説明

積層型LC複合部品

【課題】 複数のコイルとコンデンサとの電気的な接続の信頼性を確保することが可能な積層型LC複合部品を提供すること。
【解決手段】 積層型LC複合部品1は、コイル部F1と、コンデンサ部F3と、接続部F2とを備える。コイル部F1は、コイル導体パターンB11〜B22が形成された磁性体グリーンシートA1〜A7が積層されて構成される複数のコイル13,14を含む。コンデンサ部F3は、コンデンサ電極B81〜B88が形成された誘電体グリーンシートA12〜A19が積層されて構成されるコンデンサ15を含む。複数のコイル13,14をコンデンサ15に電気的に接続するスルーホール電極C15,C17,C19,C21と当該スルーホール電極C15,C17,C19,C21を電気的に接続する接続導体パターンB31,B32が形成された誘電体グリーンシートA8,A10を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型LC複合部品に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の積層型LC複合部品として、複数の導体パターンがそれぞれ形成された複数の絶縁体が積層されて構成される複数のコイルを含むコイル部と、コンデンサ電極が形成された複数の絶縁体が積層されて構成されるコンデンサを含むコンデンサ部と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載された積層型LC複合部品では、各コイルとコンデンサとは、絶縁体の積層方向から見て絶縁体の中央の同一箇所に集中し且つ当該絶縁体の厚み方向に1列に並んで配置されているスルーホール電極により電気的に接続されている。
【特許文献1】特許第3413348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような構成の積層型LC複合部品は、導体パターンが形成された複数の絶縁体やコンデンサ電極が形成された複数の絶縁体等を積層した後に焼成することにより製造される。この場合、導体パターン、コンデンサ電極、スルーホール電極、及び絶縁体は、焼成時の加熱によって収縮する。スルーホール電極等に用いられる導電体材料は、絶縁体を構成する磁性体材料や非磁性体材料よりも焼成後の縮率が小さいため、スルーホール電極等に比べて絶縁体の方がより収縮する。従って、各スルーホール電極が、積層方向から見て、同一箇所に集中して配置されていると、スルーホール電極の応力によりスルーホール周辺にクラックが発生し易くなる。
【0005】
スルーホール周辺に発生したクラックが積層型LC複合部品の表面まで達すると、当該クラックに沿って水分が積層型LC複合部品内に滲入する懼れが生じる。積層型LC複合部品内に水分が滲入した場合には、絶縁抵抗が低下し、電子部品としての信頼性を著しく低下させるという問題を招くこととなる。
【0006】
上述したクラックの発生を抑制するための手法として、スルーホールに充填する導電体材料の量を少なくすることが考えられるが、以下のような問題が新たに生じてしまう。導電体材料の量を少なくすると、焼成後にスルーホール電極の表面に窪みが形成される。窪みが形成された状態で絶縁体を積層して圧着すると、窪みに存在する空気が抜け切らずに、空隙が形成される。この空隙は、スルーホール電極の電気的な接続を阻害する要因となる。
【0007】
本発明の目的は、複数のコイルとコンデンサとの電気的な接続の信頼性を確保することが可能な積層型LC複合部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る積層型LC複合部品は、複数の導体パターンがそれぞれ形成された複数の絶縁体が積層されて構成される複数のコイルを含むコイル部と、コンデンサ電極が形成された複数の絶縁体が積層されて構成されるコンデンサを含むコンデンサ部と、コイル部とコンデンサ部との間に位置すると共に、各コイルをそれぞれコンデンサに電気的に接続する複数のスルーホール電極と当該複数のスルーホール電極を互いに電気的に接続する接続導体パターンとが形成された絶縁体を含む接続部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る積層型LC複合部品では、接続部に含まれる絶縁体に複数のスルーホール電極と接続導体パターンとが形成されているので、いずれかのスルーホール電極での電気的な接続が不良となった場合でも、残りのスルーホール電極と接続導体パターンとにより複数のコイルとコンデンサとが電気的に接続されることとなる。これにより、スルーホール電極を通した複数のコイルとコンデンサとの電気的な接続の信頼性を確保することができる。
【0010】
なお、本発明では、複数のコイルとコンデンサとの電気的な接続の信頼性が確保されているので、スルーホール電極を形成する際に、スルーホールに充填する導電体材料を少なくしてもよい。このようにスルーホールに充填する導電体材料を少なくした場合、スルーホール電極の応力が弱くなり、スルーホール周辺にクラックが発生するのを抑制できる。
【0011】
また、接続部は、複数のスルーホール電極と接続導体パターンとが形成された絶縁体を複数含んでいることが好ましい。この場合、スルーホール電極を通した複数のコイルとコンデンサとの電気的な接続の信頼性をより一層確保することができる。
【0012】
また、接続部は、複数のスルーホール電極が形成された絶縁体を更に含んでおり、絶縁体の厚み方向に隣接するスルーホール電極同士は、それぞれの中心軸が絶縁体の厚み方向から見てずれていることが好ましい。この場合、スルーホール電極の応力がそれぞれ分散して、接続部全体として、応力が弱くなる。この結果、スルーホール周辺におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0013】
また、各絶縁体において、複数のスルーホール電極同士はそれぞれの中心軸がコイルの整列方向から見てずれていることが好ましい。
【0014】
また、コンデンサ電極は、各コイルに電気的に接続される第1のコンデンサ電極と、当該第1のコンデンサ電極に対応する第2のコンデンサ電極とを含み、コンデンサは、第1のコンデンサ電極と第2のコンデンサ電極とが絶縁体を挟んで交互に複数積層されて構成されており、第1及び第2のコンデンサ電極が形成される各絶縁層には、第1のコンデンサ電極同士を電気的に接続する複数のスルーホール電極が形成されていることが好ましい。この場合、スルーホール電極を通した第1のコンデンサ電極同士の電気的な接続の信頼性を確保することができる。
【0015】
また、第1のコンデンサ電極同士を電気的に接続する複数のスルーホール電極のうち絶縁体の厚み方向に隣接するスルーホール電極同士は、それぞれの中心軸が絶縁体の厚み方向から見てずれていることが好ましい。この場合、スルーホール電極の応力がそれぞれ分散して、コンデンサ部全体として、応力が弱くなる。この結果、スルーホール周辺におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0016】
