説明

自動分析装置

【課題】試薬ボトル内に泡が発生しても、泡および試薬液面の検知を正確に行い、試薬の吸引を正常に行うこと。
【解決手段】試薬ボトルに充填された試薬残量から試薬の液面位置を液面算出部4aで算出し、この液面位置をもとに移動制御部5aが試薬プローブを試薬ボトル内に挿入して、試薬プローブの先端を所定位置まで移動制御する。液面検知部352b,362bは、この移動の際に試薬の液面位置を検知しており、この検知された液面位置が、前記算出した液面位置よりも上方位置の場合に、泡検知判断部4bが泡検知と判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学分析、免疫検査等の分析を自動で行う自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生化学分析等の分析を自動で行う自動分析装置が広く知られている。自動分析装置は、検体供給部、分析部、データ処理部を有している。検体供給部は、採取管を搭載したラックを逐次供給するものである。分析部は、反応槽および試薬保冷庫を有している。反応槽は、内部にキュベットホイールと測定光学系を備え、試薬保冷庫には、検体と反応する試薬を収容した試薬ボトルが収納してある。また、キュベットホイールには、キュベット(反応容器)が収容してあり、液面検知手段で検知した液面をもとに試薬ボトルから試薬を吸引して分注する一方、採取管から検体を吸引して分注する。そして、測定光学系を用いてキュベットにおいて反応させた検液(試薬と検体とからなる混合液)の吸光度を測定する。さらに、測定した吸光度からデータ処理部が分析結果を取得する。
【0003】
このような分析装置に使用される各種試薬は、添加されている界面活性剤の影響で泡が発生しやすく、この状態で試薬の液面を検知すると、泡を液面と誤検知することがある。そこで、従来では試薬ボトルを開栓し、試薬ボトル内に泡の有無を確認し、泡が発生している場合には、オペレータが泡を取り除いてから、試薬ボトルを試薬保冷庫へセットしていた。また、従来では液面検知手段とは別に、試薬ボトル内に発生した泡を自動的に検知する検知手段を設けて、泡の有無を確認するものもある(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−164506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来では、試薬保冷庫に試薬ボトルをセットする前に泡を検知している。しかしながら、自動分析装置では、試薬ボトルのセット後に、この試薬ボトルを試薬供給位置へ移動しており、この際の振動などで試薬ボトル内に泡が生じることがある。この状態で試薬ボトル内に泡が生じると、試薬プローブの試薬吸引動作のときに、試薬ボトル内の試薬液面を検知する液面検知手段が泡を液面と誤検知し、試薬液面に試薬プローブ先端が到達していないにもかかわらず、試薬プローブの下方への移動を停止して吸引動作を行い、空気を吸引してしまう。このため、従来では試薬の吸引動作を行うことができず、正確な分析を行うことができなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、試薬ボトル内に泡が発生しても、泡および試薬液面の検知を正確に行い、試薬の吸引を正常に行うことができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる自動分析装置は、試薬ボトルから試薬プローブが分注した所定量の試薬と所定量の検体とからなる検液を測光することにより検体を分析する自動分析装置において、前記試薬ボトルに充填された試薬残量から該試薬の液面位置を算出する液面算出手段と、前記液面算出手段で算出した液面位置をもとに前記試薬プローブを前記試薬ボトル内に挿入して、該試薬プローブの先端を所定位置まで移動制御する移動制御手段と、前記移動制御手段で移動する試薬プローブの先端位置をもとに試薬の液面位置を検知する液面検知手段と、前記液面検知手段で検知した試薬の液面位置が、前記液面算出手段で算出した液面位置よりも上方位置である場合に、泡検知と判断する泡検知判断手段と、を備える。
【0008】
