説明

紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下改善剤

【課題】本発明は、紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下を改善し、コラーゲンの生成低下を防ぐことでシワの形成や弾力性の低下を予防、改善する紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下改善剤、紫外線によるコラーゲンの生成低下改善剤及び抗老化皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】本発明の紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下改善剤及びコラーゲンの生成低下改善剤は、ザイモモナス菌の培養物を含むことを特徴とする。抗老化皮膚外用剤は、ザイモモナス菌の培養物とヘチマとアマチャヅルの雑種細胞抽出物を含むことを特徴とする。
【効果】紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下を抑制することで、コラーゲン生成量の減少を防ぎ、光老化皮膚にみられるシワの形成や弾力性の低下を予防、改善する。さらにザイモモナス菌の培養物とヘチマとアマチャヅルの雑種細胞抽出物を併用することで、シワの形成や弾力性の低下を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下改善剤、紫外線によるコラーゲンの生成低下改善剤及び抗老化皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
形質転換成長因子−β(TGF−β)は、生体内に広く存在する多機能サイトカインであり、線維芽細胞におけるコラーゲンなどのマトリックス成分の生成を促進することが知られている(非特許文献1)。TGF−βのマトリックス生成促進作用は、細胞表面の特異的レセプターに結合することから始まり、転写因子であるSmadを介してマトリックス成分の遺伝子発現を調節することにより発揮される(非特許文献2)。一方、紫外線を照射された皮膚では、線維芽細胞のTGF−βレセプターの産生が低下し、TGF−βレセプター/Smad Signalingが阻害されることによりTGF−βの作用が発揮されず、コラーゲン生成量が減少することが知られており(非特許文献3)、これが光老化皮膚にみられるコラーゲンの減少の一因と考えられる。
【非特許文献1】Massague J,Annu Rev Biochem,67:753−791,1998.
【非特許文献2】Piek E,EMBO J,13:2105−2124,1999.
【非特許文献3】Quan T,Am J Pathol,165:741−751,2004.
【0003】
紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下により引き起こされる真皮細胞外マトリックス成分であるコラーゲンの減少は、皮膚の光老化現象のひとつであるシワの発生や弾力性の低下につながると考えられる。従来、このような皮膚症状を抑制する手段として、コラーゲンを配合した化粧料を塗布することが主流であったが、一時的に角層表面に水分を補うものであることから、十分な効果を有するものではなかった。また、TGF−βの産生を増強しコラーゲン生成を促進する組成物が報告されているが(特許文献1)、TGF−βレセプターが減少した状態では充分な効果は期待できない。そこで紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下を改善する安全性の高い有効成分が望まれている。
【特許文献1】特開2003−171290
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下とそれにより引き起こされるコラーゲンの生成低下に対する優れた改善剤及び光老化の予防、改善に有効な抗老化皮膚外用剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、ザイモモナス菌の培養物に紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下を改善し、コラーゲン生成量の減少を防ぐ作用を見出した。また、セリンプロテアーゼ阻害効果によりコラーゲンの過剰な分解を抑制するヘチマとアマチャヅルの雑種細胞抽出物(特許文献2)とザイモモナス菌の培養物を併用することにより、特に顕著な光老化皮膚にみられるコラーゲンの減少に対する改善効果を見出し、本発明を完成するに至った。
【特許文献2】特許第3261086号
【0006】
本発明で用いられるザイモモナス菌(Zymomonas mobilis)は、グラム陰性細菌に属するアルコール発酵性の細菌であり、メキシコの竜舌蘭、アガーベの汁液から作るプルケという酒の中や、ヨーロッパのspoiled beer、fermented apple juice(cider)やpear juice(perry)の中に、その他、熱帯地方のpalm wineやブラジルではfermented sugarcane juiceからも分離されている。ripening honeyの中にもいる。ザイモモナス菌は野生のものも入手でき、または、独立行政法人・製品評価技術基盤機構・生物遺伝資源部門(NBRC)や米国アメリカン タイプ カルチャー コレクション(ATCC)からも分譲株を入手できる。
【0007】
ザイモモナス菌の培養物は、特許第3103747号の方法により得られる液体培養後の菌体を含む培養液、それから菌体を除いた培養抽出液、培養液及び培養抽出液の精製物、その濃縮もしくは希釈物、またはそれらの乾燥物を意味する。
【0008】
本発明で用いられるヘチマとアマチャヅルの雑種細胞抽出物は、特開平01−44297の方法により作出した雑種細胞のカルスを用いて調製した。
