膜パターンの形成方法、デバイスの製造方法
【課題】 基板面内で均一な膜厚のパターンを形成することが可能な膜パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】 本発明の膜パターンの形成方法は、機能性材料を溶媒に溶解ないし分散させてなる機能液Lを基体P上に配置し、前記機能液Lを乾燥することにより、前記機能性材料からなる膜パターンFを形成する方法であって、前記膜パターンFが形成される前記基体Pの有効領域TEに前記機能液Lを配置する工程と、前記有効領域TEの周囲の非有効領域TDに前記機能液L又は前記溶媒を配置する工程と、前記有効領域TE及び前記非有効領域TDに配置された前記機能液L又は前記溶媒を乾燥する工程とを有し、前記乾燥の開始から終了までの期間において、前記非有効領域TDに配置された前記溶媒の表面積SDが、前記有効領域TEに配置された前記溶媒の表面積SEに対して、SE≦SDを満たすように乾燥を行なうことを特徴とする。
【解決手段】 本発明の膜パターンの形成方法は、機能性材料を溶媒に溶解ないし分散させてなる機能液Lを基体P上に配置し、前記機能液Lを乾燥することにより、前記機能性材料からなる膜パターンFを形成する方法であって、前記膜パターンFが形成される前記基体Pの有効領域TEに前記機能液Lを配置する工程と、前記有効領域TEの周囲の非有効領域TDに前記機能液L又は前記溶媒を配置する工程と、前記有効領域TE及び前記非有効領域TDに配置された前記機能液L又は前記溶媒を乾燥する工程とを有し、前記乾燥の開始から終了までの期間において、前記非有効領域TDに配置された前記溶媒の表面積SDが、前記有効領域TEに配置された前記溶媒の表面積SEに対して、SE≦SDを満たすように乾燥を行なうことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜パターンの形成方法及びデバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機蛍光材料等の機能性材料をインク化し、該インク(機能液)を基体上に吐出する液滴吐出法により、機能性材料のパターニングを行う方法を採用して、一対の電極間に該機能性材料からなる機能層が挟持された構成の有機エレクトロルミネッセンス装置(以下、有機EL装置という)、特に機能性材料として有機発光材料を用いた有機EL装置の開発が行われている。
【0003】
上述した機能性材料のパターニング法として、基体上に形成したITO等からなる画素電極の周囲にバンクと呼ばれる隔壁を形成し、次に画素電極及びこの画素電極に隣接する前記バンクの一部を親液性に処理するとともにバンクの残りの部分を撥液性に処理した後、機能層の構成材料を含むインクを画素電極に吐出して乾燥することにより、該画素電極上に機能層を形成する方法が採用されている。具体的には、複数のノズルが副走査方向に沿って配列されてなるノズル列を有する液滴吐出ヘッドを用い、この液滴吐出ヘッドを基体に対して主走査方向に走査しつつ、前記ノズルからインクを吐出することにより、画素電極上に機能層を形成する方法が知られている。このような方法は、マイクロオーダーの液滴を画素領域に配することが可能なため、材料の利用効率を考えると、スピンコートなどの方法に比べて有効である。
【0004】
しかしながら、画素電極が配された表示領域(有効領域)のうち周辺部では、インクから蒸発する溶媒分子の分圧が該表示領域の中央部よりも少なくなる場合がある。このような現象が生じると、周辺部において溶媒の蒸発速度が極端に速くなり、その結果、製造される有機EL装置において機能層の膜厚むらや1画素内での膜の偏り(膜の断面形状が斜めに傾いた状態)が生じる惧れがある。このような膜厚むらが生じた有機EL装置は、その特性が低下し、これを表示装置等として用いた場合には、表示むらを生じることもある。そこで、これを解決するために、例えば特許文献1のような技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−222695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された技術は、表示領域の外側に表示に寄与しないダミー領域(非有効領域)を形成し、該ダミー領域にも機能層と同一のインクを塗布することで、表示領域内における溶媒分子の分圧のばらつきを小さくするものである。通常は、ダミー領域に表示領域と同様のパターンのバンクを形成し、該バンクの開口部にインクを塗布するものとしている(特許文献1の図2を参照)。この方法によれば、表示領域の中央部と周辺部で溶媒の乾燥が等しく進行するので、機能層の膜厚むらや膜の偏りのない高品質な膜を形成することが可能となる。
【0006】
ダミー領域に吐出されるインクは表示用の画素を形成するものではないので、表示領域に形成される画素(有効画素)と区別して、ダミー画素と呼ばれることがある。上記のような膜厚むらの発生を防止するためには、少なくとも数列から数十列分のダミー画素を形成する必要があるが、従来は全てのダミー画素を有効画素と同じピッチ、同じパターンで形成していたため、インクを表示領域と同様に塗布するのみでは、必ずしも十分な膜厚むらの解消には至らない場合があった。つまり、基体に吐出されたインクの乾燥は同心円状に周辺から進行するため、ダミー領域のインクが先に乾燥してしまい、ダミー領域を設けない場合と同様の膜厚むらを生じる場合があった。
【0007】
一方、特許文献1には、ダミー領域にバンクを設けずに、基板の表面、すなわちバンクとして形成される有機材料膜の上面に直接インクを吐出する方法も開示されている(特許文献1の図3を参照)。しかし、この場合には、乾燥の進行に伴ってダミー領域のインクの径が小さくなるので、乾燥工程がある程度進んだ段階では、十分な溶媒雰囲気が形成できなくなるという問題がある。つまり、この方法では、ダミーのインクは撥液化された有機材料膜の表面に吐出されるので、インクと材料膜との間に大きな後退接触角が形成されてしまい、インクを乾燥すると、インクの接触角は変化せずに、インクの径、すなわちインクの表面積のみが小さくなっていく。そのため、乾燥がある程度進むと、ダミー領域のインクによって必要な溶媒蒸気の分圧を維持できなくなり、結局、ダミー領域を設けなかった場合と同様の問題が生じることになる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、基板面内で均一な膜厚のパターンを形成することが可能な膜パターンの形成方法及びデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の膜パターンの形成方法は、機能性材料を溶媒に溶解ないし分散させてなる機能液を基体上に配置し、前記機能液を乾燥することにより、前記機能性材料からなる膜パターンを形成する方法であって、前記膜パターンが形成される前記基体の有効領域に前記機能液を配置する工程と、前記有効領域の周囲の非有効領域に前記機能液又は前記溶媒を配置する工程と、前記有効領域及び前記非有効領域に配置された前記機能液又は前記溶媒を乾燥する工程とを有し、前記乾燥の開始から終了までの期間において、前記非有効領域に配置された前記溶媒の表面積SDが、前記有効領域に配置された前記溶媒の表面積SEに対して、SE≦SDを満たすように乾燥を行なうことを特徴とする。
この方法によれば、非有効領域の溶媒蒸気の分圧を乾燥期間の開始から終了に至るまで常に十分な大きさに維持できるので、有効領域全体で機能液から溶媒が蒸発する速度、すなわち乾燥速度が均一になり、膜厚むらや膜の偏りなどがない高品質な膜を形成することができる。
【0010】
本発明においては、前記非有効領域に配置する単位面積当たりの前記溶媒の表面積SDを、前記有効領域に配置する単位面積当たりの前記溶媒の表面積SEよりも大きくし、且つ前記非有効領域における前記溶媒の後退接触角を30°以下に調節するものとすることができる。
この方法によれば、非有効領域における溶媒の後退接触角が30°以下となっているので、溶媒を乾燥しても、基体の面内方向における塗膜の径は殆ど変化しない。このため、乾燥期間中常に一定の溶媒蒸気の分圧を維持することができる。
【0011】
本発明においては、前記機能液又は前記溶媒の配置工程に先立って、前記基体の有効領域及び非有効領域に、前記機能液又は前記溶媒が配置される液体受容部を形成するものとすることができる。
この方法によれば、液体受容部によって機能液又は溶媒の平面的なサイズが規定されるので、有効領域の膜パターンの形状や非有効領域における溶媒蒸気の分圧を精密に制御することが可能である。
【0012】
本発明においては、前記有効領域及び前記非有効領域の前記液体受容部を隔壁によって区画された領域として形成し、且つ前記非有効領域における前記液体受容部のサイズを前記有効領域における前記液体受容部のサイズよりも大きくするものとすることができる。
この方法によれば、非有効領域における溶媒の表面積は液体受容部のサイズで規定されるので、非有効領域の溶媒蒸気の分圧を乾燥期間中常に一定に維持することが可能である。また、隔壁によって膜パターンの形状が規定されることから、例えば隣接する隔壁間の幅を狭くするなど、隔壁を適切に形成することにより、膜パターンの微細化や細線化を図ることができる。
【0013】
本発明においては、前記有効領域の前記液体受容部を隔壁によって区画された領域として形成し、前記非有効領域の前記液体受容部を前記基体の表面処理によって形成すると共に、前記非有効領域における前記液体受容部のサイズを前記有効領域における前記液体受容部のサイズよりも大きくし、且つ前記非有効領域における前記液体受容部の前記溶媒に対する後退接触角を30°以下となるように調節するものとすることができる。
この方法によれば、非有効領域における溶媒の後退接触角が30°以下となっているので、溶媒を乾燥しても、基体に平行な面内における塗膜の径は殆ど変化しない。このため、乾燥期間中常に一定の溶媒蒸気の分圧を維持することができる。
【0014】
本発明においては、前記非有効領域の前記液体受容部を、前記隔壁の上面を表面処理することによって形成するものとすることができる。
この方法によれば、非有効領域に形成される膜パターンと基体との間に、隔壁を構成する材料膜が介在するので、例えば有機EL装置の発光層等を形成する場合のように、基体の表面に配線等が形成されている場合であっても、これらの配線と膜パターンとの間に大きな寄生容量が発生することはない。また、前記材料膜によって基体の表面を機能液又は溶媒から保護することもできる。
【0015】
本発明においては、前記機能液又は前記溶媒の配置を液滴吐出法により行なうものとすることができる。
この方法によれば、液滴吐出法を用いることにより、スピンコート法などの他の塗布技術に比べて、液体材料の消費に無駄が少なく、基体上に配置する液体材料の量や位置の制御を行ないやすいという利点がある。
【0016】
本発明のデバイスの製造方法は、膜パターンを有するデバイスの製造方法であって、前記膜パターンの形成工程が、前述した本発明の膜パターンの形成方法により行なわれることを特徴とする。
この方法によれば、有効領域全体にわたって均一な膜を有する高性能なデバイスを提供することができる。
本発明のデバイスとしては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス装置やカラーフィルタ基板等があり、これら有機エレクトロルミネッセンス装置の有機機能層(発光層、電荷輸送層等)や画素電極のパターン、又はカラーフィルタ基板のカラーフィルタパターンの形成工程等に、本発明の膜パターンの形成方法を好適に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の膜パターンの形成方法を示す概念図である。
本発明の膜パターンの形成方法は、基体P上に機能性材料を含む機能液を配置し、前記機能液を乾燥することにより、前記基体P上に前記機能性材料からなる膜パターンを形成するものである。膜パターンが形成される領域のうち、膜本来の機能が有効に発揮される一群の膜パターンによって構成される領域を有効領域TEといい、膜パターンは形成されるが、膜本来の機能を発揮しない一群の膜パターン(ダミーの膜パターン)によって構成される領域を非有効領域TDという。ただし、非有効領域TDには必ずしも膜パターンが形成される必要はなく、機能性材料を含まない溶媒のみを配置する領域、又は溶媒のみを配置する領域とダミーの膜パターンを形成する領域との双方を含む領域を非有効領域という場合もある。本発明では、これらを総称して非有効領域という。
【0018】
例えば、有機EL表示装置等の表示装置においては、有効領域TEとは、表示に用いられる一群の画素によって構成される1つのまとまった領域をいい、液晶表示装置等に使用されるカラーフィルタ基板においては、有効領域TEとは、表示に用いられる一群のカラーフィルタによって構成される1つのまとまった領域をいう。また、複数の電極や配線が形成される基板にあっては、当該複数の電極や当該複数の配線によって構成される1つのまとまった領域をいう。本発明の膜パターンの形成方法は、このような有効領域TEに前記機能液を選択的に配置することにより、所望の形状及び機能を有する一群の膜パターンを形成するものである。
【0019】
図1では、有効領域TEを例えば複数の表示用の画素(有効画素)PEからなる有効光学領域とし、この有効光学領域TEの複数の有効画素PEに対して、それぞれ機能性材料を含む機能液を液滴吐出法により選択的に吐出する例を示している。
【0020】
図1において、符号IJは液滴吐出装置、符号20は当該液滴吐出装置に備えられる液滴吐出ヘッド、符号81は当該液滴吐出ヘッドに設けられたノズルをそれぞれ示している。図1では、ノズル81の配列方向Jは有効画素PEの配列方向Xに対して傾いた状態とされているが、配列方向Jにおけるノズル81の配列ピッチ(隣接するノズル81の中心の間隔)がX方向における有効画素PEの配列ピッチ(隣接する有効画素PEの中心の間隔)と同じであれば、配列方向Jは有効画素PEの配列方向Xと一致した方向に設定される。液滴吐出ヘッド20は、有効光学領域TEと平行な面内において角度θを回転可能に構成されており、ノズル81のX方向における配列ピッチ(すなわち、ノズル81をX軸に投影したときのノズル81の配列ピッチ)と有効画素PEのX方向における配列ピッチとが一致するように、ノズル81の配列方向Jが制御される。そして、このような配列方向Jを規定した状態で、液滴吐出ヘッド20と基体PとをX方向又はY方向に相対移動できるように構成されている。
【0021】
図2は、液滴吐出ヘッド20の一例を示す分解斜視図である。
液滴吐出ヘッド20は、複数のノズル81を有するノズルプレート80と、振動板85を有する圧力室基板90と、これらノズルプレート80と振動板85とを嵌め込んで支持する筐体88とを備えている。
【0022】