本発明の請求項2にかかる自動分析装置は、上記発明において、前記試薬プローブによる試薬の吸引を検知する吸引検知手段と、前記移動制御手段で試薬プローブの先端を所定位置まで移動し、かつ前記液面検知手段で前記液面位置を検知してある場合に、前記吸引検知手段による試薬の吸引が検知できないと、前記検体の分析を停止する分析停止手段と、をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3にかかる自動分析装置は、上記発明において、前記移動制御手段で試薬プローブの先端を所定位置まで移動し、かつ前記液面検知手段で前記液面位置を検知してある場合に、前記吸引検知手段による試薬の吸引が検知できないと、警告を発する警告手段を、さらに備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4にかかる自動分析装置は、上記発明において、前記泡検知判断手段が泡検知と判断した場合に、分析結果に泡検知の情報を付加する泡情報付加手段を、さらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる自動分析装置は、試薬ボトルに充填された試薬残量から試薬の液面位置を算出し、この算出した液面位置をもとに前記試薬プローブを前記試薬ボトル内に挿入して、該試薬プローブの先端を所定位置まで移動する。自動分析装置は、この移動の際に試薬の液面位置を検知しており、この検知された液面位置が、前記算出した液面位置よりも上方位置の場合に、泡検知と判断することで、試薬ボトル内に泡が発生しても、泡および試薬液面の検知を正確に行い、試薬の吸引を正常に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態にかかる自動分析装置法を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
本発明にかかる自動分析装置は、生化学分析、免疫検査等の分析を自動で行う自動分析装置に適用可能であるが、ここでは、臨床検査等に用いられる生化学分析装置を例に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
まず、図1〜図8を参照し、実施の形態1にかかる自動分析装置の構成を説明する。なお、図1は本発明の実施の形態1にかかる自動分析装置の構成を示す正面図、図2は検体供給部および分析部の構成を示す平面図、図3は検体供給部および分析部の構成を示す概念斜視図、図4は自動分析装置の構成を示すブロック図である。
【0015】
自動分析装置1は、図1に示すように、検体供給部2、分析部3、データ処理部4を有している。検体供給部2は、図2に示すように、採取管21(たとえば、採血管)を搭載したラック20を分析部3に逐次供給可能である。本実施の形態1にかかるラック20は10本の採取管21が搭載可能であり、検体供給部2に150検体分をセット可能である。採取管21には、採取した検体(たとえば血液)が収容してあり、その側面には、検体を識別する識別コードラベル(図示せず)が貼付してある。この識別コードラベルは、検体に関する情報を表示している。
【0016】
図2に示すように、検体供給部2は、ラック供給コンベア22、ラック搬送コンベア23、ラック回収コンベア24を備えている。ラック供給コンベア22は、搬送方向に対して直交するL字状のアタッチメント22aを複数備えたコンベアであり、アタッチメント22aの相互間にラック20を搭載可能である。したがって、ラック20は、ラック供給コンベア22上で整列し、アタッチメント22aに支承されて倒伏することがない。
【0017】
ラック搬送コンベア23は、検体供給位置にラック20を搬送するものであり、コンベアにより構成してある。ラック搬送コンベア23は、ラック20を間欠的に搬送可能であり、ラック20上の採取管21を検体供給位置に逐次移動可能である。また、ラック搬送コンベア23の搬送方向手前側には、識別コードリーダ25が配設してあり、検体供給位置に搬送する採取管21に収容してある検体の情報(識別コード)を取得可能である。
【0018】
ラック回収コンベア24は、ラック供給コンベア22と同様に、搬送方向に対して直交するL字状のアタッチメント24aを複数備えたコンベアであり、ラック搬送コンベア23から搬送されたラック20をアタッチメント24aの相互間に収容することにより、ラック20を回収可能である。回収されたラック20は、ラック回収コンベア24上で整列し、アタッチメント24aに支承されて倒伏することがない。
【0019】
分析部3は、反応槽31、第一試薬保冷庫32および第二試薬保冷庫33を備えている。反応槽31は、分析部3の略中央部に配設してある。反応槽31は、内部に加温装置(図示せず)と温度センサ(図示せず)とを備えるとともに、円板状の蓋312により覆ってあり、内部の温度を人体の体温と同一の温度(摂氏37度)で維持する恒温槽を構成している。また、反応槽31は、図3に示すように、内部にキュベットホイール313および測定光学系314を備え、検液(検体と試薬の混合液)の吸光度から分析結果を取得可能である。
