説明

移動装置

【課題】減圧下の処理室内で比較的高温となる処理が行われるような場合でも伝熱の影響を受けずに、処理室内に配置される部品を精度よく移動でき、構成部品組付の作業性が良い移動装置を提供する。
【解決手段】移動装置SMは、Z軸方向に所定間隔を存して配置された固定プレート5と可動枠6とを備える。固定プレートの開口51に嵌着された真空フランジ52を介して、処理室11を画成する外壁面に固定プレートが着脱自在に装着される。可動枠にアクチュエータ7〜7が設けられ、各アクチュエータのZ軸方向にのびる連結ロッド77で固定プレートと可動枠とが連結され、各アクチュエータの作動によりX軸方向、Y軸方向及びθ方向の少なくとも一方向に、固定プレートに対して可動枠が相対移動自在である。可動プレートに立設された複数本の保持ロッド8が、上記外壁面の透孔15に設けたシール部品16を介して処理室内に突出してマスクMを保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動装置に関し、より詳しくは、減圧下の処理室内で当該処理室内に設置される所定の部品を保持し、この状態でX方向、Y方向及びθ方向の少なくとも一方向にこの部品を移動し得るものに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置や半導体デバイスの製造工程においては、例えば、処理すべき基板に対し所定の薄膜を成膜する工程があり、この成膜工程においては、基板面内の特定範囲のみに成膜範囲を制限して成膜することがある。従来、蒸発源等を備えた処理室内にマスクを配置しておき、このマスクの下方に設置された基板に対してマスクを制度よく位置決め(アライメント)して成膜し得るものは例えば特許文献1で知られている。
【0003】
上記従来例のものは、処理室内に固定のマスクステージと、このマスクステージに保持されたマスクに対向して基板を保持する基板ステージと、基板とマスクとの相対位置を撮像する撮像手段とを備える。基板ステージは、第1の駆動装置によりX、Y方向に駆動される第1の移動ステージと、この第1の移動ステージ上でZ方向案内装置に支持された第2の移動ステージとから構成されている。第2の移動ステージは、鋼球を介してステージ支持部で支持され、第2の駆動装置の駆動によりZ方向に移動し、基板をマスクから離間させた状態で、撮像手段の撮像データを基に位置合わせを行った後、基板WをマスクMに密着させて成膜が行われる。
【0004】
ところで、上記成膜を行う真空処理装置としては、蒸着装置やスパッタリング装置等のPVD装置の他、CVD装置も用いられることがある。CVD装置では、成膜に基板を加熱したり、プラズマで原料ガスを分解したりするため、処理中に処理室内の温度が比較的高温となり易い。このため、上記従来例のものを処理室内に設けていると、動作不良が多発したり、または、熱の影響を受けて精密なアライメントが困難になる等の不具合が生じる。そこで、処理室の外側に、移動装置たるXYθステージを組み付け、このXYθスージに、処理室を画成する外壁面に形成した透孔に設けたシール部品を介して、当該処理室内まで突出するように支持ロッドの複数本を立設し、これらの支持ロッド(または各支持ロッド先端に連結したホルダ)でマスクを保持させることが考えられる。
【0005】
上記XYθステージとして、固定配置されるベースプレートと、このベースプレートの上下方向に重ね合わせて配置される可動プレートとから構成されるものが一般に使用されている。そして、ベースプレートに、直動モータや案内レール等を有する3個または4個のアクチュエータを独立して設け、各アクチュエータを単独または同期して駆動することでベースプレートに対して可動プレートが、X方向、Y方向及びθ方向のいずれか一方向に相対移動されるようになっている。このようなXYθステージでは、故障時や使用頻度に応じてアクチュエータの構成部品を交換することが必要となる場合があるが、交換後にアクチュエータ相互の位置関係に誤差が生じると、XYθステージの動作精度が低下する。
【0006】
