耐熱金属をドープしたスパッタリングターゲット
導電性金属マトリックス、好ましくは銅、と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される耐熱ドーパント成分とから実質的に成る金属材料であって、好ましくは、当該耐熱ドーパント成分が、当該金属材料に対して約0.1〜6質量%の量である金属材料、そのような材料の合金、それを含有するスパッタリングターゲット、そのようなターゲットを製造する方法、薄膜形成におけるそれらの使用、並びにそのような薄膜を含有する電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アルミ(Al)薄膜は、導線および電極としてフラットパネル・ディスプレイにおいて広く使用されている。通常、基板はガラス(SiO2、二酸化ケイ素)である。銅(Cu)薄膜は、一般的に、基板としてシリコン(Si)を用いた相互接続線のために半導体集積回路において使用されている。通常のデバイス加工処理の際には、温度は、250℃まで、さらには500℃にまで昇温される場合がある。そのような温度では、AlおよびCuは、SiまたはSiO2基板中に拡散し得、同様にSiは、Al皮膜またはCu皮膜中に拡散し得る。ヒロック、ボイド、および他の有害な欠陥が、Al薄膜もしくはCu薄膜および/または界面において形成される可能性があり、デバイスまたは回路(例えば、短絡回路)の運用性を損ない得る。
【0002】
Al皮膜およびCu皮膜中への拡散の問題を軽減する取り組みにおいて、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、他の耐熱金属、および/またはそれらのニトリドであり得る拡散バリアー層を、Al/Cu皮膜と基板との間に蒸着することにより、拡散を減少または解消することができる。しかしながら、デバイスの構造に余分な層を追加することは、材料、装置、および労働力の費用を増加させ、処理能力を低下させる。さらに、半導体IC製造において採用される限界寸法が、45nm、32nm、などへと急速に減少し続ける中、バリアー層の使用は、空間的な要求が達成できないために採用することができなくなるだろう。
【0003】
低い拡散性および低い抵抗値の両方を兼ね備えた材料を開発するためのこれまでの試みとしては、MoまたはWでドープされたCu合金の研究が挙げられる。バリアー層を使用せずに、マイクロデバイス配線および電極のための薄膜としてそのような材料を用いる試みについて説明されている。残念ながら、どちらの材料も、拡散性の十分な低減と必要な導電性とを有してはいない。モリブデンをドープした銅材料の中には、許容できる抵抗値を示し得るものもあるが、依然としてバリアー層が必要な程度にまで、下層のシリコン基板に拡散が生じる。
【0004】
高い導電性と低い拡散性とを示すと共に、半導体相互接続、フラットパネル・ディスプレイ配線などの用途における薄膜としての使用に好適な金属材料は、さらに、良好な熱安定性、高蒸着速度、高エッチング速度、低ストレス、および基材への良好な接着性を有していなければならない。
【0005】
半導体および光電子産業において使用される様々な製造方法において金属薄膜を製造するために使用される技術の1つは、スパッタリングである。スパッタリングの際に形成される皮膜の特性は、スパッタリングターゲット自体の特性、例えばそれぞれの結晶粒子サイズおよび分布特性を有する第二相の形成など、に関連している。皮膜均一性、スパッタリング中の最少の粒子形成、および所望の電気特性を提供するであろうスパッタリングターゲットを製造することが望ましい。スパッタリングは、薄膜形成において一般的な方法であるため、半導体相互接続、フラットパネル・ディスプレイ配線などの用途において薄膜として使用される金属材料は、スパッタリングターゲットとしての使用においても好適でなければならない。
【0006】
本発明は、概して、導電性マトリックス金属と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、チタン、ニッケル、およびそれらの混合物を含む群から選択される1種以上の耐熱金属ドーパントとを含む金属材料、特にスパッタリングターゲットを製造するためのそのような金属材料、およびそのような材料を含むスパッタリングターゲットに関する。当該1種以上の耐熱金属ドーパントは、好ましくは、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物を含む群から選択される。本発明の様々な実施形態による使用に好適な導電性マトリックス金属としては、銅およびアルミが挙げられる。様々な好ましい実施形態において、当該導電性マトリックス金属は銅を含む。本発明の様々な実施形態による金属材料は、薄膜形成および金属被覆などの様々な使用のためのスパッタリングターゲットおよび合金を製造するために使用することができる。本発明の金属材料から製造されたスパッタリングターゲットは、基材上に薄膜を蒸着するために使用することができる。そのような薄膜および半導体部品におけるそれらの使用も本発明に包含される。本発明によって提供される薄膜は、例えば、半導体IC、フラットパネル・ディスプレイ、オプトエレクトロニクスデバイス、光起電デバイス、および太陽電池において、相互接続、導線(例えば、データ線およびアドレス線)、ならびに電極(例えば、ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極)として使用することができる。
【0007】
本発明の様々な実施形態による金属材料は、本発明による薄膜を含む様々な電子部品の後処理に関連する著しく改善された特性を提供し得る。驚いたことに、出願人らは、本発明の様々な実施形態による金属材料は、エレクトロニクスのための有用な薄膜(例えば、好ましくスパッタされた皮膜)を提供することができ、当該薄膜は、例えば、基材(例えば、SiまたはSiO2など)とその上に蒸着された金属材料との間の相互拡散の低減を伴う、低い抵抗値と例外的な熱安定性とのこれまで無かった組み合わせなど、従来技術よりも重要な利点を提供するということを見出した。有利な特性のそのような組み合わせは、非常に高い品質(例えば、拡散を生じずにアニール処理に耐えることができる)を有し、かつ優れた性能品質(例えば、低い抵抗値)を示す、誘電性基板上への金属被覆を提供するために使用可能な材料の提供において、従来技術に対して重要な改善を提供する。本発明の様々な実施形態による金属材料は、薄膜として蒸着される場合に、公知の材料と比較して、様々な基板に対して優れた接着性も示し得る。
【0008】
さらに顕著で非常に有利な点は、本発明の様々な実施形態による薄膜は、基板と当該薄膜との間にバリアー層を必要とせず、加工処理(例えば、アニール処理または、さもなくは別の方法による加熱処理)することができるという発見である。したがって、本発明は、現在使用されている導電層/拡散バリアー層の組み合わせに対する簡素化された代替策を提案するものである。バリアー層の省略を可能にする新たに発見された当該材料は、ある特定の加工処理コスト全部を省くことができ、および/または様々な製造作業の簡素化が可能であり、結果、著しくコストが削減され得る。
【0009】
本発明の一実施形態は、導電性マトリックス金属、好ましくは銅、と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される耐熱ドーパント成分とから実質的に成る金属材料を含む。
【0010】
本発明の別の実施形態は、銅およびタンタルの混合物から実質的に成る金属材料を含み、この場合、当該タンタルは、好ましくは、当該金属材料に対して0.1〜6質量パーセント、より好ましくは2〜4質量パーセントの量で存在する。
【0011】
本発明の別の実施形態は、銅およびクロムの混合物から実質的に成る金属材料を含み、この場合、当該クロムは、好ましくは、当該金属材料に対して0.1〜6質量パーセント、より好ましくは2〜4質量パーセントの量で存在する。
【0012】
本発明の別の実施形態は、銅と、クロムおよびタンタルの耐熱ドーパント混合物との混合物から実質的に成る金属材料を含み、この場合、当該耐熱ドーパント混合物は、好ましくは、当該金属材料に対して0.1〜6質量パーセント、より好ましくは2〜4質量パーセントの量で存在する。そのような実施形態においては、当該クロムおよびタンタルは、好ましくは、それぞれ、当該金属材料に対して0.2〜3質量パーセント、より好ましくは0.5〜1.5質量パーセントの量で存在する。ある特定の実施形態において、当該タンタルは、好ましくは、当該金属材料に対して1質量パーセント以下の量で存在し、当該クロムは、当該金属材料に対して0.5質量パーセント以下の量で存在する。
【0013】
本発明の別の実施形態は、導電性マトリックス金属粉末(好ましくは、銅粉末)と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る金属粉末の群から選択される耐熱金属粉末とから実質的に成る、高密度化された均一な粉末混合物を含むスパッタリングターゲットを含む。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態は、(a)導電性マトリックス金属粉末(例えば、銅粉末)と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る粉末の群から選択される耐熱金属粉末とから実質的に成る均一な粉末混合物を提供する工程、および(b)当該均一な粉末混合物を熱機械的方法に供して、スパッタリングターゲットプレートを形成する工程、を含む方法によって製造することができるスパッタリングターゲットを含む。
【0015】
本発明の他の実施形態は、薄膜を製造する方法およびそれによって製造された薄膜を含み、この場合、方法は、(a)基板を提供する工程、(b)本発明の1つ以上の他の実施形態によるスパッタリングターゲットを提供する工程、並びに(c)当該スパッタリングターゲット材料で構成された薄膜が、基板の表面に配置されるように、当該スパッタリングターゲットをエネルギーの供給源に供する工程を含む。本発明の別の実施形態は、銅と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される耐熱金属ドーパントとから実質的に成る金属材料を含む薄膜を含む。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態は、基板と、当該基板の表面上に配置された薄膜とを含む半導体デバイスを含み、この場合、当該薄膜は、銅と、当該薄膜に対して約0.1〜6質量パーセントの濃度を有する耐熱ドーパントとから実質的に成り、ここで、当該耐熱ドーパントは、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される金属を含む。
【0017】
本発明の他の実施形態は、金属材料、それから製造されるスパッタリングターゲット、そのようなターゲットを用いて薄膜を蒸着する方法、それによって形成された薄膜、並びにそのような薄膜を含有する半導体、フラットパネル・ディスプレイ、および太陽電池デバイスを含み、この場合、当該金属材料は、導電性マトリックス金属、好ましくは銅、と、チタンまたはニッケルとから実質的に成る。そのような実施形態において、当該チタンまたはニッケルは、好ましくは、当該金属材料に対して0.1〜6質量パーセント、より好ましくは1〜3質量パーセントの量で存在する。
【0018】
本発明のある特定の好ましい実施形態において、当該耐熱ドーパント成分は、おそらく当該導電性マトリックス金属、特にCuにおける耐熱金属の相対的難溶性のため、粒界中に隔離され得る。粒界は、材料における拡散チャネルであり、欠陥および空孔が粒子内より多く存在する。空孔拡散は、拡散のための最も重要なメカニズムであると広く考えられている。したがって、粒界に存在する耐熱金属原子は、拡散チャンネルを遮断して拡散を低減するために役立つ可能性がある。さらに、当該耐熱ドーパント成分量が小さいため、抵抗値は低く維持される。
【0019】
本発明についての前述の概要並びに以下の詳細な説明は、添付の図面を参照することにより、より良く理解されるであろう。本発明を説明するため、現時点において好ましい実施形態を図に示す。しかしながら、本発明は、示されている厳密な構成および手段に限定されるものではないことは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1a】電子部品におけるバリアー層を有する従来技術の二層導線の断面図を示す図である。
【図1b】本発明の実施形態による導線の横断面図を示す図である。
【図2a】本発明の実施形態によるCu−Ta皮膜の、様々なアニール温度における皮膜の深さ方向のグラフ(オージェプロファイル)を示す図である。
【図2b】対照例による銅皮膜の、様々なアニール温度における皮膜の深さ方向のグラフ(オージェプロファイル)を示す図である。
【図2c】本発明の実施形態によるCu−Ta/Cr膜の、様々なアニール温度における皮膜の深さ方向のグラフ(オージェプロファイル)を示す図である。
【図2d】本発明の実施形態によるCu−Ni膜の、様々なアニール温度における皮膜の深さ方向のグラフ(オージェプロファイル)を示す図である。
【図3a】図2aに示された皮膜の様々なアニール温度におけるオージェプロファイルのグラフのオーバーレイを示す図である。
【図3b】図2bに示された銅皮膜の様々なアニール温度におけるオージェプロファイルのグラフのオーバーレイを示す図である。
