説明

紫外線硬化樹脂層の硬化方法及び紫外線照射装置

【課題】シート上に塗布された紫外線硬化樹脂層を効率良く硬化し、平面性に優れた紫外線硬化樹脂層付きシートを得る紫外線硬化樹脂層の硬化方法及び紫外線照射装置を提供する。
【解決手段】紫外線硬化樹脂層が塗布されたシートFをバックロール13に巻き回し、該巻き回した部分にバックロール表面近傍に設置された窒素ガスパージボックス1より窒素ガスパージしながら紫外線を照射し硬化する紫外線硬化樹脂層の硬化方法において、該窒素ガスパージボックス1のサイドプレートの縁の形状がバックロール13の中心に対して円弧状と非円弧状とで形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化樹脂層の硬化方法及び紫外線照射装置に関し、特にシート上に塗布された紫外線硬化樹脂層を効率良く硬化し、平面性に優れた紫外線硬化樹脂層付きシートを得る紫外線硬化樹脂層の硬化方法及び紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートに紫外線硬化樹脂(以降、UV樹脂ともいう)を形成するに際しては、たとえばグラビアロールによってシートにUV樹脂を塗工した後にUV樹脂に紫外線を照射し、UV樹脂に架橋反応を生じさせて硬化するようにしている。ここで、紫外線を照射する際に雰囲気の酸素濃度が高いと、架橋反応が阻害されてUV樹脂の表面硬度と密着強度が不足することが知られている。
【0003】
そこで、従来においては、紫外線を照射するUV照射装置からUV樹脂に窒素ガスを吹き付けることで酸素を含む空気をパージすることが行われている。また、UV照射装置から照射される紫外線によりオゾンが発生するため、UVランプの周囲の雰囲気を吸引してオゾン及びUVランプで加熱された空気を不活性ガスを導入して排出するようにしている(例えば特許文献1)。
【0004】
窒素ガスパージを効率的に行うには、UV樹脂が塗布されたシートをバックロールに巻き回し、該巻き回した部分にバックロール表面近傍に設置された窒素ガスパージボックスより窒素ガスパージしながら紫外線を照射するUV照射装置を設置することが好ましい。
【0005】
窒素ガスパージを効率的に行う為には、バックロールと窒素ガスパージボックスの距離を出来るだけ近づけたり、サイドプレートを設置し窒素ガスの望ましくない流出を防止したりすることが好ましいが、紫外線照射によるパージボックスの熱膨張の為、パージボックスやサイドプレートとバックロールとのクリアランスを狭めることが難しかった。クリアランスが狭められない為、窒素ガスを大量に供給する必要があったり、熱膨張したパージボックスがバックロールに接触し、バックロールを傷つけたり、場合によってはシートが切れてしまうことがあった。
【0006】
また、パージボックスの縁をテフロン(登録商標)やポリエチレン、ポリプロピレンのような比較的柔らかな樹脂材とすることも出来るが、接触するとシートに傷が発生したり、擦った場合削れたシート材が付着し、そのまま巻き取った時に押され故障や変形故障、異物故障になりやすい。
【0007】
特許文献2には、パージボックスやサイドプレートとロールとのクリアランスを調整するギャップ調整板を設ける旨の記載があるが、ギャップ調整板を可能な限り狭くしてクリアランスを調整してもパージボックスの熱膨張によるクリアランスの伸張を制御出来ず、上記擦れ故障が発生するという問題がある。
【特許文献1】特開平10−156177号公報
【特許文献2】特開2005−34734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、シート上に塗布された紫外線硬化樹脂層を効率良く硬化し、平面性に優れた紫外線硬化樹脂層付きシートを得る紫外線硬化樹脂層の硬化方法及び紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
【0010】
1.紫外線硬化樹脂層が塗布されたシートをバックロールに巻き回し、該巻き回した部分にバックロール表面近傍に設置された窒素ガスパージボックスより窒素ガスパージしながら紫外線を照射し硬化する紫外線硬化樹脂層の硬化方法において、
該窒素ガスパージボックスのサイドプレートの縁の形状がバックロールの中心に対して円弧状と非円弧状とで形成されていることを特徴とする紫外線硬化樹脂層の硬化方法。
【0011】
2.前記窒素ガスパージボックスが分割されており、少なくとも紫外線照射部と窒素出口部の2室よりなり、該窒素出口部の縁の形状がバックロールの中心に対して非円弧状であることを特徴とする前記1に記載の紫外線硬化樹脂層の硬化方法。
【0012】
3.前記窒素ガスパージボックスが少なくとも紫外線照射部と窒素出口部の2室よりなり、紫外線照射部の窒素ガス圧力が窒素出口部より陽圧であることを特徴とする前記1または2に記載の紫外線硬化樹脂層の硬化方法。
【0013】
4.前記窒素ガスパージボックスを冷却しながら紫外線を照射し硬化することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の紫外線硬化樹脂層の硬化方法。
【0014】
5.紫外線硬化樹脂層が塗布されたシートをバックロールに巻き回し、該巻き回した部分にバックロール表面近傍に設置された窒素ガスパージボックスより窒素ガスパージしながら紫外線を照射する紫外線照射装置において、
該窒素ガスパージボックスの入り口または出口に該バックロールの表面に接触しているローラーにより支持され、該窒素ガスパージボックスと摺動可能で実質的に該バックロールと密着して設置されているギャップ設定プレートを設けたことを特徴とする紫外線照射装置。
【0015】
6.前記紫外線照射装置に冷却手段が設けられていることを特徴とする前記5に記載の紫外線照射装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、シート上に塗布された紫外線硬化樹脂層を効率良く硬化し、平面性に優れた紫外線硬化樹脂層付きシートを得る紫外線硬化樹脂層の硬化方法及び紫外線照射装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
本発明者は鋭意検討の結果、上記課題は紫外線硬化樹脂層が塗布されたシートをバックロールに巻き回し、該巻き回した部分にバックロール表面近傍に設置された窒素ガスパージボックスより窒素ガスパージしながら紫外線を照射し硬化する紫外線硬化樹脂層の硬化方法において、該窒素ガスパージボックスのサイドプレートの縁の形状がバックロールの中心に対して円弧状と非円弧状とで形成されていることを特徴とする紫外線硬化樹脂層の硬化方法により解決出来ることを見出したものである。
【0019】
本発明のサイドプレートとは窒素ガスパージボックスの側面を形成しているプレートを言い、従ってその形状は窒素ガスパージボックスにおける窒素ガス吹き出し口全体の形状を意味する。
【0020】
サイドプレートがバックロールの中心に対して円弧状に形成された従来の窒素ガスパージボックスの場合は、窒素ガスの流れる方向がバックロールに巻き回わされたシートの入り口側及び出口側に等分される為、搬送されるシートによる風圧によって、該窒素ガスの流れが乱され均一な窒素ガスパージに支障をきたすという問題があった。それに対し本発明のサイドプレートの縁の形状がバックロールの中心に対して円弧状と非円弧状とで形成された窒素ガスパージボックスの場合は、非円弧状に形成されたサイドプレート側に窒素ガスが流れ易くなる為、シートの出口側に非円弧状に形成されたサイドプレートを設置すれば、窒素ガスパージボックス内の窒素ガスの流れと搬送されるシートによる風圧の方向とが一致する為、ガスの流れの乱れが少なく紫外線硬化樹脂層の均一な硬化を得やすいことが分かった。
【0021】
更に、紫外線硬化樹脂層が塗布されたシートをバックロールに巻き回し、該巻き回した部分にバックロール表面近傍に設置された窒素ガスパージボックスより窒素ガスパージしながら紫外線を照射する紫外線照射装置において、該窒素ガスパージボックスの入り口または出口に該バックロールの表面に接触しているローラーにより支持され、該窒素ガスパージボックスと摺動可能で実質的に該バックロールと密着して設置されているギャップ設定プレートを設けることにより、上記窒素ガスパージボックスとバックロールのクリアランスを安定に確保出来、前記擦り傷故障などが発生することなく、かつ紫外線硬化樹脂層の硬化を効率良く行えることを見出したものである。
【0022】
以上のように、本発明によれば、窒素ガスを効率良くUV樹脂に供給することが出来る為、窒素ガスの使用量を増やすことなくUV樹脂の表面付近の空気を確実にパージすることが出来、UV樹脂の架橋反応を支障なく行うことが出来、平面性に優れる紫外線硬化樹脂層付きシートを安定に効率良く得ることが出来る。
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0024】
最初に図をもって本発明の紫外線硬化樹脂層の硬化方法及び紫外線照射装置を説明する。
【0025】
図1は本発明に係る紫外線硬化樹脂の硬化方法の模式図である。
【0026】
本発明の紫外線硬化樹脂層の硬化方法は、窒素ガスパージボックスのサイドプレートの縁の形状がバックロールの中心に対して円弧状と非円弧状とで形成されている窒素ガスパージボックスを用いて紫外線硬化樹脂層に窒素ガスパージを行いながら紫外線を照射し硬化することを特徴とする。
【0027】
窒素ガスパージボックスのサイドプレートの縁の形状がバックロールの中心に対して円弧状で形成されているとは、サイドプレートの任意の2点、bをとった時にバックロールの中心sに対する距離as、bsがas=bsであることをいう。同様にして非円弧状とは任意の2点a,bをとった時にバックロールの中心sに対する距離as、bsがas≠bsであることをいう。
【0028】
本発明では、前記窒素ガスパージボックスが分割されており、少なくとも紫外線照射部と窒素出口部の2室よりなり、該窒素出口部の縁の形状がバックロールの中心に対して非円弧状であることが好ましい。
【0029】
また、前記窒素ガスパージボックスが少なくとも紫外線照射部と窒素出口部の2室よりなり、紫外線照射部の窒素ガス圧力が窒素出口部より陽圧に調整されていることは窒素ガスの流れを一定方向に保つ上で好ましい。圧力差は5〜50Pa程度であることが好ましい。
【0030】
更に、前記窒素ガスパージボックスを冷却しながら紫外線を照射し硬化することは、窒素パージボックスの熱膨張を防ぎ、バックロール間とのクリアランスを一定に保つ効果がある為より好ましい方法である。
【0031】
図1に本発明で用いられる窒素ガスパージボックスのサイドプレートの縁の形状がバックロールの中心に対して円弧状と非円弧状とで形成されている例を示すが、本発明はこれに限られるものではない。
【0032】
図1(a)において符号1はUVランプハウス2を備えた窒素ガスパージボックスである。UVランプハウス2は、6面が閉塞された箱状体であり、その下面には透明な石英ガラスまたは熱線カットガラス10が取り付けられている。UVランプハウス2及び窒素ガスパージボックス1の材質はアルミ系金属板、SUS、銅等であることが好ましい。またランプハウス内に、遮光板(反射板を兼ねる)を設けても良い。
【0033】
UVランプハウス2の上面には、給気ダクト(空気供給手段)11が接続されている。給気ダクト11は、図示しない送風ファンに接続され、UVランプハウス2の内部に空気を供給するようになっている。給気ダクトより供給される空気は図示しない冷却装置を用い冷却されていてもよい。
【0034】
図においてUVランプハウス2はUVランプ3及び反射板4からなる。UVランプハウス2の内部には、下面が開放されたダクト5が配置され、UVランプ3は、ダクト5の下面の近傍に配置されている。ダクト5の上面には、連結ダクト6が接続されている。連結ダクト6は、図示しない吸引ファンに接続され、UVランプ3の周囲の空気を吸引して排気するようになっている。
【0035】
窒素ガスパージボックス1には、窒素ガス供給部12が接続されている。窒素ガスパージボックス1は、下面が開放された箱状体であり、その下面が窒素ガスを吹き出す開口部20である。また、図1(a)では窒素ガスパージボックス1の端面のサイドプレート部は、円弧状と非円弧状に形成されている。
【0036】
窒素ガスパージボックス1の両側面には、窒素ガス供給部12内に連通する窒素ガス供給管22が配置されている。窒素ガス供給管22の他端部は、図示しない窒素ガスボンベに接続され、窒素ガスパージボックス1内に窒素ガスを供給するようになっている。窒素ガス回収部21は、図示しないポンプに接続され、内部の気体が図示しない回収手段に排気回収されるようになっている。窒素ガスパージボックス1のサイドプレートは先端部分にテフロン(登録商標)等を付加することは擦り傷の発生を軽減する上で好ましい。
【0037】
図において符号13はバックロールである。バックロール13は、UV樹脂が塗工されたシートFを外周面に接触させて搬送するものである。バックロール13の外周面は、窒素ガス供給部12のサイドプレートの縁部に近接して配置されている。バックロールの材質は表面にハードクロムメッキを施し、表面粗さRyが0.1〜1μmであることが好ましく、より好ましくは、0.3〜0.8μmである。ロール径は直径300〜2000mmであり、設置するランプ数により異なる。好ましい範囲は直径300〜1000mmである。ロール幅はベース幅より広いことが好ましく、バックロール内に冷却水、保温水等を導入し、ロール表面温度を一定にできることが好ましい。例えば、トクデン製ジャケットロールを使用すると、幅方向の温度分布が少ない。
