説明

移動可能領域抽出装置および移動可能領域抽出方法

【課題】移動体が移動する移動領域内の障害物を検出する際に、人や他の自律移動ロボットなど、移動経路上から移動する移動体を障害物として抽出することなく、移動体が目的地まで効率良く移動することができる移動経路を生成するための移動可能領域抽出装置および移動可能領域抽出方法を提供する。
【解決手段】第1の距離センサが観測した距離の情報に基づいて、障害物の領域を表す第1の障害物領域を検出する第1の障害物検出手段と、第2の距離センサが観測した距離の情報に基づいて、障害物の領域を表す第2の障害物領域を検出する第2の障害物検出手段と、第2の障害物領域に基づいて継続的に移動している障害物を移動物として検出し、第1の障害物領域から、該検出した移動物の領域を表す第1の障害物領域を除いた領域を、移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する障害物領域抽出手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律的に移動する移動体が移動することができる移動可能領域を抽出する移動可能領域抽出装置および移動可能領域抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自律的に移動する移動体(以下、「自律移動ロボット」という)は、自律移動ロボットに設定された移動経路に従って移動する。そして、自律移動ロボットが安全に移動するためには、移動経路中に存在する障害物を回避した上で、最適な移動経路を生成することが重要である。
【0003】
従来の自律移動ロボットは、カメラ、レーザレンジファインダ、超音波センサなどの検出装置を備えている。そして、自律移動ロボットが移動する際には、検出装置によって得られる検出情報に基づいて移動経路中に存在する障害物を検出し、検出した障害物を回避するように移動経路を逐次更新しながら目的の場所に移動する。しかし、検出装置によって得られた検出情報から障害物を抽出して移動経路を生成するための演算量は非常に多く、経路生成に要する演算時間が長い。そして、この演算量の多さが、自律移動ロボットが移動する速度の制約となっている。この演算量の多さに起因する自律移動ロボットの移動速度の制約を回避するため、例えば、特許文献1では、前回の障害物抽出において障害物とされた領域および前回の検出範囲外の検出情報のみを使用することによって、次回の障害物抽出および経路生成に要する演算時間を短縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−197884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的に、自律移動ロボットが移動する移動経路上には、固定された障害物のみではなく、例えば、人や他の自律移動ロボットなどの移動体も存在することが考えられる。特許文献1では、前回の障害物抽出において障害物がないとされた領域は、次に障害物を検出する領域とはならない。このため、自律移動ロボットの移動経路上に移動体が進入してきた場合には、進入してきた移動体を障害物として検出することができず、この障害物を回避することができないため、自律移動ロボットが安全に移動することができないという問題がある。
【0006】
また、従来から、自律移動ロボットの移動経路中の障害物を検出する方法として、自律移動ロボットの移動領域内に検出装置を設置し、検出装置によって得られた検出情報に基づいて自律移動ロボットの移動経路中に存在する障害物を抽出する方法もある。例えば、自律移動ロボットが屋内で移動する場合、移動領域内の天井にレーザレンジファインダなどの距離センサを設置し、このレーザレンジファインダによって障害物を検出する方法である。そして、天井に設置されたレーザレンジファインダが検出した障害物を回避するような移動経路を自律移動ロボットに設定することによって、障害物を回避(迂回)しながら自律移動ロボットが目的の場所に安全に移動することができる。
【0007】
このように、自律移動ロボットの移動領域内の高所にレーザレンジファインダを設置した場合、レーザレンジファインダによって、広い範囲の障害物を検出することができる。そして、レーザレンジファインダによって得られた検出情報から障害物を抽出して移動経路を生成するための演算を、より処理能力の高い処理装置を用いて行うことによって、自律移動ロボットが移動する速度の制約を回避することができる。また、自律移動ロボットの移動経路上に進入してくる移動体を早い段階で検出することもできる。しかしながら、天井に設置されたレーザレンジファインダによる障害物の検出範囲は、例えば、円錐状に広がっているため、自律移動ロボットが移動する床面に置かれた障害物の陰や、移動体の陰など、レーザレンジファインダが検出することができない未知の領域が発生してしまう。通常、この未知の領域も障害物の領域とし、自律移動ロボットが移動することができない移動不可能領域に含めることによって、自律移動ロボットが目的の場所に安全に移動するための支障となることは少ない。
【0008】
しかし、全ての未知の領域を移動不可能領域に含めてしまうと、自律移動ロボットが障害物を回避(迂回)する範囲が大きくなってしまうため、自律移動ロボットの移動経路を最短にするなど、効率の良い移動経路を生成することができないという問題がある。この問題を解決して効率の良い移動経路を生成するために、複数台のレーザレンジファインダを、各レーザレンジファインダの検出範囲の一部が重複するように自律移動ロボットの移動領域内の天井に設置することが考えられる。そして、複数台のレーザレンジファインダの検出情報を融合して、最終的な障害物を抽出することが考えられる。これにより、床面に置かれた障害物の陰や移動体の陰などの未知の領域をある程度少なくすることができる。しかしながら、各レーザレンジファインダによる障害物の検出タイミングを同期させるための制御は複雑な処理が必要となるため、現状では、各レーザレンジファインダが非同期に障害物を検出している。
【0009】
このような状態において、例えば、人がレーザレンジファインダの検出範囲が重複している領域を移動した場合、人は、2つのレーザレンジファインダによってそれぞれ検出される。ところが、2つのレーザレンジファインダに検出された人の位置は、レーザレンジファインダ毎に異なる位置である。これは、上述のように、各レーザレンジファインダが非同期に障害物を検出している状態では、2つのレーザレンジファインダの検出タイミングが同時刻でなく、同一の人をそれぞれ異なるタイミングで検出してしまうためである。この状態を別の構成に例えると、同一の移動している人を、2台のカメラでそれぞれ別のタイミングで撮影するようなものである。そして、異なる位置に検出された同一の人の検出情報を融合すると、人の陰を含め、人が移動した軌跡の範囲が障害物の領域として全て抽出されてしまうこととなる。これにより、自律移動ロボットが障害物を回避(迂回)する範囲が大きくなってしまう。また、さらに、人が移動することによって、レーザレンジファインダによって前回検出された位置にいない場合でも、自律移動ロボットには前回障害物として抽出された人の位置を回避(迂回)するような移動経路が設定されることとなる。
【0010】
また、例えば、自律移動ロボットが設定された移動経路に従って移動することによって、レーザレンジファインダが後方から自律移動ロボット自身を検出する位置に自律移動ロボットが移動した場合、自律移動ロボット自身の陰も未知の領域となってしまう。このような状態において、自律移動ロボット自身の陰の領域を障害物の領域として抽出してしまうと、自律移動ロボットが移動することができる移動可能領域が、自律移動ロボット自身の陰によってなくなってしまうこととなる。
【0011】
このように、天井に設置したレーザレンジファインダを用いて自律移動ロボットが移動する移動経路上の障害物を抽出しようとした場合には、本来抽出すべき、テーブルや椅子などの固定された障害物の他に、人や他の自律移動ロボットなどの移動体や、自律移動ロボット自身も障害物として抽出されてしまうという問題がある。そして、本来抽出すべき障害物以外も回避(迂回)すべき障害物として抽出されてしまうと、自律移動ロボットが効率良く移動することができる移動経路を生成することができないという問題がある。
【0012】
本発明は、上記の課題認識に基づいてなされたものであり、移動体が移動する移動領域内の障害物を検出する際に、人や他の自律移動ロボットなど、移動経路上から移動する移動体を障害物として抽出することなく、移動体が目的地まで効率良く移動することができる移動経路を生成するための移動可能領域抽出装置および移動可能領域抽出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載した発明の移動可能領域抽出装置(例えば、実施の形態における移動可能領域抽出部30)は、自律的に移動する移動体(例えば、実施の形態における自律移動ロボット100)が移動する空間内の予め定められた第1の高さから前記空間の下方を観測するように設置された第1の距離センサ(例えば、実施の形態における天井LRF10)と、前記空間内の予め定められた前記第1の高さより低い第2の高さから前記空間の側方を観測するように設置された第2の距離センサ(例えば、実施の形態における側方LRF20)と、によって前記移動体が移動する前記空間内に存在する障害物を検出し、該検出した障害物の領域の情報(例えば、実施の形態における非床面グリッドおよび未知グリッド)に基づいて、前記移動体が移動することができる移動可能領域の情報(例えば、実施の形態における移動可能領域情報)を抽出する移動可能領域抽出装置において、前記第1の距離センサが観測した距離の情報に基づいて、前記障害物の領域を表す第1の障害物領域を検出する第1の障害物検出手段(例えば、実施の形態におけるグリッド変換部331)と、前記第2の距離センサが観測した距離の情報に基づいて、前記障害物の領域を表す第2の障害物領域を検出する第2の障害物検出手段(例えば、実施の形態における移動体位置抽出部340)と、前記第2の障害物領域に基づいて継続的に移動している前記障害物を移動物として検出し、前記第1の障害物領域から、該検出した前記移動物の領域を表す前記第1の障害物領域を除いた領域を、前記移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する障害物領域抽出手段(例えば、実施の形態における移動体位置キャンセル部332)と、を備える、ことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、第1の高さに設置された第1の距離センサ(例えば、実施の形態における天井LRF10)が観測した障害物までの距離の情報に基づいて、移動体(例えば、実施の形態における自律移動ロボット100)が移動する空間内に存在する第1の障害物領域を検出する。また、第1の高さより低い第2の高さに設置された第2の距離センサ(例えば、実施の形態における側方LRF20)が観測した障害物までの距離の情報に基づいて、移動体が移動する空間内に存在する第2の障害物領域を検出する。また、第2の障害物領域に基づいて、移動体が移動する空間内を継続的に移動している移動物を検出する。そして、移動物を観測することによって得られた第1の障害物領域を除いた第1の障害物領域を、移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する。
【0015】
請求項2に記載した発明の前記第2の障害物検出手段は、前記第2の距離センサが前記障害物を観測したときの前記距離の情報に基づいて、前記障害物の位置を表す障害物位置(例えば、実施の形態における人候補位置)を抽出し、前記障害物領域抽出手段は、前記第2の障害物検出手段が抽出した前記障害物位置(例えば、実施の形態における現在の人候補位置)と、以前に前記第2の障害物検出手段が抽出した過去の障害物位置(例えば、実施の形態における過去の人候補位置)とに基づいて前記移動物を検出し、該検出した移動物の位置を表す前記障害物位置を含む前記第1の障害物領域を除いた領域を、前記移動可能領域とする、ことを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、第2の距離センサが観測した障害物までの距離の情報に基づいて、観測した障害物の障害物位置(例えば、実施の形態における人候補位置)を抽出する。そして、現在の観測によって得られた障害物位置(例えば、実施の形態における現在の人候補位置)と、以前の観測によって得られた過去の障害物位置(例えば、実施の形態における過去の人候補位置)とに基づいて、移動体が移動する空間内を継続的に移動している移動物を検出する。そして、移動体の障害物位置(例えば、実施の形態における現在の人候補位置)を含む第1の障害物領域を除いた第1の障害物領域を、移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する。