【図3c】図2cに示された皮膜の様々なアニール温度におけるオージェプロファイルのグラフのオーバーレイを示す図である。
【図3d】図2dに示された皮膜の様々なアニール温度におけるオージェプロファイルのグラフのオーバーレイを示す図である。
【図4】比較例による銅−モリブデン皮膜の、様々なアニール温度における皮膜の深さ方向のグラフ(オージェプロファイル)を示す図である。
【図5】様々な皮膜のアニール温度に対する抵抗値のグラフを示す図である。
【図6a】本発明の実施形態による銅−タンタル皮膜の、様々なアニール温度でのSEM画像を示す図である。
【図6b】本発明の実施形態による銅−タンタル皮膜の、様々なアニール温度でのSEM画像を示す図である。
【図6c】本発明の実施形態による銅−タンタル皮膜の、様々なアニール温度でのSEM画像を示す図である。
【図6d】本発明の実施形態による銅−タンタル皮膜の、様々なアニール温度でのSEM画像を示す図である。
【図7a】様々なアニール段階における、対照例による銅皮膜のSEM画像を示す図である。
【図7b】様々なアニール段階における、対照例による銅皮膜のSEM画像を示す図である。
【図7c】様々なアニール段階における、対照例による銅皮膜のSEM画像を示す図である。
【図7d】様々なアニール段階における、対照例による銅皮膜のSEM画像を示す図である。
【図8a】様々なアニール条件下における、本発明の実施形態による銅−タンタル皮膜の一連のX線回折スペクトルを示す図である。
【図8b】様々なアニール条件下における、本発明の実施形態による銅−タンタル/クロム皮膜の一連のX線回折スペクトルを示す図である。
【図8c】様々なアニール条件下における、本発明の実施形態による銅−ニッケル皮膜の一連のX線回折スペクトルを示す図である。
【図8d】様々なアニール条件下における、対照例による銅皮膜の一連のX線回折スペクトルを示す図である。
【図9a】様々なアニール条件下における、比較例による銅−モリブデン皮膜の一連のX線回折スペクトルを示す図である。
【図9b】様々なアニール条件下における、比較例による銅−タングステン皮膜の一連のX線回折スペクトルを示す図である。
【0021】
本明細書において使用される場合、単数用語「1つの("a")」および「当該("the")」は、「1つ以上("one or more")」および「少なくとも1つ("at least one")」と同義語であり、相互交換的に使用される。したがって、例えば、本明細書または添付の特許請求の範囲における「1つの金属("a metal")」は、単独の金属または2種以上の金属を意味し得る。
【0022】
本明細書において使用される場合、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される耐熱ドーパント成分を含有する本発明のそれらの実施形態の参照により、「から実質的に成る("consisting essentially of"および"consist(s) essentially of")」なる句は、「を含む("comprising")」なる用語の一般に受け入れられている理解による非限定形式において、当該句に続いて列挙された本発明の要素を意味するが、例外として、前述の句は、導電性を改善するために0.1〜3.0質量%の量で添加されたアルミ、銀、金、チタン、ニッケル、コバルト、ケイ素の元素、またはそれらの組み合わせの存在を除外する。当該句は、本発明の基本的で新規の特徴に影響を及ぼすこれらの添加元素の除外を除き、他の任意の制限効果を含まない。
【0023】
本明細書において使用される場合、導電性マトリックス金属とチタンまたはニッケルとを含有するそれらの本発明の実施形態の参照により、「から実質的に成る("consisting essentially of"および"consist(s)essentially of")」なる句は、「を含む("comprising")」なる用語の一般に受け入れられている理解による非限定形式において、当該句に続いて列挙された本発明の要素を意味するが、例外として、前述の句は、タングステンおよびモリブデンの元素、またはそれらの組み合わせの存在を除外する。当該句は、本発明の基本的で新規の特徴に影響を及ぼすこれらの添加元素の除外を除き、他の任意の制限効果を含まない。
【0024】
本発明の様々な実施形態による金属材料は、金属の混合物を含む。当該混合物は、主として、導電性マトリックス金属、好ましくは銅をベースとする。様々な好ましい実施形態において、当該金属材料は、主要部分の導電性マトリックス金属を含む。より好ましくは、当該金属材料は、90質量%超の導電性マトリックス金属を含み、より好ましくは少なくとも約94質量%の導電性マトリックス金属を含み、最も好ましくは約97〜99質量%の導電性マトリックス金属を含む。各場合において、当該導電性マトリックス金属は、好ましくは銅を含む。より好ましくは、当該導電性マトリックス金属は銅である。
【0025】
様々な特定の好ましい実施形態において、本発明による金属材料は、導電性マトリックス金属、好ましくは銅、と、以下に説明されるような耐熱ドーパント成分との混合物を含み、並びに無視できる程度の量以外の他の任意の金属を除外する。言い換えれば、本発明による金属材料のある特定の好ましい実施形態は、微量のさらなる元素のみと共に、並びにより好ましくは微量の元素さえも含まずに、銅と耐熱金属ドーパントとを含有する。
【0026】
好適な耐熱ドーパント成分としては、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましい耐熱ドーパント成分としては、タンタル、クロム、およびそれらの混合物が挙げられる。本発明のある特定の特に好ましい実施形態において、当該耐熱ドーパントは、タンタルを含み、より好ましくはタンタルから成る。本発明のある特定の他の特に好ましい実施形態において、当該耐熱ドーパントは、クロムを含み、より好ましくはクロムから成る。本発明のある特定の他の特に好ましい実施形態において、当該耐熱ドーパントは、クロムおよびタンタルを含み、より好ましくはクロムおよびタンタルから成る。
【0027】
本発明の様々な実施形態による金属材料、混合物、合金、スパッタリングターゲット、および薄膜において、当該耐熱ドーパント成分は、少量、例えば、約7.5質量%未満で存在する。好ましくは、当該耐熱ドーパント成分は、金属材料、混合物、合金、スパッタリングターゲット、または皮膜に対して、約0.1〜約6質量%の量で存在する。より好ましくは、当該耐熱ドーパント成分は、約1〜約3質量%の量で存在する。特に好ましい実施形態において、当該耐熱ドーパント成分は、2.0±1.0質量%の量で存在する。
【0028】
本発明による金属材料は、例えば、粉末ブレンド、高密度化ターゲット、または任意の物理状態における合金などの様々な形態で存在し得る。粉末ブレンドは、スパッタリングターゲットを形成する治金学的加工処理前の構成金属のホモジナイズに有利であり得る。
【0029】
本発明によるスパッタリングターゲットは、例えば、銅金属粉末と耐熱ドーパント金属粉末とを組み合わせて、当該粉末を混合し、当該混合された粉末を、例えば、圧縮成形、焼結、および/または高密度化などを含み得る冶金学的加工処理に供することによって製造することができる。
【0030】
したがって、本発明の様々な実施形態において、本発明によるターゲットの製造に好適な粉末ブレンドは、適切な銅粉末と耐熱ドーパント金属粉末とを組み合わせることによって製造することができる。本発明における使用に好適な金属粉末は、例えば、水もしくはガスにより、任意の適切な方法において原子化することができる。本発明における使用に好適な粉末は、好ましくは、99.95%(「3N5」)以上、より好ましくは99.99%(「4N」)以上、最も好ましくは99.999%(「5N」)以上の純度を有する。
【0031】
好ましくは、導電性マトリックス金属粉末は、20μmの平均粒径を有するだろう。耐熱金属ドーパント粉末の平均粒径は、できるだけ小さい方が好ましい。一般的に、当該耐熱金属ドーパント粉末の平均粒径は、当該導電性マトリックス金属粉末の平均粒径より大きくない。例えば、タンタル粉末の平均粒径は、15μm以下であり得る。
【0032】
当該銅粉末および耐熱ドーパント金属粉末は、組み合わされ、混合される。当該金属粉末は、当該技術分野において公知の任意の粉体ブレンド技術を用いて混合することができる。例えば、当該金属粉末を乾燥容器に入れて、当該容器をその中心軸の周りを回転させることによって混合してもよい。混合は、結果として均一なブレンド、すなわち、一様に分散した粉末、が得られるほど十分な期間継続することができる。ボールミルまたは同様の装置を使用して、当該ブレンド工程を達成してもよい。本発明は、任意の特定の混合技術に限定されず、好適な均一性を達成するのに十分なほど当該金属粉末をブレンドできるのであれば、他の混合技術を選択してもよい。
【0033】
次いで、上記において説明された本発明の様々な実施形態によるブレンドされた粉末を、1つ以上の様々な冶金学的加工処理に供することにより、本発明の様々な実施形態によるスパッタリングターゲットを得ることができる。好適な冶金学的加工処理は、圧縮成形、焼結、圧延、およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0034】
例えば、ブレンドされた粉末は、場合により、予備圧縮工程において、理論密度の約70〜80%のグリーン密度まで圧密してもよい。当該圧密化は、粉末冶金の当業者に公知の任意の手段、例えば、冷間等方圧加圧成形、圧延、またはダイ圧縮成形などにより、達成することができる。用いられる圧縮時間および圧力量は、この工程において達成されることが所望される圧密の程度に応じて変わるであろう。例えば管状ターゲットなど、ターゲットのタイプによっては、この工程は必要でない場合もある。
【0035】
予備圧密化工程に続いて、当該圧密化された粉末をカプセル封入してもよい。カプセル封入は、相互接続した表面細孔を有さないコンパクトなワークピースを提供するであろう任意の方法、例えば、焼結、溶射、キャニングなど、によって達成することができる。本明細書において使用される場合、「カプセル封入」なる用語は、相互接続した表面細孔を有さないコンパクトなワークピースを提供するための、当業者に公知の任意の方法を意味する。好ましくは、圧縮された粉末混合物は、焼結に供される。特に好ましい焼結は、解離アンモニア中2段階で、約700℃〜750℃で約40〜45分間実施され得る。様々な好ましい実施形態において、焼結は2段階から成りうる。第一段階では、焼結は、600〜700℃で20〜30分間実施され得る。第二段階では、焼結は、1000〜1050℃で20〜30分間実施され得る。様々な実施形態はさらに、第一と第二の焼結段階との間に、35〜45トン/インチの圧力による室温での圧縮成形を含んでいてもよい。
【0036】
カプセル封入後、当該カプセル封入された金属材料を、加熱加圧下で圧縮してもよい。様々な圧縮方法が当該技術分野において公知であり、例えば、これらに限定されるものではないが、不活性ガス1軸熱間加圧成形、真空ホットプレス、熱間等方圧加圧成形、および急速全方向性圧縮成形などの方法が挙げられる。好ましくは、当該カプセル封入されたワークピースは、所望のターゲット形状に熱間等方圧加圧成形される。熱間等方圧加圧成形は、当該技術分野において公知の操作パラメータの任意の組み合わせ、例えば、5,000〜20,000psi(約34.5〜138MPa)の圧力下、より好ましくは10,000〜15,000psi(約69〜103MPa)の圧力下において、700〜1000℃、より好ましくは800〜900℃の温度で、2〜8時間、より好ましくは3〜5時間実施することができる。適切な温度、圧力、時間条件が維持される限り、本発明のスパッタリングターゲットを製造するために、熱間加圧成形の他の方法を使用することができる。
【0037】
最終的な圧縮工程の後、当該ターゲットプレートを、所望のサイズおよび形状に機械加工することができ、最終的なスパッタリングターゲットを製造するために、当該技術分野において公知であるように、場合によりバッキングプレートに接着してもよい。より大きなスパッタリングターゲットが所望される場合には、本発明の2つ以上のターゲットプレートの端部と端部とを合わせて接着してもよい。
【0038】
本発明の最終的なスパッタリングターゲットは、理論密度の約90%超、好ましくは理論密度の少なくとも95%、より好ましくは理論密度の少なくとも98%の密度を有し得る。
【0039】
本発明はさらに、本発明の様々な金属材料実施形態のいずれかによる金属材料から成る薄膜を形成する方法も含む。本発明による薄膜を形成するための好適な方法としては、本発明の実施形態による金属材料の物理蒸着法および電気メッキ法が挙げられる。本発明の様々な好ましい方法において、当該物理蒸着法は、スパッタリングを含む。
【0040】
本発明はさらに、薄膜を製造するため、上記の様々な実施形態によるスパッタリングターゲットの使用も含む。したがって、本発明の様々な実施形態において、本発明の実施形態によるスパッタリングターゲットは、基板上に薄膜を提供するためにスパッタリング法に供される。
【0041】
本発明の様々な特に好ましい実施形態によるスパッタリングは、DCマグネトロンスパッタリングを含む。当該技術分野において公知の、任意の好適なDCマグネトロンスパッタリングシステムおよび/または方法、または開発すべき方法は、本発明の様々な実施形態によるスパッタリングターゲットを使用して薄膜をスパッタするために使用することができる。
【0042】
