説明

積層体の製造装置

【課題】所望の厚み分布となり、製造上の製品の無駄及び品質バラつきをなくすことが可能である。
【解決手段】一対となるシート材に対してエクストルージョン型のコータヘッド200にて高分子溶融体を塗布し、一対となるシート材の高分子溶融体同士を対向させて貼り合せる積層体の製造装置において、コータヘッド200は、高分子溶融体を流入する流入流路203と、流入流路203から流入した高分子溶融体をシート材幅方向端部へ流す流路の流路径を漸増する手段Aと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シート材の表面に接着剤を塗布し、この接着剤を介して複数のシート材を積層する積層体の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、各種プラスチックフィルム等のシート材の表面に高分子溶融体の接着剤を塗布する方法としては、スピンコータ、ロールコータ、ブレードコータ、ダイコータなどを利用したものがある。特に、湿気硬化型などの反応型接着剤を使用する場合は、塗布前の不必要な硬化反応進行を防止するために、ダイコータを使用するのが好ましい。
【0003】
また、複数のシート材を、接着層を介してプレス装置などにより貼り合わせることで、積層体を製造することは知られており、例えば、ドアパネルや壁材などの建築用材用途、光ディスクなどの記録材料用途、プラスチック基材間に電子部品を内蔵したICカードなどのカード用途がある。
【0004】
また、ホットメルトタイプの接着剤を使用した電子情報記録カード及びその製造方法としては、例えば、特開平10-147087号、特開2002-157561号等に開示されている。この場合、一方、もしくは双方の基材に接着剤を塗工し、それぞれの基材を接着剤塗布装置からプレス、もしくはラミネート装置に移動し、基材同士が貼り合わされる。
【特許文献1】特開平10-147087号公報
【特許文献2】特開2002-157561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、非接触型のICカードのような積層体の製造工程において、一対となるシート材に対してエクストルージョン型のコータヘッドを用い、表裏のシート同士を貼り合せるために介在させる接着剤を塗布するが、一般的にはシート内で複数のカードが配置されるように、そのサイズに応じて数10cmほどの塗布幅を形成させる。この接着剤を塗布する装置は、例えば中央に供給配管、第1のマニホールドを経由して、シート幅方向に複数の開閉バルブがあり、さらに下流側にスリットを有するコータ形状であるが、中央からシート幅方向端部にかけて漸増となる厚み分布が発生する。このシート幅方向での厚み分布が、後のカード成型工程を経て、カードの厚み分布に表れるため、バラつきの多い品質のカードとなっている。また、カード表面に個別情報などを印刷するときには、厚み分布がプリント性のバラつきとなってしまい、品質のバラつきが大きい結果となっている。
【0006】
一方、シート幅方向分布均一化のために塗布ヘッドを改良したものとして、塗布膜厚分布をセンサで読み取り、コータのスリット間隔を変更する手段に情報をフィードバックして、トライアンドエラーを繰り返しながらコータスリット間隔を調整することにより、膜厚分布コントロールさせることが知られているがスリット間隔を状況に応じて変化させる構造は大掛りになり、また塗布膜厚分布情報を読み取りながら積層体を製造することになると、塗布膜厚分布とスリット間隔の調整を行なっている間は、不良品を作り続けることになり、生産上の課題となっている。
【0007】
この発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、所望の厚み分布となり、製造上の製品の無駄及び品質バラつきをなくすことが可能な積層体の製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成されている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、一対となるシート材に対してエクストルージョン型のコータヘッドにて高分子溶融体を塗布し、前記一対となるシート材の高分子溶融体同士を対向させて貼り合せる積層体の製造装置において、
前記コータヘッドは、
