説明

経口で有効なカンナビノイド類似体

本発明は、自己免疫性神経変性障害、特に多発性硬化症及び関連症状の予防、緩和又は治療に有用である、末梢カンナビノイド受容体CBの経口で有効なリガンド、特に(+)−α−ピネン誘導体、及びそれらの医薬組成物に関する。本発明の方法は、活性成分が単独で又は既存の治療法と共に投与されるときに有用である。上記組成物は経口経路で投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫性神経変性障害、特に多発性硬化症の予防、緩和又は治療に有用である、末梢カンナビノイド受容体CBの経口で有効なリガンド、特に(+)−α−ピネン誘導体、及びそれらの医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カンナビスは、歴史的に、不眠、炎症、痛み、様々な精神病、消化器疾患、うつ病、片頭痛、神経痛、疲労、便秘、下痢、寄生虫、感染症及び食欲障害の治療に使用されていた。カンナビスのいくらかの潜在的な医療用途は、Pate[Pate D.W.、Journal of the International Hemp Association 2(2):74〜6、1995年]によって概説された膨大な科学文献を生み出している。カンナビス、及びその特有の生物活性成分であるカンナビノイドが、多発性硬化症及び脊髄損傷の特定の症状を抑えるのに有効であり得ることを示唆する証拠が増大しつつある。カンナビスは、カンナビノール(CBN)、カンナビジオール(CBD)、カンナビクロメン(CBC)及びカンナビゲロール(CBG)等の約60種の異なるカンナビノイドを含む。カンナビノイドは、特定のGタンパク質共役受容体の活性化によってその作用の大部分を発揮する疎水性化合物である。今まで、2種のカンナビノイド受容体、即ちカンナビノイド1型受容体(CB)及びカンナビノイド2型受容体(CB)のクローンが作製され特徴付けがなされたが、更なる受容体が存在し得る。CB受容体は、主として中枢神経系(CNS)中に見出され、カンナビノイドの向精神効果に関与しており、他方CB受容体は、主として免疫細胞の周辺に発現される。
【0003】
カンナビスの主要な精神活性成分は、Δ−テトラヒドロカンナビノール(THC)であり、これは、薬剤における使用が承認される予定の稀なカンナビノイドの一つである。ドロナビノールは、スケジュールIIコントロール物質(schedule II controlled substance)として、Marinol(登録商標)の商標で販売されている、ロウ状のごま油中にカプセル化された合成THCである。これは、癌化学療法に関連する嘔気を治療するための制吐薬として1985年以来、及びAIDS患者の食欲刺激薬として1992年以来米国で承認されている。カンナビノイドのその他の臨床応用は、Robson[Robson P.British Journal of Psychiatry 178:107−115、2001年]により概説されている。
【0004】
少人数の患者に実施された臨床試験は、THCが、痙性、痛み、ふるえ、膀胱に関係した症候及びMSの患者の夜間頻尿からの、他覚的及び/又は自覚的な軽減を生じ得ることを示している。THCが、MSに有効であり得ることの重要な証拠の欠如は、使用される投与の経口経路によるかもしれないことが示唆されてきた。これらの有益なカンナビノイドに誘導された作用のいくらかは、2種の同定されたカンナビノイド受容体CB及びCBによって媒介されると考えられる。しかしながら、いずれの既知のカンナビノイド受容体にも結合しない、非精神活性のカンナビジオール(CBD)のMSにおける活性は、治療効果の一部は、受容体が媒介しない機構を通したものであるかもしれないことを示している。これらの臨床試験の結果は、人によっては疑わしいと考えられていることは強調されるべきである[Killestein J.他、Neurology 58:1404−7、2002年]。
【0005】
THCは、現在経口投与されているが、この形態で取り込まれたときに低く不安定な生物学的利用能のためにしばしば効果がない。例えば、あるメタ分析研究は、経口療法の750経路の約65%で、THCに対して乏しい又は部分的でしかない応答を表した。したがって、鎮静、混乱及び不安等の望ましくない副作用を引き起こす恐れのある高い単一用量が投与されている。THCの経口投与に対するこのような乏しい応答は、THCの限られた水溶性、経口投与後のその大きな初回通過代謝、及び得られるTHCの低い絶対的生物学的利用能(平均13%)によるものかもしれない。先の研究は、経口投与されたTHCのもう一つの制限は、吸収における大きな被験者間のばらつきであることも報告している。Russo[Russo E.B.、Neurology 60(4):729、2003年]は、経口摂取された、燻製の又は蒸発したカンナビスを用いたMS患者によって経験された症状改善は有意であるが、経口のMarinol(登録商標)の効力は疑わしいと報告した。
【0006】
安定した潜在的により高い生物学的利用能を有する、経口投与可能な医薬の製剤をもたらし得る、増加した水溶性を有するカンナビノイドを得ることは有利であろう。他の経路に対する経口投与の利点は、非常に多く、第一且つ最重要な患者の薬剤服用順守及び安全が含まれる。
【0007】
多発性硬化症(MS)は、脳及び脊髄を侵すCNSの炎症性疾患であり、若年成人の神経性身体障害の最も一般的な原因である。主に、これは、神経線維、主として白質の脱髄によって生じる疾患であり、CNSの慢性炎症に起因すると考えられているが、神経変性のその他の形態が報告されている。軸索を覆い、神経インパルスの適切な伝達を確実にする髄鞘の保全性は、グリア細胞と呼ばれる大きなグループの維持細胞に属する乏突起膠細胞(oligodendrocytes)によって維持される。乏突起膠細胞の死が炎症に先行するようである。疾患が進行するのにつれて、軸索は、炎症過程によってはあまり破壊されず、同じ軸索の末端の損傷に続くウォラー変性によってより多く破壊される。したがって、多くの過程が、疾患の進行中のMSの症状の原因となり、それらには、炎症、脱髄、乏突起膠細胞死、膜障害及び軸索死が含まれる。MSは、2つの病因段階、即ち、最初の自己免疫の誘因、それに続く神経変性を有すると一般的に考えられている。
【0008】
MSの治療は、一般的に2つのカテゴリー、即ち、症状管理を扱う治療、及び発作の数及び重篤性と身体障害の進行を変更することにより疾病の経過を変更する治療に分かれる。5種の異なる製品が、1993年以来、MS治療用の疾患修飾薬(DMA)としてFDAにより承認されている。これらには、免疫調整剤である3種のインターフェロン−β(IFN−β)製品(Betaseron(登録商標)、Avonex(登録商標)、及びRebif(登録商標))、並びに2種の関係のない製品(Copaxone(登録商標)、及びNovantrone(登録商標))が含まれる。
【0009】
全ての既存の疾患修飾薬は、インフルエンザ様症状、肝臓毒性、一過性の紅潮(transient flushing)、胸痛及び関節痛、衰弱、悪心、不安、筋硬直、心毒性並びに潜在的な白血病誘導性を含めた、医師に周知の軽度乃至重篤な副作用を引き起こす。より重要なことには、タンパク質に基づく療法は、しばしば、究極的には継続使用の薬物の効力を無効にする中和抗体(NAbs)を発現させる。より一般的な問題は、注射部位反応及び自分に注射する際に多くの人が困難を感じることである。
【0010】
MS治療で使用されるDMA(免疫調整剤、又は免疫抑制剤のいずれか)は、疾病の免疫成分を標的にする。しかしながら、先に詳述されたように、MSは、視覚の、運動の、感覚の、調整及び平衡、腸、膀胱、性、認識並びにその他で分類し得る広範囲の症状を生じ得る。対症療法には、ステロイド、抗けいれん薬、三環系抗うつ薬、抗炎症薬、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、モノアミン酸化酵素阻害薬(MOI)、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン(BZD)、筋肉弛緩剤、抗コリン剤、β遮断剤、下剤、及び特定のチャンネル遮断薬の投与が含まれる。免疫調整剤、抗酸化剤、及び神経保護剤を用いた併用療法が、現在研究されつつある。損傷部位の再ミエリン化を増加し得る薬物を用いた治療も、検討されつつあり、将来の併用療法に含まれよう。単一薬剤が、多くのMS関連症状の複数に対応し、多元的療法(multifactorial therapy)として作用し得るならば有益である。
【0011】
MSの治療法は、過去10年間に劇的に変化したが、上記の既存の薬剤は、依然いくらかの欠点を有する。DMAは、全て、低い薬剤服用順守、及び頻繁な注射部位反応を生ずる、注射用の薬剤である。中和抗体が、IFN−β及びCopaxone(登録商標)に対して発現することがあり、それらは、治療効力を低減することがある。MSに関係した様々な症状に対処するのに、複合的な治療薬が更に必要であり、これらの薬物は、これら自体、副作用が全くないというわけではない。MS治療のための年間コストは、更なる対症療法の蓄積と共に更に上がり得る。
【0012】
より高い医薬服用順守率(medicinal compliance ratio)、病院に行くことのより低い必要性、及びそれによる患者のより質の高い生活を得るために、経口投与可能な薬剤を得ることは有益であろう。このような薬剤が、多数の症状を同時に緩和又は治療するならば更に有利であろう。小分子は、通常、調製するのにペプチド及びタンパク質に比べてより安価であり、更に長期投与後でさえも、抗体中和を発現させる感受性がより少ない。既存の生物製剤DMAが、比較的小さい、より安全な、且つより安価な化学物質で置き換えできれば、多発性硬化症治療法の更なる改良になろう。
【0013】
カンナビノイドは、神経保護特性を有することが知られており、更にMSの一因となり得るグルタミン酸放出及び酸化フリーラジカルを調節することができる。カンナビノイドが、更に脱髄を防ぐかもしれなく、且つ/又は再ミエリン化を増加するかもしれないことが最近示唆されている[Arevalo−Martin A.他、Journal of Neuroscience 23(7):251 1−6、2003年]。更に、カンナビノイドが、免疫調整剤の性質を有し、したがって、MSの症状のみならず、発症及び進行に効果を有し得ることが知られている。その広範囲の治療活性のために、カンナビノイドは、MS治療に現在使用されている既存の高価なDMA、並びにその他の対症薬剤を有利に置き換え得る。MSにおけるカンナビノイド使用を支持する証拠が、最近概説された[Atha MJ.、IDMU Literature Review:1−1 1、2002年]。
【0014】
カンナビノイドの免疫調節活性を有する、CB選択性カンナビノイドは、天然のTHCに比べて、仮にあったとしても精神に及ぼす影響はより少ないことが知られている。したがって、MSの治療又は緩和のためにCB選択性カンナビノイドを開発することは有利であり、このような化合物が、水溶性で、経口で生物学的に利用可能であれば更に有益であろう。
【0015】
多数の特許及び公開出願が、多発性硬化症の経口投与可能な治療法を対象としている。それらのうちで、米国特許4994466号は、経口投与によるMS治療用の麻薬拮抗薬の使用を開示しており、米国特許5217958号は、フィチン酸の使用を教示しており、米国特許5869054号は、経口剤が、特定のミエリン塩基性タンパク質(MBP)又はその断片における免疫自己抗原である、わずかに異なる手法を開示しているが、国際特許出願公開WO95/27500号は、経口寛容化(oral tolerization)を達成するためのその他の薬剤を記載している。米国特許出願2004/086534号は、経口投与によるMS治療のためのIFN−τの使用を開示しており、国際特許出願公開WO98/30227号は、COP−Iの使用を開示しており、国際特許出願公開WO00/09127号は、イブジラストの使用を開示している。上記の薬剤のいずれも、カンナビノイドではない。
【0016】
その他の特許は、より具体的に、MS治療のためのカンナビノイド作動薬又は拮抗薬の使用を開示している。例えば、多発性硬化症治療のために、米国特許5618955号は、多価不飽和脂肪酸アミド及びそれらの誘導体を開示しており、米国特許出願2004/0186166号は、アジュレミックアシド等のカンナビノイド類似体の使用を開示しており、米国特許出願2004/0157823号は、3−アミノアゼチジン誘導体の使用を開示しており、米国特許出願2004/0138293号は、カンナビス抽出物の使用を開示しており、米国特許出願2004/0132804号は、アミノインダン誘導体の使用を開示しており、米国特許出願2004/0116326号は、1,3−チアジン誘導体の使用を開示しており、米国特許出願2004/0110827号は、鏡像異性的に純粋なデキサナビノールの使用を開示しており、米国特許出願2004/0106800号は、4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾールの使用を開示しており、米国特許出願2004/0106614号は、1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド誘導体の使用を開示している。これらの出願において開示された化合物は、必ずしもカンナビノイド作動薬ではなく、CB選択性でもなく、一般的に構造上本発明のα−ピネン誘導体と異なる。
【0017】
米国特許4208351号は、古典的な三環式カンナビノイドの調製用の立体選択的過程における中間体としての光学活性二環式化合物を開示している。しかしながら、この中間体が治療上の活性に寄与することについて全く述べられておらず、このような化合物が、カンナビノイド受容体に一緒に結合する能力についての言及はなく、したがって、このような化合物を含む医薬組成物は、全く想定されていなかった。
【0018】
米国特許4282248号は、ピネン誘導体の異性体混合物及び個別の異性体の両方を開示している。鎮痛性(analgesic)、中枢神経抑制性、鎮静(sedative)及び静穏作用を含めた治療活性が、この化合物によるとされたが、この米国特許の開示は、この化合物が何らかのカンナビノイド受容体に結合することを教示しなかった。
【0019】
米国特許5434295号は、新規4−フェニルピネン誘導体のファミリーを開示しており、中枢神経系の損傷に関係した様々な病態の治療に有用な医薬組成物にこの化合物を利用する方法を教示している。この開示は、それらのいずれかが、末梢カンナビノイド受容体に選択的であるとは教示も示唆もしていない。
【0020】
国際特許出願WO01/28497号は、CB受容体に高い親和性を示す新規の二環式カンナビノイド類似体を開示している。この出願における化合物が、本願の開示に採用された命名法を参照した場合に、(−)α−ピネン誘導体であり、したがってその中でC−1、C−4及びC−5がRである立体化学配向からなることは技術者には明らかである。この出願は、(−)α−ピネン誘導体が、MS治療に有用であり得ることを示唆している。この出願の唯一の化合物に関して開示された唯一の情報は、CB及びCBに対するインビトロでの結合活性に関する。
【0021】
国際特許出願公開WO01/32169号は、CBに特異的な作動薬として、HU−308を含む(+)α−ピネン二環式化合物のファミリーを開示しており、痛み及び炎症、自己免疫疾患、胃腸障害の治療におけるそれらの使用、及び血圧降下剤としてのそれらの使用を例証している。この出願は、(+)α−ピネン誘導体が、MS治療に有用であり得ることを示唆している。
【0022】
国際特許出願公開WO03/005960号は、CB受容体への高い親和性を示し、その一部は二環式構造である、新規のカンナビノイド類似体を開示している。この出願は、ピネン誘導体の(−)及び(+)鏡像異性体の両方並びに全ての異性体を特許請求している。開示された唯一の二環式ピネン化合物は、(−)α−ピネンから誘導されており、唯一の生物学的情報は、インビトロでの結合活性に関する。この出願は、ピネン誘導体が、MS治療に有用であり得ることを示唆しているが、この化合物が、いずれかの疾患モデルにおいてインビボで実際に有効であることを実証していない。
【0023】
国際特許出願公開WO03/063758号は、CB受容体に対する選択性を示す、新規の(+)α−ピネン誘導体を開示している。この出願は、特定の親水性二環式カンナビノイドを開示し、このような化合物が、非経口的に投与された場合に、とりわけ、抗炎症及び鎮痛性の薬剤であることを実証している。この出願は、この発明の疎水性化合物が、静脈内に投与された場合にMS治療に有用であることを開示し、これらの化合物のあるものは、経口的に送達され得ることを示唆した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
現在、多発性硬化症の緩和又は治療に使用される薬物は、幾つかの欠点に悩まされている。より良い安全性プロフィール、患者の薬剤服用順守及びより低いコストを有する、経口投与可能な小分子を開発することは有利であろう。カンナビノイドは、MSの治療のための候補を提供する。このクラスの化合物は、疾患の枢要な免疫成分に対応し、且つMSに関連した症状を軽減するのに潜在的な付加的な利点を有する。したがって、本発明は、多発性硬化症、及び自己免疫及び神経変性の病因を有するその他の障害に立ち入る治療手段について、長年にわたって満たされていない医療ニーズに対する解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、経口で有効であり、自己免疫及び神経変性の病因を有する障害、特に多発性硬化症の予防、緩和又は治療をするカンナビノイドを提供することによって背景技術の不備を克服する。
【0026】
本発明の経口で有効なカンナビノイドは、多発性硬化症に関連した症状の治療に有用である。本発明の経口で有効な組成物は、多発性硬化症以外の神経系の様々な障害における神経症状を治療又は予防するのに有用であると考えられる。したがって、経口で有効な組成物は、ふるえ、痙縮、筋衰弱、及び任意の病因の調整の欠如を治療又は予防するのに有用である。
【0027】
具体的には、本発明のカンナビノイドは、CB選択的な(+)α−ピネン誘導体であり、好ましくは水溶性である。本発明の化合物は、多発性硬化症又は関連した症状を緩和又は治療するのに、単独で、又はその他のカンナビノイド又は前記障害の治療に使用されるその他の薬剤と組み合わせて使用することができる。
【0028】
第1の態様によれば、本発明は、それを必要とする個体に、活性成分として、式(I)の化合物:
【化1】


