説明

自動倉庫

【課題】エージング装置に適用でき,パレットをラックの棚に簡単に的確に入出庫させ,エージングの処理を高速化して適正な時間管理を容易にする自動倉庫を提供する。
【解決手段】棚6を備えたラックにスタッカクレーン2でパレット8を入出庫させるプッシュ・プル装置10を備えている。プッシュ・プル装置10は,パレット8を棚6への押し込み作動と棚6から引き出す作動とを行うプッシュ・プル爪12,プッシュ・プル爪12の往復移動を直動案内装置を介して往復移動させる駆動装置,及びプッシュ・プル爪12をパレットへの係脱位置と解除位置とにチルトさせるリンク機構を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,例えば,液晶表示パネルのエージングの試験をする恒温のエージング装置に適用できる自動倉庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,複数エージング時間対応型回転棚として,異なったエージング時間を有する複数の種類のワークを,煩雑な制御を行うことなく,エージングが完了したものから順に効率的に出庫できるものが知られている。該複数エージング時間対応型回転棚は,複数の棚ユニットが無端状に連結され1つの入庫位置と複数の出庫位置との間をタクト運転により循環駆動される回転棚と,入庫位置に配置されエージングを行うワークを棚ユニットへ入庫する入庫装置と,出庫位置に配置され棚ユニットに収容されたワークの種類を検知した出庫位置に対応した種類のワークのみを棚ユニットから出庫する出庫装置とを備え,それぞれの出庫位置は棚ユニットへ入庫されたそれぞれの種類のワークのエージング時間に等しい時間で,入庫位置から棚ユニットが移動する距離に設けられている(例えば,特許文献1参照)。
【0003】
また,恒温倉庫用棚として,収納物をエージングするために倉庫全体が常温から恒温に加熱されても,滑り材が棚本体から部分的に浮き上がることがないものが知られている。該恒温倉庫用棚は,金属製の棚本体の表面に弾性材を介して棚本体と異なる熱膨張率のプラスチック製の滑り材が貼着されている(例えば,特許文献2参照)。
【0004】
また,エージング可能な荷格納設備として,上下方向と水平方向に複数の区画収納空間を有する棚と,該棚に沿って走行可能で昇降と横方向出退可能な荷受台を有する荷出し入れ装置とから成るものが知られてる。該エージング可能な荷格納設備は,各区画収納空間の荷受部に給電子を設け,荷受部に支持されたパレットに集電板と該集電板に接続するコンセントとを設け,荷格納設備の全体を覆う遮熱壁体を設けたものである(例えば,特許文献3参照)。
【0005】
また,自動収納装置として,荷を出し入れする方向にベルトコンベヤと荷の係合部と係合して荷の出し入れを行うプッシュプル部を設けたものが知られている。該自動収納装置は,荷の大きさに対して収納棚の寸法を小さくして収納効率を上げるものであり,倉庫内を移動する搬送機器に荷を入出庫させるハンドリング装置を設け,ハンドリング装置が荷を出し入れする方向にベルトを回転するベルトコンベヤ部と,荷の係合部と係合する係合部を備えて伸縮可能なプッシュプル部と,プッシュプル部をベルトコンベヤ部のベルトの上面高さ位置の上方からベルトの上面高さ位置の下方まで昇降し得るプッシュプル昇降部とから構成されている(例えば,特許文献4参照)。
【0006】
また,フロアスペースを有効に使用することができるパーナルコンピュータシステム装置の試験と,ソフトウエアインストールに使用するパレット,システム及び方法が知られている。パレットは,PCシステム装置のためのデータ及び電力用コネクタと,データ及び電力用コネクタの1つの各コンタクトにそれぞれ接続される1組のデータ及び電力用コネクタとを備え,1組のデータ及び電力用コネクタは,パレットが位置されるラック上の相補的な1組のデータ及び電力用コネクタと1対1で結合するように構成されている(例えば,特許文献5参照)。
【特許文献1】特開平8−310618号公報
【特許文献2】特開平9−37857号公報
【特許文献3】実開昭57−158602号公報
【特許文献4】特開2000−185806号公報
【特許文献5】特開2000−122889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで,従来の自動倉庫では,荷の入庫から出庫までの時間が一定であり,適正な時間管理ができないという問題がある。また,従来の自動収納装置に用いたプッシュプル装置では,動作そのものが複雑であり,タクトタイムが20〜25秒もかかっており,液晶表示パネル等の部品を搭載したパレットをラックの棚に入出庫するのを,如何に高速に,迅速にして正確に設定できるかの問題があった。