様々な特に好ましい実施形態において、DCマグネトロンスパッタリング法は、例えば、小さな2.5インチの直径のターゲットに対して、100W〜2000W、より好ましくは100Wの電力、アルゴン含有プラズマを用いた1mTorr〜20mTorr、より好ましくは約10mTorrのスパッタ圧、約2.5〜20cm、より好ましくは約5〜10cmのターゲットと基板との間の距離、0V〜−300V、より好ましくは0Vの基板バイアス、室温〜500℃、より好ましくはおよそ室温の基板温度、を含む条件下で実施することができる。
【0043】
本発明による薄膜を蒸着させ得るのに好適な基板としては、電子用途において使用することができ、PVDおよび/または電気メッキ法に好適に耐え得る任意の材料を挙げることができる。望ましい基板としては、シリコン材料または電子用途に用いられる任意の他の絶縁材料、例えば、単結晶Si、非晶質Si、ガラス、シリカ、または非晶質SiまたはSiO2の層でコーティングされた基板を挙げることができる。そのようなSiO2コーティング層の膜厚は、20nm〜300nm、より好ましくは約30nmであり得る。
【0044】
本発明はさらに、本発明の様々な実施形態による金属材料を含む薄膜も含む。上記のとおり、そのような薄膜は、好ましくは、本発明の実施形態によるターゲットをスパッタリングすることによって提供される。本発明による薄膜は、5nm〜500nm、好ましくは100nm〜200nm、より好ましくは約100nmの膜厚を有し得る。
【0045】
本発明による薄膜は、好ましくは、20〜100nmの平均粒径を有するナノ結晶ミクロ構造を有する。より好ましくは、当該平均粒径は、約70〜90nmであり、最も好ましくは約80nmである。平均粒径は、例えばSEM画像検出を用いて公知の方法により特定することができる。
【0046】
本発明の様々な特に好ましい実施形態において、薄膜は、銅と、当該薄膜に対して0.1〜6質量%の量の、タンタル、クロム、およびそれらの混合物から成る群から選択される耐熱ドーパントとの二成分合金を含み、好ましくは、その場合、当該薄膜は、約80nmの平均粒径を有する。
【0047】
本発明はさらに、電子デバイス、好ましくは、例えば薄膜トランジスタなどを含む半導体集積回路およびLCDディスプレイパネル回路デバイスも含み、この場合、当該デバイスは、基板上に配置された本発明の実施形態による薄膜を含む。本発明による電子デバイスにおける使用のための薄膜は、本明細書において説明した方法により、例えばスパッタリングによって、蒸着することができる。そのような電子デバイスのさらなる加工(例えば、エッチングなど)の前に、当該薄膜を、高温処理することができ、したがって、アニール処理することができる。本発明による薄膜は、下層基板への有害な拡散を示すことなくそのような電子デバイスの処理において通常行われるような温度および条件下において、アニール処理することができる。好適なアニール処理は、例えば、真空オーブンなどのオーブン中、約5×10-8Torrの基準圧において、約200℃〜600℃の温度で約2時間実施することができる。
【0048】
本発明を、以下の非限定的な実施例を参照しながら、さらに詳細に説明する。
【0049】
実施例
対照、実施例1〜4、および比較例5〜7:薄膜の評価
最初に、銅粉末(対照試料としての、純Cu)を準備し、銅粉末CuLox(登録商標)タイプ620、通常20μm(CuLox Technologies(米国コネチカット州ノガタック)から市販されている)を、上記において指定したように、0.1〜6質量%の量で、Ta、Cr、Ni、Si、Mo、および/またはW粉末と乾燥混合することにより、7種の粉末を製造した(本発明の実施例1のCu−Ta;本発明の実施例2のCu−Cr;本発明の実施例3のCu−Ta/Cr;本発明の実施例4のCu−Ni;並びに比較例5、6、および7の、それぞれCu−Mo、Cu−W、およびCu−Ta/Si)。使用したタンタル粉末は、H.C.Starck(米国マサチューセッツ州ニュートン)のH.C.Starck NH230コンデンサーグレード粉末であった。使用したクロム粉末は、Alfa/Aesarからの市販されている325メッシュの粉末であった。使用したモリブデン粉末は、H.C.Starck(米国マサチューセッツ州ニュートン)のH.C.StarckタイプMMP−OMFP、通常5μmであった。使用したタングステン粉末は、H.C.Starck(米国マサチューセッツ州ニュートン)のH.C.Starck WMP、通常3.5μmであった。使用したニッケル粉末は、Alfa Aesarの99.8%のNi、カタログ番号44739−36、CC0501(−150/+200メッシュ)であった。使用したシリコンドープされたタンタル粉末は、H.C.Starck(米国マサチューセッツ州ニュートン)のH.C.Starck TPX(−325メッシュ)であった。
【0050】
当該粉末は、V型ブレンダーを使用してブレンドし、機械的に圧縮して、73%〜77%のグリーン密度を有する、厚さ10mm、約Φ60mmのディスクを形成する。次いで、当該圧粉体は、それぞれ、解離アンモニア中において、705℃〜730℃で約40〜45分間部分的に焼結した。当該部分的に焼結したディスクを、それぞれ、45トンの負荷をかけてコイン状に成形し、解離アンモニア中1040℃〜1055℃で30〜35分間焼結した。当該焼結されたディスクは、熱間等方圧加圧成形(HIP:hot isostatic pressing)により、10,000psi(約69MPa)において、750℃で4時間かけて確実に、完全に高密度化した。各ディスクは、機械的に、厚さ6.35mm、Φ51mmに成形した。次いで、得られたターゲットを用いて評価のために薄膜を製造した。
【0051】
当該薄膜は、DCマグネトロンスパッタリングにより、単結晶シリコンウェハー(100)およびCorning1737ガラスウェハー上に蒸着させた。当該スパッタリングは、100Wの電源、媒体としてアルゴンを用いた10mTorrの圧力、ターゲットと基板との間の約3インチの距離、0Vの基板バイアス、およびおよそ室温の基板温度において実施した。当該スパッタチャンバーは、CSM Model LEXUSにより作製した。
【0052】
アニール処理のために、各ターゲットから4つの薄膜を製造した。得られた薄膜は、200nmの蒸着膜厚を有していた。各薄膜は、(以下において特に明記されていない限り)真空オーブン中、5×10-8Toorの基準圧において、それぞれ200℃、300℃、400℃、および500℃で2時間アニール処理した。
【0053】
次いて、当該薄膜を、オージェ電子分光分析(AES:Auger electron spectroscopy)、透過型電子顕微鏡(TEM:transmitting electron microscopy)、走査型電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscopy)、X線回折(XRD:X−ray diffraction)、および4端子プローブを用いて、アニールの前後に評価した。AESにより、基板上に蒸着された薄膜における、当該薄膜の深さ全体および基板中、並びに当該薄膜と基材との界面でのCu、Si、および他の元素の拡散プロファイルの計測値を得る。TEMにより、粒界での耐熱金属原子の偏析の計測値を得る。SEMにより、アニール処理の前後における、薄膜のミクロ構造(例えば、粒径)の変化の計測値を得る。XRDにより、アニール処理の前後における、結晶構造の変化の計測値を得る。4端子プローブ計測により、アニール処理の前後における抵抗値の変化を得る。
【0054】
実施例1のタンタルドープされた銅薄膜(Cu−Ta)、実施例2のクロムドープされた銅薄膜(Cu−Cr)、および実施例3のタンタル/クロムドープされた銅薄膜(Cu−Ta/Cr)のそれぞれが、オージェ電子分光学(AES)によって検出されたように、対照薄膜(純Cu)および比較例5のモリブデンドープされた銅薄膜(Cu−Mo)よりも低い拡散率を示した。Cu−Ta皮膜とSi基板との界面は、500℃まで2時間アニール処理した場合でも実質的に変わりなく、ほとんど拡散を示さないか、または無視できる程度の拡散しか示さなかった。Cu−Ta/Cr皮膜およびSi基板によっても、同様に拡散は示されなかった。対照的に、Si基板と純Cuの対照皮膜との界面では、200℃のみで2時間アニール処理した場合、広く拡散が生じ、実質的に相互拡散を示した。下記第2a表、第2b表、および第2c表、並びに図2a、図2b、および図2cに示すように、500℃で2時間アニール処理した場合の当該拡散は深刻であった。同様に、Si基板と比較例5のモリブデンドープされた銅皮膜との界面では、200℃のみで2時間アニール処理した場合、広く拡散が生じ、実質的に相互拡散を示した。下記第4表および図4に示すように、500℃で2時間アニール処理した場合、当該拡散は深刻であった。
【0055】
下記の第2a表および第2c表に示すように、実施例1のCu−Ta皮膜および実施例3のCu−Ta/Cr皮膜は、最大500℃まで2時間アニール処理した後でも、CuおよびSiの拡散をほとんど示さない。しかしながら、下記第2b表では対照的に、対照試料の純Cu皮膜におけるCuおよびSiの拡散は、200℃のみで2時間アニール処理した後でも著しい。対照試料における拡散は、500℃でアニール処理した後では深刻である。これは、例えば、0μm付近の界面までの距離において、500℃でのアニール処理における銅(Cu)およびシリコン(Si)の含有率を比較することにより、第2a表、第2b表、および第2c表に見て取ることができる。例えば、第2a表に示す実施例1のCu−Ta皮膜において、界面から−0.02mmの点において、銅の含有率はシリコンのそれを大幅に超えており、一方、対照試料の銅のみの皮膜においての界面からの同じ距離でのシリコンの含有率は42%であり、銅の含有率は53%である。これは、対照試料における拡散が著しいことを示している。
【0056】
以下の第2d表に示すように、実施例4のCu−Ni皮膜は、500℃まで2時間アニール処理した後でも、対照試料および比較例と比較して、CuおよびSiの拡散が少ない。
【0057】
第2a表 Cu−Ta薄膜(実施例1)
【表1】
【0058】
第2b表 純粋なCu薄膜(対照試料)
【表2】
【0059】
第2c表 Cu−TaCr薄膜(実施例3)
【表3】
【0060】
第2d表 Cu−Ni薄膜(実施例4)
【表4】
【0061】
アニール処理前および各試験温度における実施例1、対照試料、および実施例3に対するAESスペクトルのオーバーレイを、それぞれ、図3a、図3b、および図3cに示す。図3aおよび図3cに示すように、シリコン基板とCu−Ta皮膜およびCu−Ta/Cr皮膜との界面は、500℃までの温度においてさえも、アニール処理において顕著な変化は見られない。図3bは、シリコン基板上に蒸着された純銅皮膜のCu/Si界面が、比較的低いアニール温度でさえも、かなりの相互拡散を受けていることを示している。したがって、実施例1のCu−Ta皮膜および実施例3のCu−Ta/Cr皮膜は、拡散を防ぐためのバリアー層を必要とせずに、直接、シリコン基板上で使用することができる。図3dに示すように、シリコン基板とCu−Ni皮膜との界面は、500℃までの温度でさえ、アニール処理によって、対照例および比較例における界面と同程度までにしか変化していない。
【0062】
以下の第3a表に示すように、比較例5のCu−Mo皮膜におけるCuおよびSiの拡散は、225℃のみでの2時間のアニール処理の後でも著しい。比較例5のCu−Mo皮膜における拡散は、530℃におけるアニール処理後では深刻であった。
【0063】
第3a表 Cu−Mo薄膜(比較例5)
【表5】
【0064】
下記第4表に示すように、アニール処理後の界面幅におけるさらなる増加は、アニール後のよりいっそうの拡散を示している。当該データは、Cu−Ta皮膜、Cu−Cr皮膜、およびCu−Ta/Cr皮膜の拡散が、純CuおよびCu−Mo皮膜よりもはるかに少ないということを明確に示している。
【0065】
第4表 アニール処理温度に対するSi基板上の純CuおよびCu−耐熱金属皮膜の界面幅
【表6】
【0066】
蒸着時(アニール前)の実施例1のCu−Ta皮膜の抵抗値は、参照試料の純Cu皮膜および比較例5のCu−Mo皮膜の両方と同様にかなり低い。Cu−Ta皮膜の抵抗値は、比較例6のCu−W皮膜よりはるかに低い。Cu−Ta皮膜の抵抗値は、600℃でのアニール処理後、わずかに低下さえしており、本発明の皮膜が、酸化および/または構造変化を生じることなく、熱的に安定であることを示している。したがって、本発明の皮膜の抵抗値および熱アニール処理の挙動は、比較例5および6のCu−Mo皮膜およびCu−W皮膜の両方よりも優れている。したがって、本発明の皮膜は、フラットパネル・ディスプレイおよび半導体ICにおける導線および電極の用途に非常に好適である。純Cu皮膜の抵抗値は、400℃までのアニール処理の後はわずかに減少しているが、500℃でのアニール処理の後は、おそらく相偏析のために、容認できない値まで急激に増加している。Cu−Mo皮膜の抵抗値は、400℃でのアニール処理後増加している。蒸着時のCu−W皮膜の抵抗値は、純Cu皮膜、Cu−Ta皮膜、およびCu−Mo皮膜よりも高く(ほぼ二倍)、400℃でのアニール処理後はかなり増加している。抵抗値挙動の比較は、Cu−Mo、Cu−W、および純Cuより、Cu−Taの熱安定性が優れていることを証明している。
【0067】
