説明

粘着フィルム

【課題】容器の取出口の開封及び再封の度に生ずる、引っ張り等の物理的負荷を受けてもガスバリア性の低下が小さい、ガスバリア性が維持される粘着フィルムを提供する。
【解決手段】粘着フィルムは、粘着フィルム基材1とその上に設けた粘着剤層2とからなる。粘着フィルム基材1は、プラスチックフィルムからなる基材フィルム2とその少なくとも片面に形成した無機酸化物蒸着膜3と、無機酸化物蒸着膜3上に形成した、一般式R1nM(OR2m(但し、式中、R1、R2は炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表わし、n+mは原子価を示す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有し、更にゾルゲル法によって重縮合して得られるバリア性組成物からなるコート材を塗布してなるバリア性被膜とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の開口部の繰り返し開封及び再封をするためのガスバリア性を有する粘着フィルムであって、前記粘着フィルムは粘着フィルム基材とその上に設けた粘着剤層とからなり、繰り返しの開口部の開封及び再封を行ってもそれによるガスバリア性の低下が小さいことを特徴とするガスバリア性粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
透明粘着テープの基材としては、ポリアミド、PETやOPP、セロファンなどが手切れ性や強度、耐熱性などの目的に応じて選択され、使用されてきた。しかしながら、これらの透明粘着テープの基材は、ガスバリア性に乏しく、これらの基材からなる透明粘着テープで包装体の開口部を封じた場合、包装体に十分なバリア性能があっても、透明粘着テープで再封した個所からの漏れにより、包装体のガスバリア性能が生かせないといった問題があった。特に、携帯用ウエットティッシュの包材などに見られる、ウエットティッシュの取り出し口を粘着フィルムで封じた包装形態の場合、水蒸気透過度の低いアルミウム蒸着フィルムからなる包装体を使用しても、取り出し口は粘着テープで覆っているだけであるので、粘着テープを通しての水蒸気の漏れにより、包装体の持つ本来のバリア性能が生かせないという問題があった。また、包装内容物を使い切るまで何度も容器の取り出し口の開封及び再封を行うので、粘着フィルム自体にバリア性が無いと、長期間保存できないという問題もあった。こういった問題を解決するため、ポリ塩化ビニリデンやアルミ箔を基材とする粘着テープも実用化されてきた。
また、食品・日用品やエレクトロニクス関係部品及び医薬品等の包装分野に用いられる包装用の高ガスバリア性を有する粘着性フィルム、または電子機器関連部材などの高水蒸気バリアを必要とする包装分野や電子機器部材の分野で利用される高ガスバリア性を有する粘着性フィルムとして、プラスチック材料からなる基材の片面に蒸着薄膜層と中間被膜層を交互に積層した積層体を設けた高ガスバリア性を有する粘着性フィルムが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−276294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ポリ塩化ビニリデンを基材とする粘着フィルムの場合、バリア性が不十分な場合があり、また、廃棄燃焼時に塩素化合物のガスが発生するといった問題があった。またアルミ箔を基材とする粘着フィルムは不透明であり、粘着フィルムを通して中味を見ることができず、特に容器本体が不透明の場合に中味を見ることができないといた問題がある。
また、特許文献1に記載の粘着性フィルムは、何度も容器の取り出し口の開封及び再封を繰り返した場合、積層体を構成する蒸着薄膜層及び中間被膜層は、取り出し口の開封及び再封の度に引っ張り、しごきといった物理的負荷を受け、それによって本来のバリア性が低下するといった問題があった。
本発明が解決しようとする課題は、容器の取り出し口の開封及び再封の度に生ずる、引っ張り、折、揉みといった物理的負荷を受けてもガスバリア性の低下が小さい、ガスバリア性が維持されるガスバリア性を有する粘着フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、上記の課題を解決するもので、容器の開口部の繰り返しの密封及び開封をするためのガスバリア性を有する粘着フィルムであって、前記粘着フィルムは粘着フィルム基材とその上に設けた粘着剤層とからなり、前記粘着フィルム基材は、プラスチックフィルムからなる基材フィルムとその少なくとも片面に形成した無機酸化物蒸着膜と、この無機酸化物蒸着膜上に形成した、一般式R1 n M(OR2m(但し、式中、R1 、R2 は炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表わし、n+mは原子価を示す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有し、更にゾルゲル法によって重縮合して得られるバリア性組成物からなるコート材を塗布してなるバリア性被膜とからなり、繰り返しの開封及び再封を行ってもそれによるバリア性の低下が小さいことを特徴とするガスバリア性を有する粘着フィルムを要旨とする。
【0005】
本発明において無機酸化物蒸着膜として、化学気相成長法、物理気相成長法等によって形成したものを利用することができるが、特にプラズマCVD法により形成したものが望ましい。
【0006】
その場合、プラズマCVD法により形成した無機酸化物蒸着膜として、炭素含有酸化珪素蒸着膜が特に好ましい。また酸化珪素蒸着膜も好ましく形成することができる。また無機酸化物蒸着膜上にさらにプラスチックフィルムからなる表面保護層を設けてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粘着フィルムは、容器の開口部の繰り返し密封及び開封をするためのガスバリア性を有する粘着フィルムであって、前記粘着フィルムは粘着フィルム基材とその上に設けた粘着剤層とからなり、前記粘着フィルム基材は、プラスチックフィルムからなる基材フィルムとその少なくとも片面に形成した無機酸化物蒸着膜と更にその上に形成した、一般式R1 n M(OR2m(但し、式中、R1、R2は炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表わし、n+mは原子価を示す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有し、更にゾルゲル法によって重縮合して得られるバリア性組成物からなるコート材を塗布してなるバリア性被膜とからなるので、繰り返しの開封及び再封を行ってもそれによるバリア性の低下が小さく、且つ折りや揉みといった物理的負荷によるバリア性の劣化が低いという利点を有する。本発明の粘着フィルムは、例えばウエットティッシュの包装容器の取り出し口の密封に有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明の粘着フィルムの第一の実施の形態を示す断面図である。
【0009】
図1に示す本発明の粘着フィルム体は、粘着フィルム基材1と粘着フィルム基材1の上に形成した粘着剤層2とからなり、粘着フィルム基材1は、プラスチックフィルムからなる基材フィルム3とその片面に形成した無機酸化物蒸着膜4と、更にその上に形成した、一般式R1 n M(OR2m(但し、式中、R1、R2は炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表わし、n+mは原子価を示す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有し、更にゾルゲル法によって重縮合して得られるバリア性組成物からなるコート材を塗布してなるバリア性被膜5とからなる。
【0010】
基材フィルム3としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム、二軸延伸ポリエチレン、二軸延伸ポリプロピレン、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等を用いることができる。基材フィルム3には装飾模様や商品名等の印刷層を設けても良い。
