説明

置換ヒドロキシエチルアミン

本発明は、本明細書で定義される式Iの化合物に関する。この式Iの化合物は、例えば、1,3-セクレターゼの阻害によって処置され得る障害又は状態を処置するために使用され得る。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書に記載の式Iの化合物、このような化合物を含む薬学的組成物、及びこのような化合物を用いて、アルツハイマー病を含む本明細書に記載の障害又は状態を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、主に老化に関連した脳の進行性変性疾患である。ADは、記憶、認知、推理、判断及び見当識の欠損によって特徴付けられている。疾患が進行するにつれて、多数の認知機能が広範に損なわれるまでに、運動、感覚及び言語の能力がまた影響を受ける。これらの認知欠損は、徐々にではあるが典型的には重篤な障害を導き、そして4〜12年の範囲で最終的には死を招く。
【0003】
アルツハイマー病は、脳内の2つの主要な病理学的知見、すなわち:Aβペプチド又はAβとして公知であり、そして本明細書ではAβというペプチドフラグメントの凝集体で主に構成される神経原線維変化及びβアミロイド(又は神経炎性)斑によって特徴付けられている。ADを有する個体は、脳内及び大脳血管内に特徴的なAβ沈着(それぞれβアミロイド斑及びβアミロイド血管障害)、並びに神経原線維変化を示す。神経原線維変化は、アルツハイマー病だけではなく他の痴呆誘導障害においてもまた生じる。剖検の際に、多数のこれらの病変が、記憶及び認知に重要なヒト脳領域に広く見出されている。より限定された解剖学的分布においては、より少数のこれらの病変が、臨床ADを有さない大多数の老齢のヒト脳に見出されている。アミロイド形成斑及び血管のアミロイド血管障害はまた、トリソミー(ダウン症侯群)、オランダ型アミロイドーシスによる遺伝性の大脳出血及び他の神経変性障害を有する個体の脳を特徴付けている。βアミロイドは、ADの発達の原因となる前駆体、すなわち要因であると考えられている。認知活動を担う脳領域のβアミロイド沈着は、ADの発達に重要な要因であると考えられている。βアミロイド斑は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)のタンパク質分解によって誘導され、そして39〜42アミノ酸を含むAβ(また時折βAともいわれる)から主に構成されている。セクレターゼと呼ばれるいくつかのプロテアーゼは、APPのプロセシングに関与している。
【0004】
βセクレターゼによりAβのN末端でAPPを切断すること、及び1つ又はそれ以上のγセクレターゼによりC末端でAPPを切断することは、βアミロイド形成経路、すなわちAβが形成される経路を構成する。αセクレターゼによるAPPの切断は、α−sAPPというβアミロイド斑形成を生じないAPP Iの分泌形態を生産する。この別の経路は、Aβの形成を妨げる。APPフラグメントをタンパク質分解によりプロセシングするという記述は、例えば米国特許第5,441,870号;同第255,721,130号;及び同第5,942,400号に見出される。
【0005】
アスパルチルプロテアーゼは、βセクレターゼ切断部位でAPPのプロセシングを担う酵素として同定されている。このβセクレターゼ酵素は、BACE、Asp及びメマプシン(Memapsin)を含む種々の用語を用いて開示されている。例えば、Sinhaら、1999、Nature 402:537−554(p501)及び公開されたPCT出願番号WO00/17369を参照のこと。
【0006】
いくつかの証拠筋は、Aβの進行性大脳沈着が、ADの病因に重要な役割を果たしており、そして認知症状よりも数年又は数10年先行し得ることを示している。例えば、Selkoe、1991、Neuron 6:487を参照のこと。培養物中で成長する神経細胞からAβが放出されること、並びに正常な個体及びAD患者の両方の脳脊髄液(CSF)中にAβが存在することが示されている。例えば、Seubertら、1992、Nature 359:325−327を参照のこと。Aβは、βセクレターゼによるAPPプロセシングの結果として蓄積しており、従ってこの酵素活性を阻害することが、ADの処置に望ましいと提案されている。
【0007】
βセクレターゼ切断部位でのAPPのインビボプロセシングは、Aβ生産の律速段階と考えられており、従ってこれは、ADの処置に対する治療標的である。例えば、Sabbagh,M.ら、1997、Alz.Dis.Rev.3、1 19を参照のこと。BACE1ノックアウトマウスは、Aβを生産することができず、そして正常な表現型を示している。APPを過剰発現するトランスジェニックマウスと交配すると、この子孫は、コントロール動物と比較して、脳抽出物中のAβ量が減少していることを示している(Luoら、2001 Nature Neuroscience 4:231−232)。この証拠は、βセクレターゼ活性の阻害及び脳内Aβの減少が、AD及び他のβアミロイド障害を処置するための治療方法を提供するという提案ををさらに支持している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在、アルツハイマー病の進行を停止、予防又は逆転させるための有効な治療は存在しない。従って、アルツハイマー病の進行を遅らせ得るかそして/又はまず第一にアルツハイマー病を予防し得る薬剤に対する差し迫った必要性が存在する。例えば、βセクレターゼの有効な阻害剤であり、APPのβセクレターゼ媒介切断を阻害し、Aβ生産の有効な阻害剤であり、そして/又はアミロイドβ沈着若しくは斑を減少させるに有効な化合物が、アミロイドβ沈着若しくは斑によって特徴付けられる疾患、例えばADの処置及び予防に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、次の式Iの化合物又はその薬学的に受容可能な塩に関する。
【化1】

【0010】
式中、
Wは、(i)H、ハロゲン、CN、NO2、OH、O−C1−C8アルキル、NH2、NH−C1−C8アルキル、N(C1−C8アルキル)2、NHCO−C1−C8アルキル及びCONH−C1−C8アルキルから各々独立して選択される1〜3の置換基で場合により置換されるC6−C10アリール、並びに(ii)H、ハロゲン、CN、NO2、OH、O−C1−C8アルキル、NH2、NH−C1−C8アルキル、N(C1−C8アルキル)2、NHCO−C1−C8アルキル及びCONH−C1−C8アルキルから各々独立して選択される1〜3の置換基で場合により置換されるC5−C10ヘテロアリールからなる群より選択され、
【0011】
1は、3つまでのフルオロ原子で場合により置換されるC1−C6アルキル、例えば−CH22、CHF2又は−CF3であり;
5及びR6は、H、C1−C8アルキル、C2−C8アルケニル、C3−C8アルキニル、C3−C8シクロアルキル、5〜10員のヘテロアリール及びC6−C14アリールからなる群より各々独立して選択され;
pは、0〜1であり、
【0012】
【化2】

は、単結合又は二重結合を表すものであり、但し
【化3】

が二重結合であるならば、Xは、N、C(C1−C6アルキル)又はOであるものとし、但しXがOであり、そしてpが1ならば、R10は存在しないものとし;そして但し
【化4】