【0009】
ヘチマとアマチャヅルの雑種細胞抽出物は、上記の雑種細胞を抽出溶媒と共に浸漬又は加熱した後、濾過し、必要ならば濃縮して得られる。抽出溶媒としては、例えば、水、低級1価アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等)、炭化水素(ヘキサン、ペンタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)、アセトニトリル等があげられる。これらの溶媒は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、水あるいは水溶性溶媒(水と任意の割合で混合可能な溶媒。例えば、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等)のうち1種又は2種以上の溶媒を用いるのがよい。抽出物はそのまま用いてもよいし、溶媒を一部、又は全部留去して用いてもよい。
【0010】
本発明の紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下改善剤、紫外線によるコラーゲンの生成低下改善剤及び抗老化皮膚外用剤には、上記ザイモモナス菌の培養物及びヘチマとアマチャヅルの雑種細胞抽出物をそのまま使用しても良く、効果を損なわない範囲内で、通常の外用剤に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤等の成分を配合することもできる。
【0011】
本発明に用いる紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下改善剤、紫外線によるコラーゲンの生成低下改善剤及び抗老化皮膚外用剤は、化粧品、医薬部外品又は医薬品のいずれにも用いることができ、その剤型としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅等があげられる。
【0012】
本発明に用いるザイモモナス菌の培養物及びヘチマとアマチャヅルの雑種細胞抽出物の配合量は特に限定されないが、乾燥物として0.0001〜10重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.001〜5重量%である。0.0001重量%以下では効果が低く、また10重量%を超えても効果に大きな増強はみられにくく、効率的でない。また、添加の方法については、予め加えておいても製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すればよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下を改善することで、コラーゲン生成の低下を防ぎ、光老化皮膚にみられるシワの形成や弾力性の低下を予防、改善するザイモモナス菌の培養物を含有することを特徴とする紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下改善剤、そのTGF−βレセプターの産生低下改善剤を含有することを特徴とする紫外線によるコラーゲンの生成低下改善剤及びコラーゲンの生成低下改善剤あるいはコラーゲンの生成低下改善剤とヘチマとアマチャヅルの雑種細胞抽出物を含有することを特徴とする抗老化皮膚外用剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる培養物及び抽出物の製造例、処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量は重量%を示す。
【実施例1】
【0015】
製造例1 ザイモモナス菌の培養物1
ザイモモナス菌(NBRC 13756株)を下記液体培地で3日間培養し予め前培養を行い、さらに前培養で得られた培養液を液体培地に100分の1量接種して、温度30℃、pH6.0、4日間、静置培養した。その後、培養液から遠心分離(×5000g)によりザイモモナス菌の菌体を除去し、その上清を濃縮し、凍結乾燥してザイモモナス菌の培養物を11g得た。
【0016】
液体培地
ブドウ糖 50g
リン酸二水素カリウム 2g
硫酸マグネシウム 0.5g
酵母エキス 1g
大豆ペプチド 10g
蒸留水 1L
NaOH又はHClでpH6.0に調製後、高圧蒸気滅菌(120℃、20分)
【0017】
製造例2 ザイモモナス菌の培養物2
ザイモモナス菌(ATCC 31821株)を下記液体培地で3日間培養し予め前培養を行い、さらに前培養で得られた培養液を液体培地に100分の1量接種して、温度30℃、pH6.0、4日間、静置培養した。その後、培養液から遠心分離(×5000g)によりザイモモナス菌の菌体を除去し、その上清を濃縮し、凍結乾燥してザイモモナス菌の培養物を12g得た。
【0018】
液体培地
ショ等 50g
リン酸二水素カリウム 2g
酵母エキス 10g
ポリペプトン 10g
蒸留水 1L
NaOH又はHClでpH6.0に調製後、高圧蒸気滅菌(120℃、20分)
【0019】
製造例3 ザイモモナス菌の培養物3
ザイモモナス菌(NBRC 13757株)を下記液体培地で3日間培養し予め前培養を行い、さらに前培養で得られた培養液を液体培地に100分の1量接種して、温度30℃、pH6.0、4日間、静置培養した。その後、培養液から遠心分離(×5000g)によりザイモモナス菌の菌体を除去し、その上清を濃縮し、凍結乾燥してザイモモナス菌の培養物を13g得た。
【0020】
液体培地
果糖 50g
リン酸二水素カリウム 2g
硫酸マグネシウム 0.5g
硫酸アンモニウム 5g
麦芽エキス 10g
ポテトエキス 10g
蒸留水 1L
NaOH又はHClでpH6.0に調製後、高圧蒸気滅菌(120℃、20分)
【0021】
製造例4 ヘチマとアマチャヅルの雑種細胞熱水抽出物
