
【図42】磁石の位置の関数としての測定された磁場の図である。
【図43】本開示の制御システム実施態様の略図である。
【図44】本開示のフィードバックループの略図である。
【図45】図43の制御システムの詳細な略図である。
【図46】感知モードにおける本開示の制御システムの操作のフローチャートである。
【図47】校正(calibration)モードにおける本開示の制御システムの操作のフローチャートである。
【図48】本開示のマイクロポンプ実施態様に対するヒステリシス図である。
【図49】本開示の閉ループ制御システムにおける位置及び設定点の図である。
【図50】本開示のマイクロポンプと共に使用され得る逆止弁を描いている。
【図51】本開示のマイクロポンプと共に使用され得る逆止弁を描いている。
【図52】本開示のマイクロポンプと共に使用され得る逆止弁を描いている。
【図53】本開示のマルチチャンバマイクロポンプの例示的実施態様である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで図1及び2を参照すると、本開示のマイクロポンプは、第一のポンプ本体12及び第二のポンプ本体24並びにその間に配列された可撓性膜36を有するポンプ組立体10を含む。第一のポンプ本体12は第一の本体流路を画成し、そして第一のチャンバ壁16及び第一の側壁18を有する第一のチャンバ14を含む。第一のポンプ本体12は、第一のチャンバ14と流体連通している第一の入口20及び第一の出口22を更に含む。同様に、第二のポンプ本体24は第二の本体流路を画成し、そして第二のチャンバ壁28及び第二の側壁30を有する第二のチャンバ26を含む。第二のポンプ本体24は第二のチャンバ26と流体連通している第二の入口32及び第二の出口34を更に含む。
【0020】
本開示のマイクロポンプは、可撓性膜36に磁気的に連結された駆動体も含む。図1及び2において示された実施態様において、駆動体は第一の磁気コイル38及び第二の磁気コイル40を含む。磁気コイル38、40は、磁石42、44との電磁気的連結を通して可撓性膜36上に磁力を付与するために構成される。
【0021】
本開示のマイクロポンプは、流体に一方向流れを付与するように意図されている。そのような一方向流れは逆止弁を使用して又は使用せずに達成され得る。マイクロポンプの代表的操作流速は、略毎分2、3μlからmlの範囲である(非機械的マイクロポンプに対しては10μl/分未満、一方、機械的マイクロポンプに対しては平均流速が数mlまでである)。このように、インプラント可能な薬物送達、化学的及び生物的検出、並びに心臓病学システムにおける血液の輸送用の、流体の細かな規制及び正確な制御システムのような用途において、広範囲の生物医学用途が見出される。
【0022】
しかしながら、高い圧力損失、固体粒子に対する感度並びに可動バルブの摩耗及び疲労のような、逆止弁に伴う問題がある。従って、逆止弁の必要性を取り除くために、逆止弁を代替するために及び流れを整流化するために、ノズル/ディフューザー構成が使用され得る。このように、好ましい方向に流れを向けるためのノズル/ディフューザーエレメントを通る流れの抵抗の違いを利用したマイクロポンプは、本明細書では「バルブレスマイクロポンプ」と呼ばれる。
【0023】
本開示の一つの例示的マイクロポンプにおいて、一方向性の整流された流体流れは、入口20、32及び出口22、34で、ノズル/ディフューザー流路を使用することによって、逆止弁なしで達成される。第二のポンプ本体24の実施態様を示している図3を参照しながら、バルブレス実施態様の特長を説明する。第一のポンプ本体が同一の特長を有し、そして簡明を期すために省かれていることが明白であろう。この実施態様において、入口32及び出口34は、それぞれ入口ディフューザー46及び出口ディフューザー48を含み、これらは第二のチャンバ26と流体連通している。
【0024】
入口ディフューザー46を特別に参照すると、ディフューザーエレメントは、第二の入口32を第二のチャンバ26に接続している一対の壁50、52を含む。壁50、52は、角度θで配列され、そして長さがLのものである。壁50、52は幅W1を有する入口
のど部(inlet throat)54、及び幅W2を有する出口端56を画成し、ここでW2はW1
より大きい。図3において示された実施態様において、入口及び出口のディフューザー46、48の深さは第二のチャンバ26の深さと等しく、それは簡略化された製造を可能にすることが分かったが、図4において示された裁頭円錐台構成及び図5において示された裁頭ピラミッド台構成を含む他の構成も受け入れ得る。
【0025】
図4の裁頭円錐台のディフューザーは、直径D1の入口のど部54及び直径D2の出口端56を含み、ここでD2はD1より大きい。裁頭円錐台のディフューザーは、2θの角度で配列された壁58も含む。同様に、図5の裁頭ピラミッド台のディフューザーは、断面積A1の入口のど部54及び断面積A2の出口端56を含み、ここでA2はA1より大きい。裁頭ピラミッド台のディフューザーは、2θの角度で配列された壁セグメント60も含む。
【0026】
簡略化するために、図6は、単一チャンバ62、単一磁石64、及び電力供給部68によって力を与えられる単一電磁コイル66を有するマイクロポンプの略図を示す。流体リザーバ70中に含有される流体は、入口チューブ(tubing)72を通って入口ディフューザー46へ進みチャンバ62内に流れ、ここでそれは出口チューブ74を通って、出口ディフューザー48を通ってその意図された使用のためにポンプ注入される(pumped)。
【0027】
図7を参照すると、本開示のバルブレスマイクロポンプの実施態様は、組み合された平行流路を含み得て、ここで二重チャンバマイクロポンプ10が、共通入口76及び共通出口78と流体連通している第一のチャンバ14及び第二のチャンバ26を有するように構成される。勿論、明らかなように、図7において描かれているマイクロポンプ7の実施態様は、別々の平行流路を有するように構成され得る。別々の平行流路は、二つの異なる流体の同時流れを可能にするであろう。
【0028】
ここで図8及び9を参照すると、本開示の別の実施態様において、前述のようなマイクロポンプ10はデバイス200の部分として含まれ、そしてハウジング202、204内に囲まれる。ハウジング202、204は、コントローラー(示されていない)を含むように構成される。コントローラーは制御パネル206に接続されて、使用者が流速などの操作パラメーターを入力できるようにする。制御パネル206はディスプレイ208及び一つ又はそれ以上の入力ボタン210を含む。ハウジング204は、マイクロポンプ10の流体リザーバとして働くガラス瓶212を受け取るように構成される。例示的実施態様において、ガラス瓶212はインスリン、又は如何なる他の薬物、生物製剤又は化合物を含有し得る。ハウジング204は、ハウジング内に挿入された際に、ガラス瓶212がマイクロポンプ10と流体連通しているように構成される。ハウジング204は、アクチュエータ及びコントローラー用の電源供給部として電池214を受け取るようにも構成される。図9において示された実施態様において、バッテリは標準の9Vバッテリとして描かれている。しかしながら、用途次第で、他のタイプのバッテリも受け入れ得て、例えば、3Vのコイン電池(時計型)バッテリが、全体サイズが重要事項である用途に使用され得る。
【0029】
ここで図10を参照すると、図1のマイクロポンプ10は、駆動体90内に挿入可能なポンプカートリッジ80として構成され得る。ポンプカートリッジ80は、第一のポンプ本体12、第二のポンプ本体24及びその間に配列された可撓性膜36を含む。ポンプカートリッジ80は、場合により逆止弁マニホールド82を含み得る。あるいは、ポンプカートリッジ80は本明細書に開示された通りのバルブレス設計のものであり得る。次いで、入口及び出口のチューブ72、74は逆止弁マニホールド、又はバルブレスマイクロポンプの場合においては、第一の及び第二のポンプ本体の入口20、32及び出口22、34に直接、接続される。
【0030】
駆動体90は第一の支持体92及び第二の支持体94を含み、ここで第二の支持体94は第一の支持体92とは別にそして離れて配列される。第一の及び第二の支持体92、94各々は、ソレノイド又は活性化コイル(示されていない)を受け取るために各々構成される凹部96、98をそれぞれ含む。第一の及び第二の支持体92、94はポンプカートリッジ80を受け取るために構成されたリセプタクル100を画成する。
【0031】
マイクロポンプのための幾つかの提案された機構が既に報告されており、主として圧電的、静電的、電磁気的及び熱空気的な作動、並びに形状記憶合金などを含む。マイクロポンプの大部分は圧電的又は静電的な作動を採用し、それは比較的高い周波数で操作され、そして最小の膜移動に対して数百から数千の大きさの高い電圧を必要とする。電磁気的作動に関しては、大きな移動、早い応答時間及び比較的に低い電力消費が高度に望まれるとき、それは他の作動方法に対してそれが有利であることが示される。統合された磁石を有する膜の磁気的作動は、数百μN及び大きな膜のゆがみを生みだすことができる。これらの望ましい性質は多くの医療用途に対して非常に魅力的である。従って、電磁気的に駆動されるバルブレスマイクロポンプの共鳴周波数に及ぼす流体−膜連結効果を以下のセクションにおいて詳細に論じる。
【0032】
作動力はポンプ中の作用媒体を駆動するために振動する膜を通してかけられる。従って、マイクロポンプの信頼性及び性能は複合膜の動的特性に依存する。
【0033】
振動する膜に対して、密度、ヤング率及びポアソン比などの材料物性が、膜の固有周波数に著しく影響を及ぼすであろう。例えば、MEMSデバイスにおいて、殆どの膜は、幾つかの感知膜層又は作動膜層を含む統合された複合層である。この特定の例において、特性は個々の材料の膜から全く異なる。このように、複合層の同等の密度が適切に得られなければならない。
【0034】
磁気的に作動される膜マイクロポンプにとって、機能膜を作出するための二つのスキームがある。一つは電気メッキされたソフト磁性材料であり、又は膜の上面に付着された永久磁石を用いて、幾つかの永久磁石が手動でPDMS膜内に組立てられる。次いで、膜の動きを制御するために、永久磁石又は基板中に統合された平面マイクロコイルのどちらかによって、外部磁場がかけられる。膜中に埋め込まれたバルク磁石の寸法及びレイアウトが電磁場及び膜の剛性の分布に影響を及ぼし得るので、本明細書においては、複合膜が磁気的性質で加工される。
【0035】
ケイ素、窒化ケイ素及び薄い金属板はマイクロポンプ用の膜材料として適している。例えば、数ミクロンの範囲にある薄いケイ素膜は、現在のマイクロマシニング技術を用いて実現することができる。しかしながら、ケイ素のヤング率は190Gpaであり、それが往復ポンプに対するその適用を制限する。パリレン、ポリアミド、ポリイミド、SU−8及びPDMSなどの可撓性材料を用いてポンプ膜が得られる。これらの膜は小さな作動圧力しか必要とせず、そして大きなゆがみ及び大きなストローク体積を有する。本開示の例示的実施態様において、PDMS(Silgard184,ダウコーニング社製)はマイクロポンプ本体及び作動膜の両方用に使用される。
【0036】
その低弾性率並びにケイ素及びガラス基板の良好な相溶性故に、PDMS (Sylgard184 Silicon Elastomer、ダウコーニング社)は、例示的実施態様において膜材料として選択される。硬いバリウムフェライト粉末(UMBS-1B: Unimagnet Industry社、中国)はPDMS内に混合され(重量比で1:1)作動膜を開発する(develop)。複合膜は均一か