液滴吐出ヘッド20の主要部構造は、図3の部分斜視図に示すように、圧力室基板90をノズルプレート80と振動板85とで挟み込んだ構造とされている。ノズルプレート80のノズル81は、各々圧力室基板90に区画形成された圧力室(キャビティ)91に対応している。圧力室基板90には、シリコン単結晶基板等をエッチングすることにより、各々が圧力室として機能可能にキャビティ91が複数設けられている。キャビティ91同士の間は側壁92で分離されている。各キャビティ91は供給口94を介して共通の流路であるリザーバ93に繋がっている。
【0023】
振動板85にはタンク口86が設けられ、図示略の液体材料供給タンクからパイプを通じて任意の液体材料を供給可能に構成されている。振動板85上のキャビティ91に相当する位置には圧電体素子87が配設されている。圧電体素子87はPZT素子等の圧電性セラミックスの結晶を上部電極および下部電極(図示せず)で挟んだ構造を備える。圧電体素子87は図示略の制御装置から供給される吐出信号に対応して体積変化を発生可能に構成されている。
【0024】
液滴吐出ヘッド20から液滴を吐出するには、まず、制御装置が液滴を吐出させるための吐出信号を液滴吐出ヘッド20に供給する。液滴は液滴吐出ヘッド20のキャビティ91に流入しており、吐出信号が供給された液滴吐出ヘッド20では、その圧電体素子87がその上部電極と下部電極との間に加えられた電圧により体積変化を生ずる。この体積変化は振動板85を変形させ、キャビティ91の体積を変化させる。この結果、そのキャビティ91のノズル81から液滴が吐出される。液滴が吐出されたキャビティ91には吐出によって減った液体材料が新たに液体材料供給タンクから供給される。
【0025】
本実施形態に係る液滴吐出装置IJに備えられた液滴吐出ヘッド20は、圧電体素子に体積変化を生じさせて液滴を吐出させる構成であるが、発熱体により液体材料に熱を加えその膨張によって液滴を吐出させるような構成であってもよい。
【0026】
図4(a)は、有効光学領域TEを含む基体Pの平面構成を示す模式図であり、図4(b)は有効光学領域TEの角部の領域Kを拡大して示す模式図である。
【0027】
図4に示すように、本発明の膜パターンの形成方法では、有効光学領域(有効領域)TEの周囲に、非有効領域であるダミー領域TDを形成し、このダミー領域TDにダミーの液体材料を吐出することにより、有効光学領域TEの周囲にも有効光学領域TEと同じ溶媒雰囲気を形成する。ダミーの液体材料としては、通常は、有効光学領域TEに吐出するのと同じ機能液を吐出するが、溶媒のみを吐出することも可能である。この場合の溶媒としては、該機能液に含まれる溶媒や、該機能液に含まれる溶媒に近い沸点を有する他の溶媒を用いることができる。
【0028】
ダミー領域TDは、有効光学領域TEの周囲を囲むように設けられている。ダミー領域TDには、液体材料を配置するための複数の領域PDが設けられている。これらの領域PDは、有効光学領域TEに形成される有効画素PEに対して、ダミー画素と呼ばれる場合がある。ダミー画素PDは、表示に寄与しない画素であり、通常は画素電極やスイッチング素子は形成されないが、専ら検査を行なうために画素電極やスイッチング素子を形成し、有効画素PEに準じた機能を持たせる場合もある。
【0029】
液滴吐出法においては、吐出された液滴を精度良く所定の画素に配置するために、画素と画素との間に、画素を仕切るための隔壁(バンク)を形成する場合がある。この場合には、隔壁によって区画された個々の領域が、液体材料を配置するための領域PD、すなわち液体受容部であり、これら複数の液体受容部のうち、有効光学領域TEに配置された液体受容部が有効画素PEとなり、ダミー領域TDに配置された液体受容部がダミー画素PDとなる。
【0030】
また、隔壁を形成せずに、基体Pを表面処理するのみで、液体材料の配置される領域と配置されない領域とを区画する場合もある。すなわち、基体Pの特定の領域に機能液に対して親和性(親液性)が低くなるような処理(撥液処理)を施し、有効画素PE及びダミー画素PDとなる領域を機能液に対して相対的に親和性の高い領域(親液領域)とする場合がある。この場合には、親液領域として形成された個々の領域が液体受容部となる。さらに、配置精度が要求されない場合には、上述のような表面処理を行なわずに、そのまま基体P上に液体材料を吐出する場合もあり、この場合には、液体材料の塗膜が形成される個々の領域が液体受容部となる。
【0031】
本実施形態では、前述の表面処理によって、隔壁を形成せずに有効画素PE及びダミー画素PDを形成するものとする。
【0032】
図4(b)に示すように、本発明においては、ダミー画素PDのサイズは、有効画素PEのサイズよりも大きく形成されている。液体材料の乾燥は有効光学領域TEの周辺部から進行するため、ダミー領域TDのみで乾燥が進行するのを防ぐために、ダミー領域PDに多くの溶媒を配置する必要があるからである。また、ダミー画素PDにおいては、基体Pの液体材料(特に溶媒)に対する後退接触角は30°以下に制御されている。こうすることで、乾燥による液体材料の収縮を抑えることができ、その結果、溶媒蒸気の分圧を乾燥期間中常に一定に保つことが可能になる。
【0033】
なお、図4(b)では、ダミー画素PDの形状をダミー領域TD内で全て共通とし、ダミー画素PDのX方向及びY方向の配列ピッチ(隣り合うダミー画素PDの中心の間隔)を、有効光学領域TEにおける有効画素PEのX方向及びY方向の配列ピッチ(隣り合うダミー画素PEの中心の間隔)と同じとしているが、ダミー画素PDの構成は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、ダミー画素PDのサイズ(すなわち当該領域に吐出される液体材料の表面積の大きさ)や配列ピッチは、ダミー領域TD内でばらついていてもよい。この場合、ダミー画素PDのサイズとは、ダミー領域TDに設けられた平均的なダミー画素PDのサイズをいう。ただし、このようなばらつきは、ダミー領域TDに配置される単位面積当たりの溶媒の量(すなわちダミー画素PDの面積)が、有効光学領域TEに配置される単位面積当たりの溶媒の量よりも大きくなる限りにおいて許容されるものとする。
【0034】
次に、図5を用いて、本発明の膜パターンの形成方法を説明する。
まず、図5(a)に示すように、基体Pの有効光学領域TE及びダミー領域TDに前述の表面処理を施し、基体Pの表面に、有効画素PE及びダミー画素PDとなる複数の領域を形成する。
【0035】
この処理においては、ダミー画素となる各領域の面積を有効画素となる各領域の面積よりも大きい面積で形成する。また、ダミー画素となる領域では、基体Pの液体材料(特に溶媒)に対する後退接触角が30°以下となるように調節する。
【0036】
なお、基体Pとしては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラスチックフィルム、金属板など各種のものが挙げられる。さらに、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものも含む。
【0037】
上述の処理を行なったら、図5(b)に示すように、親液領域として形成されたそれぞれの領域PE,PDに機能液Lを吐出する。機能液Lは、膜パターンFを構成する材料を溶媒に溶解ないし分散させてなる液体材料である。なお、機能液Lの吐出には、前述した液滴吐出装置IJを用いる。
【0038】
膜パターンFを構成する材料としては、電気的機能や光学的機能等の種々の機能を持った材料(機能性材料)を用いることができる。例えば、有機EL素子の発光層を形成する場合には、機能性材料として蛍光あるいはリン光を有する材料を用いればよく、カラーフィルタを形成する場合には、顔料等の微粒子着色材料を用いればよい。また、液晶装置等の透明画素電極を形成する場合には、インジウム錫酸化物(ITO)等の微粒子導電材料を用いればよい。
【0039】
溶媒としては、上記の機能性材料を溶解ないし分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好適である。
【0040】
ダミー画素PDに吐出する溶媒の量は、有効画素PEに吐出する溶媒の量よりも多くすることが望ましい。ダミー領域TDでは液滴の乾燥が速く進むため、吐出する溶媒の量を有効画素PEと同一とすると、有効光学領域TEの乾燥が終了する前にダミー領域の溶媒が全て蒸発してしまい、有効光学領域TE内で均一な乾燥が行なえなくなるからである。
また、ダミー画素PD及び有効画素PDに吐出する溶媒の量は、少なくともダミー画素PDに配置される溶媒の表面積SDが有効画素PEに配置される溶媒の表面積SEよりも大きくなるような量に設定する。こうすることで、ダミー領域TDの溶媒蒸気の分圧を有効光学領域TEの溶媒蒸気の分圧よりも高い分圧とすることができる。
【0041】
機能液Lを吐出したら、図5(c)に示すように、機能液Lの溶媒を乾燥により除去し、有効画素PEに前記機能性材料からなる膜パターンFを形成する。
【0042】
前述のように、本発明では、有効光学領域TEの周囲にダミーの液体材料を吐出しているので、機能液Lを乾燥するときに、有効光学領域TEにおける溶媒蒸気の分圧が、ダミー領域TDにおける溶媒蒸気の分圧に比して過剰に大きくなることはない。特に、ダミー領域TDに配置される単位面積当たりの溶媒の量が、有効光学領域TEに配置される単位面積当たりの溶媒の量よりも大きくなっているので、乾燥が速く進むダミー領域TDにおいても溶媒の分圧が急激に低下することがない。溶媒蒸気の分圧は、配置された溶媒の表面積に依存し、配置された溶媒の表面積が大きいほど蒸発した溶媒の分圧は大きくなるが、本発明においては、配置する溶媒の表面積をダミー画素PDのサイズによって調節し、これにより有効光学領域TE内で溶媒の分圧に偏りが生じないようにしているので、有効光学領域全体で機能液から溶媒が蒸発する速度、すなわち乾燥速度が均一になり、膜厚むらや膜の偏りなどがない高品質な膜を形成することができる。
【0043】
さらに、ダミー画素PDでは、基体Pの機能液Lに対する後退接触角は30°以下に制御されているので、ダミー画素PDに配置された機能液Lは、乾燥の開始から終了までの間、その表面積が殆ど変化することはなく、常に一定の溶媒蒸気の分圧を維持することが可能である。特に、有効画素PEに吐出される溶媒の量は、ダミー画素PDに吐出される溶媒の量よりも少なく、表面積も小さいため、乾燥の開始から終了までの期間は常に、各ダミー画素PDに配置された溶媒の表面積SDが、各有効画素PEに配置された溶媒の表面積SEに対して、SE≦SDを満たすような条件で乾燥が行なわれることになる。このため、ダミー領域TDの溶媒蒸気の分圧を乾燥期間の開始から終了に至るまで常に十分な大きさに維持することができる。
【0044】
図6は、機能液Lの乾燥工程を示す模式図である。
液滴吐出ヘッド20から滴下された機能液Lは、塗布後の乾燥工程において液面が徐々に低下し、最終的に固化されて膜パターンFを形成する。この際、図6(b)のように機能液Lと基体Pとの濡れ性が悪いと(後退接触角θB>30°)、機能液Lの塗膜は、接触角θBを一定として、基体Pの面方向(図示左右方向)及び高さ方向(図示上下方向)の双方で収縮していく。溶媒蒸気の分圧は、配置された溶媒の表面積に依存し、配置された溶媒の表面積が大きいほど蒸発した溶媒分子の分圧は大きくなるが、図6(b)の場合には、塗膜の収縮が基体Pの面方向において生じるため、溶媒蒸気の分圧は乾燥の進行に伴って徐々に小さくなり、乾燥工程がある程度進むと、ダミー領域TDにおいて必要な溶媒蒸気の分圧が維持できなくなってしまう。
【0045】
一方、図6(a)のように機能液Lと基体Pとの濡れ性が良いと(後退接触角θA≦30°)、塗膜の収縮は基体Pの面方向には生じず、専ら塗膜の高さ方向の収縮(すなわち接触角θAの変化)のみが生じるようになる。このため、乾燥が進んでも塗膜の表面積は殆ど変化せず、溶媒蒸気の分圧も殆ど変化しないことになる。したがって、ダミー領域の溶媒蒸気の分圧は乾燥期間中常に一定に維持されることになり、その結果、有効光学領域全体で膜パターンFの膜厚を均一化することが可能になるのである。
【0046】
[第2の実施の形態]
次に、本発明のデバイスの製造方法の一実施の形態として、本発明の膜パターンの形成方法を有機EL装置の製造方法に適用した例について説明する。この有機EL装置は、有機EL素子を画素として基体上に配列してなる有機EL装置であり、例えば電子機器等の表示手段として好適に用いることができるものである。
【0047】
図7は、有機EL装置70の回路構成図、図8は、同有機EL装置70の平面模式図である。また図9は、同有機EL装置70に備えられた各画素PEの平面構造を示す図であって、(a)は画素PEのうち、主にTFT等の画素駆動部分を示す図、(b)は画素間を区画するバンク(隔壁)B等を示す図である。また図10は、図9(a)のA−A線に沿う断面構成を示す図である。
【0048】
図7に示すように、有機EL装置70は、ガラス等からなる基体上に、複数の走査線(配線、電力導通部)131と、これら走査線131に対して交差する方向に延びる複数の信号線(配線、電力導通部)132と、これら信号線132に並列に延びる複数の共通給電線(配線、電力導通部)133とがそれぞれ配線されたもので、走査線131及び信号線132の各交点毎に、画素PEが設けられて構成されたものである。
【0049】
信号線132に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、及びアナログスイッチ等を備えるデータ側駆動回路72が設けられている。一方、走査線131に対しては、シフトレジスタ及びレベルシフタ等を備える走査側駆動回路73が設けられている。また、画素PEの各々には、走査線131を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT(薄膜トランジスタ)142と、このスイッチング用TFT(薄膜トランジスタ)142を介して信号線132から供給される画像信号(電力)を保持する保持容量capと、保持容量capによって保持された画像信号がゲート電極に供給される駆動用TFT143と、この駆動用TFT143を介して共通給電線133に電気的に接続したときに共通給電線133から駆動電流が流れ込む画素電極141と、この画素電極141と共通電極154との間に挟み込まれる発光部140と、が設けられている。そして、前記画素電極(第1電極)141と共通電極(第2電極)154と、有機機能層からなる発光部140とによって構成される素子が、有機EL素子である。
【0050】
このような構成のもとに、走査線131が駆動されてスイッチング用TFT142がオンとなると、そのときの信号線132の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて、駆動用TFT143のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT143のチャネルを介して共通給電線133から画素電極141に電流が流れ、さらに発光部140を通じて共通電極154に電流が流れることにより、発光部140は、これを流れる電流量に応じて発光するようになる。
