説明

移動体の周囲物体検出装置及び移動体の周囲物体検出方法

【課題】検出精度を向上させることのできる移動体の周囲物体検出装置及び方法を提供する。
【解決手段】複数の検出手段X(i),X(i+1)・・を有し、各検出手段は、自車両の周囲に存在する物体を検出するセンサ部13と、センサ部13で検出された物体と自車両との間の相対位置データを求める位置算出手段14と、センサ部13の検出データに基づいて、自車両と物体との間の相対位置データの確信度データを求める確信度演算手段15とを有する。そして、各検出手段で求められた確信度データに基づいて、この検出手段で求められた相対位置データを重み付け処理し、重み付け処理された各相対位置データに基づいて、自車両と物体との相対位置を求める統合座標算出手段11を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体の周囲に存在する障害物等の物体を検出する周囲物体検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における周囲物体検出装置として、例えば特開平7−15856号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。
【0003】
該特許文献1に開示された技術は、例えば、レーダ等で対象物を追跡する際に、追跡範囲を特定することを目的としており、ある時刻における検出点の分布と予測値に基づいて代表点を算出し、算出した代表点と前回の処理時刻における代表点とから、線形に次回の処理時刻における予測位置を算出し、追跡位置とする。
【0004】
更に、検出点の分布を正規分布に当てはめ、この分布に基づいて注目点に車両が存在する確率を求める。また、1つ前と2つ前の処理時刻における代表位置から、今回の処理時刻における代表位置を線形に予測する。
【0005】
そして、予測位置と分布の中心が十分離れていた場合には、予測位置と分布の中心とを結んだ直線上における、前記の正規分布に基づく存在確率が任意の値となる位置を、代表位置とする。予測位置と分布との中心とが近ければ、両者の中間位置を代表位置にする。
【特許文献1】特開平7−151856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された技術では、検出点の分布を正規分布に当てはめて、注目位置の対象が存在する確率を求めるという構成になっているので、精度の良い分布を求めるためには多数の検出点が必要であり、例えば2点等の少ない検出位置が得られた際には、分布が得られない、或いは、分布の精度が低くなるという問題点が発生する。
【0007】
この発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、検出精度を向上させることのできる移動体の周囲物体検出装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願の装置発明は、移動体に搭載され、該移動体の周囲に存在する物体を検出する移動体の周囲物体検出装置において、複数の検出手段を有し、前記各検出手段は、移動体周囲に存在する物体を検出するセンサ手段と、前記センサ手段で検出される前記物体と、前記移動体との間の相対的な位置データを求める位置検出手段と、前記位置検出手段で求められた位置データに基づいて、前記移動体と前記物体との間の相対位置データの確信度データを求める確信度演算手段と、を有し、前記各検出手段で求められた前記確信度データに基づいて、この検出手段で求められた前記相対位置データを重み付け処理し、重み付け処理された前記各相対位置データに基づいて、前記移動体と前記物体との相対位置を求める統合座標算出手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本願の方法発明は、移動体に搭載され、該移動体の周囲に存在する物体を検出する移動体の周囲物体検出方法において、センサ手段を用いて、前記移動体周囲に存在する物体を検出する物体検出工程と、前記物体検出工程で検出された前記物体と、前記移動体との間の相対位置データを求める位置算出工程と、前記位置算出工程で得られた前記相対位置データに基づき、前記移動体と前記物体との間の相対位置データの確信度データを求める確信度演算工程と、からなる検出工程を複数有し、前記各検出工程で求められた前記確信度データを用いて、その検出工程での前記位置算出工程で求められた前記相対位置データを重み付け処理し、重み付け処理された前記各相対位置データに基づいて、前記移動体と前記物体との相対位置を求める統合座標算出工程を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る移動体の周囲物体検出装置及び方法では、移動体の周辺に、障害物等の物体が存在する場合に、この物体を複数の検出手段で検出し、各検出手段で検出された物体の検出値データの確信度に基づいて、各検出手段で検出された検出値データの重み付け処理を行い、その結果として、物体の統合座標を算出している。