[式中、
C−4がSであり、C−1及びC−5における陽子が互いの関係においてシス形であり、C−4及びC−5における陽子がトランス形である、特定の立体化学を有し、
は、
(a)O又はS、
(b)C(R’)(式中、R’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、シアノ、−OR”、−N(R”)、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”又はC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、C(O)R’’’、C(O)N(R’’’)、C(S)R’’’、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR’’’、及びC〜Cアルキル−N(R’’’)からなる群から選択され、式中、R’’’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和、直鎖、分枝若しくは環式C〜C12アルキルからなる群から選択される)、及び
(c)NR”又はN−OR”(式中、R”は先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
及びRは、それぞれ独立に、
(a)−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−S(O)(O)NR”(式中、出現するごとに、R”は、先に定義した通りである)、
(b)−S(O)R、−S(O)(O)R(式中、Rは、水素、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”、及びC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、先に定義した通りである)、及び
(c)−C(O)OH、−S(O)(O)OR、又は−P(O)(ORで終端された−OC(O)OH、−OS(O)(O)OR、−OP(O)(OR、OR又は−OC(O)−R鎖(式中、Rは、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルであり、Rは、出現するごとに、水素からなる群から選択され、Rは、先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
は、
(a)R(式中、Rは、水素、ハロゲン、OR’’’、OC(O)R’’’、C(O)OR’’’、C(O)R’’’、OC(O)OR’’’、CN、N(R’’’)、NC(O)R’’’、NC(O)OR’’’、C(O)N(R’’’)、NC(O)N(R’’’)及びSR’’’からなる群から選択され、式中R’’’は、出現するごとに、先に定義した通りである)、
(b)飽和若しくは不飽和、直鎖、分枝若しくは環式C〜C12アルキル−R(式中、Rは先に定義した通りである)、
(c)Rにより任意の位置で更に置換し得る芳香族環(式中、Rは先に定義した通りである)、及び
(d)(c)で定義した通り更に置換し得る芳香族環によって場合によっては終端された、飽和若しくは不飽和、直鎖、分枝若しくは環式C〜C12アルキル
からなる群から選択される]
及びその医薬上許容される塩、エステル又は溶媒和物を含む、経口で有効な量の医薬組成物を投与するステップを含む、多発性硬化症の予防、緩和又は治療の方法を提供する。
【0029】
ある実施形態によれば、本発明は、それを必要とする個体に、活性成分として式(I)の化合物を含む、経口で有効な量の医薬組成物を投与するステップを含む、多発性硬化症の予防、緩和又は治療の方法であって、式中、Rは、Oであり、R及びRは、それぞれORであり、式中、Rは、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、−R及び−C(O)−Rからなる群から選択され、式中、Rは、−C(O)ORで終端された、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル鎖であり、Rは、水素、及び飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルからなる群から選択され、Rは、飽和若しくは不飽和、直鎖、分枝若しくは環式C〜C12アルキル−Rからなる群から選択され、式中、Rは、R、及び先に定義した通り、Rによって任意の位置を場合によっては更に置換し得る芳香族環からなる群から選択される、方法を提供する。
【0030】
更なる実施形態によれば、本発明は、それを必要とする個体に、活性成分として式(I)の化合物を含む、経口で有効な量の医薬組成物を投与するステップを含む、多発性硬化症の予防、緩和又は治療の方法であって、式中、Rは、Oであり、R及びRは、それぞれ独立に、OH、スクシネート、フマレート、及びメチレンオキシカルボキシルからなる群から選択され、Rは、1,1−ジメチルペンチル、1,1−ジメチルヘプチル、1,1−ジメチル−6−ヘプチニル、1,1−ジメチル−3−フェニルプロピル、1,1,3−トリメチルブチル、1−(4−クロロフェニル)−1−メチルエチル、1−エチル−1−メチルプロピル、5−ブロモ−1,1−ジメチルペンチル及び1,1−ジメチルペント−4−エニルからなる群から選択される、方法を提供する。
【0031】
例示的な一実施形態によれば、本発明は、それを必要とする個体に、活性成分として式(I)の化合物を含む、経口で有効な量の医薬組成物を投与するステップを含む、多発性硬化症の予防、緩和又は治療の方法であって、式中、RはOであり、RはOHであり、Rはフマレートであり、Rは1,1−ジメチルヘプチルである、方法を提供する。
【0032】
別の態様によれば、本発明は、それを必要とする個体に、活性成分として上記で定義の式(I)の化合物を含む、経口で有効な量の医薬組成物を投与するステップを含む、ふるえ、痙性、筋衰弱、及び調整の欠如(lack of coordination)からなるリストから選択される神経症状の予防、緩和又は治療の方法を提供する。
【0033】
別の態様によれば、本発明は、それを必要とする個体に、活性成分として上記で定義の式(I)の化合物を含む、経口で有効な量の医薬組成物を投与するステップを含む、炎症のメディエーターの調節方法を提供する。
【0034】
別の態様によれば、本発明は、経口で有効な量の上記で定義した式(I)の化合物の、多発性硬化症を予防、緩和又は治療するための薬剤の調製のための使用を提供する。
【0035】
ある実施形態によれば、本発明は、経口で有効な量の式(I)の化合物の、多発性硬化症を予防、緩和又は治療するための薬剤を調製するための使用であって、式中、Rは、Oであり、R及びRは、それぞれORであり、式中、Rは、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、−R及び−C(O)−Rからなる群から選択され、式中、Rは、−C(O)ORで終端された、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル鎖であり、Rは、水素及び飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルからなる群から選択され、Rは、飽和若しくは不飽和、直鎖、分枝若しくは環式C〜C12アルキル−Rからなる群から選択され、式中、Rは、R及び場合によっては先に定義した通りRによって任意の位置で更に置換し得る芳香族環からなる群から選択される、使用を提供する。
【0036】
更なる実施形態によれば、本発明は、経口で有効な量の式(I)の化合物の、多発性硬化症を予防、緩和又は治療するための薬剤を調製するための使用であって、式中、Rは、Oであり、R及びRは、それぞれ独立に、OH、スクシネート、フマレート、及びメチレンオキシカルボキシルからなる群から選択され、Rは、1,1−ジメチルフェニル、1,1−ジメチルヘプチル、1,1−ジメチル−6−ヘプチニル、1,1−ジメチル−3−フェニルプロピル、1,1,3−トリメチルブチル、1−(4−クロロフェニル)−1−メチルエチル、1−エチル−1−メチルプロピル、5−ブロモ−1,1−ジメチルペンチル及び1,1−ジメチル−ペント−4−エニルからなる群から選択される、使用を提供する。
【0037】
例示的な一実施形態によれば、本発明は、経口で有効な量の式(I)の化合物の、多発性硬化症を予防、緩和又は治療するための薬剤を調製するための使用であって、式中、Rは、Oであり、Rは、OHであり、Rは、フマレートであり、Rは、1,1−ジメチルヘプチルである、使用を提供する。
【0038】
別の態様によれば、本発明は、経口で有効な量の上記で定義の式(I)の化合物の、先に定義の神経症状の予防、緩和又は治療用の薬剤の調製のための使用を提供する。
【0039】
別の態様によれば、本発明は、経口で有効な量の上記で定義の式(I)の化合物の、炎症のメディエーターの調節用薬剤を調製するための使用を提供する。
【0040】
本発明の医薬組成物は、経口で有効な式(I)の化合物に加えて、増粘剤、担体、緩衝剤、希釈剤、界面活性剤、保存剤、及び生理学上許容され安定な製剤を作製するのに必要な当分野で公知のもの一切を含むことができる。
【0041】
医薬組成物は、同時投与の目的で、それだけには限らないが、式(I)の化合物、医師に周知の、抗炎症薬、免疫調整剤、免疫抑制剤、ステロイド、抗けいれん薬、鎮痛剤、抗うつ剤、筋肉弛緩剤等の1種又は複数の更なる活性成分も含むことができる。
【0042】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲においては、同時投与は、個別に又は単一組成物として投与される併用療法を含むことを明確に意図している。個別に投与されるとき、別々の治療薬は、実質的に同時に又は別々の投与計画のもとで投与してよい。
【0043】
本発明の医薬組成物は、患者の便利、快適性及び安全のために経口で投与される。投与の経路には、それだけには限らないが、薬物が嚥下される経口、並びに口腔中の経粘膜吸収のための、口腔内の、歯肉の、舌側の、舌下の及び口咽頭の投与が含まれる。
【0044】
医薬組成物は、液体の、エアロゾルの又は固体の剤形であってよく、それだけには限らないが、投与の経口経路に求められる、溶液、懸濁液、ミセル、乳濁液、マイクロエマルジョン、エアロゾル、粉末、顆粒、サシェ、ソフトゲル、カプセル、錠剤、丸剤、カプレット等を含めた任意の適切な処方物に処方することができる。
【0045】
それを必要とする個体の予防、緩和又は治療用の薬剤としてのそれらの使用の前に、医薬組成物は、単位剤形に処方することができる。ヒトへの活性な投与量は、一般的に1日1〜4回の投与計画で、体重1kg当たり0.05mgから約50mgの範囲である。しかしながら、活性成分の選択される投与量は、所望の治療効果、投与経路、所望の治療期間、患者の年齢、体重、禁忌、同時投与及び更なる薬剤の併用等によることは当分野の技術者には明らかである。
【0046】
本発明のこれらの及び更なる利点及び特徴は、図及び非制限的な実施例と共に、次の詳細な説明を参照することにより、当分野の技術者にはより良く理解されよう。
【0047】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する添付図面は、本発明の特定の実施形態を例示し、その説明と共に、本発明の原理を説明する働きをする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明は、経口で有効な非古典的なカンナビノイドを用いる、自己免疫及び神経変性の病因を有する障害の予防、緩和又は治療のための組成物及び方法を提供する。
【0049】
特に、本発明は、活性成分のCB選択性のカンナビノイド作動薬を含む医薬組成物、及び多発性硬化症の予防、緩和又は治療のために同組成物を使用する方法を提供する。
【0050】
本発明の方法は、多発性硬化症によって引き起こされたか、他の疾患又は障害から生じているかにかかわらず、MSに関係した症状を治療するのに使用することができる。
【0051】
一般的に、CB選択性作動薬は、アミノアルキルインドール、アナンドアミド、3−アロイルインドール、アリール及びヘテロアリールスルホネート、アリールスルホンアミド、ベンズアミド、ビフェニル様カンナビノイド、場合によっては更に縮合又は架橋単環又は多環によって置換されたカンナビノイド、ピラゾール−4−カルボキサミド、エイコサノイド、ジヒドロイソインドロン、ジヒドロオキサゾール、α−ピネン誘導体、キナゾリンジオン、キノリンカルボン酸アミド、レソルシノール誘導体、テトラジン、トリアジン、ピリダジン及びピリミジン誘導体、並びにそれらの類似体及び誘導体からなる群から選択される、植物又は動物由来のカンナビノイド又は大麻様化合物(cannabimimetic compound)である。より好ましくは、CB選択性カンナビノイド作動薬は、α−ピネン誘導体であり、より好ましくは(+)−α−ピネン誘導体である。
【0052】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語及び句が次に定義される。
【0053】
本明細書で使用される「中枢神経系」(CNS)という用語は、硬膜内の全ての構造を意味する。このような構造には、それだけには限らないが、脳及び脊髄が含まれる。
【0054】
本明細書で使用される「CB」という用語は、カンナビノイド受容体を意味する。CB受容体は、主としてCNS中に見出されるが、CB受容体は、主として免疫細胞の周辺に見出される。これらの2つの受容体のほかに、まだクローンを作製されていないカンナビノイド受容体の存在を支持する証拠が存在する。
【0055】
本明細書で使用される「経口で有効な」という用語は、本発明の化合物が、適度な容量で所望の用量を経口投与した後に、対象において目標の生物活性を達成することを指す。
【0056】
本明細書で使用される「水溶性」という用語は、本発明の化合物が、Δ−THCに比べて、少なくとも1倍、好ましくは50倍、より好ましくは250倍、最も好ましくは1000倍以上、水溶液中に溶解することを指す。
【0057】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲においては、「抑制する、軽減する、又は減少させる効果」は、論じられている活性を、少なくとも20%、好ましくは40%、より好ましくは60%、最も好ましくは80%以上、減少させる能力である。最大の可能な効果が100%ではない活性の場合、前記数値は、最大の可能な効果の百分率に関する。
【0058】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲においては、「増強する又は増加させる効果」は、論じられている活性を、少なくとも1.5倍、好ましくは3倍、より好ましくは4倍、最も好ましくは5倍以上、増加させる能力である。
【0059】
本発明においては、結合親和力は、IC50値、即ち、CB受容体からの放射性標識作動薬の50%を置換する試験化合物濃度で表される。好ましい化合物は、50nM以下の、好ましくは30nM以下の、より好ましくは10nM以下の、最も好ましくは1nM以下のCB結合のIC50値を示す。「CBに特異的な又は選択的な」とは、少なくとも10、好ましくは20、より好ましくは30、最も好ましくは50以上である、CB/CB結合親和力の比を有する化合物を意味する。好ましくは、これらの比は、ヒトのCB及びCB受容体のために得られる。CB/CB親和力で示されるCBに対する選択性は、CBに特異的な放射性リガンドを置換した試験化合物により得られたIC50値を、CBに特異的な放射性リガンドを置換した試験化合物により得られたIC50値で割って、即ちIC50CB/IC50CBとして計算される。本発明の好ましい化合物のあるものは、両方の性質を必ずしも共有しない。言い換えれば、あるものは、約1nMのCBのIC50を有するが、約30だけの比しか有しない。
【0060】
作動薬は、特定のリガンド、例えば、ホルモン、神経伝達物質、又は本件ではカンナビノイドを模倣し、そのリガンドの受容体に結合し、それにより天然のリガンドが生じるのと同じ作用を生じ得る物質である。殆どの作動薬は、関係する受容体への直接の結合及びその後の活性化を通じて作用するが、いくらかの作動薬は、リガンドの結合を促進すること、又は受容体上のその滞留時間を増加させることによって作用し、それぞれの結合の可能性及び効果を増加させる。本発明に包含される総ての作用機構が何であっても、作動薬の正味の効果は、リガンドとして寄与して元の化学物質の作用を促進することである。反対の効果を有し、リガンドの作用を促進する代わりに、それを阻止する化合物は、受容体拮抗薬である。
【0061】
本発明の化合物の作用の最も有望な機構は、CB受容体へのその選択的な結合、及び特異的なシグナル変換経路への機能的な結合を通じてであるが、代替の機構、例えば、更なる、但し未同定のカンナビノイド受容体への結合を通じてか、受容体の媒介しない手段を通じてか、又はこのような機構の組合せを通じてかのいずれかを排除できない。
【0062】
多発性硬化症
本明細書で使用される「多発性硬化症」又は「MS」という用語は、遺伝的に過敏な宿主中の中枢神経系の炎症性疾患を意味する。自己免疫応答に続発するこの神経変性疾患は、主に神経線維の脱髄により主として白質組織に影響を及ぼす。多くの過程が、疾患の進行中にMSの症状の原因となり、それらには、炎症、脱髄、乏突起膠細胞死、膜障害及び軸索死が含まれる。
【0063】
臨床上、MSは、非常に予測不可能で変わりやすいために特徴付けるのが難しい。CNSのどの領域が侵されているか、また、それらがどれだけひどく損傷されているかに応じて、症状のタイプ及び重篤性は大きく変化し得る。視神経の病変は、視力障害を引き起こすことがあり、脳幹障害は、めまいを引き起こすことがあり、脊髄損傷は、協調及び/又は平衡問題を引き起こすことがある。一般的に、MSの人は、脳又は脊髄により、又は脳又は脊髄を通る経路により制御される機能の部分的な又は完全な損失を経験し得る。
【0064】
他の考えられる自己免疫疾患同様に、MSは、約2:1の性比で女性に多く起こり、臨床症状は、しばしば青年期中に現れる。MSは、主として温帯地方及び西半球の疾患である。それは、主として、欧州、北米、豪州及びニュージーランドで報告されており、これらの地域では、その罹患率は、100,000当たり250の高率にもなり得る。MSは、日本、中国及び他の温帯東洋諸国で発見されるが、それは西洋に比べて格段に稀である。
【0065】
神経学者の国際概覧(an international survey of neurologists)[Lubin F.D.及びReingold S.C、Neurology 46(4):907−11、1996]に定義されているように、MSには4つの主要な種類がある。再発寛解型(RRMS)は、再発(増悪としても知られる)によって特徴付けられ、この再発の間に新しい症状が現れたり、古い症状が再び現れたり、悪化したりすることがある。再発には、人が再発の間に被った障害を完全に又は部分的に回復する寛解の期間が続く。再発は、数日、数週間又は数カ月間続くことがあり、回復は、緩慢で漸進的であったり、或いは殆ど即時であったりする。多発性硬化症が見られる人の大多数は、再発寛解型で最初に診断される。
【0066】
数年後、再発寛解型のMSを経験した多くの人々は、疾患の二次進行型(SPMS)に移行する。これは、再発の間の疾患の漸進的な悪化によって特徴付けられる。二次進行型の早い段階において、人は、いくつかの再発を経験することがあるが、しばらくするとこれらは、まとまって全般的な進行になる。二次進行型の人々は、良い日及び悪い日又は良い週及び悪い週を経験することがあるが、再発の症状の発現に続くいくらかの寛解は別として、真の回復を経験することはない。10年後、再発寛解型のMSの人の50%は、二次進行型を発生させる[Weinshenker B.G.他、Brain 112:133−46、1989年]。25から30年までに、その数字は、90%に上昇する。
【0067】
この疾患の第3の形態は、進行再発型多発性硬化症(PRMS)として知られる。この形態のMSは、発症から進行性の経過をたどり、再発によって中断される。再発の直後に著しい回復があるが、再発と再発の間には症状の漸進的な悪化がある。
【0068】
最終的には、MSの一次進行型(PPMS)は、発症から寛解の一切ない、疾患の漸進的な進行によって特徴付けられる。疾患活動性の安定状態の期間があることもあり、二次進行型のように、良い日及び悪い日又は良い週及び悪い週があることもある。PPMSは、発症が、一般的に30歳代後半又は40歳代前半であり、男性が、女性と同じくそれを発症しやすく、初期の疾患活動は、脳ではなく脊髄に生ずるという点で再発寛解型及び二次進行型と異なる。一次進行型MSは、しばしば脳に広がるが、再発寛解型及び二次進行型に比べて脳の部位をより損傷しにくく、例えば、一次進行型の人々は、認知的問題をより発生しにくい。
【0069】
疾患、CNS病変部位及び現れた症状又は障害の全ての形態は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0070】
多発性硬化症の治療
1990年代前半まで、長期的に疾患の経過を変え得る有意な治療法はなかった。ステロイド治療は、発病期間の短縮には有効であるが、疾患の究極の結果にも、結果として生じる身体障害にも影響を及ぼすと証明されたことはなく、従って、増悪の対症療法と考えられていた。過去10年は、予防維持治療及び対症療法改良の開発を示した。免疫調節薬である、3種のインターフェロン−β(IFN−β)製品(Betaseron(登録商標)、Avonex(登録商標)、及びRebif(登録商標))、並びに2種の関連のない製品(Copaxone(登録商標)及びNovantrone(登録商標))が、FDAによって承認されている。
【0071】
全てのβ−インターフェロンは、血液脳関門の修復すること及び病変中の炎症性過程を減少させることを含めた様々な機構を通してMS病変の炎症を止める。それらは、再発寛解型のMS用に承認されている。原因に応じて、IFN−βは、様々な用量で、毎日から毎週にわたる様々な日程に従って、皮下又は筋肉注射によって投与される。
【0072】
長期の研究は、殆どの人々にとって、β−インターフェロンは、継続使用で有効であり続けることを示した。しかしながら、他のタンパク質ベースの治療の場合のように、患者のかなり大きな部分が、その薬物に対する中和抗体(NAbs)を発生させ、これがその効力を減少させる。28から47%の患者が、IFN−β−1bに対するNAbsを発生させ、商業的供給源に応じて、2から28%の患者が、IFN−β−1aに対するNAbsを発生させる。β−インターフェロンの主要な副作用は、非常に不快なことのある「インフルエンザに似た症状」、及びある患者では軽度の肝臓毒性である。よりよく起こる問題は、注射部位反応及び多くの人々が自身に注射することの困難である。
【0073】
Copaxone(登録商標)(酢酸ガラティラメル)は、化学構造及び作用の機構においてβ−インターフェロンと異なる。それは、ミエリン自体に似たものに見える合成ポリペプチドの群からなる。それは、発病の頻度及び重篤性をBetaseron(登録商標)及びRebif(登録商標)と同程度に減少させるが、磁気共鳴映像法(MRI)で見た病変への効果はかすかに劣る。Copaxone(登録商標)は、一般的にIFN−β製品よりも許容されるが、皮下注射で毎日投与され、再発寛解型のMS用に使用される。投与の経路による、患者に報告された最もよく起こる問題は、注射部位反応である。これまで報告された更なる副作用は、軽度であり、一過性フラッシング、胸及び関節痛、衰弱、悪心、不安及び筋硬直を含む。上記全ての薬物が、疾患の単一形態、即ち再発寛解型のMSの治療用に指示されている。
【0074】
Novantrone(登録商標)(ミトキサントロン)は、T細胞及びB細胞の活性を抑える能力を通して、MSの疾患進行を遅らせ、再発の数を減らす化学療法薬剤である。以前の薬物と反対に、Novantrone(登録商標)は、免疫抑制薬である。これは、この疾患の二次進行型及び再発寛解型の形態を含めたMSを悪化させることが立証されており、その疾患が、β−インターフェロン又は酢酸ガラティラメルによって制御されない患者における救援治療と考えられている。Novantrone(登録商標)は、そのより重篤な副作用、即ち心毒性及び潜在的な白血病誘導性のために、2年を超えない有限の期間、3カ月に一度、一般的に静脈内に投与される。
【0075】
本発明の経口で有効なカンナビノイドは、少なくとも5つの態様、即ち、(i)非タンパク質ベースの小分子であるためにより低い生産コストを有すること;(ii)免疫原生がより少なく、したがってNAbs発生のリスクが減少すること;(iii)NAbsの非存在が、長年にわたるより長期の治療効力を確実にすること;(iv)経口投与が、患者の薬剤服用順守を増加させ、注射部位反応を排除すること;及び(v)CB選択性であるので、本発明の化合物は、減少した副作用及び毒性を示すことにおいて、既存のDMAsのいくらか又は全ての欠点を克服することを理解されたい。
【0076】
先に詳述の通り、MSは、視覚の、運動の、知覚の、協調及び平衡、腸、膀胱、性の、認識の及びその他に分類し得る広範囲の症状を生じ得る。DMAsは、疾患の免疫原因(immune cause)を扱うが、ステロイド、抗けいれん薬、三環系抗うつ薬、抗炎症薬、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、モノアミン酸化酵素阻害薬(MOI)、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン(BZD)、筋肉弛緩剤、抗コリン剤、β遮断剤、下剤、及び特定のチャンネル遮断薬の投与を含む治療法は、症状を目標にする。このような薬剤は、多発性硬化症以外の疾患及び障害の類似の症状の治療に使用される。
【0077】
ステロイドは、MSの対症療法の一例と評されており、DMAsの開発前は最適な治療法であった。急性増悪に、ステロイドは、MS病変の腫張及び炎症を減少させることにより急性の発作の期間を短縮すると報告されている。しかしながら、それらは、MSの増悪の頻度又は進行を変えず、長期の使用は、選択された患者以外は回避すべきである。含まれるのは、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、βメタゾン、及びデキサメタゾン等の合成副腎糖質コルチコイド(コルチコステロイド)である。コルチゾンは、免疫抑制効果を有し、血液脳関門の「漏りやすい状態」を減少させると考えられている。ステロイドは、単に一時的に抑えるだけであり、疾患の原因を扱わない。潜在的な重篤な副作用のいくらかが、MSの治療におけるステロイドの長期の使用を阻んでいる。
【0078】
MSに関連した症状の予防、緩和又は治療に使用されるその他のクラスの化合物も、医師に周知の重篤な副作用が問題となっている。
【0079】
先に報告され、ここで開示される(i)抗炎症薬;(ii)免疫抑制薬、(iii)鎮痛薬;(iv)神経保護薬;(v)抗酸化剤;及び(vi)抗振戦薬(anti−tremor agent)としての効力を考慮すると、本発明の経口で有効なカンナビノイドが、有利に既存の対症療法を置換し得ることを理解されたい。したがって、その多様な作用を考慮すると、本発明の経口で有効なカンナビノイドは、多元的療法、即ち、複数の薬物治療の必要性を更に減少させ得るという事実が考慮されるであろう。本発明の経口で有効なカンナビノイドを既存のMS治療と共に同時投与すること又は組み合わせることによって、薬剤の部分又は全ての投与の、重複する薬剤を排除すること又は用量を減少させることによって、MS治療に必要な薬物の絶対数を減少させることは、薬物と薬物の相互作用、及び全体的な副作用を減少させる。
【0080】
本発明の化合物の多発性硬化症に関連した症状を予防する能力は、同じ症状が他の疾患又は障害で生じるときに治療することができるので、より広範な治療利益を有することは当分野の技術者に明らかであろう。MSに関連した症状の治療は、多発性硬化症によって生じたか、その他の疾患又は障害によって生じたかにかかわらず、本発明の範囲内に包含される。
【0081】
例えば、神経障害性の痛みは、MS患者に観察されるだけでなく、例えば、背痛、糖尿病、癌、単一神経根障害、三叉神経痛、ヘルペス後神経痛、幻肢痛、複合性局所疼痛症候群及び様々な末梢神経障害に悩む個体に、又はある抗腫瘍療法を受けている患者にも観察される。例えば、Taxol(登録商標)治療を受けている患者の約30%が、神経障害性の痛みを生じる。MSの場合におけるように、神経障害性の痛みの既存療法は、不十分であると考えられている。
【0082】
化学的定義
本発明の化合物のいくらかは、像と鏡像の関係にあるか(光学異性体)、像と鏡像の関係にないか(ジアステレオマー)のいずれかである立体異性体で存在し得る。本発明は、光学異性体又はジアステレオマー又はそれらの混合物に関する。これらの光学異性体及びジアステレオマーの混合物は、立体異性的に均一な成分に周知の方法で分離することができ、又は分離した光学異性体として演繹的(a priori)に合成することができる。
【0083】
本発明においては、我々は、次の環構造中の位置の番号付けを参照し、この環構造で位置1、4及び5は、キラル中心である。本発明の好ましい(+)−α−ピネン誘導体の立体化学は、式(II)に示されるように、C−4がSであり、C−1及びC−5の陽子が、互いにシスの関係にあり、C−4及びC−5の陽子が、トランスである。
式II
【化2】

