説明

窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法、窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造及び窒化ガリウム系化合物半導体発光素子、並びにランプ

【課題】半導体層の形成工程においてバッファ層が消失すること無く、且つ、簡便な方法で基板を化合物半導体層から剥離させることができ、発光特性に優れた発光素子が歩留まり良く高効率で得られる窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法、窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造及び窒化ガリウム系化合物半導体発光素子を提供する。
【解決手段】基板21上に、ZnOバッファ層22及びAlNバッファ層23をこの順で積層するバッファ層形成工程と、AlNバッファ層23上に、窒化ガリウム系化合物からなる半導体層を形成する半導体層形成工程と、ZnOバッファ層22を除去することにより、基板21を剥離する除去工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)、電子デバイス等に、好適に用いられる窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法、窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造及び窒化ガリウム系化合物半導体発光素子、並びにランプに関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム系化合物等のIII族窒化物半導体は、可視光から紫外光領域の範囲に相当するエネルギーの直接遷移型のバンドギャップを有し、発光効率に優れていることから、発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)等の半導体発光素子として製品化され、各種用途で使用されている。また、電子デバイスに用いた場合でも、III族窒化物半導体は、従来のIII−V族化合物半導体を用いた場合に比べ、優れた特性を有する電子デバイスが得られる。
【0003】
従来、III族窒化物半導体の単結晶ウェーハとしては、異なる材料の単結晶ウェーハ上に結晶を成長させて得る方法が一般的である。このような、異種基板と、その上にエピタキシャル成長させるIII族窒化物半導体結晶との間には、大きな格子不整合が存在する。例えば、サファイア(Al)基板上に窒化ガリウム(GaN)を成長させた場合、両者の間には16%の格子不整合が存在し、SiC基板上に窒化ガリウムを成長させた場合には、両者の間に6%の格子不整合が存在する。一般に、上述のような大きな格子不整合が存在する場合、基板上に結晶を直接エピタキシャル成長させることが困難となり、また、成長させた場合であっても結晶性の良好な結晶が得られないという問題がある。
【0004】
また、サファイア基板を発光素子に用いた場合、上述のような格子不整合の問題の他、絶縁性材料であることや、熱伝導性が低い等の問題点がある。例えば、サファイア基板は絶縁性基板であるため、一般的なLEDで採用されているようなチップの上下に電極を形成する、所謂上下電極構造を採用することが出来ない。このため、発光素子チップを一定以下のサイズに小型化するのには限界があるという問題がある。また、サファイア基板は熱伝導性が低いことから、印加された電力によって発生する熱を放散することが困難となり、チップの温度が上昇して発光特性を低下させてしまうという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するため、例えば、化合物半導体層からサファイア基板を剥離してLEDを作製する技術が提案されている。例えば、研磨されたサファイア基板の裏面にレーザを照射し、サファイア基板とGaNとの界面に存在する転位が集中した層にレーザを吸収させ、発熱させて破壊することにより、サファイア基板を剥離する方法等が提案されている。しかしながら、このような方法では、サファイア基板を均一に剥離するための制御が困難なため、発光素子の特性や収率が安定しないという問題がある。また、レーザによって結晶が破壊されることでダメージが生じるため、発光素子の特性が低下する等の問題がある。このため、サファイア基板とGaNの格子不整合を解消するためのバッファ層の開発が求められるとともに、レーザ照射等の衝撃の大きな方法によらずにサファイア基板をGaNから剥離する方法が求められていた。
【0006】
上述のような、サファイア基板とGaNの格子不整合の解消、並びにレーザ照射によらないサファイア基板の剥離の両方を実現できる技術として、ZnOからなるバッファ層を用いることが提案されている。
まず、バッファ層を2重バッファ層として構成し、基板上に形成される低温成長の第1バッファ層としてZnOを用い、この上に、略単結晶の第2バッファ層として、Ga及びInを含有しない窒化物を用いることが提案されている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0007】
また、基板上にスペーサ層を形成し、このスペーサ層上に化合物半導体層を形成した後、光照射によってスペーサ層に光を吸収させることで基板を剥離する技術が提案されている(例えば、特許文献3、4を参照)。特許文献3、4によれば、上記スペーサ層として、サファイア基板上にスパッタ法で成膜されたZnOの上に、有機金属化学気相蒸着(MOCVD)法を用いて、GaN又はAl0.1Ga0.9Nを形成した構成とすることが記載されている。このように、特許文献3、4によれば、ZnO上に、MOCVD法等の方法によって窒化物を積層する技術とされている。
【0008】
しかしながら、ZnOは高温での化学的安定性が低く、また、NH等を用いる成膜方法の環境に曝されると、急激に反応作用が生じて結晶性が低下するという特性がある。このため、特許文献1〜4に記載の技術を用いた場合には、ZnOの上の各層を形成する工程において、ZnOの結晶性が低下し、さらには消失する虞があるという問題がある。
【0009】
一方、基板上にZn1−xMgO(0≦x≦0.3)バッファ層を形成し、この上に陽イオン極性となるように窒化物バッファ層を形成し、この上に、HVPE法によって窒化物層を成長させ、リフトオフしてGaN基板を製造する技術が提案されている(例えば、特許文献5を参照)。また、特許文献5によれば、ZnOバッファ層を分子線エピタキシー(MBE)法で形成し、その上にGaNバッファ層をMBE法で形成することが記載されている。このように、MBE法を用いることにより、ZnOバッファ層上に低温で窒化物バッファ層を形成することができるので、窒化物バッファ層を形成する際のZnOバッファ層の消失を防止することが可能となる。
【0010】
しかしながら、特許文献5に記載の技術のように、MBE法を用いて各バッファ層を形成した場合、MBE法は超高真空状態の維持が難しく量産向きの成膜方法でないため、製造効率が大きく低下するという問題がある。
また、特許文献5のように、HVPE法を用いてGaNからなる下地層を成長させた場合、膜厚を厚くしないと良好な結晶性の結晶を得ることができないことから、必然的に下地層が厚くなるという問題がある。このように下地層を厚く形成した場合には、基板の反りが大きくなるので、その後の工程処理が困難になり、また、成膜の長時間を要するので、高い生産性を確保するのが困難であるという問題が生じる。
【0011】
また、基板上に形成されたZnO層を、エッチング溶液によって溶解除去することで基板を剥離する技術が提案されている(例えば、特許文献6を参照)。
しかしながら、特許文献6に記載の技術では、AlNバッファ層上にZnO層が形成され、この上にGaNからなる化合物半導体層が形成された構成なので、GaNの成膜時にZnO層が高温に曝される。このため、上記同様、化合物半導体層の形成工程においてZnO層の結晶性が低下し、場合によってはZnOが消失する虞があるという問題があった。
【特許文献1】特開2000−133842号公報
【特許文献2】特開2004−48076号公報
【特許文献3】特開2003−218470号公報
【特許文献4】特開2007−13191号公報
【特許文献5】特開2008−74671号公報
【特許文献6】特開2007−95845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、半導体層の形成工程においてバッファ層が消失すること無く、且つ、簡便な方法で基板を化合物半導体層から剥離させることができ、発光特性に優れた発光素子が歩留まり良く高効率で得られる窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法、窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造及び窒化ガリウム系化合物半導体発光素子を提供することを目的とする。
さらに、上記の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子を用いた、発光特性に優れるランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記問題を解決するために鋭意研究を重ね、本発明を完成した。
即ち、本発明は以下に関する。
【0014】
[1] 基板上に、ZnOバッファ層及びAlNバッファ層をこの順で積層するバッファ層形成工程と、前記AlNバッファ層上に、窒化ガリウム系化合物からなる半導体層を形成する半導体層形成工程と、前記ZnOバッファ層を除去することにより、前記基板を剥離する除去工程と、を備えることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[2] 前記バッファ層形成工程は、前記ZnOバッファ層を、分子線エピタキシー(MBE)法、パルスレーザデポジション(PLD)法、スパッタ法の内の何れかの方法を用いて形成することを特徴とする上記[1]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[3] 前記バッファ層形成工程は、前記ZnOバッファ層を、スパッタ法を用いて形成することを特徴とする上記[2]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[4] 前記バッファ層形成工程は、前記AlNバッファ層を、分子線エピタキシー(MBE)法、パルスレーザデポジション(PLD)法、スパッタ法の内の何れかの方法を用いて形成することを特徴とする上記[1]〜[3]の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[5] 前記バッファ層形成工程は、前記AlNバッファ層を、スパッタ法を用いて形成することを特徴とする上記[4]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[6] 前記バッファ層形成工程は、前記AlNバッファ層を、窒素源として窒素(N)ガスを用い、600℃以下の温度で成膜することを特徴とする上記[4]又は[5]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[7] 前記バッファ層形成工程は、前記基板上において、前記AlNバッファ層を前記ZnOバッファ層よりも平面視で大きく成膜することにより、前記AlNバッファ層が前記ZnOバッファ層の表面及び側面を覆うように形成することを特徴とする上記[1]〜[6]の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【0015】
[8] 前記除去工程は、エッチング法を用いて前記ZnOバッファ層を溶解除去することを特徴とする上記[1]〜[7]の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[9] 前記除去工程は、HCl又はシュウ酸を用いたエッチング法によって前記ZnOバッファ層を溶解除去することを特徴とする上記[8]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[10] 前記半導体層形成工程は、前記AlNバッファ層の上に、n型半導体層、発光層及びp型半導体層を順次積層することによって半導体層を形成することを特徴とする上記[1]〜[9]の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[11] 前記半導体層形成工程は、さらに、前記AlNバッファ層と前記n型半導体層との間に下地層を形成することを特徴とする上記[10]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[12] 前記下地層及び/又は前記n型半導体層を、有機金属化学気相蒸着(MOCVD)法を用いて形成することを特徴とする上記[11]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[13] 前記n型半導体層と前記下地層との合計膜厚を、15μm以下として形成することを特徴とする上記[11]又は[12]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[14] 前記n型半導体層と前記下地層との合計膜厚を、10μm以下として形成することを特徴とする上記[11]又は[12]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[15] 前記n型半導体層と前記下地層との合計膜厚を、4μm以下として形成することを特徴とする上記[11]又は[12]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【0016】
[16] 前記半導体層形成工程と前記除去工程との間において、前記半導体層の前記p型半導体層側に、Siの酸化物又は窒化物からなる支持基板を接合する支持基板接合工程が備えられていることを特徴とする上記[10]〜[15]の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[17] 前記除去工程の後に、前記半導体層の前記n型半導体層側に負極を形成し、次いで、前記負極に仮貼付基板を貼着した後、前記支持基板を剥離することによって前記半導体層のp型半導体層側を露出させ、次いで、露出したp型半導体層上に正極を形成した後、前記仮貼付基板を前記負極から剥離する電極形成工程が備えられていることを特徴とする上記[16]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[18] 前記半導体層形成工程と前記除去工程との間において、前記半導体層の前記p型半導体層側に、Siからなる支持基板を接合する支持基板接合工程が備えられていることを特徴とする上記[10]〜[15]の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[19] 前記半導体層形成工程と前記除去工程との間において、前記半導体層の前記p型半導体層側に、金属メッキからなる正極を形成するメッキ工程が備えられていることを特徴とする上記[10]〜[15]の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
[20] 前記除去工程の後に、前記半導体層の前記n型半導体層側に負極を形成する負極形成工程が備えられていることを特徴とする上記[18]又は[19]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【0017】