【0011】
従って、検出精度の低い検出手段で検出されたデータの重み付けが低くなり、検出精度の高い検出手段で検出されたデータの重み付けが高くなるので、各検出手段で検出される物体位置が相違する場合であっても、物体の真の位置と同一の位置座標、或いは極めて近い位置座標を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る移動体の周囲物体検出装置の構成を示すブロック図である。
【0013】
同図に示すように、本実施形態は、移動体が車両の場合を例に挙げており、車両の周囲に存在する物体を検出する複数の検出手段X(i),X(i+1),・・と、統合座標算出手段11と、表示手段12とを備えている。図では、検出手段X(i)の詳細構成のみを示しているが、他の検出手段も同様の構成を有している。
【0014】
検出手段X(i)は、車両の適所に設けられ、自車両周辺に存在する物体を検出するセンサ部(センサ手段)13と、該センサ部13で検出される物体と自車両との間の相対位置を示す検出値データri(t)を算出する位置算出手段14と、位置算出手段14で算出された検出値データri(t)に基づいて、この位置座標の確信度データP(ri)を求める確信度演算部15と、を備えている。位置座標を示す検出値データri(t)の座標軸は、自車両を中心とした極座標である。また、センサ部13は、例えばカメラであり、車両周辺の画像を撮影し、且つ撮影された画像に対し濃淡処理等の周知の手法を適用することにより、車両の周辺に存在する物体を検出する。また、センサ部13は、カメラ以外として、ミリ波レーダ、超音波レーダ等を用いることも可能である。
【0015】
また、確信度演算部15は、過去において統合座標算出手段11(後述)にて算出された統合座標を示す位置座標データra(t)を記憶する統合座標履歴保存手段16と、この統合座標履歴保存手段16に記憶されている過去の統合座標を示す位置座標データra(t-kΔt)[k=1,2,・・]を参照して、自車両周囲に存在する物体位置の予測値データr'a(t)を求める予測値算出手段17とを備えている。
【0016】
更に、自車位置と物体との相対位置に依存した誤差分布データσ2(r'a(t))を記憶する誤差分布保存手段18と、予測値算出手段より予測値データr'a(t)が与えられた際に、この予測値データr'a(t)に対応する誤差分布データσ2(r'a(t))を誤差分布保存手段18より読み出す誤差分布参照手段19と、予測値算出手段17で求められた物体位置の予測値データr'a(t)と、位置算出手段14で求められた検出値データri(t)との差分、即ち、「ri(t)−r'a(t)」を演算する差分算出手段20と、を備えている。
【0017】
また、差分算出手段20より与えられる差分データ「ri(t)−r'a(t)」と、誤差分布参照手段19で読み出した、予測値データr'a(t)に対応する誤差分布データσ2(r'a(t))に基づいて、位置算出手段14で求めた検出値データri(t)の値の確信度P(ri)を求める確信度算出手段21とを備えている。
【0018】
統合座標算出手段11は、各検出手段X(i),X(i+1),・・で求められる物体位置の検出値データri(t)と確信度算出手段21で求められた確信度データP(ri)に基づいて、対象物体の位置座標データra(t)を求め、この位置座標データra(t)を統合座標履歴保存手段16に出力し、且つ表示手段12に出力する。
【0019】
表示手段12は、統合座標算出手段11で算出された位置座標データra(t)に基づいて、例えば対象物体の鳥瞰図を作成し、画面表示する。
【0020】
次に、上述のように構成された、本実施形態に係る周囲物体検出装置の動作について説明する。車両走行中において、各検出手段X(i),X(i+1),・・が有する例えばカメラ等のセンサ部13は、自車両の周囲画像を撮影し、この画像から画像処理により抽出される物体の画像データを位置算出手段14に出力する。
【0021】
位置算出手段14は、この画像データを画像処理して、自車両を基準とした物体の相対的な位置座標となる検出値データri(t)を求め、この検出値データri(t)を、差分算出手段20及び統合座標算出手段11に出力する。また、予測値算出手段17では、統合座標履歴保存手段16に記憶されている、過去における物体存在位置となる統合座標から、物体の予測値データr'a(t)を求める。ここでは、統合座標履歴保存手段16に記憶されている統合座標を示す位置座標データra(t-kΔt)[k=1,2,・・,k]を参照し、カルマンフィルタ等の周知の手法を用いて予測値データr'a(t)を求める。
【0022】
次いで、差分算出手段20では、検出された検出値データri(t)と予測された予測値データr'a(t)との差分ベクトル「ri(t)−r'a(t)=di」を算出し、この差分ベクトルdiを確信度算出手段21に出力する。
【0023】