また、各絶縁層に形成された第1のコンデンサ電極同士を電気的に接続する複数のスルーホール電極同士は、それぞれの中心軸がコイルの整列方向から見てずれていることが好ましい。
【0017】
また、第1のコンデンサ電極同士を電気的に接続する各スルーホール電極は、絶縁体の厚み方向とコイルの整列方向とに直交する方向から見て、接続部に含まれる絶縁体に形成された複数のスルーホール電極よりも内側に位置することが好ましい。この場合、接続部のスルーホール電極の応力とコンデンサ部のスルーホール電極の応力とがそれぞれ分散して、接続部及びコンデンサ部全体として、応力が弱くなる。この結果、スルーホール周辺におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0018】
また、コイル部にて積層される絶縁体とコンデンサ部にて積層される絶縁体とは、非磁性体であることが好ましい。この場合、コンデンサのキャパシタンスとコイルのインダクタンスとで決まる共振周波数を高周波側に設定することが可能となり、より高帯域のノイズを除去することができる。
【0019】
また、コイル部にて積層される絶縁体は磁性体であり、コンデンサ部にて積層される絶縁体は非磁性体であることが好ましい。コンデンサのキャパシタンスとコイルのインダクタンスとで決まる共振周波数を低周波側に設定することが可能となり、より低帯域のノイズを除去することができる。
【0020】
また、コンデンサ部にて積層される絶縁体は、電圧非直線特性を発現する材料を含むことが好ましい。この場合、コンデンサ部はバリスタとして機能することとなる。
【0021】
本発明に係る積層型LC複合部品は、複数の導体パターンがそれぞれ形成された複数の絶縁体が積層されて構成される複数のコイルを含むコイル部と、コンデンサ電極が形成された複数の絶縁体が積層されて構成されるコンデンサを含むコンデンサ部と、コイル部とコンデンサ部との間に位置すると共に、複数のコイルとコンデンサとを電気的に並列に接続する複数の通電経路が形成された絶縁体を含む接続部と、を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る積層型LC複合部品では、接続部に含まれる絶縁体に複数のコイルとコンデンサとを電気的に並列に接続する複数の通電経路が形成されているので、いずれかの通電経路での電気的な接続が不良となった場合でも、残りの通電経路により複数のコイルとコンデンサとが電気的に接続されることとなる。これにより、複数のコイルとコンデンサとの電気的な接続の信頼性を確保することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複数のコイルとコンデンサとの電気的な接続の信頼性を確保することが可能な積層型LC複合部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る積層型LC複合部品の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0025】
図1〜図4を参照して、本実施形態に係る積層型LC複合部品1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る積層型LC複合部品を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る積層型LC複合部品の断面構成を説明するための図である。図3は、本実施形態に係る積層型LC複合部品に含まれる積層体の分解斜視図である。図4は、本実施形態に係る積層型LC複合部品の等価回路を説明するための図である。
【0026】
積層型LC複合部品1は、図1に示されるように、積層体10、一対の入出力端子11a,11b、及び、グランド端子12を備える。一対の入出力端子11a,11bは、積層体10の長手方向の両端部にそれぞれ設けられている。グランド端子12は、積層体10の側面の略中央に設けられている。
【0027】
積層体10は、図2及び図3に示されるように、複数(本実施形態においては、2個)のコイル13,14を含むコイル部F1と、接続部F2、及び、コンデンサ15を含むコンデンサ部F3を備えている。これらコイル部F1、接続部F2及びコンデンサ部F3が積層されることにより直方体形状の積層体10が構成されることとなる。接続部F2は、コイル部F1とコンデンサ部F3との間に位置する。
【0028】
まず、コイル部F1の構成について説明する。コイル部F1が含むコイル13,14は、引き出し導体パターンB1,B2が形成された磁性体グリーンシートA1及びコイル導体パターンB11,B17が形成された磁性体グリーンシートA2〜A7が積層されることにより構成される。
【0029】
各引き出し導体パターンB1,B2は、磁性体グリーンシートA1上に、互いに所定の間隔を有した状態で積層体10の長手方向に併設されている。各引き出し導体パターンB1,B2同士は、電気的に絶縁されている。引き出し導体パターンB1は、当該引き出し導体パターンB1の一端に位置すると共に、磁性体グリーンシートA1の端面に露出する導出部E1を含んでいる。導出部E1は、コイル13の一方の端部に位置することとなる。引き出し導体パターンB1の導出部E1、すなわちコイル13の一方の端部は、入出力端子11aに電気的に接続される。引き出し導体パターンB2は、当該引き出し導体パターンB2の一端に位置すると共に、磁性体グリーンシートA2の端面に露出する導出部E2を含んでいる。導出部E2は、コイル14の一方の端部に位置することとなる。引き出し導体パターンB2の導出部E2、すなわちコイル14の一方の端部は、入出力端子11bに電気的に接続される。磁性体グリーンシートA1における各導体パターンB1,B2の他端に対応する位置には、磁性体グリーンシートA1を厚み方向に貫通するスルーホール電極C1、C8がそれぞれ形成されている。各スルーホール電極C1,C8は、対応する導体パターンB1,B2の他端と電気的に接続されている。
【0030】
各コイル導体パターンB11,B17は、磁性体グリーンシートA2上に、互いに所定の間隔を有した状態で積層体10の長手方向に併設されている。各コイル導体パターンB11,B17同士は、電気的に絶縁されている。コイル導体パターンB11,B17は、コイル13,14の略3/4ターンに相当し、磁性体グリーンシートA2上で、略U字状に伸びている。コイル導体パターンB11,B17は、当該コイル導体パターンB11,B17の一端に、磁性体グリーンシートA1,A2が積層された状態でスルーホール電極C1,C8とそれぞれ電気的に接続される領域を含んでいる。磁性体グリーンシートA2における各コイル導体パターンB11,B17の他端に対応する位置には、磁性体グリーンシートA2を厚み方向に貫通するスルーホール電極C2,C9がそれぞれ形成されている。各スルーホール電極C2,C9は、対応するコイル導体パターンB11,B17の他端と電気的に接続されている。
【0031】