前記高分子溶融体が流入する流入流路と、
前記流入流路から流入した前記高分子溶融体を中央部からシート材幅方向端部へ流す流路の流路径を漸増する手段と、
を有することを特徴とする積層体の製造装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記コータヘッドは、
前記高分子溶融体が流入する流入流路と、
前記流入流路から流入した前記高分子溶融体をシート材幅方向へ流す第1のマニホールドと、
前記シート材幅方向に配置された開閉バルブを有する複数の連通路と、
前記複数の連通路と連通し流入した前記高分子溶融体をシート材幅方向へ流す第2のマニホールドと、
前記第2のマニホールドに連通して前記高分子溶融体を吐出するスリット部と、
を有し、
前記流路径を漸増する手段は、前記第1のマニホールドの流路径が、中央部よりシート材幅方向端部に向かって漸増していることを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記コータヘッドは、
前記高分子溶融体が流入する流入流路と、
前記流入流路から流入した前記高分子溶融体をシート材幅方向へ流す第1のマニホールドと、
前記シート材幅方向に配置された開閉バルブを有する複数の連通路と、
前記複数の連通路と連通し流入した前記高分子溶融体をシート材幅方向へ流す第2のマニホールドと、
前記第2のマニホールドに連通して前記高分子溶融体を吐出するスリット部と、
を有し、
前記流路径を漸増する手段は、前記開閉バルブを有する複数の連通路の流路径が、中央部の連通路よりシート材幅方向端部の連通路に向かって漸増していることを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造装置である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記コータヘッドは、
前記高分子溶融体が流入する流入流路と、
前記流入流路から流入した前記高分子溶融体をシート材幅方向へ流す第1のマニホールドと、
前記シート材幅方向に配置された開閉バルブを有する複数の連通路と、
前記複数の連通路と連通し流入した前記高分子溶融体をシート材幅方向へ流す第2のマニホールドと、
前記第2のマニホールドに連通して前記高分子溶融体を吐出するスリット部と、
を有し、
前記流路径を漸増する手段は、前記第2のマニホールドの流路径が、中央部よりシート材幅方向端部に向かって漸増していることを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造装置である。
【発明の効果】
【0013】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0014】
請求項1に記載の発明では、コータヘッドの略中央部に位置する流入流路から流入した高分子溶融体がシート材幅方向端部へ流れる構造である流路の流路径を、流入流路の中央部からシート材幅方向端部にかけて漸増構成することで、シート材幅方向に設けてあるスリット部の吐出口の、幅手のいずれの位置でも高分子溶融体自身が受ける応力がほぼ均等になることにより、簡単な構造で所望の厚み分布となり、製造上の製品の無駄及び品質バラつきをなくすことが可能である。
【0015】
請求項2に記載の発明では、コータヘッドの第1のマニホールドの流路径が、中央部よりシート材幅方向端部に向かって漸増していることで、高分子溶融体自体が受ける応力がシート材幅方向のいずれの位置でもほぼ均等になって、簡単な所望で所望の厚み分布となり、製造上の製品の無駄及び品質バラつきをなくすことが可能である。
【0016】
請求項3に記載の発明では、コータヘッドの開閉バルブを有する複数の連通路の流路径が、中央部の連通路よりシート材幅方向端部の連通路に向かって漸増していることで、高分子溶融体自体が受ける応力がシート材幅方向のいずれの位置でもほぼ均等になって、簡単な所望で所望の厚み分布となり、製造上の製品の無駄及び品質バラつきをなくすことが可能である。
【0017】
請求項4に記載の発明では、コータヘッドの第2のマニホールドの流路径が、中央部よりシート材幅方向端部に向かって漸増していることで、高分子溶融体自体が受ける応力がシート材幅方向のいずれの位置でもほぼ均等になって、簡単な構造で所望の厚み分布となり、製造上の製品の無駄及び品質バラつきをなくすことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の積層体の製造装置の実施の形態について説明するが、この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0019】