【0008】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,エージング装置に適用して好ましいものであり,パレットのラックに対する入出庫動作を行う装置そのものが簡単な構造であって的確にパレットを予め決められた所定の位置に設定できる極めてシンプルな動作であり,適正な時間管理を容易にすると共に,入出庫の動作時間を高速化できる自動倉庫を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は,パレットを位置決め設置する多数の棚を備えたラック,前記ラックの予め決められた所定の前記棚と前記パレットを荷受けする入庫ステーション又は前記パレットを荷卸する出庫ステーションとの間或いは前記棚と別の前記棚との間を往復移動するスタッカクレーン,並びに前記スタッカクレーンに設けられ且つ前記スタッカクレーンと前記棚との間及び前記スタッカクレーンと前記入庫ステーション又は前記出庫ステーションとの間で前記パレットを搬送するコンベアを有する自動倉庫において,
前記スタッカクレーンに設けられ且つ前記棚,前記入庫ステーション及び前記出庫ステーションに対して前記パレットを入出庫させるプッシュ・プル装置を備えており,前記プッシュ・プル装置は,前記パレットを前記スタッカクレーンから前記棚の所定の位置へ押し込む作動と前記棚から前記スタッカクレーンのパレット搭載部へと引き出す作動を行うプッシュ・プル爪,前記プッシュ・プル爪を前記棚の押し込み位置と前記スタッカクレーンの引き出し位置との間の往復移動を案内する直動案内装置,及び前記直動案内装置を介して前記プッシュ・プル爪を往復移動させる駆動装置を有することを特徴とする自動倉庫に関する。
【0010】
前記プッシュ・プル爪は,前記パレットを前記棚の所定の位置へ押し込み時には前記パレットに当接して作動され,また,前記パレットを前記棚から引き出す時には前記パレットの係止部に係止して作動する。
【0011】
前記ラックにおける前記棚は,前記パレットに搭載した液晶表示パネルを検査するため前記液晶表示パネルに対して通電,通信等の処理を可能にするコネクタを備えた恒温のエージング装置に構成されている。
【0012】
前記ラックの前記棚に設けた前記コネクタは,前記パレットを前記棚の所定の位置に設定するため,前記パレットに設けたソケット部に連結する。
【0013】
前記プッシュ・プル装置に設けた前記プッシュ・プル爪は,枢支軸を中心として前記パレットへの係止位置と解除位置とにリンク機構を介して互いに揺動する一対から構成され,前記スタッカクレーンの両側に位置する前記ラックの前記棚に対してそれぞれ作動するものである。
【0014】
また,前記プッシュ・プル装置の前記プッシュ・プル爪は,前記スタッカクレーンのコンベアによる前記パレットの搬送時には,前記パレットに対して解除位置に揺動移動している。
【0015】
また,前記プッシュ・プル装置の前記プッシュ・プル爪は,前記パレットに設けた係止穴に係脱可能又は前記パレットの端面に当接可能な一対の係止ピン,及び前記係止ピンを一端に取り付けたレバーから構成されている。
【0016】
前記プッシュ・プル装置は,前記プッシュ・プル爪を揺動させる枢支軸に揺動可能に取り付けられ且つ前記レバーをシャフトピンで取り付けた揺動アーム,一端が前記レバーに他端が前記揺動アームに取り付けられ且つ前記レバーを前記シャフトピンを中心に上方へ付勢する緩衝ばね,前記揺動アームを上下動させて前記プッシュ・プル爪を前記枢支軸を中心に揺動させるリンク機構,及び前記リンク機構を作動して前記揺動アームを介して前記プッシュ・プル爪を揺動させる爪昇降用駆動装置を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