【0017】
請求項3に記載した発明の前記第2の障害物検出手段は、前記第2の距離センサが前記障害物を観測したときの前記距離の情報に基づいて、前記障害物の位置を表す障害物位置(例えば、実施の形態における人候補位置)を抽出し、前記障害物領域抽出手段は、前記第2の障害物検出手段が抽出した前記障害物位置(例えば、実施の形態における現在の人候補位置)と、以前に前記第2の障害物検出手段が抽出した過去の障害物位置(例えば、実施の形態における過去の人候補位置)とに基づいて前記移動物を検出し、該検出した移動物の位置を表す前記障害物位置を含む予め定められた範囲(例えば、実施の形態における移動体キャンセル範囲)の前記第1の障害物領域を除いた領域を、前記移動可能領域とする、ことを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、第2の距離センサが観測した障害物までの距離の情報に基づいて、観測した障害物の障害物位置(例えば、実施の形態における人候補位置)を抽出する。そして、現在の観測によって得られた障害物位置(例えば、実施の形態における現在の人候補位置)と、以前の観測によって得られた過去の障害物位置(例えば、実施の形態における過去の人候補位置)とに基づいて、移動体が移動する空間内を継続的に移動している移動物を検出する。そして、移動体の障害物位置(例えば、実施の形態における現在の人候補位置)を含む予め定められた範囲(例えば、実施の形態における移動体キャンセル範囲)の第1の障害物領域を除いた第1の障害物領域を、移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する。
【0019】
請求項4に記載した発明の前記障害物領域抽出手段は、前記移動物の位置を表す前記障害物位置に最も近い位置に設置されている前記第1の距離センサを検索し、前記移動物の障害物位置と該検索した前記第1の距離センサとの距離(例えば、実施の形態における距離Lh)、および該検索した前記第1の距離センサが前記移動物を観測したときの前記距離の情報に含まれる高さの情報(例えば、実施の形態における高さHsおよび高さHh)に基づいて、該移動物によって前記第1の距離センサが観測することができない陰の領域の長さ(例えば、実施の形態における陰部の長さLs)を算出し、該移動物の障害物位置から該算出した陰の領域の長さだけ離れた位置までの間、前記予め定められた範囲を、該移動物の障害物位置と該検索した前記第1の距離センサの設置位置とを結んだ延長線上で移動し、前記予め定められた範囲の前記第1の障害物領域を除いた領域を、前記移動可能領域とする、ことを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、移動物の障害物位置に最も近い位置に設置されている第1の距離センサを検索する。そして、移動物の障害物位置と第1の距離センサとの距離(例えば、実施の形態における距離Lh)、および第1の距離センサが移動物を観測したときの高さの情報(例えば、実施の形態における高さHsおよび高さHh)に基づいて、移動物の陰となって第1の距離センサが距離の情報を観測することができない陰の領域の長さ(例えば、実施の形態における陰部の長さLs)を算出する。そして、予め定められた範囲(例えば、実施の形態における移動体キャンセル範囲)を、現在の移動物の障害物位置から陰の領域の長さだけ離れた位置までの間、移動物の障害物位置と第1の距離センサの設置位置とを結んだ延長線上で移動して、陰の領域に含まれる第1の障害物領域を除いた第1の障害物領域を、移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する。
【0021】
請求項5に記載した発明の前記障害物領域抽出手段は、前記第2の障害物検出手段が抽出した前記障害物位置が、以前に前記第2の障害物検出手段が抽出した過去の障害物位置から予め定められた閾値(例えば、実施の形態における予め定められた距離)以上変化している場合に、前記障害物位置に対応する前記障害物が前記移動物であると判定する、ことを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、第2の距離センサによる観測によって得られた現在の障害物位置と、第2の距離センサによる以前の観測によって得られた過去の障害物位置との差が、予め定められた閾値(例えば、実施の形態における予め定められた距離)以上である場合に、現在の障害物位置に位置している障害物が、移動体が移動する空間内を継続的に移動している移動物であると判定する。
【0023】
請求項6に記載した発明の前記移動体が移動する空間が建物内にあるとき、前記第1の距離センサは、前記建物内の天井に予め定められた間隔で複数設置され、前記第1の障害物検出手段は、複数設置されたそれぞれの前記第1の距離センサの観測範囲を融合した空間における距離の情報に基づいて、前記第1の障害物領域を検出する、ことを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、移動体が移動する空間が建物内であるとき、第1の距離センサを設置する第1の高さを建物内の天井の高さとする。また、建物内の天井には、予め定められた間隔で複数の第1の距離センサを設置する。そして、複数設置されたそれぞれの第1の距離センサの観測範囲を融合した空間が、移動体が移動する空間となる。そして、第1の障害物検出手段は、それぞれの第1の距離センサの観測範囲を融合した空間における距離の情報に基づいて、第1の障害物領域を検出する。
【0025】
請求項7に記載した発明の前記第2の距離センサは、前記天井と床面との間の予め定められた高さで、前記建物内の床面に平行な観測範囲を観測するように、予め定められた間隔で複数設置され、前記第2の障害物検出手段は、複数設置されたそれぞれの前記第2の距離センサの観測範囲を融合した平面における距離の情報に基づいて、前記第2の障害物領域を検出する、ことを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、移動体が移動する空間が建物内であるとき、第2の距離センサを設置する第2の高さを、建物内の天井の高さと建物内の床面の高さとの間の予め定められた高さとする。また、第2の距離センサの観測範囲が建物内の床面と平行となるように、予め定められた間隔で複数の第2の距離センサを設置する。そして、複数設置されたそれぞれの第2の距離センサの観測範囲を融合した平面が、移動体が移動する空間内の平面となる。そして、第2の障害物検出手段は、それぞれの第2の距離センサの観測範囲を融合した平面における距離の情報に基づいて、第2の障害物領域を検出する。
【0027】
請求項8に記載した発明の前記障害物領域抽出手段は、抽出した移動可能領域に基づいて、前記移動体が移動する経路を生成する経路生成手段(例えば、実施の形態における経路生成部40)、をさらに備える、ことを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、障害物領域抽出手段に、抽出した移動可能領域に基づいて移動体が移動する経路を生成する経路生成手段(例えば、実施の形態における経路生成部40)をさらに備える。
【0029】
請求項9に記載した発明の移動可能領域抽出装置(例えば、実施の形態における移動可能領域抽出部31)は、自律的に移動する移動体(例えば、実施の形態における自律移動ロボット100)が移動する空間内の予め定められた高さから前記空間の下方を観測するように設置された距離センサ(例えば、実施の形態における天井LRF10)と、によって前記移動体が移動する前記空間内に存在する障害物を検出し、該検出した障害物の領域の情報(例えば、実施の形態における非床面グリッドおよび未知グリッド)に基づいて、前記移動体が移動することができる移動可能領域の情報(例えば、実施の形態における移動可能領域情報)を抽出する移動可能領域抽出装置において、前記距離センサが観測した距離の情報に基づいて、前記障害物の領域を表す障害物領域を検出する障害物検出手段(例えば、実施の形態におけるグリッド変換部331)と、前記距離センサが障害物を観測したときの反射波の光量の情報に基づいて、前記障害物の形状を検出する形状検出手段(例えば、実施の形態における移動体位置抽出部380)と、前記形状検出手段によって検出した障害物の形状と予め定められた物体の形状とを比較し、該障害物の形状が前記予め定められた物体の形状と同等である場合に、前記距離センサが該障害物を観測したときの前記距離の情報に基づいて、該障害物の継続的な移動を検出し、前記障害物領域から、該検出した継続的に移動している前記障害物の領域を表す前記障害物領域を除いた領域を、前記移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する障害物領域抽出手段(例えば、実施の形態における移動体位置キャンセル部332)と、を備える、ことを特徴とする。
【0030】
この発明によれば、予め定められた高さに設置された距離センサ(例えば、実施の形態における天井LRF10)が観測した障害物までの距離の情報に基づいて、移動体(例えば、実施の形態における自律移動ロボット100)が移動する空間内に存在する障害物領域を検出する。また、距離センサが障害物を観測したときの反射波の光量の情報に基づいて、障害物の形状を検出する。また、検出した障害物の形状と予め定められた物体の形状とが同等である場合に、距離センサがこの障害物を観測したときの距離の情報に基づいて、この障害物が、移動体が移動する空間内を継続的に移動している移動物であるかを判定する。そして、移動物を観測することによって得られた障害物領域を除いた障害物領域を、移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する。
【0031】
請求項10に記載した発明の移動可能領域抽出方法は、自律的に移動する移動体が移動する空間内の予め定められた第1の高さから前記空間の下方を観測するように設置された第1の距離センサと、前記空間内の予め定められた前記第1の高さより低い第2の高さから前記空間の側方を観測するように設置された第2の距離センサと、によって前記移動体が移動する前記空間内に存在する障害物を検出し、該検出した障害物の領域の情報に基づいて、前記移動体が移動することができる移動可能領域の情報を抽出する移動可能領域抽出方法において、前記第1の距離センサが観測した距離の情報に基づいて、前記障害物の領域を表す第1の障害物領域を検出する第1の障害物検出手順と、前記第2の距離センサが観測した距離の情報に基づいて、前記障害物の領域を表す第2の障害物領域を検出する第2の障害物検出手順と、前記第2の障害物領域に基づいて継続的に移動している前記障害物を移動物として検出し、前記第1の障害物領域から、該検出した前記移動物の領域を表す前記第1の障害物領域を除いた領域を、前記移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する障害物領域抽出手順と、を含む、ことを特徴とする。
【0032】
この発明によれば、第1の高さに設置された第1の距離センサが観測した障害物までの距離の情報に基づいて、移動体が移動する空間内に存在する第1の障害物領域を検出し、第1の高さより低い第2の高さに設置された第2の距離センサが観測した障害物までの距離の情報に基づいて、移動体が移動する空間内に存在する第2の障害物領域を検出する。そして、第2の障害物領域に基づいて、移動体が移動する空間内を継続的に移動している移動物を検出し、検出した移動物を観測した距離の情報から得られた第1の障害物領域を除いた第1の障害物領域を、移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する。
【0033】
請求項11に記載した発明の移動可能領域抽出方法は、自律的に移動する移動体が移動する空間内の予め定められた高さから前記空間の下方を観測するように設置された距離センサと、によって前記移動体が移動する前記空間内に存在する障害物を検出し、該検出した障害物の領域の情報に基づいて、前記移動体が移動することができる移動可能領域の情報を抽出する移動可能領域抽出方法において、前記距離センサが観測した距離の情報に基づいて、前記障害物の領域を表す障害物領域を検出する障害物検出手順と、前記距離センサが障害物を観測したときの反射波の光量の情報に基づいて、前記障害物の形状を検出する形状検出手順と、前記形状検出手順によって検出した障害物の形状と予め定められた物体の形状とを比較し、該障害物の形状が前記予め定められた物体の形状と同等である場合に、前記距離センサが該障害物を観測したときの前記距離の情報に基づいて、該障害物の継続的な移動を検出し、前記障害物領域から、該検出した継続的に移動している前記障害物の領域を表す前記障害物領域を除いた領域を、前記移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する障害物領域抽出手順と、を含む、ことを特徴とする。