が単結合であるならば、Xは、C0−C6アルキレン、C(=C1−C6アルキリデン)、C(=N−O−C1−C6アルキル)、C(=N−C1−C6アルキル)、C=O、NH、NC1−C6アルキル又はOであるものとし;そして
【0013】
10は、H、C1−C6アルキル、−OH、−O−C1−C6アルキル、−CO−C1−C6アルキル、−COO−C1−C6アルキル、−NH−C1−C6アルキル、−N(C1−C6アルキル)−C1−C6アルキル、−CO−N(C1−C6アルキル)−C1−C6アルキル、5〜10員のヘテロアリール、5〜10員のヘテロシクロアルキル、C6−C14アリール、S(O)q1−C6アルキル及びS(O)q6−C10アリールからなる群より選択される。
【0014】
本発明はまた、次に挙げるものに関する:
例えば、βセクレターゼを阻害することによって治療され得る障害又は状態を治療するための薬学的組成物であって、この組成物は、式Iの化合物又はその薬学的に受容可能な塩及び薬学的に受容可能な担体を含むものであること;
βセクレターゼを阻害することによって治療され得る障害又は状態を治療する方法であって、この方法は、このような治療を必要とする哺乳動物に、式Iの化合物又はその薬学的に受容可能な塩を投与することを含むものであること;
【0015】
例えば、アルツハイマー病(AD)、軽い認知障害、ダウン症侯群、オランダ型アミロイドーシスによる遺伝性の大脳出血、脳のアミロイド血管症、血管及び変性が原因の混合性痴呆、パーキンソン病関連性痴呆、進行性核上麻痺関連性痴呆、皮質基底変性関連性痴呆、多発梗塞性痴呆、アルコール性痴呆若しくは他の薬物関連痴呆、頭蓋内腫瘍若しくは大脳外傷関連性痴呆、ハンチントン病関連性痴呆又はAIDS関連性痴呆、びまん性レヴィー小体型アルツハイマー病、振せん麻痺を伴う前頭側頭痴呆(FTDP)、封入体筋細胞増加症(myocytis)、核上白内障、加齢性黄斑変性(AMD)、ハンチントン病、パーキンソン病、不穏下肢症候群、脳卒中、頭部外傷、脊髄損傷、神経系の脱髄疾患、末梢ニューロパチー、前立腺上皮内腫瘍(pin)、脳のアミロイドアンギオパチー、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、ドーパミンアゴニスト治療関連性ジスキネジー、精神遅滞、学習障害(読解障害、数学障害又は筆記表現障害を含む)、加齢性の認知低下、健忘障害、神経弛緩薬誘導性振せん麻痺、遅発性ジスキネジー、ツレット症候群、多発性硬化症並びに急性及び慢性の神経変性障害からなる群より選択される障害又は状態を治療するための薬学的組成物であって、この組成物は、式Iの化合物又はその薬学的に受容可能な塩及び薬学的に受容可能な担体を含むものであること;
【0016】
本明細書に列挙される障害又は状態からなる群より選択される障害又は状態を治療する方法であって、この方法は、このような治療を必要とする哺乳動物に、式Iの化合物又はその薬学的に受容可能な塩を投与することを含むものであること;
【0017】
ADの発症を予防若しくは遅延させるか、もしそうでなければ軽い認知障害(MCI)からADへと進行することが予想される患者のADの発症を予防若しくは遅延させるか、又は脳のアミロイド血管症の潜在的な重要性、例えば単独及び再発性の葉性出血を予防するための薬学的組成物であって、この組成物は、式Iの化合物又はその薬学的に受容可能な塩及び薬学的に受容可能な担体を投与することを含むものであること;並びに
【0018】
ADの発症を予防若しくは遅延させるか、もしそうでなければMCIからADへと進行することが予想される患者のADの発症を予防若しくは遅延させるか、又は脳のアミロイド血管症の潜在的な重要性、例えば単独及び再発性の葉性出血を予防する方法であって、この方法は、このような治療を必要とする患者に、式Iの化合物又はその薬学的に受容可能な塩を投与することを含むものであること。
【0019】
本発明はまた、薬剤の製造のための式Iの化合物又は塩の使用を提供する。
本発明はまた、アミロイド前駆体タンパク質(APP)のβセクレターゼ媒介切断を阻害する化合物、薬学的組成物、キット及び方法を提供し、この方法は、このような治療を必要とする患者に、式Iの化合物又はその薬学的に受容可能な塩を投与することを含むものである。とりわけ、本発明の化合物、組成物及び方法は、Aβ生産の阻害、及びAβの病理学的形態に関連したすべてのヒト又は家畜の疾患又は状態を治療又は予防するに有効である。
【0020】
本発明の化合物は、βセクレターゼ阻害活性を有する。本発明の化合物のこの阻害活性は、例えば本明細書に記載されるか又は当該分野で公知の1つ又はそれ以上のアッセイを用いて容易に示される。
本発明はまた、本発明の化合物の製造方法、及びこの方法に使用される中間体を提供する。
本発明はまた、1つ又はそれ以上の容器を含む容器キットを含み、各容器は、式(I)の化合物又はその薬学的に受容可能な塩の1つ又はそれ以上の単位用量を含むものである。
【0021】
本発明の薬学的組成物及び方法はまた、本明細書に記載されている障害又は状態のいずれかの再発予防に使用され得る。このような再発予防は、このような予防を必要とする哺乳動物に、式Iの化合物又はその薬学的に受容可能な塩を投与することによって果たされ、そしてこれは、治療方法として考えられる。
【0022】
本発明の化合物は、光学的中心を有することもあり、従って異なる鏡像異性体配置で存在し得る。上記の式Iは、構造的な式Iで示された化合物のすべての鏡像異性体、ジアステレオマー及び他の立体異性体、並びにそのラセミ混合物及び他の混合物を含む。個々の異性体は、公知の方法、例えば最終生成物又はその中間体の製造物を光学分割、光学選択反応又はクロマトグラフ分離することによって得られ得る。
【0023】
PET又はSPECTによって検出され得るように同位体標識された式Iの化合物を含む式Iの同位体標識化合物又はその薬学的に受容可能な塩はまた、本発明の範囲内である。
式Iの化合物のシス及びトランス異性体又はその薬学的に受容可能な塩はまた、本発明の範囲内である。
式Iの化合物又はその薬学的に受容可能な塩の互変異性体はまた、本発明の範囲内である。
【0024】
第一の基又は置換基が、2つ又はそれ以上の基又は置換基で置換されるとき、本発明は、このような基又は置換基の組み合わせが存在する実施態様を限定せずに含むものとする。
第一の基又は置換基が、2つ又はそれ以上の基又は置換基で置換されるとき、このような置換基の数は、置換に利用される第一の基又は置換基の位置数を超えないはずであることは勿論である。
【0025】
用語「アルキル」は、直鎖又は分枝した飽和炭化水素ラジカルをいう。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。用語「アルケニル」は、1つ又はそれ以上の炭素−炭素二重結合を有する直鎖又は分枝した炭化水素ラジカル、例えばビニル、アリル、ブテニルなどを表すために使用される。用語「アルキニル」は、1つ又はそれ以上の炭素−炭素三重結合を有する直鎖又は分枝した炭化水素ラジカル、例えばエチニル、プロパルギル、1−ブチニル、2−ブチニルなどを表すために使用される。
【0026】
「アリール」は、芳香環上の炭素から水素を除去することによって、芳香族炭化水素から誘導される有機ラジカルを意味する。「芳香族炭化水素」は、少なくとも1つが芳香族である1つ又はそれ以上の環を有する炭化水素(例えば、フェニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、ナフチル)を意味する。本発明の好ましいアリール基は、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インダニル、インデニル、ジヒドロナフチル、フルオレニル、テトラリニル又は6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾ[a]シクロヘプテニルである。本明細書のアリール基は、置換されないかもしれないし、1、2、3又は4の置換可能な位置において種々の置換基で置換されるかもしれない。このような置換基としては、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C1−C6)アルキルアミノ、ジ(C1−C6)アルキルアミノ、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、C1−C6ハロアルキル、C1−C6ハロアルコキシ、アミノ(C1−C6)アルキル、モノ(C1−C6)アルキルアミノ(C1−C6)アルキル又はジ(C1−C6)アルキルアミノ(C1−C6)アルキルが挙げられる。
【0027】
用語「アルコキシ」及び「アリールオキシ」は、それぞれ「O−アルキル」及び「O−アリール」を表す。
用語「シクロアルキル」は、環炭素から水素を除去することによって、飽和炭素環化合物から形成されるラジカルを表す。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられる。本明細書で使用される用語「シクロアルキル」はまた、少なくとも2つの縮合環を含む飽和炭素環から形成されるラジカル、例えばアダマンタニル、デカヒドロナフタリニル、ノルボルナニルなどを表すことを意図する。
【0028】
用語「ハロ」は、クロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードを表す。
用語「ヘテロアリール」は、芳香環上の炭素から水素を除去することによって、ヘテロ芳香族炭化水素から誘導される有機ラジカルを表し、ここで「ヘテロ芳香族炭化水素」は、窒素、酸素及び硫黄からなる群より選択される1つ又はそれ以上の環へテロ原子を含む芳香族炭化水素である。このヘテロアリール基が、1を超えるヘテロ原子を含む場合、このヘテロ原子は、同一かもしれないし異なるかもしれない。好ましいヘテロアリール基としては、酸素、窒素及び硫黄から独立して選択される1〜4のヘテロ原子を含む5員及び6員環が挙げられる。好ましい5員及び6員のヘテロアリール基の例としては、ベンゾ[b]チエニル、クロメニル、フリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、オキサジニル、オキサゾリル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キノリジニル、キノリル、キノキサリニル、チアゾリル、チエニル、トリアジニル、トリアゾリル、テトラゾリル及びキサンテニルが挙げられる。本発明の好ましいヘテロアリール基としてはまた、インドリニル、キナゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、フラニル、チエニル、チアジアゾリル、オキサゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、ナフチリジニル、シンノリニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、イソクロマニル、クロマニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソベンゾテトラヒドロフラニル、イソベンゾテトラヒドロチエニル、イソベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ピリドピリジニル、ベンゾテトラヒドロフラニル、ベンゾテトラヒドロチエニル、ベンゾジオキソリル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、ベンゾチアゾリル、イミダゾピリジニル、イミダゾチアゾリル、ジヒドロベンゾイソオキサジニル、ベンゾイソオキサジニル、ベンゾオキサジニル、ジヒドロベンゾイソチアジニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、クマリニル、イソクマリニル、クロモニル、クロマノニル、ピリジニル−N−オキシド、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロキノリノニル、ジヒドロイソキノリノニル、ジヒドロクマリニル、ジヒドロイソクマリニル、イソインドリノニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾオキサゾリノニル、ピロリルN−オキシド、ピリミジニルN−オキシド、ピリダジニルN−オキシド、ピラジニルN−オキシド、キノリニルN−オキシド、インドリルN−オキシド、インドリニルN−オキシド、イソキノリルN−オキシド、キナゾリニルN−オキシド、キノキサリニルN−オキシド、フタラジニルN−オキシド、イミダゾリルN−オキシド、イソオキサゾリルN−オキシド、オキサゾリルN−オキシド、チアゾリルN−オキシド、インドリジニルN−オキシド、インダゾリルN−オキシド、ベンゾチアゾリルN−オキシド、ベンゾイミダゾリルN−オキシド、ピロリルN−オキシド、オキサジアゾリルN−オキシド、チアジアゾリルN−オキシド、トリアゾリルN−オキシド、テトラゾリルN−オキシド、ベンゾチオピラニルS−オキシド、ベンゾチオピラニルS,S−ジオキシド、テトラヒドロカルバゾール、テトラヒドロβカルボリンが挙げられる。本明細書のヘテロアリール基は、置換されていないか、又は明記されているように、1つ又はそれ以上の置換可能位置において種々の基で置換されている。例えばこのようなヘテロアリール基は、例えばC1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C1−C6)アルキルアミノ、ジ(C1−C6)アルキルアミノ、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、C1−C6ハロアルキル、C1−C6ハロアルコキシ、アミノ(C1−C6)アルキル、モノ(C1−C6)アルキルアミノ(C1−C6)アルキル又はジ(C1−C6)アルキルアミノ(C1−C6)アルキルで場合により置換され得る。
【0029】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、シクロアルキル系を表し、ここで「シクロアルキル」は上記で定義されるものであり、これにおいて1つ又はそれ以上の環炭素原子は、窒素、酸素及び硫黄からなる群より選択されるヘテロ原子で置換される。このヘテロシクロアルキル基が、1を超えるヘテロ原子を含む場合、このヘテロ原子は、同一かもしれないし異なるかもしれない。このようなヘテロシクロアルキル基の例としては、アザビシクロヘプタニル、アゼチジニル、ベンゾアゼピニル、1,3−ジヒドロイソインドリル、インドリニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジル、ピロリジニル及びテトラヒドロ−2H−1,4−チアジニルが挙げられる。
【0030】
用語「アルキレン」は、メチレン又は1を超える炭素を有する直鎖若しくは分枝した飽和炭化水素ジラジカルをいい、これにおいて2つの異なる炭素の各々は、自由原子価を有する。代表的なアルキレン基としては、メチレン、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH(CH3)−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH(CH3)CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH(CH3)CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−などが挙げられる。
【0031】
用語「アルキリデン」は、直鎖又は分枝した飽和炭化水素ジラジカルをいい、これにおいて炭素は、2つの自由原子価を有する。代表的なアルキリデン基としては、メチレン、CH(CH3)、C(CH32、C(CH3)C25などが挙げられる。
【0032】
環式基は、1を超える仕方で別の基に結合され得る。特定の結合配置が指定されない場合、すべての可能な配置が意図される。例えば、用語「ピリジル」は、2−、3−又は4−ピリジルを含み、そして用語「チエニル」は、2−又は3−チエニルを含む。
【0033】
本明細書で使用される「哺乳動物」は、哺乳綱のすべてのメンバーである。例として、治療又は予防が必要な哺乳動物は、ヒトであり得る。別の例として、治療又は予防が必要な哺乳動物は、ヒト以外の哺乳動物であり得る。
【0034】
APP、アミロイド前駆体タンパク質は、例えば、米国特許第5,766,846号に開示されているAPP変異体、突然変異体及びアイソフォームを含むすべてのAPPポリペプチドとして定義される。
【0035】
Aβ、アミロイドβペプチドは、APPのβセクレターゼ媒介切断から生じ、39、40、41、42及び43アミノ酸のペプチドを含む、すなわちβセクレターゼ切断部位からアミノ酸39、40、41、42又は43に伸長するすべてのペプチドとして定義される。
【0036】
βセクレターゼ(BACE1、Asp2、メマプシン2)は、Aβのアミノ末端でAPPの切断を媒介するアスパルチルプロテアーゼである。ヒトβセクレターゼは、例えばWO00/17369に記載されている。
【0037】
好ましくは、本発明の組成物及び方法は、治療有効量の式Iの化合物を使用する。
性質上塩基性である式Iの化合物は、種々の無機酸及び有機酸と広範な異なる塩を形成し得る。酸付加塩は、水性溶媒又は好適な有機溶媒媒体、例えばメタノール若しくはエタノール中で、塩基化合物を実質的に等量の選択された鉱酸又は有機酸と処理することによって容易に製造される。この溶媒を慎重に蒸発させると、所望の固体塩が得られる。
【0038】
性質上塩基性である本発明の薬学的組成物の処方に使用される活性化合物の薬学的に受容可能な酸塩の製造に使用される酸は、非毒性の酸付加塩、すなわち薬理学的に受容可能なアニオンを含む塩を形成する酸である。この塩の非限定例としては、酢酸塩、安息香酸塩、βヒドロキシ酪酸塩、重硫酸塩、重亜硫酸塩、ブロミド、ブチン−1,4−ジオエート、カルポエート、クロリド、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、リン酸二水素塩、ジニトロ安息香酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタノエート、ヘキシン−1,6−ジオエート、ヒドロキシ安息香酸塩、ヨージド、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、リン酸一水素塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、シュウ酸塩、フェニル酪酸塩、フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、フタル酸塩、フェニル酢酸塩、プロパンスルホン酸塩、プロピオレート、プロピオン酸塩、ピロリン酸塩、ピロ硫酸塩、セバケート、スベレート、コハク酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、キシレンスルホン酸塩、酸性リン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸水素塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、サッカリン酸塩、硝酸塩、メタンスルホン酸塩、パモエート[すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート)]塩、並びに次の酸の塩、すなわちCH3−(CH2n−COOH(式中、nは0〜4である)及びHOOC−(CH2n−COOH(式中、nは、上記で定義される通りである)が挙げられる。
【0039】
代表的な実施態様において、式Iの化合物は、次の式Ia:
【化5】

(式中、R2、R3、R4は、H、ハロゲン、CN、NO2、OH、O−C1−C8アルキル、NH2、NH−C1−C8アルキル、N(C1−C8アルキル)2、NHCO−C1−C8アルキル及びCONH−C1−C8からなる群より各々独立して選択される)
の化合物である。
【0040】
本発明の代表的な実施態様は、次の場合:
(A)R2がフルオロであり;
(B)R4がフルオロであり;
(C)R3がHである;
の式Iaの化合物を含む。
【0041】
本発明の代表的な実施態様は、次の場合:
(D)R1がCH3であり;
(E)R5がネオペンチル又はt−ブチルであり;
(F)R6がHであり;
(G)
【化6】

が単結合を表し、そしてXが、C(=C1−C6アルキリデン)、C(=N−O−C1−C6アルキル)、C(=N−C1−C6アルキル)、C=O、NH、NC1−C6アルキル又はOであり;
(H)
【化7】

が二重結合を表し、そしてXが、N又はC(C1−C6アルキル)であり;そして
(I)R10が、H、C1−C6アルキル、−OH、−O−C1−C6アルキル、−CO−C1−C6アルキル、−COO−C1−C6アルキル、−NH−C1−C6アルキル、−CO−N(C1−C6アルキル)−C1−C6アルキル、5〜10員のヘテロアリール、5〜10員のヘテロシクロアルキル及びC6−C14アリールからなる群より選択される、
の式I又は式Iaの化合物を含む。
【0042】
本発明の代表的な実施態様はまた、上述の実施態様(A)〜(I)のすべての組み合わせを含む。
【0043】
本発明の代表的な実施態様はまた、次の式Iaの化合物の光学異性体:
【化8】

及びその鏡像異性体を含む。
【0044】
式Iの化合物は、
(i)次の式Vの化合物
【化9】

(式中、P1は、R1又はR1−Oである)を、次の式IVの化合物
【化10】

と反応させること;
(ii)(i)で形成された生成物からP1CO基を除去すること;及び
(iii)(ii)で形成された生成物を、R1CO基を転移し得る化合物と反応させてIを形成すること、
を含むものであるが、但しP1=R1である場合、工程(ii)及び(iii)はないものとする方法によって製造され得る。
【0045】
本明細書で使用される「(i)で形成された生成物からP1CO基を除去すること」は、当業者に公知のすべての方法で脱保護工程を行うことをいう。このような工程は、P1CO−N結合の加水分解、又は(i)で形成された生成物を、P1CO−NHのアシル炭素で求核置換を行い得る求核試薬と反応させることであり得るが、これらに限定されない。例えば、酸又は塩基加水分解を用いて、P1CO−N結合を加水分解し、それによってP1CO基を除去し得る。
【0046】
本明細書で使用される「R1CO基を転移し得る化合物」は、式R1COX2のすべての化合物をいい、式中X2は脱離基である。例えばX2は、ハロゲン、例えばクロリド、又はシアノ基、又はC1−C6アルコキシ基、又はC1−C6アルキルチオ基であり得るがこれらに限定されない。
【0047】
あるいは、式Iの化合物は、例えば、
(i)次の式IIの化合物
【化11】

(式中、E1は、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ又はハロで場合により置換される(C1−C12アルキル)又は(C6−C10アリール)である)を、次の式IIIの化合物
【化12】

