説明

脂質代謝異常を治療するためのパンテチン含有組成物

本発明は、部分的には、パンテチン又はその誘導体と第二の活性物質の組合せ含んでいる医薬組成物に関する。第二の活性物質の例としては、限定するものではないが、スタチン類、フィブラート類、グリタゾン類、ビグアニド類、スルホニル尿素類、脂質代謝異常を制御する化合物類、本発明の小ペプチド類、及びそれらの組合せなどを挙げることができる。さらにまた、本発明は、コレステロール、脂質代謝異常及び関連疾患を治療、予防又は管理する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 発明の分野
本発明は、一つには、パンテチン又はその誘導体と第二の活性物質の組合せ含んでいる医薬組成物に関する。さらに、本発明は、コレステロール、脂質代謝異常(dyslipidemia)及び関連疾患を治療、予防又は管理する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
2. 発明の背景
脂質代謝異常は、種々の要因、例えば、限定するものではないが、高い総コレステロール、高いトリグリセリド、低い高密度リポタンパク質コレステロール、正常なレベルから上昇したレベルの低密度リポタンパク質コレステロール、又は、小さな低密度リポタンパク質粒子などによって引き起こされる。これらの要因は、さらにまた、種々の別の疾患にも関連している。
【0003】
上昇した血清コレステロールを冠状動脈性心疾患と結びつける証拠は歴然としている。(Badimon et al., Circulation, 86 Suppl. III, 1992, 86-94)。循環コレステロールは血漿リポタンパク質によって運搬される。血漿リポタンパク質は、脂質とタンパク質の複合粒子であって、血中において脂質を運搬する。低密度リポタンパク質(LDL)及び高密度リポタンパク質(HDL)は、主要なコレステロール輸送タンパク質(cholesterol-carrier protein)である。(同文献)。LDLは、肝臓で合成されたか又は食事により摂取されたコレステロールを肝臓から体内の肝外組織へ送達するのを担っていると考えられている。用語「コレステロール逆輸送」は、肝外組織から肝臓へのコレステロールの輸送を表しており、肝臓では、輸送されたコレステロールは異化されて、排除される。血漿HDL粒子は、組織コレステロールの捕捉剤として作用し、上記逆輸送のプロセスにおいて主要な役割を果たしていると考えられている。(同文献)。さらにまた、HDLは、非コレステロール性脂質、酸化コレステロール及び他の酸化生成物を血流から除去することも担っている。
【0004】
例えば、アテローム性動脈硬化症は、ゆっくりと進行する疾患であって、動脈壁内部へのコレステロールの蓄積を特徴とする。アテローム性動脈硬化症の病変に堆積した脂質は、主として、血漿アポリポタンパク質B(アポB)を含んでいるリポタンパク質(例えば、キロミクロン、CLDL、IDL及びLDLなど)に由来すると考えられるが、これは、有力な証拠により支持されている。以下の文献を参照されたい:Badimon et al., 1992, Circulation 86:(Suppl. III)86-94。アポBを含んでいるリポタンパク質、特に、LDLは、「悪玉」コレステロールとして、広く知られるようになった。それに反して、HDLの血清レベルと冠状動脈性心疾患は、逆の相互関係を有している。実際、高血清レベルのHDLは、負の危険因子と見なされる。高レベルの血漿HDLは、冠動脈疾患に対して保護的であるのみではなく、実際に、アテローム斑の軽減を惹起し得るという仮説が立てられている。以下の文献を参照されたい:Dansky and Fisher, 1999, Circulation 100:1762-3。従って、HDLは、「善玉」コレステロールとして広く知られるようになった。
【0005】
2.1 コレステロール輸送
脂質輸送系は、2つの経路に分けることができる:腸で吸収されたコレステロールとトリグリセリドのための外因性経路、及び、肝臓と非肝臓組織から血流中にコレステロールとトリグリセリドが入り込むための内因性経路。
【0006】
外因性経路では、食事脂肪はキロミクロンと称されるリポタンパク質粒子内に包み込まれ、このキロミクロンが血流中に入り、トリグリセリドを、貯蔵のための脂肪組織に送達するか、又は、酸化によりエネルギーを供給するための筋肉に送達する。コレステリルエステルを含んでいるキロミクロンのレムナントは、肝細胞にのみ見られる特定の受容体より循環流から除去される。このコレステロールは、次いで、細胞代謝のために再度利用できるようになるか、又は、血漿リポタンパク質として肝外組織に再循環される。
【0007】
内因性経路では、肝臓は、大きな超低密度リポタンパク質粒子(VLDL)を血流中に分泌する。VLDLのコアは、主として、肝臓内で合成されたトリグリセリドからなり、肝臓で合成されたか又はキロミクロンからリサイクルされた少量のコレステリルエステルを含んでいる。Jacob et al., Journal of Nutrition, 1999; vol.129: pp 712-717。VLDLの表面には、2種類の主要なタンパク質(アポリポタンパク質B-100(アポB-100)及びアポリポタンパク質E(アポE))が現れているが、アポリポタンパク質CIII(アポCIII)及びアポリポタンパク質CII(アポCII)のような別のアポリポタンパク質も存在している。VLDLは、脂肪組織又は筋肉の毛細血管に到達すると、トリグリセリドが抽出される。これにより、中間密度リポタンパク質(IDL)と称される新しい種類の粒子、又は、VLDLに比較してサイズが小さくなり、コレステリルエステルを多く含んでいるが、2種類のアポタンパク質は保持しているVLDLレムナントが形成される。(同文献)。
【0008】
ヒトにおいては、IDL粒子の約半分は、一般に、形成されてから2〜6時間以内に循環流から速やかに取り除かれる。それは、IDL粒子は肝細胞に強く結合し、肝細胞はIDLコレステロールを抽出して、新しいVLDL及び胆汁酸を作り出すからである。肝臓に取り込まれなかったIDLは、肝細胞上のプロテオグリカンに結合している酵素である肝性リパーゼにより異化される。IDLがLDLに変換されるにつれて、アポEが、IDLから解離する。アポB-100は、LDLの単一のタンパク質である。
【0009】
肝臓は、循環しているコレステロールを取り込んで、胆汁酸に分解する。胆汁酸は、コレステロール代謝の最終産物である。コレステロールを含んでいる粒子の取り込みは、肝細胞上に高密度に存在しているLDL受容体により媒介される。LDL受容体は、アポEとアポB-100の両方に結合し、IDL及びLDLの捕捉並びに血液循環からのIDL及びLDLの除去を担っている。さらに、レムナント受容体は、キロミクロン及びVLDLレムナント(即ち、IDL)の除去を担っている。しかしながら、LDL受容体に対するアポEの親和性は、LDL受容体に対するアポB-100の親和性よりも大きい。その結果、LDL粒子は、IDL粒子に比較して極めて長期間にわたる循環寿命を有している。LDLは、平均して、2.5日間循環した後、肝臓及び他の組織内のLDL受容体に結合する。高レベルの血清LDL(「悪玉」コレステロール)は、冠状動脈性心疾患と正の関連を示す。例えば、アテローム性動脈硬化症においては、循環しているLDLに由来するコレステロールは、動脈壁内に蓄積する。この蓄積がバルキーなプラークを形成し、そのプラークは、血液の流れを阻害し、最後には、凝血塊が形成される。この凝血塊は動脈を閉塞し、心臓発作又は卒中を引き起こす。
【0010】
結局、LDLから放出された細胞内コレステロールの量により、細胞におけるコレステロールの代謝が制御される。VLDL及びLDLに由来する細胞コレステロールの蓄積は、3つのプロセスをコントロールする。第一に、コレステロール生合成経路における鍵酵素であるHMG-CoA還元酵素の合成を止めることにより、細胞が細胞自体のコレステロールを作り出す能力を低下させる。第二に、入ってくるLDL由来コレステロールが、コレステロールを貯蔵小滴(storage droplet)内に堆積するコレステリルエステルに変換する細胞性酵素であるACATの作用により、コレステロールの貯蔵を促進する。第三に、細胞内に蓄積したコレステロールが、新しいLDL受容体の細胞性合成を阻害するフィードバックメカニズムを駆動させる。従って、細胞は、過負荷なく、必要とされる代謝に見合う充分なコレステロールを取り込むことができるように、LDL受容体の補充を調節する(概説に関しては、以下の文献を参照されたい: Mahley & Bersot, The Pharmacological Basis Of Therapeutics, 10th Ed., Goodman & Gilman, Pergaman Press, NY, 2001, Ch. 36, pp. 971-1002)。
【0011】
高レベルのアポBを含んでいるリポタンパク質は、動脈の内皮下の空間に捕捉されて、酸化され得る。酸化されたリポタンパク質は、マクロファージのスカベンジャー受容体により認識される。酸化されたリポタンパク質がスカベンジャー受容体に結合すると、LDL受容体とは関係なく、マクロファージのコレステロール及びコレステリルエステルの含有量が増大し得る。マクロファージは、さらにまた、ACATの作用によりコレステリルエステルを産生することもできる。LDLは、ジスルフィド橋を介して、アポリポタンパク質(a)(アポ(a)としても知られている)と称される高分子量糖タンパク質と複合体化されることも可能である。LDL-アポ(a)複合体は、リポタンパク質(a)、又は、Lp(a)として知られている。Lp(a)のレベルが上昇するのは有害であり、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、心筋梗塞、卒中、脳梗塞、及び、血管形成術後の再狭窄に関連付けられている。
【0012】
2.2 コレステロール逆輸送
末梢細胞(非肝細胞)は、主として、局所的な合成とVLDL及びLDLからの予め形成されたステロールの取り込みを組み合わせることで、コレステロールを得ている。マクロファージや平滑筋細胞のようなスカベンジャー受容体を発現する細胞は、コレステロールを酸化アポB含有リポタンパク質からも得ることが可能である。それにひきかえ、コレステロール逆輸送(RCT)は、肝外組織へのリサイクル、肝臓における貯蔵、又は、胆汁としての腸への排出のために、末梢細胞のコレステロールが肝臓へ戻ることが可能な経路である。このRCT経路は、殆どの肝外組織からコレステロールを排除するための唯一の手段であり、体内の殆どの細胞の構造と機能を維持するのに極めて重要である。
【0013】
RCT経路に関与する血中の酵素であるレシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)は、細胞由来のコレステロールをコレステリルエステルに変換する。このコレステリルエステルは、除去されることになっているHDL内に封鎖される。LCATは、主に、肝臓で産生され、HDLフラクションと一緒に血漿中を循環する。コレステロールエステル輸送タンパク(CETP)及び別の脂質輸送タンパク(リン脂質輸送タンパク(PLTP))は、循環するHDL集団のさらなるリモデリングに寄与する。以下の文献を参照されたい: Bruce et al., 1998, Annu. Rev. Nutr. 18: 297-330。PLTPは、HDLにレシチンを供給し、CETPは、LCATにより作られたコレステリルエステルを、別のリポタンパク質、特に、VLDLのようなアポB含有リポタンパク質に移動させることができる。HDLトリグリセリドは、細胞外肝性トリグリセリドリパーゼにより異化されることができ、リポタンパク質コレステロールは、幾つかのメカニズムを介して肝臓により除去される。
【0014】
各HDL粒子は、アポリポタンパク質(アポA-I)の少なくとも1つの分子、通常は、2〜4個の分子を含んでいる。アポA-Iは、肝臓及び小腸によってプレプロアポリポタンパク質として合成される。このプレプロアポリポタンパク質は、プロタンパク質として分泌され、プロタンパク質は速やかに切断されて、243アミノ酸残基を有する成熟ポリペプチドを生成する。アポA-Iは、主に、ヘリックス破壊プロリン残基(helix-breaking proline residue)により隔てられている22アミノ酸の反復セグメントからなる。アポA-1は、脂質と一緒に3つの型の安定な構造を形成する:プレ-β-1 HDLと称される、小さな、脂質含有量の少ない複合体;プレ-β-2 HDLと称される、極性脂質(例えば、リン脂質及びコレステロール)のみを含んでいる扁平な円盤状粒子;及び、球状又は成熟HDL(HDL3 及び HDL2)と称される、極性脂質と非極性脂質の両方を含んでいる球状粒子。循環集団内の殆どのHDLは、アポA-IとアポA-II(第二の主要なHDLタンパク質)の両方を含んでいる。この、アポA-IとアポA-IIを含んでいるフラクションは、本明細書では、HDLのAI/AII-HDLフラクションと称する。しかしながら、アポA-1のみを含んでいるHDLのフラクション(本明細書では、AI-HDLフラクションと称する)は、RCTにおいてより効果的であるように見える。特定の疫学的な研究は、AI-HDLフラクションが抗アテローム発生性(antiartherogenic)であるという仮説を支持している(Parra et al., 1992, Arterioscler. Thromb. 12:701-707; Decossin et al., 1997, Eur. J. Clin. Invest. 27:299-307)。
【0015】
細胞表面からのコレステロール転移のメカニズムはまだ知られていないが、脂質含有量の少ない複合体であるプレ-β-1 HDLが、RCTに関与する末梢組織から移動してきたコレステロールに対する好ましいアクセプターであると考えられている。細胞表面からプレ-β-1 HDLに新たに移動してきたコレステロールは、すぐに、円盤状プレ-β-2 HDL内に出現する。PLTPは、ディスク形成の速度を増大させ得る(Lagrost et al., 1996, J. Biol. Chem. 271: 19058-19065)が、データにより、RCTにおいてはPLTPの役割は無いことが示されている。LCATは、優先的に、円盤状HDL及び球状HDLと反応し、レシチン又はホスファチジルエタノールアミンの2つのアシル基を、脂肪アルコール、特にコレステロールの遊離ヒドロキシル残基に移動させて、コレステリルエステル(HDL内に保持される)及びリゾレシチンを生成させる。LCATの反応には、活性化因子として、アポA-I又はアポA-IVのようなアポリポタンパク質が必要である。アポA-Iは、LCATに対する天然補因子の1つである。コレステロールがそのHDL-封鎖エステルに変換されることにより、コレステロールが細胞内に再度取り込まれるのが防止され、その結果、細胞性コレステロールが究極的に除去される。AI-HDLフラクションの成熟HDL粒子内のコレステリルエステルは、AI/AII-HDLフラクションに由来するものよりも効率的に、肝臓により除去され、胆汁に加工される。これは、部分的には、AI-HDLが肝細胞膜により効率的にに結合することに起因し得る。これまで、数種類のHDL受容体が同定されており、その中で、最もよくキャラクタリゼーションが成されているのは、スカベンジャー受容体クラスB、タイプI(SR-BI)である(Acton et al., 1996, Science 271:518-520)。SR-BIは、ステロイド産生組織(例えば、副腎)及び肝臓において最も多く発現される(Landshulz et al., 1996, J. Clin. Invest. 98:984-995; Rigotti et al., 1996, J. Biol. Chem. 271: 33545-33549)。提案されている別のHDL受容体には、HB1及びHB2などがある(Hidaka and Fidge, 1992, Biochem J. 15: 161-7; Kurata et al., 1998, J. Atherosclerosis and Thrombosis 4: 112-7)。
【0016】
CETPがVLDLに由来する脂質及びLDLに由来する脂質の代謝に関与しているということに関しては意見の一致が見られているが、RCTにけるその役割については、議論の余地がある。しかしながら、CETP活性又はそのアクセプター(VLDL及びLDL)における変化は、HDL集団の「リモデリング」においてある役割を果たしている。例えば、CETPが存在していない場合、HDLは大きな粒子になり、これは、循環から除去するのが困難である(RCT及びHDLについての概説に関して、以下の文献を参照されたい: Fielding & Fielding, 1995, J. Lipid Res. 36: 211-228; Barrans et al., 1996, Biochem. Biophys. Acta. 1300: 73-85; Hirano et al., 1997, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 17: 1053-1059)。
【0017】
2.3 他の脂質の逆輸送
HDLは、コレステロールの逆輸送に関与しているのみではなく、他の脂質の逆輸送、即ち、細胞、器官及び組織から肝臓への、異化及び排出のための脂質の輸送においても役割を果たしている。そのような脂質には、スフィンゴミエリン、酸化脂質、及び、リソホスファチジルコリンなどがある。例えば、Robins及びFasulo(1997, J. Clin. Invest. 99: 380-384)は、HDLが肝臓による植物ステロールの輸送を刺激し、胆汁を分泌させることを示した。
【0018】
2.4 現在のコレステロール管理療法
ここ20年くらいの間に、コレステロール含有化合物のHDL制御因子とLDL制御因子への分離がなされ、また、血中の後者のレベルを低下させることが望ましいということが認識されたことにより、多くの薬物が開発された。Fisher et al., J. Biol Chem. 1985, 260:15745-15751。しかしながら、これらの薬物の多くは、望ましくない副作用を有しているか、及び/又は、特定の患者において、特に、別の薬物と組み合わせて投与されたときに、禁忌を示す。
【0019】
伝えられるところでは、患者に投与されたときに血中のトリグリセリド及びコレステロールのレベルを低下させることができるといわれている1種の化合物は、パンテチンである。パンテチン(化学名:D-ビス-(N-パントテニル-β-アミノエチル)-ジスルフィド)は、以下の構造を有している。
【化1】

