説明

緊急情報表示装置

【課題】 テレビジョン放送の受信信号に含まれる緊急放送の情報や、カーナビゲーションシステムが保有し乃至は取得した情報を利用して自動的に緊急事態の状況を利用者(車両の運転者等)に表示させるに際して、その表示の態様について十分に利用者の意思を反映させることができる緊急情報表示装置を実現する。
【解決手段】 操作部121からユーザが表示条件として設定した緊急事態発生地点までの距離を判断基準にして、表示器116における表示をカーナビゲーションシステム又はテレビジョン放送の映像表示の通常画面から緊急状況表示画面に切り替える判断をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車載のテレビジョン受像機とカーナビゲーションシステムとが表示器を共有する形で構成される緊急情報表示装置に関し、特に緊急情報の表示形態に関して、ユーザの意思が十分に反映され得るようにした緊急情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用のテレビジョン受信機によって緊急放送を受信し、緊急事態に対して相応の対処をとることを支援するようなシステムが種々提案されている。一つの提案では、運転者が緊急警報放送を見逃したり聞き逃したりしてしまうといった事態を極力無くすことを目的として、緊急警報放送を受信できる放送受信装置を備え、該放送受信装置以外の他のソースからの音声/映像出力時に放送受信装置が緊急警報放送を受信したときには、放送受信装置からの音声を運転者が聴けるように処理を行なう制御手段を備えて車載型映像音響装置を構成するというものである。緊急事態の発生している位置を認識するためにカーナビゲーションシステムから得られる位置情報をも利用することが開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
また一方、車載のテレビジョン受像機で受信したテレビジョン放送の受信信号に含まれる緊急放送の情報に依拠して運転者に緊急事態に関する情報を表示するに際し、カーナビゲーションシステムの表示画面を利用して地図によって緊急事態の発生場所の表示を行うこと、及び、緊急事態の発生場所と共に自車の現在位置も併せて当該地図上に表示するといった提案もなされている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−324361号公報(段落0007〜段落0008、段落0018、図1)
【特許文献2】特開2002−288787号公報(段落0008、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の技術は、テレビジョン放送の受信信号に含まれる緊急放送の情報や、カーナビゲーションシステムが保有し乃至は取得した情報を利用して自動的に緊急事態の状況を利用者(車両の運転者等)に表示させるものであるが、種々の表示はあくまでもこれらが自動的に行われることを旨とするものであって、その表示の態様について十分に利用者の意思を反映するといった視点は皆無であるため、この点に係る考慮については課題を残すものであった。
【0005】
本発明は、上述したような従来技術において残置された課題に着目してなされたものであり、テレビジョン放送の受信信号に含まれる緊急放送の情報や、カーナビゲーションシステムが保有し乃至は取得した情報を利用して自動的に緊急事態の状況を利用者(車両の運転者等)に表示させるに際して、その表示の態様について十分に利用者の意思を反映させることができる緊急情報表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するべく、本願では次に列記するような技術を提案する。
(1)テレビジョン放送の受信信号に含まれる緊急放送であることを表す緊急指標情報を検出する緊急指標情報検出手段と、前記緊急指標情報検出手段による緊急指標情報の検出出力に応答して当該緊急放送に係る緊急事態発生地点の位置を表す発生地点情報を取得する発生地点情報取得手段と、自己の到達位置を表す到達位置情報を取得する到達位置情報取得手段と、ユーザによる緊急情報の表示条件の設定を受け付ける表示条件設定手段と、前記発生地点情報及び前記到達位置情報並びに前記表示条件に基づいて表示器における表示形態を管理する表示形態管理手段と、を備えたことを特徴とする緊急情報表示装置。
【0007】
上記(1)の緊急情報表示装置によれば、テレビジョン放送の受信信号に含まれる緊急放送であることを表す緊急指標情報を緊急指標情報検出手段で検出し、該検出の出力に応答して当該緊急放送に係る緊急事態発生地点の位置を表す発生地点情報を発生地点情報取得手段で取得し、更に、例えば、カーナビゲーションシステム等と連携する到達位置情報取得手段によって自己の到達位置を表す到達位置情報を取得し、ユーザによる緊急情報の表示条件の設定を表示条件設定手段で受け付け、前記発生地点情報及び前記到達位置情報並びに前記表示条件に基づいて、表示形態管理手段によって、表示器における表示形態を管理する。この表示形態は結果的に表示条件設定手段で受け付けたユーザによる緊急情報の表示条件の設定に沿ったものとなり、緊急情報の表示態様に関してユーザの意思が適切に反映されることになる。