【0038】
図1(a)〜(d)は本発明に係る例を示しており、(a)は出口側でロール接線方向に広げた形状、(b)は出口側途中で切り欠きを設けた形状、(c)は出口側で曲線状にロールとの距離を広げたもの、(d)は出口側を階段状に開口を広げたものの例である。
【0039】
図2は、本発明に係るギャップ設定プレートを示す模式図である。
【0040】
本発明では、窒素ガスパージボックス1の側面に、図2で示す上記窒素ガスパージボックスの入り口または出口にバックロールに表面に接触しているローラーにより支持され、該窒素ガスパージボックスと摺動可能で実質的に該バックロールと密着して設置されているギャップ設定プレート30を設置することが、窒素ガスパージボックス1とバックロール間のクリアランスをできるだけ近接し、かつ一定に保つ上で好ましい。
【0041】
図2において、前記窒素ガスパージボックス1の入り口または出口にバックロール13の両端部表面に接触しているローラー31により支持され、該窒素ガスパージボックスのプレート部33と摺動部32を有し、実質的に該バックロール13と密着して設置されているギャップ設定プレート30を設ける。この機構によりローラ31で常に窒素ガスパージボックス1とバックロール1との距離を保持する為、プレート部33と摺動部32により設定されたクリアランスを一定の間隔に保つことが出来る。
【0042】
ギャップ設定プレート30はネジ34によって取り付けられている。ネジ34はギャップ調整板23に形成された上下方向に長い長孔を挿通しており、プレート部33は、その下縁部が可能な限りバックロール13に近接するように配置されている。クリアランスは0.5〜5mmに設定することが好ましく、1〜3mmに設定することがより好ましい。
【0043】
ギャップ設定プレート30の材質は、窒素ガスパージボックスと同じ材質か、または摺動部は、擦れても削れにくいものが良くテフロン(登録商標)等が好ましい。
【0044】
図3は、本発明に好ましい窒素ガスパージボックスの冷却手段を示す模式図である。
【0045】
図3(e)、(f)、(g)は一例であり、これに限定されるものではないが、窒素ガス供給部12に冷却水または冷風を導入して窒素ガスパージボックスを冷却し、熱膨張を防ぐことが出来る。冷却水温度は10〜80℃であることが好ましく、20〜60℃がより好ましい。窒素ガス温度は、同様に10〜80℃であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましい。
【0046】
次に、上記構成のUV照射装置の動作について説明する。
【0047】
UV照射の作業においては、UVランプ2から紫外線が発生され、紫外線は石英ガラスまたは熱線カットガラス10を透過してシートに塗工されたUV樹脂に照射される。UV樹脂は、紫外線が照射されることで架橋反応を起こして硬化する。その際、発生した紫外線によりオゾンが発生するとともに、UVランプ2の周囲の空気が加熱されるが、それらはダクト5に吸引され、連結ダクト6を経て外部に排出される。一方、窒素ガスパージボックス1内には、給気ダクト11から空気が供給されており、供給された空気は、ダクト5の入り口に流れてゆく。そして、オゾン等とともにダクト5を経て排出される。
【0048】
また、窒素ガス供給部12には、窒素ガス供給管22から窒素ガスが供給され、この窒素ガスは、バックロール13側へ流出し、シートに塗工されたUV樹脂の表面近傍の空気をパージしつつサイドプレートの隙間から流出する。流出した窒素ガスは、窒素ガス回収部21に吸引され、排出されて回収手段に回収される。
【0049】
なお、本発明では窒素ガスを用いるが、窒素ガス中に他のアルゴン等の不活性ガスを混合して用いてもよい。その場合の窒素ガスの比率は70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。また、UV樹脂が塗工されるシートの基材は、例えばポリエステル、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート等の各種樹脂フィルムやシート状基材が適宜用いられる。
【0050】
上記構成のUV照射装置にあっては、UVランプハウス2に、給気ダクト11から空気を供給し、連結ダクト6より内部の空気を排気しており、給排気量を調整し、UVランプハウス2と窒素パージボックス1との圧力をほぼ等しくする事により、窒素パージボックス1への空気の流出を抑制する。また、供給された空気は、UV照射ランプ2の周囲及びダクト5を経て外部に排気されるので、オゾン及び加熱された空気の排気に支障を来すこともない。
【0051】
また、窒素ガス供給部12の開口部はサイドプレートやギャップ設定プレート30によって囲われているため、窒素ガスの放散が少なく、空気のパージを確実に行うことが出来る。また、シートの移送に伴い、空気がUV樹脂の表面に随伴して窒素ガス供給部12の開口部20付近に流入するが、そのような空気をギャップ設定プレート30によってある程度遮断することも出来る。
【0052】
以上のように、上記実施形態のUV照射装置によれば、窒素ガス供給部12からの不活性ガスの漏洩ないし放散を抑制することが出来るので、窒素ガスを効率良くUV樹脂に供給することが出来る。従って、窒素ガスの使用量を増やすことなくUV樹脂の表面付近の空気を確実にパージすることが出来、UV樹脂の架橋反応を支障なく行うことが出来る。
【0053】
特に、上記実施形態では、窒素ガスを吸引回収する窒素ガス回収部21を窒素ガス供給部12の開口部に沿って設けているので、回収した窒素ガスを再利用することが出来る。また、窒素ガス回収部21の吸引容量を調整することにより、窒素ガスパージボックス1内の圧力を制御することが出来、UV樹脂の塗工ラインの生産速度に対応して窒素ガスパージボックス1内の圧力を制御することにより、必要量の不活性ガスを供給することが出来る。特に、窒素ガスパージボックス1が少なくとも紫外線照射部と窒素出口部の2室よりなり、紫外線照射部の窒素ガス圧力が窒素出口部より陽圧であるように設定することが好ましい。
【0054】
窒素ガスのパージ量は、硬化に必要とされる酸素濃度となるよう調節される。
【0055】
〔紫外線硬化樹脂層〕
本発明は、紫外線硬化樹脂層が塗布されたシートをバックロールに巻き回し、該巻き回した部分にバックロール表面近傍に設置された窒素ガスパージボックスより窒素ガスパージしながら紫外線を照射し硬化する方法において、該窒素ガスパージボックスのサイドプレートの縁の形状がバックロールの中心に対して円弧状と非円弧状とで形成されていることを特徴とするものである。
【0056】
紫外線硬化樹脂層とは紫外線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。紫外線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線を照射することによって硬化させて紫外線硬化樹脂層が形成される
紫外線硬化樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
【0057】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る。例えば、特開昭59−151110号に記載の、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
【0058】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステル末端の水酸基やカルボキシル基に2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸のようなのモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号)。
【0059】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂は、エポキシ樹脂の末端の水酸基にアクリル酸、アクリル酸クロライド、グリシジルアクリレートのようなモノマーを反応させて得られる。
【0060】
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂としては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
【0061】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシ樹脂の例として、用いられるエポキシ系紫外線反応性化合物を示す。
【0062】
(a)ビスフェノールAのグリシジルエーテル(この化合物はエピクロルヒドリンとビスフェノールAとの反応により、重合度の異なる混合物として得られる)
(b)ビスフェノールA等のフェノール性OHを2個有する化合物に、エピクロルヒドリン、エチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドを反応させ末端にグリシジルエーテル基を有する化合物
(c)4,4′−メチレンビスフェノールのグリシジルエーテル
(d)ノボラック樹脂またはレゾール樹脂のフェノールフォルムアルデヒド樹脂のエポキシ化合物
(e)脂環式エポキシドを有する化合物、例えば、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)オキザレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−シクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルピメレート)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチル−シクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシ−1′−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシ−6′−メチル−1′−シクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5′,5′−スピロ−3″,4″−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン
(f)2塩基酸のジグリシジルエーテル、例えば、ジグリシジルオキザレート、ジグリシジルアジペート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルフタレート
(g)グリコールのジグリシジルエーテル、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、コポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル
(h)ポリマー酸のグリシジルエステル、例えば、ポリアクリル酸ポリグリシジルエステル、ポリエステルジグリシジルエステル
(i)多価アルコールのグリシジルエーテル、例えば、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グルコーストリグリシジルエーテル
(j)2−フルオロアルキル−1,2−ジオールのジグリシジルエーテルとしては、前記低屈折率物質のフッ素含有樹脂のフッ素含有エポキシ化合物に挙げた化合物例と同様のもの
(k)含フッ素アルカン末端ジオールグリシジルエーテルとしては、上記低屈折率物質のフッ素含有樹脂のフッ素含有エポキシ化合物等を挙げることが出来る。
【0063】
上記エポキシ化合物の分子量は、平均分子量として2000以下で、好ましくは1000以下である。
【0064】
上記のエポキシ化合物を紫外線により硬化する場合、より硬度を上げるためには、(h)または(i)の多官能のエポキシ基を有する化合物を混合して用いると効果的である。
【0065】
エポキシ系紫外線反応性化合物をカチオン重合させる光重合開始剤または光増感剤は、紫外線照射によりカチオン重合開始物質を放出することが可能な化合物であり、特に好ましくは、照射によりカチオン重合開始能のあるルイス酸を放出するオニウム塩の一群の複塩である。
【0066】
紫外線反応性化合物エポキシ樹脂は、ラジカル重合によるのではなく、カチオン重合により重合、架橋構造または網目構造を形成する。ラジカル重合と異なり反応系中の酸素に影響を受けないため好ましい紫外線反応性樹脂である。
【0067】
本発明に有用な紫外線反応性エポキシ樹脂は、紫外線照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出する光重合開始剤または光増感剤により重合する。光重合開始剤としては、光照射によりカチオン重合を開始させるルイス酸を放出するオニウム塩の複塩の一群が特に好ましい。
【0068】
かかる代表的なものは下記一般式(a)で表される化合物である。
【0069】
一般式(a)
〔(R1a(R2b(R3c(R4dZ〕w+〔MeXvw-
式中、カチオンはオニウムであり、ZはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、ハロゲン(例えばI、Br、Cl)、またはN=N(ジアゾ)であり、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていてもよい有機の基である。a、b、c、dはそれぞれ0〜3の整数であって、a+b+c+dはZの価数に等しい。Meはハロゲン化物錯体の中心原子である金属または半金属(metalloid)であり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xはハロゲンであり、wはハロゲン化錯体イオンの正味の電荷であり、vはハロゲン化錯体イオン中のハロゲン原子の数である。