【0020】
パンテチンは、システイン部分構造を有するビタミンB5又はパントテン酸のジスルフィド形態である。人体は、パントテン酸を用いて、タンパク質を作るとともに、脂肪及び炭水化物を代謝するのに必要な別の重要な薬物を作る。例えば、幾つかの研究により、パントテン酸が補酵素A(CoA)の直接的な前駆体であることが示唆されている。Alt. Med. Rev. 1997, 2(5):365-377。体内の代謝における下も重要な物質の1つであるCoAは、以下の基本的な代謝機能に関与している:脂肪酸の合成、脂肪酸の分解、人体のエネルギーの大半を生成するクレブズ回路、人体の主要な神経伝達物質であるコリンのアセチル化、抗体の合成、脂肪、タンパク質及び炭水化物などの栄養分の利用、血糖量レベルの維持、ヘモグロビン合成における重要なヘム前駆体であるポルフィリンの合成、数種のミネラル及び微量元素の代謝、ステロイドホルモンの合成、及び、スルホンアミド類などの薬物の解毒。パントテン酸は、さらにまた、ホルモン類、赤血球及びアセチルコリン(重要な神経伝達物質(神経細胞間のシグナルの担い手))の製造においても用いられている。栄養補助食品としてのパントテン酸は、慢性関節リウマチの治療、運動能力増強剤、及び、「抗ストレス」栄養素として提案されてきた。
【0021】
パンテチンを投与することにより、高脂血症(例えば、高コレステロール血症)を患っている患者を救うことができることが、動物についての研究及びヒトについての研究の両方で示された。以下の文献を参照されたい: Arsenio et al., Clinical Therapeutics, Vol. 8, No. 5, 1986, pp. 537-545; Tawara et al., Japan J. Pharmacol., 41, 1986, 211-222; Cighetti et al., Artheroscelerosis, 60,1986, 67-77; & Da Col et al., Therapeutic Research, Vol. 36, No. 2, 1984, 314-322。前記文献の各々は、参照により本明細書に組み入れる。パンテチンは、組織におけるアセトアルデヒドのレベルを低下させることが示されており、また、パンテチンは、そのままで、慢性カンジダ症及びアルコール依存症に対するプロトコールにおける有用な補助剤であり得る。さらにまた、アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性が、パンテチンを補足することにより増強され得ることが研究により示されている。この酵素は、ホルムアルデヒドの分解を担っており、従って、パンテチンは、ホルムアルデヒド感受性のヒトにとって有用であり得る。別の研究により、パンテチンがシスチン性線維芽細胞(cystinotic fibroblast)からシスチンを枯渇させることが示されており、従って、パンテチンは、シスチン蓄積症の治療において有用であり得る。
【0022】
伝えられるところでは、コレステロール障害の治療において有用であるといわれている別の化合物は、胆汁酸結合性樹脂である。これは、胆汁酸が腸から肝臓へリサイクルされるのを遮断する種類の薬物である。胆汁酸結合性樹脂の例としては、限定するものではないが、コレスチラミン(QUESTRAN LIGHT(登録商標),Bristol-Myers Squibb)、及び、コレスチポール塩酸塩(COLESTID(登録商標),Pharmacia & Upjohn Company)などを挙げることができる。経口的に摂取された場合、これらの正電荷を有する樹脂は、腸内で、負電荷を有する胆汁酸に結合する。該樹脂は、腸から吸収されることができないので、それら樹脂は、胆汁酸を担持したまま排泄される。しかしながら、そのような樹脂を使用しても、せいぜい、血清コレステロールのレベルが約20%低下するのみである。さらに、そのような樹脂の使用には胃腸の副作用、例えば、便秘及び特定のビタミンの欠乏などが伴う。さらに、該樹脂は薬物に結合するので、別の経口医薬は、該樹脂を摂取する少なくとも1時間前か、又は、該樹脂を摂取後4〜6時間してから摂取しなければならない。このことは、心臓病患者の投薬計画を困難なものにする。
【0023】
スタチン類は、コレステロール合成の阻害薬である。ロバスタチン(MEVACOR(登録商標),Merck & Co., Inc.)(Aspergillusの株に由来する天然産物)、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標),Bristol-Myers Squibb Co.)、フルバスタチン(LESCOL(登録商標),Reliant)、ロスバスタチン(CRESTOR(登録商標),Astra-Zeneca)、及び、アトロバスタチン(LIPITOR(登録商標),Warner Lambert)は、コレステロール生合成経路に関与する鍵酵素であるHMGCoAを阻害することにより、コレステロール合成を阻害する。ロバスタチンは、血清コレステロールレベル及びLDL-血清レベルを著しく低下させる。それは、冠状動脈のアテローム性動脈硬化症の進行も遅くさせる。しかしながら、ロバスタチンの投与後、血清HDLのレベルは、ほんの僅かしか上昇しない。このLDLを低下させる作用のメカニズムには、VLDL濃度の低下とLDL受容体の細胞性発現の誘発の両方が含まれている可能性がある。VLDL濃度の低下とLDL受容体の細胞性発現の誘発は、LDLの産生の低下及び/又はLDLの異化作用の増大へと至る。これらの薬物の使用には、肝臓機能障害及び腎臓機能障害などの副作用が伴う。国際特許出願公開WO02/47682号及び国際特許出願公開WO02/47683号には、「血中脂質改善用組成物(blood lipid ameliorant composition)」が開示されており、この組成物は、シンバスタチン(ZOCOR(登録商標),Merok & Co. Inc.)又はアトロバスタチン(LIPITOR(登録商標),Parke-Davis)を、それぞれ、1種以上の化合物(その内の1種はパンテチンである)と組み合わせて含んでいる。
【0024】
ナイアシンはニコチン酸としても知られているが、これは、栄養補助食品及び抗高脂血症薬として使用される水溶性ビタミンB複合体である。ナイアシンは、VLDLの産生を低下させる。ナイアシンは、LDLを低減させるのに有効である。NIASPAN(登録商標)は、治療有効量で投与された場合、HDLを増加させることが示されている。しかしながら、ナイアシンの有用性は、重大な副作用により制限される。
【0025】
フィブラート類は、さまざまな形態の高脂血症又は上昇したレベルの血清トリグリセリド(これは、高コレステロール血症を伴っている場合もある)の治療に使用される脂質低下薬の種類の薬物である。フィブラート類は、VLDLフラクションを低下させ、HDLをある程度増加させるように見える。しかしながら、血清コレステロールに対するこれらの薬物の効果は変動する。米国では、フィブラート類は、抗高脂血症薬としての使用に関して承認されているが、高コレステロール血症薬としてはまだ承認されていない。例えば、クロフィブラート(ATROMID-S(登録商標),Wyeth-Ayerst Laboratories)は、VLDLフラクションを低下させることにより血清トリグリセリドを低下させる作用を有する抗高脂血症薬である。ATROMID-Sは、特定の患者の小集団において血清コレステロールレベルを低下させ得るが、この薬物に対する生化学的応答は変動し、どの患者で好ましい結果が得られるかについて、いつも予測できるわけではない。ATROMID-Sは、冠状動脈性心疾患を予防するのに有効であるかは未だ示されていない。化学的且つ薬理学的に関連する薬物であるゲムフィブロジル(LOPID,Parke-Davis)は、血清トリグリセリド及びVLDLコレステロールを穏やかに低下させる脂質調節薬である。LOPIDは、さらにまた、HDLコレステロール、特に、HDL2サブフラクション及びHDL3サブフラクション、並びに、Al/AII-EIDLフラクションを両方とも増加させる。しかしながら、LOPIDに対する脂質の応答は、不均質であり、特に、異なった患者の集団においては不均質である。フェノフィブラート(TRICOR(登録商標),Abbott)は、血中のトリグリセリドレベル及びVLDLレベルを低下させ得る。さらに、冠状動脈性心疾患の病歴を有さないか又は冠状動脈性心疾患に罹患している症状を有さない40〜55歳の男性患者において、冠状動脈性心疾患の予防効果が観察されたが、これらの研究結果が、別の患者集団(例えば、女性、より年配の男性、及び、より若年の男性など)に対してどの程度外挿可能であるかについては不明である。実際、冠状動脈性心疾患が発症している患者においては、効果は全く観察されなかった。フィブラートの使用には、重大な副作用、例えば、毒性;悪性化、特に胃腸の癌の悪性化;胆嚢疾患;及び、非冠状動脈性死亡率の増加などが伴う。単独の脂質異常として高LDL又は低HDLを患っている患者の治療は、これらの薬物の適応症ではない。
【0026】
本発明の化合物と組み合わせて使用するためのビグアニド類としては、限定するものではないが、メトホルミン、フェンホルミン及びブホルミンなどを挙げることができる。メトホルミンは、過去40年間にわたり、II型糖尿病の治療に世界的に使用されてきたビグアニドである。それは、肝臓及び筋肉のインスリン感受性を増強することにより血糖コントロールを改善する。メトホルミンによる改善された代謝コントロールは、体重増加を誘発せず、体重減少を引き起こし得る。
【0027】
さらにまた、メトホルミンは、脂質代謝異常、プラスミノーゲン活性化因子阻害物質1の上昇したレベル、別の線維素溶解の異常、高インスリン血症及びインスリン抵抗性などのいくつかの心血管危険因子に対して有益な効果も有している。メトホルミンはインスリン抵抗性を低下させるが、細胞の作用メカニズムは完全には理解されていない。メトホルミンは、筋肉と脂肪細胞のインスリン受容体の数及び/又は親和性を増大させ、インスリン受容体のチロシンキナーゼ活性を増大させ、グルコース輸送及びグリコーゲン合成を刺激し、そして、肝臓の糖新生及びグリコーゲン分解をいずれも低下させる。さらに、メトホルミンは、脂質の酸化及び血漿中の遊離脂肪酸のレベルを低下させて、それにより、ランドルサイクル(Randle cycle)の過活動を阻害することが報告されている。
【0028】
メトホルミンの副作用は、主に、胃腸管に限定されている(腹部不快感及び下痢症)。この副作用は、ゆっくりと点滴(titration)するか又は食物と一緒に投与することにより、最小限度に抑えることができる。乳酸アシドーシスは、1年間の治療で、10万人の患者当たり3ケースの割合で発症する珍しい疾患である。乳酸アシドーシスの最も多く報告されているケースは、禁忌を有する患者、特に、腎機能障害を有する患者で発症している(90%を超えるケース)。メトホルミンは、II型糖尿病を治療するための、効果的で安全な治療薬である。メトホルミンは、II型糖尿病患者のインスリン感受性及び心血管リスクプロフィールを改善することができるので、それにより、標準的な治療として臨床で多く使用されるようになった。メトホルミンは、さらに、糖尿病に関連した死、心臓発作及び卒中も低下させた。
【0029】
メトホルミンは、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)を患っている患者、特に、治療抵抗性の肥満症を患っている患者に対して適応される。それは、単独療法(食事の処置(dietary measures)と一緒に)として使用されるか、又は、グリブリドなどのようなスルホニル尿素製品と組み合わせて使用される。さらにまた、I型糖尿病患者に対するインスリンの必要性は、長期にわたりメトホルミンとインスリンを組み合わせて使用することで低減し得るという示唆に富んだ証拠もある。研究室及び臨床における研究に基づいて、理論による制限を受けるものではないが、幾つかの作用メカニズムが提案されている:末梢におけるグルコースの取り込み及び利用の増大;肝臓の糖新生(グルコース産生)の阻害;筋肉の糖新生(新しいグリコーゲン分子の産生)の増加;小腸による正味のグルコース吸収の低下;血漿グルカゴンレベルの低下;及び、インスリン受容体の親和性の増大(インスリン抵抗性の低下)。
【0030】
伝えられるところでは、肝臓でのグルコース産生を阻害することが、メトホルミンの最も重要な薬理学的な作用である。主要な作用メカニズムが内因性のインスリンの放出を増大させることであるスルホニル尿素類とは対称的に、ビグアニド類は、膵臓の細胞の機能に対して作用しないように見える。さらにまた、メトホルミンは、糖尿病を患っていない絶食中の個人においては、有意な血糖低下作用を示ささず、糖尿病患者において、低血糖症を引き起こさない(おそらく、身体運動と組み合わせた場合を除く)。多くの患者は、メトホルミンでの治療により、穏やかではあるが有意な体重減少(5〜10%)を経験する。
【0031】
栄養と運動プログラムのみでは血糖値のコントロールに失敗した場合に、II型糖尿病患者を治療するために、スルホニル尿素類が必要とされる。スルホニル尿素類は、唯一の糖尿病用医薬として使用し得るか、又は、別の糖尿病用丸薬と一緒に投与し得るか、又は、インスリン注射と一緒に投与し得る。この薬物は、過去40年間使用されている。スルホニル尿素類は、伝えられるところでは、膵臓がより多くのインスリンを産生するのを助け、筋肉及び肝臓に過剰の糖を消費させることにより、血糖値を低下させるようである。グリピジド(GLUCOTROL(登録商標),Pfizer)は、インスリン非依存性糖尿病を患っているヒトにおいて血糖レベルを低下させるために使用されるスルホニル尿素経薬物である。スルホニル尿素類は、人体がある程度のインスリンを産生する場合にのみ、血糖を低下させる。スルホニル尿素類に関連する副作用には、血糖量低下(低血糖症)、体重増加、及び、サルファ薬に対してアレルギーを有するヒトにおけるアレルギー反応などがある。
【0032】
高血圧症又は高血圧は、心臓及び動脈の負荷を増大させる。それが長期にわたり継続すると、心臓及び動脈は、適切に機能できない。これは、脳、心臓及び腎臓の血管に損傷を与えることがあり、その結果、卒中、心不全又は腎不全になる。高血圧は、さらにまた、心臓発作のリスクも増大させ得る。これらの問題は、抗高血圧薬(例えば、β-遮断薬、アセチルコリンエステラーゼ(ACE)阻害薬、又は、アンジオテンシンII受容体遮断薬など)により血圧をコントロールすれば、あまり起こらなくなり得る。ロサルタン(COZAAR(登録商標),Merck and Co. Inc.)は、高血圧を治療するのに使用される別の薬物である。ロサルタンは、体内において血管を引き締める物質の作用を遮断することにより作用する。その結果、ロサルタンは、血管を弛緩させる。これにより、血圧が低下し、心臓への血液と酸素の供給が増大する。
【0033】
経口エストロゲン補充療法は、閉経後の女性における軽度の高コレステロール血症に対して考慮することができる。しかしながら、HDLの増加には、トリグリセリドの増加が伴い得る。もちろん、エストロゲンによる治療は、特定の患者集団(閉経後の女性)に限られ、また、悪性新生物の誘発;胆嚢疾患;血栓塞栓性疾患;肝細胞腺腫;血圧上昇;グルコース不耐症;及び、高カルシウム血症などのような重大な副作用を伴う。
【0034】
長鎖カルボン酸、特に、特有の置換パターンを有する長鎖α,ω-ジカルボン酸、並びに、それらの単純な誘導体及び塩は、アテローム性動脈硬化症、肥満症及び糖尿病の治療に関して開示されている(例えば、以下の文献を参照されたい: Bisgaier et al., 1998, J. Lipid Res. 39:17-30,及び,その中で引用されている参考文献;国際特許出願公開WO98/30530号;米国特許第4,689,344号;国際特許出願公開WO99/00116号;及び、米国特許第5,756,344号)。しかしながら、これらの化合物のなかには、例えば、α,α'-炭素が置換されているα,ω-ジカルボン酸(米国特許第3,773,946号)のように、血清トリグリセリド及び血清コレステロールを低下させる活性を有していながら、伝えられるところでは、肥満症及び高コレステロール血症の治療に対する有用性が全くないような化合物もある(米国特許第4,689,344号)。
【0035】
米国特許第4,689,344号には、場合によりα,α,α',α'-位が置換されている、β,β,β',β'-テトラ置換-α,ω-アルカン二酸が開示されており、また、該アルカン二酸が、肥満症、高脂血症及び糖尿病の治療に有用であると主張されている。この参考文献によると、3,3,14,14-テトラメチルヘキサデカン-1,16-二酸のような化合物により、トリグリセリドとコレステロールが、いずれも、有意に低下される。米国特許第4,689,344号では、さらに、米国特許第3,930,024号のβ,β,β',β'-テトラメチル-アルカンジオールも同様に、高コレステロール血症又は肥満症の治療に関して有用では無いことが報告されている。
【0036】
伝えられるところでは、コレステロール疾患の治療において活性を有するといわれている別の化合物が、米国特許第4,711,896号に開示されている。米国特許第5,756,544号においては、α,ω-ジカルボン酸を末端に有するジアルカンエーテルが、動物において、特定の血漿脂質、例えば、Lp(a)、トリグリセリド類、VLDL-コレステロール及びLDL-コレステロールを低下させる活性を有し、また、他のもの、例えば、HDL-コレステロールなどを上昇させる活性を有しているとして開示されている。さらにまた、該化合物は、インスリン感受性を増大させるとも述べられている。米国特許第4,613,593号においては、ブタの肝臓から単離されたポリプレノールであるドリコールのリン酸エステルが、肝臓組織の再生において有用であり、尿酸過剰尿症、高脂血症、糖尿病及び一般的な肝臓疾患の治療において有用であると述べられている。
【0037】
米国特許第4,287,200号には、抗糖尿病特性、脂質低下特性及び抗高血圧特性を有するアゾリジンジオン誘導体が開示されている。しかしながら、これらの化合物を患者に投与すると、骨髄抑制、及び、肝臓と心臓の両方の細胞毒性のような副作用が発症し得る。米国特許第4,287,200号に開示されている化合物は、伝えられるところでは、肥満患者の体重増加を刺激するといわれている。
【0038】
ペルオキシソーム増殖因子は、構造的に異なったグループの化合物であり、齧歯類に投与されると、肝臓及び腎臓のペルオキシソームのサイズ及び数を劇的に増大させ、さらに、同時に、β-酸化サイクルに必要な酵素の発現の増加を介してペルオキシソームの脂肪酸代謝能を増大させる(Lazarow and Fujiki, 1985, Ann. Rev. Cell Biol. 1:489-530; Vamecq and Draye, 1989, Essays Biochem. 24:1115-225;及び、Nelali et al., 1988, Cancer Res. 48:5316-5324)。このグループに含まれる化学薬品は、フィブラート類の抗高脂血症薬、除草剤、及び、フタル酸塩可塑剤である(Reddy and Lalwani, 1983, Crit. Rev. Toxicol. 12:1-58)。さらにまた、ペルオキシソームの増殖は、高脂肪食及び低温順化(cold acclimatization)のような食事因子又は生理学的因子によっても、惹起され得る。
【0039】
ペルオキシソーム増殖因子がその多面的効果を発揮するメカニズムに関する洞察は、これらの化学薬品により活性化される核ホルモン受容体スーパーファミリーのメンバーの同定によりもたらされた(Isseman and Green, 1990, Nature 347:645-650)。ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)と称されるこの受容体は、その後、種々の媒体及び長鎖脂肪酸により活性化されることが示された。PPARαは、レチノイドX受容体(RXR)を有するヘテロダイマーの形態にある、ペルオキシソーム増殖因子応答エレメント(peroxisome proliferator response element)(PPRE)と称されるDNA配列エレメントに結合することにより、転写を活性化する。RXRは、9-シスレチノイン酸により活性化される(以下の文献を参照されたい: Kliewer et al., 1992, Nature 358:771-774; Gearing et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:1440-1444; Keller et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2160-2164; Heyman et al., 1992, Cell 68:397-406;及び、Levin et al., 1992, Nature 355:359-361)。PPARαの発見から今日まで、PPARの追加のイソ型(例えば、PPARβ、PPARγ及びPPARδ)が同定され、それらは、同様の機能を有し、同様に調節される。
【0040】
PPRE類は、脂質代謝を調節するタンパク質をコードする多くの遺伝子のエンハンサーにおいて同定された。これらのタンパク質は、ペルオキシソームによる脂肪酸のβ-酸化に必要な3種類の酵素を含んでいる;アポリポタンパク質A-I;中鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ(ミトコンドリアによるβ-酸化における鍵酵素);及び、aP2(脂肪細胞においてのみ独占的に発現される脂質結合タンパク質)(以下の文献において検討されている: Keller and Whali, 1993, TEM, 4:291-296;以下の文献も参照されたい: Staels and Auwerx, 1998, Atherosclerosis 137 Suppl:S19-23)。脂肪酸及び抗高脂血症薬によるPPAR類の活性化と結びついているPPAR標的遺伝子の性質により、脂質の恒常性におけるPPAR類の生理学的な役割が示唆される。
【0041】
チアゾリジンジオン類の抗糖尿病性化合物であるピオグリタゾンは、クロロアンフェニコール(chloroamphenicol)アセチルトランスフェラーゼレポーター遺伝子の上流に脂質結合タンパク質aP2のエンハンサー/プロモーターを含んでいるキメラ遺伝子の発現を刺激すると報告された(Harris and Kletzien, 1994, Mol. Pharmacol. 45:439-445)。欠失分析により、ピオグリタゾンの応答性を担っている約30bpの領域が同定された。独自の研究において、この30bpのフラグメントは、PPREを含んでいることが示された(Tontonoz et al., 1994, Nucleic Acids Res. 22:5628-5634)。総合すれば、これらの研究は、チアゾリジンジオン類が、PPARとの相互作用を介して、転写レベルで遺伝子の発現をモジュレーションするという可能性を示唆したものであり、また、グルコース代謝と脂質代謝の相互関連性についての概念を強化するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0042】
3. 発明の要約
コレステロールを管理するのに用いられている種々の薬物について報告されている利点にもかかわらず、血中の脂質代謝異常、リポタンパク質、インスリン及び/又はグルコースレベルを調節するのに使用することができる医薬組成物及び治療法が依然として求められている。さらにまた、より安全で且つより効果的な、血清コレステロールを低下させる方法、HDL血清レベルを上昇させる方法、冠状動脈性心疾患を予防する方法、及び/又は、既に発症している疾患(例えば、限定するものではないが、アテローム性動脈硬化症、肥満症、糖尿病、並びに、脂質代謝及び/又は脂質レベルに影響される別の疾患など)を治療する方法が求められている。さらにまた、脂質を改善する別の治療計画と一緒に相乗作用を示すような方法で用いることができる医薬組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0043】
本発明は、パンテチン又はその誘導体と第二の活性物質又はその誘導体を含有している医薬組成物を包含する。該第二の活性物質としては、限定するものではないが、スタチン類、フィブラート類、ビグアニド類、グリタゾン類、スルホニル尿素類、脂質代謝異常を制御する低分子化合物(small dyslipidemic controlling compound)、及び、本発明の小ペプチド類、及び、それらの組合せなどを挙げることができる。
【0044】
本発明の医薬組成物は、コレステロール、脂質代謝異常及び関連疾患を治療、予防又は管理するのに有用であり、ここで、該関連疾患としては、限定するものではないが、以下に示すものを挙げることができる:心血管疾患;アテローム性動脈硬化症(artherosclerosis);卒中;末梢血管疾患;脂質代謝異常;リポタンパク質代謝異常(dyslipoproteinemia);再狭窄;グルコース代謝異常;アルツハイマー病;X症候群;ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体関連障害;敗血症;血栓性疾患;肥満症;膵炎;高血圧症;腎疾患;癌;炎症;炎症性筋疾患、例えば、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び結合組織炎など;性不能症;胃腸疾患;過敏性腸症候群;炎症性腸疾患;炎症性疾患、例えば、喘息、脈管炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、川崎病、ヴェーゲナー肉芽腫症、(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)及び自己免疫性慢性肝炎など;性不能症;関節炎、例えば、慢性関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ及び変形性関節症など;骨粗鬆症;軟組織リウマチ、例えば、腱炎;滑液包嚢炎;自己免疫疾患、例えば、全身性狼瘡及び紅斑性狼瘡など;強皮症;強直性脊椎炎;痛風;偽性痛風;インスリン非依存性糖尿病(NIDDM);敗血症性ショック;多嚢胞性卵巣疾患;高脂血症、例えば、家族性高コレステロール血症(FH)及び家族性複合型高脂血症(FCH)など;リポタンパクリパーゼ欠損症、例えば、高トリグリセリド血症、低αリポタンパク血症及び高コレステロール血症など;糖尿病に関連するリポタンパク質異常;肥満症に関連するリポタンパク質異常;並びに、アルツハイマー病に関連するリポタンパク質異常。
【0045】
本発明は、さらにまた、コレステロール、脂質代謝異常又は関連疾患を治療、予防又は管理する方法も包含し、ここで、該方法は、そのような治療、予防又は管理が必要な患者に、有効量のパンテチン又はその誘導体、及び、第二の活性物質又はその誘導体を投与することを含んでなる。
【0046】
本発明は、さらにまた、コレステロール、脂質代謝異常又は関連疾患を治療、予防又は管理する方法も包含し、ここで、該方法は、そのような治療、予防又は管理が必要な患者に、少なくとも30日間、有効量のパンテチン又はその誘導体、及び、第二の活性物質又はその誘導体を投与することを含んでなる。
【0047】
本発明は、さらに、パンテチン単独療法に関連する副作用を軽くするか又は回避する方法を包含し、ここで、該方法は、そのような副作用を軽くするか又は回避することが必要な患者にパンテチンと第二の活性物質の組合せの有効量を投与することを含んでなる。
【0048】
本発明は、さらに、第二の活性物質単独療法に関連する副作用を軽くするか又は回避する方法を包含し、ここで、該方法は、そのような副作用を軽くするか又は回避することが必要な患者にパンテチンと第二の活性物質の組合せの有効量を投与することを含んでなる。
【0049】
3.1 定義
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「患者」は、哺乳動物又は鳥のような動物を意味する。患者の例としては、限定するものではないが、ウシ、サル、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット又はヒトなどを挙げることができる。好ましい患者は、ヒトである。
【0050】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「ハロゲン」又は「ハロ」は、-F、-Cl、-Br、又は、-Iを意味する。
【0051】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「アルキル」は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の飽和非環状炭化水素を意味する。代表的な直鎖の飽和アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル及びn-デシルなどを挙げることができ;分枝鎖の飽和アルキルとしては、イソプロピル、s-ブチル、イソブチル、t-ブチル、イソペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルヘキシル、4,4-ジメチルヘキシル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、2-エチルヘキシル、3-エチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2-メチル-2-エチルペンチル、2-メチル-3-エチルペンチル、2-メチル-4-エチルペンチル、2-メチル-2-エチルヘキシル、2-メチル-3-エチルヘキシル、2-メチル-4-エチルヘキシル、2,2-ジエチルペンチル、3,3-ジエチルヘキシル、2,2-ジエチルヘキシル及び3,3-ジエチルヘキシルなどを挙げることができる。
【0052】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「アルケニル」は、2〜10個の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含んでいる直鎖又は分枝鎖の非環状炭化水素を意味する。代表的な直鎖及び分枝鎖の(C2-C10)アルケニルとしては、ビニル、アリル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブチレニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3-オクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、1-デセニル、2-デセニル及び3-デセニルなどを挙げることができる。
【0053】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「アルキニル」は、2〜10個の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含んでいる直鎖又は分枝鎖の非環状炭化水素を意味する。代表的な直鎖及び分枝鎖の(C2-C10)アルキニルとしては、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-メチル-1-ブチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、5-ヘキシニル、1-へプチニル、2-へプチニル、6-へプチニル、1-オクチニル、2-オクチニル、7-オクチニル、1-ノニニル、2-ノニニル、8-ノニニル、1-デシニル、2-デシニル及び9-デシニルなどを挙げることができる。
【0054】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「フェニル」は、-C6H5を意味する。フェニル基は、置換されていなくてもよいし、又は、1若しくは2の適切な置換基で置換されることもできる。
【0055】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「ベンジル」は、-CH2-フェニルを意味する。
【0056】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「本発明の組成物」は、パンテチン又はその誘導体と第二の活性物質を含有している組成物を示している。 本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「立体異性体的に純粋な(stereomerically pure)」は、化合物の1種類の立体異性体を含有し且つ該化合物の別の立体異性体は実質的に含んでいない組成物を意味する。例えば、1つのキラル中心を有する化合物の立体異性体的に純粋な組成物は、該化合物の逆のエナンチオマーは実質的に含有しない。2つのキラル中心を有する化合物の立体異性体的に純粋な組成物は、該化合物の別のジアステレオマーは実質的に含有しない。典型的な立体異性体的に純粋な化合物は、約80重量%を超える該化合物の1種の立体異性体を含有して、該化合物の別の立体異性体は約20重量%未満しか含まず、さらに好ましくは、約90重量%を超える該化合物の1種の立体異性体を含有して、該化合物の別の立体異性体は約10重量%未満しか含まず、さらに好ましくは、約95重量%を超える該化合物の1種の立体異性体を含有して、該化合物の別の立体異性体は約5重量%未満しか含まず、最も好ましくは、約97重量%を超える該化合物の1種の立体異性体を含有して、該化合物の別の立体異性体は約3重量%未満しか含まない。
【0057】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「エナンチオマー的に純粋な」は、立体異性体的に純粋な組成物又は化合物を意味する。エナンチオマー混合物及びジアステレオマー混合物は、キラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高性能液体クロマトグラフィー、該化合物のキラル塩複合体としての結晶化、又は、該化合物のキラル溶媒中における結晶化のような周知方法により該混合物の成分であるエナンチオマー又は立体異性体に分割することができる。さらにまた、エナンチオマー及びジアステレオマーは、ジアステレオマー的又はエナンチオマー的に純粋な、中間体、試薬及び触媒から、周知の不斉合成法により得ることもできる。
【0058】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「第二の活性物質」は、本発明に従い、パンテチン若しくはその誘導体と組み合わせるか及び/又は一緒に投与する化合物又は化合物の混合物を示している。第二の活性物質の例としては、限定するものではないが、スタチン類、フィブラート類、グリタゾン類、ビグアニド類、脂質代謝異常を制御する化合物(dyslipidemic controlling compound)、及び、本発明の小ペプチド類、並びに、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物及びプロドラッグ、及び、それらの組合せなどを挙げることができる。
【0059】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「第三の活性物質」は、パンテチン若しくはその誘導体及び第二の活性物質と組み合わせるか及び/又は一緒に投与する化合物又は化合物の混合物を示している。特定の第三の活性物質は、例えば、限定するものではないが、肝細胞毒性、筋障害、白内障又は横紋筋変性のような障害を軽減する。第三の活性物質の例としては、限定するものではないが、胆汁酸結合性樹脂;ナイアシン;ホルモン、並びに、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物及びプロドラッグ、及び、それらの組合せなどを挙げることができる。
【0060】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「製薬上許容される」は、動物、特にヒトにおける使用に関して、連邦政府の監督官庁若しくは州政府により認可されていることを意味するか、又は、米国薬局方若しくは別の一般に認められている薬局方に挙げられていることを意味する。用語「ビヒクル(vehicle)」は、本発明の化合物と一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤又は担体を意味する。そのような製薬用ビヒクルは、液体、例えば、水、及び、油、例えば、石油、動物若しくは植物に由来する油又は合成油、例えば、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱油及びゴマ油などである。該製薬用ビヒクルは、生理的食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ及び尿素などであることが可能である。さらに、補助剤、安定化剤、粘稠化剤、滑沢剤及び着色剤を使用することが可能である。患者に投与する場合、本発明の化合物及び組成物並びに製薬上許容されるビヒクルは、好ましくは、無菌である。本発明の化合物を静脈内投与する場合は、水が好ましいビヒクルである。食塩水並びにデキストロース水溶液及びグリセロール水溶液も、液体ビヒクルとして、特に、注射可能溶液用のビヒクルとして使用可能である。さらにまた、適切な製薬用ビヒクルには、賦形剤、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、イネ、穀粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール酸、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水及びエタノールなどがある。さらにまた、本発明の組成物には、必要に応じて、少量の湿潤剤若しくは乳化剤又はpH緩衝剤を含ませることが可能である。
【0061】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「製薬上許容される塩(塩類)」には、限定するものではないが、本発明化合物内に存在し得る酸性基又は塩異性基の塩などが包含される。本質的に塩基性である化合物は、種々の無機酸及び有機酸と極めて多種多様な塩を形成することが可能である。そのような塩基性化合物の製薬上許容される酸付加塩を調製するのに使用可能な酸は、非毒性の酸付加塩を形成する酸、即ち、製薬上許容されるアニオンを含んでいる塩を形成する酸である。そのような酸としては、限定するものではないが、硫酸、クエン酸、マレイン酸、酢酸、シュウ酸、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコンサン塩、グルカロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩(即ち, 1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))などを挙げることができる。さらにまた、アミノ部分構造を含んでいる本発明化合物も、上記で挙げた酸の他に、種々のアミノ酸を用いて製薬上許容される塩を形成することができる。本質的に酸性である本発明化合物は、種々の製薬上許容されるカチオンと一緒に塩基性塩を形成することができる。そのような塩の例には、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩などがあり、特に、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、カリウム塩及び鉄塩などを挙げることができる。
【0062】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「製薬上許容される溶媒和物」は、非共有結合分子間力により結合している化学量論的量又は非化学量論的量の溶媒をさらに含んでいる本発明の化合物又はその塩を意味する。好ましい溶媒は、揮発性で、非毒性である、及び/又は、ヒトに対しての微量投与が許容される溶媒である。用語「溶媒和物」には、水和物が包含される。水和物は、非共有結合分子間力により結合している化学量論的量又は非化学量論的量の水をさらに含んでいる本発明の化合物又はその塩を意味し、一水和物、二水和物、三水和物及び四水和物などを包含する。
【0063】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「製薬上許容されるプロドラッグ」は、化合物の誘導体であって、生物学的条件下(インビトロ又はインビボ)で、加水分解、酸化、又は、それ以外の反応により該化合物を生成し得る前記誘導体を意味する。プロドラッグの例としては、限定するものではないが、生加水分解性(biohydrolyzable)部分構造、例えば、生加水分解性アミド類、生加水分解性エステル類、生加水分解性カルバメート類、生加水分解性カルボネート類、生加水分解性ウレイド類、及び、生加水分解性ホスフェート類似体などを含んでいる化合物など挙げることができる。プロドラッグの別の例には、-NO部分構造、-NO2部分構造、-ONO部分構造及び-ON02部分構造を含んでいる化合物などがある。プロドラッグは、典型的には、周知方法、例えば、文献(1 Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery, 172-178, 949-982(Manfred E. Wolff ed., 5th ed. 1995) 及び Design of prodrugs(H. Bundgaard ed., Elselvier, New York 1985)に記述されている方法などを用いて調製することが可能である。
【0064】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「生加水分解性アミド」、「生加水分解性エステル」、「生加水分解性カルバメート」、「生加水分解性カルボネート」、「生加水分解性ウレイド」及び「生加水分解性ホスフェート」は、化合物の、それぞれ、アミド、エステル、カルバメート、カルボネート、ウレイド又はホスフェートを意味し、その際、これらは、(1)該化合物の生物学的活性を妨害はせずに、インビボにおいて、有利な特性(例えば、取り込み、作用の持続時間、又は、作用の発現時期など)を該化合物に付与し得る;又は、(2)生物学的に不活性であるが、インビボにおいて、生物学的に活性な該化合物に変換される。生加水分解性エステルの例としては、限定するものではないが、低級アルキルエステル類、低級アシルオキシアルキルエステル類(例えば、アセトキシルメチルエステル、アセトキシエチルエステル、アミノカルボニルオキシメチルエステル、ピバロイルオキシメチルエステル及びピバロイルオキシエチルエステルなど)、ラクトニルエステル類(例えば、フタリジルエステル及びチオフタリジルエステルなど)、低級アルコキシアシルオキシアルキルエステル類(例えば、メトキシカルボニルオキシメチルエステル、エトキシカルボニルオキシエチルエステル及びイソプロポキシカルボニルオキシエチルエステルなど)、アルコキシアルキルエステル類、コリンエステル類、及び、アシルアミノアルキルエステル類(例えば、アセトアミドメチルエステル)などを挙げることができる。生加水分解性アミドの例としては、限定するものではないが、低級アルキルアミド類、α-アミノ酸アミド類、アルコキシアシルアミド類、及び、アルキルアミノアルキル-カルボニルアミド類などを挙げることができる。生加水分解性カルバメートの例としては、限定するものではないが、低級アルキルアミン類、置換エチレンジアミン類、アミノ酸類、ヒドロキシアルキルアミン類、ヘテロ環アミン類、ヘテロ芳香族アミン類、及び、ポリエーテルアミン類などを挙げることができる。
【0065】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、用語「単独療法(monotherapy)」は、単一の薬物を別のどのような薬物とも併用することなく投与することを意味する。
【0066】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、化合物又は化学的部分構造について記述するのに使用される用語「置換(置換されている)」は、該化合物又は化学的部分構造の内の少なくとも1つの水素原子が第二の化学的部分構造で置き換えられていることを意味する。第二の化学的部分構造の例としては、限定するものではないが、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素及びヨウ素など);C1-C6の直鎖アルキル、分枝鎖アルキル又は環状のアルキル(例えば、メチル、エチル、ブチル、t-ブチル及びシクロブチルなど);ヒドロキシル;チオール;カルボン酸;エステル、アミド、シラン、ニトリル、チオエーテル、スタンナン、並びに、第一級、第二級及び第三級アミン(例えば、-NH2、-NH(CH3)、-N(CH3)2及び環状アミンなど)などを挙げることができる。好ましい第二の化学的部分構造は、塩素、ヒドロキシル、メトキシ、アミン、チオール及びカルボン酸である。
【0067】
本明細書内において、本発明化合物は、それらの化学構造及び/又は化学名により定義されている。化合物が化学構造と化学名の両方により言及されていて、その化学構造と化学名が相反する場合、化学構造をもって該化合物を同定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
4. 発明の詳細な説明
本発明は、部分的には、コレステロール、脂質代謝異常及び関連疾患の治療、予防又は管理において、パンテチン又はその誘導体と第二の活性物質を用いることが可能であるという考えに基づいている。理論による制限を受けるものではないが、コレステロール、脂質代謝異常及び関連疾患を治療、予防又は管理するのに用いられた場合、パンテチン及びその誘導体は、特定の別の化合物と相補的又は相乗作用的に作用し得ると考えられる。さらにまた、パンテチン又はその誘導体を用いて、特定の薬物(例えば、第二の活性物質)に関連する特定の副作用を軽減又は除去することが可能であると考えられる。さらにまた、特定の薬物(例えば、第二の活性物質)を用いて、パンテチン単独療法に関連する特定の副作用を軽減又は除去することが可能であると考えられる。さらにまた、パンテチン又はその誘導体を用いて、特定の薬物(例えば、第二の活性物質)に関連する副作用を逆転させることが可能であると考えられる。
【0069】
本発明の第一の実施形態は、パンテチン又はその誘導体と第二の活性物質を含んでいる医薬組成物を包含する。特定の第二の活性物質としては、限定するものではないが、スタチン類、フィブラート類、ビグアニド類、グリタゾン類、スルホニル尿素類、本発明の脂質代謝異常を制御する化合物(dyslipidemic compound)類、本発明のペプチド類及びそれらの組合せなどを挙げることができる。
【0070】
別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、さらに、第三の活性物質を含んでいる。第三の活性物質の例としては、限定するものではないが、胆汁酸結合性樹脂類、ナイアシン、ホルモン類、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ及びそれらの組合せなどを挙げることができる。
【0071】
本発明の別の実施形態は、脂質代謝異常又はコレステロール疾患(cholesterol disorder)を治療、予防又は管理する方法を包含し、ここで、該方法は、そのような治療、予防又は管理が必要な患者に、有効量のパンテチン又はその誘導体、及び、第二の活性物質を投与することを含んでなる。脂質代謝異常又はコレステロール疾患の例としては、限定するものではないが、以下のものを挙げることができる:心血管疾患、卒中、及び、末梢血管疾患;脂質代謝異常;リポタンパク質代謝異常;グルコース代謝異常;アルツハイマー病;X症候群;ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体関連障害;敗血症;血栓性疾患;肥満症;膵炎;高血圧症;腎疾患;癌;炎症;炎症性筋疾患、例えば、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎、及び、結合組織炎;性不能症;胃腸疾患;過敏性腸症候群;炎症性腸疾患;炎症性疾患、例えば、喘息、脈管炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、川崎病、ヴェーゲナー肉芽腫症、(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、及び、自己免疫性慢性肝炎;関節炎、例えば、慢性関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ、及び、変形性関節症;骨粗鬆症、軟組織リウマチ、例えば、腱炎;滑液包嚢炎;自己免疫疾患、例えば、全身性狼瘡及び紅斑性狼瘡;強皮症;強直性脊椎炎;痛風;偽性痛風;インスリン非依存性糖尿病;多嚢胞性卵巣疾患;高脂血症、例えば、家族性高コレステロール血症(FH)、家族性複合型高脂血症(FCH);リポタンパクリパーゼ欠損症、例えば、高トリグリセリド血症、低αリポタンパク血症、及び、高コレステロール血症;糖尿病に関連するリポタンパク質異常;肥満症に関連するリポタンパク質異常;並びに、アルツハイマー病に関連するリポタンパク質異常。
【0072】
本発明の別の実施形態は、脂質代謝異常又はコレステロール疾患を治療、予防又は管理する方法を包含し、ここで、該方法は、そのような治療、予防又は管理が必要な患者に、少なくとも30日間、有効量のパンテチン又はその誘導体、及び、第二の活性物質を投与することを含んでなり、ここで、該第二の活性物質は、スタチン、フィブラート、グリタゾン、ビグアニド、スルホニル尿素、脂質代謝異常を制御する化合物、又は、本発明のペプチド、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である。
【0073】
本発明の別の実施形態は、パンテチン単独療法に関連する副作用を軽くするか又は回避する方法を包含し、ここで、該方法は、そのような副作用を軽くするか又は回避することが必要な患者にパンテチンと第二の活性物質の組合せの有効量を投与することを含んでなり、その際、該第二の活性物質は、スタチン、フィブラート、グリタゾン、ビグアニド、スルホニル尿素、脂質代謝異常を制御する化合物、又は、本発明のペプチド、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である。
【0074】
本発明の別の実施形態は、第二の活性物質単独療法に関連する副作用を軽くするか又は回避する方法を包含し、ここで、該方法は、そのような副作用を軽くするか又は回避することが必要な患者にパンテチンと第二の活性物質の組合せの有効量を投与することを含んでなり、その際、該第二の活性物質は、スタチン、フィブラート、グリタゾン、ビグアニド、スルホニル尿素、脂質代謝異常を制御する化合物、又は、本発明の小ペプチド、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である。
【0075】
特定的な副作用としては、限定するものではないが、肝細胞毒性、筋障害、白内障、横紋筋変性、生命にかかわる心室性不整脈、心不全、心房細動、心房粗動、静脈性鬱血、浮腫、呼吸困難、起坐呼吸、心臓性喘息、心悸亢進、高血圧症、低血圧症、及び、前胸部の窮迫若しくは衰弱(precordial distress or weakness)などを挙げることができる。
【0076】
4.1 パンテチン及びその誘導体
パンテチンは、パンテテインのジスルフィド形態である。パンテテインは、「2,4-ジヒドロキシ-N-[2-(2-メルカプト-エチルカルバモイル)-エチル]-3,3-ジメチル-ブチルアミド」の化学名を有しているが、これは、以下に示されている立体異性体形態で存在することができる。
【化2】

