説明

積層体

【課題】電子ペーパー、太陽電池、有機ELなどの電子材料の基板として用いた際に、優れた透明性および水蒸気バリア性を発揮し、長期使用時のデバイスの経時的信頼性を高めることができる積層体を提供する。
【解決手段】積層体10は、第1の透明プラスチックフィルム1の片面に、無機物からなる無機薄膜層3を積層した積層フィルムの無機薄膜層3側の面に、第2の透明プラスチックフィルム5を粘着剤層4を介して積層した積層体10であって、前記第1の透明プラスチックフィルム1の屈折率n、前記粘着剤層4の屈折率nおよび前記無機薄膜層3の屈折率nが下記(i)および(ii)の関係を満たすことを特徴とする。|n−n|≦0.2(i)|n−n|≦0.2(ii)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペーパー、太陽電池、有機ELなどの電子材料の基板として用いた際に、優れた透明性および水蒸気バリア性を発揮し、長期使用時のデバイスの経時的信頼性を高めることができる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ペーパーや有機ELなどの表示ディスプレイデバイス、太陽電池などのエネルギーデバイスが急速に普及している。これら用途には、従来、ガラス基材が用いられてきたが、軽量化、割れ難さ、フレキシブルの観点から、ガラス基材を透明プラスチックフィルムで代替したいという要望が高まっている。
【0003】
ところが、ガラス基材を透明プラスチックフィルムに置き換えた場合、水分が透明プラスチックフィルムを透過するため、デバイスが劣化してしまう。この問題を解決するには、透明プラスチックフィルムからなる基材上に、透明で且つガスバリア性を有する無機薄膜層を積層したガスバリア性フィルムを利用することが考えられる。このようなガスバリア性フィルムは、従来から食品包装用途を中心に広く使用されている。しかしながら、従来の食品包装用途に用いられるガスバリア性フィルムでは、水分の遮断性が不十分であり、デバイスの劣化を抑制することは困難であった。
【0004】
そこで、電子ペーパーや有機ELなどの表示ディスプレイデバイスや、太陽電池などのエネルギーデバイスに使用することを目的として、高分子フィルムの少なくとも片面に硬化樹脂層と金属酸化物層を設けた水蒸気透過度が0.1g/m2/day未満のガスバリア性フィルムが提案されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1に記載されているような無機薄膜層である金属酸化物層が表面に剥き出されているガスバリア性フィルムは、フィルムとしてのガスバリア性には優れるものの、デバイスに組み込む際にクラックが発生しやすく、充分なガスバリア性が得られにくいという問題があった。
【0005】
他方、デバイスに組み込んでもクラックを生じさせず、ガスバリア性を充分に発揮させうることを目的として、二軸延伸ポリエステルフィルム上に作製した防湿層の表面に、接着層を介して他の二軸延伸ポリエステルフィルムを貼り合せたガスバリア性支持体が提案されている(特許文献2)。しかしながら、このガスバリア性支持体は、ディスプレイの支持体として用いるにも拘らず、透明性が全く考慮されていない。しかも特許文献2では、具体的な態様は示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−281505号公報
【特許文献2】特許第4106677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、透明性に優れ、かつ水蒸気バリア性に優れた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することができた本発明の積層体は、以下の構成からなる。
(1)第1の透明プラスチックフィルムの片面に、無機物からなる無機薄膜層を積層した積層フィルムの無機薄膜層側の面に、第2の透明プラスチックフィルムを粘着剤層を介して積層した積層体であって、前記第1の透明プラスチックフィルムの屈折率n、前記粘着剤層の屈折率nおよび前記無機薄膜層の屈折率nが下記(i)および(ii)の関係を満たすことを特徴とする積層体。
|n−n|≦0.2 (i)
|n−n|≦0.2 (ii)
(2)前記無機薄膜層の膜厚が10〜200nmである前記(1)に記載の積層体。
(3)前記無機薄膜層がAl23を含有する前記(1)または(2)に記載の積層体。
(4)前記無機薄膜層が反応性スパッタリング法によるインピーダンス制御法により形成されている前記(1)〜(3)のいずれかに記載の積層体。
(5)前記無機薄膜層の屈折率nと前記第2の透明プラスチックフィルムの屈折率nが下記(iii)の関係を満たす前記(1)〜(4)のいずれかに記載の積層体。
|n−n|≦0.2 (iii)
(6)前記第2の透明プラスチックフィルムの粘着剤層を設けた面とは反対側の面に、透明導電性薄膜層を設けた前記(1)〜(5)のいずれかに記載の積層体。
(7)前記第1の透明プラスチックフィルムの無機薄膜層を設けた面とは反対側の面に、ハードコート層を設けた前記(1)〜(6)のいずれかに記載の積層体。
(8)前記ハードコート層が防眩処理されている前記(7)に記載の積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた透明性と優れた水蒸気バリア性とを兼ね備えた積層体を提供することができる。そして、かかる積層体を、電子ペーパー、太陽電池、有機ELなどの電子材料の基板として用いると、長期使用時のデバイスの経時的信頼性を高めることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の積層体の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の積層体の他の実施形態(透明導電性薄膜付積層体)を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の積層体は、第1の透明プラスチックフィルムの片面に、無機物からなる無機薄膜層を積層した積層フィルムの無機薄膜層側の面に、第2の透明プラスチックフィルムを粘着剤層を介して積層した積層体である。