[21] 基板と、前記基板上に順次積層されて設けられるZnOバッファ層及びAlNバッファ層と、前記AlNバッファ層上に形成され、窒化ガリウム系化合物からなる半導体層とが備えられることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
[22] 前記基板が、サファイア、シリコン、SiC、スピネルの内の何れかからなることを特徴とする上記[21]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
[23] 前記ZnOバッファ層が単結晶のZnOからなることを特徴とする上記[21]又は[22]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
[24] 前記ZnOバッファ層の表面がZn極性であることを特徴とする上記[21]〜[23]の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
[25] 前記ZnOバッファ層の膜厚が10〜1000nmの範囲であることを特徴とする上記[21]〜[24]の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
[26] 前記AlNバッファ層が単結晶のAlNからなることを特徴とする上記[21]〜[25]の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
[27] 前記AlNバッファ層が柱状結晶を有する多結晶のAlNからなることを特徴とする上記[21]〜[26]の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
[28] 前記AlNバッファ層の膜厚が10〜100nmの範囲であることを特徴とする上記[21]〜[27]の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
[29] 前記基板上において、前記AlNバッファ層が前記ZnOバッファ層よりも平面視で大きく形成されており、前記AlNバッファ層が前記ZnOバッファ層の表面及び側面を覆うように形成されていることを特徴とする上記[21]〜[28]の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
[30] 前記半導体層が、前記AlNバッファ層の上に、n型半導体層、発光層及びp型半導体層が順次積層されてなることを特徴とする上記[21]〜[29]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
[31] 前記半導体層が、さらに、前記AlNバッファ層と前記n型半導体層との間に設けられる下地層を備えていることを特徴とする上記[30]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
[32] 前記下地層と前記n型半導体層との合計膜厚が1512μm以下であることを特徴とする上記[31]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
[33] 前記下地層と前記n型半導体層との合計膜厚が10μm以下であることを特徴とする上記[31]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
[34] 前記下地層と前記n型半導体層との合計膜厚が4μm以下であることを特徴とする上記[31]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
【0018】
[35] 上記[30]〜[34]の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造に備えられる前記ZnOバッファ層及び前記基板が除去されることにより、前記AlNバッファ層が露出した構成の積層構造が用いられてなり、さらに、前記AlNバッファ層の少なくとも一部が除去されて露出した前記n型半導体層上に負極が設けられるとともに、前記p型半導体層上に正極が設けられてなることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
[36] 上記[1]〜[20]の何れか1項に記載の製造方法によって得られる窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
[37] 上記[35]又は[36]に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子が用いられてなることを特徴とするランプ。
【発明の効果】
【0019】
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法によれば、基板上にZnOバッファ層及びAlNバッファ層をこの順で積層するバッファ層形成工程と、AlNバッファ層上に、窒化ガリウム系化合物からなる半導体層を形成する半導体層形成工程と、ZnOバッファ層をエッチング除去することによって基板を剥離する除去工程とを備える方法なので、半導体層形成工程において、NHを用いたり、高温による成膜処理を行なったりした場合でも、ZnOバッファ層の結晶性の低下や、溶解による消失等が生じることが無い。また、ZnOバッファ層をエッチング除去することで、容易に基板を剥離することができる。これにより、発光特性に優れた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子を、歩留まり良く高い生産性で製造することが可能となる。
【0020】
また、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の積層構造によれば、基板と、該基板上に順次積層されて設けられるZnOバッファ層及びAlNバッファ層と、該AlNバッファ層上に形成され、窒化ガリウム系化合物からなる半導体層とが備えられた積層構造なので、各層の結晶性に優れるとともに、容易な基板の剥離を可能にするものとなる。このような積層構造を用いて窒化ガリウム系化合物半導体発光素子を製造することにより、歩留まり及び生産性に優れるとともに、発光特性に優れた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子を得ることが可能となる。
【0021】
また、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子によれば、上記本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法によって製造され、また、上記本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の積層構造に備えられるZnOバッファ層及び基板が除去されることにより、AlNバッファ層が露出した構成の積層構造が用いられてなり、さらに、AlNバッファ層の少なくとも一部が除去されて露出したn型半導体層上に負極が設けられるとともに、p型半導体層上に正極が設けられてなるものなので、発光特性及び生産効率に優れたものとなる。
【0022】
さらに、本発明のランプは、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子を用いたものであるので、優れた発光特性を備えたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子(以下、発光素子と略称することがある)の製造方法、窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造(以下、半導体積層構造と略称することがある)及び窒化ガリウム系化合物半導体発光素子、並びにランプの一実施形態について、図面を適宜参照して説明する。
図1は本実施形態の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の一例を示す断面模式図であり、図2は本実施形態の窒化ガリウム系化合物半導体の積層構造の断面模式図、図3〜図12は窒化ガリウム系化合物半導体発光素子(窒化ガリウム系化合物半導体の積層構造)の製造方法を説明する工程図、図13及び図14は発光素子の他の例を示す断面模式図、図15は、本実施形態の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子が用いられてなるランプの模式断面図、図16は本実施形態の窒化ガリウム系化合物半導体の積層構造のX線ピーク値の測定グラフである。尚、以下の説明において参照する図面は、窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法、窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造及び窒化ガリウム系化合物半導体発光素子、並びにランプを説明する図面であって、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子等の寸法関係とは異なっている。
【0024】
[窒化ガリウム系化合物半導体発光素子]
本実施形態の発光素子1は、図1に示すように上下電極型のものであり、正極4と、正極4の上に配置された半導体層11と、半導体層11上に配置された負極9と、から概略構成されている。また、半導体層11は、正極4側から順に、p型半導体層6、発光層7及びn型半導体層8の各層が積層されてなる。また、図示例の発光素子1においては、p型半導体層6と正極4との間に、さらに反射性p型電極層5が備えられている。
【0025】
また、半導体層11の上面は、発光層7からの光を外部に取り出す光取出面11aとされており、この光取出面11a上には負極9が形成されている。また、光取出面11aはエッチング等の手段によって粗面化されており、これにより発光素子1の光取出効率がより高められている。
【0026】
さらに、図1に示す例の発光素子1は、半導体層11の側面11bと光取り出し面11a側の外周部分に、例えばSiO等の絶縁性材料からなる保護用の絶縁膜10が形成されている。このような絶縁膜10を形成することによって、例えば半導体層11の側面11bに異物が付着した場合でも、異物によるn型半導体層8とp型半導体層6との短絡が防止される。
また、図示例の発光素子1は、光取出面11aの外周部分と絶縁膜10との間に、後述の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造2(図2(a)参照)並びに発光素子の製造方法において説明するAlNバッファ層23の一部が残留している。
【0027】
また、本実施形態の発光素子1は、詳細を後述するが、図2(a)に示すような本実施形態の半導体積層構造2を用いて得ることができる。具体的には、半導体積層構造2からZnOバッファ層22を除去することによって基板21を剥離し、さらに、AlNバッファ層23の少なくとも一部を除去する。そして、露出したn型半導体層8上に負極9を設けるとともに、p型半導体層6側に反射性p型電極層5を介して正極4を設けることで、本実施形態の発光素子1が得られる。
【0028】
負極(n型電極)9は、半導体層11のn型半導体層8とオーミック接触することによって、半導体層11の負極となっている。負極9としては、例えば、n型半導体層8に接するCr膜と、Cr膜に積層されたTi膜と、Ti膜に積層されたAu膜とからなる3層構造等を採用することが可能であるが、本発明において用いられる負極は、このような構成には限定されない。例えば、負極は、各膜が積層されてなる4層以上の多層構造や、あるいは単層、2層構造等として構成してもよく、その他、負極の膜質や層構造は適宜採用することが可能である。
この負極9は、後述するように、光取出面11aをプラズマで処理した後に各膜を順次積層することによって形成され、これによりアニール処理を施すことなくn型半導体層8との間でオーミック接触が得られるようになっている。
【0029】
なお、例えば、AlNバッファ層23にドーピングを施して導電性を持たせて構成とした場合には、AlNバッファ層23を除去せず、該AlNバッファ層23に負極9を形成することも可能である。
【0030】
次に、正極4は、後述のp型半導体層6と接続されるp型電極であるとともに、本実施形態の発光素子1の基体となるものであり、本実施形態で説明する例では、反射性p型電極層5を介してp型半導体層6と接続される。
正極4に用いられる材料としては特に限定されず、通常、窒化ガリウム系化合物半導体発光素子等の半導体分野において用いられる電極材料を何ら制限無く用いることができ、例えば、CuやAl等からなるメタルウェーハ等が挙げられる。また、正極4に用いる材料としては、電気抵抗が低く熱伝導性が高いものを用いることが、上下電極構造の発光素子1の電極(基体)の材質として好ましい。
【0031】
上述のような材料からなる正極4の厚さとしては、半導体ウェーハの基体としての強度や、後述のダイシング工程における分割性を考慮した場合、例えば、100μm以上200μm未満とすることが好ましい。正極4の厚さが100μm未満だと強度が低下し、また、200μm以上だと、ダイシング工程における分割(チップ化)が困難となる虞がある。
【0032】
なお、正極は、例えば、Siからなる基板を用い、Ni及びAu等の接合層を介してp型半導体層6(反射性p型電極層5)側と接合する構成とすることも可能である。このような場合には、後述の製造方法に備えられる支持基板接合工程において、Si基板からなる支持基板をp型半導体層側と接合し、剥離することなく発光素子の基体として用いるとともに、そのまま正極(図1の正極4参照)として用いることができる。
【0033】
また、正極は、金属メッキからなる金属層として構成することも可能である。このような場合には、例えば、半導体層11及び反射性p型電極層5側にシード層を設け、このシード層を下地として、電気メッキ法によって金属メッキからなる正極を形成することができる。正極を金属メッキから構成した場合、材質はCuとすることが好ましい。Cuは常温でメッキすることが可能であり、メッキ形成時に熱膨張の影響を受け難く、また、電気抵抗が低く熱伝導性が高い点においても、上下電極構造の発光素子1の正極(基体)の材質として好ましい。
また、本実施形態では、上述したような基体としての機能を兼ね備えた電極4を設けることにより、発光素子1の放熱効率が高められるという効果も得られる。
【0034】
次に、反射性p型電極層5は、上述したように、半導体層11に備えられるp型半導体層6と正極4との間に設けられる。
反射性p型電極層5は、正極4と電気的に接続されており、これによって正極4が反射性p型電極層5の取出電極となっている。また、反射性p型電極層5及び正極4と、負極9とは、半導体層11の厚み方向において反対側に配置された関係になっている。これにより本実施形態の発光ダイオード1は、所謂上下電極構造の発光ダイオードとなっている。
【0035】
また、本実施形態で説明する反射性p型電極層5は、半導体層11に接するオーミックコンタクト層と、オーミックコンタクト層に接する反射層と、反射層に接する相互拡散防止層とから構成される。反射層を備えることによって、反射性p型電極層5は、発光層7から発した光を光取出面11a側に反射させる反射層となっている。
この反射性p型電極層5は、例えば、オーミックコンタクト層をRFスパッタリング法によって積層し、反射層及び相互拡散防止層は例えばDCスパッタリング法を用いて積層することによって形成され、これによりアニール処理を施すことなくp型半導体層6との間でオーミック接触が得られるようになっている。
