説明

端末装置及び緊急通知システム

【課題】 携帯端末所有者が危険に遭遇した場合、危険に遭遇していることを知らせて周囲の人に救助を求めることができ、周囲の端末に緊急情報を残し、万が一救助が行えなかった場合に情報を残すこと。
【解決手段】 携帯端末100,120は、緊急時に緊急モードを起動するための緊急ボタン/表示部109、携帯電話通信部103とは独立して通信を行う緊急送信部110及び緊急受信部111を備える。緊急ボタン/表示部109が操作されると、制御部101が所有者の個人情報を含む緊急情報を緊急送信部110により送信し、周囲の端末の緊急受信部111が、この緊急情報を表示装置106に表示し、また記憶部102に記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急事態が発生した時に通知を行う端末装置及び緊急通知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
火災、水害、交通事故、その他の緊急事態が発生したとき、これらを素早く正確に所轄の官庁に連絡したり、周りの人に知らせたりする緊急連絡システムがある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されている緊急連絡システムがある。
【0004】
図12は、特許文献1に記載された緊急連絡システムの概略構成を示す図、図13は、そのシーケンスの概略を示す図である。
【0005】
図12において、緊急連絡システム10は、救助を求める人が携帯する携帯電話端末11、基地局12、公衆網13、救助施設14、自宅15及び警察署16から構成される。
【0006】
携帯電話端末11が発信を行うと、基地局12及び公衆網13を通して救助施設(緊急連絡センタ)14、警察署16、又は自宅15に通知され、それらから救助する人間が出動することになる。図13に示すように、救助を求める人が携帯する携帯電話端末11から基地局12を経由して救助施設14に救助の要請が通知され、救助施設14で救助の認識(ステップS1)を行ってから救助に移動する。
【0007】
また、別の緊急連絡システムとしては、特許文献2に記載された携帯用防犯装置がある。
【0008】
図14は、特許文献2に記載された緊急警報付携帯電話端末の概略構成を示す図である。
【0009】
図14において、携帯電話端末20は、送受信部21、電源22、スイッチ23、及び警報発音部24を備える。危険に遭遇した場合、携帯電話端末20のスイッチ23をONにし、これにより警報発音部24が警報を発し、周囲の人に救助を求めることができる。
【特許文献1】特開2003−346258号公報
【特許文献2】特開2001−109976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1記載の緊急連絡システムでは、火災や水害などの災害の場合には有効に機能するものの、傷害事件や誘拐事件などの場合、携帯電話端末11を所有する人と救助施設(緊急連絡センタ)14又は警察署16、若しくは自宅15が遠い場合、救助する人間が到着した時点では、携帯端末11の所有者はすでに被害を受けている、あるいは誘拐されている可能性がある。
【0011】
また、特許文献2記載の防犯装置では、スイッチ23が入ると警報発音部24が鳴るので、周辺に人がいれば携帯電話端末20の所有者の危険を知らせることができるが、携帯電話端末20の周辺に人がいない場合や人が家にいて警報が聞こえない場合には、端末所有者が危険に遭遇したこと自体が誰にも分からないという課題がある。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、携帯端末所有者が危険に遭遇した場合、危険に遭遇していることを知らせて周囲の人に救助を求めることができ、周囲の端末に緊急情報を残し、万が一救助が行えなかった場合に情報を残すことができる端末装置及び緊急通知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の端末装置は、緊急時に送信する緊急情報を記憶する記憶手段と、緊急モードを起動する起動手段と、前記緊急モードの起動により基地局を経由しないで他の端末装置に前記緊急情報を送信する送信手段とを備える構成を採る。
【0014】
本発明の端末装置は、緊急時に送信される緊急情報を受信する受信手段と、前記緊急情報を受信したことを報知する報知手段と、受信した前記緊急情報を表示する表示手段と、受信した前記緊急情報を記憶する記憶手段とを備える構成を採る。
【0015】