【0077】
パンテテインの二量体であるパンテチンは、従って、以下に示されている立体異性体形態で存在することができる。
【化3】

【0078】
ビタミンB5としても知られているパントテン酸は、以下に示されている2種類の立体異性体形態で存在することができる。
【化4】

【0079】
ホスホパンテテインは、以下に示されている立体異性体形態で存在することができる。
【化5】

【0080】
本明細書で使用されている場合、特に別途示されていない限り、表現「パンテチン又はその誘導体」には、限定するものではないが、D,D-パンテチン、D,L-パンテチン、L,L-パンテチン、L,D-パンテチン、D-パンテテイン、L-パンテテイン、D-ホスホパンテテイン、L-ホスホパンテテイン、D-パントテン酸、L-パントテン酸、それらの混合物、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物が包含される。
【0081】
本発明の一実施形態において、パンテチン又はその誘導体は、立体異性体的に純粋である。本発明の別の実施形態において、パンテチン又はその誘導体は、ジアステレオマー混合物又はラセミ混合物である。本発明の特定の実施形態において、用語「パンテチン又はその誘導体」は、D,D-パンテチンを包含しない。
【0082】
4.2 第二の活性物質
コレステロール、脂質代謝異常又は関連疾患の治療、予防又は管理における使用に関し、第二の活性物質をパンテチン又はその誘導体と組み合わせて使用することが可能であると考えられている。理論による制限を受けるものではないが、コレステロール、脂質代謝異常及び関連疾患を治療、予防又は管理するのに用いられた場合、第二の活性物質は、パンテチン及びその誘導体と相補的又は相乗作用的に作用し得ると考えられる。
【0083】
4.2.1 スタチン類
スタチンは、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A「HMG-CoA」(これは、コレステロール生合成における初期の律速段階を触媒する酵素である)を競合的に阻害する薬物である。Hebert et al., JAMA 1997, 278: 313-21。パンテチン又はその誘導体をスタチンと組み合わせて用いることにより、典型的には、別の種類のコレステロール低下薬に比較して、より効果的に、悪玉「LDL」コレステロールさせることが可能であると考えられている。この組合せは、さらにまた、トリグリセリドを低下させることも可能であり、炎症を軽減することも可能であり、また、保護的なHDLコレステロールを上昇させることも可能である。上記組合せは、付加的な治療効果も有し得ると考えられる。例えば、上記組合せは、血圧を低下させること;例えば「平滑筋の増殖」を低減することにより、心疾患を防止すること;心臓発作を低減すること;血小板凝集を低減すること;及び、卒中を低減することが可能であり、また、「末梢動脈疾患」(足へと通じる動脈の「閉塞」からなる疾患)を低減することも可能である。
【0084】
本発明にかかるスタチン類の例としては、限定するものではないが、メバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、ペントスタチン(Nipent(登録商標))、ニスタチン、ロバスタチン(Mevacor(登録商標))、シンバスタチン(Zocor(登録商標))、プラバスタチン(Pravachol(登録商標))、フルバスタチン(Lescol(登録商標))、アトロバスタチン(Lipitor(登録商標))、及び、セリバスタチン(Baycol(登録商標)、及び、それらの組合せ、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物などを挙げることができる。さらにまた、本発明の組成物及び方法において使用するのに適切なスタチン類は、米国特許第4,681,893号;米国特許第5,273,995号;米国特許第5,356,896号;米国特許第5,354,772号;米国特許第5,686,104号;米国特許第5,969,156号;及び、米国特許第6,126,971号にも開示されている。前記特許文献の各々は、参照により、その全体を本明細書に組み入れる。スタチン類の中には、ラクトン(例えば、シンバスタチン)のように、不活性形態で存在しているものがあるので、本発明は、その活性形態(例えば、b-ヒドロキシ酸形態)の使用を包含する。以下の文献を参照されたい:Physicians' Desk Reference, 54th Ed.(2000) pp. 1917-1920。
【0085】
本発明の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、メバスタチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0086】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、ロスバスタチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0087】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、ペントスタチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0088】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、ニスタチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0089】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、ロバスタチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0090】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、プラバスタチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0091】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、フルバスタチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0092】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、ピタバスタチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0093】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、セリバスタチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0094】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、シンバスタチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。本発明の特別の実施形態において、パンテチン又はその誘導体は、D,D-パンテチンではない。
【0095】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、アトロバスタチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。本発明の特別の実施形態において、パンテチン又はその誘導体は、D,D-パンテチンではない。
【0096】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、アトロバスタチンの薬理学的に活性な代謝産物又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体若しくはプロドラッグを含んでいる。
【0097】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、シンバスタチンの薬理学的に活性な代謝産物又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体若しくはプロドラッグを含んでいる。
【0098】
4.2.2 フィブラート類
フィブラート類又はフィブリン酸(fibric acid)誘導体は、その主要な作用は血清トリグリセリドを低下させることではあるが、それらは、LDL-コレステロールを低減し且つHDL-コレステロールを上昇させる傾向も有しているという点において、それらは、広いスペクトルを有する脂質調節剤(lipid-modulating agent)であると見なされる。パンテチン又はその誘導体とフィブラートを組み合わせて使用することで、HDL-コレステロールが低いか又はトリグリセリドが上昇しているヒトにおいて、体内を循環するトリグリセリド高含有リポタンパク質の化学的分解(即ち、異化作用)を促進することにより、冠状動脈性心疾患事象のリスクを低減し得ると考えられている。
【0099】
フィブラート類としては、限定するものではないが、ベザフィブラート、シプロフィブラート、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、それらの組合せ、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物などを挙げることができる。本発明の組成物中に含ませるのに適しているか又は本発明の方法で投与するのに適しているフィブラート類は、米国特許第4,895,762号;米国特許第6,074,670号;及び、米国特許第6,277,405号に開示されている。前記特許の各々は、その全体を本明細書中に組み入れる。一実施形態において、本発明の方法及び組成物は、ベザフィブラート又はフェノフィブラートを含まない。
【0100】
フィブラート類の投与に関連する副作用には、限定するものではないが、筋炎様症候群(myositis-like syndrome)、特に、腎機能に障害を有する患者における筋炎様症候群などをある。さらにまた、フィブラートをスタチンと組み合わせることにより、患者によっては、筋肉に対する影響(特に、横紋筋変性)のリスクが増大する場合がある。横紋筋変性は、筋肉に損傷を与える希な症状である。筋肉が損傷を受けた結果として、筋肉細胞の内容物が放出されて血流中に入るが、これは、腎臓及び他の器官に重大な損傷を引き起こす可能性がある。
【0101】
本発明の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、ベザフィブラート又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0102】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、シプロフィブラート又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0103】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、フェノフィブラート又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0104】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、ゲムフィブロジル又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0105】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、クロフィブラート又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0106】
4.2.3 ビグアニド類
本発明の組成物及び方法で使用するためのビグアニド類としては、限定するものではないが、メトホルミン、フェンホルミン、ブホルミン、それらの組合せ、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物などを挙げることができる。さらにまた、本発明の組成物又は方法で使用するのに適しているビグアニド類は、米国特許第6,303,146号にも開示されている。前記特許は、参照によりその全体を本明細書に組み入れる。
【0107】
パンテチン又はその誘導体とビグアニドを組み合わせて使用することで、肝臓及び筋肉内のインスリン感受性が増大することにより、血糖のコントロールが改善されると考えられている。
【0108】
さらに、パンテチン又はその誘導体とビグアニドを組み合わせて使用することで、心血管の危険因子(例えば、限定するものではないが、脂質代謝異常、プラスミノーゲン活性化因子阻害物質1の上昇したレベル、別の線維素溶解の異常、高インスリン血症及びインスリン抵抗性など)を低減するか又は回避することができると考えられている。また、パンテチン又はその誘導体とビグアニドを組み合わせて使用することは、II型糖尿を治療するための効果的で安全な治療薬であると考えられている。
【0109】
本発明の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、メトホルミン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0110】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、フェンホルミン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ、若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0111】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、ブホルミン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0112】
4.2.4 グリタゾン類
グリタゾン類としては、限定するものではないが、5-((4-(2-(メチル-2-ピリジニルアミノ)エトキシ)-フェニル)メチル)-2,4-チアゾリジンジオン、トログリタゾン、ピオグリタゾン、シグリタゾン、WAY-120,744、エングリタゾン、AD 5075、ダルグリタゾン(darglitazone)、ロシグリタゾン、それらの組合せ、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物などを挙げることができる。本発明の組成物又は方法で使用するのに適しているグリタゾン類は、米国特許第4,687,777号;米国特許第5,002,953号;米国特許第5,741,803号;米国特許第5,965,584号;米国特許第6,150,383号;米国特許第6,150,384号;米国特許第6,166,042号;米国特許第6,166,043号;米国特許第6,172,090号;米国特許第6,211,205号;米国特許第6,271,243号;米国特許第6,288,095号;米国特許第6,303,640号;及び、米国特許第6,329,404号に開示されている。前記特許は、各々、その全体を本明細書に組み入れる。パンテチン又はその誘導体とグリタゾンを組み合わせて使用することで、グルコースの筋肉内への取り込みを増大させることが可能であり、また、内因性のグルコース産生を低下させることが可能であると考えられている。
【0113】
本発明の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、5-((4-(2-(メチル-2-ピリジニルアミノ)エトキシ)-フェニル)メチル)-2,4-チアゾリジンジオ又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0114】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、トログリタゾン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0115】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、ピオグリタゾン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0116】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、シグリタゾン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0117】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、WAY-120,744又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0118】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、エングリタゾン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0119】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、AD 5075又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0120】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、ダルグリタゾン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0121】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、ロシグリタゾン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0122】
4.2.5 スルホニル尿素類
パンテチン又はその誘導体及びスルホニル尿素又はその誘導体を含んでいる組成物は、膵臓からのインスリンの放出量を増大させることが可能であり、また、該ホルモンの肝クリアランスを低減させることにより、インスリンレベルを増進することが可能であると考えられている。
【0123】
本発明の組成物又は方法で使用するためのスルホニル尿素系薬物としては、限定するものではないが、グリソキセピド(glisoxepid)、グリブリド、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリボルヌリド(glibornuride)、トルブタミド、トラザミド、グリピジド、グリクラジド、グリキドン、グリヘキサミド(glyhexamide)、フェンブタミド(phenbutamide)、トルシクラミド(tolcyclamide)、それらの組合せ、又は、それらの 製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物などを挙げることができる。
【0124】
スルホニル尿素類の副作用には、血糖量低下(低血糖症)、体重増加、及び、サルファ薬に対してアレルギーを有するヒトにおけるアレルギー反応などがある。
【0125】
本発明の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、グリソキセピド又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0126】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、グリブリド又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0127】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、アセトヘキサミド又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0128】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、クロルプロパミド又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0129】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、グリボルヌリド又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0130】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、トルブタミド又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0131】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、トラザミド又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0132】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、グリピジド又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0133】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、グリクラジド又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0134】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、グリキドン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0135】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、グリヘキサミド又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0136】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、フェンブタミド又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0137】
本発明の別の特定の方法及び医薬組成物は、パンテチン又はその誘導体、及び、トルシクラミド又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる。
【0138】
4.2.6 脂質代謝異常を制御する化合物類
本発明の方法及び組成物は、さらにまた、下記一般式で表される脂質代謝異常を制御する低分子化合物並びにそれらの製薬上許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ、エナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体及びそれらの混合物の使用も包含し得る。
【化6】

【0139】
上記式中、
(a) 各Zは独立して、CH2、CH=CH、又は、フェニルであり、その際、各mは独立して、1〜9の範囲の整数であるが、Zがフェニルである場合は、それに関連しているmは1であり;
(b) Gは、-(CHOH)、-S、-S(O)、O、-C(O)、(CH2)x[ここで、xは、2、3又は4である]、CH2CH=CHCH2、CH=CH、CH2-フェニル-CH2、又は、フェニルであり;
(c) W1及びW2は、独立して、L、V、C(R1)(R2)-(CH2)c-C(R3)(R4)-(CH2)n-Y、又は、C(R1)(R2)-(CH2)c-Vであり、その際、cは、1又は2であり、nは、0〜4の範囲の整数であり;
(d) 各R1又は各R2は、独立して、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、フェニル、若しくは、ベンジルであるか、又は、W1とW2の一方若しくは両方がC(R1)(R2)-(CH2)c-C(R3)(R4)-(CH2)n-Yである場合は、R1とR2が、両方ともHであることで、メチレン基を形成することができ;
(e) R3は、H、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C1-C6)アルコキシ、フェニル、ベンジル、Cl、Br、CN、NO2、又は、CF3であり;
(f) R4は、OH、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C1-C6)アルコキシ、フェニル、ベンジル、Cl、Br、CN、NO2、又は、CF3であり;
(g) Lは、C(R1)(R2)-(CH2)n-Yであり;
(h) Vは、
【化7】