【0008】
(2)前記緊急指標情報検出手段は、デジタルテレビジョン放送の信号中に含まれる緊急放送フラグの発現を常時監視し、当該緊急放送フラグが発現したことに応答して検出出力を発するように構成されていることを特徴とする(1)に記載の緊急情報表示装置。
上記(2)の緊急情報表示装置によれば、上記(1)の緊急情報表示装置による作用に加えて、緊急指標情報検出手段は、デジタルテレビジョン放送の信号中に含まれる緊急放送フラグの発現を常時監視しているため、表示器における見掛けの表示状況の如何によらず緊急放送フラグが立ったときには直ちに緊急放送が受信されたことが認識される。
【0009】
(3)前記発生地点情報取得手段は該当する緊急放送の画面に表示される緊急事態発生地点の位置を表す文字情報を解析してカーナビゲーションシステムのデータベースに登録されている地名の文字データとを照合することによって発生地点情報を取得するように構成されていることを特徴とする(1)に記載の緊急情報表示装置。
上記(3)の緊急情報表示装置によれば、上記(1)の緊急情報表示装置による作用に加えて、画面に表示される緊急事態発生地点の位置を表す文字情報とカーナビゲーションシステムの保有する地名の文字データとの照合に基づいて緊急事態の発生地点が割り出される。この場合、その発生地点は、カーナビゲーションシステムにおける地点コードや緯度・経度等によって的確に認識され得る。
【0010】
(4)前記発生地点情報取得手段は該当する緊急放送の音声に含まれる緊急事態発生地点の位置を表す音声情報を解析してカーナビゲーションシステムのデータベースに登録されている地名の音声データとを照合することによって発生地点情報を取得するように構成されていることを特徴とする(1)に記載の緊急情報表示装置。
上記(4)の緊急情報表示装置によれば、上記(1)の緊急情報表示装置による作用に加えて、緊急放送の音声に含まれる緊急事態発生地点の位置を表す音声情報とカーナビゲーションシステムの保有する地名の音声データとの照合に基づいて緊急事態の発生地点が割り出される。この場合、その発生地点は、カーナビゲーションシステムにおける地点コードや緯度・経度等によって的確に認識され得る。
【0011】
(5)前記到達位置情報取得手段は、自己に接続されたカーナビゲーションシステムの出力に基づいて前記到達位置情報を取得するように構成されていることを特徴とする(1)に記載の緊急情報表示装置。
上記(5)の緊急情報表示装置によれば、上記(1)の緊急情報表示装置による作用に加えて、到達位置情報取得手段が自己に接続されたカーナビゲーションシステムの出力に基づいて前記到達位置情報を取得する。既に普及し測位能力の高いカーナビゲーションシステムによる測位情報を到達位置たる自己の現在(乃至未来の)位置の把握に利用するため、精度の高い到達位置情報を取得することができる。
【0012】
(6)前記表示条件設定手段は、自己の位置と緊急事態の発生地点の位置との距離に応じて表示器の画面をカーナビゲーション表示又はテレビジョン放送受信画面である通常表示画面から緊急状況を表示する緊急表示画面に切り替えるための基準とする基準距離を設定するように構成されていることを特徴とする(1)に記載の緊急情報表示装置。
上記(6)の緊急情報表示装置によれば、上記(1)の緊急情報表示装置による作用に加えて、利用者(車両の運転者等)が走行する地域に関する土地勘や当該車両に関する取り扱い方の習熟度、或いは通常走行時の速度や運転の仕方に関する癖等々を勘案して自らの意思を反映させて設定した基準距離に応じて通常表示画面から緊急状況を表示する緊急表示画面に切り替えられるようになるため、他律的に設定された画一的な基準で自動的に画面が切り替えられてしまうのに比し、利用者毎の個性に良く適合した表示切り替えがなされ得る。
【0013】
(7)前記表示条件設定手段は、自己の移動速度に応じて前記基準距離を複数通りに設定可能に構成されていることを特徴とする(6)に記載の緊急情報表示装置。
上記(7)の緊急情報表示装置によれば、上記(6)の緊急情報表示装置による作用に加えて、利用者(車両の運転者等)が自己の習慣から道路の幅員等に応じてよく用いる走行速度の領域(40Km/h,60Km/h,80Km/h等々)毎に対応して基準距離を複数通りに設定可能であるため他律的に設定された画一的な基準で自動的に画面が切り替えられてしまうのに比し、利用者毎の個性に良く適合した表示切り替えがなされ得る。
【0014】