各コイル導体パターンB12,B18は、磁性体グリーンシートA3上に、互いに所定の間隔を有した状態で積層体10の長手方向に併設されている。各コイル導体パターンB12,B18同士は、電気的に絶縁されている。コイル導体パターンB12,B18は、コイル13,14の略3/4ターンに相当し、磁性体グリーンシートA3上で、略C字状に伸びている。コイル導体パターンB12,B18は、当該コイル導体パターンB12,B18の一端に、磁性体グリーンシートA2,A3が積層された状態でスルーホール電極C2,C9とそれぞれ電気的に接続される領域を含んでいる。磁性体グリーンシートA3における各コイル導体パターンB12,B18の他端に対応する位置には、磁性体グリーンシートA3を厚み方向に貫通するスルーホール電極C3,C10がそれぞれ形成されている。各スルーホール電極C3,C10は、対応するコイル導体パターンB12,B18の他端と電気的に接続されている。
【0032】
各コイル導体パターンB13,B19は、磁性体グリーンシートA4上に、互いに所定の間隔を有した状態で積層体10の長手方向に併設されている。各コイル導体パターンB13,B19同士は、電気的に絶縁されている。コイル導体パターンB13,B19は、コイル13,14の略3/4ターンに相当し、磁性体グリーンシートA4上で、略U字状に伸びている。コイル導体パターンB13,B19は、当該コイル導体パターンB13,B19の一端に、磁性体グリーンシートA3,A4が積層された状態でスルーホール電極C3,C10とそれぞれ電気的に接続される領域を含んでいる。磁性体グリーンシートA4における各コイル導体パターンB13,B19の他端に対応する位置には、磁性体グリーンシートA4を厚み方向に貫通するスルーホール電極C4,C11がそれぞれ形成されている。各スルーホール電極C4,C11は、対応するコイル導体パターンB13,B19の他端と電気的に接続されている。
【0033】
各コイル導体パターンB14,B20は、磁性体グリーンシートA5上に、互いに所定の間隔を有した状態で積層体10の長手方向に併設されている。各コイル導体パターンB14,B20同士は、電気的に絶縁されている。コイル導体パターンB14,B20は、コイル13,14の略3/4ターンに相当し、磁性体グリーンシートA5上で、略C字状に伸びている。コイル導体パターンB14,B20は、当該コイル導体パターンB14,B20の一端に、磁性体グリーンシートA4,A5が積層された状態でスルーホール電極C4,C11とそれぞれ電気的に接続される領域を含んでいる。磁性体グリーンシートA5における各コイル導体パターンB14,B20の他端に対応する位置には、磁性体グリーンシートA5を厚み方向に貫通するスルーホール電極C5,C12がそれぞれ形成されている。各スルーホール電極C5,C12は、対応するコイル導体パターンB14,B20の他端と電気的に接続されている。
【0034】
各コイル導体パターンB15,B21は、磁性体グリーンシートA6上に、互いに所定の間隔を有した状態で積層体10の長手方向に併設されている。各コイル導体パターンB15,B21同士は、電気的に絶縁されている。コイル導体パターンB15,B21は、コイル13,14の略3/4ターンに相当し、磁性体グリーンシートA6上で、略U字状に伸びている。コイル導体パターンB15,B21は、当該コイル導体パターンB15,B21の一端に、磁性体グリーンシートA5,A6が積層された状態でスルーホール電極C5,C12とそれぞれ電気的に接続される領域を含んでいる。磁性体グリーンシートA6における各コイル導体パターンB15,B21の他端に対応する位置には、磁性体グリーンシートA6を厚み方向に貫通するスルーホール電極C6,C13がそれぞれ形成されている。各スルーホール電極C6,C13は、対応するコイル導体パターンB15,B21の他端と電気的に接続されている。
【0035】
各コイル導体パターンB16,B22は、磁性体グリーンシートA7上に、互いに所定の間隔を有した状態で積層体10の長手方向に併設されている。各コイル導体パターンB16,B22同士は、電気的に絶縁されている。コイル導体パターンB16,B22は、コイル13,14の略1ターンに相当し、磁性体グリーンシートA7上で、スパイラル状に巻き回されている。コイル導体パターンB16,B22は、当該コイル導体パターンB16,B22の一端に、磁性体グリーンシートA6,A7が積層された状態でスルーホール電極C6,C13とそれぞれ電気的に接続される領域を含んでいる。磁性体グリーンシートA7における各コイル導体パターンB16,B22の他端に対応する位置には、磁性体グリーンシートA7を厚み方向に貫通するスルーホール電極C7,C14がそれぞれ形成されている。各スルーホール電極C7,C14は、対応するコイル導体パターンB16,B22の他端と電気的に接続されている。
【0036】
引き出し導体パターンB1及びコイル導体パターンB11〜B16は、相互に電気的に接続されることで、コイル13を構成することとなる。引き出し導体パターンB2及びコイル導体パターンB17〜B22は、相互に電気的に接続されることで、コイル14を構成することとなる。
【0037】
次に、接続部F2の構成について説明する。接続部F2は、複数(本実施形態においては、4層)の誘電体グリーンシートA8〜A11を含んでいる。接続部F2は、誘電体グリーンシートA8〜A11が積層されることにより構成される。
【0038】
誘電体グリーンシートA8の表面には接続導体パターンB31が形成されている。接続導体パターンB31は、コイル13,14の整列方向(積層体10の長手方向)に伸びている。誘電体グリーンシートA8における接続導体パターンB31の両端に対応する位置には、誘電体グリーンシートA8を厚み方向に貫通するスルーホール電極C15,C19がそれぞれ形成されている。各スルーホール電極C15,C19は、接続導体パターンB31の端と電気的に接続されている。接続導体パターンB31は、誘電体グリーンシートA7,A8が積層された状態でスルーホール電極C7,C14とそれぞれ電気的に接続される。
【0039】
誘電体グリーンシートA9の表面にはスルーホール接続導体パターンB41,B43が島状に形成されている。誘電体グリーンシートA9における各スルーホール接続導体パターンB41,B43に対応する位置には、誘電体グリーンシートA9を厚み方向に貫通するスルーホール電極C16,C20がそれぞれ形成されている。各スルーホール電極C16,C20は、対応するスルーホール接続導体パターンB41,B43と電気的に接続されている。各スルーホール接続導体パターンB41,B43は、誘電体グリーンシートA8,A9が積層された状態でスルーホール電極C15,C19とそれぞれ電気的に接続される。
【0040】