【0070】
上記一般式(a)の陰イオン〔MeXvw-の具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4-)、テトラフルオロホスフェート(PF4-)等を挙げることが出来る。
【0071】
また、その他の陰イオンとしては過塩素酸イオン(ClO4-)、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3-)、トルエンスルホン酸イオン等を挙げることが出来る。
【0072】
このようなオニウム塩の中でも特に芳香族オニウム塩をカチオン重合開始剤として使用するのが有効であり、中でもVIA族芳香族オニウム塩、オキソスルホキソニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、チオピリリュム塩等が好ましい。また、アルミニウム錯体や光分解性けい素化合物系重合開始剤等を挙げることが出来る。上記カチオン重合開始剤と、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル、チオキサントン等の光増感剤を併用することが出来る。
【0073】
また、エポキシアクリレート基を有する紫外線反応性化合物の場合は、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の光増感剤を用いることが出来る。この紫外線反応性化合物に用いられる光増感剤や光開始剤は、紫外線反応性化合物100質量部に対して0.1質量部〜15質量部で光反応を開始するには十分であり、好ましくは1質量部〜10質量部である。この増感剤は近紫外線領域から可視光線領域に吸収極大のあるものが好ましい。
【0074】
本発明に有用な紫外線硬化樹脂組成物において、重合開始剤は、一般的には、紫外線硬化性エポキシ樹脂(プレポリマー)100質量部に対して0.1質量部〜15質量部の使用が好ましく、更に好ましくは、1質量部〜10質量部の範囲の添加が好ましい。
【0075】
また、エポキシ樹脂を上記ウレタンアクリレート型樹脂、ポリエーテルアクリレート型樹脂等と併用することも出来、この場合、紫外線ラジカル重合開始剤と紫外線カチオン重合開始剤を併用することが好ましい。
【0076】
また、本発明に係る紫外線硬化樹脂層には、オキセタン化合物を用いることも出来る。
【0077】
本発明に係る紫外線硬化樹脂層には、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂またはゼラチン等の親水性樹脂等のバインダを上記記載の紫外線硬化樹脂に混合して使用することが出来る。これらの樹脂は、その分子中に極性基を持っていることが好ましい。極性基としては、−COOM、−OH、−NR2、−NR3X、−SO3M、−OSO3M、−PO32、−OPO3M(ここで、Mは水素原子、アルカリ金属またはアンモニウム基を、Xはアミン塩を形成する酸を、Rは水素原子、アルキル基を表す)等を挙げることが出来る。
【0078】
本発明に使用する紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、またはエキシマランプ等も用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20mJ/cm2以上が好ましく、更に好ましくは、50mJ/cm2〜10000mJ/cm2であり、特に好ましくは、50mJ/cm2〜2000mJ/cm2である。
【0079】
また、紫外線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよい。
【0080】
本発明に使用する上記紫外線硬化樹脂を光重合または光架橋反応を開始させるには、上記紫外線硬化樹脂のみでも開始するが、重合の誘導期が長かったり、重合開始が遅かったりするため、光増感剤や光開始剤を用いることが好ましく、それにより重合を早めることが出来る。
【0081】
(光反応開始剤、光増感剤)
本発明に係る紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射時において光反応開始剤、光増感剤を用いることが出来る。
【0082】
具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。また、エポキシアクリレート系樹脂の合成に光反応剤を使用する際に、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。塗布乾燥後に揮発する溶媒成分を除いた紫外線硬化樹脂組成物に含まれる光反応開始剤及び/または光増感剤の使用量は、組成物の1質量%〜10質量%が好ましく、特に好ましくは2.5質量%〜6質量%である。
【0083】
また、紫外線硬化樹脂として、紫外線硬化性樹脂を用いる場合、前記紫外線硬化性樹脂の光硬化を妨げない程度に、後述する紫外線吸収剤を紫外線硬化性樹脂組成物に含ませてもよい。
【0084】
(酸化防止剤)
紫外線硬化樹脂層の耐熱性を高めるために、光硬化反応を抑制しないような酸化防止剤を選んで用いることが出来る。例えば、ヒンダードフェノール誘導体、チオプロピオン酸誘導体、ホスファイト誘導体等を挙げることが出来る。具体的には、例えば、4,4′−チオビス(6−tert−3−メチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メシチレン、ジ−オクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルホスフェート等を挙げることが出来る。
【0085】
紫外線硬化樹脂としては、例えば、アデカオプトマーKR、BYシリーズのKR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、旭電化工業(株)製)、コーエイハードのA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学工業(株)製)、セイカビームのPHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業(株)製)、KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー(株))、RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製)、サンラッド H−601(三洋化成工業(株)製)、SP−1509、SP−1507(以上、昭和高分子(株)製)、RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成(株)製)、またはその他の市販のものから適宜選択して利用することが出来る。
【0086】
紫外線硬化樹脂を含む塗布組成物は、固形分濃度は10質量%〜95質量%であることが好ましく、塗布方法により適当な濃度が選ばれる。
【0087】
(界面活性剤)
本発明に係る紫外線硬化樹脂層は界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、シリコン系またはフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0088】
シリコン系界面活性剤としては、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤が好ましい。
【0089】
非イオン面活性剤は、水溶液中でイオンに解離する基を有しない系界面活性剤を総称していうが、疎水基のほか親水性基として多価アルコール類の水酸基、また、ポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン)等を親水基として有するものである。親水性はアルコール性水酸基の数が多くなるに従って、またポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン鎖)が長くなるに従って強くなる。本発明に係わる非イオン界面活性剤は疎水基としてジメチルポリシロキサンを有することに特徴がある。
【0090】
疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤を用いると、紫外線硬化樹脂層や低屈折率層のムラや膜表面の防汚性が向上する。ポリメチルシロキサンからなる疎水基が表面に配向し汚れにくい膜表面を形成するものと考えられる。他の界面活性剤を用いることでは得られない効果である。
【0091】
これらの非イオン活性剤の具体例としては、例えば、日本ユニカー(株)製、シリコーン界面活性剤 SILWET L−77、L−720、L−7001、L−7002、L−7604、Y−7006、FZ−2101、FZ−2104、FZ−2105、FZ−2110、FZ−2118、FZ−2120、FZ−2122、FZ−2123、FZ−2130、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164、FZ−2166、FZ−2191等が挙げられる。
【0092】
また、SUPERSILWET SS−2801、SS−2802、SS−2803、SS−2804、SS−2805等が挙げられる。
【0093】
また、これら、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン系の界面活性剤の好ましい構造としては、ジメチルポリシロキサン構造部分とポリオキシアルキレン鎖が交互に繰り返し結合した直鎖状のブロックコポリマーであることが好ましい。主鎖骨格の鎖長が長く、直鎖状の構造であることから、優れている。親水基と疎水基が交互に繰り返したブロックコポリマーであることにより、シリカ微粒子の表面を1つの活性剤分子が、複数の箇所で、これを覆うように吸着することが出来るためと考えられる。
【0094】
これらの具体例としては、例えば、日本ユニカー(株)製、シリコーン界面活性剤 ABN SILWET FZ−2203、FZ−2207、FZ−2208等が挙げられる。
【0095】
フッ素系界面活性剤としては、疎水基がパーフルオロカーボンチェインをもつ界面活性剤を用いることが出来る。種類としては、フルオロアルキルカルボン酸、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−(フルオロアルキルオキシ)−1−アルキルスルホン酸ナトリウム、3−(ω−フルオロアルカノイル−N−エチルアミノ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、N−(3−パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキルスルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)等が挙げられる。本発明では非イオン界面活性剤が好ましい。
【0096】
これらのフッ素系界面活性剤はメガファック、エフトップ、サーフロン、フタージェント、ユニダイン、フローラード、ゾニール等の商品名で市販されている。
【0097】
好ましい添加量は紫外線硬化樹脂層の塗布液に含まれる固形分当たり0.01〜3.0%であり、より好ましくは0.02〜1.0%である。
【0098】
しかしながら、他の界面活性剤も併用して用いてもよく、適宜、例えばスルホン酸塩系、硫酸エステル塩系、リン酸エステル塩系等のアニオン界面活性剤、また、ポリオキシエチレン鎖親水基として有するエーテル型、エーテルエステル型等の非イオン界面活性剤等を併用してもよい。
【0099】
(紫外線硬化樹脂層の作製方法)
本発明に係る紫外線硬化樹脂層を塗設する際に溶媒が含まれていてもよく、必要に応じて適宜含有し、希釈されたものであってもよい。塗布液に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中でもから適宜選択し、或いはこれらを混合し利用出来る。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0100】
紫外線硬化樹脂層組成物塗布液の塗布方法としては、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押出コーター、エアードクターコーター等公知の方法を用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚で5μm〜30μmが適当で、好ましくは10μm〜20μmである。ドライ膜厚は0.1〜20μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。塗布速度は10m/分〜60m/分が好ましい。
【0101】
紫外線硬化樹脂層組成物は塗布乾燥された後、硬化に必要な光量の紫外線照射により硬化処理される。前記紫外線の照射時間は、照度が強すぎるとシートの変形をおこすため、0.1秒〜5分が好ましく、紫外線硬化樹脂の硬化効率、作業効率等から更に好ましくは、0.3秒〜2分である。
【0102】
(微粒子)
こうして得た紫外線硬化樹脂層には耐傷性、滑り性や屈折率を調整し、また防眩性を調整するために無機化合物或いは有機化合物の微粒子を含んでもよい。
【0103】
紫外線硬化樹脂層に使用される無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が好ましく用いられる。
