説明

自動車用ブレーキ装置

ブレーキ回路(1、2)からなる第1および第2のグループを備えた自動車用ブレーキ装置であって、各ブレーキ回路が車輪(3、4、5、6)からなる1つのグループに付属され、少なくともブレーキ回路からなる第1のグループが油圧ブレーキ回路として形成され、車輪(5、6)からなる少なくとも1つのグループが少なくとも1つの作用装置(20)と結合され、作用装置(20)は、車輪(5、6)を減速させることが可能である、自動車用ブレーキ装置において、回生ブレーキ過程を通常のブレーキ過程と快適に結合させることの課題は、本発明により、制御装置(22)が、第2のグループの1つまたは複数のブレーキ回路(2)のブレーキ作用並びに場合により1つ/複数の作用装置の減速作用を制御し、この場合、ブレーキ回路からなる第1のグループが、ブレーキ操作装置を介して、直接ドライバにより操作可能であることによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ブレーキ装置の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用ブレーキ装置に対する要求は常に増大している。この場合、今日、ブレーキの性能および確実性に対する要求が設定されるのみならず、例えば動的走行支援において実行されるべきブレーキ・モードおよびブレーキのその他の機能がますます複合されてきている。
【0003】
基本的に最新の車両は多回路ブレーキ装置を備え、多回路ブレーキ装置は、一方で、冗長性の意味で複数のブレーキ回路またはブレーキ回路からなるグループを有し、他方で、ブレーキ回路への有効なブレーキ力分配を行うために、ブレーキ回路を個別に制御することを可能にする。
【0004】
個々のブレーキ回路内において、ブレーキ制御は、個々の車輪に、車輪への種々のブレーキ力分配をも実行可能にする。この場合、車両の車輪における通常のブレーキは、例えばディスク・ブレーキまたはドラム・ブレーキであり、これらはいずれにしても基本的に摩擦に基づいて作動するブレーキである。しかしながら、さらに、車輪を減速させるために、典型的にはそれ自身で内燃機関における対応設定により制御可能なエンジン・ブレーキまたは発電機のような他の装置もまた使用可能である。自動車において、対応する発電機として、始動バッテリを充電するために、および自動車の電気系統に電気を供給するために使用される、通常存在する点灯用発電機の形の小さな発電機が使用されてもよく、またはハイブリッド車において、発電運転が可能であり且つこのとき例えば駆動バッテリを充電するために使用可能な駆動モータが使用されてもよい。電気によりまたは内燃機関により選択的に運転可能な対応する車両はハイブリッド車と呼ばれる。制動過程において発電機によりエネルギーを回収し且つこれにより車両を制動する過程は回生制動と呼ばれる。
【0005】
基本的に、個々のブレーキ回路またはブレーキ並びに使用される制動手段の適切な操作ないしは制御により車両における走行安全性およびブレーキ作用を最適化することが既知である。
【0006】
即ち、ドイツ特許公開第4128087号から、カーブ制動において後車軸の不足制動が阻止される車両用ブレーキ圧力制御装置が既知である。この場合、前車軸におけるブレーキ圧力はドライバにより予め与えられ、後車軸におけるブレーキ圧力はこれの関数として制御される。
【0007】
基本的に、摩擦の利用を考慮してできるだけ強い車両の制動が達成されるようにブレーキ力を分配することもまた既知であり、この場合、静的および/または動的により強く力が加えられた車輪に、それに対応してより強い制動力を与えることが可能である。
【0008】
欧州特許第0173954号から、個々のブレーキに対するブレーキ圧力が、車両に対する基準質量およびドライバにより設定された目標減速度により、記憶されている車両固有の特性曲線群内において決定される装置が既知である。決定されたブレーキ圧力がブレーキ内に供給され、車両減速度が目標値から偏差を有している場合、必要に応じて目標減速度に到達するまで後続制御される。
【0009】