この自動倉庫は,上記のように構成されているので,自動倉庫がエージング装置に構成されていると,パレットに設けたソケット部と棚に設けたコネクタとを確実に接続することによって通信可能にし,パレット上の搭載された液晶表示パネル(以下,LCDという)のエージング状態即ち経年変化,製品管理等の検査を行うことができる。即ち,この自動倉庫は,エージング装置に適用して自動運用,品質管理を容易に行うことができ,また,的確で単純な動作であるので,タクトタイムも16〜18秒となり,従来のものに比較して30%も所要時間を低減し,高速化を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下,図面を参照して,この発明による自動倉庫の実施例を説明する。図1〜図3には,この発明による自動倉庫が全体的に示されている。この自動倉庫は,実施例では,液晶表示パネル57(LCD)に対するエージングを行う恒温のエージング装置に構成されており,概して,多数の棚6を備えたラック1,ラック1間でレール3に沿って往復走行するスタッカクレーン2,コンベヤ7を備えた入庫ステーション4,及びコンベヤ7を備えた出庫ステーション5を備えている。この自動倉庫は,具体的には,パレット8を位置決め設置する多数の棚6を備えたラック1,ラック1の予め決められた所定の棚6とパレット8を荷受けする入庫ステーション4又はパレット8を荷卸する出庫ステーション5との間を往復移動するスタッカクレーン2,スタッカクレーン2に設けられ且つ棚6,入庫ステーション4及び出庫ステーション5に対してパレット8を入出庫させるプッシュ・プル装置10,並びにスタッカクレーン2に設けられ且つスタッカクレーン2のパレット搭載部9と棚6との間及びパレット搭載部9と入庫ステーション4又は出庫ステーション5との間でパレット8を搬送するコンベヤ11を有している。レール3の両終端には,スタッカクレーン2の走行を停止させるストッパ28が設けられている。
【0019】
パレット8は,液晶表示パネル57を搭載されており,入庫ステーション4からスタッカクレーン2に搭載されて搬送され,ラック1の所定の棚6に設置され,液晶表示パネル57のエージングの検査が終了して再びスタッカクレーン2に搭載されて出庫ステーション5に出庫されるものである。スタッカクレーン2は,従来のものと実質的に同様の機能を有しているものである。図4及び図5に示すように,スタッカクレーン2は,ベース68に敷設されたレール3上を車輪69が走行し,上部に設けた上部ガイドローラ67が上部走行面64に対して転走することによって,スムーズに往復移動できる。レール3は,図1に示すように,その両側にラック1が設置されており,終端にはストッパ63が設けられている。ラック1には,入庫ステーション4と出庫ステーション5とが設けられている。スタッカクレーン2には,パレット8を往復動させるプッシュ・プル装置10を搭載するキャリッジ30,キャリッジ30をマスト27に沿って上下動させるための昇降装置25,スタッカクレーン2をレール3に沿って走行させるための走行装置26,及び昇降装置25と走行装置26とを作動制御する操作制御盤65が設けられている。
【0020】
この自動倉庫において,プッシュ・プル装置10は,レール3の両側に位置するラック1にそれぞれパレット8を入出庫させるため,キャリッジ30上に一対搭載されている。プッシュ・プル装置10は,特に,パレット8に当接してパレット8を棚6の所定の位置への押し込み作動とパレット8に係止してパレット8を棚6から引き出す作動とを行うプッシュ・プル爪12,プッシュ・プル爪12を棚6の押し込み位置とパレット搭載部9の引き出し位置との間の往復移動を案内する直動案内装置13,及び直動案内装置13を介してプッシュ・プル爪12を往復移動させる可逆モータ等から成る駆動装置14を備えていることを特徴としている。
【0021】
また,ラック1における棚6は,パレット8に搭載した液晶表示パネル(LCD)57等の部品を検査するため部品に対して通電,通信等の処理を可能にする端子であるコネクタ15をそれぞれ備えた恒温のエージング装置に構成されている。ラック1の棚6には,図13及び図14に示すように,パレット8を棚6の所定の載置位置に設定するため,パレット8に設けた係合部であるソケット部16に連結する端子を構成するコネクタ15を備えており,具体的には,パレット8にはガイド穴42が設けられ,棚6にはコネクタ15の領域にスプリング61で弾性的に支持されたガイドピン41が設けられており,パレット8のガイド穴42が棚6のガイドピン41に嵌合されることによって,パレット8のソケット部16が棚6のコネクタ15に接続される。また,棚6の受け面58及びガイド面59には,例えば,ソリジュール樹脂等の摩擦抵抗の小さい材料の滑り材が使用されているので,パレット8の移送を円滑に行うことができる。
【0022】