本発明の緊急通知システムは、互いに通信可能な第1端末装置と第2端末装置とを備え、前記第1端末装置は、緊急時に送信する緊急情報を記憶する記憶手段と、緊急モードを起動する起動手段と、前記緊急モードの起動により基地局を経由しないで前記第2端末装置に前記緊急情報を送信する送信手段とを備え、前記第2端末装置は、前記緊急情報を受信する受信手段と、前記緊急情報を受信したことを報知する報知手段と、受信した前記緊急情報を表示する表示手段と、受信した前記緊急情報を記憶する記憶手段とを備える構成を採る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、緊急事態が発生し連絡した場合に、救助の到着の遅れを防止することができ、万が一救助できなかった場合でも周辺の端末装置に通知され、記憶された緊急情報を元に事件の解決を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る緊急通知システムの端末装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態は緊急通知システムを構成する端末装置に携帯電話機を適用した例である。
【0019】
図1において、100は救助を求める人が携帯する携帯端末、120は携帯端末100からの緊急通知を受ける周辺の携帯端末である。携帯端末100と携帯端末120は、同一構成をとるため対応する構成要素には同一番号を付している。
【0020】
携帯端末100,120は、FWA(Fixed Wireless Access)端末のような、使用場所を移動することが可能な無線通信機器であり、例えば、携帯電話機/PHS(Personal Handy-Phone System)や携帯情報端末(以下、PDA(Personal Digital Assistants)という)などの携帯端末、無線LAN機能を持つ携帯ノート型パソコン、無線LAN機能を持つ接続端末も含まれる。
【0021】
携帯端末100,120は、制御部101、記憶部102、アンテナ103aを有する携帯電話通信部103、受信情報記憶部104、キー入力部105、表示装置106、スピーカ107、バイブレータ108、緊急ボタン/表示部109、アンテナ110aを有する緊急送信部110及び緊急受信部111を備えて構成される。
【0022】
制御部101は、CPU等からなり装置全体の制御を行うとともに、緊急ボタン/表示部109から通知を受けて緊急モードを起動する。記憶部102は、緊急モード時に他の携帯端末に知らせる情報を記憶する。記憶部102に記憶される情報としては、携帯番号、名前、年齢、特徴、顔写真などがある。キー入力部105は、データ入力や各種機能の指示を行うためのキーボード、専用のキーボタンである。また、GUI(Graphical User Interface)ボタン及びタッチパネル等を備えることも可能である。表示装置106は、LCDディスプレイ及び各ドライバ等で構成され、受信した情報の内容等を表示する。
【0023】
緊急ボタン/表示部109は、緊急時に緊急モードを起動するための緊急ボタンとその表示部である。この表示部は、例えばLEDを用いた緊急メッセージを表示する。なお、緊急ボタン/表示部109は、誤って押すことがないように、ボタンにカバーをつけることも可能である。
【0024】
緊急送信部110及び緊急受信部111は、緊急モード時に携帯電話通信部103とは独立して通信を行うもので、具体的には、キャリア以外のローカルネットワークにアクセスできる無線LANやBluetooth(登録商標)、UWB(Ultra Wideband)等の無線制御部である。無線LANは、無線LAN機能を持つ携帯ノート型パソコン、PDAなどの携帯情報端末に幅広く用いられている。より低消費電力が要求される携帯電話機では、Bluetooth,UWBなどの小電力近距離双方向無線通信方式が好ましい。また、無線LANやUWBほどの帯域は必要ではない。緊急送信部110は、制御部101からの送信指示を受けて緊急送信を行う。緊急受信部111は、他の携帯端末の緊急モード送信を受信する。緊急受信部111が、受信する場合、通常のキャリア通信時の受信のように基地局を介在せずに、端末同士でローカルに通信を行う。
【0025】
以下、上述のように構成された緊急通知システムの携帯端末の動作について説明する。
【0026】
まず、緊急事態に陥った携帯端末100の所有者が緊急ボタン/表示部109を押し下げると、制御部101は携帯端末100を緊急モードにする。携帯端末100が、緊急モードになると、制御部101は記憶部102から携帯番号、名前、年齢、特徴、顔写真等の情報を取り出し、緊急情報として、緊急送信部110を通して他の携帯電話に送信する。ここでは、携帯端末120が、携帯端末100からの緊急通知を受ける携帯端末であるとする。
【0027】
