説明

組成物における水分の変動を抑制する方法とその用途

組成物における水分変動抑制力法、水分変動が抑制された組成物及び組成物における水分変動抑制剤を提供することを課題とし、組成物に、有効成分として、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有せしめる水分変動抑制方法を提供し、この糖質誘導体を含有する水分変動抑制された組成物及びこの糖質誘導体を有効成分として含有する水分変動抑制剤とその用途を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、組成物における水分変動抑制方法とその用途に関し、詳しくは、組成物にα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有せしめることを特徴とする水分変動抑制方法、この方法により得られる水分変動抑制された組成物、及び、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分とする、組成物における水分変動抑制剤とその用途に関するものである。
【背景技術】
一般に、飲食品、化粧品、医薬品等の組成物は複雑な組成と特有の物性、味、香り、色艶、食感などの品質、性状や機能などを有している。これらの品質、性状や機能は、その組成物の製造過程から、流通、貯蔵過程を経て、最終的に消費者に至るまでの間に、組成物の成分組成、組織構造、組成物のおかれる環境条件などにより徐々に劣化することが知られている。環境条件としては、酸素、光線、水分、温度の他、衝撃、振動、圧縮、微生物、生物などが劣化因子として知られている。これらの物理的、化学的、或いは生物学的な環境条件が、組成物にとって不適当であれば、これらのうちで、何れが先発しても、続いて他の変化が誘発されるか、色々な変化が並行して進行し、品質劣化の現象が進行することから、これらの条件の変化をコントロールすることは、当業者にとって、極めて重要な問題とされてきた(例えば、『洋菓子製造の基礎と実際』、第303〜372頁、株式会社光琳(平成3年発行)参照)。
組成物の品質劣化の理化学的な要因として最も影響の大きなもののひとつは、温度変化と乾燥・吸湿である。水分は組成物の形状、組織、風味などに固有の特性を付与するものであり、糖質、酸、アルカリ、塩などの水溶性の原料成分を溶解したり、澱粉や蛋白質などの親水性コロイド物質に吸着されてゲル状となり、組織形成やこれらの成分の安定化に寄与しており、又、脂質とエマルジョンを形成して乳化分散するなどの様々な状態で存在している。組成物中の水は、普通の水溶液中の水の性質をそのまま維持した自由水と呼ばれる状態のものと、通常の液体の水とは異なり、蒸発しにくく、ものを溶かす能力もなく、微生物などが利用することができない結合水と呼ばれる状態の水が、それぞれの組成物やそのおかれた環境に応じて、一定の比率で存在している。そして、組成物に含まれる水分量の僅かな変化によって、その組成物に特有の特性の劣化、さらには、微生物汚染や貯蔵性の低下などをきたすことが知られている。
例えば、ゼリー、ババロアなどの凝固生地、バタークリーム、カスタードクリームなどのクリーム生地、ピューレ、ジャムなどの果実加工品などの高水分系の親水性ゲル状態の材料は、特に環境条件に変化がなくても、経時的に水分を分離し(離水)、外観を悪くするだけでなく、味、香り、色、食感(テクスチャー)などの風味が低下し、微生物汚染を発生するなどの品質劣化、若しくは、その前兆を示すこととなる。
また、組成物における水分は、そのおかれた環境により変化し、一定の温度条件では、その時の外気の相対湿度(以下、単に「湿度」と表記する。)に支配され、組成物がその水分を外気相に放湿するか、或いは、外気相から吸湿して、外気相と組成物中の水分とが平衡に達した水分量となる(平衡水分量)。このような組成物中の水分変動にともない、物性的な変化や理化学的な性質の変化が起こって、組成物を構成する蛋白質の変性や糊化澱粉の老化の発生、脂質の酸化や分解の促進などにより、固化、収縮、ひび割れ、褐変、溶解、潮解、結晶化、析出などが進行して、その組織、形状、味、香り、色、食感などの風味の劣化や、有効成分の失活、栄養成分の消失、さらには、微生物汚染などにより品質劣化を引き起こすことが知られている。従って、これら組成物にみられる水分変動を抑制することは、組成物の品質保持の上で極めて重要な課題である。
このような、水分変動に伴い発生する組成物の品質劣化は、飲食品分野、化粧品分野、医薬部外品分野、医薬品分野、日用品分野、雑貨分野、化学工業品分野などの広範な分野で起こり得る問題である。このため、組成物における水分変動を抑制することは、特定の分野に限らず、組成物の品質や機能を保持する上で極めて重要な課題のひとつである。
この課題を解決するための手段として、透湿性の低い包材、乾燥剤の封入、密閉容器、加湿器、デシケーターなどの使用により、外相の湿度の影響を最小限に留めることにより、組成物の平衡水分量を一定に保つ方法が用いられている(『洋菓子製造の基礎と実際』、第303〜372頁、株式会社光琳(平成3年発行)を参照)。しかしながら、これらの方法は、コストがかかったり、又、一度、組成物が開放系に置かれると、直ぐに水分変動が始まるなどの問題がある。
また、組成物における水分変動はその大部分が、自由水によるため、これに水に親和性の高い、ゼラチンや寒天などの水溶性高分子類や、砂糖(ショ糖)、ソルビトール、α,α−トレハロース、マルチトールなどの糖質を添加することにより、組成物における水分変動を抑える方法などが用いられている(『洋菓子製造の基礎と実際』、第303〜372頁、株式会社光琳(平成3年発行)、特開平9−56342号公報、国際公開WO 02/088246号明細書参照)。しかしながら、現代の多様化した食生活に対応するためには、食品の味、香り、色、食感等の風味の低下をもたらすことなく、しかも、安全で、かつ、優れた水分変動抑制能を有する食品素材のさらなる開発が望まれている。
【発明の開示】
本発明は、組成物における水分変動により、組成物を構成する蛋白質の変性や糊化澱粉の老化の発生、脂質の酸化などが進行し、それに伴い、固化、収縮、ひび割れ、褐変、溶解、潮解、結晶化、析出などが進行して、その組織形状、味、香り、色、食感などの風味の低下や、有効成分の失活、栄養成分の消失、さらには、微生物汚染などの品質の劣化や機能の低下が発生し、進行するのを抑制するために、組成物における水分変動抑制方法を提供することを第一の課題とし、この水分変動抑制方法により得られる水分変動抑制された組成物を提供することを第二の課題とし、組成物における水分変動抑制剤とその用途を提供することを第三の課題とするものである。
本発明者らは、前述の課題を解決する目的で、糖質の利用に着目し、組成物における水分変動抑制方法について長年に渡り研究を進めてきた。その結果、α,α−トレハロースの糖質誘導体が、保水性に優れ、しかも、吸湿性がほとんどないことから、食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、餌料、雑貨、化学工業品など組成物における水分変動を最少に抑えることができるこという優れた作用を有することを見出し、組成物にα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有せしめることによる、組成物における水分変動抑制方法を確立するとともに、この水分変動抑制方法により水分変動抑制された組成物を確立し、さらに、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する、組成物のための水分変動抑制剤とその用途を確立し、本発明を完成するに至った。
本発明は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を組成物に含有せしめることにより、組成物における水分変動を抑制し、さらには、水分変動に伴って発生する、蛋白の変性、糊化澱粉の老化、脂質の酸化や分解を抑制し、組成物の品質を長期間安定に保持するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明でいう組成物とは、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、餌料、雑貨、化学工業品であって、これらの製造に利用される、原料、中間原料、或いは、原料に手を加えて、製造された製品であれば何れでもよく、組成物が、異なる物性を持つ複数の構成要素で構成されている場合には、その個々の構成要素をいう場合もある。また、野菜、穀物、芝、茶、果樹、花卉などの農産物や園芸作物などの植物体や、切花、茶葉、葉菜、根茎、根菜のような植物体の一部分であってもよい。
本発明でいう組成物における水分変動とは、組成物における水分(主として自由水)が組成物内で移動すること、組成物内から組成物外へ移行すること、及び/又は、組成物外から組成物内へ移行することを意味する。この水分変動は、組成物の置かれた外相の湿度に依存して発生する吸湿や乾燥や、隣接する組成物における水分量に依存して発生する水分の移行に伴うものだけではなく、蛋白の変性や糊化澱粉の老化などの組成物自体の変性に伴うものや、その組成物の性状の変化により発生する水分変動などの全てが含まれる。本明細書においては、これらを併せて「組成物における水分変動」という。
本発明の水分変動抑制方法において、水分変動抑制剤として組成物に含有せしめるα,α−トレハロースの糖質誘導体とは、分子内にα,α−トレハロース構造を有する3個以上のグルコースからなる非還元性オリゴ糖から選ばれる1種又は2種以上の糖質であれば、何れでもよく、より具体的には、α,α−トレハロース分子の少なくとも一方のグルコースに、モノ−グルコース、ジ−グルコース、トリ−グルコース及びテトラ−グルコースから選ばれる何れかが結合したものをいう。例えば、先に、本出願人が特開平7−143876号公報、特開平8−73504号公報、特許第3182679号公報、特開2000−228980号公報などにおいて開示した、α−マルトシルα−グルコシド、α−イソマルトシルα−グルコシドなどのモノ−グルコシルα,α−トレハロースや、α−マルトトリオシルα−グルコシド(別名α−マルトシルα,α−トレハロース)、α−マルトシルα−マルトシド、α−イソマルトシルα−マルトシド、α−イソマルトシルα−イソマルトシドなどのジ−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトテトラオシルα−グルコシド(別名α−マルトトリオシルα,α−トレハロース)、α−マルトシルα−マルトトリオシド、α−パノシルα−マルトシドなどのトリ−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトペンタオシルα−グルコシド(別名α−マルトテトラオシルα,α−トレハロース)、α−マルトトリオシルα−マルトトリオシド、α−パノシルα−マルトトリオシドなどのテトラ−グルコシルα,α−トレハロースなど、グルコース重合度が3乃至6からなるα,α−トレハロースの糖質誘導体が好ましい。
これらのα,α−トレハロースの糖質誘導体は、その由来や製法は問わず、発酵法、酵素法、有機合成法などにより製造されたものでもよい。例えば、本出願人が、特開平7−143876号公報、特開平8−73504号公報、特許第3182679号公報、特開2000−228980号公報で開示した酵素法により澱粉や澱粉の部分加水分解物から直接製造してもよく、或いは、特開平7−143876号公報で開示したマルトテトラオース生成アミラーゼ、特公平7−14962号公報で開示したマルトペンタオースを高率に生成するα−アミラーゼ或いは特開平7−236478号公報で開示したマルトヘキサオース・マルトヘプタオース生成アミラーゼなどを使用して、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオースなどの特定のオリゴ糖の含量を高めた澱粉部分加水分解物とし、これに特開平7−143876号公報で開示した非還元性糖質生成酵素を作用させて製造することも随意である。また、澱粉、或いは、澱粉の部分加水分解物とα,α−トレハロースとを含有する溶液にシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼなどのグリコシル基の転移能を有する酵素を作用させて調製することも随意である。これらの方法により得られる反応液は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する糖質を含む溶液として、そのまま、又は、部分精製して、或いは、高純度に精製して使用することも随意である。また、これらの製造方法は、豊富で安価な澱粉質を原料とし、高効率かつ安価にα,α−トレハロースの糖質誘導体を製造できることから、工業的に有利に利用できる。
前述のα,α−トレハロースの糖質誘導体のうち、とりわけ、モノ−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトシルα,α−トレハロース、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース及びα−マルトテトラオシルα,α−トレハロースなど、分子の末端にトレハロース構造を持つ糖質が、水分変動抑制作用が強く、本発明に有利に利用できる。この糖質の一例としては、特開平7−143876号公報に開示されたα−マルトトリオシルα−グルコシド(別名α−マルトシルα,α−トレハロース)を主成分として含有し、他に、α−マルトシルα−グルコシド(別名α−グルコシルα,α−トレハロース)、α−テトラオシルα−グルコシド(別名α−マルトトリオシルα,α−トレハロース)、α,α−グリコシルα−グルコシド(別名α−グリコシルα,α−トレハロース)から選ばれる1種又は2種以上を含有する糖質が望ましく、とりわけ、α−マルトシルα,α−トレハロースを、無水物換算で、約5質量%(以下、本明細書では特に断らない限り、「質量%」を単に「%」と表記する。)以上、望ましくは約10%以上、さらに望ましくは約30%以上含有する糖質が望ましい。
また、前記糖質のうちα−マルトシルα−グルコシドやα−マルトテトラオシルα−グルコシドについては、特許第3182679号公報或いは特開2000−228980号公報に開示されているように結晶状態のものも知られている。しかしながら、本発明の水分変動抑制効果を発揮させるためには、例えば、シラップ状態やガラス状態などの非晶質状態で利用するのが望ましい。
また、本発明の水分変動抑制方法において、有効成分として組成物に含有せしめるα,α−トレハロースの糖質誘導体は、前述したように、非晶質状態が望ましく、非晶質状態のものを含むものであれば、その形状を問わず、例えば、シラップ、マスキット、ペースト、粉末、固状、顆粒、錠剤などの何れの形状であってもよく、そのままで、又は、必要に応じて、増量剤、賦形剤、結合剤などと混合して、顆粒、球状、短棒状、板状、立方体、錠剤など各種形状に成型して使用することも随意である。
また、本発明の水分変動抑制方法は、有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体を、対象とする組成物に含有せしめることにより、所期の効果を発揮することができる。従って、いずれの分野でも、本発明の水分変動抑制方法において、有効成分として組成物に含有せしめるα,α−トレハロースの糖質誘導体は、対象とする組成物の組成や使用目的を勘案して、原料の段階から製品の段階に至るまでの適宜の工程で利用することができる。
本発明の水分変動抑制方法においては、有効成分のα,α−トレハロースの糖質誘導体を、目的の組成物が完成するまでの工程で、或いは、完成品に対して、含有せしめればよい。その方法としては、例えば、混和、混捏、溶解、融解、分散、懸濁、乳化、逆ミセル化、浸透、晶出、散布、塗布、付着、噴霧、被覆(コーティング)、注入、浸漬、固化、担持などの公知の方法が適宜に選ばれる。本発明の水分変動抑制剤を組成物に含有せしめる量は、組成物における水分変動を抑制できる量であれば特に制限はなく、通常、組成物の総質量に対して、無水物換算で、α,α−トレハロースの糖質誘導体として、約0.5%以上、望ましくは、約5%以上が好適であり、約10%以上含有せしめるのが特に望ましい。通常、約0.5%未満では、組成物における水分変動を抑制するには不充分である。α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有させる量の上限については、対象とする組成物の機能或いは使用目的などの妨げとならない限り特に制限はない。なお、本発明の水分変動抑制方法では、例えば、タレなどにα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有させて塗布、噴霧又は浸漬するなどの方法により組成物の表面を被覆するような場合には、組成物全体に対して、α,α−トレハロースの糖質誘導体を、0.5%以上となるように含有せしめる必要はなく、組成物の被覆部分における、その最終濃度が、無水物換算で、約0.5%以上、望ましくは約5%以上が好適であり、約10%以上が特に望ましい。また、野菜、果実、魚介類や魚介類の卵などをブランチングなどの目的で、茹でる、蒸すなどの方法により加熱処理する場合には、α,α−トレハロースの糖質誘導体を約0.5%以上含有する溶液を使用するのが好適であり、約2%以上含有するものが望ましく、さらには、粉末状のα,α−トレハロースの糖質誘導体或いは、その高濃度の溶液を、直接、これらの組成物の表面にふりかける乃至塗布したり、α,α−トレハロースの糖質誘導の溶液を、保水性の高い紙などに含浸させたもので、対象とする組成物を被覆する事により、該組成物の水分変動抑制することも随意である。その具体例を挙げれば、例えば、米飯や麺類などの澱粉系食品において、無水物換算で、本発明の水分変動抑制剤を約10〜50%、α,α−トレハロースを約10〜50%、その他の糖質を0〜80%含有する、濃度約50〜70%のシラップを約80℃に加温し、これを、炊飯直後の米飯や、茹でて水切りした麺に対して、それらの質量の約5〜80%、望ましくは、約15〜40%添加して軽く攪拌し、そのまま或いは適宜攪拌しながら、約1〜1.5時間程度、置き蒸らすか或いは加温して、急激な温度の変化がないように保温し、これらの食品の内部に、糖質を含浸させて、本発明の効果を達成することも有利に実施できる。
本発明のα,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する水分変動抑制剤は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、総質量の約10%以上、望ましくは、約20%以上を含有せしめるのが好適であり、約30%以上が特に望ましい。
また、本発明の水分変動抑制剤は、α,α−トレハロースの糖質誘導体、又は、これを含むα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質が、組成物における水分変動を抑制し、組成物における水分量を一定に保持することから、水分変動に伴い発生する蛋白質の変性、糊化澱粉の老化、脂質の酸化や分解、ベタ付き、テクスチャーの変化などにより組成物の品質が劣化するのを抑制し、デポジット特性を向上することができる。また、α,α−トレハロースの糖質誘導体、又は、これを含むα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質は、通常、低甘味であり、しかも、酸味、塩から味、渋味、旨味、苦味などの他の呈味を有する各種物質とよく調和し、耐酸性、耐熱性も大きいので、水分変動抑制剤として、組成物の、吸湿防止、離水防止、ベタ付き防止、保水、こく味付け、ボディ感の賦与などの目的で有利に利用できるだけでなく、一般の飲食物に使用しても、品質改良剤などとして有利に利用できる。さらに、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質は、水分変動抑制能が大きいことから、米菓、クッキー、ピケット、パイ、ケーキをはじめとする焼き菓子、チョコレート、キャンディー、ガム、グミ、ゼリーなどの菓子、コーヒー、アーモンドなどのナッツ、穀類、ゴマ、海苔などの食品、錠菓、健康食品、特別用途食品、医薬品などの各種錠剤などの表面に塗布したり、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質のシラップに浸漬した場合には、適度な水分を保持しながら、表面が速やかに乾燥した状態となり、高湿度の条件でも吸湿しにくくなることから、これら食品のコーティングや糖衣掛けにも有利に利用できる。特に、アーモンドなどのナッツ、穀類、コーヒー豆、ゴマの種子などに、その焙煎前、焙煎中、或いは焙煎直後に、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質のシラップを噴霧したり、シラップに浸漬してその表面をコーティングすることにより、これらの焙煎品は、水分変動が抑制され、脂質の酸化も抑制されるので、焙煎直後の好ましい風味が長期間保持される。また、上記、菓子、食品或いは医薬品などに、糖衣掛けする場合、糖衣に使用するシラップ(糖衣掛け用の基材)は、本発明の水分変動抑制剤とα,α−トレハロースとを併用するのが望ましく、必要に応じて、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール、グルコースやマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖、アラビアガム、グアガム加水分解物、ブルランなどの結着剤、高甘味甘味料、香料、色素などを併用することも随意である。このシラップに含まれる糖質中のα,α−トレハロースの糖質誘導体及びα,α−トレハロースの含量は、ハード糖衣掛け、セミハード糖衣掛け、ソフト糖衣掛け、或いはフォンダン糖衣掛けができる配合であれば、特に制限はないが、通常、無水物換算で、α−トレハロースの糖質誘導体が、5〜30%であり、10〜20%が望ましい。α,α−トレハロースの含量は、無水物換算で、70〜95%が望ましい。結着剤は、通常0〜0.5%が使用され、0〜0.2%程度が望ましい。また、このシロップに含まれる全糖質の濃度は、無水物換算で、50〜70%が望ましく、その温度は、45〜70℃が望ましく、その際の、送風温度は、20〜45℃程度が望ましい。
本発明の水分変動抑制剤は、例えば、アミノ酸、ペプチド、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、マヨネーズ、ドレッシング、粉末すし酢、中華の素、ソース、ケチャップ、焼肉のタレ、カレーのルウ、シチューの素、スープの素、各種ダシの素、肉の熟成・品質保持用の加工肉処理液、ハム用のピックル液、魚介類や魚卵加工用の調味料、核酸系調味料、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガーなどの調味料類や甘味料類に有利に利用できる。
また、例えば、せんべい、あられ、おこしなどの米菓類、求肥、最中、餅、おはぎ、まんじゅう、かるかん、ういろう、各種の豆を使用したつぶあん、こしあん、加合あんなどのあん、羊羹、水羊羹、錦玉、きんつば、スィートポテト、ゼリー、ハバロア、カステラ、どら焼き、カリントウ、飴玉などの各種和菓子類、ビスケット、クッキー、クラッカー、パイ、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、ペストリー類などの焼き菓子、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、チョコレート、チューインガム、ヌガー、ゼリービーンズ、キャラメル、マシュマロをはじめとするソフトキャンディ、ハードキャンディ、フォンダント、アイシングなどの洋菓子類、スナック菓子類、シリアル類、センターリキッド菓子類、メレンゲ菓子類、食パン、ロールパン、アンパン、マフィンなどのパン類、シロップ、氷蜜、コーヒー、ココア、緑茶或いは抹茶入りのシラップなどのシロップ類、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、スプレッド、コーヒー、ココア、緑茶或いは抹茶などのペースト、野菜のペーストなどのペースト類、ジャム、マーマレード、プレザーブ、果実のシロップ漬、糖果、カット果実、フルーツソースなどの果実の加工品類、もやし、大豆もやし、そばの若芽、カイワレ大根、アルファルファ、ブロッコリースプラウトなどの発芽野菜、青汁などの野菜ジュース、カット野菜、サラダ、カイワレ大根、アルファルファ、もやし、ブロッコリースプラウトなどの発芽植物、野菜の煮物などの野菜の加工食品類、小麦、米、そば、コーンなどの穀類の胚芽、大豆、小豆などの豆の胚軸やそれらの加工品、福神漬、べったら漬、千枚漬、らっきょう漬、たくあん漬、白菜漬、梅干やそれらのつけものを製造するための浅漬けの素などの漬物の素類、白飯、おにぎり、おこわ、おかゆ、寿司飯、炊き込みご飯、α化米などの米飯類、豆乳、豆腐、高野豆腐、納豆、甘納豆、黒豆などの煮豆などの豆の加工品類、うどん、和そば、ラーメン、パスタなどの麺類、お好み焼き、タコ焼き、タイ焼き、クレープ、コロッケ、餃子、シュウマイ、春巻き、ハムやソーセージなどの畜肉加工品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、天ぷらなどの魚肉加工品類、ウニ、イカの塩辛、酢こんぶ、さきするめ、フグのみりん干し、トビコ、イクラなどの魚卵、味付け海苔、小魚の珍味、乾燥珍味などの各種珍味類、焼き肉、蒲焼き、団子、煎餅などの味付けに使用するたれ類、海苔、山菜、スルメ、小魚、貝などで製造されるつくだ煮類、煮豆、ポテトサラダ、こんぶ巻などの惣菜食品、卵、ゆで卵、オムレツ、卵焼き、だし巻き卵、茶碗蒸し、卵黄、卵白などの卵加工品類、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品類、魚肉、畜肉、果実、野菜、あるいは、これら飲食品の冷凍品、冷蔵品、チルド品、レトルト品、乾燥品、凍結乾燥品、加熱加工品、さらには、野菜のビン詰類、缶詰類、プリンミックス、ホットケーキミックス、バッターミックスなどのミックス類、即席しるこ、即席スープなどの即席食品、離乳食、治療食、ペプチド食品、清酒、合成酒、リキュール、洋酒、ビール、発泡酒などの酒類、お茶、紅茶、コーヒー、ココア、各種ジュース、炭酸飲料、乳飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料などの清涼飲料水、業務用或いはポーションタイプの水や湯で希釈して使用するこれらの濃縮品などの各種飲食品に有利に利用できる。本発明において、本発明の水分変動抑制剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体、或いは、それを含有する糖質は、ガラス転移温度が高いことを見出し、組成物に含有させると、一般の水飴などを使用した場合に比して、そのガラス転移温度を、高くできることが判明したので、この水分変動抑制剤は、ガラス化組成物の保存性の向上にも極めて有利に利用できることが明らかになった。例えば、『食品とガラス化・結晶化技術』、株式会社サイエンスフォーラム、第3〜60頁(2000年発行)に記載されているように、食品をはじめとする組成物の多くは、このガラス化の性質を利用して調製されており、ガラス化は、該組成物の貯蔵性・保存性と密接に関与していることから、食品のデザインに欠かせない因子となっている。組成物のガラス化は、溶解又は溶融状態から結晶化させることなく、固体化して得られるもので、その性質は、一般的に、組成物の温度と含有する水分量に依存しており、温度や水分が高くなると、食品の場合、ガラス状態からラバー状態といわれる状態に変化し、粘性を帯びてくる。この状態の変化が起こる温度をガラス転移温度と呼んでいる。このガラス化組成物は、その置かれている環境の温度が、ガラス転移温度より高くなると、軟らかくなり、付着やべた付きなどの品質変化や、化学・酵素反応による劣化、生細胞の減少も起こり易くなる。さらに、温度が高まると溶解や結晶化の現象も起こり易くなる。逆に、ガラス転移温度以下では、硬くて、パリパリ感やサラサラ感があり、物理化学的に分子の運動が著しく低下しているためにメイラード反応や酸化反応などの化学反応やアミラーゼやプロテアーゼなどの酵素反応を受けにくく、その品質が安定しているのが特徴である。従って、α,α−トレハロースの糖質誘導体のもつ水分の変動抑制作用には、このα,α−トレハロースの糖質誘導体のガラス転移温度を高くする性質が、大きく寄与していると考えられ、比較的高い温度においても、組成物のガラス化状態が維持されることで、水分子の運動が抑制され、その変動が抑制されると共に、該組成物の安定性が向上されるものと考えられる。ガラス化を利用した組成物の代表的な例としては、ハードキャンディなどのキャンディや中華ポテトなどのキャンディコート、フォンダント、ベッコウアメ、綿アメ、クッキー、チョコレート、おこし、カリントウ、天ぷらの衣、パスタ、麺類、α化米、スナック菓子、湯葉、高野豆腐、焼麩、鰹節、マーガリン、ファットスプレッド、アイスクリーム等の冷菓類や冷凍すり身などの各種冷凍食品、各種凍結乾燥食品、各種噴霧乾燥食品、各種凍結濃縮食品、プルランなどを使用した可食性フィルムなどを挙げることができ、乾燥状態や冷凍状態の細菌(ヨーグルト、漬け物のような発酵食品などに含有されるものも含む)、ウイルスなどの微生物、植物の種子、動植物の細胞、組織、器官、臓器などもこれに含まれる。α,α−トレハロースの糖質誘導体を、組成物のガラス転移温度の上昇剤(以下、本明細書では「ガラス化剤」という。)として使用する場合、特に制限はなく、それ単独で使用することも、α,α−トレハロースなどの糖質や多糖類などのような、ガラス転移温度の上昇効果の高い物質と併用することも随意である。また、組成物へのα,α−トレハロースの糖質誘導体の添加量は、本発明の効果を損なわず、且つ、ガラス転移温度の上昇が効果的に得られる量であれば、特に制限はないが、キャンディの場合には、これに使用する糖質の総質量に対して、無水物換算で、約12%以上、望ましくは、約18%以上を含有せしめるのが好適であり、約24%以上が特に望ましい。通常、約6%以下では、キャンディのガラス転移温度を効果的に上昇させるには不充分である。