下記第5表に示すように、Cu−Ta皮膜、Cu−TaCr皮膜、Cu−Mo皮膜、およびCu−W皮膜の抵抗値を、純Cu皮膜と比較している。Cu−Ta皮膜、Cu−TaCr皮膜、およびCu−Mo皮膜は、500℃まで熱的に安定である。しかしながら、上記のとおり、Cu−Moは、適切に拡散を防止しない。純Cu、Cu−TaSi、およびCu−W皮膜は、400℃〜500℃の温度でのアニール処理後にそれらの抵抗値がかなり増加していることから示されるように、熱的に安定ではない。この比較は、図5にグラフ表示してある。
【0068】
第5表
【表7】
【0069】
実施例1のCu−Ta薄膜は、SEM画像によって検知されるように、平均粒径が約80nmのナノ結晶ミクロ構造を示す。図6a〜6dに示すように、500℃までの2時間のアニール処理の後でも、Cu−Ta皮膜の平均粒径はほとんど変わらなかった。蒸着時の対照試料の純Cu皮膜は、約20nmの小さい平均粒径子のナノ結晶構造を有する。しかしながら、200℃の低温でも再結晶化が始まり、粒径はかなり拡大し始めた。純Cu皮膜の平均粒径は、0.4μmまで拡大し、当該皮膜の表面色は、400℃における2時間のアニール処理後には暗色に変化し、皮膜のミクロ構造が、ナノ結晶から多結晶へと変化していることを証明していた。図7a〜7dに示すように、蒸着時の純Cu皮膜は、約20nmの平均粒径のナノ結晶構造(図7a)を有していたが、200℃および300℃の低いアニール処理温度において再結晶化が始まり、粒径は著しく拡大した(図7b)。純Cu皮膜の粒径は、400℃における2時間のアニール処理の後に0.4μmまで拡大し、ナノ結晶から多結晶へと変化した(図7c)。さらに、図7dに示すように、純Cu皮膜は、500℃における2時間のアニール処理の後、相偏析およびCu−シリサイド形成(Cu3SiおよびCu4Si)を示した。
【0070】
Cu−シリサイド相形成も、X線回折によって検出することができる。実施例1のCu−Ta皮膜は、500℃までの2時間のアニール処理の後でも、Cu−シリサイドの形成を示さなかった。このことも、高温でのCu−Ta皮膜とSi基板との間のCuおよびSiの相互拡散が、無視できる程度であることを示している。Cu−Ta皮膜のXRDピークは、アニール処理の後でも変わらず、このことは、Cu−Ta結晶構造が変化していないことを示している。純Cu皮膜には、500℃での2時間のアニール処理の後、シリサイド(Cu3SiおよびCu4Si)形成が生じた。このことは、高温での純Cu皮膜とSi基板との間におけるCuおよびSiの相互拡散が、非常に高いことを示している。図8a、図8b、図8c、および図8dは、それぞれ、実施例1のCu−Ta皮膜、実施例3のCu−Ta/Cr皮膜、実施例4のCu−Ni皮膜、および参照試料のCu皮膜のXRDスペクトルを示している。Cu−Ta皮膜の熱拡散挙動も、Cu−Mo皮膜およびCu−W皮膜より良好である。530℃での1時間のアニール処理の後、Cu−Mo皮膜は、シリサイド形成を示した。4000℃における1時間のアニール処理の後、Cu−W皮膜は、シリサイド形成を示した。図9aおよび9bは、それぞれ、比較例5のCu−Mo皮膜および比較例6のCu−W皮膜のXRDスペクトルを示している。
【0071】
純Cu皮膜、Cu−Ta皮膜、Cu−Cr皮膜、Cu−Mo皮膜、およびCu−W皮膜の様々な特性の比較(蒸着時)を、下記第6表に示す。Cu−Ta皮膜の特性の大半は、Cu−Ta皮膜が優れた熱安定性を示し、かつ高温処理の間に拡散を受けないことを除いて、純Cu皮膜、Cu−Mo皮膜、およびCu−W皮膜と同様である。Cu−Ta皮膜は、純Cu皮膜およびCu−Mo皮膜と同様に低い抵抗値を有し、これはCu−W皮膜より低い。Cu−Taは、Cu皮膜、Cu−Mo皮膜、およびCu−W皮膜と同様の許容できるスパッタリング蒸着速度を有する。Cu−Ta皮膜は、高いウェットエッチング速度(HNO3:H2O=3:1の溶液中)を有し、これは、純Cu皮膜より高く、Cu−Mo皮膜およびCu−W皮膜より低いが、まだ許容できる範囲内である。Cu−Ta皮膜は、Corning1737ガラス基板に対して、純Cu皮膜、Cu−Mo皮膜、およびCu−W皮膜と同程度の接着性を有する。
【0072】
【表8】
【0073】
本発明の様々な実施形態によるCu−Ta皮膜およびCu−Cr皮膜の熱的に安定なナノ結晶構造は熱処理後、皮膜中に多くのヒロックを有する粒状構造および他の欠陥を皮膜に生じ得るCu−Mo皮膜およびCu−W皮膜のそれより優れている。
【0074】
さらに、本発明の様々な実施形態によるCu−Cr皮膜、Cu−Ta/Cr皮膜、およびCu−Ni皮膜は、純Cu皮膜、Cu−Ta皮膜、Cu−Mo皮膜、およびCu−W皮膜(すべてが接着評価0B)と比較して、Corning1737ガラス基板に対して大幅に改善された接着性(接着評価5Bに指定)を有する。ASTM規格(D3359−02およびB905−00)により、テープ試験方法は、接着性を5つのレベル(0B〜5B)に分類する。数が大きいほど、接着性は優れている。本発明の様々な実施形態によるCu−Cr皮膜、Cu−Ta/Cr皮膜、およびCu−Ni皮膜はさらに、他のCu合金皮膜よりはるかに低いエッチング速度を有し(例えば、Cu−Cr皮膜では6.2nm/s)、これにより、エッチング加工をより良く制御することが可能である。本発明の様々な実施形態によるCu−Cr薄膜の熱安定性実験では、その点においても優れた性能が示された。SEM分析では、認識できる粒子成長のないナノサイズの粒子が示された。オージェプロファイル分析では、500℃まで相互拡散が示されなかった。X線回折分析は、400℃までシリサイドの形成を全く示さなかったが、500℃のアニール処理の後は幾分かのCu4Siの形成を示した。
【0075】
上記の実施形態に対し、その広範な発明の概念から逸脱することなく、変更を行うことが可能であることは、当業者であれば理解されるであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨および範囲内における改変を網羅することを意図することが理解される。
【技術分野】
【0001】
アルミ(Al)薄膜は、導線および電極としてフラットパネル・ディスプレイにおいて広く使用されている。通常、基板はガラス(SiO2、二酸化ケイ素)である。銅(Cu)薄膜は、一般的に、基板としてシリコン(Si)を用いた相互接続線のために半導体集積回路において使用されている。通常のデバイス加工処理の際には、温度は、250℃まで、さらには500℃にまで昇温される場合がある。そのような温度では、AlおよびCuは、SiまたはSiO2基板中に拡散し得、同様にSiは、Al皮膜またはCu皮膜中に拡散し得る。ヒロック、ボイド、および他の有害な欠陥が、Al薄膜もしくはCu薄膜および/または界面において形成される可能性があり、デバイスまたは回路(例えば、短絡回路)の運用性を損ない得る。
【0002】
Al皮膜およびCu皮膜中への拡散の問題を軽減する取り組みにおいて、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、他の耐熱金属、および/またはそれらのニトリドであり得る拡散バリアー層を、Al/Cu皮膜と基板との間に蒸着することにより、拡散を減少または解消することができる。しかしながら、デバイスの構造に余分な層を追加することは、材料、装置、および労働力の費用を増加させ、処理能力を低下させる。さらに、半導体IC製造において採用される限界寸法が、45nm、32nm、などへと急速に減少し続ける中、バリアー層の使用は、空間的な要求が達成できないために採用することができなくなるだろう。
【0003】
低い拡散性および低い抵抗値の両方を兼ね備えた材料を開発するためのこれまでの試みとしては、MoまたはWでドープされたCu合金の研究が挙げられる。バリアー層を使用せずに、マイクロデバイス配線および電極のための薄膜としてそのような材料を用いる試みについて説明されている。残念ながら、どちらの材料も、拡散性の十分な低減と必要な導電性とを有してはいない。モリブデンをドープした銅材料の中には、許容できる抵抗値を示し得るものもあるが、依然としてバリアー層が必要な程度にまで、下層のシリコン基板に拡散が生じる。
【0004】
高い導電性と低い拡散性とを示すと共に、半導体相互接続、フラットパネル・ディスプレイ配線などの用途における薄膜としての使用に好適な金属材料は、さらに、良好な熱安定性、高蒸着速度、高エッチング速度、低ストレス、および基材への良好な接着性を有していなければならない。
【0005】
半導体および光電子産業において使用される様々な製造方法において金属薄膜を製造するために使用される技術の1つは、スパッタリングである。スパッタリングの際に形成される皮膜の特性は、スパッタリングターゲット自体の特性、例えばそれぞれの結晶粒子サイズおよび分布特性を有する第二相の形成など、に関連している。皮膜均一性、スパッタリング中の最少の粒子形成、および所望の電気特性を提供するであろうスパッタリングターゲットを製造することが望ましい。スパッタリングは、薄膜形成において一般的な方法であるため、半導体相互接続、フラットパネル・ディスプレイ配線などの用途において薄膜として使用される金属材料は、スパッタリングターゲットとしての使用においても好適でなければならない。
【0006】
本発明は、概して、導電性マトリックス金属と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、チタン、ニッケル、およびそれらの混合物を含む群から選択される1種以上の耐熱金属ドーパントとを含む金属材料、特にスパッタリングターゲットを製造するためのそのような金属材料、およびそのような材料を含むスパッタリングターゲットに関する。当該1種以上の耐熱金属ドーパントは、好ましくは、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物を含む群から選択される。本発明の様々な実施形態による使用に好適な導電性マトリックス金属としては、銅およびアルミが挙げられる。様々な好ましい実施形態において、当該導電性マトリックス金属は銅を含む。本発明の様々な実施形態による金属材料は、薄膜形成および金属被覆などの様々な使用のためのスパッタリングターゲットおよび合金を製造するために使用することができる。本発明の金属材料から製造されたスパッタリングターゲットは、基材上に薄膜を蒸着するために使用することができる。そのような薄膜および半導体部品におけるそれらの使用も本発明に包含される。本発明によって提供される薄膜は、例えば、半導体IC、フラットパネル・ディスプレイ、オプトエレクトロニクスデバイス、光起電デバイス、および太陽電池において、相互接続、導線(例えば、データ線およびアドレス線)、ならびに電極(例えば、ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極)として使用することができる。
【0007】
本発明の様々な実施形態による金属材料は、本発明による薄膜を含む様々な電子部品の後処理に関連する著しく改善された特性を提供し得る。驚いたことに、出願人らは、本発明の様々な実施形態による金属材料は、エレクトロニクスのための有用な薄膜(例えば、好ましくスパッタされた皮膜)を提供することができ、当該薄膜は、例えば、基材(例えば、SiまたはSiO2など)とその上に蒸着された金属材料との間の相互拡散の低減を伴う、低い抵抗値と例外的な熱安定性とのこれまで無かった組み合わせなど、従来技術よりも重要な利点を提供するということを見出した。有利な特性のそのような組み合わせは、非常に高い品質(例えば、拡散を生じずにアニール処理に耐えることができる)を有し、かつ優れた性能品質(例えば、低い抵抗値)を示す、誘電性基板上への金属被覆を提供するために使用可能な材料の提供において、従来技術に対して重要な改善を提供する。本発明の様々な実施形態による金属材料は、薄膜として蒸着される場合に、公知の材料と比較して、様々な基板に対して優れた接着性も示し得る。
【0008】
さらに顕著で非常に有利な点は、本発明の様々な実施形態による薄膜は、基板と当該薄膜との間にバリアー層を必要とせず、加工処理(例えば、アニール処理または、さもなくは別の方法による加熱処理)することができるという発見である。したがって、本発明は、現在使用されている導電層/拡散バリアー層の組み合わせに対する簡素化された代替策を提案するものである。バリアー層の省略を可能にする新たに発見された当該材料は、ある特定の加工処理コスト全部を省くことができ、および/または様々な製造作業の簡素化が可能であり、結果、著しくコストが削減され得る。
【0009】
本発明の一実施形態は、導電性マトリックス金属、好ましくは銅、と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される耐熱ドーパント成分とから実質的に成る金属材料を含む。
【0010】
本発明の別の実施形態は、銅およびタンタルの混合物から実質的に成る金属材料を含み、この場合、当該タンタルは、好ましくは、当該金属材料に対して0.1〜6質量パーセント、より好ましくは2〜4質量パーセントの量で存在する。
【0011】
本発明の別の実施形態は、銅およびクロムの混合物から実質的に成る金属材料を含み、この場合、当該クロムは、好ましくは、当該金属材料に対して0.1〜6質量パーセント、より好ましくは2〜4質量パーセントの量で存在する。
【0012】
本発明の別の実施形態は、銅と、クロムおよびタンタルの耐熱ドーパント混合物との混合物から実質的に成る金属材料を含み、この場合、当該耐熱ドーパント混合物は、好ましくは、当該金属材料に対して0.1〜6質量パーセント、より好ましくは2〜4質量パーセントの量で存在する。そのような実施形態においては、当該クロムおよびタンタルは、好ましくは、それぞれ、当該金属材料に対して0.2〜3質量パーセント、より好ましくは0.5〜1.5質量パーセントの量で存在する。ある特定の実施形態において、当該タンタルは、好ましくは、当該金属材料に対して1質量パーセント以下の量で存在し、当該クロムは、当該金属材料に対して0.5質量パーセント以下の量で存在する。