【0020】
キュベットホイール313は、リング状に成形された環状の部材であり、間欠して回転可能である。キュベットホイール313の径外方向略中央には、収容凹部313aが周方向に等間隔(以下、この間隔を1ピッチという)で設けてある。また、キュベットホイール313の内側側面と外側側面とには、収容凹部313aに挿通し、キュベットホイール313の外側から内側に光束を案内する測光窓313bが設けてある。収容凹部313aには、キュベットと称される反応容器(以下、「キュベットC」という)が収容してある。キュベットCは、角筒形状の透明容器であり、上方部が開口している。したがって、光束は、キュベットホイール313の外側からキュベットCを通過してキュベットホイール313の内側に案内される。
【0021】
キュベットホイール313の外側となる位置には、キュベットホイール313の径内方向に光を照射する光源314aが設けてあり、光源314aと分析対象となるキュベットを結ぶ直線上には測光センサ314bが設けてある。光源314aは、試薬と検体とが反応したキュベットC内の検液を分析するための照射光(340〜800nm)を出射するものである。測光センサ314bは、キュベットC内の検液を透過し、測光窓313bを通過した平行光を測光するものである。これら光源314aおよび測光センサ314bは、上述した測定光学系314を構成する。
【0022】
測定光学系314は、光源314a、測光センサ314bのほか、キュベットホイールの外側となる位置にコリメーションレンズ314cを、キュベットホイールの内側となる位置にフィルタ(図示せず)を備えている。コリメーションレンズ314cは、光源314aが出射した光を平行光に収束させるものである。フィルタは、検液に特異的に吸収される波長の光を選択する光学フィルタであり、測定項目毎に予め定めたものが使用される。
【0023】
上述したキュベットホイール313は、4.5秒かけて反時計方向に(1周−1ピッチ)/4回転し(以下「1周期」という)、キュベットホイール313が18秒かけて4周期すると(1周−1ピッチ)回転する。この結果、キュベットCは、4周期で時計方向に1ピッチ移動することになる。
【0024】
ここで、キュベットホイール313が検体供給位置に近接する位置が第一検体分注位置となり、当該第一検体分注位置と略対向する位置が第一試薬分注位置となる。また、第一検体分注位置から時計方向に第一検体分注位置と第一試薬分注位置との間を略二分する位置が第二試薬分注位置となり、第一検体分注位置から反時計方向に第一検体分注位置と第一試薬分注位置との間を略二分する位置が第二検体分注位置となる。さらに、第二試薬分注位置の反時計方向近傍位置が第一攪拌位置となり、第二検体分注位置の時計方向近傍位置が第二攪拌位置となる。またさらに、第二検体分注位置の反時計方向近傍位置が洗浄・乾燥位置となる。
【0025】
そして、反応槽31を覆う蓋312には、これら第一検体分注位置、第二検体分注位置、第一試薬分注位置、第二試薬分注位置、第一攪拌位置、第二攪拌位置、洗浄位置に対応して、図2に示すように、第一検体分注孔312a、第二検体分注孔312b、第一試薬分注孔312c、第二試薬分注孔312d、第一攪拌孔(図示せず)、第二攪拌孔(図示せず)、洗浄孔312gが設けてある。
【0026】
第一試薬保冷庫32および第二試薬保冷庫33は、反応槽31の左部に配設してある。第一試薬保冷庫32および第二試薬保冷庫33は、それぞれ、内部に冷却装置(図示せず)と温度センサ(図示せず)とを備えるとともに、円盤状の蓋322,332により覆ってあり、内部の温度を所定の温度以下とする保冷庫を構成している。第一試薬保冷庫32および第二試薬保冷庫33は、内部にターンテーブル(図示せず)を備えている。
【0027】
ターンテーブルは、間欠して回転可能であり、ターンテーブルの上面には、中央部から径外方向に延在する仕切りが複数配設してある。仕切りは、ワンタッチで着脱可能であって、ターンテーブルを任意の領域に画成可能である。
【0028】
各ターンテーブルには、図3に示すように、それぞれ複数の試薬ボトルBが開栓した状態で収容してある。各試薬ボトルBには、検査項目に対応する所定の試薬が収容してあり、その外周面には試薬を識別する識別コードラベル(図示せず)が貼付してある。識別コードラベルは、試薬に関する情報を表示するものであり、たとえば、試薬の種類、製造ロット番号、キャリブレーション値、検量線、有効期限、容量などが表示してある。
