説明

耐熱遮光フィルム

【課題】デジタルカメラ、デジタルビデオカメラのレンズシャッターなどに用いられるシャッター羽根または絞り羽根や、カメラ付き携帯電話や車載モニターのレンズユニット内の固定絞りや、液晶プロジェクタの光量調整モジュールの絞り羽根などの光学機器部品として用いられ、耐熱性、高遮光性、低反射性に優れた耐熱遮光フィルムを提供する。
【解決手段】200℃以上の耐熱性を有する樹脂フィルム基材(A)の片面もしくは両面に、スパッタリング法で形成された50nm以上の膜厚を有する金属遮光膜(B)と、5nm以上の低反射性の金属酸化物膜(D)が積層された耐熱遮光フィルムにおいて、金属遮光膜(B)と金属酸化物膜(D)の間に1〜50nmの膜厚を有する酸化防止膜(C)がスパッタリング法で形成されている耐熱遮光フィルムにより提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱遮光フィルムに関し、より詳しくは、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラのレンズシャッターなどのシャッター羽根または絞り羽根やプロジェクタの絞りや光量調整用絞り装置(オートアイリスともいう)の絞り羽根などの光学機器部品として用いられ、遮光性、耐熱性、摺動性、低光沢性、導電性、酸化防止性に優れた耐熱遮光フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、カメラ用のシャッター羽根や絞り羽根は、シャッタースピードが高速化し、極めて短時間に動作と停止を行うので、軽量化かつ高摺動性である必要がある。また、フィルムなどの感光材、CCDなどの撮像素子の前面を覆って光を遮るものなので、基本的に遮光性を必要とする。更に、光学機器用の羽根は、複数枚が互いに重なり合って動作するので滑らかな動作のために潤滑性が必要となる。また、各羽根間の漏れ光を防ぐために表面の正反射率は低いことが望まれる。使用環境によっては、カメラ内部が高温となる場合があり、耐熱性が求められている。
一方、プレゼンテーション、ホームシアターなどの映像観賞用の投影装置である液晶プロジェクタの光量調整用絞り羽根として使用される遮光フィルムにおいても、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラと同様な特性が求められ、特に耐熱性に関しては、カメラ以上の特性が求められている。
【0003】
一般的に、上記遮光フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチックフィルムやSUS、SK材、Al等の金属薄板を基材としたものが実用化されている。カメラのレンズシャッターにおいて、金属薄板の遮光フィルムをシャッター羽根、絞り羽根として用いる場合、羽根材を開閉する際に、金属板同士が擦れあって大きな騒音が発生する。また、液晶プロジェクタでは、映像が変化するときに光量調整用絞り装置の羽根を高速で移動させて各画像の輝度変化を和らげる必要があるが、金属薄板の遮光フィルムを絞り羽根に用いた場合、羽根同士が擦れの騒音を繰り返し発生する。また、この騒音を低減するためには羽根を低速で動作することになり、この場合、画像の変化に光量調整が追いつかず、画像が不安定となるという問題があった。
前記問題や軽量化の観点から、近年の遮光フィルムの構成は、金属薄板でなくプラスチックフィルムを基材に用いることが主流となってきている。更に、絶縁性のプラスチックフィルムを遮光羽根に用いると、静電気の帯電によるゴミ付着の問題が生じるため、プラスチック基材を用いた遮光フィルムには導電性も求められている。上記の事情から、遮光フィルムの必要特性は、高遮光性、耐熱性、低光沢性、摺動性、導電性、低発塵性であるとされている。このような遮光フィルムの特性を満足するために、従来からさまざまな材料、フィルム構造を用いたものが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、遮光性、低光沢性、導電性の点からランプ光源等から発せられる光を吸収させるためにカーボンブラック、チタンブラック等の導電性黒色微粒子をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの樹脂フィルムに含浸させ遮光性及び導電性を持たせ、更に遮光フィルムの両面をマット処理し、低光沢性とした遮光フィルムが開示されている。
特許文献2では、樹脂フィルム表面上に、遮光性と導電性を有するカーボンブラックなどの黒色顔料や潤滑剤、艶消し剤を含有した熱硬化性樹脂層を塗布し、遮光性、導電性、潤滑性、低光沢性を付与した遮光フィルムが開示されている。
特許文献3では、アルミニウム合金などの金属製羽根材料の表面に硬質炭素膜を形成した遮光材が開示されている。
特許文献4では、遮光羽根の剛性を高めるためプラスチック基材の両面に炭素繊維を含有する熱硬化性樹脂のプリプレグシートで強化した遮光羽根の構造が開示されている。
遮光フィルムは、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、液晶プロジェクタ等の光学機器用遮光羽材として広く使用されている。近年、液晶プロジェクタではリビングルームといった明るい環境下でも鮮やかなハイコントラストな映像が楽しめるように高画質化の要求が高まっている。したがって、画質の高輝度化によりランプ光源が高出力となるため、光量調整用の絞り装置内の温度が高くなる傾向にある。光量を調整する遮光フィルムへ高出力な光が照射されるため、遮光フィルムが加熱されて熱変形しやすい環境となっている。
【0005】
遮光フィルムの基材、例えばポリエチレンテレフタレートを基材とした遮光フィルムは、比重も軽いので広く使用されているが、ランプ光源が高出力となる場合、ポリエチレンテレフタレートは熱変形温度が低く、引張弾性率などの機械的強度が弱いため、走行中もしくは制動時に発生する振動や衝撃などで遮光羽根が歪んでしまう可能性がある。
また、遮光フィルムで低光沢性や摺動性を発揮させるためにサンドブラスト法によるマット処理が行われている。この処理は、更に、入射光を散乱させ表面の光沢性を低下させ、視認性を向上させる効果がある。上記処理により、遮光フィルムが接触しても遮光フィルム同士の接触面積が大きくならず摺動性の低下も防止できるものと考えられる。
デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、液晶プロジェクタでは、遮光フィルムをシャッター羽根、絞り羽根等として必ず複数枚近接し、かつ重なり合って使用するようになってきているため、有機成分の遮光材、潤滑剤、艶消し剤を使用している遮光フィルムでは、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラや液晶プロジェクタが暴露される温度、湿度といった使用環境がより厳しくなっている。特に、液晶プロジェクタでは、上記したように、近年の画像の高輝度化に伴うランプ光源の高出力化により、装置(光量調整用装置、絞り装置)内の温度が200℃付近まで上昇するようになってきている。このような厳しい環境下で、上記のような従来の遮光フィルムを使用すると、変形したり、変色したりするなど、耐久性の面で好ましくなく、実用上問題があった。
さらに、遮光フィルムの200℃以上での高熱環境下での熱変形が大きくなると、遮光フィルム同士の接触により、高速の動作ができなくなるなど摺動性が劣化し、前記表面に微細な凹凸構造を有する低光沢性遮光フィルムであっても、このような遮光フィルム同士の接触によって擦れる度合いが多くなると低光沢性の劣化が起こるなどして、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、液晶プロジェクタ本来の機能が得られなくなってしまう可能性もあった。
【0006】
また、上記特許文献1では、サンドブラストによるマット処理で表面凹凸を形成して、遮光フィルムの低光沢性を発現させることが提案されている。しかし、サンドブラスト法では、フィルムの表面粗さはショット材の材質、粒度、吐出圧力等に依存し、粒径の大きいショット材は、水洗浄やブラッシング等の洗浄でフィルム表面から除去できるが、粒径が1μm未満と小さい粒子は洗浄後においてもフィルム表面上に残存してしまい、完全には除去しきれない。ショット材が残存すると、遮光フィルムが晒される高熱環境下では、ショット材と基材であるプラスチックフィルムとで熱膨張係数が異なるため、熱応力の差により、ショット材がフィルムから脱落してしまい、粉塵の発生源となってしまい、その周囲の光学部品に悪影響を及ぼしてしまうという問題も発生する。
特許文献5では、高温環境下でも遮光性と反射性を得るために、チタンと酸素を主成分とし、特定のO/Ti原子数比を持つ酸化チタンからなる遮光フィルムが提案されている。
また、200℃以上の耐熱性を有する樹脂フィルム基材(A)と、その片面もしくは両面にスパッタリング法で形成された50nm以上の膜厚を有するチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、珪素から選ばれた元素を含有する金属膜(B)、及びニッケルを主成分とする低反射性の酸化物膜(C)の積層膜とからなり、かつ積層膜の表面粗さが0.1〜0.7μmである耐熱遮光フィルムも提案されている(特許文献6)。これにより、十分な遮光性を得ることができた。しかし、酸化チタンなどの金属膜を成膜後、この遮光フィルムを大気中で2週間放置すると、遮光フィルムの色味が変化することが判明した。色味の変化は遮光特性自体には影響しないが、外観が変化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−120503号公報
【特許文献2】特開平4−9802号公報
【特許文献3】特開平2−116837号公報
【特許文献4】特開2000−75353号公報
【特許文献5】WO2010/026853公報
