説明

磁界センサを有するMRAMチップの不均一シールド

本発明は、磁気抵抗メモリ素子のアレイと少なくとも一つの磁界センサ素子とを備える磁気抵抗メモリデバイスであって、前記磁気抵抗メモリ素子の前記アレイを、少なくとも一つの前記磁界センサ素子とは異なるように外部磁界からシールドするための部分シールド手段又は不均一シールド手段を備える磁気抵抗メモリデバイスを提供する。「異なるように」とは、5%の最小シールド差、好ましくは10%の最小シールド差が存在することを意味している。また、本発明は対応するシールド方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRAMアレイ等の磁気抵抗メモリアレイにおいて存在する外部磁界の定性検出又は定量測定のための方法及びデバイスに関する。この検出又は測定は、外部磁界が特定の閾値を超える際において、磁気抵抗メモリ素子のプログラミング中に対応策を取るために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
磁気又は磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)は、現在、多くの企業により、フラッシュメモリに取って代わるものと考えられている。ほとんどのスタティックRAM(SRAM)メモリに取って代わる可能性がある。これにより、MRAMは、システムオンチップ(SoC)のための内蔵メモリとして非常に適したものになる。これは不揮発性メモリ(NVM)デバイスであり、そのため、記憶された情報を維持するために電力を必要としない。このことは、他のほとんどのタイプのメモリを超える利点であると考えられる。MRAMメモリは、特に、例えばスマートカード、携帯電話、PDA等の「モバイル」用途において使用することができる。
【0003】
MRAMの概念は、当初、米国のハネウェル社で開発されたものであり、情報記憶として磁気多層デバイスにおける磁化方向を使用し、また、結果として得られる抵抗差を情報読み出しのために使用する。総てのメモリデバイスと同様に、MRAMアレイ中の各メモリ素子は、「1」又は「0」を表す少なくとも二つのバイナリ状態を記憶できなければならない。
【0004】
様々な種類の磁気抵抗(MR)効果が存在するが、そのうち、巨大磁気抵抗(GMR)及びトンネル磁気抵抗(TMR)は、現在において最も重要な効果である。GMR効果及びTMR効果は、a.o.不揮発性磁気メモリを実現できる可能性を与える。これらのデバイスは複数の薄膜からなる積層体を備えており、これらの薄膜は、そのうちの少なくとも二つが強磁性体又はフェリ磁性体であるとともに、非磁性中間層によって分離されている。GMRは層間導体構造における磁気抵抗であり、また、TMRは層間絶縁構造における磁気抵抗である。非常に薄い導体が強磁性膜間又はフェリ磁性膜間に配置されると、複合多層構造の有効面内抵抗は、膜の磁化方向が平行である場合に最も小さく、膜の磁化方向が逆平行である場合に最も大きい。二つの強磁性膜間又はフェリ磁性膜間に薄い絶縁(誘電)中間層が配置されると、膜間のトンネル電流は、膜の磁化方向が平行である場合に最も大きく観察され(又は、従って、抵抗が最も小さく観察され)、また、膜間のトンネル電流は、膜の磁化方向が逆平行である場合に最も小さく観察される(又は、即ち、抵抗が最も大きく観察される)。
【0005】
磁気抵抗は、通常、平行な磁化状態から逆平行な磁化状態へと移行する上記構造の抵抗におけるパーセンテージ増加として測定される。TMRデバイスは、GMR構造よりも高いパーセンテージの磁気抵抗を与え、従って、より高い信号及びより高い速度をもたらす可能性を有する。最近の結果によれば、トンネルは、良好なGMRメモリ素子における10乃至14%の磁気抵抗に比較して、40%を超える磁気抵抗を与えることが分かっている。
【0006】