【0029】
第一試薬保冷庫32および第二試薬保冷庫33には、それぞれ識別コードリーダ323,333が配設してある。識別コードリーダ323,333は、試薬ボトルBに貼付した識別コードラベルを読み取るものであり、試薬ボトルBに収容した試薬に関する情報を取得可能である。したがって、ターンテーブルは、任意の試薬ボトルBを任意のタイミングで試薬供給位置に移動可能である。
【0030】
そして、第一試薬保冷庫32および第二試薬保冷庫33を覆う蓋322,332には、図2に示すように、試薬供給位置に対応して、それぞれ第一試薬孔322a、第二試薬孔332aが設けてある。
【0031】
また、分析部3は、検体分注ユニット34、第一試薬分注ユニット35および第二試薬分注ユニット36を備えている。検体分注ユニット34は、検体供給位置に移動された採取管21からキュベットCに所定量の検体を分注するものであり、アーム341と検体プローブ342とを有している。アーム341は、検体供給位置と第一検体分注位置との間、および、検体供給位置と第二検体分注位置との間を回動可能、かつ上下方向に昇降可能である。検体プローブ342は、検体を吸引する部分であり、アーム341の降下時に静電容量を監視することにより、採取管21に収容された検体の液面を検出可能である。
【0032】
また、検体分注ユニット34は、検体プローブ342に取り付けられ、検体プローブ342が所定量の検体を吸引したことを検知する吸引検知手段としての検体吸引検知部342aを備えている。検体吸引検知部342aは、吸引時の圧力変化を監視する圧力センサ等であり、採取管21が収容されていない場合に検体吸引時の圧力よりも圧力が低くなり、検体プローブ342に詰まりが生じた場合に検体吸引時の圧力よりも高くなることを利用して検体の吸引を検知可能である。また、検体供給位置と第一検体分注位置とを結ぶ軌跡上には、洗浄部343が設けてある(図2参照)。洗浄部343には、図示せぬ洗浄水タンクから洗浄水が供給され、検体プローブ342を洗浄可能である。
【0033】
第一試薬分注ユニット35および第二試薬分注ユニット36は、試薬供給位置に移動された試薬ボトルBからキュベットCに所定量の試薬を分注するものであり、検体分注ユニット34と同様に、それぞれ、アーム351,361と試薬プローブ352,362とを有している。アーム351,361は、試薬供給位置と試薬分注位置との間を回動可能、かつ上下方向に昇降可能である。試薬プローブ352,362は、試薬を吸引する部分である。なお、このターンテーブルで試薬ボトルBを試薬供給位置に移動する際に、振動などによって試薬の液面には泡が発生することがある。
【0034】
第一試薬分注ユニット35および第二試薬分注ユニット36は、試薬ボトルBに充填された試薬の試薬量(識別コードリーダ323,333で読み取った値)に合わせて、試薬プローブ352,362の先端と試薬液面位置との距離を、たとえばパルス数などでカウントして算出し、この値(距離情報)を制御部5およびデータ処理部4に出力している。また、第一試薬分注ユニット35および第二試薬分注ユニット36は、試薬プローブ352,362に取り付けられて試薬の液面位置を検知する液面検知手段としての液面検知部352b,362bを備えている。液面検知部352b,362bは、アーム351,361の降下時に静電容量を監視することにより、試薬ボトルBに収容された試薬の液面位置を検知している。この液面検知部352b,362bによる液面位置は、上記距離情報から検知される。なお、試薬プローブ352,362は、先端部を除く外周を絶縁し、先端部で試薬の液面を検出するように構成しているが、試薬プローブ352,362の外周を電気的にシールドし、さらにその外側を絶縁するように構成しても良い。
【0035】
また、第一試薬分注ユニット35および第二試薬分注ユニット36は、図5に示すように、試薬プローブ352,362に所定量の試薬を吸引させ分注を可能にする分注器354,364と、試薬プローブ352,362に取り付けられ、上記試薬を吸引したことをそれぞれ検知する吸引検知手段としての試薬吸引検知部352a,362aとを備えている。試薬吸引検知部352a,362aは、吸引時の圧力変化を監視する圧力センサ等であり、試薬切れが生じた場合に試薬吸引時の圧力よりも圧力が低くなり、試薬プローブ352,362に詰まりが生じた場合に試薬吸引時の圧力よりも高くなることを利用して試薬の吸引を検知可能である。また、試薬供給位置と試薬分注位置とを結ぶ軌跡上には、洗浄部353,363が設けてある(図2参照)。洗浄部353,363には、図示せぬ洗浄水タンクから洗浄水が供給され、試薬プローブ352,362の先端から試薬ボトルの深さ分に相当する部分の洗浄可能である。
