説明

自動車の安全装置および自動車

【課題】通行人や二輪車が、側後方の安全確認がなされずに開けられてしまった自動車の側部ドアと衝突する事故を未然に防止するとともに使い勝手のよい安全装置を提供すること。
【解決手段】自動車が停車中で側部ドアが閉状態であり、自動車の側後方の物体が自動車に到達するまでの到達予想時間が予め定められた所定の値以下の場合に音または表示により注意喚起を行う注意喚起モードと、注意喚起モード中に、すべての側部ドアが閉じられており、すべての側部ドアそれぞれのドアロックスイッチがロック側にある場合に移行するモードであって、物体側の側部ドアのドアロックスイッチがロック解除側へ操作されると操作されたドアロックスイッチをロック側へ戻す制御を行うドアロック制御モードとを有することを特徴とする自動車の安全装置などにより、この課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車やトラックなどの自動車のドアが、二輪車や通行人など自動車に接近してくる物体に衝突しないようにした自動車の安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走行中の自動車の後方や側方の障害物を検出し、その接近度合いに応じて危険度を運転者に通報するものが特許文献1に記載されている。電波を利用したレーダシステムで車両等を検出し、検出対象までの距離と相対速度を算出する演算回路が開示されている。特に自車の右側後方のドアミラーで運転者が視認し難い範囲の車両を検出するものである。
【0003】
また、車両を路上に停止させて荷役作業を行うときの安全性を確保するものが特許文献2に記載されている。車両後部の荷物積み下ろし用のドアが開いているときに、車両側後方を歩行者や自転車等が通過するのを超音波センサが検出すると、警告装置により警告を発するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−338237
【0005】
【特許文献2】特開平7−266891
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、高齢者の増加にともない、自動車に乗せられて移動する高齢者が増加している。高齢者は注意力が減退しており、自動車を降りるときに側後方の安全を確認することなく側部ドアを開けてしまうことが多い。
このような状況下においては、例えば二輪車などの物体と、例えば側後方の安全確認がなされずに開けられてしまった側部ドアが衝突する危険性が増している。この危険性を低下させる必要がある。
本発明は、この課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するための請求項1に記載の本発明は、自動車の側後方に位置する物体を検出するセンサと、前記自動車が停車中であることを検出する停車検出器と、前記自動車の側部ドアの開閉状態を検出する側部ドア開閉検出器と、前記側部ドアをロック状態またはロック解除状態とするためのドアロックスイッチとを有し、前記停車検出器により前記自動車が停車中であることが検出され、前記側部ドア開閉検出器により前記側部ドアが閉状態であることが検出され、前記センサにより検出された前記物体の情報に基づいて予想された、前記物体が前記自動車に到達するまでの到達予想時間が予め定められた所定の値以下の場合に、前記自動車の搭乗者に対して音または表示により注意喚起を行う注意喚起モードと、前記注意喚起モード中に、前記自動車のすべての側部ドアが閉じられており、前記自動車のすべての側部ドアそれぞれのドアロックスイッチがロック側にある場合に移行するモードであって、前記センサにより検出された前記物体の情報に基づいて予想された、前記物体が前記自動車に到達するまでの到達予想時間が予め定められた所定の値以下の場合に、前記物体側の側部ドアのドアロックスイッチがロック解除側へ操作されると操作された前記ドアロックスイッチをロック側へ戻す制御を行うドアロック制御モードと
を有することを特徴とする自動車の安全装置である。
【0008】
また、この課題を解決するための請求項2に記載の本発明は、自車の側後方に位置する物体を検出するセンサと、前記自車が停車中であることを検出する停車検出器と、前記自車の側部ドアの開閉状態を検出する側部ドア開閉検出器と、前記側部ドアをロック状態またはロック解除状態とするためのドアロックスイッチとを有し、前記停車検出器により前記自車が停車中であることが検出され、前記側部ドア開閉検出器により前記側部ドアが閉状態であることが検出され、前記センサにより検出された前記物体の情報に基づいて予想された、前記物体が前記自車に到達するまでの到達予想時間が予め定められた所定の値以下の場合に、前記自車の搭乗者に対して音または表示により注意喚起を行う注意喚起モードと、前記注意喚起モード中に、前記自車のすべての側部ドアが閉じられており、前記自車のすべての側部ドアそれぞれのドアロックスイッチがロック側にある場合に移行するモードであって、前記センサにより検出された前記物体の情報に基づいて予想された、前記物体が前記自車に到達するまでの到達予想時間が予め定められた所定の値以下の場合に、前記物体側の側部ドアのドアロックスイッチがロック解除側へ操作されると操作された前記ドアロックスイッチをロック側へ戻す制御を行うドアロック制御モードとを有することを特徴とする自動車である。
【0009】
また、この課題を解決するための請求項3に記載の本発明は、前記ドアロック制御モードに移行する際に、ドアロック制御を開始することを知らせるアナウンスを行うことを特徴とする請求項2に記載の自動車である。
【0010】
また、この課題を解決するための請求項4に記載の本発明は、前記ドアロック制御モード中に、前記自車のいずれかの側部ドアが開けられたときに前記ドアロック制御モードから前記注意喚起モードに移行することを特徴とする請求項2に記載の自動車である。
【0011】
また、この課題を解決するための請求項5に記載の本発明は、前記注意喚起モードに移行する際に、ドアロック制御を終了することを知らせるアナウンスを行うことを特徴とする請求項4に記載の自動車である。
【発明の効果】
【0012】
停車中の自動車の側後方から二輪車や人などの物体が自動車に接近してくる場合に、自動車のその物体側の側部ドアが開けられて物体と衝突してしまう事故を未然に防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】自動車と物体の位置関係を模式的に示した説明図である。
【図2】本発明の自動車の安全装置の第一の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の自動車の安全装置の第二の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の自動車の安全装置の第三の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の自動車の安全装置の第四の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図6】第四の実施の形態における処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】第四の実施の形態における処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】第四の実施の形態における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の自動車の安全装置が搭載された自動車101と、その自動車101に側後方から接近する通行人102や二輪車103との位置関係を模式的に示した説明図(平面図)である。自動車101は停車中である。左ドアミラー104に設けられている左物体センサ105が自動車101の左側後方から接近してくる物体、ここでは通行人102を検出し、右ドアミラー106に設けられている右物体センサ107が自動車101の右側後方から接近してくる物体、ここでは二輪車103を検出する。図中、矢印108は物体、つまり通行人102や二輪車103の進行方向を示し、破線109に挟まれた領域は各物体センサ105、107の空間的な検出領域を示している。
【0015】
物体センサ105、107としては検出範囲の指向性が高いものを使用することが望ましい。指向性が高いほど、ノイズの影響が小さく、自動車101から距離のある物体の検出が容易となるからである。ここでノイズとは自動車101に接近はしてきているが、ぶつかりそうもない物体を検出したことで得られる情報などである。検出範囲の指向性が低い物体センサを使用する場合は、このぶつかりそうもない物体を検出してしまうことを避けるために、検出範囲の指向性が高い物体センサを使用する場合に較べて検出距離を小さく設定しなければならなくなる。どの程度の指向性を設定するかは、どの範囲にある通行人102や二輪車103などの物体を検出するかによることとなる。
【0016】
物体センサ105、107としてはミリ波レーダなどの電波センサ、超音波センサ、レーザーレーダや赤外線センサなどの光センサなどのうち、基本的には側後方に位置する物体までの相対距離の情報と物体の相対速度の情報が得られるものを使用すればよい。また、物体センサ105、107の取り付け場所はドアミラー104、106の他、自動車101のテール部分など、基本的には側後方に位置する物体を検出できる場所であればよい。
【0017】
通行人102や二輪車103などの物体が一定速度で移動中と仮定すれば自動車101に到達するまでの到達予想時間TOは式(1−1)で表される。