【特許文献6】特開2008−310016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これら従来の問題点に鑑み、大気中200℃の高温環境下でも高遮光性、表面の低反射性、低表面光沢性、黒色性を維持し、さらにフィルム表面の膜色の経時変化を抑制できる固定絞りやシャッター羽根、光量調整絞り装置の絞り羽根、耐熱遮光テープなどとして使用できる耐熱遮光フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上述した金属遮光膜上に金属酸化物膜(黒色被覆膜)を形成した耐熱遮光フィルムにおいて、金属遮光膜が酸素を取り込みやすい膜構造になっていると、高温で長時間加熱された際に酸化して色味が変化することを突き止め、さらに鋭意研究を重ねた結果、金属遮光膜上に特定の厚さの金や銀などの貴金属膜を酸化防止膜として形成することで、膜色の経時変化を抑制することができ、このような積層膜にすることで、200℃程度の高熱環境下でも変形せず、遮光性、低光沢性、摺動性、色味、低反射性が維持でき、さらに長期間保管しても遮光フィルムの色味が変化しない耐熱遮光フィルムが得られ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、液晶プロジェクタなどの絞りの部材として利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、200℃以上の耐熱性を有する樹脂フィルム基材(A)の片面もしくは両面に、スパッタリング法で形成された50nm以上の膜厚を有する金属遮光膜(B)と、5nm以上の低反射性の金属酸化物膜(D)が積層された耐熱遮光フィルムにおいて、金属遮光膜(B)と金属酸化物膜(D)の間に1〜50nmの膜厚を有する酸化防止膜(C)がスパッタリング法で形成されていることを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、樹脂フィルム基材(A)は、ポリイミド、アラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン又はポリエーテルサルフォンから選ばれた1種類以上で構成されていることを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、金属遮光膜(B)は、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素からなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属遮光膜を特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、酸化防止膜(C)は、金、銀、白金、及びパラジウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する酸化防止膜を特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、金属酸化物膜(D)は、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素からなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属酸化物膜を特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、金属酸化物膜(D)は、窒素もしくは炭素、あるいは窒素と炭素の両方を含むことを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
【0012】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜第6のいずれかにおいて、金属遮光膜(B)の膜厚が50〜250nmであり、金属酸化物膜(D)の膜厚が5〜240nmであることを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7の発明において、表面抵抗値が1000Ω/□以下であることを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8の発明において、波長380〜780nmにおける最大正反射率が5%以下であることを特徴とする耐熱遮光フィルムが提供される。
さらに、本発明の第10の発明によれば、第1〜9の発明において、樹脂フィルム基材(A)の両面に、金属遮光膜(B)と酸化防止膜(C)と金属酸化物膜(D)からなる積層膜が形成されており、フィルム基板を中心として対象の構造であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱遮光フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の耐熱遮光フィルムは、金属遮光膜と金属酸化物膜との間に酸化防止膜を形成しているので、金属遮光膜が保護されて酸化されることが無く、遮光フィルムの色味を維持することができる。
本発明の耐熱遮光フィルムは、最表面層となる金属酸化物膜の種類を選ぶことで黒色度が高くて低反射特性を有する耐熱性遮光フィルムが実現できる。つまり、最表面層に可視域での透過率の低い低反射性の金属酸化物膜を金属遮光膜上に積層すると、金属遮光膜の高い反射率を顕著に減少することができ、波長380〜780nmにおける最大正反射率は5%以下、さらには3%以下の低反射(低光沢性)となり、黒色を呈することができる。また逆に、最表面層に可視域〜近赤外域の透過率の高い金属酸化物膜を選ぶと、黒色度は劣るものの、金属遮光膜の高反射特性を活かして、熱線を効果的に反射できる耐熱遮光フィルムが実現される。このような耐熱遮光フィルムは、例えば、プロジェクタなど絞り羽根材に用いると、強いランプ光が照射されても加熱が抑制されるため好都合である。
【0014】
本発明の耐熱遮光フィルムは、従来の金属箔板に耐熱塗料を施した耐熱遮光フィルムを使用した遮光羽根に比べ、樹脂フィルムを基材として使用しているので軽量化され、絞り羽根等に搭載された時の摺動性が向上し、更には駆動モーターの小型化が可能となり、低コストに繋がる。
更に、樹脂フィルム基材の片面にのみ金属遮光膜、酸化防止膜及び金属酸化物膜を形成し、樹脂フィルムの他方の面側に粘着材を塗布した耐熱遮光フィルムとして使用すれば、カメラやプロジェクタなどの鏡筒などにおいて、低反射性や低光沢性が必要不可欠な部材の壁面に貼り付けることによって低反射面を形成することができる。
更に耐熱性樹脂フィルムを中心に対称型である膜構造とすることができ、成膜時の膜応力による遮光フィルムの変形を生じないので生産性に優れている。
また、スパッタリング法による成膜条件を最適化すれば、緻密で高い密着性を有する膜とすることができ、200℃程度の高熱環境下に晒されても膜が剥がれることはない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】樹脂フィルムの片面に金属遮光膜、酸化防止膜、金属酸化物膜を形成した、本発明の耐熱遮光フィルムの断面を示す概略図である。
【図2】樹脂フィルムの両面に金属遮光膜、酸化防止膜、金属酸化物膜を形成した、本発明の耐熱遮光フィルムの断面を示す概略図である。
【図3】本発明の金属遮光膜、酸化防止膜、金属酸化物膜を樹脂フィルム上に形成するための巻き取り式スパッタリング装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の耐熱遮光フィルム、その製造方法、用途について図面を用いて説明する。
【0017】
1.耐熱遮光フィルム
本発明の耐熱遮光フィルムは、200℃以上の耐熱性を有する樹脂フィルム基材(A)の片面もしくは両面に、スパッタリング法で形成された50nm以上の膜厚を有する金属遮光膜(B)と、5nm以上の低反射性の金属酸化物膜(D)が積層された耐熱遮光フィルムにおいて、金属遮光膜(B)と金属酸化物膜(D)の間に1〜50nmの膜厚を有する酸化防止膜(C)がスパッタリング法で形成されていることを特徴とする。
本発明の耐熱遮光フィルムは、樹脂フィルム基材1と、その表面に形成された金属遮光膜2と、酸化防止膜3と、金属酸化物膜4で構成されている。
金属遮光膜、酸化防止膜、金属酸化物膜は、図1に示すように、樹脂フィルム基材の片面に形成されていてもよいが、図2に示すように両面に形成されている方が好ましい。樹脂フィルム基材両面に形成される場合は、各面の遮光性薄膜の組成と厚みが同じで、フィルム基材を中心として対称の構造であることが、より好ましい。基材の上に形成された薄膜は、基材に対して応力を与えるため、変形の要因となる恐れがある。基材の片面に薄膜が形成される場合、膜応力による変形は、成膜直後の耐熱遮光フィルムでも見られる場合があるが、特に180℃程度に加熱されると変形が大きくなりやすい。しかし、上記のように基材の両面に形成する遮光性薄膜の材質、膜厚を同じにして、基材を中心として対称の構造にすることで、上記加熱条件下でも応力のバランスが維持され、変形のない耐熱遮光フィルムを実現しやすい。
【0018】
本発明の耐熱遮光フィルムは、遮光性に優れ、その指標である波長380〜780nmにおける平均光学濃度が4以上であり、かつ最大正反射率が5%以下である。算術平均高さRaの大きい樹脂フィルムの最大正反射率が低いほど、膜最表面に形成される金属酸化物膜を形成した後の最大正反射率は低くなり、極めて低い反射性を得ることができる。また、樹脂フィルム上に金属遮光膜、金属酸化物膜を順次形成した場合の膜の色味に比べ、中間に酸化防止膜を形成することで、L値が小さくなり、黒色度が向上する。
また、本発明の耐熱遮光フィルムの明度(L値)は、20〜35であり、極めて黒色度が高い。正反射率が低いほど、L値は小さくなり、フィルムの黒色度は高くなり、低正反射率と黒色度が要求されるデジタルカメラやカメラ付き携帯電話用の絞り材、羽根材として有用である。
本発明の耐熱遮光フィルムの厚みは、10〜250μm以下であることが好ましい。より好ましくは、20〜150μmであり、30〜100μmがさらに好ましい。10μmよりも薄いものでは、ハンドリング性に劣るため、フィルムに傷や折れ目などの表面欠陥が付きやすく、250μmより厚いと、小型化、薄肉化が進む絞り装置や光量調整装置への搭載ができなくなるおそれがある。
樹脂フィルムの片面または両面にはガスバリア膜を形成しても良い。樹脂フィルムに酸素や水分が含まれている場合があり、金属遮光膜に酸素が作用することで劣化する可能があるが、ガスバリア膜を成膜することにより、金属遮光膜の劣化を抑えることが出来る。ガスバリア膜としては、ニッケルを主成分とした金属酸化物膜をスパッタリング法で形成することが好ましく、その膜厚は、特に限定されないが、例えば5〜30nm程度が好ましい。
本発明の耐熱遮光フィルムを大気中に2週間放置したときの色差は1.0未満であり、目視では色味の変化はほとんど分からないほどである。なお、遮光フィルムの色差が1.0以上であっても、遮光性や耐熱性などの特性に問題がなければ、羽根材や絞りなどに使用することは可能である。
【0019】
2.樹脂フィルム(A)
本発明の耐熱遮光フィルムは、200℃以上の耐熱性を有する、樹脂フィルムを基板として用いる。樹脂の種類は、ポリイミド、アラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、又はポリエーテルサルフォンから選ばれた1種以上であることが望ましい。
耐熱性は、ポリイミド、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド又はポリエーテルサルフォンは耐熱性が200℃以上であり、200℃以上の環境下でも利用できる。特に、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトンは耐熱温度が300℃以上と非常に優れているため、300℃以上の温度環境下でも利用することができる。このように、樹脂フィルムは、耐熱遮光フィルムの使用温度環境に応じた材料を用いればよい。
【0020】
上記樹脂フィルムの厚みは、10〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは10〜50μm、最も好ましくは10〜40μmである。10μmより薄い樹脂フィルムでは、ハンドリング性が悪くて取り扱いにくく、フィルムに傷や折れ目などの表面欠陥が付きやすくなるため好ましくない。樹脂フィルムが100μmより厚いと、小型化が進む絞り装置や光量調整用装置へ遮光羽根を複数枚搭載することができず、用途によっては所望の性能が得られなくなってしまう。
【0021】