【0011】
無機酸化物蒸着膜4は化学気相成長法、物理気相成長法等により形成することができるが、特にプラズマCVD法により形成した炭素含有酸化珪素蒸着膜、酸化珪素蒸着膜が特に好ましい。
【0012】
本発明の粘着フィルムは、上記したように、粘着フィルム基材1とその上に設けた粘着剤層2とからなり、粘着フィルム基材1は、プラスチックフィルムからなる基材フィルム3とその片面に形成した無機酸化物蒸着膜4と、更にその上に形成した、一般式R1 n M(OR2m(但し、式中、R1、R2は炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表わし、n+mは原子価を示す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレンビニルアルコール共重合体を含有し、更にゾルゲル法によって重縮合して得られるバリア性組成物からなるコート材を塗布してなるバリア性被膜5とからなるので、繰り返しの開封及び再封を行ってもそれによるバリア性の低下が小さく且つ、且つ折りや揉みといった物理的負荷によるバリア性の劣化が低いという利点を有する。本発明の粘着フィルムは、例えばウエットティッシュの包装容器の取り出し口の密封に有効に活用することができる。
【0013】
図2は、本発明の粘着フィルムの第2の実施の形態を示す。図2に示す本発明の粘着フィルは、粘着フィルム基材1と粘着フィルム基材1の上に形成した粘着剤層2とからなり、粘着フィルム基材1は、プラスチックフィルムからなる基材フィルム3とその片面に形成した無機酸化物蒸着膜4、更にその上に形成した、一般式R1 n M(OR2m(但し、式中、R1 、R2 は炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表わし、n+mは原子価を示す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有し、更にゾルゲル法によって重縮合して得られるバリア性組成物からなるコート材を塗布してなるバリア性被膜5とからなり、バリア性被膜5の上にさらにその表面を保護するために、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルムからなる表面保護層6が設けられているものである。
【0014】
図3は本発明の粘着フィルムの第三の実施の形態を示す。この粘着フィルムにおいては、無機酸化物蒸着膜4及び無機酸化物蒸着膜4の上に形成した、一般式R1 n M(OR2m(但し、式中、R1 、R2 は炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表わし、n+mは原子価を示す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有し、更にゾルゲル法によって重縮合して得られるバリア性組成物からなるコート材を塗布してなるバリア性被膜5が、基材フィルム3の粘着剤層2に対面する側に設けられている。
【0015】
図4は本発明の粘着フィルムの第四の実施の形態を示す。この粘着フィルムにおいては、基材フィルム3の両面に無機酸化物蒸着膜4が設けられ、無機酸化物粘着層4の面には、更にその上に形成した、一般式R1 n M(OR2m(但し、式中、R1、R2は炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表わし、n+mは原子価を示す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有し、更にゾルゲル法によって重縮合して得られるバリア性組成物からなるコート材を塗布してなるバリア性被膜5が設けられ、一方のバリア性被膜5上には粘着剤層2が設けられ、他方のバリア性被膜5の面には表面保護層6が設けられている。
【0016】
次に無機酸化物蒸着膜4を形成するための化学気相成長法、物理気相成長法等について順次説明する。
【0017】
本発明において、上記の化学気相成長法による無機酸化物蒸着膜について更に説明すると、かかる化学気相成長法による無機酸化物蒸着膜としては、例えば、プラズマCVD法(Plasma enhanced Chemical Vapor Deposition:PECVD法)、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法:CVD法)等を用いて無機酸化物蒸着膜を形成することができる。
本発明においては、具体的には、基材フィルム3の一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマ−ガスを原料とし、キャリヤ−ガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の無機酸化物蒸着膜4を形成することができる。
【0018】
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができ、而して、本発明においては、高活性の安定したプラズマを得るためには、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが望ましい。
【0019】
具体的に、上記の低温プラズマCVD法による無機酸化物蒸着膜の形成法についてその一例を例示して説明すると、図5は、上記のプラズマCVD法による無機酸化物蒸着膜4の形成法についてその概要を示す低温プラズマCVD装置の概略的構成図である。
図5に示すように、プラズマCVD装置21の真空チャンバ−22内に配置された巻き出しロ−ル23から基材フィルム3を繰り出し、更に、該基材フィルム3を、補助ロ−ル24を介して所定の速度で冷却・電極ドラム25周面上に搬送する。
そして、ガス供給装置26、27および、原料揮発供給装置28等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマ−ガス、その他等を供給し、それらからなる蒸着用混合ガス組成物を調整しなから原料供給ノズル29を通して真空チャンバ−22内に該蒸着用混合ガス組成物を導入し、そして、上記の冷却・電極ドラム25周面上に搬送された基材フィルム3の上に、グロ−放電プラズマ30によってプラズマを発生させ、これを照射して、酸化珪素、炭素含有酸化珪素等の無機酸化物蒸着膜4を製膜する。
その際に、冷却・電極ドラム25は、真空チャンバ−22の外に配置されている電源31から所定の電力が印加されており、また、冷却・電極ドラム25の近傍には、マグネット32を配置してプラズマの発生が促進されている。
【0020】
次いで、上記で酸化珪素等の無機酸化物蒸着膜を形成した基材フィルム3は、補助ロ−ル33を介して巻き取りロ−ル34に巻き取られる。巻き取られた無機酸化物蒸着膜4を有する基材フィルム3には粘着剤層2が設けられ、粘着フィルムとされる。
なお、図中、35は、真空ポンプを表す。
また、上記のプラズマCVD装置は、その一例を例示するものであり、これによって本発明は限定されるものではないことは言うまでもないことである。
また、図示しないが、本発明においては、無機酸化物蒸着膜としては、無機酸化物蒸着膜の1層だけではなく、2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する材料も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した無機酸化物蒸着膜を構成することもできる。
【0021】
上記において、真空チャンバ−22内を真空ポンプ35により減圧し、真空度1×10-1〜1×10-8Torr位、好ましくは、真空度1×10-3〜1×10-7Torr位に調整することが望ましいものである。
また、原料揮発供給装置28においては、原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置26、27から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合させ、この混合ガスを、原料供給ノズル29を介して真空チャンバ−22内に導入される。
