説明

絶縁樹脂組成物、及び支持体付絶縁フィルム

【課題】本発明は、低熱膨張係数を有し、且つ銅との接着力に優れる絶縁樹脂組成物、及びその半硬化物を支持体表面に形成してなる支持体付き絶縁フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】絶縁樹脂組成物の全固形分中、(A)エポキシ樹脂が10〜30質量%、(B)フェノール性水酸基含有ポリアミドイミドが35〜65質量%、(C)フェノキシ樹脂が3〜20質量%、及び(D)無機フィラーが5〜38質量%含まれる絶縁樹脂組成物。さらに(E)架橋ゴム粒子を含有しても良い。
及び前記絶縁樹脂組成物の半硬化状態のフィルムが支持体の表面に形成されている支持体付絶縁フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁樹脂組成物、及び支持体付き絶縁フィルムに関する。さらに詳しくは、低熱膨張係数を有し、かつ銅との接着力に優れた絶縁樹脂組成物、及び支持体付き絶縁フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な多層配線板の製造手法としては、片面又は両面に内層回路を形成した絶縁基板上に、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸し、半硬化状態にした材料(プリプレグ)を銅箔と重ねて、熱プレスにより積層一体化し、その後、ドリルで層間接続用のスルーホールと呼ばれる穴をあけ、スルーホール内壁と銅箔表面上に無電解めっきを行って、必要ならば、更に電解めっきを行って回路導体として必要な厚さとした後、不要な銅を除去して多層配線板を製造する方法が挙げられる。
しかしながら、近年、電子機器の小型化、軽量化、多機能化が一段と進み、これに伴って、LSIやチップ部品などの高集積化が進み、その形態も多ピン化、及び小型化へと急速に変化している(非特許文献1参照)。このため、電子部品の実装密度を向上するために、多層配線板の微細配線化の開発が進められている。これらの要求に合致する多層配線板の製造手法として、ガラスクロスを含まない絶縁樹脂を、プリプレグの代わりに絶縁層として用い、必要な部分のみをビアホールで接続しながら、配線層を形成するビルドアップ構造の多層配線板が、軽量化や小型化、微細化に適した手法として主流になりつつある。
【0003】
さらに、前記ビルドアップ構造の多層基板において、高密度化をするために層数の増加とともに、ビア部分のフィルド化、スタック化が進んでいる(非特許文献2参照)。
しかしながら、多層配線板の薄型化のためにガラスクロスを含まない絶縁樹脂層は、熱膨張係数が大きい傾向を示すため、フィルド化、スタック化したビアの銅との熱膨張係数の差が接続信頼性に大きく影響し、信頼性の懸念材料になっている。
以上のようなことから、絶縁樹脂には熱膨張係数の小さい材料が要求されるようになってきた。又、微細配線化に伴って、樹脂と金属の接触面積が減少するため、樹脂―金属界面の高接着化が必要となってきた。
【0004】
電子機器に用いられているプリント配線板のはんだ付けには、従来、鉛−錫を用いた共晶はんだが使用されていた。しかし、環境問題の高まりと共に、鉛の人体、環境への影響を考慮し、脱鉛化が急速に進行している。
一般的に、鉛フリーはんだの溶融温度は、従来の鉛−錫系よりも高くなっている(210〜230℃)。そのため、従来、一般的に使用されていたプリント配線板用材料(FR−4)では、リフロー工程での基板の膨れの発生、又は絶縁信頼性が低下するという問題があった。
このため、基板に使用する樹脂のガラス転移温度(Tg)を高くするか、又は充填材の凝集を防ぎながら充填材を多量に添加するといった手法がとられている(特許文献1参照)。
しかし、従来の高Tgの基板では、260℃前後のリフロー試験において膨れが発生してしまうという問題点、或いはシリカに代表される高硬度の充填材を高充填すると、打抜き加工性が悪化するという問題があった。
【0005】
【非特許文献1】2005年度版日本実装技術ロードマップ、電子情報技術産業協会、pp168-169
【非特許文献2】エレクトロニクス実装学会誌、vol.10、No.5、pp342-343、(2007)
【特許文献1】特開2002−80624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低熱膨張係数を有し、且つ銅との接着力に優れる絶縁樹脂組成物、及びその半硬化物を支持体表面に形成してなる支持体付き絶縁フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはこのような問題を解決するために研究を進めた結果、絶縁樹脂組成物として、エポキシ樹脂と、低い熱膨張係数を持つフェノール性水酸基含有ポリアミドイミドと、接着性の高いフェノキシ樹脂と、無機フィラーを必須として含むことにより、高接着性と低熱膨張係数を確保できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下を要旨とするものである。