つ等方的な材料物性を有し、そして外部磁場において二方向性のゆがみを生みだすことができる。本開示の例示的実施態様の成分に対する材料物性を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
加工の主たる課題は薄い複合膜を生産することである。バルク磁石を有する薄い複合膜は、加工プロセス中に金型から取り出されるときに割れやすく、然るに、厚い膜は磁場の下でゆがみが限られるという不利な点を課せられる。例示的実施態様において、0.15mmの厚みのPDMS層がシリコンウエハ上にスピンコートされ、そして75℃で2時間、硬化される。第一のPDMS層の中央部に磁石が置かれる。次いで、液体PDMSが磁石の周りに注入されて0.5mmの厚みの層を形成する。余分のPDMSを除くためにガラススライドが使用される。膜は100℃の熱板上に30分間置かれる。最後に、0.15mmの三番目のPDMS層が最上部上にカバーされ、そして75℃で2時間、硬化される。
【0039】
複合膜の極性は、バルク磁石の極性に依存する。このように、膜上の磁力は、磁場が切り替わるにつれて反転される。振動する膜の振幅及び周波数は、ソレノイドアクチュエータにかけられたAC方形波入力電流によって制御される。電磁力は膜解析のために直接、測定される。複合膜上で異なる電流を用いて全静的電磁力が測定されそして表2にリストアップされる。吸吸引力から生じるエアギャップが減少することから、吸引力が反発力より大きいことが分かる。このように、複合膜は、磁力と膜の弾性力の間のバランスがとられるまで動きを止めないであろう。膜上の最大吸吸引力及び反発力は、0.2Aの電流下で、それぞれ23.7mN及び21.7mNであり、それは複合膜の最大ゆがみ及び応力分布をFEAによって推定するために使用されるであろう。
【0040】
【表2】
【0041】
共鳴周波数
市販品のソフトウエアANSYS10.0が複合膜をモデル化するために使用される。二つのタイプの3Dエレメントタイプが主として使用される:Solid45及びShell63。Solid45は、埋め込まれたバルクNdFeB磁石(厚さ:0.5mm)用のエレメント、及び磁石の周りのPDMS層(厚さ:0.5mm)のエレメントとして使用される。複合構造の最上部及び最下部上に被覆された0.15mmの厚さを有する別の二つのPDMS層は、図11において示された通り、エレメントタイプShell63とかみ合わされる(meshed)。このモデルにおいて、1917のノード及び2208のエレメントがある。計算のために使用された膜の材料物性を表3に示す。膜の直径(7mm)に比べてマイクロ溝の端部幅(0.38mm)が小さいので、本明細書においては、複合膜の全ての固定された端部境界条件が仮定される。
【0042】
【表3】
【0043】
複合膜の台形の断面積及び34.34μmの最大ゆがみが図12において観察される。この値は流体チャンバの深さより小さい。このように、特に、流体が装填されて流体の抵抗が膜に影響を及ぼすときに、膜はチャンバの底に触れない。複合膜の異なる材料物性のために、磁力はバルク磁石領域上に集中される。膜の応力分布を図13に示す。バルク磁石の四角い形状のために、集中された応力領域は、基本的に磁石の4つのコーナー上に分布される。膜における最大応力は約0.1425MPaであり、これはPDMS材料のせん断応力より小さい。膜の静的解析によって、マイクロポンプの操作の安全性及び信頼性が確保される。
【0044】
図14は可撓性膜の第一の及び第二のモード形状を示す。埋め込まれたブルク磁石のために、基本モードにおいて膜が一つの方向に曲がり、そして中央領域においてピークが生じることが観察される。第二のモードに対しては二つのピークがあり、一つは上向き、そして他方は下向きである。高ポンピング流速を得るために最大ストローク体積が要求されるので、第一のモードが好まれる。この解析によって、第二の振動モード下でなぜ流速が前者より低いかも説明される。流体がチャンバ中に装填されるとき、膜の動的特性に及ぼす追加質量及び減衰効果の故に、共鳴周波数が低下する。
【0045】
共鳴周波数のこの近似は、膜の弾性がばねによって表され、そしてチャンバ中の流体が質量によって表される、質量−ばね類推法を使用することによって単純化され得る。しかしながら、計算された周波数と測定された周波数の間の不一致は、36%と大きい(計算された周波数と測定された周波数:それぞれ734Hz、540Hz;4238Hz、3350Hz)。それはノズル/ディフューザーエレメントにおける非線形挙動を無視して、共鳴周波数の過大評価に導く。近似モデルは、一組の偏微分法方程式に基づいて、ポンピングチャンバ中の膜の振動及び流体並びにノズル/ディフューザーエレメントを連結する。厚みh、質量密度ρmを有する薄い円形膜の、膜−流体連結支配方程式は次の通りである:
【数1】
ここで
【数2】
は曲げ剛性;
【数3】
は、極座標におけるラプラシアン演算子;v及びEはそれぞれポアソン比及びヤング率である。
【0046】
膜のゆがみは膜の特性長に比べてかなり小さい。このように、薄板の小ゆがみ理論が膜マイクロポンプにおいてやはり適用できる。板は、線形の弾性のある、均一なそして等方的材料でできており、そしてせん断変形の影響は無視されると仮定される。この解は以下の形態を取る:
【数4】
ここで
【数5】
ここでmとnは節円及び直径線の数であり;Amn、Bmn、Cmn及びDmnは境界条件によって定められるモード形状定数である。Jm、Ymは第一の種及び第二の種のベッセル関数であり、Im、Kmは第一の種及び第二の種の修正されたベッセル関数であり;そしてRは膜の半径である。
【0047】
流体側上で、我々は、流体流れを非圧縮性の層流として考える。更に、我々は、流体の装填が、有効質量及び減衰を加えるであろうものの、モード形を変化させないと仮定する。従って、図3において図示された各エレメント内部での流体の流れを述べるために、ナビエ−ストークス(Navier-Stokes)方程式及び質量連続方程式が使用される。
【数6】
ここで
【数7】
は、x、y、z方向における流体速度である。動圧pは、ポンピング相中の膜振動と流体の流れの連結を表す。
【0048】
入口及び出口を通る体積流は、内部から外部に向かってQn及びQdとして表すことができる。圧力損失は
【数8】
として表すことができ、ここでξは損失係数、そして
【数9】
はノズル/ディフューザーエレメントののど部領域を通る平均流速を意味する。膜のゆがみwは、以下のように表される流体体積の変動に繋がる:
【数10】
従って、体積変化の速度は以下によって与えられる:
【数11】
【0049】
特別な場合に対して、圧力差がなく、入力圧がゼロで、そして励起力が正弦的であると仮定される。式(1)〜(6)を解くと、流体効果を考慮した共鳴周波数の元の式は(11)において得られ、そして以下の形態として書き替えることができる:
【数12】
ここで、βは有効流体質量と膜の質量の間の比に対応し、それは流体と膜の密度比、振動する膜の面積Am、及びディフューザーエレメントの寸法変数(図3において示される通りの、チャンバ高さH、ディフューザーエレメントの長さL及びのど部セクションの幅W)を関係付ける。ここでf0は締め付けられた端部の薄板の基本周波数である。従って、式(7)は、膜マイクロポンプの共鳴周波数が、膜のモーダル性質、流体と膜の間の密度比、並びにマイクロポンプの幾何形状及びサイズに関係することを意味する。
【0050】
スウェーデン、ストックホルムのCOSMOL AB社によるCOSMOLモデリングソフトウエアにおける音響学及び構造力学のモジュールの組合せは、連結された流体−弾性構造の相互作用の問題を取り扱うことができる。マルチフィジックスカップリング(multiphysics coupling)において、音響解析によって構造に対する負荷(圧力)が供され、そして構造解析によって音響解析が加速される。ここで、圧力は、流体中の音速を通して密度に関係する。膜は外側端部で締め付けられ、そこでは移動及び速度がゼロであると仮定される。電磁場の下で膜が曲っているとき、流体からの音響圧力が正規の負荷として作用している。流体部分に対して、マイクロポンプの基板が完全に剛直な壁であり、従って正規の加速がディフューザー/ノズルエレメントの壁及び流体チャンバの壁で消えると我々は仮定する。流体−壁インターフェイスで滑らない条件が設定され、そして入口と出口で圧力境界条件が無いと設定される。全ての境界条件は前に論じたものと同じに設定される。
【0051】
式(7)〜(11)は、多くの影響パラメーターが共鳴周波数の変化に寄与することを示唆している。このように、これらの因子を同定するために、Buckingham II定理を用いて無次元変数を確立することが必要である。
【数13】
ここで、L/W1はディフューザーの縦横比として定義され;θはディフューザーの開口角度であり;H/W1はディフューザーの高いアスペクト比であり;H/hは厚み比である。このように、流体−膜連結を有する膜マイクロポンプの共鳴周波数と幾何学的影響パラメーターの間の相関を直接示すために、W及びhが特定された後、解析解及び数値解が図15〜18においてプロットされている。この例においては水が使用される。
【0052】
図15〜18において示される通り、共鳴周波数とディフューザーの縦横比(L/W1)の間の逆比例関係、及び共鳴周波数と開口角(20)、高アスペクト比(H/W1)及び厚み比の間の正比例関係が、有限要素法及び解析解の両方において観察される。更に、FEA解は解析予測と大きさにおいてよく一致する。解析解はFEA解の20%以内である。比較のために、試験のために空気が装填されたとき、この違いは10%と小さく低減することができる。前述の解析に基づいて、特定のマイクロポンプモデルの寸法(逆止弁なし)が図4において選択され、そして作用流体の室温での性質が表5においてリストアップされる。
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
この作動膜の最初の二つの共鳴周波数は、流体が装填されていないとき、約138.106Hz及び287.222Hzである。空気が装填されているとき、共鳴周波数は、少し低下して104.762Hz及び284.198Hzになる。水が試験用に使用されるとき、周波数はそれぞれ5.531Hz及び65.269Hzである。この比較は、システムに加えられた質量による密度の増加によって共鳴周波数が低下し、そして流体密度が高いほど減衰効果がより明らかであることを示している。円形膜は、第一の共鳴周波数の下、一方向に曲がり、膜の中央において一つのピークを有することが観察され、そしてそれはマイクロポンプ作動において好まれる。これは流体の装填がモーダル形状を変化させないという仮定と一致する。
【0056】
流体減衰効果がポンピング作用中に起きることを証明するための別の観点は膜の移動である。マイクロポンプの過渡解析がある期間に実施され、そして作動膜の流体減衰又は流体無装填との比較が図19において示される。0.05秒及び0.15秒で、膜の最大移動が反対方向に起こり、そして図20及び図21において示される通り、マイクロデバイスはポンプモード及び供給モードにそれぞれある。作動膜のゆがみ振幅は0.4Aの励起電流で87.691μmであり、流体がチャンバ中に全く連結されていないときの104.5μmより小さい。このように、膜のゆがみ振幅は16.09%だけ小さくなる。これは流体の減衰効果がポンピング作用中に起こることを再び暗示する。
【0057】
よりよい性能及び信頼性を考慮すると、マイクロ溝を有する剛直な流体チャンバであり、一方、デバイスに対しては可撓性な作動膜が望まれる。ソフトで可撓性なポリマーチャンバがマイクロポンプ全体を通して振動を引き起こすであろう。混合物中の硬化剤の割合を増すと、PDMSの剛性が増大する。従って、流体チャンバ用の剛直基板を供するために、PDMS混合物中の硬化剤は約5:1(PDMS:硬化剤)の比率で添加される。膜に対するこの比率はPDMS対硬化剤で10:1である。次いで、液状PDMSがSU−8金型に注入され、そして硬化されて望みの微細構造が得られる。最後に、二つの層が注意深く配列され、そして一緒にプレスされる。