一般的なMRAMデバイスは、そのうちの一つが図1A及び図1Bに示されている複数の磁気抵抗メモリ素子10、例えば所定のアレイに配置された磁気トンネル接合(MTJ)素子を備えている。磁気抵抗メモリ素子10からなるアレイ20が図2に示されている。MTJメモリ素子10は、通常、固定又はピン磁性層11と、フリー層12と、これらの層間に設けられた誘電バリア13とを備える層状構造を有している。磁性材料からなるピン層11は、常に同じ方向に向く磁気ベクトルを有している。フリー層12は、情報記憶のために使用される。フリー層12の磁気ベクトルは、非拘束(フリー)であるが、メモリ素子10の物理的な寸法によって主に決定されるフリー層12の容易方向内に拘束される。フリー層12の磁気ベクトルは、二つの方向、即ち、上記容易方向と一致するピン層11の磁化方向と平行な方向及び逆平行な方向を向いている。MRAMの基本原理は、磁化方向に基づいて情報をバイナリデータとして例えば「0」及び「1」として記憶することである。これは、磁気データが不揮発性であり磁界の影響を受けるまで変化しないからである。
【0007】
磁気抵抗メモリ素子10へのデータの記憶又は書き込みは磁界を印加することにより達成され、これにより、フリー層12中の磁性材料が二つの可能なメモリ状態へと磁化される。MRAM素子10の層状構造の両方の磁性膜11,12が同じ方向性(平行)をもって磁化されると、データが二つのバイナリ値のいずれか、例えば「0」を有し、また、そうではなく、MRAM素子10の層状構造の両方の磁性膜11,12が逆の方向性(逆平行)をもって磁化されると、データが他のバイナリ値、例えば「1」となる。磁気構造の外部にある電流ライン(ワードライン14,14a,14b,14c及びビットライン15,15a,15b,15c)を通じて電流を流すことにより磁界が形成される。尚、選択されたメモリ素子10sと他の選択されないメモリ素子10との間を区別するために二つの磁界成分が使用される。
【0008】
データの読み取りは、磁界が印加された際の磁気メモリ素子10の抵抗変化を検出することにより行われる。方向が平行であるか否かに応じて層状構造11,12,13の抵抗が変化するという事実を利用して、システムは、データの両方のバイナリ値、例えば「0」又は「1」を識別することができる。読み出しのために必要とされる磁界は、磁気構造の外部にある電流ライン(ワードライン)を通じて又は磁気構造自体(ビットライン15及び検出ライン16を介して)を通じて電流を流すことにより形成される。選択されたメモリ素子10sの読み取りは、他のメモリ素子10を通じた漏洩電流を防止するためにビア21に接続された直列トランジスタ17により行われる。
【0009】
最も一般的なMRAM構造は、図1A及び図1Bに示されるような1T1MTJ(一つのMTJメモリ素子10ごとに一つのトランジスタ17)型のものである。複数のメモリ素子10を備えるメモリアレイ20は、磁気トンネル接合(MTJ)メモリ素子10の上下において二つの金属層へとそれぞれ別々にパターニングされる互いに直交するビットライン15a,15b,15cとワードライン14a,14b,14cとを備えている。ビットライン15a,15b,15cはメモリ素子10の困難方向と平行であり、これにより、容易方向に沿って磁界が形成され、一方、ワードライン14a,14b,14cは困難方向に沿って磁界を形成する。いくつかの構成においては、関係を逆にすることができる。即ち、ビットライン15が困難方向磁界を形成してもよく、また、ワードライン14が容易方向磁界を形成してもよい。選択されたメモリ素子10sに対する書き込みは、選択されたメモリ素子10sにおいて交差するビットライン15b及びワードライン14aのそれぞれを通じて電流パルスを同時に印加することにより行われる。その結果として得られる磁界の方向は、メモリ素子10sのフリー層12の容易方向に対して45度の角度をなしている。この角度では、フリー層12のスイッチング磁界が最も小さく、従って、最も少ない電流により書き込みを行うことができる。
【0010】
MRAM素子の欠点は、強い外部磁界に対する意図的な又は非意図的な露出によりMRAM素子が不安定になるという点である。非常に高密度のMRAMアレイ20は特に磁界の影響を受け易い。これは、主に、フリー層12における磁気ベクトルの切り換え又は検出に依存する読み取り/プログラム演算のために極小MRAM素子10が比較的弱い磁界を必要とするからである。これらの磁気ベクトルは、そのような外部磁界によって簡単に影響され、その磁化方向が当該外部磁界により変えられてしまう場合がある。
【0011】