この場合、混合ガス中の有機珪素化合物の含有量は、1〜40%位、酸素ガスの含有量は、10〜70%位、不活性ガスの含有量は、10〜60%位の範囲とすることができ、例えば、有機珪素化合物と酸素ガスと不活性ガスとの混合比を1:3:3〜1:17:14程度とすることができる。
【0022】
一方、冷却・電極ドラム25には、電源31から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバ−22内の原料供給ノズル29の開口部と冷却・電極ドラム25との近傍でグロ−放電プラズマ30が生成され、このグロ−放電プラズマ30は、混合ガス中の1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態において、基材フィルム3を一定速度で搬送させ、グロ−放電プラブマ30によって、冷却・電極ドラム25周面上の基材フィルム3の上に、酸化珪素等の無機酸化物蒸着膜を形成することができるものである。尚、このときの真空チャンバ−内の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr位、好ましくは、真空度1×10-1〜1×10-2Torr位に調整することが望ましく、また、基材フィルム3の搬送速度は、10〜300m/分位、好ましくは、50〜150m/分位に調整することが望ましいものである。
【0023】
また、上記のプラズマCVD装置21において、酸化珪素等の無機酸化物蒸着膜4の形成は、基材フィルム3の上に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOXの形で薄膜状に形成されるので、当該形成される酸化珪素等の無機酸化物蒸着膜4は、緻密で、隙間の少ない、可撓性に富む連続層となるものであり、従って、酸化珪素等の無機酸化物蒸着膜4のバリア性は、従来の真空蒸着法等によって形成される酸化珪素等の無機酸化物蒸着膜4と比較して、はるかに高いものとなり、薄い膜厚で十分なバリア性を得ることができるものである。
また、本発明においては、SiOXプラズマにより基材フィルム3の表面が、清浄化され、基材フィルム3の表面に、極性基やフリ−ラジカル等が発生するので、形成される酸化珪素等の無機酸化物蒸着膜4と基材フィルム3との密接着性が高いものとなるという利点を有するものである。
更に、上記のように酸化珪素等の無機酸化物の連続膜の形成時の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr位、好ましくは、1×10-1〜1×10-2Torr位に調整することから、従来の真空蒸着法により酸化珪素等の無機酸化物蒸着膜を形成する時の真空度、1×10-4〜1×10-5Torr位に比較して低真空度であることから、基材フィルム3を原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度を安定しやすく、製膜プロセスが安定するものである。
【0024】
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマ−ガスを使用して形成される酸化珪素の蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマ−ガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が、基材フィルム3の一方の面に密接着し、緻密な、柔軟性等に富む薄膜を形成するものであり、通常、一般式SiOX(ただし、Xは、0〜2の数を表す)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。
而して、上記の酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式SiOX(ただし、Xは、1.3〜1.9の数を表す。)で表される酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましいものである。
上記において、Xの値は、蒸着モノマ−ガスと酸素ガスのモル比、プラズマエネルギ−等により変化するが、一般的に、Xの値が小さくなればガス透過度は小さくなるが、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
【0025】
また、上記の酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、これに、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または、その2種類以上の元素からなる化合物を少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜からなることを特徴とするものである。
例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラ−レン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。
具体例を挙げると、CH3 部位を持つハイドロカ−ボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノ−ル等の水酸基誘導体等を挙げることができる。
上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、酸化珪素蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。
而して、上記の化合物が、酸化珪素の蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50%位、好ましくは、5〜20%位が望ましいものである。
上記において、含有率が、0.1%未満であると、酸化珪素の蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げ等により、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になり、また、50%を越えると、バリア性が低下して好ましくないものである。
更に、本発明においては、酸化珪素蒸着膜において、上記の化合物の含有量が、酸化珪素蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少させることが好ましく、これにより、酸化珪素蒸着膜の表面においては、上記の化合物等により耐衝撃性等を高められ、他方、基材フィルム3との界面においては、上記の化合物の含有量が少ないために、基材フィルム3と酸化珪素蒸着膜4との密接着性が強固なものとなるという利点を有するものである。
【0026】
次に、上記において、酸化珪素等の無機酸化物蒸着膜4を形成する有機珪素化合物等の蒸着用モノマ−ガスとしては、例えば、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。
本発明において、上記のような有機珪素化合物の中でも、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に、好ましい原料である。
また、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
【0027】
次に、本発明において、上記の物理気相成長法による無機酸化物蒸着膜4について更に詳しく説明すると、かかる物理気相成長法による無機酸化物蒸着膜としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法、イオンクラスタ−ビーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)を用いて無機酸化物蒸着膜4を形成することができる。
本発明において、具体的には、金属の酸化物を原料とし、これを加熱して蒸気化し、これを基材フィルム3の一方の上に蒸着する真空蒸着法、または、原料として金属または金属の酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて基材フィルム3の一方の上に蒸着する酸化反応蒸着法、更に酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて蒸着膜を形成することができる。
