説明

自動原稿搬送装置、画像形成装置

【課題】良好なスタック性を備える自動原稿搬送装置とこれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】積載された原稿束1から原稿を1枚ずつ分離して給送する自動原稿送り装置においては、大量原稿を一度に処理すると原稿束1の一枚目から最終枚までの排出条件が大きく異なり、排出された原稿束のスタック性が悪化するので、可動原稿テーブル3の上昇駆動制御に要した総パルス数から可動原稿テーブル3の上昇距離Lを算出し、モータ等により上下方向へ回動して可動とした排紙トレイ29a上の排出原稿1aの推定高さを導き出し、排紙の速度制御を行い、排紙量を減少させる減速処理を実行する。排紙トレイ29aに設けた残紙センサ29bで排出原稿1aの除去が確認されると、排紙トレイ29aを排紙量がゼロの状態のホームポジションへ戻し、排出原稿1aの推定高さをリセットしてゼロから積み上げ直す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に用いる自動原稿搬送装置(以下ADFと言う。)、と、これを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ADFに関しては原稿排出時の速度制御が問題となることが多いことは周知であるが、従来のADFに関する発明では、例えば特許文献1に示されるもののように、用紙積載不良の軽減効果も含むものもあるが、主に印刷の影響を考慮したもので、シートへの画像形成情報(トナー定着状態強度や摩擦計数低下など)により搬送制御を変更するものである。大量原稿処理時スタック性に関して、例えば排紙トレイ及び給紙トレイの底板の上下動や角度の変更機構、制御等々について考慮をしたものは本願発明者の知るところでは無い。
【0003】
【特許文献1】特開2004−85982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
すなわち近年の読取装置におけるADFでは、一度に大量の原稿(より一般には、シート材)を処理する目的で、原稿積載許容枚数を増加させる傾向がある。ここで積載枚数の増加は排出原稿枚数の増加に繋がるため、排紙トレイの容量も合わせて増加させなければならない。しかし、排出原稿をためる排紙トレイの高さ(深さ)を大きく取り、実際に大量原稿を一度に処理したとすると、原稿束の一枚目から最終枚までの排出条件、排出される口から落ちるまでの高さが大きく異なってしまい、排出原稿の積み上がりが従来以上に一様になりにくくなる。
【0005】
加えて排紙トレイは原稿のスタック性、すなわち排紙された束が一様に整列される度合いを高めるため、一般に搬送の下流(トレイの先の方)を高く上流(排出口に近い方)を低くなるような傾斜をつけているが、排出原稿のカールやたわみなどの影響も枚数が増えるにつれて大きくなるためこの傾斜による効果も相応に減じられる。また下流に飛んでしまった原稿は、既に積まれている排出原稿束との静電気の影響もあり戻りにくくなるため、この面からの排出速さを抑える必要がある(なお、常に遅くしてしまうと生産性、単位時間辺りの原稿処理枚数、が悪化するためその面からはできるだけ速く排出したい。従ってここで問題とする速度制御は排出直前には減速が必要であるが、読み取り終了後から単純に減速するとは限らない)。
【0006】
これらにより大量原稿を処理する場合は、排出された原稿束のスタック性が悪化する。このため良好なスタック性を得ることができる自動原稿送り装置が望まれている。
【0007】
またADFの設置条件によっては、排紙トレイ自体が可動式であることも考えられ、排紙枚数が少ないうちは排紙口に対して高く(角度制御なら水平に対して起し気味)、枚数が増えるにつれて低く(水平に近く寝せる)することで排紙条件を可動範囲内においてある程度整えられるような機構もある。この条件もスタック性に影響する。さらに、排紙トレイの状況は、先使用分の積み残り、あるいはユーザーにより現処理中に処理済分の一部抜き取り等で変化し、給紙側の原稿情報では確認しきれないことがある。これらの場合も良好なスタック性を得ることができることが当然に望まれる。
【0008】
また、原稿サイズは様々であり、制御的に同等でも、大きい紙は排出中の時点から先から折れて落ちやすい一方、小さい紙は排紙トレイの下流(先の方)へ飛びやすいなど、紙のサイズ差がスタック状況のばらつきの原因となる。さらに、サイズの他に、原稿の紙種の差として紙厚が考えられる。実際に厚い紙よりも薄い紙の方が一般にしなりやすいため、排紙口から全体が抜ける前に先が大きく曲がり落ちてしまい後端が排紙口側の壁にかかったような状況(後端残り)にもなりがちである。これらの場合も良好なスタック性を得ることができることが当然に望まれる。