到達予想時間TO = 相対距離 / 相対速度 (1−1)

相対距離は物体と自動車101との相対距離であり、物体センサ105、107により検出された物体の情報に基づいて求められるものである。物体と物体センサ105、107までの距離と定義してもよいし、物体と自動車101の後部ドア112、113までの距離と定義してもよい。物体と自動車101のテール部分までの距離と定義してもよい。
相対速度は物体の自動車101に対する相対速度であり、物体センサ105、107により検出された物体の情報に基づいて求められるものである。
【0018】
本発明の自動車の安全装置では、到達予想時間TOが所定時間TS以下の値となった場合には、側部ドア110、111、112、113が開けられると通行人102や二輪車103などの物体が衝突してしまう危険性が高いと判断される。所定時間TSは、例えば通行人102が自動車101の後部ドア112が開けられたと気づいてから後部ドア112と衝突せずに立ち止まるために必要と考えられる時間や、例えば二輪車103の運転者が自動車101の後部ドア113が開けられた気づいてから後部ドア113と衝突しないで停止するために必要と考えられる時間などに基づいて定めればよい。
【0019】
式(1−1)が示すように到達予想時間TOは相対距離と相対速度から求めることができる。そこで図1に示すように、物体センサ105、107の検出領域を複数の領域、例えば物体センサ105、107からの相対距離がD0からD1のA領域、D1からD2のB領域、D2からD3のC領域の3つの領域に分けて、各領域における物体の相対速度を監視することで、到達予想時間を求めることに代えてもよい。
【0020】
到達予想時間を求める代わりに物体の相対速度を監視する場合、前述の各領域毎に所定時間に代わる所定速度を定めればよい。A領域に物体が検出された場合はその相対速度が例えば所定速度V1以上であれば衝突してしまう危険性が高いと判断されるものである。ここで所定速度V1は前述の所定時間TSと相対距離D0に基づいて定めればよい値である。所定速度V1は前述の所定時間TSと相対距離D1に基づいて定めてもよいが、所定時間TSと相対距離D0に基づいて定めた場合よりも所定速度V1は大きな値となる。つまり危険と判断される基準が緩くなってしまうことに留意する必要がある。
同様にB領域、C領域に物体が検出された場合の所定速度をそれぞれV2、V3とした場合の所定時間に代わる所定速度を表1にまとめておく。
【0021】
【表1】

【0022】
図1において領域A0は物体センサ105、107から相対距離D0の領域であり、ほぼ側部ドア110、111、112、113が位置する領域である。この領域A0は停車中の自動車101に乗り降りする搭乗者が物体として検出されてしまう領域であり、自動車101に接近する通行人102や二輪車103が既に自動車101に到達したと言える領域である。この領域A0で物体が検出された場合は、例えばその物体の相対速度にかかわらず後述する「注意喚起」のみがなされることとすればよい。あるいは無視することとしてもよい。
【0023】
本発明の実施の形態において、到達予想時間は相対距離が時々刻々変化するのにともなって変化する。通行人102や二輪車103などの物体が一定速度ではなく変動する速度で接近中、つまり加速度運動をしている場合はさらに相対速度も時々刻々変化するが、その場合でも式(1−1)を適用して到達予想時間を求めればよい。
なお、本発明においては到達予想時間の求め方は式(1−1)を用いる方法に限定されるものではない。物体が前述の加速度運動をする場合は例えば等加速度運動と仮定して到達予想時間を求めてもよい。また、経験則に基づいて求めてもよい。
【0024】
図2は本発明の自動車の安全装置の第一の実施の形態の構成を示すブロック図である。なお、図2の第一の実施の形態は、自動車101において左側後方の物体に対応する配置や構成とすれば左側後方の物体に対応する自動車の安全装置として、右側後方の物体に対応する配置や構成とすれば右側後方の物体に対応する自動車の安全装置として使用できるものである。
また、自動車のうち、大型トラックや軽トラックは側部ドアが左右に一つずつあるものが一般的であるが、4ドアセダンのような乗用車は側部ドアが左右に二つずつあるものが一般的である。第一の実施の形態は特定の側部ドアに限定されない、どの側部ドアにも対応できる形態である。
【0025】
物体センサ201(図1においては105または107)は自動車101の側後方の通行人102や二輪車103などの物体を検出するもので、前述のとおり電波センサ、超音波センサ、光センサなどを使用すればよい。自動車101の本体で、側後方の物体を検出することができる位置に設けられるものである。
相対距離把握部202は、物体センサ201により検出された物体の情報に基づいて、自動車101から物体までの相対距離を把握するものである。
相対速度把握部203は、物体センサ201により検出された物体の情報に基づいて、自動車101に対する物体の相対速度を把握するものである。
【0026】
自動車メーカから既に発表されている「全方位運転支援システム」では、例えば自動車の側面に付けたセンサで、移ろうとする車線の斜め後方を走る自動車との距離や速度差を計測している。性能の良し悪しは別にして、このようなシステムで使用されているセンサ、距離計測器、速度差計測器を物体センサ201、相対距離把握部202、相対速度把握部203にそれぞれ適用することも可能であろう。
【0027】
物体到達予想時間出力部204は、相対距離把握部202が把握した相対距離の情報と相対速度把握部203が把握した相対速度の情報とを用いて物体が自動車101に到達するまでの時間を予想するものである。この時間は到達すると予想される時間である。
所定時間記憶部205は前述の所定時間を予め記憶しておくものである。
比較部206は、物体到達予想時間出力部204が予想した、物体が自動車101に到達するまでの時間TOと所定時間記憶部205に記憶されている所定時間TSを比較するものである。
【0028】
停車検出器207は自動車101が停車中であるのか走行中であるのかを検出するものである。既存の速度計で速度がゼロ(V=0)の場合に信号を出力するタイプのものを利用すればよい。側部ドア開閉検出器208は側部ドア110、112等の開閉状態を検出するもので、既存のドア開閉検出器を利用すればよい。
【0029】
注意喚起部209は自動車101の搭乗者の注意を喚起するもので、発光ダイオードや豆電球などの表示灯や文字表示できるモニタなどを利用すればよい。これらの表示灯やモニタは側部ドア110、112等に設けられている、図示しないインサイドハンドルの近傍に設けられていれば、搭乗者が側部ドア110、112等を開けようとした場合に必然的にその視野に入り、効果的である。図示しないインサイドハンドルの上方に設ければ、図示しないインサイドハンドルを握ろうとする搭乗者の手の陰になることもなく、より効果的である。
【0030】
ドアロックスイッチ210は搭乗者が側部ドア110、112等をロック状態としたり、それを解除したりするためのスイッチであり、既存のドアロックスイッチで、ドアロックスイッチが解除状態であることを示す信号を出力するタイプのものを利用すればよい。ここで、側部ドア110、112等がロック状態とは、搭乗者が図示しないインサイドハンドルを引いても側部ドア110、112等が開かない状態のことである。
【0031】
警告部211は搭乗者が事故につながるような動作、つまり側部ドア110、112等を開けるための動作を行った場合に警告を発するもので、ブザーやチャイム、スピーカーなどを利用すればよい。搭乗者の視覚を通して警告を発する場合は、前述の注意喚起部209を警告部211として併用してもよい。
第一ゲート212、第二ゲート213はともに入力信号に応じて出力信号を生成するもので、既存の論理回路IC(Integrated Circuit)などを利用すればよい。
【0032】
図2の第一の実施の形態の作用について説明する。物体センサ201により自動車101の側後方に通行人102等の物体が検出されると、その物体の情報は物体センサ201から相対距離把握部202と相対速度把握部203へ送られる。相対距離把握部202はその物体の情報に基づいて自動車101と通行人102等の物体の相対距離を把握する。把握された相対距離の情報は物体到達予想時間出力部204へ送られる。相対速度把握部203はその物体の情報に基づいて自動車101に対する通行人102等の物体の相対速度を把握する。把握された相対速度の情報は物体到達予想時間出力部204へ送られる。
【0033】
物体到達予想時間出力部204は相対距離把握部202から送られてきた相対距離の情報と相対速度把握部203から送られてきた相対速度の情報とに基づいて、物体が自動車101に到達するのに必要な時間TOを予想し、この予想された物体到達予想時間TOの情報を比較部206に出力する。比較部206は、物体到達予想時間出力部204から出力された物体到達予想時間TOの情報と所定時間記憶部205に記憶されている所定時間TSとを比較し、物体到達予想時間TOが所定時間TSよりも小さいかあるいは等しければ第一ゲート212へアクティブ信号を送る。このアクティブ信号を物体接近信号と呼ぶ。
【0034】
比較部206に入力される物体到達予想時間TOの情報は物体の動きに応じて不規則に変動することもありうるので、前記アクティブ信号は物体到達予想時間TOが所定時間TS1よりも小さいかあるいは等しい場合に出力され、物体到達予想時間TOが所定時間TS2(TS1<TS2)よりも大きくなった時点で出力を終えるように、いわゆるヒステリシスの特性を有するように比較部206を構成してもよい。