また、樹脂フィルムは表面凹凸性を有しているので、金属酸化物膜の表面に凹凸が生じると光の正反射率を低減する、すなわち艶消しの効果をもたらすことができ、光学部材として好ましいものとなる。ここで算術平均高さとは、算術平均粗さとも言われ、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計して平均した値である。
基材表面の凹凸は、ナノインプリンティング加工やショット材を使用したマット処理加工によって所定の表面凹凸を形成することができる。マット処理の場合は、ショット材に砂を使用したマット処理加工が一般的であるが、ショット材はこれに限定されない。樹脂フィルムを基材として金属遮光膜を形成する前に、樹脂フィルムの表面を上記の方法で凹凸化しておくと有効である。
【0022】
また、樹脂フィルムは柔らかいため、表面に形成する膜の応力の影響を受けて変形しやすい。これを回避するため、本発明の耐熱遮光フィルムにおいては、樹脂フィルムの両面に同じ構成、同じ膜厚の膜をフィルムに対称に形成することが有効である。つまり、樹脂フィルムの両面に同じ組成、同じ膜厚の金属遮光膜を形成した後、その両面(金属遮光膜上)に同じ組成、同じ膜厚の酸化防止膜、さらに酸化防止膜の上に同じ組成、同じ膜厚の金属酸化物膜を形成して得られる耐熱遮光フィルムは、変形が少ないものとなり、好ましい。
【0023】
3.金属遮光膜(B)
本発明において、金属遮光膜は、樹脂フィルム(A)を基材とし、その上に形成される、第一層の遮光膜である。一般に金属遮光膜は酸化されると透明度が増加するため、耐酸化性は重要である。また金属遮光膜は、金属の種類によっては200〜250℃で溶融してしまう材料もあるため、遮光膜となる金属遮光膜は300℃以上の高融点材料であることが重要である。本発明の耐熱遮光フィルムに用いる金属遮光膜の材料は、耐酸化性に優れた元素周期表の4族から12族の遷移金属元素、アルミニウム、又は珪素から選ばれる1種類以上の元素を含有することが好ましい。
【0024】
具体的には、前記金属遮光膜(B)は、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素からなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属遮光膜であることが必要である。これらの元素を含有する金属遮光膜(B)は、スパッタリング法でポリイミドなどの樹脂フィルムに成膜すると、高い密着性を得ることができる。また、上記元素の金属遮光膜は、耐熱性や耐食性を更に向上させるため、上記金属元素以外の元素を添加して合金としたもの、或いは金属間化合物としたものを使用しても構わない。例えば鉄元素を含む金属遮光膜には、鉄を含むステンレス材やSK材の金属遮光膜も含まれる。
【0025】
なお、金属遮光膜の材料には上記の金属元素の他、炭素、窒素が含まれていても構わない。金属遮光膜への炭素、窒素を導入するには、それぞれ、金属遮光膜を成膜する時のスパッタリングガス中に、炭化水素ガス、窒素ガスなどの炭素や窒素を含む添加ガスを導入してスパッタリング成膜することで可能であるが、上記のような添加ガスを用いなくても、ターゲット中に炭素、窒素を含有させることでも、これらの元素を導入することができる。特に上記金属遮光膜に炭素、窒素が含まれると、耐熱性を更に改善することができるため有用である。よって、本発明の耐熱遮光フィルムの金属遮光膜材料には、上記の方法で作製された炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化鉄、炭化銅、炭化アルミニウム、炭化珪素、窒化チタン、窒化タンタル、窒化タングステン、窒化モリブデン、窒化ニオブ、窒化鉄、窒化銅、窒化アルミニウム、窒化珪素などの炭化物や窒化物も、十分な遮光性と耐熱性を発揮する金属遮光膜材料であり、樹脂フィルムに対する高密着性も発揮するため含まれる。
さらに本発明の耐熱遮光フィルムの金属遮光膜材料には、これらの炭化物と窒化物の固溶体や化合物、これら炭化物および/または窒化物と上記金属元素との固溶体や化合物も同様の理由から含まれる。また、本発明の金属遮光膜には、酸素はなるべく含まない方が、樹脂フィルムとの高い密着性や高い遮光性を維持するためには好ましい。しかし、スパッタリングガス中に残留する酸素などが成膜時に金属遮光膜の一部、或いは全体的に膜中に取り込まれて含有していても、金属性や高い遮光性や樹脂フィルムとの高い密着性を損なわない程度であれば構わない。金属遮光膜中の酸素の含有量は、樹脂フィルムとの密着性を維持するために、金属元素に対して5原子%以下、特に3原子%以下であることが望ましい。
また、本発明の耐熱遮光フィルムの金属遮光膜は、組成(金属元素の含有量や種類、炭素含有量、窒素含有量、酸素含有量)の異なった複数種類の金属遮光膜の積層膜で構成されていても構わない。
【0026】
密着性については、元来、有機物である樹脂フィルム基材と無機物である金属遮光膜との間では高い密着性を得ることが難しい。これは、樹脂フィルム基材と金属遮光膜の界面の密着性が不十分である場合、200℃の高熱環境下で、樹脂フィルム基材と金属遮光膜の熱膨張差により膜剥離が生じやすいからである。
このような熱膨張差による膜剥離を回避するには、樹脂フィルム基材と膜の高密着性を維持する必要があるが、本発明の金属遮光膜は、上記したように、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素からなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属遮光膜であり、樹脂フィルムの表面は、酸素の官能基を有しており、本発明の金属遮光膜中には適量のチタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び 珪素などの酸素と結合しやすい元素が含まれていることから、フィルム表面の酸素の官能基と化学結合が生じて、フィルムと金属遮光膜間の密着性が強化される。
【0027】
なお、元素周期表の4族から12族の遷移金属元素の中で、銅やクロムやマンガンを主成分とする金属遮光膜は、樹脂フィルム、特にポリイミドフィルムなどの樹脂フィルムとの密着性が悪いので、フィルム上に直接形成することは好ましくない。銅以外の上記の元素を主成分とする金属遮光膜を密着強化膜として介在させて、銅やクロムやマンガンを主成分とする金属遮光膜を形成すると高密着化が実現できるため好ましい(この場合は遮光性の役割を担う膜は、銅系薄膜/密着強化膜の積層金属遮光膜となり、密着強化膜が樹脂フィルム側に配置される)。また、スズやインジウム、ガリウムなどの金属材料は250℃以下で溶融化してしまうため、これらの元素を主成分とする金属遮光膜は、本発明の耐熱遮光フィルムを構成する金属遮光膜として利用することはできない。ただし、スズやインジウム、ガリウムなどの金属材料でも、他の元素を添加して、融点が300℃以上に上げた材料であれば、本発明の耐熱遮光フィルムの金属遮光膜として利用することができる。
また、希土類金属やアルカリ金属、アルカリ土類金属など、200℃前後において酸素と結合して発熱をともなって反応する金属は、本発明の耐熱遮光フィルムにおいて遮光用の金属遮光膜として使うことはできない。
また、鉛やカドミウム、水銀、ビスマスなどの人体や環境に対して著しく有害な金属材料は本発明の耐熱遮光フィルム材料の構成材料としては選択しない。
【0028】
本発明における金属遮光膜は、膜厚が50nm以上であることが必要である。厚みが50nm未満であると、膜の光通過が生じて十分な遮光機能を持たないので好ましくない。ただし、膜厚が厚くなると遮光性が良くなるが、250nmを超えると、材料コストや成膜時間の増加による製造コスト高につながり、また膜の応力も大きくなって変形しやすくなる。十分な遮光性(透過率0%)と低膜応力、低製造コストを考慮すると、前記金属遮光膜の膜厚は50〜250nmが好ましい。ただし、膜厚が250nmより厚くなると、金属遮光膜を成膜するのに長時間かかり製造コストが高くなったり、必要な成膜材料が多くなって材料コストが高くなるので好ましくない。
【0029】
4.酸化防止膜(C)
本発明の耐熱遮光フィルムにおいて、第二層の酸化防止膜は、樹脂フィルム基材に形成された金属遮光膜の酸化を抑制する機能を有する。
【0030】
本来、樹脂フィルム基材に形成された金属遮光膜の上に、金属酸化物膜を積層することで耐熱遮光フィルムとしての特性を得ることが可能であるが、金属遮光膜と金属酸化物膜が接することで、酸化が進んでしまう。そこで、本発明の耐熱遮光フィルムは、遮光フィルムの色味を維持するために金属遮光膜の酸化を防止するための酸化防止膜を有している。
酸化防止膜は、それ自身が耐酸化性を有することから、耐熱遮光フィルム表面からの酸素の拡散をブロックし、金属遮光膜が酸化することを防いでいると考えられる。したがって酸化防止膜としては酸化しない材料を用いる必要があり、特に貴金属である、金、銀、白金、及びパラジウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する膜であることが好ましい。
【0031】
前記金属遮光膜(B)上に形成される上記酸化防止膜(C)は、酸化防止効果を発揮する膜厚に設定されているとより好ましい。すなわち酸化防止膜(C)の膜厚は、1nm〜50nmとすることで金属遮光膜(B)の酸化を防止することができる。膜厚が1nm未満であると、金属遮光膜(B)の酸化防止効果が得られないので好ましくない。また膜厚50nmを超えると、遮光フィルムの反射率が高くなり、遮光フィルムにならない。膜厚は、2nm〜45nmが好ましく、3nm〜40nmとすることがより好ましい。
【0032】
5.金属酸化物膜(D)
本発明において金属酸化物膜は、酸化防止膜の上に第3層として形成される低反射性の膜である。
樹脂フィルム基材に形成された金属遮光膜は反射率が高いが、金属遮光膜の上に低反射性の金属酸化物膜を積層することで、耐熱遮光フィルムの波長380〜780nmにおける正反射率を減少させることができる。低反射性の金属酸化物膜は、単層でも酸素含有量や構成元素の種類及び含有量の異なる層で構成されても構わない。また、金属遮光膜上に積層する低反射性の金属酸化物膜は、透明度の高いものでも、透明度が低くて着色したものでもよい。
【0033】
本発明の低反射性の金属酸化物膜(D)は、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素からなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有しており、前記金属酸化物膜(D)は、高熱環境下での耐熱性、他耐食性に優れている。
具体的には、前記金属酸化物膜(D)は、金属成分が、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素からなる群より選ばれた1種類の元素のみからなる金属酸化物膜であってもよいが、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素からなる群より選ばれた2種類以上の元素を含有した金属酸化物膜であってもよい。上記金属酸化物膜(D)は、上記組成を有しており、これらの元素は不動態を形成しやすいため耐熱性の他、耐食性にも優れている。また、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素などの元素を含む金属酸化物膜は、耐熱性に優れているとともに、耐摩耗性、靭性が高いことから、遮光羽根として動作する上でも利点がある。