【0036】
さらに、分析部3は、第一攪拌ユニット37および第二攪拌ユニット38を備えている。第一攪拌ユニット37および第二攪拌ユニット38は、第一攪拌位置と第二攪拌位置に移動されたキュベットCの混合液(検体と試薬)を攪拌して反応を促進させるものであり、それぞれ、回転アーム371,381と撹拌棒372,382とを備えている。回転アーム371,381は、回転(公転)可能、かつ上下方向に昇降可能であって、平面視略三角形状を有している。撹拌棒372,382は、回転アーム371,381の各頂部近傍に配設してある。撹拌棒372,382は、回転アーム371,381と独立して回転(自転)可能である。また、撹拌棒372,382の公転軌跡上には、洗浄部373,383が設けてある(図2参照)。洗浄部373,383は、図示せぬ洗浄水タンクから洗浄水が供給され、撹拌棒372,382を洗浄可能である。
【0037】
またさらに、分析部3は、洗浄・乾燥ユニット39を備えている。洗浄・乾燥ユニット39は、キュベットホイール313が四周期するごと、すなわち1周−1ピッチ回転するごとに上下方向に昇降可能であって、複数のノズル391を有している。これらノズルは、キュベットから分析を終了した検液を吸引する吸引ノズル、キュベットに洗浄液を供給する洗浄ノズル、キュベットから洗浄液を吸引する吸引ノズル、キュベットに圧縮空気を供給するエアノズル等のノズルである。
【0038】
上述した検体供給部2、分析部3の各ユニットおよび構成要素は、制御部5に接続してあり、統括的に制御可能である。制御部5は、たとえば、マイクロコンピュータ等を採用可能である。制御部5は、自動分析装置1の各部の作動を制御するもので、移動制御手段としての移動制御部5aと、分析停止手段としての分析停止部5bとを備える。移動制御部5aは、アーム351,361の回転移動および試薬プローブ352,362の上下移動を制御するものである。移動制御部5aは、後述する液面算出部4aで算出した液面位置および第一試薬分注ユニット35および第二試薬分注ユニット36からの距離情報をもとに試薬プローブ352,362を試薬ボトルB内に挿入して、試薬プローブ352,362の先端を所定位置まで下降移動する。なお、この所定位置とは、液面算出部4aで算出した液面位置より下方で、かつ分析における試薬の使用量を十分に吸引することができる位置である。
【0039】
分析停止部5bは、移動制御部5aで制御する試薬プローブ352,362の先端が所定位置まで下降移動し、かつ液面検知部352b,362bで液面位置を検知している場合に、試薬吸引検知部352a,362aによる試薬の吸引が検知できないと、該当する分析項目ごとの検体の分析を停止するように動作する。また、制御部5は、各プローブとともに、試薬のロットや有効期限等が設定範囲外の場合、分析作業を規制するように分析部3を制御する。
【0040】
制御部5には、データ処理部4(以下、DPR4という)が接続してある。DPR4は、制御部5が取得した各種データを処理する部分である。データ処理部40は、液面算出部4a(液面算出手段)、泡検知判断部4b(泡検知判断手段)、警告部4c(警告手段)、泡情報付加部4d(泡情報付加手段)、入力部41、出力部42を備え、制御部5が取得した各種データおよび入力部41から入力する各種データを処理する。入力部41は、たとえば、キーボードやマウス等であり、検体数および検査項目等の各種情報が入力可能である。検査項目は、個別に入力することも可能であるが、標準検査、精密検査のように大別して入力することも可能である。また、入力部41は、その他に、後述する情報読取装置6が接続してある。出力部42は、たとえば、ディスプレイパネルやプリンタ等であり、分析結果を含む分析内容や警報等の各種情報が出力可能である。
【0041】
液面算出部4aは、試薬ボトルBに充填された試薬残量から試薬の液面位置を算出するものである。分析に要する試薬量は、分析項目ごとに定められた試薬の量であり、試薬ごとに定められている。したがって、液面算出部4aは、分析項目ごとに検体数と一回の分注量とを積算して、分析に使用した試薬の使用量を求める。さらに、液面算出部4aは、この試薬の使用量を試薬ボトルBに充填された試薬の試薬量(識別コードリーダ323,333が読み取った容量)から減算することで試薬残量を求め、この試薬残量から試薬ボトルB内に充填された試薬の液面位置を算出することができる。なお、この残試薬量は、試薬保冷庫32,33への試薬補充の目安となる。この残試薬量は表示手段としてのディスプレイパネルに表示され、オペレータが認識可能となる。