【0084】
この命名は、C−4の代わりに不斉炭素がC−5である立体化学のもう一つの先の定義と等価である。即ち、式(II)の化合物は、C−5がSであり、C−1及びC−5の陽子が、互いにシスの関係にあり、C−4及びC−5の陽子がトランスである、立体化学を有するとも表すことができる。
【0085】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲においては、本発明の特定の化合物は、その完全な化学名ではなく大文字で表すことがある。例えば、(−)−4−{4−[1,1−ジメチルヘプチル]−2−フマレート−6−ヒドロキシ−フェニル}−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オンを、しばしば化合物18Fと呼ぶ。
【0086】
アルキル置換基は、飽和若しくは不飽和の、直鎖、分枝若しくは環式であって、アルキル鎖中の炭素原子数が、3以上であるときのみ後者であってよく、混合した構造を含むことができる。不飽和であるとき、炭化水素基は、1個又は複数の二重結合を有してアルケニルを形成することができ、或いは1個又は複数の三重結合を有してアルキニルを形成することができ、それらの全ては、直鎖、分枝若しくは環式であってよい。
【0087】
Rが、水素又はアルキル鎖であるときに、OC(O)Rはエステルを表し、OC(O)NRはカルバメートを表し、OC(S)Rはチオエステルを表し、NRはアミンを表し、NRC(O)Rはアミドを表し、NRC(O)NRは尿素を表し、NRC(S)Rはチオアミドを表し、SRはチオール又は硫化物を表し、S(O)Rはスルホキシドを表し、SC(O)Rはチオエステルを表し、SC(O)NRはチオカルバメートを表し、SC(S)Rはジチオエステルを表し、S(O)(O)Rはスルホンを表し、S(O)(O)NRはスルホンアミドを表し、S(O)(O)NC(O)Rはアシルスルホンアミドを表し、S(O)(O)NC(O)NRはスルホン尿素を表し、S(O)(O)NC(S)Rはチオアシルスルホンアミドを表し、P(O)(OR)はホスフェートを表し、OP(O)(OR)はエステルホスフェートを表す。
【0088】
「ハロゲン」又は「ハロ」は、フッ素(−F)、塩素(−Cl)、臭素(−Br)又はヨウ素(−l)を意味し、複数のハロゲン(例えば、2種以上の可変の基がハロゲンであってよい)が、言及される場合、各ハロゲンは、それぞれ独立に選択される。
【0089】
「置換された」又は「場合によっては置換された」という用語は、既存の環境下で指定された原子の通常の価数を超えないという条件で、指定された原子上の1又は複数の水素が、指示された群からの選択で置換される又は場合によっては置換されることを意味する。置換(substituents)及び/又は変更(variables)の組合せは、このような組合せで安定な化合物が生じる場合のみ許される。「安定な化合物」又は「安定な構造」は、反応混合物から有用な程度の純度への単離、及び有効な治療薬への処方に耐えるのに十分強い化合物を意味する。
【0090】
本発明の特定の化合物は、更に医薬上許容される塩及びエステルを形成することができる。「医薬上許容される塩及びエステル」は、医薬上許容され所望の薬理学的性質を有する任意の塩及びエステルを意味する。例えば、分子中に存在する任意のカルボキシ又はスルホ基によって形成されるこのような塩には、毒性でもなくそれ以外の点でも容認できなくない、アミノ酸を含めた、無機若しくは有機酸、又は無機若しくは有機塩基から誘導し得る塩が含まれる。
【0091】
本発明は、その範囲内に、式(I)の化合物の溶媒和物及びその塩も含む。「溶媒和物」は、本発明の化合物の1種又は複数の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合は、水素結合を含む様々な程度のイオン又は共有結合を含む。ある例では、溶媒和物は単離することができる。「溶媒和物」は、溶液相及び単離可能な溶媒和物の両方を含む。適切な溶媒和物の非制限的な例には、エタノール付加物(ethanolate)、メタノール付加物(methanolate)等が含まれる。「水和物」は、溶媒分子が水である溶媒和物である。
【0092】
本明細書では、「プロドラッグ」という用語は、例えば血液中の加水分解によって、生体内で式(I)の親化合物に急速に変換される化合物を表す。プロドラッグは、ある例では、親薬物に比べて投与するのにより容易であるためにしばしば有用である。それらは、例えば、経口投与によって体内に吸収され利用され得るが、親薬物はそうではない。プロドラッグは、医薬組成物中で親薬物に比べて改良された溶解性を有することもある。これらの製薬形態の全ては、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0093】
化合物の医薬上許容される酸付加塩には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸等の無機酸から誘導される塩、並びに脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換されたアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸等の有機酸から誘導される塩が含まれる。したがって、このような塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩等が含まれる。他に考えられるのは、アルギネート等のアミノ酸及びグルコネート又はガラクツロネート等の塩である[Berge S.M.他、J.of Pharmaceutical Science、66:1−19、1977年]。
【0094】
前記塩基性化合物の酸付加塩は、遊離塩基形態を十分な量の所望の酸と接触させて通常の方法で塩を生成することによって調製される。遊離塩基形態は、塩形態を塩基と接触させ、遊離塩基を通常の方法で単離することによって再生することができる。遊離塩基形態は、そのそれぞれの塩形態と極性溶媒中の溶解性等の特定の物理的性質がいくらか異なるが、それ以外には、塩は、本発明のためのそのそれぞれの遊離塩基と同等である。
【0095】
前記酸性化合物の塩基付加塩は、遊離酸形態を十分な量の所望の塩基と接触させて従来の方法で塩を生成することによって調製される。遊離酸形態は、塩形態を酸と接触させ、遊離酸を通常の方法で単離することによって再生することができる。遊離酸形態は、そのそれぞれの塩形態と極性溶媒中の溶解性等の特定の物理的性質がいくらか異なるが、それ以外には、塩は、本発明のためのそのそれぞれの遊離酸と同等である。
【0096】
本発明の方法に使用された特定の化合物は、知られており、CB受容体への選択性を示す新規の(+)α−ピネン誘導体を請求している国際特許出願公開WO03/063758号に開示された。この出願は、その発明の疎水性化合物は、静脈内投与されたときにMSの治療に有効であることを開示し、ある化合物は経口で送達し得ることを示唆するが、水溶性(+)α−ピネン誘導体の経口効力は、具体的に実証されていなかった。
【0097】
PRS−211,375としても知られる、本発明の化合物18Fでの前治療は、経口投与されたときに急性の痛みに有効であることが先に示された[Bar−Joseph A.他、Society For Neuroscience:Program No.909.5、2003]。しかしながら、これらの実験は、前記化合物が、多発性硬化症等の確立された疾患を治療するための長期投与に有効であり得ることを教示しなかった。本発明のその他の化合物のいずれも、経口投与後にインビボで有効であると先に示されることはなかった。
【0098】
薬理学
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲においては、経口で有効な化合物を含む組成物は、予防的に有効な組成物及び治療的に有効な組成物の両方を含むよう意図されている。
【0099】
「予防的に有効な」という用語は、有害な副作用を回避しながら、疾患の発症のリスクの予防、削減又は根絶の目標を達成する化合物の量を限定するよう意図されている。「治療的に有効な」という用語は、疾患を更に長引かせることができず、患者が既に無症候ではなくなっているときに、有害作用なしに、疾患の緩和、進行の抑制又は治療を達成し、それによって症状の主観的な緩和又は臨床医学者又は他の資格のある観察者により感知される客観的な識別可能な改善のいずれかを提供する化合物の量を限定するよう意図されている。
【0100】
MSを疑わせる潜行性神経系進行は、特に家族暦によりリスクのある個体において、疾患の症状を示す前の段階で検知し得る。MSは、遺伝性素因と関係があることが知られているが、関与する正確な遺伝子は、未だ特徴付けられていない。MSの診断に使用される試験には、核磁気共鳴映像法(MRI);コンピュータ連動断層撮影(CT)スキャン;腰椎穿刺及び脳脊髄液(CSF)の分析;並びに最後に視覚誘導電位(VEP)、脳幹聴覚誘導電位反応(BAER)及び体性感覚誘導神経電位(SSEP)に分類し得る誘導電位(EP)試験が含まれる。リスクのある前駆症状性の個体の識別は、疾患の明らかな発症を防ぐための本発明の組成物の予防投与を可能にする。
【0101】
治療の目的のための「個体」又は「患者」には、治療が有益な治療効果を有する任意の疾患にかかった任意のヒト又は動物が含まれる。通常、臨床前のデータを確立するのに役立ち本発明の化合物によって治療し得る動物は、チンパンジー、サル及びマカクを含めた霊長類、マウス、ラット、フェレット、ウサギ及びハムスターを含めた齧歯類、ウシ種、ウマ種、ブタ、ヒツジ、ヤギ種、ネコ種、イヌ種、鳥種を含めた家畜又は狩猟動物、及び魚等の脊椎動物である。
【0102】
以下、「経口投与」という用語には、それだけには限らないが、薬物が飲み込まれる、胃腸管(口の周囲の)を通した吸収のための、又はほお側の、歯肉の、舌の、舌下の及び経口咽頭投与による口腔での経粘膜的吸収のための口での投与が含まれる。経口投与用の組成物には、粉末又は顆粒、水又は非水溶媒中の懸濁液又は溶液、サシェ、カプセル又は錠剤が含まれる。増粘剤、希釈剤、着香料、分散剤、乳化剤、結合剤又は保存剤が、望ましいこともある。
【0103】
本明細書の用語又は専門語が、本明細書に提示された教示及び手引きに照らして、通常の当分野の技術の一つの知識と組み合わせて当分野の技術者によって解釈されるように、本明細書の専門語又は用語は、説明の目的のためであり、制限のためではないことを理解されたい。
【0104】
医薬組成物は、活性成分に加えて、生理的に許容され安定な処方を作製するのに必要な、通常の医薬上許容される担体、希釈剤及び賦形剤を含むことができる。担体、希釈剤又は賦形剤という用語は、本明細書に開示された組成物のその他の成分と両立できる成分、特に本発明の組成物と反応することなく、処方を投与すべき患者又は動物に明らかに有害ではない物質を意味する。本発明の化合物の治療に有効で便利な投与を可能にすることは、本発明の肝要な部分である。
【0105】
医薬組成物は、液体、エアロゾル又は固体の剤形であってよく、それだけには限らないが、溶液、懸濁液、ミセル、乳濁液、マイクロエマルジョン、エアロゾル、カプセル、錠剤等を含めた、経口経路の投与に求められる任意の適切な製剤に処方することができる。
【0106】
錠剤、丸剤、カプセル、ソフトゲル等の経口投与用の固体組成物は、活性成分を、コーンスターチ、乳糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、デキストラン、グリセリン、ポリグリコール化グリセリド、トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエトキシル化ヒマシ油、非イオン界面活性剤、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム等の通常の医薬上許容される成分、及び医薬上許容される希釈剤としてのガムと混合することによって調製することができる。錠剤又は丸剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等の結晶セルロース及びセルロース誘導体等の当分野で周知の医薬上許容される材料を用いてコート又は別な方法で混ぜ合わせて、持続性作用又は持続放出を提供する剤形を提供することができる。経口投与用に液体形態を調製することができる。液体組成物には、有機補助溶媒を含んだ又は含まない水溶液、懸濁剤として、それだけには限らないが、シクロデキストリンを含む水性又は油性懸濁液、食用油、トリグリセリド及びリン脂質で香り付けされた乳濁液、並びにエリキシル剤及び類似の医薬媒体が含まれる。更に、本発明の組成物は、口内及び口咽頭の投与用にエアロゾルとして処方することができる。エアロゾルは、適切な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフロロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン又は二酸化炭素を使用した加圧容器又はネブライザーからの、エアロゾル噴霧の形態で都合良く送達される。加圧エアロゾルの場合、単位用量を、定量を送達するバルブを提供することによって決定することができる。
【0107】
本発明の医薬組成物は、当分野で周知のプロセス、例えば、通常の混合、溶解、造粒、摩砕、微粉砕、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、トラップ(entrapping)又は凍結乾燥プロセスによって作製することができる。
【0108】
薬物としてのその使用の前に、医薬組成物は、一般的に、単位剤形に処方される。ヒト用の活性用量は、標準の臨床技術によって決定することができ、一般的に、1日当たり1〜4回の投与計画で、体重1kg当たり0.01mgから約50mgの範囲である。好ましい用量の範囲は、個々の使用される化合物によって変わり、一般的に、体重1kg当たり0.1mgから約20mgの範囲である。しかしながら、用量は、治療すべき疾患又は障害、その重篤性、投与の方法及び頻度、患者の年齢、体重、性別及び病状、併用療法、もしあれば、禁忌等に従って担当の医師によって決定されることは当分野の技術者には明らかである。
【0109】
有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から得られた用量反応曲線から外挿することができる。例えば、マウス又はラットの研究から生成されたデータに基づいた、ヒト用の推定有効mg/kg用量を得るために、マウス又はラットにおける有効mg/kg用量を、それぞれ12又は6で割る。
【0110】
本発明の医薬組成物は、1種又は複数の更なる活性成分を含むこともできる。特に、本発明の経口で活性なカンナビノイドは、MSの治療に使用される1種又は複数の他の薬物と同時投与するか、一緒に使用することができる。
【0111】
第2のMS治療剤は、それらは互いに同じであっても異なってもよいが、それぞれ独立に、免疫調整剤、IFN−β、IFN−β−1a、IFN−β−1b、酢酸ガラティラメル、免疫抑制剤、アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、ステロイド、抗けいれん薬、三環系抗うつ薬、抗炎症薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、モノアミン酸化酵素阻害薬(MOI)、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン(BZD)、筋弛緩剤、抗コリン作動薬、β−遮断薬、下剤、及び何らかの特異的なチャンネル遮断薬からなる群から選択される。
【0112】
更なる一態様においては、本発明は、それを必要とする患者に少なくとも1種の式(I)の化合物をAvonex(登録商標)、Betaseron(登録商標)、Rebif(登録商標)、Copaxone(登録商標)、Novantrone(登録商標)及び多発性硬化症の治療用に指定された他の化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と一緒に投与するステップを含む、多発性硬化症の緩和又は治療方法を提供する。
【0113】
このような第2の薬剤の投与及び用量は、医師用添付文書集(PDR)中の承認された薬剤の製品情報シートに記載の明細書、並びに当分野で周知の治療実施計画書に従う。
【0114】
本発明の治療目標を達成するために2種以上の活性成分が投与されるとき、同時投与は、併用投与用の単一剤形で、又は別々の剤形で実施してよい。本発明に関連した併用投与は、改良された臨床成果を達成するための協調治療の経過における複数の治療薬の投与を意味するものと定義される。このような併用投与は、同時に生じてよく、同一のひろがり(coextensive)をもってもよい、即ち、重複する期間中に生じてもよい。
【0115】
本発明の更なる一態様は、それを必要とする患者に、活性成分として、式(I)の化合物:
【化3】


[式中、
C−4がSであり、C−1及びC−5における陽子が互いの関係においてシス形であり、C−4及びC−5における陽子がトランス形である、特定の立体化学を有し、
は、
(a)O又はS、
(b)C(R’)(式中、R’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、シアノ、−OR”、−N(R”)、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”又はC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、C(O)R’’’、C(O)N(R’’’)、C(S)R’’’、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR’’’、及びC〜Cアルキル−N(R’’’)からなる群から選択され、式中、R’’’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和の、直鎖、分枝若しくは環式C〜C12アルキルからなる群から選択される)、及び
(c)NR”又はN−OR”(式中、R”は先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
及びRは、それぞれ独立に、
(a)−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−S(O)(O)NR”(式中、出現するごとに、R”は、先に定義した通りである)、
(b)−S(O)R、−S(O)(O)R(式中、Rは、水素、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”、及びC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、先に定義した通りである)、及び
(c)−C(O)OH、−S(O)(O)OR、又は−P(O)(ORで終端された−OC(O)OH、−OS(O)(O)OR、−OP(O)(OR、OR又は−OC(O)−R鎖(式中、Rは、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルであり、Rは、出現するごとに、水素からなる群から選択され、Rは、先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
は、
(a)R(式中、Rは、水素、ハロゲン、OR’’’、OC(O)R’’’、C(O)OR’’’、C(O)R’’’、OC(O)OR’’’、CN、N(R’’’)、NC(O)R’’’、NC(O)OR’’’、C(O)N(R’’’)、NC(O)N(R’’’)及びSR’’’からなる群から選択され、式中、出現するごとに、R’’’は先に定義した通りである)、
(b)飽和若しくは不飽和の、直鎖、分枝若しくは環式C〜C12アルキル−R(式中、Rは先に定義した通りである)、
(c)Rにより任意の位置で更に置換し得る芳香族環(式中、Rは先に定義した通りである)、及び
(d)(c)で定義した通り更に置換し得る芳香族環によって場合によっては終端された、飽和若しくは不飽和の、直鎖、分枝若しくは環式C〜C12アルキル
からなる群から選択される]
及びその医薬上許容される塩、エステル又は溶媒和物を含む、経口で有効な量の医薬組成物を投与するステップを含む、多発性硬化症の予防、緩和又は治療の方法を提供する。
【0116】
ある実施形態によれば、本発明は、それを必要とする個体に、活性成分として式(I)の化合物を含む、経口で有効な量の医薬組成物を投与するステップを含む、多発性硬化症の予防、緩和又は治療の方法であって、式中、Rは、Oであり、R及びRは、それぞれORであり、式中、Rは、それぞれ独立に、水素、−R及び−C(O)−Rからなる群から選択され、式中、Rは、−C(O)ORで終端された、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル鎖であり、Rは、水素及び飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルからなる群から選択され、Rは、飽和若しくは不飽和、直鎖、分枝若しくは環式C〜C12アルキル−Rからなる群から選択され、式中、Rは、R、及び先に定義した通り、Rによって任意の位置を場合によっては更に置換し得る芳香族環からなる群から選択される、方法を提供する。
【0117】
更なる実施形態によれば、本発明は、それを必要とする個体に、活性成分として式(I)の化合物を含む、経口で有効な量の医薬組成物を投与するステップを含む、多発性硬化症の予防、緩和又は治療の方法であって、式中、Rは、Oであり、R及びRは、それぞれ独立に、OH、スクシネート、フマレート、及びメチレンオキシカルボキシルからなる群から選択され、Rは、1,1−ジメチルペンチル、1,1−ジメチルヘプチル、1,1−ジメチル−6−ヘプチニル、1,1−ジメチル−3−フェニルプロピル、1,1,3−トリメチルブチル、1−(4−クロロフェニル)−1−メチルエチル、1−エチル−1−メチルプロピル、5−ブロモ−1,1−ジメチルペンチル及び1,1−ジメチルペント−4−エニルからなる群から選択される、方法を提供する。
【0118】
例示的な一実施形態によれば、本発明は、それを必要とする個体に、活性成分として式(I)の化合物を含む、経口で有効な量の医薬組成物を投与するステップを含む、多発性硬化症の予防、緩和又は治療の方法であって、式中、RはOであり、RはOHであり、Rはフマレートであり、Rは1,1−ジメチルヘプチルである、方法を提供する。
【0119】
別の態様によれば、本発明は、それを必要とする個体に、活性成分として上記で定義の式(I)の化合物を含む、経口で有効な量の医薬組成物を投与するステップを含む、ふるえ、痙縮、筋衰弱、及び調整の欠如(lack of coordination)からなるリストから選択される神経症状の予防、緩和又は治療の方法を提供する。
【0120】
別の態様によれば、本発明は、それを必要とする個体に、活性成分として上記で定義の式(I)の化合物を含む、経口で有効な量の医薬組成物を投与するステップを含む、炎症メディエーターの調節方法を提供する。
【0121】
本発明の更なる一態様は、式(I)の化合物:
【化4】


[式中、
C−4がSであり、C−1及びC−5における陽子が互いの関係においてシス形であり、C−4及びC−5における陽子がトランス形である、特定の立体化学を有し、
は、
(a)O又はS、
(b)C(R’)(式中、R’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、シアノ、−OR”、−N(R”)、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”又はC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、C(O)R’’’、C(O)N(R’’’)、C(S)R’’’、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR’’’、及びC〜Cアルキル−N(R’’’)からなる群から選択され、式中、R’’’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和の、直鎖、分枝若しくは環式C〜C12アルキルからなる群から選択される)、及び
(c)NR”又はN−OR”(式中、R”は先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
及びRは、それぞれ独立に、
(a)−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−S(O)(O)NR”(式中、出現するごとに、R”は、先に定義した通りである)、
(b)−S(O)R、−S(O)(O)R”(式中、Rは、水素、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”、及びC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、先に定義した通りである)、及び
(c)−C(O)OH、−S(O)(O)OR、又は−P(O)(ORで終端された−OC(O)OH、−OS(O)(O)OR、−OP(O)(OR、OR又は−OC(O)−R鎖(式中、Rは、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルであり、Rは、出現するごとに、水素からなる群から選択され、Rは、先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
は、
(a)R(式中、Rは、水素、ハロゲン、OR’’’、OC(O)R’’’、C(O)OR’’’、C(O)R’’’、OC(O)OR’’’、CN、N(R’’’)、NC(O)R’’’、NC(O)OR’’’、C(O)N(R’’’)、NC(O)N(R’’’)及びSR’’’からなる群から選択され、式中、出現するごとに、R’’’は先に定義した通りである)、
(b)飽和若しくは不飽和の、直鎖、分枝若しくは環式C〜C12アルキル−R(式中、Rは先に定義した通りである)、
(c)Rにより任意の位置で更に置換し得る芳香族環(式中、Rは先に定義した通りである)、及び
(d)(c)で定義した通り更に置換し得る芳香族環によって場合によっては終端された、飽和若しくは不飽和の、直鎖、分枝若しくは環式C〜C12アルキル
からなる群から選択される]
及びその医薬上許容される塩、エステル又は溶媒和物の、多発性硬化症を予防、緩和又は治療するための薬物を調製するため使用を提供する。
【0122】
ある実施形態によれば、本発明は、経口で有効な量の式(I)の化合物の、多発性硬化症を予防、緩和又は治療するための薬剤を調製するための使用であって、式中、Rは、Oであり、R及びRは、それぞれORであり、式中、Rは、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、−R及び−C(O)−Rからなる群から選択され、式中、Rは、−C(O)ORで終端された、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル鎖であり、Rは、水素、及び飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルからなる群から選択され、Rは、飽和若しくは不飽和の、直鎖、分枝若しくは環式C〜C12アルキル−Rからなる群から選択され、式中、Rは、R及び場合によっては先に定義した通りRによって任意の位置で更に置換し得る芳香族環からなる群から選択される、使用を提供する。
【0123】
更なる実施形態によれば、本発明は、経口で有効な量の式(I)の化合物の、多発性硬化症を予防、緩和又は治療するための薬剤を調製するための使用であって、式中、Rは、Oであり、R及びRは、それぞれ独立に、OH、スクシネート、フマレート、及びメチレンオキシカルボキシルからなる群から選択され、Rは、1,1−ジメチルフェニル、1,1−ジメチルヘプチル、1,1−ジメチル−6−ヘプチニル、1,1−ジメチル−3−フェニルプロピル、1,1,3−トリメチルブチル、1−(4−クロロフェニル)−1−メチルエチル、1−エチル−1−メチルプロピル、5−ブロモ−1,1−ジメチルペンチル又は1,1−ジメチル−ペント−4−エニルからなる群から選択される、使用を提供する。
【0124】
例示的な一実施形態によれば、本発明は、経口で有効な量の式(I)の化合物の、多発性硬化症を予防、緩和又は治療するための薬剤を調製するための使用であって、式中、Rは、Oであり、Rは、OHであり、Rは、フマレートであり、Rは、1,1−ジメチルヘプチルである、使用を提供する。
【0125】
別の態様によれば、本発明は、経口で有効な量の上記で定義の式(I)の化合物の、先に定義の神経症状を予防、緩和又は治療するための薬剤を調製するための使用を提供する。
【0126】
別の態様によれば、本発明は、経口で有効な量の上記で定義の式(I)の化合物の、炎症メディエーターの調節用薬剤を調製するための使用を提供する。
【0127】
本発明の原理は、好ましい本発明の実施形態を例示し、非制限的に解釈されるべきである、以下の実施例の参照によってより完全に理解されよう。
【実施例】
【0128】
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態及び態様を実証し更に例示するために提供され、その範囲を制限するものと解釈されるべきではない。インビトロ又はインビボモデルの作製、化合物の試験及び結果の分析に使用された技術の大部分は、当分野で広く実施されており、大部分の医師は、個々の条件及び手順を記載している標準の資料を熟知している。しかしながら、便宜上、以下の記述は、指針として役立つかもしれない。
【0129】
以下の実験の開示においては、N(正常);M(モル);mM(ミリモル);μM(マイクロモル);mmol(ミリモル);kg(キログラム);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);ng(ナノグラム);pg(ピコグラム);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);h(時間);min(分);℃(摂氏温度);i.p.(腹腔内の);i.v.(静脈内の);p.o.(経口の);s.c.(皮下に);AUC(濃度曲線下面積);SD(標準偏差);SEM(平均値の標準誤差);nr(無関係)及びns(有意でない)の省略形が適用される。
【0130】
便宜及びより良い理解のために、実施例のセクションは、2つのサブセクション、即ち、本発明の化合物の合成、その物理化学的性質及びその製剤のいくつかを記載する化学セクション、並びに化合物の生物活性を記載する生物学セクションに分けられている。
【0131】
化学セクション
本発明のいくらかの化合物の合成は、先に国際特許出願公開WO03/063758号に開示された。これらのプロセスを、便宜のため下記に再現する。化合物18Aから18Fは、先にWO03/063758号中でそれぞれ、化合物A、R、S、T、Y及びZとして開示された。化合物18Gから18Iは、類似の出発原料又は合成機構を用いた新規誘導体である。代わりの合成プロセスが存在することは、カンナビノイド化合物の合成分野の技術者には明らかである。
【0132】
(実施例1)
化合物18Aの合成:(−)−4−[4−(1,1−ジメチルヘプチル)−2,6−ジヒドロキシフェニル]−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン
化合物18Aの合成は、レソルシノール化合物のR部分が1,1−ジメチルペプチルのとき、スキーム1に示されている。
スキーム1
【化5】