緊急情報を受信した携帯端末120は、緊急受信部111を通して、制御部101に取り込む。緊急情報を受信した制御部101は、緊急ボタン/表示部109に表示を行うとともに、スピーカ107を鳴らし、バイブレータ108を動かす。さらに、制御部101は、携帯番号、名前、年齢、特徴、顔写真等の情報を表示装置106に出力すると共に受信情報記憶部104に出力する。また、制御部101は、内蔵した時計から緊急情報を受信した時間を取得し、表示装置106及び受信情報記憶部104に出力する。表示装置106は、上記緊急情報を受信した時間を表示する。キー入力部105を使うことにより、表示装置106に表示される表示は、切替えやスクロールなどが可能である。受信情報記憶部104は、制御部101から入力した情報を受信した時間と共に記憶する。
【0028】
上記救助シーケンスを図2を用いて説明する。図2は、携帯端末100と携帯端末120の制御シーケンスを示す図である。
【0029】
図2において、救助を求める携帯端末100が周辺の携帯端末120に救助を要請する。周辺の携帯端末120は、救助の認識(ステップS1)を行い、救助に駆けつける。また、この救助の流れを図3を用いて説明する。
【0030】
図3は、携帯端末100及び携帯端末120の救助の流れを示すフローチャートである。
【0031】
図3において、緊急状態に陥った携帯端末100が緊急モードを起動する(ステップS11)。すると、携帯端末100の制御部101が、緊急通知及び緊急情報を緊急送信部110から送信する(ステップS12)。すると、周囲の携帯端末120は、通常状態(ステップS13)から、携帯端末120の緊急受信部111が緊急通知及び緊急情報を受信する(ステップS14)。これを受けて、携帯端末120の制御部101が緊急通知及び緊急情報を認識し、緊急ボタン/表示部109の緊急表示、バイブレータ108の起動、スピーカ107の鳴動、緊急情報の表示、及び緊急情報の記憶を行う(ステップS15)。
【0032】
以上のように、実施の形態1によれば、緊急ボタン/表示部109が操作されると、制御部101が所有者の個人情報を含む緊急情報を緊急送信部110により送信し、周囲の端末の緊急受信部111が、この緊急情報を表示装置106に表示し、また記憶部102に記憶するので、周囲の人が家屋内にいる場合であっても救助を求めることができ、救助ができなかった場合にどういう緊急状態が生じていたかを後で確認することができる。
【0033】
図1では、2つの携帯端末を図示しているが、任意の数の携帯端末で構成されることはいうまでもない。携帯端末100,120は、キャリア以外のネットワークに接続可能な端末装置であればよく、上記携帯電話機に限らず、PHSやPDAなどの携帯情報端末でもよい。また、PCMCIAカード,CFカード形状のBluetooth接続装置など、形態は限定されない。さらに、キャリア以外のローカルネットワークにアクセスできるシステムとしてBluetooth(登録商標)には限定されず、UWBや無線LANでもよい。また、FWA(Fixed Wireless Access)端末のような、使用場所を移動することが可能な無線通信端末も含まれる。
【0034】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る携帯端末の距離と移動速度を説明する図である。
【0035】
図4において、実施の形態2の携帯端末200,220は、図1の携帯端末100,120の制御部101が、緊急状態に陥った端末までの距離と速度を計算する点が異なる。携帯端末200,220の制御部101は、緊急モードの通知を受けた時、緊急モードにある端末に送信し、応答を受信した時の通信遅延により、緊急モードにある端末の距離を計算し、緊急モードにある端末までの距離と移動速度を緊急情報として表示を指示する。
【0036】
以下、上述のように構成された緊急通知システムの携帯端末の動作について説明する。
【0037】
X地点231において、緊急モードを起動した携帯端末200は付近にいる携帯端末220に緊急モードを通知する。携帯端末220は携帯端末200に問合せを行い、その応答の伝播遅延xから携帯端末200までの距離を計算し計算結果を表示する。次に、携帯端末220が携帯端末200に問合せを行い、携帯端末200から応答が帰ってきたのがt1時間後とする。この時の伝播遅延yから携帯端末200がいるY地点232までの距離を計算して表示するとともに、x、y、t1を使って移動速度を計算して表示する。同様に、次に携帯端末220が携帯端末200に問合せを行い、応答が帰ってきたのがt2時間後とする。この時の伝播遅延zから携帯端末200がいるZ地点233までの距離を計算して表示するとともに、y、z、t2を使って移動速度を計算して表示する。これにより、携帯端末220の表示装置106には、「緊急端末まで約○○mです。緊急端末が時速**で近づいています。」が表示される。