1.(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール性水酸基含有ポリアミドイミド、(C)フェノキシ樹脂、及び(D)無機フィラーを含有することを特徴とする絶縁樹脂組成物。
2.前記絶縁樹脂組成物の全固形分中の含有量として、(A)エポキシ樹脂が10〜30質量%、(B)フェノール性水酸基含有ポリアミドイミドが35〜65質量%、(C)フェノキシ樹脂が3〜20質量%、及び(D)無機フィラーが5〜38質量%である前記1に記載の絶縁樹脂組成物。
3.前記絶縁樹脂組成物が、さらに(E)架橋ゴム粒子を含有する前記1又は2に記載の絶縁樹脂組成物。
4.(A)エポキシ樹脂と(E)架橋ゴム粒子との固形分質量比が80/20〜98/2である上記3に記載の絶縁樹脂組成物。
5.上記1〜4のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物の半硬化状態のフィルムが支持体の表面に形成されていることを特徴とする支持体付絶縁フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低熱膨張係数を有し、且つ銅との接着力に優れる絶縁樹脂組成物、及びその半硬化物を支持体表面に形成してなる支持体付き絶縁フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本発明における絶縁樹脂組成物について説明する。
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール性水酸基含有ポリアミドイミド、(C)フェノキシ樹脂、及び(D)無機フィラーを含有する絶縁樹脂組成物である。
ここで、(A)成分であるエポキシ樹脂とは、分子中に1つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であり、2〜多官能基エポキシ樹脂が挙げられる。
このうち、5官能以上の多官能エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールビフェニレンノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、及びアラルキル型エポキシ樹脂などが、4官能エポキシ樹脂としては、テトラグリシジルメタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、及びテトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂などが、3官能エポキシ樹脂としては、トリグリシジルイソシアヌレート、又はトリフェニルグリシジルエーテルメタン型エポキシ樹脂などが、又、2官能エポキシ樹脂としては2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、及び両者の中間的性格を有するビスフェノールADなどが挙げられる。
エポキシ樹脂は、上記に限定されるものではなく、又、数種類を同時に用いても良い。
前記エポキシ樹脂の配合量は、溶剤を除いた絶縁樹脂組成物の全固形分中の割合で10〜30質量%であるのが好ましい。10質量%以上とすることにより、必要な金属との接着強度が得られ、30質量%以下とすることにより低熱膨張係数を保つことができる。
【0011】
(B)フェノール性水酸基含有ポリアミドイミドとは、分子構造中に、アミド基、イミド基の他に、エポキシ樹脂と反応性のあるフェノール性水酸基を有する高分子である。
ポリアミドイミド樹脂は、イミド環に起因した低熱膨張化・高ガラス転移温度(Tg)化が容易なこと、アミド基に起因した金属類との高接着性を示すこと、及び溶剤に可溶なことなどから、多くの研究が行われている。又、ポリアミドイミド樹脂の製造方法としては、例えば、無水トリメリット酸と、芳香族ジイソシアネートとを反応させる工程を備える、いわゆるイソシアネート法が知られている。このイソシアネート法の応用例としては、特許2897186号公報及び特開平4−182466号公報に記載のように、芳香族トリカルボン酸無水物と芳香族ジアミンとをジアミン過剰条件で反応させ、次いでジイソシアネートを反応させる方法がある。