【0034】
この発明によれば、予め定められた高さに設置された距離センサが観測した障害物までの距離の情報に基づいて、移動体が移動する空間内に存在する障害物領域を検出し、距離センサが障害物を観測したときの反射波の光量の情報に基づいて、障害物の形状を検出する。そして、検出した障害物の形状が予め定められた物体の形状と同等である場合に、距離センサがこの障害物を観測したときの距離の情報に基づいて、移動体が移動する空間内を継続的に移動している移動物であるかを判定する。そして、移動物を観測した距離の情報から得られた障害物領域を除いた障害物領域を、移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する。
【発明の効果】
【0035】
請求項1に記載した発明によれば、第1の高さに設置された第1の距離センサが観測した障害物までの距離の情報に基づいて、移動体が移動する空間内に存在する第1の障害物領域を検出する。また、第1の高さより低い第2の高さに設置された第2の距離センサが観測した障害物までの距離の情報に基づいて、移動体が移動する空間内に存在する第2の障害物領域を検出する。このため、移動体が移動する空間内の障害物を第1の高さから広範囲で観測することができるとともに、第1の高さより低い第2の高さの障害物を抽出することができる。
また、第2の障害物領域に基づいて、移動体が移動する空間内を継続的に移動している移動物を検出するため、移動体が移動する空間内を継続的に移動している第2の高さ以上の高さを持つ移動物を検出することができる。
また、移動物を観測することによって得られた第1の障害物領域を除いた第1の障害物領域を、移動体が移動することができる移動可能領域として抽出するため、第1の距離センサによって広範囲に観測した障害物の領域の情報から、第2の高さ以上の高さを持つ移動物を除いた情報を、移動可能領域の情報として出力することができる。
【0036】
請求項2に記載した発明によれば、第2の距離センサが観測した障害物までの距離の情報に基づいて、観測した障害物の障害物位置を抽出するため、障害物を代表する、例えば、中心の位置を得ることができる。
また、現在の観測によって得られた障害物位置と、以前の観測によって得られた過去の障害物位置とに基づいて、移動体が移動する空間内を継続的に移動している移動物を検出するため、移動物を代表する位置(例えば、中心の位置)が過去の位置から現在の位置に移動したときの移動量(例えば、距離など)の情報を得ることができる。
また、移動体の障害物位置を含む第1の障害物領域を除いた第1の障害物領域を、移動体が移動することができる移動可能領域として抽出するため、予め定められた移動量の移動物のみを障害物の領域の情報から除くことによって、固定されている障害物の領域を除くことなく、移動体が移動することができる移動可能領域の範囲を広げることができる。
【0037】
請求項3に記載した発明によれば、第2の距離センサが観測した障害物までの距離の情報に基づいて、観測した障害物の障害物位置を抽出するため、障害物を代表する、例えば、中心の位置を得ることができる。
また、現在の観測によって得られた障害物位置と、以前の観測によって得られた過去の障害物位置とに基づいて、移動体が移動する空間内を継続的に移動している移動物を検出するため、移動物を代表する位置(例えば、中心の位置)が過去の位置から現在の位置に移動したときの移動量(例えば、距離など)の情報を得ることができる。
また、移動体の障害物位置を含む予め定められた範囲の第1の障害物領域を除いた第1の障害物領域を、移動体が移動することができる移動可能領域として抽出するため、予め定められた移動量の移動物を含む予め定められた範囲のみを障害物の領域の情報から除くことによって、固定されている障害物の領域を除くことなく、移動体が移動することができる移動可能領域の範囲を広げることができる。
【0038】
請求項4に記載した発明によれば、移動物の障害物位置に最も近い位置に設置されている第1の距離センサを検索する。そして、移動物の障害物位置と第1の距離センサとの距離、および第1の距離センサが移動物を観測したときの高さの情報に基づいて、移動物の陰となって第1の距離センサが距離の情報を観測することができない陰の領域の長さを算出する。そして、予め定められた範囲を、現在の移動物の障害物位置から陰の領域の長さだけ離れた位置までの間、移動物の障害物位置と第1の距離センサの設置位置とを結んだ延長線上で移動して、陰の領域に含まれる第1の障害物領域を除いた第1の障害物領域を、移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する。このため、予め定められた範囲外に残っている障害物の領域において、移動体の陰によって第1の距離センサが検出することができない領域を障害物の領域の情報から除くことができ、不用意に移動体が移動することができる移動可能領域を狭めることがなくなる。
【0039】
請求項5に記載した発明によれば、第2の距離センサによる観測によって得られた現在の障害物位置と、第2の距離センサによる以前の観測によって得られた過去の障害物位置との差が、予め定められた閾値以上である場合に、現在の障害物位置に位置している障害物が、移動体が移動する空間内を継続的に移動している移動物であると判定するため、移動物であるが移動速度が遅いことによって固定された障害物と同等に扱う必要がある移動物を障害物の領域の情報から除いてしまうことがなくなる。このため、不用意に移動体が移動することができる移動可能領域を広げすぎてしまうことがなくなる。
【0040】
請求項6に記載した発明によれば、移動体が移動する空間が建物内であるとき、第1の距離センサを設置する第1の高さを建物内の天井の高さとして、予め定められた間隔で複数の第1の距離センサを設置する。そして、複数設置されたそれぞれの第1の距離センサの観測範囲を融合した空間が、移動体が移動する空間となるため、移動体が移動する空間内における障害物を検出することができない領域(オクルージョン領域)を少なくすることができ、移動体が移動する空間内の障害物を広範囲で観測することができる。
また、第1の障害物検出手段は、それぞれの第1の距離センサの観測範囲を融合した空間における距離の情報に基づいて、第1の障害物領域を検出するため、移動体が移動する空間の全ての範囲の障害物を観測することができ、移動体の移動経路上に進入してくる移動物を早い段階で観測することもできる。
【0041】
請求項7に記載した発明によれば、移動体が移動する空間が建物内であるとき、第2の距離センサを設置する第2の高さを、建物内の天井の高さと建物内の床面の高さとの間の予め定められた高さとして、第2の距離センサの観測範囲が建物内の床面と平行となるように、予め定められた間隔で複数の第2の距離センサを設置する。そして、複数設置されたそれぞれの第2の距離センサの観測範囲を融合した平面が、移動体が移動する空間内の平面となる。そして、第2の障害物検出手段は、それぞれの第2の距離センサの観測範囲を融合した平面における距離の情報に基づいて、第2の障害物領域を検出する。このため、移動体が移動する空間内に存在することが想定される高さ以上の高さを持つ移動物(例えば、人や他の自律移動ロボットなど)を検出することができる。
【0042】
請求項8に記載した発明によれば、障害物領域抽出手段に、抽出した移動可能領域に基づいて移動体が移動する経路を生成する経路生成手段をさらに備えるため、抽出した移動可能領域の情報に基づいて、移動体が移動する移動経路を効率的に生成することができる。
【0043】
請求項9に記載した発明によれば、予め定められた高さに設置された距離センサが観測した障害物までの距離の情報に基づいて、移動体が移動する空間内に存在する障害物領域を検出する。また、距離センサが障害物を観測したときの反射波の光量の情報に基づいて、障害物の形状を検出する。また、検出した障害物の形状と予め定められた物体の形状とが同等である場合に、距離センサがこの障害物を観測したときの距離の情報に基づいて、この障害物が、移動体が移動する空間内を継続的に移動している移動物であるかを判定する。このため、移動体が移動する空間内を継続的に移動している予め定められた特定の移動物を検出することができる。
また、移動物を観測することによって得られた障害物領域を除いた障害物領域を、移動体が移動することができる移動可能領域として抽出するため、距離センサによって観測した障害物の領域の情報から、特定の移動物を除いた情報を、移動可能領域の情報として出力することができる。
【0044】
請求項10に記載した発明によれば、第1の高さに設置された第1の距離センサが観測した障害物までの距離の情報に基づいて、移動体が移動する空間内に存在する第1の障害物領域を検出し、第1の高さより低い第2の高さに設置された第2の距離センサが観測した障害物までの距離の情報に基づいて、移動体が移動する空間内に存在する第2の障害物領域を検出する。そして、第2の障害物領域に基づいて、移動体が移動する空間内を継続的に移動している移動物を検出し、検出した移動物を観測した距離の情報から得られた第1の障害物領域を除いた第1の障害物領域を、移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する。このため、第1の距離センサによって広範囲に観測した障害物の領域の情報から、第2の高さ以上の高さを持つ移動物を除いた情報を、移動可能領域の情報として出力することができる。
【0045】
請求項11に記載した発明によれば、予め定められた高さに設置された距離センサが観測した障害物までの距離の情報に基づいて、移動体が移動する空間内に存在する障害物領域を検出し、距離センサが障害物を観測したときの反射波の光量の情報に基づいて、障害物の形状を検出する。そして、検出した障害物の形状が予め定められた物体の形状と同等である場合に、距離センサがこの障害物を観測したときの距離の情報に基づいて、移動体が移動する空間内を継続的に移動している移動物であるかを判定する。そして、移動物を観測した距離の情報から得られた障害物領域を除いた障害物領域を、移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する。このため、距離センサによって観測した障害物の領域の情報から、特定の移動物を除いた情報を、移動可能領域の情報として出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態による経路生成システムが用いられた移動領域を模式的に示した図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による経路生成システムの概略構成を示したブロック図である。
【図3】本第1の実施形態の移動可能領域抽出部において登録されるグリッドの種別を説明する図である。
【図4】本第1の実施形態の移動可能領域抽出部における移動不可能領域の判定方法の例を説明する図である。
【図5】本第1の実施形態の移動可能領域抽出部における移動体位置の算出方法の例を説明する図である。
【図6】本第1の実施形態の移動可能領域抽出部における移動体位置のキャンセル方法の第1の例を説明する図である。
【図7】本第1の実施形態の移動可能領域抽出部における移動体位置のキャンセル方法の第2の例を説明する図である。
【図8】本第1の実施形態の経路生成システムにおいて検出される移動体の例を説明する図である。
【図9】本第1の実施形態の移動可能領域抽出部における移動体の陰部の領域のキャンセル方法の例を説明する図である。
【図10】本第1の実施形態の経路生成システムにおける移動経路生成処理の処理手順を示したフローチャートである。
【図11】本第1の実施形態の経路生成システムにおける移動体のキャンセル処理を説明する図である。
【図12】本発明の第2の実施形態による経路生成システムの概略構成を示したブロック図である。
【図13】本第2の実施形態の移動体位置抽出部における移動体の判定方法の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
<第1の実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態による経路生成システムが用いられた移動領域を模式的に示した図である。図1において移移動領域内には、天井と側方に複数のレーザレンジファインダ(Laser Range Finder:レーザ距離計、以下「LRF」という)が設置されている。以下の説明においては、天井に設置されたLRFを、天井LRF10という。また、側方に設置されたLRFを、側方LRF20という。また、天井LRF10および側方LRF20を特定しない場合は、単に「LRF」という。図1では、自律移動ロボット100の移動領域内で、テーブルや椅子などが固定された障害物として検出され、人および自律移動ロボット100自身が移動している障害物(移動体)として検出される場合を表している。