前記金属酸化物膜(D)には、上記の金属元素の他、炭素、窒素が含まれていても構わない。金属酸化物膜に炭素、窒素を含ませると屈折率を調整することができて低反射性を実現しやすくなる。また、前記金属酸化物膜には、遷移金属の酸化物膜や酸素欠損を多く含む金属酸化物膜のように可視域で透過率の低い(例えば単膜で透過率が10〜60%)酸化物材質を使用すると、低反射性を実現しやすくなるため好ましい。
【0034】
このような金属酸化物膜を用いた本発明の耐熱遮光フィルムは、波長380〜780nmにおいて、最大正反射率を2%以下、或いは1%以下や0.5%以下とすることができる。前記金属酸化物膜は、組成(酸素含有量、炭素含有量、窒素含有量、金属元素の含有量や種類)の異なった複数種類の酸化物膜の積層膜で構成されていても構わない。組成が異なって屈折率と消衰係数の異なった金属酸化物膜の積層膜を用いることで、より強い反射防止効果が発現して低反射性を実現することもでき、黒色度のより高い耐熱遮光フィルムを得ることができる。
上記金属酸化物膜(D)の膜厚は、特に制限されないが、膜厚を5〜240nmとすることで可視域の反射率を低減することができる。膜厚が5nm未満であると反射率、光沢度を十分に低下できない場合があり、また、240nmを超えると、表面抵抗が大きくなるだけでなく、経済性の面でも好ましくない。膜厚は、5nm〜200nmが好ましく、5nm〜150nmとすることがより好ましい。
【0035】
また、樹脂フィルムの片面もしくは両面に上記金属遮光膜と上記酸化防止膜と上記金属酸化物膜を積層している本発明の耐熱遮光フィルムにおいて、それぞれの面の酸化物膜で可視域の透過率の異なる膜を用いて、黒色度と反射率が両面で異なった構成をとっても、用途によっては有効である。例えば、本発明の耐熱遮光フィルムをプロジェクタ用のランプに近い場所での羽根材として用いる場合には、ランプ光の照射されるフィルム面側は、光による加熱の回避を最重要視して、可視〜近赤外光の高反射特性を有するよう選定し、ランプ側と逆面では可視光の反射が迷光となることが嫌われるために、可視域の低反射性を有する黒色度の高い構成とすることも有効である。その場合、上述したように、ランプ側は酸素欠損が少なくて透過率の高い金属酸化物膜が用いられ、その反対側には酸素欠損が多くて可視域の透過率の低い金属酸化物膜を用いればよい。
プラスチックフィルムは、一般に絶縁性のため静電気が発生しやすいが、仮に絶縁性の遮光フィルムを用いて遮光羽根として動作させた場合には、静電気が発生して、羽根同士が静電吸着する場合がある。羽根同士が吸着しないためには、遮光フィルムに導電性が必要と言える。本発明の耐熱遮光フィルムに用いる金属酸化物膜の材料は、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素からなる群より選ばれた1種類以上の添加元素を含有する金属酸化物膜であるため、導電性を有しており、表面抵抗値が1013Ω/□(オーム・パー・スクエアと読む)以上である樹脂塗膜系などの遮光フィルムに比べ、表面抵抗値を1000Ω/□以下と小さくすることができる。金属酸化物膜において、上記元素が添加されることで、添加元素が半導体でのドーパント的な作用を有し、電気抵抗を減少することができる。最表面が酸化珪素、アルミナなどの絶縁膜で形成される遮光フィルムでは、表面抵抗値が1000Ω/□を超えているが、本発明の耐熱遮光フィルムでは表面抵抗値を1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、更には100Ω/□以下にすることができる。
【0036】
なお、本発明の耐熱遮光フィルムは、上記金属酸化物膜の表面に、潤滑性や低摩擦性を有する他の薄膜(例えば、フッ素含有の有機膜や、炭素膜、ダイヤモンドライクカーボン膜など)を薄く塗布して利用しても、本発明の特徴を損なわなければ構わない。
本発明の耐熱遮光フィルムにおいては、金属遮光膜上の最表面に、酸素欠損を有する酸化物や遷移金属の酸化物膜などの可視域での透過率の低い酸化物膜を採用することで、積層膜の光正反射が、波長380〜780nmにおいて5%以下、或いは3%以下で黒色度の高い耐熱遮光フィルムを実現することができる。このような耐熱遮光フィルムは、光反射を極力抑制したい光学フィルム部材(例えばシャッター羽根など)として有用である。また、本発明の耐熱遮光フィルムにおいては、金属遮光膜上の最表面に、可視域〜近赤外域の透過率の高い酸化物膜を採用することで、黒色度は劣るが、強いランプ光が照射されても熱線を金属遮光膜で効果的に反射して加熱温度上昇を効果的に避けるような特徴を持たせることができる。
【0037】
6.耐熱遮光フィルムの製造方法
本発明の耐熱遮光フィルムの製造方法は、算術平均高さRaが0.2〜2.2μmの微細表面凹凸とした樹脂フィルム(A)をスパッタリング装置に供給し、不活性ガス雰囲気下で金属遮光膜用ターゲットを用いてスパッタリングし、樹脂フィルム(A)上に、金属遮光膜(B)を形成し、次いで、酸化防止膜形成用ターゲットを用いてスパッタリングして、前記金属遮光膜(B)上に、酸化防止膜(C)を形成した後、不活性ガス雰囲気中、1.5Pa以上の不活性ガス圧下で、金属酸化物膜(D)形成用ターゲットを用いてスパッタリングして、金属酸化物膜(D)を形成する。
【0038】
本発明における第1層の金属遮光膜は、製造方法によって特に制限されず、真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、ガスクラスターイオンビームアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、バイアススパッタリング法、ECR(Electron Cyclotron Resonance)スパッタリング法、高周波(RF)スパッタリング法、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、プラズマCVD法、光CVD法等の公知の方法を適宜採用することができる。なかでもスパッタリング法で製造することが好ましい。スパッタリング法で製造することで、大面積の基材上に均一に形成することができるだけでなく、基材に対して高い密着力を有して形成することができるためである。
本発明の耐熱遮光フィルムにおいては、金属遮光膜は、例えばアルゴン雰囲気中において直流マグネトロンスパッタリング法により樹脂フィルム基材上に成膜形成されることが好ましい。放電方式は、高周波放電でもかまわないが、直流放電の方が、高速成膜が可能となる。
スパッタリング法による製造装置は、特に制限されないが、例えば、図3のように、ロール状の樹脂フィルム基材1が巻き出しロール12Aにセットされ、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプで成膜室の真空槽内を排気した後、巻き出しロール12Aから搬出されたフィルム1が途中、キャンロール15の表面を通って、巻き取りロール12Bによって巻き取られていく構成をとる巻き取り式スパッタリング装置を用いることができる。キャンロール15の表面の対向側にはマグネトロンカソード13Aが設置され、このカソード13Aには膜の原料となるターゲット14Aが取り付けられている。なお、巻き出しロール12A、キャンロール15、巻き取りロール12Bなどで構成されるフィルム搬送部は、隔壁16でマグネトロンカソード13Aと隔離されている。
【0039】
ターゲットとしては、例えば炭化チタン、炭化酸化チタンを主成分とする焼結体を加工して得られるターゲットが使用される。その組成は、特に制限されないが、基材に最初に形成される金属遮光膜の組成と同じであるものが好ましい。スパッタリング成膜の原料として使うスパッタリングターゲットの焼結体では、焼結密度を改善するために焼結助剤が添加されることが多い。本発明に用いる焼結体ターゲットには、Fe、Ni、Co、Zn、Cu、Mn、In、Sn、Nb、Taなどの元素を、本発明の特徴が損なわれない程度であれば、焼結助剤として添加することができる。
スパッタリング成膜では、ガス圧は、装置の種類などによっても異なるので一概に規定できないが、1Pa以下、好ましくは0.2〜0.8Paのスパッタリングガス圧で、Arガス、もしくは、0.05%以内のOを混合したArガスを、スパッタリングガスとして用いる方法が採用できる。
【0040】
以下、基板として樹脂フィルムを、金属遮光膜として金属膜を用いた場合で詳述すると、基板に到達するスパッタリング粒子が高エネルギーとなるため、結晶性の金属膜が樹脂フィルム基材上に形成され、金属膜と樹脂フィルムとの間に強い密着性が発現される。成膜時のガス圧が0.2Pa未満であると、ガス圧が低いためスパッタリング法でのアルゴンプラズマが不安定となり、膜質が悪くなる。また、0.2Pa未満であると、反跳アルゴン粒子が基板上に堆積した金属膜を再スパッタリングする機構が強くなり、緻密な金属膜の形成を阻害しやすくなる。また、成膜時のガス圧が0.8Paを超えた場合では、基板に到達するスパッタリング粒子のエネルギーが低いため結晶成長しにくく、金属膜の粒が粗くなり、膜質が高緻密な結晶性ではなくなるので樹脂フィルム基材との密着力が弱くなり、膜が剥がれてしまう。このような膜は、耐熱性用途の金属遮光膜として用いることはできない。これにより、純Arガスもしくは微量のO(例えば0.05%以内)を混合したArガスをスパッタリングガスに用いて、結晶性の優れた金属遮光膜を安定して形成することができる。Oを0.1%以上混合すると、薄膜の結晶性が悪化する場合があり好ましくない。
【0041】
また、成膜時の樹脂フィルム表面温度は、金属膜の結晶性に影響を及ぼす。成膜時のフィルム表面温度が高温であるほど、スパッタリング粒子の結晶配列が起こりやすくなり、結晶性が良好となる。しかし、樹脂フィルムの加熱温度にも限界があり、最も耐熱性の優れたポリイミドフィルムでも表面温度は400℃以下にする必要がある。樹脂フィルムの種類によっては、130℃以上に温度を上げると、ガラス転移点や分解温度を越えてしまうものがあり、例えば、PETなどでは、成膜時のフィルム表面温度はなるべく低温、例えば100℃以下とすることが望ましい。また、製造コストに着目しても、加熱時間や加熱のための熱エネルギーを考慮すると、なるべく低温で成膜を行うことがコスト低減には有効である。成膜時のフィルム表面温度は、90℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましい。
また、樹脂フィルム基材は、成膜中にプラズマから自然加熱される。成膜中の樹脂フィルム基材の表面温度は、ガス圧とターゲットへの投入電力やフィルム搬送速度を調整することで、ターゲットから基材に入射する熱電子やプラズマからの熱輻射によって所定の温度に容易に維持することができる。ガス圧は低いほど、投入電力は高いほど、またフィルム搬送速度は遅いほど、プラズマからの自然加熱による加熱効果は高くなる。成膜時、樹脂フィルムを冷却キャンに接触させるスパッタリング装置の場合でも、フィルム表面の温度は、自然加熱の影響で冷却キャン温度よりはるかに高い温度となる。