(B)フェノール性水酸基含有ポリアミドイミドは、上記の方法で製造される一般のポリアミドイミドの特性を損なうことなく、さらにエポキシ樹脂と反応可能なフェノール性水酸基を導入したものである。フェノール性水酸基の導入方法として、例えば上記公報記載の方法において、芳香族トリカルボン酸無水物と芳香族ジアミンとを、前記ジアミンが過剰な条件下で反応させ、次いでジイソシアネートを反応させる際に、同時にフェノール性水酸基を有する芳香族ジカルボン酸、例えば,ヒドロキシイソフタル酸などを共重合させる方法などがある。
(B)フェノール性水酸基含有ポリアミドイミドの含有量は、溶剤を除いた絶縁樹脂組成物の全固形分中で35〜65質量%であることが好ましい。35質量%以上とすることにより、樹脂の熱膨張係数を低く保つことができ、65質量%以下とすることにより、金属めっき時に緻密な粗化形状を保つことができるからである。
【0012】
(C)フェノキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリン、又はジグリシジルエ−テルより合成される、分子構造中にフェノキシ基を持ち、分子量が10000以上の高分子量樹脂であり、その他のエポキシ樹脂と構造が似ていることから相溶性が良く、又接着性も良好な特徴を有する。
(C)フェノキシ樹脂の含有量は、溶剤を除いた絶縁樹脂組成物の全固形分中で3〜20質量%にするのが好ましい。3質量%以上とすることにより、金属との高接着化に寄与することが可能となり、20質量%以下とすることにより、低熱膨張係数を保持し、また高い引張り強度を保つことができるからである。
【0013】
(D)無機フィラーとしては、例えばシリカ、溶融シリカ、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、エーロジル、炭酸カルシウムなどが挙げられる。これらは単独でも、あるいは混合して用いても良い。なお、難燃性や低熱膨張の点から水酸化アルミニウム又はシリカを単独、あるいはそれらを併用して用いるのが好ましい。これらの無機フィラーは、分散性を高める目的にカップリング剤で表面処理しても良く、ニーダー、ボールミル、ビーズミル、3本ロールなど既知の混練方法により分散しても良い。
このうち、カップリング剤としては、シランカップリング剤が例示され、シランカップリング剤としては、具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2−(2,3−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのようなエポキシ基含有シラン;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル(メチル)ジメトキシシランのようなアミノ基含有シラン;3−(トリメトキシリル)プロピルテトラメチルアンモニウムクロリドのようなカチオン性シラン;ビニルトリエトキシシランのようなビニル基含有シラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのようなアクリル基含有シラン;及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有シランなどが挙げられる。
(D)無機フィラーの含有量は、溶剤を除いた絶縁樹脂組成物の全固形分中で5〜38質量%にするのが好ましい。さらに好ましくは、30〜38質量%であり、5質量%以上では低熱膨張化効果が大きくなり、又38質量%以下にすることにより、粗化後の表面粗さが大きくならずに微細粗化形状となることや、樹脂伸び率が低下し、金属との接着強度が弱くなることがなくなる。又、半硬化樹脂の取り扱い性が良くなる。
【0014】
次に、本発明において、さらに(E)架橋ゴム粒子を配合することが望ましい。このような架橋ゴムは、硬化後の絶縁樹脂を高強靭化し、めっきによって形成した配線との接強度を向上させる効果を有する。又、このような架橋ゴム粒子は、半硬化フィルムの耐折り曲げ性の向上にも寄与するため、取り扱い性が向上する利点もある。
(E)架橋ゴム粒子としては、例えばアクリロニトリルとブタジエンの共重合物、具体的にはアクリロニトリルとブタジエンとを共重合したアクリロニトリルブタジエンゴム粒子(NBR)や、アクリロニトリルとブタジエンとアクリル酸などのカルボン酸とを共重合したカルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ポリブタジエンやNBRをコアとし、アクリル酸誘導体をシェルとした、ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコア−シェル粒子、及びエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンからなるエチレン・αーオレフィン共重合体を含有する架橋性ゴム状重合体粒子などが使用可能である。