【0038】
実施の形態2の制御シーケンスを図5を用いて説明する。
【0039】
図5は、携帯端末200と携帯端末220の動作を示すフローチャートである。
【0040】
図5において、緊急状態に陥った携帯端末が緊急モードを起動する(ステップS21)。すると、制御部101が緊急通知及び緊急情報を緊急送信部110から送信(ステップS22)し、問合せ受信待ち(ステップS23)になる。そこで、周囲の端末は通常状態(ステップS26)から緊急受信部111で緊急通知及び緊急情報を受信(ステップS27)に移行し、その後、制御部101が緊急通知及び緊急情報を認識し、問合せを緊急送信部110から送信(ステップS28)した後、制御部101が緊急通知及び緊急情報を認識し緊急表示の表示、バイブレータ108の起動、スピーカ107の鳴動、緊急情報の表示、緊急情報の記憶を行い(ステップS29)、応答受信待ち(ステップS30)になる。すると、緊急状態の端末は緊急受信部111で問合せを受信(ステップS24)し、制御部101が問合せを認識し、応答を緊急送信部110から送信(ステップS25)する。すると、問合せを行った周囲の端末は緊急受信部111で応答を受信し(ステップS31)、制御部101で緊急情報を認識し、問合せ送信から応答受信までの時間から緊急モードの端末までの距離を計算する(ステップS32)。さらに、緊急モードの端末までの距離を緊急情報として表示して(ステップS33)、問合せを緊急送信部110から送信し(ステップS34)、応答の受信を待つ(ステップS35)。そこで、緊急状態の端末は緊急受信部111で問合せを受信し(ステップS24)、制御部101が問合せを認識し、応答を緊急送信部110から送信する(ステップS25)。すると、周囲の端末は緊急受信部111で応答を受信し(ステップS36)、制御部101で緊急情報を認識し、問合せ送信から応答受信までの時間から緊急モードの端末までの距離を計算し(ステップS37)、緊急モードの端末までの距離を緊急情報として表示する(ステップS38)。さらに、緊急モード端末までの距離の変化分と応答の時間差から速度を計算し(ステップS39)、緊急モードの端末の速度を緊急情報として表示する(ステップS40)。
【0041】
以上のように、実施の形態2によれば、緊急通知を受けた携帯端末220の制御部101が問合せを緊急モードの携帯端末200に送信し、緊急モードの携帯端末200がこれに対して固定遅延で応答を送信することを繰り返すことにより、緊急通知を受けた携帯端末220は無線遅延と時間から緊急モードの携帯端末200の距離と移動速度を計算し表示することで、救助者は救助すべき対象の携帯端末200までの距離と移動速度を認識することができる。これにより、緊急事態に陥った携帯端末の所有者から緊急通知を受けた場合、その携帯端末までの距離と移動速度の表示を行うことで迅速かつ有効な救助が可能になる。
【0042】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3に係る携帯端末の緊急状態の優先表示を説明する図である。
【0043】
図6において、実施の形態3の携帯端末300,320,330は、図1の携帯端末100,120の制御部101が、複数の端末から緊急通知を受けた場合、各端末に問合せを行い、戻ってきた応答時間と受信電力から、救助する端末を決め、その端末から送信された緊急情報を表示する制御を行う点が異なる。
【0044】
以下、上述のように構成された緊急通知システムの携帯端末の動作について説明する。
【0045】
緊急状態に陥った携帯端末が携帯端末300と携帯端末330の2台あり、これらの緊急通知及び緊急情報を携帯端末320が受信した場合を想定する。携帯端末320は、問合せに対する携帯端末300と携帯端末330の応答の伝播遅延時間と受信電力から、表示する緊急情報を優先判断する。この制御シーケンスを図7を用いて説明する。
【0046】
図7は、携帯端末320と携帯端末300,330の制御シーケンスを示す図である。
【0047】
まず、携帯端末330(端末Y)が緊急通知Yを行う。すると、周辺の携帯端末320は緊急通知Yを受信し、問合せYを送信する(ステップS41)。次に、携帯端末300が緊急通知Xを行う。すると、周辺の携帯端末320は緊急通知Xを受信し、問合せXを送信する(ステップS42)。一方、問合せYを受信した携帯端末330(端末Y)は、応答と緊急情報を送信する(ステップS43)。また、問合せXを受信した携帯端末300(端末X)は、応答と緊急情報を送信する(ステップS44)。携帯端末320は、携帯端末300(端末X)と携帯端末330(端末Y)からの応答と緊急情報を受信する。そして、それぞれの応答時間から、携帯端末300(端末X)までの距離と携帯端末330(端末Y)までの距離を計算し比較する(ステップS45)。また、それぞれの応答の受信電力を比較する(ステップS46)。これらの比較結果により、携帯端末300(端末X)が近いと判断し、携帯端末300(端末X)の緊急情報を表示する(ステップS47)。