【0042】
泡検知判断部4bは、液面検知部352b,362bで検知した試薬の液面位置が、液面算出部4aで算出した液面位置よりも上方位置である場合に、泡の検知と判断するものである。すなわち、図7に示すように、移動制御部5aによって試薬プローブ352,362を試薬ボトルB内に挿入して下降制御する。この下降のときに試薬プローブ352,362の先端の位置が泡Eに接触すると、液面検知部352b,362bは、液面算出部4aで算出した液面D位置よりも上方位置であるにもかかわらず、試薬の液面を検知することとなる。この状態では、泡検知判断部4bは、液面検知部352b,362bで検知した液面が実際の液面ではなく、泡Eとの接触によるものと見なして、泡の検知と判断する。
【0043】
警告部4cは、試薬プローブの先端が上記所定位置まで移動し、かつ液面検知部352b,362bによって試薬の液面が検知してある場合に、試薬吸引検知部352a,362aによる試薬の吸引が検知できないと、警告を発生するものである。この警告は、出力部42のディスプレイパネルに画面表示され、プリンタで印字表示され、オペレータが認識可能となる。
【0044】
泡情報付加部4dは、泡検知判断部4bが泡検知と判断した場合に、分析結果に泡検知の情報を付加するものである。各検体に対する分析結果は、出力部42のディスプレイパネルやプリンタによって、図8に示すように、各分析項目と、この分析項目に対応する数値のデータとが出力される。この出力データに泡情報付加部4dが泡検知を示すマーク、たとえば★を付加することで、オペレータが泡の検知を認識可能となる。なお、このマークとともに、(泡検知)と表示することも可能である。
【0045】
また、データ処理部40は、制御部5を介して測光センサ314bと接続してあり、測光センサ314bが測光した光量(吸光度)に基づいて、検体の成分濃度等を分析する。具体的には、キュベットC内の試薬と検体とからなる検液の吸光度を用いて検体の成分濃度等を分析する。吸光度は、測光センサ314bによって予めブランク試料に関する光量を測定しておくことにより比較対照が可能である。この分析結果は、出力部42に出力可能である。
【0046】
つぎに、図6を参照し、上述した本実施の形態1にかかる自動分析装置の試薬の分注動作を説明する。まず、分析を開始すると、検体供給部2では、分析部3に検体を供給する。具体的には、ラック供給コンベア22がラック20をラック搬送コンベア23に供給し、ラック搬送コンベア23が当該ラック20を検体供給位置に搬送する。
【0047】
一方、分析部3では、試薬保冷庫32,33および検体供給部2から試薬および検体をキュベットCに分注し、これらの混合液の反応を測光することにより分析する。具体的に説明する。
【0048】
まず、第一試薬保冷庫32において、分析項目に対応する試薬が収容してある試薬ボトルBを試薬吸引位置に移動する(ステップS10)。そして、分析項目に対応する試薬ボトルBを試薬吸引位置に移動すると、液面算出部4aが、試薬残量情報から液面位置を算出する(ステップS11)。次に、第一試薬分注ユニット35が試薬プローブ352を試薬ボトルB内に下降させ(ステップS12)、液面検知部352bが液面位置を検知する(ステップS13)。
【0049】
泡検知判断部4bは、液面算出部4aで算出した液面位置(算出位置)で、液面検知部352bが液面を検知したかどうか判断する(ステップS14)。ここで、算出位置で液面を検知してない場合(ステップS14:No)、すなわち、許容範囲を含んだ算出位置より上方位置で液面を検知した場合、泡検知判断部4bは、泡検知と判断して、検知位置情報を泡情報付加部4dに伝達する(ステップS15)。泡情報付加部4dは、この検知位置情報が入力すると、該当する検体の分析結果に泡検知を示すマークを付加する(ステップS16)。この分析結果は、分析終了後に出力部42のディスプレイパネルやプリンタによって、図8に示すように出力される。そして、移動制御部5aは、算出位置まで試薬プローブ352を下降制御して(ステップS17)、第一試薬分注ユニット35による第一試薬の吸引を可能にする(ステップS18)。また、算出位置で液面を検知した場合も(ステップS14:Yes)、第一試薬分注ユニット35による第一試薬の吸引を可能にする(ステップS18)。
【0050】