ドイツ特許公開第3313078号から、個々の車輪ブレーキの均等摩耗が継続して達成されるように、種々の車輪ブレーキの摩耗が決定され且つこれが考慮されるブレーキ圧力制御装置が既知である。
【0010】
ドイツ特許公開第102005046606号から、車両の車軸の1つにそれぞれ1つのブレーキ回路が付属され、これにより、駆動滑り制御装置並びに走行動特性制御装置が1つのブレーキ回路内のみに設けられていてもよく、このことから構造的全体費用が低減されるブレーキ装置が既知である。
【0011】
最後に、ドイツ特許公開第10316090号から、基本的に油圧的に作用し且つ個々の車輪の摩擦ブレーキに作用する複数のブレーキ回路を備え、並びに発電機、ないしは発電運転が可能であり且つ減速のために追加的に利用可能な駆動電動機を備えたブレーキ装置が既知である。種々の走行動特性変数を考慮して個々の全ての車輪へのブレーキ力分配を最適化するために、制御装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】ドイツ特許公開第4128087号
【特許文献2】欧州特許第0173954号
【特許文献3】ドイツ特許公開第3313078号
【特許文献4】ドイツ特許公開第102005046606号
【特許文献5】ドイツ特許公開第10316090号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来技術を背景として、本発明の課題は、ブレーキ動特性および走行動特性の複合制御過程であってもそれを支援し、できるだけ高い信頼性を有し、且つこの場合、構造的にできるだけ簡単に形成可能な自動車用ブレーキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、本発明により、請求項1の特徴に記載のブレーキ装置、請求項11に記載の油圧装置、請求項13に記載のブレーキ装置の作動方法によって解決される。
【0015】
対応する自動車は、ブレーキ回路からなる第1のグループ、即ち少なくともただ1つだけの第1のブレーキ回路を有し、第1のブレーキ回路は、車輪からなる1つのグループに作用し、それ自身既知のように油圧ブレーキ回路として形成され、および制御装置の作用とは無関係にまたは少なくとも制御装置の共同作用のもとにおいてのみ、ブレーキ操作装置により直接ドライバから操作可能である。これは、例えばドライバがブレーキ・ペダルを操作し、これによりマスタ・ブレーキ・シリンダ内において油圧液を圧縮可能であり、この場合、それに対応して昇圧された油圧液は直接第1のグループのブレーキ回路内に供給され且つそこで対応する車輪ブレーキを操作させる。第1のブレーキ回路内において車輪ブレーキに制御装置が設けられていてもよく、制御装置はアンチロック装置を形成するか、または例えばカーブ走行において、カーブ外側車輪に、より強く動的に力が与えられ、これにより、より強い摩擦作用に基づいてより強く制動可能であるとき、または走行動特性制御において、車両のカーブ運動を動的に支援するために、カーブ内側車輪がかじ取り作用に加えて制動されるとき、個々の車輪間のブレーキ力の最適分配を行う。制御装置は操作装置と協働しても、または操作装置内に統合されていてもよい。
【0016】
それに対応して、ブレーキ・ペダルと、ブレーキ回路からなる第1のグループ内のブレーキ作用との間の結合がきわめて直接的であり、このことは、ドライバによる良好な操縦性および操作性を可能にし且つ制御装置から独立している結果として確実性を向上させる。
【0017】
場合により、第1のグループのブレーキ回路によって制動される車輪が、減速させる作用装置と結合されていてもよい。しかしながら、追加的に、第2のグループのブレーキ回路に付属された車輪が、減速させる作用装置と結合されていても、または第2のグループのブレーキ回路に付属された車輪のみが、減速させる作用装置と結合されていることもまた有利である。
【0018】