このため、アクチュエータをベースプレートに精度よく位置決めして再組付けすることが要求される。然し、上述の真空処理装置では、XYθステージの周辺にもガス管や水冷管等の複数の部品が設けられていることが多いので、固定のベースプレートに対してアクチュエータを組み付けする作業が面倒となる場合が多い。また、処理室外側に基板に対してマスクを相対移動させる機構を設ける場合でも、外壁面からの伝熱の影響を受けたのでは、ベースプレートや可動プレートが熱膨張して、動作精度が低下する虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−206980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、減圧下の処理室内で比較的高温となる処理が行われるような場合でも伝熱の影響を受けずに、処理室内に配置される部品を精度よく移動でき、しかも、構成部品組付の作業性が良い移動装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、互いに直交する同一平面内の2方向をX軸方向及びY軸方向とし、その面内の回転方向をθ方向として、処理室内に設置される所定の部品を保持し、この状態でX軸方向、Y軸方向及びθ方向の少なくとも一方向にこの部品を移動する移動装置であって、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向とし、Z軸方向に所定間隔を存して配置された固定プレートと可動枠とを備え、可動枠に少なくとも3個のアクチュエータが設けられ、これら各アクチュエータのZ軸方向にのびる連結ロッドで固定プレートと可動枠とが相互に連結され、各アクチュエータの作動によりX軸方向、Y軸方向及びθ方向の少なくとも一方向に、固定プレートに対して可動枠が相対移動自在であると共に、この可動プレートに複数本の保持ロッドが立設され、この保持ロッドが、上記外壁面に形成した透孔に設けたシール部品を介して処理室内に突出させて上記部品を保持するように構成したことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、各アクチュエータを単独または同期して駆動することで固定プレートに対して可動プレートが、X軸方向、Y軸方向及びθ方向のいずれか一方向に相対移動され、これに伴い、保持ロッドで保持された部品が減圧下の処理室内で移動される。ここで、本発明では、従来例とは異なり、可動枠にアクチュエータを設けてこのアクチュエータの構成部品たる連結ロッドで固定プレートと可動枠とを連結した構成を採用したことで、アクチュエータの交換時に、例えば可動枠ごと取り外して別の場所でその交換作業を行い得る。このため、アクチュエータをベースプレートに精度よくかつ確実に位置決めして再組付するときの作業性は上記従来例のものより向上する。しかも、可動枠を用いて軽量化を図ることで、固定プレートに取り付けた連結ロッドにて可動枠が吊設されるような姿勢で本発明の移動装置を取り付ける場合でも、小さな推力で応答性よく固定プレートに対して可動枠を相対移動できてよい。
【0011】
本発明においては、前記固定プレートは、開口を備え、この開口に真空フランジが嵌着され、この真空フランジを介して、処理室を画成する外壁面に着脱自在に装着されるものであることが好ましい。これによれば、真空フランジを介して固定プレートを外壁面に取り付ける構成としたため、処理室内で行われる処理で当該壁面が加熱されるような場合でも、固定プレートへの熱引きが抑制されることで、固定プレートの熱膨張に起因した動作精度の低下を防止することができる。
【0012】
また、本発明においては、前記真空フランジの内部に冷媒を循環する冷媒循環路を設けておくことが好ましい。これにより、処理室との接触面を構成する真空フランジから固定プレートへの熱引きを確実に抑制し、固定プレートの熱膨張に起因した動作精度の確実に防止することができる。
【0013】
更に、本発明においては、アクチュエータの交換やクリーニングなどのメンテナンス性を向上するために、前記可動枠の少なくとも一辺が着脱自在であると共に、前記可動枠及び前記固定プレートに各保持ロッドが着脱自在に取り付けられていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の移動装置を装着したプラズマCVD装置の構成を模式的に示す図。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図。
【図3】可動枠に設けられたアクチュエータの配置を説明する図。