本発明の積層体の一実施形態を図1および図2に示す。図1に示す積層体10では、第1の透明プラスチックフィルム1を基材とし、その片面に無機薄膜層3、粘着剤層4、第2の透明プラスチックフィルム5が順次積層され、さらに第1の透明プラスチックフィルム1の他方の面には硬化物層2が設けられている。また図2に示す透明導電性薄膜付積層体11では、図1に示す積層体10における第2の透明プラスチックフィルム5に、さらに透明導電性薄膜層6が積層されている。
【0012】
本発明においては、前記第1の透明プラスチックフィルムの屈折率n、前記粘着剤層の屈折率nおよび前記無機薄膜層の屈折率nが下記(i)および(ii)の関係を満たすことが重要である。
|n−n|≦0.2 (i)
|n−n|≦0.2 (ii)
上記(i)および(ii)の関係をともに満たす積層体であれば、透明性に優れ、かつ水蒸気バリア性に優れた積層体となる。|n−n|の値は、好ましくは0.16以下、より好ましくは0.09以下であり、および|n−n|の値は、好ましくは0.16以下、より好ましくは0.09以下である。なお、第1の透明プラスチックフィルムの屈折率n、粘着剤層の屈折率nおよび無機薄膜層の屈折率nはそれぞれ、例えば実施例で後述する方法で測定することができる。
【0013】
さらに本発明においては、前記無機薄膜層の屈折率nと前記第2の透明プラスチックフィルムの屈折率nが下記(iii)の関係を満たすことが好ましい。
|n−n|≦0.2 (iii)
上記(iii)の関係をも満たす積層体であれば、より優れた透明性および水蒸気バリア性を発現する。|n−n|の値は、好ましくは0.16以下、より好ましくは0.09以下である。なお、第2の透明プラスチックフィルムの屈折率nは、例えば実施例で後述する方法で測定することができる。
【0014】
なお、上記(i)および(ii)の関係、さらには上記(iii)の関係を満足させるには、本発明の積層体を構成する各フィルムや各層(層を形成する材料)の屈折率を調整すればよい。
【0015】
以下、本発明の積層体を構成する各フィルムおよび層について説明する。
(第1および第2の透明プラスチックフィルム)
第1および第2の透明プラスチックフィルムは、有機高分子をフィルム状に溶融押出し又は溶液押出しすることによりフィルム状に成形し、必要に応じ、長手方向及び幅方向の一方または両方に、延伸、熱固定、熱弛緩処理を施したフィルムである。
【0016】
有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルファン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、セルロースプロピオネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマー(シクロオレフィン系ポリマー等)などが挙げられる。これらのなかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、吸水率の低いシンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマーのシクロオレフィン系ポリマーなどが好適である。また、これらの有機高分子は、それぞれ他の有機重合体の単量体成分が少量共重合されたものであってもよいし、複数の有機高分子をブレンドしてもよい。
【0017】
第1および第2の透明プラスチックフィルムは、1種のプラスチックからなる単層型フィルムであってもよいし、2種以上のプラスチックフィルムが積層された積層型フィルムであってもよい。積層型フィルムとする場合の積層体の種類、積層数、積層方法等は特に限定されず、目的に応じて公知の方法から任意に選択することができる。
【0018】
第1および第2の透明プラスチックフィルムの厚みは、それぞれ、10μm以上であることが好ましく、より好ましくは20μm以上である。透明プラスチックフィルムの厚みが10μm未満では、機械的強度が不足し、電子ペーパーなどのデバイス作製工程でのハンドリングが難しくなる虞がある。また第1および第2の透明プラスチックフィルムの厚みは、200μm以下であることが好ましく、より好ましくは160μm以下である。透明プラスチックフィルムの厚みが200μmを超えると、電子ペーパーなどのデバイスの厚みが厚くなりすぎるため、適さない場合がある。
【0019】
第1および第2の透明プラスチックフィルムには、本発明の目的を損なわない範囲で、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施してもよい。
【0020】
(ハードコート層(硬化物層))
第1の透明プラスチックフィルムには、その両面または片面に、硬化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層を1層以上設けてもよい。第1の透明プラスチックフィルムの無機薄膜層の形成面に硬化物層を設けると、無機薄膜層との密着性向上のほか、耐薬品性の付与、オリゴマーなどの低分子量物の析出防止といった効果が得られる。また第1の透明プラスチックフィルムの無機薄膜層形成面とは反対側の面に硬化物層を設けると、耐薬品性の付与、オリゴマーなどの低分子量物の析出防止といった効果が得られる。本明細書においては、第1の透明プラスチックフィルムの無機薄膜層形成面とは反対側の面に設けられた硬化物層を、特に「ハードコート層」と称することがある。
【0021】
前記硬化型樹脂は、加熱、紫外線照射、電子線照射などのエネルギー印加により硬化する樹脂であれば特に限定されなく、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。生産性の観点からは、紫外線硬化型樹脂を主成分とする硬化型樹脂が好ましい。
【0022】