【0036】
オーミックコンタクト層に要求される性能としては、p型半導体層6との接触抵抗が小さいことが必須である。オーミックコンタクト層の材料はp型半導体層6との接触抵抗の観点から、Pt、Ru、Os、Rh、Ir、Pd等の白金族またはAgが好ましく、Pt,Ir,RhまたはRuがより好ましく、Ptが特に好ましい。Agを用いることは良好な反射を得るためには好ましいが、接触抵抗はPtよりも高い。したがって、それほど低い接触抵抗が要求されない用途にはAgを用いることも可能である。オーミックコンタクト層の厚さは、低接触抵抗を安定して得るために0.1nm以上とすることが好ましい。さらに好ましくは1nm以上であり、均一な接触抵抗が得られる。
【0037】
オーミックコンタクト層には、Ag合金、Al合金などの反射層が積層されている。Pt,Ir,Rh、Ru、OS,PdなどはAg合金と比較すると可視光から紫外領域の反射率が低い。したがって、発光層7からの光が十分に反射せずに出力の高い素子を得ることが難しい。この場合、オーミックコンタクト層を光が十分に透過するほどに薄く形成し、Ag合金などの反射層を形成して反射光を得る方が、良好なオーミック接触が得られ、かつ出力の高い素子を作成することができる。この場合、オーミックコンタクト層の膜厚は30nm以下とすることが好ましい。さらに好ましくは10nm以下である。反射層の膜厚は良好な反射率を得るために0.1nm以上とすることが好ましい。さらに好ましくは1nm以上であり、均一な密着性が得られる。Ag合金はマイグレーションを起こしやすいので薄い方が好ましい。したがって、膜厚は200nm以下にすることが好ましい。
【0038】
相互拡散防止層は、反射層の構成元素と正極4の構成元素との相互拡散を防止するために形成される。相互拡散防止層としては、例えば、Pt等を用いることが好ましい。
【0039】
次に、半導体層11は、上述したように、p型半導体層6と発光層7とn型半導体層8とから概略構成されている。
p型半導体層6、発光層7及びn型半導体層8を構成する材料としては、窒化ガリウム系(GaN系)単結晶、GaP系単結晶、GaAs系単結晶、ZnO系単結晶など周知の半導体発光材料を用いることができるが、後述するサファイア単結晶や、SiC単結晶等からなる基板に対してエピタキシャル成長可能な点において、窒化ガリウム系化合物半導体単結晶が好ましい。
【0040】
窒化ガリウム系化合物半導体単結晶からなる半導体層としては、例えば一般式AlGaIn1−A(0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦Z≦1で且つ、X+Y+Z=1。記号Mは窒素(N)とは別の第V族元素を表し、0≦A<1である。)で表わされるGaN系半導体が多数知られており、本発明においても、それら周知のGaN系半導体を含めて一般式AlGaIn1−A(0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦Z≦1で且つ、X+Y+Z=1。記号Mは窒素(N)とは別の第V族元素を表し、0≦A<1である。)で表わされるGaN系半導体を何ら制限なく用いることができる。
【0041】
n型半導体層8は、n型コンタクト層と、発光層7に接するn型クラッド層とが積層されて構成される。n型コンタクト層は、後述の下地層27及び/又はn型クラッド層を兼ねることも可能である。
【0042】
n型コンタクト層としては、後述の下地層と同様にAlGa1―XN層(0≦x≦1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。また、n型コンタクト層にはn型不純物がドープされていることが好ましく、n型不純物を1×1017〜1×1019/cm、好ましくは1×1018〜1×1019/cmの濃度で含有すると、負極9との良好なオーミック接触の維持、クラック発生の抑制、良好な結晶性の維持の点で好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeであり、より好ましくはSiである。
n型コンタクト層を構成するGaN系半導体は、後述の下地層と同一組成であることが好ましく、n型コンタクト層と下地層との合計の膜厚を1〜20μm、好ましくは2〜15μm、さらに好ましくは3〜12μmの範囲に設定することが好ましい。n型コンタクト層と下地層との合計の膜厚が上記範囲にあると、半導体の結晶性が良好に維持される。
【0043】
n型コンタクト層と発光層7との間には、n型クラッド層を設けることが好ましい。n型コンタクト層の表面に生じた平坦性の悪化を埋めることできるからである。n型クラッド層はAlGaN、GaN、GaInNなどで形成することが可能である。また、これらの構造のヘテロ接合や複数回積層した超格子構造としてもよい。n型クラッド層をGaInNで形成する場合には、発光層7のGaInNのバンドギャップよりも大きくすることが望ましいことは言うまでもない。
n型クラッド層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.005〜0.5μmであり、より好ましくは0.005〜0.1μmである。n型クラッド層のn型ドーパント濃度は1×1017〜1×1020/cmが好ましく、より好ましくは1×1018〜1×1019/cm3である。ドーパント濃度がこの範囲であると、良好な結晶性の維持および素子の動作電圧低減の点で好ましい。
【0044】
また、本実施形態においては、図2(b)に示す例の半導体積層構造2Aのように、AlNバッファ層23とn型半導体層8との間に下地層27が設けられた構成とすることもできる。下地層27をAlNバッファ層23の上に形成することにより、その上のn型半導体層8をはじめ、半導体層11の結晶性が向上するという効果が得られる。
【0045】
下地層27はAlGa1―XN層(0≦x≦1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。その膜厚は0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。この膜厚以上にした方が結晶性の良好なAlGa1―XN層が得られやすい。
【0046】
また、下地層27の膜厚としては、n型半導体層8との合計膜厚で15μm以下とすることが好ましく、10μm以下とすることがより好ましく、4μ以下とすることが最も好ましい。下地層27とn型半導体層8との合計膜厚を蒸気範囲とすることにより、基板の反りを防止するとともに、高い生産性を維持できるという効果が得られる。
【0047】
下地層27にはn型不純物を1×1017〜1×1019/cmの範囲内であればドープしても良いが、アンドープ(<1×1017/cm)の方が良好な結晶性の維持という点で好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeであり、より好ましくはSiである。
【0048】
次に、n型半導体層8の下側に積層される発光層7としては、GaN系半導体、好ましくはGa1−sInN(0<s<0.4)のGaN系半導体からなる発光層が本発明では通常用いられる。発光層7の膜厚としては、特に限定されないが、例えば、好ましくは1〜10nmであり、より好ましくは2〜6nmである。発光層7の膜厚が上記範囲であると発光出力の点で好ましい。
また、発光層7は、上記のような単一量子井戸(SQW)構造の他に、上記Ga1−sInNを井戸層として、この井戸層よりバンドギャップエネルギーが大きいAlGa1−cN(0≦c<0.3)障壁層とからなる多重量子井戸(MQW)構造としてもよい。また、井戸層および障壁層には、不純物をドープしてもよい。
【0049】
次に、p型半導体層6は、発光層7に接するp型クラッド層と、p型コンタクト層とが積層されて構成される。しかし、p型コンタクト層がp型クラッド層を兼ねてもよい。
p型クラッド層としては、発光層7のバンドギャップエネルギーより大きくなる組成であり、発光層7へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、好ましくは、AlGa1−dN(0<d≦0.4、好ましくは0.1≦d≦0.3)のものが挙げられる。p型クラッド層が、このようなAlGaNからなると、発光層7へのキャリアの閉じ込めの点で好ましい。p型クラッド層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1〜400nmであり、より好ましくは5〜100nmである。p型クラッド層のp型ドーパント濃度は、1×1018〜1×1021/cmが好ましく、より好ましくは1×1019〜1×1020/cmである。p型ドーパント濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶が得られる。
【0050】
p型コンタクト層は、少なくともAlGa1−eN(0≦e<0.5、好ましくは0≦e≦0.2、より好ましくは0≦e≦0.1)を含んでなるGaN系半導体層である。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性の維持および反射性p型電極層5との良好なオーミック接触の点で好ましい。p型不純物(ドーパント)を1×1018〜1×1021/cmの濃度で、好ましくは5×1019〜5×1020/cmの濃度で含有していると、良好なオーミック接触の維持、クラック発生の防止、良好な結晶性の維持の点で好ましい。p型不純物としては、特に限定されないが、例えば好ましくはMgが挙げられる。膜厚は、特に限定されないが、0.01〜0.5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.2μmである。膜厚がこの範囲であると、発光出力の点で好ましい。
【0051】
[窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造]
本実施形態の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造(半導体積層構造)2は、図2(a)の断面図に示すように、基板21と、該基板21上に順次積層されて設けられるZnOバッファ層22及びAlNバッファ層23と、該AlNバッファ層23上に形成されて窒化ガリウム系化合物からなる半導体層11とが備えられ、概略構成される(図2(b)に示す例も参照)。
【0052】
また、上述したように、図2(a)に示すような本実施形態の半導体積層構造2からZnOバッファ層22を除去して基板21を剥離した積層構造を用いることで、上述した本実施形態の発光素子1を得ることができる。具体的には、さらに、ZnOバッファ層22及び基板21の除去によって露出したAlNバッファ層23の少なくとも一部(図1に示す発光素子1の例ではAlNバッファ層23全体)を除去する。そして、露出したn型半導体層8上に負極9を設け、p型半導体層6側に反射性p型電極層5を介して正極4を設けた構成とすることにより、上記本実施形態の発光素子1が得られる。
以下、半導体積層構造2について詳述するが、以下の説明において、上述した本実施形態の発光素子1と共通する構成については、その詳しい説明を省略する。
【0053】
[基板]
本実施形態の半導体積層構造2において、基板21に用いる材料としては、サファイアを用いることが最も好ましい。サファイアからなる基板21上にZnOバッファ層22及びAlNバッファ層23を形成することで、さらにその上に、結晶性に優れた窒化ガリウム系化合物半導体結晶を成長させることが可能となる。
また、サファイアは化学的に安定であるため、後述の発光素子の製造方法で説明するような、ZnOバッファ層22をエッチングする除去工程において、エッチングされて崩れること等が無いことから非常に好適である。
また、基板21の材料としては、上記サファイアの他、シリコン、SiC、スピネル等を採用することが、ZnOバッファ層22及びAlNバッファ層23上に結晶性の良好な窒化ガリウム系化合物半導体結晶を成長させることができる点で好ましい。また、本発明においては、発光素子を構成するのに充分な結晶性を有する窒化ガリウム系化合物半導体結晶を形成することが可能な基板材料であれば、如何なる材料の基板も用いることが可能である。
【0054】
[ZnOバッファ層]
本実施形態の半導体積層構造2に備えられるZnOバッファ層22は、基板21上に形成されるバッファ層である。
ZnOバッファ層22は、単結晶のZnOからなることが好ましい。また、ZnOバッファ層22は、例えば、柱状結晶の集合体のように、単結晶粒を基本単位とする結晶構造(多結晶)としても構わない。しかしながら、ZnOバッファ層22を柱状結晶の集合体で構成した場合、基板21に対して並行な格子面が揃っており、基板21に対して並行でない格子面についても一定の配向性を有していることが必要となる。このような配向性は、非対称面X線測定法によって測定することが可能であるが、少なくとも、6回対称を示すピークが現れることが必要である。
【0055】
また、ZnOは極性を有しているが、ZnOバッファ層22の表面(最表面)22aがZn極性であることが好ましい。
【0056】
ZnOバッファ層22の成膜方法としては、特に制限されず、如何なる方法を採用しても良い。特に、ZnOバッファ層22を、基板21との格子整合性に優れた層として積層できる方法としては、例えば、MBE法、PLD法、スパッタ法、CVD法、イオンプレーティング法等が挙げられる。これらの中でも、装置が安価で、且つ、安定した生産性が期待できる方法としては、PLD法、スパッタ法、イオンプレーティング法が挙げられる。
【0057】
また、ZnOバッファ層22の膜厚は、10〜1000nmの範囲であることが好ましい。ZnOバッファ層22の膜厚が10nm未満だと、基板21を構成する材料、例えばサファイアの影響を遮断することができず、その上に積層される層が歪んだ結晶となる虞がある。また、ZnOバッファ層22の膜厚が1000nmを超えると、表面22aに凹凸を生じる虞がある。また、ZnOバッファ層22の膜厚は、50〜500nmの範囲であることがより好ましく、80〜300nmの範囲であることが最も好適である。
【0058】
[AlNバッファ層]
本実施形態の半導体積層構造2に備えられるAlNバッファ層23は、基板21上に形成されたZnOバッファ層22の上に積層されるバッファ層である。
AlNバッファ層23は、ZnOバッファ層22と同様、単結晶のAlNからなることが好ましいが、柱状結晶の集合体のように、単結晶粒を基本単位とする結晶構造(多結晶)としても構わない。このような多結晶構造の中でも、六角柱を基本構造とする柱状結晶の集合体であることが好ましい。
【0059】
また、AlNバッファ層23は、基板21上において、ZnOバッファ層22よりも平面視で大きく形成されており、AlNバッファ層23がZnOバッファ層22の表面22a及び側面22bを覆うように形成されていることが好ましい。これにより、AlNバッファ層23によってZnOバッファ層22を反応性ガス等から保護するコート層としての作用が得られる。
AlNバッファ層23に隙間が生じ、ZnOバッファ層22の表面22a又は側面22bの一部が露出した状態だと、半導体層11を成膜する際に、反応性の原料ガスが表面22aに接触し、ZnOバッファ層22に対してダメージを与える虞がある。
【0060】