プログラミング演算中に余分な外部磁界が存在していた場合には、これにより、選択されていない磁気抵抗メモリ素子10の望ましくない切り換え(スイッチング)が引き起こされる虞がある。これは、一つの電流ラインを流れる電流の外部磁界との合成磁界がそれ単独で十分に大きくなってしまい、選択されないメモリ素子10の状態を切り換えてしまう場合があるからである。また、外部磁界が異なる方向を向いており、従って、当該外部磁界が、一つの電流ラインを流れる電流によって形成される磁界に対抗する場合には、選択されたメモリ素子10sの切り換え(スイッチング)がプログラミング演算により生じない場合もある。このことは、一つの電流ラインを通じて電流を流すことにより形成される磁界が、外部磁界の存在に起因して十分に大きくなってしまい、選択されていないメモリ素子10を望ましくなく切り換えてしまう場合があることを意味している。このようなことは、外部磁界が存在しなければ起こり得ない。あるいは、外部磁界が異なる方向を有している場合には、磁界が非常に小さくなり、その結果、選択されたメモリ素子10sの切り換えが生じてしまう場合がある。このようなことは、外部磁界が存在しなければ起こり得ない。
【0012】
一つの解決策は、メモリ素子を任意の外部磁界からシールド(遮断)することである。磁気シールドは、例えば1:5又は1:10の磁界減少比率分だけ局所的な磁界を減少させる。従って、シールド下での有効磁界は大きく低減され、これは第2の例では比率1:10をもって与えられる。即ち、MRAM上に亘ってシールドした状態における外部磁界は、実際に存在する外部磁界よりも10倍低い。しかしながら、シールドもその限界があり、これにより、磁気抵抗メモリ素子10のデータ層の近傍に攪乱作用を有する外部磁界を引き起こす高い磁界を常に印加することができる。
【0013】
本出願人によって提出され且つ参照することにより本願に組み込まれる他の特許出願、例えば「MRAMのためのデータ保持インジケータ(Data retention indicator for MRAM)」、「MRAM動作のための書き込み禁止オプション(Write−disable option for MRAM operation)」及び「MRAM書き込み中の活性磁界補償(Active field compensation during MRAM−write)」では、いくつかの解決策が提案されてきた。これらの解決策は総て、外部磁界値を測定し、その結果に応じて磁気抵抗素子の無効プログラミング等の何等かの措置を講じるために、磁気抵抗素子10のアレイと共に若しくはその近傍に磁界センサを組み込むこと、又は、プログラミングのために電流ラインを流れる電流を適合させることを含んでいる。
【0014】
シールドされたMRAMチップの場合、これは、感度が良い磁界センサの実装に対する問題を減少させる。その理由は、小さい磁界即ち10Oeを下回る磁界を測定しなければならないからである。しかしながら、小さな磁界の測定時に良好で信頼できる出力信号を与えるセンサを実装することは困難であることが分かっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、非常に感度が良い磁界センサを使用する必要なく、磁気抵抗メモリ素子からなるアレイの近傍の外部磁界を検出し又は測定するための方法及びデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は、本発明に係る方法及びデバイスによって達成される。
【0017】
第1の態様においては、本発明は、磁気抵抗メモリ素子のアレイと少なくとも一つの磁界センサ素子とを備える磁気抵抗メモリデバイスを提供する。前記磁気抵抗メモリデバイスは、前記磁気抵抗メモリ素子の前記アレイを、少なくとも一つの前記磁界センサ素子とは異なるように外部磁界からシールドするための部分シールド手段又は不均一シールド手段を備える。アレイのシールドと磁界センサ素子のシールドとの間の差は、プロセス変動を上回る。即ち、少なくとも5%のシールド差、好ましくは少なくとも10%のシールド差が存在し、それにより、アレイは、少なくとも一つの磁界センサ素子よりも幾分シールドされ得る。
【0018】