【0140】
であり;
(i) 各Yは独立して、OH、COOH、CHO、COOR5、SO3H、
【化8】

【0141】
[ここで、
(i) R5は、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、フェニル、又は、ベンジルであり、また、R5は、置換されていないか又は1つ以上のハロ基、OH基、(C1-C6)アルコキシ基又はフェニル基で置換されており;
(ii) 各R6は独立して、H、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、又は、(C2-C6)アルキニルであり、また、各R6は独立して、置換されていないか又は1つ若しくは2つのハロ基、OH基、(C1-C6)アルコキシ基又はフェニル基で置換されており;
及び、
(iii) 各R7は独立して、H、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、又は、(C2-C6)アルキニルである]
であり;
(j) 各Qは独立して、C、CH、S、又は、Oであり;
及び、
(k) 各Tは独立して、電子対、-H、-OH、又は、-(=O)である。
【0142】
本発明の組成物又は方法で使用するのに適する脂質代謝異常を制御する化合物は、米国特許出願 No.09/976,899号(出願日2001年10月11日);米国特許出願 No.09/976,867号(出願日2001年10月11日);米国特許出願 No.09/976,898号(出願日2001年10月11日);及び、米国特許出願 No.09/976,938号(出願日2001年10月11日)に開示されている。前記特許は、各々、参照によりその全体を本明細書に組み入れる。
【0143】
さらに、本発明の組成物及び方法は、パンテチン又はその誘導体、及び、シブトラミン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含むことも可能である。シブトラミンの化学名は、[N-1-[1-(4-クロロフェニル)シクロブチル]-3-メチルブチル]-N,N-ジメチルアミンである。本発明は、シブトラミンのラセミ形態及び立体異性体的に純粋な形態を包含する。シブトラミンは、米国特許第4,552,828号、米国特許第4,746,680号、米国特許第4,806,570号、米国特許第4,929,629号、米国特許第4,871,774号、米国特許第4,939,175号、及び、米国特許第5,436,272号に開示されている。前記特許は、各々、その全体を本明細書に組み入れる。
【0144】
4.2.7 本発明の小ペプチド類
本発明のペプチドは、米国特許第6,004,925号に記述されているように、一般に、脂質の存在下で、両親媒性α-ヘリックスを形成することができる。前記特許の全開示内容は、参照により本明細書に組み入れる。それらの主な特徴は、15〜29アミノ酸残基、好ましくは、22アミノ酸残基から構成されている「コア(core)」ペプチドであるか、又は、該ペプチド内の少なくとも1つのアミド結合が置換アミド、アミドのイソステア(isostere)又はアミドミメティック(amide mimetic)で置き換えられている該ペプチドの類似体である。
【0145】
本発明のペプチド類(又は、その類似体)は、以下の構造式(II):
【化9】