ブレーキ回路からなる第2のグループは、例えば全制動におけるような特定の運転状態においてドライバにより直接与えられる操作可能性に追加して、制御装置によっても操作可能であり、制御装置は、さらに、1つまたは複数の追加の作用装置により車輪の減速を制御し、またはこのために、この課題を受け持つ他の制御装置と協働してもよい。これにより、いわゆる重ね合わせ過程、即ち、ブレーキ回路の操作の適合は、追加の作用装置による減速度の変化の結果として、ブレーキ回路の一部に制限される。対応する重ね合わせ過程は、はじめに発電機により制動され且つそれに対応して充電されるべきバッテリが充満しているときに回生制動を遮断することに関するものである。このとき、存在する電流消費機器に切り換えられてもよいが、このことは、発電機の負荷の急激な変化を意味し、これにより、発電機の減速作用は変化する。この変化は、制御装置により、第2のグループのブレーキ回路にそれに対応して調整可能であることが有利である。
【0019】
発電機として利用される駆動モータによる減速作用はさらに走行速度の関数でもあるので、車両を実際に低速度の範囲内に保持するとき、きわめて低減された減速作用のみが達成され、この減速作用は、同様に、第2のグループのブレーキ回路との重ね合わせにより調整可能であることが有利である。
【0020】
牽引力が遮断されたり、および/または駆動系内の回転速度が急激に変化したりする変速機の切換過程もまた発電機として利用される駆動電動機の減速作用を変動させるので、この場合もまた重ね合わせが実行可能であることが有利である。
【0021】
これらの全ての過程において、第2のグループのブレーキ回路が適切に制御されているとき、全体の制動過程への作用が変化可能であることは有利である。ドライバが少なくとも第1のグループのブレーキ回路に直接作用を与えることにより、ブレーキ作用が危険になることはなく、ブレーキ作用の少なくとも一部は重ね合わせによる影響を全く受けないままである。したがって、全体のブレーキ装置の高い機能の確実性および高い利用可能性と結合されて高い走行快適性が得られる。このように形成されたブレーキ装置は、通常の構造の車両に対してのみならず、ハイブリッド車に対しても利用可能である。この場合、制御装置による制御は、最適なブレーキ出力および同時に環境的にも有利な運動エネルギーの回収が達成可能なように設計されていてもよい。これにより、燃料が節約され且つ車両の有害物質エミッションが低減可能である。
【0022】
全体の制動過程を最適化するための制御装置に対する入力変数として、ドライバのブレーキ希望が使用されるべきである。ドライバのブレーキ希望は例えばブレーキ操作装置典型的にはブレーキ・ペダルの操作から導くことが可能であり、しかも、例えばマスタ・ブレーキ・シリンダにおける油圧の測定または第1のグループのブレーキ回路内の油圧の測定により、あるいは第1のグループのブレーキまたはブレーキ・バイ・ワイヤ法におけるブレーキのブレーキ作用の測定により、ブレーキ・ペダル操作の強さが対応するストローク/力センサまたは圧力センサにより、例えば光学的にまたは電気的に測定されることによって、ドライバのブレーキ希望を導くことが可能である。対応する強さはドライバにより希望された全体のブレーキ強さに対応する。これから、第1のグループのブレーキ回路内のブレーキ作用が減算可能である。さらに、対応する作用装置の減速出力が考慮され且つこれから第2のグループのブレーキ回路の必要な操作強度が決定可能である。
【0023】
本発明の有利な一形態は、第2のグループの少なくとも1つのブレーキ回路内において、制御装置により、走行方向に見て車両の異なる側の少なくとも2つの車輪が異なって操作可能であるように設計されている。
【0024】
第2のグループのブレーキ回路への車輪のこのような割当は、走行方向において非対称の制動を可能にし、これにより、全体のブレーキ作用を最適にするために、例えば走行路面に動的により強く圧着された車輪のブレーキ荷重が上昇可能である。
【0025】
しかしながら、代替態様として、カーブ内側車輪の制動によって動的な走行支援が行われてもよい。
【0026】
このために、横方向加速度を測定するためのセンサおよび/またはかじ取り希望を測定するためのセンサおよび/または走行方向を測定するためのセンサが設けられていることが有利である。