さらに、本発明の水分変動抑制剤は、家畜、家禽、ペット、その他蜜蜂、蚕、魚介類、エビ、カニなどの甲殻類、ウニ、ナマコなどの棘皮動物、昆虫などの飼育動物の幼虫、幼体、成体のための飼料、餌料などの水分変動抑制剤として、その品質を保持する目的で使用することもできる。また、発芽植物、幼苗、移植菌などの幼体やそれらの根からの水分の蒸散抑制や鮮度保持などの目的にも有利に利用できる。その他、タバコ、錠剤、トローチ、肝油ドロップ、化粧用、医薬部品用或いは医薬用のクリーム、シャンプー、リンス、ファンデーション、口紅、リップクリーム、練歯磨、液状歯磨き、口中清涼剤、口中香剤、うがい剤、目薬、眼や鼻の洗浄剤、石けん、洗剤などの嗜好品、化粧品、医薬部外品、医薬品などの固状、ペースト状、液状などの組成物における水分変動を抑制し、その品質を安定に保持する目的で利用できる。
また、本発明の水分変動抑制剤は、活性などを失い易い各種生理活性物質のような有効成分、又は、これを含む健康食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などに有利に利用できる。例えば、インターフェロン−α、−β、−γ、ツモア・ネクロシス・ファクター−α、−β、マクロファージ遊走阻止因子、コロニー刺激因子、トランスファーファクター、インターロイキンIIなどのリンホカイン、インシュリン、成長ホルモン、プロラクチン、エリトロポエチン、卵細胞刺激ホルモンなどのホルモン、BCGワクチン、日本脳炎ワクチン、はしかワクチン、ポリオ生ワクチン、痘苗、破傷風トキソイド、ハブ抗毒素、ヒト免疫グロブリンなどの生物学的製剤、ペニシリン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、硫酸カナマイシンなどの抗生物質、チアミン、リボフラビン、L−アスコルビン酸、カロチノイド、エルゴステロール、トコフェロール、ピロロキノンキノリンなどのビタミンやそれらの誘導体、肝油などのビタミン含有物、リパーゼ、エラスターゼ、ウロキナーゼ、プロテアーゼ、α−アミラーゼ、イソアミラーゼ、グルカナーゼ、ラクターゼなどの酵素、高麗人参エキス、スッポンエキス、クロレラエキス、アロエエキス、プロポリスエキス、アガリクス、レイシ、ロッカクレイシ、メシマコブなどのキノコエキス、カミツレエキス、ローズマリーエキスなどのハーブエキス、ドクダミエキスをはじめとする生薬エキス、スッポンエキスなどのエキス類及びこれらエキスの原材料となるキノコ類の菌体、ハーブ類、植物体、動物体などの加工品、ウイルス、乳酸菌、酵母などの生菌、ローヤルゼリーなどの各種生理活性物質やその精製品、又は、それらを含有する組成物に適用することにより、その有効成分が活性を失うことなく、長期にわたり安定で、且つ、高品質を維持する液状、ペースト状、又は、固状の健康食品や化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、ペットフードなどを容易に製造することができる。
また、本発明の水分変動抑制剤は、安定であることから、浸透圧調節剤、製剤の賦形剤、照り付与剤、保形剤、糊化澱粉の老化防止剤、蛋白質の変性抑制剤、さらには、鮮度保持剤として、野菜や切花のしおれや落下の防止、フィレーなどの魚肉、無頭エビなどのメト化抑制、黒化防止などの目的で、農産品、水産品、畜産品やそれらの加工品に利用することも有利に実施できる。さらには、農薬をはじめとする化学工業品の有効成分の賦形剤、安定化剤などとして使用することも随意である。また、飲食品などの組成物の、甘味付け、呈味改良剤、品質改良剤などとして有利に利用できるだけでなく、強い保湿性を有していることから、グリセロールの代替として、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、餌料、雑貨、化学工業品などに利用することも有利に実施できる。
さらには、本発明の水分変動抑制剤を、単独で、或いは、その他公知の生長促進剤及び/又は界面活性剤と共に、芝、茶、稲、麦、トウモロコシ、野菜、花卉をはじめとする農産或いは果樹、園芸作物などの植物体(葉面、茎、根、花、種子などの各部分)に直接散布するが、植物体の周囲の土壌散布することにより、水分変動を抑制し、植物に冷凍耐性、乾燥耐性、塩類への耐性などを付与し、乾燥、霜害、塩害などからの保護の目的や、植物の生長の促進、細胞の賦活、細胞の保護、及び/又は、植物体、その果実、種子や穀物などの収穫量や果実の糖度の増加などの目的でも利用が可能である。なお、これらの植物体への使用の際に、本発明の水分変動抑制剤と共に用いられる界面活性剤としては、植物に障害を与えることが無いものであれば、特に制限はないが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ジアルキルスルホン酸サクシネートアルキルアンモニウム塩などが好適である。
本発明の水分変動抑制剤は、組成物における水分変動抑制効果を発揮できればよく、有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体のみで構成されていてもよいし、例えば、α,α−トレハロースの糖質誘導体の製造工程に由来するグルコース、イソマルトース、マルトース、オリゴ糖、デキストリンなどの澱粉由来のα,α−トレハロースの糖質誘導体以外の糖質を含有していてもよい。さらには、α,α−トレハロースの糖質誘導体とそれ以外の還元性糖質とを含む糖質を水素添加し、共存する還元性糖質を、その糖アルコールに変換したものであってもよい。また、水分変動抑制作用を向上させるために、必要ならば、アラビアガム、グアガム、カラギナン、ペクチン、ヘミセルロース、プルランなどの水溶性多糖類を併用することも有利に実施できる。
本発明の水分変動抑制剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体は、還元性澱粉部分分解物と比較して、還元性が低く安定であり、他の素材、特にアミノ酸やオリゴペプチド、ポリペプチド、蛋白質などのアミノ酸やアミノ基を有する物質と混合、加工しても、着色や褐変することも、異味や異臭を発生することもなく、混合した他の素材を損なうことも少ない。また、還元性澱粉部分加水分解物の場合とは違って、還元力が低いにもかかわらず低粘度であり、糊感のない滑らかな粘性で、デキストリン的な特徴を有しながら、デキストリンにみられる糊臭もなく、低吸湿性、易乾燥性、速溶性などの特徴を有し、低甘味ながら、良質で上品な、切れのよい穏やかな甘味を有しており、そのままで、各種組成物における水分変動抑制剤として有利に使用することができるだけでなく、デキストリンに代わる糖質としても利用することができる。必要ならば、分散性を高めたり、増量するなど、その使用目的に応じて、前記以外の還元性糖質、非還元性糖質、糖アルコール、高甘味度甘味料、水溶性多糖類、有機酸、無機酸、塩類、乳化剤、酸化防止剤、キレート作用を有する物質から選ばれる1種又は2種以上と併用することも随意である。さらに必要であれば、公知の着色料、着香料、保存料、酸味料、旨味料、甘味料、安定剤、増量剤、アルコール類、水溶性高分子などの1種又は2種以上を適量併用することも随意である。具体的には、例えば、粉飴、グルコース、マルトース、ショ糖(砂糖)、パラチノース、α,α−トレハロース、ネオトレハロース、イソトレハロース、異性化糖、蜂蜜、メープルシュガー、砂糖結合水飴、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、コージオリゴ糖、ガラクトシルグルコシド、ラクトスクロース、同じ出願人が国際公開WO 02/24832号明細書、国際公開WO02/10361号明細書、国際公開WO 02/072594号明細書などにおいて開示した環状四糖及び/又は環状四糖の糖質誘導体などの還元性或いは非還元性の糖質類、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、パニトールなどの糖アルコール類などと併用することも有利に実施できる。また、本発明の水分変動抑制剤を、ショ糖やα,α−トレハロースのような比較的結晶化しやすい糖質に対して、それらの糖質の使用目的に応じて、結晶の析出を抑制したり、結晶が大きく成長することを抑制し、好ましい食感や色艶を賦与するための結晶化の調節剤として使用することも随意である。
また、本発明の水分変動抑制剤の有効成分である、α,α−トレハロースの糖質誘導体は、混合する相手の糖質や糖アルコールと比較して、分子量が大きく異なる場合があり、得られる組成物の粘性、付着性などの物性が変化することがある。その場合には、水分変動抑制剤の機能が阻害されない範囲で、適宜の糖質と混合して、目的とする物性に調整すればよい。一般的には、非還元性の糖質が望ましく、例えば、α,α−トレハロース或いはマルチトールが使用できる。その使用量についても、本発明の水分変動抑制剤としての機能が阻害されない限り、特に制限はないが、通常は、無水物換算で、α,α−トレハロースの糖質誘導体1質量部に対して、約1質量部未満が使用され、望ましくは約0.5質量部未満、さらに望ましくは、約0.3質量部未満が好適である。ただし、本発明の水分変動抑制剤は、フォンダンやメレンゲなどのように、α,α−トレハロースを主成分とし、晶出させたα,α−トレハロースとともに水分を含有する必要のある組成物に使用する場合には、α,α−トレハロースの糖質誘導体の使用量を、α,α−トレハロースの使用量よりも下げて使用することも随意である。
また、本発明の水分変動抑制剤は、前記糖質や糖アルコールに加えて、さらに必要ならば、ジヒドロカルコン、ステビオシド、α−グリコシルステビオシド、レバウディオシド、グリチルリチン、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル、アセスルファムK、スクラロース、サッカリンなどの高甘味度甘味料やグリシン、アラニンなどのような他の甘味料類、リン酸、ポリリン酸、或いは、それらの塩類などの無機塩類の1種又は2種以上の適量と混合して使用してもよく、又、必要ならば、デキストリン、澱粉、乳糖などのような増量剤と混合して使用することもできる。さらに、乳酸、クエン酸、クエン酸ナトリウムなどのような有機酸やそれらの塩類、サポニン、イソフラボン、フラボノイド、茶カテキン、ブドウ種子抽出物などのポリフェノールやその糖転移物、エタノールなどのアルコール、レバン、アルギン酸ナトリウム、寒天、ゼラチン、カゼイン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニールアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリデキストロースなどの水溶性高分子類の1種又は2種以上と組み合わせて使用することも随意である。また、このα,α−トレハロースの糖質誘導体を前記有機酸やそれらの塩類及び/又はアルコール類と組み合わせた場合は、微生物の増殖抑制剤としても使用することができる。
また、特に飲食品分野においては、それら飲食品を構成する主成分や製造方法などに起因する脂質の酸化や分解、糊化澱粉の老化、蛋白質の変性、水分の吸湿や放湿によるテクスチャーの変化により、その品質の劣化や嗜好性の低下することが特に問題となる。これに対して、α,α−トレハロースの糖質誘導体は、単に、これら飲食品の水分変動を抑制するに止まらず、前記のような様々な作用を有していることから、例えば、油菓子、バタークリーム、キャラメル、フライ麺、コーヒーホワホイトナーなどの脂質系食品に対しては脂質の酸化や分解の抑制剤として、ハードキャンディ、、ソフトキャンディ、中華ポテト用のキャンディ、綿菓子などのキャンディ系食品に対しては、吸湿抑制剤、歯付き抑制剤、保形剤、光沢のよい艶をもつ薄い皮膜を形成するコーティング剤(糖衣を含む)として、また、たこ焼き、タイ焼き、お好み焼き、クレープなどの焼成食品類に対しては、そのまま放置、或いは、ラッピングするなどした際に、食品自身から発する水分により、その形状の変形、表面のパリットした食感の喪失やべたつきの発生を、効果的に抑制する保形剤として、団子類のたれ、焼き肉のタレなどの被覆系食品に対しては、保湿剤、艶出し剤、照り付与剤、付着性増強剤として、ウニ、トビコ、イクラなどの魚卵、みりんぼし、しらす干、煮干、ママカリの酢漬け、しおから、エビ、ヒラマサ、ブリ、スズキ、ハマチ、タイ、タラ、メジナ、アジ、イワシ、サバ、ニシンなどの魚類や、これら魚類のフィレーなどの水産物や水産加工品、牛肉、豚肉などの獣肉、鶏卵などの蛋白質系食品や野菜・果実などの加工品などに対しては、ブランチング処理をはじめとする加熱処理、乾燥工程、冷凍工程、凍結乾燥工程、冷凍保存、冷蔵保存、チルド保存、常温保存時などのメト化抑制剤や変性抑制剤として、野菜ジュース、コーヒー、紅茶、緑茶、抹茶など茶飲料、コーヒーや茶飲料、これらを濃縮したもの入りのシラップなどのシラップ類、野菜、果実、コーヒー、紅茶、緑茶、抹茶などのペースト類のようなクロロフィルやフラボノイドなどの色素含有食品の褐変防止効果や退色防止効果を有するので、それらの変色防止剤として、わさび、カラシ、ニンニク、ナツメグなどの香辛料や各種ハーブ類などのペーストやマスキットなどでは、その香味の保持剤として、サバの味噌煮、おでん、おでんだね、鍋物などの各種煮物やレトルト食品類(高圧加熱食品)では、具材に対する煮崩防止効果を有するので、これら食品の保形剤として有利に使用することができる。さらに、パスタ、麺、即席麺、米飯類、芋羊羹、団子、おはぎ、あん、餅、饅頭などの澱粉系食品に対しては、糊化澱粉の老化防止剤(α−アミラーゼ、β−アミラーゼなどのアミラーゼ剤を含有するものを含む)や、砂糖(ショ糖)を使用したあんのシャリ止め、或いは、製品相互間及び/又は製品とその包材(硫酸紙、アルミフオイルや柏餅の葉など)の結着防止剤などとして使用することも随意である。本発明の水分変動抑制剤に結着剤としての効果を期待する場合には、必要に応じて、アラビアガム、グアガム、カラギナン、ヘミセルロース、プルランなどの水溶性多糖類の1種又は2種以上を併用することも自由である。
また、通常、飲食品は、脂質、澱粉、蛋白質の何れをも含有することから、本発明の水分変動抑制剤は、何れの飲食品に適用しても、そのフレーバー、味、香り、色、食感などを長期間保持する作用を有しているので、風味保持剤として使用することもできる。また、例えば、比較的水分の多い餡を使用する、最中、饅頭、あんパンなどの菓子・パンやジャムなどを挟んだクッキーなどの様な水分含量の異なる2層以上の多層構造で構成された組成物にあっては、相互の水分変動抑制をすることから、それらの餡やジャムの乾燥が抑制され、逆に、最中種、饅頭生地、ビスケット生地などはベタ付きが抑制されることから、これらは、焼成直後のテクスチャーが長期間保持される。
さらに、従来から使用されているデキストリンなどの一部又は全部を、α,α−トレハロースの糖質誘導体で置き換え、粉末化基剤として使用し、青汁、野菜ジュース、果汁、コーヒー、紅茶、緑茶、抹茶などの茶抽出液、調味料、牛乳、鶏卵全卵、卵黄、卵白、油脂、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、香料、色素、健康補助食品や医薬品として使用される機能性物質、化学物質などの食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、その原材料、又は、加工中間物の溶液と混合して、噴霧乾燥、凍結乾燥、加熱乾燥など乾燥法により乾燥することにより、高品質の、例えば、粉末野菜ジュース、粉末コーヒー、粉末紅茶、粉末緑茶、粉末抹茶、粉末わさび、粉末カラシ、粉末ニンニクなどの粉末香辛料、各種ハーブ類の粉末、粉末調味料、粉末牛乳、粉末鶏卵、粉末油脂、粉末ビタミン、粉末ミネラル、粉末DHA、ペパーミントオイルなどの精油の粉末、粉末香料、粉末色素などの粉末組成物を調製することも容易であり、それらを用いて、顆粒、錠剤など固状物はもちろんのこと、必要に応じて、さらに、溶液、シラップ状、ペースト状、マスキット状の組成物を製造することも有利にできる。また、これらの組成物は、α,α−トレハロースの糖質誘導体の持つ水分変動抑制作用により、吸湿及び/又は放湿が抑制されるため、長期間保存した後も、調製直後の風味や機能が保持され、且つ、デキストリンを粉末化基剤として調製した組成物と比較して、冷水や温水などに速やかに溶解するという特性が賦与される。また、例えば、ペパーミントオイルをはじめとするハーブ類のオイル、レモンオイル、グレープフルーツオイルなどの柑橘類の果実オイルなどの精油や香料、イソチオシアネートやその誘導体、DHA、EPAをはじめとする脂肪酸や脂肪酸を構成成分とする脂質などの、水に不溶性或いは難溶性の成分を粉末化する際には、ガム質、ショ糖脂肪酸エステルなどの公知の乳化剤を加えて、これらの成分を乳化した後、真空乾燥や噴霧乾燥などの公知の方法により、乾燥、粉末化することも随意であり、このようにして調製した粉末は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有していることから、乳化したこれらの成分の品質が長期間安定に保持されると共に、乳化剤に由来する不快味や不快臭が抑制されるという特性が賦与される。
上記に加えて、本発明の水分変動抑制剤は、食品になめらかな口あたりを賦与できるので、冷凍デザート、クリーム、ドレッシング、コーヒーホワイトナー、ケーキ、ビスケットをはじめとする脂肪含有食品の脂肪の一部又は全部を、本発明の水分変動抑制剤で置き換えることにより、脂肪によるなめらかな口あたりを維持しつつ、低カロリーの脂肪代替食品を製造することができる。しかも、上記脂肪含有食品やパン、アイスクリーム、マヨネーズなどの乳化を利用して、及び/又は乳化剤を使用して製造される飲食品において、本発明の水分変動抑制剤を使用することにより、乳化剤を使用せずに、或いは、通常の使用量よりも減じて、風味の良い、クリーミーな口あたりの飲食品を製造することができる。この場合の本発明の水分変動抑制剤の飲食品への使用量は、乳化剤を使用せずに、或いは、通常の使用量よりも減じても、乳化剤を使用した場合と同様の口あたりのものが製造できる量であれば、特に制限はなく、通常は、飲食品の総質量の3〜30%が望ましい。さらに、本発明の水分変動抑制剤と、α,α−トレハロースとを併用することにより、より口あたりのよい飲食品を製造することができ、この場合、無水物換算で、全糖質の10〜90%、望ましくは50〜80%を、α,α−トレハロースで置き換えれば良い。
また、本発明の水分変動抑制剤は、上記の特徴に加えて、抗炎症作用を有し、且つ、熱、紫外線、乾燥などの外的ストレスからの細胞保護効果に優れ、また、細胞賦活作用を有していることから、医薬品、医薬部外品、化粧品などに、それ単独で使用しても、紫外線や他の因子により痛めつけられたり、炎症を起こしている皮膚の細胞新陳代謝を高めてその老化や炎症を抑制し、正常皮膚への回復を促進することができる上に、これらの皮膚外用剤に含まれる各種成分やそれらと併用される吸収促進剤などの皮膚や粘膜への刺激性や皮膚や粘膜へこれらを塗布や滴下などの方法により投与する際の物理的刺激を軽減することから、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する医薬品、医薬部外品、化粧品は、日焼けなどによる炎症やその他の障害により、それを塗布する際に痛みを伴うような部位へ投与したり、鼻、眼、咽喉などの粘膜部位へ投与する場合にも有利に使用することができる。しかも本発明の水分変動抑制剤を含有する化粧品や医薬部外品は、優れた保湿効果を示して、乾燥、洗剤などに起因する肌荒れ毛髪の傷みを抑制すると共に、皮膚や毛髪の表面をコートして、皮膚や毛髪のすべり性を改善し、それらに滑らかでソフトな感触と質感を賦与し、皮膚のバリア機能を強化することができる上に、皮膚の表皮やダメージ毛の表面のキューティクルを保護し、帯電防止効果もあることから、毛髪、毛根や皮膚の保護剤、皮膚又は毛髪のすべり改善剤、艶だし剤、コンディショニング剤、帯電防止剤、さらには、ヘアカラー剤の基材としても有利に使用することができる。また、本発明のα,α−トレハロースの糖質誘導体又はα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する糖質は、後述する乳化作用を有する各種物質や、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、濃グリセリン、ジプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオールなどの各種溶剤やソルビトール、マルチトールなどのポリオール類、ポリエチレングリコール(通常分子量が400〜6000のものを使用)、カルボキシビニールポリマーなどの合成高分子をはじめとする化粧品や医薬部外品に使用される各種の物質との相溶性も良く、白濁や沈殿を生じることもないので、乳化作用を有する物質を配合した化粧用、医薬部外品用或いは医薬用のクリームなどに使用するとグリセリン単独処方のものよりも、均質で細かな粒径の乳化粒子の調製を可能とする。さらには、洗顔フォーム、シャンプーやリンスなどに使用すると、その泡にコシ・弾力性を与え、泡の発生量を増加し、泡もちをよくし、泡による肌への物理的な刺激を抑制することから、これらの皮膚外用剤は、肌に負担をかけず気持ちよく洗えることに加え、濃密な泡が、毛穴の奥の汚れまでスッキリと取り除くことができるうえに、使用後は、肌にスッキリ感と潤いとを同時に賦与することができる。その上、本発明のα,α−トレハロースの糖質誘導体又はα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する糖質は、脂質の酸化及び/又は変敗の抑制、リポソームや細胞などの脂質膜の安定化や酸化抑制、アミノ酸型界面活性剤をはじめとする乳化作用を有する物質、色素などの色材、香料、アスコルビン酸、アスコルビン酸2−グルコシド、タンニンリキッド、蜂蜜、蜜蝋、プロポリス、アミノ酸類をはじめとする化粧品、医薬部外品、医薬品に使用される酸化を受けやすく、又、褐変・変色しやすい成分の酸化や分解の抑制、褐変・変色などを抑制し、異臭の発生を抑制するなどの作用を有していることから、化粧品、医薬部外品、医薬品、台所用や衣類用の洗剤などに、配合してもベタ付き感を与えない素材として有利に利用することができる。
従って、α,α−トレハロースの糖質誘導体は、水分変動抑制剤としてはもちろんのこと、甘味料、呈味改良剤、品質改良剤、品質保持剤、安定剤、賦形剤、製剤用添加剤、粉末化基剤、結着防止剤、艶出し剤、照り付与剤、保形剤、脂質の酸化や分解の抑制剤、変性抑制剤、変色防止剤、退色防止剤、褐変防止剤、鮮度保持剤、風味保持剤、メト化抑制剤、保湿剤、テクスチャーの改良剤、老化防止剤、細胞保護剤、細胞賦活剤、植物の生長促進剤などとして、飲食物、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、ガラス化剤、日用品、雑貨、化学工業品などの各種組成物に有利に利用できる。
以下、実験例に基づいて本発明の水分変動抑制方法についてより詳細に説明する。
<実験1>
<ガラス転移温度及びキャンディの型離れに及ぼすキャンディ用糖質の影響>