【0133】
n−ブチルリチウム(196ml、2M)及び44gのカリウムtert−ブトキシドを収容する3つ口フラスコに、−78℃窒素雰囲気下で、50mlの(+)−α−ピネン(1)を1滴ずつ添加した。この反応物を、放置して室温に温め、48時間継続して撹拌した。この反応物を、次いで−78℃に冷却した。80mlのエーテル中の硼酸トリメチル(113ml)を添加し、この反応物を、放置して室温に温め、更に1時間撹拌した。この有機層を分離し、水性層をn−ヘキサン(3×80ml)で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、蒸発乾燥して、化合物(2)、(+)−β−ピネンを得た。この手順は、Brown他[Brown H.C.他、J.Org.Chem.54:1764〜6、1989年]による。(+)−β−ピネン(2)(30.8g)に、250mlの酢酸エチル中に溶解したRuCl(0.470g)、及びベンジルトリブチルアンモニウムクロリド(2.12g)を添加した。この混合物に、1.3Lの水中の過ヨウ素酸ナトリウム(145.5g)を、1滴ずつ添加し、室温で3時間撹拌し、終夜放置した。250mlの酢酸エチルを、この反応混合物に添加した。この有機相を分離し、500mlのブライン、500mlの10%亜硫酸ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下で蒸発して、化合物(3)、(−)−ノピノンを得た。この手順は、Yuasa他[Yuasa Y.他、J.Essent.Oil.Res.10:39〜42、1998年]による。(−)−ノピノン(3)(14.86g)及びp−トルエンスルホン酸(1.48g)を、酢酸イソプレニル(148ml)中に溶解した。この反応混合物を、アセトンを除去するために、Dean−Stark装置を用いて5時間加熱還流した。溶媒を、減圧下で除去し、この残渣を、400mlのエーテル中に取り、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、蒸発して、化合物(4)、(+)−ノピノンエノールアセテートを得た。この手順は、Archer他[Archer R.A.他、J.Org.Chem.42:2277〜84、1977年]によって反対の光学異性体のために開発された方法に基づいた。202mlの無水トルエン中の16.17gの(+)−ノピノンエノールアセテート(4)の溶液に、62.2gのPb(OAc)(予めP/KOH上で終夜真空乾燥したもの)を添加した。この反応混合物を、80℃で3.5時間加熱し、冷却し、ろ過し、飽和重炭酸ナトリウムで洗浄した。この有機層を分離し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で蒸発して、(+)−6,6−ジメチル−2,4−ジアセトキシ−2−ノルピネン(5)及び(−)−6,6−ジメチル−2,2−ジアセトキシ−3−ノルピネン(6)を得た。クロロホルム(50ml)中の5及び6(1.18g、5mmol)、レソルシノール(ここで、Rは1,1−ジメチルヘプチル)(7)(1.18g、5mmol)及びp−トルエンスルホン酸(0.95g、5mmol)の混合物を、室温で4時間反応させた。次いで、エーテル(30ml)を添加し、有機相を飽和重炭酸ナトリウム、水で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、蒸発した。この残渣を、アセトニトリル中で結晶させて0.5gの結晶を得た。この母液を、シリカゲル上でクロマトグラフして更に0.7gの純粋な化合物18Aを得た。
【0134】
(実施例2)
化合物18Bの合成;(−)−4−{4−[1,1−ジメチルヘプチル]−2−スクシネート−6−ヒドロキシフェニル}−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン
化合物18Bの合成は、スキーム2に示されている。
【0135】
(実施例3)
化合物18Cの合成;(−)−4−{4−[1,1−ジメチルヘプチル]−2,6−ジスクシネートフェニル}−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン
化合物18Cの合成は、スキーム2に示されている。
【0136】
無水ピリジン(10ml)中の化合物18A(227mg、0.61mmol)及び無水コハク酸(731mg、7.31mmol)の混合物を、50℃にN雰囲気下で加熱した。カリウムtert−ブトキシドを添加し、得られた混合物を、終夜(50℃)撹拌した。この混合物を、1N HCl中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。この合わせた有機相を、1N HCl及びブラインで洗浄し、乾燥(NaSO)し、蒸発した。これら2つの生成物を、カラムクロマトグラフィー(20%酢酸エチル/石油エーテル+0.1%酢酸)で分離して、220mgの化合物18B及び150mgの化合物18Cを得た。
スキーム2
【化6】

【0137】
(実施例4)
化合物18Dの合成:(−)−4−{4−[1,1−ジメチルヘプチル]−2,6−ビ−ジエチルホスフェートフェニル}−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン
化合物18Dの合成は、スキーム3に示されている。
スキーム3
【化7】

【0138】
反応をN雰囲気下で実施した。新しく蒸留したTHF中の化合物18A(1.97g、5.29mmol)のよく撹拌された溶液に、カリウムtert−ブトキシド(1.54g、13.75mmol)を添加し、この混合物を、10分間撹拌した。次いで、ジエチルクロロホスフェートを添加し、この反応混合物を終夜撹拌した。水を添加し、この水性相を、酢酸エチルで抽出した。この合わせた有機層を、ブラインで洗浄し、乾燥(NaSO)し、蒸発した。溶離液として25%〜70%酢酸エチル〜石油エーテルを用いたシリカゲル上のクロマトグラフィーによる精製により2.2gの純粋な化合物18Dを得た。
【0139】
(実施例5)
化合物18Eの合成:(−)−4−{4−[1,1−ジメチルペンチル]−2−スクシネート−6−ヒドロキシフェニル}−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン
化合物18Eの合成は、スキーム2に示された化合物18Bの合成と似ている。唯一の違いは、出発原料にあり、化合物18Aが化合物18Bをもたらすのに対し、化合物18Eの出発原料は、レソシノール化合物のR部分が、1,1−ジメチルヘプチルの代わりに1,1−ジメチルペンチルの場合に、18Aと同じ合成手順を用いて調製される。
【0140】
(実施例6)
化合物18Fの合成:(−)−4−{4−[1,1−ジメチルヘプチル]−2−フマレート−6−ヒドロキシフェニル}−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン
化合物18Fの合成はスキーム4に示されている。
スキーム4
【化8】

【0141】
化合物18A(600mg、1.6mmol)を、100mlの無水ジエチルエーテル中に溶解した。次いで、0.21mlのトリエチルアミン(1.6mmol)及び0.18mlのフマリルクロリド(1.7mmol)を添加した。約15分間撹拌した後、これらの塩であるトリメチルアンモニウムクロリドをろ過し、ろ液を蒸発した。次いで、酢酸エチルをこの残渣に添加し、pHが4より大きくなるまで水で3回洗浄した。次いで、この有機相を飽和塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、蒸発した。次いで、化合物18Fを、溶離液として20%酢酸エチル及び石油エーテルを用いたシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0142】
(実施例7)
化合物18Gの合成:(−)−4−{4−[1,1−ジメチルヘプチル]−2,6−ジフマレートフェニル}−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン
化合物18Gの合成は、スキーム5に示されている。
スキーム5
【化9】

【0143】
化合物18A(2g、5.37mmol)を、100mlの無水ジエチルエーテル中に溶解し−40℃に冷却した。次いで、1.9mlのトリエチルアミン(13.71mmol)及び1.5mlのフマリルクロリド(13.73mmol)を添加した。この混合物を−40℃で約15分間撹拌の後、100mlの水を添加し、更に室温で15分間撹拌した。次いで、この反応混合物を、分液漏斗に移し、水性層を各300mlの酢酸エチルで3回抽出した。次いで、この有機相を、水で、続いて飽和塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。次いで、化合物18Gを、溶離液として石油エーテル及び酢酸エチルを10:90の比で用いたシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーで精製した。0.68gの純粋な化合物18Gが得られた(収率24%)。
【0144】
(実施例8)
化合物18Hの合成:(−)−4−{4−[1,1−ジメチルペンチル]−2−フマレート−6−ヒドロキシフェニル}−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン
化合物18Hの合成は、スキーム4に示された化合物18Fの合成と類似している。唯一の違いは、出発原料にあり、化合物18Aが化合物18Fをもたらすのに対し、化合物18Hの出発原料は、レソルシノール化合物のR部分が、1,1−ジメチルヘプチルの代わりに1,1−ジメチルペンチルであるときに、18Aと同じ合成手順を用いて調製される。
【0145】
(実施例9)
化合物18Iの合成;(−)−4−{4−[1,1−ジメチルヘプチル]−2−メチレンオキシカルボキシル−6−ヒドロキシフェニル}−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン
化合物18Iの合成は、スキーム6に示されている。
スキーム6
【化10】

【0146】
化合物18A(374mg、1mmol)を、20mlのジクロロメタン中に室温で溶解し、20mgの臭化銅を添加した(溶液A)。別の容器中で、10mlのジクロロメタンに148mg(1.01mM)のジアゾtert−ブチルアセテートを添加した。第2の溶液を、溶液Aに5分間かけて1滴ずつ添加した。得られた反応混合物を、室温で3時間撹拌した。次いで、この反応混合物をろ過し、このろ液を減圧下で濃縮して乾燥した。この残渣を、ジクロロメタン:トリフルオロ酢酸TFA(10:1)中に溶解し、室温で2時間撹拌した。得られた溶液を、減圧下で濃縮して乾燥し、この残渣を、溶離液として石油エーテル及び酢酸エチルを6:1の比で用いたシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製して、7mgの純粋な化合物18Iを得た。
【0147】
(実施例10)
物理化学的性質
先に国際特許出願公開WO03/063758号に開示された化合物18Aの活性の発見に続いて、より水溶性であるか、生体内で加水分解して親化合物になる、関連化合物を合成する努力がなされたが、化合物18Bから18Iはこの取り組みの非制限的な例である。
【0148】
CBに好ましく結合し、Δ−THCに優る水溶性を有する化合物には次のものが含まれる:(−)−4−[4−(1,1−ジメチル−ヘプト−6−イニル)−2,6−ジヒドロキシ−フェニル]−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン;(−)−4−[4−(1,1−ジメチル−3−フェニル−プロピル)−2,6−ジヒドロキシ−フェニル]−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン;(−)−4−[2,6−ジヒドロキシ−4−(1,1,3−トリメチル−ブチル)−フェニル]−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン;(−)−4−{4−[1−(4−クロロ−フェニル)−1−メチル−エチル]−2,6−ジヒドロキシ−フェニル]−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン;(−)−4−[4−(1,1−ジメチル−ペンチル)−2,6−ジヒドロキシ−フェニル]−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン;(−)−4−[4−(1−エチル−1−メチル−プロピル)−2,6−ジヒドロキシ−フェニル]−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン;(−)−4−[4−(5−ブロモ−1,1−ジメチルペンチル)−2,6−ジヒドロキシ−フェニル]−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン;(−)−4−{4−[1,1−ジメチルヘプチル]−2−スクシネート−6−ヒドロキシ−フェニル}−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン;(−)−4−{4−[1,1−ジメチルヘプチル]−2,6−ジスクシネート−フェニル}−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン;(−)−4−[4−(1,1−ジメチル−ペント−4−エニル)−2,6−ジヒドロキシ−フェニル]−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン;(−)−4−{4−[1,1−ジメチルペンチル]−2−スクシネート−6−ヒドロキシ−フェニル}−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン;(−)−4−{4−[1,1−ジメチルヘプチル]−2−フマレート−6−ヒドロキシ−フェニル}−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン;(−)−4−{4−[1,1−ジメチルヘプチル]−2,6−ジフマレート−フェニル}−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン;(−)−4−{4−[1,1−ジメチルペンチル]−2−フマレート−6−ヒドロキシ−フェニル}−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン;及び(−)−4−{4−[1,1−ジメチルヘプチル]−2−(メチレンオキシカルボキシル)−6−ヒドロキシ−フェニル}−6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−2−オン。
【0149】
これらの化合物のいくらかの特定の物理化学的性質に関する情報が、次の表に示されている。推定される水溶性、logP及びpH7でのlogDは、Advanced Chemistry Developmentソフトウエア(ACDlabs、バージョン4.04)を用いて算出された。THC及びNabiloneは、共に市販のカンナビノイドであるが、参照としてここに報告する。
表1 選択された物理化学的性質
【表1−1】


【表1−2】

【0150】
本発明の特定の化合物の実際の溶解度は、水性緩衝液中で評価され、化合物の最終濃度は、HPLC及び分光光度法を用いて決定された。計算によれば約0.57mg/mlの水溶性を示したはずである化合物18Fが、pH7.8の80mMリン酸緩衝液中に12mg/mlの濃度まで、即ち予想より約20倍高く溶解することが見出されたことは注目されるべきである。比較のため、同様の計算によれば約24μg/mlの水溶性を示したはずである化合物18Bは、水性クエン酸緩衝液(pH7.1)中に、95μg/mlより大きい濃度で溶解させることができず、予想から4倍未満の逸脱を示した。したがって、同じ論理的根拠に従って設計された化合物が、例えば、水溶液中の溶解性に関して、予想外に異なる結果をもたらした。
【0151】
凍結乾燥を行った後の化合物18Fは、pH6.9で80mMリン酸緩衝液中に、予想より約2桁高い60mg/mlまでの濃度で、格段に効率的に溶解させることができたことは注目されるべきである。
【0152】
(実施例11)
凍結乾燥
凍結乾燥は、真空下で昇華によって、水又は溶媒混合物が凍結した生成物から除去される乾燥プロセスである。このプロセスは、水溶液中で比較的不安定な医薬に適用し得る。凍結乾燥プロセスの更なる利点は、このプロセスが合成製剤原料の水溶性を著しく改良することである。したがって、凍結乾燥プロセスの実行可能性の評価を、本発明の好ましい一化合物について実施した。
【0153】
化合物18Fの溶解用の最良の溶媒混合物を実現するために、数件の実験を行い、tert−ブタノール及び水の62.5:32.5(体積/体積)の比の組合せが、有機補助溶媒溶液中で化合物18Fの80mg/mlまでの溶解のための好ましい割合であることが見出された。
【0154】
急速凍結法、即ち、調製された溶液をドライアイス中に沈めることは、急速冷凍冷蔵庫(−30℃)中での緩慢冷凍に比べてより良いことが見出された。というのは、より多孔性の材料が、この方法で得られるからである。化合物18Fの38.6%重量/体積を含む補助溶媒混合物を、凍結乾燥チャンバーに合わせるために数枚の皿に分割した。凍結乾燥の結果、流動性及びより少ない粘着性等の改良された物理的性質を有する乾燥生成物が得られた。可溶化実験は、pHが0.5N NaOHで約6.9以上の値に一定に滴定される場合に、凍結乾燥した化合物18Fは、80mMリン酸緩衝液中に60mg/mlまで溶解させることができることを示した。これは、凍結乾燥しない材料での約10mg/ml及び予想計算値の約0.6mg/mlと比較される。
【0155】
(実施例12)
水溶液中の安定性
水溶液中の本発明の化合物の安定性を比較した。化合物を、緩衝リン酸溶液中に溶解し、その濃度を、HPLC及び分光光度法を用いて観測した。リン酸緩衝液(pH7.0)中の2mg/mlの濃度の化合物18Fは、4℃で少なくとも3カ月間安定であったのに対し、クエン酸緩衝液(pH7.1)中の95μg/mlの濃度の化合物18Bは、4℃で24時間未満で容易に加水分解した。したがって、同じ論理的根拠に従って設計された化合物が、例えば、水溶液中の安定性に関して、予想外に異なる結果をもたらした。
【0156】
これらの薬物の免疫調節、抗炎症、鎮痛、及び神経保護剤としての有用性を支持するために、本発明の経口で生物活性なカンナビノイドの治療効果の評価を、一連の実験系で実施した。これらの効果は、インビトロ及びインビボの両方で評価され、以下に記載された系を利用して確認された。特に指示なき限り、試験化合物は、次のように調製された。即ち、インビトロアッセイでは、化合物は、最初にDMSOに溶解し、次いでアッセイ緩衝液、一般的には組織培養媒体に徐々に希釈して、0.1%DMSOの最終濃度とした。インビボアッセイでは、試験化合物は、(i)最初にCREMOPHOR EL(登録商標):エタノール(それぞれ70%及び30%重量/重量)中に溶解し、更に生理的緩衝液、一般的には生理食塩水中に1:20で希釈して、適切な用量にするか、(ii)pH7.8の80mMリン酸緩衝液中に溶解するかのいずれかである(2mg/mlの原液の最終pHは、更に長期の安定性を増すために、pH6.4にされた)。最適な可溶化及び安定性を達成するリン酸緩衝液処方の最終モル濃度は、緩衝性については68.1mM HNaPO.7HO及び5.5mM HNaPO.2HO、並びに等張性については35.5mM NaClであった。所望のpHを達成するために薬物濃度に応じてHClが添加された。したがって、媒体対照は、適切な緩衝液中に希釈された元の「溶媒」(CREMOPHOR EL(登録商標):エタノールの場合はCEと表す)か、pH6.4のリン酸緩衝液(PBと表す)かのいずれかである。
【0157】
動物における全ての実験法は、動物保護のためのイスラエル法−動物における実験1994年(the Israeli Law for Animal Protection−Experiments in Animal 1994)に従って、人道的条件下で実施された。全ての研究は、内部倫理委員会によって見直され、連邦政府の権限者によって承認された。
【0158】
生物学セクション
(実施例13)
CB及びCB受容体への結合親和力
CB及びCB結合アッセイを、国際特許出願公開WO03/063758号に記載の通り実施し、IC50としてnMで表した結果を、次表に報告する。DMHは、1,1−ジメチルヘプチルを表し、DMPは、1,1−ジメチルペンチルを表し、DEPは、ジエチルホスフェートを表す。
表2 式(I)の化合物の置換基及びIC50(nM)
【表2】