しかし、ターゲットをキャンロールと対向する位置に設置する図3に示されるようなスパッタリング装置では、フィルム1がキャンロール15で冷却されながら搬送される。自然加熱によるフィルム表面の温度は、キャンロール15の温度にも大きく依存するため、成膜時の自然加熱の効果を利用するのであれば、なるべく冷却キャンの温度を高めにして搬送速度を遅くすることが効果的である。表面の対向側に設置されたマグネトロンカソード13Aに設置された膜の原料となるターゲット14Aにより、黒色被覆膜が形成されていく。金属膜の膜厚は、成膜時のフィルムの搬送速度とターゲットへの投入電力で制御され、搬送速度が遅いほど、またターゲットへの投入電力が大きいほど厚くなる。
以上、金属遮光膜として金属膜を形成する場合で説明したが、酸化防止膜を形成する場合も同様な条件を採用できる。
【0042】
図3では、上記により金属遮光膜が形成されたフィルム1が、引き続き、キャンロール5の表面を通って、表面の対向側に設置されたマグネトロンカソード13Bに設置された膜の原料となるターゲット14Bにより、酸化防止膜が形成されていく。
ターゲットとしては、酸化しにくい、金、銀、白金、及びパラジウム、あるいはそれらの合金の焼結体ターゲットを用いて、スパッタリング成膜は、0.2〜0.8Paのスパッタリングガス圧にて実施される。
金属遮光膜の成膜と同様に、成膜時のガス圧が0.2Pa未満であると、ガス圧が低いためスパッタリング法でのアルゴンプラズマが不安定となり、膜質が悪くなる。また、0.2Pa未満であると、反跳アルゴン粒子が基板上に堆積した金属膜を再スパッタリングする機構が強くなり、緻密な金属膜の形成を阻害しやすくなる。また、成膜時のガス圧が0.8Paを超えた場合では、基板に到達するスパッタリング粒子のエネルギーが低いため結晶成長しにくく、金属膜の粒が粗くなり、膜質が高緻密な結晶性ではなくなるので密着力が弱くなり、膜が剥がれてしまう。このような膜は、耐熱性用途の金属遮光膜として用いることはできない。これにより、純Arガスもしくは微量のO(例えば0.05%以内)を混合したArガスをスパッタリングガスに用いて、結晶性の優れた金属遮光膜を安定して形成することができる。Oを0.1%以上混合すると、薄膜の結晶性が悪化する場合があり好ましくない。
【0043】
本発明において、上記により酸化防止膜(C)が形成された後、第3層の金属酸化物膜(D)が形成される。
すなわち、不活性ガス雰囲気下、金属酸化物膜(D)形成用ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、金属酸化物膜(D)を形成する。
金属酸化物膜(D)も、金属遮光膜、酸化防止膜を形成する場合と同様な条件を採用できる。
図3では、上記により金属遮光膜と酸化防止膜が形成されたフィルム1が、引き続き、キャンロール15の表面を通って、表面の対向側に設置されたマグネトロンカソード13Cに設置された膜の原料となるターゲット14Cにより、金属酸化物膜が形成されていく。
本発明における金属酸化物膜は、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素からなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する低反射性の金属酸化物ターゲット、金属炭化物ターゲットまたは金属窒化物ターゲットのいずれかを用い、アルゴンガス中に酸素ガスまたは/および窒素ガスを導入して、0.2〜0.8Paの成膜ガス圧にてスパッタリングして形成される。
【0044】
7.耐熱遮光フィルムの用途
本発明の耐熱遮光フィルムは、端面クラックが生じないように特定の形状に打ち抜き加工を行って、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラの固定絞り、機械的シャッター羽根や、一定の光量のみ通過させる絞り(アイリス)、更には液晶プロジェクタの光量調整絞り装置(オートアイリス)の絞り羽根、また、CCD、CMOSなどの撮像素子裏面から入射する光を遮光する耐熱遮光テープとして利用できる。
【0045】
液晶プロジェクタの光量調整絞り装置は、ランプ光の照射による加熱が顕著である。そのため、本発明の耐熱遮光フィルムを加工して製造された耐熱性と遮光性に優れた絞り羽根を搭載した光量調整絞り装置が有用である。また、レンズユニットを製造するのに、リフロー工程で固定絞りや機械式シャッターを組み立てる場合においても、本発明の耐熱遮光フィルムを加工して得た固定絞りやシャッター羽根を用いると、リフロー工程中の加熱環境下においても特性が変化しないため非常に有用である。さらに、車載ビデオカメラモニターのレンズユニット内の固定絞りは、夏場の太陽光による加熱が顕著であり、同様の理由から本発明の耐熱遮光フィルムから作製した固定絞りを適用することが有用である。
【0046】
また、本発明の耐熱遮光フィルムにおいて、遮光板の片面、または両面に粘着層を設けることで耐熱遮光テープまたはシートとすることができる。粘着層を形成するための粘着剤は、特に限定されず、従来、粘着シート用として使用されているものの中から温度、湿度など使用環境に適した粘着剤を選択することができる。
一般的な粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、あるいはシリコーン系粘着剤などを用いることができる。特に、携帯電話のレンズユニットをリフロー工程で組み立てる場合では、耐熱性が要求されるので、耐熱性の高いアクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤が好ましい。
また、耐熱遮光多層フィルムに粘着層を形成する方法としては、例えばバーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアドクターコート法、ドクターブレードコート法など、従来公知の方法により行うことができる。
粘着層の厚さは、特に制限されないが、2〜60μmが好ましい。この範囲であれば、小型、薄肉のデジタルカメラ、カメラ付携帯電話であっても、容易に貼着でき、脱落しにくい。
小型化、薄肉化したデジタルカメラ、カメラ付携帯電話では、搭載される構成部品も小型で、薄肉のものが使用される。前記のとおり、CCD、CMOSなどの撮像素子や撮像素子が搭載されるFPCが薄肉の場合、撮像素子の前面からの漏れ光以外にもFPCを透過し、撮像素子の裏面から入射する漏れ光も多くなる。この撮像素子裏面からの漏れ光によって、FPCの配線回路が撮像域に写り込み、撮像の品質が劣化してしまう。本発明の耐熱遮光多層フィルムの片面、又は両面に粘着層を設けた耐熱遮光テープは、粘着層によって、CCDやCMOSなどの撮像素子の裏面側周辺部に貼り付けることができるから、CCD、CMOSなどの撮像素子裏面へ入射する光を遮光するために有用である。
【実施例】
【0047】
次に、本発明について、実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。耐熱遮光多層フィルムの作製、評価は以下の方法で実施した。
【0048】
(光学濃度、正反射率)
分光光度計(日本分光社製:V−570)を使用し、波長380nm〜780nmの可視光域の最小光学濃度と最大正反射率を測定した。遮光性は、分光光度計で測定される透過率(T)を用いて次式により換算した。
光学濃度=Log(1/T)
シャッター装置や光量調整用絞り装置の絞り羽根では光学濃度は4以上、最大正反射率は5%以下であることが必要である。
(表面光沢度)
表面光沢度は、光沢度計(BKY−Gardner GmbH社製:スペクトロガイド)を用いてJIS Z8741に基づき測定した。表面光沢度は、3未満であれば光沢性が良好である。
(摩擦係数)
静摩擦係数及び動摩擦係数は、JIS D1894に基づき測定した。静摩擦係数及び動摩擦係数が0.3以下の場合は良好(○)とし、0.3を超えるものは不十分(×)とした。
【0049】
(耐熱性)
得られた耐熱遮光フィルムの耐熱特性を以下の手順で評価した。220℃に加熱セットしたオーブン(アドバンテック社製:型番DRD320DA)に、作製した耐熱遮光フィルムを24時間放置した後、取り出した。評価は、耐熱遮光フィルムの遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数をチェックした。
耐熱試験前と比べて、その差が、遮光性として平均光学濃度0.2%以下、反射特性として平均正反射率0.1%以下であれば変化は無いこととした。また、表面光沢度と摩擦係数は耐熱試験後の測定値が良好であれば変化は無いこととした。
(密着性)
耐熱試験後の膜の密着性をJIS C0021に基づき評価した。評価は膜剥がれがない場合は良好(○)とし、膜剥がれがあるものは不十分(×)とした。
(導電性)
得られた耐熱遮光フィルムの表面抵抗値を抵抗率計(ダイアインスツルメンツ製:Loresta―EP MCP−T360)を用いて四探針法で測定した。
(酸化防止性)
得られた耐熱遮光フィルムの色味を国際照明委員会(CIE)で標準化されているL表色系測定(JISZ8729)に基づき測定を行った。明度をL*値とし、色相と彩度を示す色度をa*、b*で表す。成膜直後に耐熱遮光フィルムのL*値、a*値、b*値それぞれ測定し、さらに耐熱遮光フィルムを大気中で2週間放置した後に、再度、L*値、a*値、b*値を測定し、次式を用いて明度、色度の変化を示す色差(ΔE)を計算し、評価した。色差として3.0以下であれば良好とし、それより大きくなるとNGとした。
ΔE=((ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2
【0050】
(実施例1)
図1に示した巻き取り式スパッタリング装置を用いて、厚さ38μmのポリイミド(PI)フィルム(東レ・デュポン社製カプトン(登録商標))に、遮光性の金属遮光膜と酸化防止膜と低反射の酸化物膜の成膜を行った。
キャンロール15の表面の対向側にマグネトロンカソード13が設置された巻き取り式スパッタリング装置を用意した。この装置は、カソード13に膜の原料となるターゲット14を取り付け、搬送部が、巻き出しロール12A、キャンロール15、巻き取りロール12Bなどで構成されており、巻き出しロール12Aが巻き取りロールになることや、巻き取りロール12Bが巻き出しロールになることも可能である。
次に、ロール状の樹脂フィルム基材1を巻き出しロール12Bにセットした。ポリイミド(PI)フィルムは、スパッタリング前に200℃以上の温度で加熱し、乾燥させておいた。
その後、TiCターゲット(住友金属鉱山社製)14Aをカソード13Aに設置し、このカソードから直流スパッタリング法で金属遮光膜を成膜した。金属遮光膜はスパッタリングガスに純アルゴンガス(純度99.999%)を用いて成膜を行った。成膜時のスパッタガス圧は、0.3Paにて実施した。成膜時のフィルムの搬送速度とターゲットへの投入電力を制御することで金属遮光膜の膜厚を制御した。
次に、Auターゲット(住友金属鉱山社製)14Bをカソード13Bに設置し、金属遮光膜が形成された上記ロールをセットして装置に供給し、このカソードから直流スパッタリング法で金属遮光膜上に酸化防止膜を成膜した。酸化防止膜はスパッタリングガスに純アルゴンガス(純度99.999%)を用いて成膜を行った。成膜時のスパッタガス圧は、0.3Paにて実施した。成膜時のフィルムの搬送速度とターゲットへの投入電力を制御することで金属遮光膜の膜厚を制御した。