上記において、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビ−ム加熱方式(EB)等にて行うことができる。
【0028】
本発明において、物理気相成長法による無機酸化物薄膜膜を形成する方法について、その具体例を挙げると、図6は、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
図6に示すように、巻き取り式真空蒸着装置41の真空チャンバ−42の中で、巻き出しロ−ル43から繰り出す基材フィルム3は、ガイドロ−ル44、45を介して、冷却したコ−ティングドラム46に案内される。
而して、上記の冷却したコ−ティングドラム46上に案内された基材フィルム3の上に、るつぼ47で熱せられた蒸着源48、例えば、金属アルミニウム、あるいは、酸化アルミニウム等を蒸発させ、更に、必要ならば、酸素ガス吹出口49より酸素ガス等を噴出し、これを供給しながら、マスク50、50を介して、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物蒸着膜を製膜化し、次いで、上記において、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物蒸着膜を形成した基材フィルム3を、ガイドロ−ル44、45を介して送り出し、巻き取りロ−ル51に巻き取ることによって、本発明にかかる物理気相成長法による無機酸化物蒸着膜を形成することができる。
なお、本発明においては、上記のような巻き取り式真空蒸着装置を用いて、まず、第1層の無機酸化物蒸着膜を形成し、次いで、同様にして、該無機酸化物蒸着膜の上に、更に、無機酸化物蒸着膜を形成するか、あるいは、上記のような巻き取り式真空蒸着装置を用いて、これを2連に連接し、連続的に、無機酸化物蒸着膜を形成することにより、2層以上の多層膜からなる無機酸化物蒸着膜を形成することができる。
【0029】
上記において、無機酸化物蒸着膜としては、基本的に金属の酸化物を蒸着した薄膜であれば使用可能であり、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。
而して、好ましいものとしては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物の蒸着膜を挙げることができる。
而して、上記の金属の酸化物蒸着膜4は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物として呼ぶことができ、その表記は、例えば、SiOX 、AlOX、MgOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲が異なる。)で表される。
また、上記のXの値の範囲としては、ケイ素(Si)は、0〜2、アルミニウム(Al)は、0〜1.5、マグネシウム(Mg)は、0〜1、カルシウム(Ca)は、0〜1、カリウム(K)は、0〜0.5、スズ(Sn)は、0〜2、ナトリウム(Na)は、0〜0.5、ホウ素(B)は、0〜1、5、チタン(Ti)は、0〜2、鉛(Pb)は、0〜1、ジルコニウム(Zr)は0〜2、イットリウム(Y)は、0〜1.5の範囲の値をとることができる。
上記において、X=0の場合、完全な金属であり、透明ではなく全く使用することができない、また、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。
本発明において、一般的に、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)以外は、使用される例に乏しく、ケイ素(Si)は、1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は、0.5〜1.5の範囲の値のものを使用することができる。
本発明において、上記のような無機酸化物蒸着膜4の膜厚としては、使用する金属、または金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜2000Å位、好ましくは、100〜1000Å位の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。
また、本発明においては、無機酸化物蒸着膜4としては、使用する金属、または金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物蒸着膜を構成することもできる。
【0030】
次にバリア性被膜6に関して説明する。このバリア性被膜5としては、例えば、一般式R1nM(OR2m(但し、式中、R1、R2は炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表わし、n+mは原子価を示す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有し、更に、ゾル−ゲル法触媒、酸、水及び有機溶剤の存在下に、ゾル−ゲル法によって重縮合するバリア性組成物を調製する工程、基材フィルム3の無機酸化物蒸着膜4の上に、必要ならば、酸素ガスによるプラズマ処理面を介して、上記のゾル−ゲル法によって重縮合するバリア性組成物を塗布してバリア性被膜5を形成する工程、上記のバリア性被膜5を20℃〜200℃で10秒〜10分間加熱処理する工程を含む製造工程によって製造することができる。
【0031】
尚、バリア性被膜6としては、一般式R1nM(OR2m(但し、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体を含有し、更に、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾル−ゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物を調製し、これを使用し、基材フィルムの一方の面に設けた無機酸化物の蒸着膜の上に、2層以上重層し、上記のガスバリア性組成物によるバリア性被膜を2層以上重層した複合ポリマー層を形成して製造することもできる。
【0032】
本発明において、一般式R1nM(OR)mで表されるアルコキシドとしては、金属原子Mとしては、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他等を使用することができる。
而して、本発明において、好ましい金属としては、例えば、珪素、チタン等を挙げることができる。
また、本発明において、アルコキシドの用い方としては、単独又は2種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使うこともできる。
【0033】
また、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドにおいて、R1で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、その他等のアルキル基を挙げることができる。
また、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドにおいて、R2で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、その他等を挙げることができる。
尚、本発明において、同一分子中にこれらのアルキル基は同一であっても、異なってもよい。
【0034】
而して、本発明において、上記の一般式R1nM(OR2nで表されるアルコキシドとしては、例えば、金属原子MがSiであるアルコキシシランを使用することが好ましいものである。
上記のアルコキシシランとしては、一般式Si(ORa)4(但し、式中、Raは、低級アルキル基を表す。)で表されるものである。
上記において、Raとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他等が用いられる。