前記紫外線硬化型樹脂としては、例えば、多価アルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂;ジイソシアネートや多価アルコールと、アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルなどとから合成されるような多官能性のウレタンアクリレート樹脂;などの多官能性の樹脂を挙げることができる。これらの多官能性の樹脂は、必要に応じて、単官能性の単量体(例えば、ビニルピロリドン、メチルメタクリレート、スチレンなど)を共重合させたものであってもよい。
【0023】
前記紫外線硬化型樹脂は、通常、光重合開始剤を添加して使用される。光重合開始剤としては、紫外線を吸収してラジカルを発生する公知の化合物を特に限定なく使用することができ、例えば、各種ベンゾイン類、フェニルケトン類、ベンゾフェノン類などを挙げることができる。光重合開始剤の添加量は、通常、紫外線硬化型樹脂100質量部に対して1〜5質量部程度とすることが好ましい。
【0024】
硬化物層を設けるには、例えば、前記硬化型樹脂を含有する塗布液を、第1の透明プラスチックフィルム上にコーティングした後、必要に応じて、加熱乾燥させたり、紫外線硬化型樹脂を用いる場合には紫外線照射したりすればよい。コーティングの方法には特に限定はなく、バーコート法、グラビアコート法、リバースコート法などの公知の方法を採用することができる。加熱温度は、塗布液に用いる溶媒の沸点に応じて適宜設定すればよく特に制限されないが、通常、50℃以上250℃以下が好ましく、より好ましくは70℃以上200℃以下である。また紫外線照射を行う際の光量は、通常、100mJ/cm2以上500mJ/cm2以下が好ましく、より好ましくは200mJ/cm2以上400mJ/cm2以下である。
【0025】
前記硬化型樹脂を含有する塗布液の濃度は、コーティング方法に応じた粘度などを考慮して適宜に選択すればよい。例えば、塗布液が紫外線硬化型樹脂および光重合開始剤を含有する場合、塗布液中に紫外線硬化型樹脂および光重合開始剤の合計量が占める割合は、通常、20〜80質量%程度である。
【0026】
なお塗布液には、必要に応じて、例えば、シリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤などのレベリング剤等の公知の添加剤を添加してもよい。
【0027】
硬化物層の厚みは、0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは1μm以上である。硬化物層の厚みが0.1μm未満の場合には、十分に架橋した構造が形成されにくくなるため、耐薬品性が得られにくくなったり、オリゴマーなどの低分子量物の抑制が不十分になり、密着性の向上効果が得られない傾向がある。また硬化物層の厚みは、15μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは8μm以下である。硬化物層の厚みが15μmを超える場合には、生産性が低下する傾向がある。
【0028】
前記第1の透明プラスチックフィルムの無機薄膜層形成面とは反対側の面に設けられた硬化物層(すなわちハードコート層)には防眩処理されていることが好ましい。積層体の最表面となるハードコート層に防眩処理が施されていると、電子ペーパーや有機ELなどの表示ディスプレイデバイスに好適に用いることができる。防眩処理は、例えば、硬化物層を形成する塗布液にシリカ粒子を加えることにより行うことができる。
【0029】
硬化物層には、無機薄膜層に対する付着力を向上させるために、表面処理を施すことが好ましい。具体的な方法としては、グロー放電又はコロナ放電を照射する放電処理法を用いて、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基を増加させる方法、酸又はアルカリで処理する化学薬品処理法を用いて、アミノ基、水酸基、カルボニル基などの極性基を増加させる方法などが挙げられる。
【0030】
(無機薄膜層)
無機薄膜層は金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料としては、SiO2、Al23などの金属酸化物、SiO2−Al23等の複合金属酸化物等が挙げられる。これらの中でも、Al23を含有する材料が水蒸気バリア性の点で好ましい。
【0031】
無機薄膜層の屈折率nは、1.45以上であることが好ましく、より好ましくは1.50以上である。屈折率nが1.45未満の場合、ポーラスな膜となりやすいため、ガスバリア性を向上させにくくなる傾向がある。また無機薄膜層の屈折率nは、1.70以下であることが好ましく、より好ましくは1.65以下である。屈折率nが1.70を超える場合、第1または第2の透明プラスチックフィルム、粘着剤層との屈折率差が大きくなるため、積層体の透過率が低下する虞がある。
【0032】
無機薄膜層の膜厚は、10nm以上が好ましく、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは30nm以上である。無機薄膜層の膜厚が10nm未満の場合、連続した薄膜になりにくく、良好なガスバリア性が得られにくくなる。また無機薄膜層の膜厚は、200nm以下が好ましく、より好ましくは180nm以下、さらに好ましくは160nm以下である。無機薄膜層の膜厚が200nmを超える場合、無機薄膜層の応力が大きくなり、第1の透明プラスチックフィルムが薄い場合にクラックが発生しやすくなり、水蒸気バリア性が低下してしまう虞がある。また膜厚が厚くなると水蒸気バリア性は良好になるが100nmを超えて積層させる場合、生産性が低下する。そのため、最も好ましくは30〜100nmの範囲である。
【0033】
無機薄膜層の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などが知られており、これら公知の方法のなかから、形成しようとする膜厚に応じて、適宜選択することができる。特に、膜厚のバラツキを低減するという観点からは、スパッタリング法が好ましい。一般的にスパッタリング法で製膜する場合は反応性DC又はACスパッタリング法が用いられる。この反応性スパッタリング法の中では、成膜速度を向上させるために、DC又はAC電源の電圧値を一定に保つように反応性ガス流量を制御するインピーダンス制御法、又は、特定元素のプラズマ中での発光強度を一定に保つように反応性ガス流量を制御するプラズマエミッション法が好ましい。特にインピーダンス制御法は、設備的に大掛かりにならず、プロセス安定性に優れるため、好ましい。