最後に、TiC(住友金属鉱山社製)ターゲット14Cをカソード13Cに設置し、酸化防止膜が形成された上記ロールをセットし、装置に供給し、このカソードから直流スパッタリング法で金属遮光膜上に低反射金属酸化物膜を成膜した。低反射性の金属酸化物膜はスパッタリングガスに酸素ガスを2%混合したアルゴンガスを用いて成膜を行った。成膜時のスパッタガス圧は、6Paにて実施した。成膜時のフィルムの搬送速度とターゲットへの投入電力を制御することで酸化物膜の膜厚を制御した。こうしてポリイミド(PI)フィルムの両面に、膜厚100nmのTiC膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、さらにフィルムの裏面側も同様の成膜を実施して、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。
得られた金属遮光膜及び酸化防止膜及び金属酸化物膜の組成は、ICP発光分析およびEPMA定量分析から、ターゲット組成とほぼ同じであることを確認した。また金属遮光膜、酸化物膜の膜厚は、断面TEM観察から測定し、所定の膜厚になっていることを確認した。
また、作製した耐熱遮光フィルムを前記方法で評価した。
最小光学濃度は4以上、最大正反射率は4%であった。光沢度は2となり光沢性は良好であった。静摩擦係数及び動摩擦係数は、0.3以下となり、良好であった。また、表面抵抗値は、70Ω/□であった。大気中に2週間放置した後の耐熱遮光フィルムの色差は2.4であり、酸化防止性は良好であった。220℃/24時間加熱後の耐熱遮光フィルムには、反りは発生せず、変色もなかった。また、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数も加熱前と変化がなかったことから、耐熱性は良好であった。また、密着性試験においても膜剥がれはなく良好であった。また、JIS K5600−5−4に基づいて引っかき硬度試験(鉛筆法)を行ったところ、十分な硬度レベルのH以上であった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた耐熱遮光フィルムは、光学濃度、正反射率、表面光沢度、耐熱性、摩擦係数、導電性、酸化防止性のすべてについて良好であり、得られた評価結果によれば、実施例1の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができることがわかる。
【0051】
(実施例2)
実施例1と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTiC膜と膜厚1nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例2の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0052】
(実施例3)
実施例1と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTiC膜と膜厚50nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例3の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0053】
(比較例1)
実施例1と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTiC膜と膜厚0.5nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。しかし、大気中に2週間放置した後の耐熱遮光フィルムの色差が3.2のため、酸化防止効果は得られなかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、比較例1の耐熱遮光フィルムは、酸化防止性が機能していないため膜色は変化してしまうが、遮光性、反射特性などの他の特性に問題はなく、耐熱性にも問題が見られないことから、高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することは可能である。
【0054】
(比較例2)
実施例1と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTiC膜と膜厚60nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。しかし、酸化防止膜が厚いため、最大正反射率が6%あり、遮光フィルムとしては効果がない。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、比較例2の耐熱遮光フィルムは、200℃以上の耐熱性を有しているものの、最大正反射率が高いため、高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができない。
【0055】
(実施例4)
実施例1と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚50nmのTiC膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例3の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0056】
(実施例5)
実施例1と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚250nmのTiC膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例3の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0057】
(比較例3)
実施例1と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚40nmのTiC膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。しかし、TiC膜が薄いため、最小光学濃度が4未満になってしまい効果がない。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、比較例3の耐熱遮光フィルムは、200℃以上の耐熱性を有しているものの、光学濃度が4以上の完全遮光性を有していないことか高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができない。
【0058】
(参考例1)
実施例1と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚260nmのTiC膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。しかし、特性は実施例1と同様であったが、膜厚が厚いため成膜時間が長く、製造コストを考慮すると、適さない。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、比較例3の耐熱遮光フィルムは、200℃以上の耐熱性を有しているため、絞りやシャッター羽根などに利用することは可能であるが、成膜時間が長いことなど、耐熱遮光フィルムの製造コストが高くなるため、好ましくない。
【0059】
(実施例6)
実施例1と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTiC膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚5nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、50Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例7の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0060】
(実施例7)
実施例1と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTiC膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚240nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、100Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例8の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0061】
(比較例4)
実施例1と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTiC膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚3nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。しかし、TiC酸化膜が薄いため、最大正反射率が6%光沢度も5となり実施例1より反射が高いことがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、比較例5の耐熱遮光フィルムは、200℃以上の耐熱性を有しているものの、最大正反射率が高いため、高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができない。
【0062】
(参考例2)
実施例1と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTiC膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚260nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、110Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。しかし、特性は実施例1と同様であったが、膜厚が厚いため成膜時間が長く、製造コストを考慮すると、適さない。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、比較例4の耐熱遮光フィルムは、200℃以上の耐熱性を有しているため、絞りやシャッター羽根などに利用することは可能であるが、成膜時間が長いことなど、耐熱遮光フィルムの製造コストが高くなるため、好ましくない。
【0063】
(実施例8)
金属遮光膜の材質をTi、金属酸化物膜の材質をNi−Tiとして、それ以外は実施例1と同じ条件でフィルム両面に、膜厚100nmのTi膜と、膜厚10nmのAu酸化防止膜と、膜厚50nmのNi−Ti酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、400Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例8の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0064】