【0013】
本発明の別の実施形態は、導電性マトリックス金属粉末(好ましくは、銅粉末)と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る金属粉末の群から選択される耐熱金属粉末とから実質的に成る、高密度化された均一な粉末混合物を含むスパッタリングターゲットを含む。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態は、(a)導電性マトリックス金属粉末(例えば、銅粉末)と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る粉末の群から選択される耐熱金属粉末とから実質的に成る均一な粉末混合物を提供する工程、および(b)当該均一な粉末混合物を熱機械的方法に供して、スパッタリングターゲットプレートを形成する工程、を含む方法によって製造することができるスパッタリングターゲットを含む。
【0015】
本発明の他の実施形態は、薄膜を製造する方法およびそれによって製造された薄膜を含み、この場合、方法は、(a)基板を提供する工程、(b)本発明の1つ以上の他の実施形態によるスパッタリングターゲットを提供する工程、並びに(c)当該スパッタリングターゲット材料で構成された薄膜が、基板の表面に配置されるように、当該スパッタリングターゲットをエネルギーの供給源に供する工程を含む。本発明の別の実施形態は、銅と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される耐熱金属ドーパントとから実質的に成る金属材料を含む薄膜を含む。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態は、基板と、当該基板の表面上に配置された薄膜とを含む半導体デバイスを含み、この場合、当該薄膜は、銅と、当該薄膜に対して約0.1〜6質量パーセントの濃度を有する耐熱ドーパントとから実質的に成り、ここで、当該耐熱ドーパントは、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される金属を含む。
【0017】
本発明の他の実施形態は、金属材料、それから製造されるスパッタリングターゲット、そのようなターゲットを用いて薄膜を蒸着する方法、それによって形成された薄膜、並びにそのような薄膜を含有する半導体、フラットパネル・ディスプレイ、および太陽電池デバイスを含み、この場合、当該金属材料は、導電性マトリックス金属、好ましくは銅、と、チタンまたはニッケルとから実質的に成る。そのような実施形態において、当該チタンまたはニッケルは、好ましくは、当該金属材料に対して0.1〜6質量パーセント、より好ましくは1〜3質量パーセントの量で存在する。
【0018】
本発明のある特定の好ましい実施形態において、当該耐熱ドーパント成分は、おそらく当該導電性マトリックス金属、特にCuにおける耐熱金属の相対的難溶性のため、粒界中に隔離され得る。粒界は、材料における拡散チャネルであり、欠陥および空孔が粒子内より多く存在する。空孔拡散は、拡散のための最も重要なメカニズムであると広く考えられている。したがって、粒界に存在する耐熱金属原子は、拡散チャンネルを遮断して拡散を低減するために役立つ可能性がある。さらに、当該耐熱ドーパント成分量が小さいため、抵抗値は低く維持される。
【0019】
本発明についての前述の概要並びに以下の詳細な説明は、添付の図面を参照することにより、より良く理解されるであろう。本発明を説明するため、現時点において好ましい実施形態を図に示す。しかしながら、本発明は、示されている厳密な構成および手段に限定されるものではないことは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1a】電子部品におけるバリアー層を有する従来技術の二層導線の断面図を示す図である。
【図1b】本発明の実施形態による導線の横断面図を示す図である。
【図2a】本発明の実施形態によるCu−Ta皮膜の、様々なアニール温度における皮膜の深さ方向のグラフ(オージェプロファイル)を示す図である。
【図2b】対照例による銅皮膜の、様々なアニール温度における皮膜の深さ方向のグラフ(オージェプロファイル)を示す図である。
【図2c】本発明の実施形態によるCu−Ta/Cr膜の、様々なアニール温度における皮膜の深さ方向のグラフ(オージェプロファイル)を示す図である。
【図2d】本発明の実施形態によるCu−Ni膜の、様々なアニール温度における皮膜の深さ方向のグラフ(オージェプロファイル)を示す図である。
【図3a】図2aに示された皮膜の様々なアニール温度におけるオージェプロファイルのグラフのオーバーレイを示す図である。
【図3b】図2bに示された銅皮膜の様々なアニール温度におけるオージェプロファイルのグラフのオーバーレイを示す図である。
【図3c】図2cに示された皮膜の様々なアニール温度におけるオージェプロファイルのグラフのオーバーレイを示す図である。
【図3d】図2dに示された皮膜の様々なアニール温度におけるオージェプロファイルのグラフのオーバーレイを示す図である。
【図4】比較例による銅−モリブデン皮膜の、様々なアニール温度における皮膜の深さ方向のグラフ(オージェプロファイル)を示す図である。
【図5】様々な皮膜のアニール温度に対する抵抗値のグラフを示す図である。
【図6a】本発明の実施形態による銅−タンタル皮膜の、様々なアニール温度でのSEM画像を示す図である。
【図6b】本発明の実施形態による銅−タンタル皮膜の、様々なアニール温度でのSEM画像を示す図である。
【図6c】本発明の実施形態による銅−タンタル皮膜の、様々なアニール温度でのSEM画像を示す図である。
【図6d】本発明の実施形態による銅−タンタル皮膜の、様々なアニール温度でのSEM画像を示す図である。
【図7a】様々なアニール段階における、対照例による銅皮膜のSEM画像を示す図である。
【図7b】様々なアニール段階における、対照例による銅皮膜のSEM画像を示す図である。
【図7c】様々なアニール段階における、対照例による銅皮膜のSEM画像を示す図である。
【図7d】様々なアニール段階における、対照例による銅皮膜のSEM画像を示す図である。
【図8a】様々なアニール条件下における、本発明の実施形態による銅−タンタル皮膜の一連のX線回折スペクトルを示す図である。
【図8b】様々なアニール条件下における、本発明の実施形態による銅−タンタル/クロム皮膜の一連のX線回折スペクトルを示す図である。
【図8c】様々なアニール条件下における、本発明の実施形態による銅−ニッケル皮膜の一連のX線回折スペクトルを示す図である。
【図8d】様々なアニール条件下における、対照例による銅皮膜の一連のX線回折スペクトルを示す図である。
【図9a】様々なアニール条件下における、比較例による銅−モリブデン皮膜の一連のX線回折スペクトルを示す図である。
【図9b】様々なアニール条件下における、比較例による銅−タングステン皮膜の一連のX線回折スペクトルを示す図である。
【0021】
本明細書において使用される場合、単数用語「1つの("a")」および「当該("the")」は、「1つ以上("one or more")」および「少なくとも1つ("at least one")」と同義語であり、相互交換的に使用される。したがって、例えば、本明細書または添付の特許請求の範囲における「1つの金属("a metal")」は、単独の金属または2種以上の金属を意味し得る。
【0022】
本明細書において使用される場合、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される耐熱ドーパント成分を含有する本発明のそれらの実施形態の参照により、「から実質的に成る("consisting essentially of"および"consist(s) essentially of")」なる句は、「を含む("comprising")」なる用語の一般に受け入れられている理解による非限定形式において、当該句に続いて列挙された本発明の要素を意味するが、例外として、前述の句は、導電性を改善するために0.1〜3.0質量%の量で添加されたアルミ、銀、金、チタン、ニッケル、コバルト、ケイ素の元素、またはそれらの組み合わせの存在を除外する。当該句は、本発明の基本的で新規の特徴に影響を及ぼすこれらの添加元素の除外を除き、他の任意の制限効果を含まない。
【0023】
本明細書において使用される場合、導電性マトリックス金属とチタンまたはニッケルとを含有するそれらの本発明の実施形態の参照により、「から実質的に成る("consisting essentially of"および"consist(s)essentially of")」なる句は、「を含む("comprising")」なる用語の一般に受け入れられている理解による非限定形式において、当該句に続いて列挙された本発明の要素を意味するが、例外として、前述の句は、タングステンおよびモリブデンの元素、またはそれらの組み合わせの存在を除外する。当該句は、本発明の基本的で新規の特徴に影響を及ぼすこれらの添加元素の除外を除き、他の任意の制限効果を含まない。
【0024】
本発明の様々な実施形態による金属材料は、金属の混合物を含む。当該混合物は、主として、導電性マトリックス金属、好ましくは銅をベースとする。様々な好ましい実施形態において、当該金属材料は、主要部分の導電性マトリックス金属を含む。より好ましくは、当該金属材料は、90質量%超の導電性マトリックス金属を含み、より好ましくは少なくとも約94質量%の導電性マトリックス金属を含み、最も好ましくは約97〜99質量%の導電性マトリックス金属を含む。各場合において、当該導電性マトリックス金属は、好ましくは銅を含む。より好ましくは、当該導電性マトリックス金属は銅である。
【0025】
様々な特定の好ましい実施形態において、本発明による金属材料は、導電性マトリックス金属、好ましくは銅、と、以下に説明されるような耐熱ドーパント成分との混合物を含み、並びに無視できる程度の量以外の他の任意の金属を除外する。言い換えれば、本発明による金属材料のある特定の好ましい実施形態は、微量のさらなる元素のみと共に、並びにより好ましくは微量の元素さえも含まずに、銅と耐熱金属ドーパントとを含有する。
【0026】
好適な耐熱ドーパント成分としては、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましい耐熱ドーパント成分としては、タンタル、クロム、およびそれらの混合物が挙げられる。本発明のある特定の特に好ましい実施形態において、当該耐熱ドーパントは、タンタルを含み、より好ましくはタンタルから成る。本発明のある特定の他の特に好ましい実施形態において、当該耐熱ドーパントは、クロムを含み、より好ましくはクロムから成る。本発明のある特定の他の特に好ましい実施形態において、当該耐熱ドーパントは、クロムおよびタンタルを含み、より好ましくはクロムおよびタンタルから成る。
【0027】
本発明の様々な実施形態による金属材料、混合物、合金、スパッタリングターゲット、および薄膜において、当該耐熱ドーパント成分は、少量、例えば、約7.5質量%未満で存在する。好ましくは、当該耐熱ドーパント成分は、金属材料、混合物、合金、スパッタリングターゲット、または皮膜に対して、約0.1〜約6質量%の量で存在する。より好ましくは、当該耐熱ドーパント成分は、約1〜約3質量%の量で存在する。特に好ましい実施形態において、当該耐熱ドーパント成分は、2.0±1.0質量%の量で存在する。
【0028】
本発明による金属材料は、例えば、粉末ブレンド、高密度化ターゲット、または任意の物理状態における合金などの様々な形態で存在し得る。粉末ブレンドは、スパッタリングターゲットを形成する治金学的加工処理前の構成金属のホモジナイズに有利であり得る。
【0029】
本発明によるスパッタリングターゲットは、例えば、銅金属粉末と耐熱ドーパント金属粉末とを組み合わせて、当該粉末を混合し、当該混合された粉末を、例えば、圧縮成形、焼結、および/または高密度化などを含み得る冶金学的加工処理に供することによって製造することができる。
【0030】
したがって、本発明の様々な実施形態において、本発明によるターゲットの製造に好適な粉末ブレンドは、適切な銅粉末と耐熱ドーパント金属粉末とを組み合わせることによって製造することができる。本発明における使用に好適な金属粉末は、例えば、水もしくはガスにより、任意の適切な方法において原子化することができる。本発明における使用に好適な粉末は、好ましくは、99.95%(「3N5」)以上、より好ましくは99.99%(「4N」)以上、最も好ましくは99.999%(「5N」)以上の純度を有する。
【0031】
好ましくは、導電性マトリックス金属粉末は、20μmの平均粒径を有するだろう。耐熱金属ドーパント粉末の平均粒径は、できるだけ小さい方が好ましい。一般的に、当該耐熱金属ドーパント粉末の平均粒径は、当該導電性マトリックス金属粉末の平均粒径より大きくない。例えば、タンタル粉末の平均粒径は、15μm以下であり得る。
【0032】