【0104】
また有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、或いはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物に加えることが出来る。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)が挙げられる。
【0105】
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.01〜5μmが好ましく0.1〜5.0μm、さらには、0.1〜4.0μmであることが特に好ましい。また、粒径の異なる2種以上の微粒子を含有することが好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子の割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
【0106】
本発明に係る紫外線硬化樹脂層の屈折率は、低反射性フィルムを得るための光学設計上から屈折率が1.5〜2.0、特に1.6〜1.7であることが好ましい。紫外線硬化樹脂層の屈折率は添加する微粒子或いは無機バインダーの屈折率や含有量によって調製することが出来る。
【0107】
また、紫外線硬化樹脂層組成物塗布液には、特にシリコン化合物を添加することが好ましい。例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル等が好ましく添加される。ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば、1,000〜100,000、好ましくは、2,000〜50,000が適当であり、数平均分子量が1,000未満では、塗膜の乾燥性が低下し、逆に、数平均分子量が100,000を越えると、塗膜表面にブリードアウトしにくくなる傾向にある。
【0108】
シリコン化合物の市販品としては、DKQ8−779(ダウコーニング社製商品名)、SF3771、SF8410、SF8411、SF8419、SF8421、SF8428、SH200、SH510、SH1107、SH3749、SH3771、BX16−034、SH3746、SH3749、SH8400、SH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、BY−16−837、BY−16−839、BY−16−869、BY−16−870、BY−16−004、BY−16−891、BY−16−872、BY−16−874、BY22−008M、BY22−012M、FS−1265(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社製商品名)、KF−101、KF−100T、KF351、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、シリコーンX−22−945、X22−160AS(以上、信越化学工業社製商品名)、XF3940、XF3949(以上、東芝シリコーン社製商品名)、ディスパロンLS−009(楠本化成社製)、グラノール410(共栄社油脂化学工業(株)製)、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(GE東芝シリコーン製)、BYK−306、BYK−330、BYK−307、BYK−341、BYK−344、BYK−361(ビックケミ−ジャパン社製)日本ユニカー(株)製のLシリーズ、Yシリーズ、FZシリーズ等が挙げられ、好ましく用いられる。
【0109】
これらの成分は基材や下層への塗布性を高める。積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0110】
本発明の紫外線硬化樹脂層には導電性を有する金属酸化物微粒子を含有することも出来る。導電性を有する金属酸化物微粒子としては、Zr、Sn、Sb、As、Zn、Nb、In、Alから選択される金属酸化物微粒子が好ましく、具体的には、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO(インジウムティンオキサイド)、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウムを挙げることが出来る。特に、ITO等が好ましく用いられる。
【0111】
また、紫外線硬化樹脂層は、2層以上の重層構造を有していてもよく、その中の1層は例えば前記導電性微粒子、或いは、イオン性ポリマーを含有する所謂帯電防止層としてもよいし、また、種々の表示素子に対する色補正用フィルタとして色調調整機能を有する色調調整剤を含有させてもよいし、また電磁波遮断剤或いは赤外線吸収剤等を含有させそれぞれの機能を有するようにすることも出来る。
【0112】
〔シート〕
本発明に係るシートは、特に制限のあるものではないが、長尺のフィルム支持体であることが好ましい。特に光学フィルムに用いられるフィルム支持体であることが好ましい。
【0113】
フィルム支持体(基材フィルム)としては、セルロースエステルフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムまたはアクリルフィルム等を挙げることが出来るが、本発明では、製造が容易であること、紫外線硬化樹脂層への接着性がよいこと、光学的に等方性であること、光学的に透明性であることから、セルロースエステルフィルムが好ましい。セルロースエステルフィルムの内では、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルムが、製造上、コスト面、透明性、等方性、接着性等の面から好ましい。具体的には、例えば、コニカミノルタタックKC8UX2M、KC4UX2M、KC4UY、KC8UT、KC5UN、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4(以上、コニカミノルタオプト(株)製)が好ましく用いられる。
【0114】
(セルロースエステルフィルム)
本発明に用いられるセルロースエステルは、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが出来る。上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルはセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独または混合して用いることが出来る。
【0115】
セルロースエステルの分子量が小さ過ぎると引裂強度が低下するが、分子量を上げ過ぎるとセルロースエステルの溶解液の粘度が高くなり過ぎるため生産性が低下する。セルロースエステルの分子量は数平均分子量(Mn)で70000〜200000のものが好ましく、100000〜200000のものがさらに好ましい。
【0116】
セルローストリアセテートの場合には、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、さらに好ましいのは、平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートである。平均酢化度が小さいと寸法変化が大きく、また偏光板の偏光度が低下する。平均酢化度が大きいと溶剤に対する溶解度が低下し生産性が下がる。
【0117】
セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロースエステルである。
【0118】
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
この内、特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することが出来る。
【0119】
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独または混合して用いることが出来る。特に綿花リンター(以下、単にリンターとすることがある)から合成されたセルロースエステルを単独または混合して用いることが好ましい。
【0120】
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは、溶液流延法で製造されるものでも、溶融流延法で製造されるものでもよいが、少なくとも幅手方向に延伸されたものが好ましく、特に溶液流延工程で剥離残留溶媒量が3〜40質量%である時に幅手方向に1.01〜1.5倍に延伸されたものであることが好ましい。より好ましくは幅手方向と長手方向に2軸延伸することであり、剥離残留溶媒量が3〜40質量%である時に幅手方向及び長手方向に、各々1.01〜1.5倍に延伸されることが望ましい。こうすることによって、視認性に優れた反射防止フィルムを得ることが出来る。
【0121】
このときの延伸倍率としては1.01〜1.5倍が好ましく、特に好ましくは、1.03〜1.45倍である。
【0122】
本発明においては長尺フィルムを用いることが好ましく、長尺とは具体的には100〜5000m程度のものをいう。また、フィルムの幅は1.3m以上が好ましく、1.3〜4m、好ましくは1.3〜2mであることがより好ましい。
【0123】
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは、光透過率が90%以上、より好ましくは93%以上の透明支持体であることが好ましい。
【0124】
本発明に用いられるセルロースエステルフィルム支持体は、その厚さが10〜100μmのものが好ましく、透湿性は、25℃、90±2%RHにおいて、200g/m2・24時間以下であることが好ましく、さらに好ましくは、10〜180g/m2・24時間以下であり、特に好ましくは、160g/m2・24時間以下である。
【0125】
特には、膜厚10〜60μmで透湿性が上記範囲内であることが好ましい。
【0126】
ここで、支持体の透湿性は、JIS Z 0208に記載の方法に従い、各試料の透湿性を測定することが出来る。
【0127】
(可塑剤)
セルロースエステルフィルムには、下記のような可塑剤を含有するのが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤等を好ましく用いることが出来る。
【0128】
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることが出来る。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
【0129】
ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることが出来る。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等を用いることが出来る。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等を用いることが出来る。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0130】
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる。好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2ープロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることが出来る。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールであることが好ましい。多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれに限定されるものではない。脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることが出来る。好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上もつ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。特に安息香酸であることが好ましい。多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることがさらに好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0131】
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基はカルボン酸で全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
【0132】
これらの可塑剤は単独または併用するのが好ましい。
【0133】
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3〜13質量%である。
【0134】
(紫外線吸収剤)
本発明では、支持体に紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0135】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
【0136】