上記のアルコキシシランの具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン Si(OCH3 4、テトラエトキシシラン Si(OC254、テトラプロポキシシラン Si(0C 374、テトラブトキシシラン Si(OC494 、その他等を使用することができる。
【0035】
また、本発明において、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、例えば、一般式RbnSi(ORc)4-m(但し、式中、nは、0以上の整数を表し、mは、1、2、3の整数を表し、Rb、Rcは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他を表わす。)で表されるアルキルアルコキシシランを使用することができる。
上記のアルキルアルコキシシランの具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン CH3Si(OCH33、メチルトリエトキシシラン CH3Si(OC253、ジメチルジメトキシシラン (CH32Si(OCH32、ジメチルジエトキシシラン (CH32Si(OC252、その他等を使用することができる。
上記のアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等は、単独又は2種以上を混合しても用いることができる。
また、本発明において、上記のアルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的には、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエメトキシシラン、その他等を使用することができる。
【0036】
次に、本発明において、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、例えば、金属原子MがZrであるジルコニウムアルコキシドを使用することができる。
上記のジルコニウムアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシジルコニウム Zr(OCH34、テトラエトキシジルコニウム Zr(OC254、テトライソプロポキシジルコニウム Zr(iso−OC374、テトラnブトキシジルコニウム Zr(OC494、その他等を使用することができる。
【0037】
また、本発明において、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、例えば、金属原子MがTiであるチタニウムアルコキシドを使用することができる。
上記のチタニウムアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシチタニウム Ti(OCH34、テトラエトキシチタニウム Ti(OC254、テトライソプロポキシチタニウム Ti(iso−OC374、テトラnブトキシチタニウム Ti(OC494、その他等を使用することができる。
【0038】
更に、本発明において、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、例えば、MがAlであるアルミニウムアルコキシドを使用することができる。
上記のアルミニウムアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシアルミニウム Al(OCH34、テトラエトキシアルミニウム Al(OC254、テトライソプロポキシアルミニウム Al(iso−OC374、テトラnブトキシアルミニウム Al(OC494、その他等を使用することができる。
【0039】
なお、本発明においては、上記のようなアルコキシドは、その2種以上を混合して用いてもよいものである。
而して、本発明において、特に、アルコキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いることによって、得られるバリア性積層フィルムの靭性、耐熱性等を向上させることができ、また、延伸時のフィルムの耐レトルト性などの低下が回避されるものである。
上記のジルコニウムアルコキシドの使用量は、上記のアルコキシシラン100重量部に対して10重量部以下の範囲であり、好ましくは、約5重量部位が好ましいものである。 上記において、10重量部を越えると、形成されるバリア性被膜が、ゲル化し易くなり、また、その膜の脆性が大きくなり、また、バリア性被膜が剥離し易くなる傾向にあることから好ましくないものである。
【0040】
また、本発明において、特に、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いることによって、得られるバリア性被膜の熱伝導率が低くなり、その耐熱性が著しく向上するという利点がある。
上記において、チタニウムアルコキシドの使用量は、上記のアルコキシシラン100重量部に対して5重量部以下の範囲であり、好ましくは、約3重量部位が好ましいものである。
上記において、5重量部を越えると、形成されるバリア性被膜の脆性が大きくなり、また、バリア性被膜が剥離し易くなる傾向にあることから好ましくないものである。
【0041】
次に、本発明に係るバリア性層を構成するバリア性被膜を形成するポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体としては、ポリビニルアルコ−ル系樹脂、または、エチレン・ビニルアルコ−ル共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコ−ル系樹脂およびエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体を組み合わせて使用することができ、而して、本発明において、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体を使用することにより、バリア性被膜のガスバリア性、耐水性、耐候性、その他等の物性を著しく向上させることができるものである。
特に、本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体を組み合わせて使用することにより、上記のガスバリア性、耐水性、および耐候性等の物性に加えて、耐熱水性および熱水処理後のガスバリア性等に著しく優れたバリア性被膜を形成することができるものである。
【0042】
本発明において、ポリビニルアルコ−ル系樹脂およびエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体と組み合わせて使用する場合、それぞれの配合割合としては、重量比で、ポリビニルアルコ−ル系樹脂:エチレン・ビニルアルコ−ル共重合体=10:0.05〜10:6位であることが好ましく、更には、約10:1位の配合割合で使用することが更に好ましいものである。
【0043】
また、本発明において、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体との含有量は、上記のアルコキシドの合計量100重量部に対して5〜500重量部の範囲であり、好ましくは、約20〜200重量部位の配合割合でガスバリア性組成物を調製することが好ましいものである。
上記において、500重量部を越えると、バリア性被膜の脆性が大きくなり、その耐水性および耐候性等も低下する傾向にあることから好ましくなく、更に、5重量部を下回るとガスバリア性が低下することから好ましくないものである。
【0044】
本発明において、ポリビニルアルコ一ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体としては、まず、ポリビニルアルコ一ル系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。
上記のポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、もしくは、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、あるいは、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。