(8)前記表示条件設定手段は、津波、地震、噴火、火災などの災害の種別に応じて前記基準距離を複数通りに設定可能に構成されていることを特徴とする(6)に記載の緊急情報表示装置。
上記(8)の緊急情報表示装置によれば、上記(6)の緊急情報表示装置による作用に加えて、津波、地震、噴火、火災などの災害の種別に応じて基準距離を複数通りに設定可能であるため、それらの災害の特質によく適合した表示切り替えがなされ得る。
【0015】
(9)前記表示条件設定手段は、自己の到達位置が属する地域の種別に応じて前記基準距離を複数通りに設定可能に構成されていることを特徴とする(6)に記載の緊急情報表示装置。
上記(9)の緊急情報表示装置によれば、上記(6)の緊急情報表示装置による作用に加えて、自己の到達位置が属する地域の種別に応じて基準距離を複数通りに設定可能であるため、到達している地域が利用者(車両の運転者等)にとって土地勘がある地域であるか否かといったような事情によく適合した表示切り替えがなされ得る。
【0016】
(10)前記表示条件設定手段は、本緊急情報表示装置が搭載された車両の車速に応じて前記基準距離を適応的に変更するモードを設定可能に構成されていることを特徴とする(6)に記載の緊急情報表示装置。
上記(10)の緊急情報表示装置によれば、上記(6)の緊急情報表示装置による作用に加えて、例えば、車両の車速が早いときに緊急事態の発生位置の方向に走行しているときには早期に緊急事態の発生地に関する情報を得るべく相対的に遠距離に設定し、反対に、車両の車速が遅いときには相対的に近距離に設定するなどして、車速に応じた的確な表示の切り替えが行われ得るような設定にすることができる。
【0017】
(11)前記表示形態管理手段は前記発生地点情報及び前記到達位置情報並びに前記表示条件に基づいて表示器における一の表示形態としての地図表示における地図の縮尺を選択的に設定するように構成されていることを特徴とする(1)に記載の緊急情報表示装置。
上記(11)の緊急情報表示装置によれば、上記(1)の緊急情報表示装置による作用に加えて、地図の縮尺を選択的に設定することによって、表示器に表示可能な限度で極力詳細な情報が表示され得る地図表示を得ることができる。
【0018】
(12)前記表示形態管理手段は前記発生地点情報及び前記到達位置情報並びに前記表示条件に基づいて表示器における一の表示形態としての地図表示における地図の縮尺を選択的に設定し、且つ、該設定を前記到達位置情報の変化と前記表示条件の設定状況とに応じて適応的に切り替えるように構成されていることを特徴とする(1)に記載の緊急情報表示装置。
上記(12)の緊急情報表示装置によれば、上記(1)の緊急情報表示装置による作用に加えて、地図の縮尺が、例えば、緊急事態発生地点に接近する程当該緊急事態発生地点付近の状況を詳細に表示する縮尺となるように予め表示条件を表示条件設定手段によって設定しておけば、前記到達位置情報によって認識される自車の現在位置に応じて、この設定に沿った的確な地図表示を得ることができる。
【0019】
(13)前記表示形態管理手段は前記発生地点情報及び前記到達位置情報並びに前記表示条件に基づいて表示器における一の表示形態としての地図表示における地図の縮尺を選択的に設定し、且つ、前記発生地点情報による緊急事態発生地点の位置と当該緊急事態発生地点に関係する主要な道路やランドマーク等の目印情報を含むことを優先して当該地図の縮尺と表示方法を選択するように構成されていることを特徴とする(1)に記載の緊急情報表示装置。
上記(13)の緊急情報表示装置によれば、上記(1)の緊急情報表示装置による作用に加えて、緊急事態の発生地点への接近の度合い等に応じて適切な縮尺での地図表示が行われる一方、緊急事態発生地点に関係する主要な道路やランドマーク等の目印情報を含むことを優先して当該地図の縮尺と表示方法とが選択されるため、一見して緊急事態発生地点の方角や距離が把握され易い表示を得ることができる。
【0020】
(14)前記表示形態管理手段は前記発生地点情報及び前記到達位置情報並びに前記表示条件に基づいて表示器における一の表示形態としての地図表示における地図の縮尺を選択的に設定し、且つ、前記発生地点情報による緊急事態発生地点の位置が前記到達位置情報による位置から所定範囲内の距離にあるときには、該範囲内にある避難所や迂回路等の避難行動支援情報を地図上に併せて表示するように構成されていることを特徴とする(1)に記載の緊急情報表示装置。
上記(14)の緊急情報表示装置によれば、上記(1)の緊急情報表示装置による作用に加えて、避難所や迂回路等の避難行動支援情報が地図上に表示されるため、実際に非難行動をとる場合の支援となる情報が得られる。
【0021】
(15)前記表示形態管理手段は前記発生地点情報及び前記到達位置情報が供給されたときには緊急事態が発生していることを認識し、該認識に基づいてVICSからの情報を取得し、表示器における一の表示形態としての地図表示に重畳して表示すると共に、VICSからの情報の取得間隔を平常時よりも短く設定するように構成されていることを特徴とする(1)に記載の緊急情報表示装置。