また、誤差分布参照手段19は、予測値算出手段17で求められた予測値データr'a(t)に基づき、誤差分布保存手段18を参照して、この予測値データr'a(t)に対応する誤差分布σ2(r'a(t))を求める。そして、この誤差分布データσ2(r'a(t))を確信度算出手段21に出力する。
【0024】
その結果、確信度算出手段21には、上記の差分ベクトルdiと、誤差分布データσ2(r'a(t))が与えられ、これらのデータに基づいて、以下に示す(1)式で2次元正規分布を算出し、確信度データP(ri(t))として出力する。
【数1】

【0025】
なお、(1)式において、「V」は正規化された分散共分散行列を示し、「det」は行列式を示し、「T」は転置を示す。
【0026】
そして、上記の処理を各検出手段X(i),X(i+1),・・で実行することにより、各検出手段X(i),X(i+1),・・で求められた検出値データri(t)、及び確信度データP(ri(t))[i=1,2,・・]が統合座標算出手段11に供給される。
【0027】
そして、統合座標算出手段11では、以下に示す(2)式を用いて、対象となる物体の位置座標データra(t)を、確信度データで重み付けした加重平均として求める。
【数2】

【0028】
そして、上記の(2)式で求められた、各検出手段X(i),X(i+1),・・の検出結果の統合による位置座標データra(t)は、それぞれの検出手段X(i),X(i+1),・・が有する統合座標履歴保存手段16に出力され、記憶保存される。
【0029】
更に、統合座標算出手段11では、(2)式で求められた位置座標データra(t)を表示手段12に出力し、該表示手段12では、この位置座標データra(t)に基づいて、例えば、図2に示すように、対象となる物体63自車両62との相対的な位置関係を鳥瞰図として画面表示する。これにより、車両の乗員は、車両の周辺に存在する物体と自車両との位置関係を視覚的に認識することができる。
【0030】
なお、予測位置から任意の閾値以上離れている検出点が任意の判断時間に亘って存在し続けている場合には、異なる検出対象物について出力された検出点であるものとして、新規の物体位置の検出処理を開始する。
【0031】
このようにして、本実施形態に係る移動体の周囲物体検出装置では、移動体としての自車両周辺に、他車両或いは障害物等の物体が存在する場合に、この物体を複数の検出手段X(i),X(i+1)・・で検出し、各検出手段X(i),X(i+1)・・で検出された物体の検出値データri(t)の確信度に基づいて、各検出手段X(i),X(i+1)・・で検出された検出値データri(t)の重み付け処理を行い、その結果として統合座標となる位置座標データra(t)を算出している。
【0032】
従って、例えば、図3に示すように、自車両31に3個のセンサ32〜34(図1のセンサ13に相当する)が設けられ、且つ各センサ32〜34の検出領域が領域35〜37である場合を例に挙げると、センサ32で符号38の位置に物体が検出され、センサ33で符号39の位置に物体が検出された場合には、これらの位置座標として求められた各検出値データri(t)に基づいて統合された位置座標データra(t)が求められることになり、その結果、周囲物体の検出精度を著しく向上させることができる。
【0033】
即ち、複数のセンサを備えて車両の周辺に存在する物体を監視する方式を用いる際には、各センサの検出対象領域が重複する部分に物体が存在する際に、これらのセンサが検出する物体の存在位置が必ずしも一致するとは限らない。むしろ、異なる位置データを検出する場合の方が多い。本実施形態では、複数のセンサで、検出対象となる同一物体の位置データを複数個取得した際に、これらの位置データから、より真の位置に近い位置データを求めるようにしている。
【0034】
具体的には、例えば、図3に示した場合を例に挙げると、各センサ32,33,34の検出領域が、領域35,36,37に示す形状であったとき、各検出領域32,33,34の間には、共通となる検出領域が存在する。
【0035】
このような場合で、検出領域35と36の境界付近に、他車両等の物体が存在した場合を考え、センサ32が領域38の検出値データを出力し、センサ33が領域39の検出値データを出力したとする。
【0036】
ここで、2つの検出値データが異なる要因としては、3つの項目が挙げられる。1つ目としては、各センサ32,33の取り付け位置が異なるため、検出対象物について各センサ32,33が獲得できる情報が異なることが挙げられる。例えば、画像センサであれば、対象の見え方が異なることに起因する。
【0037】
2つ目としては、各センサ32,33の検出ロジックが異なる場合、ロジックに依存して検出位置が異なることが挙げられる。
【0038】
3つ目としては、各センサ32,33のハード的な構成自体が異なる場合に、各センサ32,33が利用する情報が異なること挙げられる。例えば、センサ32がミリ波レーダで、センサ33が画像センサ、といった構成であれば、このような3つ目の要因が生じる。