誘電体グリーンシートA10の表面には接続導体パターンB32が形成されている。接続導体パターンB32は、コイル13,14の整列方向(積層体10の長手方向)に伸びている。誘電体グリーンシートA10における接続導体パターンB32の両端に対応する位置には、誘電体グリーンシートA10を厚み方向に貫通するスルーホール電極C17,C21がそれぞれ形成されている。各スルーホール電極C17,C21は、接続導体パターンB32の端と電気的に接続されている。接続導体パターンB32は、誘電体グリーンシートA9,A10が積層された状態でスルーホール電極C16,C20とそれぞれ電気的に接続される。
【0041】
誘電体グリーンシートA11の表面にはスルーホール接続導体パターンB42,B44が島状に形成されている。誘電体グリーンシートA11における各スルーホール接続導体パターンB42,B44に対応する位置には、誘電体グリーンシートA11を厚み方向に貫通するスルーホール電極C18,C22がそれぞれ形成されている。各スルーホール電極C18,C22は、対応するスルーホール接続導体パターンB42,B44と電気的に接続されている。各スルーホール接続導体パターンB42,B44は、誘電体グリーンシートA10,A11が積層された状態でスルーホール電極C17,C21とそれぞれ電気的に接続される。
【0042】
スルーホール電極C15〜C18は、誘電体グリーンシートA8〜A11が積層されることにより、誘電体グリーンシートA8〜A11の積層方向に略直線状に併設され、相互に電気的に接続されることにより通電経路を構成する。スルーホール電極C19〜C22は、誘電体グリーンシートA8〜A11が積層されることにより、誘電体グリーンシートA8〜A11の積層方向に略直線状に併設され、相互に電気的に接続されることにより通電経路を構成する。また、スルーホール電極C15〜C18により構成される通電経路と、スルーホール電極C19〜C22により構成される通電経路とは、接続導体パターンB31,B32によって相互に電気的に接続される。
【0043】
次にコンデンサ部F3の構成について説明する。コンデンサ部F3が含むコンデンサ15は、第1のコンデンサ電極B81,B83,B85,B87が形成された誘電体グリーンシートA12,A14,A16,A18及び第2のコンデンサ電極B82,B84,B86,B88が形成された誘電体グリーンシートA13,A15,A17,A19が積層されることにより構成される。本実施形態においては、第1のコンデンサ電極B81,B83,B85,B87は信号用の電極(いわゆる、ホット電極)とされ、第2のコンデンサ電極B82,B84,B86,B88は接地用の電極(いわゆる、グランド電極)とされる。
【0044】
誘電体グリーンシートA12の表面には、第1のコンデンサ電極B81が形成されている。誘電体グリーンシートA12の中央部には、当該誘電体グリーンシートA12を厚み方向に貫通する複数のスルーホール電極C23,C29が形成されている。スルーホール電極C23,C29は、第1のコンデンサ電極B81と電気的に接続されている。誘電体グリーンシートA12は、誘電体グリーンシートA11,A12が積層された状態で、スルーホール電極C18,C22とそれぞれ電気的に接続する領域が含まれている。
【0045】
誘電体グリーンシートA13の表面には、第1のコンデンサ電極B81,B83に対応する第2のコンデンサ電極B82が形成されている。第2のコンデンサ電極B82の中央には、誘電体グリーンシートA13が露出するように開口が形成されている。第2のコンデンサ電極B82は、誘電体グリーンシートA13の互いに対向する端面に露出する導出部E3,E4を含む。第2のコンデンサ電極B82は導出部E3,E4を通して、グランド端子12に電気的に接続される。誘電体グリーンシートA13の表面には、第2のコンデンサ電極B82に形成された開口に対応する領域に、スルーホール接続導体パターンB45,B48が島状に形成されている。誘電体グリーンシートA13における各スルーホール接続導体パターンB45,B48に対応する位置には、誘電体グリーンシートA13を厚み方向に貫通するスルーホール電極C24,C30がそれぞれ形成されている。各スルーホール電極C24,C30は、対応するスルーホール接続導体パターンB45,B48と電気的に接続されている。各スルーホール接続導体パターンB45,B48は、誘電体グリーンシートA12,A13が積層された状態でスルーホール電極C23,C29とそれぞれ電気的に接続される。
【0046】
誘電体グリーンシートA14の表面には、第1のコンデンサ電極B83が形成されている。誘電体グリーンシートA14の中央部には、当該誘電体グリーンシートA14を厚み方向に貫通する複数のスルーホール電極C25,C31が形成されている。スルーホール電極C25,C31は、第1のコンデンサ電極B83と電気的に接続されている。誘電体グリーンシートA14は、誘電体グリーンシートA13,A14が積層された状態で、スルーホール電極C24,C30とそれぞれ電気的に接続する領域が含まれている。
【0047】
誘電体グリーンシートA15の表面には、第1のコンデンサ電極B83,B85に対応する第2のコンデンサ電極B84が形成されている。第2のコンデンサ電極B84の中央には、誘電体グリーンシートA15が露出するように開口が形成されている。第2のコンデンサ電極B84は、誘電体グリーンシートA15の互いに対向する端面に露出する導出部E5,E6を含む。第2のコンデンサ電極B84は導出部E5,E6を通して、グランド端子12に電気的に接続される。誘電体グリーンシートA15の表面には、第2のコンデンサ電極B84に形成された開口に対応する領域に、スルーホール接続導体パターンB46,B49が島状に形成されている。誘電体グリーンシートA15における各スルーホール接続導体パターンB46,B49に対応する位置には、誘電体グリーンシートA15を厚み方向に貫通するスルーホール電極C26,C32がそれぞれ形成されている。各スルーホール電極C26,C32は、対応するスルーホール接続導体パターンB46,B49と電気的に接続されている。各スルーホール接続導体パターンB46,B49は、誘電体グリーンシートA14,A15が積層された状態でスルーホール電極C25,C31とそれぞれ電気的に接続される。
【0048】
誘電体グリーンシートA16の表面には、第1のコンデンサ電極B85が形成されている。誘電体グリーンシートA16の中央部には、当該誘電体グリーンシートA16を厚み方向に貫通する複数のスルーホール電極C27,C33が形成されている。スルーホール電極C27,C33は、第1のコンデンサ電極B85と電気的に接続されている。誘電体グリーンシートA16は、誘電体グリーンシートA15,A16が積層された状態で、スルーホール電極C26,C32とそれぞれ電気的に接続する領域が含まれている。
【0049】