【0058】
接合技術については、室温及び常圧のような通常の作用条件が低コスト加工に対して好まれる。多層PDMSマイクロデバイスが過去数年において増々関心を持たれにつれて、幾つかの異なるPDMS接合技術が報告されており、そしてそれらの接合力が比較されてきた。迅速だが高価な酸素プラズマ接合は、PDMS層を付着させるために依然として広く使用されている方法であり、一方、未硬化PDMS接着剤は、酸素プラズマ接合に対する効果的でかつ簡単な代替法を供する。これらの方法の両方共、本開示の実施態様の作動膜及び流体チャンバ基板の組立に対して受け入れることができる。未硬化PDMSの非常に薄いフィルムが、成形された流体チャンバPDMS基板の表面に100℃の熱板上で20分間、塗布される。あるいは、酸素プラズマ処理(Spacemaker II(登録商標)、電子レンジ、10%酸素で10秒間)も、流体チャンバ及び入口/出口マイクロ溝をつシールするための二つのPDMS層の間の非常に強い接合法を供する。マイクロポンプの重量を測定したところ約1.47グラムである。
【0059】
マイクロポンプが組み立てられた後、直面する別の課題は、マイクロデバイスと、マクロシリンジ及びチューブなどの標準流体装置の間の相互接続性である。マイクロ流体工学は、ミリメーター又はそれより小さいオーダーの寸法を含み、そのため異なるサイズのチューブを収容するための容易に入手可能なマイクロ流体的接続はない。中央貫通穴、及びマイクロ流体的デバイスとプラスチック取り付け部品302を接続するための両面接着剤を含むPDMSコネクター300は、図22において示されるCNC機械加工によって加工される。取り付け部品(fitting)302は、チューブ306に接合された一つの小さな端部304を含み、そして他方の円錐端部308は軟質ポリマーデバイス内にプレスされる。
【0060】
ある期間に亘る平均体積束はマイクロポンプの最も重要な特性の一つである。本明細書において、ノズル/ディフューザーエレメント及び流体チャンネルにおける慣性効果及びエネルギ損失、並びに作動膜における損失が考慮される。周波数依存型の流速は流体−膜連結支配式(1)〜(4)及び流体体積式(5)〜(6)に基づいて導かれた。
【数14】
項C1は膜の慣性効果を表し;C2はポンプ内部の流体の慣性力を考慮し;C3はノズル/ディフューザーエレメント中の粘性損失効果を反映し;C4はノズル/ディフューザーエレメント内部の流体の慣性効果を表し;Cは流体及び膜の全ての慣性の寄与を関係付ける。Fは無次元の作動力であり、そして入口と出口の間には圧力差は全くない。図10において示される通り、もし平行二重流体チャンバ構成が使用されるならば、項C2、C3及びC4はそれに対応して倍にされる。
【0061】
上で展開された理論は、圧力損失係数の間の比(ξn/ξd)が、ポンピングストローク効率を最大化するために、できるだき大きくあるべきであることを示す。従って、ノズル/ディフューザーポンプは、各ポンピングサイクルに対して、ノズルからディフューザーへの正味の流れを生じ得るであろう。これらの式から、我々は、流速が三つの因子によって影響されることを観察する:つまり、励起周波数と膜の基本周波数の比(ω/ω0)、
密度比(Rρ)及び損失係数(α及びβ)を定める幾何学的サイズ比。なお、Buckingham II理論によると圧力低下は主として無次元変数に依存するので、圧力損失係数(ξn=1.01そしてξd=0.449)は、低いレイノルズ数で有限要素解析(FEA)を使用することによって数値的に導かれる。再び:
【数15】
【0062】
一方、ノズル/ディフューザーエレメント内部の表面粗度は圧力低下にもある程度寄与する。しかしながら、もしマイクロポンプが既に加工されおり、そして流速が直接、測定され得るならば、マイクロノズル/ディフューザーの幾何学的サイズを正確に測定し、そして損失係数を計算することは必要でない。従って、FEAは、概念設計段階中の、損失係数を計算するための、そしてポンピング流速を予測するための効果的な手法である。セクション3における解析及び励起周波数の実際の要求事項に基づいて、表4において示された望まれた寸法を有するバルブレスマイクロポンプが、周波数依存性能を調べるために使用される。
【0063】
図23において示されるグラフは、マイクロポンプのポンピング流速が、0Hzから20Hzまで変わる励起周波数の関数であることを示す。流速は、低い周波数範囲では励起周波数と共に殆ど直線的に増加し、そして次いで流体の減衰と共に作動膜の共鳴周波数で最大流速に達する。流速のピークの後、ポンピング速度はより高い周波数で急激に低下する。図24を参照すると、最大ポンピング速度は作動電圧振幅と共に直線的に増大する。0.4A及び2Aでの最大流速は、それぞれ19.61μl/分及び43.86μl/分である。電圧振幅の増大は膜の変形の増大に繋がる。例えば、薬物送達システムにおいて同じ入力電力エネルギを保持しつつ高い流速の要求を満すために、平行二重チャンバ構成が図7において図示される。しかしながら、逆相で作用する後者に対して流体体積が二倍になるけれども、励起周波数が3Hz、入力電流が0.4Aの条件下で最大流速が27.73μl/分前後であることは興味深い。これは図25において示される通り、同じ電流の大きさだが4.36Hzの励起周波数で操作される前者の19.61μl/分の二倍より小さい。両方のチャンバ内部の流体が効いているので、この結果も合理的である。
【0064】
本開示のマイクロポンプの例示的実施態様において、複雑で厳密な加工プロセスを避けるために、マイクロコイルを統合する代わりに、磁気的作動のための、低コストで簡単なソレノイドが開発される。外部磁気アクチュエータの構造がその用途に制限を課すけれども、大きな力、迅速な対応及び低い電力消費が高く望まれ、一方でサイズは二次的考慮要素である場合、電磁作動はやはり他の作動方法に対して有利であることを示す。簡単な設計で加工が容易であるため、電磁石は、ソフトな円筒状鉄棒(直径5mm×10mm)の周りに巻き付けられた電磁誘導コイル、及び統合された小さなバルクNdFeB磁石(寸法:3×3×0.5mm3及び重量が0.03g:ドイツ、ベルリンのNeotexx社製)を有する可動膜から成る。非常に短い距離に亘って典型的には弱いものの、電磁気駆動体は制御可能な磁場を作動回路によって直接、作出することができる。このように、磁場が反転され、それが膜のゆがみを周期的に生みだすときに、この複合膜上で交互に替わる吸引力及び反発力が誘発される。
【0065】
銅コイル(28AWG、460回捲き)の抵抗及びインダクタンスは、100Hzの条件下で約4.40Ω及び3.49mHである。ソレノイドにおける0.5Aを超える電流は熱を非常に早く生みだす。このように、作動の実際の電流は0.5Aより下に制御されるべきである。二つのタイプの作動電流が共通的に使用される:正弦波電流及び方形波電流。同じピークピーク値を用いて、方形波電流は大きなゆがみを維持することができ、そして磁力に変換することができるより多くのエネルギを運ぶことができる。最大−30/+30Vの電圧(BK Precision 1672)のDC電力供給及び方形波発生回路が、図25Aにおいて示された方形波電流を生みだすために使用され得る。コイルのインダクタンス故に、ソレノイドアクチュエータが装填された後、方形波信号は、少し変化する。電池によって代替することができるDC電力供給はマイクロポンプの携帯用途の可能性を有する。信号の周波数は回路中の電位差計の抵抗の細かな調整によって制御することができる。
【0066】
伝導コイル(conducted coil)によって永久磁石上に作用する垂直電磁力Fzは以下の式で与えられる
【数16】
ここでHzはコイルによって生み出される磁場の垂直成分であり、Brは磁石の残留磁気であり、そして、Sm、hmはそれぞれ磁石の表面積及び厚みである。
【数17】
は磁場の勾配である。この式は、電磁力が垂直磁場の変化及び磁石の体積に比例することを示す。
【0067】
本開示のマイクロポンプの例示的実施態様において、表6においてリストアップされた設計パラメーターが使用された。
【0068】
【表6】
【0069】
用途における流速の要求に従い、体積ストローク及び励起周波数がある膜に対して推定することができ、従って作動及び電気入力信号に対して必要な磁力も設計段階中に導き出すことができる。しかしながら、実験によってこれらのパラメーターを推定することは非常に実用的でない。このように、膜の幾何学的様相、流体チャンバの構造、マイクロ溝及び流体の性質が共鳴周波数を定め、その結果マイクロポンプの流速に関係するので、これらのパラメーターを概略推定するために周波数依存型流速式が使用される。
【数18】
ここで
【数19】
はストローク体積であり、
【数20】
はポンプストローク効率として定義され、一方、
【数21】
はディフューザー整流効率であり、そしてfは励起周波数である。
【0070】
次いで、このデバイスにおいて、設計パラメーターは表1における通り定められる。注目すべきは、ストローク体積の増加及びデッドボリュームの減少がポンプの性能を改善する。直径が7mmで、深さが500μmを有するこのポンプの全体積は0.01924mlである。
【0071】
本開示の例示的実施態様に対して、作用流体としてエタノールが使用される。20℃、1気圧での本媒体の物性は表7においてリストアップされている。この例において、セットアップは流体リザーバ(シリンジ)、マイクロポンプ、作動回路基板及び電磁アクチュエータ並びにCCDカメラを有する光学顕微鏡から成る。流体チャンバ内部のエタノール及びポンピングプロセス中に発生した気泡を観察するために顕微鏡が利用される。
【0072】
【表7】
【0073】
入口及び出口チューブは、市販品のTYGON(登録商標)チューブである。入口チューブは流体リザーバに接続される。流体が前方に動いているとき、流体リザーバは流体チャンバを自動的にプライミング(prime)する。自己プライミング能力及び気泡許容度は圧縮比(ポンプの体積ストロークΔVと全デッドボリュームの間の比)から定めることができる。マイクロポンプが加工されたとき、マイクロポンプの全体積は一定であるので、体積ストロークが圧縮比を定めた。この場合、自己プライミング及び気泡許容液体マイクロポンプに対して、圧縮比は、最小圧縮比0.075よりも小さい約0.068であった。
【0074】
マイクロポンプの操作中に、出口チューブ中の流体流れ及び流体の重量が測定される。流体流れに対するチューブの摩擦は特に重要なものである。チューブ中の圧力低下を考慮することが必要である。しばしば、生物医学用途に対するマイクロポンプの当該流速は1ml/分未満であり、そしてレイノルズ数は8.72と推定することができる。このように、チューブを通過する流れは層流である。入口/出口チューブ中の摩擦損失による圧力変化は、ハーゲン−ポアズイユ方程式によって以下のように評価することができる:
【数22】
ここでΔpは流れ抵抗であり;μは流体的粘度であり;ΔL、aはチューブの長さ及び
内径であり;Qは流速である。
【0075】
各流体媒体の圧力低下は、無視することができ(試験におけるチューブの長さは約5cm、圧力低下は約2.1Pa)、そしてマイクロポンプの性能に著しくは影響しないであろう。
【0076】