上記ポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、株式会社クラレ製のRSポリマーであるRS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)等を使用することができる。
【0045】
また、本発明において、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。
具体的には、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されるものではないが、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度は、80モル%以上、より好ましくは、90モル%以上、さらに好ましくは、95モル%以上であるものを使用することが望ましいものである
また、上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは、20〜45モル%であるものを使用することが好ましい。
上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体の具体例としては、株式会社クラレ製、エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)、日本合成化学工業株式会社製、ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)等を使用することができる。
【0046】
次に、本発明において、本発明に係るバリア性層を構成するバリア性被膜を形成するガスバリア性組成物について説明すると、かかるガスバリア性組成物としては、前述のような一般式R1nM(OR2m(但し、式中、R1 、R2 は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、上記のようなポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体を含有し、更に、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾル−ゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物を調製するものである。
【0047】
上記のガスバリア性組成物を調製するに際し、例えば、シランカップリング剤等も添加することができるものである。
而して、上記のシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができる。
本発明においては、特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適であり、それには、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、あるいは、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。
上記のようなシランカップリング剤は、1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。 本発明において、上記のようなシランカップリング剤の使用量は、上記のアルコキシシラン100重量部に対して1〜20重量部位の範囲内で使用することができる。
上記において、20重量部以上を使用すると、形成されるバリア性被膜の剛性と脆性とが大きくなり、また、バリア性被膜の絶縁性および加工性が低下する傾向にあることから好ましくないものである。
【0048】
次に、上記のガスバリア性組成物において用いられる、ゾル−ゲル法触媒、主として、重縮合触媒としては、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三アミンが用いられる。
具体的には、例えば、N、N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、その他等を使用することができる。
本発明においては、特に、N、N−ジメチルベンジルアミンが好適である。
その使用量は、アルコキシド、および、シランカップリング剤の合計量100重量部当り、0.01〜1.0重量部、好ましくは、約0.03重量部位使用することが好ましいものである。
また、上記のガスバリア性組成物において用いられる、酸としては、上記ゾル−ゲル法の触媒、主として、アルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。
上記の酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに、酢酸、酒石酸な等の有機酸、その他等を使用することができる。
上記の酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対し0.001〜0.05モル位、好ましくは、約0.01モル位を使用することが好ましいものである。
【0049】
更に、上記のガスバリア性組成物においては、上記のアルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは、0.8から2モルの割合の水をもちいることができる。
上記の水の量が、2モルを越えると、上記のアルコキシシランと金属アルコキシドとから得られるポリマーが球状粒子となり、更に、この球状粒子同士が3次元的に架橋し、密度の低い、多孔性のポリマーとなり、而して、そのような多孔性のポリマーは、ガスバリア性を改善することができなくなることから好ましくないものである。
また、上記の水の量が0.8モルを下回ると、加水分解反応が進行しにくくなる傾向にあることから好ましくないものである。
【0050】
更にまた、上記のガスバリア性組成物において用いられる、有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、その他等を用いることができる。
更に、上記のガスバリア性組成物において、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体は、上記のアルコキシドやシランカップリング剤などを含む塗工液中で溶解した状態であることが好ましく、そのため上記の有機溶媒の種類が適宜選択されるものである。
ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体を組み合わせて使用する場合には、n−ブタノールを使用することが好ましい。
本発明において、溶媒中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体は、例えば、ソアノール(商品名)として市販されているものを使用することができる。
上記の有機溶媒の使用量は、通常、上記のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、酸およびゾル−ゲル法触媒の合計量100重量部当り30〜500重量部位である。
【0051】
次に、本発明においては、本発明に係るバリア性被膜は、具体的には、例えば、以下のようにして製造される。
まず、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコ−ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合してガスバリア性組成物(塗工液)を調製する。
次に、上記のガスバリア性組成物(塗工液)中では次第に重縮合反応が進行する。
次いで、基材フィルムの一方の面に設けた無機酸化物の蒸着膜の上に、常法により、上記のガスバリア性組成物(塗工液)を通常の方法で塗布し、乾燥する。
而して、上記の乾燥により、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤およびポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体等の重縮合が進行し、塗工膜が形成される。