【0048】
図2は、本第1の実施形態による経路生成システムの概略構成を示したブロック図である。図2において経路生成システム1は、天井LRF10と、側方LRF20と、移動可能領域抽出部30と、移動経路生成部40とを備えている。移動可能領域抽出部30は、天井LRF10に対応した距離情報取得部310と、側方LRF20に対応した距離情報取得部320と、障害物位置抽出部330と、移動体位置抽出部340とを備えている。また、障害物位置抽出部330は、グリッド変換部331と、移動体位置キャンセル部332と、移動体陰キャンセル部333とを備えている。
【0049】
経路生成システム1は、天井LRF10によって自律移動ロボットが移動する移動領域内の障害物を検出し、側方LRF20によって移動領域内に存在する移動体(例えば、人や他の自律移動ロボットなどの移動体、および自律移動ロボット100自身)を検出する。そして、経路生成システム1は、天井LRF10が検出した全ての障害物の領域から、側方LRF20が検出した移動体(移動している障害物)の領域を除いた領域を、自律移動ロボット100の移動可能領域として抽出し、抽出した移動可能領域の情報に基づいて、自律移動ロボット100の移動経路を生成する。
【0050】
天井LRF10は、観測範囲内に存在する物体(障害物)との距離を検出する3次元の測距センサである。天井LRF10は、自律移動ロボット100の移動領域内の高所に設置され、図示しない制御部からの制御に応じて、予め定められた観測範囲内に複数のレーザビームを照射する。そして、天井LRF10が照射したレーザビームが物体によって反射された反射波を観測する。天井LRF10は、観測した反射波の情報を移動可能領域抽出部30に出力する。
【0051】
側方LRF20は、観測範囲内に存在する物体(障害物)との距離を検出する2次元の測距センサである。側方LRF20は、自律移動ロボット100の移動領域内において予め定められた高さ(例えば、人を検出することができる高さ)の位置に設置され、図示しない制御部からの制御に応じて、予め定められた観測範囲内に複数のレーザビームを照射する。そして、側方LRF20が照射したレーザビームが物体によって反射された反射波を観測する。側方LRF20は、観測した反射波の情報を移動可能領域抽出部30に出力する。
【0052】
なお、本第1の実施形態における天井LRF10は、自律移動ロボット100の移動領域内において、自律移動ロボット100が移動する面(例えば、建物内の床面など)の高さを検出することができる一定の姿勢で、一定の高さ(例えば、建物内の天井など)の予め定められた位置に設置されているものとして説明を行う。そして、天井LRF10は、例えば、天井LRF10を頂点とした円錐状の範囲にレーザビームを照射し、観測範囲内に存在する物体を検出する。また、本第1の実施形態における側方LRF20は、自律移動ロボット100の移動領域内において、自律移動ロボット100が移動する面(例えば、建物内の床面など)から予め定められた一定の高さの水平面を検出することができる一定の姿勢で、予め定められた位置に設置されているものとして説明を行う。そして、側方LRF20は、例えば、側方LRF20が設置された高さの水平面上の扇形の範囲にレーザビームを照射し、観測範囲内に存在する物体を検出する。
【0053】
また、天井LRF10および側方LRF20の設置高さと設置姿勢とは、天井LRF10および側方LRF20の観測範囲の座標と、自律移動ロボット100の移動可能領域の座標とが一致するように、事前に校正(調整)されているものとする。従って、自律移動ロボット100の移動範囲内において、ある一定の場所に固定され、側方LRF20が観測することができるある一定の高さの物体は、天井LRF10および側方LRF20によって同じ位置に固定された物体として観測される。
【0054】
なお、天井LRF10の設置高さおよび設置姿勢は、自律移動ロボット100の移動領域をグリッドマップで表したとき、天井LRF10が照射するレーザビームが、グリッドマップ内の各グリッドに少なくとも1点照射されるような高さおよび姿勢に設置することが望ましい。なお、自律移動ロボット100の移動領域を表すグリッドマップ内のグリッドの大きさは、天井LRF10によって検出しようとする物体の大きさに応じて決定される。例えば、床面に落ちている携帯電話のような小さな物体を検出しようとする場合には、想定される物体に応じてグリッドを小さくし、人を検出しようとする場合には想定される人の幅に応じてグリッドを大きくする。
【0055】
また、側方LRF20の設置姿勢は、側方LRF20の観測範囲内に検出しようとする物体が存在するとき、側方LRF20が照射するレーザビームが、物体に少なくとも1点以上照射されるような姿勢に設置することが望ましい。
【0056】
なお、1個の天井LRF10または側方LRF20によって自律移動ロボット100が移動する全ての移動領域を観測することができない場合は、別の位置に新たな天井LRF10または側方LRF20を設置し、複数の天井LRF10または側方LRF20によって検出される領域をそれぞれ融合することによって、自律移動ロボット100が移動する全ての移動領域を観測することもできる。
【0057】
移動可能領域抽出部30は、天井LRF10から入力された反射波の情報、および側方LRF20から入力された反射波の情報に基づいて、自律移動ロボット100の移動領域内の障害物を抽出する。そして、抽出した全ての障害物から移動体であると判断された障害物を除いた障害物の位置情報、すなわち、自律移動ロボット100の移動領域内に固定されている障害物の位置情報を、移動経路生成部40に出力する。
【0058】
距離情報取得部310は、天井LRF10から入力された反射波の情報に基づいて、天井LRF10とレーザビームを反射した物体との距離を算出する。そして、算出した距離の情報と、天井LRF10が照射したレーザビームのスキャン角度の情報とを、距離データとして障害物位置抽出部330に出力する。
【0059】
距離情報取得部320は、側方LRF20から入力された反射波の情報に基づいて、側方LRF20とレーザビームを反射した物体との距離を算出する。そして、算出した距離の情報と、側方LRF20が照射したレーザビームのスキャン角度の情報とを、距離データとして移動体位置抽出部340に出力する。
【0060】
移動体位置抽出部340は、距離情報取得部320から入力された距離データに含まれるレーザビームのスキャン角度の情報、および側方LRF20と物体との距離の情報に基づいて、側方LRF20が観測した物体の中心位置を表す2次元の座標(x,y)を算出する。例えば、距離情報取得部320から入力された距離データに含まれる側方LRF20と物体との距離の情報が予め設定された値以上変化する点の座標を、距離データに含まれるレーザビームのスキャン角度の情報に基づいてそれぞれ算出する。そして、算出した2つの座標を直線で結んだときの中心の座標を、物体の中心位置を表す2次元の座標(x,y)とする。
また、移動体位置抽出部340は、算出した物体の中心位置の座標を表すデータ(以下、「移動体候補データ」という)を、障害物位置抽出部330に出力する。
【0061】
障害物位置抽出部330は、距離情報取得部310から入力された距離データに含まれるレーザビームのスキャン角度の情報、および天井LRF10と物体との距離の情報に基づいて、天井LRF10が観測した物体の位置と高さの情報を表す3次元(x,y,z)の座標を算出する。例えば、天井LRF10を中心として天井LRF10の観測範囲を表す水平の平面を仮定する。そして、天井LRF10が観測した物体の水平平面における位置を座標(x,y)とし、天井LRF10が観測した物体の高さを座標(z)とすることにより、3次元の座標(x,y,z)を算出する。以下、3次元の座標を表すデータを、「測距点データ」という。
【0062】
なお、以下の説明においては、天井LRF10が設置されている建物内の床面における観測範囲を水平平面として仮定し、天井LRF10が観測した物体の高さ(z)は、建物内の床面からの高さの値であるものとして説明する。また、上述のように、天井LRF10の観測範囲の座標と、側方LRF20の観測範囲の座標とは、その座標が一致するように事前に校正(調整)されている。従って、移動体候補データに含まれる2次元の座標(x,y)の値と、測距点データに含まれる水平平面を表す座標(x,y)の値とは、自律移動ロボット100の移動領域内の座標を基準とした座標値となる。
【0063】
また、障害物位置抽出部330内のグリッド変換部331は、自律移動ロボット100の移動領域をグリッドマップに変換し、このグリッドマップ上に測距点データに表された物体を表す情報を登録する。また、障害物位置抽出部330内の移動体位置キャンセル部332は、測距点データに応じてグリッドマップに登録されている物体が移動体であるか否かを判定する。移動体位置キャンセル部332による物体が移動体であるか否かの判定は、移動体位置抽出部340から入力された移動体候補データと、以前に入力された移動体候補データとに基づいて行われる。そして、物体が移動体であると判定された場合には、グリッド変換部331によって登録されたグリッドマップ内の物体の登録を削除(キャンセル)する。さらに、障害物位置抽出部330内の移動体陰キャンセル部333によって移動体の陰を表す情報を削除(キャンセル)する。このように、障害物位置抽出部330は、移動体以外の物体が登録されたグリッドマップを、移動可能領域抽出部30が抽出した自律移動ロボット100の移動可能領域のグリッド情報(以下、「移動可能領域情報」という)として、移動経路生成部40に出力する。なお、障害物位置抽出部330内の各構成要素による詳細な処理内容については後述する。
【0064】
移動経路生成部40は、移動可能領域抽出部30から入力された移動可能領域情報に基づいて、自律移動ロボット100の移動経路を生成する。
【0065】
次に、本第1の実施形態の移動可能領域抽出部30によって抽出される移動可能領域情報について説明する。図3〜図9は、本第1の実施形態の移動可能領域抽出部30内の各構成要素において行われる処理の具体例を説明する図である。
【0066】
最初に、天井LRF10によって観測される物体と障害物位置抽出部330内のグリッド変換部331によってグリッドマップに登録される物体について説明する。図3は、本第1の実施形態の移動可能領域抽出部30において登録されるグリッドの種別を説明する図である。なお、上述のように、天井LRF10は、天井LRF10を頂点とした円錐状の範囲にレーザビームを照射することによって、観測範囲内に存在する物体を検出するが、以下の説明においては、説明を容易にするため、図3に示したような四角の範囲を天井LRF10の観測範囲とする。
【0067】
図3に示すように、天井LRF10が、自律移動ロボット100の移動領域内の物体を観測し、距離情報取得部310が、天井LRF10が観測した反射波の情報に基づいた距離データを障害物位置抽出部330に出力する。グリッド変換部331は、距離情報取得部310から入力された距離データに基づいて、自律移動ロボット100の移動領域のグリッドマップに、図3に示した床面領域、障害物領域、およびセンシング外領域をそれぞれ登録する。なお、図3に示した床面領域は、天井LRF10によって床面が観測された領域を表し、障害物領域は、天井LRF10によって床面以外が観測された領域を表し、センシング外領域は、天井LRF10によって何も観測されなかった領域を表す。このセンシング外領域は、天井LRF10からのレーザビームが照射されないことによって測距点データが存在しない、所謂、障害物などの陰となっている領域である。
【0068】
ここで、グリッド変換部331による各領域の登録方法の一例を説明する。距離情報取得部310は、天井LRF10が照射したレーザビームによって観測範囲内の複数の測距点データを得て、その測距点データをグリッド変換部331に出力する。そして、グリッド変換部331は、まず、各測距点データに含まれる高さ(z)の情報が、自律移動ロボット100が移動する床面の高さに対して予め設定された範囲内の高さ(z)の情報をもつ測距点データであるか否かを判別する。そして、床面の高さに対して予め設定された範囲内の高さ(z)の情報をもつ測距点データを床面データとし、床面の高さに対して予め設定された範囲外の高さ(z)の情報をもつ測距点データを非床面データとする。
【0069】
続いて、グリッド変換部331は、床面データの水平平面座標(x,y)の領域を、床面の領域(床面領域)とし、非床面データの水平平面座標(x,y)の領域を、障害物の位置(障害物領域)とする。そして、自律移動ロボット100の移動領域を変換したグリッドマップ内の床面領域に対応するグリッドに、床面であることを表す情報をマッピングする。また、障害物領域に対応するグリッドに、障害物であることを表す情報をマッピングする。