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては下記一般式(A)で示される化合物が好ましく用いられる。
【0138】
【化1】

【0139】
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノもしくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5〜6員の複素環基を表し、R4とR5は閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。
【0140】
また、上記記載のこれらの基は、任意の置換基を有していてよい。
【0141】
以下に本発明に用いられる紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0142】
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、チバスペシャルティケミカルズ製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、チバスペシャルティケミカルズ製)
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式(B)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0143】
【化2】

【0144】
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基または−CO(NH)n-1−D基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1または2を表す。
【0145】
上記において、アルキル基としては、例えば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシル基としては例えば、炭素数18までのアルコキシル基を表し、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基でアリル基、2−ブテニル基等を表す。また、アルキル基、アルケニル基、フェニル基への置換基としてはハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等を置換していてもよい)等が挙げられる。
【0146】
以下に一般式(B)で表されるベンゾフェノン系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0147】
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0148】
また、特願平11−295209号に記載されている分配係数が9.2以上の紫外線吸収剤は、支持体に用いた時、支持体の面品質に優れ、塗布性にも優れ好ましい。特に分配係数が10.1以上の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0149】
また、特開平6−148430号の一般式(1)または一般式(2)、特願2000−156039の一般式(3)、(6)、(7)記載の高分子紫外線吸収剤(または紫外線吸収性ポリマー)も好ましく用いられる。高分子紫外線吸収剤としては、PUVA−30M(大塚化学(株)製)等が市販されている。
【0150】
(微粒子)
本発明において、セルロースエステルフィルム中に微粒子を含有していることが好ましく、微粒子としては、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さく出来るので好ましい。微粒子の2次粒子の平均粒径は0.01〜1.0μmの範囲で、その含有量はセルロースエステルに対して0.005〜0.3質量%が好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子には有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類(特にメチル基を有するアルコキシシラン類)、シラザン、シロキサン等が挙げられる。微粒子の平均粒径が大きい方がマット効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmで、より好ましくは7〜16nmである。これらの微粒子はセルロースエステルフィルム中では、通常、凝集体として存在しセルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。二酸化ケイ素の微粒子としてはアエロジル社製のAEROSIL(アエロジル)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることが出来、好ましくはAEROSIL(アエロジル)200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することが出来る。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えばAEROSIL(アエロジル)200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用出来る。本発明において、微粒子はドープ調製時、セルロースエステル、他の添加剤及び有機溶媒とともに含有させて分散してもよいが、セルロースエステル溶液とは、別に微粒子分散液のような十分に分散させた状態でドープを調製するのが好ましい。微粒子を分散させるために、前もって有機溶媒にひたしてから高剪断力を有する分散機(高圧分散装置)で細分散させておくのが好ましい。その後により多量の有機溶媒に分散して、セルロースエステル溶液と合流させ、インラインミキサーで混合してドープとすることが好ましい。この場合、微粒子分散液に紫外線吸収剤を加え紫外線吸収剤液としてもよい。
【0151】
上記の劣化防止剤、紫外線吸収剤及び/または微粒子は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0152】
(有機溶媒)
本発明に用いられるドープを形成するのに有用な有機溶媒は、セルロースエステル、芳香族環を少なくとも二つ有し、かつ少なくとも二つの芳香族環が平面構造を有する化合物、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることが出来る。例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。特に酢酸メチルが好ましい。
【0153】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることが出来る。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、かつ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。
【0154】
ドープ中のセルロースエステルの濃度は15〜40質量%、ドープ粘度は10〜50Pa・sの範囲に調整されることが良好なフィルム面品質を得る上で好ましい。
【0155】
〔反射防止層〕
本発明では、前記紫外線硬化樹脂層の表面上に、金属酸化物微粒子を固形成分として20〜90%(質量比率)の範囲で含有する反射防止膜を設け反射防止フィルムとすることが好ましい。
【0156】
本発明に用いられる反射防止層について説明する。
【0157】
本発明に用いられる低屈折率層は、波長λの光に対して低屈折率層の光学膜厚をλ/4に設定して反射防止フィルムを作製する。光学膜厚とは、層の屈折率nと膜厚dとの積により定義される量である。屈折率の高低はそこに含まれる金属または化合物によってほぼ決まり、例えばTiは高く、Siは低く、Fを含有する化合物はさらに低く、このような組み合わせによって屈折率が設定される。屈折率と膜厚は、分光反射率の測定により計算して算出し得る。
【0158】
本発明の光学フィルムの一つである反射防止フィルムは低屈折率層を含め、多層の屈折率層を設けることも好ましい。透明なセルロースエステルフィルム支持体上に、紫外線硬化樹脂層を有し、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層出来る。反射防止層は、支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と、支持体よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成したり、特に好ましくは、3層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、支持体側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(支持体または紫外線硬化樹脂層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましい。
【0159】
または、2層以上の高屈折率層と2層以上の低屈折率層とを交互に積層した4層以上の層構成の反射防止層も好ましく用いられる。
【0160】
本発明に係る反射防止フィルムの好ましい層構成の例を下記に示す。ここで/は積層配置されていることを示している。
【0161】
バックコート層/支持体/紫外線硬化樹脂層/低屈折率層
バックコート層/支持体/紫外線硬化樹脂層/中屈折率層/低屈折率層
バックコート層/支持体/紫外線硬化樹脂層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/支持体/紫外線硬化樹脂層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/支持体/帯電防止層/紫外線硬化樹脂層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
帯電防止層/支持体/紫外線硬化樹脂層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/支持体/紫外線硬化樹脂層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
汚れや指紋のふき取りが容易となるように、最表面の低屈折率層の上に、さらに防汚層を設けることも出来る。防汚層としては、含フッ素有機化合物が好ましく用いられる。
【0162】
光学干渉により反射率を低減出来るものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。また、帯電防止層は導電性ポリマー微粒子(例えば架橋カチオン微粒子)または金属酸化物微粒子(例えば、SnO2、ITO等)を含む層であることが好ましく、塗布によって設けることが出来る。または大気圧プラズマ処理、プラズマCVD等によって金属酸化物層(ZnO2、SnO2、ITO等)を設けることが出来る。
【0163】
〈低屈折率層〉
本発明に用いられる低屈折率層では以下の中空シリカ系微粒子が好ましく用いられる。
【0164】
(中空シリカ系微粒子)
中空微粒子は、(I)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、または(II)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体または多孔質物質で充填された空洞粒子である。尚、低屈折率層には(I)複合粒子または(II)空洞粒子のいずれかが含まれていればよく、また双方が含まれていてもよい。
【0165】
尚、空洞粒子は内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体または多孔質物質等の内容物で充填されている。このような中空球状微粒子の平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあることが望ましい。使用される中空球状微粒子は、形成される透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、形成される低屈折率層等の透明被膜の膜厚の2/3〜1/10の範囲にあることが望ましい。これらの中空球状微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)が好ましい。
【0166】
複合粒子の被覆層の厚さまたは空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあることが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することが出来ないことがあり、後述する塗布液成分である重合度の低いケイ酸モノマー、オリゴマー等が容易に複合粒子の内部に進入して内部の多孔性が減少し、低屈折率の効果が十分得られないことがある。また、被覆層の厚さが20nmを越えると、前記ケイ酸モノマー、オリゴマーが内部に進入することはないが、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率の効果が十分得られなくなることがある。また空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持出来ないことがあり、また厚さが20nmを越えても、低屈折率の効果が十分に現れないことがある。
【0167】