【0051】
次に、平面構造を見ると、図8に示すように、本実施形態の有機EL装置70は、基体Pの中央部に、マトリックス状に配置された有機EL素子200を具備している。
【0052】
基体Pは、例えばガラス等の透明基板であり、基体Pの中央に位置し、有機EL素子200が機能する有効光学領域(有効領域)TEと、基体Pの周縁に位置して有効光学領域TEの外周に配置され、有機EL素子200が機能しないダミー領域(非有効領域)TDとに区画されている。有効光学領域TEは、マトリックス状に配置された有機EL素子200によって形成される領域であり、有効表示領域とも言う。また、ダミー領域TDは、有効光学領域TEに隣接して形成され、表示に寄与しない領域として構成されている。有効光学領域TEには、有効画素PEを区画するバンクB(図9参照)が形成されており、バンクBによって区画される領域が、機能液を配置するための液体受容部を構成し、この液体受容部に機能液を配置することにより、後述の有機EL素子の有機機能層が形成される。すなわち、バンクBによって区画された領域が有効画素であり、有効光学領域TEには、個々の有効画素に有機EL素子200が形成されている。一方、ダミー領域TDには、ダミー画素PDを区画するためのバンクは形成されていない。バンクBの材料膜はダミー領域TDにも形成されているが、ダミー領域TDでは当該材料膜のパターニングが行なわれておらず、ダミー画素PDに配置すべき液体材料は、当該材料膜の上面に直接吐出するものとされている。
【0053】
共通電極154は、その一端が基体P上に形成された陰極用配線(図示略)に接続されており、図8に示すように、この配線の一端部154aがフレキシブル基板75上の配線77に接続されている。なお、この配線77は、フレキシブル基板75上に備えられた駆動IC76(駆動回路)に接続されている。
【0054】
また、図8に示すように、基体Pのダミー領域TDには、前述の共通給電線133(133R、133G、133B)が配線されている。さらに、図8において、有効光学領域TEの図示両横側には、前述の走査側駆動回路73、73が配置されている。この走査側駆動回路73、73はダミー領域TDの下側の回路素子部に設けられている。さらに回路素子部には、走査側駆動回路73、73に接続される駆動回路用制御信号配線73aと駆動回路用電源配線73bとが設けられている。また、図8において、有効光学領域TEの図示上側には検査回路74が配置されている。この検査回路74により、製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行うことができる。
【0055】
次に、図9(a)に示す画素PEの平面構造をみると、画素PEは、平面視略矩形状の画素電極141の四辺が、信号線132、共通給電線133、走査線131及び図示しない他の画素電極用の走査線によって囲まれた配置となっている。また図10に示す画素PEの断面構造をみると、基体P上に、駆動用TFT143が設けられており、駆動用TFT143を覆って形成された複数の絶縁膜を介した基体P上に、有機EL素子200が形成されている。有機EL素子200は、基体P上に立設されたバンクBに囲まれる領域内に設けられた有機機能層140を主体として構成され、この有機機能層140を、画素電極141と共通電極154との間に挟持した構成を備える。
【0056】
ここで、図9(b)に示す平面構造をみると、バンクBは、画素電極141の形成領域に対応した平面視略矩形状の開口部149b,151を有しており、この開口部149b,151に先の有機機能層140が形成されるようになっている。
【0057】
図10に示すように、駆動用TFT143は、半導体膜210に形成されたソース領域143a、ドレイン領域143b、及びチャネル領域143cと、半導体層表面に形成されたゲート絶縁膜220を介してチャネル領域143cに対向するゲート電極143Aとを主体として構成されている。半導体膜210及びゲート絶縁膜220を覆う第1層間絶縁膜230が形成されており、この第1層間絶縁膜230を貫通して半導体膜210に達するコンタクトホール232,234内に、それぞれドレイン電極236、ソース電極238が埋設され、各々の電極はドレイン領域143b、ソース領域143aに導電接続されている。第1層間絶縁膜230には、第2層間絶縁膜240が形成されており、この第2層間絶縁膜240に貫設されたコンタクトホールに画素電極141の一部が埋設されている。そして画素電極141とドレイン電極236とが導電接続されることで、駆動用TFT143と画素電極141(有機EL素子200)とが電気的に接続されている。画素電極141の周縁部に一部乗り上げるようにして無機絶縁材料からなる無機バンク(第1隔壁層)149が形成されている。無機バンク149上には、有機材料からなる有機バンク(第2隔壁層)150が積層され、これら無機バンク149及び有機バンク150によって、有機EL装置71における隔壁部材が形成されている。
【0058】
上記有機EL素子200は、画素電極141上に、電荷輸送層としての正孔注入層140Aと、発光層140Bとを積層し、この発光層140Bと有機バンク150とを覆う共通電極154を形成することにより構成されている。正孔注入層140Aは、画素電極141を覆って形成されており、その周端部は、有機バンク150の下層側に設けられた無機バンク149のうち、有機バンク150から画素電極141中央側に突出して配置された部分も覆って形成されている。
【0059】
基体Pとしては、いわゆるボトムエミッション型の有機EL装置の場合、基体P側から光を取り出す構成であるので、ガラス等の透明基板が用いられる。一方、いわゆるトップエミッション型の有機EL装置の場合には、有機EL素子200が配設された側から光を取り出す構成であるので、ガラス等の透明基板のほか、不透明基板も用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。
【0060】
画素電極141は、基体Pを介して光を取り出すボトムエミッション型の場合には、ITO(インジウム錫酸化物)等の透光性導電材料により形成されるが、トップエミッション型の場合には透光性である必要はなく、金属材料等の適宜な導電材料によって形成できる。
【0061】
共通電極154は、発光層140BとバンクBの上面、さらにはバンクBの側面部を形成する壁面を覆った状態で基体P上に形成される。この共通電極154を形成するための材料としては、トップエミッション型の場合、透明導電材料が用いられる。透明導電材料としてはITOが好適であるが、他の透光性導電材料であっても構わない。ボトムエミッション型の場合には、透明導電材料のほか、アルミニウム等の不透明若しくは光反射性を有する導電材料を用いることができる。
【0062】
共通電極154の上層側には、陰極保護層を形成してもよい。係る陰極保護層を設けることで、製造プロセス時に共通電極154が腐食されるのを防止する効果が得られ、無機化合物、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン窒酸化物等のシリコン化合物により形成できる。共通電極154を無機化合物からなる陰極保護層で覆うことにより、無機酸化物からなる共通電極154への酸素等の侵入を良好に防止することができる。なお、このような陰極保護層は、共通電極154の平面領域の外側の基体上まで、10nmから300nm程度の厚みに形成される。
【0063】
[有機EL装置の製造方法]
次に、有機EL装置70の製造方法について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、図7から図10に示した構成を備えた有機EL装置を液滴吐出法を用いて製造する例について説明する。なお、以下に示す手順や液体材料の材料構成は一例であってこれに限定されるものではない。また、液滴吐出装置については前述のものを用いることができる。
【0064】
以下、上記有機EL装置70に備えられる有機EL素子200の製造方法について図11及び図12を参照しながら説明する。図11及び図12には、有効光学領域TEとダミー領域TDの境界部分が図示されている。
【0065】
まず、図11(a)に示すように、基体P上に画素電極141、該画素電極141を駆動するための駆動用TFT143等の回路素子部を形成する。これらは公知の方法により形成することができる。図11(a)では、有効光学領域TEのみに画素電極141を形成しているが、ダミー領域TDに対しても同様の画素電極を形成することができる。この場合、ダミー領域TDに形成される画素(ダミー画素)は、検査用の素子として用いることが可能である。
【0066】
次に、回路素子部の形成された基体P上にバンクBを形成する。
図11(a)では、バンクBとして、有効画素PEにのみ開口部149b,151を有する形状を採用する。ダミー領域に開口部を設けないことで、ダミーの膜パターンと回路素子部に形成された配線等との間に寄生容量が発生しないようにすることが可能である。ただし、必要であれば、有効画素PEとダミー画素PDの双方に開口部149b,151を設けることも可能である。
【0067】
ここではまず、画素電極141の周縁部と一部平面的に重なるように、酸化シリコン等の無機絶縁材料からなる無機バンク149を形成する。具体的には、画素電極141及び平坦化絶縁膜240を覆うように酸化シリコン膜を形成した後、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて酸化シリコン膜をパターニングし、画素電極141の表面を部分的に開口させることで形成できる。
【0068】
次に、無機バンク149上に、アクリル、ポリイミド等の有機絶縁材料からなる有機バンク150を形成する。有機バンク150は、無機バンク149と共に、有機EL素子200を区画するバンク(隔壁)Bを形成するものである。すなわち、有効光学領域TEにおいては、無機バンク149及び有機バンク150によって区画された各々の領域が液体受容部であり、これらの液体受容部がそれぞれ有効画素PEとなる。一方、ダミー領域TDにおいては、バンクBが開口部を有していないので、バンクBの上面(すなわちパターニングされていない有機バンク150の上面)の平坦な領域がダミー画素PDとなる。
【0069】
有機バンク150の高さは、例えば1μm〜2μm程度に設定され、基体P上で有機EL素子200の仕切部材として機能する。このような構成のもと、有機EL素子200の正孔注入層や発光層の形成場所、すなわちこれらの形成材料の塗布位置とその周囲の有機バンク150との間に十分な高さの段差からなる開口部151が形成される。有機バンク150の開口部151と無機バンク149の開口部149bとは互いに連通しており、画素電極141はこれらの開口部内において露出した状態となっている。
【0070】
バンクBの上面には、ダミー画素PDとなる部分に対して親液性を付与するような処理を行なうことが望ましい。この処理においては、バンク上面の機能液に対する後退接触角が30°以下となるようにする。この処理によって親液領域となった各々の領域が液体受容部であり、これらの液体受容部がそれぞれダミー画素PDとなる。ただし、バンク上面が予め十分な親液性を有している場合には、係る処理は不要である。この場合には、機能液が配置された各々の領域が液体受容部であり、これらの液体受容部がそれぞれダミー画素PDとなる。
【0071】
ダミー画素PDのサイズは、有効画素PEのサイズよりも大きなものとする。すなわち、ダミー領域に形成する個々の親液領域の面積を有効画素に形成されるバンクの開口部よりも大きくし、より多くの溶媒蒸気をダミー領域から供給できるようにする。また、ダミー画素に多くの溶媒を供給できるようにすることで、乾燥が速く進むダミー領域において有効光学領域と同程度の乾燥時間を確保することも目的としている。
【0072】
有機バンク150の開口部151のX方向及びY方向における間隔(配列ピッチ)は、有効画素PEとダミー画素PDとで同じ間隔とされる。すなわち、有効画素PEとダミー画素PDは同じ配置密度で形成される。ただし、ダミー画素PDのサイズや配置密度はダミー領域TD内でばらついていてもよい。この場合、ダミー画素PDのサイズとは、ダミー領域TDに設けられた平均的なダミー画素PDのサイズをいう。ただし、このようなばらつきは、ダミー領域TDに配置される単位面積当たりの溶媒の表面積が、有効光学領域に配置される単位面積当たりの溶媒の表面積よりも大きくなる限りにおいて許容される。
【0073】
有機バンク150を形成するに際しては、有機バンク150の開口部151の壁面を、無機バンク149の開口部149bから若干外側へ後退させて形成するのがよい。このように有機バンク150の開口部151内に無機バンク149を一部露出させておくことで、有機バンク150内での液体材料の濡れ広がりを良好なものとすることができる。
【0074】
基体P上にバンクBを形成したら、図11(b)に示すように、液滴吐出ヘッドにより、正孔注入層140Aを形成するための機能液L1をバンクBによって区画された塗布位置に選択的に塗布する。機能液L1は、正孔注入層形成材料を溶媒に溶解ないし分散させたものである。
【0075】
正孔注入層形成材料としては、ポリマー前駆体がポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム、ポリスチレンスルフォン酸、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルフォン酸との混合物(PEDOT/PSS)等を例示することができる。また、溶媒としては、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリノン等の極性溶媒を例示することができる。
【0076】
ダミー画素PDに吐出する機能液L1の量(特に溶媒の量)は、有効画素PEに吐出する機能液の量よりも多くすることが望ましい。ダミー領域TDでは液滴の乾燥速度が速いため、吐出する溶媒の量をダミー画素PDと有効画素PEの双方で共通とすると、ダミー領域で速く乾燥が終了してしまい、有効光学領域TE全体で均一な乾燥が行なえなくなる場合があるからである。一方、吐出する溶媒の量をダミー画素PDで多くした場合には、有効光学領域TE内で溶媒の持続時間に偏りが生じなくなり、有効光学領域全体で膜厚むらや膜の偏りなどがない高品質な膜を形成することができる。
【0077】
機能液L1が液滴吐出ヘッドより基体P上に吐出されると、機能液L1は流動性によって水平方向に広がろうとするが、塗布された位置を囲んでバンクBが形成されているので、機能液L1はバンクBを越えてその外側に広がらない。また、画素電極141や無機バンク149の表面は良好な親液性を有しているので、吐出された機能液L1は画素電極等の表面全体に塗れ広がり、均一な塗膜を形成する。一方、ダミー領域に吐出された機能液Lは、吐出位置を中心として濡れ広がり、所定の面積を有する複数の塗膜を形成する。