誘電体グリーンシートA17の表面には、第1のコンデンサ電極B85,B87に対応する第2のコンデンサ電極B86が形成されている。第2のコンデンサ電極B86の中央には、誘電体グリーンシートA17が露出するように開口が形成されている。第2のコンデンサ電極B86は、誘電体グリーンシートA17の互いに対向する端面に露出する導出部E7,E8を含む。第2のコンデンサ電極B86は導出部E7,E8を通して、グランド端子12に電気的に接続される。誘電体グリーンシートA17の表面には、第2のコンデンサ電極B86に形成された開口に対応する領域に、スルーホール接続導体パターンB47,B50が島状に形成されている。誘電体グリーンシートA17における各スルーホール接続導体パターンB47,B50に対応する位置には、誘電体グリーンシートA17を厚み方向に貫通するスルーホール電極C28,C34がそれぞれ形成されている。各スルーホール電極C28,C34は、対応するスルーホール接続導体パターンB47,B50と電気的に接続されている。各スルーホール接続導体パターンB47,B50は、誘電体グリーンシートA16,A17が積層された状態でスルーホール電極C27,C33とそれぞれ電気的に接続される。
【0050】
誘電体グリーンシートA18の表面には、第1のコンデンサ電極B87が形成されている。誘電体グリーンシートA18は、誘電体グリーンシートA17,A18が積層された状態で、スルーホール電極C28,C34とそれぞれ電気的に接続する領域が含まれている。
【0051】
誘電体グリーンシートA19の表面には、第1のコンデンサ電極B87に対応する第2のコンデンサ電極B88が形成されている。第2のコンデンサ電極B88の中央には、誘電体グリーンシートA19が露出するように開口が形成されている。第2のコンデンサ電極B88は、誘電体グリーンシートA19の互いに対向する端面に露出する導出部E9,E10を含む。第2のコンデンサ電極B88は導出部E9,E10を通して、グランド端子12に電気的に接続される。なお、開口は必ずしも形成する必要はない。
【0052】
スルーホール電極C23〜C28は、誘電体グリーンシートA12〜A17が積層されることにより、誘電体グリーンシートA12〜A17の積層方向に略直線状に併設され、相互に電気的に接続されることにより通電経路を構成する。スルーホール電極C29〜C34は、誘電体グリーンシートA12〜A17が積層されることにより、誘電体グリーンシートA12〜A17の積層方向に略直線状に併設され、相互に電気的に接続されることにより通電経路を構成する。また、スルーホール電極C23〜C28により構成される通電経路と、スルーホール電極C29〜C34により構成される通電経路とは、電気的に並列である。第1のコンデンサ電極B81,B83,B85,B87同士を電気的に接続する各スルーホール電極C23〜C28,C29〜C34は、誘電体グリーンシートA12〜A17の厚み方向とコイル13,14の整列方向とに直交する方向から見て、接続部F2に含まれる誘電体グリーンシートA8〜A11に形成された複数のスルーホール電極C15〜C18,C19〜C22よりも内側に位置している。
【0053】
コイル部F1(磁性体グリーンシートA1)の上部には、引き出し導体パターンB1,B2を保護するためのベース層とされる磁性体グリーンシートA20が積層されている。また、誘電体グリーンシートA19の下にも、誘電体グリーンシートA21が積層されている。磁性体グリーンシートA20と誘電体グリーンシートA21とは、積層体10を所定の厚み寸法に調整するためのものであり、電気絶縁性も有している。
【0054】
上述した構成の積層型LC複合部品1においては、図4に示されるように、各コイル13,14と、当該各コイル13,14に対応するコンデンサ15とでT型フィルタを構成している。
【0055】
ここで、磁性体グリーンシートA1〜A7,A20、誘電体グリーンシートA8〜A19,A21は何れも絶縁体である。更に、誘電体グリーンシートA8〜A19,A21は、何れも非磁性体である。磁性体グリーンシートA1〜A7,A20は、例えばフェライト(例えば、Ni−Cu−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn−Mg系フェライト、Cu−Zn系フェライト、又は、Ni−Cu系フェライト等)粉末を原料としたスラリーをフィルム上にドクターブレード法により塗布して形成したものを用いることができる。磁性体グリーンシートA1〜A7,A20の厚みは、例えば20μm程度である。誘電体グリーンシートA8〜A19,A21は、例えばTiO、CuO及びNiOの混合粉を原料としたスラリーをフィルム上にドクターブレード法により塗布して形成したものを用いることができる。誘電体グリーンシートA8〜A19,A21の厚みは、例えば40μm程度である。
【0056】
次に、積層型LC複合部品1の作製方法について説明する。
【0057】
まず、磁性体グリーンシートA1〜A7,A20及び誘電体グリーンシートA8〜A19,A21を用意する。次に、各磁性体グリーンシートA1〜A7及び各誘電体グリーンシートA8〜A17の所定の位置、すなわちスルーホール電極C1〜C34を形成する予定位置に、レーザー加工等によってスルーホールを形成する。次に、各磁性体グリーンシートA1〜A7に、各導体パターンB1,B2,B11〜B22及び各スルーホール電極C1〜C14を形成する。また、各誘電体グリーンシートA8〜A11に、各接続導体パターンB31,B32、各スルーホール接続導体パターンB41〜B44及び各スルーホール電極C15〜C22を形成する。また、誘電体グリーンシートA12〜A19に、各コンデンサ電極B81〜B88、各スルーホール接続導体パターンB45〜B50及び各スルーホール電極C23〜C34を形成する。各導体パターンB1,B2,B11〜B22,B31,B32,B41〜B44、各スルーホール電極C1〜C22、及び、各コンデンサ電極B81〜B88は、例えば、銀を主成分とする導体ペースト(導電体材料)をスクリーン印刷した後、乾燥することによって形成される。
【0058】
次に、磁性体グリーンシートA20,A1〜A7と誘電体グリーンシートA8〜A19,A21とを順次積層して圧着し、チップ単位に切断した後に所定温度(例えば、800〜900度)にて焼成する。これにより、積層体10が形成されることとなる。積層体10は、例えば、焼成後における長手方向の長さが2.0mm、幅が1.2mm、高さが0.8mmとなるようにする。
【0059】
次に、この積層体10に入出力端子11a,11b及びグランド端子12を形成する。これにより、積層型LC複合部品1が形成されることとなる。入出力端子11a,11b及びグランド端子12は、上述するように得られた積層体10の外面に銀を主成分とする電極ペーストを転写した後に所定温度(例えば、700℃程度)にて焼き付け、更に電気めっきを施すことにより、形成される。電気めっきには、CuとNiとSn、NiとSn、NiとAu、NiとPdとAu、NiとPdとAg、又は、NiとAg等を用いることができる。
【0060】
なお、誘電体グリーンシートA8を、磁性体グリーンシートA7と誘電体グリーンシートA9との中間の熱収縮率を有するグリーンシートとするのが好ましい。
【0061】