ヘチマとアマチャヅルの雑種細胞(F3)100gに300mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してヘチマとアマチャヅルの雑種細胞の熱水抽出物を6g得た。
【実施例2】
【0022】
次に、本発明に係る実施例の処方を示す。
【0023】
処方例1 クリーム1
処方 配合量(重量%)
1.ザイモモナス菌の培養物1(製造例1) 0.5
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.1,3−ブチレングリコール 8.5
12.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.精製水 67.65
[製造方法]成分2〜9を加熱して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0024】
処方例2 クリーム2
処方例1において、ザイモモナス菌の培養物1をヘチマとアマチャヅルの雑種細胞熱水抽出物に置き換えたものをクリーム2とした。
【0025】
処方例3 クリーム3
処方 配合量(重量%)
1.ザイモモナス菌の培養物1(製造例1) 0.25
2.ヘチマとアマチャヅルの
雑種細胞熱水抽出物(製造例4) 0.25
3.スクワラン 5.5
4.オリーブ油 3.0
5.ステアリン酸 2.0
6.ミツロウ 2.0
7.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
8.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
9.ベヘニルアルコール 1.5
10.モノステアリン酸グリセリン 2.5
11.香料 0.1
12.1,3−ブチレングリコール 8.5
13.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
14.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
15.精製水 67.65
[製造方法]成分3〜10を加熱して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1、2及び12〜15を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分11を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0026】
比較例1 従来のクリーム
処方例1において、ザイモモナス菌の培養物1を精製水に置き換えたものを従来のクリームとした。
【0027】
処方例4 化粧水
処方 配合量(重量%)
1.ザイモモナス菌の培養物2(製造例2) 0.1
2.ヘチマとアマチャヅルの
雑種細胞熱水抽出物(製造例4) 0.1
3.1,3−ブチレングリコール 8.0
4.グリセリン 2.0
5.キサンタンガム 0.02
6.クエン酸 0.01
7.クエン酸ナトリウム 0.1
8.エタノール 5.0
9.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
10.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
11.香料 0.1
12.精製水 84.37
[製造方法]成分1〜7及び12と、成分8〜11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0028】
処方例5 乳液
処方 配合量(重量%)
1.ザイモモナス菌の培養物3(製造例3) 0.05
2.ヘチマとアマチャヅルの
雑種細胞熱水抽出物(製造例4) 0.05
3.スクワラン 5.0
4.オリーブ油 5.0
5.ホホバ油 5.0
6.セタノール 1.5
7.モノステアリン酸グリセリン 2.0
8.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
9.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート 2.0
10.香料 0.1
11.プロピレングリコール 1.0
12.グリセリン 2.0
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.精製水 73.1
[製造方法]成分3〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1、2及び11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0029】
処方例6 軟膏
処方 配合量(重量%)
1.ザイモモナス菌の培養物1(製造例1) 1.0
2.ヘチマとアマチャヅルの
雑種細胞熱水抽出物(製造例4) 1.0
3.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
4.モノステアリン酸グリセリン 10.0
5.流動パラフィン 5.0
6.セタノール 6.0
7.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
8.プロピレングリコール 10.0
9.精製水 64.9
[製造方法]成分3〜6を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1、2及び7〜9を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0030】
処方例7 ファンデーション
処方 配合量(重量%)
1.ザイモモナス菌の培養物2(製造例2) 0.5
2.ヘチマとアマチャヅルの
雑種細胞熱水抽出物(製造例4) 0.5
3.ステアリン酸 2.4
4.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート 1.0
(20E.O.)