【0070】
続いて、グリッド変換部331は、グリッドマップ内に床面であることを表す情報および障害物であることを表す情報のいずれもマッピングされていないグリッドに、不確定の領域(センシング外領域)であることを表す情報をマッピングする。以下の説明においては、グリッドマップにおいて、床面であることを表す情報がマッピングされたグリッドを「床面グリッド」、障害物であることを表す情報がマッピングされたグリッドを「非床面グリッド」、センシング外領域であることを表す情報がマッピングされたグリッドを「未知グリッド」という。
【0071】
次に、障害物位置抽出部330内のグリッド変換部331による移動不可能領域の判定方法について説明する。図4は、本第1の実施形態の移動可能領域抽出部30における移動不可能領域の判定方法の例を説明する図である。図4(a)は、天井LRF10によって、固定された障害物である「机」と、移動体である「人」とが観測され、グリッド変換部331によって、天井LRF10に観測された「机」と「人」とが、マッピングされた場合を示している。そして、図4(a)に示すように、グリッドマップ内で「机」と「人」とが存在する位置は、それぞれ、非床面グリッド(障害物領域)であり、「机」と「人」とによって陰となる領域は、未知グリッド(センシング外領域)である。
【0072】
まず、グリッド変換部331は、マッピングされたそれぞれのグリッドの情報に応じて、障害物の有無を表す2値化の処理を行う。より具体的には、図4(b)に示すように、障害物がある非床面グリッドの値を“1”とし、障害物がない床面グリッドの値を“0”とする。また、グリッド変換部331は、未知グリッドも障害物がある領域とするため、未知グリッドの値を非床面グリッドと同じ“1”とする。これにより、障害物があるまたは障害物がある可能性のある領域が障害物の領域となる。
【0073】
続いて、グリッド変換部331は、それぞれのグリッドの値を確認して同じ値となっているグリッドをグループ化し、それぞれのグループを識別する情報であるラベルを付与するラベリングの処理を行う。より具体的には、例えば、あるグリッドの周辺に位置している8個のグリッドの値をそれぞれ確認し、同じ値となっているグリッドを同じグループとする。このような周辺に位置しているグリッドの値の確認を、グリッドマップ内の全てのグリッドに対して行う。そして、それぞれのグループ毎にグループを識別するためのラベルを付与する。図4(c)では、図4(a)において「机」が位置している部分のラベルを“1”とし、「人」が位置している部分のラベルを“2”としている。そして、グリッド変換部331は、ラベリングされたそれぞれのグループ毎に、外接する最小面積の長方形を、移動不可能領域と判定する。
【0074】
次に、移動体位置抽出部340によって移動体候補データを算出する方法について説明する。図5は、本第1の実施形態の移動可能領域抽出部30における移動体位置の算出方法の例を説明する図である。
【0075】
図5(a)に示すように、側方LRF20は、側方LRF20が設置された高さの水平面上の扇形の範囲にレーザビームを照射することによって、観測範囲内に存在する物体を観測する。そして、距離情報取得部320は、側方LRF20の観測点の情報に基づいて、複数の距離データを算出する。
【0076】
移動体位置抽出部340は、それぞれの距離データの差が予め設定された値以上である場合、その距離データを物体の角(エッジ)部分の距離データであると判断する。そして、移動体位置抽出部340は、それぞれの距離データに含まれるレーザビームのスキャン角度の情報、および側方LRF20と物体との距離の情報に基づいて、2つのエッジ部分の観測点の2次元の座標(x,y)を算出する。図5(b)では、観測点Aと観測点Bとが物体のエッジ部分の距離データであると判断され、2次元の座標(xA,yA)および座標(xB,yB)が算出された場合を示している。
【0077】
そして、移動体位置抽出部340は、算出した2つの座標を直線で結んだときの中心の位置を表す2次元の座標(x,y)を算出する。図5(b)では、点Cが物体の中心位置として算出され、その2次元の座標が座標(xC,yC)である場合を示している。この座標(xC,yC)が、移動体位置抽出部340が算出した移動体候補データとなる。
【0078】
なお、複数の側方LRF20によって同一の物体を観測した場合、それぞれの側方LRF20の距離データによって算出された中心位置を表す複数の2次元の座標(x,y)に基づいて、算出した中心位置を表す新たな2次元の座標(x,y)を、移動体位置抽出部340が算出した移動体候補データ(図5(c)の点D参照)とすることもできる。
【0079】
ここで、移動体位置のキャンセル方法について説明する前に、本第1の実施形態による経路生成システム1における天井LRF10と側方LRF20とによる物体の観測時間の関係について説明しておく。通常、各LRFが障害物を観測するタイミングを同期させるための制御は複雑な処理となるため、本第1の実施形態による経路生成システム1においても、天井LRF10と側方LRF20との物体の観測タイミングは、非同期である。また、側方LRF20が観測範囲内を1回観測する観測時間と、天井LRF10が観測範囲内を1回観測する観測時間とは異なる。これは、天井LRF10と側方LRF20との性能の差や、観測範囲に照射するレーザビームの数の差(天井LRF10は3次元で観測範囲内の物体を観測し、側方LRF20は2次元で観測範囲内の物体を観測している)などの要因にもよる。以下の説明においては、例えば、天井LRF10が観測範囲内を1回観測する時間を250[ms]、側方LRF20が観測範囲内を1回観測する時間を100[ms]というように、側方LRF20による観測時間(周期)は、天井LRF10による観測時間(周期)に比べて短いものとして説明する。従って、天井LRF10および側方LRF20の両方で同じ障害物を観測した場合、天井LRF10が物体を1回観測する間に、側方LRF20は、同じ物体を複数回観測することとなる。
【0080】
また、以下の説明においては、人を移動している障害物(移動体)として検出する場合を例として説明する。そして、人の幅を50[cm]と想定し、天井LRF10および側方LRF20は、10[cm]間隔で物体を観測する。また、移動体位置抽出部340は、人の位置のみを抽出する、すなわち、移動体位置抽出部340は、物体の幅が予め設定された人の幅(50[cm])と同等である移動体候補データを、人の候補データ(以下、「人候補位置」という)として障害物位置抽出部330に出力するものとして説明する。
【0081】
<第1の移動体位置キャンセル方法>
次に、障害物位置抽出部330内の移動体位置キャンセル部332による移動体の判別と、移動体位置のキャンセル方法について説明する。図6は、本第1の実施形態の移動可能領域抽出部30における移動体位置のキャンセル方法の第1の例を説明する図である。図6に示した第1の移動体位置キャンセル方法においては、天井LRF10による観測によって移動不可能領域と判定された領域が、移動体によるものであるかを、側方LRF20が観測した情報に基づいて判断し、移動体によるものであると判断された領域のラベルに基づいて移動不可能領域のグリッドをキャンセルする。図6(a)は、天井LRF10によって、移動体である「人」が観測され、グリッド変換部331によって、グリッドマップ内で「人」が存在する位置および「人」によって陰となる領域が移動不可能領域と判定されている場合を示している。また、側方LRF20が観測した情報に基づいて、移動体位置抽出部340が人候補位置を抽出している。
【0082】
本第1の移動体位置キャンセル方法において移動体位置キャンセル部332は、移動体位置抽出部340から入力された現在の移動体候補データと過去の移動体候補データとに基づいて、移動不可能領域が移動体によるものであるかを判断する。例えば、移動体位置キャンセル部332は、図6(a)に示すように、移動体位置抽出部340から入力された現在の人候補位置と過去の人候補位置(1つ過去の人候補位置および2つ過去の人候補位置)とが予め定められた距離以上変化している場合に、現在の人候補位置を含む移動不可能領域が移動体によるものであると判定する。そして、移動体によるものであると判定された移動不可能領域と同一のラベルを持つ全てのグリッドにマッピングされている情報を、障害物がない床面グリッドと同じ“0”とする。これにより、観測された移動体による移動不可能領域がキャンセルされ、自律移動ロボット100が移動することができる移動可能領域とすることができる。
【0083】
なお、図6(a)では、3つの人候補位置によって移動不可能領域が移動体によるものであるかを判断している。この移動不可能領域の判断に用いる人候補位置の数は、天井LRF10と側方LRF20との観測時間の差に応じて決定する。本第1の実施形態では、天井LRF10の観測周期が250[ms]、側方LRF20の観測周期が100[ms]であるため、天井LRF10と側方LRF20との観測タイミングは、例えば、図6(b)のような関係となる。このことから天井LRF10の観測周期内には、側方LRF20の観測タイミングが3回あるというように考えて、移動不可能領域が移動体によるものであるかの判断に用いる人候補位置の数を決定する。
【0084】
また、本第1の移動体位置キャンセル方法によって移動不可能領域をキャンセルする場合には、天井LRF10によって観測された現在の測距点データに基づいたグリッドマップのみではなく、過去のグリッドマップの移動不可能領域の情報も考慮して、観測された移動体による移動不可能領域をキャンセルすることが望ましい。例えば、過去のグリッドマップにおいては異なるラベルを持っていたグリッドが、現在のグリッドマップにおいては同一のラベルとなっているような場合には、過去のグリッドマップにおいても移動体によるものであると判定された移動不可能領域のみをキャンセルする。これにより、固定された障害物と人とが接近している場合に、本来キャンセルされるべきではない固定された障害物までもキャンセルしてしまうことを防止することができる。
【0085】
なお、本第1の移動体位置キャンセル方法においては、側方LRF20が観測した情報に基づいて移動体位置抽出部340が人候補位置を抽出し、抽出した人候補位置が予め定められた距離以上変化している場合に、人候補位置を含む移動不可能領域が移動体によるものであると判定している。移動不可能領域が移動体によるものであるか否かの判定方法は、側方LRF20が観測した情報に基づいて行う判定に限定されるものではなく、天井LRF10によって観測された移動不可能領域の情報を用いて、移動不可能領域が移動体によるものであるかを判定することもできる。例えば、天井LRF10による観測によって移動不可能領域と判定された現在のグリッドマップの移動不可能領域の情報と、過去のグリッドマップの移動不可能領域の情報と比較し、同じ障害物によるものと判断される移動不可能領域が、予め定められたグリッド(距離)以上変化している場合に、この移動不可能領域は移動体によるものであると判定することもできる。
【0086】
<第2の移動体位置キャンセル方法>
次に、障害物位置抽出部330内の移動体位置キャンセル部332による移動体位置のキャンセル方法の別の方法について説明する。図7は、本第1の実施形態の移動可能領域抽出部30における移動体位置のキャンセル方法の第2の例を説明する図である。図7に示した第2の移動体位置キャンセル方法においては、天井LRF10による観測によって移動不可能領域と判定され、側方LRF20が観測した情報に基づいて移動体によるものであると判断された移動不可能領域の内、予め想定される移動体の範囲内で同一のラベルを持つ移動不可能領域のグリッドをキャンセルする。
【0087】
本第2の移動体位置キャンセル方法は、例えば、図7(a)に示すように、天井LRF10によって、固定された障害物である「机」と、移動体である「人」とが観測され、観測された「机」と「人」とが接近している場合に有効な方法である。すなわち、観測された「机」と「人」とが接近している場合、図7(b)に示すように、グリッド変換部331によって、「机」と「人」とが同じグループの移動不可能領域と判定されてしまう。この状態で、上述の第1の移動体位置キャンセル方法によって同一のラベルを持つ全てのグリッドを単純にキャンセルしてしまうと、本来キャンセルされるべきではない固定された障害物である「机」までもがキャンセルされてしまうこととなる。
【0088】