更に、好ましくは、上記の塗布操作を繰り返して、2層以上からなる複数の塗工膜を積層する。
最後に、上記の塗工液を塗布した基材フィルムを20℃〜180℃位で、かつ、基材フィルムの融点以下の温度、好ましくは、約50℃〜160℃位の範囲の温度で、10秒〜10分間加熱処理して、基材フィルムの一方の面に形成した無機酸化物の蒸着膜の上に、上記のガスバリア性組成物(塗工液)によるバリア性被膜を1層ないし2層以上形成して、本発明に係るバリア性層を構成することができる。
このようにして得られた本発明に係るバリア性層は、ガスバリア性に優れているものである。
【0052】
なお、本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂の代わりに、エチレン・ビニルアルコール共重合体、あるいは、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体との両者を用いて、上記と同様に、塗工、乾燥および加熱処理を行うことにより製造される本発明に係るガスバリア性積層フィルムにおいては、ボイル処理、レトルト処理等の熱水処理後のガスバリア性が更に向上するという利点を有するものである。
【0053】
更に、本発明においては、上記のようにエチレン・ビニルアルコール共重合体、あるいは、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体を組み合わせて使用しない場合、すなわち、ポリビニルアルコール系樹脂のみを使用して、本発明に係るバリア性層を構成する場合には、熱水処理後のガスバリア性を向上させるために、例えば、予め、ポリビニルアルコール系樹脂を使用したガスバリア性組成物を塗工して第1の塗工層を形成し、次いで、その塗工層の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物を塗工して第2の塗工層を形成し、それらの複合層を形成することにより、本発明に係るバリア性層のガスバリア性を向上させることを可能とするものである。
【0054】
更にまた、上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物により形成される塗工層、または、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体を組み合わせて含有するガスバリア性組成物により形成される塗工層を、複数層重層して形成することによっても、本発明に係るバリア性層のガスバリア性の向上に有効な手段となるものである。
【0055】
次に、本発明に係るバリア性被膜の製造法について、アルコキシドとして、アルコキシシランをする場合を事例としてその作用を説明すると、まず、アルコキシシランおよび金属アルコキシドは、添加された水によって、加水分解される。
その際、酸が加水分解の触媒となる。
次いで、ゾル−ゲル法触媒の働きによって、生じた水酸基からプロトンが奪取され、加水分解生成物同士が脱水重縮合する。
このとき、酸触媒により同時にシランカップリング剤も加水分解されて、アルコキシ基が水酸基となる。
また、塩基触媒の働きにより、エポキシ基の開環も起こり、水酸基が生じる。
加水分解されたシランカップリング剤と加水分解されたアルコキシドとの重縮合反応も進行する。
さらに、反応系にはポリビニルアルコール系樹脂、または、エチレン・ビニルアルコール共重合体、または、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体が存在するため、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体が有する水酸基との反応も生じる。
生成する重縮合物は、例えば、Si−O−Si、Si−O−Zr、Si−O−Ti、その他等の結合からなる無機質部分と、シランカップリング剤に起因する有機部分とを含有する複合ポリマーを構成する
上記の反応においては、例えば、下記の式(III)に示される部分構造式を有し、更に、シランカップリング剤に起因する部分を有する直鎖状のポリマーがまず生成する。
このポリマーは、OR基(エトキシ基などのアルコキシ基)が、直鎖状のポリマーから分岐した形で有する。
このOR基は、存在する酸が触媒となって加水分解されてOH基となり、ゾル−ゲル法触媒(塩基触媒)の働きにより、まず、OH基が、脱プロトン化し、次いで、重縮合が進行する。
すなわち、このOH基が、下記の式(I)に示されるポリビニルアルコール系樹脂、または、下記の式(II)に示されるエチレン・ビニルアルコール共重合体と重縮合反応し、Si−O−Si結合を有する、例えば、下記の式(IV)に示される複合ポリマー、あるいは、下記の式(V)及び(VI)に示される共重合した複合ポリマーが生じると考えられるものである。
【0056】
【化1】

【0057】
【化2】

【0058】
【化3】

【0059】
【化4】

【0060】
【化5】

【0061】
【化6】

【0062】
上記の反応は常温で進行し、ガスバリア性組成物(塗工液)は、調製中に粘度が増加する。
このガスバリア性組成物(塗工液)を、基材フィルム3の一方の面に設けたと無機酸化物の蒸着膜の上に塗布し、加熱して溶媒および重縮合反応により生成したアルコールを除去すると、重縮合反応が完結し、基材フィルムの一方の面に設けた無機酸化物の蒸着膜の上に透明な塗工層が形成される。
上記の塗工層を複数層積層する場合には、層間の塗工層中の複合ポリマー同士も縮合し、層と層との間が強固に結合する。
更に、シランカップリング剤の有機反応性基や、加水分解によって生じた水酸基が基材フィルムの一方の面に設けた無機酸化物の蒸着膜の表面の水酸基等と結合するため、基材フィルムの一方の面に設けた無機酸化物の蒸着膜の表面と、塗工層との密着性、接着性等も良好なものとなるものである。
【0063】
本発明の方法においては、添加される水の量が、アルコキシド類1モルに対して0.8〜2モル、好ましくは、1 .5 モルに調節されているため、上記の直鎖状のポリマーが形成される。
このような直鎖状ポリマーは、結晶性を有し、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造をとる。
このような結晶構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高く分子鎖剛性も高いため良好なガスバリア性を示す。
【0064】
本発明に係るバリア性層は、上記のような優れた特性を有するので、包装材料として有用であり、特に、ガスバリア性(O2、N2、H2O、CO2、その他等の透過を遮断、阻止する)に優れるため、包装用フィルムを構成するバリア性基材として、好適に使用されるものである。
特に、N2あるいは、CO2ガス等を充填した、いわゆる、ガス充填包装に用いた場合には、その優れたガスバリア性が、充填ガスの保持に極めて有効となる。
更に、本発明に係るガスバリア性積層フィルムは、熱水処理、特に、高圧熱水処理(レトルト処理)に優れ、極めて優れたガスバリア性特性を示すものである。
【0065】
本発明においては、無機酸化物蒸着膜とバリア性被膜とが、例えば、加水分解・共縮合反応による化学結合、水素結合、あるいは、配位結合などを形成し、無機酸化物の蒸着膜とバリア性被膜との密着性が向上し、その2層の相乗効果により、より良好なガスバリア性の効果を発揮し得るものである。
上記の本発明のガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロ−ルコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、デイツピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の塗布手段により、1回あるいは複数回の塗布で、乾燥膜厚が、0.01〜30μm、好ましくは、0.1〜10μm位の塗工膜を形成することができ、更に、通常の環境下、50〜300℃、好ましくは、70〜200℃の温度で、0.005〜60分間、好ましくは、0.01〜10分間、加熱・乾操することにより、縮合が行われ、本発明の第1または第2のバリア性被膜を形成することができる。