【0034】
インピーダンス制御法においては、Arなどの不活性ガスのみを流した場合の金属モードの放電電圧を100%とし、O、Nなどの反応性ガスを流した場合の酸化物または窒化物モードの放電電圧を0%とした時、20〜80%の値の放電電圧になるように制御することが好ましく、特に好ましくは30〜70%である。20%よりも低い場合、成膜速度の向上の効果が小さくなる傾向があり、一方、80%を超える場合、フィルム幅方向での膜厚の分布が生じやすくなる虞がある。
【0035】
無機薄膜層を成膜する際には、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用してもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、基板に直流、交流、高周波などのバイアスを印加してもよい。
【0036】
また無機薄膜層を成膜する際の水分圧としては、2×10−3Pa以下が好ましく、さらに好ましくは5×10−4Pa以下である。水分圧が2×10−3Paを超える場合、無機薄膜層中に水素が取り込まれ、ネットワーク(例えば、M−O−)の成長が停止することがあり、このため、無機薄膜層の連続性が乏しくなり、ガスバリア性が低下する虞がある。
【0037】
無機薄膜層を成膜する際には、あらかじめ第1の透明プラスチックフィルムを真空暴露しておくことができる。このとき、圧力は通常0.001Pa以上、0.01Pa以下程度とし、暴露時間は通常5分以上とすればよい。
【0038】
無機薄膜層を成膜する際には、さらに、優れたガスバリア性をもった無機薄膜層を安定的に得るために、成膜装置内に光学特性(透過率、カラー)測定装置を設けることが好ましい。光学特性の測定により無機薄膜層の膜厚,酸化度が確認できる。また、膜厚測定のために蛍光X線を用いてインラインで測定することも有効である。
【0039】
(粘着剤層)
粘着剤層は、上述した積層フィルムの無機薄膜層上に第2の透明プラスチックフィルムを積層するにあたり、無機薄膜層または第2の透明プラスチックフィルムの少なくとも一方に、粘着樹脂を塗布したり、粘着樹脂をシート状にしたものを貼り合せることにより形成される。
【0040】
粘着樹脂としては、特に制限されるものではなく、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ゴム系樹脂などの公知の樹脂が使用できる。特に、光学用として適しているアクリル系樹脂が好ましい。
【0041】
前記アクリル系樹脂は、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む単量体成分を重合することにより得られる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む単量体成分には、さらに、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基などの親水性基を有する単量体を共重合させることもできる。親水性基を有する単量体を共重合させることで、被着物との密着性を増加させることができる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、カルボキシル基を有するスチレン、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0043】
前記アクリル系樹脂を得る際には、通常、重合反応を加速するための重合開始剤を添加して前記単量体成分を逐次重合する。そして得られたアクリル系樹脂は、重合反応終了後に残存した未反応の重合開始剤を含んだままの状態で使用される。ところが、未反応の重合開始剤は、バリア性に影響を及ぼし、耐湿熱性等の環境安定性を低下させることがある。そのため、重合時には重合開始剤の未反応量をできるだけ低減することが望ましく、具体的には、アクリル系樹脂中に含まれる未反応の重合開始剤の量は、0.2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下である。重合開始剤の未反応量は、重合時間、重合温度、重合開始剤の添加量などで制御することができる。
【0044】
前記アクリル系樹脂を得る際に用いることのできる重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’ −アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物;などを挙げることができる。
【0045】
さらに前記粘着樹脂には、粘着剤層としての保持力を高める目的で、架橋剤を含有させることが好ましい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系、エポキシ系、メラミン系、尿素系、金属キレート系などの多官能性化合物が挙げられる。架橋剤の含有量は、粘着樹脂の固形分総量(粘着シート成分)に対して0.01質量%以上、10質量%以下とすることが好ましい。架橋剤を含有させた場合には、粘着樹脂を塗布後、必要に応じて、加熱したり、適当な温度にてエージングしたりして、さらに架橋反応を進めることもできる。
【0046】
前記粘着樹脂のガラス転移温度は、−80℃以上、5℃以下であることが好ましく、−70℃以上、−20℃以下であればさらに好ましい。前記粘着樹脂の分子量としては、重量平均分子量で10,000〜3,000,000が好ましく、50,000〜2,000,000がさらに好ましい。粘着樹脂の重量平均分子量が10,000未満である場合、粘着剤層を形成する際、粘性が低すぎるため流動性が大きくなりすぎ、シートとして均一な層を形成し難しくなる。また、3,000,000を超えると粘性が高くなりすぎ、レベリング作用が十分発現しなくなり、同様に均一な層を形成し難しくなる。
【0047】