この自動倉庫は,特に,図8,図9及び図12に示すように,スタッカクレーン2のフォークベース31に,パレット8を搬送するための搬送用のベルトでなるコンベヤ11及びパレット8を入出庫するためのプッシュ・プル動作を行うプッシュ・プル装置10が設けられている。フォークベース31には,キャリッジ30が設けられ,マスト27に沿って上下動するように構成されている。キャリッジ30には,隔置した一対のコンベヤ11が設けられ,コンベヤ11間にプッシュ・プル装置10が配置されている。コンベヤ11は,フォークベース31に設けられたコンベヤフレーム46に支持されているドライブプーリ32と多数のアイドルプーリ33とにわたって掛けられ,ドライブプーリ32がコンベア用モータ43で駆動されることによってコンベヤガイド47に沿って作動される。また,キャリッジ30には,近接スイッチ等から成るパレット方向判別センサ52,LCD等の荷が搭載されたパレット8がスタッカクレーン2に配設されているか否かを判別する荷有無判別センサ49,二重格納スイッチ53等の各種の必要なセンサが設けられている。
【0023】
スタッカクレーン2のフォークベース31には,プッシュ・プル装置10を載置するための直動ベース(LMベース)51を設けられている。プッシュ・プル装置10は,直動案内装置13を介してボールねじ50によってスライドフレーム45を往復動させると共に,スライドフレーム45に搭載されたプッシュ・プル爪12を備えている。直動ベース51には,直動案内装置13を構成する軌道レール38が取り付けられ,軌道レール38にはスライダ39が往復摺動するように設けられている。スライダ39には,スライドフレーム45が取り付けられている。また,フォークベース31には,スライド用モータ14が取り付けられている。直動ベース51には,ボールねじ50を構成するボールねじ軸55が回転自在に取り付けられている。ボールねじ軸55には,スライドフレーム45に取り付けられたボールねじナット56が取り付けられている。従って,スライド用モータ14が駆動することによってボールねじ軸55が回転し,ボールねじ軸55に螺合するボールねじナット56を通じてスライドフレーム45が直動案内装置13を介して往復移動するようになる。
【0024】
スライドフレーム45には,特に,図10及び図11に示すように,プッシュ・プル装置10におけるプッシュ・プル爪12が取り付けられている。プッシュ・プル爪12は,シャフト40の端部で構成される枢支軸17を中心としてパレット8への係止位置と解放位置とにチルト機構であるリンク機構18を介して互いに揺動する一対から構成されている。スライドフレーム45上には,リンク機構18を構成する互いに対向して噛み合っているギヤ34,35を備えた一対のギヤ体70が回転自在の支持されている。ギヤ34とギヤ35とは,互いに噛み合っているので,逆方向に回転するようになっている。ギヤ体70には,ギヤ34,35とは反対側にボールジョイント36が設けられ,ボールジョイント36を介してロッド37の一端が取り付けられ,ロッド37の他端が揺動アーム22が取り付けられている。一対の揺動アーム22は,図11に示すように,一端にプッシュ・プル爪12がそれぞれ取り付けられ,他端に枢支軸17で揺動するように取り付けられている。揺動アーム22には,シャフトピン29によってレバー21が取り付けられている。レバー21は,シャフトピン29を枢支点として揺動できるように構成されている。レバー21の先端には,パレット8の係止穴19に係止するピン20が取り付けられている。緩衝ばね23は,一端がレバー21の端部に取り付けられ,他端が揺動アーム22に取り付けられている。従って,ピン20を備えたレバー21は,緩衝ばね23によってピン20を上方へ付勢された状態で揺動アーム22に取り付けられている。
【0025】
この自動倉庫では,プッシュ・プル装置10に設けたプッシュ・プル爪12は,上記のように構成されているので,爪昇降用駆動装置である爪昇降用モータ44の駆動によってギヤ34,35を何れかの方向に若干回転させると,ロッド37を通じて揺動アーム22が上下動し,揺動アーム22の上下動はレバー21を枢支軸17を中心にレバー21を傾斜即ち揺動させ,更に,レバー21の揺動運動はピン20を上下動させることになる。従って,プッシュ・プル爪12は,ピン20が上方に揺動すると,パレット8に係止する状態になり,また,ピン20が下方に揺動すると,パレット8から解除する状態になる。
【0026】
