説明

空気調和装置

【課題】圧縮機の信頼性を確保しつつ、省エネルギーを兼ね備えた空気調和装置を提供する。
【解決手段】圧縮機、油分離器、四方弁、室外熱交換器、室外膨張装置、室外送風機、受液器を備えた室外機と、室内膨張装置、室内熱交換器、室内送風機を備えた複数の室内機とを液接続配管及びガス接続配管で接続した空気調和装置において、前記圧縮機の吐出側に設けられた油分離器において分離した油を油配管を経由して圧縮機の中間圧室に給油することにより、圧縮機の冷凍機油を確保しつつ、冷凍機油による吸入配管部の圧力損失を無くすことにより、空気調和装置の省エネルギー化を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置に係わり、特にインバータで回転数制御する圧縮機、または自己始動式永久磁石同期モータを搭載した空気調和装置の消費電力低減および信頼性を向上するのに好適である。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置の中でも特に室内機を複数台接続するセパレートタイプの空気調和装置には、容量制御を可能とした圧縮機と定格容量の圧縮機とを搭載し、室内負荷の状態に合わせて圧縮機容量を変化させている。空気調和装置に搭載された圧縮機内の冷凍機油量を均等に確保するため、圧縮機の吐出配管部に油分離器を設け、油分離器からの配管を圧縮機の吸入配管に接続することにより圧縮機内に冷凍機油を循環させ、圧縮機内の冷凍機油量を均等に確保し、圧縮機の信頼性を確保する必要がある。
【0003】
一方、地球温暖化防止およびランニングコスト低減等の観点から、ビル、店舗等において消費電力の大部分を占めている空気調和装置の省エネルギー化が求められており、圧縮機の信頼性を確保しつつ、空気調和装置の省エネルギー化を両立させる必要がある。
【0004】
【特許文献1】特開平5−5486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、特許文献1及び図3に示すように、圧縮機内の冷凍機油を確保するために圧縮機1の吐出側配管1aに油分離器2を接続し、分離した冷凍機油を油配管15を経由して圧縮機1の吸入配管1bに接続して油を戻す配管経路を構成している。
【0006】
上記構成において、圧縮機1から吐出されたガス冷媒は吐出側配管1aを経由して油分離器2に入り、油分離器2により冷凍機油とガス冷媒に分離される。油分離器2により分離された冷凍機油は、油配管15を経由して圧縮機1の吸入側の配管1bへ戻される。この方式では、圧縮機1内の冷凍機油量を確保可能であるが、吸入配管1bへ冷凍機油が供給されるため、この冷凍機油量分だけ圧縮機1が吸入する冷媒量が減り、冷凍機油の圧力損失等により冷凍サイクルの効率の低下を招く。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、圧縮機の冷凍機油を確保しつつ、省エネルギーを兼ね備えた空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、モータが内蔵された圧縮機、油分離器、四方弁、室外熱交換器、室外膨張装置、室外送風機を備えた室外機と、室内膨張装置、室内熱交換器、室内送風機を備えた室内機とを液接続配管及びガス接続配管で接続した空気調和装置において、前記油分離器の入口側が前記圧縮機の吐出側に配管接続され、前記油分離器の油の出口側が前記圧縮機の中間圧室に油配管で接続されたことを特徴とする。
【0009】
また、前記圧縮機のモータは自己始動式永久磁石同期モータであり、前記油分離器と前記圧縮機の間の油配管の経路に冷凍機油を冷却する冷却手段を設け、前記冷却手段を通過した油が前記圧縮機に供給される。
【0010】
また、前記圧縮機のモータは回転数制御可能なモータであり、前記油分離器と前記圧縮機の間の油配管の経路に、冷凍機油の温度を検知する温度検知手段と油量調整手段を設け、圧縮機の運転状態に応じて前記油量調整手段で冷凍機油の循環量を調整する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧縮機の冷凍機油と冷媒を確保しつつ、冷凍機油による吸入配管部の圧力損失を無くすことにより、空気調和装置の省エネルギーを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図を参照して本発明による実施例を説明する。図1において、室外機22は運転周波数をインバータ制御されるモータで駆動される容量可変式圧縮機1を有し、圧縮機1は油分離器2および四方弁3へ接続されている。四方弁3は室外側熱交換器4およびガス阻止弁11へ配管接続される。室外側熱交換器4から室外膨張装置5を介して冷媒量調節器6、過冷却熱交換器7、液阻止弁8へ配管接続されている。また、室内機23は、室内膨脹装置9、室内熱交換器10、室内送風機から構成される。室内機23は、液配管およびガス接続配管により室外機22に連結される。前記容量可変圧縮機1、室外機送風機20、室内送風機が運転されて空気と熱交換して室内の空気調和が行われる。
【0013】
本実施例では、図2に示すように、圧縮機1に吐出側配管1aと吸入側の配管1bの他に、中間圧室側の配管1cを備えている。中間圧室側の配管1cは圧縮機1に形成されている中間圧室1dに連通するように接続されている。ここで中間圧室1dとは、スクロール圧縮機の圧縮途中の圧縮室である。
【0014】
圧縮機1の吐出側配管1aは、油分離器2の冷媒入口管2aに接続され、油分離器2の油出口管2cは圧縮機1の中間圧室側の配管1cに油配管15を介して接続されている。この構成によれば、油分離器2で分離した冷凍機油を油配管15を経由して圧縮機1の油配管1cから圧縮機1の中間室1dの圧縮機駆動モータに供給するように接続して油を圧縮機1に戻すように油配管経路が構成される。また、油分離器2の冷媒出口管2bは四方弁3に接続され、圧縮機1の吸入側配管1bはアキュムレータ12に接続されて戻りの冷媒を吸入れている。