(実施例9)
実施例8と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTi膜と膜厚1nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのNi−Ti酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、400Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例9の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0065】
(実施例10)
実施例8と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTi膜と膜厚50nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのNi−Ti酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、400Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例10の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0066】
(比較例5)
実施例8と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTi膜と膜厚0.5nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのNi−Ti酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、400Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。しかし大気中に2週間放置した後の耐熱遮光フィルムの色差が3.3のため酸化防止効果がない。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、比較例5の耐熱遮光フィルムは、酸化防止性が機能していないため膜色は変化してしまうが、遮光性、反射特性などの他の特性に問題はなく、耐熱性にも問題が見られないことから、高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することは可能である。
【0067】
(比較例6)
実施例8と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTi膜と膜厚60nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのNi−Ti酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、400Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。しかし、酸化防止膜が厚いため、最大正反射率が6%あり、遮光フィルムとしては効果がない。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、比較例6の耐熱遮光フィルムは、200℃以上の耐熱性を有しているものの、最大正反射率が高いため、高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができない。
【0068】
(実施例11)
実施例8と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚50nmのTi膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのNi−Ti酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、400Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例11の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0069】
(実施例12)
実施例8と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚250nmのTi膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのNi−Ti酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、400Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例12の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0070】
(比較例7)
実施例8と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚40nmのTi膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのNi−Ti酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、400Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。しかし、Ti膜が薄いため、最小光学濃度が4未満になってしまい効果がない。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、比較例7の耐熱遮光フィルムは、200℃以上の耐熱性を有しているものの、光学濃度が4以上の完全遮光性を有していないことか高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができない。
【0071】
(参考例3)
実施例8と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚260nmのTiC膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚50nmのNi−Ti酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、400Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。しかし、特性は実施例1と同様であったが、膜厚が厚いため成膜時間が長く、製造コストを考慮すると、適さない。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、比較例10の耐熱遮光フィルムは、200℃以上の耐熱性を有しているため、絞りやシャッター羽根などに利用することは可能であるが、成膜時間が長いことなど、耐熱遮光フィルムの製造コストが高くなるため、好ましくない。
【0072】
(実施例13)
実施例8と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTi膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚5nmのNi−Ti酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、200Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例13の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0073】
(実施例14)
実施例8と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTi膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚240nmのNi−Ti酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、500Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例14の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0074】
(比較例8)
実施例8と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTi膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚3nmのNi−Ti酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、180Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。しかし、TiC酸化膜が薄いため、最大正反射率が6%光沢度も5となり実施例1より反射が高いことがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、比較例8の耐熱遮光フィルムは、200℃以上の耐熱性を有しているものの、最大正反射率が高いため、高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができない。
【0075】
(参考例4)
実施例8と全く同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTi膜と膜厚10nmのAu酸化防止膜と膜厚260nmのNi−Ti酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、500Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。しかし、特性は実施例1と同様であったが、膜厚が厚いため成膜時間が長く、製造コストを考慮すると、適さない。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、この耐熱遮光フィルムは、200℃以上の耐熱性を有しているため、絞りやシャッター羽根などに利用することは可能であるが、成膜時間が長いことなど、耐熱遮光フィルムの製造コストが高くなるため、好ましくない。
【0076】
(実施例15)
金属酸化物膜の材質をSiとして、それ以外は実施例1と同じ条件でフィルム両面に、膜厚100nmのTiC膜と、膜厚10nmのAu酸化防止膜と、膜厚50nmのSi酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、1000Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例15の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0077】
(実施例16)