【0048】
以上のように、実施の形態3によれば、複数の緊急端末300,330から緊急通知を受けた場合、各携帯端末300,330までの無線遅延を調べ、一番近い緊急端末の緊急情報を優先して表示することで、適切な救助の優先順位を決定することができ、救助の実効を図ることができる。
【0049】
(実施の形態4)
図8は、本発明の実施の形態4に係る携帯端末の送信電力制御を説明する図である。
【0050】
図8において、実施の形態4の携帯端末400,420は、図1の携帯端末100,120の制御部101が、送信電力情報を含む緊急通知を行い、一定時間以内に他の端末からの問合せがないと送信電力を大きくして緊急通知を再送する制御と、緊急通知に含まれた送信電力情報の電力で問合せ送信を行う制御とを行う点が異なる。
【0051】
以下、上述のように構成された緊急通知システムの携帯端末の動作について説明する。
【0052】
図8(a)に示すように、携帯端末400が緊急状態に陥り、送信電力P1で緊急通知を送信した場合を想定する。一番近い周辺の携帯端末420に電波が届かなかったため、一定時間Tを過ぎても携帯端末400は応答を得られない。そこで、図8(b)に示すように、携帯端末400は、送信電力P1よりも送信電力が大きい送信電力P2で緊急通知を送信する。送信電力P2は送信電力P1よりも送信電力が大きいので、携帯端末420は緊急通知を受信することができる。緊急通知を受信した携帯端末420は、緊急通知に含まれる送信電力P2で携帯端末400に対する問合せを送信する。これらの制御シーケンスを図9を用いて説明する。
【0053】
図9は、携帯端末400と携帯端末420の制御シーケンスを示す図である。
【0054】
図9において、緊急状態に陥った携帯端末400は、送信電力P1で緊急通知を送信する。緊急通知の中には送信電力P1の情報を含む(ステップS51)。しかし、送信電力が弱いため、周辺の端末に緊急通知が届かない(ステップS52)。携帯端末400は、一定時間Tの間は周辺の端末からの問合せを待つ(ステップS53)。その後、携帯端末400は、送信電力P2で緊急通知を送信する。緊急通知の中には送信電力P2の情報を含む(ステップS54)。すると、周辺にいた携帯端末420は緊急通知を受信し(ステップS55)、問合せを送信電力P2で送信する(ステップS56)。そこで、携帯端末400は、問合せを受信し(ステップS57)、送信電力をP2に固定して応答として緊急情報を送信する(ステップS58)。周辺の携帯端末420は、緊急情報を受信し、制御部101が緊急情報を認識し、緊急表示の表示、バイブレータ108の起動、スピーカ107の鳴動、緊急情報の表示、緊急情報の記憶の各制御を行う(ステップS59)。
【0055】
図10は、携帯端末400と携帯端末420の動作を示すフローチャートである。
【0056】
緊急状態に陥った携帯端末400は、救助を求める人により緊急ボタン/表示部109が操作されて緊急モードが起動される(ステップS61)。すると、制御部101が送信電力情報を含む緊急通知を緊急送信部110から送信電力P1で送信し(ステップS62)、問合せ受信待ちを行う(ステップS63)。一定時間Tの間問合せ受信待ちを行い(ステップS64)、問合せ受信がなければ(ステップS65)、制御部101が送信電力P2を含む緊急通知を緊急送信部110から送信電力P2で送信し(ステップS66)、問合せ受信待ちを行う(ステップS67)。一定時間Tの間問合せ受信待ちを行い(ステップS68)、問合せ受信がなければ(ステップS69)、さらに一定時間Tの間問合せ受信待ちを行う(ステップS68)。緊急受信部111で問合せ受信ができれば(ステップS70)、制御部101が問合せを認識し、応答として緊急情報を緊急送信部110から送信する(ステップS71)。
【0057】
一方、周囲の携帯端末420は、通常状態にあるとき(ステップS81)、緊急受信部111で緊急通知を受信すると(ステップS82)、制御部101が緊急通知を認識し、問合せを緊急送信部110から受信した送信電力情報の値で送信する(ステップS83)。さらに制御部101は、緊急通知を認識し、緊急表示の表示、バイブレータ108の起動、スピーカ107の鳴動を行い(ステップS84)、応答受信待ちを行う(ステップS85)。緊急受信部111が応答を受信すると(ステップS86)、制御部101は緊急情報の記憶及び緊急情報の表示を行う(ステップS87)。制御部101は、問合せ送信から応答受信までの時間から緊急モードの端末までの距離を計算し(ステップS88)、緊急情報として表示する(ステップS89)。その後、制御部101は、問合せ要求を緊急送信部110から送信し(ステップS90)、応答受信を待つ(ステップS91)。緊急受信部111が応答を受信すると(ステップS92)、制御部101は緊急情報を認識し、問合せ送信から応答受信までの時間から緊急モードの端末までの距離を計算する(ステップS93)。そして、緊急モード端末までの距離を緊急情報として表示し(ステップS94)、緊急モード端末までの距離の変化分と時間から速度を計算し(ステップS95)、緊急モード端末の速度を緊急情報として表示(ステップS96)してステップS90に戻る。