【0078】
基体P上に機能液L1を配置したら、図11(c)に示すように、加熱あるいは光照射により機能液L1の溶媒を蒸発させて画素電極141上に固形の正孔注入層140A(膜パターン)を形成する。または、大気環境下又は窒素ガス雰囲気下において所定温度及び時間で焼成するようにしてもよい。あるいは大気圧より低い圧力環境下(減圧環境下)に配置することで溶媒を除去するようにしてもよい。
【0079】
この際、ダミー領域TDに配置される単位面積当たりの溶媒の量が、有効光学領域TEに配置される単位面積当たりの溶媒の量よりも大きくなっているので、乾燥が速く進むダミー領域TDにおいても溶媒の分圧が急激に低下することがない。また、ダミー画素PDの表面は機能液に対して30°以下の後退接触角を有しているので、乾燥の開始から終了までの間、機能液の表面積は殆ど変化することがなく、常に一定の溶媒蒸気の分圧を維持することができる。このため、有効光学領域全体で乾燥速度が均一になり、得られる正孔注入層140Aも膜厚の均一性や平坦性に優れたものとなる。
【0080】
続いて、図12(a)に示すように、液滴吐出ヘッドより、発光層140Bを形成するための機能液L2をバンクB内の正孔注入層140A上に選択的に塗布する。機能液L2は、発光層形成材料を溶媒に溶解ないし分散させたものである。
【0081】
発光層形成材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の高分子発光材料である、ポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリジアルキルフルオレン(PDAF)、ポリフルオレンベンゾチアジアゾール(PFBT)、ポリアルキルチオフェン(PAT)や、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)等のポリシラン系などを好適に用いることができる。また、これらの発光材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
【0082】
前記発光層形成材料については、極性溶媒に溶解ないし分散させて液体材料とし、この液体材料を液滴吐出ヘッドから吐出するのが好ましい。極性溶媒は、前記発光材料等を容易に溶解または均一に分散させることができるため、液滴吐出ヘッドのノズル孔での発光層形成材料中の固型分が付着したり目詰りを起こしたりするのを防止することができる。
【0083】
このような極性溶媒として具体的には、水、メタノール、エタノール等の水と相溶性のあるアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、2,3−ジヒドロベンゾフラン等の有機溶媒または無機溶媒が挙げられ、これらの溶媒を2種以上適宜混合したものであってもよい。
【0084】
発光層140Bの形成は、赤色の発色光を発光する発光層形成材料を含む機能液、緑色の発色光を発光する発光層形成材料を含む機能液、青色の発色光を発光する発光層形成材料を含む機能液を、それぞれ対応する有効画素PEに吐出することによって行う。
【0085】
図12(a)では、赤色有効画素に機能液L2を吐出する工程が示されている。この工程では、正孔注入層140Aを形成したのと同じように、ダミー画素PDにも同様の機能液L2を吐出する。なお、図12(a)では、機能液L2を全てのダミー画素PDに吐出しているが、一部のダミー画素PDのみに吐出するものとしてもよい。
【0086】
液滴の上に液滴を重ね描きすると、2回目に吐出した液滴は吐出位置に対して良好な濡れ広がりを示す。すなわち、一回目の液滴L1によって形成された膜140Aは、その上に重ね描きした液滴L2に対して良好な親液性を示し、液滴L2に対して十分に小さな後退接触角を有するものとなる。このため、基体Pに特別な処理を施さなくても、前述した吐出条件、すなわち塗膜のサイズ、ピッチ、後退接触角等の条件は十分に満たされることになる。
【0087】
なお、この工程では、ダミーの機能液L2を、先に吐出したダミーの機能液L1とは異なる位置に吐出することも可能である。この場合、ダミーの機能液L2の吐出は、前述した条件で行なう。
【0088】
機能液L2を吐出したら、機能液L2中の溶媒を蒸発させる。この工程により、図12(b)に示すように、赤色有効画素PEの正孔注入層140A上に固形の赤色の発光層140B(膜パターン)が形成される。そして、これにより正孔注入層140Aと発光層140Bとからなる有機機能層140が得られる。
【0089】
この際、ダミー領域TDに配置する機能液の量及び表面積が適切に制御されているので、有効光学領域TE全体で乾燥速度が均一になり、膜厚及び膜質が均一なものとなる。しかも、機能液L2が配置される正孔注入層140Aの表面が良好に平坦化されているので、その上に形成される発光層140Bも良好な平坦性を持って形成され、より均一かつ良好な発光特性、信頼性を備えた発光層となる。
【0090】
全ての有効画素PEに発光層140Bを形成したら、図12(c)に示すように、基体Pの表面全体にITO或いはマグネシウム・アルミニウム合金等からなる共通電極154を形成し、必要に応じて、共通電極154の表面に保護膜155を形成する。これにより、有機EL素子200が完成する。
なお、ダミー画素PDには、赤色、緑色及び青色の3つの発光層形成材料が形成されることになるが、図12(c)では、これらを纏めて符号140Dで示している。
【0091】
本実施形態の有機EL装置の製造方法では、ダミー領域TDに保持される単位面積当たりの溶媒の量及び表面積を、有効領域TEに保持される単位面積当たりの溶媒の量及び表面積よりも大きくしているので、機能液の乾燥工程においてダミー領域TDにおける溶媒の蒸発速度を有効光学領域TEにおける溶媒の蒸発速度に近づけることができる。特に、ダミー領域においては、基体表面の機能液に対する後退接触角が十分小さくなるように調節されているので、乾燥期間中、溶媒の表面積は殆ど変化せず、常に一定の溶媒蒸気の分圧を維持することができる。このため、有効光学領域TEの外周部と中央部とにおいて均一な膜厚の正孔注入層又は発光層を形成できるようになり、これにより、表示特性にむらの少ない信頼性に優れた有機EL装置を提供することが可能になる。
【0092】
[実施例]
次に、本発明の膜パターンの形成方法の実施例について説明する。
図13は、表面処理の異なる2つのサンプル基板(サンプル基板1、サンプル基板2)の有効領域内における膜厚の不均一性を示す図である。図13の横軸は基板上における有効画素の位置を示しており、縦軸は1有効画素内での膜厚の不均一性を示している。膜厚の不均一性は、1有効画素内で最も膜厚が大きい部分と最も膜厚が薄い部分との膜厚差によって測定している。なお、縦軸の単位はオングストローム(Å)である。
【0093】
サンプル基板1に対して、ある表面処理条件において乾燥まで行なったところ、ダミー領域の乾燥後の液滴のサイズは塗布直後の半分になった。このときのダミー領域に対する液滴の後退接触角は50°であった。また、有効領域内の膜厚のばらつきは図13(a)のようになった。図13(a)に示すように、サンプル基板1においては、有効領域の端部において大きな膜厚の不均一性が生じており、単にダミー領域を設けるのみでは、十分に膜厚むらを解消できないことがわかる。
【0094】
そこで、表面処理条件を変え、ダミー領域に対する液滴の後退接触角が25°となるようにした(サンプル基板2)。この状態で乾燥を行なったところ、液滴の面方向のサイズは乾燥開始から乾燥終了まで殆ど変化しなかった。このときの有効領域内の膜厚のばらつきは図13(b)のようであり、サンプル基板1の場合に比べて、ばらつきの程度が改善されていた。
【0095】
このような結果は、図6に示したような現象によって理解することができる。すなわち、液滴径が一定で接触角が変化する場合(図6(a))と、接触角が一定で液滴径が減少する場合(図6(b))では、液滴の表面積の変化は図14のようになり、液滴径が小さくなる場合には、乾燥の進行に伴って液滴の表面積が小さくなっていくが、このような溶媒分圧の変化が生じると、それを補うように有効領域の蒸発速度が増加していき、結果として、基板の端部と基板の中央部の蒸発速度に差が生じるようになる。一方、液滴径が一定で接触角のみが変化する場合には、表面積の減少が抑えられるため、ダミー領域の溶媒の分圧は殆ど変化しない。このため、有効領域の中央部と端部の乾燥速度差は大きくならず、有効領域全体で均一な膜が得られるようになる。
【0096】
なお、このような結果は使用する機能液の種類によらない。どのような機能液を用いた場合であっても、ダミー画素における機能液の表面積を乾燥期間中一定に保持すれば、有効領域内の膜厚均一性は高まる。本実施例では、ダミー領域の機能液に対する後退接触角を調節することによって機能液の表面積を一定に保ったが、前述の考察から、その手段はこれに限定されるものではないと考えられる。例えば、ダミー領域に対してバンクを形成し、このバンクの開口部に機能液を吐出する方法が挙げられる。ダミー画素に配置された溶媒の表面積はバンクの開口部のサイズに規定されるので、常に一定の溶媒雰囲気を保つことができる。この場合には、ダミー領域において十分な溶媒雰囲気が得られるように、ダミー画素のバンクの開口部を有効画素のバンクの開口部よりも大きく形成する。
【0097】
また、本実施例では、ダミー領域に配置された溶媒の表面積を一定に保つようにしたが、ダミー領域の溶媒の分圧の減少によって有効領域の蒸発速度が大きくなるのを防ぐという観点からは、少なくとも乾燥期間の開始から終了までの間において、ダミー領域に配置された溶媒の表面積を有効領域に配置された溶媒の表面積よりも大きくすればよく、必ずしもダミー領域に配置された溶媒の表面積が常に一定であることまでは要求されない。
【0098】
[電子機器]
次に、本発明の電子機器の具体例について説明する。
図15は、携帯電話機の一例を示した斜視図である。図15において、符号600は携帯電話機本体を示し、符号601は上記実施形態の有機EL装置を備えた表示部を示している。
図15に示す電子機器は、上述した本発明の膜パターンの形成方法により形成された膜パターンを備えたものであるので、高い表示品質や高い性能が得られるものとなる。
なお、本発明のデバイスは、前述した携帯電話機に限らず、種々の電子機器に搭載することができる。この電子機器としては例えば、電子ブック、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等がある。
【0099】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0100】
上記の実施形態では、本発明の膜パターンの形成方法を有機EL装置の製造方法に適用したが、本発明はこれに限らず、所定の領域内に複数の膜パターンを備えるデバイスの製造方法について広く適用することができる。例えば上述の有機EL装置の例では、正孔注入層140Aや発光層140Bだけでなく、画素電極141のパターニングに本発明を適用することも可能である。また、データ線132、走査線131又は電源線133を含む各種の配線パターンの形成や、フレキシブル基板75と基体Pとを接続する複数の端子電極パターンの形成についても、本発明の膜パターンの形成方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の膜パターンの形成方法を示す概念図である。
【図2】機能液を配置する手段の一例である液滴吐出ヘッドの分解斜視図である。
【図3】同液滴吐出ヘッドの要部を示す部分斜視図である。
【図4】ダミー領域を含む基体の平面図である。
【図5】膜パターンの形成工程の一例を示す工程図である。
【図6】機能液の乾燥工程を示す模式図である。
【図7】本発明のデバイスの一例である有機EL装置の等価回路図である。
【図8】同有機EL装置の全体構成を示す平面図である。
【図9】同有機EL装置の1画素の構成を示す平面図である。
【図10】図9のA−A線に沿う断面図である。
【図11】同有機EL装置の製造工程の一例を示す工程図である。
【図12】図8に続く工程図である。
【図13】実施例における膜パターンのプロファイルを示す図である。
【図14】乾燥工程における塗膜の表面積と体積との関係を示す図である。
【図15】本発明の膜パターンを備えた電子機器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0102】
70…有機エレクトロルミネッセンス装置(デバイス)、140A…正孔注入層(膜パターン)、140B…発光層(膜パターン)、B…隔壁、F…膜パターン、L,L1,L2…機能液、P…基体、PE…有効画素(液体受容部)、PD…ダミー画素(液体受容部)、TE…有効領域、TD…非有効領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜パターンの形成方法及びデバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機蛍光材料等の機能性材料をインク化し、該インク(機能液)を基体上に吐出する液滴吐出法により、機能性材料のパターニングを行う方法を採用して、一対の電極間に該機能性材料からなる機能層が挟持された構成の有機エレクトロルミネッセンス装置(以下、有機EL装置という)、特に機能性材料として有機発光材料を用いた有機EL装置の開発が行われている。
【0003】
上述した機能性材料のパターニング法として、基体上に形成したITO等からなる画素電極の周囲にバンクと呼ばれる隔壁を形成し、次に画素電極及びこの画素電極に隣接する前記バンクの一部を親液性に処理するとともにバンクの残りの部分を撥液性に処理した後、機能層の構成材料を含むインクを画素電極に吐出して乾燥することにより、該画素電極上に機能層を形成する方法が採用されている。具体的には、複数のノズルが副走査方向に沿って配列されてなるノズル列を有する液滴吐出ヘッドを用い、この液滴吐出ヘッドを基体に対して主走査方向に走査しつつ、前記ノズルからインクを吐出することにより、画素電極上に機能層を形成する方法が知られている。このような方法は、マイクロオーダーの液滴を画素領域に配することが可能なため、材料の利用効率を考えると、スピンコートなどの方法に比べて有効である。
【0004】