この自動倉庫は,特に,プッシュ・プル装置10のプッシュ・プル爪12は,スタッカクレーン2のコンベヤ7によるパレット8の搬送時には,パレット8に対して解放した位置に揺動移動している。また,プッシュ・プル装置10は,プッシュ・プル爪12を構成するパレット8に設けた係止穴19に係脱し又はパレット端面即ち当接端面24に当接する一対のピン20,ピン20を一端に取り付けたレバー21,レバー21を枢支軸17を中心に枢動自在に支持する揺動アーム22,レバー21の他端に設け且つ揺動アーム22に取り付けられた緩衝ばね23,及び揺動アーム22を上下動させてプッシュ・プル爪12を揺動させるリンク機構18から構成されている。また,プッシュ・プル装置10は,係止片のピン20を取り付けたレバー21が揺動可能なチルト機構に構成されているので,ピン20がパレット8の係止穴19に容易に係止でき,また,コンベヤ11でパレット8を移動させる時にはピン20がチルト機構で引っ込むので,パレット8の走行を妨げることがなく,パレット8を棚6と入庫ステーション4との間,及び棚6と出庫ステーション5との間へスムーズに移動させることができる。
【0027】
この自動倉庫は,LCD57が固定されたパレット8とラック1の棚6に設けたコネクタ15とは互いに接続されるので,LCD57に電源供給や通信を行うことができる。自動倉庫におけるラック1内の温度は,エージング装置に構成される場合には,恒温,例えば,60±3℃に設定して維持することができる。また,棚6に設けたコネクタ15とパレット8に設けたソケット部16との接続動作又は離脱動作は,棚6にパレット8をガイドするプッシュ・プル装置10のピン20がパレット8を押し込んだり,パレット8の係止穴19に係合して引き出すのでスムーズに達成できる。
【0028】
プッシュ・プル装置10は,プッシュ・プル爪12がパレット8の係止穴19に係止して,棚6からパレット8を引き出すので,パレット8をキャリッジ30上にスムーズに確実に移動させることができ,次いで,コンベヤ11でパレット8をキャリッジ30の中央の載置位置へ移動させて載置位置で停止する。また,キャリッジ30上のパレット8を棚6の載置位置へ移動させる時には,プッシュ・プル装置10に設けたコンベヤ11で棚6に乗り移るまで運び,パレット8の当接端面24にプッシュ・プル爪12が当接してパレット8を押し込むので,パレット8のソケット部16が棚6のコネクタ15に確実に嵌め込まれ,良好な通電状態を実現させることができる。
【0029】
この自動倉庫は,上記のように構成されており,図15及び図16に示すように作動される。まず,図15の(A),(B),(C)及び(D)を参照して,入庫ステーション4に位置するパレット8を棚6に入庫する工程を説明する。図15の(A)には,入庫ステーション4からパレット8をスタッカクレーン2が受け入れる工程が示されている。パレット8は,入庫ステーション4のコンベヤ60上に位置しており,スタッカクレーン2に設けたプッシュ・プル装置10のプッシュ・プル爪12が爪昇降用モータ44の作動によって下方位置へと揺動し,係止ピン20がパレット8に干渉しない位置へ揺動移動する。パレット8が搭載されている入庫ステーション4のコンベヤ60が作動して,パレット8を入庫ステーション4からスタッカクレーン2のコンベヤ11へと移動させ,そこで,コンベヤ11が作動してパレット8をプッシュ・プル装置10のキャリッジ30の所定の位置へ移動させ,パレット8はキャリッジ30上の停止位置で停止する。次いで,スタッカクレーン2は,パレット8を移動させるラック1の予め決められた所定の棚6へとレール3に沿って移動すると共に,スタッカクレーン2の昇降装置25が作動して,プッシュ・プル装置10が予め決められた所定の棚6の位置まで上昇する。
【0030】
図15の(B)〜(D)には,パレット8をスタッカクレーン2から棚6に入庫させる工程が示されている。(B)に示すように,スタッカクレーン2のプッシュ・プル装置10のキャリッジ30に搭載されたパレット8が所定の棚6の位置に到達して昇降装置25が停止し,次いで,スタッカクレーン2のコンベヤ11が作動し,パレット8を棚6の所定の位置まで進入させ,パレット8の後端の当接端面24が通過した後に,プッシュ・プル装置10のプッシュ・プル爪12が爪昇降用モータ44の作動によって上方位置へと揺動させ,ピン20がパレット8の当接端面24と同位置まで上昇する。次いで,(C)に示すように,プッシュ・プル装置10の駆動装置14が作動してプッシュ・プル爪12を直動案内装置13を通じて棚6側へ移動させ,プッシュ・プル爪12のピン20をパレット8の当接端面24に当接させ,ピン20がパレット8を棚6の所定の位置まで押し込み,棚6のコネクタ15にパレット8のソケット部16を嵌入させる。プッシュ・プル爪12がパレット8を棚6の所定の位置まで押し込むと,(D)に示すように,プッシュ・プル装置10の駆動装置14が作動してプッシュ・プル爪12を直動案内装置13を通じてバックさせ,それと共に,コネクタ15に設けたスプリング61の圧縮力が解放され,スプリング61のスプリングバック作用によってパレット8が棚6の所定の設定位置に静止され,棚6のコネクタ15とソケット部16を通じてLCDが通電状態になる。そこで,プッシュ・プル爪12が爪昇降用モータ44の作動によって下方位置へと揺動し,ピン20がパレット8に干渉しない位置へ揺動し,そこで,スタッカクレーン2は次のパレット6を受け取りに行くため,入庫ステーション4,出庫するべきパレット8が位置する棚6へと移動する。