(E)架橋ゴム粒子の含有量は(A)エポキシ樹脂と(E)架橋ゴムの固形分配合比(質量比、以下同じ。)が80/20〜98/2であるのが好ましい。
固形分配合比を80/20以上とすることにより、必要なはんだ耐熱性が得られ、又低い熱膨張係数を維持することができる。又98/2以下とすることにより、絶縁樹脂硬化物の強靭性を維持することができる。
【0015】
本発明で用いられる絶縁樹脂組成物においては、(B)フェノール性水酸基含有ポリアミドイミドが(A)エポキシ樹脂の硬化剤としての作用があるが、必要に応じ、他の硬化剤を添加することができる。他の硬化剤としては、各種フェノール樹脂類、酸無水物類、アミン類、ヒドラジット類などが使用できる。
フェノール樹脂類としては、2官能型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂などが使用でき、酸無水物類としては、無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルハイミック酸などが使用でき、アミン類としては、第1級〜3級アミンなどが上げられ、第1級アミンとしては、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、グアニル尿素などが挙げられる。第2級アミンとしては、モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−アルキルアリールアミン、ピペラジン、ジアリルアミン、チアゾリン、チオモルホリンなどが挙げられる。
又、第3級アミンとしては、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2、4、6−トリス(ジアミノメチル)フェノールなどが挙げられる。
これらのうちで、回路導体との接着性から、ジシアンジアミドが好ましく、耐熱性や絶縁性も考慮すると、ジシアンジアミドとノボラックフェノールを併用することがさらに好ましい。
硬化剤の使用量は、(B)フェノール性水酸基含有ポリアミドイミドを含めた合計量として、(A)エポキシ樹脂のエポキシ基に対して、0.5〜1.5当量であるのが好ましい。エポキシ基に対して0.5当量以上とすることにより、低い熱膨張係数を保つことができ、1.5当量以下とすることにより粗化後の凹凸が小さくなるので、微細配線形成に好適である。
【0016】
又、本発明で用いられる絶縁樹脂組成物においては、硬化剤の他に、必要に応じて反応促進剤を添加することができる。反応促進剤としては、潜在性の熱硬化剤である各種イミダゾール類やBF3アミン錯体が使用できる。
イミダゾール系化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンなどが挙げられる。
これらの中で、好ましくは、絶縁樹脂組成物の保存安定性や、Bステージ状(半硬化状)の絶縁樹脂組成物の取り扱い性、及びはんだ耐熱性の点から、2−フェニルイミダゾールや2−エチル−4−メチルイミダゾールが好ましく、その配合量はエポキシ樹脂の配合量に対して0.2〜0.6質量%程度が最適である。0.2質量%以上とすることにより、硬化度を上げて低い熱膨張係数を維持することができ、かつ粗化量を小さく抑えて微細配線形成に好適であり、0.6質量%以下とすることにより、絶縁樹脂組成物の保存安定性や半硬化状の絶縁樹脂組成物の取り扱い性が良好である。
【0017】
本発明における絶縁樹脂組成物は、前記必須成分及び任意成分の他に、通常の多層プリント配線板用樹脂組成物に使用されるチキソ性付与剤、界面活性剤、及びカップリング剤などの各種添加剤を適宜配合できる。前記添加剤を用いる際には、充分に撹拌した後、気泡がなくなるまで静置することにより、絶縁樹脂組成物を得ることができる。
【0018】
本発明における絶縁樹脂組成物の使用に際しては、溶剤中で混合して、希釈又は分散させてワニスの形態とするのが作業性の点で好ましい。この溶剤には、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、アセトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチルエトキシプロピオネート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどを使用できる。これらの溶剤は、単独あるいは混合系でも良い。
溶剤使用量は、前記樹脂組成物の塗膜形成の設備にあわせて、その使用量を調整すれば良い。例えば絶縁樹脂組成物のワニスをコンマコータでキャリアフィルムや金属箔に塗工する場合は、ワニス中の固形分濃度が30〜60質量%となるように溶剤の使用量を調節することが好ましい。