THCの結合の値は比較のために与えられKi値(nM)を参照する。
【0159】
(実施例14)
MBPにより誘導されたEAEに対する効果
実験的アレルギー性脳脊髄炎とも呼ばれる、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、多発性硬化症の動物モデルである。誘導の方法、動物の種類及び疾患の誘導に用いられる抗原によって、種々のEAEモデルが、当分野で知られている。EAEは、急性又は慢性再発性の、後天性の、炎症性及び脱髄性の自己免疫疾患である。EAEの種々の形態は、多くの点で、MSの様々な形態及び段階に極めて密接に似ている。
【0160】
本研究においては、EAEは、MSの急性期を模擬することで知られる方法である、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)の注射によって誘導された。このモデルにおいては、疾患の発症は、誘導後約10日に臨床症状の出現により観察される。疾患の誘導後、疾患が進行し、臨床スコアが増加し、15日頃にピークに達し、自然治癒が23日頃に観察される。
【0161】
雌性Lewisラット(イスラエル、Harlan、平均体重130〜180g)の後足に0.1mlのComplete Freund’s Adjuvant(Difco)中に乳濁した25μgの精製モルモットミエリン塩基性タンパク質(MBP、Sigma)を皮下注射した。動物は、明所12時間/暗所12時間の規則飼育で、22℃の一定温度に保たれ、餌及び水を制約なしに与えられた。誘導後8日から開始して、動物は毎日追跡観察された。結果は、臨床スコアとして記録され、0のスコアは臨床的徴候のない正常な動物を表し、0.5は尾の末端部の緊張の喪失を表し、1は尾全体の麻痺状態を表し、1.5は後足1本の衰弱を表し、2は後足2本の衰弱を表し、2.5は前脚1本の麻痺状態を表し、3は4脚全部の麻痺状態を表し、4は全身麻痺状態及び瀕死状態を表し、5は死を表す。動物の臨床スコアは、疾患の発症後15日間、誘導後25日の研究終了まで記録され、濃度曲線下面積(AUC)がこの期間にわたって算出される。
【0162】
臨床的に0.5及び1の間にスコアを付け得る疾患の症状を現した動物に、疾患の発症(疾患の誘導から約9〜11日)から開始して連続3日間、試験化合物又は媒体対照を処置した。わずかな投与経路しか評価せず、処置を、5ml/kgの体積用量で静脈内投与(CE媒体で)又は胃管栄養法(PB媒体で)による経口投与かのいずれかで行った。
【0163】
研究の最終日(25日)に、動物を、ナトリウムペントバルビトン100mg/kg腹腔内投与で安楽死させた。
【0164】
結果は、平均±標準誤差として表され、処置群間の相違は、分散分析(ANOVA)及びそれに続いてのTukey’s事後解析により分析した。p<0.05の値は、統計的に有意であると見なされ、該当する処置群上にその数字に星印が示される。
【0165】
モデルの有効性は、陽性対照としてメチルプレドニゾロンを用いて確立した。ステロイドが、疾患の誘導の日から開始して連続5日間MBPの注射によって30mg/kg静脈内投与されたとき、AUCの34%の減少が報告された。疾患発症後のメチルプレドニゾロンの生物活性は、この研究において確立しなかった。というのは、ステロイドは、このモデルにおいてこのような条件下で効果的ではないことが報告されていたからである。
【0166】
化合物18Aが、用量に関連する形態で臨床スコアのAUCの減少をもたらし、0.5〜1mg/kg静脈内投与の低い用量で30〜35%の有意な減少を伴うことが示された。したがって、疾患の臨床的な発症後の3日間投与された本発明の化合物は、臨床的な発症前の疾患誘導から開始して5日間投与されたメチルプレドニゾロンと同じ程有効である。更に、同じ効力を達成するのに必要な用量の有意な差異は注目されるべきである。メチルプレドニゾロンでの予防処置には、動物は、5×30mg/kgを受けたのに対し、それらは、同じ成果を達成するのに臨床的な発症後にわずか3×1mg/kgの化合物18Aしか受けなかった。
【0167】
固定し、切断し、ヘマトキシリン及びエオシンを用いて染色した、処置された動物から取り出した脳及び脊髄は、有意により少ない浸潤病巣を表した。これらの観察は、このモデルに存在する、機能的な臨床的成果の改善と、神経系の組織学的レベルの神経保護の間の相関関係を実証した。
【0168】
化合物18Aは、インビボ投与の前に、CREMOPHOR EL(登録商標):エタノール中に溶解し、更に生理的緩衝液に希釈した。化合物18Fは、80mMリン酸緩衝液(pH6.4)中に直接溶解し、経口投与できることがこのたび開示された。化合物18Fは、疾患の臨床的徴候を示している動物に20、30、40、50及び60mg/kgの用量で経口胃管栄養法によって投与された。各処置群は、疾患を発症した少なくとも10匹の動物からなった。いくつかの用量においては、実験は4回まで繰り返された。
【0169】
低い死亡率が、この研究で観察され(10%未満)、このパラメーターに関する差異は、異なる処置群の間で見られなかった。媒体(PB)処置した動物の8%が、研究終了前に死んだのに対して、化合物18Fの60mg/kg経口投与を受けた動物のこの値は7%である。更に、化合物18Fの継続投与後に、CBの媒介した副作用は観察されなかった。この観察は、本発明の化合物の安全性を支持している。
【0170】
結果は図1に示されている。パネルAは、各研究日の平均群スコア(MGS)により表した、疾患の経時変化、及び化合物の様々な用量の経口投与の効果を示している。化合物18Fの20mg/kg経口投与は、臨床的成果に有意に影響を及ぼさないが、スコア減少の好ましい傾向は、既に30mg/kgにおいて観察され、40〜60mg/kgの用量は、同じ効力を示しているように見える。特に処置していない動物の最大臨床スコアが約2.2であることを考慮すると、臨床スコアのピークを1点近く減少させることは治療的に有意であると見なされる。
【0171】
結果は、別法として、一般的にはMBP投与後13〜16日である、個々の疾患ピークにおいて、所定の処置群により得られる最大スコアの平均(MMS)を計算することによって分析することができる。この情報は、パネルBに示されており、ここで、20mg/kg経口投与において、わずかに改良傾向が観察されるのに対して、30〜60mg/kgの用量においては、MMSの少なくとも30%の有意な減少があることは明らかに理解されよう。最後に、結果は、疾患のピークにおける処置の効果のみならず、自然治癒までの完全な疾患期間を考慮する、第3のパラメーターであるAUCにより分析された。パネルCは、様々な処置群の濃度曲線下面積を示し、この方法によって、用量に関係する効力が最も良く記録される。最良の活性用量は、AUCをそれぞれ42%及び43%減少した50及び60mg/kgであった。これらの効果は、媒体処置群に比べて統計的に有意であった(p<0.05)。40mg/kgはAUCを33%(p<0.05)減少し、中程度の活性が、AUCを20%(ns)を超えて減少した、30mg/kgの用量で見られた。
【0172】
全体的に見て、これらの結果は、Lewisラットにおける急性EAEモデルにおける処置(臨床的な疾患の徴候のあった日から始めて3〜4回)として投与された化合物18Fは、疾患の重篤性を減少させたことを実証している。この活性は、疾患のピーク(図1パネルA)、平均最大スコア(図1パネルB)及びAUC(図1パネルC)を減少させるその能力によって表された。更に、仮の結果は、機械的痛覚過敏によって測定して、EAEに関係した痛みを抑制する傾向を示している。この研究においては、化合物18Fの60mg/kg経口投与の用量は、媒体処置動物に比べて25%だけ痛覚閾値を増加させた。
【0173】
このような動物モデルでIFN−βの効力の文献に報告書があった。例えば、IFN−β(MBP注射の日から始めて連続3日間、1日1回、300,000IUの用量でRebif(登録商標))の投与が、疾患の重篤性を約30%減少させることが示された。Van Der Meide他[Van Der Meide他、J.Neuroimmunol.84(1):14−23、1998年]は、MBP注射の2日前から始めて、疾患の発症前に合計10日間継続した、予防薬としてのIFN−βによる処置は、疾患の重篤性を疾患のピークにおいて1スコアポイント減少させることを示した。これらの数値は、本発明の化合物によって達成された効力に似ているが、2つの重要な点が強調されるべきである。これらの報告書において、IFN−βは、注射によって、且つ疾患の明らかな発症前に投与された。より遅い段階でのIFN−βの処置は有効ではないことが報告されている[Ruuls他、Immunol.Cell.Biol.76(1):65〜73、1998年]。
【0174】
経口投与されたカンナビノイドとの比較については、Δ−THCが、自己の脊髄にEAEを接種されたラットの神経性欠損の発生率及び重篤性を減少させたことが報告されている[Wirguin I.他、Immunopharmacology 28(3):209〜14、1994]。その著者は、平均疾患重症度が、媒体処理動物の5.5±0.8からΔ−THC処理動物の4.4±0.8に減少し、20%の統計的に有意な減少であったことを報告した。しかしながら、Δ−THCのより安定なより向精神性の類似体である、Δ−THCは、疾患誘導の時に始めて、臨床的発症前に連続21日毎日継続して、40mg/kg経口投与の用量で投与されたときに、この有益な効果を示したことに注目することが重要である。したがって、参照のカンナビノイドTHCの効力に必要な累積の用量は、本化合物に比べて格段に高い。
【0175】
したがって、本発明のカンナビノイドが経口投与されても有効であることから、現在の療法を代表するIFN−βに比べても、また、本発明のカンナビノイドが格段に少ない反復投与で有効なことから、この徴候に考えられる市販カンナビノイド薬物を代表するΔ−THCに比べても、本発明の化合物は、IFN疾患の急性なピークの処置における利点を証明した。更に、本発明の化合物は、疾患の臨床的徴候の出現後にわずか3〜4回投与されたときでさえも有効であるのに対して、2つの前述の対照、IFN−β及びΔ−THCは、疾患の誘導の近くで始めて反復投与をしばしば21日まで継続して頻繁に投与された場合のみ、このようなモデルにおいて有効である。
【0176】
(実施例15)
PLPにより誘導された寛解再発型EAEに対する効果
上記に説明のように、様々な動物種における様々な誘導剤は、わずかに異なるEAEモデルの発症を引き起こす。実施例14に使用されたMBPは、疾患の単一の再発の急性期が再現されるモデルを生じるが、プロテオリピドタンパク質(PLP)は、MS患者の神経障害の結果の初期のパターンによりよく似た、疾患の寛解再発型を誘導する。
【0177】
SJCLF1雌性マウス(イスラエル、Harlan、6週齢)の3領域(首の両側面及びうなじ)に、50μgのPLP及び200μgのヒト結核菌を含有する、乳化フロイントアジュバント0.2ml/マウスを皮下投与した。直後に、このマウスに、130ngの百日咳毒素を含有するリン酸緩衝塩類溶液(PBS)0.1ml/マウスを皮下投与した。この誘導手順を、48時間後に繰り返した。動物は、明所12時間/暗所12時間の規則飼育、22℃の一定温度に保たれ、餌及び水を制約なしに与えられた。動物は、1週間に1回体重測定し、臨床的に評価され、0のスコアは臨床的徴候のない正常な動物を表し、0.5は尾の末端部の緊張の喪失を表し、1は尾全体の麻痺状態を表し、1.5は後足1本の衰弱を表し、2は後足2本の衰弱を表し、2.5は前脚1本の麻痺状態を表し、3は4脚全部の麻痺状態を表し、4は全身麻痺状態及び瀕死状態を表し、5は死を表す評点システムに従って評点された。
【0178】
第1のピークは、動物が疾患の誘導剤を注射された後の、少なくとも連続2日間維持された、少なくとも1スコア単位の増加として定義された。寛解は、動物がピークの最大スコアの少なくとも50%の減少を示してその新しいスコアに少なくとも2日間留まったときに達成された。処置は、第1の再発(25日)のピークで開始され、媒体(PB)又は化合物が、5ml/kgの体積用量で胃管栄養法によって25日間毎日経口投与された。第3群は処置しない動物からなった。それぞれの処置群は13匹のマウスからなった。動物は2カ月まで追跡観察され、この期間中に疾患の最初の第1のピークの後に2から3の小さな寛解が観察された。
【0179】
研究の最後に、マウスは、ナトリウムペントバルビトン100mg/kg腹腔内投与で安楽死させた。脊髄及び脳を、取り出し、組織学的評価の前に4%ホルムアルデヒド溶液中に固定した。
【0180】
結果は、平均±標準誤差として表され、処置群間の差異は、分散分析(ANOVA)及びそれに続くTukey’s事後解析により分析した。p<0.05の値は、統計的に有意であると見なされた。
【0181】
化合物18Fは、25日間40mg/kgの用量で経口投与された。副作用は、この期間中に観察されず、これは本発明の化合物の安全性を支持している。時間に沿った臨床スコアの結果が、図2に示されている。動物は、第1の再発のピークで処置群に分けられたので、本研究で比較されたパラメーターは、続いての再発までの時間及び続いてのピークの大きさである。媒体を処置された動物は、処置されていない動物と本質的に類似したパターンを示した。第2の再発は、35日及び33日に始まり、第2の再発の平均臨床スコアは、それぞれ0.7及び0.8であった。したがって、これらの2群の平均の結果は、図2に対照として示されている。化合物18Fを処置した動物は、対照とは違う挙動を示した。第2のピークの臨床スコアは、わずかに0.5(第1のピークの約1と比べて)であり、再発は対照と比べて5〜7日あとまわしになった。対照群と比較しての化合物18Fの処置で達成された臨床スコアの減少百分率として結果が分析される場合、処置(38日)の開始後13日から研究の最後までに、化合物18Fは臨床スコアを平均で28%減少したことが明らかに見える。この減少は、再発のピークで最も良く観察され、例えば、第2の再発のピークの42〜43日に、化合物18Fが、臨床スコアで35%から52%の有意な減少を引き起こした。最後に、AUCが、第1の寛解中の35日から研究の最後(58日)までにわたる期間で計算される場合、化合物18Fが、対照と比較して74%の非常に有意なAUCの減少を引き起こしたことが見られた(AUC対照=8.1対AUC化合物18F=2.1;p=0.0025)。
【0182】
全体的に見て、これらの結果は、寛解再発型のPLPに誘導されたEAEの疾患のピークから始めた処置として投与された化合物18Fが、疾患の重篤性を減少させたことを示している。この活性は、(a)続いての再発の反復をあとまわしにすること、(b)続いての再発のピークの平均の臨床スコアを減少させること及び(c)AUCを減少させることのその能力によって表された。本研究は、本発明の化合物が、MSの様々な段階に対して有効であることを示している。これは、投与が有益な効果を有する時間ウインドウを増加させることによって、本発明の化合物の効力も更に強める。化合物は、以前は臨床的な徴候の始まりに投与されたが、現在は疾患のピークで投与される。既存のMS治療のいくつかは、予防的に又は疾患の誘導と同時に投与されたときのみ、類似のモデルで効力を示したことを留意されたい。
【0183】
(実施例16)
MOGにより誘導された慢性−進行性EAEに対する効果
MSの急性期及び寛解再発パターンを模したEAEモデル中で本発明の化合物の効力を示した後に、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク(MOG)が疾患の慢性進行形態を誘導するのに使用される、第3のモデルを確立した。
【0184】
C57/BL雌性マウス(イスライエル、Harlan、6週齢)の脇腹の2つの領域に、200μgのMOG及び200μgのヒト結核菌を含有する、乳化フロイントアジュバント0.2ml/マウスを皮下投与した。この誘導手順を、1週後に繰り返した。動物は、明所12時間/暗所12時間の規則飼育、22℃の一定温度に保たれ、餌及び水を制約なしに与えられた。動物は、1週間に一度体重測定され、臨床的に評価され、0のスコアは臨床的徴候のない正常な動物を表し、0.5は尾の末端部の緊張の喪失を表し、1は尾全体の麻痺状態を表し、1.5は後足1本の衰弱を表し、2は後足2本の衰弱を表し、2.5は前脚1本の麻痺状態を表し、3は4脚全部の麻痺状態を表し、4は全身麻痺状態及び瀕死状態を表し、5は死を表す評点システムに従って評点された。
【0185】
動物が疾患の発症後に0.8の平均臨床スコアに達したときである13日に、処置を開始した。媒体(PB)又は化合物(化合物18Fの20、40及び60mg/kg)を、5ml/kgの体積用量で、胃管栄養法によって19日間経口投与した。更なる一群が、処置していない動物からなった。それぞれの処置群は13匹のマウスからなった。動物を、MOGの最初の注射後2カ月間追跡観察した。研究の最後に、マウスを、ナトリウムペントバルビトン100mg/kg腹腔内投与で安楽死させた。脊髄及び脳を、取り出し、組織学的評価の前に4%ホルムアルデヒド中に固定した。
【0186】
結果は、平均±標準誤差として表され、処置群間の差異は、分散分析(ANOVA)及びそれに続くTukey’s事後解析により分析した。p<0.05の値は、統計的に有意であると見なされた。
【0187】
化合物投与後の最初の10分間に高い用量において、いくらかの小さな一時的な副作用が観察された。これらの徴候は、小さな減少した運動活性を含めて、長期処置と共に急速に消え、4日以降完全になくなった。
【0188】
媒体を処置した動物が処置していない動物と本質的に類似したパターンを示したので、両方の群の結果を集め、以後、平均対照として示す。経過は、図3のパネルAに示され、ここで、それぞれの処置群の臨床スコアは、時間に沿ってプロットされる。疾患発症後に経口投与された20mg/kgの化合物18Fは、臨床スコアを14日から25日までわたる第1のピークの期間中に約12%減少させた。同じ期間に、40mg/kg及び60mg/kgは、有意に且つ同様に臨床結果をそれぞれ43%及び44%減少させる。この処置は、疾患の進行を停止し、有意なピークは観察されない。化合物18Fの2つの用量の異なる効力は、疾患の経過の後半である処置開始後約20日、及び31日に処置を中止した後に明らかになる。36日において、60mg/kgの化合物18Fは、疾患の進行を停止し約0.6の臨床スコア(対照の約1.2に比較して)の水平状態レベルを維持したのち、疾患の臨床結果の更なる著しい減少をもたらした。約1週間、60mg/kgを処置した動物は、同じ期間の対照と比較して80%の減少である、わずか約0.2の臨床スコアを示した。40mg/kgの化合物を処置した動物は、疾患進行の制御及び水平状態レベルの臨床スコアを維持したが、臨床症状のこのような劇的な改善はもたらさなかった。処置の中止後、40mg/kgを受けた動物は、徐々に保護をゆるめるのに対して、以前に60mg/kgを受けた動物は、保護の一定レベルをかなり長い期間維持する。処置の中止後20日の、研究の最後に、60mg/kgを受けた動物は、この時点における対照(0.95)に比べ依然30%下である、0.65の平均臨床スコアを有する。
【0189】
分析された別のパラメーターは、本発明の化合物の経口投与後の、疾患の経過中の任意の時点における、完全に回復した動物の数であった。対照動物のいずれもが、処置されたものも、媒体を処置されものも、このモデルで誘導された疾患から回復しなかった。群当たり13匹の動物のうちから、20mg/kg用量(8%)の1匹の動物、40mg/kg用量(23%)の3匹、及び60mg/kg用量(31%)の4匹が0の臨床スコアに到達した。更に、少なくとも1匹の動物の回復が起きた時点も、用量に依存性である。最も高い用量において、最初の完全回復が16日に観察された(即ち、処置の開始後わずか3日)。中間の用量においては、最初の完全回復は、17日に観察されたが、最も低い用量においては、それは22日に起こった。
【0190】
別の一研究においては、化合物18Fの経口40mg/kgの効力が、既存の治療法と比較された。COP−I(イスラエル、Teva)が、25mg/kg皮下投与され、IFN−β(ドイツ、Schering社、Betaferon)が、マウス当たり10,000IU皮下投与された。処置していない動物及び媒体を処置した動物が負の対照として役立った。疾患を前述のように誘導し、動物は、動物が1の平均臨床スコアに到達したときに様々な処置群に分けられた。その時点(13日)で処置が開始され、その後毎日投与された。動物は、1カ月まで追跡観察された。研究の最後に、マウスは、ペントバリビトンナトリウム100mg/kg腹腔内投与で安楽死させた。脊髄及び脳を、取り出し、組織学的評価の前に4%ホルムアルデヒド中で固定した。
【0191】
媒体を処置した動物が、処置していない動物と本質的に類似したパターンを示したので、両方の群の結果を集め、これ以後、平均対照として表す。結果は、図3のパネルBに示され、ここで、それぞれの処置群は、時間に沿ってプロットされる。本研究で誘導された疾患は重篤であり、その慢性的な進行は、処置が開始されたときである13日での1の平均臨床スコア、及び最終日の対照の処置していない又は媒体を処置した動物の2.4強の平均群スコアで明らかである。既存の対照薬物は、確立された疾患の治療として皮下投与されたときに、このモデルにおいては有効ではなかった。1日当たり10,000IUのIFN−βを処置した動物は、対照群と非常に類似した疾患経過を示したが、25mg/kgのCOP−Iを処置した動物は、研究の最後において3.5強の平均群スコアの、明らかにより重篤な結果を発展させた。この研究においては、経口投与された40mg/kgの化合物18Fが、研究の最後においてわずか1.25の平均群臨床スコアで、疾患の進行を有意に停止した。この効果は、15日以降、即ち、最初の処置後2日で既に、非常に目覚しく、統計的に有意である。結果がAUCとして分析される場合、対照群は、24.14単位のAUCを示し、IFN−βは23.08単位のAUCを示し、COP−Iは27.01単位のAUCを示し、全て著しく類似している。化合物18Fは、15.47単位のAUCでこのパラメーターを有意に減少させ、これは、対照群と比較して36%の減少に相当する。
【0192】
全体的に見て、実施例14から16の結果は、ヒトのMSの様々な段階を表している、EAEの3つのモデルで経口投与されたときに、本発明の化合物が、有効であることを実証している。MS治療に使用される既存の注射可能な薬物とは反対に、臨床的徴候の発生の後、即ち、疾患の発症においても、疾患のピークにおいても、確立された疾患において投与されたときに、本発明の化合物は有効である。これらの結果は、自己免疫及び神経変性病因を有する疾患、特に多発性硬化症の治療における本発明の化合物の有用性を実証している。
【0193】
(実施例17)
BiozziマウスEAEモデルに対する効果
Biozziマウスは、ヒトのMSに最も近い齧歯類のEAEモデルを提供する。この研究においては、Biozziマウスは、マウスの脊髄組織の注射によってEAEを発症するよう誘導される。このモデルにおいては、炎症浸潤が検知され得るのみならず、脱髄も検知され得る。更に、このモデルは、ふるえ及び痙縮の評価を可能にする。
【0194】
Biozzi ABHマウスに、フロイント完全アジュバント中に乳化したマウス脊髄組織1mg/kgを、0日及び7日に注射する。動物は、第2の誘導注射後に毎日、臨床的な徴候の出現を追跡観察される。疾患が誘導する臨床的徴候は、15日〜20日に進展し、前述のように評点される。痙縮及びふるえは、Bakerの方法[Baker D.他、Nature 404:84−7、2000年]に従って、ブラインド評価によって目視評価される。
【0195】
結果は、平均±標準誤差として表され、処置群間の差異は、分散分析(ANOVA)及びそれに続くTukey’s事後解析により分析した。p<0.05の値は、統計的に有意であると見なされた。
【0196】
(実施例18)
MOGにより誘導されたEAEのCNS中の遺伝子発現に対する効果
この研究の目的は、本発明のCB結合性の化合物によって示される免疫調節活性の基礎をなす、可能な機構を評価することであった。本発明の化合物が、インビトロ、又はインビボのいずれかで、免疫機構の活性化細胞における、炎症性因子の分泌を調節することが知られている。この研究においては、遺伝子発現の調節への影響が、2つの方法によって、即ち(a)RT−PCRによって及び(b)遺伝子アレイ分析によって評価された。
【0197】
リアルタイムRT−PCR
トータルRNAを、SVトータルRNA単離システム(Promega)を用いて調製する。媒体(即ち、処置をしていない)、又はMOGによって誘導されたEAE研究における化合物18F(即ち、処置した)の40mg/kg経口投与を処置した5匹の動物から、31日に取り出された脳及び脊髄を、溶解緩衝液中でホモジナイズした。この溶解物を、RNA単離用カラムに移し、DNAseで処理し、キットの指示に従って洗浄し溶離した。RNA濃度を、GeneQuant II(Pharmacia−Amersham)を用いて決定した。相補的DNA(cDNA)を、SUPERSCRIPT II逆転写酵素(Life Technologies)を使用してトータルRNAから合成した。2μgのトータルRNAを、キットの指示に従って、オリゴ(dT)15プライマー、0.5mM dNTPミックス、8単位の逆転写酵素及び他の反応成分と混合して20μlの最終体積とした。この反応混合物を、42℃で45分間インキュベートし、70℃で15分間不活性化した。定量リアルタイムRT−PCRは、15μlの合計反応体積中に、1μlのcDNA、300nMの適切な正方向及び逆方向プライマー(観測する遺伝子に従って)及び緩衝液、ヌクレオチド、Taqポリメラーゼ及びSYBERグリーン(Applied Biosystems、SYBER Green master mix)を含む7.5μlの反応ミックスを含んだ。遺伝子増幅を、GeneAmp5700配列検出システム(Applied Biosystems)を用いて得た。増幅は、95℃10分の1ステージに続いての95℃20秒、及び60℃1分の2段ループの40サイクルを含んだ。各アニーリングステップ中、増幅された生成物の量を、二本鎖DNA結合性染料SYBERグリーンの蛍光によって測定した。基線信号より大きい蛍光の増加が最初に検知される、PCRサイクルを表している、サイクル閾値(C)を、各生成物について決定した。Cにおける1PCRサイクルの遅れは、出発鋳型分子における2倍の減少に翻訳され、逆もまた同様である。特定の遺伝子産物のCの変化は、参照遺伝子としてのサイクロフィリンのCの変化に正常化された。結果は、未使用動物に対しての、処置した又は処置していない動物における遺伝子発現の増加倍数として表された。次表においては、文字/及びrは、それぞれ正方向及び逆方向プライマーを示す。
(配列表)