【0009】
さらに、ADFにおいては、排紙トレイの先使用分の残りや給紙トレイ側の原稿継ぎ足しなどを考慮すると、排出トレイの容量を結局は越える可能性があり、大量原稿処理が前提とされる使用環境であればなお懸念が大きく、この場合はスタック性以前に折れ曲がりなど原稿破損を招く恐れがある。このような場合はユーザーに対して警告を発することが望まれるが、従来はそのような対策はなされていなかった。
【0010】
本発明はこのような従来の諸問題点を解決した自動原稿送り装置と、これを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。なお以下では、本発明をADFに適用した場合についてのみ説明するが、本発明は紙搬送装置、シート搬送装置にも応用できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の自動原稿送り装置のうち請求項1に係るものは、上記目的を達成するために、給紙トレイの底板上に積載された原稿束を1枚ずつ分離して給送する自動原稿送り装置において、前記底板上の原稿束の厚さ情報あるいは高さ情報、搬送を終えた原稿を排出する排紙トレイの上下動情報または自動原稿送り装置本体に対して前記排紙トレイのなす角度制御情報の少なくともいずれかを情報として検知する情報検知手段を有し、該情報検知手段が検知した前記いずれかの情報の変化量に応じて、前記排紙トレイへの原稿排出時の速度制御を変更することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係るものは、請求項1の自動原稿送り装置において、前記情報検知手段が、前記情報として前記底板上の原稿束の厚さまたは高さを検知するものであり、該情報検知手段が検知した前記底板上の原稿束の厚さまたは高さの変化量から、前記排出トレイ上に積み上がった原稿高さを推定し、該推定値に応じて前記原稿排出時の速度制御を減速処理として実行することを特徴とする。
【0013】
請求項3に係るものは、請求項1の自動原稿送り装置において、前記情報検知手段が、前記排紙トレイの上下動制御または前記自動原稿送り装置本体に対して前記排紙トレイのなす角度を制御するものであり、前記排紙トレイの上下動または角度制御情報に応じて前記原稿排出時の速度制御を減速処理として実行することを特徴とする。
【0014】
請求項4に係るものは、請求項2の自動原稿送り装置において、前記排紙トレイの上下動または角度制御情報を加味して前記原稿排出時の速度制御を実行することを特徴とする。
【0015】
請求項5に係るものは、請求項3の自動原稿送り装置において、前記排紙トレイ上の原稿束の厚さまたは高さを加味して前記原稿排出時の速度制御を実行することを特徴とする。
【0016】
請求項6に係るものは、請求項1から5のいずれかの自動原稿送り装置において、搬送しようとする原稿のサイズを検知する原稿サイズ検知手段を有し、該原稿サイズ検知手段が検知した原稿のサイズを加味して前記原稿排出時の速度制御を実行することを特徴とする。
【0017】
請求項7に係るものは、請求項1から6のいずれかの自動原稿送り装置において、搬送しようとする原稿の厚さを検出する原稿厚さ検出手段を有し、該原稿厚さ検出手段により検出された厚さを加味して前記原稿排出時の速度制御を実行することを特徴とする。
【0018】
請求項8に係るものは、請求項1から7のいずれかの自動原稿送り装置において、前記給紙トレイの前記底板上の原稿束の厚さ情報あるいは高さ情報と、前記排出トレイ上に積み上がった推定原稿高さ情報とにより、現在の前記排紙トレイへの排紙可能な原稿の許容量に対して現在の給紙トレイ上の未処理の原稿束の量が前記許容量以上か否かを判断し、給紙トレイ上の未処理の原稿束の量が前記許容量以上で許容不可能と判断した場合に警告を発する警告手段を有することを特徴とする。
【0019】
請求項9に係る画像形成装置は、請求項1から8のいずれかの自動原稿送り装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る自動原稿搬送装置と、これを用いた画像形成装置よれば、上述した従来の諸問題点を解決して良好なスタック性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明を実施するための最良の形態を、図に示す実施例を参照して説明する。
【実施例1】
【0022】