AlNバッファ層23の成膜方法としては、反応性の高い原料を使用せず、且つ、低い温度で成膜プロセスを行う方法とすることが必要となる。ここで、反応性の高い原料とは、NHやH等の原料ガスであり、低い温度とは700℃以下の成膜温度を言う。つまり、AlNバッファ層23の成膜には、MBE法、PLD法、スパッタ法、イオンプレーティング法等の物理成膜法を用いることが好ましい。これらの中でも、装置が安価で、且つ、安定した生産性が期待できる方法としては、PLD法、スパッタ法、イオンプレーティング法が挙げられる。
【0061】
また、AlNバッファ層23の膜厚は、10〜100nmの範囲であることが好ましい。AlNバッファ層23の膜厚が10nm未満だと、基板21上においてZnOバッファ層22を完全に覆うことが困難となる。また、AlNバッファ層23の膜厚が100nmを超えると、表面23aに凹凸が生じる虞がある。
【0062】
また、ZnOバッファ層22上にAlNのような窒化物を成膜した場合、その界面に、Zn、Al、O、N等が混じり合った反応層である、アモルファス又は多結晶の層が形成されることがあり、例えば、TEM等の方法によって確認することができる。このような反応層は、AlNのような窒化物の成膜中に、ZnOがダメージを受けて分解することで、成長中の膜と混じり合って形成するものである。従って、本実施形態では、上述の如く、反応性の高い原料を使用せず、且つ、低い温度でAlNバッファ層23を成膜することにより、ZnOバッファ層22とAlNバッファ層23との界面に、上記反応層が形成されることが無い。
【0063】
[窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法]
次に、図3〜図12を参照して、本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法について説明する(図1の発光素子1、図2(a)、(b)の半導体積層構造2、2A、図13の発光素子3も参照)。
本実施形態の発光素子1の製造方法は、基板21上に、ZnOバッファ層22及びAlNバッファ層23をこの順で積層するバッファ層形成工程と、AlNバッファ層23上に、窒化ガリウム系化合物からなる半導体層11を形成する半導体層形成工程と、ZnOバッファ層22を除去することにより、基板21を剥離する除去工程と、を備える方法である。
なお、本実施形態で説明する製造方法は、発光素子を製造する手順の一例であり、以下に説明する各工程については、最終的に得られる発光素子の仕様や生産性等を考慮しながら、例えば、工程順を適宜入れ替えた方法とすることも可能である。
【0064】
<製造方法の一例>
以下に、本実施形態の発光素子の製造方法の一例について、各工程を詳細に説明する。
本例では、上記各工程に加え、さらに、半導体層形成工程と除去工程との間において、半導体層11のp型半導体層6側(図5に示す例では、反射性p型電極層5側)に支持基板(正極4)を貼着する支持基板接合工程が備えられている。また、本例では、上記除去工程を行った後、複数の半導体層11の各側面(周囲面)11bに、保護用の絶縁膜10を形成する絶縁膜形成工程が設けられており、さらに、絶縁膜形成工程と電極形成工程との間において、n型半導体層8の光取出面11aを粗面化する粗面化工程が設けられている。またさらに、本例では、電極形成工程の後に、正極4を切断することによってウェーハを素子単位に分割する分割工程が設けられている。
【0065】
『バッファ層形成工程』
バッファ層形成工程においては、図3(a)〜図3(c)に示すように、c面からなる主面21aを備えサファイアからなる基板21を用意し、この基板21上に、ZnOバッファ層22及びAlNバッファ層23を、以下に説明する各手順によって順次積層する。
【0066】
「ZnOバッファ層」
まず、基板21の主面21a上に、ZnO単結晶からなるZnOバッファ層22を形成する。
具体的には、図3(a)〜図3(b)に示すように、基板21の主面21aに、MBE法、PLD法、スパッタ法、CVD法、イオンプレーティング法等の内、何れかの方法を用いてZnOバッファ層22を成膜する。また、ZnOバッファ層22の成膜方法としては、装置が安価で、且つ、安定した生産性が期待できる点で、PLD法、スパッタ法、イオンプレーティング法が好ましく、スパッタ法を用いることが最も好ましい。
バッファ層形成工程では、上記方法を採用することにより、ZnOバッファ層22を、基板21との格子整合性に優れた層として積層できる。
【0067】
「AlNバッファ層」
次に、ZnOバッファ層22の上に、AlN単結晶からなるAlNバッファ層23を形成する。
具体的には、図3(c)に示すように、ZnOバッファ層22の表面22aに、ZnOバッファ層22を成膜する際と同様、MBE法、PLD法、スパッタ法、イオンプレーティング法等の内、何れかの物理成膜法を用いてAlNバッファ層23を成膜する。AlNバッファ層23を、結晶性に優れた単結晶AlNから成膜する方法としては、反応性の高い原料を使用せず、且つ、低い温度で成膜プロセスを行う方法とすることが必要となるが、このような方法としては、上記各方法が挙げられる。また、上記各方法の中でも、装置が安価で、且つ、安定した生産性が期待できる点で、PLD法、スパッタ法、イオンプレーティング法が好ましく、スパッタ法を用いることが最も好ましい。ここで、本発明において説明する反応性の高い原料とは、NHやH等の原料ガスであり、低い温度とは700℃以下の成膜温度を言う。
【0068】
本実施形態のバッファ層形成工程においては、AlNバッファ層23を形成する際、窒素源として窒素(N)ガスを用いることが好ましい。上述したように、結晶性に優れた単結晶のAlNを成膜する場合、NHやH等の反応性の高い原料を使用することは好ましくないが、窒素源として窒素ガスを用いることが、反応性が高くない点及び低コストである点等から好ましい。
また、AlNバッファ層23を形成する際の成膜温度は、上述したように、結晶性に優れた単結晶AlNを成膜するためには低い温度とする必要があり、700℃以下の成膜温度とすることが好ましく、600℃以下とすることがより好ましい。
【0069】
なお、本実施形態のバッファ層形成工程では、ZnOバッファ層22とAlNバッファ層23を同じ方法で成膜しても良いし、異なる方法で成膜しても構わない。ZnOバッファ層22とAlNバッファ層23を同じ方法で成膜する場合には、同じチャンバを用いて、成膜条件や原料ガスを都度切り替える方法としても良いし、異なるチャンバを用いて基板の搬出入を行なうことにより、それぞれの膜を別々に成膜する方法としても良い。但し、原料ガスの切り替えや成膜温度の変更等に伴う待ち時間を考慮した場合、それぞれ異なる専用のチャンバを用いて成膜することが好ましい。
【0070】
また、本実施形態のバッファ層形成工程では、基板21上において、AlNバッファ層23をZnOバッファ層22よりも平面視で大きく成膜し、AlNバッファ層23がZnOバッファ層22の表面22a及び側面22bを覆うように形成することが好ましい。
基板21上にZnOバッファ層22を成膜した際、その外周部分において、側面22bの露出が不可避となり、反応性のガスに接触する虞がある。このため、ZnOバッファ層22の側面22aも、AlNバッファ層23によって覆われていることが好ましい。具体的には、基板21の主面21aにおいて、ZnOバッファ層22を成膜する領域を若干小さくし、AlNバッファ層23によって表面22a及び側面22bの両方を覆うことが可能な構成とすれば良い。この場合、例えば、ZnOバッファ層22を成膜する際、ウェーハの外周部を治具等でマスクして成膜処理を行なう等の方法を採用できる。
【0071】
『半導体層形成工程』
次に、半導体層形成工程では、図4(a)〜図4(c)に示すように、基板21上のAlNバッファ層23の上に、窒化ガリウム系化合物からなるn型半導体層8、発光層7及びp型半導体層6を順次積層して半導体層11を形成する。また、本実施形態では、半導体層形成工程が、半導体層11の形成が終了した後、p型半導体層6上に反射性p型電極層5を積層する工程を含む例を説明する。
【0072】
具体的には、まず、図4(a)に示すように、AlNバッファ層23上に、n型半導体層8、発光層7及びp型半導体層6を順次積層する。
n型半導体層8にはn型ドーパントとしてSi等をドープさせることが望ましく、p型半導体層6にはp型ドーパントとしてMg等をドープさせることが望ましい。
【0073】
この際、半導体層11を構成するn型半導体層8、発光層7及びp型半導体層6の成長方法は特に限定されず、スパッタリング法、MOCVD(有機金属化学気相成長法)、HVPE(ハイドライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)、などGaN系半導体を成長させることが知られている全ての方法を適用できる。好ましい成長方法としては、膜厚制御性、量産性の観点からスパッタリング法またはMOCVD法である。
【0074】
スパッタリング法では、Gaを含むターゲットを用いるとともに、プラズマガスとしてアルゴンと窒素の混合ガスを用いて、所謂リアクティブスパッタリング法によってGaN系半導体を形成することが好ましい。
また、MOCVD法では、キャリアガスとして水素(H)または窒素(N)、III族原料であるGa源としてトリメチルガリウム(TMG)またはトリエチルガリウム(TEG)、Al源としてトリメチルアルミニウム(TMA)またはトリエチルアルミニウム(TEA)、In源としてトリメチルインジウム(TMI)またはトリエチルインジウム(TEI)、V族原料であるN源としてアンモニア(NH3)、ヒドラジン(N)などが用いられる。また、ドーパントとしては、n型にはSi原料としてモノシラン(SiH)またはジシラン(Si)を、Ge原料としてゲルマンガス(GeH)や、テトラメチルゲルマニウム((CHGe)やテトラエチルゲルマニウム((CGe)等の有機ゲルマニウム化合物を利用できる。
MBE法では、元素状のゲルマニウムもドーピング源として利用できる。p型にはMg原料としては例えばビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)またはビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム(EtCpMg)を用いればよい。
【0075】
なお、本実施形態では、図2(b)に示す例のように、n型半導体層8を形成する前に、AlNバッファ層23の表面23a上に下地層27を形成し、この下地層27上にn型半導体層8を積層する方法とすることができる。AlNバッファ層23とn型半導体層8との間に下地層27を形成することにより、n型半導体層8をはじめ、半導体層11の結晶性が向上するという効果が得られる。
【0076】
次に、図4(b)に示すように、上記手順にて基板21上において順次積層されたn型半導体層8、発光層7及びp型半導体層6に加え、ZnOバッファ層22並びにAlNバッファ層23を複数の積層体として分割し、分離溝12を形成する。
【0077】
具体的には、半導体層11を構成するp型半導体層6上にマスクを形成し、図4(b)に示すように、ドライエッチング等の手段によってp型半導体層6、発光層7及びn型半導体層8からなる積層体を格子状にエッチングして分割する。エッチングによる処理は、基板21が露出した時点で終了する。これにより、p型半導体層6、発光層7、n型半導体層8、AlNバッファ層23及びZnOバッファ層22からなる積層体を、分離溝12に沿って複数に分割された積層体とする。
【0078】
なお、本発明では、上記バッファ層形成工程において、予め、基板21上にZnOバッファ層22及びAlNバッファ層23を積層した後、この上に、半導体層11を構成するn型半導体層8、発光層7及びp型半導体層6の各々を形成する。即ち、基板21としてサファイア基板を用い、n型半導体層8としてGaNを形成する場合には、基板21とn型半導体層8との格子定数が10%以上も異なる。本発明では、基板21とn型半導体層8との中間の格子定数を有するAlN、ZnOからなるAlNバッファ層23及びZnOバッファ層22を用いることで、n型半導体層8を構成するGaNの結晶性を向上させることが可能となる。
【0079】
また、本実施形態の半導体層形成工程においては、図2(b)に示す例のように、さらに、AlNバッファ層23とn型半導体層8との間に、下地層27を形成する方法としても良い。また、下地層27を形成する方法としては、MOCVD法を用いることが、結晶性の良好な層が得られる点から好ましい。
また、半導体層形成工程においては、n型半導体層8と下地層27との合計膜厚を、15μm以下として形成することが好ましく、10μm以下として形成することがより好ましく、4μm以下として形成することが最も好ましい。
【0080】
「反射性p型電極層の形成」
次に、本例においては、図4(c)に示すように、p型半導体層6上に、フォトリソグラフィ技術によって、オーミックコンタクト層、反射層及び相互拡散防止層を順次積層し、パターニングすることにより、反射性p型電極層5を形成する。また、図示例の反射性p型電極層5は、p型半導体層6上において、平面視でp型半導体層6よりも小さく、縁部61を除いた略中央付近に形成されている。
【0081】
オーミックコンタクト層をp型半導体層6上に形成するにあたり、RF放電によるスパッタリング成膜法で形成することが好ましい。RF放電によるスパッタリング成膜法を用いることで、蒸着法やDC放電のスパッタリング成膜法を用いるより接触抵抗の低い電極を形成できる。即ち、RF放電によるスパッタリング成膜法でオーミックコンタクト層を形成することによって、オーミックコンタクト層にp型半導体層6の構成元素が混在し、p型半導体層6にはオーミックコンタクト層の構成元素が混在することになり、これによりオーミックコンタクト層とp型半導体層6とがオーミック接合される。
【0082】
RF放電によるスパッタリング成膜では、イオンアシスト効果により、p型半導体層6に付着したスパッタ原子にエネルギーを与え、p型半導体、例えばMgドープのp−GaNとの間で表面拡散を促す作用があると考えられる。さらに、上記成膜においては、p型半導体層6の最表面原子にもエネルギーを与え、半導体材料、例えばGaがオーミックコンタクト層に拡散することを促す作用もあると考えられる。
【0083】
RF放電による成膜では、初期において、接触抵抗を下げる効果を持つが、膜厚を大きくすると、その膜が疎であるために反射率の点ではDC放電による成膜に比べて劣る。そこで、接触抵抗を低く保った範囲で薄膜化して光透過率を上げたオーミックコンタクト層をRF放電により形成し、その上に反射層及び相互拡散防止層をDC放電により形成することが好ましい。
【0084】
スパッタリングは、従来公知のスパッタリング装置を用いて従来公知の条件を適宜選択して実施することができる。半導体層11、AlNバッファ層23及びZnOバッファ層22を積層した基板21をチャンバ内に収容し、基板温度を室温から500℃の範囲に設定する。基板加熱は特に必要としないが、オーミックコンタクト層の構成元素およびp型半導体層6の構成元素の拡散を促進するために適度に加熱しても良い。チャンバ内は真空度が10−4〜10−7Paとなるまで排気する。スパッタリング用ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe等が使用できる。入手の容易さからArとするのが望ましい。これらの内の一つのガスをチャンバ内に導入し、0.1〜10Paにしたのち放電を行う。好ましくは0.2〜5Paの範囲に設定する。供給する電力は0.2〜2.0kWの範囲が好ましい。この際、放電時間と供給電力を調節することによって、形成する層の厚さを調節することができる。
【0085】
「半導体積層構造の形成」