【0039】
以上のような理由から、複数のセンサが同一の対象物体に対して、異なる位置データを出力することは、容易に起こり得る。また、この例では複数のセンサによる検出領域が部分的に重複している場合を考えたが、重複していなくても検出領域が近接していれば、同様の現象は起こり得る。
【0040】
本実施形態では、このような、同一の対象物体に対して異なる位置データが検出された際に、装置全体として、対象物体に対応した単一の位置データを、代表となる位置データとして求める際に極めて有効である。
【0041】
従来の手法では、このような場合において、代表となる位置座標データを求める際に、各センサが出力する対象物体の検出値データのみを情報として利用し、例えば、出力点の空間的な分布や時間的な位置の連続性から、代表位置を求めるのが一般的であった。
【0042】
しかし、従来の手法では、検出点の数が少ない場合は空間的な分布を求めることが困難であり、また、検出点の中に精度の低い値が含まれていた場合でも、精度の高い検出点と同様の重みで扱うため、代表位置の精度が低下する、といった問題があった。
【0043】
例えば、検出位置の時間的な連続性を考慮した際に、精度の低い検出位置の方が精度の高い検出位置よりも連続性が確保される場合には、精度の低い、即ち、実際の検出位置との誤差が大きい位置が優先されてしまうため、代表位置の精度が低下してしまう。
【0044】
これに対して、本実施形態では、得られた複数の値データについて、それぞれの検出位置が実際に対象の位置を示している確からしさを確信度として求め、代表となる位置座標データを求める際の指標として利用する。従って、各検出値データの精度にばらつきが存在した場合であっても、精度の低い検出値データの影響を低減し、より精度の高い代表位置を算出することができる。
【0045】
また、各センサ特性に依存した検出対象物体の位置データの誤差分布、及び過去の統合位置データから予測される予測値データと実測された検出値データとの差分、に基づいて、上述した(1)式に示した正規分布を用いて、確信度データP(ri(t))を算出しているので、複数の検出値データが得られた際に、各検出値データで示される座標に対象となる物体が存在する確信度データP(ri(t))を、対象となる物体の存在位置のみに依存せずに算出することができる。また、各検出手段の確信度は正規化されるので、統合座標算出手段11で共通の指標として扱うことができる。
【0046】
更に、統合座標算出手段11では、確信度演算部15にて算出された確信度データP(ri(t))に基づいて、各検出手段X(i),X(i+1),・・が有する位置算出手段14で求められた検出値データに重み付けを行い、加重平均として位置座標データra(t)を算出しているので、精度良く代表位置を求めることができる。
【0047】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態に係る周囲物体検出装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、この周囲物体検出装置は、車両の周囲に存在する物体を検出する複数の検出手段X(i),X(i+1),・・と、統合座標算出手段11と、表示手段12とを備えている。図では、検出手段X(i)の詳細構成のみを示しているが、他の検出手段も同様の構成を有している。
【0048】
検出手段X(i)は、車両の適所に設けられ、自車両周辺に存在する物体を検出するセンサ部13と、該センサ部13で検出された物体と自車両との相対的な位置を示す検出値データri(t)を算出する位置算出手段14と、位置算出手段14で算出された検出値データri(t)に基づいて、この検出値データri(t)の確信度を求める確信度演算部41と、を備えている。前述した第1の実施形態と同様に、検出値データri(t)の座標軸は、自車両を中心とした極座標である。また、センサ部13は、例えばカメラであり、車両周辺の画像を撮影し、撮影された画像を画像処理することにより、周辺に存在する物体を検出する。
【0049】
確信度算出手段41は、過去において位置算出手段14で求められた検出値データri(t)を記憶する検出座標履歴保存手段42と、この検出座標履歴保存手段42に記憶されている過去の位置座標を示す検出値データri(t-kΔt)[k=1,2,・・]を参照して、自車両周囲に存在する物体位置の予測値データr'i(t)を求める予測値算出手段43とを備えている。
【0050】
また、過去の複数回の検出フレームにおいて、検出対象となる物体が非検出であった頻度を、確信度データP(ri(t))として求める非検出頻度算出手段44を備えている。
【0051】
非検出頻度算出手段44は、過去のフレーム数をMとし、このM回の検出フレームにおいて、検出対象となる物体が非検出であった回数をnjとした際に、下記の(3)式で確信度データP(ri(t))を求める。
【0052】
P(ri(t))=(M−nj)/M ・・・(3)