【0019】
次に、本発明の支持体付き絶縁フィルムは、上述の絶縁樹脂組成物の半硬化状態のフィルム(以下、「半硬化フィルム」という。)が支持体の表面に形成されてなるものである。
半硬化フィルムが表面に形成される支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、さらには離型紙や銅箔、アルミニウム箔などの金属箔を用いることができる。支持体には、コロナ処理や離型処理を施してあっても良い。支持体の厚さは、通常、10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmである。
【0020】
支持体付き絶縁フィルムを得るには、例えば、絶縁樹脂組成物のワニスを前記のように作製し、このワニスを支持体上に塗布し、乾燥して半硬化にする方法が挙げられる。又、ワニスを支持体上に塗布する場合は、コンマコータ、バーコータ、キスコータ、及びロールコーターなどが、塗布厚によって適宜使用される。塗布厚、塗布後の乾燥条件などは使用目的に合わせて適宜選択されるため、特に制限するものではないが、一般にワニスに使用した溶剤が80質量%以上揮発する条件とすることが好ましい。
【0021】
本発明における絶縁樹脂層の熱膨張係数は40ppm/K以下が好ましい。なお、下限は、他の特性に支障が生じない限り、特に制限するものではない。40ppm/Kよりも大きいと、熱サイクル試験などの温度変化で、銅との熱膨張係数の差により、絶縁樹脂内部にクラックや、ビア内のめっき銅にクラックが発生しやすくなる傾向があり、接続信頼性に大きく影響する。
【実施例】
【0022】
次に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に制限されるものではない。
実施例及び比較例で作製した絶縁樹脂組成物の硬化物、支持体付絶縁フィルムについて、熱膨張係数、接着強度、288℃はんだ耐熱性試験、及び引張り試験を以下の方法で実施した。
【0023】
(1) 熱膨張係数
各実施例及び比較例で得た支持体付絶縁フィルムを銅箔にラミネートし、180℃で1時間乾燥後、銅箔を除去して試験片を作製し、熱膨張係数を測定した。測定は、TMA2940サーモメカニカルアナライザー(株式会社TAインスツルメンツ社製、商品名)を用い、試料を幅3mmに切断し、昇温速度10℃/分、測定長8mm、荷重5g、の条件下に、引張り法で測定した。その際、1ラン目は250℃まで加熱して硬化物のひずみを除去し、−30℃まで冷却した後、再度300℃まで加熱して、その熱膨張量と試験片の長さから、30〜120℃の熱膨張係数を算出した。
(2)樹脂―金属接着強度(ピール強度)
各実施例及び比較例で作製した樹脂付積層板のめっき表層の一部に、幅10mm、長さ100mmの部分を形成し、この一端をめっき銅層/樹脂界面で剥がしてつかみ具でつかみ、室温中で垂直方向に、引張り速度約50mm/分で引き剥がした時の荷重を測定した。
(3)288℃はんだ耐熱性
各実施例及び比較例で作製した樹脂付BF板を25mm角に切断し、288±2℃に調整したはんだ浴に浮かべ、ふくれが発生するまでの時間を調べた。
(4)引張り試験
各実施例及び比較例で作製した樹脂硬化フィルムを、幅10mm、長さ80mmに切断し、両端10mmを治具ではさみ、強靭性試験機(島津製作所製、商品名:オートグラフAG−100C)を用い、樹脂の伸び率を調べた。
【0024】
製造例1(フェノール性水酸基含有ポリアミドイミドAの製造)
窒素雰囲気下、ディーンスターク還流冷却器、温度計及び撹拌器を備えた2Lのセパラブルフラスコに、芳香族ジアミン化合物である2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン (商品名、BAPP、和歌山精化工業(株)社製)30.8g、無水トリメリット酸(TMA)28.9g、及び非プロトン性極性溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP) 230g を投入して反応溶液とし、これを80℃で30分間撹拌して溶媒に溶解させた。
続いて、反応溶液に、水と共沸可能な芳香族炭化水素であるトルエン200mLを加え、160℃で2時間還流した。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認後、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、反応溶液の温度をさらに180℃まで上昇させて、反応溶液中のトルエンを除去した。