5.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
6.セタノール 1.0
7.液状ラノリン 2.0
8.流動パラフィン 3.0
9.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
10.パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
11.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
12.ベントナイト 0.5
13.プロピレングリコール 4.0
14.トリエタノールアミン 1.1
15.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
16.二酸化チタン 8.0
17.タルク 4.0
18.ベンガラ 1.0
19.黄酸化鉄 2.0
20.香料 0.1
21.精製水 60.0
[製造方法]成分3〜10を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分21に成分11をよく膨潤させ、続いて、成分1、2及び12〜15を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分16〜19を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この水相に油相をかき混ぜながら加え、冷却し、45℃で成分20を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0031】
処方例8 浴用剤
処方 配合量(重量%)
1.ザイモモナス菌の培養物3(製造例3) 5.0
2.ヘチマとアマチャヅルの
雑種細胞熱水抽出物(製造例4) 5.0
3.炭酸水素ナトリウム 50.0
4.黄色202号(1) 0.05
5.香料 0.25
6.無水硫酸ナトリウム 39.7
[製造方法]成分1〜6を均一に混合し製品とする。
【実施例3】
【0032】
次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例をあげる。
【0033】
実験例1 紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下改善試験
紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下に対する改善効果をTGF−βレセプターII mRNA発現量を指標として評価した。
【0034】
TGF−βレセプターII mRNA発現量の測定法
正常ヒト皮膚線維芽細胞を10% FCSを含むDMEM培地にて37℃、5%CO条件下で培養した。コンフルエントな状態になったところで東芝FL20S・Eランプを用い30mJ/cmのUVBを照射し、その直後に0.01mg/ml濃度の試料を添加したDMEM培地にてさらに8時間培養した後、総RNAの抽出を行った。総RNAの抽出にはISOGEN(ニッポンジーン)を用いた。線維芽細胞から抽出した総RNAを基にリアルタイムRT−PCR法によりTGF−βレセプターII mRNA発現量の測定を行った。リアルタイムRT−PCR法にはTaKaRa SYBR ExScript RT−PCR Kitを用い、TGF−βレセプターII用のprimerとしては5’CAACCACCAGGGCATCCA3’及び5’TCGTGGTCCCAGGACTCA3’を用いた。また、内部標準としてはGAPDHを用いた。その他の操作は定められた方法にしたがい、TGF−βレセプターIIのmRNA発現量を内部標準であるGAPDH mRNA発現量に対する割合として求めた。UVBの照射によりTGF−βレセプターII mRNA発現量の低下がみられるが、その値とUVB照射後に試料を添加した際のTGF−βレセプターII mRNA発現量の値からTGF−βレセプターの産生低下改善率を算出した。
【0035】
これらの試験結果を表1に示した。その結果、ザイモモナス菌の培養物には優れた紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下改善作用が認められた。
【0036】
【表1】

【0037】
実験例2 紫外線によるコラーゲン生成低下改善試験
紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下にともなうコラーゲン生成の低下に対する改善効果をコラーゲン(I) mRNA発現量を指標として評価した。
【0038】
コラーゲン(I) mRNA発現量の測定法