次に、第2の実施形態に係る周囲物体検出装置の動作について説明する。車両走行中において、各検出手段X(i),X(i+1),・・が有する例えばカメラ等のセンサ部13は、自車両の周囲画像を撮影し、撮影により得られた画像から物体を検出して、抽出された物体の画像データを位置算出手段14に出力する。
【0053】
位置算出手段14は、この画像データを画像処理して、自車両を基準とした相対的な物体の座標となる検出値データri(t)を求め、この検出値データri(t)を、検出座標履歴保存手段42、非検出頻度算出手段44、及び統合座標算出手段11に出力する。
【0054】
また、予測値算出手段43では、検出座標履歴保存手段42に記憶されている、過去における物体の存在位置座標から、物体の予測値データr'i(t)を求める。ここでは、検出座標履歴保存手段42に記憶されている統合座標データri(t-kΔt)[k=1,2,・・,k]を参照し、カルマンフィルタ等の周知の手法を用いて予測値データr'i(t)を求める。
【0055】
次いで、非検出頻度算出手段44では、以下の手順で、物体が非検出であった回数njを求める。まず、最初の検出フレームで、位置算出手段14による物体の検出値データri(t)が、存在しない場合には、njをインクリメントする。即ち、nj=nj+1とする。
【0056】
他方、物体の検出値データri(t)が、存在する場合には、予測値算出手段43より出力される予測値データr'i(t)と、検出値データri(t)とに基づき、これらの間の距離が所定の閾値dmax以上であるかどうかを判定する。これらの間の距離が閾値dmax未満であれば、対象物体が検出されたものと判断し、閾値dmax以上であれば、対象物体とは異なる他の物体であるものと判断し、非検知と判断する。
【0057】
具体的には、検出値データri(t)のx座標をxi(t)、y座標をyi(t)とし、予測値データr'i(t)のx座標をx'i(t)、y座標をy'i(t)とし、且つ、dx=xi(t)−x'i(t)、dy=yi(t)−y'i(t)とした場合に、以下の(4)が成立したときに、検知したものと判断し、成立しないときに、非検知と判断する。
【0058】
dx+dy<dmax ・・・(4)
即ち、(4)式を満たせばnj=nj−1とし、満たさなければnj=nj+1とする。こうして求められた非検知の回数njを、上述した(3)式に代入することにより、確信度データP(ri(t))を求める。
【0059】
その後、統合座標算出手段11では、この確信度データP(ri(t))、及び検出値データri(t)に基づいて、第1の実施形態と同様の手順で、対象物体の位置を求める。即ち、上述した(2)式にこれらの各データP(ri(t))、ri(t)を代入することにより、各検出手段X(i),X(i+1),・・の検出結果の統合による、重み付け処理された位置座標データra(t)が求められ、この位置座標データra(t)に基づく鳥瞰画像が表示手段12にて表示される。
【0060】
このようにして、第2の実施形態に係る周囲物体検出装置では、各検出手段X(i),X(i+1)・・で検出された検出値データを用いる際に、その検出手段X(i),X(i+1)・・での非検出の頻度を求め、非検出の頻度が多い検出手段で検出された位置座標データは、その重みを小さくし、反対に非検出の頻度が少ない検出手段X(i),X(i+1)・・で検出された検出値データは、その重みを大きくして統合座標となる位置座標データra(t)を求めるようにしているので、信頼性の高い物体位置の検出が可能となる。
【0061】
即ち、センサ部13の非検出の頻度を確信度として利用しているので、各検出手段X(i),X(i+1)・・が有する位置算出手段14にて、複数の相違する検出値データが得られた際に、各検出値データとなる位置に対象となる物体が存在する確信度を、対象となる物体の検出値データのみに依存せずに算出することができる。また、各検出手段の確信度は正規化されるので、統合座標算出手段11で共通の指標として扱うことができる。
【0062】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図5は、第3の実施形態に係る周囲物体検出装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、この周囲物体検出装置は、車両の周囲に存在する物体を検出する複数の検出手段X(i),X(i+1),・・と、統合座標算出手段11と、表示手段12とを備えている。図では、検出手段X(i)の詳細構成のみを示しているが、他の検出手段も同様の構成を有している。
【0063】
検出手段X(i)は、車両の適所に設けられ、自車両周辺に存在する物体を検出するセンサ部13と、検出対象となる物体の形状の特徴を任意の次元で表現したテンプレートを作成するテンプレート作成手段51と、このテンプレート作成手段51で作成されたテンプレートを記憶保存するテンプレート保存手段53と、センサ部13で検出された物体の画像データを、テンプレート保存手段53に保存されている各種のテンプレートと照合するテンプレート照合手段52と、確信度演算部54と、物体の位置を検出する位置算出手段55とを備えている。