金属酸化物膜の材質をTiとして、それ以外は実施例1と同じ条件でフィルム両面に、膜厚100nmのTiC膜と、膜厚10nmのAu酸化防止膜と、膜厚50nmのTi酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例16の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0078】
(実施例17)
金属酸化物膜の材質をAlとして、それ以外は実施例1と同じ条件でフィルム両面に、膜厚100nmのTiC膜と、膜厚10nmのAu酸化防止膜と、膜厚50nmのAl酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、700Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例17の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0079】
(実施例18)
金属酸化物膜の材質をMgとして、それ以外は実施例1と同じ条件でフィルム両面に、膜厚100nmのTiC膜と、膜厚10nmのAu酸化防止膜と、膜厚50nmのMg酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミド(PI)フィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、700Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例18の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0080】
(実施例19)
樹脂フィルムをポリアミドイミドフィルムにし、それ以外は実施例1と同じ条件でフィルム両面に、膜厚100nmのTiC膜と、膜厚10nmのAu酸化防止膜と、膜厚50nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリアミドイミドフィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例19の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0081】
(実施例20)
樹脂フィルムをポリフェニレンサルファイドフィルムにし、それ以外は実施例1と同じ条件でフィルム両面に、膜厚100nmのTiC膜と、膜厚10nmのAu酸化防止膜と、膜厚50nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリフェニレンサルファイドフィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例20の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0082】
(実施例21)
樹脂フィルムをポリエーテルエーテルケトンフィルムにし、それ以外は実施例1と同じ条件でフィルム両面に、膜厚100nmのTiC膜と、膜厚10nmのAu酸化防止膜と、膜厚50nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリエーテルエーテルケトンフィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例21の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0083】
(実施例22)
樹脂フィルムをポリエーテルサルフォンフィルムにし、それ以外は実施例1と同じ条件でフィルム両面に、膜厚100nmのTiC膜と、膜厚10nmのAu酸化防止膜と、膜厚50nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリエーテルサルフォンフィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例22の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0084】
(実施例23)
酸化防止膜としてPtターゲットにし、それ以外は実施例1と同じ条件でフィルム両面に、膜厚100nmのTiC膜と、膜厚10nmのPt酸化防止膜と、膜厚50nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミドフィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例23の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0085】
(実施例24)
酸化防止膜としてAgターゲットにし、それ以外は実施例1と同じ条件でフィルム両面に、膜厚100nmのTiC膜と、膜厚10nmのAg酸化防止膜と、膜厚50nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミドフィルム基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、酸化防止性などの特性は実施例1と同等のものが得られていた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。作製した耐熱遮光フィルムの構成、特性を表1にまとめた。
得られた評価結果より、実施例24の耐熱遮光フィルムは、200℃程度の高熱環境下で使用される液晶プロジェクタの絞りなどの部材として利用することができる。
【0086】
(比較例9)
実施例1と同じ条件でフィルムの両面に、膜厚100nmのTiC膜と膜厚50nmのチタンの炭化酸化物膜を順に、スパッタリング成膜し、ポリイミドフィルム(PI)基材を中心に対称構造の耐熱遮光フィルムを作製した。作製した耐熱遮光フィルムの評価(光学特性、耐熱性、酸化防止性)を実施例1と同様の方法、条件で実施した。
光学濃度、正反射率、光沢度、などの特性は実施例1と同等のものが得られた。また、表面抵抗値は、70Ω/□であることを確認した。また、220℃で24時間加熱試験後の膜の密着性評価でも、反りや膜剥がれはなく、遮光性、反射特性、光沢度、摩擦係数の変化も無いことから、実施例1と同等の耐熱特性を有していることがわかった。しかし、大気中に2週間放置した後の耐熱遮光フィルムの色差が3.3のため、酸化防止効果は得られなかった。
得られた評価結果より、比較例9の耐熱遮光フィルムは、遮光性、反射特性などの他の特性に問題はなく、耐熱性にも問題が見られないが、酸化防止膜が無いため膜色が変化してしまう。
【0087】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の耐熱遮光フィルムは、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラのレンズシャッターなどのシャッター羽根または絞り羽根や、カメラ付き携帯電話や車載モニターのレンズユニット内の固定絞りや、プロジェクタの光量調整用絞り装置(オートアイリスとも言う)の絞り羽根などの光学機器部品や耐熱遮光テープとして用いられる。
【符号の説明】
【0089】
1 樹脂フィルム基材
2 金属遮光膜
3 酸化防止膜
4 金属酸化物膜
12A 巻き出しロール
12B 巻き取りロール
13A マグネトロンカソード
13B マグネトロンカソード
13C マグネトロンカソード
14A ターゲット
14B ターゲット
14C ターゲット
15 キャンロール
16 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
200℃以上の耐熱性を有する樹脂フィルム基材(A)の片面もしくは両面に、スパッタリング法で形成された50nm以上の膜厚を有する金属遮光膜(B)と、5nm以上の低反射性の金属酸化物膜(D)が積層された耐熱遮光フィルムにおいて、
金属遮光膜(B)と金属酸化物膜(D)の間に1〜50nmの膜厚を有する酸化防止膜(C)がスパッタリング法で形成されていることを特徴とする耐熱遮光フィルム。
【請求項2】
前記樹脂フィルム基材(A)は、ポリイミド、アラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン又はポリエーテルサルフォンから選ばれた1種類以上で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項3】
前記金属遮光膜(B)は、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素からなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属遮光膜を特徴とする請求項1に記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項4】
前記酸化防止膜(C)は、金、銀、白金、及びパラジウムからなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する酸化防止膜を特徴とする請求項1に記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項5】
前記金属酸化物膜(D)は、チタン、タンタル、タングステン、バナジウム、モリブデン、コバルト、ニオブ、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び珪素からなる群より選ばれた1種類以上の元素を含有する金属酸化物膜を特徴とする請求項1に記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項6】
前記金属酸化物膜(D)は、窒素もしくは炭素、あるいは窒素と炭素の両方を含むことを特徴とする請求項1に記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項7】
前記金属遮光膜(B)の膜厚が50〜250nmであり、金属酸化物膜(D)の膜厚が5〜240nmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項8】
表面抵抗値が1000Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項9】
波長380〜780nmにおける最大正反射率が、5%以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の耐熱遮光フィルム。
【請求項10】
樹脂フィルム基材(A)の両面に、金属遮光膜(B)と酸化防止膜(C)と金属酸化物膜(D)からなる積層膜が形成されており、フィルム基板を中心として対象の構造であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の耐熱遮光フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−203309(P2012−203309A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69719(P2011−69719)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】