最大流速は、ポンプが背圧セロで作用している時の流速である。これらの異なる電流試験に対する入口と出口の間の圧力差は全くない。共鳴周波数で操作中のマイクロポンプは、増大する移動、より高い流速及びより高い変換効率をもたらすことができて、所要電力(power requirements)を低減する。従って、システムの有効励起周波数を制御することが非常に重要になる。励起周波数の範囲における流速を試験するために、0.14A、0.16A及び0.18Aの電流が使用される。結果は図26〜28に図示されている。
【0077】
流れは、マイクロポンプに接続される出口チューブの始まりに近い位置の周りで振動し、そして、周波数が15Hz未満であるとき、ポンプは流体の輸送に失敗する。これは、両方向の低い流体的インピーダンスのためであり、そしてバルブレスポンプがある程度の逆流を蒙るためである。従って、もし励起周波数が低すぎるならば、入口から出口へと十分な正味の流れを蓄積することは困難である。更に、流体流れは脈動的であり、そしてこのバルブレス整流ポンプにおける駆動周波数が20Hz未満であるとき、一定の流速を維持することは困難である。これは、磁気作動においてかけられる方形波信号の周期的な性質からもたらされる。更に、例のこれらの三つのグループの例に対して二つの流速ピークがある。これは、振動する膜の共鳴周波数の最初の二つのモードが達成されるためである。
【0078】
図14において示される通り、膜は一方向にのみ曲がり、一方、膜の半分は上方に、そして残りの半分は下方に曲がる。第一のモードは第二のモードよりもより高い体積ストロークを生みだす。従って、通常、第二のピークでの流速は第一のピークより低い。
【0079】
異なる電流振幅でのこれらの3つのグループの試験の流速曲線において幾らかの違いがある。第一のに、効果的な作用周波数は、安定な流速に対して20Hz〜34Hzの範囲であり、そして二つの共鳴周波数は、第一のグループに対してそれぞれ、25.01Hz及び30.04Hzである。20Hz〜47.5Hz及び20Hz〜50Hzがそれぞれ、第二の及び第三のグループに対周波数範囲である。二つの共鳴周波数は第二のグループに対して25.9及び36.1Hz、そして第三のグループに対して26.1及び37.5Hzである。後の二つのグループの値は非常に近く、一方、第一のグループは少し外れている。流速は、0.14Aの電流で小さく、そしてチューブ中の摩擦が主要な因子になるので、測定誤差が他の二つのグループに比べてより大きい。第二のに、第一の流速ピークに達する前に、流速は励起周波数と共に増大し、次いで急激な低下を伴う。第一のピークより少し低い第二のピークは、励起周波数の増大と共に再び現れる。第三のに、流速は周波数が増えるにつれて低下する。この結果は、流速が当該励起周波数内で制御することができることを暗示する。
【0080】
背圧は通常、流体システムにおける障害物による、自由運動流に抗する圧力を意味する。このように、本開示のマイクロポンプにおいて、最大背圧(Pmax)は、ポンプの流速
がゼロになるとき、流体上に作用する反対圧力として定義される。
【0081】
長期間において一定の連続ポンピングを達成することは、信頼できるマイクロポンプの重要な指標である。チャンバ中に生成する小さな気泡が流速に著しく影響を及ぼし得るので、流体チャンバにおける温度上昇は重要な特性である。更に、高温は、生化学又は生命科学用途における生きた細胞又は鋭敏な粒子を含む流体を損傷しかねない。しかしながら、流体チャンバ内部の温度変化を測定することは容易ではない。むしろ磁性アクチュエータが電流駆動型であり、そしてコイルの温度は迅速に上がるであろう故に、流体温度を推定するために磁性アクチュエータの温度上昇が測定される。流体の真の温度は磁性アクチュエータの温度より少し低くあるべきである。このように、1時間内の温度上昇は、励起周波数が0.18Aで25Hz(共鳴周波数)、そして電磁石と振動する膜の間のエアギャップが約1mmで測定される。図29において示される通り、温度は非線形曲線において21.3℃から38.1℃へと着実に上がる。この温度は、殆どの生物学的流体試料に対する臨界温度より十分低い。本開示のマイクロポンプの実施態様の特性が表8にリストアップされる。
【0082】
【表8】
【0083】
このように、磁気的に作動された軟質ポリマー(PDMS)マイクロポンプの実施態様が、この例において提示されている。流体の流れ方向は、このマイクロデバイスの入口及び出口において異なる流体抵抗を有する二つのノズル/ディフューザーエレメントに依存する。このマイクロポンプ実施態様に伴う幾つかの利点がある。簡単な加工プロセス及び面構造の特長によって、μTASデバイスへの統合が容易にでき、そのことによって全体のマイクロ流体システムの小型化が可能になる。全ての加工プロセスはクリーンルーム施設の外で実施することができるため、コストが著しく低減される。その上、低い電圧及び電力消費の要求のせいで、小さい電池によって電力を供給することができる携帯型医療デバイスにおける使用に対して本開示のマイクロポンプが好適になる。長期間における一定の連続流速及び低い温度上昇が、提示された設計及び加工方法に基づく、良好な信頼性及び生体適合性を有する生物医学用途におけるこのソフトPDMSマイクロポンプの実現可能性を証明する。
【0084】
本開示の実施態様において、制御システムはセンサ及びコントローラーを含む。ホール効果センサであるセンサは、アクチュエータコイルに近接して置かれている。図30〜32を参照すると、可撓性膜は電磁コイルのかけられた磁場(B)に反応して動く。磁石の位置によって、従って膜のゆがみ及び両チャンバの各体積によって、ホール効果センサによって採取される磁場構成が修正される。例として、好適なセンサはAllegro Microsystems社製の、2.5mV/ガウスの感度を有するA1301線形ホール効果センサである。位置情報はコントローラーに提供され、そして磁石の位置を0.05mmの精度内で定めるために使用される。
【0085】
コントローラーは、使用者に選択された流速要求に基づいて、磁石の動きを規定する。正確な投与のための低速モード、又は高い体積流速のための高速モードなどの幾つかの操作モードが構成され得る。
【0086】
磁石の実時間位置を測定する能力は、それによって閉ループ流速制御が可能であり、磁石とチャンバ壁の間の衝突を防ぎ、その結果、衝突損傷が排除されてノイズが低減し、そして高効率で制御された共鳴操作モードが可能になるため、重要である。本開示のマイクロポンプは二つの分離された部分から成るので、非接触感知システムが必要である。磁石によって生みだされた磁場を測定することによって、磁石の位置、従って膜の位置を定めることがコスト効率に優れる方法で容易に達成されることが見出された。この方法を実行するための主たる欠点は、電磁駆動コイル故の磁気的ノイズであり、それは抑制されなければならない。従って、センサは、磁気的ノイズが最小化されるように位置付けられる。
【0087】
信号及び磁気的摂動の振幅は、センサの位置と向きに強く依存する。センサの場所で、コイル磁場はできる限り低くなければならず、そして磁石の磁場はできるだけ高くなければならない。両方の要求を満足する場所がある(図33、34、35を参照)。各コイルの側に沿って、Brcoilは弱く、一方、Brmagnetは強い。この位置はサイド位置と称される。この位置は、磁場感知のための如何なる他の可能な位置よりも、よりよい信号/ノイズ比を供する。図36において、コイル及び磁石によって作出された磁場が比較される:(i)サイド位置でのBr及び(ii)古典的な標準位置(つまり、コイルの中心)でのBz。
【0088】
このサイド位置は、コイルの磁場Bcoilに非常に鈍感であるが、磁石の磁場Bmagnetにはまだ鋭敏であることが証明される。図37について、サイド位置での信号が中央でのそれより約3倍少ないことが示されるが、コイルの摂動は約12倍少ないため、信号/ノイズ比はサイド位置での方がより良好である。
【0089】
例示的実施態様において、(Bmagnet)min /(Bcoil)maxの最小信号/ノイズ比率は45であり、そして感度比ΔBmagnet /Δzは75〜100ガウス/mm(位置に依存して)〜220mV/mmであると定められ、ここでzは磁石の位置である(最大距離を8mm、そしてコイルを通る最大電流を0.3Aと考えて)。図38、39において示される通り、センサがサイド位置にあるときの性能及びコイル摂動が測定された。
【0090】
選択された場所は、信号/ノイズ比の最適化を可能にするが、コイルの磁気的摂動を完全に抑制することはできない。これを正確に達成するために、パルスの使用のおかげで、磁場のコイル及び磁石成分の分離に基づいて、ノイズ抑制システムが構成されなければならない。
【0091】
コイルに段階的電圧が、t=t0でかけられるとき、システムの応答は以下のようにな
る:
【数23】
ここでΔBcoil+ΔBmagnet_displacementは、段階的電圧がかけられた後の、センサによって測定された半径方向の磁場の全変化ΔBsensorである。ΔBcoilはコイルによる磁気的摂動であり、これはこの変化に対するコイルの寄与である(コイルが磁場を作出するため);ΔBmagnet_displacementはこの変化に対する磁石の寄与である(磁石が動き、その結果センサまでの距離が変わり、そしてセンサによって測定された測定された磁場が変わるため)。
【0092】
これら二つの項は異なる固有応答時間を有する。ΔBcoilはコイル中に流れる電流Iに比例し、従って電気的応答時間τI =L/Rを有する。ΔBmagnet_displacementは磁石
の移動の結果である。一旦、磁場がかけられると、磁石は、それらが略一定速度に達するまで、加速する。この一定速度に達するまでに必要な時間は、機械的応答時間τMであろ
う。本開示においてはτI<<τMである。これは、段階的電圧がかけられると、ΔBcoilは最終値に到達し、一方、ΔBmagnet_displacementはまだ無視できることを意味する。
従って、次式が導かれる:
【数24】
ここでt1>τIそしてt1<<τMである。本件の場合、t1は約0.2ミリ秒が最適値である。
【0093】
式(19)は、磁石がポンプ内部にある間でさえ、かけられたパルス信号のせいで、磁石が動く時間を持つ前に時間t1で応答を測定することによってコイルの摂動を独立に導くことができることを示す。
【0094】
この原理に基づいて、電圧パルスに対するセンサ応答(図40を参照)が測定され、そしてコイルの磁気的摂動ΔBcoil(I)を計算するために使用された(図41を参照)。センサ応答は、磁石をポンプから除くことによって、コイルのみから直接、測定された、実際の値と比較された(図Kを参照)。なお、固有のセンサノイズレベル及びこのレベルの精度での限定されたCAN転換精度故に、この測定はノイズが多い(1ガウス=センサの測定範囲の1/2000)。
【0095】
以下のプロトコールは、再現性がありそして正確な値に導く(図41を参照):10ミリ秒当たり1回、1ミリ秒継続で、+10ボルトを5パルスかけられ;10ミリ秒当たり1回、1ミリ秒継続で、−10ボルトで5パルスかけられる。電流及び磁場が測定される。パルスの平均コイル摂動因子は次の式に従って計算される:
【数25】
【0096】
Acoilが計算された後、Acoilが、測定中の実時間において使用され、ここで:
【数26】
【0097】
提案された摂動測定法は正確かつ迅速であり、そして、磁石が既にマイクロポンプ内部にあるその場で使用することができる。これは感知システムの自動校正プロセス第一の部分である。第二の部分は以下のように述べられる。
【0098】
一旦、コイル摂動が抑制されると、測定された信号は、センサレベルで磁石によって作出された磁場Brmagnetに対応する。測定された信号は、磁石位置の線形関数ではない。従って、位置決定アルゴリズムが使用され、それがセンサ信号を磁石位置に変換する。
【0099】