本実施例は、被読取原稿を固定の読取装置部に搬送し所定の速度で搬送しながら画像読取を行う装置に用いられる被読取原稿処理装置(これも以下ADFと言う。)に関する。その基本的な構成、動作、作用の一例を、本装置の断面図である(図1)及び制御ブロック図(図2、図3)をもとに説明する。
【0023】
被読取原稿束をセットする原稿セット部A、セットされた原稿束から一枚毎原稿を分離して給送する分離給送部B、給送された原稿を一次突当整合する働きと、整合後の原稿を引き出し搬送する働きのレジスト部C、搬送される原稿をターンさせて、原稿面を読取り側(下方)に向けて搬送するターン部D、原稿の表面画像を、コンタクトガラスの下方より読取を行わせる第一読取搬送部E、読取後の原稿の裏面画像を読みとる第二読取搬送部F、表裏の読取が完了した原稿を機外に排出する排紙部G、読取完了後の原稿を積載保持するスタック部H、これら搬送動作の駆動を行う駆動部101〜105、さらに、一連の動作を制御するコントローラ部100、とから構成されている。
【0024】
読取を行う原稿束1をセットするのは、可動原稿テーブル3を含む原稿テーブル2上で、原稿面を上向きの状態でセットする。更に原稿束1の巾方向を図示しないサイドガイドによって搬送方向と直行する方向の位置決めを行う。原稿のセットはセットフィラー4、セットセンサ5により検知され、I/F107により本体制御部111に送信される。更に原稿テーブル面に設けられた原稿長さ検知センサ30又は31(反射型センサ又は、原稿1枚にても検知可能なアクチェーター・タイプのセンサが用いられる)により原稿の搬送方向長さの概略が判定される(少なくとも同一原稿サイズの縦か横かを判断可能なセンサ配置が必要)。
【0025】
可動原稿テーブル3は底板上昇モータ105により図に示すa、b方向に上下動可能な構成になっていて、原稿がセットされた事をセットフィラー4、セットセンサ5により検知すると底板上昇モータ105を正転させて原稿束の最上面がピックアップローラ7と接触するように可動原稿テーブル3を上昇させる。
【0026】
ピックアップローラ7は、ピックアップモータ101によりカム機構で図に示すc、d方向に動作すると共に、可動テーブル3が上昇し可動テーブル3上の原稿上面により押されてc方向に上がりテーブル上昇検知センサ8により上限を検知可能となっている。本体操作部108よりプリントキーが押下され、本体制御部111からI/F107を介してADF制御部100に原稿給紙信号が送信されると、ピックアップローラ7は給紙モータ102の正転によりコロが回転駆動し、原稿テーブル2上の数枚(理想的には1枚)の原稿をピックアップする。回転方向は、最上位の原稿を給紙口に搬送する方向である。
【0027】
給紙ベルト9は給紙モータ102の正転により給紙方向に駆動され、リバースローラ10は102の正転により給紙と逆方向に回転駆動され、最上位の原稿とその下の原稿を分離して、最上位の原稿のみを給紙できる構成となっている。さらに詳しく説明すると、リバースローラ10は給紙ベルト9と所定圧で接し、給紙ベルト9との直接接している時、又は原稿1枚を介して接している状態では給紙ベルト9の回転につられて反時計方向につれ回りし、原稿が万一2枚以上給紙ベルト9とリバースローラ10の間に侵入した時は連れ回り力がトルクリミッターのトルクよりも低くなるように設定されており、リバースローラ10は本来の駆動方向である時計方向に回転し、余分な原稿を押し戻す働きをし、重送が防止される。
【0028】
給紙ベルト9とリバースローラ10との作用により1枚に分離された原稿は給紙ベルト9によって更に送られ、突き当てセンサ11によって先端が検知され更に進んで停止しているプルアウトローラ12に突き当たる、その後前出の突き当てセンサ11の検知から所定量定められた距離送られ、結果的には、プルアウトローラ12に所定量撓みを持って押し当てられた状態で給紙モータ102を停止させることにより、給紙ベルト9の駆動が停止する。この時、ピックアップモータ101を回転させることでピックアップローラを原稿上面から退避させ原稿を給紙ベルトの搬送力のみで送ることにより、原稿先端は、プルアウトローラ12の上下ローラ対のニップに進入し、先端の整合(スキュー補正)が行われる。
【0029】
プルアウトローラ12は、前記スキュー補正機能を有すると共に、分離後にスキュー補正された原稿を中間ローラ14まで搬送するためのローラで、給紙モータ102の逆転により駆動される。またこの時(給紙モータ102逆転時)、プルアウトローラ12と中間ローラ14は駆動されるが、ピックアップローラ7と給紙ベルト9は駆動されていない。
【0030】
