説明

粒子フィルタ装置および粒子フィルタの清掃方法

エンジン(30)に接続された排気管(14)と、排気ガス還流管(32、33)とを備え、排気ガスの少なくとも一部がエンジンに還流されるように構成された内燃エンジン用エンジン排気システム。排気ガス還流管は、その長さの少なくとも一部に沿って、少なくとも2本の流路(48、49)が形成されている。エンジン排気システムは、少なくとも2本の流路の各々に配設された粒子フィルタと、予熱空気において燃料を部分的に酸化して低温炎ガスを形成する少なくとも1つの低温炎気化器(11)とをさらに備えている。この少なくとも1つの低温炎気化器は、低温炎ガスの流れが各粒子フィルタを通過できるように全ての流路に流体連通して配設されており、それによって低温炎ガスを用いて少なくとも1本の排気流路内の粒子フィルタを清掃できると共に、排気ガスの流れをその他の排気流路に通すことができる。粒子フィルタの清掃方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温炎ガスを用いて粒子フィルタの再生を行う粒子フィルタ装置およびエンジン排気システムに関する。
本発明はまた、粒子フィルタの清掃方法、および、排気ガス還流システム内に配設された粒子フィルタの清掃方法に関する。
本発明はまた、圧縮点火エンジンから排気ガスが発生する場合の、粒子フィルタ装置、エンジン排気システム、および、粒子フィルタの清掃方法の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
低温炎(cold frame)という現象は、これまで余り注目されていない現象である。
低温炎においては、燃料が予熱空気の中で部分的に酸化され、温度は約450℃で一定に保たれるが、温度が空燃比および滞留時間に依存することはない。
低温炎プロセスにおいては、燃料の発熱量の2〜20%(通常は6〜9%)しか放出されず、この熱を利用して燃料を気化するため、均質な気体燃料が得られる。
開発研究の中で、ガスがリアクタ壁から炭素堆積物を除去できることが観察された。
その理由はまだ明らかではないが、低温炎ガス中に存在する遊離基、すなわち部分的に酸化された気体燃料によるものと考えられる。
【0003】
低温炎ガス現象については、下掲の特許文献1により詳細な記述を見ることができる。
【0004】
過剰空気で動作する圧縮点火エンジン(不正確にディーゼルエンジンと呼ばれることが多い)から出る排気は、主に微粒子とNOxと不完全燃焼生成物(HCとCO)とを含んでいる。
微粒子は、エンジン下流のフィルタを用いて除去することができる。
やがて、フィルタは、目詰まりを生じ、再生が必要となる。
フィルタ再生は、酸化条件下で排気ガスの温度を800℃超まで高くすることで炭素堆積物を焼却することによって行われる。
連続的な運転を行えるように、通常は2つの並列フィルタと弁を備え、一方のフィルタが再生されている間は、この弁によって排気の大半がもう一方のフィルタに送られる。
【0005】
不完全燃焼生成物(HCとCO)は、酸化触媒によって除去することができる。
【0006】
他方、NOxは、排気ガスがやや減少している時(オットーエンジンにおけるように)にしか触媒的に除去することができないが、これは圧縮点火エンジンには当てはまらないのが普通である。
【0007】
ディーゼルエンジンにおけるNOx放出量を減少する1つの方法として、排気の一部をエンジン(EGR)に再循環する方法がある。
この方法は精製されたディーゼル燃料で動作する小型のディーゼルエンジンには有効であるが、重油燃料で動作する大型エンジンに対しては実用的でない。
というのも、排気中に微粒子を生じ、それが潤滑油に混入してエンジンの摩耗を早めることになるためである。
EGRループにフィルタを挿入する試みも成功していない。
排気には塩類等の金属化合物も含まれており、それらがフィルタの再生中(温度が600℃超まで高くなる)に溶解してフィルタに永久的な損傷を与えるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6、793、693号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、粒子フィルタの再生方法を改善することにより、重質ディーゼル燃料で動作するディーゼルエンジンに対する粒子フィルタの耐用期間を延長することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、独立請求項に定義する発明によって達成される。
本発明のその他の実施形態については、従属請求項に定義する。
【0011】