【0198】
未使用動物に対する遺伝子発現倍数(サイクロフィリンへの正常化に続いての)として表された結果を、次表に集めた。当然、未使用の動物の数値は常に1である。統計的有意性を、対になっていない両側t−検定によって分析し、1つの星印(*)はp<0.05の統計的有意性を表すが、**はpθ.01の統計的有意性を表す。
表3 MOGにより誘導されたEAEにおける遺伝子発現倍数
【表3】

【0199】
上表から、MOG注射後の進行性EAEの誘導は、最初の注射後31日に記録された遺伝子発現に影響するようである。CBの発現は、このモデルにおいて変更されないが、試験された他の全ての遺伝子は、処置していない動物(媒体)における13倍の減少から19倍の増加にわたる、発現倍数の変更を示した。CBの発現は、疾患状態で増加し得ると一般的に考えられているが、本研究においては、CBの発現が、処置していない動物の脳において13倍減少したことが観察された。更に驚くべきことには、経口投与された化合物18Fは、この減少を有意に予防し、CBの発現を未使用動物に観察された正常レベルに保った。同様に、IFN−γ遺伝子の発現のレベルは、処置していない動物の脳において9倍減少し、化合物18Fは、発現の正常レベルを維持してこの影響を有意に予防した。処置していない動物の脳及び脊髄においては、IL−1βの遺伝子発現において5から11倍の増加があった。化合物18Fを経口処置した動物は、この結果を有意に減少させ、わずか3〜4倍の過剰発現で発現レベルを正常に近く戻した。MCP−1遺伝子発現のレベルは、処置していない動物の脳及び脊髄の両方において増加した。化合物18Fは、脊髄における過剰発現を19倍から68倍に最も有意に更に増加した。単球走化性タンパク質−1(MCP−1)は、主に単球、マクロファージ、好塩基球、肥満細胞、T細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞の補充と活性化に関与する、C−Cファミリーのケモカインである。傷の部位に補充された、活性化された単球は、一定レベルでは有益な効力を有する、TNF−α、IL−1β、酸化窒素及びプロスタグランジン等の炎症性因子を分泌する。ニューロトロフィンは、神経再生に必要な重要な因子である。それらは、末梢神経組織において豊富に発現され、CNSには殆どなく、傷を負ったこれらそれぞれの組織の神経細胞の生き残りと新生の可能性に関係する。更に、ニューロトロフィンが、胚運動ニューロンをTNF−α及びIFN−γの有害効果から保護することが示された[Hammarberg H.他、Journal of Neuroscience 20(14):5283−91、2000年]。免疫細胞は、ニューロン成長因子を産生することができ、T及びNK細胞におけるニューロトロフィンの発現が、したがって、炎症性サイトカインの高レベルの潜在的に有毒な影響からCNSを保護するための重要な機構であり得る。
【0200】
最近、Kotter他[Kotter M.R.他、Neurobiology of Disease 18:166−75、2005年]により強調されたように、マクロファージは、CNSの脱髄のメディエーターであるが、それらは、再ミエリン化にも関与する。MS組織からの検死証拠並びに実験的発見は、再ミエリン化が、強い炎症の領域及び大きなマクロファージの存在としばしば関係することを示唆している。マクロファージは、2つの方法で再ミエリン化に役立ち得る。一方では、それらは、乏突起膠細胞前駆体の再ミエリン化促進細胞への分化を弱めるミエリン破片の食細胞による清掃に関与する主要な細胞タイプである。他方では、マクロファージは、再ミエリン化に直接に又はシグナル伝達を通してかのいずれかで関与する多種多様な因子を分泌することができる。実際に、初期の炎症性応答は、最終的に再ミエリン化促進シグナル伝達環境の創造をもたらす続いて起こる事象を引き起こす。これに関連して、化合物18Fの経口投与後にこの研究で観察されたMCP−1発現の増加は、処置された動物中の単球のより良い補充を示唆しており、それによってCNS中の免疫反応が、神経細胞に有害な影響を引き起こさない防御機構を構成し得る。特に、炎症分子の調節及びその免疫細胞への影響が、有益な再ミエリン化促進環境を創造し得る。
【0201】
結論として、これらの結果は、本発明の化合物が、炎症のメディエーターとして免疫系に関与する遺伝子の発現を調節することによって、進行性のEAEを防ぐことを始めて示した。この調節は、13日の疾患の発症以降の毎日の処置の投与後の、疾患誘導後31日に観察される。本発明の経口で有効なカンナビノイドの炎症性メディエーターに対する効果は、これらの化合物が、再ミリエン化を促進さえし得ることを示唆している。このようなプロセスは、MSによって引き起こされたか否かにかかわらない慢性の神経変性に対してのみならず、例えば脊髄損傷後の急性型の脱髄に対しても有益であり得る。
【0202】
B−遺伝子アレイ分析
更なる一研究においては、遺伝子発現プロファイルを、製作者の実験計画案に従ってのSupperArray Bioscience Corporationの400 Gene Arrayシリーズキット、及び上記の処置又は未処置動物の脊髄から抽出されたRNAを使用して実施した。読み取ったデータは、mRNA発現レベルに転換し、ScanAlayze及びGEArray Analyzerの2つのソフトウエアを用いて分析した。遺伝子アレイは、PUC18、GAPDH、サイクロフィリンA及びβ−アクチン等のいくつかの対照遺伝子からなり、全てが、媒体又は化合物18Fを処置した動物中で同じように発現することが見出された。試験された400遺伝子から、20が、処置によって1.5倍を超えてダウンレギュレートされたか、アップレギュレートされたかのいずれかであることが見出された。このように識別された遺伝子は、疾患経過中の他の時点において、更にリアルタイムRT−PCRによって分析される。本発明の化合物の処置を受けている、MOGにより誘導されたEAEにかかった動物中でその発現が変更された遺伝子は、概して、数種のサイトカイン及び成長因子のシグナル変換に関与するSTATタンパク質、JAKキナーゼ、β2ミクログロブリン、TNF受容体スーパーファミリー、カルモジュリン、及びサイクリン依存キナーゼ等の、免疫系に関与するタンパク質をエンコードすることに注目することは興味ある。
【0203】
この第2の研究は、本発明の化合物が、遺伝子発現の変更によってEAEの進行を遅くすることを確認している。この活性は、本発明の化合物が、炎症の類似のメディエーターの遺伝子調節が有益である、広範囲の障害に有効であり得ることを支持している。
【0204】
(実施例19)
活性化したマクロファージ中の遺伝子及びタンパク質発現に対する効果
この研究は、先に報告された遺伝子調節活性が、タンパク質発現及び/又は分泌の変更と関係があることを評価するために設計された。更に、この研究は、本発明の化合物の抗炎症性活性が実証される、更なる実験系を提供する。
【0205】
RAW264.7マクロファージ、マウス細胞系(ATCC#TIB71)を、1.5g/L重炭酸ナトリウム、4.5g/Lグルコース、及び10%熱不活性化ウシ胎仔血清を含むよう調節された、4mM L−グルタミン酸を含むDulbecco’s modified Eagle’s medium(DMEM)中で培養した。細胞を、組織培養フラスコ中で培養し、適切な濃度で6ウエル組織培養プレート中にまいた。0.5ミリリットル中の4百万個の生細胞を、1μg/mlのリポ多糖大腸菌055:B5(DIFCO Laboratories)で刺激した。マウスマクロファージを、対照又は10μMの試験化合物で1時間前処理をして、後にLPSで活性化した。RNAサンプルを、活性化3時間後に細胞から抽出し、iNOS遺伝子発現レベルを前記のリアルタイムRT=PCRによって分析した。ウエスタンブロット分析のために、化合物を、1、5及び10μMにおいて試験し、細胞を、LPS24時間後に回収した。上澄みを集め、NOの分泌を、ELISAを用いて分析した。細胞を、冷たいPBSで3回洗浄し、集めて、20mM HEPES、pH7.6、150mM NaCl、1.5mM MgCl、0.2mM EDTA、1% Triton X−100、10% グリセリン、1mM DTT、1mM PMSF、10μg/ml アプロチニン、5μg/ml ロイペプチン、10mM p−ニトロフェニルホスフェート、100mM β−グリセロホスフェート、1mM フッ化ナトリウム、及び0.1μM ナトリウムオルトバナデートを含有する、細胞溶解緩衝液100μl中に溶解した。細胞を、更なる加工の前に10分間氷上で溶解した。
【0206】
本実験の結果は、サイクロフィリンA発現に対する正常化後の、活性化していないマクロファージに対するiNOSの活性化倍数として表される。化合物18Aは、iNOS遺伝子発現の63%を抑制し、化合物18B、18E及び18Fは、それぞれ55%、25%及び100%を抑制する。化合物18Aの抑制活性は、CB又はCB抑制因子(それぞれ5μMのSR−141716及びSR−144528)のいずれかの同時投与によって逆転されるが、CB抑制因子によってより著しいのに対して、化合物18Fの抑制活性は、CB抑制因子によってのみ阻止されたことを注目されたい。この驚くべき観察は、本発明の化合物は、化学的に関連しているが、相異なる予想外の性質を有するという事実を強めている。
【0207】
本発明の化合物のiNOS遺伝子発現抑制活性は、活性化細胞の上澄み中のNOレベルの減少と相互に関係があった。化合物18A及び18Fは、用量に関係した形でNO分泌を抑制し、10μMにおいて、それらは、63%及び61%の抑制をもたらした。
【0208】
遺伝子発現及びタンパク質発現の相互依存関係を評価するために、タンパク質抽出物を、様々な処置された活性化マクロファージから調製した。細胞溶解液を、4℃において14,000gで10分間、遠心器で沈降させた。上澄みを集め、標準手順に従ってアクリルイミドゲル上に載せるための準備をした。電気泳動法が約2時間行われた。ゲルをナイロン膜上にブロッティングし、この膜は、ブロッキングの後、第1の特異的な抗体で、続いてHRP標識された第2の抗体でハイブリダイズされた。サイクロフィリンAに対する第1の抗体は、対照(Upstate、Cat#07−313)として使用され、iNOSの量は、NOS2(Cl 1)を用いて評価された。Santa Cruz抗体(Cat#SC−7271)を、室温で2時間ハイブリダイズした。第2の抗体、iNOS用のHRP標識抗マウス及びサイクロフィリンA用のHRP標識抗ラビット抗体を、室温でもう1時間インキュベートした。ハイブリダイゼーション後、ナイロン膜を、すすぎ、ECLで現像し、オートラジオグラフィーのためにフィルムに曝露した。
【0209】
ウエスタンブロット法の結果が、図4に示されており、ここで、化合物18F及び化合物18Aの両方で、明らかな用量依存性のiNOSバンドの消失が観察される。全体的に見て、これらの結果は、本発明の化合物は、タンパク質レベルの変更と相互に関係がある遺伝子調節を通して、その免疫調節及び神経保護活性の部分を恐らく提供することを実証している。
【0210】
(実施例20)
内臓痛に対する鎮痛効果
再発寛解型の神経損傷に加えて、MSを患う患者は、痙縮及び痛み等の更なる症候も発生させる。本研究においては、本発明の化合物の鎮痛作用を、内臓痛の1モデルにおいて評価した。内臓痛は、胃、腎臓、胆嚢、膀胱、腸等の臓器によって引き起こされる。内臓痛は、侵害受容性の性質であり、肥満細胞及びマクロファージ等の腹膜常在細胞によって媒介されると考えられている。内臓痛は、通常、オピオイド及びNSAIDSに応答する。本研究においては、内臓痛を、酢酸を腹腔内に注射することによってマウスに誘導した。
【0211】
雄性ICRマウス(イスラエル、Harlan、平均体重25g)を、媒体、対照及び様々な用量の試験化合物の5ml/kgの体積用量の静脈内注射によって前処理した。本研究の静脈内部分のために、化合物を、痛み誘導15分前の、注射の前に、CREMOPHOR(登録商標):エタノールに溶解し、生理食塩水中に1:20で希釈した。化合物が経口で送達される場合、それらを、リン酸緩衝液中又は前記のCREMOPHOR(登録商標):エタノール中に溶解し、痛みの誘導1時間前に投与した。それぞれの処置群は、少なくとも30匹の動物からなる対照を除き、少なくとも6匹の動物からなった。薬物投与に選択された経路に応じて、15分又は60分後に、マウスに10ml/kgの0.6%酢酸を腹腔内に注射し、内臓痛に関係した挙動(苦悶、伸張、体の伸張及び後肢の伸びを伴う腹部の痙縮)の数を、酢酸投与5分後に開始して5分間にわたり数える。これらの内臓痛に関係した挙動は、苦悶反応(WR)として世界的に定義されている。結果は、苦悶反応±標準誤差の平均数として表される。データは、分散分析(ANOVA)及びそれに続く事後Fisher試験を用いて分析された。p<0.05の値は、統計的に有意であると見なされ、該当する処置群上に、その数字に星印が示される。
【0212】
次の結果は、2mg/kg静脈内投与の試験化合物において、又は、カンナビノイド受容体抑制因子と共に行われた研究の場合は、1mg/kg試験化合物、又は抑制因子単独において、及び1mg/kg試験化合物+1mg/kg抑制因子において得られた。別の一研究においては、本発明の化合物の鎮痛作用は、用量に関係することが示された。
【0213】
未処置動物は、平均で28.3±2.5の苦悶反応を示し、媒体のみ処置した動物は27.6±1.2の苦悶反応数が観察され効果がなかった。次の結果は、媒体処置群と比較した苦悶反応の抑制パーセントとして表される。2mg/kgの化合物18Aは、高度に鎮痛性であり、苦悶運動の完全な抑制をもたらしたが、化合物18B、18F及び18Gは、それぞれ95%、94%及び91%の非常に印象的な高度に有意な抑制をもたらした。化合物18Hは、苦悶反応数を38%減少させたのに対し、化合物18D及び18Eは、用量試験において最小の効果を示し、5mg/kgまでの用量においてのフマル酸は、本モデルにおいて不活性であった。200mg/kgまでの用量におけるガバペンチン及び10mg/kgまでの用量におけるセレコキシブは、本モデルにおいて不活性であった。
【0214】
本発明の化合物を、1mg/kgのCB又はCB抑制因子、それぞれSR141716A及びSR144528と共に、又はなしに、1mg/kgの用量で静脈内投与した。これら抑制因子は、別々に、同じ用量で、対照として投与された。結果は、図5のパネルAに示されており、ここで、各処置群の苦悶反応(+標準誤差)の平均数がプロットされる。対照、即ち、媒体(CE)及びCB又はCB抑制因子単独は、未処置動物に比べて、観察された苦悶反応数に影響を及ぼさなかった。化合物18A及び18Fは、1mg/kg静脈内投与の用量において高度に有効であり、苦悶反応数をそれぞれ90%及び71%抑制した。CB抑制因子の添加は、化合物18Aの活性を完全に阻止したが、化合物18Fの活性は、有意でない形で部分的にのみ逆転された。しかしながら、CB抑制因子の添加は、化合物18Aの活性に影響を及ぼさなかったが、化合物18Fの活性は、有意に逆転された。この観察は、化学的に関係する本発明の化合物は、予想外の互いに異なる作用の機構を有することを更に支持している。
【0215】
第2の研究においては、内臓痛モデルが、本発明の化合物が、更なる化合物と相乗的に作用し得るかを評価するのに使用された。カプサゼピン(CPZ)は、鎮痛作用を有する1型バニロイド受容体(VR1)抑制因子である。カプサゼピン及び化合物18Fを、0.5、1及び2mg/kg静脈内投与した。0.5mg/kgのCPZ及び0.5又は1mg/kgのいずれかの化合物18Fを共に含む、2種の併用療法サンプルを試験した。結果は、図5のパネルBに示されている。CPZ及び化合物18Fの両方とも、苦悶反応数の用量に関係した減少を示した。0.5mg/kgにおいては、CPZは、活性をもたなかったのに対し、化合物18Fは、既に、媒体処置動物に比べて64%結果を有意に減少させた。2mg/kgにおいては、CPZは、苦悶反応数を67%有意に減少させたのに対し、化合物18Fは、このパラメーターを98%減少させ、殆ど痛みの反応を完全に消した。0.5mg/kgCPZの不活性な用量を、0.5又は1mg/kgのいずれかの化合物18Fと併用したとき、増強された鎮痛効果の明らかな傾向があった。0.5mg/kgでの2種の薬物の併用は、苦悶反応数を10から6(40%)減少させたのに対し、1mg/kgの化合物18Fとの併用においては、混合物の増強した活性は、苦悶反応数を9から2.2(75%)に減少させることを可能にした。これらの観察は、本発明の化合物の第2の薬剤との同時投与又は併用は、付加利益を有することを支持している。本発明の化合物は、別法として、第2の薬剤の以前のより高い用量の元の治療活性を維持しながら、安全な用量において又は第2の薬剤の用量をこの薬剤が安全であり、仮にあったとしてもより少ない副作用で、第2の薬剤の活性を更に増強するのに使用することができる。
【0216】
第3の研究においては、本発明の化合物を、5から60mg/kgにわたる増加させる容量で、リン酸緩衝液中で経口投与した。結果は、図5のパネルCに示されている。化合物18Fは、10mg/kgから始まり最高の用量試験において93%の抑制に達して有意であった用量依存の形で、苦悶反応数を減少させた。
【0217】
最後に、経口での効力が、10mg/kgで既に有意であることを確立した後、本発明の様々な化合物を、経口経路の投与でこの単一の用量で試験した。本研究の最初の部分においては、これらの化合物を、CREMOPHOR(登録商標):エタノール中に溶解して、水性緩衝液中に不溶であるΔ−THCとの比較を可能にした。結果は、図6のパネルAに示されている。10mg/kgΔ−THCは、苦悶反応数を未処置動物に比べて47%減少させるが、ばらつきにより、この減少は、媒体処置動物に比べて統計的に有意ではない。一方、本発明の経口で有効なカンナビノイドは、同じ用量において、それぞれ化合物18A及び18Fを処置した動物の苦悶反応の70%及び71%の抑制によって表されたように、痛みの反応を有意に減少させた。
【0218】
本発明の経口で有効なカンナビノイドが、共溶媒媒体中の経口投与のTHC対照に優ることを確立した後、水溶性化合物を、リン酸緩衝液に溶解した。結果は、図6のパネルBに示されている。試験された6種の化合物のうち、4種が、10mg/kgの経口投与で有意に鎮痛性であった。化合物18B、18C、18F及び18Gは、未処置動物と比較して、それぞれ88%、93%、61%、及び56%だけ痛みの反応を抑制した。化合物18E及び18Hは、試験した用量では有効ではなかった。化合物18Hは、以前に、静脈内に投与されたときには有効であったことに注目することは興味がある。これらの観察は、本発明のカンナビノイドは、経口投与で、鎮痛剤としての本件において、有効な化合物であることを支持している。
【0219】
(実施例21)
炎症性の痛みに対する鎮痛効果
本研究の目的は、化合物の抗炎症性痛覚活性を試験することである。炎症性痛覚は、侵害受容性の性質であり、ここで、痛覚は、しばしば、実施例20において誘導されたような急性の痛みより長い期間知覚される。その点で、内臓痛においては、化合物の予防のための鎮痛作用を、約1時間まで評価し、本モデルにおいては、急性の痛みに対する化合物の予防的活性を、約3時間まで評価した。炎症性痛覚及び足のむくみを、2%λカラギーナンを動物の後足に注射することによって誘導した。
【0220】
雄性Sprague Dawleyラット(イスラエル、Harlan、平均体重200g)を、注射の期間だけドライアイス上に置くことによって一時的に落ち着かせた。ラットは、1本(右)の足の足底下(subplantar)領域に、無菌食塩水中の2%重量/体積カラギーナン0.1mlを皮下に注射した。反対側(左)の足には、注射しなかった。というのは、文献からのデータは、我々自身の経験によって確認したが、0.1mlの生理食塩水は、後の鎮痛作用測定に影響しなかったことを示したためである。試験化合物を、前処理としてのカラギーナン注射の直後に、経口胃管栄養法によって経口投与した。媒体(PB)処置動物を、対照として使用した。注射の3時間後の炎症性痛覚の誘導前に、疼痛刺激に対する動物の反応を、2つの実験系で試験した。第1の刺激は、熱であり、Ugo Basile Model 7370を用いて、Hargreavesによる足底試験によって評価した。目盛りは、50の任意の単位の強度に設定した。動物が、熱刺激に対する反応として足を持ち上げるまでの待ち時間を、炎症を起こさせた足及び炎症を起こさせていない足の両方で記録した。第2の刺激は、機械的(触覚の)であり、Dynamic Plantar Sesthesiomether(Ugo Basile Model 73400−002)を用いて評価した。このシステムは、50グラムの最大力に設定し、適用された力は、10g/秒の割合で徐々に増加された。最後に、足のむくみへの影響を評価した。足の太さを、ダイヤル厚さゲージ(スプリングダイヤル、一定低圧ゲージ、株式会社ミツトヨ、TG/L−l、0.01mm)を用いて測定し、足の体積を、プレチスモメーター(plethysmometer)(イタリア、Ugo Basile、model#7150)を用いて測定する。本研究の最後に、動物を、100mg/kgペントバルビトンの腹腔内注射で安楽死させた。
【0221】
結果は、本研究の熱部分の待ち時間を意味するΔLTとして、及び本研究の機械的部分を意味するΔForceとして、時間0及び3時間での、2本の後足の間の差異として測定される。足の体積は、媒体処置動物からのパーセントとして表される。結果は、それぞれの処置群について、平均±標準誤差として表され、それらの群の間の差異は、分散分析(ANOVA)及びそれに続いて事後Tukey’s試験によって分析される。p<0.05の値は、統計的に有意であると見なされ、該当する処置群上にその数字に星印が示される。
【0222】
2%λカラギーナンの投与は、足の腫れ及び赤みによって特徴付けられる、局所的な一時的な足の炎症を誘導した。化合物18Fは、カラギーナン注射の直後に、10、20及び30mg/kgの用量で、経口胃管栄養法によって経口投与されたときに、予防的な鎮痛作用を示したことが示された。痛みの誘導の3時間後、媒体のみを処置した動物は、熱刺激に続いて、後足の間で約7.5秒のΔLTを示した。結果は、図7のパネルAに示されている。この結果は、化合物18Fの経口投与で用量に関係した形で減少した。10mg/kgを受けている動物は、7.5秒(即ち、減少なし)のΔLTを示したのに対し、20及び30mg/kgにおいては、この結果は、2.3及び0.9秒(即ち、それぞれ69%及び88%の減少)の待ち時間に落下した。媒体のみを処置した動物は、適用された刺激が触覚であったとき、31gの足の間のΔforceを示した。結果は、図7のパネルBに示されている。ラットがその足を持ち上げさせるのに要する力は、化合物18Fの10mg/kgが経口投与されたときに、7だけ用量に依存して減少し(即ち、23%減少)、より高い用量では、18及び19gだけ減少した(即ち、20及び30mg/kg経口投与で痛覚閾値の約60%の減少)。最後に、本モデルの局所的な炎症成分に対する影響を、種々の処置群の足の体積を測定することによって評価した。当然、媒体処置動物は、100%の最大の足体積を有する。結果は、図7のパネルCに示されている。このパラメーターも、用量に関係し、化合物18Fの10mg/kgは、足体積の6%のわずかな減少を引き起こしたのに対して、20mg/kgは18%の減少をもたらし、30mg/kgは52%の有意な減少をもたらした。
【0223】
これらの結果は、化合物18Fが、急性の痛みの誘導と同時に経口投与されたときに、効力のある予防的な鎮痛剤及び局所的な抗炎症剤であることを実証している。
【0224】
残りのフェノール性水酸基のフマレートによる更なる置換によって化合物18Fと異なる化合物18Gは、20mg/kgの単独用量で経口投与されたときに、本モデルにおいて不活性であることがこのたび開示される。20mg/kgにおいて、化合物18Fを処置した動物の足体積は、媒体の82%であったのに対し、化合物18Gを処置した動物は、対照の足体積の96%で、処置によって影響されなかった。熱刺激が適用されたとき、ΔLTは、化合物18Fによって69%減少したのに対し、化合物18Gは、このパラメーターを低下させるのに有効ではなかった。最後に、機械的刺激が適用されたとき、化合物18Fを処置した動物は、ΔForceの58%の減少を示したが、化合物18Gは、わずかに且つ有意ではなくこのパラメーターに影響を及ぼしただけであり、それを8%だけ低下させた。予想外に、フェノール性水酸基の二置換体は、その活性な一置換の対応物に比べて更に改良された化合物をもたらさない。反対に、急性の痛みの本モデルにおいては、二置換体は、有害であり、更に本発明の好ましい化合物に関する本発見は明白ではないことを支持しているようである。
【0225】
(実施例22)
神経因性疼痛に対する鎮痛効果
MS患者が発生し得る種々のタイプの疼痛症状のうち、神経因性疼痛が優勢である。慢性疼痛を伴う神経因性疼痛は、以前評価した、急性の痛みを伴う内臓及び炎症性の痛みと異なる。急性の痛みと慢性疼痛は、その病因、病態生理学、診断及び治療において異なる。急性の痛みは、侵害受容性の性質であり、Aデルタ及びCポリモーダル受容体の化学的、機械的及び熱的刺激に続いて生じる。急性の痛みは、自己限定的であり、最初の損傷後短期に消失する。一方、慢性疼痛は、継続的であり、最初の損傷後に数年間持続し得る。それは、末梢又は中枢神経系への損傷又は病変によって生じる。神経因性疼痛は、オポオイド療法に部分的にしか反応しない傾向がある。したがって、内臓痛及び炎症性疼痛等の特定のタイプの急性の痛みに対して活性な薬物は、必ずしも神経因性疼痛に対して有効ではない。
【0226】
本発明の化合物の鎮痛作用を、神経因性疼痛の2種のモデル、即ち、(a)慢性狭窄による誘導(CCI)及び(b)Taxol(登録商標)による誘導で評価した。
【0227】
A−慢性狭窄により誘導された神経因性疼痛
Bennet他[Bennet GJ.&Xie Y−K.、Pain 33:87−107、1988年]による坐骨神経の慢性狭窄に従い、ラットの右後肢に、末梢の単一疾患を誘導した。機械的な異痛症の発達を、確立された行動試験(Von Frey フィラメント)を用いて観測した。
【0228】
手術前の基礎値を、2つの手術前の値の平均として確定した。基礎値が確立され次第、4本のクローミック腸線のゆるい帯で右の坐骨神経を締め付けることによって、動物を外科的に準備した。手術後11日に、機械的な異痛症を発生した動物を、手術前の値に基づき種々の処置群に任意に割り当てた。
【0229】
この計画は、無作為化され、薬物又は媒体が与えられるかについて隠した方法で実施された。動物の、Sprague−Dewleyラット(イスラエル、Harlan、平均体重240〜290g)を、試験の前に、行動実験装置に慣らせた。試験の日に、少なくとも6処置群の動物は、5ml/kgの体積で胃管栄養法によって種々の用量の化合物18Fを経口で与えられた。本研究は、媒体(PB)処置の陰性対照及びモルヒネ処置(5mg/kgs.c)の陽性対照を含んだ。15分後、一連のVon Frey フィラメント(試験前に予め較正した)を、後肢の足底面に下から当てた。フィラメントは、最も弱い力から開始する昇順で当てられ、同側及び反対側の後肢の両方の撤退閾値を評価した。各フィラメントは、足の中央の足底面上にそれが曲がり始める点に押され、これは、約1Hzの頻度でフィラメント当たり約8〜10回繰り返される。撤退閾値は、2以上の連続的なVon Freyのフィラメントが反応の撤退応答(即ち、肢をひょいと動かすこと)を引き出す最低の力であると定義され、グラムで測定される。
【0230】
結果は、それぞれの処置群について平均±標準誤差として表され、それらの群の間の差異を、分散分析法(ANOVA)及びそれに続いての事後Tukey’s試験によって分析する。p<0.05の値は、統計的に有意であると見なされ、該当する処置群上に、その数字に星印が示される。
【0231】
結果は、図8のパネルAに示されている。化合物18Fは、20mg/kg経口投与において神経因性疼痛に少ししか効果がなかった。しかしながら、より高い用量の経口投与は、投与前の反応と比較して、手術した足の疼痛反応を有意に減少した。経口で与えられた化合物18Fの40mg/kgは、皮下投与された5mg/kgのモルヒネと同じ強さであった。次いで、結果を、(ΔLTvehicle−ΔLTTreatment)/ΔLTvehicleで計算される疼痛応答のパーセント抑制として分析した。
【0232】
B−Taxol(登録商標)によって誘導された神経因性疼痛
Taxol(登録商標)(パクリタキセル)は、最も有効な且つ一般によく使われる固形腫瘍用の抗新生物薬の一つである。それは、骨髄抑制及び末梢性ニューロパシーの2つの重篤な副作用を有する。顆粒球コロニー刺激因子は、殆どの患者において好中球減少を有効に妨げる。しかしながら、神経損傷を防ぐ又は最小化し、神経毒性を有意な用量制限の副作用にする許容される療法はない。臨床的に、パクリタキセル誘導性神経毒性は、最も一般的な病状が、しびれ感、刺痛及び灼熱感である、感覚性ニューロパシーとして現れる。これらの徴候は、一般的に脚に始まり、後になって手に見られる。臨床におけるTaxol(登録商標)によって誘導されるニューロパシーの罹患率は、平均30%である。本研究においては、Polomano他[Polomano R.C.他、Pain 94:293〜304、2001年]の方法に従って、Taxol(登録商標)を用いて、神経因性疼痛を誘導した。
【0233】
雄性Sprague−Dawleyラット(イスラエル、Harlan、平均体重150〜200g)に、6mg/kg Taxol(登録商標)(米国、Bristol Myers Squibb)を1日おきに9日間腹腔内投与した。13日に、基礎疼痛閾値を測定した。1時間後、動物に、5mg/kg腹腔内投与の媒体(PB)のみを投与し、疼痛閾値を再確立した。更に1時間後、動物に、腹腔内投与される0.5mg/kgから10mg/kgにわたる種々の用量の化合物18Fを処置した。5mg/kg腹腔内投与におけるモルヒネ及び100mg/kg腹腔内投与におけるガバペンチンが陽性対照になった。それぞれの処置群は、少なくとも8匹の動物からなった。薬物投与1時間後の疼痛閾値を、前述のように熱及び機械的刺激を用いて観測した。本研究の最後に、ラットを、ナトリウムペントバルビトン100mg/kg腹腔内投与で安楽死させた。次いで、サンプルラットに、生理食塩水及びヘパリン化した4%ホルムアルデヒド溶液を輸注した。脊髄のL4〜L5領域及び坐骨神経は、組織学的評価のために取られた。
【0234】
様々な処置群の温熱性痛覚過敏の待ち時間、及び疼痛誘導に必要な力を、一方向ANOVA(分散分析)及びそれに続いてのDuncan’s事後試験を用いて比較する。p<0.05の値は、統計的に有意であると見なされ、該当する処置群上に、その数字に星印が示される。
【0235】
結果は、図8のパネルBに処置群ごとのΔForceとして示されている。Taxol(登録商標)により誘導されたニューロパシーは、13日の疼痛閾値を未使用動物の基礎値15gから未処置動物における5gに減少させた。媒体5mg/kg腹腔内の投与は、疼痛閾値に影響しなかった。化合物18Fでの処置は、疼痛閾値を用量に関係して増加させた。1、5及び10mg/kgの用量は、媒体処置動物からの統計的に有意な値を示した。10mg/kgの用量は、疼痛閾値を、Taxol(登録商標)処置前の基礎値に戻るまで増加させた。ガバペンチン100mg/kg及びモルヒネ5mg/kgの両方の陽性対照は、疼痛閾値を増加させる傾向を示した。それらの両方によって誘導された効果は、統計的に有意ではなかった(媒体処置群と比較したとき)。10mg/kg腹腔内投与の化合物18Fによる疼痛閾値の増加は、ガバペンチン又はモルヒネのいずれかによって発揮された効果とは統計的に異なった(p<0.05)。
【0236】
先に説明の通り、神経因性疼痛は、末梢又は中枢神経系の損傷又は病変によって発生し、MSに関係してのみならず、特に慢性の悪性でない疼痛を伴う他の非常に多くの病理にも見出し得る。したがって、本発明の化合物の神経因性疼痛を減少させる能力は、広範な有益な影響力を有し、本発明の化合物は、有利にも既存の治療法を代替又は補充し得ることを支持する。
【0237】
更に、本発明の化合物は、抗新生物療法を受けており、Taxol(登録商標)等の神経因性の副作用を有する患者に投与することができる。本研究は、本発明の化合物は、神経保護効果を有し、Taxol(登録商標)化学療法の神経学的副作用を予防することを明確に確立した。
【0238】
(実施例23)
安全性
カンナビノイドは、その印象的な治療可能性にもかかわらず、主として法的な懸念により医学的用途に殆ど見出せない。精神活性の大麻様効果は、中毒性ではなく、特定の状況ではその治療利益がより重要であるが、殆どの法律制定者にとって、大麻は、麻薬であり、その生物活性成分又は抽出生成物は禁止されるべきである。したがって、カンナビノイド薬の開発は、更なる安全性の懸念を伴う。説明の通り、精神活性の大麻様効果は、CB受容体を経由して媒介され、したがって、CB選択性の化合物は、推測的により安全な薬物候補である。比較のため、承認されたΔ−THCは、0.89のCB/CBの親和力の比を有するのに対し、本発明の化合物は、少なくとも10倍のより強い親和力を有し、より一般的にはCBに対する約30倍のより高い選択性を有する。もしあれば、残りのCBに関係した活性を、化合物の、体温、自発的及び強制的歩行運動及びカタレプシーへの影響が測定される、Tetrad Assayで評価した。
【0239】
ICR雄性マウス(イスラエル、Harlan、平均体重25g)に、5ml/kgの用量体積で経口胃管栄養法によって、化合物18Fの種々の用量、即ち、30、60、80及び100mg/kgを投与した。基礎線を確立するために投与前に、及び投与後30分、3時間及び24時間に、以下の測定を行った。直腸温をサーミスター探針(米国、YSI model 400)を用いて観測した。自発的歩行運動を、オープンフィールド法を用いて評価した。動物の歩行距離及び速度を、3分間、コンピュータシステムに接続されたビデオカメラを用いて、記録し、分析した。それぞれのオープンフィールドテストの最後に、動物を、カタレプシーの徴候について試験した。これは、その前足が高められた梁を抑えているときにその後足で立つように優しく強制することによって実施した。動物が梁から踏み降りる時間を秒で測定した。正常な動物は、即座に梁を離脱するのに対し、カタレプシーの動物は、梁に留まる傾向がある。動物が、長く梁にもたれ続けるほど、その動物はよりカタレプシーである。群ごとのカタレプシーの動物のパーセンテージの計算のために、5秒のカットオフを決定した(即ち、5秒より長く梁にもたれかかった動物を、カタレプシーの動物と見なした)。強制条件下での動物の調整及び運動活動を、加速ロータロッド行動試験を用いて評価した。動物を、実験を開始する前4日間訓練した。それらの課題は、加速するロッド上に12分間落下することなく留まることであった(各速度で3分間)。試験速度は、15、19、23及び27rpmであった。ロッド上の動物の行動を次の通り評点した。即ち、各動物は、各速度でロッド上を完全に歩行することに最大3ポイント(1分ごとに1)を得ることができた。したがって、動物は、12ポイントの最大スコアを得ることができた(各速度について3)。歩行することなくロッドの旋回する梁をつかむことは、動物が3回旋回するごとに0.5ポイント減点された。最初の3旋回は、スコアに影響しなかった。
【0240】
本研究の最後に、動物を、100mg/kgのペントバルビタールの注射を用いて殺した。
【0241】
化合物18Fの経口投与は、100mg/kgの最大の試験用量まで、観測された運動に関係したパラメーターの3つ、即ち、カタレプシー及び自発的又は強制的のいずれかの歩行活動に効果がなかった。影響を受けた唯一のパラメーターは、体温であり、化合物18Fの投与が一時的な低体温症をもたらした。正常体温は、用量に依存して回復した。30及び60mg/kgのより低い用量においては、動物は、正常体温を24時間以内に回復したのに対し、80及び100mg/kgのより高い用量を投与された動物は、追跡期間の最後において基線より依然として2℃低かった。全体的に見て、行動副作用は、本研究の過程で観察されず、60mg/kgまでの治療有効用量において、化合物は安全であることが見出された。
【0242】
本発明が、例示のみの目的で提示された、その様々な特定の実施形態に関して記載されたが、このような個別に開示された実施形態は、限定的であると見なすべきではない。多くの他のこのような実施形態は、出願者らの本明細書での開示に基づいて、当分野の技術者は思いつくはずであり、出願者らは、添付の特許請求の範囲で定義されたそれらの発明の精神及び範囲によってのみ拘束されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0243】
【図1】MBPにより誘導された急性EAEに対する、経口投与された化合物18Fの効果を示す図である。パネルAは、時間に沿った平均群臨床スコアを示す図である。パネルBは、処置群ごとの平均最大スコアを示す図である。パネルCは、処置群ごとの濃度曲線下面積を示す図である。
【図2】PLPにより誘導された寛解再発型EAEに対する、経口投与された化合物18Fの効果を示す図である。
【図3】MOGにより誘導された慢性進行性EAEに対する、経口投与された化合物18Fの効果を示す図である。パネルAは、時間に沿った様々な用量の臨床スコアに対する効果を示す図である。パネルBは、疾患の進行に対する対照薬物及び化合物の影響を示す図である。
【図4】活性化されたマクロファージにおけるiNOSタンパク質発現に対する、様々な用量の化合物18A及び18Fの効果を表すウエスタンブロットのクロマトグラムを示す図である。
【図5】苦悶反応(WR)の数によって表された内蔵痛モデルにおける鎮痛作用を示す図である。パネルAは、化合物18A及び18Fの鎮痛作用に対するCB及びCB抑制因子の効果を示す図である。パネルBは、鎮痛作用に対する併用療法の効果を示す図である。パネルCは、経口投与された様々な用量の化合物18Fの効果を示す図である。
【図6】苦悶反応(WR)の数によって表された内蔵痛モデルにおける鎮痛作用を示す図である。パネルAは、補助溶媒媒体中の経口投与された種々の化合物の効果を示す図である。パネルBは、水性媒体中の経口投与された種々の化合物の効果を示す図である。
【図7】炎症性疼痛に対する、経口投与された様々な用量の化合物18Fの効果を示す図である。パネルAは、媒体処置動物と比較した種々の用量の足体積に対する効果を示す図である。パネルBは、温熱性痛覚過敏に対する効力を表す図である。パネルCは、機械的痛覚過敏に対する効力を表す図である。
【図8】神経因性疼痛に対する、経口投与された様々な用量の化合物18Fの効果を示す図である。パネルAは、慢性狭窄により誘導された神経因性疼痛における疼痛応答の減少を示す図である。パネルBは、Taxol(登録商標)により誘導された神経因性疼痛における機械的痛覚過敏に対する影響を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性硬化症の予防、緩和又は治療の方法であって、それを必要とする個体に、活性成分として、式(I)の化合物:
【化1】