そこで、本第2の移動体位置キャンセル方法では、移動体位置キャンセル部332が予め想定された移動体の大きさ、本第1の実施形態においては、想定した移動体である「人」の幅(50[cm])に基づいて、図7(c)に示した、移動不可能領域内のグリッドをキャンセルする大きさ(以下、「移動体キャンセル範囲」という)を決定する。図7(c)は、人の幅(距離)の半分の距離を半径rと設定し、移動体位置抽出部340から入力された人候補位置を中心として、設定した半径rの円の範囲を移動体キャンセル範囲とする。そして、移動体キャンセル範囲内のグリッドをキャンセルする例を示している。より具体的には、移動体位置キャンセル部332は、移動体位置抽出部340から入力された人候補位置の移動体候補データに含まれる物体の中心位置である2次元の座標p1(x1,y1)を中心とする。そして、下式(1)の関係が成り立つ移動不可能領域内のグリッド(図7(c)では、座標pn(xn,yn)のグリッド)を、移動体を表すグリッドであると判定する。
【0089】
【数1】

【0090】
本第2の移動体位置キャンセル方法において移動体位置キャンセル部332は、まず、上述の第1の移動体位置キャンセル方法と同様に、移動体位置抽出部340から入力された現在の人候補位置と過去の人候補位置(1つ過去の人候補位置および2つ過去の人候補位置)とが予め定められた距離以上変化している移動不可能領域を移動体によるものであると判定する。続いて、移動体位置キャンセル部332は、移動体によるものであると判定された移動不可能領域内で、移動体を表すグリッドであると判定された移動体キャンセル範囲内の全てのグリッドにマッピングされている情報を、障害物がない床面グリッドと同じ“0”とする(図7(d)参照)。これにより、図7(e)に示すように、移動体である「人」を表すグリッドの領域がキャンセルされ、自律移動ロボット100が移動することができる移動可能領域とすることができる。また、固定された障害物である「机」を表すグリッドの領域は、キャンセルされることなく、移動不可能領域のままである。
【0091】
なお、移動体位置キャンセル部332が予め想定された移動体の大きさに基づいて決定する移動体キャンセル範囲は、側方LRF20が物体を観測するときの位置検出精度、天井LRF10が物体を観測するときの位置検出精度、人の着衣の厚さを考慮した人の平均的肩幅などに応じて、設定する半径rを変更することができる。また、移動体が移動している速度に応じて、設定する半径rを動的に変更することもできる。例えば、移動体が移動している速度が速い場合には、設定する半径rを大きくすることによって、移動体キャンセル範囲を広くする。
【0092】
また、移動体キャンセル範囲は、半径rの円の範囲ではなく、移動体が移動している方向によって移動体キャンセル範囲の形を変えることもできる。例えば、移動体が、図7(c)の上方向に移動している場合には、移動体が移動している上方向と、その反対の下方向の距離を短くした楕円の範囲を、移動体キャンセル範囲とすることもできる。このように、移動体キャンセル範囲を移動体に合わせて変更することにより、本来キャンセルされるべきではない範囲までもがキャンセルされてしまうことを防止することができる。
【0093】
<移動体陰キャンセル方法>
次に、障害物位置抽出部330内の移動体陰キャンセル部333による移動体の陰の部分のキャンセル方法について説明する。図8は、本第1の実施形態の経路生成システム1において検出される移動体の例を説明する図である。経路生成システム1では、複数の天井LRF10および複数の側方LRF20(図示せず)によって、自律移動ロボット100が移動する移動領域内の障害物を検出している。そして、例えば、図8(a)に示すように、各天井LRF10の観測範囲は、互いに重複するようにそれぞれの天井LRF10が設置されている。これにより、自律移動ロボット100の移動領域内に存在する障害物などの陰となっている領域を少なくするようにしている。しかし、図8(a)に示すように、例えば、移動領域内の端の方に物体(図8(a)においては、「人」)が存在している場合には、移動領域内の「人」に一番近い天井LRF10でも全ての陰となる領域をなくすことはできない。
【0094】
すなわち、上述した第2の移動体位置キャンセル方法によって移動体による移動不可能領域をキャンセルした後でも、移動体の陰の領域が残ってしまうことがある。例えば、図8(b−1)に示すように、天井LRF10によって、移動体である「人」と、その「人の陰」が観測される場合を考える。なお、「人の陰」は、上述のように、センシング外領域で未知グリッドとされた領域である。そして、図8(b−2)に示すように、グリッド変換部331によって、「人」と「人の陰」とが同じグループの移動不可能領域として判定される。この状態で、上述の第2の移動体位置キャンセル方法によって移動体である「人」を表すグリッドの領域をキャンセルする。しかし、「人の陰」の領域が、移動体キャンセル範囲よりも大きい範囲であると、図8(b−3)に示すように、移動体キャンセル範囲外の「人の陰」の領域が、移動不可能領域として残ってしまう。
【0095】
そこで、本移動体陰キャンセル方法では、第2の移動体位置キャンセル方法によって移動体による移動不可能領域をキャンセルした後に残っている移動体の陰部の領域をキャンセルする。図9は、本第1の実施形態の移動可能領域抽出部30における移動体の陰部の領域のキャンセル方法の例を説明する図である。本移動体陰キャンセル方法においては、天井LRF10から入力された反射波の情報に基づいて算出された距離データに応じて、移動体の高さを算出し、算出した移動体の高さに基づいて移動体の陰部の長さを算出する。そして、移動体キャンセル範囲の中心位置、すなわち、移動体位置抽出部340から入力された人候補位置であって、第2の移動体位置キャンセル方法において移動体(人)が存在すると判定された位置(以下、「人位置」という)を変更しながら、移動不可能領域のキャンセルをさらに追加で行う。これにより、移動不可能領域として残っている移動体(人)の陰部の領域をキャンセルし、自律移動ロボット100が移動することができる移動可能領域とすることができる。
【0096】
本移動体陰キャンセル方法において移動体陰キャンセル部333は、以下の手順で移動不可能領域として残っている移動体(人)の陰部の領域をキャンセルする(図9参照)。
(手順1):移動体陰キャンセル部333は、人位置(図9(b)に示した座標(x2,y2))に最も近い天井LRF10の設置位置の座標(図9(b)に示した座標(x1,y1))を検索する。
(手順2):移動体陰キャンセル部333は、人位置と天井LRF10の位置との距離Lhを算出する。なお、距離Lhの算出は、例えば、下式(2)を用いて算出することができる。
【0097】
【数2】

【0098】
(手順3):移動体陰キャンセル部333は、人位置に存在する「人」の高さに基づいて、陰部の長さLsを算出する。なお、陰部の長さLsは、例えば、下式(3)を用いて算出することができる。
【0099】
【数3】

【0100】
上式(3)において、Hsは人位置に最も近い天井LRF10が設置されている高さ、Hhは人位置の測距点データに含まれる高さ(z)の情報を示す。なお、高さHhは、人位置のグリッドの周辺に位置するグリッド(例えば、人の幅(50[cm])の範囲内のグリッド)の測距点データに含まれる高さ(z)の情報において最も高い値(ピーク値)とすることもできる。
【0101】
(手順4):移動体陰キャンセル部333は、人位置に最も近い天井LRF10と人位置との単位ベクトルE(ex,ey)を算出する。なお、単位ベクトルE(ex,ey)は、例えば、下式(4)を用いて算出することができる。
【0102】
【数4】

【0103】
(手順5):移動体陰キャンセル部333は、現在の人位置(最初は、座標(x2,y2))から、人位置の座標を単位ベクトルE(ex,ey)の方向に、予め定められた距離Lだけ移動し、この移動した位置の座標を新たな人位置(例えば、図9(b)に示した座標ps(xs,ys))とする。なお、新たな人位置の座標ps(xs,ys)の移動は、例えば、下式(5)を用いて算出することができる。
【0104】
【数5】

【0105】
そして、新たな人位置を中心とした移動体キャンセル範囲内に存在する未知グリッド(図9(c)では、座標pn(xn,yn)のグリッド)にマッピングされている情報を、障害物がない床面グリッドと同じ“0”とする。これにより、新たな人位置を中心とし、設定した半径rの円、すなわち、下式(6)の関係が成り立つ移動不可能領域内のグリッドを、自律移動ロボット100が移動することができる移動可能領域とすることができる(図9(c)参照)。
【0106】
【数6】

【0107】
以降、上述の手順5を繰り返し、新たな人位置の座標ps(xs,ys)によって、陰部の長さLsまでに存在する未知グリッドを順次、床面グリッドに変更する。なお、手順5の繰り返しは、例えば、最初に、本移動体陰キャンセルを行う前の人位置と天井LRF10の位置の距離Lhを距離L1とする。そして、距離Lを、例えば、100[mm]とした場合、下式(7)のように、順次、距離L1を更新しながら、距離L1が、下式(8)で表される距離L2となるまで、手順5を繰り返す。
【0108】
【数7】

【0109】
【数8】

【0110】
なお、本第1の実施形態の経路生成システム1では、上述のように、天井LRF10の設置位置は、自律移動ロボット100の移動領域内で事前に校正(調整)されているため、本移動体陰キャンセル方法における、例えば、人位置に最も近い天井LRF10が設置されている高さHsや、設置位置の座標(x1,y1)などの値は、全て自律移動ロボット100の移動領域内の座標を基準とした値である。
【0111】
なお、上述した第1の移動体位置キャンセル方法において、過去のグリッドマップの移動不可能領域の情報も考慮した上で、移動体によるものであると判定された同一のラベルを持つ全ての移動不可能領域をキャンセルした場合には、本移動体陰キャンセル方法による移動体の陰の部分のキャンセルを行わないようにすることもできる。
【0112】
<移動経路生成処理>
次に、本第1の実施形態の経路生成システム1のおける自律移動ロボット100の移動経路の生成方法について説明する。図10は、本第1の実施形態の経路生成システム1における移動経路生成処理の処理手順を示したフローチャートである。なお、天井LRF10は経路生成システム1の稼働に際して事前に所定の高さに設置され、天井LRF10の設置高さと、設置姿勢とは、事前に校正(調整)されているものとして説明を行う。また、図10に示した移動経路生成の処理手順においては、図8に示したように、複数の天井LRF10から入力された測距点データをグリッド変換部331がマージして、自律移動ロボット100の移動領域の全てがグリッドマップに変換されている場合の処理手順について説明する。
【0113】
経路生成システム1が稼働すると、まず、ステップS100において、距離情報取得部310は、天井LRF10がレーザビームを照射して観測範囲内の障害物をスキャンした情報を取得し、障害物の距離データを障害物位置抽出部330に出力する。また、距離情報取得部320は、側方LRF20がレーザビームを照射して観測範囲内の障害物をスキャンした情報を取得し、障害物の距離データを移動体位置抽出部340に出力する。
【0114】
続いて、ステップS200において、障害物位置抽出部330は、距離情報取得部310から入力された距離データに基づいて、障害物の測距点データを算出する。そして、障害物位置抽出部330内のグリッド変換部331は、自律移動ロボット100の移動領域をグリッドマップに、測距点データで表された物体(障害物)の位置の情報を登録する。
【0115】
続いて、ステップS300において、移動体位置抽出部340は、距離情報取得部320から入力された距離データに基づいて、移動体候補データを算出し、障害物位置抽出部330に出力する。そして、ステップS400において、障害物位置抽出部330内の移動体位置キャンセル部332は、移動体位置抽出部340から入力された移動体候補データに基づいて、移動している移動体を判定する。
【0116】
続いて、ステップS500において、移動体位置キャンセル部332は、判定した移動体による移動不可能領域のグリッドをキャンセルする。そして、ステップS600において、障害物位置抽出部330内の移動体陰キャンセル部333は、判定した移動体の陰部の移動不可能領域のグリッドをキャンセルする。
【0117】
続いて、ステップS700において、障害物位置抽出部330は、全ての移動体による移動不可能領域のキャンセルが完了したか否かを判断する。全ての移動体による移動不可能領域のキャンセルが完了した場合は、ステップS800に進む。また、全ての移動体による移動不可能領域のキャンセルが完了していない場合は、ステップS300に戻って、距離情報取得部320から入力された距離データに基づいた移動体候補データの算出、移動している移動体の判定、および移動体による移動不可能領域のキャンセルを繰り返す。
【0118】
続いて、ステップS800において、障害物位置抽出部330は、移動体による移動不可能領域のグリッドをキャンセルした移動可能領域情報(グリッドマップ)を生成し、生成した移動可能領域情報を移動経路生成部40に出力する。