【0035】
第一ゲート212は比較部206から出力されたアクティブ信号と、停車検出器207から出力された自動車101が停車中であることを示す停車信号と、側部ドア開閉検出器208から出力された側部ドアが閉状態であることを示すドア閉信号が入力されると注意喚起部209と第二ゲート213に注意喚起信号を出力する。
注意喚起部209は注意喚起信号が入力されると、搭乗者に対して、自動車101に通行人102等の物体が接近しつつあり側部ドア110、112等を開けると危険であることを意識させるため、例えば発光ダイオードを点滅させたり、「障害物接近中」などの文字列をモニターに表示したりして注意喚起を行う。
【0036】
第一ゲート212では、比較部206から出力されたアクティブ信号と、停車検出器207から出力された停車信号と、側部ドア開閉検出器208から出力されたドア閉信号のうちどれか一つでも入力されなくなると、注意喚起信号は出力されなくなる。つまり、側部ドア110、112等が開けられても大丈夫だと考えられるぐらい、物体到達予想時間TOが大きい値であるか、または自動車101が走行を開始し、自動車101が停車状態ではなくなってしまったか、あるいは側部ドア110、112等が開けられたかのいずれかの場合には注意喚起信号は出力されず、注意喚起は行われない。
【0037】
第二ゲート213は第一ゲート212から出力された注意喚起信号とドアロックスイッチ210から出力されたドアロック解除信号の両方が入力されると、警告部211に警告信号を出力する。警告部211は警告信号が入力されるとチャイムやブザーなどの警告音により搭乗者に対して警告を発する。つまり、注意喚起信号が出力されている注意喚起状態であるときに、搭乗者によりドアロックスイッチ210がロック解除側へ操作されると、第二ゲート213から警告部211に警告信号が出力され、搭乗者は警告部211から警告を受けることとなり、側部ドア110、112等を開けようとする動作を思いとどまることになる。
【0038】
このように第一の実施の形態においては、注意喚起や警告を行うことで、自動車101の搭乗者に危険を知らせるための作業を行っている。この作業を行う部分を本発明の自動車の安全装置では危険回避作業部と呼んでいる。危険回避作業部は、第一の実施の形態においては第一ゲート212、停車検出器207、側部ドア開閉検出器208、注意喚起部209、ドアロックスイッチ210、第二ゲート213、警告部211を有している。
【0039】
また、第一の実施の形態においては注意喚起を行いながら、さらに警告を行う構成となっているが、本発明の自動車の安全装置はこの構成に限定されるものではない。注意喚起は行わず、警告だけを行う構成としてもよい。
さらに第一の実施の形態においては停車検出器207により自動車101が停車中であることを検出し、停車中である場合に注意喚起や警告を行っている。側部ドア110、112等を開けることの危険を知らせる注意喚起や警告は、走行中の運転者にとっては注意力を分散させるものである。走行中に搭乗者が側部ドア110、112等を開けてしまうリスクよりも、運転者の注意力が削がれることによる事故のリスクの方が大きいと考えられる場合は、注意喚起や警告を走行中には行わない方がよい。第一の実施の形態においては停車中である場合に注意喚起や警告を行い、走行中には行わないこととしている。
【0040】
図3は本発明の自動車の安全装置の第二の実施の形態の構成を示すブロック図である。第二の実施の形態は、第一の実施の形態に側部ドア一つ分の各構成を追加した場合の形態である。二つの側部ドアは側部前部ドアと側部後部ドアである。左側部ドアであれば左側部前部ドアと左側部後部ドアである。
第二の実施の形態は、物体センサ301、相対距離把握部302、相対速度把握部303、物体到達予想時間出力部304、所定時間記憶部305、比較部306、停車検出器307を有する。これらは第一の実施の形態における対応する各部と同等のものである。
【0041】
側部前部ドア開閉検出器308は側部前部ドア110等の開閉状態を検出するもので、既存のドア開閉検出器を利用すればよい。側部前部ドア注意喚起部309は自動車101の搭乗者の注意を喚起するもので、発光ダイオードや豆電球などの表示灯や文字表示できるモニタなどを利用すればよい。側部前部ドアロックスイッチ310は搭乗者が側部ドア110等をロック状態としたり、それを解除したりするためのスイッチであり、既存のドアロックスイッチで、ドアロックスイッチが解除状態であることを示す信号を出力するタイプのものを利用すればよい。
【0042】
側部後部ドア開閉検出器314は側部後部ドア112等の開閉状態を検出するもので、既存のドア開閉検出器を利用すればよい。側部後部ドア注意喚起部315は自動車101の搭乗者の注意を喚起するもので、発光ダイオードや豆電球などの表示灯や文字表示できるモニタなどを利用すればよい。側部後部ドアロックスイッチ316は搭乗者が側部後部ドア112等をロック状態としたり、それを解除したりするためのスイッチであり、既存のドアロックスイッチで、ドアロックスイッチが解除状態であることを示す信号を出力するタイプのものを利用すればよい。
【0043】
警告部311は搭乗者が事故につながるような動作、つまり側部前部ドア110等や側部後部ドア112等を開けるための動作を行った場合に警告を発するもので、ブザーやチャイム、スピーカーなどを利用すればよい。
第一ゲート312、第二ゲート313はともに入力信号に応じて出力信号を生成するもので、既存の論理回路ICなどを利用すればよい。
【0044】
図3の第二の実施の形態の作用について説明する。なお、物体センサ301、相対距離把握部302、相対速度把握部303、物体到達予想時間出力部304、所定時間記憶部305、比較部306、停車検出器307の作用は、第一の実施の形態における対応する各部の作用と同等のものであるので、ここでは省略する。
【0045】
第一ゲート312は比較部306から出力されたアクティブ信号と、停車検出器307から出力された、自動車101が停車中であることを示す停車信号と、側部前部ドア開閉検出器308から出力された側部前部ドア110等が閉状態であることを示すドア閉信号と、側部後部ドア開閉検出器314から出力された側部後部ドア112等が閉状態であることを示すドア閉信号が入力されると、側部前部ドア注意喚起部309と側部後部ドア注意喚起部315と第二ゲート313に注意喚起信号を出力する。
【0046】
側部前部ドア注意喚起部309は注意喚起信号が入力されると、搭乗者に対して、自動車101に通行人102等の物体が接近しつつあり側部前部ドア110等を開けると危険であることを意識させるため、例えば発光ダイオードを点滅させたり、「障害物接近中」などの文字列をモニターに表示したりして注意喚起を行う。同様に、側部後部ドア注意喚起部315は注意喚起信号が入力されると、搭乗者に対して、自動車101に通行人102等の物体が接近しつつあり側部後部ドア112等を開けると危険であることを意識させるため、注意喚起を行う。
【0047】
第一ゲート312では、比較部306から出力されたアクティブ信号と、停車検出器307から出力された停車信号と、側部前部ドア開閉検出器308から出力されたドア閉信号と、側部後部ドア開閉検出器314から出力されたドア閉信号のうちどれか一つでも入力されなくなると、注意喚起信号は出力されなくなる。つまり、側部前部ドア110等や側部後部ドア112等が開けられても大丈夫だと考えられるぐらい、物体到達予想時間TOが大きい値であるか、または自動車101が走行を開始し、自動車101が停車状態ではなくなってしまったか、あるいは側部前部ドア110等や側部後部ドア112等が開けられたかのいずれかの場合には注意喚起信号は出力されず、注意喚起は行われない。
【0048】
第二ゲート313は第一ゲート312から出力された注意喚起信号がEN(Enable)入力に入力された状態で、側部前部ドアロックスイッチ310から出力されたドアロック解除信号か、側部後部ドアロックスイッチ316から出力されたドアロック解除信号が入力されると、警告部311に警告信号を出力する。警告部311は警告信号が入力されるとチャイムやブザーなどの警告音により搭乗者に対して警告を発する。つまり、注意喚起信号が出力されている注意喚起状態であるときに、搭乗者により側部前部ドアロックスイッチ310や側部後部ドアロックスイッチ316がロック解除側へ操作されると、第二ゲート313から警告部211に警告信号が出力され、搭乗者は警告部311から警告を受けることとなる。
【0049】
左右の少なくとも片側に前部ドア、後部ドアの二つの側部ドアがある自動車、例えば4ドアセダンのような自動車では、停車中に一方のドアは閉じられているが、もう一方のドアは開けられているという状態がよくある。前部座席、後部座席のどちらか一方の搭乗者だけが乗り降りするような場合である。このような状態の場合、開けられている方の側部ドアに注意喚起表示を出しても、乗り降りする搭乗者がその側部ドアが開けられている間にその表示を見る可能性は小さいものであるが、その表示に気づけば危険を回避する行動をとることは期待できる。
【0050】
側後方から接近する通行人や二輪車が側部ドアと衝突してしまうのは、閉じられているのでその横を通過できると判断した側部ドアが突然開けられた場合がほとんどである。まさにその横を通過しようとしているときに突然、側部ドアが開けられると避けきれずに衝突してしまうのである。片側に複数ある側部ドアのうち一つでも開けられていれば、側後方から接近する通行人や二輪車はそれを認識して危険を回避する、つまりその場所を通行することを止めたり、開けられている側部ドアが閉じられるのを待ってから通行したりする。したがって、片側に複数ある側部ドアのうち一つでも開けられていれば、閉じられている方の側部ドアが開けられたとしても通行人等が衝突してしまう可能性は小さいと考えられる。ただし、この場合でも、閉じられている方の側部ドアに注意喚起表示が出されていれば、さらに安全性を高めることは期待される。