【0064】
テンプレート作成手段51は、例えば、検出対象の形状を2次元の輝度情報として表現してテンプレートを作成する。
【0065】
テンプレート照合手段52は、センサ部13で検出された画像データ中に存在する物体と、テンプレート保存手段53に保存されている各種のテンプレートとを照合し、一般的な正規化相関の手法を用いて、物体と最も高い相関値を示すテンプレートを選択し、且つ、この物体の画像中での位置データ(Xi,Yi)を検出する。更に、このときの相関値Idiffを以下に示す(5)式にて算出する。
【数3】

【0066】
但し、Nはテンプレートの有効画素数、uはX座標、vはY座標、gはテンプレート画像、fはサーチ対象画像を示す。
【0067】
確信度演算部54は、整合性算出手段54を備えており、テンプレート照合手段52より出力される相関値Idiffを、確信度データP(ri(t))として統合座標算出手段11に出力する。
【0068】
位置算出手段55は、テンプレート照合手段52より出力される物体の幾何学的な位置座標データ(Xi,Yi)に基づいて、対象物体と自車両との相対的な位置座標を示す検出値データri(t)を算出し、統合座標算出手段11に出力する。
【0069】
次に、第3の実施形態に係る周囲物体検出装置の動作について説明する。車両走行中において、各検出手段X(i),X(i+1),・・が有する例えばカメラ等のセンサ部13は、自車両の周囲画像を撮影し、この画像に含まれる物体の画像データをテンプレート照合手段52に出力する。
【0070】
そして、テンプレート照合手段52は、入力された画像データを画像処理し、画像中に含まれる物体と、テンプレート保存手段53に記憶されている各種のテンプレートとの相関値Idiffを求める。この処理は、上述した(5)式を用いることにより行われる。
【0071】
そして、相関値が最も大きくなる物体の位置座標データ(Xi,Yi)を求めて位置算出手段55に出力すると共に、このときの相関値Idiffを整合性算出手段54に出力する。これにより、整合性算出手段54では、相関値Idiffを確信度データP(ri(t))として統合座標算出手段11に出力する。また、位置算出手段55では、位置座標データ(Xi,Yi)に基づき、対象となる物体と自車両との相対位置座標となる検出値データri(t)を求め、この検出値データri(t)を統合座標算出手段11に出力する。
【0072】
その後、統合座標算出手段11では、各検出手段X(i),X(i+1),・・で求められる確信度データP(ri(t))、及び検出値データri(t)に基づいて、第1,第2の実施形態と同様の手順で、対象物体の位置を求める。即ち、上述した(2)式にこれらの各データP(ri(t))、ri(t)を代入することにより、各検出手段X(i),X(i+1),・・の検出結果の統合による、重み付け処理された位置座標データra(t)が求められ、この位置座標データra(t)に基づく鳥瞰画像が表示手段12にて表示される。
【0073】
このようにして、第3の実施形態に係る周囲物体検出装置では、各検出手段X(i),X(i+1),・・のセンサ部13で求められた物体の画像データをテンプレート処理し、対象物体とテンプレートとの相関値が最も大きくなる位置の座標と、そのときの相関値Idiffに基づいて、確信度データP(ri(t))を設定し、各検出手段X(i),X(i+1),・・毎の確信度データに応じた重み付け処理が行われて、対象物体の自車両に対する相対的な位置座標データra(t)が求められるので、極めて高精度な物体位置の検出が可能となる。
【0074】
即ち、各センサ部13で検出された物体の画像とテンプレートとの合致度合いが高いほど大きな値を示す正規化された評価量を確信度として利用しているので、各検出手段X(i),X(i+1),・・が有する位置算出手段55にて、複数の相違する検出値データが検出された際に、各検出値データが示す位置に、対象となる物体が存在する確信度を、物体の位置のみに依存せずに算出することができる。また、各センサ部13の確信度は正規化されるので、統合座標算出手段11で共通の指標として扱うことができる。
【0075】
以上、本発明の移動体の周囲物体検出装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0076】
例えば、上記した各実施形態では、移動体として車両を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の移動体においても適用することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
移動体の周囲に存在する障害物等の物体を高精度に検出する上で極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る移動体の周囲物体検出装置の基本構成を示すブロック図である。