以上のように、本実施形態においては、接続部F2に含まれる各誘電体グリーンシートA8〜A11に複数のスルーホール電極C15〜C22と接続導体パターンB31,B32とが形成されており、接続部F2に含まれる複数の誘電体グリーンシートA8〜A11に複数のコイル13,14とコンデンサ15とを電気的に並列に接続する複数(本実施形態においては、2ライン)の通電経路が形成されることとなる。したがって、複数のスルーホール電極C15〜C22のうちいずれかにて電気的な接続が不良となった場合でも、残りのスルーホール電極と接続導体パターンB31,B32とにより複数のコイル13,14とコンデンサ15とが電気的に接続されることとなる。これにより、スルーホール電極C15〜C22を通した複数のコイル13,14とコンデンサ15との電気的な接続の信頼性を確保することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、複数のコイル13,14とコンデンサ15との電気的な接続の信頼性が確保されているので、スルーホール電極C15〜C22を形成する際に、スルーホールに充填する導電ペーストを少なくしてもよい。このようにスルーホールに充填する導電ペーストを少なくした場合、スルーホール電極C15〜C22の応力が弱くなり、スルーホール周辺にクラックが発生するのを抑制できる。
【0063】
また、本実施形態において、接続部F2は、複数のスルーホール電極C15,C19と接続導体パターンB31とが形成された誘電体グリーンシートA8と、複数のスルーホール電極C17,C21と接続導体パターンB32とが形成された誘電体グリーンシートA10とを含んでいる。これにより、スルーホール電極C15〜C22を通した複数のコイル13,14とコンデンサ15との電気的な接続の信頼性をより一層確保することができる。
【0064】
また、本実施形態において、コンデンサ15は、第1のコンデンサ電極B81,B83,B85,B87と第2のコンデンサ電極B82,B84,B86,B88とが誘電体グリーンシートA12〜A18を挟んで交互に複数積層されて構成されており、第1及び第2のコンデンサ電極B81〜B86が形成される各誘電体グリーンシートA12〜A17には、第1のコンデンサ電極B81,B83,B85,B87同士を電気的に接続する複数のスルーホール電極C23〜C34が形成されている。これにより、スルーホール電極C23〜C34を通した第1のコンデンサ電極B81,B83,B85,B87同士の電気的な接続の信頼性を確保することができる。
【0065】
また、本実施形態では、第1のコンデンサ電極B81,B83,B85,B87同士を電気的に接続する各スルーホール電極C23〜C28,C29〜C34は、誘電体グリーンシートA12〜A17の厚み方向とコイル13,14の整列方向とに直交する方向から見て、接続部F2に含まれる誘電体グリーンシートA8〜A11に形成された複数のスルーホール電極C15〜C18,C19〜C22よりも内側に位置している。これにより、接続部F2のスルーホール電極C15〜C22の応力とコンデンサ部F3のスルーホール電極C23〜C34の応力とがそれぞれ分散して、接続部F2及びコンデンサ部F3全体として、応力が弱くなる。この結果、スルーホール周辺におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、コイル部F1の絶縁体として磁性体グリーンシートA1〜A7を用いており、コンデンサ部F3にて積層される絶縁体は誘電体グリーンシートA12〜A19を用いている。これにより、コンデンサ15のキャパシタンスとコイル13,14のインダクタンスとで決まる共振周波数を低周波側、例えば200MHz〜1.2GHzの範囲に設定することが可能となり、より低帯域のノイズを除去することができる。
【0067】
なお、コイル部F1及びコンデンサ部F3の絶縁体として非磁性体グリーンシートを用いてもよい。この場合、コンデンサ15のキャパシタンスとコイル13,14のインダクタンスとで決まる共振周波数を高周波側、例えば400MHz〜2.6GHzに設定することが可能となり、より高帯域のノイズを除去することができる。
【0068】
また、本実施形態においては、接続部F2がコイル部F1とコンデンサ部F3との間に位置しているので、コンデンサ部F3に含まれる誘電体グリーンシートA12〜A19の組成物が拡散し、積層型LC複合部品1の特性、特にコンデンサ15の特性が変化するのを防ぐことができる。
【0069】
また、本実施形態においては、コイル部F1では積層体10の外側(入出力端子11a,11b側)にスルーホール電極C1〜C12を形成し、コンデンサ部F3では中央部付近(内側)にスルーホール電極C23〜C34を形成している。これにより、バランスよく磁性体グリーンシートA1〜A7及び誘電体グリーンシートA8〜A19を積層することができる。
【0070】
次に、図5及び図6を参照して、本実施形態に係る積層型LC複合部品の変形例について説明する。
【0071】
図5(a)及び(b)に示された変形例は、接続部F2の構成の点で本実施形態に係る積層型LC複合部品1と相違する。図5(a)及び(b)は、本実施形態に係る積層型LC複合部品の変形例に含まれる接続部を示す分解斜視図である。
【0072】
図5(a)に示された変形例では、接続部F2は、スルーホール電極C15,C19及び接続導体パターンB31が形成された誘電体グリーンシートA8と、スルーホール電極C16,C20及びスルーホール接続導体パターンB41,B43が形成された誘電体グリーンシートA9と、スルーホール電極C17,C21及び接続導体パターンB32が形成された誘電体グリーンシートA10と、スルーホール電極C18,C22及びスルーホール接続導体パターンB42,B44が形成された誘電体グリーンシートA11と、を含んでいる。誘電体グリーンシートA8〜A11の厚み方向に隣接するスルーホール電極C15,C16同士、スルーホール電極C16,C17同士、及び、スルーホール電極C17,C18同士は、それぞれの中心軸が誘電体グリーンシートA8〜A11の厚み方向から見てずれている。誘電体グリーンシートA8〜A11の厚み方向に隣接するスルーホール電極C19,C20同士、スルーホール電極C20,C21同士、及び、スルーホール電極C21,C22同士は、それぞれの中心軸が誘電体グリーンシートA8〜A11の厚み方向から見てずれている。誘電体グリーンシートA8〜A11の厚み方向に隣接するスルーホール電極C7,C15同士、及び,スルーホール電極C14,C19同士も、それぞれの中心軸が誘電体グリーンシートA8〜A11の厚み方向から見てずれている。この場合、スルーホール電極C15〜C22の応力がそれぞれ分散して、接続部F2全体として、応力が弱くなる。この結果、スルーホール周辺におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0073】