【0027】
測定された横方向加速度からカーブ走行における車輪の動的荷重したがって最適なブレーキ力分配が計算可能であり、一方、例えばかじ取り角の形の測定されたかじ取り希望はカーブ内側車輪の制動により最適走行動特性制御の決定を可能にする。走行方向がわかっている場合、走行方向前方に存在する車輪即ち後退走行においては後車輪へのブレーキ力の分配が好ましいことがある。
【0028】
ブレーキ・ペダルを介してブレーキを操作したとき、ブレーキ装置内において、第2のブレーキ回路をマスタ・ブレーキ・シリンダから切り離したために、第2のブレーキ回路が作動しているときにおいてもブレーキ・ペダルへのペダル反力が発生しないので、このような状況においてはドライバの苛立ちが回避される。
【0029】
第2のグループのブレーキ回路がただ1つの車軸のそれぞれの車輪に付属されているとき、本発明によるブレーキ装置は特に簡単且つ有利に形成される。したがって、ただ1つの車軸が適切に制動可能である。
【0030】
第2のグループが、後車軸の車輪に付属されているブレーキ回路によって形成されているとき、それは特に有利である。
【0031】
この場合、ドライバは前車輪のブレーキを直接ブレーキ・ペダルにより操作し、一方、後車軸のブレーキは直接制動から切り離されて、特に場合により存在する作用装置を考慮して制御されている。この場合、例えば前進走行/後退走行において、直接制動される車輪および制御装置により制御されて制動される車輪へのブレーキ作用の比が最適化されることが保証されるべきである。さらに、このようなブレーキ装置は、例えば対応する作用装置が点灯用発電機により形成されているときにおける、通常の構造の車両に対して使用可能であるのみならず、作用装置が発電運転される電動機によって形成されているときにおける、ハイブリッド構造の車両に対しても使用可能である。
【0032】
これは後車輪駆動の場合に対して適用され、前車輪駆動の場合には、第2のグループのブレーキ回路は駆動される前車軸に付属されていてもよい。
【0033】
それぞれの発電機は、このとき、それに対応して、バッテリ即ち始動バッテリまたは車両駆動バッテリと結合され、発電機は回生制動の間にバッテリを充電する。バッテリが充満しているために発電機の負荷が低下することに関する情報が早めに利用可能なように、対応するバッテリの充電状態がモニタリングされることが有利である。この場合、例えば加熱抵抗または車両の照明のような電気消費機器が対応する発電機に結合可能であることが有利である。制御装置は対応する切換過程を行う。
【0034】
重ね合わせ過程がドライバによってほとんど気づかれることなく実行可能なように、バッテリの充電状態を測定するためのセンサのほかに、例えば車両速度を測定するための速度センサおよび/または変速機クラッチの操作を検出するためのクラッチ・センサが設けられていることが有利である。これにより、制御装置の制御過程に関してブレーキ作用をほぼ一定に保持するために、低速度においては低下された発電機出力が、および結合過程においては作用装置の切離しが早めに記録可能である。
【0035】
上記の目的のために、例えば発電機の電力を測定するための出力センサが使用されてもよい。
【0036】
第2のグループのブレーキ回路が油圧ブレーキ回路として形成され、油圧ブレーキ回路は制御要素として差圧制御器または圧力制御器を有するように設計されていてもよいことが有利である。
【0037】
この場合、第2のグループのブレーキ回路のみならず第1のグループのブレーキ回路もまた油圧ブレーキ回路として形成され、これにより、製造においてのみならず作動においてもまた対応する協働効果が得られる。例えば、油圧ブレーキ回路に対して油圧が共通に提供可能であり、または少なくとも個々のブレーキ回路の対応する油圧ポンプが共通に駆動可能である。制御装置は第2のグループのブレーキ回路における制動の強さを差圧制御器または圧力制御器の操作を介して実現可能である。圧力制御器の作動に対して、さらに、第2のグループのブレーキ回路内に、例えば車輪ブレーキ・シリンダの範囲内に、対応する圧力測定装置が設けられている。