キャンディは、糖質を溶解又は溶融状態から結晶化させることなく、固体化して得られるガラス化食品の代表的なものの一つである。このガラス化状態は、一般に、組成物の温度と含有する水分量に依存しており、温度や水分が高くなると、ガラス状態からラバー状態といわれる状態に変化し、粘性を帯びてくる。この状態の変化が起こる温度をガラス転移温度と呼んでいる。このガラス転移温度は、ガラス化食品の品質保持にとって、欠くことのできない制御因子といわれており、食品のガラス転移温度を高くすることによって、食品の保存安定性を向上させることができる。また、後述する実験2〜4から明らかなように、本発明の水分変動抑制剤を使用したキャンディは、使用しないものに比して、室温に放置しても、水分変動が抑制されており、吸湿しにくく、ガラス状態を安定に維持することができる。このガラス化と本発明の水分変動抑制作用とは相関があると考え、α,α−トレハロースの糖質誘導体が、キャンディ用糖質のガラス転移温度に及ぼす影響を調べる実験を以下のように行った。すなわち、糖質として、砂糖(グラニュー糖)、水飴(株式会社林原商事販売、商標『マルトラップ』)、含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)、マルトテトラオース高含有水飴(株式会社林原商事販売、商品名「テトラップH」)、及び、後述する実施例1の方法で調製したシラップ状の水分変動抑制剤(α,α−トレハロースの糖質誘導体として、無水物換算で、α−グルコシルα,α−トレハロース4.1%、α−マルトシルα,α−トレハロース52.5%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース1.1%、α−グリコシルα,α−トレハロース0.4%を含有、濃度72.8%)を用いて、それぞれの糖質を無水物換算で、表1に示す配合1乃至配合7の配合比で含有する7種類のキャンディを、常法に従って調製した。なお、キャンディの調製は、これらの糖質に水を加えて濃度約70%のシラップを調製し、これらを、それぞれ手鍋にとって煮詰めた。

上記7種類の試料キャンディを、各々粉砕し、その約5mgをアルミ製の熱分析装置専用の粉体試料用容器に入れ密閉した後、その試料容器を熱分析装置DSC200C(SEIKO社製)に装着し、1分間に10℃の昇温条件で30℃から150℃に昇温した。昇温後、直ちに、試料容器を熱分析装置から取り出し、ガラス板上に置くことで急冷して、容器内の試料のキャンディを再度完全にガラス化した。このガラス化したキャンディが入った試料容器をそのまま熱分析装置DSC6200R(SEIKO社製)に装着し、−50℃に冷却後、1分間に10℃の昇温条件で150℃に昇温しながら比熱変化を測定し、吸熱シフトする温度をガラス転移温度として記録した。その結果を表2に示す。

表2から明らかなように、糖質の配合比が、無水物換算で、砂糖:水飴:シラップ状の水分変動抑制剤=6:3:1のキャンディ(配合4、α,α−トレハロースの糖質誘導体を無水物換算で約6%含有)のガラス転移温度は、12.9℃で、糖質の配合比が砂糖:水飴=6:4のキャンディ(配合1)のガラス転移温度13.2℃とほぼ同等の値を示したのに対して、シラップ状の水分変動抑制剤の配合比が2以上のキャンディ(配合5、配合6及び配合7、α,α−トレハロースの糖質誘導体を無水物換算で、各々約12%、18%、及び、24%含有)では、各々のガラス転移温度が、25.0℃、36.2℃及び38.3℃を示し、砂糖:水飴=6:4のキャンディ(配合1)と比べ、それぞれ11.8℃、23.0℃及び25.1℃高いガラス転移温度となった。また、糖質の配合比が砂糖:水飴:シラップ状の水分変動抑制剤=6:1:3のキャンディ(配合6)、砂糖:シラップ状の水分変動抑制剤=6:4のキャンディ(配合7)、砂糖:α,α−トレハロース=6:4のキャンディ(配合2)のガラス転移温度は、各々、36.2℃、38.3℃、及び、37.6℃とほぼ同等の値を示した。また、水分変動抑制剤を使用した配合7のキャンディは、水分変動抑制剤とほぼ同じグルコース重合度を有するマルトテトラオース高含有水飴を使用した配合3のキャンディに比して、13.7℃高いガラス転移温度を示した。以上の結果から、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する水分変動抑制剤は、糖質の中でガラス転移温度が最も高い糖の一つであるα,α−トレハロース(例えば、『食品とガラス化・結晶化技術』、株式会社サイエンスフォーラム、第3〜60頁(2000年発行)を参照)と同等の高いガラス転移温度を有していることが判明した。また、α,α−トレハロースの糖質誘導体又はこれを含有する糖質は、キャンディのガラス化組成物に含有せしめることにより、水飴などを使用した場合に比して、その組成物のガラス転移温度を上昇させることを確認し、本発明の水分変動抑制剤は、キャンディをはじめとするガラス化組成物の保存性の向上のためのガラス化剤としても有用であると判断した。
<キャンディの型離れ試験>
上記7種類のキャンディのうち、配合1、配合2、配合3、配合5、及び、配合7のキャンディについて、その調製時におけるデポジットからの型離れのし易さを比較する実験を、以下のようにして行った。すなわち、配合1、配合3、配合5、及び、配合7の糖質に水を加えて濃度約70%のシラップを調製し、これらを、それぞれ手鍋にとり、155℃まで煮詰めて、その各々を、それぞれ4個のデポジットに移して、1時間室温に放置した。また、配合2の糖質については、キャンディの水分量を配合7の水分量と同じ程度にするために、煮詰め温度は145℃とした以外は、その他の糖質の場合と同様にシラップを煮詰めて、4個のデポジットに移した。その後、各々の配合のキャンディについて、4個のデポジットを、各々、そのまま転倒させて落下するキャンディの数をカウントし、引き続き、その片方を持ち上げて1cmの高さから落下、3cmの高さから落下、5cmの高さから落下の処理を連続して行い、各々の処理の際に4個のデポジットから型離したキャンディの数を、カウントしてその合計を求めた。その結果を表3に示す。なお、実験には、表面をテフロン加工した鋳物製の、幅34mm、長さは440mmのプレートに、縦が24mm、横が18mmの飴を入れる四角い穴が等間隔で12個空いているデポジットを使用した。


表3から明らかなように、砂糖と水飴を配合したキャンディ(配合1)は、型離れが悪く、デポジットを転倒しただけでは全く型離れは認められなかった。また、砂糖とマルトテトラオース高含有水飴を配合したキャンディ(配合3)は、砂糖と水飴を配合したキャンディ(配合1)よりは型離れが良かったものの、3cmの高さから落下させた場合でも、まだ、4個のデポジットに合計で16個のキャンディが残っていた。これに対して、砂糖糖と水分変動抑制剤を含有する糖質を使用したキャンディ(配合5、配合7、α,α−トレハロースの糖質誘導体を、各々、無水物換算で約12%及び約24%含有)では、配合1のキャンディに比して、型離れがよく、なかでも、砂糖:水分変動抑制剤を6:4で配合のキャンディ(配合7、α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で約24%含有)は、砂糖:α,α−トレハロースを6:4で配合のキャンディ(配合2)と並び、デポジットを3cmの高さから落下させることにより4個のデポジットで全てのキャンディが型離れした。この結果は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する水分変動抑制剤、或いは、α,α−トレハロースをキャンディ基材として使用することにより、水飴を使用した場合よりも、キャンディのガラス転移温度が上昇するために、キャンディのガラス化状態が安定化し、デポジット表面への付着性が低減したものと考えられる。また、これらのキャンディのうち、α,α−トレハロースの糖質誘導体又はα,α−トレハロースを使用したキャンディは、これらの糖質を使用していないものに比して、歯付きが少なく、クラッシュ性が向上した。
<実験2>
<砂糖を含むハードキャンディの吸湿抑制作用に及ぼす各種糖質の影響>
砂糖のみを使用したハードキャンディは、砂糖の結晶が生じることにより、その透明性が消失する。通常、この結晶の発生を抑制する目的で、砂糖に対して、各種の糖質を配合したハードキャンディが製造されている。しかし、砂糖に対して砂糖以外の糖質を配合するとハードキャンディは、強い吸湿性をもつようになる場合が多い。そこで、砂糖を使用したハードキャンディにおける吸湿抑制作用に及ぼす各種糖質の影響を確認する実験を以下のようにして行った。即ち、砂糖に対して、その他の糖質として、試薬級無水結晶グルコース(シグマ社販売、純度99.5%以上)、試薬級含水結晶マルトース(株式会社林原生物化学研究所販売、純度99.0%以上)、試薬級含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原生物化学研究所販売、純度99.0%以上)、試薬級イソマルトース(株式会社林原生物化学研究所販売、純度97.0%以上)、試薬級含水結晶パラチノース(株式会社林原生物化学研究所販売、純度97.0%以上)、試薬級無水結晶マルチトール(株式会社林原生物化学研究所販売、純度99.0%以上)、マルトトリオース(株式会社林原生物化学研究所販売、純度97.0%以上)、含水結晶パノース(株式会社林原生物化学研究所販売、純度97.0%以上)、エルロース(株式会社林原生物化学研究所販売、純度97.0%以上)、試薬級含水結晶ラフィノース(シグマ社販売、純度99%以上)、特開平7−143876号公報の実験4の方法に準じて調製したα−グルコシルα,α−トレハロース(純度97.7%)及び後述する実施例5の方法で調製した粉末状のα−マルトシルα,α−トレハロース(純度98.1%)から選ばれる何れか1種を、その配合質量比が、無水物換算で、砂糖:その他の糖質=6:4となるように混合し、水を加えて濃度約70%水溶液を調製した。これらを、それぞれ手鍋にとり、150℃まで煮詰めて、室温まで冷却し、長さ2cm、巾1cm、厚さ0.5cmのハードキャンディを調製した。これらのキャンディについて、温度25℃、湿度70%の条件下で3日間保存後のものを、肉眼観察し、その外観変化に基づいて、キャンディの吸湿抑制作用の程度を比較評価した。外観変化の評価基準は、キャンディが水飴状になり元の形状が認められなくなったものを吸湿抑制作用なし(−)、キャンディの形状が崩れ始めたものを弱い吸湿抑制作用有り(+)、及び、表面に吸湿が認められるもののキャンディの形状に変化の見られないものを吸湿抑制作用有り(++)とした。その結果を表4に示す。


表4の結果から明らかなように、砂糖と、α−グルコシルα,α−トレハロース又はα−マルトシルα,α−トレハロースとを使用したキャンディは、保存3日後も、元の形状を保持していた。これに対して、α−グルコシルα,α−トレハロース及びα−マルトシルα,α−トレハロース以外の糖質を配合したキャンディは、砂糖とα,α−トレハロースとを配合したキャンディで弱い吸湿抑制作用が認められ、それ以外の糖質を使用したキャンディは、何れも、その外観が、水飴状になり、元の形状が認められなかった。この結果から、α−グルコシルα,α−トレハロース及びα−マルトシルα,α−トレハロースは、グルコース、マルトース、α,α−トレハロース、イソマルトース、パラチノース、マルチトール、マルトトリオース、パノース、エルロース、或いはラフィノースに比して、キャンディの吸湿をよく抑制することが確認された。
<実験3>
<ハードキャンディの吸湿抑制作用に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する水分変動抑制剤の配合割合の影響>
α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する水分変動抑制剤の配合割合がハードキャンディの吸湿抑制作用に及ぼす影響を確認する実験は、実験1の場合と同様に、砂糖と砂糖以外の糖質との配合質量比が、無水物換算で6:4となるように調製して、以下のように行った。即ち、表5に示すように、砂糖180質量部に対して、後述する実施例1の方法で調製したシラップ状の水分変動抑制剤(α,α−トレハロースの糖質誘導体として、無水物換算で、α−グルコシルα,α−トレハロース4.1%、α−マルトシルα,α−トレハロース52.5%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース1.1%、α−グリコシルα,α−トレハロース0.4%を含有、濃度72.8%)及びマルトース高含有シラップ(株式会社林原商事販売、登録商標『マルトラップ』、無水物換算で、グルコース1.5%、マルトース51.2%、マルトトリオース21.7%、その他の糖質25.6%を含有、濃度75%)から選ばれる糖質を、所定の配合割合(質量部)で混合し、それぞれ水を加えて混合糖質水溶液を調製し、155℃に煮詰めてキャンディを調製した。これらのキャンディを、温度25℃、湿度70%の条件下で7日間保存し、肉眼観察による外観変化に基づいて、その吸湿抑制作用を比較した。その結果を表6に示す。なお、肉眼観察による外観変化の評価基準は、キャンディが水飴状になり元の形状が認められなくなったものを吸湿抑制効果なし(−)、キャンディの形状が崩れ始めたものを弱い吸湿抑制効果有り(+)、表面に吸湿が認められるもののキャンディの形状に変化の見られないものを吸湿抑制効果有り(++)、及び、変化が全くないものを強い吸湿抑制効果有り(+++)とした。



表6から明らかなように、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する水分変動抑制剤は、その配合量に比例して、キャンディの吸湿を強く抑制し、その効果は、マルトース高含有シラップの配合割合が異なってはいるものの、α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で6%以上含有するキャンディ(配合2乃至5)で認められ、12%以上含有するもので顕著となり(配合3)、18%以上(配合4及び5)のものでは特に顕著であった。
<実験4>
<ハードキャンディの吸湿抑制作用に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体のα,α−トレハロース又はマルトースとの共存の影響>
ハードキャンディの吸湿抑制作用に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体のα,α−トレハロース又はマルトースとの共存の影響を確認する実験は以下のようにして行った。まず、ハードキャンディの糖質の配合質量比が、実験1と同様に、無水物換算で、砂糖:その他の糖質=6:4となるように、砂糖とその他の糖質とを配合した各種混合糖質水溶液を調製した。即ち、表7に示すように、砂糖300質量部に対して、その他の糖質として、後述する実施例1の方法で調製したシラップ状の水分変動抑制剤(α,α−トレハロースの糖質誘導体として、無水物換算で、α−グルコシルα,α−トレハロース4.1%、α−マルトシルα,α−トレハロース52.5%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース1.1%、α−グリコシルα,α−トレハロース0.4%を含有、濃度72.8%)286質量部を混合したもの(配合1)、或いは、含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)222質量部を混合したもの(配合2)に、それぞれ水を加えて、混合糖質水溶液を調製した。さらに、砂糖300質量部に対して、実施例1の方法で調製したシラップ状の水分変動抑制剤143質量部と、マルトース(株式会社林原商事販売、登録商標『サンマルト』)105質量部とを混合したもの(配合3)、或いは、含水結晶α,α−トレハロースの111質量部と、前記マルトース105質量部とを混合したもの(配合4)に、それぞれ水を加えて、混合糖質水溶液を調製した。次いで、これらの混合糖質水溶液を、145℃又は155℃に煮詰めてキャンディを調製した。これらのキャンディを25℃、湿度70%の条件下で3日間保存し、水分量の変化と肉眼観察による外観変化とに基づいて、吸湿抑制効果を比較評価した。キャンディの水分量は、常法に従って、珪藻土法により測定した。また、外観変化の評価基準は、実験2と同一とした。その結果を表8にまとめた。




表8から明らかなように、製造直後のキャンディの水分量は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有するキャンディの方が、含有しないキャンディよりも低く、外気湿度との水分の差が大きいにも関わらず、吸湿量や外観の変化は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する水分変動抑制剤を含有するキャンディの方が小さく、水分変動がよく抑制されていた。即ち、砂糖とα,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する水分変動抑制剤を配合して調製した配合1のキャンディ(α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で24%含有)は、煮詰め温度が145℃或いは155℃の何れの場合にも、砂糖と含水結晶α,α−トレハロースとを配合して調製した配合2のキャンディよりも、強く吸湿が抑制された。また、砂糖、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する水分変動抑制剤及びマルトースを配合して調製した配合3のキャンディ(α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で12%含有)は、煮詰め温度が145℃或いは155℃の何れの温度でも、砂糖、α,α−トレハロース及びマルトースを配合して調製した配合4のキャンディよりも吸湿が抑制されていた。しかしながら、配合3のキャンディは、当該水分変動抑制剤の含有量が、配合1の半量であることから、その吸湿抑制効果は、配合1に比して弱いものであった。これらのことから、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する水分変動抑制剤は、トレハロースやマルトースよりも効果的に、キャンディの水分変動を抑制することが判明した。また、その効果は、マルトースを含んでいるという条件が異なってはいるものの、α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で12%含有するキャンディよりも24%含有するキャンディの方が強かった。また、実験1〜4の結果は、本発明の水分変動抑制剤の水分変動抑制作用のメカニズムに、α,α−トレハロースの糖質誘導体が組成物のガラス転移温度を上昇させることにより、その組成物のガラス化状態を安定化させ、水分子の運動を低下させる作用が関与していることを示唆している。
<実験5>
<ゼリーの放湿抑制作用に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響>
ゼリーの放湿抑制作用に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響を確認する実験は以下のようにして行った。脱イオン水49.7質量部に対して、0.3質量部の寒天と、後述する実施例2の方法で調製した粉末状の水分変動抑制剤(α,α−トレハロースの糖質誘導体として、無水物換算で、α−グルコシルα,α−トレハロース4.1%、α−マルトシルα,α−トレハロース52.5%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース1.1%、α−グリコシルα,α−トレハロース0.4%を含有)50質量部とを混合し、100℃に加熱して2分間維持し、深さ2cm、容積60mlのゼリーカップにいっぱいに入れて同じ高さにし、4℃の冷室で16時間冷却して、ゲル化させてゼリーを調製した。また、対照として、水分変動抑制剤を砂糖に代えた以外は、同じ配合でゼリーを調製した。これらのゼリーを、直径1cmのコルクボーラーで型抜きし、直径1cm、長さ2cmの円筒状の試料をそれぞれ調製し、これらを、直ちに秤量缶に入れて、温度25℃、湿度35%の恒温恒湿の条件で放置して、放湿により減少する試料の質量変化を、調製直後から24時間後まで、電子天秤を用いて測定した。その結果を、製造直後のゼリーの質量を100%とした相対値で、表9に示す。

表9から明らかなように、いずれのゼリーも経時的に放湿が観察されたものの、その程度は、砂糖を使用したものに比して、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する水分変動抑制剤を使用したものの方が低く抑えられており、α,α−トレハロースの糖質誘導体が、強い放湿抑制効果を発揮していることから、砂糖よりも強い水分変動抑制効果を有することが判明した。また、この作用の差は、低湿度の条件に放置後、4時間以降で特に顕著となった。
<実験9>
<冷凍パン生地表面の放湿抑制作用に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響>
冷凍パン生地は、冷凍保存中に生地表面の水分が放湿されて減少するために、解凍後焼成すると、パンの表面が均質な焼き上がりとならず、まだら模様の、いわゆる梨肌とよばれる状態を呈することが問題とされている。そこで、冷凍パン生地の表面の放湿抑制に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響を確認する実験を以下のようにして行った。フランスパン用小麦粉(日清製粉株式会社販売、商品名「リスドール」)1000質量部、冷凍用イースト(三共フーヅ株式会社販売)50質量部、食塩20質量部、イーストフード(株式会社アワジヤ販売、商品名「アミラーA」)1質量部、水650質量部を混捏し、50質量部に分割し、ロール状に成形した。この成形した生地1個(50質量部)に対して、糖質として、実施例2で調製した粉末状の水分変動抑制剤(α,α−トレハロースの糖質誘導体として、無水物換算で、α−グルコシルα,α−トレハロース4.1%、α−マルトシルα,α−トレハロース52.5%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース1.1%、α−グリコシルα,α−トレハロース0.4%を含有)、砂糖及び含水結晶α,α−トレハロースの何れかを、無水物換算で、10%、20%或いは40%含有する糖質水溶液1質量部を、パン生地表面に塗布し、これをトレイに乗せて、−40℃で急速冷凍し、フランスパンの成形冷凍生地とした。対照として、糖質水溶液を塗布しなかったパン生地を同様に−40℃で急速冷凍したものを調製した。これらを−20℃で14日間保存後、温度20℃、湿度75%で90分間解凍し、さらに、温度28℃、湿度75%で70分間発酵させた後、スチームの存在下で、190℃で20分間焼成してフランスパンを製造した。焼成後のパン表面に発生する梨肌の程度を、対照と比較して、肉眼観察による外観変化に基づいて、梨肌の発生抑制効果を比較評価した。外観変化の評価基準は、対照に比して差がなかったものを効果なし(−)、梨肌の改善効果はあるものの弱い効果しかなかったものをやや効果有り(+)、梨肌の発生は認められるもののはっきりと改善効果があったものを効果有り(++)、及び、梨肌の発生が殆どなかったものを強い改善効果有り(+++)とした。その結果を表10に示す。

表10から明らかなように、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する水分変動抑制剤を表面に塗布した冷凍パン生地は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で0.1%塗布したもので、はっきりとした梨肌の発生抑制効果が認められ、0.4%では梨肌の発生が殆ど認められず、強い抑制効果を示した。これに対して、含水結晶α,α−トレハロースを使用した場合には、その含量が無水物換算で0.4%では改善効果が認められたものの、その程度は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する水分変動抑制剤を使用したものよりも弱く、また、その他の濃度では、砂糖を使用した場合と同様に弱い効果しか認められなかった。これらのことから、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する水分変動抑制剤は、含水結晶α,α−トレハロースや砂糖に比して、格段に強い水分変動抑制効果を有していることから、冷凍パン生地表面の放湿をよく抑制し、解凍後焼成しても梨肌の発生が強く抑制され、高品質のパンに焼き上げることができることが示された。なお、本実験で使用した、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する水分変動抑制剤は、パン生地の表面に塗布することから、その塗布部位に局在することとなるので、パン生地表面のα,α−トレハロースの糖質誘導体の最終含有量は、無水物換算で6%を遥かに越えるため、パン生地表面の水分変動が効果的に抑制されたものと考えられる。
以上の実験結果から、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する水分変動抑制剤を、組成物に含有せしめることにより、水分変動を抑制することができるので、組成物の品質劣化をよく抑制できることが判明した。
以下に、本発明の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する水分変動抑制剤の具体的な例、及び、この水分変動抑制剤を含有せしめた組成物の具体的な例を、実施例として挙げて説明する。しかし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
<水分変動抑制剤>
以下の実施例に示す、水分変動抑制剤は、いずれも、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、日用品、雑貨、化学工業品を始めとする組成物に含有せしめることにより、その水分変動を抑制し、また、それら組成物の蛋白変性、糊化澱粉の老化及び/又は脂質の酸化、冷凍、冷蔵、チルドなどの保存や、乾燥、凍結乾燥などの処理を行った場合の組成物の品質の劣化、離水や乾燥などが抑制されるため、組成物の味、香り、色、食感などの風味や機能を良好に保持することができる。
【実施例1】