複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。また、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P23、Sb23、MoO3、ZnO2、WO3等が挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgF等からなるものが挙げられる。このうち特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P23、Sb23、MoO3、ZnO2、WO3等との1種または2種以上を挙げることが出来る。このような多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOX)で表したときのモル比MOX/SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても細孔容積が小さく、屈折率の低い粒子が得られない。また、多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が大きくなり、更に屈折率が低いものを得ることが難しいことがある。
【0168】
このような多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。尚、このような多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることが出来る。また、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質等が挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒等が含まれていてもよい。また多孔質物質としては、前記多孔質粒子で例表した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
【0169】
このような中空球状微粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。
【0170】
このようにして得られた中空微粒子の屈折率は、内部が空洞であるので屈折率が低く、それを用いた本発明に用いられる低屈折率層の屈折率は、1.30〜1.50であることが好ましく、1.35〜1.44であることが更に好ましい。
【0171】
外殻層を有し、内部が多孔質または空洞である中空シリカ系微粒子の低屈折率層塗布液中の含量(質量)は、10〜80質量%が好ましく、更に好ましくは20〜60質量%である。
【0172】
(テトラアルコキシシラン化合物またはその加水分解物)
本発明に用いられる低屈折率層には、ゾルゲル素材としてテトラアルコキシシラン化合物またはその加水分解物が含有されることが好ましい。
【0173】
本発明に用いられる低屈折率層用の素材として、前記無機珪素酸化物以外に有機基を有する珪素酸化物を用いることも好ましい。これらは一般にゾルゲル素材と呼ばれるが、金属アルコレート、オルガノアルコキシ金属化合物及びその加水分解物を用いることが出来る。特に、アルコキシシラン、オルガノアルコキシシラン及びその加水分解物が好ましい。これらの例としては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等)、アリールトリアルコキシシラン(フェニルトリメトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0174】
本発明に用いられる低屈折率層は前記珪素酸化物と下記シランカップリング剤を含むことが好ましい。
【0175】
具体的なシランカップリング剤の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。
【0176】
また、珪素に対して2置換のアルキル基を持つシランカップリング剤の例として、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0177】
シランカップリング剤の具体例としては、信越化学工業株式会社製KBM−303、KBM−403、KBM−402、KBM−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−603、KBE−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−802、KBM−803等が挙げられる。
【0178】
これらシランカップリング剤は予め必要量の水で加水分解されていることが好ましい。シランカップリング剤が加水分解されていると、前述の珪素酸化物粒子及び有機基を有する珪素酸化物の表面が反応し易く、より強固な膜が形成される。また、加水分解されたシランカップリング剤を予め塗布液中に加えてもよい。
【0179】
また、低屈折率層は、5〜50質量%の量のポリマーを含むことも出来る。ポリマーは、微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。ポリマーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持出来るように調整する。ポリマーの量は、低屈折率層の全量の10〜30質量%であることが好ましい。ポリマーで微粒子を接着するためには、(1)微粒子の表面処理剤にポリマーを結合させるか、(2)微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェルを形成するか、或いは(3)微粒子間のバインダーとして、ポリマーを使用することが好ましい。
【0180】
バインダーポリマーは、飽和炭化水素またはポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが更に好ましい。バインダーポリマーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダーポリマーを得るためには、二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。
【0181】
また、本発明に用いられる低屈折率層が、熱または電離放射線により架橋する含フッ素樹脂(以下、「架橋前の含フッ素樹脂」ともいう)の架橋からなる低屈折率層であってもよい。
【0182】
架橋前の含フッ素樹脂としては、含フッ素ビニルモノマーと架橋性基付与のためのモノマーから形成される含フッ素共重合体を好ましく挙げることが出来る。上記含フッ素ビニルモノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えば、ビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。架橋性基付与のためのモノマーとしては、グリシジルメタクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルグリシジルエーテル等のように分子内に予め架橋性官能基を有するビニルモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有するビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル等)が挙げられる。後者は共重合の後、ポリマー中の官能基と反応する基ともう1つ以上の反応性基を持つ化合物を加えることにより、架橋構造を導入出来ることが特開平10−25388号、同10−147739号に記載されている。架橋性基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロール及び活性メチレン基等が挙げられる。含フッ素共重合体が、加熱により反応する架橋基、若しくは、エチレン性不飽和基と熱ラジカル発生剤若しくはエポキシ基と熱酸発生剤等の相み合わせにより、加熱により架橋する場合、熱硬化型であり、エチレン性不飽和基と光ラジカル発生剤若しくは、エポキシ基と光酸発生剤等の組み合わせにより、光(好ましくは紫外線、電子ビーム等)の照射により架橋する場合、電離放射線硬化型である。
【0183】
架橋前の含フッ素共重合体を形成するために用いられる上記各モノマーの使用割合は、含フッ素ビニルモノマーが好ましくは20〜70モル%、より好ましくは40〜70モル%、架橋性基付与のためのモノマーが好ましくは1〜20モル%、より好ましくは5〜20モル%、併用されるその他のモノマーが好ましくは10〜70モル%、より好ましくは10〜50モル%の割合である。
【0184】
本発明に用いられる低屈折率層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号)により、塗布により形成することが出来る。また、2以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2,761,791号、同2,941,898号、同3,508,947号、同3,526,528号及び原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
【0185】
本発明に用いられる低屈折率層の膜厚は50〜200nmであることが好ましく、60〜150nmであることがより好ましい。
【0186】
〈高屈折率層及び中屈折率層〉
本発明においては、反射率の低減のために凹凸形状の紫外線硬化樹脂透層と低屈折率層との間に、高屈折率層を設けることが好ましい。また、該凹凸形状の紫外線硬化樹脂透層と高屈折率層との間に中屈折率層を設けることは、反射率の低減のために更に好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.55〜2.30であることが好ましく、1.57〜2.20であることが更に好ましい。中屈折率層の屈折率は、透明支持体の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.80であることが好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の厚さは、5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0187】
中、高屈折率層は下記一般式(1)で表される有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーまたはそれらの加水分解物を含有する塗布液を塗布し乾燥させて形成させた屈折率1.55〜2.5の層であることが好ましい。
【0188】
一般式(1) Ti(OR14
式中、R1としては炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基がよいが、好ましくは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。また、有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーまたはそれらの加水分解物は、アルコキシド基が加水分解を受けて−Ti−O−Ti−のように反応して架橋構造を作り、硬化した層を形成する。
【0189】
本発明に用いられる有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーとしては、Ti(OCH34、Ti(OC254、Ti(O−n−C374、Ti(O−i−C374、Ti(O−n−C494、Ti(O−n−C374の2〜10量体、Ti(O−i−C374の2〜10量体、Ti(O−n−C494の2〜10量体等が好ましい例として挙げられる。これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることが出来る。中でもTi(O−n−C374、Ti(O−i−C374、Ti(O−n−C494、Ti(O−n−C374の2〜10量体、Ti(O−n−C494の2〜10量体が特に好ましい。
【0190】
上記有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーまたはそれらの加水分解物は、塗布液に含まれる固形分中の50.0質量%〜98.0質量%を占めていることが望ましい。固形分比率は50質量%〜90質量%がより好ましく、55質量%〜90質量%が更に好ましい。この他、塗布組成物には有機チタン化合物のポリマー(予め有機チタン化合物の加水分解を行って架橋したもの)或いは酸化チタン微粒子を添加することも好ましい。
【0191】
本発明に好ましく用いられる高屈折率層及び中屈折率層は、金属酸化物微粒子を固形成分として20〜90%(質量比率)の範囲で含有し、更にバインダーポリマーを含むことが好ましい。
【0192】
上記高屈折率層及び中屈折率層は、微粒子として金属酸化物粒子を含み、更にバインダーポリマーを含むことが好ましい。
【0193】
上記塗布液調製法で加水分解/重合した有機チタン化合物と金属酸化物粒子を組み合わせると、金属酸化物粒子と加水分解/重合した有機チタン化合物とが強固に接着し、粒子のもつ硬さと均一膜の柔軟性を兼ね備えた強い塗膜を得ることが出来る。
【0194】
高屈折率層及び中屈折率層に用いる金属酸化物粒子は、屈折率が1.80〜2.80であることが好ましく、1.90〜2.80であることが更に好ましい。金属酸化物粒子の1次粒子の重量平均径は、1〜150nmであることが好ましく、1〜100nmであることが更に好ましく、1〜80nmであることが最も好ましい。層中での金属酸化物粒子の重量平均径は、1〜200nmであることが好ましく、5〜150nmであることがより好ましく、10〜100nmであることが更に好ましく、10〜80nmであることが最も好ましい。金属酸化物粒子の平均粒径は、20〜30nm以上であれば光散乱法により、20〜30nm以下であれば電子顕微鏡写真により測定される。金属酸化物粒子の比表面積は、BET法で測定された値として、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることが更に好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