磁化がMである磁石は、磁石の外部の点r’で次の磁場を作出する:
【数27】
ここで、rは、(20)における体積積分おいて使用された、磁石の体積Vmagnetにおける素量(elementary volume)dVの座標である。
【0100】
本例において、磁石は、各磁石に対して以下のような軸対称な幾何寸法を有する:
【数28】
ここで、参照(000)はポンプチャンバの中心であり;Bremは磁石内部の残留磁場であり;(rs,zs)はセンサの中心の座標であり;Rは磁石の半径であり;hは磁石の厚みであり;Zbottomは磁石の底の座標である。
【0101】
一旦、コイルの効果が抑制されると、センサによって測定された磁場は両方の磁石の磁場の重ね合わせになる。
【0102】
【数29】
【0103】
式(21)は、その積分が何らの解析解をも与えず、従って(21)の逆関数を得ることができないために、それ自身、磁石の中心の位置Zm(従って膜の位置)を定めるために使用することができない。(21)の参照テーブル(lookup table)及び対応する逆参照テーブルが作出されなければならない。
【0104】
現実のシステムは理想的ではなく、そして式のパラメーターは限定された精度でのみ知ることができる。従って、Bmeasuredの関数としてのzm のシミュレーション値は真値とは異なるであろう。しかしながら、以下の式を使用することによって真値とシミュレーション値の間の違いを強く低減することが可能である:
【数30】
【0105】
式(22)は、もし二つの場合において真のBrmagnetが分かれば、磁石の位置を正確に定めるために、真値と非常に近い補正されたシミュレーション値を使用することができる:磁石が下方壁(zBmax)及び上方壁(zBmin)をヒットするとき、zBmax及びzBmin・zBmax及びzBminに対しては、それらが磁石の位置であるため、得ることが容易である。
【0106】
この原理に従って、以下のプロトコールを通して磁石の位置を得ることができる:
(a)ポンプの寸法、センサの位置並びに磁石のサイズ及び材料に従って、式(21)を用いてオフラインでシミュレーションが行われる;
(b)プログラムの実行中にマイクロコントローラーメモリ中において参照テーブルが作出されそして記録される;
(c)ポンプのスイッチが再度入れられる、又は新しいポンプ部分が挿入される時間毎に、最大位置及び最小位置が探索され、そして対応する磁場が測定される;
(d)参照テーブルを修正し、そして次いでBmeasuredの関数としてzmを与える逆参照テーブルを作出するために式(22)が使用され;そして
(e)逆参照テーブル上の線形回帰を使用することによって、実時間においてBmeasuredからzmが得られる;
ここで工程c及びdは自動的に行われ、そして1秒を超えない。
【0107】
磁石によって作出された磁場は、磁石の位置の関数として、センサによって測定される(図42を参照)。図42において、磁場が以下の関数としてプロットされている:(i)シミュレーションされた磁場;(ii)式(22)に従って訂正されたシミュレーションされた値;及び(iii)前述のプロトコールを用いて作出された参照テーブル上の実時間線形回帰。
【0108】
真値と計算された逆参照テーブル値の間の最大誤差は以下のように測定された:Errormax=0.03mm=ポンプ内部の磁石の全範囲の0.75%、つまりチャンバ体積の0.75%の精度を有する。
【0109】
制御システム300は本開示の例示的実施態様中に含まれる。図43を参照すると、制御システム300は、使用者入力304を受け取るように構成された中央演算処理装置(CPU)302を含む。液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイ306は、流速、体積、電力、電池充電などのような種々のパラメーターの値を使用者が見ることを可能にするために供される。CPU302は、デジタル/アナログ変換器(D/A)306及び信号処理装置308を通過する作動信号を供する。前述の通り、磁石コイルに隣接するホール効果位置センサ310に加えて、本開示のマイクロポンプの実施態様は、マイクロポンプの出口上の流れセンサ312及び流体リザーバ上の体積センサ314も含む。値は、CPU302に供される前に、アナログ/デジタル変換器(A/D)316を通過させられる。図44において示される通り、もしこれらのパラメーターが所定の値を超えるならば、これらのセンサから得られた値は、流速を最適化するために及び/又は警報又は警告条件を供するための、追加のフィードバックをコントローラーに供するために比較され得る。
【0110】
本開示の例示的実施態様において、二つの異なるPIDコントローラーが使用された:(i)第一のPIDは電流Iに対する設定点及び出力電圧Uを含む;(ii)第二のPIDは磁石xの位置に対する設定点及び電流Iの出力を含む。感知システムは電流センサ318からの信号の物理的入力を有し、そして(前に論じた通り)ノイズ抑制の後、それを磁石の位置xに変換する。
【0111】
制御システム構造の例示的実施態様が、図45において示される。コントローラー300は、感知モード及び校正モードにおける操作のために、感知モジュール320及び校正管理装置(calibration manager)330からの入力を受け取り得る。更に、感知モジュ
ール320によって供された信号は、コントローラー300によって処理される前にフィルターモジュール340を通過し得る。
【0112】
校正モードにおいて操作されるとき、校正トリガー356又は要求事項は使用者インターフェイスによって供される。校正管理装置330は、校正信号をPWM変換器352に送ることによって、可撓性膜上の磁石の位置を制御する。磁石の位置は記録されそしてコントローラーパラメーターが修正される。次いで操作は更新されたパラメーター及び校正を用いてコントローラーに戻される。校正モードにおける操作の簡略化されたフローチャートを図47において示す。
【0113】
感知モードにおいて操作されるとき、使用者インターフェイス350は流速の要求事項を供し、次いでそれらがコントローラー300によって、可撓性膜上に配列された磁石のための移動コマンドに変換される。これらのコマンドは次いでコントローラー300に対する設定点として使用される。コントローラーは、磁石の位置の設定点と実際の位置を実時間において比較する。この比較に基づいて、コントローラー300はパルス幅モジュュレーション(PWM)変換器352に電圧信号を送る。次いでPWM変換器352はコントローラーからの電圧信号をPWM信号に変換し、それは次いで、アクチュエータコイルに流れる電流を制御するH−ブリッジ回路354に供給される。感知モードにおける操作の簡略化されたフローチャートが図46において示される。
【0114】
本開示のマイクロポンプの例示的実施態様は、膜上に配列された磁石によって生み出される磁場の強さを通して、可撓性膜の位置を検出するためにホール効果センサを使用するので、信号は位置の値に変換される必要がある。例示的実施態様は、磁場強度の関数として磁石の位置を供するために、電磁場モデルに基づいて、参照テーブルを使用する。電磁場モデルは、前述の通り、部品の寸法及び使用される材料などのパラメーターに基づいて、コントローラーをプログラミングする前に計算される。これらの計算結果は物理的実施態様の近似であるため、計算は、実際の位置/磁場の関連を、ほぼ0.03mmの精度でシステムが感知することを可能にする。
【0115】
PWM駆動回路及び磁場の性質を使用する故に、感知モジュール320によって供されるフィードバック信号はノイズを含む。従って、信号中のノイズを抑制するためにフィルターモジュール340が使用される。フィルターモジュールは二つのフィルターを含む:速いフィルター342及び遅いフィルター344。速いフィルター342は精度が落ちるが、積分などの、ノイズ振動により鋭敏でない操作に対して適合される。遅いフィルター344は、精度がより高い;しかしながら、精度を上げると遅れ時間も増える。遅れを考慮すると、磁石の速度の測定に対して遅いフィルターが適している
【0116】
本システムは明確な機械的ヒステリシスを有する:更に、コイルの加熱のせいで、図48において示される通り、電流は、従って磁場は、線形でもなく、電圧の一義的関数でもない。このせいで、開ループ信号を用いてそれを制御することが妨げられる。通常、ヒステリシス振幅よりもより良い結果を得ることを妨げるヒステリシスにも拘わらず、プロトタイプの応答は迅速(高い振幅設定点の変化に対する時間応答)かつ正確であり(静的誤差=0);最大オーバーシュート誤差は、図49において示される通り、2%である。
【0117】
上述の、本開示のバルブレスマイクロポンプ実施態様に加えて、別の実施態様では一方向の流動体流路を供するために逆止弁が採用され得る。図50〜52を参照すると、本開示のマイクロポンプと共に使用される逆止弁400の例示的実施態様は、いっしょに接合された一対の本体部品404、406から形成され得るバルブ本体402を含む。本体部品404、406はチャンバ408内に配列された膜414のための台座として作用する、離れて互いに面して配列された一対の実質的に平らな表面410、412を有するチャンバ408を画成する。逆止弁400は、チャンバ408と流体連通している入口ポート416及び出口ポート418も含む。膜414はチャンバ408内に浮かぶように構成され、そして例示的実施態様においては、チャンバ408より約20%小さい。入口ポート416に隣接して位置付けられる台座410は固い。出口ポート418に隣接して位置付けられる台座412は、流体を通過させ得る多くの開口部420を含む。例示的実施態様において、そのような開口部420はロゼットパターンで台座412内に機械加工されるが、流通弁400を通した流れを可能とし、一方で膜414が台座412に対して座する如何なるパターンも受け入れ可能である。
【0118】
ここで図51及び52を参照すると、入口ポート416での流体圧力よりも大きい流体圧力が出口ポート418で存在する如何なる点でも、矢印Rによって図51において示される通り、逆流体流れ条件が生じるであろう。この逆流は入口台座410に向かって膜414を掃引するように作用する。膜414が入口台座410に対して座した後、膜414は入口ポート416を覆って更なる逆流を防ぐ。
【0119】
入口ポート416で、出口ポート418での流体圧よりも大きな流体圧が存在する如何なる点でも、図52における矢印Fによって示される通り、前進流体流れ条件が生じるであろう。この前進流は膜414を出口台座412に向かって掃引する。出口台座412は開口部420を含むので、流体はこれらの開口部420を通過して膜414の周りを流れることが可能になり、そうすることによって、流体は出口ポート418を通して前方流体流れF方向に流れることが可能になる。
【0120】
ここで図53を参照すると、本開示の別の実施態様は、複数チャンバのマイクロポンプ510を含む。複数チャンバのマイクロポンプ510は駆動体590内に挿入されるために構成された多くのポンプカートリッジ580A、580B、580Cとして構成され得る。三つのポンプカートリッジが示されているが、より多くの又はより少ないカートリッジが本開示の範囲内にあり、そして本開示のマイクロポンプの用途に依存して変わり得ることは明らかである。ポンプカートリッジ580A、580B及び580Cの各々は他のものと同じであり、従ってポンプカートリッジ580Aが例示的実施態様として述べられるであろう。
【0121】
ポンプカートリッジ580Aは第一のポンプ本体512、第二のポンプ本体524及びその中に配列される可撓性膜536を含む。ポンプカートリッジは、場合により、逆止弁マニホールド582を含み得る。あるいは、カートリッジ580Aは本明細書で開示された通りのバルブレス設計のものであり得る。ポンプカートリッジ580Aは入口520、532及び出口522、534も含む。次いで、流体送達のために、チューブが入口520、532及び出口522、534に接続され得る。