と反応させること;及び
(ii)(i)で形成された生成物を、ホウ素−水素結合を含む還元剤で処理すること、を含む方法によって製造され得る。この還元剤は、例えばボロヒドリドであり得る。
【0048】
この方法はさらに、
(iii)(ii)で形成された生成物を、水中の酸、C1−C4アルキルアルコール、又は水及びC1−C4アルキルアルコールの混合物で処理すること、
を含み得る。
【0049】
式IIの化合物は、例えば次の式IIa:
【化13】

を有する化合物であり得る。
【0050】
例として、スキーム1に示されるように、置換アミノテトラリン4を、好適な不活性溶媒、例えばTHF、ジオキサン又はアルコール中のエポキシド5と反応させることができ、ここでイソプロパノールは、50〜150℃の範囲の温度が好ましく、ここで80〜120℃が、BOC保護中間体3を得るのに好ましい。3の脱保護を、酸、例えばトリフルオロ酢酸、水性硫酸又は好ましくは水性塩酸での処理によって行い、2を得ることができる。化合物1は、塩化アセチル及び第三級アミン塩基、アセチルイミダゾールを用いるか、又は好ましくは酢酸及びアミドカップリング試薬、例えばEDC.HClとの2のアセチル化によって製造され得る。
【0051】
【化14】

【0052】
別の例として、スキーム2に示されるように、置換テトラロン6a−iを、酢酸中のNaBCNH3又は好ましくは1,2−ジクロロエタン中のNaB(OAc)3Hを用いて、保護アミン7との還元的アミノ化条件に供し、次いでメタノール中の水性酸で処理して、式Iの化合物を得ることができる。
【0053】
【化15】

【0054】
反応物の構造に対する種々の置換及び他の修飾が、各工程又はスキーム全体の首尾良い結果に影響を及ぼすことなく、スキーム1又はスキーム2のいずれかの各工程で行われ得ることを、当業者なら容易に認識している。
【0055】
中間体テトラロン6a−hの実施例及び中間体アミノ−テトラリン4の実施例の製造を、スキーム3に示す。ハロゲン化α−テトラロン6iは、不活性溶媒、例えばジエチルエーテル又は好ましくはTHF中のパラジウム触媒、好ましくはPd(dppf)Cl2の存在下、アルキル亜鉛試薬を用いたNegishi型カップリングを介して、6h型のアルキル化テトラロンに転換され得る。6hは、他のテトラロン中間体に転換され得る。従って、Nolanら(Org.Lett.、2002、4、4053)に記載されている方法に従って、ハロゲン化アリールで6hを処理することにより、アリール又はヘテロアリール置換テトラロン6cを得ることができる。未反応性溶媒、例えば酢酸又はジエチルエーテル中で酢酸エチル又は臭素を還流しながらCuBr2で6hをαハロゲン化することにより6gを得て、次いでこれを、種々の求核試薬、例えば限定されないが、アミン、アルコキシド、スルフィドで処理して、式6aの化合物を得ることができる。式6cの化合物はまた、Hussey及びHerr(JOC、1959、24、843)に記載されている方法に従って、アリールグリニャール試薬で6gを処理することにより得ることができる。Wachterら(J.Med.Chem.、1996、39、834)によって記載されているような方法に従って、種々のアリールアルデヒド、ヘテロアリールアルデヒド及びアルキルアルデヒドで6hを縮合することによりオレフィン6fを得ることができ、次いでこれを、金属触媒、例えば炭素上のパラジウムを用いて、還元剤、例えば水素で処理することによって、化合物6eに転換し得る。オキシム6bは、Okaら(Chem.Pharm.Bull.、1977、25、632)の縮合方法に従って6hから製造され得る。式6dのケトエステル化合物は、塩基、例えば水素化ナトリウム又はナトリウムエトキシドで6hを処理し、その後Chakrabartyら(Synthesis、2003、15、2294)によって記載された一般方法に従って、炭酸ジアルキルと反応させることによって製造され得る。6a−i型のすべての化合物は、当業者に明らかな方法を用いて、他の種にさらに転換され得る。
【0056】
式4のαアミンテトラリンは、式6a−iのテトラロンから製造され得る。塩基、例えばナトリウムエトキシド又はピリジンの存在下で、塩酸ヒドロキシルアミンで6a−iを処理することによりオキシムを得て、次いでこれを、金属水素化物、例えば水素化アルミニウムリチウム若しくはボランを用いて還元するか、又はラネーニッケル若しくは炭素上のパラジウムの存在下で水素化して、アミノ−テトラリン4を形成し得る。同様に、例えば酢酸アンモニウム及び水素化ホウ素、例えば水素化ホウ素ナトリウム、ナトリウムシアノボロヒドリド又はナトリウムトリアセトキシボロヒドリドとの6a−iの還元的アミノ化により、化合物4もまた得ることができる。
【0057】
【化16】