原稿幅センサ13は奥行き方向に複数個並べられ、プルアウトローラ12により搬送された原稿の搬送方向に直行する幅方向のサイズを検知する。また、原稿の搬送方向の長さは原稿の先端後端を突き当てセンサ11で読取ることによりモータパルスから原稿の長さを検知する。
【0031】
プルアウトローラ12及び中間ローラ14の駆動によりレジスト部Cからターン部Dに原稿が搬送される際には、レジスト部Cでの搬送速度を読取搬送部Eでの搬送速度よりも高速に設定して原稿を読取部へ送り込む処理時間の短縮が図られている。
【0032】
原稿先端が読取入口センサ15により検出されると、読取入口ローラ16の上下ローラ対のニップに原稿先端が進入前に、原稿搬送速度を読取搬送速度と同速にする為に減速を開始すると同時に、読取モータ103を正転駆動して読取入口ローラ16、読取り出口ローラ23、CIS出口ローラ27を駆動する。原稿の先端をレジストセンサ17にて検知すると、所定の搬送距離をかけて減速し、読取位置20の手前で一時停止すると共に、本体制御部111にI/F107を介してレジスト停止信号を送信する。続いて本体制御部111より読取り開始信号を受信すると、レジスト停止していた原稿は、読取位置に原稿先端が到達するまでに所定の搬送速度に立ち上がるように増速されて搬送される。読取モータのパルスカウントにより検出された原稿先端が読取部に到達するタイミングで、本体制御部111に対して第1面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が、第1読取部を原稿後端が抜けるまで送信される。
【0033】
片面原稿読取りの場合には、読取搬送部Eを通過した原稿は第二読取り部を経て排紙部Gへ搬送される。この際、排紙センサ24により原稿の先端を検知すると、排紙モータ104を正転駆動して排紙ローラ28を反時計方向に回転させる。また、排紙センサ24による原稿の先端検知からの排紙モータパルスカウントにより、原稿後端が排紙ローラ28の上下ローラ対のニップから抜ける直前に排紙モータ駆動速度を減速させて、排紙トレイ29上に排出される原稿が飛び出さない様に制御される。
【0034】
両面原稿読取りの場合には、排紙センサ24にて原稿先端を検知してから読取りモータのパルスカウントにより第二読取部25に原稿先端が到達するタイミングで第二読取部25に対してDF制御部100から副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が読取り部を原稿後端が抜けるまで送信される。第二読取ローラ26は第二読取り部における原稿の浮きを抑えると同時に、第二読取り部におけるシェーディングデータを取得する為の基準白部を兼ねるものである。
【0035】
図4に給紙底板情報(原稿束の厚さ)検知手段を有する本実施例の全体構成図を示す。また図5には制御フロー図を示す。なお、図4、5に示していない要素、部材、構成等は図1の装置とほぼ同様とし、図示していなくても同一の符号をもって説明する。
【0036】
本実施例では、原稿束1をセットしたことをセットセンサ5にて検知すると、図示しない底板モータを例えば時計回り方向(CW駆動)へ回転させ(図5:ステップ1)、底板である可動原稿テーブル3の上昇駆動の制御を開始する。先端適正位置センサである突き当てセンサ11によって原稿先端が検知されると(ステップ2)、該センサがオンして所定パルス分だけ原稿束1を搬送後に可動原稿テーブル3の上昇駆動を停止させて、セットした原稿束1の上面位置を給紙開始のための適正な高さに設定する(ステップ3)。既に述べたような給紙動作によって原稿束1から数枚原稿が給紙されると、原稿束1の上面の高さが低くなり、先端適正位置センサである突き当てセンサ11がオフとなるので、再度、可動原稿テーブル3の上昇制御を実施して原稿束1の上面を適正位置に合わせる(ステップ2、3)。このとき、底板モータを停止させ、可動原稿テーブル3の上昇駆動制御に要した総パルス数から可動原稿テーブル3の上昇距離Lを算出し(ステップ4、5)、図示せぬモータ等により上下方向へ回動して可動とした排紙トレイ29a上の排出原稿1aの推定高さを導き(ステップ6)、排紙の速度制御態様(通常は排紙量を減少させる減速処理となる)を決定する(ステップ7)。ただし排紙トレイ29aに設けた残紙センサ29bにて排出原稿1aの除去が確認されると、排紙トレイ29aを排紙量がゼロの状態のホームポジション(通常は最下降位置)へ戻すため、排出原稿1aの推定高さをリセットしてゼロから積み上げ直す。なお図中30はADF本体としての外周構造物を示す(図1では排紙トレイ29と一連になっている部位である)、31は底板である可動原稿テーブル3のホームポジションを検出する底板ホームポジションセンサである。