【図4】成膜範囲を制限するマスクの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、真空処理装置を、矩形の基板に対して成膜するプラズマCVD装置とし、その処理室内で保持される部品をマスクとし、このマスクを、処理室内に配置された基板に対して相対移動するものを例に本発明の実施形態の移動装置を説明する。以下においては、互いに直交する水平な(同一平面内の)2軸方向をX軸方向(図1中、左右方向)及びY軸方向(図2中、上下方向)とし、その面内の回転方向をθ方向とし、また、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向(図1中、上下方向)とし、Z軸方向に関し、後述の基板からマスクに向かう方向を上、マスクからガラス基板に向かう方向を下として説明する。また、基板には、その周縁部の所定位置にアライメントマークが形成されているものとする。
【0016】
図1を参照して、SMは、本発明の実施形態の移動装置であり、移動装置SMは、CVD装置の処理室11を画成する筒状の真空チャンバ1の底面(処理室を画成する外壁面)にその下側から取り付けられている。先ず、CVD装置について説明すれば、処理室11内には基板Wを位置決め保持する役割を持つ加熱プレート2が設けられている。加熱プレート2は、基板Wよりも大きな輪郭を有し、基板Wに面接触する、平面視矩形の本体21を備える。本体21内部には図示省略の加熱手段が組み込まれ、本体21に載置される基板Wを熱交換で所定温度に加熱する。本体21下面には、処理室11内を気密保持するベローズ22を介して処理室11内に突設した駆動軸23が連結されている。そして、真空チャンバ1の下方に設けた駆動源24により駆動軸23を上下動させると、本体21に対して基板Wを受け取り、受け渡すと共に基板Wに対するマスクMの位置合わせを行うZ方向下側の準備位置と、成膜位置たるZ方向上側の処理位置との間で本体21がZ軸方向に移動する。
【0017】
真空チャンバ1の天井部には、本体21に対向させてガス導入部3が絶縁部材Iを介して設けられている。ガス導入部3は、最上側に位置する蓋板31と、この蓋板31の周縁部に下方に向けて突設した環状壁32と、環状壁32の下端に装着され、基板Wよりも大きな輪郭を有するシャワープレート33とから構成される。蓋板31には、図示省略のマスフローコントローラを介設したガス供給管34が接続され、原料ガスや反応ガスが、蓋板31、環状壁32及びシャワープレート33で画成された拡散空間35に供給されるようになっている。なお、シャワープレート33の形態については、公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。また、真空チャンバ1の側壁には排気口12が開設され、この排気口12には排気管13を介して真空ポンプPが接続され、処理室11を真空引きして所定圧力に減圧保持できる。そして、成膜中、マスフローコントローラを制御して各ガスを所定流量で拡散空間35に供給すると、拡散空間35にて各ガスが拡散され、シャワープレート33を介して処理室11内へと導入される。
【0018】
蓋体31には高周波電源4からの出力41が接続され、上記原料ガス及び反応ガスを処理室11内に導入した状態で所定の高周波電力を投入すると、処理室11内でプラズマが発生する。そして、プラズマで分解された原料ガス及び反応ガスが、加熱プレート2にて所定温度に加熱された基板Wに供給されて気相からの析出により所定の薄膜が成膜される。このとき、基板Wの成膜範囲を制限するためにマスクMが設けられる。マスクMは、シャワープレート33と基板Wとの間に設けられたマスクホルダMhで保持され、本体21、ひいては基板Wが上動位置に達すると、基板WとマスクMとが上下方向で密着し、この状態で成膜されるようになっている。このようにマスクMを、マスクホルダMhを介して保持すると共に、準備位置にて基板Wに対してマスクMをアライメントするために本実施形態の移動装置SMが用いられる。以下、図2及び図3を更に参照して、移動装置SMを具体的に説明する。
【0019】