【0058】
本発明の代表的な化合物としては、以下に示されるものが挙げられる:
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−ピペリジン−1−イル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−(1H−イミダゾール−2−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−モルホリン−4−イル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−メチルアミノ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
1−[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−カルボン酸メチルエステル;
1−[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−カルボン酸ジメチルアミド;
N−[3−[2−アセチル−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
ジメチル−カルバミン酸1−[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イルエステル;
炭酸1−[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イルエステルメチルエステル;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−(1,3,3−トリメチル−ウレイド)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
[1−[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル]−メチル−カルバミン酸メチルエステル;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−(1−メトキシイミノ−エチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−(1−メトキシ−エチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−[3−[2−アセチルアミノ−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−メタンスルホニルアミノ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−(3−メチル−3H−イミダゾール−4−イルメチレン)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−スルファモイル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−[3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−モルホリン−4−イル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−1−(4−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;及び
1−[3−アセチルアミノ−4−(2,6−ジフルオロ−ピリミジン−4−イル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−カルボン酸ジメチルアミド。
【0059】
本発明の薬学的組成物は、式Iの化合物及び薬学的に受容可能な担体を含む組成物であり得る。この薬学的組成物は、1つ又はそれ以上の薬学的に受容可能な担体を用いて従来方法で処方され得る。この組成物は、経口、頬、鼻腔内、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下若しくは移植片を通じて)、鼻、膣、舌下、直腸若しくは局所投与のために処方され得るか、又は吸入若しくは吹送による投与に好適な形態に処方され得る。本発明の組成物において、式Iの化合物は、好ましくは、本明細書に記載されている状態を治療するに有効な量で存在する。同様に、本明細書に記載されている状態の治療方法において、投与される式Iの化合物量は、好ましくは、この状態を治療するに有効な量である。
【0060】
本発明は、本明細書に記載されている疾患若しくは状態を有する患者を治療するか、又は患者がこれらに罹患するのを予防する方法を含む。
【0061】
一実施態様において、本発明の治療方法は、アルツハイマー病の治療に使用される。
一実施態様において、この治療方法は、アルツハイマー病の発症の予防又は遅延を助け得る。
一実施態様において、この治療方法は、疾患が軽い認知障害である場合に使用され得る。
一実施態様において、この治療方法は、疾患がダウン症侯群である場合に使用され得る。
一実施態様において、この治療方法は、疾患がオランダ型アミロイドーシスによる遺伝性の大脳出血である場合に使用され得る。
【0062】
一実施態様において、この治療方法は、疾患が脳のアミロイド血管症である場合に使用され得る。
一実施態様において、この治療方法は、疾患が変性痴呆又は痴呆である場合に使用され得る。
一実施態様において、この治療方法は、疾患がびまん性レヴィー小体型アルツハイマー病の場合に使用され得る。
一実施態様において、この治療方法は、現存する疾患を治療し得る。
一実施態様において、この治療方法は、疾患の発達を予防し得る。
【0063】
一実施態様において、この治療方法は、次の治療有効量、すなわち:経口投与については、およそ0.1mg/日〜およそ1,000mg/日;非経口、舌下、鼻腔内、鞘内投与については、およそ0.5〜およそ100mg/日;デポー(depo)投与及び移植片については、およそ0.5mg/日〜およそ50mg/日;局所投与については、およそ0.5mg/日〜およそ200mg/日;直腸投与については、およそ0.5mg〜およそ500mgを使用し得るものである。
【0064】
一実施態様において、この治療方法は、次の治療有効量、すなわち:経口投与については、およそ1mg/日〜およそ100mg/日;及び非経口投与については、およそ5〜およそ50mg/日を使用し得るものである。
一実施態様において、この治療方法は、経口投与については、およそ5mg/日〜およそ50mg/日の治療有効量を使用し得るものである。
【0065】
本発明はまた、式(I)の化合物又はその薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物を含む。
本発明は、本明細書に記載されている疾患若しくは状態を有する患者を治療するか、又は患者がこれらに罹患することを予防するときに使用する薬剤の製造に関して、式(I)の化合物又はその薬学的に受容可能な塩を使用することを含む。
【0066】
一実施態様において、この式(I)の化合物の使用は、疾患がアルツハイマー病である場合に採用され得る。
一実施態様において、この式(I)の化合物の使用は、アルツハイマー病の発症の予防又は遅延を助け得る。
一実施態様において、この式(I)の化合物の使用は、疾患が軽い認知障害である場合に採用され得る。
一実施態様において、この式(I)の化合物の使用は、疾患がダウン症侯群である場合に採用され得る。
【0067】
一実施態様において、この式(I)の化合物の使用は、疾患がオランダ型アミロイドーシスによる遺伝性の大脳出血である場合に採用され得る。
一実施態様において、この式(I)の化合物の使用は、疾患が脳のアミロイド血管症である場合に採用され得る。
一実施態様において、この式(I)の化合物の使用は、疾患が変性痴呆又は痴呆である場合に採用され得る。
一実施態様において、この式(I)の化合物の使用は、疾患がびまん性レヴィー小体型アルツハイマー病である場合に採用され得る。
【0068】
一実施態様において、この化合物の使用は、以下の酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、CH3−(CH2n−COOH(式中、nは0〜4である)、HOOC−(CH2n−COOH(式中、nは上記で定義される通りである)、HOOC−CH=CH−COOH及びフェニル−COOH、酢酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、重硫酸、重酒石酸(bitartaric)、酪酸、エデト酸カルシウム、カンシル酸(camsylic)、炭酸、クロロ安息香酸、クエン酸、エデト酸、エジシル酸(edisylic)、エストル酸(estolic)、エシル(esyl)、エシル酸(esylic)、ギ酸、フマル酸、グルセプト酸(gluceptic)、グルコン酸、グルタミン酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキサミック酸(hexamic)、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバミック酸(hydrabamic)、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、メチル硝酸、メチル硫酸、粘液酸、ムコン酸、ナプシル酸(napsylic)、硝酸、シュウ酸、p−ニトロメタンスルホン酸、パモ酸(pamoic)、パントテン酸、リン酸、一水素リン酸、ニ水素リン酸、フタル酸、ポリガラクツロン酸(polygalactouronic)、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、スルホン酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、テオクリック酸(teoclic)及びトルエンスルホン酸の塩からなる群より選択される薬学的に受容可能な塩を使用する。他の受容可能な塩については、Int.J.Pharm.、33、201−217(1986)及びJ.Pharm.Sci.、66(1)、1、(1977)を参照のこと。
【0069】
これらの方法は、治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に受容可能な塩の投与を各々含むものである。
【0070】
本発明はまた、βセクレターゼ活性の阻害方法を含み、これは、このβセクレターゼを有効な阻害量の式(I)の化合物又はその薬学的に受容可能な塩に曝露することを含むものである。
【0071】
一実施態様において、この方法は、50ミクロモル未満の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用するものである。
一実施態様において、この方法は、10ミクロモル又はそれ以下の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用するものである。
一実施態様において、この方法は、1ミクロモル又はそれ以下の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用するものである。
【0072】
一実施態様において、この方法は、100ナノモル未満の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用するものである。
一実施態様において、この方法は、10ナノモル又はそれ以下の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用するものである。
【0073】
一実施態様において、この方法は、このβセクレターゼをインビトロでこの化合物に曝露することを含むものである。
一実施態様において、この方法は、このβセクレターゼを細胞内でこの化合物に曝露することを含むものである。
一実施態様において、この方法は、このβセクレターゼを動物の細胞内でこの化合物に曝露することを含むものである。
一実施態様において、この方法は、このβセクレターゼをヒト内でこの化合物に曝露することを含むものである。
【0074】
本発明はまた、βセクレターゼ活性を阻害するために、反応混合物中で、APP−695アミノ酸アイソタイプに対して番号付けされたMet596とAsp597との間の部位、又はそのアイソタイプ若しくは突然変異体の対応する部位でアミロイド前駆体タンパク質(APP)の切断を阻害する方法;細胞内でアミロイドβペプチド(Aβ)の生産を阻害する方法;動物内でβアミロイド斑の生産を阻害する方法;及び脳のβアミロイド沈着によって特徴付けられる疾患を治療又は予防する方法を含み、これは、この反応混合物を、有効な阻害量の式(I)の化合物又はその薬学的に受容可能な塩に曝露することを含むものである。
【0075】
一実施態様において、この方法は、次の切断部位、すなわち:APP−751アイソタイプに対して番号付けされたMet652とAsp653との間;APP−770アイソタイプに対して番号付けされたMet671とAsp672との間;APP−695スウェーデン型突然変異のLeu596とAsp597との間;APP−751スウェーデン型突然変異のLeu652とAsp653との間;又はAPP−770スウェーデン型突然変異のLeu671とAsp672との間を使用するものである。
【0076】
一実施態様において、この方法は、この反応混合物をインビトロで曝露するものである。
一実施態様において、この方法は、この反応混合物を細胞内で曝露するものである。
一実施態様において、この方法は、この反応混合物を動物細胞内で曝露するものである。
一実施態様において、この方法は、この反応混合物をヒト細胞内で曝露するものである。
【0077】
本発明はまた、細胞内でアミロイドβペプチド(Aβ)の生産を阻害する方法を含み、これは、この細胞に、有効な阻害量の式(I)の化合物又はその薬学的に受容可能な塩を投与することを含むものである。
一実施態様において、この方法は、動物に投与することを含む。
一実施態様において、この方法は、ヒトに投与することを含む。
【0078】
本発明はまた、動物内でβアミロイド斑の生産を阻害する方法を含み、これは、この動物に有効な阻害量の式(I)の化合物又はその薬学的に受容可能な塩を投与することを含むものである。
一実施態様において、この方法は、ヒトに投与することを含む。
【0079】
本発明はまた、脳のβアミロイド沈着によって特徴付けられる疾患を治療又は予防する方法を含み、これは、患者に有効な治療量の式(I)の化合物又はその薬学的に受容可能な塩を投与することを含むものである。
一実施態様において、この方法は、50ミクロモル未満の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用するものである。
一実施態様において、この方法は、10ミクロモル又はそれ以下の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用するものである。
一実施態様において、この方法は、1ミクロモル又はそれ以下の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用するものである。
一実施態様において、この方法は、10ナノモル又はそれ以下の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用するものである。
一実施態様において、この方法は、およそ0.1〜およそ1000mg/日の範囲の治療量で化合物を使用するものである。
一実施態様において、この方法は、およそ15〜およそ1500mg/日の範囲の治療量で化合物を使用するものである。
一実施態様において、この方法は、およそ1〜およそ100mg/日の範囲の治療量で化合物を使用するものである。
一実施態様において、この方法は、およそ5〜およそ50mg/日の範囲の治療量で化合物を使用するものである。
【0080】
本発明はまた、βセクレターゼ複合体を生産する方法を含み、これは、この複合体の生産に好適な条件下で、反応混合物中でβセクレターゼを式(I)の化合物又はその薬学的に受容可能な塩に曝露することを含むものである。
一実施態様において、この方法は、インビトロで曝露することを使用するものである。
一実施態様において、この方法は、細胞である反応混合物を使用するものである。
【0081】
本発明はまた、アッセンブルされ得るコンポーネント部分を含むコンポーネントキットを含み、これにおいて、少なくとも1つのコンポーネント部分は、容器に包含される式Iの化合物を含むものとする。
一実施態様において、このコンポーネントキットは、凍結乾燥された化合物を含むものであり、そして少なくとも1つのさらなるコンポーネント部分は、希釈剤を含むものとする。
【0082】
本発明はまた、1つ又はそれ以上の容器を含む容器キットを含み、各々の容器は、1つ又はそれ以上の単位用量の式(I)の化合物又はその薬学的に受容可能な塩を含むものとする。
一実施態様において、この容器キットは、経口送達に適合した各容器を含むものであり、そして錠剤、ゲル又はカプセルが挙げられる。
一実施態様において、この容器キットは、非経口送達に適合した各容器を含むものであり、そしてデポー製品、シリンジ、アンプル又はバイアルが挙げられる。
一実施態様において、この容器キットは、局所送達に適合した各容器を含み、そしてパッチ、医療パッド(medipad)、軟膏又はクリームが挙げられる。
【0083】
本発明はまた、式(I)の化合物又はその薬学的に受容可能な塩;及び抗酸化剤、抗炎症剤、γセクレターゼ阻害剤、神経分化誘導物質、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、スタチン、Aβ及び抗Aβ抗体からなる群より選択される1つ又はそれ以上の治療剤を含む薬剤キットを含む。
【0084】
本発明はまた、式(I)の化合物又はその薬学的に受容可能な塩;及び不活性希釈剤又は食用担体を含む組成物を含む。
一実施態様において、この組成物は、油である担体を含む。
【0085】
本発明はまた、式(I)の化合物又はその薬学的に受容可能な塩;及び結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤又は滑剤(gildant)を含む組成物を含む。
本発明はまた、クリーム、軟膏又はパッチ中に配置された式(I)の化合物又はその薬学的に受容可能な塩を含む組成物を含む。
【0086】
本発明は、アルツハイマー病の治療および予防に有用な式(I)の化合物及び本明細書に含まれる他の式の化合物を提供する。スキームIに示される方法に加えて、本発明の化合物の製造に応用され得る当該分野の製造方法の例は、J.Org.Chem.1998、63、4898−4906;J.Org.Chem.1997、62、9348−9353;J.Org.Chem.1996、61、5528−5531;J.Med.Chem.1993、36、320−330;J.Am.Chem.Soc.1999、121、1145−1155;及びそれらの中に引用される参考文献に見出される。また、米国特許第6,150,530号、同第5,892,052号、同第5,696,270号及び同第5,362,912号、並びにそれらの中に引用される参考文献を参照のこと。
【0087】
本発明の化合物は、互変異性体として幾何異性体又は光学異性体を含み得る。従って、本発明は、すべての互変異性体並びに純粋な幾何異性体、例えばE及びZ幾何異性体をそれらの混合物として含む。さらに本発明は、純粋な鏡像異性体及びジアステレオマーを、それらの混合物(ラセミ混合物を含む)として含む。個々の幾何異性体、鏡像異性体又はジアステレオマーは、キラルクロマトグラフィーが挙げられるがこれに限定されない当業者に公知の方法によって製造又は単離され、ジアステレオマーを製造し、このジアステレオマーを分離し、次いで当該分野で周知の方法を通じてこのジアステレオマーを鏡像異性体に転換することによって製造又は単離され得る。
【0088】