【図2】複数のセンサ部による検出領域を示す説明図である。
【図3】自車両とその周辺に存在する他車両を鳥瞰図表示した例を示す説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る移動体の周囲物体検出装置の基本構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る移動体の周囲物体検出装置の基本構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0079】
11 統合座標算出手段
12 表示手段
13 センサ部
14 位置算出手段
15 確信度演算部
16 統合座標履歴保存手段
17 予測値算出手段
18 誤差分布保存手段
19 誤差分布参照手段
20 差分算出手段
21 確信度算出手段
31 自車両
32〜34 センサ
35〜37 検出範囲
38,39 検出点
41 確信度演算部
42 検出座標履歴保存手段
43 予測値算出手段
44 非検出頻度算出手段
51 テンプレート作成手段
52 テンプレート照合手段
53 テンプレート保存手段
54 整合性算出手段
55 位置算出手段
62 自車両
63 物体
X(i),X(i+1),・・ 検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、該移動体の周囲に存在する物体を検出する移動体の周囲物体検出装置において、
複数の検出手段を有し、
前記各検出手段は、移動体周囲に存在する物体を検出するセンサ手段と、
前記センサ手段で検出される前記物体と、前記移動体との間の相対的な位置データを求める位置検出手段と、
前記位置検出手段で求められた相対位置データに基づいて、前記移動体と前記物体との間の相対位置データの確信度データを求める確信度演算手段と、を有し、
前記各検出手段で求められた前記確信度データに基づいて、この検出手段で求められた前記相対位置データを重み付け処理し、重み付け処理された前記各相対位置データに基づいて、前記移動体と前記物体との相対位置を求める統合座標算出手段を備えたことを特徴とする移動体の周囲物体検出装置。
【請求項2】
前記確信度演算手段は、前記位置算出手段で求められる実測による相対位置データと、基準となるデータより得られる予測位置データに基づいて、前記確信度データを求めることを特徴とする請求項1に記載の移動体の周囲物体検出装置。
【請求項3】
前記確信度演算手段は、前記実測による相対位置データと、前記予測位置データとの間の誤差に基づいて、前記確信度データを求めることを特徴とする請求項2に記載の移動体の周囲物体検出装置。
【請求項4】
前記確信度演算手段は、前記予測位置データに対応する前記実測による相対位置データが検出される頻度に応じて、前記確信度データを求めることを特徴とする請求項2に記載の移動体の周囲物体検出装置。
【請求項5】
前記基準となるデータは、過去の検出データであることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の移動体の周囲物体検出装置。
【請求項6】
前記センサ手段は、移動体の周囲画像を撮影するカメラであり、
前記カメラで撮影された画像から取得される物体と、予め設定したテンプレートとの相関値を求めるテンプレート照合手段を備え、前記確信度演算手段は、前記相関値に基づいて、前記確信度データを求めることを特徴とする請求項1に記載の移動体の周囲物体検出装置。
【請求項7】
前記移動体は車両であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の移動体の周囲物体検出装置。
【請求項8】
移動体に搭載され、該移動体の周囲に存在する物体を検出する移動体の周囲物体検出方法において、
センサ手段を用いて、前記移動体周囲に存在する物体を検出する物体検出工程と、
前記物体検出工程で検出された前記物体と、前記移動体との間の相対位置データを求める位置算出工程と、
前記位置算出工程で得られた前記相対位置データに基づき、前記移動体と前記物体との間の相対位置データの確信度データを求める確信度演算工程と、からなる検出工程を複数有し、
前記各検出工程で求められた前記確信度データを用いて、その検出工程での前記位置算出工程で求められた前記相対位置データを重み付け処理し、重み付け処理された前記各相対位置データに基づいて、前記移動体と前記物体との相対位置を求める統合座標算出工程を備えたことを特徴とする移動体の周囲物体検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−90957(P2006−90957A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279610(P2004−279610)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】