【0015】
冷房運転の場合、冷媒は図1の実線矢印の方向に流れ、圧縮機1から吐出されたガス冷媒は吐出側配管1aと冷媒入口管2aを経由して油分離器2に入り、油分離器2により冷凍機油とガス冷媒に分離される。分離されて冷媒出口管2bから出た高温高圧のガス冷媒は、四方弁3を通過し複数の冷媒通路で構成す室外機熱交換器4で凝縮される。凝縮された冷媒は冷媒量調節器6に入り、冷媒量調整器6より導出した液冷媒は、過冷却熱交換器7により過冷却され、室外機22と室内機23を接続する液接続配管を経由し、室内膨脹装置9に入る。
【0016】
室内膨張装置9は任意の絞り量設定可能な膨脹装置であり、室内膨脹装置9にて減圧された冷媒は蒸発器となる室内熱交換器10に送られ、蒸発し、室内空気が冷やされる。蒸発した冷媒はガス接続配管を通過して、圧縮機1の吸入側に戻る。また、暖房運転の場合、四方弁3を切替えることにより暖房運転時とは反対に冷媒を循環させることにより、室内熱交換器10が凝縮器となり、室内の温度を上昇させる。
【0017】
本実施例では前述のように、圧縮機1から吐出されたガス冷媒は油分離器2により冷凍機油とガス冷媒に分離され、油分離器2により分離された冷凍機油は、油配管15を経由して圧縮機1の中間圧室1dへ供給される油回路が形成される。圧縮機1の中間圧室1dに給油することにより、圧縮機1の冷凍機油を確保しつつ、冷凍機油による吸入配管1bの圧力損失が無くなり、空気調和装置の省エネルギー化を実現できる。図2に本実施例の一例として圧縮機中間圧室への接続配管を有した圧縮機を示す。
【0018】
本実施例において、運転周波数をインバータで可変して制御されるモータによる容量可変式圧縮機1台の例を説明したが、複数の圧縮機を組み合わせて使用しても良い。また組み合わせる圧縮機を容量可変式圧縮機と定速圧縮機の組合せとしても良い。
【0019】
図4は、圧縮機1のモータとして自己始動式永久磁石同期モータを使用した場合のブロック図である。図4に示すように油配管15に油冷却用の熱交換器16を設け、圧縮機1に戻る冷凍機油を冷却し、冷却した冷凍機油を圧縮機1の中間圧力に保たれた自己始動式永久磁石同期モータに直接供給することにより、モータ部の温度を一定温度以下に保つことにより、自己始動式永久磁石同期モータ内の磁石の減磁を防止することが可能である。本実施例では、自己始動式永久磁石同期モータを中間圧力に保つとしたが、低圧圧力に保っても良い。また、油配管15に設置する冷却器として、吸入配管と熱交換が可能な熱交換器としても良い。
【0020】
図5は、圧縮機1のモータとしてインバータで可変制御されるモータを使用した場合のブロック図である。この実施例では、油配管15の途中に冷凍機油の流量を調整する流量調整手段17と冷凍機油の温度を検知する温度検知手段18を設け、インバータで可変制御される容量可変式圧縮機1の運転容量と冷凍機油の温度を基に、冷凍機油の流量調整手段17で調整することにより、圧縮機1の運転状態に適合した温度と流量で冷凍機油を循環されることにより空気調和装置の消費電力を低減させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明実施例の冷凍サイクルのブロック図。
【図2】中間圧力室への導入ポート付き圧縮機の説明図。
【図3】従来方式の冷凍サイクルのブロック図。
【図4】自己始動式永久磁石同期モータ使用時の冷凍サイクルのブロック図。
【図5】冷凍機油量調整器を搭載した場合の冷凍サイクルのブロック図。
【符号の説明】
【0022】
1…圧縮機、1a…吐出側配管、1b…吸入側配管、1c…中間圧室側の配管、1d…中間圧室、2…油分離器、3…四方弁、4…室外交換器、5…室外膨張装置、6…冷媒量調節器、7…過冷却器、8…液阻止弁、9…室内膨張装置、10…室内熱交換器、11…ガス側阻止弁、12…アキュムレータ、15…油配管、16…冷却手段、17…流量調整手段、18…温度検知手段、22…室外機、23…室内機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータが内蔵された圧縮機、油分離器、四方弁、室外熱交換器、室外膨張装置、室外送風機を備えた室外機と、室内膨張装置、室内熱交換器、室内送風機を備えた室内機とを液接続配管及びガス接続配管で接続した空気調和装置において、前記油分離器の入口側が前記圧縮機の吐出側に配管で接続され、前記油分離器の油の出口側が前記圧縮機の中間圧室に配管で接続されたことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記圧縮機のモータは自己始動式永久磁石同期モータであり、前記油分離器と前記圧縮機の間の油配管の経路に冷凍機油を冷却する冷却手段を設け、前記冷却手段を通過した油が前記圧縮機に供給されるように構成されたこを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記圧縮機のモータは回転数制御可能なモータであり、前記油分離器と前記圧縮機の間の油配管の経路に、冷凍機油の温度を検知する温度検知手段と油量調整手段を設け、圧縮機の運転状態に応じて前記油量調整手段で冷凍機油の循環量を調整することを特長とする請求項1に記載の空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−168370(P2009−168370A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8228(P2008−8228)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】