指定された立体化学を有する本発明の化合物は、他の鏡像異性体、ジアステレオマー、幾何異性体又は互変異性体との混合物(ラセミ混合物を含む)に包含され得る。好ましい局面において、本発明の化合物は、代表的には、これらの混合物中で、少なくとも50パーセントのジアステレオマー及び/又は鏡像異性体過剰で存在している。好ましくは、本発明の化合物は、これらの混合物中で、少なくとも80パーセントのジアステレオマー及び/又は鏡像異性体過剰で存在している。より好ましくは、所望の立体化学を有する本発明の化合物は、少なくとも90パーセントのジアステレオマー及び/又は鏡像異性体過剰で存在している。なおより好ましくは、所望の立体化学を有する本発明の化合物は、少なくとも99パーセントのジアステレオマー及び/又は鏡像異性体過剰で存在している。
【0089】
本発明の化合物は、本明細書に開示されている疾患又は状態の治療又は予防に使用され得る。これらの疾患を治療又は予防するとき、本発明の化合物は、患者にとって最良となるように、個別又は組み合わせてのいずれかで使用され得る。
【0090】
用語「予防」は、疾患症状の発達を遅らせること、この疾患の発症を遅延させること、又は患者の疾患の発達をともかく防ぐことをいい、この場合、患者は、投与時に疾患を有すると診断されていないが、通常疾患が発達するか、又は疾患の危険性が増大することが予想されるものとする。予防はまた、年齢、家族病歴、遺伝子又は染色体異常及び/又は疾患に対する1つ又はそれ以上の生物学的マーカー、例えばAPPの既知の遺伝子突然変異又は脳組織若しくは体液中のAPP切断生成物の存在に起因して疾患にかかりやすいと考えられる個体へ本発明の化合物を投与することを含む。
【0091】
上記の疾患の治療又は予防において、本発明の化合物は、好ましくは治療有効量で投与される。この治療有効量は、当業者に公知のように、使用される特定の化合物及び投与経路如何により変化する。
【0092】
診断された上記の状態のいずれかを示す患者の治療において、医師は、本発明の化合物を直ちに投与し、そして必要であれば無期限に投与を継続し得る。アルツハイマー病を有すると診断されないが、アルツハイマー病の実質的危険性にあると考えられる患者の治療において、この患者が、早期にアルツハイマー前症状、例えば老化に関連した記憶又は認知問題を最初に経験したときに、医師は好ましくは治療を開始すべきである。さらに、遺伝子マーカー(例えばAPOE4)又はアルツハイマー病の予測となる他の生物学的指標の検出を通じて、アルツハイマー病を発達する危険性にあると定められ得るいくらかの患者が存在している。これらの状況において、たとえ患者が疾患症状を有していなくても、本発明の化合物の投与は、症状が現れる前に開始され得、そして治療は、疾患の発症を予防又は遅延させるために無期限に継続され得る。
【0093】
本発明の化合物は、経口投与、非経口(IV、IM、デポー(depo)−IM、SQ及びデポーSQ)投与、舌下投与、鼻腔内(吸入)投与、鞘内投与、局所投与又は直腸投与され得る。当業者に公知の投薬形態は、本発明の化合物の送達に好適である。
【0094】
治療有効量の本発明の化合物を含む組成物が提供される。この化合物は、好ましくは、好適な薬学的製造物、例えば経口投与については錠剤、カプセル又はエリキシル剤、非経口投与については滅菌溶液又は懸濁液に処方される。代表的には、上記の化合物は、当該分野で周知の技術及び方法を用いて薬学的組成物に処方される。
【0095】
本発明の化合物若しくは本発明の化合物の混合物又は生理学的に受容可能な塩およそ1〜500mgは、生理学的に受容可能なビヒクル、担体、賦形剤、結合剤、防腐剤、安定剤、香料などとともに、一般に認められた薬務によって要求されるような単位投薬形態に調合される。これらの組成物又は調製物中の活性物質量は、指示される範囲の好適な投薬量が得られるような量である。この組成物は、好ましくは単位投薬形態に処方され、各投薬量は、およそ2〜およそ100mg、より好ましくは、およそ10〜およそ30mgの活性成分を含むものである。用語「単位投薬形態」は、単位投薬としてヒト被験体及び他の哺乳動物に好適な物理的に別個の単位をいい、各単位は、所望の治療効果を生じさせるように計算された所定量の活性物質を好適な薬学的賦形剤とともに含むものである。
【0096】
組成物を製造するために、1つ又はそれ以上の本発明の化合物は、好適な薬学的に受容可能な担体と混合される。この化合物を混合又は添加する際、得られる混合物は、溶液、懸濁液、エマルションなどであり得る。リポソーム懸濁液はまた、薬学的に受容可能な担体として好適であり得る。これらは、当業者に公知の方法に従って製造され得る。得られる混合物の形態は、意図される投与様式及び選択された担体又はビヒクル中の化合物の溶解度を含む多くの要因に左右される。有効濃度は、治療される疾患、障害又は状態の少なくとも1つの症状を軽減又は改善するに十分なものであり、そして経験的に決定され得るものである。
【0097】
本明細書で提供される化合物の投与に好適な薬学的担体又はビヒクルは、投与の特定の様式に好適であるような当業者に公知のすべての担体を含む。さらに、活性物質はまた、所望の作用を損なわない他の活性物質、又は所望の作用を補うか若しくは別の作用を有する物質と混合され得る。この化合物は、唯一の薬学的活性成分として組成物中に処方され得るか、又は他の活性成分と組み合わせられ得る。
【0098】
化合物が不十分な溶解度を示す場合、可溶化方法が使用され得る。このような方法は公知であり、そしてジメチルスルホキシド(DMSO)のような共溶媒の使用、Tween(登録商標)のような界面活性剤の使用、及び水性重炭酸ナトリウムへの溶解が挙げられるがこれらに限定されない。この化合物の誘導体、例えば塩又はプロドラッグはまた、有効な薬学的組成物の処方に使用され得る。
【0099】
化合物濃度は、障害の少なくとも1つの症状を軽減又は改善する投与(そのために化合物が投与される)の際に、化合物量を送達するに有効なものである。代表的には、この組成物は、単一投薬投与として処方される。
【0100】
本発明の化合物は、本発明の化合物が体からの急速な排出を妨げる担体、例えば持続放出型処方物又はコーティングとともに製造され得る。このような担体としては、徐放性処方物、例えばマイクロカプセル化送達系が挙げられるがこれに限定されない。この活性化合物は、治療される患者に対して望ましくない副作用がない状態で、治療に有用な効果を発揮するに十分な量で、薬学的に受容可能な担体に包含される。この治療に有効な濃度は、治療される障害に対する公知のインビトロ及びインビボモデル系でこの化合物を試験することにより経験的に決定され得る。
【0101】
本発明の化合物及び組成物は、複合用量又は単一用量の容器に包含され得る。この包含された化合物及び組成物は、例えば、使用の際にアッセンブルされ得るコンポーネント部分を含むキットで提供され得る。例えば、凍結乾燥形態の化合物阻害剤及び好適な希釈剤が、使用前に組み合わせのために別々のコンポーネントとして提供され得る。キットは、同時投与のために化合物阻害剤及び第二の治療剤を含み得る。この阻害剤及び第二の治療剤は、別々のコンポーネント部分として提供され得る。キットは、複数の容器を含み得るものであり、各容器は、1つ又はそれ以上の単位用量の本発明の化合物を保持している。この容器は、好ましくは、経口投与については、錠剤、ゲルカプセル、持続放出性カプセルなど;非経口投与については、デポー製品、事前充填済みシリンジ、アンプル、バイアルなど;及び局所投与については、パッチ、医療パッド、クリームなどが挙げられるがこれらに限定されない所望の投与様式に適合するものである。
【0102】
薬物組成物中での活性化合物濃度は、この活性化合物の吸収速度、不活性化速度及び排出速度、投薬スケジュール、並びに投与量、並びに当業者に公知の他の要因に左右される。
【0103】
活性成分は、一度に投与され得るか、又は時間間隔をあけて投与されるように、多くの少ない用量に分割され得る。正確な投薬量及び治療期間は、治療されている疾患との相関関係であり、そして公知の試験プロトコルを用いて、又はインビボ若しくはインビトロの試験データからの推定により、経験的に決定され得ることは勿論である。濃度及び投薬量の値はまた、緩和されるべき状態の重症度により変化し得ることに注意すべきである。すべての個別の被験体に対して、特定の投薬計画が、個人の必要性及び組成物を投与するか又は組成物の投与を監督する専門家の判断に従ってある期間にわたり調整されるべきであり、そして本明細書に示される濃度範囲は単に代表的なものであり、そして請求される組成物の範囲又は実施の限定が意図されないことはさらに理解すべきである。
【0104】
経口投与が所望の場合、この化合物は、胃の酸性環境からこの化合物を保護する組成物中に提供されるべきである。例えば、この組成物は、その完全な状態を胃で維持し、そしてこの活性化合物を腸で解放する腸溶性コーティング中に処方され得る。この組成物はまた、制酸剤又は他のこのような成分と組み合わせて処方され得る。
【0105】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤又は食用担体を含み、そして錠剤に圧縮され得るか、又はゼラチンカプセルに包含され得る。経口治療投与の目的として、この活性化合物又は化合物群は、賦形剤と混合され得、そして錠剤、カプセル又はトローチの形態で使用され得る。薬学的に適合性の結合剤及び補助物質は、この組成物の一部として包含され得る。
【0106】
錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは、類似の性質の次の成分又は化合物、すなわち:結合剤、例えば、トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ又はゼラチンが挙げられるがこれらに限定されない;賦形剤、例えば、微結晶性セルロース、デンプン又はラクトース;崩壊剤、例えば、アルギン酸及びコーンスターチが挙げられるがこれらに限定されない;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムが挙げられるがこれに限定されない;滑剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素が挙げられるがこれに限定されない;甘味料、例えば、スクロース又はサッカリン;並びに香料、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル又は果実香料のいずれかを含み得る。
【0107】
投薬単位形態がカプセルのとき、これは、上記のタイプの物質に加えて、液体担体、例えば脂肪油を含み得る。さらに、投薬単位形態は、この投薬単位の物理的形態を変更する種々の他の物質、例えば砂糖及び他の腸溶剤のコーティングを含み得る。この化合物はまた、エリキシル剤、懸濁液、シロップ剤、ウエファー、チューインガムなどのコンポーネントとして投与され得る。シロップ剤は、活性化合物に加えて、甘味料としてのスクロース、並びに特定の防腐剤、染料及び着色剤、並びに香料を含み得る。
【0108】
活性物質はまた、所望の作用を損なわない他の活性物質、又は所望の作用を補う物質と混合され得る。
【0109】
非経口、皮内、皮下又は局所適用に使用される溶液又は懸濁液としては、次のコンポーネント、すなわち:滅菌希釈剤、例えば注射用の水、食塩水溶液、不揮発性油、天然に存在する植物油、例えばゴマ油、ヤシ油、ラッカセイ油、綿実油など、若しくは合成脂肪性ビヒクル、例えばオレイン酸エチルなど、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコール及びメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸及び重亜硫酸ナトリウム;キレート化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝液、例えば酢酸塩、クエン酸塩及びリン酸塩;並びに等張化剤、例えば塩化ナトリウム及びブドウ糖のうちのいずれかが挙げられ得る。非経口製造物は、ガラス、プラスチック又は他の好適な材料でできたアンプル、使い捨てシリンジ又は複合用量バイアルに包含され得る。緩衝液、防腐剤、抗酸化剤などは、必要に応じて包含され得る。
【0110】
静脈内投与の場合、好適な担体としては、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)並びに粘稠化剤及び可溶化剤、例えばグルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、並びにそれらの混合物を含む溶液が挙げられる。組織標的化リポソームを含むリポソーム懸濁液はまた、薬学的に受容可能な担体として好適であり得る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されている公知の方法に従って製造され得る。
【0111】
活性化合物は、体からの急速な排出に対してこの化合物を保護する担体、例えば持続性処方物又はコーティングとともに製造され得る。このような担体としては、徐放性処方物、例えば、限定されないが移植片及びマイクロカプセル化送達系、並びに生分解性の生体適合性ポリマー、例えばコラーゲン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などが挙げられる。このような処方物の製造方法は、当業者に公知である。
【0112】
本発明の化合物は、経口投与、非経口(IV、IM、デポー−IM、SQ及びデポー−SQ)投与、舌下投与、鼻腔内(吸入)投与、鞘内投与、局所投与又は直腸投与され得る。当業者に公知の投薬形態は、本発明の化合物の送達に好適である。
【0113】
経口投与の場合、本発明の化合物は、当業者に周知であるような経口投与の通常の投薬形態で投与され得る。これらの投薬形態としては、錠剤及びカプセルといった通常の固体単位投薬形態、並びに液体投薬形態、例えば溶液、懸濁液及びエリキシル剤が挙げられる。固体投薬形態が使用される場合、本発明の化合物が一日に一回又は二回の投与しか必要としないように、持続放出型であることが好ましい。
【0114】
経口投薬形態は、一日に1、2、3又は4回患者に投与される。本発明の化合物は、一日に3回又はそれ以下のいずれか、より好ましくは、1回又は2回投与されることが好ましい。従って、本発明の化合物は、経口投薬形態で投与されることが好ましい。いかなる経口投薬形態が使用されようとも、胃の酸性環境から本発明の化合物を保護するように設計されることが好ましい。腸溶性錠剤は、当業者に周知である。さらに、各々が酸性の胃から保護されるようにコーティングされた小球で満たされたカプセルはまた、当業者に周知である。
【0115】
経口投与の場合、βセクレターゼ活性の阻害、Aβ生産の阻害、Aβ沈着の阻害又はADの治療若しくは予防のための治療に有効な投与量は、およそ0.1mg/日〜およそ1,000mg/日である。この経口投薬量は、およそ1mg/日〜およそ100mg/日であることが好ましい。この経口投薬量は、およそ5mg/日〜およそ50mg/日であることがより好ましい。患者は一用量で開始され得るが、用量は、患者の状態変化に従い徐々に変化し得ることは勿論である。
【0116】
本発明の化合物はまた、ナノ結晶分散処方物で有利に送達され得る。このような処方物の製造は、例えば米国特許第5,145,684号に記載されている。HIVプロテアーゼ阻害剤のナノ結晶分散及びその使用方法は、米国特許第6,045,829号に記載されている。このナノ結晶処方物は、代表的には、薬物化合物のバイオアベイラビリティをより高くする。
【0117】
本発明の化合物は、非経口、例えばIV、IM、デポー−IM、SC又はデポー−SCによって投与され得る。非経口投与の場合、一日におよそ0.5〜およそ100mg、好ましくは一日におよそ5〜およそ50mgの治療有効量が送達されるべきである。デポー処方物が、1ヶ月に1回又は2週間に1回注射に使用される場合、この用量は、およそ0.5mg/日〜およそ50mg/日、又はおよそ15mg/月〜およそ1,500mg/月の用量であるべきである。一つには、アルツハイマー病の患者は忘れっぽいので、この非経口投薬形態は、デポー処方物であることが好ましい。
【0118】
本発明の化合物は、舌下投与され得る。舌下に与えられる場合、本発明の化合物は、IM投与に関する上記の量で、一日に1〜4回与えられるべきである。
【0119】
本発明の化合物は、鼻腔内投与され得る。この経路で与えられる場合、適切な投薬形態は、当業者に公知のように鼻内噴霧又は乾燥粉末である。鼻腔内投与に関する本発明の化合物の投薬量は、IM投与に関する上記の量である。
【0120】
本発明の化合物は、鞘内投与され得る。この経路で与えられる場合、適切な投薬形態は、当業者に公知のように非経口投薬形態であり得る。鞘内投与に関する本発明の化合物の投薬量は、IM投与に関する上記の量である。
【0121】
本発明の化合物は、局所投与され得る。この経路で与えられる場合、適切な投薬形態は、クリーム、軟膏又はパッチである。投与されるべき本発明の化合物量が理由で、パッチが好ましい。局所投与の場合、この投薬量は、およそ0.5mg/日〜およそ200mg/日である。1つのパッチによって送達され得る量には限界があるので、2つ又はそれ以上のパッチが使用され得る。パッチの数及びサイズは重要ではなく、重要なことは、当業者に公知のように本発明の化合物の治療有効量が送達されることである。本発明の化合物は、当業者に公知のように坐剤によって直腸投与され得る。坐剤により投与される場合、この治療有効量は、およそ0.5mg〜およそ500mgである。
【0122】
一般に、一日に体重1kg当たりおよそ0.01mgとおよそ100mgとの間の投薬レベルが、ヒト及び他の哺乳動物に投与される。ヒトへの好ましい投薬範囲は、一日に体重1kg当たりおよそ0.1〜およそ50mgであり、これは単一用量として投与され得るか、又は複合用量に分割され得る。ヒト以外の哺乳動物への好ましい投薬範囲は、一日に体重1kg当たりおよそ0.01〜およそ10.0mgであり、これは単一用量として投与され得るか、又は複合用量に分割され得る。ヒト以外の哺乳動物へのより好ましい投薬範囲は、一日に体重1kg当たりおよそ0.1〜およそ5.0mgであり、これは単一用量として投与され得るか、又は多数回用量に分割され得る。
【0123】
本明細書で言及される標準の成人ヒトの状態を治療するためのエーロゾル処方物は、好ましくは、エーロゾルの各定量又は「一吹き量」が、式Iの化合物をおよそ20μg〜およそ1000μg含むように準備される。エーロゾルによる一日の総用量は、およそ100μg〜およそ10mgの範囲内である。投与は、一日に数回、例えば2、3、4又は8回で、例えば各回1、2又は3用量を与え得るものである。
【0124】
本発明の化合物は、当業者に公知のように移植片によって投与され得る。移植片によって本発明の化合物を投与する場合、治療有効量は、デポー投与に関する上記の量である。
本発明の特定の化合物及び所望の投薬形態が与えられると、どのように適切な投薬形態を製造し、そして投与するかを当業者なら理解しているはずである。
【0125】
本発明の化合物は、本明細書に開示されている疾患又は状態を予防又は治療するために、上記と同じ様式で、同じ投与経路により、同じ薬学的投薬形態を用い、そして同じ投薬スケジュールで使用される。
【0126】
本発明の化合物は、互いに、又は上記で列挙された状態を治療又は予防するために使用される他の治療剤又はアプローチと組み合わせて使用され得る。このような薬剤又はアプローチとしては、以下、すなわち:アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、例えばタクリン(COGNEX(登録商標)として市販されるテトラヒドロアミノアクリジン)、塩酸ドネペジル(Aricept(登録商標)として市販)及びリバスティグミン(rivastigmine)(Exelon(登録商標)として市販);γセクレターゼ阻害剤;抗炎症剤、例えばシクロオキシゲナーゼII阻害剤;抗酸化剤、例えばビタミンE及びギンコリド(ginkolides);免疫学的アプローチ、例えば、Aβペプチドとの免疫化又は抗Aβペプチド抗体の投与;スタチン;並びに直接又は間接的な神経分化誘導物質、例えばCerebrolysin(登録商標)、AIT−082(Emilieu、2000、Arch.Neurol.57:454)、並びに今後の他の神経分化誘導物質が挙げられる。
【0127】