図5(b)に示された変形例では、接続部F2は、図5(a)に示された変形例と同じく、複数の誘電体グリーンシートA8〜A11を含んでいる。誘電体グリーンシートA8〜A11の厚み方向に隣接する複数のスルーホール電極C15,C16同士、複数のスルーホール電極C16,C17同士、及び、複数のスルーホール電極C17,C18同士は、それぞれの中心軸が誘電体グリーンシートA8〜A11の厚み方向から見てずれている。誘電体グリーンシートA8〜A11の厚み方向に隣接する複数のスルーホール電極C19,C20同士、複数のスルーホール電極C20,C21同士、及び、複数のスルーホール電極C21,C22同士は、それぞれの中心軸が誘電体グリーンシートA8〜A11の厚み方向から見てずれている。誘電体グリーンシートA8〜A11の厚み方向に隣接するスルーホール電極C7,C15同士、及び,スルーホール電極C14,C19同士も、それぞれの中心軸が誘電体グリーンシートA8〜A11の厚み方向から見てずれている。また、各誘電体グリーンシートA8〜A11において、複数のスルーホール電極C15,C19同士、複数のスルーホール電極C16,C20同士、複数のスルーホール電極C17,C21同士、及び、複数のスルーホール電極C18,C22同士はそれぞれの中心軸がコイル13,14の整列方向から見てずれている。この場合でも、スルーホール電極C15〜C22の応力がそれぞれ分散して、接続部F2全体として、応力が弱くなる。この結果、スルーホール周辺におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0074】
図6(a)及び(b)に示された変形例は、コンデンサ部F3の構成の点で本実施形態に係る積層型LC複合部品1と相違する。図6(a)及び(b)は、本実施形態に係る積層型LC複合部品の変形例に含まれるコンデンサ部を示す分解斜視図である。
【0075】
図6(a)に示された変形例では、コンデンサ部F3は、第1のコンデンサ電極B81,B83,B85,B87が形成された複数の誘電体グリーンシートA12,A14,A16,A18と、第2のコンデンサ電極B82,B84,B86,B88が形成された複数の誘電体グリーンシートA13,A15,A17,A19と、を含んでいる。誘電体グリーンシートA12〜A19の厚み方向に隣接するスルーホール電極C23,C24同士、スルーホール電極C24,C25同士、スルーホール電極C25,C26同士、スルーホール電極C26,C27同士、及び、スルーホール電極C27,C28同士は、それぞれの中心軸が誘電体グリーンシートA8〜A11の厚み方向から見てずれている。誘電体グリーンシートA12〜A19の厚み方向に隣接するスルーホール電極C29,C30同士、スルーホール電極C30,C31同士、スルーホール電極C31,C32同士、スルーホール電極C32,C33同士、及び、スルーホール電極C33,C34同士は、それぞれの中心軸が誘電体グリーンシートA8〜A11の厚み方向から見てずれている。この場合、スルーホール電極C23〜C34の応力がそれぞれ分散して、コンデンサ部F3全体として、応力が弱くなる。この結果、スルーホール周辺におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0076】
図6(b)に示された変形例では、コンデンサ部F3は、図6(a)に示された変形例と同じく、複数の誘電体グリーンシートA12〜A19を含んでいる。誘電体グリーンシートA12〜A19の厚み方向に隣接するスルーホール電極C23,C24同士、スルーホール電極C24,C25同士、スルーホール電極C25,C26同士、スルーホール電極C26,C27同士、及び、スルーホール電極C27,C28同士は、それぞれの中心軸が誘電体グリーンシートA8〜A11の厚み方向から見てずれている。誘電体グリーンシートA12〜A19の厚み方向に隣接するスルーホール電極C29,C30同士、スルーホール電極C30,C31同士、スルーホール電極C31,C32同士、スルーホール電極C32,C33同士、及び、スルーホール電極C33,C34同士は、それぞれの中心軸が誘電体グリーンシートA8〜A11の厚み方向から見てずれている。また、各誘電体グリーンシートA12〜A19において、複数のスルーホール電極C23,C29同士、複数のスルーホール電極C24,C30同士、複数のスルーホール電極C25,C31同士、複数のスルーホール電極C26,C32同士、複数のスルーホール電極C27,C33同士、及び、複数のスルーホール電極C28,C34同士はそれぞれの中心軸がコイル13,14の整列方向から見てずれている。この場合でも、スルーホール電極C23〜C34の応力がそれぞれ分散して、コンデンサ部F3全体として、応力が弱くなる。この結果、スルーホール周辺におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0077】
ここで、本実施形態によって、複数のコイルとコンデンサとの電気的な接続の信頼性を確保し得ることを、実施例1,2及び比較例1によって、具体的に示す。
実施例1では、上述した実施形態の積層型LC複合部品1と同じ構成の積層型LC複合部品を用いた。実施例2では、接続部F2として図5(a)に示された変形例を採用し、コンデンサ部F3として図6(a)に示された変形例を採用した積層型LC複合部品を用いた。なお、実施例2に係る積層型LC複合部品は、上記接続部F2及びコンデンサ部F3の点を除いて上述した積層型LC複合部品1と同じ構成としている。比較例1では、特許文献1に記載された積層型LC複合部品と同じ構成の積層型LC複合部品を用いた。
【0078】
実施例1に係る積層型LC複合部品を製造し、製造された積層型LC複合部品の目視検査(検体数:2万個)を行った。この結果、クラックの発生率は0.02%であった。また、断線不良率は0%であった。
【0079】
実施例2に係る積層型LC複合部品を製造し、製造された積層型LC複合部品の目視検査(検体数:2万個)を行った。この結果、クラックの発生は見られず、クラックの発生率は0%であった。また、断線不良率も0%であった。
【0080】
比較例1に係る積層型LC複合部品を製造し、製造された積層型LC複合部品の目視検査(検体数:2万個)を行った。この結果、クラックの発生率は0.17%であった。また、断線不良率は0.13%であった。
【0081】
以上のことから、本実施形態の有効性が確認された。
【0082】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、接続部F2の各誘電体グリーンシートA8〜A11に形成されるスルーホール電極の数は、上述した2つに限られるものではなく、3つ以上であってもよい。また、スルーホール電極同士を電気的に接続する接続導電パターンが形成された誘電体グリーンシートの数は、上述した2層に限られるものではなく、1層でもよく、また、3層以上であってもよい。
【0083】
また、コンデンサ部F3の各誘電体グリーンシートA12〜A17に形成されるスルーホール電極の数は、上述した2つに限られるものではなく、3つ以上であってもよい。また、コンデンサ部Fにおいて、接続部F2に隣接するコンデンサ電極はホット電極(第1のコンデンサ電極B81)であるが、グランド電極(第2のコンデンサ電極B82)であってもよい。
【0084】