【0051】
第二の実施の形態では、片側に二つある側部ドアのうち、どちらか一方の側部ドアでも開いていれば注意喚起表示は出されない構成としている。第二の実施の形態では、前後二つの側部ドアが閉じられていることが、注意喚起表示が出されることの条件の一つとなっている。これは、片側に二つある側部ドアのうち、少なくとも一方の側部ドアが開いている場合に注意喚起表示することで得られる効果よりも、消費電力の節約を図ることの効果を優先したからである。
【0052】
また、物体センサが側部ドアよりも前方にある場合、たとえばドアミラーに装着されているような場合は、側部ドアが開けられると物体センサの検出領域が側部ドアに遮られてしまうため、物体センサは物体を検出することができなくなる。この場合は注意喚起表示もできなくなる。したがって、この場合も片側に二つある側部ドアのうち、どちらか一方の側部ドアでも開いていれば注意喚起表示は出されない構成として、消費電力の節約を図ることが望ましい。
【0053】
図4は本発明の自動車の安全装置の第三の実施の形態の構成を示すブロック図である。なお、図4の自動車の安全装置400は、左側後方の物体に対する安全装置として構成したものである。日本国内においては右ハンドル車が使用されている。したがって、運転者以外の搭乗者は左側部ドアから自動車に乗り降りすることが多い。そのため、自動車の左側後方の物体に対する安全装置を設けるだけでも危険回避の効果は大きいものである。同様に、左ハンドル車の場合は右側後方の物体に対する安全装置を設けるだけでも危険回避の効果は大きいものである。
また、第三の実施の形態は特定の左側部ドアに限定されない、どの左側部ドアにも対応できる形態である。
【0054】
図4において、左物体センサ401(図1においては105)は自動車101の左側後方の通行人102などの物体を検出するもので、前述のとおり電波センサ、超音波センサ、光センサなどを利用すればよい。自動車101の左ドアミラー104に、自動車の左側後方に位置する物体を検出できるように装着されている。
左相対距離把握部402は、左物体センサ401により検出された物体の情報に基づいて、自動車101から物体までの相対距離を把握するものである。
左相対速度把握部403は、左物体センサ401により検出された物体の情報に基づいて、自動車101に対する物体の相対速度を把握するものである。
【0055】
左物体到達予想時間出力部404は、左相対距離把握部402が把握した相対距離の情報と左相対速度把握部403が把握した相対速度の情報とを用いて物体が自動車101に到達するまでの時間を予想するものである。この時間は到達すると予想される時間である。
所定時間記憶部405は前述の所定時間を予め記憶しておくものである。
比較部406は、左物体到達予想時間出力部404が予想した、物体が自動車101に到達するまでの時間TLと所定時間記憶部405に記憶されている所定時間TSを比較するものである。
【0056】
停車検出器407は自動車101が停車中であることを検出するもので、既存の速度計で速度がゼロ(V=0)の場合に信号を出力するタイプのものを利用すればよい。左側部ドア開閉検出器408は左側部ドア110等の開閉状態を検出するもので、既存のドア開閉検出器を利用すればよい。
左注意喚起部409は自動車101の搭乗者の注意を喚起するもので、発光ダイオードや豆電球などの表示灯や文字表示できるモニタなどを利用すればよい。
【0057】
警告部411は、搭乗者が事故につながるような動作、つまり左側部ドア110等を開けるための動作を行った場合に警告を発するもので、ブザーやチャイム、スピーカーなどを利用すればよい。
第一ゲート412、第二ゲート413、第三ゲート414はそれぞれ入力信号に応じて出力信号を生成するもので、第一ゲート412、第二ゲート413はANDゲート、第三ゲート414はORゲートであり、既存の論理回路ICなどを利用すればよい。
遅延部420は入力された信号を所定時間、遅延させて出力するもので、既存の遅延回路ICなどを利用すればよい。
【0058】
左側部ドアロックスイッチ410は搭乗者が左側部ドア110等をロック状態としたり、それを解除したりするためのスイッチである。既存のドアロックスイッチでアクチュエータによる「ロック」「ロック解除」の切り替えが可能であり、ドアロックスイッチがロック解除の状態であることを示す信号を出力するタイプのものを利用すればよい。
左側部ドアロックスイッチアクチュエータ415は左側部ドアロックスイッチ410をロック状態としたりロック解除状態としたりするアクチュエータであり、例えば既存の電磁式のものが利用できる。
【0059】
集中ドアロックスイッチ416は運転席の近傍に設けられており、自動車101の運転席のドアをロック状態としたり、それを解除したりするとともに、複数のドアのドアロックスイッチを一括してロック状態としたり、それを解除したりするためのスイッチである。
なお、第三の実施の形態においては、集中ドアロックスイッチ416は、集中ドアロックスイッチ専用のタイプでも、運転席ドアロックスイッチを兼ねるタイプのものでもよい。
既存の集中ドアロックスイッチでアクチュエータによる「ロック」への切り替えが可能であり、集中ドアロックスイッチがロック状態なのか、ロック解除状態なのかを示す信号を出力するタイプのものを利用すればよい。
集中ドアロックスイッチアクチュエータ417は集中ドアロックスイッチ416をロック状態とするアクチュエータであり、例えば既存の電磁式のものが利用できる。
【0060】
ドアロック制御スイッチ421は後述するドアロック制御をするかしないかを選択するためのスイッチであり、運転席の近傍に設けられている。
ドアミラー開閉スイッチ419はドアミラー104、106を開閉するためのスイッチであり、第三の実施の形態の自動車の安全装置への電源供給スイッチを兼ねており、運転席の近傍に設けられている。自動車電源418は既存の自動車用バッテリー、例えば鉛蓄電池やリチウムイオン電池である。
【0061】
図4の第三の実施の形態の作用について説明する。
第三の実施の形態では左物体センサ401は左ドアミラー104に装着されている。そして、左ドアミラー104が開、つまり左ドアミラー104が使用される状態のときに左物体センサ401(図1においては105)は左側後方の物体を検出可能な位置に配される構成である。したがって左ドアミラー104が閉、つまり収納状態のときは第三の実施の形態は作用しない。逆に言うと左ドアミラー104が開、つまり使用される状態のときに第三の実施の形態は作用することとなる。そこで第三の実施の形態の自動車の安全装置の本体400への電源供給をドアミラー開閉スイッチ419を介して行えば、自動車の安全装置に電源が供給されたが、ドアミラーは開の状態になっておらず物体センサが使用できない、などという状況を生じさせずにすむこととなる。そこで、ドアミラー開閉スイッチ419が開のときに自動車電源418から自動車の安全装置の本体400へ電源を供給する。
【0062】
ただし、本発明の自動車の安全装置は、左物体センサ401が左ドアミラー104に装着されているものに限定されるものではない。第三の実施の形態において、左物体センサ401が左ドアミラー104ではなく、例えば自動車101のテール部分に装着されている場合は、電源供給をドアミラー開閉スイッチ419を介して行わずに、別の構成で電源を供給すればよい。
なお、自動車の安全装置400へ電源を供給した直後には、パワーオンリセットなどの手法を用いて自動車の安全装置400を必要に応じて初期化する。
また、図4において、太い矢印は電源供給の流れを示し、細い矢印は各部間の情報や信号の流れを示し、中抜きの矢印はドアロックスイッチアクチュエータがドアロックスイッチに及ぼす駆動力を示す。
【0063】
左物体センサ401により自動車101の左側後方に通行人102等の物体が検出されると、その物体の情報は左物体センサ401から左相対距離把握部402と左相対速度把握部403へ送られる。左相対距離把握部402はその物体の情報に基づいて自動車101とその物体との相対距離を把握する。把握された相対距離の情報は左物体到達予想時間出力部404へ送られる。左相対速度把握部403はその物体の情報に基づいて自動車101に対するその物体の相対速度を把握する。把握された相対速度の情報は左物体到達予想時間出力部404へ送られる。
【0064】
左物体到達予想時間出力部404は左相対距離把握部402から送られてきた相対距離の情報と左相対速度把握部403から送られてきた相対速度の情報とに基づいて、物体が自動車101に到達するのに必要な時間TLを予想し、この予想された左物体到達予想時間TLの情報を比較部406に出力する。比較部406は、左物体到達予想時間出力部404から出力された左物体到達予想時間TLの情報と所定時間記憶部405に記憶されている所定時間TSとを比較し、左物体到達予想時間TLが所定時間TSよりも小さいかあるいは等しければ第一ゲート412へアクティブ信号を送る。このアクティブ信号を物体接近信号と呼ぶ。
【0065】
なお、第三の実施の形態において行われる信号のやりとりは負論理(アクティブ・ロー)に基づいている。図4において、例えば停車検出器407の出力部の V=0 の下線は、ローレベルのときにアクティブであることを示している。また、警告部411や左側部ドアロックスイッチアクチュエータ415や集中ドアロックスイッチアクチュエータ417の各入力部に記された下向きの矢印は、各入力部が信号の立下りを検出することを示している。