【0122】
駆動体590は、ポンプカートリッジ580A、580B、580Cの数に対応する多くのレシーバーモジュール590A、590B、590Cを含む。例示的実施態様として、レシーバーモジュール590Aは第一の支持部592及び第二の支持部594を含む。第一の及び第二の支持部592、594は各々、ソレノイド又は活性化コイルを受け取るように構成された凹部598を含む。各レシーバーモジュール590A、590B、590Cは、ポンプカートリッジ580A、580B、580Cを受け取るように構成されたリセプタクル500を画成する。図53において示される通り、受け取りモジュールは積み重ねられた配置で構成され得るか、又は望まれる用途に応じて、背中あわせで、隣り合って、又はその組合せのような他の構成で配置され得る。
【0123】
上記は、請求された発明の原理の例示としてのみ考慮されている。更に、多くの修正及び変更が、当業者にとって容易に思いつくであろうから、請求された本開示をここで示されそして述べられた正確な構造及び操作に制限することは望まれず、従って、全ての適切な修正及び同等物が用いられ得て、請求された発明の範囲内に包含され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を送達するためのマイクロポンプであって、
第一の流動体流路を画成し、第一のチャンバ(ここで第一のチャンバは第一のチャンバ壁及び第一の側壁を含む)、第一の入口及び第一の出口(ここで第一の入口及び第一の出口は第一のチャンバと流体連通している)を含む、第一のポンプ本体;
第二の流動体流路を画成し、第二ののチャンバ(ここで第二のチャンバは第二のチャンバ壁及び第二の側壁を含む)、第二の入口及び第二の出口(ここで第二の入口及び第二の出口は第二のチャンバと流体連通している)を含む、第二のポンプ本体;及び
第一のチャンバ及び第二のチャンバ間に配列される可撓性膜;
を含むポンプ組立体:及び
ポンプ組立体と協動するように構成され、
膜と磁気的に連結される駆動体;及び
膜の位置を検出するように構成されるセンサ;
を含むアクチュエータ組立体で、ここで駆動体が膜に磁力を印加して、膜をゆがませ、そしてここで膜のそのようなゆがみによって第一のチャンバ及び第二のチャンバ内の圧力の変化を生じさせ、それにより流体流れを生じさせる、アクチュエータ組立体:を含み、
ここで、ポンプ組立体は、バルブなしで、所定の方向に流体流れを向けるように構成される、上記マイクロポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロポンプであって、第一の入口が第一の流入路を更に含み、
ここで第一の流入路が、
第一の入口のど部幅を有する第一の入口のど部、及び第一の入口端幅を有する第一の入口端を含み、
ここで第一の流入路が、流体が第一の入口のど部から第一の入口端の方向に流れるように構成され、
ここで第一の入口端が、第一の側壁に配列され、そしてここで第一の入口のど部幅が第一の入口端幅より狭い、
上記マイクロポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載のマイクロポンプであって、第一の出口が第一の流出路を更に含み、
ここで第一の流出路が、
第一の出口のど部幅を有する第一の出口のど部、及び第一の出口端幅を有する第一の出口端を含み、
ここで第一の流出路が、流体が第一の出口のど部から第一の出口端の方向に流れるように構成され、
ここで第一の出口のど部が、第一の側壁に配列され、そしてここで第一の出口のど部幅が第一の出口端幅より狭い、
上記マイクロポンプ。
【請求項4】
第一の流入路及び第一の流出路は、第一のチャンバを通る流体流れが、実質的に第一の入口から第一の出口の方向に流れることを可能にするように構成される、請求項3に記載のマイクロポンプ。
【請求項5】
請求項1に記載のマイクロポンプであって:
第一の入口のど部幅を有する第一の入口のど部、及び第一の入口端幅を有する第一の入口端を含む第一の流入路であって、
ここで第一の流入路は、流体が第一の入口のど部から第一の入口端の方向に流れるように構成され、そして
ここで第一の入口端が、第一の側壁に配列され、そしてここで第一の入口のど部幅が第一の入口端幅より狭い、
第一の流入路;
第一の出口のど部幅を有する第一の出口のど部、及び第一の出口端幅を有する第一の出口端を含む第一の流出路であって、
ここで第一の流出路が、流体が第一の出口のど部から第一の出口端の方向に流れるように構成され、そして
ここで第一の出口端が、第一の出口側壁に配列され、そしてここで第一の出口のど部幅が第一の端幅より狭い、
第一の流出路;
第二の入口のど部幅を有する第二の入口のど部、及び第二の入口端幅を有する第二の入口端を含む第二の流入路であって、
ここで第二の流入路が、流体が第二の入口のど部から第二の入口端の方向に流れるように構成され、
ここで第二の入口端が、第二の側壁に配列され、そしてここで第二の入口のど部幅が第二の入口端幅より狭い、
第二の流入路;
第二の出口のど部幅を有する第二の出口のど部、及び第二の出口端幅を有する第二の出口端を含む第二の流出路であって、
ここで第二の流出路が、流体が第二の出口のど部から第二の出口端の方向に流れるように構成され、そして
ここで第二の出口端が、第二の出口側壁に配列され、そしてここで第二の出口のど部幅が第二の出口端幅より狭い、
第二の流出路;
を更に含む、上記マイクロポンプ。
【請求項6】
膜の上に配列された第一の磁石を更に含んでなる、請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項7】
膜の上に配列された第二の磁石を更に含んでなり、ここで第一の磁石が第一のチャンバに隣接して位置付けられ、そして第二の磁石が第二のチャンバに隣接して位置付けられる、請求項6に記載のマイクロポンプ。
【請求項8】
複数の磁石を含んでなり、ここで複数の磁石が第一のチャンバ及び第二のチャンバのどちらかに隣接した膜の上に配列される、請求項6に記載のマイクロポンプ。
【請求項9】
第一の磁石がネオジウム−鉄−ホウ素希土類磁石である請求項6に記載のマイクロポンプ。
【請求項10】
第二の磁石がネオジウム−鉄−ホウ素希土類磁石である請求項7に記載に記載のマイクロポンプ。
【請求項11】
可撓性膜が磁性材料を混合した軟質ポリマー材料で構成される請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項12】
軟質ポリマー材料がポリジメチルシロキサンである請求項10に記載のマイクロポンプ。
【請求項13】
可撓性膜は、テンショニングが調節可能であるように構成され、その結果、駆動体によって膜に印加される磁力に関連して膜のたわみ性が変更され得る、請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項14】
駆動体が、ポンプ本体に近接して位置付けられる第一の磁気コイルを更に含み、ここで第一の磁気コイルがワイヤ巻きを含んでなり、そして外周を画成する、請求項6に記載のマイクロポンプ。
【請求項15】
駆動体が、第一の磁石の位置を検出するように構成されるセンサを更に含み、ここで、センサは第一のコイルの磁束密度が第一の磁石の磁束密度に比べて無視できる場所に、第一のコイルの外周に隣接して置かれる請求項14に記載のマイクロポンプ。
【請求項16】
センサがホール効果センサである請求項15に記載のマイクロポンプ
【請求項17】
駆動体は、膜に取り付けられた磁石の位置を感知して、その位置を所定の設定点の位置と比較し、そして膜に印加される磁力を調節することによって膜の移動を制御するように構成されるフィードバック制御システムを更に含む、請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項18】
流体リザーバから流体を送達するためのマイクロポンプ組立体であって、
第一のチャンバ(ここで第一のチャンバは第一のチャンバ壁及び第一の側壁を含む)、第一の入口及び第一の出口(ここで第一の入口及び第一の出口は第一のチャンバと流体連通している)、
を画成する、第一のポンプ本体:
第二のチャンバ(ここで第二のチャンバは第二のチャンバ壁及び第二の側壁を含む)、第二の入口及び第二の出口(ここで第二の入口及び第二の出口は第二のチャンバと流体連通している)、
を画成する、第二のポンプハウジング;及び
第一のチャンバ及び第二のチャンバ間に配列される可撓性膜;
を含むポンプカートリッジであって、ここで流体リザーバから第一のチャンバ及び第二のチャンバの少なくとも一つへの流体連通を可能にするように構成される、ポンプカートリッジ:
ポンプ組立体と協動するように構成され、膜と磁気的に連結される駆動体、及び膜の位置を検出するように構成される第一のセンサ、
を含むアクチュエータ組立体で、ここで駆動体が膜に磁力を印加して、膜をゆがませ、そしてここで膜のそのようなゆがみによって第一のチャンバ及び第二のチャンバ内の圧力の変化を生じさせ、それにより流体流れを生じさせる、アクチュエータ組立体;
駆動体に連結され、そして第一のセンサからの入力を受け、そして駆動体によって印加される磁力を調節することによって膜の位置を制御するように構成されるコントローラ;及び
駆動体及びコントローラにエネルギを与えるように構成される電源部;
を囲むハウジング:
を含んでなり、
ここで、ハウジングは、マイクロポンプカートリッジがアクチュエータ組立体に挿入され、その中に保持され得るように構成される、上記マイクロポンプ組立体。
【請求項19】
マイクロポンプカートリッジが使い捨て用に構成される、請求項18に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項20】
流体リザーバがマイクロポンプカートリッジに取り付けられる、請求項19に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項21】
流体リザーバがハウジング内に収容され、そしてマイクロポンプカートリッジをハウジング内に挿入した際に、マイクロポンプカートリッジと連結するように構成される、請求項19に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項22】
コントローラは、第一のセンサからフィードバック信号を受信するように構成され、そしてここでコントローラは、膜に取り付けられた磁石の位置を、所定の設定点と比較するように構成され、そしてここでコントローラは、フィードバック信号に応答して、膜に印加される磁力を調節するように構成される、請求項18に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項23】
コントローラが比例積分微分型コントローラである請求項22に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項24】
流体リザーバ内の流体の体積を検出するように構成される第二のセンサを更に含み、そしてここでコントローラは、それが流体流れを計算しそして予測できるように、第二のセンサからの入力を受けるように構成される、請求項18に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項25】
コントローラは、第一のセンサからのフィードバック信号に基づいて、送達された流体の体積を計算するように構成される、請求項18に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項26】