また、必要ならば、本発明のガスバリア性組成物を塗布する際に、予め、無機酸化物の蒸着膜の上に、プライマー剤等を塗布することもできるものであり、また、コロナ放電処理あるいはプラズマ処理、その他等の前処理を任意に施すことができるものである。
【実施例1】
【0066】
(1)厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルム(東レ製P60、12μ)を使用し、これを巻き取り式プラズマCVD装置の送り出しロ−ルに装着し、次いで、下記に示す条件で、上記の二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムのコロナ処理面に、炭素含有酸化珪素蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
蒸着面;コロナ処理面
導入ガス量;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム:アルゴン=1.0:5.0:1.0:0.5(単位:slm)
真空チャンバ−内の真空度;60mTorr
冷却・電極ドラム供給電力;10kW
ライン速度;50m/min
(2)他方、下記の表1に示す組成に従って、調製した組成b.のポリビニルアルコール水溶液、N、N−ジメチルベンジルアミン32重量%エタノール溶液及びイオン交換水からなる混合液に、予め調製した組成a.のエチルシリケート、エタノール、2N塩酸、イオン交換水及びシランカップリング剤(エポキシシリカSH6040)からなる加水分解液を加え、充分に攪拌し、無色透明のバリア塗工液を得た。
(表1)
a エチルシリケート 34.074(wt%)
エタノール 34.074
2N塩酸 2.535
2O 2.058
シランカップリング剤 3.407
b ポリビニルアルコール 2.372
2O 21.344
N、Nジメチルベンジルアミンエタノール溶液
(32wt%) 0.136
合計 100.000
次に、上記の(1)で形成した炭素含有酸化珪素蒸着膜に、上記で製造したガスバリア性組成物を使用し、これをグラビアロールコート法によりコーティングし、次いで、100℃で30秒間、加熱処理して、厚さ0.4g/m2(乾操状態)のバリア性被膜を形成し、粘着フィルム基材を形成した。この粘着フィルム基材の片面にアクリル系エマルジョン(東亜合成(株)製HVC−3006)をコーティングして粘着剤層を形成して粘着フィルムを得た。
【実施例2】
【0067】
(1)厚さ12μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ製OU−1、20μ)を使用し、これを巻き取り式プラズマCVD装置の送り出しロ−ルに装着し、次いで、下記に示す条件で、上記の二軸延伸ポリプロピレンフィルムのコロナ処理面に、炭素含有酸化珪素蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
蒸着面;コロナ処理面
導入ガス量;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム:アルゴン=1.0:5.0:1.0:0.5(単位:slm)
真空チャンバ−内の真空度;60mTorr
冷却・電極ドラム供給電力;10kW
ライン速度;20m/min
(2)次に、上記の(1)で形成した炭素含有酸化珪素蒸着膜に、実施例1のガスバリア性組成物を使用し、これをグラビアロールコート法によりコーティングし、次いで、100℃で30秒間、加熱処理して、厚さ0.4g/m2(乾操状態)のバリア性被膜を形成し、粘着フィルム基材を形成した。この粘着フィルム基材の片面にアクリル系エマルジョン(東亜合成(株)製HVC−3006)をコーティングして粘着剤層を形成して粘着フィルムを得た。
【0068】
[比較例1]
アルミナ蒸着PET(東レ加工フィルム、1011HGC #12)の片面にアクリル系エマルジョン(東亜合成(株)製HVC−3006)をコーティングして粘着剤層を形成して粘着フィルムを得た。
【0069】
[比較例2]
シリカ蒸着PET(三菱樹脂(株)製、TECH−H、#12)の片面にアクリル系エマルジョン(東亜合成(株)製HVC−3006)をコーティングして粘着剤層を形成して粘着フィルムを得た。
【0070】
[比較例3]
ポリビニリデンOPP(東セロ、OLD #12)の片面にアクリル系エマルジョン(東亜合成(株)製HVC−3006)をコーティングして粘着剤層を形成して粘着フィルムを得た。
【0071】
実施例1、2及び比較例1、2、3、4について、初期におけるバリア性、2%引っ張りを行った後のバリア性及び50回屈曲試験後のバリア性を調べた。測定結果を表1に示す。尚、バリア性の測定は、MOCON社製OX−TRAN2/20(酸素透過度)PERMATRAN−W3/31(水蒸気透過度)を使用して測定した。
【0072】
【表1】

【0073】
表1に示すように、比較例1、2、3においては、2%引っ張りを行った後のバリア性及び50回屈曲試験後のバリア性が初期におけるバリア性に比べて大きく劣化しているのに対し、実施例1、2においてはバリア性の低下は小さかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の粘着フィルムは、例えばはウエットティッシュの包装容器のように容器の口部の開封及び再封を繰り返し行うシール片として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の粘着フィルムの第一の実施の形態の断面図である。
【図2】本発明の粘着フィルムの第二の実施の形態の断面図である。
【図3】本発明の粘着フィルムの第三の実施の形態の断面図である。
【図4】本発明の粘着フィルムの第四の実施の形態の断面図である。
【図5】プラズマCVD装置の略図である。
【図6】巻き取り式真空蒸着装置の略図である。
【符号の説明】
【0076】
1 粘着フィルム基材
2 粘着剤層
3 基材フィルム
4 無機酸化物蒸着膜
5 バリア性被膜



【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の開口部の繰り返しの密封及び開封をするためのガスバリア性を有する粘着フィルムであって、前記粘着フィルムは粘着フィルム基材とその上に設けた粘着剤層とからなり、前記粘着フィルム基材は、プラスチックフィルムからなる基材フィルムとその少なくとも片面に形成した無機酸化物蒸着膜と、この無機酸化物蒸着膜上に形成した、一般式R1 n M(OR2m(但し、式中、R1 、R2 は炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表わし、n+mは原子価を示す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有し、更にゾルゲル法によって重縮合して得られるバリア性組成物からなるコート材を塗布してなるバリア性被膜とからなり、繰り返しの開封及び再封を行ってもそれによるバリア性の低下が小さいことを特徴とするガスバリア性を有する粘着フィルム。
【請求項2】
前記無機酸化物蒸着膜が化学気相成長法により形成したものであることを特徴とする請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項3】
前記無機酸化物蒸着膜がプラズマCVD法により形成したものであることを特徴とする請求項2に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記無機酸化物蒸着膜は炭素含有酸化珪素層であることを特徴とする請求項3に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
前記無機酸化物蒸着膜は物理気相成長法により形成したものであることを特徴とする請求項1に記載の粘着フィルム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−23927(P2008−23927A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201503(P2006−201503)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】