内燃エンジンの排気ガス管に配設された粒子フィルタを備え、微粒子状物質や煤を含有する排気ガスが粒子フィルタを通過する際に排気ガスの浄化を行うように構成された粒子フィルタ装置が提供される。
粒子フィルタ装置は、予熱空気において燃料を部分的に酸化して低温炎ガスを生成する低温炎気化器(cold flame vaporizer)をさらに備える。
低温炎気化器は、低温炎ガスの流れが粒子フィルタを通過することによって、粒子フィルタに溜まった煤の堆積物を除去できるように、排気管と流体連通して配設されている。
【0012】
低温炎気化器は、標準的な低温炎気化器であり、燃料を予熱空気において部分的に酸化して、遊離基を有する完全に気化した燃料を提供する。
低温炎気化器において、空気と燃料が0.3〜1.0(1.0は化学量論的空燃比)の比率で混合されるが、低温炎反応に使用される空気の割合はごくわずかなものである。
【0013】
排気ガス管は、任意の断面形状のパイプ等とすることができる。
また、より大きな本体部の中の内部導管として形成してもよい。
【0014】
空気の予熱手段は、排気ガスの熱で空気を暖める熱交換器とすることができる。
また、その他に、電気的加熱手段などの予熱手段を使用することも可能である。
【0015】
粒子フィルタ装置には、さらに、排気ガス管を通る排気ガスの流れを制御する弁手段が1つ以上設けられている。
従って、排気ガス管内の粒子フィルタを再生する際に、排気ガスの流れを少なくとも部分的に遮断することができる。
【0016】
さらに粒子フィルタ装置には、低温炎気化器から排気ガス管に入って粒子フィルタを通過する低温炎ガスの流れを制御する弁手段が設けられている。
【0017】
これらの弁手段の制御は、粒子フィルタの再生が、例えば特定の時間間隔であったり、粒子フィルタ両側での圧力降下が粒子フィルタ再生の必要を示す所定レベルに達した時に行われるようにすることができる。
【0018】
低温炎気化器は、排気ガス管の外部に配設して、必要に応じて流体ラインを有する排気ガス管に接続してもよい。
低温炎気化器を排気ガス管に装着した場合、排気ガス管内に通じる開口部を設けるだけでよいが、低温炎気化器を排気ガス管と別個に配設した場合は、低温炎気化器と排気ガス管とを接続する流体ラインが設けられることになる。
【0019】
本発明の一実施形態では、低温炎気化器を排気ガス管内に配設することもできる。
その場合、低温炎気化器は、弁手段を含む開口部を介して排気ガス管内に低温炎ガスを放出するだけでよいので、流体ラインの必要は無くなる。
【0020】
排気ガス装置は、低温炎気化器と流体連通して配設された燃料源もさらに備えている。
排気ガス装置は、空気源と、空気の予熱手段も備え、空気源は、低温炎気化器と流体連通している。
低温炎気化器に入る燃料と予熱空気の流れを制御するために、排気ガス装置は、低温炎気化器に向かう燃料と予熱空気の流れを制御する弁手段を1つ以上備えている。
【0021】
また、内燃エンジン用のエンジン排気システムも提供される。
エンジン排気システムは、排気ガスの少なくとも一部がエンジンに還流されるように、エンジンに接続された排気管と排気ガス還流管とを備えている。
排気ガス還流管は、その長さの少なくとも一部に沿って少なくとも2本の流路を形成されている。
エンジン排気システムはさらに、少なくとも2本の流路の各々に配設された粒子フィルタと、予熱空気において燃料を部分的に酸化して低温炎ガスを生成する少なくとも1つの低温炎気化器とを備えている。
少なくとも1つの低温炎気化器は、低温炎ガスの流れが任意の粒子フィルタを通過して流れることができるように、全ての流路と流体連通している。
それによって、低温炎ガスを用いて少なくとも1つの排気流路の粒子フィルタを再生できると同時に、排気ガスを他方の排気流路またはその他の排気流路を通って流すことができる。
【0022】
上述したように、低温炎気化器は、燃料を予熱空気において部分的に酸化できる標準的な低温炎気化器である。
低温炎気化器において、燃料と空気を0.3〜1.0(1.0は化学量論的空燃比)の比率で混合するが、低温炎反応に使用される空気はごく僅かの割合である。
【0023】
排気ガス管は、任意の断面形状のパイプ等とすることができる。
また、より大きな本体部の内部導管として形成してもよい。
【0024】
空気を予熱する手段は、排気ガスの熱で空気を暖める熱交換器とすることができる。
例えば電気的加熱手段など、その他の予熱手段を用いることも可能である。
【0025】
流路の形成は、排気ガス還流管の長さの少なくとも一部に沿って1つ以上の仕切り壁を設け、2本以上の排気ガス用の流路が排気管部の中に別個に形成されるようにすることで行うことができる。