少なくとも一つの前記磁界センサ素子は、第1の磁界減少比率を有する第1のシールド手段を用いてシールドされるものとするとよく、前記磁気抵抗メモリ素子の前記アレイは、第2の磁界減少比率を有する第2のシールド手段を備えるものとするとよく、前記第2の磁界減少比率は、前記第1の磁界減少比率よりも小さい。第2の磁界減少比率は、第1の磁界減少比率より小さいものとするとよい。又は、第1の磁界減少比率が1:1であってもよく、このことは、少なくとも一つの磁界センサ素子のシールドが存在しないことを意味している。
【0019】
前記磁気抵抗メモリ素子の前記アレイ及び少なくとも一つの前記磁界センサ素子は、単一のチップ上に一体的に組み込まれているものとするとよい。前記磁気抵抗メモリ素子の前記アレイ及び少なくとも一つの前記磁界センサ素子は、単一のパッケージ内の別個のダイ上に配置されているものとしてもよい。又は、前記磁気抵抗メモリ素子の前記アレイ及び少なくとも一つの前記磁界センサ素子は、別個のパッケージ内の別個のダイ上に配置されているものとしてもよい。
【0020】
第2の態様においては、本発明は、磁気抵抗メモリ素子のアレイにおいて存在する外部磁界を測定する方法を提供する。当該方法は、第1の磁界減少比率を有する第1のシールド手段を用いて磁界センサ素子をシールドし、第2の磁界減少比率を有する第2のシールド手段を用いて前記磁気抵抗メモリ素子の前記アレイをシールドし、前記第1の磁界減少比率と前記第2の磁界減少比率とは相互に異なり、即ち、少なくとも5%のシールド差を有し、前記第1及び第2の磁界減少比率の知識に基づいて、前記磁気抵抗メモリ素子の前記アレイにおける外部磁界値を決定する、ことを含む。
【0021】
前記第2の磁界減少比率は、前記第1の磁界減少比率よりも小さいものとするとよい。(局所的な)減少された磁界と外部磁界との間の関係は、線形であってもよく、即ち、換言すると、前記第1の磁界減少比率と前記第2の磁界減少比率とは、特定の外部磁界範囲において一定しているものとするとよい。前記第1の磁界減少比率は、1:1であるものとするとよい。
【0022】
本発明のこれらの特徴、他の特徴、機能、利点は、一例として本発明の原理を例示する添付図面と併せて解釈される以下の詳細な説明から明らかとなる。この説明は、本発明の範囲を限定することなく、単なる例示的目的で与えられている。以下において割り当てられた参照数字は、添付図面を参照している。
【0023】
異なる図面において、同じ参照数字は、同一又は類似の要素を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
特定の実施の形態に関して特定の図面を参照して本発明を説明するが、本発明は、これらの実施の形態に限定されず、請求項によってのみ限定される。描かれた図面は、単なる概略図であり、非限定的なものである。図では、一部の要素のサイズが誇張されている場合があり、また、例示的な目的で、一部の要素がスケールに基づいて描かれていない場合もある。この明細書本文中及び請求項中において、用語「備えている(含んでいる)(comprising)」が使用される場合、その使用は、他の要素又はステップを排除しない。一つの名詞を示すときに例えば「a」、「an」、「the」等の不定冠詞又は定冠詞が使用される場合、これは、他に何か特に述べられていなければ、複数のその名詞を含んでいる。
【0025】
また、明細書本文中及び請求項中の第1、第2等の用語は、同様の要素間を区別するために使用されるが、必ずしも順序又は年代順を表すものではない。そのようにして使用される用語が適切な状況下では置き換え可能であり、また、ここに記載された本発明の実施の形態がここで説明され又は図示された順序以外の順序で動作できることは理解されるべきである。
【0026】
更に、明細書本文中及び請求項中の上部(top)、下部(bottom)、〜の上(over)、〜の下(under)等の用語は、記述的目的で使用されるが、必ずしも相対的な位置を表すものではない。そのようにして使用される用語が適切な状況下では置き換え可能であり、また、ここに記載された本発明の実施の形態がここで説明され又は図示された方向以外の方向で動作できることは理解されるべきである。
【0027】
本発明は、磁気抵抗メモリ素子のアレイ近傍の外部磁界を検出し又は測定するための方法を提供する。この検出又は測定は、外部磁界が存在している間における磁気抵抗メモリ素子の誤ったプログラミングの可能性を低減し又は誤ったプログラミングを防止するために使用され得る。また、対応する磁気抵抗メモリデバイスも提供される。