【実施例2】
【0037】
図6は、排紙トレイ29aを可動とした本実施例の全体構成図を示す。排紙トレイ29aは、排紙トレイ支点29cを中心に図中上下方向に回動駆動できるようになっており(駆動モータ等の機構の図示、説明は省略するが、公知、周知のものを用いればよい)、排出原稿29bの取り出し易さを考慮して枚数が少ない場合は排紙トレイ29aの位置を高く、枚数が多くなるにつれて下降させるように制御することになる。なお排紙トレイ29aの傾斜としてはきつい状態から緩くなっていくのが通常である。また排紙トレイ29aの支持位置は、図6(a)に示すように原稿の排出方向で上流側であっても、図6(b)に示すように下流側であっても、いずれでもよい。排紙トレイ29aのホームポジションを検出する排紙トレイホームポジションセンサ32は図示のように図6(a)と図6(b)の場合では原稿の排出方向で上流、下流側位置が逆側の位置になる。
【0038】
すなわち図6(b)は排紙トレイ29aの可動軸を変えた例で排紙部と排紙トレイのみを示した図であり、この方式でも原稿の枚数が多いほど低速で排出させたい傾向は同じであるが、この方式では積載原稿枚数が多いときの方が排紙トレイ29a自体の傾斜はきつくなるので、最適な速度制御は図6と異ならせるほうが好ましい。
【0039】
図7は、本実施例の制御フロー図を示す。図示の制御は、途中までは図5の制御と同様であるが、ステップ6で排出原稿高さを推定した後、排紙トレイ可動域の範囲内においては排紙トレイ29aの下降制御を行い(ステップ6a)、この排紙トレイ29aの制御情報も考慮した上で速度制御を決定する。
【0040】
また図8(a)、(b)は、本実施例の排紙トレイ29aの制御フロー図である。本フローでは、先述の底板(可動原稿テーブル3)について情報による排出原稿1aの推定高さに応じて所定パルスを設定する。
【0041】
まず排紙トレイ下降制御について説明すると、排紙トレイホームポジションセンサ32がOFFであれば(ステップ1)、排紙トレイ29aを上下動させる図示せぬモータを例えば時計回り方向に回転駆動(CW駆動)し(ステップ2)、排紙トレイホームポジションセンサ32がONであれば(ステップ3)、所定パルスだけ原稿を搬送し(ステップ4)、その後に排紙トレイの上下動を駆動する図示せぬモータを停止させ(ステップ5)、排紙トレイ下降フラグをセットして搬送処理を終える(ステップ6)。
【0042】
次に排紙トレイ上昇制御について説明すると、排紙トレイ下降フラグセットいれば(ステップ1)、排紙トレイホームポジションセンサ32がONであれば(ステップ2)、排紙トレイ29aを上下動させる図示せぬモータを例えば反時計回り方向に回転駆動(CCW駆動)し(ステップ3)、排紙トレイホームポジションセンサ32をOFFとし(ステップ4)、所定パルスだけ原稿を搬送し(ステップ5)、その後に排紙トレイの上下動を駆動する図示せぬモータを停止させ(ステップ6)、セットされていた排紙トレイ下降フラグをクリアして搬送処理を終える(ステップ7)。
【実施例3】
【0043】
図9に排紙トレイ上の原稿束厚さを検知することを可能とした本発明の実施例3の全体構成図を示す。ここでは原稿テーブル2に積載高検出センサ33として鉛直下向きに測距センサを取り付けて、積載高検出センサか33ら排出原稿1a上面までの距離を検出するようになっている。
【0044】
図10(a)、(b)に、この積載高検出センサ33による積載高さ(排出原稿厚さ)の検知方法を示す。図10(a)のように、積載高検出センサ33は、例えば赤外発光ダイオード33aより投光レンズ33bを介して放射された赤外光は、排出原稿面Pと排紙トレイ29aの上面Qに反射して受光レンズ33cを介して位置検出素子であるPSD33dで受光される。このとき両者から反射されてくる赤外光のPSD33dに入射する位置が異なるために電位差Vが生じる。排紙トレイ29aの上下動作を停止している状態では、積載高検出センサ33から排紙トレイ29a上面Qまでの距離L2は一定であるが、積載高検出センサ33から排出原稿1a上面Pまでの距離L1は排出原稿1の枚数によって変化するので、排出原稿1の上面Pからの反射光がPSD33dに入射する位置もずれ、そのために出力電圧Vが変化する(図10(b)参照)。つまり、原稿排出枚数に応じて、積載高検出センサ33の出力電圧も変化することになる。したがって出力電圧の変化レベルから距離L1の距離情報を取得し、積載高さ(排出原稿1の高さあるいは厚さ)を考慮して減速制御を決定することができる。
【0045】