上記(15)の緊急情報表示装置によれば、上記(1)の緊急情報表示装置による作用に加えて、VICSから最も最近の情報を取得して緊急事態の状況の推移に沿った遅滞のない情報を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。尚、以下に参照する図においては、便宜上、説明の主題となる要部は適宜誇張し、要部以外については適宜簡略化し乃至省略されている。
図1は、本発明の一実施の形態としての緊急情報表示装置の構成を表すブロック図である。図1において、111はデジタルテレビジョン放送受信用のアンテナであり、このアンテナ111で受信した放送電波がチューナ112に供給されて選局が行われ、次段の緊急放送フラグ検出回路113に供給される。この緊急放送フラグ検出回路113はテレビジョン放送の受信信号に含まれる緊急放送であることを表す緊急指標情報(フラグ)を検出する緊急指標情報検出手段を構成するものであるが、検出した緊急指標情報と共にチューナ112で選局された映像信号を次段の画像・音声処理回路114に供給する。
【0023】
画像・音声処理回路114では、緊急放送を表すデジタルデータを表示に適合する信号に変換する。画像・音声処理回路114の出力が表示ドライバ115を介して液晶表示器等の表示器116に映像として映出される。上述の、アンテナ111、チューナ112、緊急放送フラグ検出回路113、画像・音声処理回路114、及び、表示ドライバ115を含むデジタルテレビジョン受像機としてのシステム110を統括的に制御するシステムコントローラ120が設けられ、このシステムコントローラ120には、既述の緊急放送フラグ検出回路113で検出されたフラグの検出出力が供給されることによって、システムコントローラ120は緊急放送の受信を認識する。
【0024】
尚、デジタルテレビジョン受像機としてのシステム110はこれを搭載した車両が走行しているときには、車両運行の安全上、放送番組の映像の表示は禁止するように作動するが、見かけ上は不作動状態にあっても、常時、受信動作は継続しており、従って、緊急放送の受信(その待機)は当該車両が走行しているか停止しているかによらずに常時継続的に行われている。
【0025】
GPS131とナビゲーション情報処理回路132が接続されたナビゲーションシステム(カーナビゲーションシステム)130が設けられ、このナビゲーションシステム130におけるナビゲーション情報処理回路132はシステムコントローラ120と結ばれて、デジタルテレビジョン受像機としてのシステム110とカーナビゲーションシステム130とが連係動作を行うように構成されている。
【0026】
システムコントローラ120には操作部121が接続されている。この操作部121はシステムコントローラ120の該当する機能部と共にユーザによる緊急情報の表示条件の設定を受け付ける表示条件設定手段を構成する。表示条件設定手段の詳細は後述する。
緊急指標情報検出手段としての緊急放送フラグ検出回路113による緊急指標情報たるフラグの検出出力に応答して当該緊急放送に係る緊急事態発生地点の位置を表す発生地点情報を取得する発生地点情報取得手段が、画像・音声処理回路114とシステムコントローラ120の該当する機能部とによって構成されている。
【0027】
この発生地点情報取得手段は、その一つの態様としては、テレビジョン放送の緊急放送から取得される緊急事態発生地点の位置を表す文字情報を画像・音声処理回路114とシステムコントローラ120との協働によって解析し、カーナビゲーションシステム130のデータベースに登録されている地名の文字データと照合することによって発生地点情報を取得するように構成される。この場合、その発生地点は、カーナビゲーションシステムにおける地点コードや緯度・経度等によって的確に認識され得る。
【0028】
また、発生地点情報取得手段は、その他の態様としては、緊急放送の音声に含まれる緊急事態発生地点の位置を表す音声情報を画像・音声処理回路114とシステムコントローラ120との協働によって解析し、カーナビゲーションシステム130のデータベースに登録されている地名の音声データと照合することによって発生地点情報を取得するように構成される。この場合も、その発生地点は、カーナビゲーションシステムにおける地点コードや緯度・経度等によって的確に認識され得る。
【0029】
また一方、自己の到達位置(自車の位置)を表す到達位置情報を取得する到達位置情報取得手段がカーナビゲーションシステム130とシステムコントローラ120によって構成される。このため、既に普及し測位能力の高いカーナビゲーションシステムによる測位情報を到達位置たる自己の現在(乃至未来の)位置の把握に利用するため、精度の高い到達位置情報を取得することができる。
【0030】