【0028】
本発明の実施の一形態に係る磁気抵抗メモリデバイス30は、図3に示されるように、複数の磁気抵抗メモリ素子10からなるアレイ20と、磁界センサユニット31とを備えている。
【0029】
磁気抵抗メモリ素子10のアレイ20は、横列及び縦列に論理的に編成されている。この明細書本文の全体に亘って、用語「水平(horizontal)」及び「垂直(vertical)」は、座標を与えるために使用されるとともに、単なる説明のために使用されている。これらの用語は、装置(デバイス)の実際の物理的方向を示している必要はないが、そのような方向を示していてもよい。また、用語「ロウ」及び「カラム」は、互いに連結されるアレイ素子の組を説明するために使用されている。連結は、ロウとカラムとからなるデカルトアレイの形態をなすことができるが、本発明はこれに限定されない。当業者であれば理解できるように、カラム及びロウは容易に置き換え可能であり、この開示内容においては、これらの用語が置き換え可能であることが意図されている。また、非デカルトアレイが構成されてもよく、また、そのような非デカルトアレイも本発明の範囲内に入る。従って、用語「ロウ」及び「カラム」は幅広く解釈されなければならない。このような幅広い解釈を促すため、「ロウ及びカラムに論理的に構成され」という語法が用いられる。このことは、位相的に線形な交差態様でメモリ素子の組が互いに連結されることを意味しているが、物理的又は位相的な配置がそうである必要はない。例えば、ロウが円であってもよく、また、カラムがこれらの円の半径であってもよい。また、円及び半径は、この発明では、ロウ及びカラムに「論理的に構成される」ものとして説明される。また、様々なラインの特定の名前、例えばビットライン及びワードライン、又は、ロウライン及びカラムラインは、説明を容易にし且つ特定の機能を示すために使用される一般的な名前となるべく意図されており、この特定の言葉の選択は、決して本発明を限定しようとするものではない。これらの用語は、説明される特定の構造のより良い理解を容易にするだけに使用されており、本発明を何ら限定しようとするものではないことが理解されるべきである。
【0030】
メモリアレイ20の近傍の外部磁界を検出し又は測定するために磁界センサ31が設けられている。検出され又は測定される外部磁界は、メモリアレイ20に隣接する又は近傍の外部磁界、即ち、アレイの動作に影響を与え得る磁界であることが好ましい。磁界センサユニット31は、少なくとも一つのアナログ又はデジタル磁界センサ素子32を備えていてもよい。メモリアレイ20の近傍の磁界は、様々な方法により、直接的に又は間接的に測定することができる。
【0031】
磁界センサユニット31は、磁気抵抗メモリ素子10を備える回路、例えばMRAM ICに対して付加され得る任意のタイプの磁界センサ素子32を備えることができる。磁界センサユニット31は、磁気抵抗メモリアレイ20中に組み込まれることが好ましい。磁界センサユニット31は、例えば、センサ素子32として、磁界強度を検出し且つこの強度に伴って変化する電圧を出力として生成する固体半導体センサであるホールセンサを備えることができる。
【0032】
しかしながら、磁気抵抗メモリアレイ20がMRAM素子10を備えている場合には、アレイ20中のMRAM素子10と同じスタック構造との磁気トンネル接合部を磁界センサ素子32として使用することが有益である。また、メモリ素子として使用されないMRAM素子10それ自体又は更なるMRAM素子は、局所的な外部攪乱磁界を監視するための磁界センサ素子32としての機能を果たすことができる。
【0033】