濃度20%のとうもろこし澱粉乳に最終濃度0.1%となるように炭酸カルシウムを加えた後、pH6.5に調整し、これにα−アミラーゼ(ノボ社製造、商品名「ターマミール60L」)を澱粉グラム当たり0.2%になるよう加え、95℃で15分間反応させた。その反応液を、120℃で10分間オートクレーブした後、50℃に冷却し、pHを5.8に調整後、澱粉グラム当たり特開昭63−240784号公報に開示されたマルトテトラオース生成アミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)を5単位と、イソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)を500単位となるように加え、48時間反応させ、これにα−アミラーゼ(上田化学株式会社製造、商品名「α−アミラーゼ2A」)を澱粉グラム当たり30単位加え、さらに、65℃で4時間反応させた。その反応液を、120刧で10分間オートクレーブし、次いで45℃に冷却し、特開平7−143876号公報に開示されたアルスロバクター・スピーシーズQ36(FERM BP−4316)由来の非還元性糖質生成酵素を澱粉グラム当たり2単位の割合になるよう加え、48時間反応させた。その反応液を95℃で10分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を、常法に従って活性炭で脱色し、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製した糖化液を、さらに濃縮して濃度72.8%とした、無色透明、わずかな甘味を呈する、pH5.3のシラップ状の水分変動抑制剤を、無水物換算で、収率約90%で得た。本品は、DE13.7で、無水物換算で、α,α−トレハロースの糖質誘導体として、α−マルトシルα,α−トレハロース(別名α−マルトトリオシルα−グルコシド)52.5%を含有しており、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース(別名α−マルトシルα−グルコシド)4.1%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース(別名α−テトラオシルα−グルコシド)1.1%、それ以外のα−グリコシルα,α−トレハロース0.4%を含有していた。また、本品は、無水物換算で、還元性の糖質として、グルコースなどの単糖類を2.1%、マルトースなどの2糖類を8.9%、α−グルコシルα,α−トレハロース以外の3糖類を6.7%、α−マルトシルα,α−トレハロース以外の4糖類を17.6%、α−グリコシルα,α−トレハロース以外の5糖類以上の糖質を6.6%含有していた。本品は、組成物における水分変動抑制剤として有利に利用できる。また、本品は、砂糖の約30%の甘味度を有し、従来の水飴に比して、加熱による着色や褐変(メーラード反応)の原因になりにくく、加工適正に優れていることから、各種飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、ペットフードなどの製造原料とし使用することができる。また、本品は、ガラス化組成物に含有せしめてそのガラス転移温度を上昇させるためのガラス化剤、さらには、粉末化基剤、製剤用添加剤、澱粉含有食品の結着防止剤、艶出し剤、照り付与剤、保形剤、コク味付与剤、脂質の酸化及び/又は分解の抑制剤、変性抑制剤、色素の変色防止剤、鮮度保持剤、風味保持剤、細胞保護剤、細胞賦活剤、植物の生長促進剤などとして使用することも随意である。
<吸放湿度特性>
本品の吸放出特性を以下のようにして調べた。即ち、試薬級の塩化マグネシウム6含水塩、炭酸カリウム2含水塩、硝酸マグネシウム6会水塩、硝酸アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化バリウム2含水塩、硫酸カリウムを、各々精製水に溶解してその飽和塩溶液を調製し、密閉可能な容器に入れて密閉し、25℃の恒温室に1晩放置し、容器内の相対湿度がそれぞれ、33.0%、42.7%、52.8%、60.0%、75.2%、87.2%、90.1%、97.3%に安定させた。これらの容器内に、本品約0.5gを蓋のない別容器に入れて始発の質量を測定したものを、塩溶液と直接接触しないようにして入れ、25℃の恒温条件で、0.3日、1日、3日、5日、7日、10日、14日放置後、本品を入れた容器を取り出して、本品の質量を測定して、その増減を求め、質量の変化率(%)を始発の質量を100%とした相対値として求めた。その結果を表11に示す。


表11から明らかなように、本品は、相対湿度が97.3%の条件下では、吸湿が認められ、14日目には、質量が始発に比して約41.1%増加した。これに対して、相対湿度が90.1%の条件下では、吸湿は認められたものの、3日目以降では、増加がぼぼ認められなくなり、14日目でも、質量の増加率は始発に比して約6.4%であり、本品は、比較的高湿度の条件下でも吸湿しにくいシラップであることが判明した。また、本品は、相対湿度が、84.2%或いは、それ以下の湿度条件下では、放湿して、経時的に質量が減少したものの、3日目以降は、質量の減少がほぼ認められなくなり、安定した。その減少率は、周囲の湿度の高低に依存しており、周囲の湿度が低いほど、質量の減少率は大きく、相対湿度33%の条件で14日間放置したものでは、始発の質量に比して約16.6%の減少が認められた。
【実施例2】
実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤を常法により噴霧乾燥して非晶質粉末状の水分変動抑制剤を得た。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好で、組成物における水分変動抑制剤として有利に利用できるだけでなく、加熱や乾燥時の蛋白質の変性や脂質の酸化や分解抑制効果を有することから、ジュースや油脂などの粉末化基剤としても好適である。また、本品は、ガラス化組成物に含有せしめてガラス転移温度を上昇させるためのガラス化剤、さらには、製剤用添加剤、澱粉含有食品の結着防止剤、艶出し剤、照り付与剤、保形剤、コク味付与剤、脂質の酸化及び/又は分解の抑制剤、変性抑制剤、色素の変色防止剤、鮮度保持剤、風味保持剤、細胞保護剤、細胞賦活剤、植物の生長促進剤などとして使用することも随意である。
【実施例3】
実施例1の方法で調製した、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製した糖化液を、脱色後、さらに精製するために、塩型強酸性カチオン交換樹脂(ダウケミカル社販売、商品名「ダウエックス50W−X4」、Mg++型)を用いたカラム分画を行った。樹脂を内径5.4cmのジャケット付ステンレス製カラム4本に充填し、直列につなぎ樹脂層を全長20mとした。カラム内温度を55℃に維持しつつ、糖液を樹脂に対して5v/v%加え、これに55℃の温水をSV0.13で流して分画し、グルコース及びマルトース高含有画分を除去し、α,α−トレハロースの糖質誘導体高含有画分を集め、さらに精製、濃縮後、噴霧乾燥して非晶質粉末状の水分変動抑制剤を得た。本品は、無水物換算で、α,α−トレハロースの糖質誘導体としてα−マルトシルα,α−トレハロース70.2%を含有しており、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース6.1%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース2.1%、それ以外のα−グリコシルα、α−トレハロース4.1%を含有していた。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好で、組成物における水分変動抑制剤として有利に利用できるだけでなく、粉末化基剤としても好適である。
【実施例4】
馬鈴薯澱粉1質量部に水6質量部を加え、さらに、澱粉当たり0.01%の割合になるようにα−アミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社製造、商品名「ネオスピターゼ」)を加えて撹拌混合し、pH6.0に調整後、この懸濁液を85乃至90℃に保ち、糊化と液化を同時に起こさせ、直ちに120℃に5分間加熱して、DE1.0未満にとどめ、これを55℃に急冷し、pH7.0に調整し、これに株式会社林原生物化学研究所製造、商品名「プルラナーゼ」(EC 3.2.1.41)及び特開昭63−240784号公報に開示されたマルトテトラオース生成アミラーゼを、それぞれ澱粉グラム当たり150単位及び8単位の割合で加え、pH7.0、50℃で36時間反応させた。この反応液を、120℃で10分間オートクレーブし、次いで、53℃まで冷却し、特開2000−228980号公報に開示されたアルスロバクター・スピーシーズS34(FERM BP−6450)由来の非還元性糖質生成酵素を澱粉グラム当たり2単位の割合になるよう加え、64時間反応させた。この反応液を95℃で10分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を、常法に従って、活性炭で脱色し、H型、OH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、さらに濃縮して、噴霧乾燥して非晶質粉末状の水分変動抑制剤を、無水物換算で、収率約90%で得た。本品は、DE11.4で、無水物換算で、α−マルトシルα,α−トレハロース62.5%を含有しており、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース2.1%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース0.8%、それ以外のα−グリコシルα,α−トレハロース0.5%を含有していた。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好で、組成物における水分変動抑制剤として有利に利用できるだけでなく、粉末化基剤としても好適である。
【実施例5】
試薬級のマルトテトラオース(株式会社林原生物化学研究所販売、純度97.0%以上)の20%溶液をpH7.0に調整後、特開平7−143876号公報に開示された非還元性糖質生成酵素を、無水物換算で、糖質グラム当たり2単位となるように加えて、46℃で、48時間、糖化して、無水物換算で、79.8%のα−マルトシルα,α−トレハロースを含有する溶液を得た。この溶液を、pH6.0に調整後、無水物換算で、糖質グラム当たり10単位となるようにα−アミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社製)を加えて、50℃で48時間反応させて、マルトテトラオースを分解した。この反応液を、120℃で10分間オートクレーブし、冷却した後、ろ過して得られる溶液を、アルカリ金属型強酸性カチオン交換樹脂(東京有機化学工業株式会社製造、「XT−1016」、Na型、架橋度4%)を用いて分画し、α−マルトシルα,α−トレハロース高含有画分を集め、精製、濃縮後、噴霧乾燥して非晶質粉末状の水分変動抑制剤を得た。本品は、α−マルトシルα,α−トレハロースを98.1%含有しており、ソモジ ネルソン法による測定での還元力測定では、還元力は検出限界以下であった。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好で、組成物における水分変動抑制剤として、有利に利用できる。また、本品は還元性がないため、アミノ酸やアミノ基を有する化合物のようなメーラード反応により失活することが問題となる有効成分を含有する健康食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、化学工業品等の水分変動抑制剤として好適である。
この標品を、再度水に溶解し、活性炭処理して、パイロジェンを除去し、噴霧乾燥して、非晶質粉末状のα−マルトシルα,α−トレハロース高含有粉末を調製した。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好で、組成物における水分変動抑制剤として、有利に利用できる。また、パイロジェンを除去しているので、特に医薬品用の水分変動抑制剤として好適である。
【実施例6】
実施例1の方法で得シラップ状の水分変動抑制剤に水を加えて、濃度約60%に調製して、オートクレーブに入れ、触媒としてラネーニッケルを約8.5%添加し、攪拌しながら温度を128℃に上げ、水素圧を80kg/cmに上げて水素添加して、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存するグルコース、マルトースなどの還元性糖質を、それらの糖アルコールに変換した後、ラネーニッケルを除去し、次いで、脱色、脱塩して精製し、濃縮して、濃度75%としたシラップ状の水分変動抑制剤を得た。本品は、無色透明な粘稠な液体であり、無水物換算で、α−マルトシルα,α−トレハロースを約53%、及び、これ以外のα,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、約5%含有している。本品は、組成物における水分変動抑制剤として、有利に利用できる。また、本品は還元性がないため、メーラード反応により失活することが問題となる有効成分を含有する化粧品、医薬部外品、医薬品、健康食品等の水分変動抑制剤として好適である。また、本品は、ガラス化組成物に含有せしめてガラス転移温度を上昇させるためのガラス化剤、さらには、粉末化基剤、製剤用添加剤、澱粉含有食品の結着防止剤、艶出し剤、照り付与剤、保形剤、コク味付与剤、脂質の酸化及び/又は分解の抑制剤、変性抑制剤、色素の変色防止剤、鮮度保持剤、風味保持剤、植物の生長促進剤などとして使用することも随意である。
【実施例7】
実施例2の方法で得た非晶質の粉末状の水分変動抑制剤を水に溶解して、濃度約60%水溶液とし、オートクレーブに入れ、触媒としてラネーニッケルを約9%添加し、攪拌しながら温度を130℃に上げ、水素圧を75kg/cmに上げて水素添加して、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存するグルコース、マルトースなどの還元性糖質を、それらの糖アルコールに変換した後、ラネーニッケルを除去し、次いで、脱色、脱塩して精製し、濃縮してシラップ状の水分変動抑制剤を得た。さらにこのシラップ状の水分変動抑制剤を、常法により噴霧乾燥して、非晶質粉末状の水分変動抑制剤を得た。本品は、無水物換算で、α−マルトシルα,α−トレハロースを約70%、及び、これ以外のα,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、約12%含有しており、粉末状のものは、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好である。本品は、組成物における水分変動抑制剤として、有利に利用できる。また、本品は還元性がないため、メーラード反応により失活することが問題となる有効成分を含有する化粧品、医薬部外品、医薬品、健康食品等の水分変動抑制剤として好適である。また、本品は、ガラス化組成物に含有せしめてガラス転移温度を上昇させるためのガラス化剤、さらには、粉末化基剤、製剤用添加剤、澱粉含有食品の結着防止剤、艶出し剤、照り付与剤、保形剤、コク味付与剤、脂質の酸化及び/又は分解の抑制剤、変性抑制剤、色素の変色防止剤、鮮度保持剤、風味保持剤、細胞保護剤、細胞賦活剤、植物の生長促進剤などとして使用することも随意である。
【実施例8】
濃度6%の馬鈴薯澱粉乳を加熱糊化後、pH4.5、温度50℃に調整し、これにイソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製)を澱粉グラム当たり2500単位加えて20時間反応させた。その反応液をpH6.0に調整後、120℃で10分間オートクレーブした後、45℃に冷却し、これにα−アミラーゼ(ノボ社製、商品名「ターマミール60L」)を澱粉グラム当たり150単位になるよう加え、24時間反応させた。その反応液を、120℃で20分間オートクレーブし、45℃に冷却後、特開平7−143876号公報に開示されたアルスロバクター・スピーシーズQ36(FERM BP−4316)由来の非還元性糖質生成酵素を、澱粉グラム当たり2単位の割合で加え、64時間反応させた。この反応液を95℃で10分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を、常法に従って、活性炭で脱色し、H型、OH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、さらに、濃縮して、濃度65%としたシラップ状の水分変動抑制剤を、無水物換算で、収率約89%で得た。本品は、無水物換算で、α−グルコシルα,α−トレハロース3.2%、α−マルトシルα,α−トレハロース6.5%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース28.5%及びグルコース重合度6以上のα−グリコシルα,α−トレハロース11.9%含有していた。本品は、組成物における水分変動抑制剤として有利に利用できる。また、本品は、ガラス化組成物に含有せしめてガラス転移温度を上昇させるためのガラス化剤、さらには、粉末化基剤、製剤用添加剤、澱粉含有食品の結着防止剤、艶出し剤、照り付与剤、保形剤、コク味付与剤、脂質の酸化及び/又は分解の抑制剤、変性抑制剤、色素の変色防止剤、鮮度保持剤、風味保持剤、植物の生長促進剤などとして使用することも随意である。
【実施例9】
本品を、実施例8の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤を、実施例6の方法に準じて、水素添加し、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存するグルコース、マルトースなどの還元性糖質を、その糖アルコールに変換した後、常法により精製、濃縮して、シラップ状の水分変動抑制剤を得た。本品は、無色透明な粘稠な液体であり、無水物換算で、α−マルトシルα,α−トレハロースを約6%、及び、これ以外のα,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、約44%含有している。本品は、組成物における水分変動抑制剤として、有利に利用できる。また、本品は還元性がないため、メーラード反応により失活することが問題となる有効成分を含有する化粧品、医薬部外品、医薬品、健康食品等の水分変動抑制剤として好適である。また、本品は、粉末化基剤、製剤用添加剤、澱粉含有食品の結着防止剤、艶出し剤、照り付与剤、保形剤、コク味付与剤、脂質の酸化及び/又は分解の抑制剤、変性抑制剤、色素の変色防止剤、鮮度保持剤、風味保持剤、細胞保護剤、細胞賦活剤、植物の生長促進剤などとして使用することも随意である。
【実施例10】
濃度33%のとうもろこし澱粉乳に最終濃度0.1%となるように炭酸カルシウムを加えた後、pH6.0に調整し、これにα−アミラーゼ(ノボ社製、商品名「ターマミール60L」)を澱粉グラム当たり0.2%になるよう加え、95℃で15分間反応させた。その反応液を、120刧で30分間オートクレーブした後、50℃に冷却し、これにイソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製)を澱粉グラム当たり500単位及び特開平7−236478号に記載のマルトヘキサオース・マルトヘプタオース生成アミラーゼを澱粉グラム当たり1.8単位の割合になるように加え、40時間反応させた。本反応液を、120℃で10分間オートクレーブし、53℃まで冷却後、pH5.7に調整して、特開2000−228980号公報に開示されたアルスロバクター・スピーシーズS34(FERM BP−6450)由来の非還元性糖質生成酵素を澱粉グラム当たり2単位の割合になるよう加え、64時間反応させた。この反応液を95℃で10分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を、常法に従って、活性炭で脱色し、H型、OH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、さらに濃縮して、噴霧乾燥して非晶質粉末状の水分変動抑制剤を、無水物換算で、収率約87%で得た。本品は、無水物換算で、α−グルコシルα,α−トレハロース8.2%、α−マルトシルα,α−トレハロース6.5%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース5.6%、α−マルトテトラオシルα,α−トレハロース21.9%、α−マルトペンタオシルα,α−トレハロース9.3%、及びグルコース重合度8以上のα−グリコシルα,α−トレハロース14.1%含有していた。本品は、そのままで使用しても、或いは、常法により精製してα,α−トレハロースの糖質誘導体含量を増やした場合でも、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好で、組成物における水分変動抑制剤として有利に利用できる。また、本品は、ガラス化組成物に含有せしめてガラス転移温度を上昇させるためのガラス化剤、さらには、粉末化基剤、製剤用添加剤、澱粉含有食品の結着防止剤、艶出し剤、照り付与剤、保形剤、コク味付与剤、脂質の酸化及び/又は分解の抑制剤、変性抑制剤、色素の変色防止剤、鮮度保持剤、風味保持剤、細胞保護剤、細胞賦活剤、植物の生長促進剤などとして使用することも随意である。
【実施例11】
実施例10の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤を、実施例7の方法に準じて、水素添加し、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存するグルコース、マルトースなどの還元性糖質を、その糖アルコールに変換した後、常法により精製後、噴霧乾燥して、非晶質粉末状の水分変動抑制剤を調製した。本品は、無水物換算で、α−マルトシルα,α−トレハロースを約6%、及び、これ以外のα,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、約59%含有している。本品は、そのままで使用しても、或いは、常法により精製してα,α−トレハロースの糖質誘導体含量を増やした場合でも、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好で、組成物における水分変動抑制剤として、有利に利用できる。また、本品は還元性がないため、メーラード反応により失活することが問題となる有効成分を含有する化粧品、医薬部外品、医薬品、健康食品等の水分変動抑制剤として好適である。また、本品は、ガラス化組成物に含有せしめてガラス転移温度を上昇させるためのガラス化剤、さらには、粉末化基剤、製剤用添加剤、澱粉含有食品の結着防止剤、艶出し剤、照り付与剤、保形剤、コク味付与剤、脂質の酸化及び/又は分解の抑制剤、変性抑制剤、色素の変色防止剤、鮮度保持剤、風味保持剤、細胞保護剤、細胞賦活剤、植物の生長促進剤などとして使用することも随意である。
【実施例12】
実施例2で得た非質粉末状の水分変動抑制剤60質量部に対して、市販の無水結晶マルチトール(株式会社林原商事販売、登録商標『マビット』)を40質量部を混合し、粉末状混合物を得た。本品は、組成物の水分変動抑制剤として有利に利用できる。
【実施例13】
実施例2の方法で得た非晶質粉末状の水分変動抑制剤70質量部に対して、アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売)2質量部、酵素処理ルチン(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「αGルチン」)2質量部を混合して、粉末状混合物を得た。本品は、組成物における水分変動抑制剤として有利に利用できる。
【実施例14】
実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤1質量部と、水溶性多糖類のアラビアガム0.8質量部、水溶性ヘミセルロース0.05質量部を混合し、適量の水に溶解し、常法により噴霧乾燥して、粉末混合物を調製した。本品は、組成物における水分変動抑制剤として有利に利用できる。また、本品は、パスタ、ゆで麺、レトルト麺、即席麺、ピラフなどの澱粉含有食品の加工工程、再調理工程で使用することにより、澱粉含有食品に含有せしめるか、及び/又は、本品の水溶液に浸漬するなどして澱粉含有食品の表面に塗布することにより、それら食品の結着防止剤としても好適である。
【実施例15】
実施例2の方法で得た非晶質粉末状の水分変動抑制剤1質量部と、異性化糖1.5質量部を混合し、粉末混合物を調製した。本品は、組成物における水分変動抑制剤として有利に利用できる。また、本品は、異性化糖に含まれている果糖の独特の後味が改善され、切れがよくなることから、砂糖に近い味質となり、しかも、比較的pH値の低い酸性下でも砂糖の風味が保たれることから、甘味料や調味料としても有利に使用することができる。
【実施例16】
実施例4の方法で得た非晶質粉末状の水分変動抑制剤1質量部と、砂糖9質量部を混合し、粉末混合物を調製した。本品は、組成物における水分変動抑制剤として有利に利用できる。また、本品は、砂糖の後味が改善されることから、甘味料や調味料としても使用することができる。
【実施例17】
実施例7の方法で得た非晶質粉末状の水分変動抑制剤60質量部と、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)50質量部を混合し、粉末混合物を得た。本品は、組成物における水分変動抑制剤として有利に利用できる。
<水分変動抑制剤を含有せしめた組成物>
【実施例18】
<テーブルシュガー>
実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤50質量部に対して、無水結晶マルチトール46質量部、糖転移ヘスペリジン(東洋精糖株式会社販売、商品名「αGヘスペリジン」)3質量部、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社販売)1質量部を200質量部の水に溶解し、常法により、噴霧乾燥して粉末甘味料を調製した。本品は、水分変動抑制剤により、吸湿が抑制され、ケーキングなどの発生しない、流動性に優れた粉末甘味料である。また、水分変動抑制剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体及び糖転移ヘスペリジンがスクラロースの後味を改善することから、コーヒー、紅茶用のテーブルシュガーをはじめ、各種飲食品、医薬部外品、医薬品などの甘味料として好適である。
【実施例19】
<鰹節調味エキス>
新鮮な本鰹を使用し、その魚肉を煮熟する際に、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤を18%となるように溶解した水溶液を使用する以外は、常法により鰹節を製造した。本品を、室温で6ケ月間保存したところ、過度に乾燥することがなく、しかも、脂質の酸化や分解が抑制されていた。また、本品は、本発明の水分変動抑制剤を含有していることから、蛋白質の変性や、脂質の酸化や分解により生じるアルデヒド類や過酸化脂質の発生が抑制され、鰹の生臭さが抑制され、鰹節の好ましい味、香り、色、食感などの風味が良好で、しかも、それが長期間安定に保持されていた。