この発明の積層体の製造装置は、一対となるシート材に対してエクストルージョン型のコータヘッドにて高分子溶融体を塗布し、一対となるシート材の高分子溶融体同士を対向させて貼り合せるものであり、高分子溶融体としては、例えば接着剤を用いることができる。積層体の製造装置への適用の一例としてカードの製造装置があり、具体的には、名刺、ネームプレート、パスポート、診察カード、テレホンカード、身分証明書、運転免許証、定期券、キャッシュカード、ICカード等を包含するカードであって、一般に手札程度の大きさであり、かつ多くの場合携帯して使用するものである。ここでは、ICカードを適用した例えば会社の従業員カードの例について説明するが、適用例はこの形態に限定されるものではない。
【0020】
ICカードは塩化ビニル樹脂の合成樹脂などで作成された基体の一部に設けられた凹部にICユニットを収容したもので、ICと外部回路との電気的な接触の仕方によって接触型と非接触型とがある。しかし、接触型のようにカード表面に接触端子が露出していると、接触面の劣化、接触不良などが起こり、ICカードヘの電力供給及びデータ信号の入出力が行われなくなる等の問題が生じる。
【0021】
そこで非接触に電気信号を授受するためのアンテナコイルで電磁波を発生及び/又は電磁波を受ける構成を有するICカードが出現している。
【0022】
図1はこのような表面に金属端子のない非接触型ICカードの1例を示す平面図である。図において、ICカード1には、基材2c上にICチップ2a及びR/W(リード/ライト)のための信号授受部としてアンテナ2bを実装されてなるモジュール基板2が設けられている。ICチップ2aは点圧強度が弱いためにICチップ近傍に補強板を有することも好ましい。ICカード1のキー情報部3は、ICカード1と他のカードを識別するための属性識別情報で、例えばICカード1の表面に付されたコード番号である。また、ICカード1の文字情報部4はICカード1の表面に付された氏名・職場・発行日などで、画像情報部5は顔などの画像情報である。
【0023】
図2はICカードの層構成を模式的に示す断面図である。第1のシート材10と第2のシート材20の間に介在される接着剤層6,7内に、基材2c上にICチップ2a及びアンテナ2bが実装されてなるモジュール基板2を封入したICカード1の構成である。
【0024】
第1のシート材10と第2のシート材20からなるICカード1のシート材は、樹脂製、紙製等のシート材が使用できる。このシート材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリイミド樹脂や、上質紙、マット紙、コート紙、合成紙などである。また、表面シート部分は、接着剤との接着性を高めるために易接着処理(プライマー塗布、コロナ放電処理、プラズマ処理等)を付しても良い。
【0025】
モジュール基板は、基材にアンテナやICチップの実装部を設けた中間インレットであり、場合によりコンデンサーを含んでもよい。基材は、例えば、エポキシ、ガラスエポキシ、ポリイミド、ポリカーボネート、PVC、PET、ABSなどの樹脂から構成された厚さ数10〜100μm程度の絶縁性のプラスチックシートが一般的に使用される。また、ICチップとアンテナの接続体として、ICチップの入出力端子に金バンプや、ニッケルバンプを使用し、例えば銅線を巻回してなるアンテナのコイルの両端を直接接続したものを、自己圧着性を有する2枚の不織布シート材に挟みこんで一体にされている形態のものも使用できる。
【0026】