【0146】
[式中、
X1は、Pro(P)、Ala(A)、Gly(G)、Gln(Q)、Asn(N)、Asp(D)、又は、D-Pro(p)であり;
X2は、脂肪族アミノ酸であり;
X3は、Leu(L)、又は、Phe(F)であり;
X4は、酸性アミノ酸であり;
X5は、Leu(L)、又は、Phe(F)であり;
X6は、Leu(L)、又は、Phe(F)であり;
X7は、親水性アミノ酸であり;
X8は、酸性アミノ酸、又は、塩基性アミノ酸であり;
X9は、Leu(L)、又は、Gly(G)であり;
X10は、Leu(L)、Trp(W)、又は、Gly(G)であり;
X11は、親水性アミノ酸であり;
X12は、親水性酸であり;
X13は、Gly(G)、又は、脂肪族アミノ酸であり;
X14は、Leu(L)、Trp(W)、Gly(G)、又は、Nalであり;
X15は、親水性アミノ酸であり;
Xl6は、疎水性アミノ酸であり;
Xl7は、疎水性アミノ酸であり;
Xl8は、塩基性アミノ酸、Gln(Q)、又は、Asn(N)であり;
X19は、塩基性アミノ酸、Gln(Q)、又は、Asn(N)であり;
X20は、塩基性アミノ酸であり;
X21は、脂肪族アミノ酸であり;
及び、
X22は、塩基性アミノ酸である]
で表されるもの、及び、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物又はプロドラッグである。
【0147】
構造(I)の上記ペプチドにおいて、アミノ酸残基Xn間の記号「−」は、一般に、骨格を構成する連結基を示している。従って、記号「−」は、通常、ペプチド結合又はアミド結合(-C(O)NH-)を表している。しかしながら、本発明が、1つ以上のアミド結合が場合によりアミド以外の結合、好ましくは、置換アミド又はアミドのイソステアで置き換えられているペプチド類似体を意図していることは理解されるべきである。従って、構造(I)において、種々のXn残基が、概して、アミノ酸として記載され、且つ、本発明の好ましい実施形態がペプチドにより例示されているが、当業者は、非アミド結合を有する実施形態では、本明細書において用いられている用語「アミノ酸」又は「残基」がアミノ酸の側鎖に構造的に類似している基を有する別の二官能性部分構造を意味することを認識するであろう。
【0148】
置換アミドには、限定するものではないが、一般的に、式 -C(O)NR- [式中、Rは、(C1〜C6)アルキル、置換されている(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルケニル、置換されている(C1〜C6)アルケニル、(C1〜C6)アルキニル、置換されている(C1〜C6)アルキニル、(C5〜C20)アリール、置換されている(C5〜C20)アリール、(C6〜C26)アルカリール(alkaryl)、置換されている(C6〜C26)アルカリール、5〜20員のヘテロアリール、置換されている5〜20員のヘテロアリール、6〜26員のアルキルヘテロアリール(alkheteroaryl)及び置換されている6〜26員のアルキルヘテロアリールである]で表される基などがある。
【0149】
アミドのイソステア(isostere)には、限定するものではないが、一般的に、-CH2NH-、-CH2S-、-CH2CH2-、-CH=CH-(シス,及び,トランス)、-C(O)CH2-、-CH(OH)CH2-、及び、-CH2SO-などがある。そのような非アミド結合を有する化合物及びそのような化合物の調製方法は、当技術分野においては周知である(例えば、以下の文献を参照されたい: Spatola, March 1983, Vega Data Vol.1, Issue 3; Spatola, 1983, "Peptide Backbone Modifications" In: Chemistry and Biochemistry of Amino Acids Peptides and Proteins, Weinstein,ed., Marcel Dekker, New York, p. 267(general review); Morley, 1980, Trends Pharm. Sci. 1: 463-468; Hudson et al., 1979, Int. J. Prot. Res. 14:177-185(-CH2NH-, -CH2CH2-); Spatola et al., 1986, Life Sci. 38:1243-1249(-CH2-S); Hann, 1982, J. Chem. Soc. Perkin Trans. I. 1:307-314(-CH=CH-, シス及びトランス); Almquist et al., 1980, J. Med.Chem. 23:1392-1398(-COCH2-); Jennings-White et al., Tetrahedron. Lett. 23:2533(-COCH2-); European Patent Application EP 45665(1982)CA 97:39405(-CH(OH)CH2-); Holladay et al., 1983, Tetrahedron Lett. 24:4401-4404(-C(OH)CH2-); 及び、Hruby, 1982, Life Sci. 31:189-199(-CH2-S-);これら文献の各々は、本明細書内に組み入れる)。
【0150】
本発明の組成物に含有させるか又は本発明の方法で投与するのに適している本発明の小ペプチドは、米国特許第6,004,925号に開示されている。この特許は、参照によりその全体を本明細書に組み入れる。
【0151】
4.3 第三の活性物質
本発明の特定の実施形態において、1種以上の追加的な活性物質、又は、第三の活性物質を、パンテチン又はその誘導体及び第二の活性物質と組み合わせて使用する。好ましい第三の活性物質は、パンテチン又は第二の活性物質に関連する副作用の重症度を防止又は軽減する。
【0152】
特定の第三の活性物質は、胆汁酸結合性樹脂である。パンテチン又はその誘導体及び第二の活性物質と組み合わせて使用するための胆汁酸結合性樹脂には、限定するものではないが、コレスチラミン及びコレスチポール塩酸塩などがある。
【0153】
さらなる第三の活性物質は、ナイアシン又はニコチン酸である。
【0154】
さらなる第三の活性物質は、RXR作動薬である。本発明の化合物と組み合わせて使用するためのRXR作動薬には、限定するものではないが、LG 100268、LGD 1069、9-シスレチノイン酸、2-(1-(3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフチル)-シクロプロピル)-ピリジン-5-カルボン酸、又は、4-((3,5,5,8,8-ペンタメチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフチル)2-カルボニル)-安息香酸などがある。
【0155】
さらなる第三の活性物質は、抗肥満薬である。本発明の化合物と組み合わせて使用するための抗肥満薬には、限定するものではないが、β-アドレナリン受容体作動薬、好ましくは、β-3 受容体作動薬、フェンフルラミン、デキスフェンフルラミン、シブトラミン、ブプロピオン、フルオキセチン、及び、フェンテルミンなどがある。
【0156】
さらなる第三の活性物質は、ホルモン類である。本発明の化合物と組み合わせて使用するためのホルモンには、限定するものではないが、甲状腺ホルモン、エストロゲン及びインスリンなどがある。好ましいインスリンとしては、限定するものではないが、注射用インスリン、経皮用インスリン(transdermal insulin)、吸入用インスリン(inhaled insulin)、又は、それらの任意の組合せなどを挙げることができる。インスリンに代わるものとして、インスリン誘導体、インスリン分泌促進薬、インスリン感作物質又はインスリン疑似薬(mimetic)を使用し得る。本発明の化合物と組み合わせて使用するためのインスリン分泌促進薬としては、限定するものではないが、ホルスコリン、ジブチリル cAMP、又は、イソブチルメチルキサンチン(IBMX)などを挙げることができる。
【0157】
さらなる第三の活性物質は、チロホスチン(tyrophostine)又はその類似体である。本発明の化合物と組み合わせて使用するためのチロホスチンとしては、限定するものではないが、チロホスチン 51などを挙げることができる。
【0158】
さらなる第三の活性物質は、α-グルコシダーゼ阻害薬である。本発明の化合物と組み合わせて使用するためのα-グルコシダーゼ阻害薬としては、限定するものではないが、アカルボース及びミグリトールなどを挙げることができる。
【0159】
さらなる第三の活性物質は、アポA-I作動薬である。一実施形態において、アポA-I作動薬は、アポA-Iのミラノ形態(Milano form)(アポA-IM)である。この実施形態の好ましい態様においては、本発明化合物と同時に投与するためのアポA-IMは、米国特許第5,721,114号(Abrahamsen)に記載されている方法により調製する。さらに好ましい実施形態において、アポA-I作動薬は、ペプチド作動薬(peptide agonist)である。この実施形態の好ましい態様においては、本発明化合物と同時に投与するためのアポA-Iペプチド作動薬は、米国特許第6,004,925号又は米国特許第6,037,323号(Dasseux)に記載されているペプチドである。前記特許の各々は、参照により本明細書に組み入れる。
【0160】
さらなる第三の活性物質は、アポリポタンパク質E(アポE)である。この実施形態の好ましい態様においては、本発明化合物と同時に投与するためのアポEは、米国特許第5,834,596号(Ageland)に記載されている方法により調製する。前記特許は、参照により本明細書に組み入れる。
【0161】
さらなる第三の活性物質は、HDL上昇薬(HDL-raising drug);HDL増強薬(HDL enhancer);又は、アポリポタンパク質A-I、アポリポタンパク質A-IV及び/若しくはアポリポタンパク質遺伝子の調節薬である。
【0162】
さらなる第三の活性物質は、抗高血圧薬である。本発明化合物と組み合わせて使用するための抗高血圧薬としては、限定するものではないが、β-遮断薬、アセチルコリンエステラーゼ(ACE)阻害薬、又は、アンジオテンシンII受容体遮断薬などを挙げることができる。特定の抗高血圧薬は、ロサルタンである。
【0163】
上記第三の活性物質の有効な量は、当業者にはよく知られている。しかしながら、該第三の活性物質の最適の有効量範囲を決定することは、当業者の範囲内である。
【0164】
4.3.1 心血管薬
さらなる第三の活性物質には、限定するものではないが、心血管薬も包含される。心血管疾患を予防又は治療するために、本発明化合物と組み合わせて使用するための心血管薬としては、限定するものではないが、末梢性抗アドレナリン作動薬(peripheral antiadrenergic drug)、中枢性抗高血圧薬(例えば、メチルドーパ、メチルドーパHCl)、抗高血圧性直接血管拡張薬(例えば、ジアゾキシド、ヒドララジンHCl)、レニン-アンギオテンシン系に作用する薬物、末梢血管拡張薬、フェントラミン、抗狭心症薬、強心配糖体、強心血管拡張薬(inodilator)(例えば、アムリノン、ミルリノン、エノキシモン、フェノキシモン(fenoximone)、イマゾダン(imazodan)、スルマゾール(sulmazole))、抗脂質代謝異常薬(antidysrhythmic drug)、カルシウム遮断薬、ラニチン(ranitine)、ボセンタン、及び、レズリンなどを挙げることができる。
【0165】
4.3.2 抗癌薬
さらなる第三の活性物質には、限定するものではないが、放射線による治療又は1種以上の化学療法薬と一緒に投与される薬物などがある。放射線処理に関しては、照射は、ガンマ線又はX線であることが可能である。放射線療法の一般的な概説に関しては、以下の文献を参照されたい: Hellman, Chapter 12: Principles of Radiation Therapy Cancer, in: Principles and Practice of Oncology, DeVita et al., eds., 2nd. Ed., J.B. Lippencott Company, Philadelphia。有用な化学療法薬には、メトトレキセート、タキソール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシ尿素、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソ尿素、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルビジン(procarbizine)、エトポシド、カンパテシン(campathecin)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、アスパラギナーゼ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル及びドキセタキセルなどがある。特定の実施形態において、付加的な第三の活性物質は、さらに、1種以上の化学療法薬を含むか、及び/又は、放射線療法と一緒に投与される。
【0166】
4.4 医薬組成物及び単位投与形態
医薬組成物は、個々の単位投与形態の調製において用いることが可能である。従って、本発明の医薬組成物及び投与形態は、本明細書に開示した活性成分(例えば、パンテチン又はその誘導体、又は、1種以上の第二の活性物質)を含有する。本発明の医薬組成物及び投与形態は、さらに、1種以上の賦形剤を含むことが可能である。
【0167】
さらにまた、本発明の医薬組成物及び投与形態は、1種以上の付加的な活性成分も含有することが可能である。場合による付加的な活性成分の例は、本明細書に開示されている「第三の活性成分」である(例えば、節4.3を参照されたい)。
【0168】
本発明の単位投与形態は、患者に対して、経口投与、粘膜投与(mucosal administration)(例えば、鼻腔内投与、舌下投与、膣内投与、口腔内投与又は直腸内投与)、非経口投与(例えば、皮下投与、静脈内投与、ボーラス注射、筋肉内投与又は動脈内投与)、又は、経皮投与するのに適している。投与形態の例としては、限定するものではないが:錠剤;キャプレッツ剤;カプセル剤、例えば、軟質弾性ゼラチンカプセル剤;カシェ剤;トローチ剤;ドロップ剤(lozenge);分散液剤;坐剤;軟膏剤;パップ剤;ペースト剤;散剤;包帯剤;クリーム剤;硬膏剤;溶液剤;貼付剤;エーロゾル剤(例えば、鼻内噴霧又は吸入器);ゲル剤;患者に対して経口投与又は粘膜投与するのに適している液体投与形態、例えば、懸濁液剤(例えば、水性若しくは非水性懸濁液剤、水中油型エマルション剤、又は、油中水型エマルション剤)、溶液剤、及び、エリキシル剤;患者に対して非経口投与するのに適している液体投与形態;並びに、再構成させることにより患者に対して非経口投与するのに適している液体投与形態を提供することが可能な無菌固体(例えば、結晶質固体又は非晶質固体)などを挙げることができる。
【0169】
本発明の投与形態の組成、形状及び型は、典型的には、それらの用途に応じて変わる。例えば、疾患の急性期治療において使用される投与形態は、同じ疾患の長期間にわたる治療において使用される投与形態に比較して多量の1種以上の活性成分を含み得る。同様に、非経口投与形態は、同じ疾患の治療において使用される経口投与形態に比較して少量の1種以上の活性成分を含み得る。本発明により包含される特定の投与形態が互いに変化する上記様式及び別の様式は、当業者には容易に理解されるであろう。例えば、以下の文献を参照されたい: Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing, Easton PA(1990)。
【0170】
典型的な医薬組成物及び投与形態は、1種以上の賦形剤を含んでいる。適切な賦形剤は調剤の技術分野の当業者にはよく知られており、適切な賦形剤の非限定的な例は、本明細書に挙げられている。特定の賦形剤が、医薬組成物又は投与形態に混入させるのに適しているかどうかは、当技術分野でよく知られている種々の要件(例えば、該投与形態を患者に投与する方法などがあるが、これに限定されない)に依存する。例えば、錠剤のような経口投与形態は、非経口投与形態での使用には適さない賦形剤を含有し得る。特定の賦形剤の適合性は、該投与形態中の特定の活性成分にも依存し得る。例えば、活性成分の中には、ラクトースのようなある種の賦形剤により分解が加速され得るか、又は、水に接触することで分解が加速され得るものもある。第一級アミン又は第二級アミンを含んでいる活性成分(例えば、パンテチン)は、上記のような加速分解に対して特に感受性である。従って、本発明は、ラクトース、別の単糖若しくは二糖を、たとえ含むとしても僅かしか含まない医薬組成物及び投与形態を包含する。本明細書で使用されている場合、用語「ラクトース非含有(lactose-free)」は、ラクトースがたとえ存在するとしても、その量が、活性成分の分解速度を実質的に増大させるには不充分であることを意味する。
【0171】
本発明のラクトース非含有組成物は、当技術分野でよく知られていて、例えば、米国薬局方(USP)25-NF20(2002)に挙げられている賦形剤を含有し得る。一般に、ラクトース非含有組成物は、活性成分、結合剤/充填剤、及び、滑沢剤を、製薬上適合し且つ製薬上許容される量で含有する。好ましいラクトース非含有投与形態は、活性成分、微結晶性セルロース、プレゼラチン化デンプン及びステアリン酸マグネシウムを含有している。
【0172】
化合物の中には水によって分解が促進され得るものがあるので、本発明は、さらに、活性成分を含有する無水医薬組成物及び無水投与形態を包含する。貯蔵寿命又は製剤の経時的安定性などのような特性を決定する目的で、長期貯蔵をシミュレートする手段として、例えば、水(例えば、5%)を添加することは、製薬の技術分野では広く受け入れられている。例えば、以下の文献を参照されたい: Jens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 2d. Ed., Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp. 379-80。実際、幾つかの化合物は、水及び熱により分解が加速される。従って、製剤に及ぼす水の影響は極めて重大であり得る。それは、製剤の製造、取扱い、包装、貯蔵、出荷及び使用に際して、通常、水分及び/又は湿気に接触するからである。
【0173】
本発明の無水医薬組成物及び無水投与形態は、水分を含まないか又は水分含有量が少ない成分と、水分若しくは湿気が少ない条件を用いることにより調製することが可能である。製造、包装及び/又は貯蔵に際して水分及び/又は湿気と実質的に接触することが予期される場合は、第一級アミン又は第二級アミンを含んでいる少なくとも1種の活性成分とラクトースを含有する医薬組成物及び投与形態は、好ましくは、無水である。
【0174】
無水医薬組成物は、その無水性が維持されるように、調製及び貯蔵されるべきである。従って、無水組成物は、好ましくは、水との接触を防止することが知られていて適切な製剤キットに含まれ得るような材料を用いて包装する。適切な包装の例としては、限定するものではないが、密閉されたホイル、プラスチック、単位用量用容器(例えば、バイアル瓶)、ブリスターパック、及び、ストリップパックなどを挙げることができる。
【0175】
本発明は、さらに、活性成分の分解速度を減じる1種以上の化合物を含んでいる医薬組成物及び投与形態も包含する。そのような化合物(該化合物は、本明細書内では「安定化剤」と称されている)としては、限定するものではないが、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、pH緩衝剤又は塩緩衝剤等を挙げることができる。
【0176】
賦形剤の量及び型と同様に、 投与形態中の活性成分の量及び特定の型も、複数の要因(例えば、患者への投与経路などがあるが、これに限定されない)に応じて異なり得る。しかしながら、本発明の典型的な一日当たりの投与形態は、パンテチン又はその誘導体を、約1〜約200mg、約5〜約100mg、約10〜約75mg、又は、約20〜約50mgの量で含有する。典型的な一日当たりの投与形態は、第二の活性物質又はその誘導体を、約1〜約1000mg、約5〜約500mg、約10〜約350mg、又は、約50〜約200mgの量で含有する。第二の活性物質の特定の量は、用いる特定の薬物、治療、予防又は管理の対象の疾患のタイプ、及び、パンテチンの量に依存し、また、場合により患者に同時に投与される任意の付加的な活性成分の量に依存する。
【0177】
さらに、投与形態中の第三の活性成分の量及び特定の型も、複数の要因(例えば、患者への投与経路などがあるが、これに限定されない)に応じて異なり得る。これらの量は、典型的には、当業者が知るところである。概して、以下の文献を参照されたい:Physicians' Desk Reference, 55th ed.,(2001)。これは、参照により本明細書に組み入れる。
【0178】
4.4.1 経口投与形態
経口投与に適している本発明の医薬組成物は、個別的な投与形態、例えば、限定するものではないが、錠剤(例えば、咀嚼錠剤)、キャプレッツ剤、カプセル剤、及び、液剤(例えば、風味を付けたシロップ剤)などとして供することができる。そのような投与形態は、所定量の活性成分を含んでおり、当業者によく知られている調剤法により調製し得る。概して、以下の文献を参照されたい: Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing, Easton PA(1990)。
【0179】
本発明の典型的な経口投与形態は、慣習的な製薬配合技術に従い、該活性成分を1種以上の賦形剤と緊密に混合することにより調製する。賦形剤は、投与に望ましい調製物の形態に応じて、多種多様の形態とすることが可能である。例えば、経口液体投与形態又は経口エーロゾル投与形態で使用するのに適している賦形剤としては、限定するものではないが、水、グリコール類、油類、アルコール類、矯味矯臭薬、保存薬及び着色剤などを挙げることができる。固体経口投与形態(例えば、散剤、錠剤、カプセル剤及びキャプレッツ剤)で使用するのに適している賦形剤の例としては、限定するものではないが、デンプン類、糖類、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤などを挙げることができる。
【0180】
投与が容易であるという理由により、錠剤及びカプセル剤は、最も有利な経口投与単位形態であり、これらの場合は、固体賦形剤を使用する。必要に応じ、標準的な水性技術又は非水性技術により、錠剤にコーティングを施すことができる。そのような投与形態は、任意の調剤法により調製することができる。一般に、医薬組成物及び投与形態は、該活性成分を、液体担体、又は、微粉砕固体担体、又は、それらの両方と、均質且つ緊密に混合し、次いで、得られた生成物を必要に応じて所望の体裁に成形することにより調製する。
【0181】
例えば、錠剤は、圧縮又は成形により調製することができる。圧縮錠剤は、粉末又は顆粒などのような自由流動性形態にある該活性成分を、場合により賦形剤と混合した状態で、適切な機械内で圧縮することにより調製することができる。湿製錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせておいた粉末状化合物の混合物を適切な機械内で成形することにより調製することができる。
【0182】
本発明の経口投与形態において使用することが可能な賦形剤の例としては、限定するものではないが、結合剤、充填剤、崩壊剤及び滑沢剤などがある。医薬組成物及び投与形態において使用するのに適している結合剤としては、限定するものではないが、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン又は別のデンプン類、ゼラチン、天然ゴム類及び合成ゴム類 、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、別のアルギネート類、粉末状トラガカントゴム、グアーゴム、セルロース及びその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、プレゼラチン化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、(例えば、Nos. 2208, 2906, 2910)、微結晶性セルロース、及び、それらの混合物などを挙げることができる。
【0183】
微結晶性セルロースの適切な形態としては、限定するものではないが、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICELRC-581、及び、AVICEL-PH-105(入手先: FMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Sales, Marcus Hook, PA)として販売されている材料、並びに、それらの混合物などを挙げることができる。特定の結合剤は、AVICEL RC-581として販売されているナトリウムカルボキシメチルセルロースと微結晶性セルロースの混合物である。適切な無水又は低水分賦形剤又は添加剤には、AVICEL-PH-103TM 及び Starch 1500 LMなどがある。
【0184】
本明細書で開示されている医薬組成物及び投与形態において使用するのに適している充填材の例としては、限定するものではないが、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒状又は粉末状)、微結晶性セルロース、粉末状セルロース、デキストレート類、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、プレゼラチン化デンプン、及びそれらの混合物などを挙げることができる。本発明の医薬組成物中の結合剤又は充填剤は、典型的には、該医薬組成物又は投与形態の約50〜約99重量%の量で存在する。
【0185】
本発明の組成物に崩壊剤を用いて、水性の環境に晒されたときに崩壊する錠剤を提供する。過剰の崩壊剤を含んでいる錠剤は、貯蔵中に崩壊し得るが、崩壊剤の含有量が少なすぎる錠剤は、望ましい速度又は望ましい条件下で崩壊しない可能性がある。従って、該活性成分の放出を不利益に変えることのないように、多すぎることも少なすぎることもない充分な量の崩壊剤を用いて、本発明の固体経口投与形態を形成すべきである。使用される崩壊剤の量は、製剤の型に基づいて変わるが、そのような量は、当業者は容易に認識できる。典型的な医薬組成物は、約0.5〜約15重量%の崩壊剤、好ましくは、約1〜約5重量%の崩壊剤を含有する。
【0186】
本発明の医薬組成物及び投与形態において使用することが可能な崩壊剤としては、限定するものではないが、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム(polacrilin potassium)、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモデンプン又はタピオカデンプン、別のデンプン類、プレゼラチン化デンプン、別のデンプン類、クレー、別のアルギン類、別のセルロース類、ゴム類、及びそれらの混合物などを挙げることができる。
【0187】
本発明の医薬組成物及び投与形態において使用することが可能な滑沢剤としては、限定するものではないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、別のグリコール類、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えば、ラッカセイ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリブ油、トウモロコシ油及びダイス油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天及びそれらの混合物などを挙げることができる。さらなる滑沢剤としては、例えば、Syloid シリカゲル(AEROSIL 200;製造元 W.R. Grace Co., Baltimore, MD)、合成シリカの凝固エーロゾル(coagulated aerosol)(販売元 Degussa Co. of Plano, TX)、CAB-O-SIL(発熱性二酸化ケイ素生成物;販売元 Cabot Co. of Boston, MA)、及びそれらの混合物などを挙げることができる。滑沢剤を使用する場合は、該滑沢剤は、典型的には、その滑沢剤を組み入れる医薬組成物又は投与形態の約1重量%未満の量で使用する。
【0188】
本発明の特定の固体経口投与形態は、小さな分子の活性成分、無水ラクトース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸、無水コロイド状シリカ及びゼラチンを含有している。
【0189】
4.4.2 遅延放出投与形態
本発明の活性成分は、制御放出手段により投与することが可能であるか、又は、当業者によく知られている送達装置により投与することが可能である。例えば、限定するものではないが、米国特許第3,845,770号、米国特許第3,916,899号、米国特許第3,536,809号、米国特許第3,598,123号、米国特許第4,008,719号、米国特許第5,674,533号、米国特許第5,059,595号、米国特許第5,591,767号、米国特許第5,120,548号、米国特許第5,073,543号、米国特許第5,639,476号、米国特許第5,354,556号及び米国特許第5,733,566号などに記述されているものなどを挙げることができる。前記特許の各々は、参照により本明細書に組み入れる。そのような投与形態を用いて、種々の割合の所望の放出プロフィールを提供するために、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、別のポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、浸透性システム(osmotic system)、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェア又はそれらの組合せを使用して、1種以上の活性成分の徐放又は制御放出を提供することが可能である。当業者に知られている適切な制御放出製剤(これは、本明細書に記述されているものを包含する)は、本発明の活性成分の使用に関して容易に選択することが可能である。従って、本発明は、例えば、限定するものではないが、制御放出に適合させた錠剤、カプセル剤、ゲルキャップ剤及びキャプレッツ剤などのような、経口投与に適する単位投与形態を包含する。
【0190】
全ての制御放出医薬製品は、それらの非制御放出性の対応製品に比較して薬物療法を改善するという共通の目的を有している。理想的には、最適にデザインされた制御放出調製物を内科療法において使用するということは、最少量の薬物を用いて、最短時間で状態を治療するか又はコントロールすることを特徴とする。制御放出製剤の利点には、薬物の活性が長期にわたること、投与回数が減じられること、及び、患者のコンプライアンスが向上することなどがある。さらに、制御放出製剤を用いて、作用の開始時期や、別の特性(例えば、薬物の血中レベルなど)に影響を及ぼすことが可能であり、従って、副作用(例えば、有害作用)の発生に影響を及ぼすことが可能である。
【0191】
放出が最も制御された製剤は、所望の治療効果を即座に生じさせる所定量の薬物(活性成分)を最初に放出させ、及び、残りの量の薬物を徐々に継続的に放出させてこの治療効果又は予防効果のレベルを長期間にわたって維持するようにデザインされる。体内において薬物のこの一定のレベルを維持するためには、薬物は、代謝されて体内から排出される量の薬物に置き換わるような速度で投与形態から放出されなければならない。活性成分の制御放出は、種々の条件、例えば、限定するものではないが、pH、温度、酵素、水、又は、別の生理学的条件及び化合物などによって刺激され得る。
【0192】
4.4.3 非経口投与形態
非経口投与形態は、患者に対して、種々の経路により、例えば、限定するものではないが、皮下投与、静脈内投与(これは、ボーラス注射を包含する)、筋肉内投与及び動脈内投与などにより投与することが可能である。非経口投与形態の投与は、典型的には、汚染物質に対する患者の自然防御を回避して成されるので、非経口投与形態は、好ましくは、無菌であるか、又は、患者への投与に先立ち、滅菌することが可能である。非経口投与形態の例としては、限定するものではないが、注射用溶液剤、注射用の製薬上許容されるビヒクルに溶解又は懸濁させる乾燥製品、注射用懸濁液、及び、エマルションなどを挙げることができる。
【0193】