【0066】
第一ゲート412は3入力1出力を有するANDゲートであり、比較部406から出力されたアクティブ信号(TL < TS)と、停車検出器407から出力された自動車101が停車中であることを示す停車信号(V=0)と、左側部ドア開閉検出器408から出力された左側部ドア110等が閉状態であることを示すドア閉信号(ドア閉)が入力されると左注意喚起部409と第二ゲート413に注意喚起信号(喚起)を出力する。
左注意喚起部409は注意喚起信号が入力されると、自動車101に通行人102等の物体が接近しつつあり、左側部ドア110等を開けると危険であることを搭乗者に意識させるため、例えば発光ダイオードを点滅させたり、「障害物接近中」などの文字列をモニターに表示したりして注意喚起を行う。
【0067】
第一ゲート412では、比較部406から出力されたアクティブ信号(TL < TS)と、停車検出器407から出力された停車信号(V=0)と、左側部ドア開閉検出器408から出力されたドア閉信号(ドア閉)のうちどれか一つでも入力されなくなると、注意喚起信号は出力されなくなる。つまり、左側部ドア110等が開けられても大丈夫だと考えられるぐらい、左物体到達予想時間TLが大きい値であるか、または自動車101が走行を開始し、自動車101が停車状態ではなくなってしまったか、あるいは左側部ドア110等が開けられたかのいずれかの場合には注意喚起信号は出力されず、注意喚起は行われない。
【0068】
左側部ドアロックスイッチ410がロック解除の状態であれば解除信号(解除)が出力されており、第三ゲート414に入力されている。また、集中ドアロックスイッチ416がロック解除の状態であれば解除信号(解除)が出力されており、第三ゲート414に入力されている。
第三ゲート414は2入力1出力のORゲートであり、左側部ドアロックスイッチ410の解除信号または集中ドアロックスイッチ416の解除信号またはそれら両方が入力されると解除信号が出力される。
【0069】
第二ゲート413は3入力1出力のANDゲートであり、第一ゲート412の注意喚起信号(喚起)と第三ゲート414の解除信号(解除)とドアロック制御スイッチ421の制御信号(制御)が入力されると警告信号(警告↓)が出力される。警告部411は第二ゲート413から出力された警告信号(警告↓)のハイレベルからローレベルへの立下りを検出すると、チャイムを鳴らすなどして警告を行う。例えば、ドアロック制御スイッチ421が制御信号(制御)の出力される「入」の状態で、自動車101の左側後方から物体が接近してきて、第一ゲート412から注意喚起信号が出力される注意喚起状態になった場合、左側部ドアロックスイッチ410がロック解除の状態であったり集中ドアロックスイッチ416がロック解除の状態であったりすれば警告部411が警告を行う。
【0070】
また、左側部ドアロックスイッチ410と集中ドアロックスイッチ416がともにロック状態であれば第三ゲート414から解除信号(解除)は出力されず、第三ゲート414の出力はハイレベルのままである。第二ゲート413では3入力のうち、一つの入力に制御信号(制御)が入力され、もう一つの入力に注意喚起信号(喚起)が入力されていても、残り一つの入力には解除信号(解除)が入力されないので警告信号(警告↓)は出力されない。したがって警告部411での警告も行われない。このとき、左側部ドアロックスイッチ410と集中ドアロックスイッチ416のどちらか一方かまたは両方がロック解除側へ搭乗者により操作されると、第三ゲート414から解除信号(解除)が出力され、第二ゲート413から警告信号(警告↓)が出力されて、警告部411での警告が行われる。
【0071】
第二ゲート413から出力された警告信号(警告↓)は遅延部420を介して左側部ドアロックスイッチアクチュエータ415のロックa入力と集中ドアロックスイッチアクチュエータ417のロック入力へ送られる。
左側部ドアロックスイッチアクチュエータ415はロックa入力に警告信号(警告↓)が入力される、つまり警告信号(警告↓)の立下りを検出すると、左側部ドアロックスイッチ410をロック側へ移そうとして、左側部ドアロックスイッチ410に対して駆動力を行使する。左側部ドアロックスイッチ410は左側部ドアロックスイッチアクチュエータ415によりロック側へ操作され、解除信号(解除)は出力されない状態となる。左側部ドアロックスイッチ410がもともとロック状態であったとすれば、解除信号(解除)が出力されない状態が維持される。
【0072】
集中ドアロックスイッチアクチュエータ417はロック入力に警告信号(警告↓)が入力される、つまり警告信号(警告↓)の立下りを検出すると、集中ドアロックスイッチ416をロック側へ移そうとして、集中ドアロックスイッチ416に対して駆動力を行使する。集中ドアロックスイッチ416は集中ドアロックスイッチアクチュエータ417によりロック側へ操作され、解除信号(解除)は出力されない状態となる。集中ドアロックスイッチ416がもともとロック状態であったとすれば、解除信号(解除)が出力されない状態が維持される。
【0073】
また、集中ドアロックスイッチ416が集中ドアロックスイッチアクチュエータ417によりロック側へ操作されとロック信号(ロック)が出力される。左側部ドアロックスイッチアクチュエータ415は、ロックb入力にこのロック信号(ロック)の立下りが検出されてこのロック信号(ロック)が入力されると、左側部ドアロックスイッチ410をロック側へ移そうとして、左側部ドアロックスイッチ410に対して駆動力を行使する。このとき左側部ドアロックスイッチ410が既にロック状態であれば、この行使された駆動力は左側部ドアロックスイッチ410の状態に変化を与えない。
【0074】
例えば、左側部ドアロックスイッチ410と集中ドアロックスイッチ416はともにロック状態で、ドアロック制御スイッチ421が制御信号(制御)の出力される「入」の状態でかつ第一ゲート412から注意喚起信号が出力されている注意喚起状態である場合に、ロック状態である左側部ドアロックスイッチ410が搭乗者によってロック解除の状態に操作されると、左側部ドアロックスイッチ410から解除信号(解除)が出力され、そして第三ゲート414から解除信号(解除)が出力され、さらに第二ゲート413から警告信号(警告↓)が出力される。警告信号(警告↓)は遅延部420を介して左側部ドアロックスイッチアクチュエータ415のロックb入力と集中ドアロックスイッチアクチュエータ417のロック入力に入力され、左側部ドアロックスイッチアクチュエータ415の駆動力が行使され、左側部ドアロックスイッチ410はロック状態へ戻される。
【0075】
例えば、左側部ドアロックスイッチ410と集中ドアロックスイッチ416はともにロック状態で、ドアロック制御スイッチ421が制御信号(制御)の出力される「入」の状態でかつ第一ゲート412から注意喚起信号が出力されている注意喚起状態である場合に、ロック状態である集中ドアロックスイッチ416が運転者によってロック解除の状態に操作されると、集中ドアロックスイッチ416から解除信号(解除)が出力され、そして第三ゲート414から解除信号(解除)が出力され、さらに第二ゲート413から警告信号(警告↓)が出力される。警告信号(警告↓)は遅延部420を介して左側部ドアロックスイッチアクチュエータ415のロックb入力と集中ドアロックスイッチアクチュエータ417のロック入力に入力され、集中ドアロックスイッチアクチュエータ417の駆動力が行使され、集中ドアロックスイッチ416はロック状態へ戻される。
【0076】
ここで、このように注意喚起状態のときに搭乗者によりロック解除側へ操作された左側部ドアロックスイッチ410や集中ドアロックスイッチ416をロック側へ戻す制御をドアロック制御と呼ぶ。このドアロック制御を行うか行わないかをドアロック制御スイッチ421により選択する。なお、緊急の事態が生じて搭乗者が自動車から脱出したい場合など、前述のドアロック制御を終了させたいときは、ドアロック制御スイッチ421を「切」側に操作して、制御信号(制御)が出力されないようにすればよい。また、ドアロック制御スイッチ421を左側部ドア110等にも設けると、緊急時の搭乗者の脱出時にはより効力を発揮することが期待される。
【0077】
遅延部420で警告信号(警告↓)を遅延させる時間は、搭乗者が左側部ドアロックスイッチ410をロック解除の状態に操作してから、または運転者が集中ドアロックスイッチ416をロック解除の状態に操作してから、その操作した指の力が抜かれるまでの時間を参考にして定めればよい。操作した指がまだ左側部ドアロックスイッチ410または集中ドアロックスイッチ416を押している状態のときに、その左側部ドアロックスイッチ410または集中ドアロックスイッチ416をもとに戻そうとする力が働くと、搭乗者や運転者が不快感を持つ可能性があるからである。
【0078】
第三の実施の形態ではこのようにして、到達予想時間が予め定められた所定の値以下場合に、自動車の物体側の側部ドアのドアロックスイッチがロック解除側へ操作されると、操作されたドアロックスイッチをロック側へ戻すドアロック制御を行う。
また、到達予想時間が予め定められた所定の値以下の場合に、自動車の運転席の近傍に設けられた集中ドアロックスイッチがロック解除側へ操作されると、操作された集中ドアロックスイッチをロック側へ戻すドアロック制御を行う。