この鰹節を、製造後6ヶ月間室温で保存後、鰹節削り器で削り、その100質量部に対して水500質量部を加えて加熱し、5分間沸騰させた後、冷却して鰹節エキスを調製した。このエキスは、製造直後の鰹節を使用したものと同等の好ましい、味、香りを有していた。
この鰹節エキスを10倍に濃縮後、その9質量部に対して、実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤1質量部を添加して撹拌、溶解したものを、常法により噴霧乾燥して粉末ダシを調製した。本品は、鰹節の好ましい、味、香りを有する粉末ダシであり、ケーキングすることもなく、製造直後の流動性を保つなど、保存安定性に優れていることから、単独で、或いは、他のエキス類と併用して、粉末、液状、固状、ペースト状のダシや調味料を製造するための原料として好適である。
【実施例20】
<ウニ加工品>
実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤を、水で10倍に希釈したものに、乳酸ナトリウムを0.1%となるように添加して浸漬液を調製し、これに新鮮なウニの卵巣をざるに入れて浸漬し、5℃で10時間経過後、ざるを上げて液切りして製品を得た。本品は、水分変動がよく抑制されており、又、脂質の酸化や分解が抑制され、冷蔵、チルド、冷凍で6ケ月間保存後、試食したところ、いずれの方法で保存した場合にも、変性が少なく、冷凍保存しても解凍時のドリップが少なく、ウニの粒々が崩れることなく、その鮮度がよく保持されていた。また、本品を、常法に従って、調理加工しても、脂質の酸化や分解、蛋白質の変性が抑制されており、嫌味・臭気も低く、味、香り、色、食感とも良かった。
【実施例21】
<ウニ加工品>
実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤1質量部、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)0.5質量部を、水8.5質量部に溶解し、これに炭酸カルシウムを0.2%なるように添加した水溶液を調製し、80℃に加温した。特公平2−20217号公報に記載されたウニの卵巣の加熱処理の方法に準じて、90℃に加温した前記水溶液に、実施例20で調製したウニの卵巣をステンレス製の籠に入れて、5秒間浸漬し、液切りして製品を得た。本品は、水分変動がよく抑制されており、又、脂質の酸化や分解が抑制され、冷蔵、チルド、冷凍で2ケ月間保存後、試食したところ、いずれの方法で保存した場合にも、変性が少なく、ウニの粒々が崩れることもなく、冷凍保存後の解凍時のドリップも少なく、その鮮度がよく保持されていた。また、本品を、常法に従って、調理加工しても、脂質の酸化や分解、蛋白質の変性が抑制されており、嫌味・臭気も低く、味、香り、色艶、食感とも良かった。
【実施例22】
<マグロの赤身>
実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤4質量部、食塩0.8質量部、グレープ種子抽出物(インディナ社製、商品名「ロイコシアニジン」)0.01質量部に水を加えて100質量部とし、撹拌して溶解し、5℃に冷却した。これに、新鮮なマグロの赤身を短冊状に切ったものを浸漬し、そのまま16時間、5℃の状態に維持した後、これを取り出し、−30℃で急速冷凍した。本品は、水分変動がよく抑制されており、又、脂質の酸化や分解が抑制され、冷凍の保存で変性や解凍時のドリップも少なく、メト化も抑制されているので、赤身の色も鮮やかで、鮮度がよく保持されており、各種食品の製造原料として好適である。また、本品を、−20℃で2ヶ月間保存後、解凍し、刺身にして試食したところ、脂質の酸化や分解、蛋白質の変性が抑制されており、嫌味・臭気も低く、赤身の色も鮮やかで、新鮮なマグロのの赤身から調製した刺身と比較しても、味、香り、色、食感共に遜色のないものであった。
【実施例23】
<フグの干物>
生フグのフィレー100質量部をロール掛けして厚さ約8mmに延ばし、実施例1の方法で調製したシラップ状の水分変動抑制剤を、無水物換算で、濃度10%となるように水に溶解した溶液に30分間浸漬し、液切りし、一夜乾燥して製品を得た。本品は、水分変動がよく抑制されており、又、脂質の酸化や分解が抑制され、その鮮度をよく保った干物であった。また、本品を、常法に従って、あぶっても揮発性アルデヒド類のみならずトリメチルアミンやエチルメルカプタンなどの臭気の発生もほとんどなく、味、香り、色、食感とも良好な干物であった。
【実施例24】
<フグの干物>
生フグのフィレー100質量部をロール掛けして厚さ約8mmに延ばし、実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤を、無水物換算で濃度7%、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)を、無水物換算で3%となるように水に溶解した溶液に30分間浸漬し、液切りし、一夜乾燥して製品を得た。本品は、水分変動がよく抑制されており、又、脂質の酸化や分解が抑制され、その鮮度をよく保った干物であった。また、本品を、常法に従って、あぶっても揮発性アルデヒド類のみならずトリメチルアミンやエチルメルカプタンなどの臭気の発生もほとんどなく、味、香り、色、食感とも良好な干物であった。
【実施例25】
<煮干>
大釜に水100質量部を沸かし、これに実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤2質量部を溶解して沸騰させ、次いで、これに生カタクチイワシ10質量部をざるに入れて浸漬して茹で上げ、ざるから取り出し、常法に従って乾燥させて製品を得た。本品は、水分変動がよく抑制されており、又、脂質の酸化や分解が抑制され、ダシもよく取れ、その色調も良好な、風味の良い煮干しである。
本品は、室温で6ヶ月間保存後も、表面の光沢や青みもよく保持されており、ダシもよく取れ、風味の良い煮干しの状態が維持されていた。
【実施例26】
<しらす干>
大釜に水100質量部を沸かし、これに、実施例の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤2質量部、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)1質量部、乳酸ナトリウム0.2質量部を入れて沸騰させ、これに、小型の生カタクチイワシ10質量部を入れ茹で、常法により、乾燥してしらす干を調製した。本品は、水分変動がよく抑制されており、製品の歩留まりもよく、又、脂質の酸化や分解が抑制され、異臭や生臭味もなく、その色調も良好な、生臭身も無い、風味の良いしらす干しである。また、本品は、室温、冷蔵、チルド、冷凍などの保存でも、乾燥や吸湿も抑制され、その良好な風味が長期間保持された。
【実施例27】
<アサリのむき身>
大釜に水100質量部を沸かし、これに、実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤4質量部を混合して沸騰させ、次いで、これに生アサリ10質量部をざるに入れて浸漬して茹で上げ、ざるから取り出し、常法に従って、アサリの水煮むき身を得た。本品は、水分変動がよく抑制されており、製品の歩留まりもよく、又、脂質の酸化や分解が抑制され、色、艶も良く、風味良好であった。本品を、さらに佃煮にすることも、シーフードカレー、五目御飯などの具材として利用することも有利に実施できる。また、冷蔵、チルド、冷凍などの保存でも、脂質の酸化や分解、蛋白質の変性が抑制されており、その良好な風味が長期間持続した。
【実施例28】
<茹でダコ>
生タコ10質量部に食塩をふりかけて、常法に従って塩もみし、これを、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤3質量部を水100質量部に溶解して沸かした大釜に入れ茹で上げ、茹でダコを得た。本品は、水分変動がよく抑制されており、製品の歩留まりもよく、又、脂質の酸化や分解が抑制され、色、艶も良く、風味良好であった。本品を、適当な大きさの切り身にし、寿司ネタに使うことも、酢の物、おでん等の惣菜に用いることも有利に実施できる。また、冷蔵、チルド、冷凍などの保存でも、脂質の酸化や分解、蛋白質の変性が抑制されており、その良好な風味が長期間持続した。
【実施例29】
<ニシンの酢漬>
生ニシンのフィレーを、食塩水に浸漬し、常法に従って薄塩し、室温で1時間経過後、これを食酢100質量部に実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤5質量部及びコンブダシ1質量部を溶解した調味液につけ、室温で5時間保ってニシンの酢漬を得た。本品は、水分変動がよく抑制されており、2ヶ月間保存後も肉質の劣化が抑制され、又、脂質の酸化や分解が抑制され、色、艶も良く、風味良好であった。本品を、適当な大きさの切り身にし、寿司のネタに使うことも、酢の物等の惣菜に用いることも有利に実施できる。
【実施例30】
<ブリの煮付け>
生ブリの切り身100質量部を鍋に取り、これに実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤10質量部、醤油10質量部及びみりん5質量部及び水10質量部を加え、常法に従って煮付けてブリの煮付けを得た。本品は、煮崩れがなく、色、艶も良く、皿に盛りつけた後も、水分変動がよく抑制されており、又、脂質の酸化や分解が抑制され、風味の良いものであった。
【実施例31】
<魚肉練製品>
水晒ししたスケトウダラの生肉2,000質量部に対し、実施例7の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤105質量部、乳酸ナトリウム3質量部を加えて、スリ身を製造し、−20℃で凍結して冷凍スリ身を製造した。冷凍スリ身を90日間−20℃で冷凍保存後に解凍し、氷水150質量部に対して、グルタミン酸ナトリウム40質量部、馬鈴薯澱粉100質量部、ポリリン酸ナトリウム3質量部、食塩50質量部及びソルビトール5質量部とを溶解しておいた水溶液100質量部を添加して擂漬し、約120gずつを定形して板付した。これらを、30分間で内部の品温が約80℃になるように蒸し上げた。次いで、室温で放冷した後、4℃で24時間放置して魚肉練製品を得た。スケトウダラの冷凍スリ身は、α,α−トレハロースの糖質誘導体の持つ水分変動抑制作用により、タンパク質に対して優れた冷凍耐性を付与するため、冷凍保存後も、鮮度が十分に保持されており、それを原料とした本品は、風味良好、肌面が細やかで、艶やかな光沢を有していた。しかも、脂質の酸化や分解も抑制されるため、脂質の分解物で生じるアルデヒド類をはじめとする脂質の過酸化物によるタンパク質やアミノ酸の修飾、変性も抑制されるので、スリ身のメト化が抑制され、保存安定性にも優れているという特徴がある。また、本品は冷凍保存後解凍しても、離水が抑制され、調製直後の味、香り、色、食感等の好ましい風味がよく保持されていた。
【実施例32】
<魚肉練製品>
水晒ししたスケトウダラの生肉2,000質量部に対し、実施例8の方法で得た、シラップ状の水分変動抑制剤105質量部、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)35質量部、乳酸2質量部、炭酸ナトリウム1質量部を加えて、スリ身を製造し、−20℃で凍結して冷凍スリ身を製造した。冷凍スリ身を90日間−20℃で冷凍保存後に解凍し、氷水150質量部に対して、グルタミン酸ナトリウム40質量部、馬鈴薯澱粉100質量部、ポリリン酸ナトリウム3質量部、食塩50質量部及びソルビトール5質量部とを溶解しておいた水溶液100質量部を添加して擂漬し、約120gずつを定形して板付した。これらを、30分間で内部の品温が約80℃になるように蒸し上げた。次いで、室温で放冷した後、4℃で24時間放置して魚肉練製品を得た。スケトウダラの冷凍スリ身は、α,α−トレハロースの糖質誘導体の持つ水分変動抑制作用により、タンパク質に対して優れた冷凍耐性を付与するため、冷凍保存後も、鮮度が十分に保持されており、それを原料とした本品は、風味良好、肌面が細やかで、艷やかな光沢を有していた。しかも、脂質の酸化や分解も抑制されるため、脂質の分解物で生じるアルデヒド類をはじめとする脂質の過酸化物によるタンパク質やアミノ酸の修飾、変性も抑制されるので、スリ身のメト化が抑制され、保存安定性にも優れているという特徴がある。また、本品は冷凍保存後解凍しても、離水が抑制され、調製直後の味、香り、色、食感等の好ましい風味がよく保持されていた。
【実施例33】
<味付け海苔>
実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤500質量部、醤油400質量部、みりん100質量部、食塩30質量部、グルタミン酸ナトリウム10質量部、水200質量部を、80℃に加温して撹拌して溶解し、冷却して調味液(たれ)を調製した。常法により板海苔から製造した焼き海苔の片面に調味液1質量部を塗布して乾燥した。本品は、薄い艷のある皮膜が形成され、水分変動がよく抑制されており、吸湿しにくく、ベタ付きや変形のない、風味良好な焼き海苔であった。
本品を、密封した容器で1年間保存後取り出して、湿度60%、温度25℃に60分間放置して形状の変化を観察した後試食した。本品は、従来の味付け海苔のように吸湿して調味料の塗布面が湾曲することもなく、又、調味液の塗布面がベタつくこともなく、製造直後と同様にぱりっとした状態の風味良好な焼き海苔であった。
【実施例34】
<粉末醤油>
実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤1.5質量部を醤油3質量部に溶解し、常法により噴霧乾燥して、粉末醤油を調製した。本品は、長期保存後も、水分変動が抑制され、吸湿もなく、醤油の味や香りをよく保持しており、即席ラーメンや即席吸物などの調味料として有利に利用できる。
【実施例35】
<粉末牛乳>
生鮮牛乳100質量部に対して実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤1.5質量部を溶解後、約50℃に加温し、牛乳の固形分が約30%となるまで減圧濃縮し、常法により噴霧乾燥して、粉末ミルクを調製した。本品は、長期保存後も、水分変動が抑制され、吸湿もなく、変色もなく、ミルクの好ましい味や香りをよく保持しており、各種飲食品の原料やコーヒー用の粉末ミルクとして有利に利用できる。
【実施例36】
<粉末野菜ジュース>
ケール、ブロッコリー、パセリ、セロリ、ニンジンのスライスを混合したものを95℃で20分間ブランチングし、これに実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤を3%、アスコルビン酸を0.2%となるように添加した後、破砕して野菜汁を得た。この野菜汁を5倍に濃縮後、その4質量部に対して、実施例3の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤1質量部をさらに添加して溶解し、クエン酸を加えてpHを4.2に調製した後、常法により噴霧乾燥して粉末野菜ジュースを調製した。本品を、密封した容器に入れて室温で90日間保存したところ、退色、褐変や吸湿もなく良好な粉末の状態が維持されていた。
【実施例37】
<野菜ジュース入り錠剤>
実施例36の方法で得た野菜ジュース粉末に、適量のビタミンB及びビタミンB粉末を撹拌混合し、これを打錠機にて打錠し、野菜ジュースの錠剤を調製した。本品は、水分変動がよく抑制され、退色や吸湿もなく、飲みやすい錠剤である。
【実施例38】
<粉末緑茶>
常法により、緑茶葉から緑茶を抽出し、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤を0.5%、アスコルビン酸を0.2%となるように添加して茶飲料を調製した。これを20倍に濃縮後、常法により噴霧乾燥して粉末緑茶を調製した。本品を、密封した容器に入れて室温で120日間保存したところ、水分変動が抑制され、吸湿や退色、褐変もなく、流動性も良好な粉末の状態が維持されていた。本品は、各種飲食品の原料として有利に利用できる。
【実施例39】
<粉末油脂>
オリーブオイル25質量部と実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤75質量部をミキサーで混合し、圧縮造粒機で板状に圧延したものを、常法により粉砕して、粉末オリーブオイルを調製した。本品は、水分変動が抑制され、吸湿もなく、エクストラバージンの香りがよく保持されていた。また、脂質の酸化や分解が抑制されており、その風味が長期間保持された。
【実施例40】
<粉末DHA>
水120質量部に、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル40質量部と実施例4の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤40質量部を攪拌、溶解し、これにDHA20質量部を加えて、常法により、DHAを乳化し、乳化製剤を得た。これを、常法により、噴霧乾燥して、粉末DHAを調製した。本品は、水分変動が抑制され、吸湿もなく、DHAの酸化や分解が抑制されるので、DHAを長期間安定に保持することができた。また、本品、或いは、本品の乾燥前のものは、一般の飲食品1質量部に対して、0.001〜約1.0質量部を含有させて、DHAを強化した飲食品を製造することができる。本品は、DHAや乳化剤の不快な味や臭いが抑制されており、食べやすいという特徴を有している。
【実施例41】
<粉末ペパーミントオイル>
水150gにアラビアガム70質量部、実施例14の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤20質量部、α,α−トレハロース3質量部を加えて溶解し、殺菌のために85℃に加温して、15分間維持した。これを40℃に冷却後、ペパーミントオイル10gを添加して、ホモミキサーにより乳化した。これを、常法により噴霧乾燥して、粉末ペパーミントオイルを調製した。本品は、水分変動が抑制され、吸湿もなく、また、α,α−トレハロースの糖質誘導体により、ペパーミントオイルの酸化や分解が抑制されるので、劣化臭の発生が抑制され、また、劣化臭が発生しても、α,α−トレハロースの糖質誘導体がその劣化臭をマスクすることから、良好なペパーミントオイルの香りが安定に長期間保持された。また、本品は、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品用の香料として有利に利用できる。
【実施例42】
<高麗ニンジンエキス粉末>
高麗ニンジンエキス1質量部を5倍濃縮したもの10質量部に対して、実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤4質量部とα,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)2質量部とを添加して撹拌溶解したものを、常法により減圧乾燥して高麗ニンジンエキス粉末を調製した。本品は、水分変動が抑制され、吸湿もなく、長期間保存可能な粉末であった。
【実施例43】
<白米>
玄米(古米)100質量部を撹拌しつつ、これに実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤を水で希釈して25%水溶液を調製し、その4質量部をできるだけ均一に噴霧混合した後、一夜放置し、常法に従って、精米機にかけ白米を得た。本品は、α−マルトシルα,α−トレハロースを約0.2%含有し、水分変動がよく抑制されており、又、脂質の酸化や分解が抑制され、保存安定性に優れた高品質の白米である。本品は、風味良好なごはん、おにぎり、おかゆなどの原料として有利に利用できる。また、本品は、そのまま無洗米として利用することも、さらにα化米などに加工して利用することも有利に実施できる。また、本精米工程で副産物として得られた米糠も、本発明の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しており、脂質の酸化や分解が抑制され、その保存安定性も良好で、糠漬又は糠床の原料、米糠油の原料、さらにはこのままで又は脱脂糠にして配合飼料の原料などとして有利に利用できる。
【実施例44】
<無洗米>
もみすり直後の玄米100質量部に、実施例7の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤1質量部を混合して貯蔵庫に6ケ月間保存し、次いで、これを精米機にかけ白米とした。この白米を金網製無端ベルト上に移して、混合しつつ移動させながら、まず、高圧噴霧水で極短時間洗浄し、次いで、実施例7の方法で得た水分変動抑制剤20%及び乳酸カルシウム1%を含有する水溶液1質量部を噴霧し、さらに乾燥、秤量、充填して無洗米を得た。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を約0.3%含有し、水分変動がよく抑制され、保存安定性に優れた高品質の無洗米である。また、本品は、ご飯、おにぎり、おかゆ、寿司、α化米などの製造原料として好適であるばかりでなく、カルシウムを強化しているので、健康の維持・増進にも好適である。
【実施例45】
<米飯>
水370質量部に実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤20質量部を加えて混合した水溶液に、水洗いして水切りした白米300質量部を浸漬し、家庭用炊飯器にて炊飯して米飯を得た。本品は、水分変動がよく抑制され、米飯中の脂質や蛋白質の変性が抑制され、糊化澱粉の老化も防止されるので、比較的長期間炊飯直後の好ましい風味が保持されるという特徴がある。また、本発明の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体は、冷蔵・冷凍変性防止効果を併せ持っているので、米飯の製造直後の粘り気や風味が長期間保持されることから、本品は、糊化澱粉の老化や蛋白変性により、その品質劣化が問題視されている低温、チルド、冷蔵、或いは冷凍保存の状態で流通される米飯、或いは、これを原料或いは中間原料とする、ピラフ、寿司飯、おにぎり、おこわ、おかゆ或いはそれらの冷凍、冷蔵或いはチルド品などをはじめとする各種の加工品の製造に有利に利用できる。
【実施例46】
<米飯>
水370質量部に実施例1の方法で調製したシラップ状の水分の変動抑制剤15質量部、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)5質量部、植物性蛋白質1質量部を加えて混合した水溶液に、水洗いして水切りした白米300質量部を浸漬し、家庭用炊飯器にて炊飯して米飯を得た。本品は、水分の変動がよく抑制され、米飯中の脂質や蛋白質の変性が抑制され、糊化澱粉の老化も防止されて、適度の粘りも付与するので、比較的長期間炊飯直後の好ましい風味が保持されるという特徴がある。また、α,α−トレハロース及び本発明の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体は、冷蔵・冷凍変性防止効果を併せ持っているので、米飯の製造直後の粘り気や風味が長期間保持されることから、本品は、糊化澱粉の老化や蛋白変性により、その品質劣化が問題視されている、低温、チルド、冷蔵、或いは冷凍保存の状態で流通される米飯、或いは、これを原料或いは中間原料とするピラフ、寿司飯、おにぎり、おこわ、おかゆ或いはそれらの冷凍、冷蔵或いはチルド品などをはじめとする各種の加工品の製造に有利に利用できる。
【実施例47】
<チャーハン>
予め、サラダオイル6質量部を入れて加熱したフライパンに、実施例45で調製した米飯300質量部を入れて炒め、これに、予め調製しておいた、実施例12で得た粉末状の水分変動抑制剤3質量部、塩2質量部、コショウ0.3質量部、化学調味料0.4質量部、乾燥ネギ0.5質量部、砂糖0.5質量部の混合粉末を加え、6分間炒めてチャーハンを調製した。本品は、水分変動が抑制され、冷凍・冷蔵耐性に優れたチャーハンである。このチャーハンを−20℃で3ヶ月間保存し、再加熱したところ、米飯粒がばらけやすく、また、さめても結着することもなかった。また、試食したところ、製造直後のチャーハンの食感、味、香りなどの風味がよく保持されていた。
【実施例48】
<麺>
小麦粉(中力粉)99質量部、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤3質量部、塩5質量部に水40質量部を添加して練り、常法により麺生地を調製後、#11角の切歯(厚み2.7mm)を使用して麺線を調製した。この麺線を12分間茹で上げ、冷却後、麺の結着を防止する目的で、実施例2の方法で調製した水分変動抑制剤0.5%とプルラン0.2%とを含有する水溶液に浸漬後、水切りしてうどんを調製した。
このゆでうどんを6℃の状態で1日間保存後、つけ汁につけて試食したところ、糊化澱粉の老化もなく、調製直後の粘りと弾力がよく維持され、又、麺のほぐれもよい、美味しいうどんであった。
【実施例49】
<即席麺>
小麦粉(強力粉)98.5質量部、実施例4の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤1.5質量部と0.5%のかん水30質量部を添加し、常法により、練り、厚さ0.9mmの麺線を調製し、1分15秒間蒸し器で蒸した後、145℃のサラダオイルで1分20秒間フライして即席麺を調製した。
この即席麺を密封容器に入れて1年間室温で保存後、容器から取り出し、熱湯を加えて3分間放置した後、試食したところ、調製直後の粘りと弾力がよく維持され、又、麺のほぐれもよい、美味しい麺であった。
【実施例50】
<餅>
餅粉1000質量部に水650質量部を加えて混合し、水蒸気で40分間蒸した。これをミキサーに入れて捏ね、生地が50℃になったところで、砂糖180質量部、α−アミラーゼを含有する餅用の品質改良剤(三共フーヅ株式会社販売、商品名「もちソフト」)4質量部、実施例2で調製した粉末状の水分変動抑制剤300質量部を混合したものを、数回に分けて加えて、さらに4分間捏ねた。これを、常法により、小分け、成形、冷却して餅を調製した。
本品は、水分変動が抑制されるので、老化が防止され、従来の餅よりも長期間、餅本来のコシ、柔らかさ、のびが保持された美味しい餅である。
【実施例51】
<おはぎ>