【0195】
金属酸化物粒子の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物であり、具体的には二酸化チタン(例、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化ジルコニウムが挙げられる。中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。金属酸化物粒子は、これらの金属の酸化物を主成分とし、更に他の元素を含むことが出来る。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びS等が挙げられる。
【0196】
金属酸化物粒子は表面処理されていることが好ましい。表面処理は、無機化合物または有機化合物を用いて実施することが出来る。表面処理に用いる無機化合物の例としては、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム及び酸化鉄が挙げられる。中でもアルミナ及びシリカが好ましい。表面処理に用いる有機化合物の例としては、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が挙げられる。中でも、シランカップリング剤が最も好ましい。
【0197】
高屈折率層及び中屈折率層中の金属酸化物粒子の割合は、5〜95体積%であることが好ましく、より好ましくは20〜90体積%であり、更に好ましくは40〜85体積%である。
【0198】
上記金属酸化物粒子は、媒体に分散した分散体の状態で、高屈折率層及び中屈折率層を形成するための塗布液に供される。金属酸化物粒子の分散媒体としては、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散溶媒の具体例としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
【0199】
また金属酸化物粒子は、分散機を用いて媒体中に分散することが出来る。分散機の例としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが挙げられる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例としては、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが挙げられる。
【0200】
高屈折率層及び中屈折率層は、架橋構造を有するポリマー(以下、架橋ポリマーともいう)をバインダーポリマーとして用いることが好ましい。架橋ポリマーの例として、ポリオレフィン等の飽和炭化水素鎖を有するポリマー、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド及びメラミン樹脂等の架橋物が挙げられる。中でも、ポリオレフィン、ポリエーテル及びポリウレタンの架橋物が好ましく、ポリオレフィン及びポリエーテルの架橋物が更に好ましく、ポリオレフィンの架橋物が最も好ましい。
【0201】
前記バインダーポリマー用いられるモノマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーが最も好ましいが、その例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミド等が挙げられる。アニオン性基を有するモノマー、及びアミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーは市販のモノマーを用いてもよい。好ましく用いられる市販のアニオン性基を有するモノマーとしては、KAYAMARPM−21、PM−2(日本化薬(株)製)、AntoxMS−60、MS−2N、MS−NH4(日本乳化剤(株)製)、アロニックスM−5000、M−6000、M−8000シリーズ(東亞合成化学工業(株)製)、ビスコート#2000シリーズ(大阪有機化学工業(株)製)、ニューフロンティアGX−8289(第一工業製薬(株)製)、NKエステルCB−1、A−SA(新中村化学工業(株)製)、AR−100、MR−100、MR−200(第八化学工業(株)製)等が挙げられる。また、好ましく用いられる市販のアミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーとしてはDMAA(大阪有機化学工業(株)製)、DMAEA,DMAPAA(興人(株)製)、ブレンマーQA(日本油脂(株)製)、ニューフロンティアC−1615(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
【0202】
ポリマーの重合反応は、光重合反応または熱重合反応を用いることが出来る。特に光重合反応が好ましい。重合反応のため、重合開始剤を使用することが好ましい。例えば、紫外線硬化樹脂層のバインダーポリマーを形成するために用いられる熱重合開始剤、及び光重合開始剤が挙げられる。
【0203】
重合開始剤として市販の重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤に加えて、重合促進剤を使用してもよい。重合開始剤と重合促進剤の添加量は、モノマーの全量の0.2〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0204】
反射防止層の各層またはその塗布液には、前述した成分(金属酸化物粒子、ポリマー、分散媒体、重合開始剤、重合促進剤)以外に、重合禁止剤、レベリング剤、増粘剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、帯電防止剤や接着付与剤を添加してもよい。
【0205】
中〜高屈折率層及び低屈折率層の塗設後、金属アルコキシドを含む組成物の加水分解または硬化を促進するため、活性エネルギー線を照射することが好ましい。より好ましくは、各層を塗設するごとに活性エネルギー線を照射することである。
【0206】
前記活性エネルギー線は、紫外線、電子線、γ線等で、化合物を活性させるエネルギー源であれば制限なく使用出来るが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20mJ/cm2〜10000mJ/cm2が好ましく、更に好ましくは、100mJ/cm2〜2000mJ/cm2であり、特に好ましくは、400mJ/cm2〜2000mJ/cm2である。
【0207】
〔偏光板〕
本発明で得られた紫外線硬化樹脂層付きシート(ハードコートフィルム)やそれを用いた反射防止フィルムは、偏光板用の保護フィルムに好適に用いられる。
【0208】
本発明に用いられる偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明に係るハードコートフィルムや反射防止フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面には該フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UY、KC4UY、KC12UR、以上コニカミノルタオプト(株)製)が好ましく用いられる。本発明に係るハードコートフィルムや反射防止フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは面内リターデーションRoが590nmで、20〜70nm、Rtが100〜400nmの位相差を有していることが好ましい。これらは例えば、特開2002−71957、同2003−170492記載の方法で作製することが出来る。または、さらにディスコチック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348記載の方法で光学異方性層を形成することが出来る。本発明に係るハードコートフィルムや反射防止フィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることが出来る。
【0209】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光膜の面上に、本発明に係るハードコートフィルムや反射防止フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
【0210】
従来のハードコートフィルムや反射防止フィルムを使用した偏光板は平面性に劣り、反射像を見ると細かい波打ち状のムラが認められ、60℃、90%RHの条件での耐久性試験により、波打ち状のムラが増大したが、これに対して本発明に係るハードコートフィルムや反射防止フィルムを用いた偏光板は、平面性に優れていた。また、60℃、90%RHの条件での耐久性試験によっても波打ち状のムラが増加することはなかった。
【0211】
〔画像表示装置〕
本発明の偏光板を画像表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた画像表示装置を作製することが出来る。本発明に係るハードコートフィルムや反射防止フィルムは反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。また、本発明に係るハードコートフィルムや反射防止フィルムは平面性に優れ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示装置にも好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜け等もなく、その効果が長期間維持され、特にMVA型画像表示装置では顕著な効果が認められる。また、色ムラ、ぎらつきや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
【実施例】
【0212】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0213】
実施例1
(セルローストリアセテートフィルム1の作製)
下記のようにして、下記ドープ組成物1を用いて透明なセルローストリアセテートフィルム1を作製した。
【0214】
〈ドープ組成物1〉
セルローストリアセテート(平均酢化度62.0%) 100質量部
可塑剤(トリメチロールプロパントリベンゾエート) 5質量部
可塑剤(エチルフタリルエチルグリコレート) 5質量部
紫外線吸収剤(2−〔5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4−メチル−6−(t−ブチル)フェノール) 1質量部
紫外線吸収剤(2−〔(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェノール) 1質量部
微粒子(アエロジルR972V、日本アエロジル(株)製) 0.3質量部
メチレンクロライド 430質量部
エタノール 90質量部
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹伴しながら完全に溶解してドープ組成物を得た。
【0215】
次に、このドープ組成物を濾過し、冷却して33℃に保ちステンレスバンド上に均一に流延した。ステンレスバンド上で、残留溶剤量が80%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド上から剥離した。剥離したセルローストリアセテートフィルムのウェブを50℃で溶媒を蒸発させ、1.7m幅にスリットし、その後、テンターでTD方向(フィルムの搬送方向と直交する方向)に120℃で1.1倍に延伸した。テンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は20%であった。さらに加熱ゾーンを多数のロールで搬送しながら残留溶剤量が0.1%になるまで高温処理した後、1.5m幅にスリットし、フィルム両端にナーリング加工を施して巻き取り、膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルム1を得た。
【0216】
(紫外線硬化樹脂層1の塗設)
上記セルローストリアセテートフィルム1上に下記紫外線硬化樹脂層塗布液1をダイコーターにてドライ膜厚として10μmになるように塗布速度20m/分で塗布した後、紫外線硬化樹脂層の残留溶剤量が2%以下になるまで乾燥した。
【0217】
〈紫外線硬化樹脂層塗布液1〉
下記材料を攪拌、混合し紫外線硬化樹脂層塗布液1とした。
【0218】
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート) 226質量部
イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ製) 25質量部
FZ−2222(日本ユニカー製、10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液) 1質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 101質量部
酢酸エチル 101質量部