【0119】
続いて、ステップS900において、移動経路生成部40は、障害物位置抽出部330から入力された移動可能領域情報に基づいて、自律移動ロボット100の移動経路を生成する。なお、本第1の実施形態の経路生成システム1において自律移動ロボット100の移動経路を生成する方法は、例えば、RRT−connectなど、従来から用いられている移動経路の生成方法を用いることとする。また、例えば、自律移動ロボット100の現在の位置と移動先の目的地とを直線で結んだ経路を移動経路とする。ここで、移動経路上に障害物が存在する場合には、障害物の手前で障害物を回避することができる安全な地点を算出し、この算出した地点から移動可能領域が広い方向に障害物を回避する経路を生成する。そして、障害物の回避が完了した地点と目的地とを再び直線で結んだ経路を、新たな移動経路とする。さらに、新たな移動経路上に障害物が存在する場合には、上述のように障害物を回避することができる経路を生成する。このような移動経路の生成を繰り返して、最終的な移動経路を生成する。
【0120】
上記に述べたように、本第1の実施形態の経路生成システム1によれば、側方LRF20が観測した予め定められた高さの位置の物体の情報に基づいて、移動可能領域抽出部30が、自律移動ロボット100の移動範囲内で移動している障害物(移動体)を検出することができる。そして、移動体による移動不可能領域の情報をキャンセルすることができる。これにより、自律移動ロボット100が移動するための移動経路を生成する際に、目的地まで効率良く移動することができる移動経路を生成することができる。
【0121】
なお、生成した移動経路の周辺には、人などの移動体が存在する場合がある。このような場合は、移動体の移動速度や移動方向を予測して、移動経路を生成するための移動可能領域情報を生成することが望ましい。例えば、移動体位置抽出部340から入力された現在の移動体候補データと過去の移動体候補データとに基づいて、移動体が移動している速度を算出し、算出した移動速度vが予め定められた移動速度vaよりも速い場合は、自律移動ロボット100が移動体の位置まで移動する間に生成した移動経路上から離れると判断し、移動体による移動不可能領域の情報をキャンセルする。また、算出した移動速度vが予め定められた移動速度vaよりも遅い場合には、自律移動ロボット100が移動体の位置まで移動する間に生成した移動経路の周辺に滞留(固定)すると判断し、移動体による移動不可能領域の情報のキャンセルを行わない。
【0122】
図11は、本第1の実施形態の経路生成システム1における移動体のキャンセル処理を説明する図である。図11では、生成される自律移動ロボット100の移動経路の周辺に、移動体である「人」が存在している。そして、それぞれの「人」の移動速度は、移動速度v1〜v4である。移動可能領域抽出部30は、それぞれの移動体の移動速度v1〜v4と予め定められた移動速度vaとを比較し、移動体による移動不可能領域の情報をキャンセルするか否かを判断する。図11では、移動速度v1(v1<Va)である移動体と、移動速度v2(v2<Va)である移動体による移動不可能領域をキャンセルせず、移動速度v3(v3>Va)である移動体と、移動速度v4(v4>Va)である移動体による移動不可能領域をキャンセルする場合を表している。
【0123】
なお、予め定める移動速度vaは、移動体の位置に移動するまでの自律移動ロボット100の速度や、自律移動ロボット100と移動体との距離に基づいて定めることができる。また、自律移動ロボット100の移動経路の周辺に移動体が滞留(固定)していると判断した場合において、移動体が滞留している時間を計測し、計測した滞留時間に基づいて移動不可能領域の情報をキャンセルするか否かを判断することも考えられる。
【0124】
<第2の実施形態>
次に、本発明の別の実施形態について説明する。図12は、本発明の第2の実施形態による経路生成システムの概略構成を示したブロック図である。図12において経路生成システム2は、天井LRF10と、移動可能領域抽出部31と、移動経路生成部40とを備えている。移動可能領域抽出部31は、天井LRF10に対応した距離情報取得部310と、天井LRF10に対応した光量情報取得部370と、障害物位置抽出部330と、移動体位置抽出部380とを備えている。また、障害物位置抽出部330は、グリッド変換部331と、移動体位置キャンセル部332と、移動体陰キャンセル部333とを備えている。
【0125】
なお、図12に示した経路生成システム2は、図1に示した経路生成システム1に備えた側方LRF20が削除されている。さらに、図2に示した経路生成システム1に備えた移動可能領域抽出部30が移動可能領域抽出部31に変更されているが、より詳細には、距離情報取得部320および移動体位置抽出部340が、光量情報取得部370および移動体位置抽出部380に変更されているのみである。従って、以下の説明においては、図2に示した経路生成システム1の構成要素と同様の構成要素には、同一の符号を付与して説明を省略する。
【0126】
経路生成システム2は、天井LRF10によって自律移動ロボットが移動する移動領域内の障害物と、移動領域内に存在する移動体(例えば、人や他の自律移動ロボットなどの移動体、および自律移動ロボット100自身)を検出する。そして、経路生成システム2は、天井LRF10が検出した全ての障害物の領域から、検出した移動体(移動している障害物)の領域を除いた領域を、自律移動ロボット100の移動可能領域として抽出し、抽出した移動可能領域の情報に基づいて、自律移動ロボット100の移動経路を生成する。
【0127】
移動可能領域抽出部31は、天井LRF10から入力された反射波の情報に基づいて、自律移動ロボット100の移動領域内の障害物を抽出する。そして、抽出した全ての障害物から移動体であると判断された障害物を除いた障害物の位置情報、すなわち、自律移動ロボット100の移動領域内に固定されている障害物の位置情報を、移動経路生成部40に出力する。
【0128】
光量情報取得部370は、天井LRF10から入力された反射波の情報に基づいて、レーザビームを反射した物体による反射波の光量を算出する。そして、算出した反射波の光量の情報と、天井LRF10と物体との距離の情報と、天井LRF10が照射したレーザビームのスキャン角度の情報とを、光量データとして移動体位置抽出部380に出力する。
【0129】
移動体位置抽出部380は、光量情報取得部370から入力された光量データに含まれる反射波の光量の情報およびレーザビームのスキャン角度の情報に基づいて、天井LRF10が観測した物体の形状が、自律移動ロボット100の移動領域内を移動する予め想定された移動体の形状であるか否かを判定する。
【0130】
ここで、予め想定された移動体が「人」である場合における移動体の判定方法の一例について説明する。図13は、本第2の実施形態の移動体位置抽出部380における移動体の判定方法の例を説明する図である。天井LRF10から入力された反射波の光量によって、例えば、図13(a)に示したような移動体(人)などの形状を濃淡の画像で表すことができる。移動体位置抽出部380は、光量情報取得部370から入力された光量データ(濃淡画像)が、予め想定される移動体(人)の光量データであるか否かを判定する。なお、本第2の実施形態の経路生成システム2において予め想定される移動体(人)か否かを判定する方法は、従来から用いられているパターンマッチングやテンプレートマッチングの方法を用いることとする。このときのテンプレートは、テンプレートとなる移動体(人)の位置の水平平面座標(x,y)と高さ、およびレーザビームスキャンの角度に応じて作成しても良い。あるいは、光量情報取得部370から入力される光量データの代わりに、距離情報取得部310が出力する距離データを利用して移動体(人)を検出しても良い。その場合、例えば、図13(b)に示したように、「人」の肩付近から頭の先までの形状が認識される。そして、この場合のテンプレートは、光量データではなく距離データによって作成される。
【0131】
移動体位置抽出部380は、光量情報取得部370から入力された光量データが、予め想定される移動体(人)の光量データであると判定された場合に、移動体の中心位置を表す2次元の座標(x,y)を算出し、算出した移動体の中心位置の座標を表す移動体候補データを、障害物位置抽出部330に出力する。例えば、図13(b)においては、頭の先の位置の座標を表すデータを、移動体候補データとして障害物位置抽出部330に出力する。
【0132】
障害物位置抽出部330は、距離情報取得部310から入力された距離データに基づいて、測距点データを算出し、障害物位置抽出部330内の移動体位置キャンセル部332は、移動体位置抽出部380から入力された移動体候補データと、以前に入力された移動体候補データとに基づいて、グリッドマップに登録されている物体が移動体であるか否かを判定する。そして、障害物位置抽出部330は、物体が移動体であると判定された場合には、グリッド変換部331によって登録されたグリッドマップ内の物体の登録の削除(キャンセル)、および移動体陰キャンセル部333による移動体の陰を表す情報の削除(キャンセル)を行った移動可能領域情報を、移動可能領域抽出部31が抽出した移動可能領域情報として移動経路生成部40に出力する。
【0133】
そして、移動経路生成部40は、移動可能領域抽出部31から入力された移動可能領域情報に基づいて、自律移動ロボット100の移動経路を生成する。
【0134】
上記に述べたように、本第2の実施形態の経路生成システム2によれば、天井LRF10が観測した予め想定される移動体の情報に基づいて、移動可能領域抽出部31が、自律移動ロボット100の移動範囲内で移動している障害物(移動体)を検出することができる。そして、移動体による移動不可能領域の情報をキャンセルすることができる。これにより、自律移動ロボット100が移動するための移動経路を生成する際に、目的地まで効率良く移動することができる移動経路を生成することができる。
【0135】
上記に述べたとおり、本発明を実施するための形態によれば、測距センサを自律移動ロボット100の移動領域内に設置することによって、人や他の自律移動ロボットなど、自律移動ロボット100の移動経路上から移動する移動体を障害物として抽出することなく、自律移動ロボット100の移動において障害となる障害物を検出することができる。これにより、自律移動ロボット100が目的地まで効率良く移動することができる移動経路を生成することができる。
【0136】
また、本発明の移動可能領域抽出部30または移動可能領域抽出部31によって抽出された移動可能領域情報のみで移動経路を生成することができる。これにより、自律移動ロボット100自身に障害物を検出する装置を取り付けなくても自律移動ロボット100が安全に移動することができる。
【0137】
なお、本実施形態においては、移動している障害物(移動体)として「人」を検出する場合を例として説明したが、移動体は、本発明を実施するための形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において様々な移動体を想定して検出することができる。
【0138】
また、本実施形態においては、側方LRF20を予め定めた1つの高さの位置に設置した場合について説明したが、側方LRF20を設置する高さは、本発明を実施するための形態に限定されるものではなく、側方LRF20を同じ場所に複数設置することによって、複数の高さの障害物を検出することによって、様々な高さの移動体を検出することができる。また、本実施形態においては、「人」が予め想定される移動体である場合について説明したが、予め想定される移動体は、本発明を実施するための形態に限定されるものではなく、予め想定される移動体の形状を、様々な移動体に対応させて複数設定することによって、様々な移動体を検出することができる。
【0139】
また、本実施形態においては、自律移動ロボット100自身も障害物として認識され、障害物位置抽出部330が、自律移動ロボット100以外の移動体と同様に判定することによって、自律移動ロボット100自身による移動不可能領域も削除(キャンセル)される。この自律移動ロボット100自身による移動不可能領域を削除(キャンセル)する方法は、本発明を実施するための形態に限定されるものではなく、自律移動ロボット100自身を直接的に判別することによって、自律移動ロボット100自身による移動不可能領域を容易に削除(キャンセル)する方法も考えられる。例えば、自律移動ロボット100自身に備えているジャイロセンサなどの各種センサによる自律移動ロボット100の自己位置(オドメトリ)情報や、GPS(Global Positioning System)の情報などを経路生成システムに通知することによって、経路生成システムが自律移動ロボット100自身の位置情報を算出し、経路生成システムが算出した自律移動ロボット100自身の位置情報に基づいて移動不可能領域を削除(キャンセル)することもできる。また、例えば、自律移動ロボット100の頭の先に、レーザビームを高い効率で反射する反射シートなどを貼り付けることによって、レーザビームの反射波の光量から自律移動ロボット100自身とその他の移動体とを区別し、経路生成システムが区別した自律移動ロボット100自身による移動不可能領域を削除(キャンセル)することもできる。