当該銅粉末および耐熱ドーパント金属粉末は、組み合わされ、混合される。当該金属粉末は、当該技術分野において公知の任意の粉体ブレンド技術を用いて混合することができる。例えば、当該金属粉末を乾燥容器に入れて、当該容器をその中心軸の周りを回転させることによって混合してもよい。混合は、結果として均一なブレンド、すなわち、一様に分散した粉末、が得られるほど十分な期間継続することができる。ボールミルまたは同様の装置を使用して、当該ブレンド工程を達成してもよい。本発明は、任意の特定の混合技術に限定されず、好適な均一性を達成するのに十分なほど当該金属粉末をブレンドできるのであれば、他の混合技術を選択してもよい。
【0033】
次いで、上記において説明された本発明の様々な実施形態によるブレンドされた粉末を、1つ以上の様々な冶金学的加工処理に供することにより、本発明の様々な実施形態によるスパッタリングターゲットを得ることができる。好適な冶金学的加工処理は、圧縮成形、焼結、圧延、およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0034】
例えば、ブレンドされた粉末は、場合により、予備圧縮工程において、理論密度の約70〜80%のグリーン密度まで圧密してもよい。当該圧密化は、粉末冶金の当業者に公知の任意の手段、例えば、冷間等方圧加圧成形、圧延、またはダイ圧縮成形などにより、達成することができる。用いられる圧縮時間および圧力量は、この工程において達成されることが所望される圧密の程度に応じて変わるであろう。例えば管状ターゲットなど、ターゲットのタイプによっては、この工程は必要でない場合もある。
【0035】
予備圧密化工程に続いて、当該圧密化された粉末をカプセル封入してもよい。カプセル封入は、相互接続した表面細孔を有さないコンパクトなワークピースを提供するであろう任意の方法、例えば、焼結、溶射、キャニングなど、によって達成することができる。本明細書において使用される場合、「カプセル封入」なる用語は、相互接続した表面細孔を有さないコンパクトなワークピースを提供するための、当業者に公知の任意の方法を意味する。好ましくは、圧縮された粉末混合物は、焼結に供される。特に好ましい焼結は、解離アンモニア中2段階で、約700℃〜750℃で約40〜45分間実施され得る。様々な好ましい実施形態において、焼結は2段階から成りうる。第一段階では、焼結は、600〜700℃で20〜30分間実施され得る。第二段階では、焼結は、1000〜1050℃で20〜30分間実施され得る。様々な実施形態はさらに、第一と第二の焼結段階との間に、35〜45トン/インチの圧力による室温での圧縮成形を含んでいてもよい。
【0036】
カプセル封入後、当該カプセル封入された金属材料を、加熱加圧下で圧縮してもよい。様々な圧縮方法が当該技術分野において公知であり、例えば、これらに限定されるものではないが、不活性ガス1軸熱間加圧成形、真空ホットプレス、熱間等方圧加圧成形、および急速全方向性圧縮成形などの方法が挙げられる。好ましくは、当該カプセル封入されたワークピースは、所望のターゲット形状に熱間等方圧加圧成形される。熱間等方圧加圧成形は、当該技術分野において公知の操作パラメータの任意の組み合わせ、例えば、5,000〜20,000psi(約34.5〜138MPa)の圧力下、より好ましくは10,000〜15,000psi(約69〜103MPa)の圧力下において、700〜1000℃、より好ましくは800〜900℃の温度で、2〜8時間、より好ましくは3〜5時間実施することができる。適切な温度、圧力、時間条件が維持される限り、本発明のスパッタリングターゲットを製造するために、熱間加圧成形の他の方法を使用することができる。
【0037】
最終的な圧縮工程の後、当該ターゲットプレートを、所望のサイズおよび形状に機械加工することができ、最終的なスパッタリングターゲットを製造するために、当該技術分野において公知であるように、場合によりバッキングプレートに接着してもよい。より大きなスパッタリングターゲットが所望される場合には、本発明の2つ以上のターゲットプレートの端部と端部とを合わせて接着してもよい。
【0038】
本発明の最終的なスパッタリングターゲットは、理論密度の約90%超、好ましくは理論密度の少なくとも95%、より好ましくは理論密度の少なくとも98%の密度を有し得る。
【0039】
本発明はさらに、本発明の様々な金属材料実施形態のいずれかによる金属材料から成る薄膜を形成する方法も含む。本発明による薄膜を形成するための好適な方法としては、本発明の実施形態による金属材料の物理蒸着法および電気メッキ法が挙げられる。本発明の様々な好ましい方法において、当該物理蒸着法は、スパッタリングを含む。
【0040】
本発明はさらに、薄膜を製造するため、上記の様々な実施形態によるスパッタリングターゲットの使用も含む。したがって、本発明の様々な実施形態において、本発明の実施形態によるスパッタリングターゲットは、基板上に薄膜を提供するためにスパッタリング法に供される。
【0041】
本発明の様々な特に好ましい実施形態によるスパッタリングは、DCマグネトロンスパッタリングを含む。当該技術分野において公知の、任意の好適なDCマグネトロンスパッタリングシステムおよび/または方法、または開発すべき方法は、本発明の様々な実施形態によるスパッタリングターゲットを使用して薄膜をスパッタするために使用することができる。
【0042】
様々な特に好ましい実施形態において、DCマグネトロンスパッタリング法は、例えば、小さな2.5インチの直径のターゲットに対して、100W〜2000W、より好ましくは100Wの電力、アルゴン含有プラズマを用いた1mTorr〜20mTorr、より好ましくは約10mTorrのスパッタ圧、約2.5〜20cm、より好ましくは約5〜10cmのターゲットと基板との間の距離、0V〜−300V、より好ましくは0Vの基板バイアス、室温〜500℃、より好ましくはおよそ室温の基板温度、を含む条件下で実施することができる。
【0043】
本発明による薄膜を蒸着させ得るのに好適な基板としては、電子用途において使用することができ、PVDおよび/または電気メッキ法に好適に耐え得る任意の材料を挙げることができる。望ましい基板としては、シリコン材料または電子用途に用いられる任意の他の絶縁材料、例えば、単結晶Si、非晶質Si、ガラス、シリカ、または非晶質SiまたはSiO2の層でコーティングされた基板を挙げることができる。そのようなSiO2コーティング層の膜厚は、20nm〜300nm、より好ましくは約30nmであり得る。
【0044】
本発明はさらに、本発明の様々な実施形態による金属材料を含む薄膜も含む。上記のとおり、そのような薄膜は、好ましくは、本発明の実施形態によるターゲットをスパッタリングすることによって提供される。本発明による薄膜は、5nm〜500nm、好ましくは100nm〜200nm、より好ましくは約100nmの膜厚を有し得る。
【0045】
本発明による薄膜は、好ましくは、20〜100nmの平均粒径を有するナノ結晶ミクロ構造を有する。より好ましくは、当該平均粒径は、約70〜90nmであり、最も好ましくは約80nmである。平均粒径は、例えばSEM画像検出を用いて公知の方法により特定することができる。
【0046】
本発明の様々な特に好ましい実施形態において、薄膜は、銅と、当該薄膜に対して0.1〜6質量%の量の、タンタル、クロム、およびそれらの混合物から成る群から選択される耐熱ドーパントとの二成分合金を含み、好ましくは、その場合、当該薄膜は、約80nmの平均粒径を有する。
【0047】
本発明はさらに、電子デバイス、好ましくは、例えば薄膜トランジスタなどを含む半導体集積回路およびLCDディスプレイパネル回路デバイスも含み、この場合、当該デバイスは、基板上に配置された本発明の実施形態による薄膜を含む。本発明による電子デバイスにおける使用のための薄膜は、本明細書において説明した方法により、例えばスパッタリングによって、蒸着することができる。そのような電子デバイスのさらなる加工(例えば、エッチングなど)の前に、当該薄膜を、高温処理することができ、したがって、アニール処理することができる。本発明による薄膜は、下層基板への有害な拡散を示すことなくそのような電子デバイスの処理において通常行われるような温度および条件下において、アニール処理することができる。好適なアニール処理は、例えば、真空オーブンなどのオーブン中、約5×10-8Torrの基準圧において、約200℃〜600℃の温度で約2時間実施することができる。
【0048】
本発明を、以下の非限定的な実施例を参照しながら、さらに詳細に説明する。
【0049】
実施例
対照、実施例1〜4、および比較例5〜7:薄膜の評価
最初に、銅粉末(対照試料としての、純Cu)を準備し、銅粉末CuLox(登録商標)タイプ620、通常20μm(CuLox Technologies(米国コネチカット州ノガタック)から市販されている)を、上記において指定したように、0.1〜6質量%の量で、Ta、Cr、Ni、Si、Mo、および/またはW粉末と乾燥混合することにより、7種の粉末を製造した(本発明の実施例1のCu−Ta;本発明の実施例2のCu−Cr;本発明の実施例3のCu−Ta/Cr;本発明の実施例4のCu−Ni;並びに比較例5、6、および7の、それぞれCu−Mo、Cu−W、およびCu−Ta/Si)。使用したタンタル粉末は、H.C.Starck(米国マサチューセッツ州ニュートン)のH.C.Starck NH230コンデンサーグレード粉末であった。使用したクロム粉末は、Alfa/Aesarからの市販されている325メッシュの粉末であった。使用したモリブデン粉末は、H.C.Starck(米国マサチューセッツ州ニュートン)のH.C.StarckタイプMMP−OMFP、通常5μmであった。使用したタングステン粉末は、H.C.Starck(米国マサチューセッツ州ニュートン)のH.C.Starck WMP、通常3.5μmであった。使用したニッケル粉末は、Alfa Aesarの99.8%のNi、カタログ番号44739−36、CC0501(−150/+200メッシュ)であった。使用したシリコンドープされたタンタル粉末は、H.C.Starck(米国マサチューセッツ州ニュートン)のH.C.Starck TPX(−325メッシュ)であった。
【0050】
当該粉末は、V型ブレンダーを使用してブレンドし、機械的に圧縮して、73%〜77%のグリーン密度を有する、厚さ10mm、約Φ60mmのディスクを形成する。次いで、当該圧粉体は、それぞれ、解離アンモニア中において、705℃〜730℃で約40〜45分間部分的に焼結した。当該部分的に焼結したディスクを、それぞれ、45トンの負荷をかけてコイン状に成形し、解離アンモニア中1040℃〜1055℃で30〜35分間焼結した。当該焼結されたディスクは、熱間等方圧加圧成形(HIP:hot isostatic pressing)により、10,000psi(約69MPa)において、750℃で4時間かけて確実に、完全に高密度化した。各ディスクは、機械的に、厚さ6.35mm、Φ51mmに成形した。次いで、得られたターゲットを用いて評価のために薄膜を製造した。
【0051】
当該薄膜は、DCマグネトロンスパッタリングにより、単結晶シリコンウェハー(100)およびCorning1737ガラスウェハー上に蒸着させた。当該スパッタリングは、100Wの電源、媒体としてアルゴンを用いた10mTorrの圧力、ターゲットと基板との間の約3インチの距離、0Vの基板バイアス、およびおよそ室温の基板温度において実施した。当該スパッタチャンバーは、CSM Model LEXUSにより作製した。
【0052】
アニール処理のために、各ターゲットから4つの薄膜を製造した。得られた薄膜は、200nmの蒸着膜厚を有していた。各薄膜は、(以下において特に明記されていない限り)真空オーブン中、5×10-8Toorの基準圧において、それぞれ200℃、300℃、400℃、および500℃で2時間アニール処理した。
【0053】
次いて、当該薄膜を、オージェ電子分光分析(AES:Auger electron spectroscopy)、透過型電子顕微鏡(TEM:transmitting electron microscopy)、走査型電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscopy)、X線回折(XRD:X−ray diffraction)、および4端子プローブを用いて、アニールの前後に評価した。AESにより、基板上に蒸着された薄膜における、当該薄膜の深さ全体および基板中、並びに当該薄膜と基材との界面でのCu、Si、および他の元素の拡散プロファイルの計測値を得る。TEMにより、粒界での耐熱金属原子の偏析の計測値を得る。SEMにより、アニール処理の前後における、薄膜のミクロ構造(例えば、粒径)の変化の計測値を得る。XRDにより、アニール処理の前後における、結晶構造の変化の計測値を得る。4端子プローブ計測により、アニール処理の前後における抵抗値の変化を得る。
【0054】
実施例1のタンタルドープされた銅薄膜(Cu−Ta)、実施例2のクロムドープされた銅薄膜(Cu−Cr)、および実施例3のタンタル/クロムドープされた銅薄膜(Cu−Ta/Cr)のそれぞれが、オージェ電子分光学(AES)によって検出されたように、対照薄膜(純Cu)および比較例5のモリブデンドープされた銅薄膜(Cu−Mo)よりも低い拡散率を示した。Cu−Ta皮膜とSi基板との界面は、500℃まで2時間アニール処理した場合でも実質的に変わりなく、ほとんど拡散を示さないか、または無視できる程度の拡散しか示さなかった。Cu−Ta/Cr皮膜およびSi基板によっても、同様に拡散は示されなかった。対照的に、Si基板と純Cuの対照皮膜との界面では、200℃のみで2時間アニール処理した場合、広く拡散が生じ、実質的に相互拡散を示した。下記第2a表、第2b表、および第2c表、並びに図2a、図2b、および図2cに示すように、500℃で2時間アニール処理した場合の当該拡散は深刻であった。同様に、Si基板と比較例5のモリブデンドープされた銅皮膜との界面では、200℃のみで2時間アニール処理した場合、広く拡散が生じ、実質的に相互拡散を示した。下記第4表および図4に示すように、500℃で2時間アニール処理した場合、当該拡散は深刻であった。