また、自動車の物体側の側部ドアのドアロックスイッチがロック解除側にある場合に到達予想時間が予め定められた所定の値以下になると、ロック解除側にあるこのドアロックスイッチをロック側へ移すドアロック制御を行う。
【0079】
このように第三の実施の形態においては、注意喚起や警告を行ったり、操作されたドアロックスイッチをロック側へ戻す制御を行ったりして自動車101の搭乗者に危険を知らせるための作業を行っている。この作業を行う部分を本発明の自動車の安全装置では危険回避作業部と呼んでいる。第三の実施の形態においては、危険回避作業部は第一ゲート412、停車検出器407、左側部ドア開閉検出器408、左注意喚起部409、左側部ドアロックスイッチ410、左側部ドアロックスイッチアクチュエータ415、第二ゲート413、第三ゲート414、警告部411、遅延部420、集中ドアロックスイッチ416、集中ドアロックスイッチアクチュエータ417、ドアロック制御スイッチ421を有している。
【0080】
図5は本発明の自動車の安全装置の第四の実施の形態の構成を示すブロック図である。第四の実施の形態は、CPU(Central Processing Unit)をその内部に有する制御部528と、制御部528と情報や信号をやり取りし、または制御部528によって制御される他の各部とにより本発明の自動車の安全装置を構成するものである。
第四の実施の形態は、4ドアセダン車のように左右の両側にそれぞれ前部ドア、後部ドアがある自動車で、右ハンドル車であるものに、本発明の自動車の安全装置を搭載した場合の形態である。
また、図5において、細い矢印は情報や信号の流れを示し、中抜きの矢印はアクチュエータがドアロックスイッチに及ぼす駆動力を示す。
【0081】
左物体センサ501(図1においては105)は自動車101の左側後方から接近する物体、例えば通行人102を検出し、検出した物体の情報を左物体到達予想時間出力部504へ送るものである。左物体センサ501は自動車101の左ドアミラー104など、自動車101の左側後方にある物体を検出できる場所に設置される。左物体到達予想時間出力部504は、左物体センサ501が検出した物体の情報に基づいて、その物体が自動車101に到達するまでの予想時間を出力し、出力した予想時間情報を制御部530に送るものである。
【0082】
右物体センサ522(図1においては107)は自動車101の右側後方から接近する物体、例えば二輪車103を検出し、検出した物体の情報を右物体到達予想時間出力部523へ送るものである。右物体センサ522は自動車101の右ドアミラー106など、自動車101の右側後方にある物体を検出できる場所に設置される。右物体到達予想時間出力部523は、右物体センサ522が検出した物体の情報に基づいて、その物体が自動車101に到達するまでの予想時間を出力し、出力した予想時間情報を制御部530に送るものである。
【0083】
なお、左物体到達予想時間出力部504、右物体到達予想時間出力部523はともに、第一の実施の形態や第二の実施の形態における物体到達予想時間出力部204、304の構成、機能と相対距離把握部202、302の構成、機能と相対速度把握部203,303の構成、機能とを併せ持つものである。
【0084】
左側部ドア開閉検出器508は左側前部ドア110と左側後部ドア112の開閉状態を検出するもので、既存のドア開閉検出器を利用すればよい。左注意喚起部509は自動車101の搭乗者の注意を喚起するもので、発光ダイオードや豆電球などの表示灯や文字表示できるモニタなどを利用すればよい。
【0085】
左側前部ドアロックスイッチ510は搭乗者が左側前部ドア110をロック状態としたり、それを解除したりするために操作するスイッチである。既存のドアロックスイッチでアクチュエータによる「ロック」「ロック解除」の切り替えが可能であり、ロック状態であるのか、ロック解除状態であるのかを示す信号を出力するタイプのものを利用すればよい。
左側前部ドアロックスイッチアクチュエータ515は左側前部ドアロックスイッチ510をロック状態としたりロック解除状態としたりするアクチュエータであり、例えば既存の電磁式のものが利用できる。
【0086】
左側後部ドアロックスイッチ524は搭乗者が左側後部ドア112をロック状態としたり、それを解除したりするために操作するスイッチであり、既存のドアロックスイッチでアクチュエータによる「ロック」「ロック解除」の切り替えが可能であり、ロック状態であるのか、ロック解除状態であるのかを示す信号を出力するタイプのものを利用すればよい。
左側後部ドアロックスイッチアクチュエータ525は左側後部ドアロックスイッチ524をロック状態としたりロック解除状態としたりするアクチュエータであり、例えば既存の電磁式のものが利用できる。
【0087】
右側部ドア開閉検出器527は右側前部ドア、つまり運転席ドア111と右側後部ドア113の開閉状態を検出するもので、既存のドア開閉検出器を利用すればよい。右注意喚起部526は自動車101の搭乗者の注意を喚起するもので、発光ダイオードや豆電球などの表示灯や文字表示できるモニタなどを利用すればよい。
【0088】
右側後部ドアロックスイッチ528は搭乗者が右側後部ドア113をロック状態としたり、それを解除したりするために操作するスイッチであり、既存のドアロックスイッチでアクチュエータによる「ロック」「ロック解除」の切り替えが可能であり、ロック状態であるのか、ロック解除状態であるのかを示す信号を出力するタイプのものを利用すればよい。
右側後部ドアロックスイッチアクチュエータ529は右側後部ドアロックスイッチ528をロック状態としたりロック解除状態としたりするアクチュエータであり、例えば既存の電磁式のものが利用できる。
【0089】
集中ドアロックスイッチ516は運転席の近傍に設けられており、運転者が自動車101の運転席ドア111をロック状態としたり、それを解除したりするために操作するとともに、左側前部ドアロックスイッチアクチュエータ515を介して左側前部ドアロックスイッチ510を、左側後部ドアロックスイッチアクチュエータ525を介して左側後部ドアロックスイッチ524を、右側後部ドアロックスイッチアクチュエータ529を介して右側後部ドアロックスイッチ528を一括してロック状態としたり、ロック解除状態としたりするために操作するスイッチである。集中ドアロックスイッチ516は、第四の実施の形態においては、集中ドアロックスイッチ専用のタイプではなく、右側前部ドアロックスイッチを兼ねるタイプのものである。集中ドアロックスイッチ516は、既存のドアロックスイッチでアクチュエータによる「ロック」「ロック解除」の切り替えが可能であり、ロック状態なのか、ロック解除状態なのかを示す信号を出力するタイプのものを利用すればよい。
【0090】
集中ドアロックスイッチアクチュエータ517は集中ドアロックスイッチ516をロック状態とするアクチュエータであり、例えば既存の電磁式のものが利用できる。
ドアロック制御スイッチ521は後述するドアロック制御をするかしないかを選択するためのスイッチであり、運転席の近傍に設けられている。
【0091】
停車検出器507は自動車101が停車中であることを検出するもので、既存の速度計で速度がゼロ、つまり停車中であるのか、速度がゼロでない、つまり走行中であるのかを示す停車信号を出力するタイプのものを利用すればよい。
警告部511は搭乗者が事故につながるような動作を行った場合に警告を発するもので、ブザーやチャイム、スピーカーなどを利用すればよい。
【0092】
図6、図7、図8は、第四の実施の形態における制御部530で行われる処理の流れを示すフローチャートである。制御部530で行われる処理はおおまかに注意喚起モードとドアロック制御モードの二つのモードに分けられる。図6に示す注意喚起モードから図7、図8に示すドアロック制御モードに移り、ドアロック制御モードが終了すれば注意喚起モードに戻るという流れである。
【0093】
図6において、処理が開始されると、処理601の「自動車は停車中か」では、停車検出器507が出力する停車信号を確認し、停車中であれば処理602へ進む。停車中でなければ処理610へ進む。
処理610「左側部ドア注意喚起解除、右側部ドア注意喚起解除」では、左注意喚起部509に既に注意喚起表示が出されていたならばそれを止め、右注意喚起部526に既に注意喚起表示が出されていたならばそれを止める。出されていなければそのまま出さない状態を継続する。そして、処理601へ戻る。
【0094】
処理602の「左側部ドアが閉じられているか」では、左側部ドア開閉検出器508が出力する左側前部ドア110と左側後部ドア112の開閉信号を確認し、左側前部ドア110と左側後部ドア112がともに閉じられていれば処理603へ進む。どちらか一方のドアでも開けられていれば処理604へ進む。
処理603の「左物体の自動車への到達予想時間TLが所定の値TS以下か」では、左物体センサ501が検出した物体の情報に基づいて左物体到達予想時間出力部504が出力した、通行人102等の左物体が自動車101に到達するのに必要と予想される時間TLと、制御部530内の図示しないメモリ等に記憶されている所定の値TSとを比較し、TLがTS以下であれば、処理605へ進む。TLがTS以下でなければ処理604へ進む。
【0095】
処理604の「左側部ドア注意喚起解除」では、左注意喚起部509に既に注意喚起表示が出されていたならばそれを止め、出されていなければそのまま出さない状態を継続する。そして、処理606へ進む。
処理605の「左側部ドア注意喚起」では、左注意喚起部509に既に注意喚起表示が出されていたならばそれを継続し、出されていなければ注意喚起表示を出す。そして、処理606へ進む。
【0096】