マルトース(株式会社林原商事、登録商標『サンマルト』)8質量部、実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤2質量部を温水に溶解し、無水物換算で、濃度が65%の糖液を調製した。常法により蒸し器で蒸し上げたもち米を、80℃まで冷却後、80℃に加温した前記糖液に浸漬し、保温容器に入れて、約1時間、80〜70℃に保持した後、取り出して、後述の実施例56記載の方法で調製したこしあんを使用しておはぎを製造した。本品は、水分変動がよく抑制され、糊化澱粉の老化が防止されており、冷蔵、或いは、冷凍保存後、解凍しても、離水等の発生もなく、調製直後と同様の柔らかさが保持されており、美味しく食することができた。
【実施例52】
<おはぎ>
マルトース(株式会社林原商事、登録商標『サンマルト』)7質量部、実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤2質量部、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)1質量部を温水に溶解し、無水物換算で、濃度が70%の糖液を調製した。1000質量部のもち米を、予め水に浸漬し、常法により蒸し器で蒸し上げ、80℃まで冷却後、これに、80℃に加温した前記糖液500質量部に、市販の食品用α−アミラーゼ製剤3質量部を溶解した溶液500質量部を加えて均質に攪拌し、保温容器に入れて、約1時間、80〜70℃に保持した後、取り出して、後述の実施例56記載の方法で調製したこしあんを使用しておはぎを製造した。本品は、水分変動がよく抑制され、糊化澱粉の老化が防止されており、冷蔵、或いは、冷凍保存後、解凍しても、離水等の発生もなく、調製直後と同様の柔らかさが保持されており、美味しく食することができた。
【実施例53】
<水まんじゅう>
葛粉20質量部、イナグル露草80質量部、グラニュー糖50質量部、マルトース(株式会社林原商事販売、商標『サンマルト』)50質量部を撹拌、混合後、250質量部の水に撹拌しながら徐々に溶き入れ、さらに、撹拌しながら、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤200質量部を加えた。直火で約25分加熱し、濃度が57%になるまで煮詰めた後、冷却した。冷却後の生地を成形して水まんじゅうを調製した。本品は、水分変動がよく抑制され、生地のひび割れが抑制され、冷蔵、或いは、冷凍後、後解凍しても、透明感が保持されており、調製直後の味、香り、色、食感などの風味がよく保持されており、美味しく食することができた。
【実施例54】
<こしあん>
ソラ豆から常法により調製した生こしあん100質量部、砂糖60質量部、実施例1の方法で調製したシラップ状の水分変動抑制剤14.5質量部に水70質量部を加え、加熱しながら、ゆっくり撹拌して、ブリックスが56になるまで煮詰めて、こしあんを調製した。本品は、既存の酵素水飴や還元水飴を使用したあんに比して、水分の変動が抑制されるので、砂糖の晶出もなく、粘りの少ない、さっくりとした食感で、くちどけが良く、小豆や砂糖の風味のたちも良く、甘さの切れの良い、風味の良い、色焼けしにくいあんであり、パン、饅頭、団子、最中、氷菓などのあん材料として好適である。特に、パン、饅頭、団子、最中などに使用しても、あんからの水分変動が抑制されるので、これらの生地や最中種などの軟化が抑制された。
【実施例55】
<つぶあん>
小豆から常法により調製した生つぶあん100質量部、砂糖50質量部、実施例6の方法で調製したシラップ状の水分変動抑制剤29質量部に水50質量部、まめのクズレ防止用に少量のサラダオイル、隠し味として少量の食塩を加えて、加熱しながら、ゆっくり撹拌して、ブリックスが56になるまで煮詰めて、つぶあんを調製した。本品は、既存の酵素水飴や還元水飴を使用したあんに比して、水分の変動が抑制されるので、粘りの少ない、さっくりとした食感で、くちあたりがよく、小豆や砂糖の風味のたちも良く、風味の良い、色焼けしにくいあんであり、パン、饅頭、団子、もなか、氷菓などのあん材料として好適である。特に、パン、饅頭、団子、最中などに使用しても、あんからの水分変動が抑制されるので、これらの生地や最中種などの軟化が抑制された。
【実施例56】
<こしあん>
小豆から常法により調製した生こしあん100質量部、砂糖50質量部、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)10質量部、実施例6の方法で調製したシラップ状の水分変動抑制剤14.5質量部、乳酸マグネシウム0.015質量部、隠し味として少量の食塩を加え、水60質量部を加えて、加熱しながら、ゆっくり撹拌して、ブリックスが48になるまで煮詰めて、こしあんを調製した。本品は、既存の酵素水飴や還元水飴を使用したあんに比して、水分の変動が抑制されているので、粘りの少ない、さっくりとした食感で、くちどけが良く、小豆や砂糖の風味のたちも良く、甘さの切れの良い、風味の良い、色焼けしにくいあんであり、パン、饅頭、団子、最中、氷菓などのあん材料として好適である。特に、パン、饅頭、団子、最中などに使用しても、あんからの水分変動が抑制されるので、これらの生地や最中種などの軟化が抑制され、また、おはぎなどの表面にまぶした場合には、餡への水分変動が抑制され、そのベタ付きが抑制された。なお、本品は、製造時に、ごま油を適量添加して、中華用のあんとして使用することも随意である。
【実施例57】
<こしあん>
エンドウ豆から常法により調製した生こしあん100質量部、砂糖50質量部、実施例1の方法で調製したシラップ状の水分変動抑制剤29質量部、塩化マグネシウム0.01質量部に、水50質量部を加えて、加熱しながら、ゆっくり撹拌して、ブリックスが60になるまで煮詰めて、こしあんを調製した。本品は、既存の酵素水飴や還元水飴を使用したあんに比して、水分の変動が抑制されるので、粘りの少ない、さっくりとした食感で、くちどけが良く、エンドウ豆や砂糖の風味のたちも良く、甘さの切れの良い、風味の良い、色焼けしにくいあんであり、パン、饅頭、団子、最中、氷菓などのあん材料として好適である。特に、パン、饅頭、団子、最中などに使用しても、あんからの水分変動が抑制されるので、これらの生地や最中種などの軟化が抑制された。
【実施例58】
<こしあん>
白小豆から常法により調製した生こしあん100質量部、砂糖50質量部、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)10質量部、実施例1の方法で調製したシラップ状の水分変動抑制剤14.5質量部、乳酸ナトリウム1質量部に、水70質量部を加え、加熱しながら、ゆっくり撹拌して、ブリックスが56になるまで煮詰めて、こしあんを調製した。本品は、既存の酵素水飴や還元水飴を使用したあんに比して、水分の変動が抑制されるので、粘りの少ない、さっくりとした食感で、くちどけが良く、白小豆や砂糖の風味のたちも良く、甘さの切れの良い、風味の良い、色焼けしにくいあんであり、パン、饅頭、団子、最中、氷菓などのあん材料として好適である。特に、パン、饅頭、団子、最中などに使用しても、あんからの水分変動が抑制されるので、これらの生地や最中種などの軟化が抑制された。
【実施例59】
<つぶあん>
インゲン豆から常法により調製した生つぶあん100質量部、砂糖50質量部、実施例6の方法で調製したシラップ状の水分変動抑制剤29質量部、フィチン酸1質量部に、水50質量部を加え、加熱しながら、ゆっくり撹拌して、ブリックスが56になるまで煮詰めて、つぶあんを調製した。本品は、既存の酵素水飴や還元水飴を使用したあんに比して、水分の変動が抑制されるので、粘りの少ない、さっくりとした食感で、くちあたりが良く、インゲン豆や砂糖の風味のたちも良く、甘さの切れの良い、風味の良い、色焼けしにくいあんであり、パン、饅頭、団子、最中、氷菓などのあん材料として好適である。特に、パン、饅頭、団子、最中などに使用しても、あんからの水分変動が抑制されるので、これらの生地や最中種などの軟化が抑制された。
【実施例60】
<最中>
手鍋に、水200質量部を入れ、これに寒天粉末2質量部と砂糖200質量部を入れて加熱溶解して寒天溶液を調製しておく。これとは別に、手鍋に、水360質量部を入れ、これに、砂糖600質量部を入れて加熱溶解後、生あん1000質量部を加えて練り、硬くなってきたら、予め調製しておいた寒天溶液402質量部及び実施例1の方法で調製したシラップ状の水分変動抑制剤140質量部を加えて練り、煮詰めて、ブリックス65のあんを調製する。このあんに布巾をかぶせて冷却後、最中種の片方にへらを使って盛り、もう片方の最中種をあわせて、最中を調製した。本品は、あんの水分変動が抑制されることから、あん自体が乾燥しないだけでなく、最中種が軟化せず、製造直後の好ましい風味が長期間保持された。
【実施例61】
<カステラ>
全卵290質量部、砂糖190質量部、マルトース(株式会社林原商事販売、商標『サンマルト』)45質量部をミキサーに入れて高速で泡立て、予め温めた蜂蜜20質量部、実施例1の方法で調製したシラップ状の水分変動抑制剤40質量部を加えて、軽く攪拌し、これにふるった小麦粉120質量部を加えて、枠に流し入れて、オーブンに入れて、常法により泡切りを行いながら60分間焼成し、カステラを調製した。本品は水分変動が抑制され、焼成直後の風味が長期間保持されるだけでなく、焼成時の泡切り作業の回数が低減できるにもかかわらず、色やけの少ない表面の艶のよい、きめの細かいカステラであった
【実施例62】
<カステラ>
全卵290質量部、砂糖160質量部、マルトース(株式会社林原商事販売、商標『サンマルト』)45質量部、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)30質量部をミキサーに入れて高速で泡立て、予め温めた蜂蜜20質量部、実施例1の方法で調製したシラップ状の水分変動抑制剤40質量部を加えて、軽く攪拌し、これにふるった小麦粉120質量部を加えて、枠に流し入れて、オーブンに入れて、常法により泡切りを行いながら60分間焼成し、カステラを調製した。本品は水分変動が抑制され、焼成直後の風味が長期間保持されるだけでなく、焼成時の泡切り作業の回数が低減できるにもかかわらず、色やけの少ない表面の艶のよい、きめの細かいカステラであった。
【実施例63】
<冷凍パン生地>
前述の実験6の方法に準じて、フランスパン用小麦粉100質量部、冷凍用イースト5質量部、食塩2質量部、イーストフード0.1質量部、水65質量部を混捏し、小分けしてロール状に成形した。この成形した生地99質量部に対して、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤の40%水溶液1質量部を、塗布し、トレイに乗せて、−40℃で冷凍し、フランスパンの成形冷凍生地を調製した。これを−20℃で1ヶ月保存後、20℃、湿度75%で90分間解凍して、28℃、湿度75%で70分間発酵させた後、スチームの存在下で、190℃で20分間焼成してフランスパンを製造した。本品は、冷凍時の水分変動が抑制され、酵母や生地の乾燥・劣化が抑制されることに加えて、焼成後には、グルテンなどのテクスチャーが安定化されることから、焼成したパンは、表面が滑らかで、適度の艶を有し、いわゆる梨肌の発生はなく、嵩も高く、焼け色も自然であり、室内に放置しても、その表面が過度に乾燥することもなく、パン生地を冷凍することなく焼成したものと味、香り、色、食感共に遜色がないものであった。
【実施例64】
<米粉パン>
予めグルテンを配合したパン用の米粉(株式会社斉藤製粉販売、商品名「こめの粉(パン用)」)400質量部、食塩8質量部、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤25質量部、マルトース(株式会社林原商事販売、登録商標『サンマルト』)20質量部、上白糖12質量部、脱脂粉乳12質量部、生イースト10質量部、プルラン8質量部、水315質量部を加えて、縦型ミキサーで撹拌混合後、バター20質量部を添加してさらに捏ね、パン生地を調製した。生地を25℃で50分間醗酵した後、適当な大きさに分割し、湿度75%、室温35℃で50分間保持し、オーブンに入れて、上火温度180℃、下火温度180℃で40分間焼成して米粉パンを調製した。本品は、表面に適度の艶を有し、米粉の独特の風味があり、もちもち感のある美味しい米粉パンであった。しかも、本品は、小麦粉を使用したパンよりも水分量が多いにもかかわらず、水分変動がよく抑制され、室内に放置しても、乾燥により硬化したり、米粉パンの表面及び内部がパサパサすることが抑制され、長期間、ソフトな食感が維持され、また、本発明の水分変動抑制剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体が、酵母に由来する独特の嫌臭を抑制する一方で、パンの焼成時に発生する香ばしいフレーバーを保持する作用を有しているので、製造直後の好ましい風味が長時間維持されていた。
【実施例65】
<タコ焼き>
タコ焼き粉240質量部、実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤30質量部、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)5質量部、食塩2質量部を加えて混合し、これに、だし汁600質量部を加えてよく混ぜ、さらに、全卵100質量部、オリーブ油40質量部、1%キサンタンガム溶液14質量部、揚げ玉20質量部、紅生姜10質量部を加えて混合し、タコ焼きの生地を調製した。この生地をタコ焼き器に入れ、さらに、適量の茹でダコを加えて焼成し、タコ焼きを調製した。本品を、冷蔵、或いは、冷凍状態で2ケ月間保存後、加熱して試食したところ、いずれの場合も、水分変動が抑制され、製造直後の、味の好ましさ、香りの強さ、好ましい食感などの風味が長期間持続したた。また、焼成直後のタコ焼きをラッピングして、低温やチルドで保存しても、その表面の食感がよく保持され、結露した水が表面についても、その形状の変化、表面のベタ付き、食感などの変化が抑制されていた。
【実施例66】
<フルーツグミ>
砂糖30質量部に7.5質量部の水を加えて加熱溶解し、実施例6の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤50質量部を加えて濃度が87%になるように煮詰めた。これを、75℃に冷却後、ゼラチン(200ブルーム)7質量部に水10.5質量部を加えて膨潤させ、65℃に加温して溶解したもの17.5質量部と、クエン酸1.5質量部に水1.5質量部を加えて溶解したもの3.0質量部を添加し、さらに、市販のフルーツ果汁5質量部と香料0.1質量部を加えて撹拌、混合し、スターチモールドに入れて、一晩放置し、濃度が80%のフルーツグミを調製した。本品は、水分変動が抑制され、味の好ましさ、香りの強さ、好ましい食感などの風味が長期間持続されていた。
【実施例67】
<キャラメル>
砂糖115質量部、練乳140質量部、実施例7の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤170質量部を35℃に加温して撹拌混合し、さらに、硬化油42質量部、バター30質量部、乳化剤3質量部を加えて、撹拌、乳化させた後、122℃になるまで加温して煮詰めた。加熱を止めて、食塩1質量部と少量の香料を添加し、混合後、冷却盤に流して冷却し、8mm厚に均一にのばし、カッターで切断してキャラメルを調製した。本品は、水分変動が抑制され、吸湿もなく、味の好ましさ、香りの強さ、好まし食感などの風味が長期間持続した。
【実施例68】
<ゼリー>
実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤10質量部、ゼラチン2.5質量部、市販のオレンジジュース35質量部、レモン果汁5質量部、水47.5質量部、スクラロース0.05質量部を混合し、80℃で25分間保持し、カップに分注して、室温に冷却後、冷蔵庫に入れてゼリーを調製した。本品は、水分変動がよく抑制され、離水もなく、風味に優れ、又、冷凍や冷蔵耐性に優れたゼリーであった。
【実施例69】
<フォンダン>
含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)154質量部、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤35質量部を、水30質量部と混合し、濃度が77%となるまで煮詰めて、70℃になるまで冷却後、撹拌してフォンダンを調製した。対照品として、水分変動抑制剤に変えてマルトース高含有水飴(株式会社林原商事販売、登録商標『マルトラップ』)35質量部を使用したフォンダンを調製した。両者を一晩室温で放置したところ、本発明の水分変動抑制剤を使用したフォンダンは、α,α−トレハロースの結晶の大きさが適度に調節されており、離水もなく、粘りのあるしっかりとしたブロック状のままであったのに対して、対照品は結晶が粗くざらつき結晶が析出し、透明感がでたことに加えて、一晩放置すると離水が激しかった。また、本発明の水分変動抑制剤は、α,α−トレハロースの持つ結晶性を適度結晶の析出を抑制したり、結晶が大きく成長することを抑制するので、対照品がやや粗めのα,α−トレハロース結晶の食感で、色艶があまり良くないのに対して、本品は、結晶が細かく滑らかで口溶けがよく、色艶もよい仕上がりであった。
【実施例70】
<高水分ハードキャンディ>
砂糖60質量部、実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤55質量部、醤油3.5質量部、アミノ酸0.2質量部、水85質量部を加えて、鍋に入れ、145℃まで煮つめ、水分4.2%のハードキャンディを製造した。本品は、水分変動が抑制され、吸湿もなく、表面のベタ付きのない、醤油の風味の美味しい、高水分のハードキャンディである。また、本品は、一般の水飴を基材として使用したものに比して、ガラス転移温度が高いので、比較的高い温度でも、キャンディの硬度が維持されるので、デポジットからの型離れが容易で、製造時の作業性にも優れている。
【実施例71】
<歯もろさに優れたキャンディ>
含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)95質量部、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤5質量部、水45質量部を混合し、加熱して完全に溶解した後、水分を約15%になるまで詰め、過飽和水溶液とし、これに適量の、香料、着色料を混合し、直径約1cm深さ約1cmの型に流し込み、室温で一晩放置し、α,α−トレハロースを晶出固化させた。本品は、水分変動が抑制され、吸湿もなく、表面のベタ付きや歯付きのない、口溶けがよく、且つ、歯もろさに優れた、特有の口あたりをもつ、美味しいキャンディである。また、本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体が、α,α−トレハロースの結晶の大きさを調節するので、きめの細かい結晶が晶出し、α,α−トレハロースのみを使用して調製したキャンディに比して、歯もろさはあるものの、しっとりとした口あたりがある。
【実施例72】
<綿菓子>
実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤65質量部、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)20質量部、砂糖15質量部、香料適量を加えて、鍋に入れ、145℃まで煮つめ、キャンディ化し、冷却後破砕してクラッシュキャンディを製造した。これを使用して、常法により、綿菓子を調製した。本品は、水分変動が抑制され、吸湿もなく、表面のベタ付きがなく、相互に裸で重ね合わせても付着することがなく、3日間保存後でも、嵩が減ることもない、保形性に優れた綿菓子であった。
【実施例73】
<中華ポテト>
乱切りにした甘藷を、150℃の食用油中で8分間揚げた。これに、予め砂糖60質量部、無水物換算で、実施例1の方法でたシラップ状の水分変動抑制剤40質量部とを混合し、水を加えて加熱溶解し、煮詰めて得られたキャンディをからめて、中華ポテトを調製した。本品は、水分変動抑制剤を含有していることから、キャンデイを絡めた直後でも、表面が適度の湿度を保持しながらも、速やかにベタ付きがなくなり、カリッとした食感で、しかも、照り、艶のよい中華ポテトである。また、本品を、−20℃で1年間保存後、解凍して室温に20時間放置後、試食したところ、イモの水分変動が抑制され、吸湿もなく、イモの表面に絡めたキャンディの砂糖の結晶化やダレの発生もなく、その表面には製造直後の照り、艶があり、好ましい風味を保持していた。
【実施例74】
<中華ポテト>
乱切りにした甘藷を、150℃の食用油中で8分間揚げた。これに、予め砂糖60質量部、無水物換算で、実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤30質量部、無水部換算で、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)10質量部混合して、水を加えて加熱溶解し、煮詰めて得られたキャンディをからめて、中華ポテトを調製した。本品は、水分変動抑制剤を含有していることから、キャンデイを絡めた直後でも、表面が適度の湿度を保持しながらも、速やかにベタ付きがなくなり、カリッとした食感で、しかも、照り、艶のよい中華ポテトである。また、本品を、−20℃で1年間保存後、解凍して室温に20時間放置後、試食したところ、本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体の持つ水分変動抑制作用が、α,α−トレハロースにより、増強されることから、イモの水分変動が抑制され、吸湿もなく、イモの表面に絡めたキャンディの砂糖やα,α−トレハロースの結晶化やキャンディのダレの発生もなく、その表面には製造直後の照り、艶があり、好ましい風味を保持していた。
【実施例75】
<焙煎アーモンド>
アーモンド100質量部を160℃で15分焙煎した後、予め実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤に水を加えて125℃に加熱し、濃度を30%に調整したもの20質量部を入れた容器に入れて静かに撹拌し、液を切って、冷却し焙煎アーモンドを調製した。本品は、水分変動抑制剤により被覆されているので、吸湿しにくく、また、脂質の酸化や分解が抑制され、長期間、製造直後の焙煎したアーモンドの好ましい風味を保持していた。
【実施例76】
<糖衣ガム>
無水物換算で、実施例1で調製した水分変動抑制剤15質量部、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)85質量部に、適量の水を加えて、65℃に加温して、攪拌混合し、濃度65%の糖衣用のシラップを調製した。これを、予め調製したガムを入れた回転釜に加え、釜を回転させながら、送風温度40℃の条件で、常法により、ガム表面で糖質を結晶化させ、乾燥させる工程を繰り返して糖衣掛けを行い、エイジングを行って、糖衣ガムを調製した。本品は、糖衣の水分変動が抑制され、高湿度下でも吸湿しにくく、透明感があり、パリッとした食感の糖衣を有するガムである。
【実施例77】
<麦茶>
予め、実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤を水に溶解して、無水物換算で、濃度10%の水溶液としたものを調製した。この2質量部を、大麦100質量部を常法に従って焙煎した高温の状態のものに、均一に噴霧して、混合し、通風乾燥し、小袋に充填、包装して麦茶を得た。本品は、水分変動がよく抑制され、吸湿することもなく、風味の優れた麦茶で、脂質の酸化や分解が抑制されており、その保存安定性に優れていた。
【実施例78】
<みたらし団子のタレ>
砂糖380質量部、実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤550質量部、調味料1質量部、水450質量部を混合して溶解し、これに、醤油205質量部、みりん30質量部と、水200質量部に澱粉120質量部を溶いたものを加えて加熱して糊化させ、冷却してみたらし団子のたれを調製した。本品は、水分変動が抑制され、団子に塗布しても、乾燥や吸湿もなく、長期間、好ましい照りや艶が保持されていた。
【実施例79】
<イチゴジャム>
ペクチン5質量部に対して実施例9の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤(水素添加したもの)140質量部をよく混合後、さらに、砂糖260質量部、マルトース(株式会社林原商事販売、商標『サンマルト』)130質量部、水180質量部を加えてよく混合し、加熱して完全に溶解した。これに解凍した冷凍イチゴ350質量部を加えて、濃度が60%になるまで煮詰めた。冷却後、クエン酸を加えてpHを3.2に調製後、密閉容器に充填して、85℃で30分間殺菌して、瓶詰めのイチゴジャムを調製した。本品は、色鮮やかな仕上がりのイチゴジャムであり、製造後、室温で6ヶ月保存後も、離水や退色もなく、調製直後の風味がよく保持されていた。
【実施例80】
<ドライフルーツ・ミックス野菜>
パセリ40質量部、ホウレンソウ40質量部、レタス40質量部、キャベツ40質量部、セロリ40質量部、ニンジンピューレ100質量部の混合物に対して、10%となるようにマルトース(株式会社林原商事販売、登録商標『サンマルト』)を添加し、80℃で1分間ブランチング後、リンゴ200質量部とレモン1個分の果汁と実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤50質量部と、パラチノース50質量部を混合し、ミキサーで破砕後、濃度が約60%になるまで加熱した。これを、冷やしてラップの上に拡げて60℃で一晩乾燥した。本品は、ベタ付きがなく、風味の良好なドライフルーツ・ミックス野菜であった。
常法により、クッキー生地を調製し、ラップ上に約3mmの厚さに拡げたものの上に、前記のドライフルーツ・ミックス野菜をのせてロール状に巻き、1cm巾に切断したものをオーブンに入れて焼成し、ドライフルーツ・ミックス野菜をサンドしたクッキーを調製した。本品は、ドライフルーツ・ミックス野菜中の水分のクッキー部分への移行が抑制されているため、クッキー自身は乾燥した状態が保持され、逆に、ドライフルーツ・ミックス野菜部分は適度な水分が保持されるため、焼成直後と同様の風味が長期間保持される、クッキーであった。
【実施例81】
<ドライフルーツ・ミックス野菜>
パセリ40質量部、ホウレンソウ40質量部、レタス40質量部、キャベツ40質量部、セロリ40質量部、ニンジンピューレ100質量部の混合物に対して、10%となるようにα,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)を添加し、80℃で1分間ブランチング後、リンゴ200質量部とレモン1個分の果汁と実施例12の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤80質量部と、α,α−トレハロース20質量部を混合し、ミキサーで破砕後、濃度が約60%になるまで加熱した。これを、冷やしてラップの上に拡げて60℃で一晩乾燥した。本品は、ベタ付きがなく、風味の良好なドライフルーツ・ミックス野菜であった。