磁界センサ素子32としてのMRAM素子の双安定磁化構造により、これらの素子は、特に、小さな磁界に対して感度が良くない。これらの素子が磁界によって著しく影響され、それにより、顕著な出力信号を生成すると、データを収容するMRAM素子10も既に攪乱磁界によって影響されている危険性がある。従って、本発明の一態様において、磁気抵抗メモリ素子10及び磁界センサユニット31は、異なる度合いでシールドされる。この場合、磁気抵抗メモリ素子10は、磁界センサユニット31よりも外部磁界から大きな度合いでシールドされる。シールドの差は、少なくとも5乃至10%として表されてもよい。最小のシールド差は、例えば層厚、材料組成、磁区構造等に関してのプロセス変動の結果として、チップ上の局所的なシールド要因における変動に打ち勝って有効にならなければならない。これにより、外部磁界の測定値は、磁気抵抗メモリ素子10のアレイ20に実際に存在する外部磁界の値よりも大きくなる。しかしながら、シールドにより局所的な攪乱外部磁界が所定の磁界減少比率だけ減少すると、磁気シールドの磁界減少比率の知識に基づき、磁界センサユニット31により測定された磁界の値から、MRAMアレイ20上のシールド下での有効磁界を決定することができる。
【0034】
アレイ20及び磁界センサユニット31の異なる度合でのシールドは、本発明の第1の実施の形態においては、磁気抵抗メモリデバイス30、例えば磁気抵抗メモリ素子10のアレイ20と磁界センサユニット31とを備えるMRAMチップに対して部分シールドを行うことにより得られてもよい。一例として、図3では、部分磁気シールド手段33が設けられており、この部分磁気シールド手段33は、磁気抵抗メモリデバイス30の一部、例えば角部の一つがシールドされないような磁気シールドである。このシールドされていない場所には、例えば複数の磁界センサ素子32を備える磁界センサユニット31が実装される。このように、磁界センサ素子32は、磁気抵抗メモリ素子10のアレイ20の近傍に存在するような外部磁界の実際の値を測定し、一方、アレイ20によって感知される外部磁界は、シールドの磁界減少比率に応じて更に低い。例えば、外部磁界が磁界値Hを有するとともに、シールドの磁界減少比率が1:xであり、従って、磁界減少比率の数値が0(無限シールド)乃至1(シールド無し)である場合、メモリ素子10によって検出される外部磁界はH/xに等しい。測定された磁界Hと、本発明に係る所定の磁気抵抗デバイスに関して既知の磁界現象比率1:xとから、アレイ20における外部磁界を決定することができる。
【0035】
図示しない第2の実施の形態においては、磁気抵抗メモリアレイ20だけがシールドされる。即ち、ここでは、磁気抵抗メモリ素子10のみが配置され、例えば駆動回路(磁界センサユニット31を含む)等の他の回路は配置されない。
【0036】
図4に示される第3の実施の形態では、本発明に係る磁気抵抗メモリデバイス30を不均一的にシールドすることができる。このことは、少なくとも一つの磁界センサ素子32を備える磁界センサユニット31が例えば1:2の第1の磁界減少比率を有する第1のシールド手段40によってシールドされるとともに、メモリアレイ20が例えば1:10の第2の磁界減少比率を有する第2のシールド手段41によってシールドされることを意味している。本発明において、第2の磁界減少比率は、第1の磁界減少比率よりも小さい。
【0037】
この実施の形態は、磁界センサ素子32からの磁界値をシールドされた磁気抵抗メモリアレイ20での磁界値へ変換する際の自由度が高いという利点を有している。前述の実施例においては、1:5の変換率(換算率)を得ることができる。この選択肢は、例えば、メモリアレイ20の磁界減少比率とは無関係に特定の磁界範囲における磁界センサユニット31のセンサ特性を調整するために実行することができる。
【0038】
更なる実施の形態において、磁気抵抗メモリアレイ20のメモリセル10と同一の基本セルを使用するデータ保持インジケータ(本特許出願と同日に提出され且つ「MRAMのためのデータ保持インジケータ(Data retention indicator for MRAM)」と題された本出願人の特許出願を参照されたい。当該出願は参照することにより本願に組み込まれる)は、異なる変換率を使用することにより、即ち、基本セル及び磁気抵抗メモリアレイ20の不均一シールドを使用することにより実施することができる。データ保持インジケータがメモリアレイ20に比較して高い外部磁界に曝露され得るという事実に起因して、メモリアレイ20中のデータのデータ保持状態を検索することができる。一例として、シールド係数の小さな差、例えば10%の差は、例えばメモリアレイ20中のメモリ素子10の標準偏差がσであるスイッチング磁界分布の6−σ値において、メモリアレイのデータ保持を十分な統計的精度をもって示すことを可能とし得る。