(透明導電性薄膜層)
本発明の積層体には、前記第2の透明プラスチックフィルムの粘着剤層を設けた面とは反対側の面に、透明導電性薄膜層を設けることができる。これにより、透明導電性積層フィルムとして電子ペーパー、有機EL、太陽電池などに使用できる。
透明導電性薄膜を形成する材料としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物などの無機物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、PEDOT(poly(3,4−ethylenedioxythiophene))などの導電性高分子;極細導電炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノワイヤなど)を高分子中に分散させた有機物;グラフェン;等が挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物が好適である。
【0048】
透明導電性薄膜の層構造は、単層構造でもよいし、2層以上の積層構造でもよい。2層以上の積層構造を有する透明導電性薄膜の場合、各層を構成する材料(金属酸化物など)は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0049】
透明導電性薄膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などが知られており、これら公知の方法のなかから、形成しようとする膜厚に応じて、適宜選択することができる。特に、膜厚のバラツキを低減するという観点からは、スパッタリング法が好ましい。このとき、反応性ガスとして、酸素、窒素等を導入してもよいし、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用してもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、基板に直流、交流、高周波などのバイアスを印加してもよい。
【0050】
透明導電性薄膜の膜厚は、4nm以上が好ましく、より好ましくは10nm以上である。透明導電性薄膜の膜厚が4nm未満の場合、連続した薄膜になりにくく、良好な導電性が得られにくくなる。また透明導電性薄膜の膜厚は、200nm以下が好ましく、より好ましくは150nm以下である。透明導電性薄膜の膜厚が200nmよりも厚い場合、曲げた場合にクラックが発生しやすくなる虞がある。
【0051】
透明導電性薄膜層を積層した本発明の積層体の表面抵抗値は、5〜1000Ω/□であることが好ましく、より好ましくは10〜600Ω/□である。表面抵抗値が前記範囲であると、透明導電性積層フィルムとして電子ペーパー、有機EL、太陽電池などに使用できる。一方、表面抵抗値が前記範囲を外れると、デバイスの応答速度が遅くなる虞があり、好ましくない。
【0052】
本発明の積層体は、全光線透過率が87%以上であることが好ましい。全光線透過率が87%未満であると、電子ペーパーなどの電極基板として用いた場合、デバイスの透明性が低くなり、視認性が劣る傾向がある。全光線透過率を87%以上とするためには、特に無機薄膜層と第1の透明プラスチックフィルムの屈折率差|n−n|および無機薄膜層と粘着剤層の屈折率差|n−n|を低減することが有効であり、上記(i)および(ii)の関係を満足させればよい。上記(i)および(ii)の関係を満足しない場合(すなわち|n−n|の値または|n−n|の値が0.2を超える場合)、透過率を87%以上とすることが困難となる。なお、積層体の全光線透過率は、例えば実施例で後述する方法で測定することができる。
また本発明の積層体は、カラーb値が−1.0%〜4.0%であることが好ましい。カラーb値が−1.0%未満であるとデバイスの青味が強くなり、一方、4.0%を超えると黄色味が強くなるため、視認性が劣る傾向がある。上記(i)および(ii)の関係を満足する積層体であれば、カラーb値は前記範囲となる。なお、積層体のカラーb値は、例えば実施例で後述する方法で測定することができる。
【0053】
本発明の積層体は、水蒸気透過率が0.3g/m/day未満であることが好ましい。0.3g/m/day以上であると、デバイスを長期使用中にデバイス中に徐々に水分が入り込み、デバイスの劣化が起こりやすくなり、好ましくない。上記(i)および(ii)の関係を満足する積層体であれば、水蒸気透過率は前記範囲となる。なお、積層体の水蒸気透過率は、例えば実施例で後述する方法で測定することができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、積層体の性能は下記の方法により測定した。
【0055】
<水蒸気透過率>
JIS−K7129 B法に準じて、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「AQUATRAN」)を用い、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下で水蒸気透過度を測定した。なお積層体への調湿は、第1の透明プラスチック側から第2の透明プラスチック側に水蒸気が透過する方向とした。
【0056】
<全光線透過率>
JIS−K7136に準拠し、日本電色工業(株)製「NDH−1001DP」を用いて、全光線透過率(%)を測定した。
【0057】
<カラーb値>
JIS−K7105に準拠し、色差計(日本電色工業(株)製「ZE−2000」)を用いて、標準の光C/2でカラーb値を測定した。
【0058】
<表面抵抗値>
JIS−K7194に準拠し、4端子法にて表面抵抗値を測定した。測定には、三菱油化(株)製「Lotest AMCP−T400」を用いた。
【0059】
<無機薄膜層、透明導電性薄膜層の膜厚>