これらの仕切り壁は、排気ガス還流管を2本以上の流路に分割する1つ以上のプレートとすることができる。
また、排気ガス還流管に排気ガスの流れを通すことのできる少なくとも2本の別個の導管を設けることによって流路を形成してもよい。
【0026】
好ましくは、エンジン排気システムには、排気ガス還流管の流路を通る排気ガスの流れを制御する弁手段が1つ以上設けられている。
弁手段は、排気ガスの流れに対して1つ以上の流路を閉鎖することができる。
好ましくは、エンジン排気システムにはまた、少なくとも1つの低温炎気化器から排気ガス還流管と流路内の粒子フィルタへと流れる低温炎ガスの流れを制御する弁手段も1つ以上設けられている。
これらの弁手段は、例えば特定の時間間隔、あるいは、粒子フィルタの再生が必要であることを示す所定レベルまで粒子フィルタ両側での圧力降下が達した時に粒子フィルタの再生が行われるように制御することができる。
【0027】
低温炎気化器は、排気ガス管の外部に配設して、必要に応じて流体ラインを有する排気ガス管に接続してもよい。
低温炎気化器を排気ガス管に装着した場合、排気ガス管内に通じる開口部を設けるだけでよいが、低温炎気化器を排気ガス管と別個に配設した場合は、低温炎気化器と排気ガス管とを接続する流体ラインが設けられることになる。
【0028】
本発明の一実施形態では、低温炎気化器を排気ガス管の内部に配設することも可能である。
その場合、低温炎気化器は弁手段を含む開口部を介して排気ガス管内に低温炎ガスを放出するだけでよいので、流体ラインの必要は無くなる。
【0029】
エンジン排気システムは、少なくとも1つの低温炎気化器と流体連通して配設された燃料源もさらに備えている。
好ましくは、少なくとも1つの低温炎気化器への燃料の流れを制御する弁手段も設けられている。
【0030】
エンジン排気システムはまた、空気源と、前述のように空気の予熱手段とを備え、空気源は少なくとも1つの低温炎気化器と流体連通して配設されている。
好ましくは、少なくとも1つの低温炎気化器への予熱空気の流れを制御する弁手段も設けられている。
【0031】
排気管内に配設され、排気ガスから発生する微粒子状物質および煤の堆積した粒子フィルタを清掃する方法も提供される。
この方法は、低温炎ガスを供給するステップと、低温炎ガスの流れに粒子フィルタを通過させることにより、堆積した煤を粒子フィルタから除去するステップとを含む。
【0032】
上述のように、低温炎ガスは、低温炎気化器内で予熱空気において燃料を部分的に酸化することで供給することができる。
当然ながら、低温炎気化器は、排気管と流体連通して配設されている。
低温炎気化器において、空気と燃料を0.3〜1.0(この場合も、1.0は化学量論的空燃比)の比率で混合するが、低温炎反応に使用される空気の割合はごく僅かである。
【0033】
さらに、本発明の方法は、低温炎気化器から排気管に入る低温炎ガスの流れを制御する弁手段を1つ以上設けるステップも含む。
【0034】
本発明の方法はまた、低温炎気化器と流体連通して配設された燃料源と、空気源と、空気を予熱するための加熱手段とを設けるステップも含み、空気源は、低温炎気化器と流体連通して配設されている。
【0035】
好ましくは、本発明の方法は、低温炎気化器への燃料および予熱空気の流れを制御する弁手段を1つ以上設けるステップも含む。
【0036】
さらに、酸化触媒を排気ガス還流管の各流路に設けて、粒子フィルタとNOxトラップと酸化触媒とを単一ユニットで形成してもよい。
あるいは、さらに下流の排気が単一の流路に流入する箇所に、酸化触媒を別個に配設してもよい。
【0037】
また、その長さの少なくとも一部に沿って少なくとも2本の流路が形成されている排気ガス還流管を備え、少なくとも2本の流路の各々に排気ガス中の微粒子状物質および煤を除去するための粒子フィルタが設けられている内燃エンジン用排気ガス還流システムに配設された粒子フィルタを清掃する方法も提供され、この方法は、低温炎ガスを供給するステップと、低温炎ガスの流れに排気ガス還流管の少なくとも1本の流路の粒子フィルタを通過させることにより、堆積した煤を除去して粒子フィルタを再生するステップとを含む。
【0038】
低温炎ガスは、少なくとも1つの低温炎気化器の中で予熱空気において燃料を部分的に酸化することによって供給することができる。
低温炎気化器は、排気ガス還流管の全ての流路と流体連通して配設されている。
低温炎気化器において、空気と燃料が0.3〜1.0(この場合も1.0は化学量論的空燃比)の比率で混合されるが、低温炎反応に使用される空気の割合はごくわずかなものである。
【0039】