例えば、不織シート部材として、不織布などのメッシュ状織物や、平織、綾織、繻子織の織物などがある。また、モケット、プラッシュベロア、シール、ベルベット、スウェードと呼ばれるパイルを有する織物などを用いることができる。材質としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン8等のポリアミド系、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系、ポリエチレン等のポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ポリアクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル系、ポリシアン化ビニリデン系、ポリフルオロエチレン系、ポリウレタン系等の合成樹脂、絹、綿、羊毛、セルロース系、セルロースエステル系等の天然繊維、再生繊維(レーヨン、アセテート)、アラミド繊維の中から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせた繊維が上げられる。これらの繊維材料において好ましくは、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアイド等のアクリル系、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系、再生繊維としてのセルロース系、セルロースエステル系であるレーヨン及びアセテート、アラミド繊維があげられる。
【0027】
自己圧着性とは、常温又は加熱下でフレキシブル基体に圧縮力を負荷したときに、フレキシブル基体を構成する各繊維が接合されると共に、複数枚のフレキシブル基体材料を重ね合わせて圧縮力を負荷した場合にはそれら重ね合わされたフレキシブル基体材料が互いに接合されることを示し、例えば不織布を構成する繊維にPET−Gをコーティングした場合には、PET−Gの融点以上の加熱下でのプレスにおいて不織布シート材が自己圧着される。
【0028】
また、不織布シート材は厚さ方向への圧縮性を有するため、ICチップとアンテナの接続体を間に挟んで2枚の不織布シート材を厚さ方向に圧縮したとき、2枚の不織布シート材の内面に接続体を埋設するための凹部が形成され、不織布シート材の表面は平坦に形成することができるので、表面が平坦で美観に優れた非接触式ICカード等の情報担体を生産することができる。
【0029】
アンテナは、外部のリーダ・ライタと非接触でデータの授受を行うものであり、その形状、巻数等は、受信側のアンテナコイルの大きさ、どの程度の距離まで電波を飛ばすか(通信距離)、どの程度の周波数の電波を受信するか(通信周波数)等によって決まる。
【0030】
また、ICチップは局部的に荷重がかかる点圧強度が弱いため、ICチップ近傍に補強構造物である金属補強板や、もしくはICチップ周囲にリング状の補強部材を有することが好ましい。
【0031】
モジュール基板の厚さは10〜300μmが好ましく、より好ましくは30〜300μm、更に好ましくは30〜250μmが好ましい。
【0032】
この発明に用いられる接着剤としては、例えばエポキシ系2液混合タイプ、UV硬化型接着剤、ホットメルト接着剤、好ましくは湿気硬化型といった反応型ホットメルト接着剤が使われる。ホットメルト樹脂としては、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリルアミド、ポリウレタン等を用いることができる。積層体であるカード基体が反り易い場合や、カード表面に感熱転写による画像形成のための受像層など高温加工に弱い層が設けられている場合には、貼り合わせ温度が高温すぎると受像層がダメージを受けたり、シート材が熱収縮等を起こし、寸法及び貼り合わせ時の位置精度が劣化したりする等の問題点から、接着剤を介して貼り合わせる場合にはシート材及び接着剤の温度が80℃以下で貼り合わせることが好ましく、さらには10〜80℃、より好ましくは20〜80℃であることが好ましい。低温で接着する接着剤の中でも具体的には反応型ホットメルト接着剤が好ましい。特に、この発明において好ましいのは光硬化型ホットメルト接着剤であり、特開2001−56849号等に開示されているように、例えば電子線、紫外線等のエネルギー線を照射することにより活性化する光カチオン重合開始剤により重合もしくは架橋反応を起こす光反応成分とホットメルト接着剤成分とからなる。上記反応を開始するための光源となるランプは、発光波長300〜500nmを含む低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、マイクロウェーブ水銀灯、メタルハライドランプ等を用いることができる。
【0033】
次に、積層体の製造装置について説明するが、図3はICカードの製造装置の実施の形態を示す。
【0034】