本発明の非経口投与形態を提供するのに使用し得る適切なビヒクルは、当業者にはよく知られている。例えば、限定するものではないが、注射用蒸留水 USP;水性ビヒクル、例えば、限定するものではないが、食塩注射剤、リンゲル注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖食塩注射液(Dextrose and Sodium Chloride Injection)、及び、乳酸加リンゲル注射液(Lactated Ringer's Injection)など;水混和性ビヒクル、例えば、限定するものではないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及び、ポリプロピレングリコールなど;並びに、非水性ビヒクル、例えば、限定するものではないが、トウモロコシ油、綿実油、ラッカセイ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び、安息香酸ベンジルなどを挙げることができる。
【0194】
さらにまた、本明細書に開示されている1種以上の活性成分の溶解度を増大させる化合物も、本発明の非経口投与形態の中に加えることが可能である。例えば、シクロデキストリン及びその誘導体を用いて、小さな分子の活性成分及びその誘導体の溶解度を増大させることができる。例えば、米国特許第5,134,127号を参照されたい。前記特許は、参照により本明細書に組み入れる。
【0195】
4.4.4 経皮投与形態、局所投与形態及び粘膜投与形態(mucosal dosage form)
本発明の経皮投与形態、局所投与形態及び粘膜投与形態としては、限定するものではないが、眼科用点眼剤、スプレー剤、エーロゾル剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、ゲル剤、溶液剤、エマルション剤、懸濁液剤、又は、当業者に知られている別の形態などを挙げることができる。例えば、以下の文献を参照されたい: Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th 及び 18th eds., Mack Publishing, Easton PA(1980 & 1990);並びに、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 4th ed., Lea & Febiger, Philadelphia(1985)。口腔内の粘膜組織を治療するのに適している投与形態は、口内洗浄薬又は経口ゲル剤として製剤することができる。さらに、経皮投与形態には、「貯蔵器型」又は「マトリックス型」の貼付剤などがあり、これらは、皮膚に適用されて特定の期間皮膚に付いていていることが可能であり、それによって、所望量の活性成分が浸透するのが可能となる。
【0196】
本発明に包含される経皮投与形態、局所投与形態及び粘膜投与形態を提供するのに使用することが可能な適切な賦形剤(例えば、担体及び希釈剤)及び別の材料は、製薬の技術分野の当業者にはよく知られていて、それらは、所与の医薬組成物又は投与形態が適用される特定の組織に依存する。前記のことを考慮して、典型的な賦形剤としては、非毒性で製薬上許容されるローション剤、チンキ剤、クリーム剤、エマルション剤、ゲル剤又は軟膏剤を形成するための、限定するものではないが、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピルレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、及びそれらの混合物などを挙げることができる。必要に応じて、医薬組成物及び投与形態には、モイスチャライザー又は湿潤剤を添加することも可能である。そのような追加成分の例は、当技術分野ではよく知られている。例えば、以下の文献を参照されたい: Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th 及び 18th eds., Mack Publishing, Easton PA(1980 & 1990)。
【0197】
治療対象の特定の組織に応じて、本発明の活性成分を用いた処置に先立ち、処置と同時に、又は、処置に続いて、追加成分を使用することもできる。例えば、透過増強剤を用いて、組織への活性成分の送達を助けることができる。適切な透過増強剤としては、限定するものではないが、以下のものを挙げることができる:アセトン;種々のアルコール類、例えば、エタノール、オレイルアルコール、及び、テトラヒドロフリル;アルキルスルホキシド類、例えば、ジメチルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ピロリドン類、例えば、ポリビニルピロリドン;Kollidon グレード(ポビドン,ポリビドン);尿素;及び、種々の水溶性又は水不溶性の糖エステル類、例えば、Tween 80(ポリソルベート 80)、及び、Span 60(モノステアリン酸ソルビタン)。
【0198】
さらにまた、医薬組成物若しくは投与形態のpH、又は、医薬組成物若しくは投与形態を投与する対象の組織のpHを調節して、1種以上の活性成分の送達を改善することもできる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度又は張度を調節して、送達を改善することもできる。医薬組成物又は投与形態にステアレートのような化合物を添加して、1種以上の活性成分の親水性又は親油性を有利に改変し、それによって、送達を改善することもできる。この点に関して、ステアレートは、該製剤のための脂質ビヒクルとして、乳化剤又は界面活性剤として、及び、送達促進剤(delivery-enhancing agent)又は透過増強剤として作用し得る。活性成分の種々の塩、水和物又は溶媒和物を用いて、得られる組成物の特性をさらに調節することが可能である。
【0199】
4.4.5 キット
典型的には、本発明の複数の活性成分は、好ましくは、患者に対して同時には投与せず、又は、同じ投与経路によっては投与しない。従って、本発明は、例えば使用説明書を含んでいる、キットを包含する。該使用説明者は、医師によって使用された場合に、適切な量の活性成分を患者に投与するのを平易にすることができる。
【0200】
本発明の典型的なキットは、パンテチン又はその誘導体及び第二の活性物質の投与形態を含んでいる。本発明に包含されるキットは、さらに、付加的な活性成分も含有し得る。場合により存在する付加的な活性成分の例としては、限定するものではないが、本明細書に開示されているものなどを挙げることができる(例えば、節4.3を参照されたい)。
【0201】
本発明のキットは、さらに、該活性成分を投与するのに使用する装置も含有し得る。そのような装置の例としては、限定するものではないが、注射器、点滴バッグ、絆創膏及び吸入器などを挙げることができる。
【0202】
本発明のキットは、さらに、1種以上の活性成分を投与するのに使用することが可能な製薬上許容されるビヒクルを含有し得る。例えば、活性成分を、非経口投与用に再構成することが必要な固体形態で提供する場合、本発明のキットは、該活性成分を溶解させて非経口投与に適している微粒子非含有無菌溶液を形成させることが可能な適切なビヒクルの密閉容器を含み得る。製薬上許容されるビヒクルの例としては、限定するものではないが、注射用蒸留水 USP;水性ビヒクル、例えば、限定するものではないが、食塩注射剤、リンゲル注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖食塩注射液(Dextrose and Sodium Chloride Injection)、及び、乳酸加リンゲル注射液(Lactated Ringer's Injection)など;水混和性ビヒクル、例えば、限定するものではないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及び、ポリプロピレングリコールなど;並びに、非水性ビヒクル、例えば、限定するものではないが、トウモロコシ油、綿実油、ラッカセイ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び、安息香酸ベンジルなどを挙げることができる。
【0203】
4.5 治療用途/予防用途
本発明は、種々の疾患及び状態を治療、予防及び管理する方法を提供し、該方法は、そのような治療、予防又は管理が必要な患者に、有効量のパンテチン又はその誘導体、及び、第二の活性物質を投与することを含んでなる。パンテチン又はその誘導体及び第二の活性物質を動物に投与する場合、パンテチンの有効量は、好ましくは、第二の活性物質が投与されなかった場合のパンテチンの有効量よりも少ない。同様に、第二の活性物質の有効量は、好ましくは、パンテチン又はその誘導体が投与されなかった場合の第二の活性物質の有効量よりも少ない。そのような場合、理論に拘束されるものではないが、コレステロール、脂質代謝異常又は関連疾患を治療、予防又は管理するのに、パンテチン又はその誘導体と第二の活性物質は相乗作用的に作用すると考えられる。
【0204】
本発明の方法により治療、予防又は管理することが可能な疾患又は障害の例としては、限定するものではないが、コレステロール、脂質代謝異常、及び関連疾患、例えば、限定するものではないが、心血管疾患;アテローム性動脈硬化症(artherosclerosis);卒中;末梢血管疾患;脂質代謝異常;リポタンパク質代謝異常;再狭窄;グルコース代謝異常;アルツハイマー病;X症候群;ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体関連障害;敗血症;血栓性疾患;肥満症;膵炎;高血圧症;腎疾患;癌;炎症;炎症性筋疾患、例えば、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び結合組織炎;性不能症;胃腸疾患;過敏性腸症候群;炎症性腸疾患;炎症性疾患、例えば、喘息、脈管炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、川崎病、ヴェーゲナー肉芽腫症、(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、及び自己免疫性慢性肝炎;性不能症;関節炎、例えば、慢性関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ、及び変形性関節症;骨粗鬆症、軟組織リウマチ、例えば、腱炎;滑液包嚢炎;自己免疫疾患、例えば、全身性狼瘡及び紅斑性狼瘡;強皮症;強直性脊椎炎;痛風;偽性痛風;インスリン非依存性糖尿病(NIDDM);敗血症性ショック;多嚢胞性卵巣疾患;高脂血症、例えば、家族性高コレステロール血症(FH)、家族性複合型高脂血症(FCH);リポタンパクリパーゼ欠損症、例えば、高トリグリセリド血症、低αリポタンパク血症、及び高コレステロール血症;糖尿病に関連するリポタンパク質異常;肥満症に関連するリポタンパク質異常;並びに、アルツハイマー病に関連するリポタンパク質異常などを挙げることができる。
【0205】
一実施形態において、用語「治療する(treat)」、「治療(treatment)」又は「治療(treating)」は、疾患若しくは障害又はそれらの少なくとも1種の認識可能な症状の改善を意味する。別の実施形態において、用語「治療(treatment)」又は「治療(treating)」は、少なくとも1種の測定可能な物理的パラメータの改善(患者が認識している必要はない)を意味する。さらに別の実施形態において、用語「治療する(treat)」、「治療(treatment)」又は「治療(treating)」は、肉体的に(例えば、認識可能な症状の安定化)、又は、生理学的に(例えば、物理的パラメータの安定化)、又は、肉体的及び生理学的に、疾患又は障害の進行を阻止することを意味する。さらに別の実施形態において、用語「治療する(treat)」、「治療(treatment)」又は「治療(treating)」は、疾患又は障害の発症を遅らせることを意味する。
【0206】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、上記疾患を予防する手段として、動物、好ましくは、ヒトに投与する。本明細書で使用されている場合、用語「予防する(prevent)」、「予防(prevention)」又は「予防(preventing)」は、所定の疾患又は障害に罹患するリスクを低減することを意味する。この実施形態の好ましい態様において、本発明の組成物は、予防的手段として、コレステロール、脂質代謝異常、又は関連疾患、例えば、限定するものではないが、心血管疾患;アテローム性動脈硬化症(artherosclerosis);卒中;末梢血管疾患;脂質代謝異常;リポタンパク質代謝異常;再狭窄;グルコース代謝異常;アルツハイマー病;X症候群;ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体関連障害;敗血症;血栓性疾患;肥満症;膵炎;高血圧症;腎疾患;癌;炎症;炎症性筋疾患、例えば、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎、及び結合組織炎;性不能症;胃腸疾患;過敏性腸症候群;炎症性腸疾患;炎症性疾患、例えば、喘息、脈管炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、川崎病、ヴェーゲナー肉芽腫症、(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、及び自己免疫性慢性肝炎;性不能症;関節炎、例えば、慢性関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ、及び変形性関節症;骨粗鬆症、軟組織リウマチ、例えば、腱炎;滑液包嚢炎;自己免疫疾患、例えば、全身性狼瘡及び紅斑性狼瘡;強皮症;強直性脊椎炎;痛風;偽性痛風;インスリン非依存性糖尿病(NIDDM);敗血症性ショック;多嚢胞性卵巣疾患;高脂血症、例えば、家族性高コレステロール血症(FH)、家族性複合型高脂血症(FCH);リポタンパクリパーゼ欠損症、例えば、高トリグリセリド血症、低αリポタンパク血症、及び高コレステロール血症;糖尿病に関連するリポタンパク質異常;肥満症に関連するリポタンパク質異常;並びに、アルツハイマー病に関連するリポタンパク質異常などに対する遺伝子的疾病素質を有している動物、好ましくはヒトに投与する。そのような遺伝子的疾病素質の例としては、限定するものではないが、アポリポタンパク質Eのε4対立遺伝子(これは、アルツハイマー病の発症の見込みを増大させる);リポタンパク質リパーゼ遺伝子のコード領域又はプロモーターにおける機能喪失又は無発現変異(例えば、D9N及びN291Sの置換が生じるようなコード領域における突然変異;心血管疾患、脂質代謝異常及びリポタンパク質代謝異常のリスクを増大させるリポタンパク質リパーゼ遺伝子の遺伝子突然変異の概説に関しては、以下の文献を参照されたい: Hayden and Ma, 1992, Mol. Cell Biochem. 113:171-176);並びに、家族性複合型高脂血症及び家族性高コレステロール血症などを挙げることができる。
【0207】
本発明の別の方法において、本発明の化合物又は本発明の組成物は、予防的手段として、コレステロール、脂質代謝異常、又は関連疾患に対する非遺伝子的疾病素質を有している患者に投与する。そのような非遺伝子的疾病素質の例としては、限定するものではないが、心臓バイパス手術及び経皮冠動脈管腔拡張術(これは、多くの場合、再狭窄、アテローム性動脈硬化症の加速型に至る);女性の糖尿病(これは、多くの場合、多嚢胞性卵巣疾患に至る);及び、心血管疾患(これは、多くの場合、性不能症に至る)などを挙げることができる。従って、1つの疾患又は障害を予防すると同時に、別の疾患を治療するために、本発明の組成物を用いることができる(例えば、糖尿病を治療しながらの多嚢胞性卵巣疾患の予防;心血管疾患を治療しながらの性不能症の予防)。理論による制限を受けるものではないが、パンテチン又はその誘導体は、患者に対して30日を超えて投与した場合に有効であると考えられている。従って、本発明は、コレステロール、脂質代謝異常又は関連疾患を治療、予防又は管理する方法を包含し、ここで、該方法は、そのような治療、予防又は管理が必要な患者に、少なくとも30日間、有効量のパンテチン又はその誘導体、及び、第二の活性物質又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を投与することを含んでなる。
【0208】
4.5.1 心血管疾患
本発明は、心血管疾患を治療、予防又は管理する方法を提供する。本明細書で使用されている場合、用語「心血管疾患」は、心臓及び循環系の疾患を意味する。これらの疾患は、多くの場合、リポタンパク質代謝異常及び/又は脂質代謝異常と関連している。予防又は治療するのに本発明の組成物が有用である心血管疾患としては、限定するものではないが、動脈硬化症;アテローム性動脈硬化症;卒中;虚血;内皮機能障害、特に、血管の弾性に影響する内皮機能障害;末梢血管疾患;冠状動脈性心疾患;心筋梗塞症;脳梗塞及び再狭窄などを挙げることができる。
【0209】
4.5.2 脂質代謝異常
本発明は、脂質代謝異常を治療、予防又は管理する方法を提供する。
【0210】
本明細書で使用されている場合、用語「脂質代謝異常」は、循環脂質の異常なレベルへと至る疾患、又は、循環脂質の異常なレベルにより示される疾患を意味する。血液中の脂質のレベルが高すぎる限り、本発明の方法を用いて正常なレベルに戻すことができる。脂質の正常なレベルについては、当業者には公知の医学専門書において記載されている。例えば、 LDL、HDL、遊離トリグリセリド、及び、脂質代謝に関連する別のパラメータの推奨される血中レベルは、American Heart Association のウェブサイト、及び、National Cholesterol Education Program of the National Heart, Lung and Blood Institute のウェブサイト(それぞれ,http://www.americanheart.org 及び http://rover.nhlbi.nih.gov/chd/)に見いだすことができる。現在、血中のHDLコレステロールの推奨されているレベルは、35mg/dLを超える値であり;血中のLDLコレステロールの推奨されているレベルは、130mg/dL未満であり;血中のLDLコレステロール:HDLコレステロールの推奨されている比率は、5:1未満、理想的には、3.5:1であり;及び、血中の遊離トリグリセリドの推奨されているレベルは、200mg/dL未満である。
【0211】
脂質代謝異常としては、限定するものではないが、高脂血症、及び、低レベルの血中高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールなどを挙げることができる。特定に実施形態においては、本発明の化合物により予防又は治療される高脂血症は、家族性高コレステロール血症;家族性複合型高脂血症;リポタンパク質リパーゼレベル又は活性の低下又は不足(これは、リポタンパク質リパーゼの突然変異に起因する低下又は不足を包含する);高トリグリセリド血症;高コレステロール血症;高レベルの血中ケトン体(例えば、β-OH酪酸);高レベルの血中Lp(α)コレステロール;高レベルの血中低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール;高レベルの血中超低密度リポタンパク質(VLDL)コレステロール;及び、高レベルの血中非エステル化脂肪酸などである。
【0212】
本発明は、さらに、動物における脂質代謝を改変する方法、例えば、患者の血中のLDLを低減する方法、患者の血中の遊離トリグリセリドを低減する方法、患者の血中のLDLに対するHDLの比率を増大させる方法、並びに、鹸化及び/又は非鹸化脂肪酸合成を阻害する方法などを提供し、ここで、該方法は、該患者に、本発明の化合物又は本発明の化合物を含んでいる組成物を脂質代謝を改変するのに有効な量で投与することを含んでなる。
【0213】
4.5.3 リポタンパク質代謝異常
本発明は、リポタンパク質代謝異常を治療、予防又は管理する方法を提供し、ここで、該方法は、動物に、有効量のパンテチン及び第二の活性物質及び製薬上許容されるビヒクルを含んでいる組成物を投与することを含んでなる。
【0214】
本明細書で使用されている場合、用語「リポタンパク質代謝異常(dyslipoproteinemia)」は、循環リポタンパク質の異常なレベルへと至る疾患、又は、循環リポタンパク質の異常なレベルにより示される疾患を意味する。血液中のリポタンパク質のレベルが高すぎる限り、本発明の組成物を患者に投与して正常なレベルに戻すことができる。反対に、血液中のリポタンパク質のレベルが低すぎる限り、本発明の組成物を患者に投与して正常なレベルに戻すことができる。リポタンパク質の正常なレベルについては、当業者には公知の医学専門書に記載されている。
【0215】
リポタンパク質代謝異常としては、限定するものではないが、高レベルの血中LDL;高レベルの血中アポリポタンパク質B(アポB);高レベルの血中Lp(a);高レベルの血中アポ(a);高レベルの血中VLDL;低レベルの血中HDL;リポタンパク質リパーゼレベル又は活性の低下又は不足(これは、リポタンパク質リパーゼの突然変異に起因する低下又は不足を包含する);低αリポタンパク血症;糖尿病に関連するリポタンパク質異常;肥満症に関連するリポタンパク質異常;アルツハイマー病に関連するリポタンパク質異常;及び、家族性複合型高脂血症などを挙げることができる。
【0216】
本発明は、さらに、動物の血中のアポC-IIレベルを低減する方法;動物の血中のアポC-IIIレベルを低減する方法;患者の血中のHDL関連タンパク質(例えば、限定するものではないが、アポA-1、アポA-II、アポA-IV 及び アポEなど)のレベルを上昇させる方法;動物の血中のアポEのレベルを上昇させる方法;及び、患者の血中からのトリグリセリドの除去を促進する方法を提供し、ここで、該方法は、該患者に、本発明の化合物又は本発明の化合物を含んでいる組成物を、それぞれ、上記低減するのに有効な量、上記上昇させるのに有効な量、又は、上記促進するのに有効な量で投与することを含んでなる。
【0217】
4.5.4 グルコース代謝障害
本発明は、グルコース代謝障害を治療、予防又は管理する方法を提供する。本明細書で使用されている場合、用語「グルコース代謝障害」は、異常なグルコースの貯蔵及び/又は利用状態へと至る疾患、又は、異常なグルコースの貯蔵及び/又は利用状態により示される疾患を意味する。グルコース代謝の証(即ち、血中インスリン、血中グルコース)が高すぎる限り、本発明の組成物を患者に投与して正常なレベルに戻すことができる。反対に、グルコース代謝の証が低すぎる限り、本発明の方法により正常なレベルに戻すことができる。グルコース代謝の正常な証については、当業者には公知の医学専門書に記載されている。
【0218】
予防、治療又は管理するのに本発明の方法が有用であるグルコース代謝障害としては、限定するものではないが、耐糖能低下;糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、インスリン抵抗性;インスリン抵抗性に関連する乳癌、大腸癌又は前立腺癌;糖尿病、例えば、限定するものではないが、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、妊婦糖尿病(GDM)、及び、若年性成人発症型糖尿病(MODY);膵炎;高血圧症;多嚢胞性卵巣疾患;並びに、高レベルの血中インスリン及び/又はグルコースなどを挙げることができる。
【0219】
本発明は、さらに、患者のグルコース代謝を改変する方法、例えば、動物のインスリン感受性及び/又は酸素消費量を増大させる方法を提供し、ここで、該方法は、動物に、パンテチン及び第二の活性物質をグルコース代謝を改変するのに有効な量で含有している組成物を投与することを含んでなる。
【0220】
4.5.5 PPAR関連障害
本発明は、PPAR関連障害を治療、予防又は管理する方法を提供する。本明細書で使用されている場合、「PPAR関連障害の治療、予防又は管理」は、慢性関節リウマチ;多発性硬化症;乾癬;炎症性腸疾患;乳癌、大腸癌又は前立腺癌;低レベルの血中HDL;低レベルの、血中、リンパ液中及び/又は脳脊髄液中のアポE;低レベルの、血中、リンパ液中及び/又は脳脊髄液中のアポA-I;高レベルの血中VLDL;高レベルの血中LDL;高レベルの血中トリグリセリド;高レベルの血中アポB;高レベルの血中アポC-III、及び、リポタンパク質リパーゼ活性に対するヘパリン後肝性リパーゼ活性の低下した比率の治療、予防又は管理を包含する。リンパ液及び/又は脳脊髄液中のHDLは、上昇させることができる。
【0221】
4.5.6 腎疾患
本発明は、腎疾患を治療、予防又は管理する方法を提供する。本発明の方法により治療、予防又は管理することが可能な腎疾患としては、限定するものではないが、腎糸球体疾患(例えば、限定するものではないが、急性及び慢性の糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、限局性増殖性糸球体腎炎(focal proliferative glomerulonephritis)、全身性疾患に関連する糸球体病変、例えば、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、多発性骨髄腫、糖尿病、腫瘍形成、鎌状赤血球症、及び、慢性炎症性疾患)、尿細管疾患(例えば、限定するものではないが、急性尿細管壊死及び急性腎不全、多嚢胞性腎疾患、髄質海綿腎、腎髄質性嚢胞症、腎原発性糖尿病及び腎尿細管性アシドーシス)、尿細管間質性疾患(例えば、限定するものではないが、腎盂腎炎、薬物及び毒物誘発性尿細管間質性腎炎、高カルシウム血症性腎症及び低カリウム性腎症)、急性及び急速進行性腎不全、慢性腎不全、腎石症、又は、腫瘍(例えば、限定するものではないが、腎細胞癌及び腎芽細胞腫)などを挙げることができる。最も好ましい実施形態において、本発明の化合物により治療される腎疾患は、血管系疾患、例えば、限定するものではないが、高血圧症、腎硬化症、細血管異常性溶血性貧血、アテローム塞栓性腎疾患(atheroembolic enal disease)、汎発性皮質壊死(diffuse cortical necrosis)、及び、腎梗塞(renal infarcts)などである。
【0222】
4.5.7 癌
本発明は、癌を治療、予防又は管理する方法を提供する。本発明の方法により治療、予防又は管理することが可能な癌としては、限定するものではないが、ヒト肉腫及び癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉種、脊索腫、血管肉腫、内皮腫(endothelio sarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑液膜腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌(epithelial carcinoma)、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽腫;白血病、例えば、急性リンパ性白血病及び急性骨髄性白血病(骨髄芽細胞性白血病、骨髄球性白血病(promyelocytic leukemia)、骨髄単球性白血病、単球性白血病及び赤白血病);慢性白血病(慢性骨髄性白血病(顆粒球性白血病)及び慢性リンパ球性白血病);並びに、真正赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病及び非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、及び、H鎖病などを挙げることができる。最も好ましい実施形態において、本発明化合物を投与することにより治療又は予防される癌は、インスリン抵抗性関連癌又はX症候群関連癌、例えば、限定するものではないが、乳癌、前立腺癌及び大腸癌などである。
【0223】
4.5.8 別の疾患
本発明は、神経変性疾患又は障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、X症候群、敗血症、血栓性疾患、肥満症、膵炎、高血圧症、炎症及び性不能症を治療、予防又は管理する方法を提供する。
【0224】
本明細書で使用されている場合、「アルツハイマー病の治療、予防又は管理」は、アルツハイマー病に関連するリポタンパク質異常の治療、予防又は管理を包含する。
【0225】
本明細書で使用されている場合、「X症候群又は代謝症候群の治療、予防又は管理」は、それらの症状、例えば、限定するものではないが、耐糖能低下、高血圧症、及び、脂質代謝異常/リポタンパク質代謝異常の治療、予防又は管理を包含する。
【0226】
本明細書で使用されている場合、「敗血症の治療、予防又は管理」は、敗血症性ショックの治療、予防又は管理を包含する。
【0227】
本明細書で使用されている場合、「血栓性疾患の治療、予防又は管理」は、高レベルの血中フィブリノーゲン及び促進された線維素溶解の治療、予防又は管理を包含する。
【0228】
肥満症の治療、予防又は管理に加えて、本発明の組成物は、個人の減量を促進するために、該個人に投与することが可能である。
【0229】
4.6 本発明の化合物及び組成物の外科用途
アテローム性動脈硬化症のような心血管疾患は、多くの場合、血管形成術のような外科的処置を必要とする。血管形成術では、多くの場合、「ステント」として知られている金属製の補強用管形状構造物を、損傷を受けた冠動脈内に配置する。さらに重症の場合は、冠動脈バイパス形成手術のような開心術が必要な場合がある。これらの外科的処置には、侵襲的な外科手術用装置及び/又はインプラントが必要であり、再狭窄及び血栓症のリスクを伴う。従って、本発明の組成物を外科手術用装置(例えば、カテーテル)及びインプラント(例えば、ステント)上のコーティングとして使用して、心血管疾患の治療に用いられる侵襲的な処置に伴う再狭窄及び血栓症のリスクを低減することができる。
【0230】
4.7 本発明の化合物及び組成物の獣医学的な家畜に対する用途
本発明の組成物は、本明細書に開示されている疾患又は障害の治療、予防又は管理のために獣医学的に使用するために、非ヒト動物に投与することが可能である。
【0231】
特定の実施形態において、該非ヒト動物は、家庭のペットである。別の特定の実施形態において、該非ヒト動物は、家畜動物である。好ましい実施形態において、該非ヒト動物は、哺乳動物であり、最も好ましくは、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ又はモルモットである。別の好ましい実施形態において、該非ヒト動物は、鳥類であり、最も好ましくは、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ又はウズラである。
【0232】
獣医学的な用途に加えて、本発明の化合物及び組成物を用いて、家畜の脂肪分を低減して、赤身の肉を産生させることができる。あるいは、本発明の化合物及び組成物を用いて、該化合物をニワトリ、ウズラ又はアヒルの雌鳥に投与することにより、卵のコレステロール含有量を低減することができる。非ヒト動物への使用に関し、本発明の化合物及び組成物は、動物飼料を介して、又は、水薬組成物として経口的に投与することができる。
【0233】
本発明の範囲は、本発明の数種類の態様について例証することを目的としている実施例において開示されている特定の実施形態により限定されるべきではなく、機能的に等価な全ての実施形態は、本発明の範囲内にある。実際、本明細書中に示され、記述されている変更の他に、本発明の種々の変更は当業者には明らかであり、そのような変更は、添付されている「特許請求の範囲」の範囲内に入るものである。
【0234】
多くの参考文献を引用したが、その開示内容全体は、参照により本明細書内に組み入れられるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンテチン又はその誘導体と第二の活性物質を含んでいる医薬組成物であって、該第二の活性物質が、スタチン、フィブラート、ビグアニド、グリタゾン、スルホニル尿素、脂質代謝異常を制御する化合物又はペプチドである、前記組成物。
【請求項2】
前記第二の活性物質がスタチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記第二の活性物質がフィブラート又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記第二の活性物質がビグアニド又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記第二の活性物質がグリタゾン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記第二の活性物質がスルホニル尿素又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記第二の活性物質が、式:
【化1】