【実施例82】
<メレンゲ菓子>
パラチノース70質量部、コーヒーの5倍濃縮液30質量部、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤9質量部を加熱混合し、濃度を75%に調製した。これに、別途調製しておいた、植物性蛋白質(千葉製粉株式会社販売、商品名「SK−5」)1.5質量部、パラチノース10質量部に水15質量部を加えて混合した溶液を加えて、ホイップし、比重を0.4に調製後、成形し、50℃の恒温機で3時間乾燥してメレンゲ菓子を調製した。本品は、水分変動が抑制されており、吸湿も少なく、長期間保形性がよい、嵩の高い、口溶けのよいメレンゲ菓子であった。
【実施例83】
<メレンゲ菓子>
α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)70質量部、コーヒーの5倍濃縮液30質量部、実施例4の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤9質量部を加熱混合し、濃度を75%に調製した。これに、別途調製しておいた、植物性蛋白質(千葉製粉株式会社販売、商品名「SK−5」)1.5質量部、前記α,α−トレハロース10質量部に水15質量部を加えて混合した溶液を加えて、ホイップし、比重を0.4に調製後、成形し、50℃の恒温機で3時間乾燥してメレンゲ菓子を調製した。本品は、水分変動が抑制されており、吸湿も少なく、長期間保形性がよい、嵩の高い、口溶けのよいメレンゲ菓子であった。
【実施例84】
<チョコクッキー>
小麦粉(薄力粉)140質量部、バター90質量部、チョコレート115質量部、グラニュー糖360質量部、全卵200質量部、アーモンド200質量部、実施例3の方法で調製した粉末状の水分変動抑制剤50質量部を使用して、常法によりチョコクッキーを製造した。本品を、室温で3ヶ月間保存後、試食したところ、水分変動が抑制され、吸湿や乾燥もなく、又、油脂の酸化や分解もなく、製造直後の風味がよく保持されていた。
【実施例85】
<パイ>
小麦粉100質量部、砂糖2質量部、実施例1の方法で調製したシラップ状の水分変動抑制剤6質量部、油脂3質量部、全卵3質量部、脱脂粉乳2質量部、重曹0.3質量部、生鮮牛乳50質量部、水100質量部を使用して、常法によりパイを調製した。製造後、1週間冷蔵保存後、試食したところ、水分変動が抑制され、吸湿や乾燥もなく、又、油脂の酸化や分解、糊化澱粉の老化もなく、製造直後の風味がよく保持されていた。
【実施例86】
<米菓>
予め、煎餅用のタレに、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤を、35%となるよう溶解したものを調製した。常法により粳米を蒸して、餅つき機でついて餅を調製し、低温で2日間保存後、3cm×3cm×1cmの直方体に裁断し、水分含量が約20%となるまで乾燥させた。これを水分含量が1〜3%になるまで、300℃のオーブンで焼成後、直ぐに、予め調製した水分変動抑制剤を添加した煎餅用のタレに10秒間浸漬した。付着したタレをよく切り、115℃で約30分間乾燥し、室温に放置して、米菓を調製した。本品は、水分変動抑制剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体の米菓内での濃度が10%程度となる。その表面の水分含量は、1〜3%となっており、パリッとした食感でありながら、その内部の水分は6〜10%のため、しっとりとした餅の食感のあるぬれ煎餅である。また、本品は、有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有することにより、水分変動がよく抑制されることから、焼成直後の食感が長期間保持されるという特徴を有している。
【実施例87】
<米菓>
予め、煎餅用のタレに、実施例2での方法で得た粉末状の水分変動抑制剤を20%、α,α−トレハロースを、無水物換算で、10%となるよう溶解したものを調製した。常法により粳米を蒸して、餅つき機でついて餅を調製し、低温で2日間保存後、3cm×3cm×1cmの直方体に裁断し、水分含量が約20%となるまで乾燥させた。これを水分含量が1〜3%になるまで、300℃のオーブンで焼成後、直ぐに、予め調製した水分変動抑制剤を添加した煎餅用のタレに10秒間浸漬した。付着したタレをよく切り、115℃で約30分間乾燥し、室温に放置して、米菓を調製した。本品は、水分変動抑制剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体の米菓内での濃度が10%程度となる。その表面の水分含量は、1〜3%となっており、パリッとした食感でありながら、その内部の水分は6〜10%のため、しっとりとした餅の食感のあるぬれ煎餅である。また、本品は、有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体の持つ水分変動抑制作用が、α,α−トレハロースにより増強されることから、焼成直後の食感が長期間保持されるという特徴を有している。
【実施例88】
<プリン>
全卵を泡立てないように撹拌し、その150質量部に、生鮮牛乳200質量部、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤60質量部、グラニュー糖150質量部、生クリーム450質量部、水150質量部を加えてよく混合し、裏ごしする。これをプディング容器に、適量のカルメラを入れたものに流し込みヒートシールし、蒸し器に入れて20分間蒸し、冷却してプリンを調製した。本品の硬度をレオメーターで測定したところ、26g/cmの、柔らかく、口あたりの良い食感のプリンであった。本品は、水分変動がよく抑制され、冷凍、チルド、冷蔵の何れの方法でも長期間保存が可能であり、冷凍保存後2カ月後に解凍したところ、硬度や組織の変化、離水もなく、復元性に優れており、調製直後の風味がよく保持されていた。また、本品は、卵を加熱した際に発生する、硫化水素などに起因する異臭の発生が抑制され、きめが細かく、口あたりのよい、風味のいいプリンである。
【実施例89】
<ラクトアイス>
実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤8質量部、砂糖8.5質量部、ヤシ油3.0質量部、脱脂粉乳4.0質量部、安定剤0.3質量部、乳化剤0.3質量部、水72.9質量部を、70劫で混合し、12000rpmで10分間ホモジナイズし、70℃で30分間殺菌し、冷却後、一昼夜静置した。これに、バニラエッセンス0.3質量部とスクラロース0.03質量部を混合し、冷凍した。オーバーラン45%とし、カップに取り分けて、−45℃で24時間保持後、−18℃で6ヶ月間保存した。このラクトアイスを、試食したところ、水っぽくなく、内部と表面の水分量に差がなく均質で、又、味、香り、口溶け、滑らかさなどの風味が良好であった。
【実施例90】
<アイスクリーム>
水61質量部、グラニュウ糖12質量部、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤12質量部、無脂固形乳12質量部、コーンシラップ4質量、バニラエキス0.2質量部、安定化剤0.2質量を使用して、常法により、アイスクリームを調製した。本品は、水分の変動が抑制されることから、脂肪分を含まないにもかかわらず、クリーム(脂肪40%)を30%程度使用したアイスクリームとほぼ同等の、なめらかな口あたりを有し、しかも、カロリーは脂肪を使用したたものに比して、低カロリー(約60%)のアイスクリームである。
【実施例91】
<凍結乾燥ねぎ>
ねぎを長さ1cmの長さに輪切りにしたもの100gを、実施例10の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤の8%水溶液に3時間浸漬した後、常法により、凍結乾燥させて、乾燥ネギを調製した。
この乾燥ねぎを15℃で6ヶ月間保存後、85℃の湯中に入れて2分間復元させ、試食したところ、味、香り、色、形状、食感などの風味は、乾燥前のネギと遜色がなく、又、水を加えてからの戻りも早く、即席製品の具材などに好適であった。
【実施例92】
<豆腐>
豆乳250質量部に対して、グルコノデルタラクトン1質量部、にがり1質量部、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤25質量部を混ぜて溶解した。この溶液を密封容器に入れて90℃で40分間加熱し、充填豆腐を調製した。
本品は、水分変動がよく抑制され、生地のきめも細かく、型くずれもせず、又、冷凍保存、或いは、チルドや冷蔵保存した後も、離水もなく、製造直後の風味がよく保持された豆腐であった。
この充填豆腐を充填容器から取り出し、約1cm角の大きさに切り、−80℃で凍結後、常法により、凍結乾燥機で一昼夜凍結乾燥を行った。本品は、室温で3ヶ月保存後も、85℃のお湯に1分浸漬するだけで、ほぼ、乾燥前の状態に戻る、製造直後と変わらない風味の乾燥豆腐であり、即席製品の具材などに好適であった。
【実施例93】
<ベーコン>
食塩22質量部、実施例3の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤2.5質量部、砂糖2質量部、乳酸ナトリウム2質量部、ポリリン酸ナトリウ2.0質量部、アスコルビン酸0.5質量部、亜硝酸ナトリウム0.2質量部、水68.8質量部を混合して溶解し、ピックル液を調製した。豚の肋肉9質量部に対してピックル液1質量部を、肉全体にまんべんなく浸透するように時間をかけて注入後、常法によりスモークして、ベーコンを調製した。スモーク後、一夜室温に放置し、スライスしたベーコンを真空包装して、10℃で保存した。本品は、水分変動が抑制され、保存1週間後においても、製造直後の風味をよく保持しており、又、本発明の水分変動抑制剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体に加えて乳酸ナトリウムを添加していることから、雑菌の繁殖も抑制される。また、冷凍保存後、解凍しても、蛋白の変性が抑制され、離水もなく、風味良好であった。
【実施例94】
<加工液全卵>
鶏卵を割り、その93質量部に対して、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤7質量部を添加して、撹拌溶解したものを、65℃に加温し、6分間加熱処理を施し、加工液全卵を調製した。本品は、水分変動が抑制されており、蛋白質の加熱による変性もなく、起泡性に優れた加工液全卵である。また、加熱処理をしていることから、生卵で問題となるサルモネラ菌などの微生物による汚染もなく、又、α−アミラーゼ活性もないことから、和洋菓子、惣菜をはじめとする各種飲食品の原料として、生卵と同様に使用することができた。
本品を、各々4℃で14日、−1℃で28日、−20℃で3ヶ月保存したもの200質量部に対して、グラニュー糖100質量部、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤30質量部、小麦粉(薄力粉)115質量部、無塩バター40質量部を混合し、常法によりスポンジケーキを製造したところ、冷凍や冷蔵時の蛋白の変性が抑制され、何れの液卵も泡立ちがよく、生卵を使用したものと比べて、味、香り、色、食感などの風味や嵩の高さの点においても遜色のないスポンジケーキが調製された。また、このスポンジケーキを、製造後、4℃で4日間保存後、試食したところ、糊化澱粉の老化の兆候は認められず、製造直後のスポンジケーキの味、香り、色、しっとりとした食感などの風味がよく保持されていた。
【実施例95】
<レトルトカレー>
小麦粉5質量部とラード4.5質量部とを混合して直火で加熱し、さらに、カレー粉1.5質量部を加えて加熱したものに、水82質量部、食塩1質量部、本ダシ2.5質量部、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤3.5質量部を加えて10分間煮込んで、カレーのルーを調製した。このルー150gに、予め、実施例2の方法で得た水分変動抑制剤5%と塩化カルシウム0.5%とを含有する水溶液中で煮込んだ、適当な大きさに切った牛肉35g、馬鈴薯159、ニンジン209を入れて、静かに撹拌して混ぜ合わせて、レトルトパウチに充填し、121℃で25分間加圧加熱を行った。
このレトルトパウチを室温で6ヶ月間保存後、開封して試食したところ、ルー、具材は共に味、香り、色、食感などの風味は製造直後のものと同様であった。また、さらに、レトルト食品の調製時に問題となる、具材の崩れ、肉類の縮みや食感の劣化も抑制されていた。なお、水分変動抑制剤及び塩化カルシウムを含有する水溶液に入れて煮込んだ、牛肉、馬鈴薯、ニンジンはいずれも煮崩れが抑制されており、冷凍時の傷害がなく、解凍時のドリップもないことからカレーのみでなく、その他のレトルト食品、冷凍食品などの具材として好適であった。
【実施例96】
<茶碗蒸し>
ダシ汁600質量部に対して、みりん34質量部、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤40質量部、食塩6質量部、薄口醤油4質量部を混ぜ合わせ、さらに、60℃に加温して、粉末ゼラチン9質量部、ローカストビーンガム2質量部を溶解後、冷却した。これに、溶きほぐした全卵200質量部を泡立てないように混合後、ろ過して、鶏肉、銀杏、三つ葉を適量入れた容器に、静かに注ぎ、蒸し器で15分間蒸して茶碗蒸しを製造した。本品は、きめ細かく上品に仕上がり、ダシや具材の風味が引き立った茶碗蒸しであった。また、本品は、加熱した際に発生する、硫化水素などに起因する異臭の発生が抑制された、美味しい茶碗蒸しである。
本品を、−40℃で凍結し、−20℃で1ヶ月間保存後加温して、試食したところ、従来の冷凍品に発生する解凍時のスポンジ化や離水が抑制されており、製造直後の風味が良好に保持されていた。
【実施例97】
<サラダドレッシング>
水40.8質量部、蒸留ホワイトビネガー20質量部、植物油15質量部、砂糖5質量部、食塩2質量部、ガーリックパウダー1.0質量部、タマネギパウダー0.7質量部、グランドホワイトペッパー0.1質量部、キサンタンガム0.3質量部、ソルビン酸カリウム0.1質量部、実施例2で調製した粉末状の水分変動抑制剤15質量部を混合してサラダドレッシングを調製した。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体によりラジカル反応が抑制されるので、油性成分の劣化や、ガーリックパウダー、タマネギパウダー、グランドホワイトペッパーなどの風味の劣化が抑制されるので、長期間、その品質が安定に保持される。また、本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体が、脂肪の代替品として、脂肪のもつクリーム様の、豊かなくちあたりを付与するので、植物油を通常のドレッシングの半量しか使用してしていないにも関わらず、ドレッシングの好ましさを失わず、脂肪含有時よりも著しく低カロリーのドレッシングである。しかも、本品は、その水相にα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有していることから、砂糖のみを含有するドレッシングに比して、油相との分離が早く、しかも、その分離度が高い、高品質のサラダドレッシングである。
【実施例98】
<マヨネーズ様食品>
食酢10質量部、実施例1で調製したシラップ状の水分変動抑制剤10質量部、殺菌全卵8質量部、水3.5質量部、食塩2質量部、砂糖0.5質量部、からし粉0.5質量部、グルタミン酸ナトリウム0.5質量部を攪拌混合し、さらに、サラダオイル45質量部を加えて、常法により乳化して、マヨネーズ様食品を調製した。本品は、マヨネーズと同じ口あたりを有し、しかも、パスタなどを使用したサラダなどに使用しても、本品からパスタへの水分変動やサラダから本品への水分変動が抑制され、マヨネーズ様の風味が損なわれることがない。また、本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体により、ラジカル反応が抑制されるので、油脂分の劣化やからしなどの風味の劣化が抑制され、又、油脂の分離が抑制されるので、長期間、室温、チルド、冷蔵、或いは、冷凍保存しても、その品質が安定に保持される。また、本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体が、脂肪の代替品として、脂肪の持つクリーミーで、豊かな口あたりを付与するので、植物油を通常より少なくしても、マヨネーズと同じ風味の好ましさを失わず、低カロリーの食品である。
【実施例99】
<クリーム>
シア分別脂(融点38℃)80部と菜種ヤシ油(融点35℃)20部との混合油脂35質量部、大豆レシチン(HLB3)0.3質量部、モノグリセリン脂肪酸エステル(HLB3)0.03質量部、ヘキサグリセリンペンタエステル(HLB4)0.15質量部、水60質量部、脱脂粉乳4質量部、リン酸のアルカリ金属塩0.1質量部を使用し、常法により、予備乳化を行い、70Kg/cmの加圧条件で均質化後、145℃、数秒程度の超高温加熱滅菌処理し、70Kg/cmの加圧条件にて再均質化した後、冷却し、約24時間エージングを行い起泡性乳化物を調製した。この起泡性乳化物100質量部に対して、実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤8質量部を加えて、ケンウッドミキサーを使用して、2分45秒間ホイップして、オーバーラン75%のクリームを調製した。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体が、脂質の酸化を抑制するので、風味の劣化が抑制されており、同時に、α,α−トレハロースの糖質誘導体が、脂肪酸エステルなどの乳化剤に由来する不快臭をマスクするので、5〜20℃で7日間保存後のもの、或いは、−20℃に14日間凍結保存後解凍したしたものは、いずれも、保形性、風味、口溶けがよく、クリーミーで、冷凍保存しても、ひび割れなどの外観上の変化は認められなかった。また、本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、含有していないものに比して、泡立ちや嵩持ちが良く、泡質も細かいという特徴を有している。
【実施例100】
<カスタードクリーム>
コーンスターチ100質量部、実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤100質量部、マルトース70質量部、ショ糖30質量部及び食塩1質量部を十分に混合し、これに鶏卵280質量部を加えて撹拌し、これに沸騰した牛乳1000質量部を徐々に加え、さらに、これを火にかけて撹拌を続け、コーンスターチが完全に糊化して透明になった時点で火をとめ、これを冷却して適量のバニラエッセンスを加えてカスタードクリームを調製した。本品は、水分変動が抑制されることから、冷蔵、冷凍保存後も、蛋白質の変性、澱粉の老化が抑制され、離水もなく、製造直後の風味が長期間保持される。また、本品は、卵を加熱した際に発生する、硫化水素などに起因する異臭の発生が抑制された、美味しいカスタードクリームである。
【実施例101】
<緑茶のシラップ及び抹茶のシラップ>
水210質量部に含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)210質量部を加え、撹拌しながら、約70℃に加温して、完全に溶解させて約25℃まで冷却し、この溶液に、実施例38で調製した粉末緑茶、或いは、市販の抹茶120質量部を加えて約30分間撹拌混合した後、さらに、実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤440質量部とクロレラ20質量部を加えて撹拌し、篩いを通して、緑茶シラップ及び抹茶シラップを調製した。これらのシラップは、冷凍或いは冷蔵保存した場合でも、水分変動が抑制されることから、長期に保存したり、凍結、解凍をくり返しても、茶のクロロフィルの色や茶の香りなどの風味の劣化が抑制される。また、これらのシラップは、砂糖、デキストリン、サイクロデキストリンなどを使用した倍散品を使用した場合に比して、甘すぎたり、粉っぽさがない。また、このようなシラップは、水や湯で希釈しても、その希釈時にトレハロースやα,α−トレハロースの糖質誘導体含有シラップを加えた場合よりも、その色や香りなどの風味の劣化が、長期間、強く抑制されるので、健康補助食品として、そのままで、或いは、水、湯、ミルク、その他の飲料などで希釈して摂取したり、さらには、パン、ケーキ、氷などにかけたり、茶飲料、アイスクリーム、ケーキ、クッキーをはじめとする各種の茶含有飲食品の加工原料として利用することができる。また、これらのシラップは、卓上用やポーションタイプの容器に充填して、目的に応じて、その適量を使用することも随意である。
【実施例102】
<配合飼料>
粉麩30質量部、脱脂粉乳35質量部、実施例43の方法で副産物として得た米糠10質量部、ラクトスクロース高含有粉末10質量部、総合ビタミン剤10質量部、魚粉5質量部、第二リン酸カルシウム5質量部、液状油脂3質量部、炭酸カルシウム3質量部、食塩2質量部、実施例8の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤2質量部及びミネラル剤2質量部を配合して、配合飼料を製造した。本品は、水分変動がよく抑制されており、加えて、脂質の酸化や分解がよく抑制され、保存安定性の良好な、家畜、家禽、ペットなどのための飼料であって、とりわけ、子豚用飼料として好適である。また、本品は、ラクトスクロースを含有していることから、腸内のビフィズス菌が増殖し、腸内の環境が整うことから、ミネラル吸収が促進され、飼育動物の感染予防、下痢予防、肥育促進、糞便の臭気抑制などに有利に利用できる。さらに、本品は、必要に応じて、他の飼料材料、例えば、穀類、小麦粉、澱粉、油粕類、糟糠類などの濃厚飼料材料や、ワラ、乾草、バガス、コーンコブなどの粗飼料材料などと配合した飼料とすることも随意である。
【実施例103】
<石けん>
質量比4対1の牛脂及びヤシ油を通常のけん化・塩析法に供して得られるニートソープ96.5質量部に、実施例3の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤1.5質量部、アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売、商標『AA2G』)0.5質量部、白糖0.5質量部、糖転移ルチン(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「αGルチン」)0.5質量部、マルチトール1質量部、感光素201号0.0001質量部と、適量の香料を加え、均一に混合した後、枠に流し込み、冷却・固化させて石鹸を製造した。本品は、水分変動がよく抑制されて保形性が良好であるのに加えて、汗、アカ、皮脂などに由来する脂質の酸化や分解をよく抑制するので、体臭の発生やかゆみを予防する石けんとして有利に利用できる。
【実施例104】
<化粧用クリーム>
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール2質量部、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン5質量部、DL−乳酸カリウム5質量部、ベヘニルアルコール1質量部、エイコサテトラエン酸2質量部、流動パラフィン1質量部、トリオクタン酸グリセリル10質量部および防腐剤の適量を、常法に従って加熱溶解し、これに実施例4の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤7質量部、1,3−ブチレングリコール3質量部および精製水66質量部を加え、ホモゲナイザーにかけ乳化し、さらに香料の適量を加えて撹拌混合しクリームを製造した。本品は、水分変動がよく抑制されて、脂質の酸化や分解を抑制し、変色や異臭の発生のない、高品質を安定に保つ色白剤である。また、本品は、皮膚刺激やかゆみの予防、さらには、シミ、ソバカス、日焼けなどの色素沈着症の治療用、予防用などに有利に利用できる。また、皮膚に塗布してもベタ付き感のない、使用感に優れたクリームである。
【実施例105】
<化粧用クリーム>
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール2質量部、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン5質量部、DL−乳酸カリウム5質量部、ベヘニルアルコール1質量部、エイコサテトラエン酸2質量部、流動パラフィン1質量部、トリオクタン酸グリセリル10質量部、アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売、商標『AA2G』)2質量部および防腐剤の適量を常法に従って加熱溶解し、これに実施例7の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤5.0質量部、ヒアルロン酸ナトリウム0.1質量部、グリチルリチン酸ジカリウム0.1質量部、アロエベラ0.1質量部、メリッサエキス0.05質量部、カミツレエキス0.05質量部、糖転移ヘスペリジン(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「αGヘスペリジン」)0.5質量部、アイの水抽出エキス1質量部、1,3−ブチレングリコール5質量部および精製水66質量部を加え、ホモゲナイザーにかけて乳化し、さらに香料の適量を加えて撹拌混合しクリームを製造した。本品は、水分変動がよく抑制され、脂質の酸化や分解をよく抑制し、高品質を安定に保つ色白剤である。また、本品は、汗、アカ、フケ、皮脂などに由来する脂質の酸化や分解をよく抑制し、体臭発生の予防、皮膚刺激やかゆみの予防や、シミ、ソバカス、日焼けなどの色素沈着症或いは皮膚の老化の治療用、予防用などに有利に利用できる。また、本品は、保湿性に優れている上、皮膚に対する刺激性が低いので、過敏症を懸念することなく利用することができる。また、皮膚に塗布してもベタ付き感のない、使用感に優れた、塗り心地の良いクリームである。
【実施例106】
<化粧用乳液>