[式中、
C−4がSであり、C−1及びC−5における陽子が互いの関係においてシス形であり、C−4及びC−5における陽子がトランス形である、特定の立体化学を有し、
は、
(a)O又はS、
(b)C(R’)(式中、R’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、シアノ、−OR”、−N(R”)、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”又はC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、C(O)R’’’、C(O)N(R’’’)、C(S)R’’’、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR’’’、及びC〜Cアルキル−N(R’’’)からなる群から選択され、式中、R’’’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和の、直鎖、分枝若しくは環式C〜C12アルキルからなる群から選択される)、及び
(c)NR”又はN−OR”(式中、R”は先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
及びRは、それぞれ独立に、
(a)−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−S(O)(O)NR”(式中、出現するごとに、R”は、先に定義した通りである)、
(b)−S(O)R、−S(O)(O)R(式中、Rは、水素、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”、及びC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、先に定義した通りである)、及び
(c)−C(O)OH、−S(O)(O)OR、又は−P(O)(ORで終端された−OC(O)OH、−OS(O)(O)OR、−OP(O)(OR、OR又は−OC(O)−R鎖(式中、Rは、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルであり、Rは、出現するごとに、水素からなる群から選択され、Rは、先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
は、
(a)R(式中、Rは、水素、ハロゲン、OR’’’、OC(O)R’’’、C(O)OR’’’、C(O)R’’’、OC(O)OR’’’、CN、N(R’’’)、NC(O)R’’’、NC(O)OR’’’、C(O)N(R’’’)、NC(O)N(R’’’)及びSR’’’からなる群から選択され、式中、出現するごとに、R’’’は先に定義した通りである)、
(b)飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル−R(式中、Rは先に定義した通りである)、
(c)Rにより任意の位置で更に置換し得る芳香族環(式中、Rは先に定義した通りである)、及び
(d)(c)で定義した通り更に置換し得る芳香族環によって場合によっては終端された、飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル
からなる群から選択される]
及びその医薬上許容される塩、エステル又は溶媒和物を含む、経口で有効な量の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項2】
が、Oであり、R及びRが、それぞれORであり、式中、Rが、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、−R及び−C(O)−Rからなる群から選択され、式中、Rが、−C(O)ORで終端された、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル鎖であり、Rが、水素、及び飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルからなる群から選択され、Rが、飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル−Rからなる群から選択され、式中、Rは、R、及び先に定義した通り、Rによって任意の位置を場合によっては更に置換し得る芳香族環からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、Oであり、R及びRが、それぞれ独立に、OH、スクシネート、フマレート、及びメチレンオキシカルボキシルからなる群から選択され、Rが、1,1−ジメチルペンチル、1,1−ジメチルヘプチル、1,1−ジメチル−6−ヘプチニル、1,1−ジメチル−3−フェニルプロピル、1,1,3−トリメチルブチル、1−(4−クロロフェニル)−1−メチルエチル、1−エチル−1−メチルプロピル、5−ブロモ−1,1−ジメチルペンチル及び1,1−ジメチルペント−4−エニルからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
が、Oであり、Rが、OHであり、Rが、フマレートであり、Rが、1,1−ジメチルヘプチルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記医薬組成物が、医薬上許容される担体、希釈剤又は賦形剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式(I)の活性成分が、1日に1から4回の投薬計画で、体重1kg当たり約0.05から約50mgの1日量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記医薬組成物が、経口の(peroral)、粘膜の、口腔内の、歯肉の、舌側の、舌下の、又は口咽頭の投与によって経口(orally)投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記医薬組成物が、溶液、懸濁液、ミセル、乳濁液、マイクロエマルジョン、エアロゾル、粉末、顆粒、サシェ、ソフトゲル、錠剤、丸剤、カプレット及びカプセルから選択される、液体、エアロゾル又は固体の単位剤形で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式(I)の化合物を、式(I)の化合物、免疫調整剤、免疫抑制剤、ステロイド、抗痙攣薬、鎮痛剤、抗うつ剤、筋肉弛緩剤、抗痙縮薬、抗振戦薬、三環系抗うつ剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、モノアミン酸化酵素阻害薬(MOI)、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン(BZD)、抗コリン剤、β遮断剤、下剤、及び特定のチャンネル遮断薬からなる群からそれぞれ独立に選択し得る1種又は複数の第2の薬剤と同時投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記治療薬の同時投与が、単一の組合せ組成物、実質的に同時に投与される別々の個別組成物、及び別々のスケジュールで投与される別々の個別組成物から選択される投与計画で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の薬剤が、IFN−β、IFN−β−la、IFN−β−lb、酢酸ガラティラメル、アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、プレドニゾン及びメチルプレドニゾロンからなる群からそれぞれ独立に選択され得る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ふるえ、痙縮、筋衰弱、及び調整の欠如からなる群から選択される神経学的症状の予防、緩和又は治療の方法であって、それを必要とする個体に、活性成分として、式(I)の化合物:
【化2】