次に、試薬吸引検知部352aにより、試薬吸引圧の確認を行い(ステップS19)、この吸引圧が正常な圧力かどうか判断する(ステップS20)。なお、この実施の形態では、吸引圧が異常の場合には、n回(nは任意の正数)まで吸引を行って、吸引圧を検知するものとする。ここで、吸引圧が異常な圧力の場合(ステップS20:No)、制御部5は、試薬吸引検知部352aにより検知された異常回数の確認を行う(ステップS21)。そして、複数回異常を検出した場合に、その異常がn回目かどうか判断する(ステップS23)。ここで、検出した異常の回数がn回の場合(ステップS23:Yes)、警告部4cによる吸引異常の警告及び試薬プローブ352による吸引の中止を行って、分析停止部5bによって分析を停止する(ステップS24)。また、検出した異常がn回に至っていない場合(ステップS23:No)、移動制御部5aにより試薬プローブ352を洗浄位置に移動し(ステップS28)、洗浄部353で洗浄を行い(ステップS29)、再び試薬プローブ352を試薬吸引位置に移動して(ステップS10)、上記動作を繰り返す。
【0051】
また、試薬吸引検知部352aにより検知した試薬吸引圧が正常な圧力の場合(ステップS20:Yes)、この試薬吸引をもとに、液面算出部4aが液面位置を減算し(ステップS25)、第一試薬分注ユニット35が移動制御部5aの制御により、試薬プローブ352を試薬吐出位置に移動し(ステップS26)、第一試薬をキュベットCに吐出(分注)する(ステップS27)。そして、分注を終えた試薬プローブ352は洗浄位置に移動され(ステップS28)、洗浄部353で洗浄される(ステップS29)。
【0052】
自動分析装置1におけるその後の分析動作としては、キュベットホイール313が回転し、第一試薬が分注されたキュベットCが検体分注位置に移動すると、検体分注ユニット34が検体吸引位置に搬送された採取管21から検体を吸引して、検体分注位置に位置するキュベットCに検体を分注する。そして、分注を終えたプローブ342は洗浄部343で洗浄される。
【0053】
そして、キュベットホイール313が4周期回転すると、第一試薬と検体を分注したキュベットCは、上述したように、第一試薬を分注した位置から時計方向に1ピッチ移動したことになる。したがって、当該キュベットCと反時計方向に隣り合うキュベットCに第一試薬を分注可能となる。
【0054】
その後、キュベットホイール313が回転し、キュベットCが第一攪拌位置に移動すると、第一攪拌ユニット37がキュベットCに収容された第一試薬と検体の混合液を攪拌する。このとき、前回攪拌に用いた撹拌棒372が洗浄部373において洗浄される。
【0055】
そして、キュベットホイール313が回転し、攪拌された混合液を収容したキュベットCが第二試薬分注位置に移動すると、第二試薬が分注可能となる。ここで、通常の分析において第二試薬を分注することはなく、必要に応じて第二試薬を分注する。第二試薬を分注する場合には、第一試薬を分注する場合と同様に、第二試薬保冷庫33において、分析項目に対応する試薬が収容してある試薬ボトルBを試薬吸引位置に移動する。そして、分析項目に対応する試薬ボトルBが試薬吸引位置に移動すると、上述した液面検知、泡検知判断、試薬吸引圧の確認を行った後、第二試薬分注ユニット36が、試薬ボトルBから第二試薬を吸引して第二試薬分注位置に位置するキュベットCに第二試薬を分注する。そして、分注に用いられた試薬プローブ362は洗浄部363で洗浄される。
【0056】
さらに、キュベットホイール313が回転し、混合液に第二試薬を分注したキュベットCが第二攪拌位置に移動すると、第二攪拌ユニット38がキュベットCに収容された混合液が攪拌可能となる。ここで、第二試薬を分注してない場合には攪拌する必要はない。
【0057】
そして、試薬および検体を混合攪拌した検液を収容したキュベットCが測定光学系314を横切るごとに測光センサ314bが測光する。そして、データ処理部40は、測光センサ314bが測光した光量(吸光度)に基づいて、検体の成分濃度等を分析する。
【0058】
このようにして検液の測光が終了したキュベットCは、洗浄・乾燥位置において洗浄・乾燥ユニット39が内部の検液が吸引されて廃棄されるとともに、洗浄水タンクから供給された洗浄水によって内部が洗浄された後、圧縮空気により乾燥される。そして、キュベットCは、再び第一試薬分注ユニット35によって第一試薬が分注され、分析に使用される。
【0059】