コントローラは、第一のセンサからのフィードバック信号に基づいて送達された流体の体積を、第二のセンサから入力された体積と比較し、そしてここで、比較した体積が所定の範囲外であれば、出力信号を与えるように構成される、請求項25に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項27】
出力信号が、警報及びシャットダウンの少なくとも一つである、請求項26に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項28】
マイクロポンプの加工方法であって:
シリコンウエハ上に第一のポリマー層をスピンコーティングし、そして第一のポリマー層を硬化させる工程、
磁性材料を第一のポリマー層の上に置く工程、
磁性材料の周りに第二のポリマー層を塗布し、そして第二のポリマー層を硬化させる、及び
第三のポリマー層を塗布し、そして第三のポリマー層を硬化させる工程、
を含む、ポリマー材料から可撓性膜を加工する工程;
流体チャンバ、入口チャンネル及び出口チャンネルを成形するように構成される金型内に液体ポリマー材料を注入し、そして液体ポリマーを硬化させることによって剛性ポンプ本体を加工する工程;
可撓性膜と剛性ポンプ本体を整列させる工程;及び
剛性ポンプ本体に可撓性ポリマー膜を付着させる工程;
を含む、上記加工方法。
【請求項29】
第一のポリマー層が、約0.15mmの厚さにスピンコートされる請求項28に記載の方法。
【請求項30】
第一のポリマー層を75℃で2時間、硬化する請求項29に記載の方法。
【請求項31】
第二のポリマー層が、約0.5mmの厚さに塗布される請求項28に記載の方法。
【請求項32】
第二のポリマー層を100℃で30分間硬化する請求項29に記載の方法。
【請求項33】
第三のポリマー層が、約0.15mmの厚さに塗布される請求項28に記載の方法。
【請求項34】
第三のポリマー層を75℃で2時間、硬化する請求項33に記載の方法。
【請求項35】
剛性ポンプ本体用の金型が、エポキシ系ネガティブフォトレジスト材料で形成される請求項33に記載の方法。
【請求項36】
フォトレジスト材料が、SU−8である請求項35に記載の方法。
【請求項37】
剛性ポンプ本体への可撓性ポリマー層の付着が、接着剤を使用して行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
可撓性ポリマー膜の付着が、可撓性膜と成形されたポンプ本体の間に配列されたポリマーのフィルムを、100℃で20分間、硬化する工程を含む酸素プラズマ法を使用して行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
可撓性ポリマー膜の付着が、可撓性膜と成形されたポンプ本体の間の未硬化ポリマーのフィルムを、10%の酸素雰囲気中で10秒間、マイクロ波を当てることによって硬化する工程を含む酸素プラズマ法を使用して行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
ポリマー材料が、パリレン、ポリイミド、SU−8及びポリジメチルシロキサンから成るグループから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項41】
可撓性ポリマー膜が、ポリジメチルシロキサン10部及び硬化剤1部の混合物から加工される請求項28に記載の方法。
【請求項42】
剛性ポンプ本体が、ポリジメチルシロキサン5部及び硬化剤1部の混合物から加工される請求項28に記載の方法。
【請求項43】
流体を送達するためのマイクロポンプであって、
第一のチャンバ(ここで第一のチャンバは第一のチャンバ壁及び第一の側壁を含む)、
第一の入口及び第一の出口(ここで第一の入口及び第一の出口は第一のチャンバと流体連通している)、及び
第一のチャンバ壁の反対側の第一のチャンバに亘って配列される第一の可撓性膜、
を画成する、第一のポンプ本体;
第二のチャンバ(ここで第二のチャンバは第二のチャンバ壁及び第二の側壁を含む)、
第二の入口及び第二の出口(ここで第二の入口及び第二の出口は第二のチャンバと流体連通している)、及び
第二のチャンバ壁の反対側の第二のチャンバの上に配列される第二の可撓性膜、
を画成する、第二のポンプ本体;
第一のポンプ本体と第二のポンプ本体の間に配列される少なくとも第三のポンプ本体であって、
第三のチャンバ側壁を含む第三のチャンバ、
第三の入口及び第三の出口(ここで第三の入口及び第三の出口は第三のチャンバと流体連通している)、
を画成する、第三のポンプ本体(ここで少なくとも第三のチャンバは第一の膜及び第二の膜に隣接する);
を含むポンプ組立体:及び
ポンプ組立体と協動するように構成され、
第一の膜及び第二の膜と磁気的に連結される駆動体、及び
第一の膜及び第二の膜の位置を検出するように構成される少なくとも一つのセンサ、
を含むアクチュエータ組立体で、ここで駆動体が膜に磁力を印加して、膜をゆがませ、そしてここで膜のそのようなゆがみによって第一のチャンバ及び第二のチャンバ内の圧力の変化を生じさせ、それにより流体流れを生じさせる、アクチュエータ組立体:
を含んでなる、上記マイクロポンプ。
【請求項44】
請求項43に記載のマイクロポンプであって:
第一のポンプ本体と第二のポンプ本体の間に配列された複数の中間ポンプ本体であって、ここで各中間ポンプ本体が、側壁、入口及び出口を含む中間流体チャンバを画成し、ここで入口及び出口が中間流体チャンバと流体連通している、中間ポンプ本体;及び
複数の中間可撓性膜であって、ここで各中間可撓性膜が隣接する中間ポンプ本体の間に配列され、そしてここで駆動体が中間膜の各々に磁気的に連結される、中間可撓性膜;
を更に含んでなるマイクロポンプ。
【請求項1】
流体を送達するためのマイクロポンプであって、
第一の流動体流路を画成し、第一のチャンバ(ここで第一のチャンバは第一のチャンバ壁及び第一の側壁を含む)、第一の入口及び第一の出口(ここで第一の入口及び第一の出口は第一のチャンバと流体連通している)を含む、第一のポンプ本体;
第二の流動体流路を画成し、第二ののチャンバ(ここで第二のチャンバは第二のチャンバ壁及び第二の側壁を含む)、第二の入口及び第二の出口(ここで第二の入口及び第二の出口は第二のチャンバと流体連通している)を含む、第二のポンプ本体;及び
第一のチャンバ及び第二のチャンバ間に配列される可撓性膜;
を含むポンプ組立体:及び
ポンプ組立体と協動するように構成され、
膜と磁気的に連結される駆動体;及び
膜の位置を検出するように構成されるセンサ;
を含むアクチュエータ組立体で、ここで駆動体が膜に磁力を印加して、膜をゆがませ、そしてここで膜のそのようなゆがみによって第一のチャンバ及び第二のチャンバ内の圧力の変化を生じさせ、それにより流体流れを生じさせる、アクチュエータ組立体:を含み、
ここで、ポンプ組立体は、バルブなしで、所定の方向に流体流れを向けるように構成される、上記マイクロポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロポンプであって、第一の入口が第一の流入路を更に含み、
ここで第一の流入路が、
第一の入口のど部幅を有する第一の入口のど部、及び第一の入口端幅を有する第一の入口端を含み、
ここで第一の流入路が、流体が第一の入口のど部から第一の入口端の方向に流れるように構成され、
ここで第一の入口端が、第一の側壁に配列され、そしてここで第一の入口のど部幅が第一の入口端幅より狭い、
上記マイクロポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載のマイクロポンプであって、第一の出口が第一の流出路を更に含み、
ここで第一の流出路が、
第一の出口のど部幅を有する第一の出口のど部、及び第一の出口端幅を有する第一の出口端を含み、
ここで第一の流出路が、流体が第一の出口のど部から第一の出口端の方向に流れるように構成され、
ここで第一の出口のど部が、第一の側壁に配列され、そしてここで第一の出口のど部幅が第一の出口端幅より狭い、
上記マイクロポンプ。
【請求項4】
第一の流入路及び第一の流出路は、第一のチャンバを通る流体流れが、実質的に第一の入口から第一の出口の方向に流れることを可能にするように構成される、請求項3に記載のマイクロポンプ。
【請求項5】
請求項1に記載のマイクロポンプであって:
第一の入口のど部幅を有する第一の入口のど部、及び第一の入口端幅を有する第一の入口端を含む第一の流入路であって、
ここで第一の流入路は、流体が第一の入口のど部から第一の入口端の方向に流れるように構成され、そして
ここで第一の入口端が、第一の側壁に配列され、そしてここで第一の入口のど部幅が第一の入口端幅より狭い、
第一の流入路;
第一の出口のど部幅を有する第一の出口のど部、及び第一の出口端幅を有する第一の出口端を含む第一の流出路であって、
ここで第一の流出路が、流体が第一の出口のど部から第一の出口端の方向に流れるように構成され、そして
ここで第一の出口端が、第一の出口側壁に配列され、そしてここで第一の出口のど部幅が第一の端幅より狭い、
第一の流出路;
第二の入口のど部幅を有する第二の入口のど部、及び第二の入口端幅を有する第二の入口端を含む第二の流入路であって、
ここで第二の流入路が、流体が第二の入口のど部から第二の入口端の方向に流れるように構成され、
ここで第二の入口端が、第二の側壁に配列され、そしてここで第二の入口のど部幅が第二の入口端幅より狭い、
第二の流入路;
第二の出口のど部幅を有する第二の出口のど部、及び第二の出口端幅を有する第二の出口端を含む第二の流出路であって、
ここで第二の流出路が、流体が第二の出口のど部から第二の出口端の方向に流れるように構成され、そして
ここで第二の出口端が、第二の出口側壁に配列され、そしてここで第二の出口のど部幅が第二の出口端幅より狭い、
第二の流出路;
を更に含む、上記マイクロポンプ。
【請求項6】
膜の上に配列された第一の磁石を更に含んでなる、請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項7】
膜の上に配列された第二の磁石を更に含んでなり、ここで第一の磁石が第一のチャンバに隣接して位置付けられ、そして第二の磁石が第二のチャンバに隣接して位置付けられる、請求項6に記載のマイクロポンプ。
【請求項8】
複数の磁石を含んでなり、ここで複数の磁石が第一のチャンバ及び第二のチャンバのどちらかに隣接した膜の上に配列される、請求項6に記載のマイクロポンプ。
【請求項9】
第一の磁石がネオジウム−鉄−ホウ素希土類磁石である請求項6に記載のマイクロポンプ。
【請求項10】
第二の磁石がネオジウム−鉄−ホウ素希土類磁石である請求項7に記載に記載のマイクロポンプ。
【請求項11】
可撓性膜が磁性材料を混合した軟質ポリマー材料で構成される請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項12】
軟質ポリマー材料がポリジメチルシロキサンである請求項10に記載のマイクロポンプ。
【請求項13】
可撓性膜は、テンショニングが調節可能であるように構成され、その結果、駆動体によって膜に印加される磁力に関連して膜のたわみ性が変更され得る、請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項14】
駆動体が、ポンプ本体に近接して位置付けられる第一の磁気コイルを更に含み、ここで第一の磁気コイルがワイヤ巻きを含んでなり、そして外周を画成する、請求項6に記載のマイクロポンプ。
【請求項15】
駆動体が、第一の磁石の位置を検出するように構成されるセンサを更に含み、ここで、センサは第一のコイルの磁束密度が第一の磁石の磁束密度に比べて無視できる場所に、第一のコイルの外周に隣接して置かれる請求項14に記載のマイクロポンプ。