【0055】
下記の第2a表および第2c表に示すように、実施例1のCu−Ta皮膜および実施例3のCu−Ta/Cr皮膜は、最大500℃まで2時間アニール処理した後でも、CuおよびSiの拡散をほとんど示さない。しかしながら、下記第2b表では対照的に、対照試料の純Cu皮膜におけるCuおよびSiの拡散は、200℃のみで2時間アニール処理した後でも著しい。対照試料における拡散は、500℃でアニール処理した後では深刻である。これは、例えば、0μm付近の界面までの距離において、500℃でのアニール処理における銅(Cu)およびシリコン(Si)の含有率を比較することにより、第2a表、第2b表、および第2c表に見て取ることができる。例えば、第2a表に示す実施例1のCu−Ta皮膜において、界面から−0.02mmの点において、銅の含有率はシリコンのそれを大幅に超えており、一方、対照試料の銅のみの皮膜においての界面からの同じ距離でのシリコンの含有率は42%であり、銅の含有率は53%である。これは、対照試料における拡散が著しいことを示している。
【0056】
以下の第2d表に示すように、実施例4のCu−Ni皮膜は、500℃まで2時間アニール処理した後でも、対照試料および比較例と比較して、CuおよびSiの拡散が少ない。
【0057】
第2a表 Cu−Ta薄膜(実施例1)
【表1】
【0058】
第2b表 純粋なCu薄膜(対照試料)
【表2】
【0059】
第2c表 Cu−TaCr薄膜(実施例3)
【表3】
【0060】
第2d表 Cu−Ni薄膜(実施例4)
【表4】
【0061】
アニール処理前および各試験温度における実施例1、対照試料、および実施例3に対するAESスペクトルのオーバーレイを、それぞれ、図3a、図3b、および図3cに示す。図3aおよび図3cに示すように、シリコン基板とCu−Ta皮膜およびCu−Ta/Cr皮膜との界面は、500℃までの温度においてさえも、アニール処理において顕著な変化は見られない。図3bは、シリコン基板上に蒸着された純銅皮膜のCu/Si界面が、比較的低いアニール温度でさえも、かなりの相互拡散を受けていることを示している。したがって、実施例1のCu−Ta皮膜および実施例3のCu−Ta/Cr皮膜は、拡散を防ぐためのバリアー層を必要とせずに、直接、シリコン基板上で使用することができる。図3dに示すように、シリコン基板とCu−Ni皮膜との界面は、500℃までの温度でさえ、アニール処理によって、対照例および比較例における界面と同程度までにしか変化していない。
【0062】
以下の第3a表に示すように、比較例5のCu−Mo皮膜におけるCuおよびSiの拡散は、225℃のみでの2時間のアニール処理の後でも著しい。比較例5のCu−Mo皮膜における拡散は、530℃におけるアニール処理後では深刻であった。
【0063】
第3a表 Cu−Mo薄膜(比較例5)
【表5】
【0064】
下記第4表に示すように、アニール処理後の界面幅におけるさらなる増加は、アニール後のよりいっそうの拡散を示している。当該データは、Cu−Ta皮膜、Cu−Cr皮膜、およびCu−Ta/Cr皮膜の拡散が、純CuおよびCu−Mo皮膜よりもはるかに少ないということを明確に示している。
【0065】
第4表 アニール処理温度に対するSi基板上の純CuおよびCu−耐熱金属皮膜の界面幅
【表6】
【0066】
蒸着時(アニール前)の実施例1のCu−Ta皮膜の抵抗値は、参照試料の純Cu皮膜および比較例5のCu−Mo皮膜の両方と同様にかなり低い。Cu−Ta皮膜の抵抗値は、比較例6のCu−W皮膜よりはるかに低い。Cu−Ta皮膜の抵抗値は、600℃でのアニール処理後、わずかに低下さえしており、本発明の皮膜が、酸化および/または構造変化を生じることなく、熱的に安定であることを示している。したがって、本発明の皮膜の抵抗値および熱アニール処理の挙動は、比較例5および6のCu−Mo皮膜およびCu−W皮膜の両方よりも優れている。したがって、本発明の皮膜は、フラットパネル・ディスプレイおよび半導体ICにおける導線および電極の用途に非常に好適である。純Cu皮膜の抵抗値は、400℃までのアニール処理の後はわずかに減少しているが、500℃でのアニール処理の後は、おそらく相偏析のために、容認できない値まで急激に増加している。Cu−Mo皮膜の抵抗値は、400℃でのアニール処理後増加している。蒸着時のCu−W皮膜の抵抗値は、純Cu皮膜、Cu−Ta皮膜、およびCu−Mo皮膜よりも高く(ほぼ二倍)、400℃でのアニール処理後はかなり増加している。抵抗値挙動の比較は、Cu−Mo、Cu−W、および純Cuより、Cu−Taの熱安定性が優れていることを証明している。
【0067】
下記第5表に示すように、Cu−Ta皮膜、Cu−TaCr皮膜、Cu−Mo皮膜、およびCu−W皮膜の抵抗値を、純Cu皮膜と比較している。Cu−Ta皮膜、Cu−TaCr皮膜、およびCu−Mo皮膜は、500℃まで熱的に安定である。しかしながら、上記のとおり、Cu−Moは、適切に拡散を防止しない。純Cu、Cu−TaSi、およびCu−W皮膜は、400℃〜500℃の温度でのアニール処理後にそれらの抵抗値がかなり増加していることから示されるように、熱的に安定ではない。この比較は、図5にグラフ表示してある。
【0068】
第5表
【表7】
【0069】
実施例1のCu−Ta薄膜は、SEM画像によって検知されるように、平均粒径が約80nmのナノ結晶ミクロ構造を示す。図6a〜6dに示すように、500℃までの2時間のアニール処理の後でも、Cu−Ta皮膜の平均粒径はほとんど変わらなかった。蒸着時の対照試料の純Cu皮膜は、約20nmの小さい平均粒径子のナノ結晶構造を有する。しかしながら、200℃の低温でも再結晶化が始まり、粒径はかなり拡大し始めた。純Cu皮膜の平均粒径は、0.4μmまで拡大し、当該皮膜の表面色は、400℃における2時間のアニール処理後には暗色に変化し、皮膜のミクロ構造が、ナノ結晶から多結晶へと変化していることを証明していた。図7a〜7dに示すように、蒸着時の純Cu皮膜は、約20nmの平均粒径のナノ結晶構造(図7a)を有していたが、200℃および300℃の低いアニール処理温度において再結晶化が始まり、粒径は著しく拡大した(図7b)。純Cu皮膜の粒径は、400℃における2時間のアニール処理の後に0.4μmまで拡大し、ナノ結晶から多結晶へと変化した(図7c)。さらに、図7dに示すように、純Cu皮膜は、500℃における2時間のアニール処理の後、相偏析およびCu−シリサイド形成(Cu3SiおよびCu4Si)を示した。
【0070】
Cu−シリサイド相形成も、X線回折によって検出することができる。実施例1のCu−Ta皮膜は、500℃までの2時間のアニール処理の後でも、Cu−シリサイドの形成を示さなかった。このことも、高温でのCu−Ta皮膜とSi基板との間のCuおよびSiの相互拡散が、無視できる程度であることを示している。Cu−Ta皮膜のXRDピークは、アニール処理の後でも変わらず、このことは、Cu−Ta結晶構造が変化していないことを示している。純Cu皮膜には、500℃での2時間のアニール処理の後、シリサイド(Cu3SiおよびCu4Si)形成が生じた。このことは、高温での純Cu皮膜とSi基板との間におけるCuおよびSiの相互拡散が、非常に高いことを示している。図8a、図8b、図8c、および図8dは、それぞれ、実施例1のCu−Ta皮膜、実施例3のCu−Ta/Cr皮膜、実施例4のCu−Ni皮膜、および参照試料のCu皮膜のXRDスペクトルを示している。Cu−Ta皮膜の熱拡散挙動も、Cu−Mo皮膜およびCu−W皮膜より良好である。530℃での1時間のアニール処理の後、Cu−Mo皮膜は、シリサイド形成を示した。4000℃における1時間のアニール処理の後、Cu−W皮膜は、シリサイド形成を示した。図9aおよび9bは、それぞれ、比較例5のCu−Mo皮膜および比較例6のCu−W皮膜のXRDスペクトルを示している。
【0071】
純Cu皮膜、Cu−Ta皮膜、Cu−Cr皮膜、Cu−Mo皮膜、およびCu−W皮膜の様々な特性の比較(蒸着時)を、下記第6表に示す。Cu−Ta皮膜の特性の大半は、Cu−Ta皮膜が優れた熱安定性を示し、かつ高温処理の間に拡散を受けないことを除いて、純Cu皮膜、Cu−Mo皮膜、およびCu−W皮膜と同様である。Cu−Ta皮膜は、純Cu皮膜およびCu−Mo皮膜と同様に低い抵抗値を有し、これはCu−W皮膜より低い。Cu−Taは、Cu皮膜、Cu−Mo皮膜、およびCu−W皮膜と同様の許容できるスパッタリング蒸着速度を有する。Cu−Ta皮膜は、高いウェットエッチング速度(HNO3:H2O=3:1の溶液中)を有し、これは、純Cu皮膜より高く、Cu−Mo皮膜およびCu−W皮膜より低いが、まだ許容できる範囲内である。Cu−Ta皮膜は、Corning1737ガラス基板に対して、純Cu皮膜、Cu−Mo皮膜、およびCu−W皮膜と同程度の接着性を有する。
【0072】
【表8】
【0073】
本発明の様々な実施形態によるCu−Ta皮膜およびCu−Cr皮膜の熱的に安定なナノ結晶構造は熱処理後、皮膜中に多くのヒロックを有する粒状構造および他の欠陥を皮膜に生じ得るCu−Mo皮膜およびCu−W皮膜のそれより優れている。
【0074】
さらに、本発明の様々な実施形態によるCu−Cr皮膜、Cu−Ta/Cr皮膜、およびCu−Ni皮膜は、純Cu皮膜、Cu−Ta皮膜、Cu−Mo皮膜、およびCu−W皮膜(すべてが接着評価0B)と比較して、Corning1737ガラス基板に対して大幅に改善された接着性(接着評価5Bに指定)を有する。ASTM規格(D3359−02およびB905−00)により、テープ試験方法は、接着性を5つのレベル(0B〜5B)に分類する。数が大きいほど、接着性は優れている。本発明の様々な実施形態によるCu−Cr皮膜、Cu−Ta/Cr皮膜、およびCu−Ni皮膜はさらに、他のCu合金皮膜よりはるかに低いエッチング速度を有し(例えば、Cu−Cr皮膜では6.2nm/s)、これにより、エッチング加工をより良く制御することが可能である。本発明の様々な実施形態によるCu−Cr薄膜の熱安定性実験では、その点においても優れた性能が示された。SEM分析では、認識できる粒子成長のないナノサイズの粒子が示された。オージェプロファイル分析では、500℃まで相互拡散が示されなかった。X線回折分析は、400℃までシリサイドの形成を全く示さなかったが、500℃のアニール処理の後は幾分かのCu4Siの形成を示した。
【0075】
上記の実施形態に対し、その広範な発明の概念から逸脱することなく、変更を行うことが可能であることは、当業者であれば理解されるであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨および範囲内における改変を網羅することを意図することが理解される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属マトリックスと、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される耐熱ドーパント成分とから実質的に成る金属材料。
【請求項2】
前記耐熱ドーパント成分が、前記金属材料に対して0.1〜6質量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の金属材料。
【請求項3】
前記耐熱ドーパント成分が、前記金属材料に対して、1〜3質量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の金属材料。
【請求項4】
前記導電性金属マトリックスが銅を含む、請求項1に記載の金属材料。
【請求項5】
前記耐熱ドーパント成分が、タンタル、クロム、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される金属を含む、請求項4に記載の金属材料。
【請求項6】
前記耐熱ドーパント成分が、前記金属材料に対して0.1〜6質量パーセントの量で存在する、請求項5に記載の金属材料。
【請求項7】
前記耐熱ドーパント成分が、前記金属材料に対して1〜3質量パーセントの量で存在する、請求項5に記載の金属材料。
【請求項8】
前記耐熱ドーパントが、クロムおよびタンタルを含む、請求項4に記載の金属材料。
【請求項9】
前記クロムおよびタンタルが、0.1〜6質量パーセントの合計量で存在する、請求項8に記載の金属材料。
【請求項10】
前記クロムおよびタンタルが、1〜3質量パーセントの合計量で存在する、請求項8に記載の金属材料。
【請求項11】
前記クロムが、約1質量パーセントの量で存在し、並びに前記タンタルが、約2質量パーセントの量で存在する、請求項8に記載の金属材料。
【請求項12】
銅と、チタンおよびニッケルから成る群から選択されるドーパント成分とから実質的に成る金属材料。
【請求項13】
(a)金属銅粉末と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る粉末の群から選択される耐熱金属粉末とから実質的に成る均一な粉末混合物を提供する工程、
(b)前記均一な粉末混合物を熱機械的方法に供して、スパッタリングターゲットプレートを形成する工程、
を含む方法によって製造されるスパッタリングターゲット。
【請求項14】