このように、この実施の形態では、試薬ボトルに充填された試薬残量から試薬の液面位置を算出し、この算出した液面位置をもとに試薬プローブを試薬ボトル内に挿入して、試薬プローブの先端を所定位置まで移動する。自動分析装置は、この移動の際に試薬の液面位置を検知しており、この検知された液面位置が、この算出した液面位置よりも上方位置の場合に、泡検知と判断するので、液面検知部とは別に泡検知手段を設ける必要がなく、かつ試薬ボトル内に泡が発生しても、泡および試薬液面の検知を正確に行い、試薬の吸引を正常に行うことができる。これにより、この実施の形態では、より正確な分析を行うことが可能となる。
【0060】
また、この実施の形態では、泡検知部で泡検知を判断するとともに、試薬吸引検知部で試薬プローブによる試薬吸引圧を確認し、試薬吸引圧が正常であれば、泡が発生しても分析動作を続行できるので、試薬分注時の泡発生に対して分析を停止することなくリカバーが可能となり、これにより分析時間の短縮が可能となる。
【0061】
また、この実施の形態では、泡が検知された場合、分析結果に泡検知を示すマークを付加するので、このマークが再検査を行うかどうかの判断基準となって、より正確な検査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる自動分析装置の構成を示す正面図である。
【図2】検体供給部および分析部の構成を示す平面図である。
【図3】検体供給部および分析部の構成を示す概念斜視図である。
【図4】自動分析装置の構成を示すブロック図である。
【図5】試薬分注ユニットの構成の一部を示す構成図である。
【図6】自動分析装置の試薬の分注動作を説明するフローチャートである。
【図7】試薬プローブの下降動作を説明するための図である。
【図8】分析結果報告の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 自動分析装置
2 検体供給部
3 分析部
4 データ処理部
4a 液面算出部
4b 泡検知判断部
4c 警告部
4d 泡情報付加部
5 制御部
5a 移動制御部
5b 分析停止部
31 反応槽
313 キュベットホイール
32 第一試薬保冷庫
323 識別コードリーダ
33 第二試薬保冷庫
333 識別コードリーダ
34 検体分注ユニット
342 検体プローブ
342a 検体吸引検知部
35 第一試薬分注ユニット
352,362 試薬プローブ
352a,362a 試薬吸引検知部
352b,362b 液面検知部
36 第二試薬分注ユニット
41 入力部
42 出力部
B 試薬ボトル
C キュベット
D 液面
E 泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬ボトルから試薬プローブが分注した所定量の試薬と所定量の検体とからなる検液を測光することにより検体を分析する自動分析装置において、
前記試薬ボトルに充填された試薬残量から該試薬の液面位置を算出する液面算出手段と、
前記液面算出手段で算出した液面位置をもとに前記試薬プローブを前記試薬ボトル内に挿入して、該試薬プローブの先端を所定位置まで移動制御する移動制御手段と、
前記移動制御手段で移動する試薬プローブの先端位置をもとに試薬の液面位置を検知する液面検知手段と、
前記液面検知手段で検知した試薬の液面位置が、前記液面算出手段で算出した液面位置よりも上方位置である場合に、泡検知と判断する泡検知判断手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記試薬プローブによる試薬の吸引を検知する吸引検知手段と、
前記移動制御手段で試薬プローブの先端を所定位置まで移動し、かつ前記液面検知手段で前記液面位置を検知してある場合に、前記吸引検知手段による試薬の吸引が検知できないと、前記検体の分析を停止する分析停止手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記移動制御手段で試薬プローブの先端を所定位置まで移動し、かつ前記液面検知手段で前記液面位置を検知してある場合に、前記吸引検知手段による試薬の吸引が検知できないと、警告を発する警告手段を、
さらに備えることを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記泡検知判断手段が泡検知と判断した場合に、分析結果に泡検知の情報を付加する泡情報付加手段を、
さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−303937(P2007−303937A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131907(P2006−131907)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】