ICカードの製造装置には、ロール状の第2のシート材20を送り出す送出軸50が設けられ、この第2のシート材20はガイドローラ51,52に案内されて搬送される。この送出軸50から送り出される第2のシート材20に接着剤を塗布する接着剤塗布装置41が配置されている。この接着剤塗布装置41から第2のシート材20上に接着剤を供給して塗布し、その後にモジュール基板2を供給する。
【0035】
また、ICカードの製造装置には、ロール状の第1のシート材10を送り出す送出軸30が設けられ、この第2のシート材20はガイドローラ31〜33に案内されて搬送される。この送出軸30から送り出される第2のシート材20に接着剤を塗布する接着剤塗布装置42が配置されている。
【0036】
このICカードの製造装置には、搬送経路100上に、加圧部72、塗布部90、塗布液乾燥部95、切断部74及び打抜部73が搬送方向に沿って配置されている。
【0037】
加圧部72には、対の貼り合わせローラ72aと、複数の対の加圧ローラ72bが配置されている。この対の貼り合わせローラ72aによって第1のシート材10と第2のシート材20とを貼り合わせ、複数の対の加圧ローラ72bによって貼り合わされた第1のシート材10と第2のシート材20が加圧搬送され、貼り合わされた第1のシート材10と第2のシート材20に所定の圧力がかかり密着される。
【0038】
塗布部90には、受像層塗布液容器30が上方に設けられ、受像層塗布液容器30内には供給ローラ31aが設けられ、この供給ローラ31aから中間ローラ31bを介して受像層塗布液33が塗布ローラ32へ供給され、塗布ローラ32の逆回転により、第1のシート材10の一面側に受像層塗布液33が塗布されてリバースコータ法により受像層が表面に形成される。
【0039】
また、塗布部90には、筆記層塗布液容器60が下方に設けられ、筆記層塗布液容器60内には供給ローラ61aが設けられ、この供給ローラ61aから中間ローラ61bを介して筆記層塗布液63が塗布ローラ62へ供給され、塗布ローラ62の逆回転により、第2のシート材20の一面側に筆記層塗布液63が塗布されてリバースコータ法により筆記層が表面に形成される。
【0040】
塗布液乾燥部95は、第1のシート材10の受像層及び第2のシート材20の筆記層の溶剤を気化させて両面への塗布層を形成する。
【0041】
切断部74は、上下に対向配置されるカッター上型74a及びカッター下型74bからなり、カッター上型74aは上下動可能に設けられ、第1のシート材10及び第2のシート材20が熱溶着した状態でシート状に切断し、シート84を打抜部73へ送る。
【0042】
打抜部73は、上下に対向して配置されるカード打抜上型73a及びカード打抜下型73bからなる。カード打抜上型73aは上下方向に移動可能になっており、第1のシート材10及び第2のシート材20が完全に熱溶着した後一体となり、その後ICカード1の大きさに打ち抜くようになっている。カード打抜下型73bの下方部には、シート84から例えば4〜100枚抜かれたICカード1を順次積み上げて収納する収納部85が設けられる。
【0043】
接着剤塗布装置41は、図4及び図5に示すように構成され、接着剤塗布装置42は接着剤塗布装置41と同様に構成されるから説明を省略する。図4は接着剤塗布装置の実施の形態を示す概略構成図、図5は接着剤塗布装置の通路を示す拡大図である。
【0044】
この実施の形態の接着剤塗布装置41は、エクストルージョン型のコータヘッド200が用いられ、接着剤タンク240から接着剤300がポンプ250の駆動によってコータヘッド200に供給される。コータヘッド200は、分割ヘッド半体201と分割ヘッド半体202を接合して構成され、この分割ヘッド半体201と分割ヘッド半体202によって流入流路203、第1のマニホールド204、複数の連通路205a〜205d、第2のマニホールド206及びスリット部207が形成されている。このスリット部207には、接着剤300を塗布する吐出口207aがシート材幅方向に形成されている。
【0045】