しかしながら、画素電極が配された表示領域(有効領域)のうち周辺部では、インクから蒸発する溶媒分子の分圧が該表示領域の中央部よりも少なくなる場合がある。このような現象が生じると、周辺部において溶媒の蒸発速度が極端に速くなり、その結果、製造される有機EL装置において機能層の膜厚むらや1画素内での膜の偏り(膜の断面形状が斜めに傾いた状態)が生じる惧れがある。このような膜厚むらが生じた有機EL装置は、その特性が低下し、これを表示装置等として用いた場合には、表示むらを生じることもある。そこで、これを解決するために、例えば特許文献1のような技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−222695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された技術は、表示領域の外側に表示に寄与しないダミー領域(非有効領域)を形成し、該ダミー領域にも機能層と同一のインクを塗布することで、表示領域内における溶媒分子の分圧のばらつきを小さくするものである。通常は、ダミー領域に表示領域と同様のパターンのバンクを形成し、該バンクの開口部にインクを塗布するものとしている(特許文献1の図2を参照)。この方法によれば、表示領域の中央部と周辺部で溶媒の乾燥が等しく進行するので、機能層の膜厚むらや膜の偏りのない高品質な膜を形成することが可能となる。
【0006】
ダミー領域に吐出されるインクは表示用の画素を形成するものではないので、表示領域に形成される画素(有効画素)と区別して、ダミー画素と呼ばれることがある。上記のような膜厚むらの発生を防止するためには、少なくとも数列から数十列分のダミー画素を形成する必要があるが、従来は全てのダミー画素を有効画素と同じピッチ、同じパターンで形成していたため、インクを表示領域と同様に塗布するのみでは、必ずしも十分な膜厚むらの解消には至らない場合があった。つまり、基体に吐出されたインクの乾燥は同心円状に周辺から進行するため、ダミー領域のインクが先に乾燥してしまい、ダミー領域を設けない場合と同様の膜厚むらを生じる場合があった。
【0007】
一方、特許文献1には、ダミー領域にバンクを設けずに、基板の表面、すなわちバンクとして形成される有機材料膜の上面に直接インクを吐出する方法も開示されている(特許文献1の図3を参照)。しかし、この場合には、乾燥の進行に伴ってダミー領域のインクの径が小さくなるので、乾燥工程がある程度進んだ段階では、十分な溶媒雰囲気が形成できなくなるという問題がある。つまり、この方法では、ダミーのインクは撥液化された有機材料膜の表面に吐出されるので、インクと材料膜との間に大きな後退接触角が形成されてしまい、インクを乾燥すると、インクの接触角は変化せずに、インクの径、すなわちインクの表面積のみが小さくなっていく。そのため、乾燥がある程度進むと、ダミー領域のインクによって必要な溶媒蒸気の分圧を維持できなくなり、結局、ダミー領域を設けなかった場合と同様の問題が生じることになる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、基板面内で均一な膜厚のパターンを形成することが可能な膜パターンの形成方法及びデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の膜パターンの形成方法は、機能性材料を溶媒に溶解ないし分散させてなる機能液を基体上に配置し、前記機能液を乾燥することにより、前記機能性材料からなる膜パターンを形成する方法であって、前記膜パターンが形成される前記基体の有効領域に前記機能液を配置する工程と、前記有効領域の周囲の非有効領域に前記機能液又は前記溶媒を配置する工程と、前記有効領域及び前記非有効領域に配置された前記機能液又は前記溶媒を乾燥する工程とを有し、前記乾燥の開始から終了までの期間において、前記非有効領域に配置された前記溶媒の表面積SDが、前記有効領域に配置された前記溶媒の表面積SEに対して、SE≦SDを満たすように乾燥を行なうことを特徴とする。
この方法によれば、非有効領域の溶媒蒸気の分圧を乾燥期間の開始から終了に至るまで常に十分な大きさに維持できるので、有効領域全体で機能液から溶媒が蒸発する速度、すなわち乾燥速度が均一になり、膜厚むらや膜の偏りなどがない高品質な膜を形成することができる。
【0010】
本発明においては、前記非有効領域に配置する単位面積当たりの前記溶媒の表面積SDを、前記有効領域に配置する単位面積当たりの前記溶媒の表面積SEよりも大きくし、且つ前記非有効領域における前記溶媒の後退接触角を30°以下に調節するものとすることができる。
この方法によれば、非有効領域における溶媒の後退接触角が30°以下となっているので、溶媒を乾燥しても、基体の面内方向における塗膜の径は殆ど変化しない。このため、乾燥期間中常に一定の溶媒蒸気の分圧を維持することができる。
【0011】
本発明においては、前記機能液又は前記溶媒の配置工程に先立って、前記基体の有効領域及び非有効領域に、前記機能液又は前記溶媒が配置される液体受容部を形成するものとすることができる。
この方法によれば、液体受容部によって機能液又は溶媒の平面的なサイズが規定されるので、有効領域の膜パターンの形状や非有効領域における溶媒蒸気の分圧を精密に制御することが可能である。
【0012】
本発明においては、前記有効領域及び前記非有効領域の前記液体受容部を隔壁によって区画された領域として形成し、且つ前記非有効領域における前記液体受容部のサイズを前記有効領域における前記液体受容部のサイズよりも大きくするものとすることができる。
この方法によれば、非有効領域における溶媒の表面積は液体受容部のサイズで規定されるので、非有効領域の溶媒蒸気の分圧を乾燥期間中常に一定に維持することが可能である。また、隔壁によって膜パターンの形状が規定されることから、例えば隣接する隔壁間の幅を狭くするなど、隔壁を適切に形成することにより、膜パターンの微細化や細線化を図ることができる。
【0013】
本発明においては、前記有効領域の前記液体受容部を隔壁によって区画された領域として形成し、前記非有効領域の前記液体受容部を前記基体の表面処理によって形成すると共に、前記非有効領域における前記液体受容部のサイズを前記有効領域における前記液体受容部のサイズよりも大きくし、且つ前記非有効領域における前記液体受容部の前記溶媒に対する後退接触角を30°以下となるように調節するものとすることができる。
この方法によれば、非有効領域における溶媒の後退接触角が30°以下となっているので、溶媒を乾燥しても、基体に平行な面内における塗膜の径は殆ど変化しない。このため、乾燥期間中常に一定の溶媒蒸気の分圧を維持することができる。
【0014】
本発明においては、前記非有効領域の前記液体受容部を、前記隔壁の上面を表面処理することによって形成するものとすることができる。
この方法によれば、非有効領域に形成される膜パターンと基体との間に、隔壁を構成する材料膜が介在するので、例えば有機EL装置の発光層等を形成する場合のように、基体の表面に配線等が形成されている場合であっても、これらの配線と膜パターンとの間に大きな寄生容量が発生することはない。また、前記材料膜によって基体の表面を機能液又は溶媒から保護することもできる。
【0015】
本発明においては、前記機能液又は前記溶媒の配置を液滴吐出法により行なうものとすることができる。
この方法によれば、液滴吐出法を用いることにより、スピンコート法などの他の塗布技術に比べて、液体材料の消費に無駄が少なく、基体上に配置する液体材料の量や位置の制御を行ないやすいという利点がある。
【0016】
本発明のデバイスの製造方法は、膜パターンを有するデバイスの製造方法であって、前記膜パターンの形成工程が、前述した本発明の膜パターンの形成方法により行なわれることを特徴とする。
この方法によれば、有効領域全体にわたって均一な膜を有する高性能なデバイスを提供することができる。
本発明のデバイスとしては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス装置やカラーフィルタ基板等があり、これら有機エレクトロルミネッセンス装置の有機機能層(発光層、電荷輸送層等)や画素電極のパターン、又はカラーフィルタ基板のカラーフィルタパターンの形成工程等に、本発明の膜パターンの形成方法を好適に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の膜パターンの形成方法を示す概念図である。
本発明の膜パターンの形成方法は、基体P上に機能性材料を含む機能液を配置し、前記機能液を乾燥することにより、前記基体P上に前記機能性材料からなる膜パターンを形成するものである。膜パターンが形成される領域のうち、膜本来の機能が有効に発揮される一群の膜パターンによって構成される領域を有効領域TEといい、膜パターンは形成されるが、膜本来の機能を発揮しない一群の膜パターン(ダミーの膜パターン)によって構成される領域を非有効領域TDという。ただし、非有効領域TDには必ずしも膜パターンが形成される必要はなく、機能性材料を含まない溶媒のみを配置する領域、又は溶媒のみを配置する領域とダミーの膜パターンを形成する領域との双方を含む領域を非有効領域という場合もある。本発明では、これらを総称して非有効領域という。
【0018】
例えば、有機EL表示装置等の表示装置においては、有効領域TEとは、表示に用いられる一群の画素によって構成される1つのまとまった領域をいい、液晶表示装置等に使用されるカラーフィルタ基板においては、有効領域TEとは、表示に用いられる一群のカラーフィルタによって構成される1つのまとまった領域をいう。また、複数の電極や配線が形成される基板にあっては、当該複数の電極や当該複数の配線によって構成される1つのまとまった領域をいう。本発明の膜パターンの形成方法は、このような有効領域TEに前記機能液を選択的に配置することにより、所望の形状及び機能を有する一群の膜パターンを形成するものである。
【0019】
図1では、有効領域TEを例えば複数の表示用の画素(有効画素)PEからなる有効光学領域とし、この有効光学領域TEの複数の有効画素PEに対して、それぞれ機能性材料を含む機能液を液滴吐出法により選択的に吐出する例を示している。
【0020】
図1において、符号IJは液滴吐出装置、符号20は当該液滴吐出装置に備えられる液滴吐出ヘッド、符号81は当該液滴吐出ヘッドに設けられたノズルをそれぞれ示している。図1では、ノズル81の配列方向Jは有効画素PEの配列方向Xに対して傾いた状態とされているが、配列方向Jにおけるノズル81の配列ピッチ(隣接するノズル81の中心の間隔)がX方向における有効画素PEの配列ピッチ(隣接する有効画素PEの中心の間隔)と同じであれば、配列方向Jは有効画素PEの配列方向Xと一致した方向に設定される。液滴吐出ヘッド20は、有効光学領域TEと平行な面内において角度θを回転可能に構成されており、ノズル81のX方向における配列ピッチ(すなわち、ノズル81をX軸に投影したときのノズル81の配列ピッチ)と有効画素PEのX方向における配列ピッチとが一致するように、ノズル81の配列方向Jが制御される。そして、このような配列方向Jを規定した状態で、液滴吐出ヘッド20と基体PとをX方向又はY方向に相対移動できるように構成されている。
【0021】
図2は、液滴吐出ヘッド20の一例を示す分解斜視図である。
液滴吐出ヘッド20は、複数のノズル81を有するノズルプレート80と、振動板85を有する圧力室基板90と、これらノズルプレート80と振動板85とを嵌め込んで支持する筐体88とを備えている。
【0022】
液滴吐出ヘッド20の主要部構造は、図3の部分斜視図に示すように、圧力室基板90をノズルプレート80と振動板85とで挟み込んだ構造とされている。ノズルプレート80のノズル81は、各々圧力室基板90に区画形成された圧力室(キャビティ)91に対応している。圧力室基板90には、シリコン単結晶基板等をエッチングすることにより、各々が圧力室として機能可能にキャビティ91が複数設けられている。キャビティ91同士の間は側壁92で分離されている。各キャビティ91は供給口94を介して共通の流路であるリザーバ93に繋がっている。
【0023】
振動板85にはタンク口86が設けられ、図示略の液体材料供給タンクからパイプを通じて任意の液体材料を供給可能に構成されている。振動板85上のキャビティ91に相当する位置には圧電体素子87が配設されている。圧電体素子87はPZT素子等の圧電性セラミックスの結晶を上部電極および下部電極(図示せず)で挟んだ構造を備える。圧電体素子87は図示略の制御装置から供給される吐出信号に対応して体積変化を発生可能に構成されている。
【0024】
液滴吐出ヘッド20から液滴を吐出するには、まず、制御装置が液滴を吐出させるための吐出信号を液滴吐出ヘッド20に供給する。液滴は液滴吐出ヘッド20のキャビティ91に流入しており、吐出信号が供給された液滴吐出ヘッド20では、その圧電体素子87がその上部電極と下部電極との間に加えられた電圧により体積変化を生ずる。この体積変化は振動板85を変形させ、キャビティ91の体積を変化させる。この結果、そのキャビティ91のノズル81から液滴が吐出される。液滴が吐出されたキャビティ91には吐出によって減った液体材料が新たに液体材料供給タンクから供給される。
【0025】
本実施形態に係る液滴吐出装置IJに備えられた液滴吐出ヘッド20は、圧電体素子に体積変化を生じさせて液滴を吐出させる構成であるが、発熱体により液体材料に熱を加えその膨張によって液滴を吐出させるような構成であってもよい。
【0026】
図4(a)は、有効光学領域TEを含む基体Pの平面構成を示す模式図であり、図4(b)は有効光学領域TEの角部の領域Kを拡大して示す模式図である。
【0027】
図4に示すように、本発明の膜パターンの形成方法では、有効光学領域(有効領域)TEの周囲に、非有効領域であるダミー領域TDを形成し、このダミー領域TDにダミーの液体材料を吐出することにより、有効光学領域TEの周囲にも有効光学領域TEと同じ溶媒雰囲気を形成する。ダミーの液体材料としては、通常は、有効光学領域TEに吐出するのと同じ機能液を吐出するが、溶媒のみを吐出することも可能である。この場合の溶媒としては、該機能液に含まれる溶媒や、該機能液に含まれる溶媒に近い沸点を有する他の溶媒を用いることができる。
【0028】
ダミー領域TDは、有効光学領域TEの周囲を囲むように設けられている。ダミー領域TDには、液体材料を配置するための複数の領域PDが設けられている。これらの領域PDは、有効光学領域TEに形成される有効画素PEに対して、ダミー画素と呼ばれる場合がある。ダミー画素PDは、表示に寄与しない画素であり、通常は画素電極やスイッチング素子は形成されないが、専ら検査を行なうために画素電極やスイッチング素子を形成し、有効画素PEに準じた機能を持たせる場合もある。
【0029】
液滴吐出法においては、吐出された液滴を精度良く所定の画素に配置するために、画素と画素との間に、画素を仕切るための隔壁(バンク)を形成する場合がある。この場合には、隔壁によって区画された個々の領域が、液体材料を配置するための領域PD、すなわち液体受容部であり、これら複数の液体受容部のうち、有効光学領域TEに配置された液体受容部が有効画素PEとなり、ダミー領域TDに配置された液体受容部がダミー画素PDとなる。
【0030】