無機薄膜層の膜厚は無機薄膜層を形成した段階のフィルムを試料片とし、透明導電性薄膜層の膜厚は透明導電性薄膜層を形成した段階のフィルムを試料片として、ぞれぞれ、フィルム試料片を1mm×10mmの大きさに切り出し、電子顕微鏡用エポキシ樹脂に包埋した。これをウルトラミクロトームの試料ホルダに固定し、包埋した試料片の短辺に平行な断面薄切片を作製した。次いで、この切片の薄膜の著しい損傷がない部位において、透過型電子顕微鏡(JEOL社製「JEM−2010」)を用い、加速電圧200kV、明視野で観察倍率1万倍にて写真撮影を行い、得られた写真から膜厚を求めた。
【0060】
<無機薄膜層、透明導電性薄膜層の屈折率>
無機薄膜層の屈折率は、シリコンウェハー上に各実施例または比較例と同じ成膜条件にて無機薄膜層を形成することにより、屈折率測定用試料を作製し、得られた試料について分光エリプソメーター(大塚電子株式会社製「FE−5000」)を用いて550nmでの屈折率を測定して、得られた値を無機薄膜層の屈折率とした。
なお、実施例1で得られた無機薄膜層を設けた積層フィルムについて分光透過率測定を行い、得られたデータに対して光学シミュレーションソフトを用いてフィッティングを行うことにより屈折率を算出したところ(この際、無機薄膜層の膜厚は上述した測定方法で得られた値を用いた)、算出した無機薄膜層の屈折率は、シリコンウェハー上の無機薄膜層の屈折率(屈折率測定用試料を用いて測定した屈折率)と大差ないことを確認した。
また透明導電性薄膜層の屈折率も、シリコンウェハー上に各実施例と同じ成膜条件にて透明導電性薄膜層を形成することにより、屈折率測定用試料を作製し、得られた試料について上記無機薄膜層の屈折率と同様に、分光エリプソメーターにて測定した。
なお、実施例7で得られた透明導電性薄膜層を設けた積層フィルムについても、上記と同様にして、算出した透明導電性薄膜層の屈折率と、シリコンウェハー上の透明導電性薄膜層の屈折率(屈折率測定用試料を用いて測定した屈折率)とが大差ないことを確認した。
【0061】
<粘着剤層、透明プラスチックフィルムの屈折率>
JIS−K7142−1996 5.1(A法)により、ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折計により屈折率を測定した。
【0062】
〔実施例1〕
第一の透明プラスチックフィルムとして、厚み125μm、屈折率1.65の二軸配向透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、該PETフィルムの片面に硬化物層を積層させた。
【0063】
硬化物層を積層するに際しては、光重合開始剤含有紫外線硬化型アクリル系樹脂(大日精化工業社製「セイカビームEXF−01J」)100質量部に、溶剤としてトルエン/メチルエチルケトン(MEK)=80/20(質量比)の混合溶媒を、固形分濃度が50質量%になるように加え、撹拌して均一に溶解させることにより調製した塗布液を、マイヤーバーを用いてPETフィルム上に膜厚が5μmになるように塗布した。その後、80℃で1分間乾燥を行った後、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製「UB042−5AM−W型」)を用いて紫外線を照射(光量:300mJ/cm2)して塗膜を硬化させた。次いで、180℃で1分間の加熱処理を施して、揮発成分を低減した。
【0064】
次に、無機薄膜層を成膜するために、前記硬化物層を積層した第1の透明プラスチックフィルムの真空暴露を行った。具体的には、真空チャンバーで巻き返し処理を行い、このときの圧力は2×10−3Pa、暴露時間は20分とし、センターロールの温度は40℃とした。
【0065】
次いで、第1の透明プラスチックフィルムの硬化物層を形成していない面に、DCマグネトロンスパッタリング法にて、酸化アルミニウム(Al23)からなる無機薄膜層を成膜した。このとき、スパッタリング前の真空チャンバーの水圧力が1×10−4Paであることを確認した後、実施した。スパッタリングに際しては、ターゲットにAl(テクノファイン社製)を用い、3W/cm2のDC電力を印加した。そして、Arガスを流し、0.4Paの雰囲気下とし、センターロール温度は0℃とした。また、Gencoa社製の「Speedflo」を用いてスパッタリング時の放電電圧が一定になるように酸素流量を制御しながら行い、この際、Arガスのみを流した場合の放電電圧を100%、ArガスとO2ガスを50sccm流した場合の放電電圧を0%とした時、50%の値の放電電圧になるように設定した。このようにして形成した無機薄膜層の膜厚は40nm、屈折率は1.59であった。
【0066】
次に、上記で形成した無機薄膜層の上に、粘着剤層を介して第2の透明プラスチックフィルムを貼合し、積層体を作製した。具体的には、無機薄膜層の上に、アクリル系粘着樹脂(厚み25μm、シート状物)となるように塗布することにより屈折率1.52の粘着剤層を形成した後、該粘着剤層の上に、第2の透明プラスチックフィルムとして、厚み50μm、屈折率1.65の二軸配向透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをはり合わせた。
得られた積層体について、水蒸気透過率、全光線透過率、カラーb値を評価したところ、表1に示す結果となった。
【0067】
〔実施例2〕
無機薄膜層を製膜するにあたり、放電電圧を変更することにより無機薄膜層の膜厚を20nmとした以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
得られた積層体の無機薄膜層の屈折率は、表1に示す通りであった。また得られた積層体について、水蒸気透過率、全光線透過率、カラーb値を評価したところ、表1に示す結果となった。
【0068】
〔実施例3〕
無機薄膜層を製膜するにあたり、放電電圧を変更することにより無機薄膜層の膜厚を10nmとした以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
得られた積層体の無機薄膜層の屈折率は、表1に示す通りであった。また得られた積層体について、水蒸気透過率、全光線透過率、カラーb値を評価したところ、表1に示す結果となった。
【0069】
〔実施例4〕
無機薄膜層を製膜するにあたり、放電電圧を変更することにより無機薄膜層の膜厚を100nmとした以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