[式中、
C−4がSであり、C−1及びC−5における陽子が互いの関係においてシス形であり、C−4及びC−5における陽子がトランス形である、特定の立体化学を有し、
は、
(a)O又はS、
(b)C(R’)(式中、R’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、シアノ、−OR”、−N(R”)、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”又はC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、C(O)R’’’、C(O)N(R’’’)、C(S)R’’’、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR’’’、及びC〜Cアルキル−N(R’’’)からなる群から選択され、式中、R’’’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキルからなる群から選択される)、及び
(c)NR”又はN−OR”(式中、R”は先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
及びRは、それぞれ独立に、
(a)−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−S(O)(O)NR”(式中、出現するごとに、R”は、先に定義した通りである)、
(b)−S(O)R、−S(O)(O)R(式中、Rは、水素、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”、及びC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、先に定義した通りである)、及び
(c)−C(O)OH、−S(O)(O)OR、又は−P(O)(ORで終端された−OC(O)OH、−OS(O)(O)OR、−OP(O)(OR、OR又は−OC(O)−R鎖(式中、Rは、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルであり、Rは、出現するごとに、水素からなる群から選択され、Rは、先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
は、
(a)R(式中、Rは、水素、ハロゲン、OR’’’、OC(O)R’’’、C(O)OR’’’、C(O)R’’’、OC(O)OR’’’、CN、N(R’’’)、NC(O)R’’’、NC(O)OR’’’、C(O)N(R’’’)、NC(O)N(R’’’)及びSR’’’からなる群から選択され、式中、出現するごとに、R’’’は先に定義した通りである)、
(b)飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル−R(式中、Rは先に定義した通りである)、
(c)Rにより任意の位置で更に置換し得る芳香族環(式中、Rは先に定義した通りである)、及び
(d)(c)で定義した通り更に置換し得る芳香族環によって場合によっては終端された、飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル
からなる群から選択される]
及びその医薬上許容されるその塩、エステル又は溶媒和物を含む医薬組成物の経口で有効な量を投与するステップを含む方法。
【請求項13】
が、Oであり、R及びRが、それぞれORであり、式中、Rが、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、−R及び−C(O)−Rからなる群から選択され、式中、Rが、−C(O)ORで終端された、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル鎖であり、Rが、水素及び飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルからなる群から選択され、Rは、飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル−Rからなる群から選択され、式中、Rは、R、及び先に定義した通り、Rによって任意の位置を場合によっては更に置換し得る芳香族環からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
が、Oであり、R及びRが、それぞれ独立に、OH、スクシネート、フマレート、及びメチレンオキシカルボキシルからなる群から選択され、Rが、1,1−ジメチルペンチル、1,1−ジメチルヘプチル、1,1−ジメチル−6−ヘプチニル、1,1−ジメチル−3−フェニルプロピル、1,1,3−トリメチルブチル、1−(4−クロロフェニル)−1−メチルエチル、1−エチル−1−メチルプロピル、5−ブロモ−1,1−ジメチルペンチル及び1,1−ジメチルペント−4−エニルからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
が、Oであり、Rが、OHであり、Rが、フマレートであり、Rが、1,1−ジメチルヘプチルである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記医薬組成物が、医薬上許容される担体、希釈剤又は賦形剤を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
式(I)の活性成分が、1日に1から4回の投薬計画で、体重1kg当たり約0.05から約50mgの1日量で投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記医薬組成物が、経口の(peroral)、粘膜の、口腔内の、歯肉の、舌側の、舌下の、又は口咽頭の投与によって経口(orally)投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記医薬組成物が、溶液、懸濁液、ミセル、乳濁液、マイクロエマルジョン、エアロゾル、粉末、顆粒、サシェ、ソフトゲル、錠剤、丸剤、カプレット及びカプセルから選択される、液体、エアロゾル又は固体の単位剤形で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
式(I)の化合物を、式(I)の化合物、免疫調整剤、免疫抑制剤、ステロイド、抗痙攣薬、鎮痛剤、抗うつ剤、筋肉弛緩剤、抗痙縮薬、抗振戦薬、三環系抗うつ剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、モノアミン酸化酵素阻害薬(MOI)、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン(BZD)、抗コリン剤、β遮断剤、下剤、及び特定のチャンネル遮断薬からなる群からそれぞれ独立に選択し得る1種又は複数の第2の薬剤と同時投与することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記治療薬の同時投与が、単一の組合せ組成物、実質的に同時に投与される別々の個別組成物、及び別々のスケジュールで投与される別々の個別組成物から選択される投与計画で行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
炎症メディエーターの調節方法であって、それを必要とする個体に、活性成分として、式(I)の化合物:
式I
【化3】


[式中、
C−4がSであり、C−1及びC−5における陽子が互いの関係においてシス形であり、C−4及びC−5における陽子がトランス形である、特定の立体化学を有し、
は、
(a)O又はS、
(b)C(R’)(式中、R’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、シアノ、−OR”、−N(R”)、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”又はC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、C(O)R’’’、C(O)N(R’’’)、C(S)R’’’、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR’’’、及びC〜Cアルキル−N(R’’’)からなる群から選択され、式中、R’’’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキルからなる群から選択される)、及び
(c)NR”又はN−OR”(式中、R”は先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
及びRは、それぞれ独立に、
(a)−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−S(O)(O)NR”(式中、出現するごとに、R”は、先に定義した通りである)、
(b)−S(O)R、−S(O)(O)R(式中、Rは、水素、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”、及びC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、先に定義した通りである)、及び
(c)−C(O)OH、−S(O)(O)OR、又は−P(O)(ORで終端された−OC(O)OH、−OS(O)(O)OR、−OP(O)(OR、OR又は−OC(O)−R鎖(式中、Rは、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルであり、Rは、出現するごとに、水素からなる群から選択され、Rは、先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
は、
(a)R(式中、Rは、水素、ハロゲン、OR’’’、OC(O)R’’’、C(O)OR’’’、C(O)R’’’、OC(O)OR’’’、CN、N(R’’’)、NC(O)R’’’、NC(O)OR’’’、C(O)N(R’’’)、NC(O)N(R’’’)及びSR’’’からなる群から選択され、式中、出現するごとに、R’’’は先に定義した通りである)、
(b)飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル−R(式中、Rは先に定義した通りである)、
(c)Rにより任意の位置で更に置換し得る芳香族環(式中、Rは先に定義した通りである)、及び
(d)(c)で定義した通り更に置換し得る芳香族環によって場合によっては終端された、飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル
からなる群から選択される]
及びその医薬上許容される塩、エステル又は溶媒和物を含む医薬組成物の経口で有効な量を投与するステップを含む方法。
【請求項23】
前記調節された炎症のメディエーターが、炎症性関連遺伝子、サイトカイン、ケモカイン、カンナビノイド受容体、STATシグナル伝達体、JAKキナーゼ、ミクログロブリン、TNF−α及び受容体スーパーファミリー、カルモジュリン、サイクリン依存キナーゼ、CB、IL−Iβ、IFN−γ、iNOS及びMCP−1からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
が、Oであり、R及びRが、それぞれORであり、式中、Rが、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、−R及び−C(O)−Rからなる群から選択され、式中、Rが、−C(O)ORで終端された、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル鎖であり、Rが、水素及び飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルからなる群から選択され、Rは、飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル−Rからなる群から選択され、式中、Rは、R、及び先に定義した通り、Rによって任意の位置を場合によっては更に置換し得る芳香族環からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
が、Oであり、R及びRが、それぞれ独立に、OH、スクシネート、フマレート、及びメチレンオキシカルボキシルからなる群から選択され、Rが、1,1−ジメチルペンチル、1,1−ジメチルヘプチル、1,1−ジメチル−6−ヘプチニル、1,1−ジメチル−3−フェニルプロピル、1,1,3−トリメチルブチル、1−(4−クロロフェニル)−1−メチルエチル、1−エチル−1−メチルプロピル、5−ブロモ−1,1−ジメチルペンチル及び1,1−ジメチルペント−4−エニルからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
が、Oであり、Rが、OHであり、Rが、フマレートであり、Rが、1,1−ジメチルヘプチルである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
活性成分として、経口で有効な式(I)の化合物:
【化4】


[式中、C−4がSであり、C−1及びC−5における陽子が互いの関係においてシス形であり、C−4及びC−5における陽子がトランス形である、特定の立体化学を有し、
は、
(a)O又はS、
(b)C(R’)(式中、R’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、シアノ、−OR”、−N(R”)、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”又はC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、C(O)R’’’、C(O)N(R’’’)、C(S)R’’’、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR’’’、及びC〜Cアルキル−N(R’’’)からなる群から選択され、式中、R’’’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキルからなる群から選択される)、及び
(c)NR”又はN−OR”(式中、R”は先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
及びRは、それぞれ独立に、
(a)−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−S(O)(O)NR”(式中、出現するごとに、R”は、先に定義した通りである)、
(b)−S(O)R、−S(O)(O)R(式中、Rは、水素、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”、及びC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、先に定義した通りである)、及び
(c)−C(O)OH、−S(O)(O)OR、又は−P(O)(ORで終端された−OC(O)OH、−OS(O)(O)OR、−OP(O)(OR、OR又は−OC(O)−R鎖(式中、Rは、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルであり、Rは、出現するごとに、水素からなる群から選択され、Rは、先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
は、
(a)R(式中、Rは、水素、ハロゲン、OR’’’、OC(O)R’’’、C(O)OR’’’、C(O)R’’’、OC(O)OR’’’、CN、N(R’’’)、NC(O)R’’’、NC(O)OR’’’、C(O)N(R’’’)、NC(O)N(R’’’)及びSR’’’からなる群から選択され、式中、出現するごとに、R’’’は先に定義した通りである)、
(b)飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル−R(式中、Rは先に定義した通りである)、
(c)Rにより任意の位置で更に置換し得る芳香族環(式中、Rは先に定義した通りである)、及び
(d)(c)で定義した通り更に置換し得る芳香族環によって場合によっては終端された、飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル
からなる群から選択される]
及びその医薬上許容される塩、エステル又は溶媒和物を含む医薬組成物の多発性硬化症の予防、緩和又は治療のための使用。
【請求項28】
が、Oであり、R及びRが、それぞれORであり、式中、Rが、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、−R及び−C(O)−Rからなる群から選択され、式中、Rが、−C(O)ORで終端された、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル鎖であり、Rが、水素及び飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルからなる群から選択され、Rが、飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル−Rからなる群から選択され、式中、Rは、R、及び先に定義した通り、Rによって任意の位置を場合によっては更に置換し得る芳香族環からなる群から選択される、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
が、Oであり、R及びRが、それぞれ独立に、OH、スクシネート、フマレート、及びメチレンオキシカルボキシルからなる群から選択され、Rが、1,1−ジメチルペンチル、1,1−ジメチルヘプチル、1,1−ジメチル−6−ヘプチニル、1,1−ジメチル−3−フェニルプロピル、1,1,3−トリメチルブチル、1−(4−クロロフェニル)−1−メチルエチル、1−エチル−1−メチルプロピル、5−ブロモ−1,1−ジメチルペンチル及び1,1−ジメチルペント−4−エニルからなる群から選択される、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
が、Oであり、Rが、OHであり、Rが、フマレートであり、Rが、1,1−ジメチルヘプチルである、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記医薬組成物が、医薬上許容される担体、希釈剤又は賦形剤を更に含む、請求項27に記載の使用。
【請求項32】
式(I)の活性成分が、1日に1から4回の投与計画で、体重1kg当たり約0.05から約50mgの1日量で投与される、請求項27に記載の使用。
【請求項33】
前記医薬組成物が、経口(peroral)の、粘膜の、口腔内の、歯肉の、舌側の、舌下の、又は口咽頭の投与によって経口(orally)投与される、請求項27記載の使用。
【請求項34】
前記医薬組成物が、溶液、懸濁液、ミセル、乳濁液、マイクロエマルジョン、エアロゾル、粉末、顆粒、サシェ、ソフトゲル、錠剤、丸剤、カプレット及びカプセルから選択される、液体、エアロゾル又は固体の単位剤形で投与される、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
式(I)の化合物を、式(I)の化合物、免疫調整剤、免疫抑制剤、ステロイド、抗痙攣薬、鎮痛剤、抗うつ剤、筋肉弛緩剤、抗痙縮薬、抗振戦薬、三環系抗うつ剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、モノアミン酸化酵素阻害薬(MOI)、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン(BZD)、抗コリン剤、β遮断剤、下剤、及び特定のチャンネル遮断薬からなる群からそれぞれ独立に選択し得る1種又は複数の第2の薬剤と同時投与することを更に含む、請求項27に記載の使用。
【請求項36】
前記治療薬の同時投与が、単一の組合せ組成物、実質的に同時に投与される別々の個別組成物、及び別々のスケジュールで投与される別々の個別組成物から選択される投与計画で行われる、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記第2の薬剤が、IFN−β、IFN−β−la、IFN−β−lb、酢酸ガラティラメル、アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、プレドニゾン及びメチルプレドニゾロンからなる群からそれぞれ独立に選択され得る、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
活性成分として、経口で有効な式(I)の化合物:
【化5】


[式中、
C−4がSであり、C−1及びC−5における陽子が互いの関係においてシス形であり、C−4及びC−5における陽子がトランス形である、特定の立体化学を有し、
は、
(a)O又はS、
(b)C(R’)(式中、R’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、シアノ、−OR”、−N(R”)、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”又はC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、C(O)R’’’、C(O)N(R’’’)、C(S)R’’’、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR’’’、及びC〜Cアルキル−N(R’’’)からなる群から選択され、式中、R’’’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキルからなる群から選択される)、及び
(c)NR”又はN−OR”(式中、R”は先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
及びRは、それぞれ独立に、
(a)−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−S(O)(O)NR”(式中、出現するごとに、R”は、先に定義した通りである)、
(b)−S(O)R、−S(O)(O)R(式中、Rは、水素、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”、及びC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、先に定義した通りである)、及び
(c)−C(O)OH、−S(O)(O)OR、又は−P(O)(ORで終端された−OC(O)OH、−OS(O)(O)OR、−OP(O)(OR、OR又は−OC(O)−R鎖(式中、Rは、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルであり、Rは、出現するごとに、水素からなる群から選択され、Rは、先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
は、
(a)R(式中、Rは、水素、ハロゲン、OR’’’、OC(O)R’’’、C(O)OR’’’、C(O)R’’’、OC(O)OR’’’、CN、N(R’’’)、NC(O)R’’’、NC(O)OR’’’、C(O)N(R’’’)、NC(O)N(R’’’)及びSR’’’からなる群から選択され、式中、出現するごとに、R’’’は先に定義した通りである)、
(b)飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル−R(式中、Rは先に定義した通りである)、
(c)Rにより任意の位置で更に置換し得る芳香族環(式中、Rは先に定義した通りである)、及び
(d)(c)で定義した通り更に置換し得る芳香族環によって場合によっては終端された、飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル
からなる群から選択される]
及びその医薬上許容される塩、エステル又は溶媒和物を含む医薬組成物の、ふるえ、痙縮、筋衰弱、及び調整の欠如からなる群から選択される神経学的症状の予防、緩和又は治療のための使用
【請求項39】
が、Oであり、R及びRが、それぞれORであり、式中、Rが、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、−R及び−C(O)−Rからなる群から選択され、式中、Rが、−C(O)ORで終端された、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル鎖であり、Rが、水素及び飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルからなる群から選択され、Rは、飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル−Rからなる群から選択され、式中、Rは、R、及び先に定義した通り、Rによって任意の位置を場合によっては更に置換し得る芳香族環からなる群から選択される、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
が、Oであり、R及びRが、それぞれ独立に、OH、スクシネート、フマレート、及びメチレンオキシカルボキシルからなる群から選択され、Rは、1,1−ジメチルペンチル、1,1−ジメチルヘプチル、1,1−ジメチル−6−ヘプチニル、1,1−ジメチル−3−フェニルプロピル、1,1,3−トリメチルブチル、1−(4−クロロフェニル)−1−メチルエチル、1−エチル−1−メチルプロピル、5−ブロモ−1,1−ジメチルペンチル及び1,1−ジメチルペント−4−エニルからなる群から選択される、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
が、Oであり、Rが、OHであり、Rが、フマレートであり、Rが、1,1−ジメチルヘプチルである、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
前記医薬組成物が、医薬上許容される担体、希釈剤又は賦形剤を更に含む、請求項38に記載の使用。
【請求項43】
式(I)の活性成分が、1日1から4回の投与計画で、体重1kg当たり約0.05から約50mgの1日量で投与される、請求項38に記載の使用。
【請求項44】
前記医薬組成物が、経口の(peroral)、粘膜の、口腔内の、歯肉の、舌側の、舌下の、又は口咽頭の投与によって経口(orally)投与される、請求項38に記載の使用。
【請求項45】
前記医薬組成物が、溶液、懸濁液、ミセル、乳濁液、マイクロエマルジョン、エアロゾル、粉末、顆粒、サシェ、ソフトゲル、錠剤、丸剤、カプレット及びカプセルから選択される、液体、エアロゾル又は固体の単位剤形で投与される、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
式(I)の化合物を、式(I)の化合物、免疫調整剤、免疫抑制剤、ステロイド、抗痙攣薬、鎮痛剤、抗うつ剤、筋肉弛緩剤、抗痙縮薬、抗振戦薬、三環系抗うつ剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、モノアミン酸化酵素阻害薬(MOI)、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン(BZD)、抗コリン剤、β遮断剤、下剤、及び特定のチャンネル遮断薬からなる群からそれぞれ独立に選択し得る1種又は複数の第2の薬剤と同時投与することを更に含む、請求項38に記載の使用。
【請求項47】
前記治療薬の同時投与が、単一の組合せ組成物、実質的に同時に投与される別々の個別組成物、及び別々のスケジュールで投与される別々の個別組成物から選択される投与計画で行われる、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
活性成分として、経口で有効な式(I)の化合物:
【化6】


[式中、C−4がSであり、C−1及びC−5における陽子が互いの関係においてシス形であり、C−4及びC−5における陽子がトランス形である、特定の立体化学を有し、
は、
(a)O又はS、
(b)C(R’)(式中、R’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、シアノ、−OR”、−N(R”)、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”又はC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、C(O)R’’’、C(O)N(R’’’)、C(S)R’’’、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR’’’、及びC〜Cアルキル−N(R’’’)からなる群から選択され、式中、R’’’は、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和、直鎖、分枝若しくは環式C〜C12アルキルからなる群から選択される)、及び
(c)NR”又はN−OR”(式中、R”は先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
及びRは、それぞれ独立に、
(a)−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−S(O)(O)NR”(式中、出現するごとに、R”は、先に定義した通りである)、
(b)−S(O)R、−S(O)(O)R(式中、Rは、水素、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル、C〜Cアルキル−OR”、及びC〜Cアルキル−N(R”)からなる群から選択され、式中、R”は、先に定義した通りである)、及び
(c)−C(O)OH、−S(O)(O)OR、又は−P(O)(ORで終端された−OC(O)OH、−OS(O)(O)OR、−OP(O)(OR、OR又は−OC(O)−R鎖(式中、Rは、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルであり、Rは、出現するごとに、水素からなる群から選択され、Rは、先に定義した通りである)
からなる群から選択され;
は、
(a)R(式中、Rは、水素、ハロゲン、OR’’’、OC(O)R’’’、C(O)OR’’’、C(O)R’’’、OC(O)OR’’’、CN、N(R’’’)、NC(O)R’’’、NC(O)OR’’’、C(O)N(R’’’)、NC(O)N(R’’’)及びSR’’’からなる群から選択され、式中、出現するごとに、R’’’は先に定義した通りである)、
(b)飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル−R(式中、Rは先に定義した通りである)、
(c)Rにより任意の位置で更に置換し得る芳香族環(式中、Rは先に定義した通りである)、及び
(d)(c)で定義した通り更に置換し得る芳香族環によって場合によっては終端された、飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル
からなる群から選択される]
及びその医薬上許容される塩、エステル又は溶媒和物を含む医薬組成物の炎症のメディエーターを調節するための使用。
【請求項49】
前記調節された炎症のメディエーターが、炎症性関連遺伝子、サイトカイン、ケモカイン、カンナビノイド受容体、STATシグナル伝達体、JAKキナーゼ、ミクログロブリン、TNF−α及び受容体スーパーファミリー、カルモジュリン、サイクリン依存キナーゼ、CB、IL−Iβ、IFN−γ、iNOS及びMCP−1からなる群から選択される、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
が、Oであり、R及びRが、それぞれORであり、式中、Rが、出現するごとにそれぞれ独立に、水素、−R及び−C(O)−Rからなる群から選択され、式中、Rが、−C(O)ORで終端された、飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキル鎖であり、Rが、水素及び飽和若しくは不飽和で、直鎖若しくは分枝のC〜Cアルキルからなる群から選択され、Rは、飽和若しくは不飽和で、直鎖、分枝若しくは環式のC〜C12アルキル−Rからなる群から選択され、式中、Rは、R、及び先に定義した通り、Rによって任意の位置を場合によっては更に置換し得る芳香族環からなる群から選択される、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
が、Oであり、R及びRが、それぞれ独立に、OH、スクシネート、フマレート、及びメチレンオキシカルボキシルからなる群から選択され、Rは、1,1−ジメチルペンチル、1,1−ジメチルヘプチル、1,1−ジメチル−6−ヘプチニル、1,1−ジメチル−3−フェニルプロピル、1,1,3−トリメチルブチル、1−(4−クロロフェニル)−1−メチルエチル、1−エチル−1−メチルプロピル、5−ブロモ−1,1−ジメチルペンチル及び1,1−ジメチルペント−4−エニルからなる群から選択される、請求項50に記載の使用。
【請求項52】
が、Oであり、Rが、OHであり、Rが、フマレートであり、Rが、1,1−ジメチルヘプチルである、請求項51に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−517901(P2008−517901A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537472(P2007−537472)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000231
【国際公開番号】WO2006/043260
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(503001735)ファーモス コーポレイション (4)
【Fターム(参考)】