図11(a)〜(c)に、積載高検出センサ33を用いた積載高さ検出と可動の排紙トレイ29aに関する制御フロー図を示す。図11(a)は積載高レベル判定を示し、出力電圧レベルが4以上であれば(ステップ1)、積載高が高すぎて不可と判断し(ステップ2)、給紙制御をストップし(ステップ3)、警告を通知する(ステップ4)。出力電圧レベルが3以上であれば(ステップ5)、排紙トレイ29aの下降制御を行う(ステップ6)。また出力電圧レベルが2以上であれば(ステップ7)、排紙トレイ29aの上昇制御を行う(ステップ8)。
【0046】
図11(b)は、積載高レベル判定に入る前の積載高判定制御1に関する制御フローを示す。まず排紙センサ33が OFFであれば(ステップ1)、排紙タイマが所定値を超えているかどうかを判断し(ステップ2)、超えていれば積載高レベル判定に入る。排紙センサ33が OFFでなければ(ステップ1)、排紙タイマをクリアして制御を終える。
【0047】
図11(c)は、積載高レベル判定に入る前の積載高判定制御2に関する制御フローを示す。まず全原稿排紙完了であれば(ステップ1)、積載高レベル判定に入るが、そうでなければ排紙タイマをクリアして制御を終える。
【0048】
本実施例の制御の全体のフロー図を図12に示す。本実施例では、原稿高さの推定の代わりに前述の積載高センサ33による測定を行う(ステップ1)ので可動原稿テーブル3の情報によらず減速制御を決定できる。また読取搬送中は等速で読取終了以降速度変更可能なので読み取り終了時、両面読取時は両面とも読取終了した時に本フローを実行することができる。そして図8の制御とは異なり、推定値ではなく、積載高センサ33による実際の測定値を使用して速度制御を決定する(ステップ3)ので誤差、誤動作を少なくできる。
【実施例4】
【0049】
図13に、紙厚(原稿の厚さ)を検知可能とする手段を備えた実施例4を示す。なお原稿サイズについては、先に図1〜3を用いた説明のように原稿の紙幅は原稿幅センサ13にて、長さは搬送中に突き当てセンサ11を用いたモータパルス計測により算出すればよい。
【0050】
図13(a)に示すように、プルアウトローラ12a、12bの上下ローラ対のニップに原稿pが進入した際に下側のローラ12bの軸12cが原稿pの厚さに相当する距離だけ移動する。この移動量を微少量でも検知可能な変位センサ34により検知し、原稿pのニップ進入前後のセンサ出力差分から原稿1枚ごとにそれぞれの紙厚情報を測定する。変位センサ34の検出距離と出力電圧の関係の例を図13(b)に示す。ただし、これは単なる一例である。
【0051】
そして以上のように測定した原稿サイズ(幅、長さ)及び紙厚を搬送1枚ごとに記録保持しておき、図13に示す制御フローでの速度制御決定に反映させる。
【0052】
図14が実施例4の制御フロー図で、この制御では、図5での制御から底板である可動原稿テーブル3の上昇距離Lは算出されているものとする。原稿読取に適した最高上昇距離から上昇距離Lを引いた量S1が推定される未処理原稿全体の厚さ(高さ)である(ステップ1)。一方、排出原稿の厚さ(高さ)は及び排紙トレイの下降は図10〜図11の方式及び制御で測定され、排紙トレイ29aの可動域とから、当該時点での残積載容量S2が求められる(ステップ2)。このとき値S1がS2より大きいとき排紙トレイが溢れると推定できるので、S=S1−S2の符号を判断し(ステップ3〜5)、前回測定と値が変わったときはユーザーへ警告し(ステップ6)または警告解除を発信する(ステップ7)。警告や警告解除は、例えば図2に示されるIF107を経由して警告または警告解除を装置本体に通知し、操作部108にアラートを出現または消失させることで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】被読取原稿処理装置(ADF)の基本的な構成例を示す断面図
【図2】図1の装置の制御ブロック図
【図3】図1の装置の制御ブロック図
【図4】給紙底板情報検知手段を有する本実施例の全体構成図
【図5】図4の実施例の制御フロー図
【図6】排紙トレイを可動とした本発明の実施例2の全体構成図
【図7】図6の実施例の制御フロー図
【図8】図6の実施例の排紙トレイの制御フロー図
【図9】排紙トレイ上の原稿束厚さを検知することを可能とした本発明の実施例3の全体構成図
【図10】図9の実施例の検知方法を示す図
【図11】図9の実施例における積載高検出センサを用いた積載高さ検出と可動の排紙トレイに関する制御フロー図
【図12】実施例3の制御の全体のフロー図
【図13】紙厚(原稿の厚さ)を検知可能とする手段を備えた本発明の実施例4を示す図