次いで、図1(a)の装置により下記条件にて窒素ガスをパージしながら紫外線照射を行ってUV樹脂硬化を行いハードコートフィルム1を作製した。
【0219】
紫外線照射光源、照射条件:高圧水銀ランプ(日本電池社製 HN−64NL)、500mJ/cm2、1秒照射
窒素ガスパージ:500L/分
得られたハードコートフィルム1を用いて、紫外線硬化樹脂層の上に下記反射防止層を設け、反射防止防止フィルム1を作製した。
【0220】
〔反射防止層の塗設〕
反射防止層の屈折率と金属酸化物微粒子の粒径の測定は下記の通りである。
【0221】
(屈折率)
各屈折率層の屈折率は、各層を単独で下記で作製したハードコートフィルム上に塗設したサンプルについて、分光光度計の分光反射率の測定結果から求めた。分光光度計はU−4000型(日立製作所製)を用いて、サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率の測定を行った。
【0222】
(金属酸化物微粒子の粒径)
使用する金属酸化物微粒子の粒径は電子顕微鏡観察(SEM)にて各々100個の微粒子を観察し、各微粒子に外接する円の直径を粒子径としてその平均値を粒径とした。
【0223】
(中、低屈折率層の塗設)
上記フィルムの紫外線硬化樹脂層上に、下記中屈折率層塗布液1及び低屈折率層塗布液1を塗布、次いで各々紫外線照射、乾燥し反射防止フィルム1を作製した。
【0224】
紫外線を照射する際は、図1(a)の装置により下記条件にて窒素ガスをパージしながら紫外線照射を行った。
【0225】
紫外線照射光源、照射条件:高圧水銀ランプ(日本電池社製 HN−64NL)、500mJ/cm2、1秒照射
窒素ガスパージ:500L/分
〈中屈折率層塗布液1〉
下記材料を攪拌、混合し中屈折率層塗布液1とした。
【0226】
導電性アンチモン酸亜鉛微粒子分散液(セルナックスCX−Z610M−F2、日産化学社製、溶媒MeOH、固形分60%) 200質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(マトリックス) 50質量部
イルガキュア184(光重合開始剤) 3質量部
γ−メタクリロキシプロピルメトキシシラン(信越化学社製KBM503)
8質量部
ポリ−n−ブチルメタクリレート(マトリックス) 5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 720質量部
イソプロピルアルコール 1470質量部
メチルエチルケトン(MEK) 250質量部
中屈折率層の厚さは78nm、屈折率は1.62であった。
【0227】
〈低屈折率層塗布液1〉
下記材料を攪拌、混合し低屈折率層塗布液1とした。
【0228】
下記テトラエトキシシラン加水分解物A 59.5質量部
下記中空シリカ系微粒子分散液 35質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM503)
5質量部
FZ−2222(日本ユニカー製、10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液) 0.5質量部
イソプロピルアルコール 500質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 300質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
低屈折率層の厚さは95nm、屈折率は1.37であった。
【0229】
〈テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製〉
テトラエトキシシラン58gとエタノール114gを混合し、これに酢酸水溶液(1%)を60g添加した後に、25℃で1時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
【0230】
〈中空シリカ系微粒子分散液の調製〉
平均粒径5nm、SiO2濃度20%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として0.98%のケイ酸ナトリウム水溶液9000gとAl23として1.02%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20%のSiO2・Al23核粒子分散液を調製した。(工程(a))
この核粒子分散液500gに純水1700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2濃度3.5%)3000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。(工程(b))
次いで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO2・Al23多孔質粒子の分散液を調製した(工程(c))。上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750g及び28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO228%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。次いで、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20%の中空シリカ系微粒子分散液を調製した。
【0231】
この中空シリカ系微粒子の第1シリカ被覆層の厚さは3nm、平均粒径は47nm、MOX/SiO2(モル比)は0.0017、屈折率は1.28であった。ここで、平均粒径は動的光散乱法により測定した。
【0232】
得られた反射防止フィルム1を用いて下記耐擦傷性試験を行った。
【0233】
《耐擦傷性》
フィルムを平滑な台の上に置き、#0000のスチールウール上に1cm2あたり200gの荷重をかけて、フィルム表面を20往復擦り、擦る方向と垂直方向に1cmの範囲で発生した傷の本数を目視で数え、以下の基準で評価した。
【0234】
◎:0本
○:1〜5本
△:5〜20本
×:20本以上
その結果、耐擦傷性評価は○である良好な皮膜特性を有していた。
【0235】
実施例2
図1(b)の装置を用いた以外は実施例1と同様にして、反射防止フィルム2を作製し、同様に耐擦傷性を評価した。
【0236】
その結果、耐擦傷性評価は○である良好な皮膜特性を有していた。
【0237】
実施例3
図2のローラーにより支持されたギャップ設定プレートを、図1(a)に付加した装置を用いた以外は実施例1と同様にして、反射防止フィルム3を作製し、同様に耐擦傷性を評価した。尚、ギャップは1mmに設定した。
【0238】
その結果、耐擦傷性評価は◎であり極めて良好な皮膜特性を有していた。
【0239】
実施例4
実施例1で用いた装置に、更に図3(a)の冷却装置を加え、5℃の冷却水を循環させた以外は実施例1と同様にして、反射防止フィルム4を作製した。
【0240】
同様に耐擦傷性を評価したところ、耐擦傷性評価は○である良好な皮膜特性を有していた。また、窒素ガスパージボックス1による擦り傷の発生は見られなかった。
【0241】
比較例1
実施例1で用いた窒素ガスパージボックスを用いずに、単に反射防止フィルムをバックロールに巻き回した部分に、高圧水銀ランプにより紫外線を照射して比較例の反射防止フィルム1を作製した。
【0242】
同様に耐擦傷性を評価したところ、耐擦傷性評価は×で皮膜の硬化に問題を有していた。
【0243】
比較例2
特開2005−34734の図2で示されている窒素ガスパージボックスを用いた以外は実施例1と同様にして、比較の反射防止フィルム2を作製した。
【0244】
同様に耐擦傷性を評価したところ、耐擦傷性評価は×で皮膜の硬化に問題を有していた。また、窒素ガスパージボックスによる擦り傷の発生が見られた。
【0245】
次いで、下記の方法に従って、上記作製した反射防止フィルム3と、位相差フィルムであるコニカミノルタタックKC8UCR−5(コニカミノルタオプト(株)製)、各々1枚を偏光板保護フィルムとして用いて偏光板を作製した。
【0246】
(a)偏光膜の作製
厚さ120μmの長尺のポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gの比率からなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gの比率からなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し長尺の偏光膜を得た。
【0247】
(b)偏光板の作製
次いで、下記工程1〜5に従って、偏光膜と偏光板用保護フィルムとを貼り合わせて偏光板を作製した。
【0248】
工程1:KC8UCR−5を2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に60℃で90秒間浸漬し、次いで水洗、乾燥させた。反射防止フィルム3の反射防止層を設けた面には予め剥離性の保護フィルム(PET製)を張り付けて保護した。
【0249】
工程2:前述の偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬した。
【0250】
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、それを工程1でアルカリ処理したKC8UCR−5と反射防止フィルム3で挟み込んで、積層配置した。
【0251】
工程4:2つの回転するロールにて20〜30N/cm2の圧力で約2m/minの速度で貼り合わせた。このとき気泡が入らないように注意して実施した。
【0252】
工程5:80℃の乾燥機中にて工程4で作製した試料を2分間乾燥処理し、偏光板を作製した。
【0253】
市販の液晶表示パネル(NEC製 カラー液晶ディスプレイ MultiSync LCD1525J:型名 LA−1529HM)の最表面の偏光板を注意深く剥離し、ここに偏光方向を合わせた上記偏光板を、反射防止フィルム3が表面側になるように張り付け画像表示装置を作製した。
【0254】
評価の結果、本発明の反射防止フィルム3を使用した画像表示装置は、偏光板作製時の傷の発生もなく、平面性、色ムラに優れ、視認性、色調、表示性ともに良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】本発明に係る紫外線硬化樹脂の硬化方法の模式図である。
【図2】本発明に係るギャップ設定プレートを示す模式図である。
【図3】本発明に好ましい窒素ガスパージボックスの冷却手段示す模式図である。
【符号の説明】
【0256】
F シート
1 窒素ガスパージボックス
2 UVランプハウス
3 UVランプ
4 反射板
5 ダクト
6 連結ダクト
10 石英ガラスまたは熱線カットガラス
11 給気ダクト
12 窒素ガス供給部
13 バックロール
20 開口部
30 ギャップ設定プレート
31 ローラ
32 摺動部
33 プレート部
34 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化樹脂層が塗布されたシートをバックロールに巻き回し、該巻き回した部分にバックロール表面近傍に設置された窒素ガスパージボックスより窒素ガスパージしながら紫外線を照射し硬化する紫外線硬化樹脂層の硬化方法において、
該窒素ガスパージボックスのサイドプレートの縁の形状がバックロールの中心に対して円弧状と非円弧状とで形成されていることを特徴とする紫外線硬化樹脂層の硬化方法。
【請求項2】
前記窒素ガスパージボックスが分割されており、少なくとも紫外線照射部と窒素出口部の2室よりなり、該窒素出口部の縁の形状がバックロールの中心に対して非円弧状であることを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化樹脂層の硬化方法。
【請求項3】
前記窒素ガスパージボックスが少なくとも紫外線照射部と窒素出口部の2室よりなり、紫外線照射部の窒素ガス圧力が窒素出口部より陽圧であることを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線硬化樹脂層の硬化方法。
【請求項4】
前記窒素ガスパージボックスを冷却しながら紫外線を照射し硬化することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の紫外線硬化樹脂層の硬化方法。
【請求項5】
紫外線硬化樹脂層が塗布されたシートをバックロールに巻き回し、該巻き回した部分にバックロール表面近傍に設置された窒素ガスパージボックスより窒素ガスパージしながら紫外線を照射する紫外線照射装置において、
該窒素ガスパージボックスの入り口または出口に該バックロールの表面に接触しているローラーにより支持され、該窒素ガスパージボックスと摺動可能で実質的に該バックロールと密着して設置されているギャップ設定プレートを設けたことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項6】
前記紫外線照射装置に冷却手段が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−144301(P2007−144301A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341677(P2005−341677)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】