前記熱機械的方法が、圧縮成形工程および焼結工程を含む、請求項13に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項15】
前記熱機械的方法が、熱間等方圧加圧成形工程を含む、請求項13に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項16】
前記熱間等方圧加圧成形が、約69MPaの下における約750℃で約4時間の高密度化を含む、請求項15に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項17】
前記熱機械的方法が、さらに、熱間等方圧加圧成形工程の前に、圧縮成形工程および焼結工程を含む、請求項15に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項18】
前記耐熱金属粉末が、前記粉末混合物に対して0.1〜6質量パーセントの量で存在する、請求項13に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項19】
前記耐熱金属粉末が、タンタル、クロム、およびそれらの混合物から成る群から選択される金属を含む、請求項18に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項20】
前記耐熱金属粉末が、前記粉末混合物に対して0.1〜6質量パーセントの量で存在する、請求項15に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項21】
金属銅粉末と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る金属粉末の群から選択される耐熱金属粉末とから実質的に成る、高密度化された均一な粉末混合物を含むスパッタリングターゲット。
【請求項22】
前記耐熱金属粉末が、タンタル、クロム、およびそれらの混合物から成る群から選択される金属を含む、請求項21に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項23】
前記耐熱金属粉末が、前記粉末混合物に対して約0.1〜6質量パーセントの量で存在する、請求項22に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項24】
(a)基板を提供する工程、
(b)請求項13に記載の方法によって製造されたスパッタリングターゲットを提供する工程、および
(c)前記スパッタリングターゲット材料で構成された薄膜が基板の表面に配置されるよう、前記スパッタリングターゲットをエネルギーの供給源に供する工程
を含む方法。
【請求項25】
(a)基板を提供する工程、
(b)請求項21に記載のスパッタリングターゲットを提供する工程、および
(c)前記スパッタリングターゲット材料で構成された薄膜が基板の表面に配置されるよう、前記スパッタリングターゲットをエネルギーの供給源に供する工程
を含む方法。
【請求項26】
前記ターゲットをエネルギーの供給源に供する工程が物理蒸着法を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
物理蒸着法が、DCマグネトロンスパッタリングを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記DCマグネトロンスパッタリングが、約100〜2000ワットの電力、約1〜20mTorrの圧力、およそ室温〜500℃の基板温度、および約0〜−300Vの基板バイアスにおいて、アルゴン含有プラズマを用いて実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項24に記載の方法によって製造された薄膜。
【請求項30】
請求項25に記載の方法によって製造された薄膜。
【請求項31】
銅と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される耐熱金属ドーパントとから実質的に成り、熱的に安定なナノ結晶構造を有する薄膜。
【請求項32】
基板と、前記基板の表面上に配置された薄膜とを含むデバイスであって、前記薄膜が、銅と、前期薄膜に対して約0.1〜6質量パーセントの濃度を有する耐熱ドーパントとから実質的に成り、前記耐熱ドーパントが、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される金属を含む、デバイス。
【請求項1】
導電性金属マトリックスと、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される耐熱ドーパント成分とから実質的に成る金属材料。
【請求項2】
前記耐熱ドーパント成分が、前記金属材料に対して0.1〜6質量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の金属材料。
【請求項3】
前記耐熱ドーパント成分が、前記金属材料に対して、1〜3質量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の金属材料。
【請求項4】
前記導電性金属マトリックスが銅を含む、請求項1に記載の金属材料。
【請求項5】
前記耐熱ドーパント成分が、タンタル、クロム、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される金属を含む、請求項4に記載の金属材料。
【請求項6】
前記耐熱ドーパント成分が、前記金属材料に対して0.1〜6質量パーセントの量で存在する、請求項5に記載の金属材料。
【請求項7】
前記耐熱ドーパント成分が、前記金属材料に対して1〜3質量パーセントの量で存在する、請求項5に記載の金属材料。
【請求項8】
前記耐熱ドーパントが、クロムおよびタンタルを含む、請求項4に記載の金属材料。
【請求項9】
前記クロムおよびタンタルが、0.1〜6質量パーセントの合計量で存在する、請求項8に記載の金属材料。
【請求項10】
前記クロムおよびタンタルが、1〜3質量パーセントの合計量で存在する、請求項8に記載の金属材料。
【請求項11】
前記クロムが、約1質量パーセントの量で存在し、並びに前記タンタルが、約2質量パーセントの量で存在する、請求項8に記載の金属材料。
【請求項12】
銅と、チタンおよびニッケルから成る群から選択されるドーパント成分とから実質的に成る金属材料。
【請求項13】
(a)金属銅粉末と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る粉末の群から選択される耐熱金属粉末とから実質的に成る均一な粉末混合物を提供する工程、
(b)前記均一な粉末混合物を熱機械的方法に供して、スパッタリングターゲットプレートを形成する工程、
を含む方法によって製造されるスパッタリングターゲット。
【請求項14】
前記熱機械的方法が、圧縮成形工程および焼結工程を含む、請求項13に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項15】
前記熱機械的方法が、熱間等方圧加圧成形工程を含む、請求項13に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項16】
前記熱間等方圧加圧成形が、約69MPaの下における約750℃で約4時間の高密度化を含む、請求項15に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項17】
前記熱機械的方法が、さらに、熱間等方圧加圧成形工程の前に、圧縮成形工程および焼結工程を含む、請求項15に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項18】
前記耐熱金属粉末が、前記粉末混合物に対して0.1〜6質量パーセントの量で存在する、請求項13に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項19】
前記耐熱金属粉末が、タンタル、クロム、およびそれらの混合物から成る群から選択される金属を含む、請求項18に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項20】
前記耐熱金属粉末が、前記粉末混合物に対して0.1〜6質量パーセントの量で存在する、請求項15に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項21】
金属銅粉末と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る金属粉末の群から選択される耐熱金属粉末とから実質的に成る、高密度化された均一な粉末混合物を含むスパッタリングターゲット。
【請求項22】
前記耐熱金属粉末が、タンタル、クロム、およびそれらの混合物から成る群から選択される金属を含む、請求項21に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項23】
前記耐熱金属粉末が、前記粉末混合物に対して約0.1〜6質量パーセントの量で存在する、請求項22に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項24】
(a)基板を提供する工程、
(b)請求項13に記載の方法によって製造されたスパッタリングターゲットを提供する工程、および
(c)前記スパッタリングターゲット材料で構成された薄膜が基板の表面に配置されるよう、前記スパッタリングターゲットをエネルギーの供給源に供する工程
を含む方法。
【請求項25】
(a)基板を提供する工程、
(b)請求項21に記載のスパッタリングターゲットを提供する工程、および
(c)前記スパッタリングターゲット材料で構成された薄膜が基板の表面に配置されるよう、前記スパッタリングターゲットをエネルギーの供給源に供する工程
を含む方法。
【請求項26】
前記ターゲットをエネルギーの供給源に供する工程が物理蒸着法を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
物理蒸着法が、DCマグネトロンスパッタリングを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記DCマグネトロンスパッタリングが、約100〜2000ワットの電力、約1〜20mTorrの圧力、およそ室温〜500℃の基板温度、および約0〜−300Vの基板バイアスにおいて、アルゴン含有プラズマを用いて実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項24に記載の方法によって製造された薄膜。
【請求項30】
請求項25に記載の方法によって製造された薄膜。
【請求項31】
銅と、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される耐熱金属ドーパントとから実質的に成り、熱的に安定なナノ結晶構造を有する薄膜。
【請求項32】
基板と、前記基板の表面上に配置された薄膜とを含むデバイスであって、前記薄膜が、銅と、前期薄膜に対して約0.1〜6質量パーセントの濃度を有する耐熱ドーパントとから実質的に成り、前記耐熱ドーパントが、タンタル、クロム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、白金、レニウム、ニオブ、ハフニウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される金属を含む、デバイス。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図9a】
【図9b】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図9a】
【図9b】
【公表番号】特表2011−504547(P2011−504547A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531278(P2010−531278)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/081126
【国際公開番号】WO2009/055678
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(503153986)ハー ツェー シュタルク インコーポレイテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck, Inc.
【住所又は居所原語表記】45 Industrial Place, Newton, MA 02461, USA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/081126
【国際公開番号】WO2009/055678
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(503153986)ハー ツェー シュタルク インコーポレイテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck, Inc.
【住所又は居所原語表記】45 Industrial Place, Newton, MA 02461, USA
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]