【0038】
さらに、またはその代わりに、第2のグループのブレーキ回路が油圧ブレーキ回路として形成され且つブレーキ操作装置と直接油圧結合可能であるように設計されていてもよい。
【0039】
例えば制御装置が故障した場合または最大制動の場合、ブレーキ・ペダル操作により上昇されたマスタ・ブレーキ・シリンダ内のブレーキ圧力は、直接、第1のグループのブレーキ回路内のみならず第2のグループの少なくとも1つの油圧ブレーキ回路内にもまた導くことが可能であり、これにより、制御装置が故障したときにおいてもまた最適制動が可能であり、および/または非常制動の場合においても通常のブレーキ装置においてと同様に全てのブレーキ回路のブレーキ作用が直ちに利用可能である。
【0040】
さらに、第2のグループの油圧ブレーキ回路が、ブレーキ回路の油圧ポンプの吐出側に、ピストン/シリンダ装置の形の油圧追加蓄積器を有するように設計されていてもよいことが有利である。ピストン/シリンダ装置は、吸込作用を発生するばねバイアスを備えていることが有利である。
【0041】
正常な場合にマスタ・ブレーキ・シリンダから切り離されている油圧ブレーキ回路の場合、ブレーキ回路の対応する油圧ポンプはマスタ・ブレーキ・シリンダの領域から油圧液を吸い込むことが可能ではないので、追加蓄積器を設けることが必要であることは明らかである。ここで、一方で油圧液を受け入れることが可能な追加蓄積器は支援を提供するが、他方で対応するブレーキ回路の一次側、即ち圧力側とは結合されていない。むしろ、対応する油圧ポンプの二次側から充填される。
【0042】
ピストン/シリンダ装置が差動ピストンを有し、差動ピストンの、面積が小さいほうの二次側ピストンが、蓄積容量を低減させるためにブレーキ回路の高圧配管と結合されているように設計されていてもよいことが有利である。
【0043】
その二次側がブレーキ回路の高圧側と結合されている差動ピストンにより、断面がより小さいピストンの力作用によって、油圧貯蔵液が加圧され、したがって、油圧ポンプの呼び水が達成可能である。追加蓄積器内のバイアスばねのばね設計はしたがって容易となるので、装置は例えば摩擦が発生したときのような力変化に対して不感となる。基本的に、ブレーキ回路の作動において油圧ポンプの二次側に呼び水圧力が形成されるべきである。
【0044】
差動ピストンのより小さいピストンの断面がより大きいピストンの断面より本質的に小さいことにより、追加蓄積器のバイアスに対する高圧側における必要容量が低減される。
【0045】
本発明は、さらに、第1のグループのブレーキ回路に付属された油圧ポンプが、特にポンプ駆動軸の回転方向によって制御可能なフリーホイール・クラッチにより、共通のポンプ駆動装置から機械的に切離し可能なように形成可能であることが有利である。
【0046】
代替態様または追加態様として、第1のグループのブレーキ回路に付属された油圧ポンプの吸込側が、弁を介して、その吐出側と結合可能であり、且つ特にばね付勢された逆止弁を介して、高圧側においてそれぞれのブレーキ回路と結合されていることもまた考えられることが有利である。
【0047】
特に、異なるグループの異なるブレーキ回路の油圧ポンプが動的に結合されているとき、例えばこれらのポンプが同じモータによりただ1つの軸を介して駆動されることにより、ブレーキ回路が全て作動されないときもまた対応する油圧ポンプが駆動されるという問題が発生する。
【0048】
作動されないポンプ回路内の対応する油圧ポンプの切離しはこの問題を解決する。
【0049】
これは、一方で、ポンプ駆動装置の上記の機械的切離しによって行われてもよい。例えば、ポンプ駆動機関、通常電動機は、全ての油圧ポンプが駆動されるべきときには第1の方向に運転され、油圧ポンプの1つまたは幾つかのみが運転されるべきときには第2の回転方向に運転され、この場合、回転方向を感知するフリーホイールが設けられ、フリーホイールは、運転されない残りの油圧ポンプを第2の回転方向において切り離す。
【0050】