本発明の方法はまた、低温炎気化器から排気ガス管の各流路内へと流れる低温炎ガスの流れを個別に制御する1つ以上の弁手段を設けるステップも含む。
【0040】
本発明の方法はまた、低温炎気化器と流体連通して配設された燃料源と、空気源と、空気を予熱するための加熱手段とを設けるステップも含み、空気源は低温炎気化器と流体連通して配設される。
【0041】
本発明の方法はまた、低温炎気化器へと流れる燃料と予熱空気の流れを制御する弁手段を1つ以上設けるステップも含む。
【0042】
排気ガスがNOxトラップを通過する前に排気ガスから微粒子状物質を除去するために、本発明の方法は排気管部の各流路においてそれぞれの粒子フィルタの下流にNOxトラップを配設するステップも含む。
【0043】
本発明の方法はまた、排気管部内の粒子フィルタおよびNOxトラップの下流に酸化触媒を配設するステップも含む。
酸化触媒は、粒子フィルタとNOxトラップと酸化触媒とが単一ユニットに形成されるように、排気ガス還流管の各流路に配設してもよい。
あるいはまた、さらに下流の、排気が単一の流路に流入するところに酸化触媒を別個に配設してもよい。
【0044】
また、ディーゼルまたは重油燃料で動作する圧縮点火エンジンから排気ガスが発生する場合の、粒子フィルタ装置の使用法も提供される。
【0045】
また、ディーゼルまたは重油燃料で動作する圧縮点火エンジンから排気ガスが発生する場合の、エンジン排気システムの使用法も提供される。
【0046】
また、ディーゼルまたは重油燃料で動作する圧縮点火エンジンから排気ガスが発生する場合の、粒子フィルタの清掃方法の使用法も提供される。
【0047】
また、ディーゼルまたは重油燃料で動作する圧縮点火エンジンから排気ガスが発生する場合の、粒子フィルタの清掃方法の使用法も提供される。
【0048】
以上、低温炎気化器によって生成される低温炎ガスについてのみ説明してきたが、低温炎は、その他にも多数存在する同じ性質を有する部分酸化燃料ガスの中の一例に過ぎない。
従って、本発明は低温炎ガスにのみ限定されるものではなく、低温炎ガスと同じまたは類似の性質をもつその他の部分酸化燃料ガスも含むものである。
【0049】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】粒子フィルタを排気管に配設した本発明の一実施形態を示す。
【図2A】粒子フィルタをEGRループ内に配設した本発明の一実施形態を示す。
【図2B】図2Aの粒子フィルタのA−A断面図である。
【図3】粒子フィルタをEGRループ内に配設した本発明の別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、本発明の一実施形態を概略的に示している。
矢印20で示される排気ガスが排気ガス管14内を流れる。
排気ガス管を通る排気ガスの流れを制御するように弁手段18が設けられている。
さらに下流には、排気ガスの微粒子状物質を清掃するフィルタ10が設けられている。
粒子フィルタは一定の周期で再生する必要があるが、本発明によるとフィルタの再生は、低温炎ガスを供給し、粒子フィルタが再生されるまで低温炎ガスを粒子フィルタを通して流すことで実施することができる。
図1では、低温炎ガスが、低温炎気化器11によって生成される。
ディーゼルや重油燃料などの燃料源12が流体ライン26を介して低温炎気化器11に接続されている。
低温炎気化器11への燃料の流れを制御する弁手段19が設けられている。
空気源13も設けられており、この空気源13は、吸気口15と空気フィルタ(図示せず)を備えていてもよい。
空気源13は、流体ライン25を介して低温炎気化器に接続されている。
弁手段16が、空気源13から低温炎気化器11への空気の流れを制御している。
【0052】
低温炎気化器11に送られる前に空気を予熱する加熱手段(図示せず)がさらに設けられているのが好ましい。
弁手段16、19を適正に調節することにより、所望の空熱比を達成することができる。
【0053】
低温炎ガスは、流体ライン27を介して粒子フィルタ10のすぐ上流にある排気ガス管へと送られる。
低温炎気化器11から排気ガス管14への低温炎ガスの流れを制御するように弁手段17が設けられている。
【0054】
粒子フィルタ11を再生する必要がある場合、それはフィルタ両側の圧力降下が大きくなって清掃が必要であることを示すことで通知されるが、この時、好ましくは弁手段18は閉じ、弁手段17が開いて低温炎ガスの流れを粒子フィルタ10に通すことによってフィルタの再生を行う。
【0055】
図2A−図2Bと図3A−図3Bは、それぞれ本発明の2つの類似の実施形態を示している。
内燃エンジン30、好ましくは圧縮点火エンジン用のエンジン排気システムが示されている。