処理606の「右側部ドアが閉じられているか」では、右側部ドア開閉検出器527が出力する右側前部ドア111と右側後部ドア113の開閉信号を確認し、右側前部ドア111と右側後部ドア113がともに閉じられていれば処理607へ進む。どちらか一方のドアでも開けられていれば処理608へ進む。
処理607の「右物体の自動車への到達予想時間TRが所定の値TS以下か」では、右物体センサ522が検出した物体の情報に基づいて右物体到達予想時間出力部523が出力した、二輪車103等の右物体が自動車101に到達するのに必要と予想される時間TRと、制御部530内の図示しないメモリ等に記憶されている所定の値TSとを比較し、TRがTS以下であれば、処理609へ進む。TRがTS以下でなければ処理608へ進む。
【0097】
処理608の「右側部ドア注意喚起解除」では、右注意喚起部526に既に注意喚起表示が出されていたならばそれを止め、出されていなければそのまま出さない状態を継続する。そして、処理611へ進む。
処理609の「右側部ドア注意喚起」では、右注意喚起部526に既に注意喚起表示が出されていたならばそれを継続し、出されていなければ注意喚起表示を出す。そして、処理611へ進む。
【0098】
処理611の「左側部ドア、右側部ドアがすべて閉じられているか」では、左側部ドア開閉検出器508が出力する左側前部ドア110と左側後部ドア112の開閉信号と、右側部ドア開閉検出器527が出力する右側前部ドア111と右側後部ドア113の開閉信号を確認し、すべての側部ドアが閉じられていれば処理612へ進む。一つの側部ドアでも開けられていれば処理601へ戻る。
【0099】
処理612の「全ドアのドアロックスイッチがロック側にあるか」では、左側前部ドアロックスイッチ510と左側後部ドアロックスイッチ524と集中ドアロックスイッチ517と右側後部ドアロックスイッチ528のすべてがロック側にあるかどうかを確認し、すべてがロック側にあれば、つまりすべてのロックスイッチが「入」であれば処理613へ進む。どれか一つのロックスイッチでもロック側になければ処理601へ戻る。
【0100】
処理613の「ドアロック制御スイッチが「入」か」では、ドアロック制御スイッチ521が「入」かどうかを確認し、「入」であれば処理614へ進む。「入」でなければ処理601へ戻る。
処理614の「ドアロック制御開始のアナウンス」では、図示しないスピーカー等を介して、ドアロック制御が開始されることを搭乗者に知らせる音声を流す。視覚を通じて搭乗者に知らせる構成としてもよい。そして図7に示すドアロック制御モードの処理へ移る。
【0101】
図6の注意喚起モードの処理では、図7に示すドアロック制御モードの処理へ移るために処理611と処理612と処理613の結果がすべて「Y」でなければならない。つまり、第四の実施の形態では、ドアロック制御を開始するための条件は、側部ドアがすべて閉じられていること、すべての側部ドアのドアロックスイッチがロック側にあること、ドアロック制御スイッチが「入」であることの三つとしている。しかしながら、本発明の自動車の安全装置は、ドアロック制御を開始するための条件がこれらの条件に限定されるものではない。すべての側部ドアのドアロックスイッチがロック側にあることという条件をはずしてもよい。また、ドアロック制御スイッチが「入」であることという条件をはずす、つまりドアロック制御スイッチを設けない構成としてもよい。
【0102】
図7は左側部ドアのドアロックを制御するためのドアロック制御モードの処理の流れを示すフローチャートである。
図7において、処理が開始されると、処理701の「左物体の自動車への到達予想時間TLが所定の値TS以下か」では、左物体センサ501が検出した物体の情報に基づいて左物体到達予想時間出力部504が出力した、通行人102等の左物体が自動車101に到達するのに必要と予想される時間TLと、制御部530内の図示しないメモリ等に記憶されている所定の値TSとを比較し、TLがTS以下であれば、処理704へ進む。TLがTS以下でなければ処理702へ進む。
【0103】
処理702の「左側部ドア注意喚起解除」では、左注意喚起部509に既に注意喚起表示が出されていたならばそれを止め、出されていなければそのまま出さない状態を継続する。そして、処理703へ進む。
処理703の「左側部ドアが開状態か」では、左側部ドア開閉検出器508が出力する左側前部ドア110と左側後部ドア112の開閉信号を確認し、左側前部ドア110と左側後部ドア112がともに閉じられていれば処理711へ進む。どちらか一方のドアでも開けられていれば処理713へ進む。
【0104】
処理704の「左側部ドア注意喚起」では、左注意喚起部509に既に注意喚起表示が出されていたならばそれを継続し、出されていなければ注意喚起表示を出す。そして、処理705へ進む。
処理705の「左側部ドアのドアロックスイッチがロック側にあるか」では、左側前部ドアロックスイッチ510と左側後部ドアロックスイッチ524がロック側にあるかどうかを確認し、両方ともロック側にあれば、つまり両方とも「入」であれば処理711へ進む。どちらか一つのロックスイッチでもロック側になければ処理706へ進む。
【0105】
処理706の「左警告」では、警告部511からチャイム音を流したり、ブザー音を流したり、「危険です。左側後方から何か接近中です。」というような音声を流したりして、搭乗者に警告を発する。そして、処理707へ進む。
処理707の「左側部ドアのドアロックスイッチをロック側へ移す」では、左側前部ドアロックスイッチアクチュエータ515により左側前部ドアロックスイッチ510を駆動して、左側前部ドアロックスイッチ510をロック側へ移す。同様に左側後部ドアロックスイッチアクチュエータ525により左側後部ドアロックスイッチ524を駆動して、左側後部ドアロックスイッチ524をロック側へ移す。ここで、左側前部ドアロックスイッチ510と左側後部ドアロックスイッチ524のうち、駆動される前からロック側にあったものは駆動された後もロック側にあることは言うまでもない。そして、処理は処理711へ進む。
【0106】
処理711の「ドアロック制御スイッチが「入」か」では、ドアロック制御スイッチ521が「入」かどうかを確認し、「入」であれば処理712へ進む。「入」でなければ処理713へ進む。処理711では、運転者等がドアロック制御スイッチ521を「切」にすることによりドアロック制御を終了させようとしていないかを確認している。
処理712の「自動車は停車中か」では、停車検出器507が出力する停車信号を確認し、停車中であれば図8に示す右側部ドアのドアロックを制御するためのドアロック制御モードの処理へ移る。停車中でなければ処理713へ進む。
処理713の「ドアロック制御終了のアナウンス」では、図示しないスピーカー等を介して、ドアロック制御が終了することを搭乗者に知らせる音声を流す。視覚を通じて搭乗者に知らせる構成としてもよい。そして図6に示す注意喚起モードの処理へ戻る。
【0107】
図8は右側部ドアのドアロックを制御するためのドアロック制御モードの処理の流れを示すフローチャートである。
図8において、処理が開始されると、処理801の「右物体の自動車への到達予想時間TRが所定の値TS以下か」では、右物体センサ522が検出した物体の情報に基づいて右物体到達予想時間出力部523が出力した、二輪車103等の右物体が自動車101に到達するのに必要と予想される時間TRと、制御部530内の図示しないメモリ等に記憶されている所定の値TSとを比較し、TRがTS以下であれば、処理804へ進む。TRがTS以下でなければ処理802へ進む。
【0108】
処理802の「右側部ドア注意喚起解除」では、右注意喚起部526に既に注意喚起表示が出されていたならばそれを止め、出されていなければそのまま出さない状態を継続する。そして、処理803へ進む。
処理803の「右側部ドアが開状態か」では、右側部ドア開閉検出器527が出力する右側前部ドア111と右側後部ドア113の開閉信号を確認し、右側前部ドア111と右側後部ドア113がともに閉じられていれば処理811へ進む。どちらか一方のドアでも開けられていれば処理813へ進む。
【0109】
処理804の「右側部ドア注意喚起」では、右注意喚起部526に既に注意喚起表示が出されていたならばそれを継続し、出されていなければ注意喚起表示を出す。そして、処理805へ進む。
処理805の「右側後部ドアのドアロックスイッチがロック側にあるか」では、右側後部ドアロックスイッチ528がロック側にあるかどうかを確認し、ロック側にあれば、つまり「入」であれば処理808へ進む。ロック側になければ処理806へ進む。
【0110】
処理806の「右警告」では、警告部511からチャイム音を流したり、ブザー音を流したり、「危険です。右側後方から何か接近中です。」というような音声を流したりして、搭乗者に警告を発する。そして、処理807へ進む。
処理807の「右側後部ドアのドアロックスイッチをロック側へ移す」では、右側後部ドアロックスイッチアクチュエータ529により右側後部ドアロックスイッチ528を駆動して、右側後部ドアロックスイッチ528をロック側へ移す。そして、処理808へ進む。
【0111】
処理808の「運転席近傍にある集中ドアロックスイッチがロック側にあるか」では、集中ドアロックスイッチ516がロック側にあるかどうかを確認し、ロック側にあれば、つまり「入」であれば処理811へ進む。ロック側になければ処理809へ進む。
処理809の「右警告」では、警告部511からチャイム音を流したり、ブザー音を流したり、「危険です。右側後方から何か接近中です。」というような音声を流したりして、運転者等に警告を発する。そして、処理810へ進む。