【0039】
磁界センサ素子31を磁気抵抗メモリデバイス30と一体化する様々な方法が本発明の範囲内に含まれるが、以下ではいくつかの実施例を説明する。
【0040】
(1)第1の手法は、磁気抵抗チップに磁気センサ素子31を組み込むことであり、モノリシック集積とも称される。従って、センサユニット31は、メモリアレイ20に非常に近接しており、メモリアレイ20自体の中に何等かの形で含ませることができる。センサユニット31は、図3に示されるように、チップの角部に配置することもできる。シールドは、センサユニット30の場合とメモリアレイ20の場合とで異なっており、従って、磁気抵抗メモリデバイス30に亘って不均一である。センサユニット31におけるシールドは必ずしも存在せず、従って、部分シールドをもたらす。
【0041】
(2)第2の手法は、ハイブリッド方法である。磁界センサユニット31は、最早、基板部分、例えば磁気抵抗メモリアレイ20がその上に配置されるシリコン基板、例えば大きなシステム内の組み込みMRAM(e−MRAM)又はSoC(システムオンチップ)上にはない。特に、センサ領域において異なる機能を実行するとコストが高くなるため、様々なダイが一つのパッケージへと組み合わされる場合には、「水平」集積又はシステムインパッケージとなる傾向がある。ここでの提案は、二つのチップ、即ち、磁気抵抗アレイ20を備える第1のチップと少なくとも一つの磁界センサ素子32がその上に配置される第2のチップとを一つのパッケージで一体化することである。そのようにする理由の一つは、磁気センサユニット31には必要のない高レベルのシールドを磁気抵抗メモリチップが必要とする可能性があるという事実も起こり得るからである。即ち、異なるレベルのシールドを必要とする場合がある複数の機能をハイブリッド態様で組み合わせると、費用効率が高くなる場合がある。
【0042】
(3)更なる手法は、別個にパッケージ化される二つの異なるチップをそのまま単に使用することである。そのようにする理由の一つは、その少なくとも一部がチップ自体の上ではなくパッケージに組み込まれ得る高レベルのシールドを磁気抵抗メモリチップが必要とする可能性があるという事実も起こり得るからである。
【0043】
尚、少なくとも一つの磁界センサ素子32は、磁気抵抗アレイ20の近傍の磁界の2D表示を与えることが好ましい。少なくとも一つの磁界センサ素子32とアレイ20との間の距離は、磁気抵抗メモリアレイ20中に存在する磁界が測定されるように設定されていることが好ましい。遠く離れている磁界の大部分が考慮されるため、長さスケールは適度である。前述したように、集積レベルに応じて、様々な距離が使用され得る。オンチップの実施において、少なくとも一つの磁界センサ素子32は、可能な限り磁気抵抗メモリアレイ20に近接していることが好ましく、又は、シールドされていない場合にはメモリアレイから最大で1cmの距離に配置される。単一のパッケージにおいてハイブリッドを実施する場合、少なくとも一つのセンサ素子32と磁気抵抗メモリアレイ20とは、相互に近接して配置することが好ましく、又は、相互に隣接して配置することが好ましく、又は、磁気抵抗メモリアレイ20の上部に少なくとも一つのセンサ素子32を配置することが好ましい。
【0044】
前述した一体化(集積)のタイプの総てにおいて、磁界センサ32の出力は、磁気抵抗メモリアレイ20の位置における局所的な外部磁界を示す信号として使用されてもよい。磁気シールド40,41の磁界減少比率及びそれらの関係(例えば、これらの間には線形関係又は所定の関係がある)についての知識に基づき、磁気抵抗メモリアレイ20の上側にシールド41が設けられた状態での有効磁界を決定することができる。
【0045】
ここでは、本発明に係るデバイスに関して、好ましい実施の形態、特定の構造及び構成並びに材料を説明してきたが、この発明の範囲及び思想から逸脱することなく、形態及び内容において様々な変更又は改良を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1A】MRAMプログラミング原理を示している。
【図1B】MRAM読み取り原理を示している。