移動装置SMは、Z軸方向に所定間隔を存して配置された固定プレート5と可動枠6とを備える。固定プレート5は、所定厚さで平面視略矩形の輪郭を有し、その中央部には円形開口51が開設されている。円形開口51には、固定プレート5より肉厚の真空フランジ52が嵌着されている。真空フランジ52には駆動軸23が挿通する貫通孔52aが形成されている。そして、真空チャンバ1との当接面に図示省略のOリングを介在させて気密保持した状態で真空チャンバ1の下面にボルトB1により着脱自在に取り付けられる。なお、ベローズ22は真空フランジ52の下面に設けられる。更に、真空フランジ52内には冷媒を循環する冷媒循環路52bが設けられ、処理中に真空フランジ52を冷却できるようになっている。また、固定プレート5の外周縁部には、基板WとマスクMとのZ軸方向の相対位置を撮像するCCDカメラ等の撮像手段Cを保持するホルダ54(本実施形態では、4個)が設けられている。
【0020】
他方、Z軸方向下側に位置する可動枠6は、固定プレート5より一回り大きな輪郭を有するように形成され、可動枠6の一辺が着脱自在に構成されている(図2中、下側に位置する辺)。可動枠6の上面の略四隅には、同一構成の4個のアクチュエータ7、7、7、7が夫々独立して設けられている。一のアクチュエータ7を例に説明すると、図3に示すように、アクチュエータ7は、モータ71と、このモータ71に接続された送りねじ71aと、この送りねじ71aに螺合するナット部材72とを備える。ナット部材72は、Y軸方向にのびるレール部材73に係合し、モータ71の回転により、レール部材73に案内されてナット部材72がY軸方向に往復動する。また、ナット部材72の上面には凹部74が形成され、この凹部74には、X軸方向に長手のスライダ75が係合し、他のアクチュエータ73、が往復動するとき、これに同期してスライダ75が凹部74内を摺動する。スライダ75の上面にはクロスローラ76の内輪76aが図示省略のボルトで固定され、その外輪76bの上面には、連結ロッド77の下端がボルトB2により着脱自在に取り付けられている。これにより、スライド75と連結ロッド77とが互いに回転自在になる。
【0021】
連結ロッド77の上端は、固定プレート5の下面にボルトB3により着脱自在に取り付けられ、これにより、固定プレート5と可動枠6とが相互に連結されている。本実施形態では、図2に示すように、対角線上に位置する2個のアクチュエータ7、7が、Y軸方向に連結ロッド77を往復動すると共に、残りの2個の直動モータ7、7がX軸方向に連結ロッド77を往復動するようになっている。これにより、各アクチュエータ7、7、7、7を単独または同期して駆動することで固定プレート5に対して可動枠6が、X方向、Y方向及びθ方向のいずれか一方向に相対移動される。なお、アクチュエータ7、7、7、7の形態は、連結ロッド77で固定プレート5に対して可動枠6を相対移動できるものであれば、上記に限定されるものではなく、他の公知のものを利用して構成できる。
【0022】
また、可動枠6には、固定プレート5の周囲を通ってZ方向にのびる4本の保持ロッド8がボルトB4により着脱自在に立設されている。各保持ロッド8は、真空チャンバ1の底板に形成した透孔15に設けたベローズ16(シール部品)を介して処理室11内に突出している。そして、各保持ロッド8の先端でマスクホルダMhが支持されている。マスクホルダMhは、マスクMの輪郭に対応する矩形開口(図示せず)が形成され、この矩形開口にその上方からマスクMを落とし込んでセットすれば位置決め保持されるようになっている。マスクMとしては、所定厚さの板材から構成され、その表面には基板Wに成膜しようとするパターンに応じて透孔(本実施形態では、格子状のパターンMp)が形成され、また、マスクMの周縁部の所定位置には当該マスクMをマスクホルダMhで保持した状態で、基板に対するアライメントを行うための透孔Mmが複数形成されている。
【0023】
本実施形態においては、加熱プレート2の周縁部には、加熱プレート2で基板Wを位置決め保持したとき、基板WのアライメントマークWmの下方に位置するように、アライメントマークWmの輪郭よりも大きい輪郭を有する透孔25が形成されている。そして、この透孔25には、透光性部材26が埋め込まれており、この透光性部材26が撮像用光路を構成する。この場合、透光性部材26としては、サファイヤ、ソーダガラス等を用いることができる。但し、プロセスガスとして、フッ素系ガス等の腐食性ガスを用いる場合には、耐腐食性の高いサファイヤが用いることが望ましい。例えば、窒化シリコン膜を形成する場合には、原料ガスとしてSiHやTEOS等のシラン系ガスが用いられ、反応ガスとして窒素ガスやアンモニアガス等の窒素含有ガスが用いられる。また、酸窒化シリコン膜を形成する場合には、原料ガスとして上記シラン系ガスが用いられ、反応ガスとして一酸化二窒素ガスが用いられる。