さらに、式(I)の化合物はまた、P−糖タンパク質(P−gp)の阻害剤とともに使用され得る。P−gp阻害剤及びこのような化合物の使用は、当業者に公知である。例えば、Cancer Research、53、4595−4602(1993)、Clin.Cancer Res.、2、7−12(1996)、Cancer Research、56、4171−4179(1996)、国際公開WO99/64001及びWO01/10387を参照のこと。重要なことは、P−gp阻害剤の血液レベルが、P−gpが式(A)の化合物の脳血液レベルの減少を阻害する効果を発揮するようなレベルであることである。この目的のために、P−gp阻害剤及び式(A)の化合物は、同じか若しくは異なる投与経路によって同時に又は異なる時点で投与され得る。重要なことは、投与時間ではなく、有効な血液レベルのP−gp阻害剤を有することである。
【0128】
好適なP−gp阻害剤としては、シクロスポリンA、ベラパミル、タモキシフェン、キニジン、ビタミンE−TGPS、リトナビル、酢酸メゲストロール(megestrol acetate)、プロゲステロン、ラパマイシン、10,11−メタノジベンゾスベラン(methanodibenzosuberane)、フェノチアジン、アクリジン誘導体、例えばGF120918、FK506、VX−710、LY335979、PSC−833、GF−102,918及び他のステロイドが挙げられる。さらなる薬剤が、同じ機能を有し、従って同じ結果を達成することが見出され、このような化合物がまた、有用であるとみなされることは勿論である。
【0129】
P−gp阻害剤は、経口投与、非経口(IV、IM、IM−デポー、SQ、SQ−デポー)投与、局所投与、舌下投与、直腸投与、鼻腔内投与、鞘内投与及び移植片により投与され得る。
【0130】
P−gp阻害剤の治療有効量は、一日当たりおよそ0.1〜およそ300mg/kg、好ましくは一日当たりおよそ0.1〜およそ150mg/kgである。患者は一用量で開始され得るが、用量は、患者の状態変化に従い徐々に変化されるべきであり得ることは勿論である。
【0131】
経口投与の場合、P−gp阻害剤は、当業者に公知であるような経口投与の通常の投薬形態で投与され得る。これらの投薬形態は、錠剤及びカプセルといった通常の固体単位投薬形態、並びに液体投薬形態、例えば溶液、懸濁液及びエリキシル剤が挙げられる。固体投薬形態が使用される場合、P−gp阻害剤が一日に一回又は二回の投与しか必要としないように、持続放出型であることが好ましい。経口投薬形態は、一日に1〜4回患者に投与される。P−gp阻害剤は、一日に3回又はそれ以下のいずれか、より好ましくは、一日に1回又は2回投与されることが好ましい。従って、P−gp阻害剤は、固体投薬形態で投与されることが好ましく、そしてさらに、この固体投薬形態は、一日に1回又は2回の投薬を可能にする持続放出形態であることが好ましい。いかなる投薬形態が使用されようとも、胃の酸性環境からP−gp阻害剤を保護するように設計されることが好ましい。腸溶性錠剤は、当業者に周知である。さらに、各々が酸性の胃から保護されるようにコーティングされた小球で満たされたカプセルはまた、当業者に周知である。
【0132】
さらに、P−gp阻害剤は、非経口投与され得る。非経口投与の場合、これは、IV、IM、デポー−IM、SQ又はデポー−SQ投与され得る。
P−gp阻害剤は、舌下で与えられ得る。舌下に与えられる場合、P−gp阻害剤は、IM投与と同じ量で、一日に1〜4回与えられるべきである。
【0133】
P−gp阻害剤は、鼻腔内投与され得る。この投与経路で与えられる場合、適切な投薬形態は、当業者に公知のように鼻内噴霧又は乾燥粉末である。鼻腔内投与に関するP−gp阻害剤の投薬量は、IM投与と同じ量である。
P−gp阻害剤は、鞘内で与えられ得る。この投与経路で与えられる場合、適切な投薬形態は、当業者に公知のように非経口投薬形態であり得る。
【0134】
P−gp阻害剤は、局所で与えられ得る。この投与経路で与えられる場合、適切な投薬形態は、クリーム、軟膏又はパッチである。投与に必要なP−gp阻害剤量が理由で、パッチが好ましい。しかし、パッチによって送達され得る量には限界がある。従って、2つ又はそれ以上のパッチが必要とされ得る。パッチの数及びサイズは重要ではなく、重要なことは、当業者に公知のようにP−gp阻害剤の治療有効量が送達されることである。
P−gp阻害剤は、当業者に公知のように坐剤によって直腸投与され得る。
【0135】
P−gp阻害剤は、当業者に公知のように移植片によって投与され得る。
P−gp阻害剤の投与に関して、投与経路も投薬形態も新しいことは何もない。特定のP−gp阻害剤及び所望の投薬形態が与えられると、どのようにP−gp阻害剤に適切な投薬形態を製造するかを当業者なら理解しているはずである。
【0136】
正確な投薬量及び投与頻度は、当業者である投与医師に周知のように、投与される特定の本発明の化合物、治療されている特定の状態、治療されている状態の重症度、特定の患者の年齢、体重、一般的な身体的状態、及び個人が摂取し得る他の投薬に左右されることは、当業者に明らかなはずである。
【0137】
APP切断の阻害
本発明の化合物は、APP695アイソフォーム若しくはその突然変異体に対して番号付けされたMet596とAsp597との間、又は異なるアイソフォーム、例えばAPP751若しくはAPP770若しくはそれらの突然変異体の対応する部位(時折、「βセクレターゼ部位」と言われる)でのAPPの切断を阻害する。特定の理論に束縛されることを望まないが、βセクレターゼ活性の阻害は、βアミロイドペプチド(Aβ)の生産を阻害すると考えられている。阻害活性は、種々の阻害アッセイのうちの1つで実証されており、これによって、βセクレターゼ酵素の存在下でのAPP基質の切断は、βセクレターゼ切断部位での切断をもたらすに通常十分な条件下で、この阻害化合物の存在下で分析される。未治療又は不活性コントロールと比較したβセクレターゼ切断部位でのAPP切断の減少は、阻害活性に相関している。本発明の化合物阻害剤の効力を実証するために使用され得るアッセイ系は公知である。代表的なアッセイ系は、例えば米国特許第5,942,400号、同第5,744,346号、及び以下の実施例に記載されている。
【0138】
βセクレターゼの酵素活性及びAβの生産は、天然型、突然変異型、切断型及び/又は合成型APP基質、天然型、突然変異型、切断型及び/又は合成型酵素、並びに試験化合物を用いて、インビトロ又はインビボで分析され得る。この分析は、天然の、突然変異体の及び/若しくは合成のAPP及び酵素を発現する初代若しくは二次細胞、天然のAPP及び酵素を発現する動物モデルを含み得るか、又はこの基質及び酵素を発現するトランスジェニック動物モデルを使用し得る。酵素活性の検出は、例えばイムノアッセイ、蛍光定量若しくは色素生産アッセイ、HPLC又は他の検出手段による1つ又はそれ以上の切断生成物の分析によって行われ得る。阻害化合物は、コントロールと比較して生産されたβセクレターゼ切断生成物量を減少させる能力を有するものとして決定され、ここでこの反応系でのβセクレターゼ媒介切断は、阻害化合物の非存在下で観察及び測定される。
【0139】
βセクレターゼ
βセクレターゼ酵素の種々の形態が公知かつ入手可能であり、そして酵素活性のアッセイ及び酵素活性の阻害に有用である。これらは、この酵素の天然、組換え及び合成形態を含む。ヒトβセクレターゼは、β部位APP切断酵素(Beta Site APP Cleaving Enzyme)(BACE)、Asp2及びメマプシン2として公知であり、そして例えば、米国特許第5,744,346号並びに公開されたPCT特許出願WO98/22597、WO00/03819、WO01/23533及びWO00/17369、並びに文献刊行物(Hussainら、1999、Mol.Cell.Neurosci.14:419−427;Vassarら、1999、Science 286:735−741;Yanら、1999、Nature 402:533−537;Sinhaら、1999、Nature 40:537−540;及びLinら、2000、PNAS USA 97:1456−1460)に特徴付けられている。この酵素の合成形態がまた記載されている(WO98/22597及びWO00/17369)。βセクレターゼは、ヒト脳組織から抽出及び精製され得、そして細胞、例えば組換え酵素を発現する哺乳動物細胞内で生産され得る。
【0140】
好ましい化合物は、50ミクロモル未満の濃度、好ましくは10ミクロモル以下、より好ましくは1ミクロモル以下、そして最も好ましくは10ナノモル以下の濃度でβセクレターゼの酵素活性の50%を阻害するに有効なものである。
【0141】
APP基質
APPのβセクレターゼ媒介切断の阻害を実証するアッセイは、Kangら、1987、Nature 325:733−6に記載されている695アミノ酸の「標準の」アイソタイプ、Kitaguchiら、1981、Nature 331:530−532に記載されている770アミノ酸のアイソタイプ、及び変異体、例えばスウェーデン型突然変異(KM670−1NL)(APP−SW)、ロンドン型突然変異(V7176F)並びに他のものを含む公知の形態のAPPのうちのいずれかを使用し得る。例えば、米国特許第5,766,846号及びまた公知の変異体の突然変異の概説に関するHardy、1992、Nature Genet.1:233−234を参照のこと。さらなる有用な基質としては、二塩基性アミノ酸修飾、例えばWO 00/17369に開示されているAPP−KK、APPのフラグメント及びβセクレターゼ切断部位を含む合成ペプチド、野生型(WT)又は突然変異形態、例えば米国特許第5,942,400号及びWO00/03819に記載されているSWが挙げられる。
【0142】
APP基質は、APPのβセクレターゼ切断部位(KM−DA又はNL−DA)を含むものであり、例えば完全なAPPペプチド又は変異体、APPフラグメント、組換え若しくは合成APP、又は融合ペプチドである。好ましくは、この融合ペプチドは、酵素アッセイに有用な部分、例えば単離及び/又は検出性質を有するペプチドに融合されるβセクレターゼ切断部位を含むものである。有用な部分は、抗体結合のための抗原エピトープ、標識又は他の検出部分、結合基質などであり得る。
【0143】
抗体
APP切断に特徴的な生成物は、例えば、Pirttilaら、1999、Neuro.Lett.249:21−4及び米国特許第5,612,486号に記載されている種々の抗体を用いたイムノアッセイによって測定され得る。Aβの検出に有用な抗体としては、例えばAβペプチドのアミノ酸1〜16上のエピトープを特異的に認識するモノクローナル抗体6E10(Senetek、St.Louis、MO);それぞれヒトAβ1〜40及び1〜42に特異的な抗体162及び164(New York State Institute for Basic Research、Staten Island、NY);並びに米国特許第5,593,846号に記載されているβアミロイドペプチドの結合領域である残基16と17との間の部位を認識する抗体が挙げられる。APPの残基591〜596の合成ペプチドに対して生成された抗体、及びスウェーデン型突然変異の590〜596に対して生成されたSW192抗体はまた、米国特許第5,604,102号及び同第5,721,130号に記載されている通り、APP及びその切断生成物のイムノアッセイに有用である。
【0144】
アッセイ系
βセクレターゼ切断部位でのAPP切断を測定するアッセイは、当該分野で周知である。代表的なアッセイは、例えば米国特許第5,744,346号及び同第5,942,400号に記載されており、そして以下の実施例に記載される。
【0145】
無細胞アッセイ
本発明の化合物の阻害活性を実証するために使用され得る代表的なアッセイは、例えば、WO00/17369、WO00/03819並びに米国特許第5,942,400号及び同第5,744,346号に記載されている。このようなアッセイは、βセクレターゼを発現する細胞、及びβセクレターゼ切断部位を有するAPP基質を用いて、無細胞インキュベーション又は細胞インキュベーション中で行われ得る。
【0146】
APPのβセクレターゼ切断部位を含むAPP基質、例えば、次のアミノ酸配列、すなわち:KM−DA又はNL−DAを含む完全なAPP若しくは変異体、APPフラグメント、又は組換え若しくは合成APP基質は、この酵素の切断活性に好適なインキュベーション条件下で、βセクレターゼ活性を有し、そしてAPPのβセクレターゼ切断部位を切断するに有効なβセクレターゼ酵素、そのフラグメント又は合成若しくは組換えのポリペプチド変異体の存在下でインキュベートされる。好適な基質は、場合により、基質ペプチド、及びペプチド又はそのβセクレターゼ切断生成物の精製又は検出を容易にするのに有用な修飾を含む融合タンパク質又はペプチドであり得る誘導体を含む。有用な修飾としては、抗体結合のための公知の抗原エピトープの挿入;標識又は検出可能な部分の連結、結合基質の連結などが挙げられる。
【0147】
無細胞のインビトロアッセイに好適なインキュベーション条件としては、例えば次の条件:基質およそ150ナノモル〜10ミクロモル、酵素およそ10〜200ピコモル及び阻害化合物およそ0.1ナノモル〜10ミクロモル、水溶液中、pHおよそ4〜7、およそ37℃、およそ10分〜3時間の期間が挙げられる。これらのインキュベーション条件はただ単に代表であり、そして特定のアッセイコンポーネント及び/又は所望の測定系が、必要に応じて変化され得る。特定のアッセイコンポーネントに対するインキュベーション条件の最適化は、使用される特定のβセクレターゼ酵素及びその至適pH、アッセイに使用され得る任意のさらなる酵素及び/又はマーカーなどを明らかにするべきである。このような最適化は常用の手順であり、そして過度の実験を必要としない。
【0148】
細胞アッセイ
非常に多くの細胞ベースのアッセイは、Aβを解放するβセクレターゼ活性及び/又はAPPのプロセシングを分析するために使用され得る。細胞内及び本発明の化合物阻害剤の存在又は非存在下で、βセクレターゼ酵素とAPP基質とを接触させることは、この化合物のβセクレターゼ阻害活性を実証するために使用され得る。好ましくは、有用な阻害化合物の存在下でのアッセイは、阻害されないコントロールと比較して、酵素活性を少なくともおよそ30%、最も好ましくは少なくともおよそ50%阻害する。
【0149】
一実施態様において、βセクレターゼを天然に発現する細胞が使用される。あるいは細胞は、上記で議論されるように、組換えβセクレターゼ又は合成変異体酵素を発現するように修飾される。このAPP基質は、培養基に添加され得るか、又は好ましくは細胞内で発現される。APP、APPの変異体若しくは突然変異体形態を天然に発現する細胞、又はβセクレターゼのAPP切断部位を含むAPP、突然変異体若しくは変異体APPのアイソフォーム、組換え若しくは合成APP、APPフラグメント若しくは合成APPペプチド、又は融合タンパク質を発現するように形質転換された細胞が使用され得、但し、発現されるAPPは酵素と接触可能であり、そして酵素的切断活性が分析され得る。
【0150】
通常AβをAPPからプロセシングするヒト細胞系統は、本発明の化合物の阻害剤活性をアッセイする有用な手段を提供する。培養基へのAβ及び/又は他の切断生成物の生産及び解放は、例えばイムノアッセイ、例えば、ウエスタンブロット又は酵素結合イムノアッセイ(EIA)、例えば、ELISAによって測定され得る。
【0151】
APP基質及び活性なβセクレターゼを発現する細胞は、コントロールと比較して酵素活性の阻害を実証するために、化合物阻害剤の存在下でインキュベートされ得る。βセクレターゼの活性は、APP基質の1つ又はそれ以上の切断生成物の分析によって測定され得る。例えば、基質APPに対するβセクレターゼ活性の阻害は、特定のβセクレターゼ誘導性のAPP切断生成物、例えばAβの解放を減少することが期待される。
【0152】
神経細胞及び非神経細胞の両方が、Aβをプロセシング及び解放するが、内因性のβセクレターゼ活性レベルは低く、EIAによる検出はしばしば困難である。従って、βセクレターゼ活性が増強し、APPのAβへのプロセシングが増強し、そして/又はAβの生産が増強したことが知られる細胞型の使用が好ましい。例えば、APPのスウェーデン型突然変異体形態(APP−SW);APP−KK;又はAPP−SW−KKとの細胞のトランスフェクションは、βセクレターゼ活性が増強し、そして容易に測定され得るAβ量を生産する細胞を提供する。
【0153】
このようなアッセイにおいて、例えば、APP及びβセクレターゼを発現する細胞は、APP基質上の切断部位でのβセクレターゼ酵素活性に好適な条件下で、培養基中でインキュベートされる。細胞を化合物阻害剤に曝露すると、培地に解放されるAβ量及び/又は細胞溶菌液中のAPPのCTF99フラグメント量が、コントロールと比較して減少する。APPの切断生成物は、例えば、上記で議論される特異的抗体を用いたイムノアッセイによって分析され得る。
【0154】
βセクレターゼ活性の分析に好ましい細胞としては、初代ヒト神経細胞、初代モルモット神経細胞、導入遺伝子がAPPである初代トランスジェニック動物神経細胞、及び他の細胞、例えばAPPを発現する安定なH4神経芽細胞腫細胞系統(例えばAPP−SW)が挙げられる。
【0155】
インビボアッセイ:動物モデル
種々の動物モデルは、上記のように、Aβを解放するβセクレターゼ活性及び/又はAPPのプロセシングの分析に使用され得る。例えば、APP基質及び/又はβセクレターゼ酵素を発現するトランスジェニック動物は、本発明の化合物の阻害活性を実証するために使用され得る。特定のトランスジェニック動物モデルは、例えば、次の米国特許:5,877,399;5,612,486;5,387,742;5,720,936;5,850,003;5,877,015及び5,811,633、並びにGanesら、1995、Nature 373:523に記載されている。ADの病態生理学に関連した特徴を示す動物が好ましい。本明細書に記載されているトランスジェニックマウスへの本発明の化合物阻害剤の投与は、この化合物の阻害活性を実証する別法を提供する。薬学的に有効な担体中で、そして適切な治療量で標的組織に達する投与経路を介した化合物の投与がまた好ましい。
【0156】
βセクレターゼ切断部位でのAPPのβセクレターゼ媒介切断及びAβ解放の阻害は、動物の体液、例えば大脳脊髄液、血漿又は組織中の切断フラグメントを測定することにより、これらの動物内で分析され得る。Aβ沈着又は斑に対する脳組織の分析はまた、βセクレターゼ活性の阻害を示唆する。
【0157】
本発明の阻害化合物の存在下、並びにAPPの酵素媒介切断及び/又は基質からのAβの解放を可能にするに十分な条件下で、APP基質をβセクレターゼ酵素と接触させると、本発明の化合物は、βセクレターゼ切断部位でのAPPのβセクレターゼ媒介切断の減少及び/又は解放されるAβ量の減少に有効である。このような接触が、例えば上記の動物モデルへの本発明の阻害化合物の投与である場合、この化合物は、動物の脳組織中のAβ沈着の減少並びにβアミロイド斑の数及び/又はサイズの減少に有効である。このような投与が、ヒト被験体への投与である場合、この化合物は、Aβ量の減少によって特徴付けられる疾患進行の阻害若しくは遅延、AD進行の遅延、及び/又はこの疾患の危険性にある患者のADの発症若しくは発達の予防に有効である。
【0158】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての科学用語及び技術用語は、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解される意味と同じものを有する。本明細書で言及されるすべての特許及び刊行物は、すべての目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0159】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより一層理解され得る。これらの実施例は、本発明の特定の実施態様の代表であることが意図され、本発明の範囲を限定すると意図されない。
【0160】
製造例
A.7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−ピペリジン−1−イル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オンの製造