【0031】
次に,図16の(A),(B),(C)及び(D)を参照して,棚6においてエージングが終了したLCDを搭載したパレット8を出庫ステーション5に出庫する工程を説明する。エージングが終了したLCDを搭載したパレット8が棚6の所定の位置に載置されているので,その棚6までスタッカクレーン2が移動し,スタッカクレーン2の昇降装置25が作動して,プッシュ・プル装置10がエージングが終了したパレット8が設置されている所定の棚6の位置まで上昇する。プッシュ・プル装置10のプッシュ・プル爪12が下方位置に揺動してピン20がパレット8に干渉しない位置で停止した状態であるので,プッシュ・プル装置10の駆動装置14が作動してプッシュ・プル爪12を直動案内装置13を通じてプッシュ・プル爪12のピン20がパレット8の下方へ進入し,次いで,(A)に示すように,爪昇降用モータ44が作動してプッシュ・プル爪12が爪昇降用モータ44の作動によって上方位置へと揺動させ,ピン20をパレット8に設けた係止穴19に係合させる。次いで,(B)に示すように,プッシュ・プル装置10の駆動装置14を作動させてプッシュ・プル爪12を直動案内装置13を通じてプッシュ・プル爪12をキャリッジ30へと移動させると,ピン20に係合したパレット8がプッシュ・プル爪12に引っ張られてパレット8がスタッカクレーン2のキャリッジ30上に到達する。
【0032】
次いで,(C)に示すように,爪昇降用モータ44が作動してプッシュ・プル爪12が爪昇降用モータ44の作動によって下方位置へと揺動させ,ピン20がパレット8に干渉しない状態にし,プッシュ・プル装置10のコンベヤ11が作動し,パレット8をキャリッジ30の中央の載置位置へ移動させてパレット8を載置位置で停止させる。そこで,スタッカクレーン2は,パレット8を出庫させる出庫ステーション5へとレール3に沿って移動させ,(D)で示すように,スタッカクレーン2の昇降装置25が作動して,パレット8を出庫ステーション5の位置へと移動させる。そこで,コンベヤ11が作動してパレット8をスタッカクレーン2から出庫ステーション5へと移動させると共に,出庫ステーション5のコンベヤ62が作動してパレット8を出庫させる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明による自動倉庫は,例えば,パレットに搭載した液晶表示パネルのエージングを行う恒温のエージング装置に利用して好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明による自動倉庫の一実施例を示す概略平面図である。
【図2】図1の自動倉庫を示す概略正面図である。
【図3】図1の自動倉庫におけるA−A断面におけるスタッカクレーンを排除した概略説明図である。
【図4】この自動倉庫におけるスタッカクレーンを示す概略正面図である。
【図5】図4のスタッカクレーンを示す概略側面図である。
【図6】この自動倉庫において使用されるパレットを示す平面図である。
【図7】図6のパレットを示す正面図である。
【図8】この自動倉庫におけるプッシュ・プル装置を示す平面図である。
【図9】図8のプッシュ・プル装置を示す正面図である。
【図10】図8のプッシュ・プル装置におけるプッシュ・プル爪を揺動させるリンク機構を示す説明図である。
【図11】図10の符号Bの領域のプッシュ・プル爪を説明する拡大図である。
【図12】図8のプッシュ・プル装置を示す側面図である。
【図13】この自動倉庫におけるラックに設けた棚を示す平面図である。
【図14】図13の棚を示す側面図である。
【図15】この自動倉庫において,パレットの入庫工程を示す説明図である。
【図16】この自動倉庫において,パレットの出庫工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 ラック
2 スタッカクレーン
4 入庫ステーション
5 出庫ステーション
6 棚
8 パレット
10 プッシュ・プル装置
11 コンベヤ
12 プッシュ・プル爪
13 直動案内装置
14 駆動装置
15 コネクタ