正常ヒト皮膚線維芽細胞を10% FCSを含むDMEM培地にて37℃、5%CO条件下で培養した。コンフルエントな状態になったところで東芝FL20S・Eランプを用い30mJ/cmのUVBを照射し、その直後に0.01mg/ml濃度の試料を添加したDMEM培地にてさらに8時間培養した。その後、10ng/ml濃度のTGF−βを添加し24時間培養した後、総RNAの抽出を行った。総RNAの抽出にはISOGEN(ニッポンジーン)を用いた。線維芽細胞から抽出した総RNAを基にリアルタイムRT−PCR法によりコラーゲン(I) mRNA発現量の測定を行った。リアルタイムRT−PCR法にはTaKaRa SYBR ExScript RT−PCR Kitを用い、コラーゲン(I)用のprimerとしては5’GCTACCCAACTTGCCTTCATG3’及び5’TTCTTGCAGTGGTAGGTGATGTTC3’を用いた。また、内部標準としてはGAPDHを用いた。その他の操作は定められた方法にしたがい、コラーゲン(I)のmRNA発現量を内部標準であるGAPDH mRNA発現量に対する割合として求めた。UVBの照射によりコラーゲン(I) mRNA発現量の低下がみられるが、その値とUVB照射後に試料を添加した際のコラーゲン(I) mRNA発現量の値からコラーゲン生成低下改善率を算出した。
【0039】
これらの試験結果を表2に示した。その結果、ザイモモナス菌の培養物には優れた紫外線によるコラーゲン生成の低下に対する改善作用が認められた。したがって、ザイモモナス菌の培養物は、紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下を改善することでコラーゲン生成量の減少を防ぎ、光老化皮膚にみられるシワの形成や弾力性の低下を予防、改善することが示唆された。
【0040】
【表2】

【0041】
実験例3 使用試験
処方例1〜3のクリーム、比較例1の従来のクリームを用いて、シワや肌の弾力性の低下に悩む女性30人(40〜50才)を対象に2ヶ月間の使用試験を行った。使用前後に肌の弾力性をキュートメーター(Courage+Khazaka社)を用いて測定した。使用前の弾力性の値を100%とした時の使用後の値を求め、弾力性改善効果を評価した。また、使用後、肌のハリや弾力の改善効果についてのアンケート調査を行った。アンケートの評価基準は、有効なものを「優」、やや有効なものを「良」、わずかに有効なものを「可」、無効なものを「不可」として評価した。
【0042】
弾力性改善効果の結果を表3に示した。処方例1のザイモモナス菌の培養物を配合したクリーム及び処方例2のヘチマとアマチャヅルの雑種細胞抽出物を配合したクリームは優れた肌の弾力性改善効果を示した。また、処方例3のザイモモナス菌の培養物及びヘチマとアマチャヅルの雑種細胞抽出物を配合したクリームは、さらに優れた肌の弾力性改善効果を示した。
【0043】
【表3】

【0044】
アンケート調査の結果を表4に示した。処方例1および2のクリームは優れた肌のハリ及び弾力性の改善効果を示した。また、処方例3のクリームは、さらに優れた肌のハリ及び弾力性の改善効果を示した。なお、試験期間中皮膚トラブルは一人もなく、安全性においても問題なかった。
【0045】
【表4】

【0046】
処方例4〜8の化粧水、乳液、軟膏、ファンデーション、浴用剤の使用試験を行ったところ、いずれも安全で優れた肌のハリ及び弾力性の改善効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の活用例として、化粧品、医薬部外品又は医薬品のいずれにも用いることができる。その剤型としては、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅等が挙げられ、紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下を抑制することで、コラーゲン生成量の減少を防ぎ、光老化皮膚にみられるシワの形成や弾力性の低下を予防、改善する効果が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ザイモモナス菌の培養物を含有することを特徴とする紫外線によるTGF−βレセプターの産生低下改善剤。
【請求項2】
請求項1記載のTGF−βレセプターの産生低下改善剤を含有することを特徴とする紫外線によるコラーゲンの生成低下改善剤。
【請求項3】
請求項2記載の紫外線によるコラーゲンの生成低下改善剤を含有することを特徴とする抗老化皮膚外用剤。
【請求項4】
請求項2記載の紫外線によるコラーゲンの生成低下改善剤及びヘチマとアマチャヅルの雑種細胞抽出物を含有することを特徴とする抗老化皮膚外用剤。

【公開番号】特開2007−161659(P2007−161659A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361312(P2005−361312)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】