【図2】複数のメモリ素子と垂直ビットライン及びワードラインとを備える既知の1T1MTJ MRAM構成の斜視図である。ビットラインとワードラインとの交差領域には、磁気トンネル接合部(MTJ)が配置されている。MTJの下部電極は、メモリ素子を読み取る際に使用される選択トランジスタに対しビアを用いて接続されている。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る、シールドされていない領域に一体的に組み込まれた磁界センサを有する部分MRAMシールドを示している。
【図4】不均一シールドを伴う、即ち、磁界センサ領域における磁界減少比率とメモリアレイ領域における磁界減少比率とが異なる本発明の更なる実施の形態に係るMRAMチップを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗メモリ素子のアレイと少なくとも一つの磁界センサ素子とを備える磁気抵抗メモリデバイスであって、前記磁気抵抗メモリ素子の前記アレイを、少なくとも一つの前記磁界センサ素子とは異なるように外部磁界からシールドするための部分シールド手段又は不均一シールド手段を備え、少なくとも5%のシールド差が存在することを特徴とする磁気抵抗メモリデバイス。
【請求項2】
少なくとも一つの前記磁界センサ素子は、第1の磁界減少比率を有する第1のシールド手段を用いてシールドされ、前記磁気抵抗メモリ素子の前記アレイは、第2の磁界減少比率を有する第2のシールド手段を備え、前記第2の磁界減少比率は、前記第1の磁界減少比率よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗メモリデバイス。
【請求項3】
前記第1の磁界減少比率は、1:1であることを特徴とする請求項2に記載の磁気抵抗メモリデバイス。
【請求項4】
前記磁気抵抗メモリ素子の前記アレイ及び少なくとも一つの前記磁界センサ素子は、単一のチップ上に一体的に組み込まれていることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗メモリデバイス。
【請求項5】
前記磁気抵抗メモリ素子の前記アレイ及び少なくとも一つの前記磁界センサ素子は、単一のパッケージ内の別個のダイ上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗メモリデバイス。
【請求項6】
前記磁気抵抗メモリ素子の前記アレイ及び少なくとも一つの前記磁界センサ素子は、別個のパッケージ内の別個のダイ上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗メモリデバイス。
【請求項7】
磁気抵抗メモリ素子のアレイにおいて存在する外部磁界を測定する方法であって、
第1の磁界減少比率を有する第1のシールド手段を用いて磁界センサ素子をシールドし、
第2の磁界減少比率を有する第2のシールド手段を用いて前記磁気抵抗メモリ素子の前記アレイをシールドし、
前記第1の磁界減少比率と前記第2の磁界減少比率との間には、少なくとも5%のシールド差が存在し、
前記第1及び第2の磁界減少比率の知識に基づいて、前記磁気抵抗メモリ素子の前記アレイにおける外部磁界値を決定する、
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記第2の磁界減少比率は、前記第1の磁界減少比率よりも小さいことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の磁界減少比率と前記第2の磁界減少比率との間の関係は、外部磁界範囲において一定していることを特徴とする請求項7に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−513502(P2007−513502A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540692(P2006−540692)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052358
【国際公開番号】WO2005/050659
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】