[式中、
(a) 各Zは独立して、CH2、CH=CH、又は、フェニルであり、その際、各mは独立して、1〜9の範囲の整数であるが、Zがフェニルである場合は、それに関連しているmは1であり;
(b) Gは、-(CHOH)、-S、-S(O)、O、(CH2)x[ここで、xは、2、3又は4である]、CH2CH=CHCH2、CH=CH、CH2-フェニル-CH2、又は、フェニルであり;
(c) W1及びW2は、独立して、L、V、C(R1)(R2)-(CH2)c-C(R3)(R4)-(CH2)n-Y、又は、C(R1)(R2)-(CH2)c-Vであり、その際、cは、1又は2であり、nは、0〜4の範囲の整数であり;
(d) 各R1又は各R2は、独立して、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、フェニル、若しくは、ベンジルであるか、又は、W1とW2の一方若しくは両方がC(R1)(R2)-(CH2)c-C(R3)(R4)-(CH2)n-Yである場合は、R1とR2が、両方ともHであることで、メチレン基を形成することができ;
(e) R3は、H、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C1-C6)アルコキシ、フェニル、ベンジル、Cl、Br、CN、NO2、又は、CF3であり;
(f) R4は、OH、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C1-C6)アルコキシ、フェニル、ベンジル、Cl、Br、CN、NO2、又は、CF3であり;
(g) Lは、C(R1)(R2)-(CH2)n-Yであり;
(h) Vは、
【化2】