さらに、排気ガス管14が設けられており、この排気ガス管14を通って矢印21で示される排気が流れる。
エンジン30からの排気のNOx含有量を低減するために、EGRループ(排気ガス還流ループ)が設けられている。
【0056】
図2Aにおいて、EGRループは排気ガス還流管32、33で示されている。
排気ガス還流管は、排気ガス管14と粒子フィルタ部22との間に延びる流体ライン32と、粒子フィルタ部22とエンジン30との間に延びる流体ライン33とから構成されている。
図2Bから分かるように、排気ガス還流管32、33はその一部において2つの流路48、49に分割されている。
粒子フィルタ部のこの長さは、好ましくは粒子フィルタ10の長さに相当する。
流路は、図2Bから分かるように仕切り壁34によって形成される。
【0057】
流路48、49の各々に粒子フィルタ10が設けられており、弁手段(図示せず)等の手段が流路48、49を通る排気ガスの流れを制御するために設けられている。
【0058】
さらに、上記と同様に、低温炎気化器11に、燃料源12と空気源13が設けられている。
低温炎気化器11で生成された低温炎ガスが、粒子フィルタ部10の直前の流体ライン32に送られる。
弁手段17が開かれると、低温炎ガスは、流路48、49の一方または両方を通過することができる。
【0059】
粒子フィルタ部22の粒子フィルタ10の一方が再生を要する場合、再生すべき粒子フィルタ10の存在する流路32、33を通る排気ガスの流れを弁手段等の手段が封鎖する。
弁手段17が開いて、再生すべき粒子フィルタ10に低温炎ガスの流れを通過させる。
粒子フィルタが再生されると、弁の位置を切り換えて、排気ガスの流れに再生を終えたばかりの粒子フィルタ10を通過させる一方、低温炎ガスは再生を要する粒子フィルタを通る方向に向かうようにすることができる。
例えば粒子フィルタ両側での圧力降下が一定値より低くなった時点で、粒子フィルタの再生を要すると見なすことができる。
【0060】
このように、フィルタの再生を行う際にEGRループを閉じる必要がない。
図2Bでは、粒子フィルタ部22を粒子フィル10を備える2本の流路48、49に分割した状態を示しているが、必要に応じて流路を2本以上としてもよい。
【0061】
図3Aおよび図3Bに示す本発明の実施形態も、図2Aおよび図2Bの実施形態と同様である。
同じ特徴を有するものには同じ参照番号を付し、2つの実施形態の間で相違する部分についてのみ以下に説明する。
【0062】
2つの実施形態の相違は、図3Aおよび図3Bに示す実施形態では、1本の排気管を仕切り壁で分割して流路を形成する(図2Aに示す実施形態の粒子フィルタ部)のではなく、2本の別個の流体ラインによって流路が形成されている。
【0063】
ERGループ40において、排気ガスは2本(図面では)の並列の流体ライン38、39を流れる。
2本の流体ライン38、39の各々に粒子フィルタ10と、2本の流体ライン38、39を通る排気ガスの流れを制御する弁手段とが設けられている。
低温炎気化器11からの低温炎ガスは、弁手段17によって制御される。
粒子フィルタの再生が必要になると、弁手段が調整することにより、低温炎ガスが一方の粒子フィルタ10を通って流れることでそのフィルタの再生を行う一方、排気ガスがもう1つの粒子フィルタ10に案内されるようにする。
第1の粒子フィルタの再生が終わると、弁手段の位置を切り換えて、再生を行った方の粒子フィルタに排気ガスを流す一方、低温炎ガスはまだ再生を要する粒子フィルタに流れるようにする。
【0064】
図2Aおよび図2Bに示す実施形態については、必要に応じて2本以上の流路38、39を設けることも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンの排気ガス管内に配設された粒子フィルタを含み、微粒子状物質とすすとを含有する排気ガスが粒子フィルタを通過する際に浄化される粒子フィルタ装置であっって、粒子フィルタ装置がさらに、予熱空気において燃料を部分的に酸化して低温炎ガスを形成する低温炎気化器を備えており、前記低温炎気化器は、低温炎ガスの流れが粒子フィルタを通過することにより粒子フィルタに堆積したすすを除去できるように排気管と連通して配設されていることを特長とする粒子フィルタ装置。
【請求項2】
粒子フィルタ装置に、排気ガス管を通る排気ガスの流れを制御する1つまたはそれ以上の弁手段が設けられていることを特徴とする、請求項1記載の粒子フィルタ装置。
【請求項3】
粒子フィルタ装置に、低温炎気化器から排気ガス管に入り粒子フィルタを通過する低温炎ガスの流れを制御する弁手段が設けられていることを特徴とする、請求項1または2記載の粒子フィルタ装置。