その後、反応溶液を室温まで冷却してから、5−ヒドロキシイソフタル酸9.1g、2,4−ジヒドロキシ安息香酸7.1g、及びジイソシアネートである4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)37.6gを加え、反応溶液を170℃に上昇させて2時間反応させ、フェノール性水酸基含有ポリアミドイミド樹脂AのNMP溶液を得た。得られたフェノール性水酸基含有ポリアミドイミド樹脂Aを表1記載の条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)でMwを測定したところ、Mwは22,000であり、理論上のフェノール当量は654であった。
【0025】
製造例2(フェノール性水酸基非含有ポリアミドイミドBの製造)
ディーンスターク還流冷却器、温度計及び撹拌器を備えた2Lのセパラブルフラスコに、芳香族ジアミン化合物である2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン〕〔和歌山精化工業(株)社製、商品名:BAPP〕30.8g、無水トリメリット酸(TMA)28.9g及び非プロトン性極性溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP) 230g を投入して反応溶液とし、これを80℃で30分間撹拌した。
続いて、反応溶液に水と共沸可能な芳香族炭化水素であるトルエン200mLを加え、160℃ で2時間還流した。水分定量受器に理論量の水が得られ、水の流出が見られなくなっていることを確認後、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、反応溶液の温度をさらに190℃ まで上昇させて、反応溶液中のトルエンを除去した。
その後、反応溶液を室温まで冷却してから、ジイソシアネートである、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)22.5gを加え、反応溶液を170℃ に加熱して2時間反応させ、フェノール性水酸基含有ポリアミドイミド樹脂AのNMP溶液を得た。得られたフェノール性水酸基含有ポリアミドイミド樹脂Aのゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)での分子量(Mw)は25,000であった。
【0026】
【表1】

【0027】
実施例1
(1)基板厚0.8mm、銅厚18μmの、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(日立化成工業株式会社製、商品名MCL-E−67)の片面にエッチングを施して、片面に内層回路を有する基板を作製した。
(2)下記組成の絶縁樹脂組成物のワニスを作製した。この絶縁樹脂組成物のワニスをPETフィルム(支持体)上に塗工し、130℃下で5分間乾燥して膜厚40±3μmの支持体付絶縁フィルムのロールを作製した。さらに、この支持体付絶縁フィルムと前記回路板を、半硬化フィルムを回路板の内層回路と接する面側にして重ね、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機株式会社製、商品名:MVLP−500)を用いて積層した。
[組成]
・(A)ビフェニル構造及びノボラック構造を有したエポキシ樹脂(日本化薬
株式会社社製、商品名:NC3000S−H) 25質量部
・(B)フェノール性水酸基含有ポリアミドイミド樹脂AのNMP溶液(固形
分30質量%) 54質量部
・(C)フェノキシ樹脂:(東都化成製、商品名:FX-293) 5質量部
・(D)無機フィラー:球状シリカ(株式会社アドマテックス社製、商品名:
アドマファインSO−25R) 80質量部
・反応促進剤:2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名
2PZ) 0.2質量部
・硬化剤:アミノトリアジンノボラック型フェノール(大日本インキ化学工業株
式会社製、商品名:LA3018) 2質量部
・溶剤:N−メチルピロリドン 25質量部
【0028】
(3)次に、支持体のPETフィルムを剥がした後、180℃下で60分間の硬化条件で前記半硬化フィルムを硬化して絶縁層を得た。
(4)絶縁層を化学粗化するために、膨潤液として、ジエチレングリコールモノブチルエーテル:200ml/L、NaOH:5g/Lの水溶液を作製し、70℃に加温して5分間浸漬処理した。次に、粗化液として、KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液を作製し、80℃に加温して10分間浸漬処理した。引き続き、中和液(SnCl2:30g/L、HCl:300ml/L)の水溶液に室温で5分間浸漬処理して中和した。