得られた積層体の無機薄膜層の屈折率は、表1に示す通りであった。また得られた積層体について、水蒸気透過率、全光線透過率、カラーb値を評価したところ、表1に示す結果となった。
【0070】
〔実施例5〕
無機薄膜層を製膜するにあたり、放電電圧を変更することにより無機薄膜層の膜厚を150nmとした以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
得られた積層体の無機薄膜層の屈折率は、表1に示す通りであった。また得られた積層体について、水蒸気透過率、全光線透過率、カラーb値を評価したところ、表1に示す結果となった。
【0071】
〔実施例6〕
無機薄膜層を製膜するにあたり、放電電圧を変更することにより無機薄膜層の膜厚を200nmとした以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
得られた積層体の無機薄膜層の屈折率は、表1に示す通りであった。また得られた積層体について、水蒸気透過率、全光線透過率、カラーb値を評価したところ、表1に示す結果となった。
【0072】
〔実施例7〕
実施例1で作製した積層体の第2の透明プラスチックフィルムの上(外側の面)に、DCマグネトロンスパッタリング法にて、インジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜層を成膜した。このとき、スパッタリング前の真空チャンバーの水圧力が1×10−4Paであることを確認後、実施した。スパッタリングに際しては、ターゲットに酸化スズを10質量%含有する酸化インジウム(住友金属鉱山社製、密度7.1g/cm3)を用い、2W/cm2のDC電力を印加した。そして、ArガスとO2ガスを表面抵抗値が最小となる流速で流し、0.4Paの雰囲気下とし、センターロール温度は0℃とした。また、雰囲気の酸素分圧をスパッタプロセスモニター(LEYBOLD INFICON社製「XPR2」)にて常時観測しながら、インジウム−スズ複合酸化物薄膜層中の酸化度が一定になるように酸素ガスの流量計及びDC電源にフィートバックした。このようにして形成した透明導電性薄膜層の膜厚は20nm、屈折率は1.85であった。
得られた積層体について、水蒸気透過率、全光線透過率、カラーb値および透明導電性薄膜層側の表面抵抗値を評価したところ、表1に示す結果となった。
【0073】
〔実施例8〕
硬化物層を積層するにあたり塗布液に平均粒子径0.5μmのシリカ粒子10質量部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得、さらにこの積層体に対して実施例7と同様にして透明導電性薄膜層を積層して、積層体を作製した。
得られた積層体について、水蒸気透過率、全光線透過率、カラーb値および透明導電性薄膜層側の表面抵抗値を評価したところ、表1に示す結果となった。
【0074】
〔実施例9〕
無機薄膜層として、DCマグネトロンスパッタリング法にて、Al23−SiOからなる無機薄膜層を成膜したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。Al23−SiO膜の成膜は、スパッタリング前の真空チャンバーの水圧力が1×10−4Paであることを確認した後、実施した。スパッタリングに際しては、ターゲットにAl−Si(組成比Al:Si=5:5、高純度化学社製)を用い、3W/cm2のDC電力を印加した。そして、Arガスを流し、0.4Paの雰囲気下とし、センターロール温度は0℃とした。また、Gencoa社製の「Speedflo」を用いてスパッタリング時の放電電圧が一定になるように酸素流量を制御しながら行い、この際、Arガスのみを流した場合の放電電圧を100%、ArガスとO2ガスを50sccm流した場合の放電電圧を0%とした時、50%の値の放電電圧になるように設定した。このようにして形成した無機薄膜層の膜厚は40nm、屈折率は1.52であった。
得られた積層体について、水蒸気透過率、全光線透過率、カラーb値を評価したところ、表1に示す結果となった。
【0075】
〔実施例10〕
第1の透明プラスチックフィルムとして、厚み100μm、屈折率1.53のシクロオレフィン系フィルム(日本ゼオン社製「ZF−14」)を用い、かつ硬化物層を積層させなかったこと以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
得られた積層体について、水蒸気透過率、全光線透過率、カラーb値を評価したところ、表1に示す結果となった。
【0076】
〔実施例11〕
実施例10で作製した積層体の第2の透明プラスチックフィルムの上(外側の面)に、実施例7と同様にして、インジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜層を成膜して、積層体を作製した。
得られた積層体について、水蒸気透過率、全光線透過率、カラーb値および透明導電性薄膜層側の表面抵抗値を評価したところ、表1に示す結果となった。
【0077】
〔実施例12〕
無機薄膜層を成膜するにあたり、実施例9と同様にしてAl23−SiOからなる無機薄膜層を成膜したこと以外は、実施例10記載と同様にして積層体を作製した。
得られた積層体について、水蒸気透過率、全光線透過率、カラーb値を評価したところ、表1に示す結果となった。
【0078】
〔比較例1〕
無機薄膜層として、DCマグネトロンスパッタリング法にて、窒化アルミニウムからなる無機薄膜層を成膜したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。窒化アルミニウム膜の成膜は、スパッタリング前の真空チャンバーの水圧力が1×10−4Paであることを確認した後、実施した。スパッタリングに際しては、ターゲットにAl(テクノファイン社製)を用い、2W/cm2のDC電力を印加した。そして、Arガスを流し、0.4Paの雰囲気下とし、センターロール温度は0℃とした。また、Gencoa社製の「Speedflo」を用いてスパッタリング時の放電電圧が一定になるように窒素流量を制御しながら行い、この際、Arガスのみを流した場合の放電電圧を100%、ArガスとNガスを50sccm流した場合の放電電圧を0%とした時、50%の値の放電電圧になるように設定した。このようにして形成した無機薄膜層の膜厚は40nm、屈折率は2.12であった。