ステアリン酸2.5質量部、セタノール1.5質量部、ワセリン5質量部、流動パラフィン10質量部、ポリオキシエチレンオレート2質量部、酢酸トコフェロール0.5質量部、グリチルリチン酸ジカリウム0.2質量部、ポリエチレングリコール(1500)3質量部、アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売、商標『AA2G』)3質量部、アイの水抽出エキス3質量部、糖転移ルチン(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「αGルチン」)1質量部、トリエタノールアミン1質量部、実施例7の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤4質量部、精製水66質量部、プロピルパラベン0.1質量部を混合し、水酸化カリウムでpHを6.7に調節した後、さらに適量の香料を加えて、常法により、乳液を製造した。本品は、水分変動がよく抑制され、塗り心地もよく、塗布後のベタ付き感のない、使用感に優れた美白用の乳液である。また、本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂質の酸化や分解をよく抑制し、体臭発生の予防、皮膚刺激やかゆみの予防や、シミ、ソバカス、日焼けなどの色素沈着症、或いは、皮膚の老化の治療用、予防用などに有利に利用できる。また、本品は、保湿性に優れている上、皮膚に対する刺激性が低いので、過敏症を懸念することなく利用することができる。
【実施例107】
<リンス>
流動パラフィン2.5質量部、ミリスチン酸0.5質量部、セタノール1.5質量部、モノステアリン酸グリセリン3質量部、ラウロイルグルタミン酸ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルジエステル1質量部、ピログルタミン酸イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル0.5質量部、感光色素301号0.1質量部を加熱、混合したものに、実施例7の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤3質量部、ラウロイル−L−リジン2.5質量部、脂肪酸L−アルギニンエチルピロリドンカルボン酸塩0.5質量部、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム0.5質量部、糖転移ルチン(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「αGルチン」)0.1質量部、ピロリドンカルボン酸ナトリウム1質量部に精製水75質量部を加えて加熱混合したものを混合し、常法により、乳化してリンスを調製した。本品は、水分変動がよく抑制され、使用感に優れたリンスである。また、本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂質の酸化や分解をよく抑制し、頭皮や皮脂に由来する異臭の発生の予防、かゆみの予防やフケの発生の抑制、育毛、養毛、或いは、頭皮の老化の治療用、予防用などに有利に利用できる。また、本品は、グリセリンを使用していないにも関わらず、本発明の水分変動抑制剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、保湿性に優れている上、皮膚に対する刺激性が低いので、過敏症を懸念することなく利用することができる。
【実施例108】
<シャンプー>
2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシメチルイミダゾリウムベタイン(30%水溶液)35質量部、ヤシ油脂肪酸グルタミン酸トリエタノールアミン液(30%水溶液)35質量部、実施例7の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤10質量部、ココイルグリシンカリウム(30%水溶液)10質量部、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド2.3質量部、糖転移ヘスペリジン(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「αGヘスペリジン」)3質量部、アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売、商標『AA2G』)3質量部、感光色素201号0.1質量部、感光色素301号0.1質量部に精製水10質量部を加えて混合後、撹拌しながら70℃に加温して溶解し、さらに適量の香料を加えて、常法により、シャンプーを製造した。本品は、水分変動がよく抑制され、泡立ちもよく、使用感に優れたシャンプーである。また、本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂質の酸化や分解をよく抑制し、頭皮や皮脂に由来する異臭の発生の予防、かゆみの予防やフケの発生の抑制、育毛、養毛或いは、頭皮の老化の治療用、予防用などに有利に利用できる。また、本品は、グリセリンを使用していないにも関わらず、本発明の水分変動抑制剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、保湿性に優れている上、皮膚に対する刺激性が低いので、過敏症を懸念することなく利用することができる。
【実施例109】
<ヘアトリートメント>
ステアリルアルコール5質量部、モノステアリン酸グリセリン5質量部、流動パラフィン3.5質量部、ラウロイルグルタミン酸ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルジエステル2質量部、ピログルタミン酸イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル1質量部を加熱、混合したものに、実施例7の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤5質量部、1,3−ブチレングリコール3質量部、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム1質量部、ピロリドンカルボン酸ナトリウム1質量部、糖転移ルチン(林原生物化学研究所株式会社販売、商品名「αGルチン」)0.1質量部に脱イオン水65質量部を加えて加熱混合したものを混合し、常法により、乳化してヘアトリートメントを調製した。本品は、水分変動がよく抑制され、使用感に優れたヘアトリートメントである。また、本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂質の酸化や分解をよく抑制し、頭皮や皮脂に由来する異臭の発生の予防、かゆみの予防や、フケの発生の抑制、育毛、養毛、或いは、頭皮の老化の治療用、予防用などに有利に利用できる。また、本品は、グリセリンを使用していないにも関わらず、本発明の水分変動抑制剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、保湿性に優れている上、皮膚に対する刺激性が低いので、過敏症を懸念することなく利用することができる。
【実施例110】
<ボディーソープ>
ラウリン酸カリウム15質量部、ミリスチン酸カリウム5.0質量部、実施例7の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤4.0質量部、プロピレングリコール2.0質量部、ポリエチレン粉末0.5質量部、ヒドロキシプロピルキトサン溶液0.5質量部、グリシン0.25質量部、グルタミン0.25質量部、感光色素201号0.1質量部、適量のフェノール、pH調整剤、ラベンダー水を適量加えた後、精製水を加えて総量を100質量部とし、常法により乳化してホディーソープを調製した。本品は、水分変動がよく抑制され、泡立ちの良い、使用感に優れたホディーソープである。また、本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂質の酸化や分解をよく抑制し、体臭の発生の予防、かゆみの予防や、或いは、皮膚の老化の治療用、予防用などに有利に利用できる。また、本品は、発明の水分変動抑制剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、保湿性に優れている上、皮膚に対する刺激性が低いので、過敏症を懸念することなく利用することができる。
【実施例111】
<練歯磨>
第二リン酸カルシウム40質量部、グリセリン25質量部、実施例1の方法で得たシラップ状の水分変動抑制剤15質量部、ラウリル硫酸ナトリウム1.5質量部、糖転移ヘスペリジン(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「αGヘスペリジン」)1質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム1質量部、モノフルオロリン酸ナトリウム0.7質量部、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート0.5質量部、防腐剤0.05質量部及びサッカリン0.02質量部を水13質量部と混合して練歯磨を得た。本品は、使用感、光沢、洗浄力も良好で、練歯磨として好適である。
【実施例112】
<外傷治療用軟膏>
マクロゴール(400)450質量部、カルボキシビニルポリマー3質量部、プルラン1質量部、イソプロパノール400質量部に対してグルコン酸クロルヘキシジン液1質量部を加えて、真空混合撹拌し、これに、実施例3の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤70質量部、水酸化ナトリウム3質量部、精製水77質量部を加えて混合し、適度の伸び、付着性を有する外傷治療用軟膏を得た。本品は、水分変動がよく抑制され、使用後のベタ付きもなく、塗り心地もよく、創面に直接塗布するか、ガーゼ等に塗るなどして患部に使用することにより、切傷、擦り傷、火傷、水虫、しもやけ等の外傷を治療することができる。
【実施例113】
<マルチビタミン剤>
パルミチン酸レチノール5質量部、エルゴカルシフェロール5質量部、塩酸フルスルチアミン10質量部、リボフラビン5質量部、塩酸ピリドキシン10質量部、アスコルビン酸60質量部、酢酸トコフェロール10質量部、ニコチン酸アミド30質量部、シアノコバラミン0.01質量部、パントテン酸カルシウム40質量、アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売、商標『AA2G』)15質量部を撹拌混合し、これの1質量部に対して、実施例3の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤24質量部を混合して撹拌し、打錠機にて打錠して、マルチビタミンの錠剤を調製した。本品は、長期保存後も、水分変動が抑制され、吸湿もなく、ビタミン類の酸化や分解も抑制されたビタミン剤である。
【実施例114】
<点眼剤>
実施例5の方法で得たパイロジェンを除去した粉末状の水分変動抑制剤5質量部、塩化ナトリウム0.4質量部、塩化カリウム0.15質量部、リン酸2水素ナトリウム0.2質量部、硼砂0.15質量部、グリチルリチン酸ジカリウム0.1質量部を混合し、全量で100質量部となるように滅菌精製水を適量添加し、撹拌混合してパイロジエンを含まない、無菌の点眼剤を調製した。本品は、水分変動抑制剤が眼粘膜表面の水分変動を抑制するので、眼粘膜や眼球表層の細胞を乾燥障害から保護すると共に、それらの細胞を賦活化することができるので、一般のドライアイやシェーグレン症候群の患者の眼の乾燥の予防剤、治療剤として有利に利用できる。また、本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、抗炎症作用に優れ、点眼時の目への刺激も低減されている。
【実施例115】
<植物の生長促進剤>
実施例2の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤20質量部に77.5質量部の水を加えて溶解し、これにジベレリン1.0g加えて、常法により、噴霧乾燥して粉末化したものを、造粒してジベレリン含有顆粒を調製した。本品は、水分変動が抑制され、吸湿もなく、長期間安定で、取り扱いの容易な、植物の生長促進剤である。また、本品2質量部を水98質量部に溶解して、適量を植物の葉面や、花房などに散布すれば、ジベレリンのみでなく、本発明の水分変動抑制剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体は、植物の生長促進作用を有しているので両者の作用により、植物体や果実の成育や果実の糖度の増加が促進される。また、本発明の水分変動抑制剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体は、茶、芝、穀類などの葉、茎、根やその周囲の土壌などに散布することにより、これら植物の活力剤として、及び/又は、乾燥障害、塩害、霜害などの障害の予防、改善にも優れた効果を発揮することができる。
【実施例116】
<プルランフィルム>
市販のプルラン(株式会社林原商事販売、商品名「プルランPI−20」)200質量部、界面活性剤(ショ糖モノラウレート)0.5質量部、実施例7の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤10質量部、及びグリセロール10質量部を、脱イオン水780質量部に添加混合して、フィルム用原液の水溶液を調製した。この溶液を、減圧して脱泡後、合成プラスチックフィルムの上に連続して流延し、70℃の熱風中を通過させて乾燥し、厚さ30μmのプルランフィルムを調製した。本品は、水分変動が抑制され、湿度変化に対する安定性に優れており、ヒートシール可能で、透明で光沢があり、優れた水溶解性を有している。また、本品は、界面活性剤に由来する不快味も低減されており、本品から調製される可食性、水溶性の包材やフィルムは、その間、或いは、袋状にしたものの中に、飲食品、化粧品、医薬品、化学品などの各種物質を、挟み込んだり、積層成形物としたり、或いは、充填するなどの目的で、二次加工用の原材料として有利に利用できる。
【実施例117】
<プルランカプセル>
市販のプルラン(株式会社林原商事販売、商品名「プルランPI−20」)150質量部、カラギナン(三晶株式会社販売、商品名「GENUVISCO CSW−2」)1質量部、塩化アンモニウム2質量部、及び、実施例5の方法で得た粉末状の水分変動抑制剤(パイロジェンを除去する前のもの)42質量部を、脱イオン水800質量部に添加混合して、原料水溶液を調製した。この原料溶液を、減圧して脱泡後、50℃に加温して、カプセル成形用ピンの先端を容器中に入れた後、取り出し、乾燥してカプセルを調製した。本品は、水分変動が抑制され、湿度変化に対する安定性に優れ、透明で光沢があり、水溶解性を有し、可食性、水溶性のカプセルとして、飲食品、化粧品、医薬品、化学品など用各種成分の充填容器として有利に利用できる。
【産業上の利用可能性】
以上説明したとおり、本発明は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を組成物に含有せしめることにより、組成物における水分変動を抑制し、さらには、水分変動に伴って発生する、蛋白の変性、糊化澱粉の老化、脂質の酸化や分解を抑制するものである。しかも、α,α−トレハロースの糖質誘導体は、安全で、且つ、非常に安定であることから、この糖質誘導体を有効成分として含有する水分変動抑制剤の利用分野は、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、餌料、雑貨、化学工業品など多岐に渡る。本発明は、この様に顕著な効果を奏する発明であり、産業上の貢献は誠に大きく、意義のある発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物に、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有せしめることを特徴とする組成物における水分変動抑制方法。
【請求項2】
α,α−トレハロースの糖質誘導体が、α,α−トレハロース分子の少なくとも一方のグルコースに、モノ−グルコース、ジ−グルコース、トリ−グルコース及びテトラ−グルコースから選ばれる何れかが結合しているものであることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の水分変動抑制方法。
【請求項3】
α,α−トレハロースの糖質誘導体が、分子の末端にトレハロース構造を有する糖質であることを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項の何れかに記載の水分変動抑制方法。
【請求項4】
α,α−トレハロースの糖質誘導体が、非晶質状態であることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第3項の何れかに記載の水分変動抑制方法。
【請求項5】
α,α−トレハロースの糖質誘導体とともに、他の糖質を含有せしめることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第4項の何れかに記載の水分変動抑制方法。
【請求項6】
他の糖質が、還元性糖質、非還元性糖質、糖アルコール及び水溶性多糖類から選ばれる何れか1種又は2種以上である請求の範囲第5項に記載の水分変動抑制方法。
【請求項7】
α,α−トレハロースの糖質誘導体を、組成物の総質量に対して、無水物換算で、1質量%以上含有せしめることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第6項の何れかに記載の水分変動抑制方法。
【請求項8】
請求の範囲第1項乃至第7項の何れかに記載の水分変動抑制方法により得られる、水分変動抑制された組成物。
【請求項9】
飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、餌料、雑貨及び化学工業品から選ばれる何れかであることを特徴とする請求の範囲第8項に記載の組成物。
【請求項10】
飲食品が、調味料、クリーム類、ジャム類、ペースト類、和菓子類、洋菓子類、パン類、魚肉・畜肉加工品類、水産加工品、農産加工品類、麺類、惣菜食品類、米飯類、冷凍食品類、レトルト食品類、冷蔵食品類、乾燥食品類及び凍結乾燥食品類から選ばれる何れかであることを特徴とする請求の範囲第9項に記載の組成物。
【請求項11】
飲食品が、テーブルシュガー、鰹節調味エキス、ウニ加工品、フグの干物、イワシの干物、煮干し、しらす干、アサリのむき身、茹でダコ、ニシンの酢漬、ブリの煮付け、魚肉練製品、味付け海苔、粉末調味料、粉末牛乳、粉末鶏卵、粉末野菜ジュース、粉末緑茶、粉末油脂、粉末ビタミン、粉末ミネラル、粉末DHA、粉末ペパーミントオイル、粉末香料、粉末色素、粉末高麗ニンジンエキス、野菜ジュース入り錠剤、ビタミン剤、白米、無洗米、米飯、チャーハン、麺、即席麺、餅、おはぎ、水まんじゅう、あん、最中、カステラ、冷凍パン生地、米粉パン、タコ焼き、フルーツグミ、キャラメル、ゼリー、フォンダン、高水分ハードキャンディ、綿菓子、中華ポテト、焙煎アーモンド、糖衣ガム、麦茶、団子のタレ、イチゴジャム、ドライフルーツ・ミックス野菜、メレンゲ菓子、チョコクッキー、パイ、米菓、ぬれ煎餅、プリン、ラクトアイス、凍結乾燥ねぎ、豆腐、ベーコン、加工肉処理液、加工液全卵、レトルトカレー、茶碗蒸し、サラダドレッシング、マヨネーズ様食品、クリーム、カスタードクリーム、緑茶シラップ、抹茶シラップ、可食性フィルム及びカプセルから選ばれる何れかであることを特徴とする請求の範囲第9項に記載の組成物。
【請求項12】
α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有することを特徴とする組成物における水分変動抑制剤。
【請求項13】
α,α−トレハロースの糖質誘導体が、α,α−トレハロース分子の少なくとも一方のグルコースに、モノ−グルコース、ジ−グルコース、トリ−グルコース及びテトラ−グルコースから選ばれる何れかが結合しているものであることを特徴とする請求の範囲第12項に記載の水分変動抑制剤。
【請求項14】
α,α−トレハロースの糖質誘導体が、分子の末端にトレハロース構造を有する糖質であることを特徴とする請求の範囲第12項又は第13項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項15】
α,α−トレハロースの糖質誘導体が、非晶質状態であることを特徴とする請求の範囲第12項乃至第14項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項16】
α,α−トレハロースの糖質誘導体とともに、他の糖質を含有せしめることを特徴とする請求の範囲第12項乃至第15項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項17】
他の糖質が、還元性糖質、非還元性糖質、糖アルコール及び水溶性多糖類から選ばれる何れか1種又は2種以上である請求の範囲第16項に記載の水分変動抑制剤。
【請求項18】
α,α−トレハロースの糖質誘導体を、水分変動抑制剤の総質量に対して、無水物換算で、10質量%以上含有することを特徴とする請求の範囲第12項乃至第17項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項19】
請求の範囲第12項乃至第18項の何れかに記載の水分変動抑制剤を含有せしめて得られる、水分変動抑制された組成物。
【請求項20】
飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、餌料、雑貨及び化学工業品から選ばれる何れかであることを特徴とする請求の範囲第19項に記載の水分変動抑制された組成物。
【請求項21】
飲食品が、調味料、クリーム類、ジャム類、ペースト類、和菓子類、洋菓子類、パン類、魚肉・畜肉加工品類、水産加工品、農産加工品類、麺類、米飯類、惣菜食品類、タレ類、冷凍食品類、レトルト食品類、冷蔵食品類及び乾燥食品類からえらばれる何れかであることを特徴とする請求の範囲第20項に記載の水分変動抑制された組成物。
【請求項22】
飲食品が、テーブルシュガー、鰹節調味エキス、ウニ加工品、フグの干物、イワシの干物、煮干し、しらす干、アサリのむき身、茹でダコ、ニシンの酢漬、ブリの煮付け、魚肉練製品、味付け海苔、粉末調味料、粉末牛乳、粉末鶏卵、粉末野菜ジュース、粉末緑茶、粉末油脂、粉末ビタミン、粉末ミネラル、粉末DHA、粉末スペアミントオイル、粉末香料、粉末色素、粉末高麗ニンジンエキス、野菜ジュース入り錠剤、ビタミン剤、白米、無洗米、米飯、チャーハン、麺、即席麺、おはぎ、餅、水まんじゅう、あん、最中、カステラ、冷凍パン生地、米粉パン、タコ焼き、フルーツグミ、キャラメル、ゼリー、フォンダン、高水分ハードキャンディ、綿菓子、中華ポテト、焙煎アーモンド、糖衣ガム、麦茶、団子のタレ、イチゴジャム、ドライフルーツ・ミックス野菜、メレンゲ菓子、チョコクッキー、パイ、米菓、ぬれ煎餅、プリン、ラクトアイス、凍結乾燥ねぎ、豆腐、ベーコン、加工肉処理液、加工液全卵、レトルトカレー、茶碗蒸し、サラダドレッシング、マヨネーズ様食品、クリーム、カスタードクリーム、緑茶シラップ、抹茶シラップ、可食性フィルム及びカプセルから選ばれる何れかであることを特徴とする請求の範囲第20項又は第21項に記載の水分変動抑制された組成物。
【請求項23】
粉末化基剤としての請求の範囲第12項乃至第18項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項24】
結着防止剤としての請求の範囲第12項乃至第18項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項25】
艶出し剤としての請求の範囲第12項乃至第18項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項26】
照り付与剤としての請求の範囲第12項乃至第18項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項27】
保形剤としての請求の範囲第12項乃至第18項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項28】
脂質の酸化及び/又は分解の抑制剤としての請求の範囲第12項乃至第18項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項29】
変性抑制剤としての請求の範囲第12項乃至第18項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項30】
香料の劣化防止剤としての請求の範囲第12項乃至第18項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項31】
色素の変色防止剤及び/又は退色防止剤としての請求の範囲第12項乃至第18項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項32】
色素がクロロフィルであることを特徴とする請求の範囲第31項記載の変色防止剤及び/又は退色防止剤。
【請求項33】
クロロフィルが緑茶又は抹茶に含まれることを特徴とする請求の範囲第32項記載の変色防止剤及び/又は退色防止剤。
【請求項34】
鮮度保持剤としての請求の範囲第12項乃至第18項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項35】
飲食品の風味保持剤としての請求の範囲第12項乃至第18項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項36】
メト化抑制剤及び/又は黒化防止剤としての請求の範囲第12項乃至第18項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項37】
ガラス化剤としての請求の範囲第12項乃至第18項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項38】
糖衣掛け用の基材としての請求の範囲第12項乃至第18項の何れかに記載の水分変動抑制剤。
【請求項39】
植物の生長促進剤としての請求の範囲第12項乃至第18項の何れかに記載の水分変動抑制剤。

【国際公開番号】WO2004/056216
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【発行日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502615(P2005−502615)
【国際出願番号】PCT/JP2003/016047
【国際出願日】平成15年12月15日(2003.12.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】