(5)絶縁層表面にめっき層を形成するために、まず、塩化パラジウム(PdCl2)を含む無電解めっき用触媒(日立化成工業株式会社製、商品名:HS−202B)に、室温で10分間浸漬処理し、水洗し、無電解銅めっき用であるめっき液(日立化成工業株式会社製、商品名:CUST−201)に室温で15分間浸漬し、さらに硫酸銅電解めっきを行った。その後、アニールを180℃下で60分間行い、絶縁層表面に厚さ25μmの導体層を形成した。得られた絶縁樹脂組成物の硬化物についての性能評価結果を表2に示す。
【0029】
実施例2
実施例1において、エポキシ樹脂(NC−3000S−H)を20質量部とビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:JER−806)5質量部とした以外は、実施例1と同様にして行った。
性能評価結果を表2に示す。
【0030】
実施例3
実施例1において、配合量は同一のまま、(E)粒子状NBR(JSR株式会社、商品名:XER−91)1質量部を加えた。その他は実施例1と同様にして行った。性能評価結果を表2に示す。
【0031】
実施例4
実施例1において、配合量は同一のまま、(C)フェノキシ樹脂をFX-280(東都化成製、商品名)に置き換えた。その他は実施例1と同様にして行った。性能評価結果を第2表に示す。
【0032】
実施例5
実施例3において、配合量は同一のまま(E)成分を、ブタジエン−アクリル樹脂のコアシェルゴム(EXL−2655、ローム&ハースジャパン株式会社製、商品名)に置き換えた。その他は実施例3と同様にして行った。性能評価結果を表2に示す。
【0033】
比較例1
実施例1において、(B)フェノール性水酸基含有ポリアミドイミド樹脂Aに代えて、フェノール性水酸基非含有ポリアミドイミド樹脂B 54質量部とした。その他は実施例1と同様にして行った。性能評価結果を表2に示す。
【0034】
比較例2
実施例1において、(D)無機フィラーを添加しないで、その他は、実施例1と同様にして行った。性能評価結果を表2に示す。
【0035】
比較例3
実施例5において、(C)フェノキシ樹脂を添加しないで、その他は、実施例5と同様にして行った。性能評価結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2から、本発明の絶縁樹脂組成を用いためっき銅付積層板の特性は、実施例1〜5に示したように、熱膨張係数が低く、接着性に優れ、引張り強度も良好な結果を示す。288℃はんだ耐熱性にも優れており、環境に配慮した多層配線板を製造することが可能である。
一方、本発明の絶縁樹脂組成物の必須成分のいずれかを含んでいない比較例1−3に示す多層配線板は、熱膨張係数や接着強度やはんだ耐熱性、引張り強度が悪化する傾向が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の絶縁樹脂組成物と支持体付絶縁フィルムは、熱膨張係数が低く、銅との接着性に優れ、引張り強度も良好であるので、半導体の小型化や高密度化用の材料として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール性水酸基含有ポリアミドイミド、(C)フェノキシ樹脂、及び(D)無機フィラーを含有することを特徴とする絶縁樹脂組成物。
【請求項2】
前記絶縁樹脂組成物の全固形分中の含有量として、(A)エポキシ樹脂が10〜30質量%、(B)フェノール性水酸基含有ポリアミドイミドが35〜65質量%、(C)フェノキシ樹脂が3〜20質量%、及び(D)無機フィラーが5〜38質量%である請求項1に記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項3】
前記絶縁樹脂組成物が、さらに(E)架橋ゴム粒子を含有する請求項1又は2に記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項4】
(A)エポキシ樹脂と(E)架橋ゴム粒子との固形分質量比が80/20〜98/2である請求項3に記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の絶縁樹脂組成物の半硬化状態のフィルムが支持体の表面に形成されていることを特徴とする支持体付絶縁フィルム。

【公開番号】特開2009−270054(P2009−270054A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123414(P2008−123414)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】