【0058】
以上のように、実施の形態4によれば、緊急事態に陥った携帯端末400が緊急通知を送信する場合、最初に送信電力を小さくして、応答がなければ応答があるまで送信電力を上げることにより、緊急通知の送信電力を最低限に抑えることができ、送信による電力の消費を最小限に抑えることができる。また、緊急事態に陥った携帯端末400が、緊急情報の中に送信電力値を入れて応答する端末に送信電力を教えることで、応答する端末にとって送信電力を最低限に抑えることができる。
【0059】
(実施の形態5)
図11は、本発明の実施の形態5に係る携帯端末を用いた緊急通知システムの構成を示す図である。
【0060】
図11において、実施の形態5の救助を求める携帯端末500は、前記携帯端末100,200,300,400のいずれであってもよく、周囲の携帯端末520,530,540,550は、前記携帯端末120,220,320,330,420のいずれであってもよい。また、本緊急連絡システム600は、基地局620、公衆網630、救助センタ640、自宅650、及び警察署660を備える。
【0061】
実施の形態5の携帯端末500,520は、制御部101が、緊急モードの通知を受けた携帯端末が、緊急モードにある携帯端末からの緊急情報を携帯電話の基地局を経由して公衆回線を通じて救助センタに送る制御を行う点が異なる。
【0062】
以下、上述のように構成された緊急通知システムの動作について説明する。
【0063】
携帯端末500が緊急状態に陥ると、携帯端末500は周辺に緊急通知及び緊急情報を発信する。すると、周辺にいる携帯端末520、携帯端末530、携帯端末540、携帯端末550は、携帯端末500からの緊急通知及び緊急情報を受信する。緊急通知及び緊急情報を受信した携帯端末520、携帯端末530、携帯端末540、携帯端末550は、携帯電話機能を使って基地局620と公衆網630を経由して救助施設640又は警察署660、若しくは自宅650に通知し、通知を受けた救助施設640などから救助する人間が出動することになる。
【0064】
以上のように、実施の形態5によれば、緊急モードの携帯端末500は、周囲の携帯端末520,530,540,550に緊急通知及び緊急情報の送信のみを行い、救助センタ640への送信は緊急情報を受けた周囲の携帯端末が行うことで、緊急モードの携帯端末500の電力消費を抑制することができる。また、緊急事態に陥った携帯端末500の所有者が救助センタ640に救助を求めることができない場合であっても、緊急通知を受け取った携帯端末の所有者が救助センタ640に救助を求めることができる。
【0065】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。例えば、端末装置として携帯電話機に適用した例について説明しているが、携帯電話機に限らず情報通信機能を持ったPDA等の携帯情報端末、パーソナルコンピュータ又はその融合された装置に適用可能である。また、携帯端末には、限定されず、特に緊急情報を受ける端末装置は、設置型端末装置であってもよい。
【0066】
また、図4、図6、図8、図11及び図12の救助例は一例であり、どのような形態でも構わない。
【0067】
また、本実施の形態では携帯端末という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、通信端末、緊急連絡システム、防犯装置等であってもよいことは勿論である。
【0068】
さらに、上記携帯端末を構成する各回路部、例えば緊急送信部110及び緊急受信部111等の種類、数及び接続方法などは前述した実施の形態に限られない。
【0069】
また、以上説明した端末装置は、これら端末装置を機能させるためのプログラムでも実現される。このプログラムはコンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納されている。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る端末装置及び緊急通信システムは、緊急性の高い救助を迅速に行えるとともに、移動に伴って周囲に緊急状態を通知し続けることができるので、誘拐や暴行といった緊急性の高い通知システムの用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態1に係る携帯端末の構成を示すブロック図