臭化銅(II)(1.05g、4.70mmol)を、酢酸エチル/クロロホルム1:1中の7−(2,2−ジメチル−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン(1.0g、4.62mmol)の還流溶液に添加した。およそ1時間の還流後、この混合物を冷却し、濾過して(セライト)銅塩を除去し、水及び食塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、そして濃縮して、2−ブロモ−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オンを得た。この物質を、THF(50mL)に直ちに溶解し、トリエチルアミン(1.3mL、9.32mmol)を添加し、その後ピペリジン(0.51mL、5.15mmol)を添加し、そして得られる混合物を、周囲温度で一晩撹拌した。この反応混合物を濃縮し、CH2Cl2に溶解し、そして水及び食塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、そして濃縮して、7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−ピペリジン−1−イル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オンを得た。
【0161】
B.7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−ピペリジン−1−イル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミンの製造
エタノール(25mL)中の7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−ピペリジン−1−イル−3,4−ジヒドロ−2H−ナフタレン−1−オン(0.45g、1.50mmol)、ヒドロキシルアミン塩酸塩(0.11g、1.58mmol)及びピリジン(1.28mL、15.8mmol)を、およそ1.5時間還流し、冷却し、そして濃縮して乾燥させた。残留物を、酢酸エチルと水との間で分配し、有機物を食塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、そして濃縮して、オキシム異性体の混合物を得た。これらを、エタノールに溶解し、そしてラネーニッケル(0.3g、w/w)の存在下、45psiで水素化した。およそ16時間後、この反応物を濾過し、そして濃縮して、7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−ピペリジン−1−イル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミンを得た。
【0162】
実施例1.N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−ピペリジン−1−イル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミドの製造
イソプロパノール中のtert−ブチル(S)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−1−((S)−オキシラン−2−イル)エチルカルバメート(0.36g、1.20mmol)及び7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−ピペリジン−1−イル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミン(0.30g、1.00mmol)を、およそ16時間還流し、冷却し、そしてシリカゲル上で濃縮した。5〜15%メタノール/酢酸エチルを用いたクロマトグラフィーにより、未反応のエポキシドを除去し、そして{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−ピペリジン−1−イル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−カルバミン酸tert−ブチルエステルを得た。これを、ジオキサン(3mL)に溶解し、そして4N HCl/ジオキサンで処理した。この混合物を、周囲温度でおよそ18時間撹拌し、そして濃縮して、3−アミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−1−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−ピペリジン−1−イル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−ブタン−2−オールの塩酸塩を得た。この粗製アミンを、CH2Cl2(10mL)に溶解し、そして氷中で冷却した。N−メチルモルホリン(0.66mmol、6.00mmol)、酢酸(0.057mL、1.00mmol)、HOBT(0.15g、1.11mmol)及びEDC(0.21g、1.10mmol)を順次添加し、そしてこの反応混合物を、室温でおよそ16時間にわたり温めた。この反応物を濃縮し、酢酸エチルと水との間で分配し、この有機物を食塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、そして濃縮した。この粗生成物を、5〜20%メタノール/酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−ピペリジン−1−イル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミドを得た。
【0163】
生物学的実施例
実施例A
合成APP基質を用いた無細胞BACE1阻害アッセイ
βセクレターゼによって切断され得、そしてN−末端ビオチンを有し、そしてCys残基へのオレゴングリーン(Oregon green)の共有結合により蛍光を生じる合成APP基質を、阻害化合物の存在下又は非存在下でβセクレターゼ活性をアッセイするために使用した。この基質は、ビオチン−GLTNIKTEEISEISY−EVEFRC[オレゴングリーン]KK(配列番号1)であった。この酵素(0.1ナノモル)及び試験化合物(0.00002〜200ミクロモル)を、事前にブロッキングされた低親和性の暗所のプレート(384ウェル)中、RTで30分間インキュベートした。この反応を、1ウェル当たり基質150ナノモルを30マイクロリットルの最終容量まで添加することによって開始させた。この最終アッセイ条件は、次の通りである。すなわち:化合物阻害剤0.00002〜200ミクロモル;酢酸ナトリウム(pH4.5) 0.1モル;基質150ナノモル;可溶性βセクレターゼ0.1ナノモル;0.001% Tween20、及び2% DMSO。このアッセイ混合物を、37℃で3時間インキュベートし、そしてこの反応を、飽和濃度のイムノピュアな(immunopure)ストレプトアビジン(0.75ミクロモル)の添加によって終結させた。室温で15分間のストレプトアビジンとのインキュベーション後、蛍光偏光を、例えばPerkinElmer Envision(Ex485nm/Em530nm)を用いて測定した。βセクレターゼ酵素活性を、基質が酵素によって切断されるときに生じる蛍光偏光変化によって検出した。化合物阻害剤の存在下でのインキュベーションは、合成APP基質のβセクレターゼ酵素切断の特異的阻害を実証した。このアッセイにおいて、好ましい本発明の化合物は、50ミクロモル未満のIC50を示した。より好ましい本発明の化合物は、10ミクロモル未満のIC50を示した。なおより好ましい本発明の化合物は、5ミクロモル未満のIC50を示した。なおより好ましい本発明の化合物は、100ナノモル未満のIC50を示した。なおより好ましい本発明の化合物は、10ナノモル未満のIC50を示した。
【0164】
実施例B
βセクレターゼ活性の阻害−細胞アッセイ
βセクレターゼ活性の阻害分析に関する代表的なアッセイは、米国特許第5,604,102号に記載されているように、一般的にスウェーデン型突然変異と呼ばれ、そしてAβを過剰生産することが示されている(Citronら、1992、Nature 360:672−674)天然に存在する二重突然変異、Lys651Met52〜Asn651Leu652(APP751に対する番号付け)を含むH4ヒト神経芽細胞腫細胞系統(ATCC受託番号CRL−1573)を使用した。
【0165】
この細胞を、5%未満のDMSOの最終濃度で、所望の濃度(一般に30μMまで)の阻害化合物(DMSOストックから充当)の存在/非存在下でインキュベートした。処理期間の終わりに、ならし培地を、例えば切断フラグメントの分析によってβセクレターゼ活性について分析した。Aβを、特異的な検出抗体を用いてイムノアッセイにより分析し得た。この酵素活性を、化合物阻害剤の存在及び非存在下で測定して、APP基質のβセクレターゼ媒介切断の特異的阻害を実証した。
【0166】
例えば、このアッセイを、1日目の朝に細胞をプレーティングし(30,000細胞/ウェルのプレーティング密度、H4swe)、そして37℃でおよそ6時間インキュベートすることによって2日間行い得た。1日目の午後に、この細胞を培地又はPBSで1回洗浄して、蓄積したABを除去した。新鮮な培地を添加し、次いで本発明の化合物を、各ウェルに添加した(培地95μl+10% DMSO中の20×化合物ストック5μl)。この細胞を、5% CO2中37℃で一晩インキュベートした。
【0167】
一連の96ウェルNunc immuno−sorpプレートを、捕獲(capture)抗体(6E10)Aβでコーティングし;各ウェルを、炭酸塩/重炭酸塩コーティング緩衝液中で製造された1mg/ml 6E10 50μlでコーティングした。この炭酸塩/重炭酸塩コーティング緩衝液は、pH9.5の精製水500ml、Na2CO3 0.8g及びNaHCO3 1.5gを含んだ。プレートを密封し、そして4℃で一晩インキュベートした。
【0168】
2日目、6E10でコーティングしたプレートを、室温に15〜30分間置き、そしてプレート洗浄機を用いて0.05% PBSTで3〜4回洗浄した。PBST中の1%ミルクを1ウェル当たり200μl添加して、続いて添加したならし培地又はAβ標準の非特異的結合をブロッキングした。
このプレートを覆い、そして室温で少なくとも1時間インキュベートした。このプレートを、PBSTで3〜4回洗浄して、ブロッキングを除去した。H4細胞に基づく細胞ならし培地(上記の化合物で一晩予め処理済)又はAβ標準を、ウェルに添加した(50μl/ウェル、2時間、暗所、室温)。MTTアッセイを、場合によりこの細胞に行った(2時間のインキュベーション、37℃)。
【0169】
ELISAプレートを、PBSTで3〜4回洗浄した。ビオチン化レポーターAβ抗体を添加し(50μl/ウェル(PBST中4G8−ビオチン化 1:5000)、1〜2時間、室温)、暗所)、その後PBSTで3〜4回洗浄した。ストレプトアビジン−HRP(PBST中1:10,000)を添加し(50μl/ウェル)、そしてプレートをインキュベートした(30分〜1時間、室温、暗所)。このプレートを、PBSTで3〜4回洗浄した。TMB−ペルオキシダーゼ基質50μl/ウェルを室温で添加し、そして所望の青色を示すまで、インキュベーションを室温で行った。この反応を、0.09M H2SO4を1ウェル当たり50μl添加することによって停止させた。色は黄色になった。Spectramaxで450nmでの読取りを行った。
【0170】
実施例C
モルモット神経細胞培養アッセイ
混合した皮質及び海馬ニューロンを、モルモット胚から単離し、そしてインビトロで培養した。代表的な方法において、およそ25日胚で、モルモットをイソフルランチャンバー内で麻酔し、そして断頭した。胚を含む子宮を取り出し、そして濡れた氷上の50mLチューブ内の冷Hibernate E 25mL中に置いた。解剖顕微鏡下でHibernate Eをちょうど十分に含むコールドプレート(4℃)上のペトリ皿中で頭蓋を剥ぎ取り、そして脳及び小脳を取り出した。半球を分離し、その後中脳を取り出した。髄膜を、皮質から取り去った。この皮質組織を、濡れた氷上の15mlチューブ内のHibernate E/B27中に置き、すべての胚由来の組織をプールした(Hib E/B27 10mL中3〜6胚)。B27(50×溶液 Gibco BRL*17504−044)を、1:50比でHibernate E培地に添加した。
【0171】
Hibernate E/B27のすべてをチューブから取り出し、そして粉砕するために新しい15mLチューブに移した。2mg/mlパパイン溶液5mlを、37℃で25分間、チューブ内の組織に添加した。プールされた組織から6を超える胚を使用する場合、パパイン溶液10mLを使用した。10mg/mlパパイン(Roche 0108014)1ml+B27を含まないHibernate E 4mlを、37℃で5分間温め、そして0.2μmシリンジフィルターに通して濾過した。
【0172】
第一の粉砕を、Hibernate E/B27 2ml及び1mg/ml DNAse(Sigma D4263)20μLを用いて行った。パパイン溶液を除去した後、組織を、10〜15回火炎処理した(flame−polished)パスツールピペットに通して粉砕した。さらに1〜2回粉砕工程を行い、毎回Hibernate E/B27 2mLで10〜15回粉砕し、毎回火炎でピペット開口部のサイズを小さくした。上清を、100μmストレーナ(Falcon 352350)に通して濾過し、そして250×gで5分間回転沈降させた。ペレットを、1:50比のB27(50×溶液、Gibco BRL 17504−044)、1:400比の0.5mMグルタミン(200mM Gibco BRL 25030−081)、Invitrogen 15240062 抗生剤−抗真菌剤(100×)、及び50% 0.1M HCl/50% Neurobasal中の25mMストックから1:1000比の25μMグルタメート(このグルタメートは、最初のプレーティング培地にしか使用しなかった)を含むプレーティング培地10mlで再懸濁した。細胞を、1.5×105細胞/cm2=6×105細胞/mLの濃度で、1ウェル当たり500μL添加して、ポリ−D−リジン24ウェルプレート(Biocoat 356414)上にプレーティングした。
【0173】
ニューロンに、培養基での培養後4〜5日に1回、グルタメートを含まないNeurobasal/B27+グルタミン+P/S/FZを1ウェル当たり500μl再供給した。ベースラインサンプル(300μl)を、DIV 15(最後の再供給の3〜4日後)に各ウェルから取り出し、96ウェルプレートに移し、そしてアッセイまで−20℃で凍結させた。
【0174】
本発明の化合物の希釈サンプルを、12ウェルからなる列に各薬物を含む96ウェルプレート中で100% DMSO中の10mMストックから製造し、ウェル中の得られる濃度は、DMSO中10mM、3mM、1mM、0.3mM、0.1mM、0.03mM、0.01mM、0.003mM、0.001mM、0.0003mM、0.0001mM及び0.00003mMであった。各ウェルを、再供給培地で1:10に希釈した。残りの培地を、すべての細胞から吸引し、そして新鮮な培地500μLで置換した。この化合物を、1:100希釈で二重反復のウェルに添加した(1ウェル当たり5μL添加)。最終的な化合物濃度は、10μM〜100pMであった。3〜4日後*、サンプルを各ウェルから取り出し(300μl)、そして96ウェルプレートに移した。このサンプルを、アッセイするまで−20℃で凍結処理した。
【0175】
MTSアッセイ(Promega G3581)を用いた細胞毒性アッセイを、MTS一溶液試薬/ウェル(10μl)を用いて各ウェル(バックグラウンドの色差し引きのため、培地しか含まないプレートのウェルを含む)に対して37℃で2時間行った。各ウェルから100μlを新しい96ウェルプレートに移し、そして2つの培地のみ/MTS試薬のウェルを、バックグラウンド差し引き用に含めた。読取りを、490nmで行った。サンプルのアッセイのために、サンプルを室温で融解し、そしてELISAサンプル/ブロッキング緩衝液PBST+1% BSAを用いて1:2に希釈した。
* 総Aβ測定に関して、培養3日で非常に強力なシグナルが生じるが、24時間でもAβの測定には十分であった。
C末端特異的アッセイに関して(すなわち、Aβ1〜38/1〜40/1〜42)、シグナル(特にAβ1〜42)が極めて低いので、培地の収集までに完全に4日間を要した。
【0176】
実施例D
ADの動物モデルでのβセクレターゼの阻害
種々の動物モデルを、βセクレターゼ活性の阻害をスクリーニングするために使用し得た。本発明に有用な動物モデルの例としては、マウス、モルモット、イヌなどが挙げられるがこれらに限定されない。使用される動物は、野生型、トランスジェニック又はノックアウトモデルであり得た。さらに、哺乳動物モデルは、APPで突然変異を発現し得、これは例えば、本明細書に記載されているAPP695−SWなどであった。トランスジェニック非ヒト哺乳動物モデルの例は、米国特許第5,604,102号、同第5,912,410号及び同第5,811,633号に記載されている。
【0177】
Hsiaoら、1996に記載されている通りに製造されたTg2576マウスは、推定上の阻害化合物の存在下でのAβ解放のインビボ抑制の分析に有用であった。Tg2576マウスに、ビヒクル、例えば20% DMSO:20%エタノール:60%ポリエチレングリコール中で処方された化合物を投与した。このマウスに、化合物(100〜300mg/kg;好ましくは1〜100mg/kg)を投薬した。その後、例えば3〜10時間後、このマウスを屠殺し、そして分析のために脳を取り出した。
【0178】
トランスジェニック動物に、選択された投与様式に好適な担体中で処方された化合物阻害剤量を投与した。コントロール動物を、処置しないか、ビヒクルで処置するか又は不活性化合物で処置した。投与は、急性、すなわち一日の間に単一用量若しくは複合用量を投与するものであり得るか、又は慢性、すなわち一日、一週間又は一ヶ月の期間、投薬を毎日反復するものであり得た。0時間で開始し、脳組織又は大脳脊髄液若しくは血漿を選択した動物から得て、そして例えば、Aβを検出するための特異的抗体を用いたイムノアッセイによって、Aβを含むAPP切断ペプチドの存在を分析した。試験期間の終わりに、動物を屠殺し、そして脳組織又は大脳脊髄液若しくは血漿を、Aβ、sAPPβ及び/又はβアミロイド斑の存在について分析した。この組織をまた、変性の徴候についても分析した。
【0179】
本発明の化合物阻害剤を投与された動物は、未処置コントロールと比較して、脳組織若しくは大脳脊髄液若しくは血漿中のAβの減少、及び/又は脳組織中のβアミロイド斑の減少を示すことが期待された。
【0180】
実施例E
ヒト患者でのAβ生産の阻害
アルツハイマー病(AD)を患う患者は、脳内のAβ量の増加を示した。AD患者に、選択された投与様式に好適な担体中で処方された化合物阻害剤量を投与した。投与を、試験の継続期間中毎日反復した。0日目で開始し、認知及び記憶試験を、例えば1ヶ月に1回行った。
化合物阻害剤を投与された患者は、コントロールの未処置患者と比較して、1つ又はそれ以上の次の疾患パラメータ、すなわち:CSF又は血漿中のAβ存在;脳又は海馬の体積;脳内のAβ沈着;脳内のアミロイド斑;並びに認知及び記憶機能のスコアの変化によって分析されるように、疾患進行の遅延又は安定化を示すことが期待された。
【0181】
実施例F
ADの危険性にある患者のAβ生産の予防
ADに罹患しやすいか又はADを患う危険性にある患者を、家族性の遺伝パターン、例えば、スウェーデン型突然変異の存在を認識すること、及び/又は診断パラメータをモニターすることのいずれかによって同定した。ADに罹患しやすいか又はADを患う危険性にあると同定された患者に、選択された投与様式に好適な担体中で処方された化合物阻害剤量を投与した。投与を、試験の継続期間中毎日反復した。0日目で開始し、認知及び記憶試験を、例えば1ヶ月に1回行った。
化合物阻害剤を投与された患者は、コントロールの未処置患者と比較して、1つ又はそれ以上の次の疾患パラメータ、すなわち:CSF又は血漿中のAβ存在;脳又は海馬の体積;脳内のアミロイド斑;並びに認知及び記憶機能のスコアの変化によって分析されるように、疾患進行の遅延又は安定化を示すことが期待された。
【0182】
本発明は、種々の特定及び好ましい実施態様及び技術に関して記載されている。しかし、多くの変化及び修飾が、本発明の趣旨及び範囲内にありながら行われ得ることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:。
【化1】