本実施形態の発光素子1の製造方法においては、上述したバッファ層形成工程〜半導体層形成工程を行なうことにより、基板21上に、ZnOバッファ層22、AlNバッファ層23及び半導体層11が順次積層されてなる、本実施形態の半導体積層構造2が得られる(図4(c)を参照)。
なお、本実施形態においては、図4(c)に示すような複数の半導体積層構造2を形成した後、半導体層11の各側面に予め保護膜を形成しておくことが、その後の工程において、半導体層11を保護できる点から好ましい。
【0086】
そして、本実施形態の製造方法では、さらに、以下に説明するような工程を実施することで、半導体積層構造2からZnOバッファ層22及び基板21を除去し、正極4及び負極9を形成することにより、本実施形態の発光素子1を製造する。
【0087】
『支持基板接合工程』
次に、支持基板接合工程では、図5に示すように、半導体層11のp型半導体層6側に支持基板(正極4)を貼着する。
具体的には、図5に示すように、半導体層11のp型半導体層6側、つまり反射性p型電極層5に、Siからなる導電性の支持基板として正極4を接合する。このように、支持基板として、Siからなる正極4を用いた場合には、半導体層11側に対し、金属接合層によって接合する方法とすることができる。
【0088】
本例では、後述の除去工程の前に、基板21を剥離した積層体の取り扱いを容易にするため、予め、半導体層11側に支持基板として正極4を接合しておく必要がある。このように、積層体を支持するための基板を設ける方法としては、本実施形態のように正極4を接合する方法の他、後述する本実施形態の他の例のように、例えば、半導体層11側に、金属メッキからなる支持基板(図11(a)、(b)中の正極40を参照)を形成する方法が挙げられる。このような構成とした場合には、金属メッキが導電性を有することから、支持基板をそのまま電極、即ち正極として用いることが可能となる。
【0089】
なお、支持基板は必ずしも導電性を有している必要は無いが、本実施形態のように、Si基板等の導電性を有する支持基板を用いれば、そのまま正極4として用いることができる。この場合、半導体積層構造の表裏面に電極を有する、所謂バーティカル構造の発光素子(LED)を構成できる点から好適である。このように、Si等からなる導電性の支持基板を用い、そのまま支持基板を正極4として用いる場合には、正極4が、例えば、Ni及びAuからなる接合層を介してp型半導体層側に接合された構成とすることができる。
【0090】
また、金属メッキ等、金属からなる支持基板を用いる場合には、ZnOバッファ層22及び基板21の除去工程の前に、支持基板の表面を保護層等で覆う必要がある。この際に保護層として用いる材料としては、SiO、SiN、Al、AlN等の酸化物又は窒化物の他、NiP等を用いることも可能である。
【0091】
また、本実施形態で用いる支持基板としては、上述のような導電性のものには限定されず、例えば、Siの酸化物又は窒化物等の絶縁性の材料から構成することも可能である。 具体的には、詳細な図示を省略するが、半導体層11のp型半導体層6側、つまり反射性p型電極層5に、Siの酸化物又は窒化物からなる支持基板を接着等の方法によって接合する方法とすることができる。
【0092】
『除去工程』
次に、除去工程では、図6(a)〜図6(c)に示すように、ZnOバッファ層22を除去することにより、基板21を剥離する。
具体的には、図6(a)〜図6(b)に示すように、例えば、酸等のエッチング液を用いたエッチング法(ケミカルリフトオフ法)によってZnOバッファ層22を溶解させ、除去する。そして、図6(c)に示すように、ZnOバッファ層22の溶失に伴い、基板21が、半導体層11及びAlNバッファ層23側から剥離される。
【0093】
本実施形態の除去工程では、ZnOバッファ層22の溶解に用いるエッチング液として、HCl又はシュウ酸を用いることが好ましい。HCl又はシュウ酸を用いてエッチング処理することにより、ZnOバッファ層22を効率良く確実に除去することができ、ひいては、基板21を容易に半導体層11及びAlNバッファ層23側から剥離することが可能となる。
【0094】
また、除去工程では、ZnOバッファ層22に対してエッチング液を効率的に接触させることにより、工程の効率化を図ることが可能となる。
ここで、通常、ZnOバッファ層22が成膜されない基板21の外周部には、密集した結晶膜は成膜されないため、単に積層体をエッチング液に浸漬するだけでも基板21の剥離は可能である。しかしながら、基板21上へのZnOバッファ層22及びAlNバッファ層23の成膜状態によっては、基板21の外周部を研削してからエッチング液に浸漬させた方が良い場合もある。例えば、本実施形態で説明する例のように、AlNバッファ層23がZnOバッファ層22の表面22a及び側面22bを覆うように形成した場合等が挙げられる。
【0095】
一方、4インチ以上等の大口径の基板を用いた場合、外周部からのエッチング液の浸透のみでは、ZnOバッファ層22を溶かしきるのに長時間を要する。この場合には、半導体層11側から基板21に到達する穴を形成し、エッチング液をZnOバッファ層22に短時間で浸透させる方法とすることも可能である。
【0096】
『絶縁膜形成工程』
次に、絶縁膜形成工程では、図7に示すように、半導体層11の各側面(周囲面)11bに、保護用の絶縁膜10を形成する。
具体的には、図7に示すように、CVD法やスパッタ法等の手段によって、SiOからなる絶縁膜10を、各半導体層11の側面11bと、各半導体層11の光取り出し面11aの外周部分を覆うように形成する。半導体層11の全体に絶縁膜10を形成し、光取出面11aの中央部以外の部分にレジストを形成し、ドライエッチングすることで、目的の絶縁膜10を形成できる。
なお、絶縁膜10は、少なくとも、半導体層11の側面11bと光取り出し面11aの外周部分に形成されていれば良い。また、本発明で参照する各図面(図8〜10、図12)においては、符号を明示するために、図中の半導体層等の側面における絶縁膜を意図的に削除して表しているが、本発明に係る発光素子は、各側面において絶縁膜が連続的に存在するものである。
【0097】
『粗面化工程』
次に、粗面化工程では、n型半導体層8の光取出面11aを粗面化する。
具体的には、図8に示すように、加熱したKOH溶液またはTMAH(Tetramethyl ammonium hydroxide)溶液に浸漬して、光取出面11aの中央の絶縁膜10に被覆されずに露出している部分のAlNバッファ層23を除去し、また、下地層(図2(b)の下地層27を参照)が設けられている場合には、この下地層を除去するとともに、n型半導体層8の光取出面11aを粗面化する。
なお、AlNバッファ層23及び下地層の除去、並びに光取出面11aの粗面化には、PEC(photo electrochemical etch)を使用することもでき、また、ドライエッチングを適用することもできる。
【0098】
なお、上述したAlNバッファ層23の除去操作は、n型半導体層8上に後述の負極9を形成するための操作であるが、AlNバッファ層23をドープした構成とすれば、AlNバッファ層23上に負極9を形成することも可能であり、この除去操作は不要となる。
また、下地層が設けられている場合、上記の下地層の除去操作は、下地層がアンドープ層である場合に必要な操作であって、下地層にSi等がドープされている場合には、上記AlNバッファ層23の場合と同様、下地層の除去操作は不要である。
また、本例においては、光取出面11aの粗面化に用いる加熱したKOH溶液またはTMAH溶液と使用して、AlNバッファ層23及び下地層を除去する例を説明しているが、これには限定されない。例えば、AlNバッファ層23及び下地層を、レーザ照射等によって熱分解させて除去する方法としても良く、適宜採用すれば良い。
【0099】
また、本実施形態の粗面化工程では、AlNバッファ層23及び下地層の除去操作において、例えば、パターニングによって負極9形成領域のみを除去する方法とすることも可能であり、適宜採用すれば良い。
【0100】
『電極形成工程』
次に、電極形成工程においては、図9に示すように、半導体層11のn型半導体層8に負極9を形成する。
具体的には、まず、半導体層11を含む半導体ウェーハをプラズマドライエッチング装置のチャンバに収納し、n型半導体層8中のドーパント元素と同一の元素を含有するエッチングガスからなる反応ガスをチャンバ内に供給し、半導体層11の上方においてプラズマを発生させ、エッチングガスを含むプラズマを光取出面11aに暴露させる。
【0101】
この際に用いるエッチングガスとしては、n型半導体層8中のドーパント元素がケイ素(Si)の場合は、エッチングガスとしてハロゲン化ケイ素を用いることが好ましく、具体的にはSiClまたはSiFが好ましい。
また、反応ガスを導入した際のチャンバ内の圧力は、例えば0.2〜2Paの範囲にすることが好ましく、エッチングガスの流量は15sccm〜50sccmの範囲が好ましく、プラズマのパワーは120W程度が好ましく、バイアスは50W程度が好ましく、処理時間は150秒程度がよい。
このようなエッチング処理を行うことによって、n型半導体層8の表面近傍にエッチングガスに含まれるSiが打ち込まれて、表面近傍のSi濃度が高められると考えられる。
【0102】
次に、図9に示すように、プラズマ処理後のn型半導体層8の上に負極9を形成する。負極9としては、例えば、Cr膜、Ti膜及びAu膜を順次積層して形成することができるであるが、これには限定されず、負極9の材質や積層構造は、適宜採用することが可能である。また、このような負極9の形成処理は、例えば、スパッタリング法や蒸着法を用いればよい。
【0103】
上記の如く、n型半導体層8の表面をプラズマで処理してから負極9を構成する各層を積層することにより、負極9とn型半導体層8とをオーミック接触させることができる。この場合、負極9の形成後のアニールを必要としない。むしろ、アニールすることによって電気特性を悪化させてしまうことがあり、また、反射膜のAg合金がマイグレーションを起こし、反射率が低下するので好ましくない。
【0104】
なお、本例では、上述の支持基板接合工程で説明したように、正極4を導電性の支持基板から構成し、反射性p型電極層5上に接合することによって形成する例を説明しているが、本発明ではこれには限定されない。例えば、後述の本実施形態の製造方法の他の例において詳細するが、正極4を、メッキ法を用いて、p型半導体層6上(反射性p型電極層5上)に金属メッキ層として形成しても良い。
【0105】
また、本例では、Siからなる導電性の支持基板を用いることで正極4を構成した例を説明しているが、上述した通り、このような例には限定されず、例えば、Siの酸化物又は窒化物等の絶縁性材料からなる支持基板を用いる方法とすることも可能である。このような場合には、例えば、絶縁性材料からなる支持基板を除去した後、反射性p型電極層5上に正極4を形成する方法とすることができる。
このような方法とする場合、具体的には、詳細な図示を省略するが、例えば、以下に説明するような方法とすることができる。
【0106】
まず、n型半導体層8側に形成した負極9に、例えば、ガラス(石英)基板等からなる仮貼付基板を、接着材等で貼着した後、従来公知の方法によって仮貼付基板を剥離し、p型半導体層6上の反射性p型電極層5を露出させる。
次いで、p型半導体層6上において露出した反射性p型電極層5の上に、例えば、CuやAl等からなるメタルウェーハ等を反射性p型電極層5上に接合することにより、正極を形成する。そして、上記手順で正極を形成した後、負極9に貼着した仮貼付基板を従来公知の方法によって剥離し、負極9を露出させる方法とすることができる。
【0107】
なお、本実施形態では、上述したように、AlNバッファ層23にドーピングを施して導電性を持たせた構成とした場合には、AlNバッファ層23を除去せず、該AlNバッファ層23に負極9を形成することも可能である。
【0108】
また、例えば、Siの酸化物又は窒化物からなる絶縁性の支持基板を用いた場合、この支持基板に貫通孔を形成し、該貫通孔に正極を取り付ける方法とすることも可能である。
【0109】
『分割工程』
次に、分割工程では、図9〜図10に示すように、基体である正極4を、複数に分割された半導体層11に沿って切断する。
具体的には、図9に示すように、正極4上に形成された複数の半導体層11の各々の間の分断溝12に沿って、例えば、レーザスクライブ法を用いて正極4にレーザを照射して切断する。
【0110】
また、このようなレーザスクライブ法による分割を行なう場合、例えば、ダイシング用のテーブル上に粘着テープを貼り付けた状態とし、この上にウェーハを貼着設置して行なう方法とすることができる。このような方法で分割を行なうことにより、レーザスクライブによって切断された複数の発光素子を傷めることなく容易に分割し、取り出すことが可能となる。また、テーブル上に粘着テープを貼り付けた状態で分割工程を行なうことにより、レーザによるテーブルの焼付を防止することも可能となる。
このようなダイシング工程を行なうことにより、図10(図1も参照)に示すような、複数の発光素子1が得られる。
【0111】
<製造方法の他の例>
以下、本発明の発光素子の製造方法の他の例について、各工程を詳細に説明する。なお、本例においては、上述したような本実施形態の製造方法の一例と共通する構成については共通の符号を付与するとともに共通の図面を用いて説明し、また、各例において共通する工程については、図面やその詳しい説明を省略する。
【0112】
本例の発光素子3の製造方法は、上記本実施形態の製造方法の一例において設けられている電極形成工程に代わり、半導体層形成工程と除去工程との間において、半導体層11のp型半導体層6側に、金属メッキからなる正極40を形成するメッキ工程が備えられている点において、上述した本実施形態の発光素子1の製造方法の一例とは異なる。
また、本例では、バッファ層形成工程〜半導体層形成工程については、上記製造方法の一例と共通であるので、上記したメッキ工程以降の工程を中心に説明する。
【0113】
また、本例の方法によって製造される発光素子は、図13に示す発光素子3のように、正極40が、反射性p型電極層5上に形成されるシード層42と、該シード層42上に形成される金属メッキ層41とからなる点で、上記製造方法の一例によって得られる発光素子1とは、正極の構成が異なるものである。
【0114】
『メッキ工程』
本例では、上記本実施形態の製造方法の一例と同様のバッファ層形成工程〜半導体層形成工程を行った後、図11(a)、(b)に示すように、p型半導体層6の上の反射性p型電極性5上に、金属メッキ層41及びシード層42からなる正極40を形成する。
【0115】
具体的には、まず、図11(a)に示すように、反射性p型電極性5上に、金属メッキ層41の下地となるシード層42を形成する。この際、反射性p型電極性5を覆うようにTi膜とTa膜とCu膜とを順次積層してシード層42を形成する。なお、シード層42は、Ni膜とAu膜とTi膜とTa膜とCu膜とを順次積層して形成しても良く、あるいは、Cuからなる単層膜としても良い。ここで、Ta膜は、金属メッキ層41をなすCuのバリアとして機能する。
【0116】
なお、シード層42を形成する際、基板21上の複数の半導体層11の各々の間に設けられた分離溝12には、予め、レジスト層26を埋設した状態とする。そして、複数の半導体層11に備えられる反射性p型電極層5とレジスト層26を覆うように、シード層42を形成する。
【0117】
また、シード層42は、発光素子の構成部材として必ずしも必須な積層膜ではなく、半導体層11に備えられる反射性p型電極層5にメッキの下地層としての機能を持たせることができれば、シード層42は省略してもよい。
【0118】