また、隔壁を形成せずに、基体Pを表面処理するのみで、液体材料の配置される領域と配置されない領域とを区画する場合もある。すなわち、基体Pの特定の領域に機能液に対して親和性(親液性)が低くなるような処理(撥液処理)を施し、有効画素PE及びダミー画素PDとなる領域を機能液に対して相対的に親和性の高い領域(親液領域)とする場合がある。この場合には、親液領域として形成された個々の領域が液体受容部となる。さらに、配置精度が要求されない場合には、上述のような表面処理を行なわずに、そのまま基体P上に液体材料を吐出する場合もあり、この場合には、液体材料の塗膜が形成される個々の領域が液体受容部となる。
【0031】
本実施形態では、前述の表面処理によって、隔壁を形成せずに有効画素PE及びダミー画素PDを形成するものとする。
【0032】
図4(b)に示すように、本発明においては、ダミー画素PDのサイズは、有効画素PEのサイズよりも大きく形成されている。液体材料の乾燥は有効光学領域TEの周辺部から進行するため、ダミー領域TDのみで乾燥が進行するのを防ぐために、ダミー領域PDに多くの溶媒を配置する必要があるからである。また、ダミー画素PDにおいては、基体Pの液体材料(特に溶媒)に対する後退接触角は30°以下に制御されている。こうすることで、乾燥による液体材料の収縮を抑えることができ、その結果、溶媒蒸気の分圧を乾燥期間中常に一定に保つことが可能になる。
【0033】
なお、図4(b)では、ダミー画素PDの形状をダミー領域TD内で全て共通とし、ダミー画素PDのX方向及びY方向の配列ピッチ(隣り合うダミー画素PDの中心の間隔)を、有効光学領域TEにおける有効画素PEのX方向及びY方向の配列ピッチ(隣り合うダミー画素PEの中心の間隔)と同じとしているが、ダミー画素PDの構成は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、ダミー画素PDのサイズ(すなわち当該領域に吐出される液体材料の表面積の大きさ)や配列ピッチは、ダミー領域TD内でばらついていてもよい。この場合、ダミー画素PDのサイズとは、ダミー領域TDに設けられた平均的なダミー画素PDのサイズをいう。ただし、このようなばらつきは、ダミー領域TDに配置される単位面積当たりの溶媒の量(すなわちダミー画素PDの面積)が、有効光学領域TEに配置される単位面積当たりの溶媒の量よりも大きくなる限りにおいて許容されるものとする。
【0034】
次に、図5を用いて、本発明の膜パターンの形成方法を説明する。
まず、図5(a)に示すように、基体Pの有効光学領域TE及びダミー領域TDに前述の表面処理を施し、基体Pの表面に、有効画素PE及びダミー画素PDとなる複数の領域を形成する。
【0035】
この処理においては、ダミー画素となる各領域の面積を有効画素となる各領域の面積よりも大きい面積で形成する。また、ダミー画素となる領域では、基体Pの液体材料(特に溶媒)に対する後退接触角が30°以下となるように調節する。
【0036】
なお、基体Pとしては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラスチックフィルム、金属板など各種のものが挙げられる。さらに、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものも含む。
【0037】
上述の処理を行なったら、図5(b)に示すように、親液領域として形成されたそれぞれの領域PE,PDに機能液Lを吐出する。機能液Lは、膜パターンFを構成する材料を溶媒に溶解ないし分散させてなる液体材料である。なお、機能液Lの吐出には、前述した液滴吐出装置IJを用いる。
【0038】
膜パターンFを構成する材料としては、電気的機能や光学的機能等の種々の機能を持った材料(機能性材料)を用いることができる。例えば、有機EL素子の発光層を形成する場合には、機能性材料として蛍光あるいはリン光を有する材料を用いればよく、カラーフィルタを形成する場合には、顔料等の微粒子着色材料を用いればよい。また、液晶装置等の透明画素電極を形成する場合には、インジウム錫酸化物(ITO)等の微粒子導電材料を用いればよい。
【0039】
溶媒としては、上記の機能性材料を溶解ないし分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好適である。
【0040】
ダミー画素PDに吐出する溶媒の量は、有効画素PEに吐出する溶媒の量よりも多くすることが望ましい。ダミー領域TDでは液滴の乾燥が速く進むため、吐出する溶媒の量を有効画素PEと同一とすると、有効光学領域TEの乾燥が終了する前にダミー領域の溶媒が全て蒸発してしまい、有効光学領域TE内で均一な乾燥が行なえなくなるからである。
また、ダミー画素PD及び有効画素PDに吐出する溶媒の量は、少なくともダミー画素PDに配置される溶媒の表面積SDが有効画素PEに配置される溶媒の表面積SEよりも大きくなるような量に設定する。こうすることで、ダミー領域TDの溶媒蒸気の分圧を有効光学領域TEの溶媒蒸気の分圧よりも高い分圧とすることができる。
【0041】
機能液Lを吐出したら、図5(c)に示すように、機能液Lの溶媒を乾燥により除去し、有効画素PEに前記機能性材料からなる膜パターンFを形成する。
【0042】
前述のように、本発明では、有効光学領域TEの周囲にダミーの液体材料を吐出しているので、機能液Lを乾燥するときに、有効光学領域TEにおける溶媒蒸気の分圧が、ダミー領域TDにおける溶媒蒸気の分圧に比して過剰に大きくなることはない。特に、ダミー領域TDに配置される単位面積当たりの溶媒の量が、有効光学領域TEに配置される単位面積当たりの溶媒の量よりも大きくなっているので、乾燥が速く進むダミー領域TDにおいても溶媒の分圧が急激に低下することがない。溶媒蒸気の分圧は、配置された溶媒の表面積に依存し、配置された溶媒の表面積が大きいほど蒸発した溶媒の分圧は大きくなるが、本発明においては、配置する溶媒の表面積をダミー画素PDのサイズによって調節し、これにより有効光学領域TE内で溶媒の分圧に偏りが生じないようにしているので、有効光学領域全体で機能液から溶媒が蒸発する速度、すなわち乾燥速度が均一になり、膜厚むらや膜の偏りなどがない高品質な膜を形成することができる。
【0043】
さらに、ダミー画素PDでは、基体Pの機能液Lに対する後退接触角は30°以下に制御されているので、ダミー画素PDに配置された機能液Lは、乾燥の開始から終了までの間、その表面積が殆ど変化することはなく、常に一定の溶媒蒸気の分圧を維持することが可能である。特に、有効画素PEに吐出される溶媒の量は、ダミー画素PDに吐出される溶媒の量よりも少なく、表面積も小さいため、乾燥の開始から終了までの期間は常に、各ダミー画素PDに配置された溶媒の表面積SDが、各有効画素PEに配置された溶媒の表面積SEに対して、SE≦SDを満たすような条件で乾燥が行なわれることになる。このため、ダミー領域TDの溶媒蒸気の分圧を乾燥期間の開始から終了に至るまで常に十分な大きさに維持することができる。
【0044】
図6は、機能液Lの乾燥工程を示す模式図である。
液滴吐出ヘッド20から滴下された機能液Lは、塗布後の乾燥工程において液面が徐々に低下し、最終的に固化されて膜パターンFを形成する。この際、図6(b)のように機能液Lと基体Pとの濡れ性が悪いと(後退接触角θB>30°)、機能液Lの塗膜は、接触角θBを一定として、基体Pの面方向(図示左右方向)及び高さ方向(図示上下方向)の双方で収縮していく。溶媒蒸気の分圧は、配置された溶媒の表面積に依存し、配置された溶媒の表面積が大きいほど蒸発した溶媒分子の分圧は大きくなるが、図6(b)の場合には、塗膜の収縮が基体Pの面方向において生じるため、溶媒蒸気の分圧は乾燥の進行に伴って徐々に小さくなり、乾燥工程がある程度進むと、ダミー領域TDにおいて必要な溶媒蒸気の分圧が維持できなくなってしまう。
【0045】
一方、図6(a)のように機能液Lと基体Pとの濡れ性が良いと(後退接触角θA≦30°)、塗膜の収縮は基体Pの面方向には生じず、専ら塗膜の高さ方向の収縮(すなわち接触角θAの変化)のみが生じるようになる。このため、乾燥が進んでも塗膜の表面積は殆ど変化せず、溶媒蒸気の分圧も殆ど変化しないことになる。したがって、ダミー領域の溶媒蒸気の分圧は乾燥期間中常に一定に維持されることになり、その結果、有効光学領域全体で膜パターンFの膜厚を均一化することが可能になるのである。
【0046】
[第2の実施の形態]
次に、本発明のデバイスの製造方法の一実施の形態として、本発明の膜パターンの形成方法を有機EL装置の製造方法に適用した例について説明する。この有機EL装置は、有機EL素子を画素として基体上に配列してなる有機EL装置であり、例えば電子機器等の表示手段として好適に用いることができるものである。
【0047】
図7は、有機EL装置70の回路構成図、図8は、同有機EL装置70の平面模式図である。また図9は、同有機EL装置70に備えられた各画素PEの平面構造を示す図であって、(a)は画素PEのうち、主にTFT等の画素駆動部分を示す図、(b)は画素間を区画するバンク(隔壁)B等を示す図である。また図10は、図9(a)のA−A線に沿う断面構成を示す図である。
【0048】
図7に示すように、有機EL装置70は、ガラス等からなる基体上に、複数の走査線(配線、電力導通部)131と、これら走査線131に対して交差する方向に延びる複数の信号線(配線、電力導通部)132と、これら信号線132に並列に延びる複数の共通給電線(配線、電力導通部)133とがそれぞれ配線されたもので、走査線131及び信号線132の各交点毎に、画素PEが設けられて構成されたものである。
【0049】
信号線132に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、及びアナログスイッチ等を備えるデータ側駆動回路72が設けられている。一方、走査線131に対しては、シフトレジスタ及びレベルシフタ等を備える走査側駆動回路73が設けられている。また、画素PEの各々には、走査線131を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT(薄膜トランジスタ)142と、このスイッチング用TFT(薄膜トランジスタ)142を介して信号線132から供給される画像信号(電力)を保持する保持容量capと、保持容量capによって保持された画像信号がゲート電極に供給される駆動用TFT143と、この駆動用TFT143を介して共通給電線133に電気的に接続したときに共通給電線133から駆動電流が流れ込む画素電極141と、この画素電極141と共通電極154との間に挟み込まれる発光部140と、が設けられている。そして、前記画素電極(第1電極)141と共通電極(第2電極)154と、有機機能層からなる発光部140とによって構成される素子が、有機EL素子である。
【0050】
このような構成のもとに、走査線131が駆動されてスイッチング用TFT142がオンとなると、そのときの信号線132の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて、駆動用TFT143のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT143のチャネルを介して共通給電線133から画素電極141に電流が流れ、さらに発光部140を通じて共通電極154に電流が流れることにより、発光部140は、これを流れる電流量に応じて発光するようになる。
【0051】
次に、平面構造を見ると、図8に示すように、本実施形態の有機EL装置70は、基体Pの中央部に、マトリックス状に配置された有機EL素子200を具備している。
【0052】
基体Pは、例えばガラス等の透明基板であり、基体Pの中央に位置し、有機EL素子200が機能する有効光学領域(有効領域)TEと、基体Pの周縁に位置して有効光学領域TEの外周に配置され、有機EL素子200が機能しないダミー領域(非有効領域)TDとに区画されている。有効光学領域TEは、マトリックス状に配置された有機EL素子200によって形成される領域であり、有効表示領域とも言う。また、ダミー領域TDは、有効光学領域TEに隣接して形成され、表示に寄与しない領域として構成されている。有効光学領域TEには、有効画素PEを区画するバンクB(図9参照)が形成されており、バンクBによって区画される領域が、機能液を配置するための液体受容部を構成し、この液体受容部に機能液を配置することにより、後述の有機EL素子の有機機能層が形成される。すなわち、バンクBによって区画された領域が有効画素であり、有効光学領域TEには、個々の有効画素に有機EL素子200が形成されている。一方、ダミー領域TDには、ダミー画素PDを区画するためのバンクは形成されていない。バンクBの材料膜はダミー領域TDにも形成されているが、ダミー領域TDでは当該材料膜のパターニングが行なわれておらず、ダミー画素PDに配置すべき液体材料は、当該材料膜の上面に直接吐出するものとされている。
【0053】
共通電極154は、その一端が基体P上に形成された陰極用配線(図示略)に接続されており、図8に示すように、この配線の一端部154aがフレキシブル基板75上の配線77に接続されている。なお、この配線77は、フレキシブル基板75上に備えられた駆動IC76(駆動回路)に接続されている。
【0054】
また、図8に示すように、基体Pのダミー領域TDには、前述の共通給電線133(133R、133G、133B)が配線されている。さらに、図8において、有効光学領域TEの図示両横側には、前述の走査側駆動回路73、73が配置されている。この走査側駆動回路73、73はダミー領域TDの下側の回路素子部に設けられている。さらに回路素子部には、走査側駆動回路73、73に接続される駆動回路用制御信号配線73aと駆動回路用電源配線73bとが設けられている。また、図8において、有効光学領域TEの図示上側には検査回路74が配置されている。この検査回路74により、製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行うことができる。
【0055】
次に、図9(a)に示す画素PEの平面構造をみると、画素PEは、平面視略矩形状の画素電極141の四辺が、信号線132、共通給電線133、走査線131及び図示しない他の画素電極用の走査線によって囲まれた配置となっている。また図10に示す画素PEの断面構造をみると、基体P上に、駆動用TFT143が設けられており、駆動用TFT143を覆って形成された複数の絶縁膜を介した基体P上に、有機EL素子200が形成されている。有機EL素子200は、基体P上に立設されたバンクBに囲まれる領域内に設けられた有機機能層140を主体として構成され、この有機機能層140を、画素電極141と共通電極154との間に挟持した構成を備える。
【0056】
ここで、図9(b)に示す平面構造をみると、バンクBは、画素電極141の形成領域に対応した平面視略矩形状の開口部149b,151を有しており、この開口部149b,151に先の有機機能層140が形成されるようになっている。
【0057】