【0024】
また、真空チャンバ1の底板にも、加熱プレート21の撮像用光路の下方に位置させて透孔17が形成され、この透孔17には、上記同様の透光性部材18が埋め込まれており、この透光性部材18が撮像用光路を構成する。そして、固定プレート5をその真空フランジ52を介して真空チャンバ1の下面に取り付けた状態では、ホルダ54で保持された撮像手段Cが撮像用光路18の下方に位置し、撮像手段Cにより、撮像用光路18、26を通してガラス基板W越しにマスクMのアライメントマークMm、すなわち、ガラス基板Wに対するマスクMの相対位置を撮像できる。そして、撮像手段Cには図示省略の画像処理手段が付設され、この画像処理手段にて処理した画像データが図示省略の制御部に入力されるようになっている。制御部は、マイクロコンピュータやシーケンサ等を備え、高周波電源4、撮像手段C、各アクチュエータ7、7、7、7、マスフローコントローラ、真空ポンプP、温媒供給手段等の作動が統括制御されるようになっている。以下、本実施形態のプラズマCVD装置における成膜方法について、基板Wをガラス基板とし、このガラス基板に対してマスクを位置合わせした後にガラス基板の成膜面の特定領域に窒化シリコン膜を形成する場合を例として説明する。
【0025】
真空チャンバ1を真空引きして所定圧力まで減圧した状態で、図外の搬送ロボットにより基板Wを搬送し、下動位置にある加熱プレート2の上面に基板Wを、その成膜面を上側にしてセットする。この場合、基板Wに形成されたアライメントマークWmが、加熱プレート2の光路24上に位置する。ここで、マスクMはマスクホルダMhにより予め支持されていてもよく、基板Wの搬送前後にマスクMを搬送してマスクホルダMhに支持させてもよい。
【0026】
加熱プレート2上に基板Wを保持した後、基板Wに対するマスクMの位置合わせ(アライメント)を行う。この場合、撮像手段Cにより、加熱プレート2に形成した撮像用光路26を通して基板W越しにマスクMを撮像する。このとき、基板WのアライメントマークWmとマスクMのアライメントマークMmとが同時に撮像される。撮像手段Cにより撮像された画像は画像処理手段に送られ、画像処理手段により画像処理して基板Wに対するマスクMのずれ量が検出される。検出されたずれ量は制御部に入力され、制御部は、入力されたずれ量に基づいて各アクチュエータ7、7、7、7の駆動量を算出し、各アクチュエータ7、7、7、7を単独または同期して駆動する。これにより、固定プレート5に対して可動枠6が、X方向、Y方向及びθ方向のいずれか一方向に相対移動し、マスクMの同一平面内の位置を変更することで、基板Wに対するマスクMの位置合わせが行われる。
【0027】
位置合わせが終了すると、加熱プレート2を準備位置から処理位置に上昇させる。加熱プレート2を上昇させると、マスクホルダMhから基板WにマスクMが受け渡され、基板Wの成膜面がマスクMのパターンMpで覆われる。加熱プレート2が処理位置に達した後、マスフローコントローラを制御してシランガスからなる原料ガスとアンモニアガス及び窒素ガスからなる反応ガスを拡散空間35に供給するとともに(例えばシランガス流量:1sccm〜100slm、アンモニアガス流量:1sccm〜100slm、窒素ガス流量:1sccm〜100slm、真空チャンバ内圧力:0.01Pa〜10kPa)、高周波電源4からガス導入部3に高周波電力を投入すると(例えば100W〜10kW)、シャワープレート33とマスクホルダMhとの間でプラズマが形成され、基板WのマスクパターンMpで覆われていない成膜面に窒化シリコン膜が所定膜厚で成膜される。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、各アクチュエータ7、7、7、7を単独または同期して駆動することで固定プレート5に対して可動枠6が、X軸方向、Y軸方向及びθ方向のいずれか一方向に相対移動され、これに伴い保持ロッド8で保持されたマスクMが減圧下の処理室11内で移動される。この場合、上記従来例とは異なり、可動枠6にアクチュエータ7、7、7、7を設けてこのアクチュエータ7、7、7、7の連結ロッド77で固定プレート5と可動枠6とを着脱自在に連結した構成を採用したことで、アクチュエータ7、7、7、7の交換時に、例えば可動枠6ごと取り外して別の場所でその交換作業を行い得る。このため、アクチュエータ7、7、7、7を精度よくかつ確実に位置決めして再組付するときの作業性は上記従来例のものより向上する。