次に、図11(b)に示すように、シード層42を覆うように金属メッキ層41を形成する。金属メッキ層41の形成は、シード層42に電流を印加しつつ電気メッキ法で行うことができる。
金属メッキ層41の材質は、シード層42の材質に対応するものが好ましく、本実施形態では、金属メッキ層41を、シード層42のCu膜と同じ材質であるCuを用いて形成することが好ましい。Cuは常温でメッキすることが可能であり、メッキ層形成時に熱膨張の影響を受け難い。また、Cuは、電気抵抗が低く熱伝導性が高い点においても上下電極構造の発光素子3の基体の材質として好ましい。
【0119】
『負極形成工程』
次に、本例の製造方法においては、除去工程の後に、半導体層11のn型半導体層8側に負極9を形成する負極形成工程が備えられている。
具体的には、図12に示すように、上記本実施形態の製造方法の一例で説明した電極形成工程と同様の手順を用いて、上記粗面化工程においてAlNバッファ層23(及び下地層)の少なくとも一部を除去することで露出したn型半導体層8の光取出面11aに、負極9を形成する。
【0120】
また、本例においても、上記本実施形態の製造方法の一例における電極形成工程と同様、AlNバッファ層23(及び下地層)をドープした構成とすれば、これら各層を除去することなく、AlNバッファ層23上に負極9を形成することが可能である。
【0121】
次に、本例では、除去工程、絶縁膜形成工程、粗面化工程及び分割工程については、上記した本実施形態の製造方法の一例と同様の方法を用いることができる。
また、本例では、負極9形成のためにAlNバッファ層22をn型半導体層8上から除去した後、さらに、複数の半導体層11の各々の間の分離溝12内に埋設されたレジスト層26を、アッシング処理等によって除去する方法を採用することができる。
本実施形態の発光素子の製造方法の他の例によれば、上記各工程により、図13に示すような上下電極型の発光素子3が得られる。
【0122】
以上説明したような本実施形態の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法によれば、基板21上にZnOバッファ層22及びAlNバッファ層23をこの順で積層するバッファ層形成工程と、AlNバッファ層23上に窒化ガリウム系化合物からなる半導体層11を形成する半導体層形成工程と、ZnOバッファ層22をエッチング除去することによって基板21を剥離する除去工程とを備える方法なので、半導体層形成工程において、NHを用いたり、高温による成膜処理を行なったりした場合でも、ZnOバッファ層22の結晶性の低下や、溶解による消失等が生じることが無い。また、ZnOバッファ層22をエッチング除去することで、容易に基板21を剥離することができる。これにより、発光特性に優れた発光素子1(3)を、歩留まり良く高い生産性で製造することが可能となる。
【0123】
なお、本実施形態の製造方法においては、図1に示すような上下電極構造の発光素子を製造する例を挙げて説明しているが、これには限定されず、例えば、図14に示す例のように、半導体層の同一面側に電極が形成されてなる、所謂フリップチップ型の発光素子に適用することも可能である。
【0124】
[ランプ]
以上説明したような、本発明に係る上下電極型の発光素子1(図1を参照)と蛍光体とを組み合わせることにより、当業者周知の手段を用いてランプを構成することができる。従来から、発光素子と蛍光体と組み合わせることによって発光色を変える技術が知られており、本発明では、このような技術を何ら制限されることなく採用することが可能である。
例えば、蛍光体を適正に選定することにより、発光素子より長波長の発光を得ることも可能となり、また、発光素子自体の発光波長と蛍光体によって変換された波長とを混ぜることにより、白色発光を呈するランプとすることもできる。
また、ランプとしては、一般用途の砲弾型、携帯のバックライト用途のサイドビュー型、表示器に用いられるトップビュー型等、何れの用途にも用いることができる。
【0125】
例えば、図15に示す例のように、上下電極型の発光素子1を砲弾型に実装する場合には、2本のフレームの内の一方(図15ではフレーム81)に発光素子1を銀ペーストなどの導電性接着材で接着して発光素子1の正極4(図1に示す符号4参照)をフレーム81に接合し、発光素子1の負極9(図1に示す符号9参照)をワイヤー83でフレーム82に接合する。そして、透明な樹脂からなるモールド84で発光素子1の周辺を封止することにより、図15に示すような砲弾型のランプ80を作製することができる。
上述のような本発明のランプ80は、本発明に係る発光ダイオードの製造方法によって得られる発光素子1が用いられてなるものなので、発光特性等に優れたものとなる。
【0126】
[その他の半導体素子(デバイス)]
本発明で得られ、優れた結晶性を備える窒化ガリウム系化合物半導体の積層構造(図2(a)、(b)の半導体積層構造2、2Aの他、図1の発光素子1も参照)は、上述のような発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)等の発光素子に備えられる半導体層の他、太陽電池や受光素子等の光電気変換素子、又は、HBT(Heterojunction Bipolar Transistor)やHEMT(High Electron Mobility Transistor)等の電子デバイスの積層構造にも応用することができる。これらの半導体素子は、各種構造のものが多数知られており、本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体の積層構造は、これら周知の素子構造を含めて何ら制限されない。
【実施例】
【0127】
次に、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法、窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造及び窒化ガリウム系化合物半導体発光素子を、実施例および比較例を示してより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0128】
[実施例1]
図1に、本実施例で作製した窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の断面模式図を示す。本例では、サファイアからなる基板21のc面上に、RFスパッタ法を用いて、ZnO単結晶からなるとともにZn極性を有するZnOバッファ層22を形成し、その上に、同様のRFスパッタ法を用いて、AlN単結晶からなるAlNバッファ層23を形成し、さらにその上に、MOCVD法を用いて、SiドープGaNからなる下地層を形成した。次いで、この下地層の上に、MOCVD法を用いて、n型半導体層8を構成するn型コンタクト層及びn型クラッド層を積層し、さらに、発光層7及びp型半導体層6を積層して半導体層11を形成することにより、半導体積層構造2を作製した。そして、この半導体積層構造2において、p型半導体層6上に反射性p型電極層5を形成し、この反射性p型電極層5の上に、Au−Au接合を用いてSiからなる支持基板24を接合した。その後、エッチング液として塩酸を用いてZnOバッファ層22を除去することで基板21を剥離、除去し、さらに、AlNバッファ層23及び下地層を除去した後、露出したn型半導体層8上に負極9を形成した。また、半導体層11のp型半導体層6側、つまり反射性p型電極5には正極4を接合した。
【0129】
『バッファ層形成工程』
バッファ層形成工程においては、ZnOバッファ層22及びAlNバッファ層23を、2つのチャンバを真空トランスファで接続した構成のスパッタ装置を用いて形成した。
【0130】
まず、表面を鏡面研磨した直径2インチの(0001)c面サファイアからなる基板21を、チャンバ中へ導入した。この際、ターゲットとしては、ZnOからなるものを用いた。
そして、チャンバ内で基板21を500℃まで加熱し、窒素ガスを導入しながらチャンバ内の圧力を1.0Paに保持し、基板21側に高周波バイアスを印加し、窒素プラズマに晒すことによって基板21表面を洗浄した。その後、スパッタ装置のチャンバ内の圧力を6.0×10−6Paまで減圧した。
【0131】
(ZnOバッファ層の形成)
次いで、基板21の温度はそのままに、スパッタ装置内にアルゴン及び窒素ガスを導入した。そして、高周波バイアスをZnOターゲット側に印加し、炉内の圧力を0.5Paに保ち、Arガスに対して25%の酸素を導入した条件下で、サファイアからなる基板21上に、ZnOからなる単結晶のZnOバッファ層22を成膜した。そして、予め測定した成膜速度(0.8nm/s)に従い、規定した時間の処理により、500nmのZnO(ZnOバッファ層22)を成膜後、プラズマ動作を停止し、基板21をトランスファチャンバへ搬出した。
【0132】
(AlNバッファ層の形成)
次に、ZnOバッファ層22が形成された基板21をAlN成膜用のチャンバ内へ導入した。この際、チャンバ内の基板加熱用のヒータを予め500℃に加熱し、温度を安定させるために、そのまま一定時間保持した。
次いで、スパッタ装置内にアルゴン及び窒素ガスを導入した。そして、高周波バイアスをAlNターゲット側に印加し、炉内の圧力を0.5Paに保ち、Arガスと窒素ガスを、ガス全体における窒素の比を75%とした条件で導入しつつ、サファイアからなる基板21上に、AlN単結晶からなるAlOバッファ層23を成膜した。そして、予め測定した成膜速度(0.067nm/s)に従い、規定した時間の処理により、40nmのAlN(AlNバッファ層23)を成膜後、プラズマ動作を停止し、基板21の温度を低下させた。
【0133】
そして、基板21上に形成した、ZnOバッファ層22上のAlNバッファ層23の表面のX線ロッキングカーブ(XRC)を、X線測定装置(スペクトリス社製、型番:X‘pert Pro MRD)を用いて測定した。この測定は、CuKα線X線発生源を光源として用いて行なった。この結果、ZnOバッファ層22上に形成されたAlNバッファ層23のXRC半値幅は0.1°と優れた特性を示しており、ZnOバッファ層22及びAlNバッファ層23が良好に配向していることが確認できた。
【0134】
『n型半導体層の形成』
(下地層の形成)
次いで、ZnOバッファ層22及びAlNバッファ層23が成膜された基板21をスパッタ装置内から取り出してMOCVD装置内に搬送し、AlNバッファ層23上に、以下の手順でGaNからなる下地層を成膜した。
まず、当該基板21を反応炉(MOCVD装置)内に導入した。次いで、反応炉内に窒素ガスを流通させた後、ヒータを作動させて、基板温度を室温から500℃に昇温した。そして、基板の温度を500℃に保ったまま、NHガスおよび窒素ガスを流通させて、気相成長反応炉内の圧力を95kPaとした。続いて、基板温度を1000℃まで昇温させ、基板の表面をサーマルクリーニング(thermal cleaning)した。なお、サーマルクリーニングの終了後も、気相成長反応炉内への窒素ガスの供給を継続させた。
【0135】
その後、アンモニアガスの流通を続けながら、水素雰囲気中で基板の温度を1100℃に昇温させるとともに、反応炉内の圧力を40kPaとした。基板温度が1100℃で安定するのを確認した後、トリメチルガリウム(TMG)及びシラン(SiH)の、気相成長反応炉内への供給を開始し、バッファ層12上に下地層14aを構成するSiをドープした窒化ガリウム系化合物半導体(GaN)を成膜する工程を開始した。このようにしてGaNを成長させた後、TMG及びシランの配管のバルブを切り替え、原料の反応炉への供給を終了してGaNの成長を停止した。
以上の工程により、基板21上に成膜された単結晶ZnOからなるZnOバッファ層22、及び、単結晶AlNからなるAlNバッファ層23の上に、Siドープで8μmの膜厚のGaNからなる下地層を成膜した。
【0136】
(n型コンタクト層の形成)
下地層の形成に引き続き、同じMOCVD装置によってGaNからなるn型コンタクト層を形成した。n型コンタクト層には、下地層と同様にSiをドープした。Siのドーパント濃度を下地層では2.5×1018cm−3、n型コンタクト層では5×1018cm−3とした。また、この際の結晶成長は、Siのドーパント原料のSiHの流量を変えた点を除き、下地層と同じ条件によって行った。
【0137】
そして、上記条件で成膜された下地層及びn型コンタクト層の積層構造について、表面のXRC半値幅を上記同様の方法で測定したところ、(0002)面が70arcsec、(10-10)面が350arcsecであり、結晶性に優れることが認められた。
【0138】
上記工程により、表面に逆スパッタを施したサファイアからなる基板21上に、単結晶ZnOからなるZnOバッファ層22、及び、単結晶AlNからなるAlNバッファ層23を形成し、その上に、2.5×1018cm−3のキャリア濃度を有する8μmのSiドープGaNからなるn型下地層と、5×1018cm−3のキャリア濃度を持つ2μmのSiドープGaNからなるn型コンタクト層を形成した。成膜後に装置内から取り出した基板は無色透明であり、GaN層(ここではn型コンタクト層)の表面は鏡面であった。
【0139】
(n型クラッド層の形成)
上記手順でn型コンタクト層を成長させた基板をMOCVD装置に導入した後、アンモニアを流通させながら、キャリアガスを窒素として、基板温度を760℃へ低下させた。
この際、炉内の温度の変更を待つ間に、SiHの供給量を設定した。流通させるSiHの量については事前に計算を行い、Siドープ層の電子濃度が4×1018cm−3となるように調整した。アンモニアはそのままの流量で炉内へ供給し続けた。
【0140】
次いで、アンモニアをチャンバ内に流通させながら、SiHガスと、バブリングによって発生させたTMI及びTEGの蒸気を炉内へ流通させ、Ga0.99In0.01Nからなる層を1.7nm、GaNからなる層を1.7nmで各々成膜した。このような成膜処理を19サイクル繰り返した後、最後に、Ga0.99In0.01Nからなる層を1.7nmで再度、成長させた。また、この工程処理を行なっている間は、SiHの流通を継続した。これにより、SiドープのGa0.99In0.01NとGaNの超格子構造からなるn型クラッド層を形成した。
【0141】
『発光層の形成』
次いで、上記手順で作製したn型クラッド層上に、MOCVD法により、発光層7を積層した。
発光層7は、GaNからなる障壁層と、Ga0.92In0.08Nからなる井戸層とから構成され、多重量子井戸構造を有する。この発光層7の形成にあたっては、SiドープのGaInNとGaNの超格子構造からなるn型クラッド層上に、まず、障壁層を形成し、この障壁層上に、Ga0.92In0.08Nからなる井戸層を形成した。本例では、このような積層手順を6回繰り返した後、6番目に積層した井戸層上に、7番目の障壁層を形成し、多重量子井戸構造を有する発光層7の両側に障壁層を配した構造とした。
【0142】
まず、基板温度は760℃のままでTEGとSiHの炉内への供給を開始し、所定の時間SiをドープしたGaNからなる初期障壁層を0.8nm形成し、TEGとSiHの供給を停止した。その後、サセプタの温度を920℃に昇温した。そして、TEGとSiHの炉内への供給を再開し、基板温度920℃のままで、さらに、1.7nmの中間障壁層の成長を行った後、TEGとSiHの炉内供給を停止した。続いて、サセプタ温度を760℃に下げ、TEGとSiHの供給を開始し、さらに、3.5nmの最終障壁層の成長を行った後、再びTEGとSiHの供給を停止して、GaN障壁層の成長を終了した。上述のような3段階の成膜処理により、初期障壁層、中間障壁層及び最終障壁層の3層からなり、総膜厚が6nmのSiドープGaNからなる障壁層を形成した。SiHの量は、Si濃度が1×1017cm−3になるように調整した。