この場合、その到達位置(自車の位置)は、カーナビゲーションシステムにおける地点コードや緯度・経度等によって的確に認識され得る。
システムコントローラ120は、既述の発生地点情報及び到達位置情報並びに表示条件に基づいて表示器116における表示形態を管理する表示形態管理手段としても機能する。この表示形態管理手段において既述の表示条件設定手段を構成する操作部121からの種々の設定操作に応じてユーザの意思をよく反映した表示を得ることができる点は本実施の形態における顕著な特徴である。
【0031】
端的に言えば、本発明の実施の形態では、テレビジョンの映像とカーナビゲーションシステムの映像との表示を行う共通の表示器116に、本発明の装置を搭載した車両の停止時等において平常時には選局されたテレビジョン放送乃至カーナビゲーションシステムの映像を映出し、緊急放送が受信されたときには、その緊急事態の発生地点が自車両に影響しない程遠方であるときには、通常通りの画面表示を継続し、その緊急事態の発生地点が自車両にやがて影響するであろうことが懸念される程度に近いときには、緊急表示画面に切り替えるというものであって、この切り替え条件が、使用者の意思に基づいて適宜に選択的に設定可能であるというものである。
【0032】
尚、上記は自車両が停止している場合を想定したため、テレビジョン放送の番組が画面に表示され得るが、周知のとおり、車両運行の安全上の見地から、走行中では、カーナビゲーションシステムの表示画面には、テレビジョン放送の番組の表示は禁止されるように作動するため、平常時であっても、車両の走行中はカーナビゲーションシステムによる映像のみが表示され得ることになる。
【0033】
前述の通り、操作部121はシステムコントローラ120の該当する機能部と共にユーザによる緊急情報の表示条件の設定を受け付ける表示条件設定手段を構成するが、種々の態様をとることができる。
例えば、表示条件設定手段は、自己の位置(自車両の位置)と緊急事態の発生地点の位置との距離に応じて、表示器の画面をカーナビゲーション表示又はテレビジョン放送受信画面である通常表示画面から緊急状況を表示する緊急表示画面に切り替えるための基準とする基準距離を設定するように構成し得る。この場合は、利用者(車両の運転者等)が走行する地域に関する土地勘や当該車両に関する取り扱い方の習熟度、或いは通常走行時の速度や運転の仕方に関する癖等々を勘案して自らの意思を反映させて設定した基準距離に応じて通常表示画面から緊急状況を表示する緊急表示画面に切り替えられるようになるため、他律的に設定された画一的な基準で自動的に画面が切り替えられてしまうのに比し、利用者毎の個性に良く適合した表示切り替えがなされ得る。
【0034】
また、表示条件設定手段は、自己の移動速度(車速)に応じて前記基準距離を複数通りに設定可能に構成し得る。この場合は、利用者(車両の運転者等)が自己の習慣から道路の幅員等に応じてよく用いる走行速度の領域(40Km/h,60Km/h,80Km/h等々)毎に対応して基準距離を複数通りに設定可能であるため他律的に設定された画一的な基準で自動的に画面が切り替えられてしまうのに比し、利用者毎の個性に良く適合した表示切り替えがなされ得る。
【0035】
更にまた、表示条件設定手段は、津波、地震、噴火、火災などの災害の種別に応じて前記基準距離を複数通りに設定可能に構成し得る。この場合は、津波、地震、噴火、火災などの災害の種別に応じて基準距離を複数通りに設定可能であるため、それらの災害の特質によく適合した表示切り替えがなされ得る。
また、表示条件設定手段は、自己の到達位置(自車両の位置)が属する地域の種別に応じて基準距離を複数通りに設定可能に構成し得る。この場合は、自己の到達位置が属する地域の種別(例えば、都道府県、市町村、区、番地等々)に応じて基準距離を複数通りに設定可能であるため、到達している地域が利用者(車両の運転者等)にとって土地勘がある地域であるか否かといったような事情によく適合した表示切り替えがなされ得る。
【0036】
更にまた、表示条件設定手段は、本緊急情報表示装置が搭載された車両の車速に応じて前記基準距離を適応的に変更するモードを設定可能に構成し得る。この場合は、例えば、車両の車速が早いときに緊急事態の発生位置の方向に走行しているときには早期に緊急事態の発生地に関する情報を得るべく相対的に遠距離に設定し、反対に、車両の車速が遅いときには相対的に近距離に設定するなどして、車速に応じた的確な表示の切り替えが行われ得るような設定にすることができる。
【0037】
以上は、表示条件設定手段によって使用者が種々の表示条件を設定することによって使用者の意思を反映させた映像表示を得る種々の態様に関して説明したが、システムコントローラ120の該当する機能部によって実現される表示形態管理手段の種々の形態について次に説明する。