油圧弁を設けることによってもまた、即ち必要ではない油圧ポンプにおいて一次側および二次側が例えば絞りを介して相互に結合されることにより、問題を軽減可能である。さらに、吐出圧力を必要としない油圧ポンプの一次側が、直接またはばね付勢されていてもよい逆止弁を介して、ブレーキ回路と結合されていてもよい。これにより、ブレーキ・ペダルは、操作したときに油圧的にポンプから切り離されている。
【0051】
好ましい一実施形態において、ブレーキ装置は、マスタ・ブレーキ・シリンダ、遮断弁および外部蓄積器を含み、マスタ・ブレーキ・シリンダは、ブレーキ操作装置を操作したときにブレーキ操作装置の操作に対応する圧力信号が提供されるようにブレーキ操作装置に結合され、この場合、付属の車輪に配置された少なくとも1つの車輪ブレーキ・シリンダを備えた第2のグループの少なくとも1つのブレーキ回路は、圧力信号を、マスタ・ブレーキ・シリンダから車輪ブレーキ・シリンダに伝達可能なように、マスタ・ブレーキ・シリンダに結合され、この場合、車輪ブレーキ・シリンダは、圧力信号に対応する力を車輪に与えるように設計され、マスタ・ブレーキ・シリンダと車輪ブレーキ・シリンダとの間に配置された遮断弁は、提供された閉鎖信号を受け取ったときに閉鎖状態に移行し且つ車輪ブレーキ・シリンダへの圧力信号の伝送を阻止するように設計され、および外部蓄積器は、車輪ブレーキ・シリンダ内の昇圧のための容量を、外部蓄積器から車輪ブレーキ・シリンダに提供可能なように、車輪ブレーキ・シリンダに結合されている。外部蓄積器とは、例えば、少なくとも1つの車輪ブレーキ・シリンダからある容量を受け取るように設計されている第1の蓄積器に追加して、第2のグループのブレーキ回路に結合されている第2の蓄積器と理解されるべきである。第2のグループのブレーキ回路が第2の蓄積器を備えていることは、少なくとも1つの車輪ブレーキ・シリンダ内における昇圧のための第2の蓄積器の容量と第1の蓄積器内に充填された少なくとも1つの車輪ブレーキ・シリンダからの容量との間の明らかな分離を可能にする。したがって、より簡単な容量均等化が可能となる。特に、これは、少なくとも1つの車輪ブレーキ・シリンダ内の圧力の標準圧力制御弁を介しての制御を可能にする。
【0052】
この場合、外部蓄積器は差動ピストンとして形成され、且つ一次側において、車輪ブレーキ・シリンダ内の圧力を上昇させるための容量蓄積量を有することが可能である。外部蓄積器は、二次側において、ポンプの吐出側と結合されていてもよい。外部蓄積器およびポンプは、制御装置により、遮断弁がその閉鎖状態にある限り、車輪ブレーキ・シリンダ内の圧力がポンプおよび外部蓄積器を介して調節可能であるように操作可能である。したがって、少なくとも1つの車輪ブレーキ・シリンダ内に作用している圧力は、もはや直接的にブレーキ操作装置の操作の関数ではなく、それに対応して特定の交通状況に関して有利な値に調節可能である。
【0053】
本発明は、ブレーキ装置のみならず、その作動方法およびこのようなブレーキ装置に対する油圧装置にも関するものである。
【0054】
以下に本発明のその他の特徴および利点が図面により説明される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、第1の実施形態における、油圧ポンプ、配管および弁を備えたブレーキ装置の基本構成並びに制御装置を示す。
【図2】図2は、第2の実施形態における本発明によるブレーキ装置を示す。
【図3】図3は、種々のブレーキ回路に対する第1の切離し装置を備えた本発明によるブレーキ装置を示す。
【図4】図4は、種々のブレーキ回路に対する第2の切離し装置を備えた本発明によるブレーキ装置を示す。
【図5】図5は、第3の実施形態における、本発明によるブレーキ装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、二軸自動車の前車輪3、4に付属されている右側の第1のブレーキ回路1並びに自動車の後車輪5、6に付属されている第2のブレーキ回路2を備えたブレーキ装置を示す。ブレーキ回路はそれぞれ一点鎖線により区分されている。しかしながら、この場合、一点鎖線は機能的境界および領域のみを示しているが、対応するユニットは共通の構造ユニット例えば油圧ブロック内に統合されていてもよい。