【0143】
上記障壁層の成長終了後、TEGとTMIを炉内へ供給して井戸層の成膜処理を行ない、3nmの膜厚を成すGa0.92In0.08N層(井戸層)を形成した。
そして、Ga0.92In0.08Nからなる井戸層の成長終了後、TEGの供給量の設定を変更した。引き続いて、TEGおよびSiH4の供給を再開し、2層目の障壁層の形成を行なった。
上述のような手順を6回繰り返すことにより、6層のSiドープGaNからなる障壁層と、6層のGa0.92In0.08Nからなる井戸層を形成した。
【0144】
そして、6層目のGa0.92In0.08Nからなる井戸層を形成した後、引き続いて7層目の障壁層の形成を行った。7層目の障壁層の形成処理においては、まず、SiHの供給を停止し、アンドープGaNからなる初期障壁層を形成した後、TEGの炉内への供給を続けたままで基板温度を920℃に昇温し、この基板温度920℃にて規定の時間で中間障壁層の成長を行なった後、TEGの炉内への供給を停止した。続いて、基板温度を760℃に下げ、TEGの供給を開始し、最終障壁層の成長を行った後、再びTEGの供給を停止し、障壁層の成長を終了した。これにより、初期障壁層、中間障壁層及び最終障壁層の3層からなり、総膜厚が4nmのアンドープGaNからなる障壁層を形成した。
【0145】
以上の手順にて、厚さが不均一な井戸層と、厚さが均一な井戸層を含んだ多重量子井戸構造の発光層7を形成した。
【0146】
『p型半導体層の形成』
上述の各工程に引き続き、同じMOCVD装置を用いて、4層のノンドープのAl0.06Ga0.94Nと3層のMgをドープしたGaNよりなる超格子構造を持つp型クラッド層を成膜し、更に、その上に膜厚が200nmのMgドープGaNからなるp型コンタクト層を成膜し、p型半導体層6とした。
【0147】
まず、NHガスを供給しながら基板温度を975℃へ昇温した後、この温度でキャリアガスを窒素から水素に切り替えた。続いて、基板温度を1050℃に変更した。そして、炉内へTMGとTMAを供給することにより、ノンドープのAl0.06Ga0.94Nからなる層2.5nmを成膜した。引き続き、インターバルを取らずに、TMAのバルブを閉じてCpMgのバルブを開け、MgをドープしたGaNの層を2.5nm成膜した。
以上のような操作を3回繰り返し、最後にアンドープAl0.06Ga0.94Nの層を形成することにより、超格子構造よりなるp型クラッド層を形成した。
【0148】
その後、CpMgとTMGのみを炉内へ供給して、200nmのp型GaNよりなるp型コンタクト層を形成することにより、p型半導体層6を形成した。
【0149】
上述のようにして作製した発光素子(LED)用のエピタキシャルウェーハは、c面を有するサファイアからなる基板21上に、単結晶ZnOからなるZnOバッファ層22及び単結晶AlNからなるAlNバッファ層23を形成し、その上に、基板21側から順に、8μmのアンドープGaN層(下地層)、5×1018cm−3の電子濃度を持つ2μmのSiドープGaNとからなるn型コンタクト層、4×1018cm−3のSi濃度を有し、20層の1.7nmのGa0.99In0.01Nと19層の1.7nmのGaNからなる超格子構造を有するクラッド層(n型クラッド層)、GaN障壁層に始まってGaN障壁層に終わり、層厚が6nmとされた6層のSiドープのGaNからなる障壁層と、層厚が3nmとされた6層のノンドープのGa0.92In0.08Nからなる井戸層と、ノンドープのGaNからなる最上位障壁層とからなる多重量子井戸構造(発光層7)、膜厚が2.5nmのノンドープAl0.06Ga0.94Nからなる4つの層と、膜厚が2.5nmのMgドープAl0.01Ga0.99Nからなり超格子構造を有する3つの層から構成されるp型クラッド層、及び、膜厚が200nmのMgドープGaNからなるp型コンタクト層から構成されるp型半導体層6を積層した構造を有する。
【0150】
『反射性p型電極層の形成』
次いで、半導体層11のp型半導体層6側に、反射性p型電極層5を形成した。具体的には、まず、酸により洗浄したp側半導体層6の表面に、一般的なフォトリソグラフィの手法により、反射性p型電極層5を形成する領域以外の部分にレジスト膜を形成した。
次に、この基板をスパッタ装置の真空チャンバ内へ導入し、順次、オーミック接触形成のためのPt層、光反射のためのAg合金層、支持基板24の接合のためのAu合金層を形成することにより、反射性p型電極層5を形成した。そして、最後にレジスト膜を除去した。
【0151】
『分離溝の形成』
次いで、半導体層11に、反射性p型電極層5側から基板21にまで達する分離溝12を形成した。具体的には、フォトリソグラフィにより、分離溝を形成する領域のみを露出させた保護膜を形成し、縦横にレーザスクライブを施すことにより、基板21まで達する溝を形成した。この際、レーザスクライブによって発生した「デブリ」と呼ばれる残渣は、燐酸処理によって除去した。そして、保護膜を除去した。
【0152】
『支持基板の接合』
次いで、半導体層11のp型半導体層6側、つまり反射性p型電極層5に、Siからなる支持基板24を、接着によって反射性p型電極層5上に接合した。なお、Siからなる支持基板24には、最表面をAu合金とする接合層を予め形成しておき、活性化接合法によって接合した。なお、本実施例においては、上記構成により、支持基板24が正極として機能する。
【0153】
『ZnOバッファ層及び基板の除去』
次いで、塩酸をエッチング液として用いてZnOバッファ層22を溶解させ、除去するとともに、これに伴い、基板21を半導体層11及びAlNバッファ層23側から剥離させた。この際、ウェーハを塩酸に含浸させる前に、グルービングと呼ぶ手法により、ウェーハの複数の場所に細い径のドリルを用いて基板21まで達する孔を形成し、この孔を通じてエッチング液がZnOバッファ層22まで行き渡るようにした。
【0154】
『光取出面の粗面化』
次いで、光取出面11aのAlNバッファ層23及びn型半導体層8を構成する下地層を除去するとともに、n型半導体層8の光取出面11aを粗面化した。
具体的には、n型半導体層8の光取出面11aを、加熱したKOH溶液に浸漬することにより、AlNバッファ層23及び下地層を除去し、さらに、光取出面11aを粗面化した。
【0155】
『負極(n型電極)の形成』
次いで、以下に説明するような手順により、n型半導体層8側に負極(n型電極)9を形成した。
具体的には、まず、一般的に知られたフォトリソグラフィの手法により、負極9を形成する領域以外の部分にレジストによる保護膜を形成し、レジスト膜の形成されていない領域のn型半導体層8の上に、スパッタ法によって負極9を形成した。
【0156】
『絶縁膜の形成』
次いで、スパッタ法を用いて、SiOからなる絶縁膜10を、各半導体層11の側面11bと、各半導体層11の光取り出し面11aの外周部分を覆うように形成した。
具体的には、半導体層11の全体に絶縁膜10を形成した後、光取出面11aの中央部以外の部分にレジストを形成し、ドライエッチングすることにより、上記形状の絶縁膜10とした。
【0157】
『素子単位への分割』
次いで、基体である支持基板24を、複数に分割された半導体層11に沿って切断し、半導体層11が積層されたウェーハを素子単位に分割した。
具体的には、正極4上に形成された複数の半導体層11の各々の間の分断溝12に沿って、レーザスクライブ法によって支持基板24にレーザを照射し、切断した。
これにより、図11(図1も参照)に示すような、複数の発光素子1を作製した。
【0158】
『LED(ランプ)の作成』
次いで、上記各実施例の方法で得られた発光素子1を用いてLED(ランプ)を作製した。
具体的には、図15に示すように、上述の手順で正極4及び負極9の各電極が形成された発光素子1を用い、2本のフレームの内の一方(図15ではフレーム81)に発光素子1を銀ペーストなどの導電性接着材で接着して発光素子1の正極4(図1に示す符号4参照)をフレーム81に接合し、負極9(図1に示す符号9参照)をワイヤー83でフレーム82に接合した。そして、透明な樹脂からなるモールド84で発光素子1の周辺を封止することにより、砲弾型のランプ80を作製した。
【0159】
上述のようにして作製したランプ80のp側(正極4)およびn側(負極9)の電極間に順方向電流を流したところ、電流20mAにおける順方向電圧は3.1Vであった。また、n型半導体層8の光取出面11aを通して発光状態を観察したところ、発光波長は450nmであり、発光出力は35mWを示した。このようなランプ(発光素子)の特性は、作製したウェーハのほぼ全面から作製された発光素子について、ばらつきなく得られた。
【0160】
[実施例2]
本比較例においては、上記実施例1と同じLED積層構造を有する半導体基板(図2(a)等を参照)を用いて、図14に例示するようなフリップチップ型の発光素子50を作製した。具体的には、上記実施例1における『p型半導体層の形成』迄においては、下地層をアンドープとした点を除き、同様の手順によって半導体ウェーハを作製し、その後、以下に説明する手順によって発光素子並びにランプを作製した。
【0161】
『正極(p型電極)の形成』
上記実施例1の『p型半導体層の形成』迄と同様の工程により、図示略の基板上に各層が形成されたウェーハを用い、実施例1と同様に、半導体層のp型半導体層56側に、反射性p型電極層55を形成し、引き続き、その上に正極(p型電極)54を形成した。
具体的には、まず、酸によって洗浄したp側半導体層56の表面に、一般的なフォトリソグラフィ手法により、正極54を形成する領域以外の部分にレジスト膜を形成した。
次いで、この基板をスパッタ装置の真空チャンバ内に導入し、順次、オーミック接触形成のためのPt層、光反射のためのAg合金層、支持基板接合のためのAu合金層を形成することにより、反射性p型電極層55を形成し、引き続き、反射性p型電極層55上に正極54を形成した。
【0162】
『負極(n型電極)の形成』
次いで、以下に説明するような手順により、n型半導体層58に負極59を形成した。
具体的には、まず、一般的に知られたフォトリソグラフィの手法により、負極59を形成する領域以外の部分にレジストによる保護膜を形成し、SiClのみからなるガスを用い、ドライエッチング法により、レジスト膜の形成されていない領域のp型半導体層56及び発光層57に加え、n型半導体層58の一部を除去してn型半導体層58を露出させた。次いで、湿式処理によって露出したn型半導体層58の表面の汚れを除去した後、n型半導体層58上に、スパッタ法によって負極59を形成した。負極59の最表面には、正極54と同様、支持基板との接合のためのAu接合層を形成し、高さが、最終的に正極54の最表面の高さと略一致するように、各電極の厚さを設計、調整した。そして、最後にレジスト膜を除去した。
【0163】
『分離溝の形成』
次いで、半導体層に、正極54側から基板まで達する分離溝を形成した。具体的には、フォトリソグラフィにより、分離溝を形成する領域のみを露出させた保護膜を形成し、縦横にレーザスクライブを施すことにより、基板にまで達する分離溝を形成した。この際、レーザスクライブによって発生した「デブリ」と呼ばれる残渣は、燐酸処理によって除去した。そして、保護膜を除去した。
【0164】
『素子単位への分割』
次いで、基板を、複数に分割された半導体層に沿って切断し、半導体層が積層されたウェーハを素子単位に分割した。
具体的には、半導体層に形成されたチップパターンの各々の間の分断溝に沿って、レーザスクライブ法によって基板側からレーザを照射し、切断した。
【0165】
『支持基板の接合』
次いで、分割されたチップを、サファイア面を上にして、Geからなる支持基板51上に載置し、共晶接合によって接合した。具体的には、絶縁性のGeからなる基板の表面上に、Au合金によって図示略の配線パターンが形成されたものを支持基板51として用い、半導体層のp型半導体層56側の正極54と、負極59の最表層に形成された接合層と、支持基板51上の配線のパターンとを一致させて載せ、パルスヒーティング法と呼ばれる方法によって接合した。
【0166】
『ZnOバッファ層及び基板の除去』
次いで、塩酸をエッチング液として用いて図示略のZnOバッファ層を溶解させ、除去するとともに、これに伴い、基板を半導体層及びAlNバッファ層53側から剥離させた。
【0167】
『光取出面の粗面化』
次いで、光取出面のAlNバッファ層53及び図示略の下地層を除去するとともに、n型半導体層58の光取出面を粗面化した。
具体的には、n型半導体層58の光取出面を、加熱したKOH溶液に浸漬することにより、AlNバッファ層53及び下地層を除去し、さらに、光取出面を粗面化した。
【0168】
『絶縁膜の形成』
次いで、スパッタ法を用いて、SiOからなる絶縁膜を、各半導体層の側面と、各半導体層の光取り出し面の外周部分を覆うように形成した。
具体的には、半導体層の全体に絶縁膜を形成した後、光取出面の中央部以外の部分にレジストを形成し、ドライエッチングすることにより、上記形状の絶縁膜とした。
これにより、図示略のフリップチップ型とされた複数の発光素子を作製した。
【0169】
『LED(ランプ)の作成』
次いで、上記各実施例の方法で得られた発光素子を用いてLED(ランプ)を作製した(図15も参照)。
具体的には、支持基板に描かれた配線パターンのワイヤボンディング領域にワイヤボンドすることにより、通常の2ワイヤチップと同様にしてリードフレームに配線した。そして、透明な樹脂からなるモールドで発光素子の周辺を封止することにより、SMD型のパッケージを作製した。
【0170】
上述のようにして作製したパッケージのp側(正極)およびn側(負極)の電極間に順方向電流を流したところ、電流20mAにおける順方向電圧は3.1Vであった。また、n型半導体層8の光取出面11aを通して発光状態を観察したところ、発光波長は447nmであり、発光出力は30mWを示した。このようなランプ(発光素子)の特性は、作製したウェーハのほぼ全面から作製された発光素子について、ばらつきなく得られた。
【0171】
[比較例]
本比較例においては、サファイアからなる基板のc面上にZnOバッファ層を形成した後、AlNバッファ層を形成せずに半導体層を形成した点を除き、上記実施例1と同様手順を用いて発光素子を作製する各工程を実施した。
【0172】
しかしながら、本比較例では、MOCVD法を用いて半導体層を構成する下地層(n型半導体層)を形成した後に、この積層構造を確認したところ、基板上にZnOバッファ層が残っておらず、基板上において、GaNが形成されていることが認められた。しかしながら、このGaNは、ウェーハに対して若干の刺激を与えるだけで基板から剥離してしまうことが明らかとなった。これは、ZnOバッファ層上に、MOCVD法によって半導体層を成長させる際、ZnOバッファ層が昇華してしまったため、GaNが安定した状態で成膜されなかったものと考えられる。このため、本比較例においては、その後のXRC半値幅等の測定が不可能となった。
【0173】
[実験例]
本実験例においては、まず、上記実験例1と同様の条件で、サファイアからなる基板上にZnOバッファ層を形成したサンプル基板と、さらにその上にAlNバッファ層を形成したサンプル基板を作製した。そして、これらのサンプル基板を、プラズマ発生機構を持つ真空チャンバに収容し、温度を変えて窒素プラズマに曝し、チャンバ内において各々処理されたサンプル基板のX線ピーク値を測定し、この結果を図16のグラフに示した。
【0174】