表示形態管理手段は、その一つの形態として、緊急事態の発生地点情報及び自己(自車両)の到達位置情報並びに表示条件設定手段によって設定された表示条件に基づいて、表示器116における一の表示形態としての地図表示における地図の縮尺を選択的に設定するように構成し得る。この場合は、地図の縮尺を選択的に設定することによって、表示器116に表示可能な限度で極力詳細な情報が表示され得る地図表示を得ることができる。
【0038】
また、表示形態管理手段は、その他の形態として、緊急事態の発生地点情報及び自己(自車両)の到達位置情報並びに表示条件設定手段によって設定された表示条件に基づいて表示器116における一の表示形態としての地図表示における地図の縮尺を選択的に設定し、且つ、該設定を到達位置情報(自車両の位置)の変化と上述の表示条件の設定状況とに応じて適応的に切り替えるように構成し得る。
【0039】
この場合は、地図の縮尺が、例えば、緊急事態発生地点に接近する程当該緊急事態発生地点付近の状況を詳細に表示する縮尺となるように予め表示条件を表示条件設定手段によって設定しておけば、上述の到達位置情報によって認識される自車の現在位置に応じて、この設定に沿った的確な地図表示を得ることができる。
更にまた、表示形態管理手段は、緊急事態の発生地点情報及び到達位置情報(自車両の位置情報)並びに上述の表示条件の設定状況に基づいて表示器116における一の表示形態としての地図表示における地図の縮尺を選択的に設定し、且つ、前記発生地点情報による緊急事態発生地点の位置と当該緊急事態発生地点に関係する主要な道路やランドマーク等の目印情報を含むことを優先して当該地図の縮尺と表示方法を選択するように構成し得る。
【0040】
この場合は、緊急事態の発生地点への接近の度合い等に応じて適切な縮尺での地図表示が行われる一方、緊急事態発生地点に関係する主要な道路やランドマーク等の目印情報を含むことを優先して当該地図の縮尺と表示方法とが選択されるため、一見して緊急事態発生地点の方角や距離が把握され易い表示を得ることができる。
また、表示形態管理手段は、前記発生地点情報及び前記到達位置情報並びに前記表示条件に基づいて表示器における一の表示形態としての地図表示における地図の縮尺を選択的に設定し、且つ、前記発生地点情報による緊急事態発生地点の位置が前記到達位置情報による位置から所定範囲内の距離にあるときには、該範囲内にある避難所や迂回路等の避難行動支援情報を地図上に併せて表示するように構成することができる。
【0041】
この場合は、避難所や迂回路等の避難行動支援情報が地図上に表示されるため、実際に非難行動をとる場合の支援となる有益な情報が得られる。
更にまた、表示形態管理手段は緊急事態の発生地点情報及び到達位置情報(自車両の位置情報)が供給されたときには緊急事態が発生していることを認識し、該認識に基づいてVICSからの情報を取得し、表示器116における一の表示形態としての地図表示に重畳してこの情報を表示すると共に、VICSからの情報の取得間隔を平常時よりも短く設定するように構成することができる。
【0042】
この場合は、VICSから最も最近の情報を取得して緊急事態の状況の推移に沿った遅滞のない情報を得ることができる。
図2は、図1の装置の動作の一例を表すフローチャートである。放送受信動作を継続的に実行し(ステップS201)、緊急放送のフラグが立つタイミングを監視する(ステップS202)。ステップS202で緊急放送のフラグが立ったことが認識されたときには、緊急放送内容のデータを解析する(ステップS203)。ステップS202で緊急放送のフラグが立ったことが検出されないときには放送受信動作(ステップS201)に戻る。
【0043】
ステップS203では、緊急放送内容のデータを解析して、既述のような方法で緊急事態の発生した地点の情報を得る。これに次いで、カーナビゲーションシステムにおける測位データに依拠して自車両の現在位置の情報を取得する(ステップS204)。ステップS203で取得した緊急事態の発生した地点の情報及びステップS204で取得した自車両の現在位置の情報とに基づいて認識される自車両の現在位置から緊急事態の発生した地点までの距離が、自車両に緊急事態の影響が及ぶ懸念がない程の遠距離であるか、その影響が及ぶ恐れがある近距離であるかを判断する(ステップS205)。
【0044】
ステップS205で、当該認識された距離が自車両に緊急事態の影響が及ぶ恐れがある近距離であると判断された場合には、例えば、自車両と緊急事態の発生した地点との双方が表示器の画面内に表示可能な限りで最も詳細な表示が可能な地図の縮尺を算出して選択し(ステップS206)、カーナビゲーションシステムの表示画面に切り替えて(ステップS207)、ステップS206で選択された縮尺の地図で、緊急事態発生状況を表示する(ステップS208)。一方、ステップS205で当該認識された距離が自車両に緊急事態の影響が及ぶ懸念がない程の遠距離であると判断されたときには、通常画面表示を継続する制御を行う(ステップS209)。