得られた積層体について、水蒸気透過率、全光線透過率、カラーb値を評価したところ、表1に示す結果となった。
【0079】
〔比較例2〕
無機薄膜層として、DCマグネトロンスパッタリング法にて、ジルコニア−シリコン複合酸化物(ZrO−SiO)からなる無機薄膜層を成膜したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。ジルコニア−シリコン複合酸化物膜の成膜は、スパッタリング前の真空チャンバーの水圧力が1×10−4Paであることを確認した後、実施した。スパッタリングに際しては、ターゲットにZrSi(三井金属社製)を用い、2W/cm2のDC電力を印加した。そして、Arガスを流し、0.4Paの雰囲気下とし、センターロール温度は0℃とした。また、Gencoa社製の「Speedflo」を用いてスパッタリング時の放電電圧が一定になるように酸素流量を制御しながら行い、この際、Arガスのみを流した場合の放電電圧を100%、ArガスとOガスを50sccm流した場合の放電電圧を0%とした時、50%の値の放電電圧になるように設定した。このようにして形成した無機薄膜層の膜厚は40nm、屈折率は1.80であった。
得られた積層体について、水蒸気透過率、全光線透過率、カラーb値を評価したところ、表1に示す結果となった。
【0080】
〔比較例3〕
第1の透明プラスチックフィルムとして、厚み100μm、屈折率1.34のヘキサフルオロプロピレンの共重合体フィルム(ダイキン化学工業社製「ネオフロンFEPフィルムNF−0100」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
得られた積層体について、水蒸気透過率、全光線透過率、カラーb値を評価したところ、表1に示す結果となった。
【0081】
【表1】

【0082】
表1の結果から明らかなように、|無機薄膜層の屈折率n−第1の透明プラスチックフィルムの屈折率n|の値と、|無機薄膜層の屈折率n−粘着剤層の屈折率n|の値の両方が本発明の範囲である実施例1〜12の積層体は、優れた透明性と優れた水蒸気バリア性を兼ね備えたものであった。
それに対して、|無機薄膜層の屈折率n−第1の透明プラスチックフィルムの屈折率n|の値と、|無機薄膜層の屈折率n−粘着剤層の屈折率n|の値の両方が本発明の範囲から外れる比較例1の積層体や、|無機薄膜層の屈折率n−粘着剤層の屈折率n|の値のみが本発明の範囲から外れる比較例2の積層体は、全光線透過率が82%ないし85%であり、いずれも透明性が不十分なものであった。また|無機薄膜層の屈折率n−第1の透明プラスチックフィルムの屈折率n|の値のみが本発明の範囲から外れる比較例3の積層体は、十分な無機薄膜層の厚み(40nm)を有していながら、水蒸気透過率が0.25g/m/dayと高く、水蒸気バリア性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の積層体は、透明性および水蒸気バリア性に優れるため、電子ペーパー、太陽電池、有機ELなどの電子材料の基板として特に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0084】
1:第1の透明プラスチックフィルム
2:硬化物層
3:無機薄膜層
4:粘着剤層
5:第2の透明プラスチックフィルム
6:透明導電性薄膜層
10:積層体
11:透明導電性薄膜付積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の透明プラスチックフィルムの片面に、無機物からなる無機薄膜層を積層した積層フィルムの無機薄膜層側の面に、第2の透明プラスチックフィルムを粘着剤層を介して積層した積層体であって、前記第1の透明プラスチックフィルムの屈折率n、前記粘着剤層の屈折率nおよび前記無機薄膜層の屈折率nが下記(i)および(ii)の関係を満たすことを特徴とする積層体。
|n−n|≦0.2 (i)
|n−n|≦0.2 (ii)
【請求項2】
前記無機薄膜層の膜厚が10〜200nmである請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記無機薄膜層がAl23を含有する請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記無機薄膜層が反応性スパッタリング法によるインピーダンス制御法により形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記無機薄膜層の屈折率nと前記第2の透明プラスチックフィルムの屈折率nが下記(iii)の関係を満たす請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
|n−n|≦0.2 (iii)
【請求項6】
前記第2の透明プラスチックフィルムの粘着剤層を設けた面とは反対側の面に、透明導電性薄膜層を設けた請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記第1の透明プラスチックフィルムの無機薄膜層を設けた面とは反対側の面に、ハードコート層を設けた請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
前記ハードコート層が防眩処理されている請求項7に記載の積層体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−214016(P2012−214016A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20404(P2012−20404)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】