流入流路203は、コータヘッド200の最上流側のシート材幅方向の中央部に形成され、接着剤がポンプ250の駆動によって流入流路203に供給される。第1のマニホールド204は、大径の通路断面積でシート材幅方向に長く形成され、流入流路203から流入した接着剤300の流速を低下させてシート材幅方向へ流す。複数の連通路205a〜205dは、開閉バルブ205a1〜205d1を有し、第1のマニホールド204と第2のマニホールド206とを連通して形成されている。この複数の連通路205a〜205dは、シート材幅方向に等間隔に配置され、複数の連通路205a〜205dは同じ通路断面積であり、接着剤300を均等に第2のマニホールド206に流すようになっている。第2のマニホールド206は、第1のマニホールド204と同様にシート材幅方向に長く形成され、複数の連通路205a〜205dから流入した接着剤300の流速を低下させてシート材幅方向へ流す。スリット部207は、第2のマニホールド206のシート材幅方向の最下流側に連通して形成され、接着剤300をスリット部207の吐出口207aから吐出して第2のシート材20に接着剤300を塗布する。
【0046】
この発明のコータヘッド200は、流入流路203から流入した接着剤300を中央部よりシート材幅方向端部へ流す流路の流路径を漸増する手段Aを有している。接着剤をはじめとする高分子溶融体の流動の特徴は、高分子溶融体の配管内流動の過程において、流動抵抗によって生じる高分子溶融体の内部応力が厚み分布に影響する。すなわち、コータヘッド200のような配管等を流動してきた接着剤300が、スリット部207の吐出口207aから吐出される際に、応力を多く受けた部分ほど、スリット部207と第2のシート材20との間隔Wよりも大きい厚みで吐出される。流動過程の長い端部ほど、応力を多く受けやすく、厚み分布と言う形で表れるため、コータヘッド200の流路は、流動配管内の応力発生度を中央部と端部でほぼ同じ程度にすることが有効であり、流入流路203から流入した接着剤300をシート材幅方向端部へ流す流路の流路径を漸増させることで、高分子溶融体自身が受ける応力が均等になって膜厚分布を改良することができる。
【0047】
図4及び図5の実施の形態では、第1のマニホールド204の流路径D10が、流入流路近傍の中央部204aよりシート材幅方向端部204bに向かって漸増している。この第1のマニホールド204の流路径D10が、流入流路近傍の中央部204aよりシート材幅方向端部204bに向かって漸増する程度は、接着剤300の粘度やシート材幅方向の長さなどによって変化させることができる。この第1のマニホールド204では、流入流路203から接着剤300が流入するが、この接着剤300は、下流である複数の連通路205a〜205dへ分配するように、流入流路近傍の中央部204aよりシート材幅方向端部204bに向かって流れる。第1のマニホールド204の流路径が、流入流路近傍の中央部204aよりシート材幅方同204aに向かって漸増しているので、流動抵抗によって生じる接着剤300自身の内部応力がシート材幅方向のいずれの位置でもほぼ同等になることにより、簡単な構造で所望の厚みとなるように複数の連通路205a〜205dに流すことができ、接着剤300は第2のマニホールド206、スリット部207を流れて吐出口207aから第2のシート材20に塗布され、製造上の製品の無駄及び品質バラつきをなくすことが可能である。
【0048】
図6の実施の形態では、第1のマニホールド204の流路径D10が、流入流路近傍の中央部204aよりシート材幅方向端部204bに向かって同じであるが、複数の連通路205a〜205dの流路径D11が、流入流路近傍よりシート材幅方向端部に向かって漸増している。すなわち、連通路205b,205cより連通路205a、205dの流路径D11が大きく、さらに連通路205a〜205dの流路径D11が、それぞれ第1のマニホールド204から第2のマニホールド206に向かって漸増している。
【0049】
このため、第1のマニホールド204の接着剤300が複数の連通路205a〜205dから第2のマニホールド206に流入するが、第2のマニホイールド206に流出するが連絡路205a〜205dの流路径が異なることにより、接着剤300が第1のマニホールド204と連絡路205a〜205dを流れる際の流動抵抗により生じる、接着剤300の内部効力がいずれの連絡路205a〜205dの出口においてもほぼ均等になる。これにより、接着剤300を簡単な構造で所望の厚み分布となるように複数の連通路205a〜205dから第2のマニホールド206に送ることができ、接着剤300は第2のマニホールド206、スリット部207を流れて吐出口207aから第2のシート材20に塗布され、製造上の製品の無駄及び品質バラつきをなくすことが可能である。