また、積層型LC複合部品1におけるコイル13,14のインダクタンスは、導体パターンB1,B2,B11〜B22の幅や層数等によって調整可能であり、上述した実施形態に限られるものではない。また、積層型LC複合部品1におけるコンデンサ15のキャパシタンスは、コンデンサ電極B81〜B88の面積や層数等によって調整可能であり、上述した実施形態に限られるものではない。
【0085】
また、本実施形態においては、グリーンシートを積層すること(グリーンシート積層工法)により積層体10を構成しているが、これに限られることなく、スラリー(例えば、非磁性体スラリーや磁性体スラリー等)を用い、当該スラリー、各導体パターンB1,B2,B11〜B22,B31,B32,B41〜B50及び各コンデンサ電極B81〜B88等を印刷して積層すること(印刷積層工法)により積層体10を構成するようにしてもよい。
【0086】
また、コンデンサ部F3にて積層される絶縁体が、電圧非直線特性を発現する材料を含んでいてもよい。この場合、コンデンサ部F3はバリスタとして機能することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本実施の形態に係る積層型LC複合部品を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る積層型LC複合部品の断面構成を説明するための図である。
【図3】本実施の形態に係る積層型LC複合部品に含まれる積層体の分解斜視図である。
【図4】本実施の形態に係る積層型LC複合部品の等価回路を説明するための図である。
【図5】(a)及び(b)は、本実施形態に係る積層型LC複合部品の変形例に含まれる接続部を示す分解斜視図である。
【図6】(a)及び(b)は、本実施形態に係る積層型LC複合部品の変形例に含まれるコンデンサ部を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0088】
1…積層型LC複合部品、10…積層体、11a,11b…入出力端子、12…グランド端子、A1〜A7,A20…磁性体グリーンシート、A8〜A19,A21…誘電体グリーンシート、B1,B2…引き出し導体パターン、B11〜B22…コイル導体パターン、B31,B32…接続導体パターン、B41〜B50…スルーホール接続導体パターン、B81,B83,B85,B87…第1のコンデンサ電極、B82,B84,B86,B88…第2のコンデンサ電極、C1〜C34…スルーホール電極、F1…コイル部、F2…接続部、F3…コンデンサ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導体パターンがそれぞれ形成された複数の絶縁体が積層されて構成される複数のコイルを含むコイル部と、
コンデンサ電極が形成された複数の絶縁体が積層されて構成されるコンデンサを含むコンデンサ部と、
前記コイル部と前記コンデンサ部との間に位置すると共に、前記各コイルをそれぞれ前記コンデンサに電気的に接続する複数のスルーホール電極と当該複数のスルーホール電極を互いに電気的に接続する接続導体パターンとが形成された絶縁体を含む接続部と、を備えることを特徴とする積層型LC複合部品。
【請求項2】
前記接続部は、前記複数のスルーホール電極と前記接続導体パターンとが形成された前記絶縁体を複数含んでいることを特徴とする請求項1に記載の積層型LC複合部品。
【請求項3】
前記接続部は、前記複数のスルーホール電極が形成された絶縁体を更に含んでおり、
前記絶縁体の厚み方向に隣接するスルーホール電極同士は、それぞれの中心軸が前記絶縁体の厚み方向から見てずれていることを特徴とする請求項1に記載の積層型LC複合部品。
【請求項4】
前記各絶縁体において、前記複数のスルーホール電極同士はそれぞれの中心軸が前記コイルの整列方向から見てずれていることを特徴とする請求項3に記載の積層型LC複合部品。
【請求項5】
前記コンデンサ電極は、前記各コイルに電気的に接続される第1のコンデンサ電極と、当該第1のコンデンサ電極に対応する第2のコンデンサ電極とを含み、
前記コンデンサは、前記第1のコンデンサ電極と前記第2のコンデンサ電極とが前記絶縁体を挟んで交互に複数積層されて構成されており、
前記第1及び第2のコンデンサ電極が形成される前記各絶縁層には、前記第1のコンデンサ電極同士を電気的に接続する複数のスルーホール電極が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層型LC複合部品。
【請求項6】
前記第1のコンデンサ電極同士を電気的に接続する前記複数のスルーホール電極のうち前記絶縁体の厚み方向に隣接するスルーホール電極同士は、それぞれの中心軸が前記絶縁体の厚み方向から見てずれていることを特徴とする請求項5に記載の積層型LC複合部品。
【請求項7】
前記各絶縁層に形成された前記第1のコンデンサ電極同士を電気的に接続する前記複数のスルーホール電極同士は、それぞれの中心軸が前記コイルの整列方向から見てずれていることを特徴とする請求項6に記載の積層型LC複合部品。
【請求項8】
前記第1のコンデンサ電極同士を電気的に接続する前記各スルーホール電極は、前記絶縁体の厚み方向と前記コイルの整列方向とに直交する方向から見て、前記接続部に含まれる前記絶縁体に形成された前記複数のスルーホール電極よりも内側に位置することを特徴とする請求項5に記載の積層型LC複合部品。
【請求項9】
前記コイル部にて積層される前記絶縁体と前記コンデンサ部にて積層される前記絶縁体とは、非磁性体であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の積層型LC複合部品。
【請求項10】
前記コイル部にて積層される前記絶縁体は磁性体であり、前記コンデンサ部にて積層される前記絶縁体は非磁性体であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の積層型LC複合部品。
【請求項11】
前記コンデンサ部にて積層される前記絶縁体は、電圧非直線特性を発現する材料を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の積層型LC複合部品。
【請求項12】
複数の導体パターンがそれぞれ形成された複数の絶縁体が積層されて構成される複数のコイルを含むコイル部と、
コンデンサ電極が形成された複数の絶縁体が積層されて構成されるコンデンサを含むコンデンサ部と、
前記コイル部と前記コンデンサ部との間に位置すると共に、前記複数のコイルと前記コンデンサとを電気的に並列に接続する複数の通電経路が形成された絶縁体を含む接続部と、を備えることを特徴とする積層型LC複合部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−25145(P2006−25145A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200982(P2004−200982)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】