【0140】
また、本実施形態においては、移動可能領域抽出部30または移動可能領域抽出部31が抽出する移動可能領域情報を、天井LRF10が観測範囲内を観測する毎に移動経路生成部40に出力する場合について説明したが、移動可能領域情報が変更された情報、すなわち、移動可能領域情報の差分情報を出力するようにすることもできる。この場合、例えば、移動可能領域抽出部30が前回移動経路生成部40に出力した移動可能領域情報を保持し、保持している移動可能領域情報と今回移動経路生成部40に出力する予定の移動可能領域情報との差分のみを移動経路生成部40に出力する。これにより、例えば、移動可能領域抽出部30と移動経路生成部40とが通信によって移動可能領域情報の受け渡しを行っている場合において、移動可能領域抽出部30と移動経路生成部40との間の通信効率を向上することができる。
【0141】
なお、本実施形態においては、測距センサがレーザレンジファインダである場合について説明したが、その他の測距センサを用いても同様の移動可能領域を抽出することができる。例えば、ステレオカメラなど、画像データから物体を検出することによって、移動可能領域情報を移動経路生成部40に出力することもできる。
【0142】
なお、図2に示した移動可能領域抽出部30の各構成要素による処理、図10に示した経路生成システム1の各処理ステップ、または、図12に示した移動可能領域抽出部31の各構成要素による処理を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、経路生成システム1における移動可能領域抽出部30、または経路生成システム2における移動可能領域抽出部31に係る上述した種々の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0143】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0144】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。
【符号の説明】
【0145】
1,2・・・経路生成システム
10・・・天井LRF(第1の距離センサ、距離センサ)
20・・・側方LRF(第2の距離センサ)
30・・・移動可能領域抽出部(移動可能領域抽出装置)
310・・・距離情報取得部(第1の障害物検出手段)
320・・・距離情報取得部(第2の障害物検出手段)
330・・・障害物位置抽出部(第1の障害物検出手段,障害物領域抽出手段)
331・・・グリッド変換部(第1の障害物検出手段)
332・・・移動体位置キャンセル部(障害物領域抽出手段)
333・・・移動体陰キャンセル部(障害物領域抽出手段)
340・・・移動体位置抽出部(第2の障害物検出手段)
31・・・移動可能領域抽出部(移動可能領域抽出装置)
370・・・光量情報取得部(形状検出手段)
380・・・移動体位置抽出部(形状検出手段)
40・・・移動経路生成部(経路生成手段)
100・・・自律移動ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的に移動する移動体が移動する空間内の予め定められた第1の高さから前記空間の下方を観測するように設置された第1の距離センサと、前記空間内の予め定められた前記第1の高さより低い第2の高さから前記空間の側方を観測するように設置された第2の距離センサと、によって前記移動体が移動する前記空間内に存在する障害物を検出し、該検出した障害物の領域の情報に基づいて、前記移動体が移動することができる移動可能領域の情報を抽出する移動可能領域抽出装置において、
前記第1の距離センサが観測した距離の情報に基づいて、前記障害物の領域を表す第1の障害物領域を検出する第1の障害物検出手段と、
前記第2の距離センサが観測した距離の情報に基づいて、前記障害物の領域を表す第2の障害物領域を検出する第2の障害物検出手段と、
前記第2の障害物領域に基づいて継続的に移動している前記障害物を移動物として検出し、前記第1の障害物領域から、該検出した前記移動物の領域を表す前記第1の障害物領域を除いた領域を、前記移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する障害物領域抽出手段と、
を備える、
ことを特徴とする移動可能領域抽出装置。
【請求項2】
前記第2の障害物検出手段は、
前記第2の距離センサが前記障害物を観測したときの前記距離の情報に基づいて、前記障害物の位置を表す障害物位置を抽出し、
前記障害物領域抽出手段は、
前記第2の障害物検出手段が抽出した前記障害物位置と、以前に前記第2の障害物検出手段が抽出した過去の障害物位置とに基づいて前記移動物を検出し、該検出した移動物の位置を表す前記障害物位置を含む前記第1の障害物領域を除いた領域を、前記移動可能領域とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の移動可能領域抽出装置。
【請求項3】
前記第2の障害物検出手段は、
前記第2の距離センサが前記障害物を観測したときの前記距離の情報に基づいて、前記障害物の位置を表す障害物位置を抽出し、
前記障害物領域抽出手段は、
前記第2の障害物検出手段が抽出した前記障害物位置と、以前に前記第2の障害物検出手段が抽出した過去の障害物位置とに基づいて前記移動物を検出し、該検出した移動物の位置を表す前記障害物位置を含む予め定められた範囲の前記第1の障害物領域を除いた領域を、前記移動可能領域とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の移動可能領域抽出装置。
【請求項4】
前記障害物領域抽出手段は、
前記移動物の位置を表す前記障害物位置に最も近い位置に設置されている前記第1の距離センサを検索し、
前記移動物の障害物位置と該検索した前記第1の距離センサとの距離、および該検索した前記第1の距離センサが前記移動物を観測したときの前記距離の情報に含まれる高さの情報に基づいて、該移動物によって前記第1の距離センサが観測することができない陰の領域の長さを算出し、
該移動物の障害物位置から該算出した陰の領域の長さだけ離れた位置までの間、前記予め定められた範囲を、該移動物の障害物位置と該検索した前記第1の距離センサの設置位置とを結んだ延長線上で移動し、前記予め定められた範囲の前記第1の障害物領域を除いた領域を、前記移動可能領域とする、
ことを特徴とする請求項3に記載の移動可能領域抽出装置。
【請求項5】
前記障害物領域抽出手段は、
前記第2の障害物検出手段が抽出した前記障害物位置が、以前に前記第2の障害物検出手段が抽出した過去の障害物位置から予め定められた閾値以上変化している場合に、前記障害物位置に対応する前記障害物が前記移動物であると判定する、
ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1の項に記載の移動可能領域抽出装置。
【請求項6】
前記移動体が移動する空間が建物内にあるとき、
前記第1の距離センサは、
前記建物内の天井に予め定められた間隔で複数設置され、
前記第1の障害物検出手段は、
複数設置されたそれぞれの前記第1の距離センサの観測範囲を融合した空間における距離の情報に基づいて、前記第1の障害物領域を検出する、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1の項に記載の移動可能領域抽出装置。
【請求項7】
前記第2の距離センサは、
前記天井と床面との間の予め定められた高さで、前記建物内の床面に平行な観測範囲を観測するように、予め定められた間隔で複数設置され、
前記第2の障害物検出手段は、
複数設置されたそれぞれの前記第2の距離センサの観測範囲を融合した平面における距離の情報に基づいて、前記第2の障害物領域を検出する、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1の項に記載の移動可能領域抽出装置。
【請求項8】
前記障害物領域抽出手段は、
抽出した移動可能領域に基づいて、前記移動体が移動する経路を生成する経路生成手段、
をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1の項に記載の移動可能領域抽出装置。
【請求項9】
自律的に移動する移動体が移動する空間内の予め定められた高さから前記空間の下方を観測するように設置された距離センサと、によって前記移動体が移動する前記空間内に存在する障害物を検出し、該検出した障害物の領域の情報に基づいて、前記移動体が移動することができる移動可能領域の情報を抽出する移動可能領域抽出装置において、
前記距離センサが観測した距離の情報に基づいて、前記障害物の領域を表す障害物領域を検出する障害物検出手段と、
前記距離センサが障害物を観測したときの反射波の光量の情報に基づいて、前記障害物の形状を検出する形状検出手段と、
前記形状検出手段によって検出した障害物の形状と予め定められた物体の形状とを比較し、該障害物の形状が前記予め定められた物体の形状と同等である場合に、前記距離センサが該障害物を観測したときの前記距離の情報に基づいて、該障害物の継続的な移動を検出し、前記障害物領域から、該検出した継続的に移動している前記障害物の領域を表す前記障害物領域を除いた領域を、前記移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する障害物領域抽出手段と、
を備える、
ことを特徴とする移動可能領域抽出装置。
【請求項10】
自律的に移動する移動体が移動する空間内の予め定められた第1の高さから前記空間の下方を観測するように設置された第1の距離センサと、前記空間内の予め定められた前記第1の高さより低い第2の高さから前記空間の側方を観測するように設置された第2の距離センサと、によって前記移動体が移動する前記空間内に存在する障害物を検出し、該検出した障害物の領域の情報に基づいて、前記移動体が移動することができる移動可能領域の情報を抽出する移動可能領域抽出方法において、
前記第1の距離センサが観測した距離の情報に基づいて、前記障害物の領域を表す第1の障害物領域を検出する第1の障害物検出手順と、
前記第2の距離センサが観測した距離の情報に基づいて、前記障害物の領域を表す第2の障害物領域を検出する第2の障害物検出手順と、
前記第2の障害物領域に基づいて継続的に移動している前記障害物を移動物として検出し、前記第1の障害物領域から、該検出した前記移動物の領域を表す前記第1の障害物領域を除いた領域を、前記移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する障害物領域抽出手順と、
を含む、
ことを特徴とする移動可能領域抽出方法。
【請求項11】
自律的に移動する移動体が移動する空間内の予め定められた高さから前記空間の下方を観測するように設置された距離センサと、によって前記移動体が移動する前記空間内に存在する障害物を検出し、該検出した障害物の領域の情報に基づいて、前記移動体が移動することができる移動可能領域の情報を抽出する移動可能領域抽出方法において、
前記距離センサが観測した距離の情報に基づいて、前記障害物の領域を表す障害物領域を検出する障害物検出手順と、
前記距離センサが障害物を観測したときの反射波の光量の情報に基づいて、前記障害物の形状を検出する形状検出手順と、
前記形状検出手順によって検出した障害物の形状と予め定められた物体の形状とを比較し、該障害物の形状が前記予め定められた物体の形状と同等である場合に、前記距離センサが該障害物を観測したときの前記距離の情報に基づいて、該障害物の継続的な移動を検出し、前記障害物領域から、該検出した継続的に移動している前記障害物の領域を表す前記障害物領域を除いた領域を、前記移動体が移動することができる移動可能領域として抽出する障害物領域抽出手順と、
を含む、
ことを特徴とする移動可能領域抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−253377(P2011−253377A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127122(P2010−127122)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】