であり;
(i) 各Yは独立して、OH、COOH、CHO、COOR5、SO3H、
【化3】

[ここで、
(i) R5は、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、フェニル、又は、ベンジルであり、また、R5は、置換されていないか又は1つ以上のハロ基、OH基、(C1-C6)アルコキシ基又はフェニル基で置換されており;
(ii) 各R6は独立して、H、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、又は、(C2-C6)アルキニルであり、また、各R6は独立して、置換されていないか又は1つ若しくは2つのハロ基、OH基、(C1-C6)アルコキシ基又はフェニル基で置換されており;
及び、
(iii) 各R7は独立して、H、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、又は、(C2-C6)アルキニルである]
であり;
(j) 各Qは独立して、C、CH、S、又は、Oであり;
及び、
(k) 各Tは独立して、電子対、-H、-OH、又は、-(=O)である]
で表される、脂質代謝異常を制御する化合物、又は、その製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ、薬理学的に活性な代謝産物、エナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体若しくはそれらの混合物、又は、その製薬上許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ若しくはそれらの組合せである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記第二の活性物質が、式(II):
【化4】

[式中、
X1は、Pro(P)、Ala(A)、Gly(G)、Gln(Q)、Asn(N)、Asp(D)、又は、D-Pro(p)であり;
X2は、脂肪族アミノ酸であり;
X3は、Leu(L)、又は、Phe(F)であり;
X4は、酸性アミノ酸であり;
X5は、Leu(L)、又は、Phe(F)であり;
X6は、Leu(L)、又は、Phe(F)であり;
X7は、親水性アミノ酸であり;
X8は、酸性アミノ酸、又は、塩基性アミノ酸であり;
X9は、Leu(L)、又は、Gly(G)であり;
X10は、Leu(L)、Trp(W)、又は、Gly(G)であり;
X11は、親水性アミノ酸であり;
X12は、親水性酸であり;
X13は、Gly(G)、又は、脂肪族アミノ酸であり;
X14は、Leu(L)、Trp(W)、Gly(G)、又は、Nalであり;
X15は、親水性アミノ酸であり;
Xl6は、疎水性アミノ酸であり;
Xl7は、疎水性アミノ酸であり;
Xl8は、塩基性アミノ酸、Gln(Q)、又は、Asn(N)であり;
X19は、塩基性アミノ酸、Gln(Q)、又は、Asn(N)であり;
X20は、塩基性アミノ酸であり;
X21は、脂肪族アミノ酸であり;
及び、
X22は、塩基性アミノ酸である]
で表されるペプチド又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
さらに、製薬上許容される担体又は賦形剤を含有している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記スタチンが、メバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、アトロバスタチン、又は、セリバスタチン、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記フィブラートが、ベザフィブラート、シプロフィブラート、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、又は、クロフィブラート、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記グリタゾンが、トログリタゾン、ロシグリタゾン、又は、ピオグリタゾン、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記スルホニル尿素が、トルブタミド、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、グリブリド、グリベンクラミド、グリピジド、グリクラジド、又は、グリメピリド、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ、若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項14】
さらに、第三の活性物質又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を含んでいる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記第三の活性物質が、胆汁酸結合性樹脂、ナイアシン、RXR作動薬、抗肥満薬、ホルモン、チロホスチン、チロホスチン類似体、α-グルコシダーゼ阻害薬、アポA-1作動薬、又は、アポリポタンパク質E、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
錠剤形態にある、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
カプセル剤形態にある、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
制御放出形態にある、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項19】
コレステロール、脂質代謝異常又は関連疾患を治療、予防又は管理する方法であって、そのような治療、予防又は管理が必要な患者に、有効量のパンテチン又はその誘導体、及び、第二の活性物質又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を投与することを含んでなり、ここで、該第二の活性物質が、スタチン、フィブラート、ビグアニド、グリタゾン、スルホニル尿素、脂質代謝異常を制御する化合物又はペプチドである、前記方法。
【請求項20】
パンテチン又はその誘導体の前記有効量が、1日当たり約0.001mg〜約2000mgである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
パンテチン又はその誘導体の前記有効量が、1日当たり約0.01mg〜約1000mgである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
パンテチン又はその誘導体の前記有効量が、1日当たり約0.1mg〜約100mgである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記パンテチン又はその誘導体が立体異性体的に純粋である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記パンテチン又はその誘導体が、D,D-パンテチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記パンテチン又はその誘導体が、D,L-パンテチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記パンテチン又はその誘導体が、L,L-パンテチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記パンテチン又はその誘導体が、L,D-パンテチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記パンテチン又はその誘導体が、D-パンテテイン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記パンテチン又はその誘導体が、L-パンテテイン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記パンテチン又はその誘導体及び第二の活性物質を1日当たり1〜4回投与する、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記パンテチン又はその誘導体及び第二の活性物質を同時に投与する、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
前記パンテチン又はその誘導体及び第二の活性物質を順次に投与する、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
前記パンテチン又はその誘導体及び第二の活性物質を、非経口的に、経口的に、経皮的に、又は、舌下に投与する、請求項19に記載の方法。
【請求項34】
前記パンテチン又はその誘導体を経口投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記パンテチン又はその誘導体を非経口投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記パンテチン又はその誘導体及び第二の活性物質を、製薬上許容される担体又は賦形剤と一緒に投与する、請求項19に記載の方法。
【請求項37】
前記患者がヒトである、請求項19に記載の方法。
【請求項38】
前記第二の活性物質がスタチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項19に記載の方法。
【請求項39】
前記第二の活性物質がフィブラート又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項19に記載の方法。
【請求項40】
前記第二の活性物質がメトホルミン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項19に記載の方法。
【請求項41】
前記第二の活性物質がグリタゾン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項19に記載の方法。
【請求項42】
前記第二の活性物質がスルホニル尿素又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項19に記載の方法。
【請求項43】
前記第二の活性物質が、式:
【化5】

[式中、
(a) 各Zは独立して、CH2、CH=CH、又は、フェニルであり、その際、各mは独立して、1〜9の範囲の整数であるが、Zがフェニルである場合は、それに関連しているmは1であり;
(b) Gは、-(CHOH)、-S、-S(O)、O、(CH2)x[ここで、xは、2、3又は4である]、CH2CH=CHCH2、CH=CH、CH2-フェニル-CH2、又は、フェニルであり;
(c) W1及びW2は、独立して、L、V、C(R1)(R2)-(CH2)c-C(R3)(R4)-(CH2)n-Y、又は、C(R1)(R2)-(CH2)c-Vであり、その際、cは、1又は2であり、nは、0〜4の範囲の整数であり;
(d) 各R1又は各R2は、独立して、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、フェニル、若しくは、ベンジルであるか、又は、W1とW2の一方若しくは両方がC(R1)(R2)-(CH2)c-C(R3)(R4)-(CH2)n-Yである場合は、R1とR2が、両方ともHであることで、メチレン基を形成することができ;
(e) R3は、H、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C1-C6)アルコキシ、フェニル、ベンジル、Cl、Br、CN、NO2、又は、CF3であり;
(f) R4は、OH、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C1-C6)アルコキシ、フェニル、ベンジル、Cl、Br、CN、NO2、又は、CF3であり;
(g) Lは、C(R1)(R2)-(CH2)n-Yであり;
(h) Vは、
【化6】

であり;
(i) 各Yは独立して、OH、COOH、CHO、COOR5、SO3H、
【化7】

[ここで、
(i) R5は、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、フェニル、又は、ベンジルであり、また、R5は、置換されていないか又は1つ以上のハロ基、OH基、(C1-C6)アルコキシ基又はフェニル基で置換されており;
(ii) 各R6は独立して、H、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、又は、(C2-C6)アルキニルであり、また、各R6は独立して、置換されていないか又は1つ若しくは2つのハロ基、OH基、(C1-C6)アルコキシ基又はフェニル基で置換されており;
及び、
(iii) 各R7は独立して、H、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、又は、(C2-C6)アルキニルである]
であり;
(j) 各Qは独立して、C、CH、S、又は、Oであり;
及び、
(k) 各Tは独立して、電子対、-H、-OH、又は、-(=O)である]
で表される化合物、又は、その製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ、薬理学的に活性な代謝産物、エナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体若しくはそれらの混合物、又は、その製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項19に記載の方法。
【請求項44】
前記第二の活性物質が、式:
【化8】

[式中、
X1は、Pro(P)、Ala(A)、Gly(G)、Gln(Q)、Asn(N)、Asp(D)、又は、D-Pro(p)であり;
X2は、脂肪族アミノ酸であり;
X3は、Leu(L)、又は、Phe(F)であり;
X4は、酸性アミノ酸であり;
X5は、Leu(L)、又は、Phe(F)であり;
X6は、Leu(L)、又は、Phe(F)であり;
X7は、親水性アミノ酸であり;
X8は、酸性アミノ酸、又は、塩基性アミノ酸であり;
X9は、Leu(L)、又は、Gly(G)であり;
X10は、Leu(L)、Trp(W)、又は、Gly(G)であり;
X11は、親水性アミノ酸であり;
X12は、親水性酸であり;
X13は、Gly(G)、又は、脂肪族アミノ酸であり;
X14は、Leu(L)、Trp(W)、Gly(G)、又は、Nalであり;
X15は、親水性アミノ酸であり;
Xl6は、疎水性アミノ酸であり;
Xl7は、疎水性アミノ酸であり;
Xl8は、塩基性アミノ酸、Gln(Q)、又は、Asn(N)であり;
X19は、塩基性アミノ酸、Gln(Q)、又は、Asn(N)であり;
X20は、塩基性アミノ酸であり;
X21は、脂肪族アミノ酸であり;
及び、
X22は、塩基性アミノ酸である]
で表される化合物、又は、その製薬上許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ若しくはそれらの組合せである、請求項19に記載の方法。
【請求項45】
前記スタチンが、メバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、アトロバスタチン、又は、セリバスタチン、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記フィブラートが、ベザフィブラート、シプロフィブラート、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、又は、クロフィブラート、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記グリタゾンが、トログリタゾン、ロシグリタゾン、又は、ピオグリタゾン、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記スルホニル尿素が、トルブタミド、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、グリブリド、グリベンクラミド、グリピジド、グリクラジド、又は、グリメピリド、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
前記コレステロール、脂質代謝異常又は関連疾患が、心血管疾患;卒中;末梢血管疾患;脂質代謝異常;リポタンパク質代謝異常;グルコース代謝異常;アルツハイマー病;X症候群;ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体関連障害;敗血症;血栓性疾患;肥満症;膵炎;高血圧症;腎疾患;癌;炎症;炎症性筋疾患、例えば、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び結合組織炎;性不能症;胃腸疾患;過敏性腸症候群;炎症性腸疾患;炎症性疾患、例えば、喘息、脈管炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、川崎病、ヴェーゲナー肉芽腫症、(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)及び自己免疫性慢性肝炎;関節炎、例えば、慢性関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ及び変形性関節症;骨粗鬆症;軟組織リウマチ、例えば、腱炎;滑液包嚢炎;自己免疫疾患、例えば、全身性狼瘡及び紅斑性狼瘡;強皮症;強直性脊椎炎;痛風;偽性痛風;インスリン非依存性糖尿病;多嚢胞性卵巣疾患;高脂血症、例えば、家族性高コレステロール血症(FH)、家族性複合型高脂血症(FCH);リポタンパクリパーゼ欠損症、例えば、高トリグリセリド血症、低αリポタンパク血症及び高コレステロール血症;糖尿病に関連するリポタンパク質異常;肥満症に関連するリポタンパク質異常;又は、アルツハイマー病に関連するリポタンパク質異常である、請求項19に記載の方法。
【請求項50】
パンテチン単独療法に関連する副作用を軽くするか又は回避する方法であって、そのような副作用を軽くするか又は回避することが必要な患者にパンテチン又はその誘導体と第二の活性物質の組合せの有効量を投与することを含んでなり、ここで、該第二の活性物質が、スタチン、フィブラート、グリタゾン、ビグアニド、スルホニル尿素、脂質代謝異常を制御する化合物、又は、本発明の小ペプチド、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、前記方法。
【請求項51】
前記副作用が、肝細胞毒性、筋障害、白内障、横紋筋変性、生命にかかわる心室性不整脈、心不全、心房細動、心房粗動、静脈性鬱血、浮腫、呼吸困難、起坐呼吸、心臓性喘息、心悸亢進、高血圧症、低血圧症、又は、前胸部の窮迫若しくは衰弱である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
さらに、第三の活性物質又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を投与することを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
第二の活性物質単独療法に関連する副作用を軽くするか又は回避する方法であって、そのような副作用を軽くするか又は回避することが必要な患者にパンテチン又はその誘導体と第二の活性物質の組合せの有効量を投与することを含んでなり、ここで、該第二の活性物質が、スタチン、フィブラート、グリタゾン、ビグアニド、スルホニル尿素、脂質代謝異常を制御する化合物、又は、本発明の小ペプチド、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、前記方法。
【請求項54】
前記副作用が、肝細胞毒性、筋障害、白内障、横紋筋変性、生命にかかわる心室性不整脈、心不全、心房細動、心房粗動、静脈性鬱血、浮腫、呼吸困難、起坐呼吸、心臓性喘息、心悸亢進、高血圧症、低血圧症、又は、前胸部の窮迫若しくは衰弱である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
さらに、第三の活性物質又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物を投与することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記パンテチン又はその誘導体が、D-ホスホパンテテイン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項23に記載の方法。
【請求項57】
前記パンテチン又はその誘導体が、L-ホスホパンテテイン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項23に記載の方法。
【請求項58】
前記パンテチン又はその誘導体が、D-パントテン酸又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項23に記載の方法。
【請求項59】
前記パンテチン又はその誘導体が、L-パントテン酸又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、請求項23に記載の方法。
【請求項60】
コレステロール、脂質代謝異常又は関連疾患を治療、予防又は管理する方法であって、そのような治療、予防又は管理が必要な患者に、少なくとも30日間、有効量のパンテチン又はその誘導体、及び、第二の活性物質を投与することを含んでなり、ここで、該第二の活性物質が、スタチン、フィブラート、グリタゾン、ビグアニド、スルホニル尿素、脂質代謝異常を制御する化合物、又は、本発明の小ペプチド、又は、それらの製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体、プロドラッグ若しくは薬理学的に活性な代謝産物である、前記方法。
【請求項61】
パンテチン又はその誘導体及び第二の活性物質の投与形態を含んでいるキット。
【請求項62】
さらに使用説明書も含んでいる、請求項61に記載のキット。
【請求項63】
さらに第三の活性物質も含んでいる、請求項61に記載のキット。
【請求項64】
前記パンテチン又は活性成分を投与するのに使用する1以上の装置も含んでいる、請求項61に記載のキット。
【請求項65】
前記装置が、注射器、点滴バッグ、絆創膏又は吸入器である、請求項64に記載のキット。
【請求項66】
D,D-パンテチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体若しくはプロドラッグ及び第二の活性物質を含有している医薬組成物。
【請求項67】
L,L-パンテチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体若しくはプロドラッグ及び第二の活性物質を含有している医薬組成物。
【請求項68】
D,L-パンテチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体若しくはプロドラッグ及び第二の活性物質を含有している医薬組成物。
【請求項69】
L,D-パンテチン又はその製薬上許容される塩、溶媒和物、包接化合物、多形体若しくはプロドラッグ及び第二の活性物質を含有している医薬組成物。

【公表番号】特表2006−509722(P2006−509722A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−519749(P2004−519749)
【出願日】平成15年7月2日(2003.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/020780
【国際公開番号】WO2004/004774
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(503131490)エスペリオン セラピューティクス,インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】