図10に示すように、駆動用TFT143は、半導体膜210に形成されたソース領域143a、ドレイン領域143b、及びチャネル領域143cと、半導体層表面に形成されたゲート絶縁膜220を介してチャネル領域143cに対向するゲート電極143Aとを主体として構成されている。半導体膜210及びゲート絶縁膜220を覆う第1層間絶縁膜230が形成されており、この第1層間絶縁膜230を貫通して半導体膜210に達するコンタクトホール232,234内に、それぞれドレイン電極236、ソース電極238が埋設され、各々の電極はドレイン領域143b、ソース領域143aに導電接続されている。第1層間絶縁膜230には、第2層間絶縁膜240が形成されており、この第2層間絶縁膜240に貫設されたコンタクトホールに画素電極141の一部が埋設されている。そして画素電極141とドレイン電極236とが導電接続されることで、駆動用TFT143と画素電極141(有機EL素子200)とが電気的に接続されている。画素電極141の周縁部に一部乗り上げるようにして無機絶縁材料からなる無機バンク(第1隔壁層)149が形成されている。無機バンク149上には、有機材料からなる有機バンク(第2隔壁層)150が積層され、これら無機バンク149及び有機バンク150によって、有機EL装置71における隔壁部材が形成されている。
【0058】
上記有機EL素子200は、画素電極141上に、電荷輸送層としての正孔注入層140Aと、発光層140Bとを積層し、この発光層140Bと有機バンク150とを覆う共通電極154を形成することにより構成されている。正孔注入層140Aは、画素電極141を覆って形成されており、その周端部は、有機バンク150の下層側に設けられた無機バンク149のうち、有機バンク150から画素電極141中央側に突出して配置された部分も覆って形成されている。
【0059】
基体Pとしては、いわゆるボトムエミッション型の有機EL装置の場合、基体P側から光を取り出す構成であるので、ガラス等の透明基板が用いられる。一方、いわゆるトップエミッション型の有機EL装置の場合には、有機EL素子200が配設された側から光を取り出す構成であるので、ガラス等の透明基板のほか、不透明基板も用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。
【0060】
画素電極141は、基体Pを介して光を取り出すボトムエミッション型の場合には、ITO(インジウム錫酸化物)等の透光性導電材料により形成されるが、トップエミッション型の場合には透光性である必要はなく、金属材料等の適宜な導電材料によって形成できる。
【0061】
共通電極154は、発光層140BとバンクBの上面、さらにはバンクBの側面部を形成する壁面を覆った状態で基体P上に形成される。この共通電極154を形成するための材料としては、トップエミッション型の場合、透明導電材料が用いられる。透明導電材料としてはITOが好適であるが、他の透光性導電材料であっても構わない。ボトムエミッション型の場合には、透明導電材料のほか、アルミニウム等の不透明若しくは光反射性を有する導電材料を用いることができる。
【0062】
共通電極154の上層側には、陰極保護層を形成してもよい。係る陰極保護層を設けることで、製造プロセス時に共通電極154が腐食されるのを防止する効果が得られ、無機化合物、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン窒酸化物等のシリコン化合物により形成できる。共通電極154を無機化合物からなる陰極保護層で覆うことにより、無機酸化物からなる共通電極154への酸素等の侵入を良好に防止することができる。なお、このような陰極保護層は、共通電極154の平面領域の外側の基体上まで、10nmから300nm程度の厚みに形成される。
【0063】
[有機EL装置の製造方法]
次に、有機EL装置70の製造方法について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、図7から図10に示した構成を備えた有機EL装置を液滴吐出法を用いて製造する例について説明する。なお、以下に示す手順や液体材料の材料構成は一例であってこれに限定されるものではない。また、液滴吐出装置については前述のものを用いることができる。
【0064】
以下、上記有機EL装置70に備えられる有機EL素子200の製造方法について図11及び図12を参照しながら説明する。図11及び図12には、有効光学領域TEとダミー領域TDの境界部分が図示されている。
【0065】
まず、図11(a)に示すように、基体P上に画素電極141、該画素電極141を駆動するための駆動用TFT143等の回路素子部を形成する。これらは公知の方法により形成することができる。図11(a)では、有効光学領域TEのみに画素電極141を形成しているが、ダミー領域TDに対しても同様の画素電極を形成することができる。この場合、ダミー領域TDに形成される画素(ダミー画素)は、検査用の素子として用いることが可能である。
【0066】
次に、回路素子部の形成された基体P上にバンクBを形成する。
図11(a)では、バンクBとして、有効画素PEにのみ開口部149b,151を有する形状を採用する。ダミー領域に開口部を設けないことで、ダミーの膜パターンと回路素子部に形成された配線等との間に寄生容量が発生しないようにすることが可能である。ただし、必要であれば、有効画素PEとダミー画素PDの双方に開口部149b,151を設けることも可能である。
【0067】
ここではまず、画素電極141の周縁部と一部平面的に重なるように、酸化シリコン等の無機絶縁材料からなる無機バンク149を形成する。具体的には、画素電極141及び平坦化絶縁膜240を覆うように酸化シリコン膜を形成した後、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて酸化シリコン膜をパターニングし、画素電極141の表面を部分的に開口させることで形成できる。
【0068】
次に、無機バンク149上に、アクリル、ポリイミド等の有機絶縁材料からなる有機バンク150を形成する。有機バンク150は、無機バンク149と共に、有機EL素子200を区画するバンク(隔壁)Bを形成するものである。すなわち、有効光学領域TEにおいては、無機バンク149及び有機バンク150によって区画された各々の領域が液体受容部であり、これらの液体受容部がそれぞれ有効画素PEとなる。一方、ダミー領域TDにおいては、バンクBが開口部を有していないので、バンクBの上面(すなわちパターニングされていない有機バンク150の上面)の平坦な領域がダミー画素PDとなる。
【0069】
有機バンク150の高さは、例えば1μm〜2μm程度に設定され、基体P上で有機EL素子200の仕切部材として機能する。このような構成のもと、有機EL素子200の正孔注入層や発光層の形成場所、すなわちこれらの形成材料の塗布位置とその周囲の有機バンク150との間に十分な高さの段差からなる開口部151が形成される。有機バンク150の開口部151と無機バンク149の開口部149bとは互いに連通しており、画素電極141はこれらの開口部内において露出した状態となっている。
【0070】
バンクBの上面には、ダミー画素PDとなる部分に対して親液性を付与するような処理を行なうことが望ましい。この処理においては、バンク上面の機能液に対する後退接触角が30°以下となるようにする。この処理によって親液領域となった各々の領域が液体受容部であり、これらの液体受容部がそれぞれダミー画素PDとなる。ただし、バンク上面が予め十分な親液性を有している場合には、係る処理は不要である。この場合には、機能液が配置された各々の領域が液体受容部であり、これらの液体受容部がそれぞれダミー画素PDとなる。
【0071】
ダミー画素PDのサイズは、有効画素PEのサイズよりも大きなものとする。すなわち、ダミー領域に形成する個々の親液領域の面積を有効画素に形成されるバンクの開口部よりも大きくし、より多くの溶媒蒸気をダミー領域から供給できるようにする。また、ダミー画素に多くの溶媒を供給できるようにすることで、乾燥が速く進むダミー領域において有効光学領域と同程度の乾燥時間を確保することも目的としている。
【0072】
有機バンク150の開口部151のX方向及びY方向における間隔(配列ピッチ)は、有効画素PEとダミー画素PDとで同じ間隔とされる。すなわち、有効画素PEとダミー画素PDは同じ配置密度で形成される。ただし、ダミー画素PDのサイズや配置密度はダミー領域TD内でばらついていてもよい。この場合、ダミー画素PDのサイズとは、ダミー領域TDに設けられた平均的なダミー画素PDのサイズをいう。ただし、このようなばらつきは、ダミー領域TDに配置される単位面積当たりの溶媒の表面積が、有効光学領域に配置される単位面積当たりの溶媒の表面積よりも大きくなる限りにおいて許容される。
【0073】
有機バンク150を形成するに際しては、有機バンク150の開口部151の壁面を、無機バンク149の開口部149bから若干外側へ後退させて形成するのがよい。このように有機バンク150の開口部151内に無機バンク149を一部露出させておくことで、有機バンク150内での液体材料の濡れ広がりを良好なものとすることができる。
【0074】
基体P上にバンクBを形成したら、図11(b)に示すように、液滴吐出ヘッドにより、正孔注入層140Aを形成するための機能液L1をバンクBによって区画された塗布位置に選択的に塗布する。機能液L1は、正孔注入層形成材料を溶媒に溶解ないし分散させたものである。
【0075】
正孔注入層形成材料としては、ポリマー前駆体がポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム、ポリスチレンスルフォン酸、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルフォン酸との混合物(PEDOT/PSS)等を例示することができる。また、溶媒としては、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリノン等の極性溶媒を例示することができる。
【0076】
ダミー画素PDに吐出する機能液L1の量(特に溶媒の量)は、有効画素PEに吐出する機能液の量よりも多くすることが望ましい。ダミー領域TDでは液滴の乾燥速度が速いため、吐出する溶媒の量をダミー画素PDと有効画素PEの双方で共通とすると、ダミー領域で速く乾燥が終了してしまい、有効光学領域TE全体で均一な乾燥が行なえなくなる場合があるからである。一方、吐出する溶媒の量をダミー画素PDで多くした場合には、有効光学領域TE内で溶媒の持続時間に偏りが生じなくなり、有効光学領域全体で膜厚むらや膜の偏りなどがない高品質な膜を形成することができる。
【0077】
機能液L1が液滴吐出ヘッドより基体P上に吐出されると、機能液L1は流動性によって水平方向に広がろうとするが、塗布された位置を囲んでバンクBが形成されているので、機能液L1はバンクBを越えてその外側に広がらない。また、画素電極141や無機バンク149の表面は良好な親液性を有しているので、吐出された機能液L1は画素電極等の表面全体に塗れ広がり、均一な塗膜を形成する。一方、ダミー領域に吐出された機能液Lは、吐出位置を中心として濡れ広がり、所定の面積を有する複数の塗膜を形成する。
【0078】
基体P上に機能液L1を配置したら、図11(c)に示すように、加熱あるいは光照射により機能液L1の溶媒を蒸発させて画素電極141上に固形の正孔注入層140A(膜パターン)を形成する。または、大気環境下又は窒素ガス雰囲気下において所定温度及び時間で焼成するようにしてもよい。あるいは大気圧より低い圧力環境下(減圧環境下)に配置することで溶媒を除去するようにしてもよい。
【0079】
この際、ダミー領域TDに配置される単位面積当たりの溶媒の量が、有効光学領域TEに配置される単位面積当たりの溶媒の量よりも大きくなっているので、乾燥が速く進むダミー領域TDにおいても溶媒の分圧が急激に低下することがない。また、ダミー画素PDの表面は機能液に対して30°以下の後退接触角を有しているので、乾燥の開始から終了までの間、機能液の表面積は殆ど変化することがなく、常に一定の溶媒蒸気の分圧を維持することができる。このため、有効光学領域全体で乾燥速度が均一になり、得られる正孔注入層140Aも膜厚の均一性や平坦性に優れたものとなる。
【0080】
続いて、図12(a)に示すように、液滴吐出ヘッドより、発光層140Bを形成するための機能液L2をバンクB内の正孔注入層140A上に選択的に塗布する。機能液L2は、発光層形成材料を溶媒に溶解ないし分散させたものである。
【0081】
発光層形成材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の高分子発光材料である、ポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリジアルキルフルオレン(PDAF)、ポリフルオレンベンゾチアジアゾール(PFBT)、ポリアルキルチオフェン(PAT)や、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)等のポリシラン系などを好適に用いることができる。また、これらの発光材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
【0082】
前記発光層形成材料については、極性溶媒に溶解ないし分散させて液体材料とし、この液体材料を液滴吐出ヘッドから吐出するのが好ましい。極性溶媒は、前記発光材料等を容易に溶解または均一に分散させることができるため、液滴吐出ヘッドのノズル孔での発光層形成材料中の固型分が付着したり目詰りを起こしたりするのを防止することができる。
【0083】
このような極性溶媒として具体的には、水、メタノール、エタノール等の水と相溶性のあるアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、2,3−ジヒドロベンゾフラン等の有機溶媒または無機溶媒が挙げられ、これらの溶媒を2種以上適宜混合したものであってもよい。
【0084】
発光層140Bの形成は、赤色の発色光を発光する発光層形成材料を含む機能液、緑色の発色光を発光する発光層形成材料を含む機能液、青色の発色光を発光する発光層形成材料を含む機能液を、それぞれ対応する有効画素PEに吐出することによって行う。
【0085】
図12(a)では、赤色有効画素に機能液L2を吐出する工程が示されている。この工程では、正孔注入層140Aを形成したのと同じように、ダミー画素PDにも同様の機能液L2を吐出する。なお、図12(a)では、機能液L2を全てのダミー画素PDに吐出しているが、一部のダミー画素PDのみに吐出するものとしてもよい。
【0086】
液滴の上に液滴を重ね描きすると、2回目に吐出した液滴は吐出位置に対して良好な濡れ広がりを示す。すなわち、一回目の液滴L1によって形成された膜140Aは、その上に重ね描きした液滴L2に対して良好な親液性を示し、液滴L2に対して十分に小さな後退接触角を有するものとなる。このため、基体Pに特別な処理を施さなくても、前述した吐出条件、すなわち塗膜のサイズ、ピッチ、後退接触角等の条件は十分に満たされることになる。