【0045】
図3は図2におけるステップS205の距離判断動作に関係する動作の詳細を表すフローチャートである。図2のフローチャートにおけるステップS203で取得した緊急事態の発生した地点の情報及びステップS204で取得した自車両の現在位置の情報とに基づいて、自車両の現在位置から緊急事態の発生した地点までの距離を算出する(ステップS301)。
【0046】
次いで、ステップS301で算出された自車両の現在位置から緊急事態の発生した地点までの距離が図1の操作部121から使用者によって設定された上述の基準の距離(例えば、30Km,100Km等)以内であるか否かが判断される(ステップS302)。これは、図2のフローチャートにおいてステップS205の距離判断動作の後半部分の動作に相応する。
【0047】
ステップS302でステップS301で算出された距離が基準の距離以内であると判断されたときには、次いで、現状のカーナビゲーションシステムの地図表示における縮尺のままで自車両の現在位置と緊急事態の発生した地点との双方が表示器116の画面に表示可能な状況にあるか否かが判断される(ステップS303)。
ステップS303で現状のカーナビゲーションシステムの地図表示における縮尺のままで自車両の現在位置と緊急事態の発生した地点との双方が表示器116の画面に表示可能な状況にあると判断されたときにはカーナビゲーションシステムの表示として上述の双方を含む緊急状況の画面表示を行う(ステップS304)。
【0048】
一方、ステップS302で、ステップS301で算出された距離が基準の距離以内でないと判断されたときには、緊急事態が発生した地点までの距離が自車両に緊急事態の影響が及ぶ懸念がない程の遠距離であるからそのまま通常画面表示を維持する(ステップS305)。
また、ステップS303で、現状のカーナビゲーションシステムの地図表示における縮尺のままで自車両の現在位置と緊急事態の発生した地点との双方が表示器116の画面に表示可能な状況にないと判断されたときには、これら双方の地点が表示器116の画面に表示可能となるような地図の縮尺を選択して(ステップS306)、その縮尺によってカーナビゲーションシステムの地図表示による緊急表示を行う。
【0049】
以上を総じて、本発明の実施の形態によれば、テレビジョン放送の受信信号に含まれる緊急放送の情報や、カーナビゲーションシステムが保有し乃至は取得した情報を利用して自動的に緊急事態の状況を利用者(車両の運転者等)に表示させるに際して、その表示の態様について十分に利用者の意思を反映させることができる緊急情報表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態としての緊急情報表示装置の構成を表すブロック図である。
【図2】図1の装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【図3】図2における距離判断動作に関係する動作の詳細を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
110…デジタルテレビジョン受像機としてのシステム 111…アンテナ 112…チューナ 113…緊急放送フラグ検出回路 114…画像・音声処理回路 115…表示ドライバ 116…表示器 120…システムコントローラ 121…操作部 130…ナビゲーションシステム(カーナビゲーションシステム) 131…GPS 132…ナビゲーション情報処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレビジョン放送の受信信号に含まれる緊急放送であることを表す緊急指標情報を検出する緊急指標情報検出手段と、前記緊急指標情報検出手段による緊急指標情報の検出出力に応答して当該緊急放送に係る緊急事態発生地点の位置を表す発生地点情報を取得する発生地点情報取得手段と、自己の到達位置を表す到達位置情報を取得する到達位置情報取得手段と、ユーザによる緊急情報の表示条件の設定を受け付ける表示条件設定手段と、前記発生地点情報及び前記到達位置情報並びに前記表示条件に基づいて表示器における表示形態を管理する表示形態管理手段と、を備えたことを特徴とする緊急情報表示装置。
【請求項2】
前記緊急指標情報検出手段は、デジタルテレビジョン放送の信号中に含まれる緊急放送フラグの発現を常時監視し、当該緊急放送フラグが発現したことに応答して検出出力を発するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の緊急情報表示装置。
【請求項3】
前記発生地点情報取得手段は該当する緊急放送の画面に表示される緊急事態発生地点の位置を表す文字情報を解析してカーナビゲーションシステムのデータベースに登録されている地名の文字データとを照合することによって発生地点情報を取得するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の緊急情報表示装置。