16 ソケット部
17 枢支軸
18 リンク機構
19 係止穴
20 係止ピン
21 レバー
22 揺動アーム
23 緩衝ばね
29 シャフトピン
44 爪昇降用モータ(爪昇降用駆動装置)
57 液晶表示パネル(LCD)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットを位置決め設置する多数の棚を備えたラック,前記ラックの予め決められた所定の前記棚と前記パレットを荷受けする入庫ステーション又は前記パレットを荷卸する出庫ステーションとの間或いは前記棚と別の前記棚との間を往復移動するスタッカクレーン,並びに前記スタッカクレーンに設けられ且つ前記スタッカクレーンと前記棚との間及び前記スタッカクレーンと前記入庫ステーション又は前記出庫ステーションとの間で前記パレットを搬送するコンベアを有する自動倉庫において,
前記スタッカクレーンに設けられ且つ前記棚,前記入庫ステーション及び前記出庫ステーションに対して前記パレットを入出庫させるプッシュ・プル装置を備えており,
前記プッシュ・プル装置は,前記パレットを前記スタッカクレーンから前記棚の所定の位置へ押し込む作動と前記棚から前記スタッカクレーンのパレット搭載部へと引き出す作動を行うプッシュ・プル爪,前記プッシュ・プル爪を前記棚の押し込み位置と前記スタッカクレーンの引き出し位置との間の往復移動を案内する直動案内装置,及び前記直動案内装置を介して前記プッシュ・プル爪を往復移動させる駆動装置を有することを特徴とする自動倉庫。
【請求項2】
前記プッシュ・プル爪は,前記パレットを前記棚の所定の位置へ押し込み時には前記パレットに当接して作動され,また,前記パレットを前記棚から引き出す時には前記パレットの係止部に係止して作動することを特徴とする請求項1に記載の自動倉庫。
【請求項3】
前記ラックにおける前記棚は,前記パレットに搭載した液晶表示パネルを検査するため前記液晶表示パネルに対して通電,通信等の処理を可能にするコネクタを備えた恒温のエージング装置に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動倉庫。
【請求項4】
前記ラックの前記棚に設けた前記コネクタは,前記パレットを前記棚の所定の位置に設定するため,前記パレットに設けたソケット部に連結することを特徴とする請求項3に記載の自動倉庫。
【請求項5】
前記プッシュ・プル装置に設けた前記プッシュ・プル爪は,枢支軸を中心として前記パレットへの係止位置と解除位置とにリンク機構を介して互いに揺動する一対から構成され,前記スタッカクレーンの両側に位置する前記ラックの前記棚に対してそれぞれ作動することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動倉庫。
【請求項6】
前記プッシュ・プル装置の前記プッシュ・プル爪は,前記スタッカクレーンのコンベアによる前記パレットの搬送時には,前記パレットに対して解除位置に揺動移動していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動倉庫。
【請求項7】
前記プッシュ・プル装置の前記プッシュ・プル爪は,前記パレットに設けた係止穴に係脱可能又は前記パレットの端面に当接可能な一対のピン,及び前記ピンを一端に取り付けたレバーから構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動倉庫。
【請求項8】
前記プッシュ・プル装置は,前記プッシュ・プル爪を揺動させる枢支軸に揺動可能に取り付けられ且つ前記レバーをシャフトピンで取り付けた揺動アーム,一端が前記レバーに他端が前記揺動アームに取り付けられ且つ前記レバーを前記シャフトピンを中心に上方へ付勢する緩衝ばね,前記揺動アームを上下動させて前記プッシュ・プル爪を前記枢支軸を中心に揺動させるリンク機構,及び前記リンク機構を作動して前記揺動アームを介して前記プッシュ・プル爪を揺動させる爪昇降用駆動装置を有することを特徴とする請求項7に記載の自動倉庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−264894(P2006−264894A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85453(P2005−85453)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000196705)西部電機株式会社 (80)
【Fターム(参考)】