の化合物。
上記式中、
Wは、(i)H、ハロゲン、CN、NO2、OH、O−C1−C8アルキル、NH2、NH−C1−C8アルキル、N(C1−C8アルキル)2、NHCO−C1−C8アルキル及びCONH−C1−C8アルキルから各々独立して選択される1〜3の置換基で場合により置換されるC6−C10アリール、並びに(ii)H、ハロゲン、CN、NO2、OH、O−C1−C8アルキル、NH2、NH−C1−C8アルキル、N(C1−C8アルキル)2、NHCO−C1−C8アルキル及びCONH−C1−C8アルキルから各々独立して選択される1〜3の置換基で場合により置換されるC5−C10ヘテロアリールからなる群より選択され;
1は、3つまでのフルオロ原子で場合により置換されるC1−C6アルキルであり;
5及びR6は、H、C1−C8アルキル、C2−C8アルケニル、C3−C8アルキニル、C3−C8シクロアルキル、5〜10員のヘテロアリール及びC6−C14アリールからなる群より各々独立して選択され;
pは、0〜1であり;
【化2】

は、単結合又は二重結合を表すものであり、但し、
【化3】

が二重結合であるならば、Xは、N、C(C1−C6アルキル)又はOであるが、但しXがOであり、そしてpが1ならば、R10は存在しないものとし;そして但し
【化4】

が単結合であるならば、Xは、C0−C6アルキレン、C(=C1−C6アルキリデン)、C(=N−O−C1−C6アルキル)、C(=N−C1−C6アルキル)、C=O、NH、NC1−C6アルキル又はOであるものとし;そして
10は、H、C1−C6アルキル、−OH、−O−C1−C6アルキル、−CO−C1−C6アルキル、−COO−C1−C6アルキル、−NH−C1−C6アルキル、−N(C1−C6アルキル)−C1−C6アルキル、−CO−N(C1−C6アルキル)−C1−C6アルキル、5〜10員のヘテロアリール、5〜10員のヘテロシクロアルキル、C6−C14アリール、S(O)q1−C6アルキル及びS(O)q6−C10アリールからなる群より選択される。
【請求項2】
1がCH3である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
5が、ネオペンチル又はt−ブチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
【化5】

が単結合を表し、そしてXが、C(=C1−C6アルキリデン)、C(=N−O−C1−C6アルキル)、C(=N−C1−C6アルキル)、C=O、NH、NC1−C6アルキル及びOからなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
【化6】

が二重結合を表し、そしてXが、N及びC(C1−C6アルキル)からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
10が、H、C1−C6アルキル、−OH、−O−C1−C6アルキル、−CO−C1−C6アルキル、−COO−C1−C6アルキル、−NH−C1−C6アルキル、−CO−N(C1−C6アルキル)−C1−C6アルキル、5〜10員のヘテロアリール、5〜10員のヘテロシクロアルキル及びC6−C14アリールからなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
化合物が、式Ia:
【化7】

(式中、R2、R3、R4は、H、ハロゲン、CN、NO2、OH、O−C1−C8アルキル、NH2、NH−C1−C8アルキル、N(C1−C8アルキル)2、NHCO−C1−C8アルキル及びCONH−C1−C8からなる群より各々独立して選択される)
の化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
2がフルオロである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
4がフルオロである、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
化合物が、式Iaa:
【化8】

の化合物、又は式Iaaの化合物の鏡像異性体である、請求項7に記載の化合物。
【請求項11】
化合物が、光学異性体であるIaaである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
化合物が、
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−ピペリジン−1−イル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−(1H−イミダゾール−2−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−モルホリン−4−イル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−メチルアミノ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
1−[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−カルボン酸メチルエステル;
1−[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−カルボン酸ジメチルアミド;
N−[3−[2−アセチル−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
ジメチル−カルバミン酸1−[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イルエステル;
炭酸1−[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イルエステルメチルエステル;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−(1,3,3−トリメチル−ウレイド)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
[1−[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル]−メチル−カルバミン酸メチルエステル;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−(1−メトキシイミノ−エチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−(1−メトキシ−エチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−[3−[2−アセチルアミノ−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−メタンスルホニルアミノ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−(3−メチル−3H−イミダゾール−4−イルメチレン)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−{1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−スルファモイル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−2−ヒドロキシ−プロピル}−アセトアミド;
N−[3−[7−(2,2−ジメチル−プロピル)−2−モルホリン−4−イル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イルアミノ]−1−(4−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;及び
1−[3−アセチルアミノ−4−(2,6−ジフルオロ−ピリミジン−4−イル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−7−(2,2−ジメチル−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−2−カルボン酸ジメチルアミド
からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物及び薬学的に受容可能な担体を含む薬学的組成物。
【請求項14】
アルツハイマー病の発症を予防若しくは遅延させるか、もしそうでなければ軽い認知障害からアルツハイマー病へと進行することが予想される患者のアルツハイマー病の発症を予防若しくは遅延させるか、又は脳のアミロイド血管症の潜在的な重要性、例えば単独及び再発性の葉性出血を予防する方法であって、このような治療を必要とする患者に、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に受容可能な塩を投与することを含む、上記方法。

【公表番号】特表2008−530079(P2008−530079A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554676(P2007−554676)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際出願番号】PCT/IB2006/000301
【国際公開番号】WO2006/085216
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】