【0087】
なお、この工程では、ダミーの機能液L2を、先に吐出したダミーの機能液L1とは異なる位置に吐出することも可能である。この場合、ダミーの機能液L2の吐出は、前述した条件で行なう。
【0088】
機能液L2を吐出したら、機能液L2中の溶媒を蒸発させる。この工程により、図12(b)に示すように、赤色有効画素PEの正孔注入層140A上に固形の赤色の発光層140B(膜パターン)が形成される。そして、これにより正孔注入層140Aと発光層140Bとからなる有機機能層140が得られる。
【0089】
この際、ダミー領域TDに配置する機能液の量及び表面積が適切に制御されているので、有効光学領域TE全体で乾燥速度が均一になり、膜厚及び膜質が均一なものとなる。しかも、機能液L2が配置される正孔注入層140Aの表面が良好に平坦化されているので、その上に形成される発光層140Bも良好な平坦性を持って形成され、より均一かつ良好な発光特性、信頼性を備えた発光層となる。
【0090】
全ての有効画素PEに発光層140Bを形成したら、図12(c)に示すように、基体Pの表面全体にITO或いはマグネシウム・アルミニウム合金等からなる共通電極154を形成し、必要に応じて、共通電極154の表面に保護膜155を形成する。これにより、有機EL素子200が完成する。
なお、ダミー画素PDには、赤色、緑色及び青色の3つの発光層形成材料が形成されることになるが、図12(c)では、これらを纏めて符号140Dで示している。
【0091】
本実施形態の有機EL装置の製造方法では、ダミー領域TDに保持される単位面積当たりの溶媒の量及び表面積を、有効領域TEに保持される単位面積当たりの溶媒の量及び表面積よりも大きくしているので、機能液の乾燥工程においてダミー領域TDにおける溶媒の蒸発速度を有効光学領域TEにおける溶媒の蒸発速度に近づけることができる。特に、ダミー領域においては、基体表面の機能液に対する後退接触角が十分小さくなるように調節されているので、乾燥期間中、溶媒の表面積は殆ど変化せず、常に一定の溶媒蒸気の分圧を維持することができる。このため、有効光学領域TEの外周部と中央部とにおいて均一な膜厚の正孔注入層又は発光層を形成できるようになり、これにより、表示特性にむらの少ない信頼性に優れた有機EL装置を提供することが可能になる。
【0092】
[実施例]
次に、本発明の膜パターンの形成方法の実施例について説明する。
図13は、表面処理の異なる2つのサンプル基板(サンプル基板1、サンプル基板2)の有効領域内における膜厚の不均一性を示す図である。図13の横軸は基板上における有効画素の位置を示しており、縦軸は1有効画素内での膜厚の不均一性を示している。膜厚の不均一性は、1有効画素内で最も膜厚が大きい部分と最も膜厚が薄い部分との膜厚差によって測定している。なお、縦軸の単位はオングストローム(Å)である。
【0093】
サンプル基板1に対して、ある表面処理条件において乾燥まで行なったところ、ダミー領域の乾燥後の液滴のサイズは塗布直後の半分になった。このときのダミー領域に対する液滴の後退接触角は50°であった。また、有効領域内の膜厚のばらつきは図13(a)のようになった。図13(a)に示すように、サンプル基板1においては、有効領域の端部において大きな膜厚の不均一性が生じており、単にダミー領域を設けるのみでは、十分に膜厚むらを解消できないことがわかる。
【0094】
そこで、表面処理条件を変え、ダミー領域に対する液滴の後退接触角が25°となるようにした(サンプル基板2)。この状態で乾燥を行なったところ、液滴の面方向のサイズは乾燥開始から乾燥終了まで殆ど変化しなかった。このときの有効領域内の膜厚のばらつきは図13(b)のようであり、サンプル基板1の場合に比べて、ばらつきの程度が改善されていた。
【0095】
このような結果は、図6に示したような現象によって理解することができる。すなわち、液滴径が一定で接触角が変化する場合(図6(a))と、接触角が一定で液滴径が減少する場合(図6(b))では、液滴の表面積の変化は図14のようになり、液滴径が小さくなる場合には、乾燥の進行に伴って液滴の表面積が小さくなっていくが、このような溶媒分圧の変化が生じると、それを補うように有効領域の蒸発速度が増加していき、結果として、基板の端部と基板の中央部の蒸発速度に差が生じるようになる。一方、液滴径が一定で接触角のみが変化する場合には、表面積の減少が抑えられるため、ダミー領域の溶媒の分圧は殆ど変化しない。このため、有効領域の中央部と端部の乾燥速度差は大きくならず、有効領域全体で均一な膜が得られるようになる。
【0096】
なお、このような結果は使用する機能液の種類によらない。どのような機能液を用いた場合であっても、ダミー画素における機能液の表面積を乾燥期間中一定に保持すれば、有効領域内の膜厚均一性は高まる。本実施例では、ダミー領域の機能液に対する後退接触角を調節することによって機能液の表面積を一定に保ったが、前述の考察から、その手段はこれに限定されるものではないと考えられる。例えば、ダミー領域に対してバンクを形成し、このバンクの開口部に機能液を吐出する方法が挙げられる。ダミー画素に配置された溶媒の表面積はバンクの開口部のサイズに規定されるので、常に一定の溶媒雰囲気を保つことができる。この場合には、ダミー領域において十分な溶媒雰囲気が得られるように、ダミー画素のバンクの開口部を有効画素のバンクの開口部よりも大きく形成する。
【0097】
また、本実施例では、ダミー領域に配置された溶媒の表面積を一定に保つようにしたが、ダミー領域の溶媒の分圧の減少によって有効領域の蒸発速度が大きくなるのを防ぐという観点からは、少なくとも乾燥期間の開始から終了までの間において、ダミー領域に配置された溶媒の表面積を有効領域に配置された溶媒の表面積よりも大きくすればよく、必ずしもダミー領域に配置された溶媒の表面積が常に一定であることまでは要求されない。
【0098】
[電子機器]
次に、本発明の電子機器の具体例について説明する。
図15は、携帯電話機の一例を示した斜視図である。図15において、符号600は携帯電話機本体を示し、符号601は上記実施形態の有機EL装置を備えた表示部を示している。
図15に示す電子機器は、上述した本発明の膜パターンの形成方法により形成された膜パターンを備えたものであるので、高い表示品質や高い性能が得られるものとなる。
なお、本発明のデバイスは、前述した携帯電話機に限らず、種々の電子機器に搭載することができる。この電子機器としては例えば、電子ブック、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等がある。
【0099】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0100】
上記の実施形態では、本発明の膜パターンの形成方法を有機EL装置の製造方法に適用したが、本発明はこれに限らず、所定の領域内に複数の膜パターンを備えるデバイスの製造方法について広く適用することができる。例えば上述の有機EL装置の例では、正孔注入層140Aや発光層140Bだけでなく、画素電極141のパターニングに本発明を適用することも可能である。また、データ線132、走査線131又は電源線133を含む各種の配線パターンの形成や、フレキシブル基板75と基体Pとを接続する複数の端子電極パターンの形成についても、本発明の膜パターンの形成方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の膜パターンの形成方法を示す概念図である。
【図2】機能液を配置する手段の一例である液滴吐出ヘッドの分解斜視図である。
【図3】同液滴吐出ヘッドの要部を示す部分斜視図である。
【図4】ダミー領域を含む基体の平面図である。
【図5】膜パターンの形成工程の一例を示す工程図である。
【図6】機能液の乾燥工程を示す模式図である。
【図7】本発明のデバイスの一例である有機EL装置の等価回路図である。
【図8】同有機EL装置の全体構成を示す平面図である。
【図9】同有機EL装置の1画素の構成を示す平面図である。
【図10】図9のA−A線に沿う断面図である。
【図11】同有機EL装置の製造工程の一例を示す工程図である。
【図12】図8に続く工程図である。
【図13】実施例における膜パターンのプロファイルを示す図である。
【図14】乾燥工程における塗膜の表面積と体積との関係を示す図である。
【図15】本発明の膜パターンを備えた電子機器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0102】
70…有機エレクトロルミネッセンス装置(デバイス)、140A…正孔注入層(膜パターン)、140B…発光層(膜パターン)、B…隔壁、F…膜パターン、L,L1,L2…機能液、P…基体、PE…有効画素(液体受容部)、PD…ダミー画素(液体受容部)、TE…有効領域、TD…非有効領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性材料を溶媒に溶解ないし分散させてなる機能液を基体上に配置し、前記機能液を乾燥することにより、前記機能性材料からなる膜パターンを形成する方法であって、
前記膜パターンが形成される前記基体の有効領域に前記機能液を配置する工程と、
前記有効領域の周囲の非有効領域に前記機能液又は前記溶媒を配置する工程と、
前記有効領域及び前記非有効領域に配置された前記機能液又は前記溶媒を乾燥する工程とを有し、
前記乾燥の開始から終了までの期間において、前記非有効領域に配置された前記溶媒の表面積SDが、前記有効領域に配置された前記溶媒の表面積SEに対して、SE≦SDを満たすように乾燥を行なうことを特徴とする、膜パターンの形成方法。
【請求項2】
前記非有効領域に配置する単位面積当たりの前記溶媒の表面積SDを、前記有効領域に配置する単位面積当たりの前記溶媒の表面積SEよりも大きくし、且つ前記非有効領域における前記溶媒の後退接触角を30°以下に調節することを特徴とする、請求項1記載の膜パターンの形成方法。
【請求項3】
前記機能液又は前記溶媒の配置工程に先立って、前記基体の有効領域及び非有効領域に、前記機能液又は前記溶媒が配置される液体受容部を形成することを特徴とする、請求項1記載の膜パターンの形成方法。
【請求項4】
前記有効領域及び前記非有効領域の前記液体受容部を隔壁によって区画された領域として形成し、且つ前記非有効領域における前記液体受容部のサイズを前記有効領域における前記液体受容部のサイズよりも大きくすることを特徴とする、請求項3記載の膜パターンの形成方法。
【請求項5】
前記有効領域の前記液体受容部を隔壁によって区画された領域として形成し、前記非有効領域の前記液体受容部を前記基体の表面処理によって形成すると共に、
前記非有効領域における前記液体受容部のサイズを前記有効領域における前記液体受容部のサイズよりも大きくし、且つ前記非有効領域における前記液体受容部の前記溶媒に対する後退接触角を30°以下となるように調節することを特徴とする、請求項3記載の膜パターンの形成方法。
【請求項6】
前記非有効領域の前記液体受容部を、前記隔壁の上面を表面処理することによって形成することを特徴とする、請求項5記載の膜パターンの形成方法。
【請求項7】
前記機能液又は前記溶媒の配置を液滴吐出法により行なうことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの項に記載の膜パターンの形成方法。
【請求項8】
膜パターンを有するデバイスの製造方法であって、
前記膜パターンの形成工程が、請求項1〜7のいずれかの項に記載の膜パターンの形成方法により行なわれることを特徴とする、デバイスの製造方法。
【請求項1】
機能性材料を溶媒に溶解ないし分散させてなる機能液を基体上に配置し、前記機能液を乾燥することにより、前記機能性材料からなる膜パターンを形成する方法であって、
前記膜パターンが形成される前記基体の有効領域に前記機能液を配置する工程と、
前記有効領域の周囲の非有効領域に前記機能液又は前記溶媒を配置する工程と、
前記有効領域及び前記非有効領域に配置された前記機能液又は前記溶媒を乾燥する工程とを有し、
前記乾燥の開始から終了までの期間において、前記非有効領域に配置された前記溶媒の表面積SDが、前記有効領域に配置された前記溶媒の表面積SEに対して、SE≦SDを満たすように乾燥を行なうことを特徴とする、膜パターンの形成方法。
【請求項2】
前記非有効領域に配置する単位面積当たりの前記溶媒の表面積SDを、前記有効領域に配置する単位面積当たりの前記溶媒の表面積SEよりも大きくし、且つ前記非有効領域における前記溶媒の後退接触角を30°以下に調節することを特徴とする、請求項1記載の膜パターンの形成方法。
【請求項3】
前記機能液又は前記溶媒の配置工程に先立って、前記基体の有効領域及び非有効領域に、前記機能液又は前記溶媒が配置される液体受容部を形成することを特徴とする、請求項1記載の膜パターンの形成方法。
【請求項4】
前記有効領域及び前記非有効領域の前記液体受容部を隔壁によって区画された領域として形成し、且つ前記非有効領域における前記液体受容部のサイズを前記有効領域における前記液体受容部のサイズよりも大きくすることを特徴とする、請求項3記載の膜パターンの形成方法。
【請求項5】
前記有効領域の前記液体受容部を隔壁によって区画された領域として形成し、前記非有効領域の前記液体受容部を前記基体の表面処理によって形成すると共に、
前記非有効領域における前記液体受容部のサイズを前記有効領域における前記液体受容部のサイズよりも大きくし、且つ前記非有効領域における前記液体受容部の前記溶媒に対する後退接触角を30°以下となるように調節することを特徴とする、請求項3記載の膜パターンの形成方法。
【請求項6】
前記非有効領域の前記液体受容部を、前記隔壁の上面を表面処理することによって形成することを特徴とする、請求項5記載の膜パターンの形成方法。
【請求項7】
前記機能液又は前記溶媒の配置を液滴吐出法により行なうことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの項に記載の膜パターンの形成方法。
【請求項8】
膜パターンを有するデバイスの製造方法であって、
前記膜パターンの形成工程が、請求項1〜7のいずれかの項に記載の膜パターンの形成方法により行なわれることを特徴とする、デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−90134(P2007−90134A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279245(P2005−279245)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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