【図2】上記実施の形態に係る携帯端末の制御シーケンスを示す図
【図3】上記実施の形態に係る携帯端末の救助の流れを示すフローチャート
【図4】本発明の実施の形態2に係る携帯端末の距離と移動速度を説明する図
【図5】上記実施の形態に係る携帯端末の動作を示すフローチャート
【図6】本発明の実施の形態3に係る携帯端末の緊急状態の優先表示を説明する図
【図7】上記実施の形態に係る携帯端末の制御シーケンスを示す図
【図8】本発明の実施の形態4に係る携帯端末の送信電力制御を説明する図
【図9】上記実施の形態に係る携帯端末の制御シーケンスを示す図
【図10】上記実施の形態に係る携帯端末の動作を示すフローチャート
【図11】本発明の実施の形態5に係る携帯端末を用いた緊急通知システムの構成を示す図
【図12】従来の緊急連絡システムの概略構成を示す図
【図13】従来の緊急連絡システムのそのシーケンスの概略を示す図
【図14】従来の緊急警報付携帯電話端末の概略構成を示す図
【符号の説明】
【0072】
100,120,200,220,300,320,330,400,420,500,520,530,540,550 携帯端末
101 制御部
102 記憶部
103 携帯電話通信部
104 受信情報記憶部
105 キー入力部
106 表示装置
107 スピーカ
108 バイブレータ
109 緊急ボタン/表示部
110 緊急送信部
111 緊急受信部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急時に送信する緊急情報を記憶する記憶手段と、
緊急モードを起動する起動手段と、
前記緊急モードの起動により基地局を経由しないで他の端末装置に前記緊急情報を送信する送信手段と
を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項2】
前記送信手段は、送信電力情報を送信し、一定時間以内に他の端末装置からの問合せがない場合、送信電力をより大きくして前記緊急情報を送信することを特徴とする請求項1記載の端末装置。
【請求項3】
緊急時に送信される緊急情報を受信する受信手段と、
前記緊急情報を受信したことを報知する報知手段と、
受信した前記緊急情報を表示する表示手段と、
受信した前記緊急情報を記憶する記憶手段と
を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項4】
前記緊急情報を受信した時の通信遅延に基づいて、前記緊急情報を送信した端末装置までの距離又は該端末の移動速度を求める算出手段と、
算出した前記距離又は前記移動速度を前記表示手段に表示する制御を行う制御手段とを備えることを特徴とする請求項3記載の端末装置。
【請求項5】
前記緊急情報を複数の端末装置から受信した場合、前記複数の端末装置に問合せを送信する送信手段を備え、
前記制御手段は、前記問合せに対する端末装置の応答時間と受信電力に基づいて、救助する端末装置を決定することを特徴とする請求項3記載の端末装置。
【請求項6】
前記制御手段は、受信した端末が加入する通信回線を通じて救助センタに前記緊急情報を送る制御を行うことを特徴とする請求項4記載の端末装置。
【請求項7】
前記緊急情報は、所有者の個人情報に関連する情報を含むことを特徴とする請求項1又は請求項3記載の端末装置。
【請求項8】
前記送信手段又は前記受信手段は、キャリア以外の電波を送受信して無線通信を行うことを特徴とする請求項1又は請求項3記載の端末装置。
【請求項9】
互いに通信可能な第1端末装置と第2端末装置とを備え、
前記第1端末装置は、
緊急時に送信する緊急情報を記憶する記憶手段と、
緊急モードを起動する起動手段と、
前記緊急モードの起動により基地局を経由しないで前記第2端末装置に前記緊急情報を送信する送信手段とを備え、
前記第2端末装置は、
前記緊急情報を受信する受信手段と、
前記緊急情報を受信したことを報知する報知手段と、
受信した前記緊急情報を表示する表示手段と、
受信した前記緊急情報を記憶する記憶手段と
を備えることを特徴とする緊急通知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−295295(P2006−295295A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109679(P2005−109679)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】