【請求項16】
センサがホール効果センサである請求項15に記載のマイクロポンプ
【請求項17】
駆動体は、膜に取り付けられた磁石の位置を感知して、その位置を所定の設定点の位置と比較し、そして膜に印加される磁力を調節することによって膜の移動を制御するように構成されるフィードバック制御システムを更に含む、請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項18】
流体リザーバから流体を送達するためのマイクロポンプ組立体であって、
第一のチャンバ(ここで第一のチャンバは第一のチャンバ壁及び第一の側壁を含む)、第一の入口及び第一の出口(ここで第一の入口及び第一の出口は第一のチャンバと流体連通している)、
を画成する、第一のポンプ本体:
第二のチャンバ(ここで第二のチャンバは第二のチャンバ壁及び第二の側壁を含む)、第二の入口及び第二の出口(ここで第二の入口及び第二の出口は第二のチャンバと流体連通している)、
を画成する、第二のポンプハウジング;及び
第一のチャンバ及び第二のチャンバ間に配列される可撓性膜;
を含むポンプカートリッジであって、ここで流体リザーバから第一のチャンバ及び第二のチャンバの少なくとも一つへの流体連通を可能にするように構成される、ポンプカートリッジ:
ポンプ組立体と協動するように構成され、膜と磁気的に連結される駆動体、及び膜の位置を検出するように構成される第一のセンサ、
を含むアクチュエータ組立体で、ここで駆動体が膜に磁力を印加して、膜をゆがませ、そしてここで膜のそのようなゆがみによって第一のチャンバ及び第二のチャンバ内の圧力の変化を生じさせ、それにより流体流れを生じさせる、アクチュエータ組立体;
駆動体に連結され、そして第一のセンサからの入力を受け、そして駆動体によって印加される磁力を調節することによって膜の位置を制御するように構成されるコントローラ;及び
駆動体及びコントローラにエネルギを与えるように構成される電源部;
を囲むハウジング:
を含んでなり、
ここで、ハウジングは、マイクロポンプカートリッジがアクチュエータ組立体に挿入され、その中に保持され得るように構成される、上記マイクロポンプ組立体。
【請求項19】
マイクロポンプカートリッジが使い捨て用に構成される、請求項18に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項20】
流体リザーバがマイクロポンプカートリッジに取り付けられる、請求項19に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項21】
流体リザーバがハウジング内に収容され、そしてマイクロポンプカートリッジをハウジング内に挿入した際に、マイクロポンプカートリッジと連結するように構成される、請求項19に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項22】
コントローラは、第一のセンサからフィードバック信号を受信するように構成され、そしてここでコントローラは、膜に取り付けられた磁石の位置を、所定の設定点と比較するように構成され、そしてここでコントローラは、フィードバック信号に応答して、膜に印加される磁力を調節するように構成される、請求項18に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項23】
コントローラが比例積分微分型コントローラである請求項22に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項24】
流体リザーバ内の流体の体積を検出するように構成される第二のセンサを更に含み、そしてここでコントローラは、それが流体流れを計算しそして予測できるように、第二のセンサからの入力を受けるように構成される、請求項18に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項25】
コントローラは、第一のセンサからのフィードバック信号に基づいて、送達された流体の体積を計算するように構成される、請求項18に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項26】
コントローラは、第一のセンサからのフィードバック信号に基づいて送達された流体の体積を、第二のセンサから入力された体積と比較し、そしてここで、比較した体積が所定の範囲外であれば、出力信号を与えるように構成される、請求項25に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項27】
出力信号が、警報及びシャットダウンの少なくとも一つである、請求項26に記載のマイクロポンプ組立体。
【請求項28】
マイクロポンプの加工方法であって:
シリコンウエハ上に第一のポリマー層をスピンコーティングし、そして第一のポリマー層を硬化させる工程、
磁性材料を第一のポリマー層の上に置く工程、
磁性材料の周りに第二のポリマー層を塗布し、そして第二のポリマー層を硬化させる、及び
第三のポリマー層を塗布し、そして第三のポリマー層を硬化させる工程、
を含む、ポリマー材料から可撓性膜を加工する工程;
流体チャンバ、入口チャンネル及び出口チャンネルを成形するように構成される金型内に液体ポリマー材料を注入し、そして液体ポリマーを硬化させることによって剛性ポンプ本体を加工する工程;
可撓性膜と剛性ポンプ本体を整列させる工程;及び
剛性ポンプ本体に可撓性ポリマー膜を付着させる工程;
を含む、上記加工方法。
【請求項29】
第一のポリマー層が、約0.15mmの厚さにスピンコートされる請求項28に記載の方法。
【請求項30】
第一のポリマー層を75℃で2時間、硬化する請求項29に記載の方法。
【請求項31】
第二のポリマー層が、約0.5mmの厚さに塗布される請求項28に記載の方法。
【請求項32】
第二のポリマー層を100℃で30分間硬化する請求項29に記載の方法。
【請求項33】
第三のポリマー層が、約0.15mmの厚さに塗布される請求項28に記載の方法。
【請求項34】
第三のポリマー層を75℃で2時間、硬化する請求項33に記載の方法。
【請求項35】
剛性ポンプ本体用の金型が、エポキシ系ネガティブフォトレジスト材料で形成される請求項33に記載の方法。
【請求項36】
フォトレジスト材料が、SU−8である請求項35に記載の方法。
【請求項37】
剛性ポンプ本体への可撓性ポリマー層の付着が、接着剤を使用して行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
可撓性ポリマー膜の付着が、可撓性膜と成形されたポンプ本体の間に配列されたポリマーのフィルムを、100℃で20分間、硬化する工程を含む酸素プラズマ法を使用して行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
可撓性ポリマー膜の付着が、可撓性膜と成形されたポンプ本体の間の未硬化ポリマーのフィルムを、10%の酸素雰囲気中で10秒間、マイクロ波を当てることによって硬化する工程を含む酸素プラズマ法を使用して行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
ポリマー材料が、パリレン、ポリイミド、SU−8及びポリジメチルシロキサンから成るグループから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項41】
可撓性ポリマー膜が、ポリジメチルシロキサン10部及び硬化剤1部の混合物から加工される請求項28に記載の方法。
【請求項42】
剛性ポンプ本体が、ポリジメチルシロキサン5部及び硬化剤1部の混合物から加工される請求項28に記載の方法。
【請求項43】
流体を送達するためのマイクロポンプであって、
第一のチャンバ(ここで第一のチャンバは第一のチャンバ壁及び第一の側壁を含む)、
第一の入口及び第一の出口(ここで第一の入口及び第一の出口は第一のチャンバと流体連通している)、及び
第一のチャンバ壁の反対側の第一のチャンバに亘って配列される第一の可撓性膜、
を画成する、第一のポンプ本体;
第二のチャンバ(ここで第二のチャンバは第二のチャンバ壁及び第二の側壁を含む)、
第二の入口及び第二の出口(ここで第二の入口及び第二の出口は第二のチャンバと流体連通している)、及び
第二のチャンバ壁の反対側の第二のチャンバの上に配列される第二の可撓性膜、
を画成する、第二のポンプ本体;
第一のポンプ本体と第二のポンプ本体の間に配列される少なくとも第三のポンプ本体であって、
第三のチャンバ側壁を含む第三のチャンバ、
第三の入口及び第三の出口(ここで第三の入口及び第三の出口は第三のチャンバと流体連通している)、
を画成する、第三のポンプ本体(ここで少なくとも第三のチャンバは第一の膜及び第二の膜に隣接する);
を含むポンプ組立体:及び
ポンプ組立体と協動するように構成され、
第一の膜及び第二の膜と磁気的に連結される駆動体、及び
第一の膜及び第二の膜の位置を検出するように構成される少なくとも一つのセンサ、
を含むアクチュエータ組立体で、ここで駆動体が膜に磁力を印加して、膜をゆがませ、そしてここで膜のそのようなゆがみによって第一のチャンバ及び第二のチャンバ内の圧力の変化を生じさせ、それにより流体流れを生じさせる、アクチュエータ組立体:
を含んでなる、上記マイクロポンプ。
【請求項44】
請求項43に記載のマイクロポンプであって:
第一のポンプ本体と第二のポンプ本体の間に配列された複数の中間ポンプ本体であって、ここで各中間ポンプ本体が、側壁、入口及び出口を含む中間流体チャンバを画成し、ここで入口及び出口が中間流体チャンバと流体連通している、中間ポンプ本体;及び
複数の中間可撓性膜であって、ここで各中間可撓性膜が隣接する中間ポンプ本体の間に配列され、そしてここで駆動体が中間膜の各々に磁気的に連結される、中間可撓性膜;
を更に含んでなるマイクロポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図25A】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図25A】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【公開番号】特開2013−11280(P2013−11280A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−191094(P2012−191094)
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【分割の表示】特願2011−550111(P2011−550111)の分割
【原出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(500106802)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・イリノイ (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【分割の表示】特願2011−550111(P2011−550111)の分割
【原出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(500106802)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・イリノイ (15)
【Fターム(参考)】
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