【請求項4】
前記低温炎気化器が排気流管の外部に配設されており、必要に応じて流体ラインを有する排気ガス管に接続されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の粒子フィルタ装置。
【請求項5】
前記低温炎気化器が排気ガス管の内部に配設されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の粒子フィルタ装置。
【請求項6】
前記排気ガス装置が、低温炎気化器と流体連通して配設された燃料源を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粒子フィルタ装置。
【請求項7】
前記排気ガス装置が、空気源と、空気を予熱するための手段とを備えており、空気源が低温炎気化器と流体連通していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の粒子フィルタ装置。
【請求項8】
前記排気ガス装置が、低温炎気化器へと向かう燃料と予熱空気の流れを制御する1つまたはそれ以上の弁手段を備えることを特徴とする、請求項6または7に記載の粒子フィルタ装置。
【請求項9】
内燃エンジン用のエンジン排気システムであって、該エンジン排気システムが、エンジンに接続された排気管と、排気ガス還流管とを備え、排気ガスの少なくとも一部をエンジンに還流できるように構成されると共に、排気ガス還流管がその長さの少なくとも一部に沿って少なくとも2つの流路を形成されており、前記エンジン排気システムがさらに、前記少なくとも2つの流路の各々に配設された粒子フィルタを備えているエンジン排気システムにおいて、エンジン排気システムがさらに、予熱空気において燃料を部分的に酸化して低温炎ガスを形成する少なくとも1つの低温炎気化器を備え、低温炎ガスの流れが粒子フィルタを通過することができるように、前記少なくとも1つの低温炎気化器が全ての流路と流体連通していることによって、低温炎ガスを用いて前記排気流路の少なくとも1つの粒子フィルタを再生すると同時に、他方またはその他の排気流路を通って排気ガスが流れるようにすることができることを特徴とするエンジン排気システム。
【請求項10】
排気管部に2本以上の個別の排気ガス用流路が形成されるように排気ガス還流管の長さの少なくとも一部に沿って1つまたはそれ以上の仕切り壁を設けることによって、前記流路が形成されていることを特徴とする、請求項9記載のエンジン排気システム。
【請求項11】
排気ガス還流管に排気ガスを流すことができる少なくとも2本の導管を個別に設けることによって、前記流路が形成されていることを特徴とする、請求項9記載のエンジン排気システム。
【請求項12】
前記エンジン排気システムに、排気ガス還流管の流路を通る排気ガスの流れを制御する弁手段が1つまたはそれ以上設けられていることを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載のエンジン排気システム。
【請求項13】
前記エンジン排気システムに、前記少なくとも1つの低温炎気化器から排気ガス還流管および流路内の粒子フィルタへと流れる低温炎ガスの流れを制御する弁手段が1つまたはそれ以上設けられていることを特徴とする、請求項9〜12のいずれかに記載のエンジン排気システム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの低温炎気化器が排気ガス還流管の流路の外部に配設されており、必要に応じて流体ラインを有する流路に接続されていることを特徴とする、請求項9〜13のいずれかに記載のエンジン排気システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの低温炎気化器が排気ガス還流管の流路の内部に配設されていることを特徴とする、請求項9〜13のいずれかに記載のエンジン排気システム。
【請求項16】
前記エンジン排気システムが、前記少なくとも1つの低温炎気化器と流体連通して配設された燃料源と、前記少なくとも1つの低温炎気化器へと流れる燃料の流れを制御する弁手段とを備えることを特徴とする、請求項9〜15のいずれかに記載のエンジン排気システム。
【請求項17】
前記エンジン排気システムが、前記少なくとも1つの低温炎気化器と流体連通して配設された空気源と、空気を予熱するための手段と、前記少なくとも1つの低温炎気化器へと流れる予熱空気の流れを制御する弁手段とを備えることを特徴とする、請求項9〜16のいずれかに記載のエンジン排気システム。
【請求項18】