【0050】
図7の実施の形態では、第1のマニホールド204の流路径D10が、流入流路近傍の中央部204aよりシート材幅方向端部204bに向かって同じであり、また複数の連通路205a〜205dの流路径D11が、流入流路近傍の中央部よりシート材幅方向端部に向かって同じであるが、第2のマニホールド206の流路径D12が、流入流路近傍の中央部206aよりシート材幅方向端部206bに向かって漸増している。この第2のマニホールド206の流路径D12が、流入流路近傍の中央部206aよりシート材幅方向端部206bに向かって漸増する程度は、接着剤300の粘度やシート材幅方向の長さなどによって変化させることができる。この第2のマニホールド206では、複数の連通路205a〜205dから接着剤300が流入するが、この接着剤300は連通路205a〜205dの出口から第2のマニホールド206内を充填するように流れた後、スリット部207の吐出口207aへと流れる。第2のマニホールド206の流路径が、中央部206aよりシート材幅方向端部206bに向かって漸増しているので、接着剤300は、第1のマニホールド204と連通路205a〜205dと第2のマニホールド206を流れる際の流動抵抗により生じる内部応力が、スリット部207の吐出口207aのシート材幅方向のいずれにおいてもほぼ均等になる。このことにより、接着剤300は、簡単な構造で所望の厚み分布となるように第2のマニホールド206、スリット部207を流れて吐出口207aから第2のシート材20に塗布され、製造上の製品の無駄及び品質バラつきをなくすことが可能である。
【0051】
図8の実施の形態では、流路径を漸増する手段Aが、第1のマニホールド204、複数の連通路205a〜205d、第2のマニホールド206のそれぞれについて実施されているが、第1のマニホールド204と複数の連通路205a〜205dについて実施し、また第1のマニホールド204と第2のマニホールド206について実施し、また複数の連通路205a〜205dと第2のマニホールド206について実施してもよい。このように流路径を漸増する手段Aを設けることで、コータヘッド200の略中央部に位置する流入流路203から流入した接着剤300は、第1のマニホールド204と複数の連通路205a〜205dと第2のマニホールド206とを流れる際の流動抵抗により生じる内部応力が、スリット部207の吐出口207aのシート材幅方向のいずれにおいてもほぼ均等になる。このことにより、接着剤300は、簡単な構造で所望の分布となり、製造上の製品の無駄及び品質バラつきをなくすことが可能である。
[実施例]
連続的に搬送されている厚さ0.18mmのPETシート上に0.05mmのホットメルト接着剤層を塗布し、さらにその上に、厚さ0.04mmのPETフィルム上に最大厚さが0.3mmである送受信アンテナコイルとICチップを載せたICモジュールを、前記シート上に幅方向3列の配置で載置した後、もう一方の厚さ0.18mmのPETシート上に厚さ0.35mmのホットメルト接着剤層を塗布したシートを、接着剤が向き合う方向で貼り合わせて、複数のICカードを持つ積層体を作成した。ホットメルト接着剤層は、湿気硬化型ポリウレタンホットメルトを使用し、塗布時の粘度は35000mPa・secであった。
【0052】
PETシート上への接着剤の塗布は、ホットメルト用エクストルージョン型コータを使用した。その基本櫃造は、ヘッドの幅方向中央部に接着剤流入口を有し、相当直径15mmの第1のマニホールドと、幅方向に等間隔に4箇所配置された連通路(相当直径5mm、開閉バルブ機構付)と、相当直径20mmの第2のマニホールドと、更にその下流にスリット間隔0.8mm、スリット長さ10mmの吐出口で構成されている。接着剤の塗布幅は300mmで、幅方向にカードが3個分配置可能である。
【0053】
ヘッド内流路構成を変化させて、接着剤の塗布膜厚幅方向分布を評価したところ、本発明の条件では、膜厚差が10%以下と少なく、後工程であるカード表面印刷でも印字良好な結果が得られた。

【0054】
「端部から20mm内側厚み/幅方向中央部厚み」は、塗布膜厚幅方向の膜厚差の比率を表現し、1に近いほど、膜厚差が無いことを示す。
【産業上の利用可能性】
【0055】