処理810の「集中ドアロックスイッチをロック側へ移す」では、集中ドアロックスイッチアクチュエータ517により集中ドアロックスイッチ516を駆動して、集中ドアロックスイッチ516をロック側へ移す。このとき、他のドアロックスイッチのうちロック側にないものは、そのドアロックスイッチアクチュエータの駆動力によりロック側へ移す。そして、処理は処理811へ進む。
【0112】
処理811の「ドアロック制御スイッチが「入」か」では、ドアロック制御スイッチ521が「入」かどうかを確認し、「入」であれば処理812へ進む。「入」でなければ処理813へ進む。処理811では、運転者等がドアロック制御スイッチ521を「切」にすることによりドアロック制御を終了しようとしていないかを確認している。
処理812の「自動車は停車中か」では、停車検出器507が出力する停車信号を確認し、停車中であれば図7に示す左側部ドアのドアロックを制御するためのドアロック制御モードの処理へ戻る。停車中でなければ処理813へ進む。
処理813の「ドアロック制御終了のアナウンス」では、図示しないスピーカー等を介して、ドアロック制御が終了することを搭乗者に知らせる音声を流す。視覚を通じて搭乗者に知らせる構成としてもよい。そして図6に示す注意喚起モードの処理へ戻る。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の自動車の安全装置は乗用車やトラックなど、側部ドアが外に向けて開けられる自動車に搭載されるものである。注意力が弱い高齢者や子供が乗ることの多い乗用車や、客の安全に責務を負うタクシーなどに搭載される可能性がある。また、歩道のない道路が多く、その道路が通行人や自転車、オートバイ、乗用車などで混雑しているような地域を走行する自動車に搭載される可能性がある。
【符号の説明】
【0114】
101 自動車
102 通行人
103 二輪車
104 左ドアミラー
105 左物体センサ
106 右ドアミラー
107 右物体センサ
108 進行方向を示す矢印
109 検出領域を示す破線
110 左側前部ドア
111 右側前部ドア
112 左側後部ドア
113 右側後部ドア
201 物体センサ
202 相対距離把握部
203 相対速度把握部
204 物体到達予想時間出力部
205 所定時間記憶部
206 比較部
207 停車検出器
208 側部ドア開閉検出器
209 注意喚起部
210 ドアロックスイッチ
211 警告部
212 第一ゲート
213 第二ゲート
301 物体センサ
302 相対距離把握部
303 相対速度把握部
304 物体到達予想時間出力部
305 所定時間記憶部
306 比較部
307 停車検出器
308 側部前部ドア開閉検出器
309 側部前部ドア注意喚起部
310 側部前部ドアロックスイッチ
311 警告部
312 第一ゲート
313 第二ゲート
314 側部後部ドア開閉検出器
315 側部後部ドア注意喚起部
316 側部後部ドアロックスイッチ
400 自動車の安全装置の本体
401 左物体センサ
402 左相対距離把握部
403 左相対速度把握部
404 左物体到達予想時間出力部
405 所定時間記憶部
406 比較部
407 停車検出器
408 左側部ドア開閉検出器
409 左注意喚起部
410 左側部ドアロックスイッチ
411 警告部
412 第一ゲート
413 第二ゲート
414 第三ゲート
415 左側部ドアロックスイッチアクチュエータ
416 集中ドアロックスイッチ
417 集中ドアロックスイッチアクチュエータ
420 遅延部
501 左物体センサ
504 左物体到達予想時間出力部
507 停車検出器
508 左側部ドア開閉検出器
509 左注意喚起部
510 左側前部ドアロックスイッチ
511 警告部
515 左側前部ドアロックスイッチアクチュエータ
516 集中ドアロックスイッチ
517 集中ドアロックスイッチアクチュエータ
521 ドアロック制御スイッチ
522 右物体センサ
523 右物体到達予想時間出力部
524 左側後部ドアロックスイッチ
525 左側後部ドアロックスイッチアクチュエータ
526 右注意喚起部
527 右側部ドア開閉検出器
528 右側部ドアロックスイッチ
529 右側部ドアロックスイッチアクチュエータ
530 制御部
601,712,812 処理「自動車は停車中か」
602 処理「左側部ドアが閉じられているか」
603,701 処理「左物体の自動車への到達予想時間TLが所定の値TS以下か」
604,702 処理「左側部ドア注意喚起解除」
605,704 処理「左側部ドア注意喚起」
606 処理「右側部ドアが閉じられているか」
607,801 処理「右物体の自動車への到達予想時間TRが所定の値TS以下か」
608,802 処理「右側部ドア注意喚起解除」
609,804 処理「右側部ドア注意喚起」
610 処理「左側部ドア注意喚起解除、右側部ドア注意喚起解除」
611 処理「左側部ドア、右側部ドアがすべて閉じられているか」
612 処理「全ドアのロックスイッチがロック側にあるか」
613,711,811 処理「ドアロック制御スイッチが「入」か」
614 処理「ドアロック制御開始のアナウンス」
703 処理「左側部ドアが開状態か」
705 処理「左側部ドアのドアロックスイッチがロック側にあるか」
706 処理「左警告」
707 処理「左側部ドアのドアロックスイッチをロック側へ移す」
713,813 処理「ドアロック制御終了のアナウンス」
803 処理「右側部ドアが開状態か」
805 処理「右側後部ドアのドアロックスイッチがロック側にあるか」
806,809 処理「右警告」
807 処理「右側後部ドアのドアロックスイッチをロック側へ移す」
808 処理「運転席近傍にある集中ドアロックスイッチがロック側にあるか」
810 処理「集中ドアロックスイッチをロック側へ移す」

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の側後方に位置する物体を検出するセンサと、
前記自動車が停車中であることを検出する停車検出器と、
前記自動車の側部ドアの開閉状態を検出する側部ドア開閉検出器と、
前記側部ドアをロック状態またはロック解除状態とするためのドアロックスイッチとを有し、
前記停車検出器により前記自動車が停車中であることが検出され、前記側部ドア開閉検出器により前記側部ドアが閉状態であることが検出され、前記センサにより検出された前記物体の情報に基づいて予想された、前記物体が前記自動車に到達するまでの到達予想時間が予め定められた所定の値以下の場合に、前記自動車の搭乗者に対して音または表示により注意喚起を行う注意喚起モードと、
前記注意喚起モード中に、前記自動車のすべての側部ドアが閉じられており、前記自動車のすべての側部ドアそれぞれのドアロックスイッチがロック側にある場合に移行するモードであって、
前記センサにより検出された前記物体の情報に基づいて予想された、前記物体が前記自動車に到達するまでの到達予想時間が予め定められた所定の値以下の場合に、前記物体側の側部ドアのドアロックスイッチがロック解除側へ操作されると操作された前記ドアロックスイッチをロック側へ戻す制御を行うドアロック制御モードと
を有することを特徴とする自動車の安全装置。
【請求項2】
自車の側後方に位置する物体を検出するセンサと、
前記自車が停車中であることを検出する停車検出器と、
前記自車の側部ドアの開閉状態を検出する側部ドア開閉検出器と、
前記側部ドアをロック状態またはロック解除状態とするためのドアロックスイッチとを有し、
前記停車検出器により前記自車が停車中であることが検出され、前記側部ドア開閉検出器により前記側部ドアが閉状態であることが検出され、前記センサにより検出された前記物体の情報に基づいて予想された、前記物体が前記自車に到達するまでの到達予想時間が予め定められた所定の値以下の場合に、前記自車の搭乗者に対して音または表示により注意喚起を行う注意喚起モードと、
前記注意喚起モード中に、前記自車のすべての側部ドアが閉じられており、前記自車のすべての側部ドアそれぞれのドアロックスイッチがロック側にある場合に移行するモードであって、
前記センサにより検出された前記物体の情報に基づいて予想された、前記物体が前記自車に到達するまでの到達予想時間が予め定められた所定の値以下の場合に、前記物体側の側部ドアのドアロックスイッチがロック解除側へ操作されると操作された前記ドアロックスイッチをロック側へ戻す制御を行うドアロック制御モードと
を有することを特徴とする自動車。
【請求項3】
前記ドアロック制御モードに移行する際に、ドアロック制御を開始することを知らせるアナウンスを行う
ことを特徴とする請求項2に記載の自動車。
【請求項4】
前記ドアロック制御モード中に、前記自車のいずれかの側部ドアが開けられたときに前記ドアロック制御モードから前記注意喚起モードに移行する
ことを特徴とする請求項2に記載の自動車。
【請求項5】
前記注意喚起モードに移行する際に、ドアロック制御を終了することを知らせるアナウンスを行う
ことを特徴とする請求項4に記載の自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−154022(P2011−154022A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−3632(P2011−3632)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【分割の表示】特願2010−173232(P2010−173232)の分割
【原出願日】平成22年7月31日(2010.7.31)
【出願人】(391050466)
【Fターム(参考)】