【請求項4】
前記発生地点情報取得手段は該当する緊急放送の音声に含まれる緊急事態発生地点の位置を表す音声情報を解析してカーナビゲーションシステムのデータベースに登録されている地名の音声データとを照合することによって発生地点情報を取得するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の緊急情報表示装置。
【請求項5】
前記到達位置情報取得手段は、自己に接続されたカーナビゲーションシステムの出力に基づいて前記到達位置情報を取得するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の緊急情報表示装置。
【請求項6】
前記表示条件設定手段は、自己の位置と緊急事態の発生地点の位置との距離に応じて表示器の画面をカーナビゲーション表示又はテレビジョン放送受信画面である通常表示画面から緊急状況を表示する緊急表示画面に切り替えるための基準とする基準距離を設定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の緊急情報表示装置。
【請求項7】
前記表示条件設定手段は、自己の移動速度に応じて前記基準距離を複数通りに設定可能に構成されていることを特徴とする請求項6に記載の緊急情報表示装置。
【請求項8】
前記表示条件設定手段は、津波、地震、火災などの災害の種別に応じて前記基準距離を複数通りに設定可能に構成されていることを特徴とする請求項6に記載の緊急情報表示装置。
【請求項9】
前記表示条件設定手段は、自己の到達位置が属する地域の種別に応じて前記基準距離を複数通りに設定可能に構成されていることを特徴とする請求項6に記載の緊急情報表示装置。
【請求項10】
前記表示条件設定手段は、本緊急情報表示装置が搭載された車両の車速に応じて前記基準距離を適応的に変更するモードを設定可能に構成されていることを特徴とする請求項6に記載の緊急情報表示装置。
【請求項11】
前記表示形態管理手段は前記発生地点情報及び前記到達位置情報並びに前記表示条件に基づいて表示器における一の表示形態としての地図表示における地図の縮尺を選択的に設定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の緊急情報表示装置。
【請求項12】
前記表示形態管理手段は前記発生地点情報及び前記到達位置情報並びに前記表示条件に基づいて表示器における一の表示形態としての地図表示における地図の縮尺を選択的に設定し、且つ、該設定を前記到達位置情報の変化と前記表示条件の設定状況とに応じて適応的に切り替えるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の緊急情報表示装置。
【請求項13】
前記表示形態管理手段は前記発生地点情報及び前記到達位置情報並びに前記表示条件に基づいて表示器における一の表示形態としての地図表示における地図の縮尺を選択的に設定し、且つ、前記発生地点情報による緊急事態発生地点の位置と当該緊急事態発生地点に関係する主要な道路やランドマーク等の目印情報を含むことを優先して当該地図の縮尺と表示方法を選択するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の緊急情報表示装置。
【請求項14】
前記表示形態管理手段は前記発生地点情報及び前記到達位置情報並びに前記表示条件に基づいて表示器における一の表示形態としての地図表示における地図の縮尺を選択的に設定し、且つ、前記発生地点情報による緊急事態発生地点の位置が前記到達位置情報による位置から所定範囲内の距離にあるときには、該範囲内にある避難所や迂回路等の避難行動支援情報を地図上に併せて表示するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の緊急情報表示装置。
【請求項15】
前記表示形態管理手段は前記発生地点情報及び前記到達位置情報が供給されたときには緊急事態が発生していることを認識し、該認識に基づいてVICSからの情報を取得し、表示器における一の表示形態としての地図表示に重畳して表示すると共に、VICSからの情報の取得間隔を平常時よりも短く設定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の緊急情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−235911(P2006−235911A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48643(P2005−48643)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】