排気管内に配設されており、排気ガスから発生した微粒子状物質およびすすが堆積した粒子フィルタを清掃する方法であって、
低温炎ガスを供給するステップと、
低温炎ガスの流れに粒子フィルタを通過させることによって、粒子フィルタからすすを除去するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
予熱空気において燃料を部分的に酸化して低温炎ガスを形成する低温炎気化器から排気管へと流れる低温炎ガスの流れを制御する弁手段を1つまたはそれ以上設けることを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記低温炎気化器と流体連通して配設された燃料源と、空気源と、空気を予熱するための加熱手段とを設け、空気源を低温炎気化器と流体連結して配設することを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
低温炎気化器へと流れる燃料と予熱空気の流れを制御するための弁手段を1つまたはそれ以上設けることを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
少なくともその長さの一部に沿って少なくとも2本の流路を形成されている排気ガス還流管を備える内燃エンジン用排気ガス還流システムに配設された粒子フィルタを清掃するための方法であって、前記少なくとも2本の流路の各々に排気ガスの微粒子状物質およびすすを除去するための粒子フィルタを設ける方法において、
低温炎ガスを供給するステップと、
低温炎ガスの流れに排気ガス還流管の少なくとも一方の流路の粒子フィルタを通過させることによって、堆積したすすを除去して粒子フィルタを再生するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
予熱空気において燃料を部分的に酸化する低温炎気化器から排気ガス管の各流路に流れる低温炎ガスの流れを個別に制御するための弁手段を1つまたはそれ以上設けることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
低温炎気化器と流体連通して配設される燃料源と、空気源と、空気を予熱するための加熱手段を設け、空気源は低温炎気化器と流体連通して配設することを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記低温炎気化器への燃料と予熱空気の流れを制御するための弁手段を1つまたはそれ以上設けることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
排気管部の各流路において、それぞれの粒子フィルタの下流にNOxトラップを配設することを特徴とする、請求項22〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記粒子フィルタおよびNOxトラップの下流の排気管部に酸化触媒を配設することを特徴とする、請求項22〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
ディーゼルまたは重油燃料で動作する圧縮点火エンジンから排気ガスが発生する場合の、請求項1〜8のいずれかに記載の粒子フィルタ装置の使用法。
【請求項29】
ディーゼルまたは重油燃料で動作する圧縮点火エンジンから排気ガスが発生する場合の、請求項9〜17のいずれかに記載のエンジン排気システムの使用法。
【請求項30】
ディーゼルまたは重油燃料で動作する圧縮点火エンジンから排気ガスが発生する場合の、請求項18〜21のいずれかに記載の粒子フィルタの清掃方法の使用法。
【請求項31】
ディーゼルまたは重油燃料で動作する圧縮点火エンジンから排気ガスが発生する場合の、請求項22〜27のいずれかに記載の粒子フィルタの清掃方法の使用法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−538199(P2010−538199A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522844(P2010−522844)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【国際出願番号】PCT/NO2008/000309
【国際公開番号】WO2009/028957
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(509283890)エネルギー コンヴァージョン テクノロジー アクティーゼルスカブ (5)
【Fターム(参考)】