また、真空フランジ52を介して固定プレート5を外壁面に取り付け、固定プレート5と真空チャンバ11の底面との間に隙間がある構成としたため、CVDによる成膜処理で真空チャンバ11の壁面が加熱されるような場合でも、固定プレート5への熱引きが抑制されることで、固定プレート5の熱膨張に起因した動作精度の低下を防止することができる。更に、アクチュエータを設けるものが可動枠6であって軽量化が図られることで、可動枠6が連結ロッド77で吊設されるような姿勢であっても、小さな推力で応答性よく固定プレート5に対して可動枠6を相対移動することができる。しかも、可動枠6の一辺が着脱自在であると共に、可動枠6に各保持ロッド8が着脱自在に装着されているため、アクチュエータの交換やクリーニングなどのメンテナンス性を向上することができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではない。上記実施形態では、プラズマCVD装置を例に説明したが、スパッタリング装置やエッチング装置等、基板の両面を処理手段で覆って該両面に所定の処理を施す装置に本発明は適用できる。また、部品をマスクとするものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、基板を移動するものにも適用できる。
【0030】
上記実施形態では、移動装置SMを真空チャンバの底面に設けたものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、その天井部に設けることもできる。また、上記実施形態では、固定プレート5として、真空フランジ52を備えた別部品のものを例に説明したが、可動枠6を水平に保持するものであれば、上記のものに限定されるものではない。例えば、真空チャンバ11の底面に、連結ロッド77の上端を直接固定し、真空チャンバ11の底面が固定プレートの役割を果たすようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
SM…移動装置、M…マスク(部品)、5…固定プレート、6…可動枠、7、7、7、7…アクチュエータ、8…保持ロッド、11…処理室、15…透孔、16…ベローズ(シール部材)、52…真空フランジ、52b…冷媒循環路、77…連結ロッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する同一平面内の2方向をX軸方向及びY軸方向とし、その面内の回転方向をθ方向として、処理室内に設置される所定の部品を保持し、この状態でX軸方向、Y軸方向及びθ方向の少なくとも一方向にこの部品を移動する移動装置であって、
X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向とし、Z軸方向に所定間隔を存して配置された固定プレートと可動枠とを備え、
可動枠に少なくとも3個のアクチュエータが設けられ、これら各アクチュエータのZ軸方向にのびる連結ロッドで固定プレートと可動枠とが相互に連結され、各アクチュエータの作動によりX軸方向、Y軸方向及びθ方向の少なくとも一方向に、固定プレートに対して可動枠が相対移動自在であると共に、この可動プレートに複数本の保持ロッドが立設され、この保持ロッドが、上記外壁面に形成した透孔に設けたシール部品を介して処理室内に突出させて上記部品を保持するように構成したことを特徴とする移動装置。
【請求項2】
前記固定プレートは、開口を備え、この開口に真空フランジが嵌着され、この真空フランジを介して、処理室を画成する外壁面に着脱自在に装着されるものであることを特徴とする請求項1記載の移動装置。
【請求項3】
前記真空フランジの内部に冷媒を循環する冷媒循環路を設けたことを特徴とする請求項2記載の移動装置。
【請求項4】
前記可動枠の少なくとも一辺が着脱自在であると共に、前記可動枠及び前記固定プレートに各保持ロッドが着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−246506(P2012−246506A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116767(P2011−116767)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】