この発明は、シート材の表面に接着剤を塗布し、この接着剤を介して複数のシート材を積層する積層体の製造装置に適用でき、所望の厚み分布となり、製造上の製品の無駄及び品質バラつきをなくすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】表面に金属端子のない非接触型ICカードの1例を示す平面図である。
【図2】ICカードの層構成を模式的に示す断面図である。
【図3】ICカードの製造装置の実施の形態を示す図である。
【図4】接着剤塗布装置の実施の形態を示す概略構成図
【図5】接着剤塗布装置の通路を示す拡大図である。
【図6】接着剤塗布装置の通路を示す拡大図である。
【図7】接着剤塗布装置の通路を示す拡大図である。
【図8】接着剤塗布装置の通路を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ICカード
2 モジュール基板
2a ICチップ
2b アンテナ
2c 基材
3 キー情報部
4 文字情報部
5 画像情報部
6,7 接着剤層
10 第1のシート材
20 第2のシート材
41,42 接着剤塗布装置
200 コータヘッド
203 流入流路
204 第1のマニホールド
205a〜205d 複数の連通路
206 第2のマニホールド
207 スリット部
240 接着剤タンク
250 ポンプ
300 接着剤
A 流路径を漸増する手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対となるシート材に対してエクストルージョン型のコータヘッドにて高分子溶融体を塗布し、前記一対となるシート材の高分子溶融体同士を対向させて貼り合せる積層体の製造装置において、
前記コータヘッドは、
前記高分子溶融体が流入する流入流路と、
前記流入流路から流入した前記高分子溶融体を中央部からシート材幅方向端部へ流す流路の流路径を漸増する手段と、
を有することを特徴とする積層体の製造装置。
【請求項2】
前記コータヘッドは、
前記高分子溶融体が流入する流入流路と、
前記流入流路から流入した前記高分子溶融体をシート材幅方向へ流す第1のマニホールドと、
前記シート材幅方向に配置された開閉バルブを有する複数の連通路と、
前記複数の連通路と連通し流入した前記高分子溶融体をシート材幅方向へ流す第2のマニホールドと、
前記第2のマニホールドに連通して前記高分子溶融体を吐出するスリット部と、
を有し、
前記流路径を漸増する手段は、前記第1のマニホールドの流路径が、中央部よりシート材幅方向端部に向かって漸増していることを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造装置。
【請求項3】
前記コータヘッドは、
前記高分子溶融体が流入する流入流路と、
前記流入流路から流入した前記高分子溶融体をシート材幅方向へ流す第1のマニホールドと、
前記シート材幅方向に配置された開閉バルブを有する複数の連通路と、
前記複数の連通路と連通し流入した前記高分子溶融体をシート材幅方向へ流す第2のマニホールドと、
前記第2のマニホールドに連通して前記高分子溶融体を吐出するスリット部と、
を有し、
前記流路径を漸増する手段は、前記開閉バルブを有する複数の連通路の流路径が、中央部の連通路よりシート材幅方向端部の連通路に向かって漸増していることを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造装置。
【請求項4】
前記コータヘッドは、
前記高分子溶融体が流入する流入流路と、
前記流入流路から流入した前記高分子溶融体をシート材幅方向へ流す第1のマニホールドと、
前記シート材幅方向に配置された開閉バルブを有する複数の連通路と、
前記複数の連通路と連通し流入した前記高分子溶融体をシート材幅方向へ流す第2のマニホールドと、
前記第2のマニホールドに連通して前記高分子溶融体を吐出するスリット部と、
を有し、
前記流路径を漸増する手段は、前記第2のマニホールドの流路径が、中央部よりシート材幅方向端部に向かって漸増していることを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−190456(P2007−190456A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8774(P2006−8774)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】