図16のグラフに示すように、ZnOバッファ層のみを成膜したサンプル基板(□印)では、処理温度が500℃程度でZnOのX線ピーク強度の低下が生じ、700℃以上の処理温度ではZnOの膜厚が減少することが認められた。また、この際、例えダメージが抑制された場合であっても、ZnOバッファ層表面に反応層が生じることが明らかとなった。
これに対し、ZnOバッファ層上にAlNバッファ層を形成させたサンプル基板(◇印)においては、処理温度が1000℃近い温度であっても、ZnOのX線ピーク強度に大きな変化は見られなかった。
本実験例より、ZnOは、プラズマ状態やアンモニア等の活性化された窒素原子種に高温で接触することにより、分解を生じるということが言える。さらに、ZnOバッファ層上をAlNバッファ層で覆うことにより、この分解反応を抑制することが可能であることが明らかとなった。
【0175】
以上の結果により、本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法が、化合物半導体層の形成工程においてバッファ層が消失すること無く、且つ、簡便な方法で基板を化合物半導体層から剥離させることができ、歩留まり良く高効率で発光素子を製造できることが明らかである。また、本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子が、発光特性に優れることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体の積層構造の一例を示す断面模式図である。
【図3】本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法の一例を説明する工程図である。
【図4】本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法の一例を説明する工程図である。
【図5】本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法の一例を説明する工程図である。
【図6】本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法の一例を説明する工程図である。
【図7】本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法の一例を説明する工程図である。
【図8】本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法の一例を説明する工程図である。
【図9】本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法の一例を説明する工程図である。
【図10】本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法の一例を説明する工程図である。
【図11】本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法の他の例を説明する工程図である。
【図12】本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法の他の例を説明する工程図である。
【図13】本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の他の例を示す断面模式図である。
【図14】本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の他の例を示す断面模式図である。
【図15】本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体発光素子を用いて構成したランプの一例を示す断面模式図である。
【図16】本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体の積層構造の実施例を説明する図であり、積層構造のX線測定のピーク値を示すグラフである。
【符号の説明】
【0177】
1、3、50…窒化ガリウム系化合物半導体発光素子、2、2A…窒化ガリウム系化合物半導体の積層構造(半導体積層構造)、4、40、54…正極、5、55…反射性p型電極層、6、56…p型半導体層、7、57…発光層、8、58…n型半導体層、9、59…負極、11…半導体層、11a…光取出面、21…基板、22…ZnOバッファ層、22a…表面(ZnOバッファ層)、22b…側面(ZnOバッファ層)、23、53…AlNバッファ層、27…下地層、41…金属メッキ層(正極)、42…シード層(正極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、ZnOバッファ層及びAlNバッファ層をこの順で積層するバッファ層形成工程と、
前記AlNバッファ層上に、窒化ガリウム系化合物からなる半導体層を形成する半導体層形成工程と、
前記ZnOバッファ層を除去することにより、前記基板を剥離する除去工程と、を備えることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記バッファ層形成工程は、前記ZnOバッファ層を、分子線エピタキシー(MBE)法、パルスレーザデポジション(PLD)法、スパッタ法の内の何れかの方法を用いて形成することを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記バッファ層形成工程は、前記ZnOバッファ層を、スパッタ法を用いて形成することを特徴とする請求項2に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記バッファ層形成工程は、前記AlNバッファ層を、分子線エピタキシー(MBE)法、パルスレーザデポジション(PLD)法、スパッタ法の内の何れかの方法を用いて形成することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記バッファ層形成工程は、前記AlNバッファ層を、スパッタ法を用いて形成することを特徴とする請求項4に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記バッファ層形成工程は、前記AlNバッファ層を、窒素源として窒素(N)ガスを用い、600℃以下の温度で成膜することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記バッファ層形成工程は、前記基板上において、前記AlNバッファ層を前記ZnOバッファ層よりも平面視で大きく成膜することにより、前記AlNバッファ層が前記ZnOバッファ層の表面及び側面を覆うように形成することを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記除去工程は、エッチング法を用いて前記ZnOバッファ層を溶解除去することを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記除去工程は、HCl又はシュウ酸を用いたエッチング法によって前記ZnOバッファ層を溶解除去することを特徴とする請求項8に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記半導体層形成工程は、前記AlNバッファ層の上に、n型半導体層、発光層及びp型半導体層を順次積層することによって半導体層を形成することを特徴とする請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記半導体層形成工程は、さらに、前記AlNバッファ層と前記n型半導体層との間に下地層を形成することを特徴とする請求項10に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記下地層及び/又は前記n型半導体層を、有機金属化学気相蒸着(MOCVD)法を用いて形成することを特徴とする請求項11に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記n型半導体層と前記下地層との合計膜厚を、15μm以下として形成することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記n型半導体層と前記下地層との合計膜厚を、10μm以下として形成することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記n型半導体層と前記下地層との合計膜厚を、4μm以下として形成することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項16】
前記半導体層形成工程と前記除去工程との間において、前記半導体層の前記p型半導体層側に、Siの酸化物又は窒化物からなる支持基板を接合する支持基板接合工程が備えられていることを特徴とする請求項10〜請求項15の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項17】
前記除去工程の後に、前記半導体層の前記n型半導体層側に負極を形成し、次いで、前記負極に仮貼付基板を貼着した後、前記支持基板を剥離することによって前記半導体層のp型半導体層側を露出させ、次いで、露出したp型半導体層上に正極を形成した後、前記仮貼付基板を前記負極から剥離する電極形成工程が備えられていることを特徴とする請求項16に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項18】
前記半導体層形成工程と前記除去工程との間において、前記半導体層の前記p型半導体層側に、Siからなる支持基板を接合する支持基板接合工程が備えられていることを特徴とする請求項10〜請求項15の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項19】
前記半導体層形成工程と前記除去工程との間において、前記半導体層の前記p型半導体層側に、金属メッキからなる正極を形成するメッキ工程が備えられていることを特徴とする請求項10〜請求項15の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項20】
前記除去工程の後に、前記半導体層の前記n型半導体層側に負極を形成する負極形成工程が備えられていることを特徴とする請求項18又は請求項19に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項21】
基板と、
前記基板上に順次積層されて設けられるZnOバッファ層及びAlNバッファ層と、
前記AlNバッファ層上に形成され、窒化ガリウム系化合物からなる半導体層とが備えられることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
【請求項22】
前記基板が、サファイア、シリコン、SiC、スピネルの内の何れかからなることを特徴とする請求項21に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
【請求項23】
前記ZnOバッファ層が単結晶のZnOからなることを特徴とする請求項21又は請求項22に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
【請求項24】
前記ZnOバッファ層の表面がZn極性であることを特徴とする請求項21〜請求項23の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
【請求項25】
前記ZnOバッファ層の膜厚が10〜1000nmの範囲であることを特徴とする請求項21〜請求項24の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
【請求項26】
前記AlNバッファ層が単結晶のAlNからなることを特徴とする請求項21〜請求項25の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
【請求項27】
前記AlNバッファ層が柱状結晶を有する多結晶のAlNからなることを特徴とする請求項21〜請求項26の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
【請求項28】
前記AlNバッファ層の膜厚が10〜100nmの範囲であることを特徴とする請求項21〜請求項27の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
【請求項29】
前記基板上において、前記AlNバッファ層が前記ZnOバッファ層よりも平面視で大きく形成されており、前記AlNバッファ層が前記ZnOバッファ層の表面及び側面を覆うように形成されていることを特徴とする請求項21〜請求項28の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
【請求項30】
前記半導体層が、前記AlNバッファ層の上に、n型半導体層、発光層及びp型半導体層が順次積層されてなることを特徴とする請求項21〜請求項29に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
【請求項31】
前記半導体層が、さらに、前記AlNバッファ層と前記n型半導体層との間に設けられる下地層を備えていることを特徴とする請求項30に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
【請求項32】
前記下地層と前記n型半導体層との合計膜厚が15μm以下であることを特徴とする請求項31に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
【請求項33】
前記下地層と前記n型半導体層との合計膜厚が10μm以下であることを特徴とする請求項31に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
【請求項34】
前記下地層と前記n型半導体層との合計膜厚が4μm以下であることを特徴とする請求項31に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造。
【請求項35】
請求項30〜請求項34の何れか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体素子の積層構造に備えられる前記ZnOバッファ層及び前記基板が除去されることにより、前記AlNバッファ層が露出した構成の積層構造が用いられてなり、
さらに、前記AlNバッファ層の少なくとも一部が除去されて露出した前記n型半導体層上に負極が設けられるとともに、前記p型半導体層上に正極が設けられてなることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
【請求項36】
請求項1〜請求項20の何れか1項に記載の製造方法によって得られる窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
【請求項37】
請求項35又は請求項36に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子が用いられてなることを特徴とするランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−93186(P2010−93186A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263987(P2008−263987)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】