【図14】実施例4の制御フロー図
【符号の説明】
【0054】
1:原稿束
1a:排出原稿
3:可動原稿テーブル
5:セットセンサ
11:突き当てセンサ
12a、12b:プルアウトローラ
12c:ローラの軸
13:原稿幅センサ
29a:排紙トレイ
29b:残紙センサ
29c:排紙トレイ支点
30:ADF本体
31:底板ホームポジションセンサ
32:排紙トレイホームポジションセンサ
33:積載高検出センサ
33a:赤外発光ダイオード
33b:投光レンズ
33c:受光レンズ
33d:PSD
34:変位センサ
p:原稿
L1:積載高検出センサから排出原稿上面までの距離
P:排出原稿面
Q:排紙トレイの上面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙トレイの底板上に積載された原稿束を1枚ずつ分離して給送する自動原稿送り装置において、前記底板上の原稿束の厚さ情報あるいは高さ情報、搬送を終えた原稿を排出する排紙トレイの上下動情報または自動原稿送り装置本体に対して前記排紙トレイのなす角度制御情報の少なくともいずれかを情報として検知する情報検知手段を有し、該情報検知手段が検知した前記いずれかの情報の変化量に応じて、前記排紙トレイへの原稿排出時の速度制御を変更することを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項2】
請求項1の自動原稿送り装置において、前記情報検知手段が、前記情報として前記底板上の原稿束の厚さまたは高さを検知するものであり、該情報検知手段が検知した前記底板上の原稿束の厚さまたは高さの変化量から、前記排出トレイ上に積み上がった原稿高さを推定し、該推定値に応じて前記原稿排出時の速度制御を減速処理として実行することを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項3】
請求項1の自動原稿送り装置において、前記情報検知手段が、前記排紙トレイの上下動制御または前記自動原稿送り装置本体に対して前記排紙トレイのなす角度を制御するものであり、前記排紙トレイの上下動または角度制御情報に応じて前記原稿排出時の速度制御を減速処理として実行することを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項4】
請求項2の自動原稿送り装置において、前記排紙トレイの上下動または角度制御情報を加味して前記原稿排出時の速度制御を実行することを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項5】
請求項3の自動原稿送り装置において、前記排紙トレイ上の原稿束の厚さまたは高さを加味して前記原稿排出時の速度制御を実行することを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかの自動原稿送り装置において、搬送しようとする原稿のサイズを検知する原稿サイズ検知手段を有し、該原稿サイズ検知手段が検知した原稿のサイズを加味して前記原稿排出時の速度制御を実行することを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかの自動原稿送り装置において、搬送しようとする原稿の厚さを検出する原稿厚さ検出手段を有し、該原稿厚さ検出手段により検出された厚さを加味して前記原稿排出時の速度制御を実行することを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかの自動原稿送り装置において、前記給紙トレイの前記底板上の原稿束の厚さ情報あるいは高さ情報と、前記排出トレイ上に積み上がった推定原稿高さ情報とにより、現在の前記排紙トレイへの排紙可能な原稿の許容量に対して現在の給紙トレイ上の未処理の原稿束の量が前記許容量以上か否かを判断し、給紙トレイ上の未処理の原稿束の量が前記許容量以上で許容不可能と判断した場合に警告を発する警告手段を有することを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかの自動原稿送り装置を備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−44449(P2009−44449A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207046(P2007−207046)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】