【0057】
自動車が2つのブレーキ回路のみを有する特定の場合、第1のブレーキ回路は、直接油圧操作可能なブレーキ回路の第1のグループを形成し、一方、第2のブレーキ回路は、例外的にのみ油圧ブレーキ操作装置7と結合されるが、能動的係合および部分制動においては通常油圧ブレーキ操作装置7から油圧的に切り離されている、ブレーキ回路の第2のグループを形成する。
【0058】
油圧ブレーキ操作装置7はブレーキ・ペダル8並びにマスタ・ブレーキ・シリンダ9を有し、マスタ・ブレーキ・シリンダ9内に、場合によりブレーキ力増幅器を使用して、ブレーキ・ペダル8を踏み込んだときにブレーキ装置を操作するための油圧が形成される。
【0059】
はじめに、例として、第1のブレーキ回路1によりこのようなモジュールの基本機能を説明することにする。
【0060】
ブレーキ・ペダル8が操作された場合、高い圧力がマスタ・ブレーキ・シリンダ9内に発生する。高いブレーキ圧力は、それの他の機能がのちに詳細に説明されるいわゆる切換弁10を介して、個々の車輪3、4に付属されている昇圧弁11、12に供給される。
【0061】
基本的に、昇圧弁11、12は高い圧力を車輪3、4のブレーキ・シリンダに供給し、これにより、例えばディスク・ブレーキの形の対応する摩擦ブレーキが操作される。例えばアンチロック装置が応答した場合における個々の車輪の個々のブレーキ解放においては、降圧弁13、14もまた使用可能であるので、車輪ブレーキ・シリンダ内の油圧は、対応するブレーキ回路の高圧部分内の圧力レベルとは無関係に降圧可能であり、且つ油圧液を油圧ポンプ15の吸込側に供給可能である。ここで、油圧液を受け取るために油圧蓄積器16が設けられている。ばね付勢された逆止弁17は、油圧ポンプが油圧液を場合により開放された吸込弁18を介して吸い込み且つ油圧ポンプの吸込側から油圧液が蓄圧器16に流入不可能なように働く。
【0062】
通常、個々の車輪に対して、きわめて強い制動における車輪のロックを阻止するアンチロック装置が設けられている。このために、車輪4、3に例えば図示されていない回転速度センサが設けられ、回転速度センサは、車輪がロックしたとき、制御装置22に信号を出力する。それに続いて、車輪のロックを解放するために、車輪に付属されたブレーキ昇圧弁11、12が閉鎖され、同時に付属のブレーキ降圧弁13、14が開放される。同時に、高い圧力の油圧液をブレーキ回路の一次側にポンピングするために、油圧ポンプ15が駆動される。
【0063】
対応する車輪が回転し続けた場合、再びロックのおそれがあるまでの間、ブレーキ昇圧弁11、12の開放により圧力したがってブレーキ作用を再び上昇可能である。この繰返しプロセスはブレーキ回路の一次側に高い圧力の油圧液を必要とし、この油圧液はブレーキ操作装置により、場合により油圧ポンプ15によっても提供される。油圧蓄積器16は、特に弁13、14を介しての車輪ごとのブレーキ解放において油圧液に対して容量の調節を可能にするように働く。
【0064】
車両の発進時において1つの車輪または複数の車輪において滑りのおそれがあるとき、または走行動特性制御のために、マスタ・ブレーキ・シリンダ内にブレーキ圧力が発生することなく、車輪ブレーキが操作されたときもまた、上記の過程が同様の形で実行可能である。両方の場合において、車輪ブレーキ・シリンダの操作のために必要な圧力は、油圧ポンプ15によって提供可能である。ブレーキ・ペダルの誤った操作とは無関係にブレーキ回路内に圧力を形成可能にするために、この場合、切換弁10を閉鎖することにより、マスタ・ブレーキ・シリンダはブレーキ回路から切り離される。
【0065】
同時にいわゆる吸込弁18が開放され、これにより、油圧液はマスタ・ブレーキ・シリンダの領域から油圧ポンプ15の吸込側に到達可能である。上記の弁の制御は例えば制御装置22により実行可能である。ブレーキ昇圧弁11、12と同様に、ブレーキ降圧弁13、14が制御されてもよい。したがって、それが必要なときには、車輪のロックを阻止するために、きわめて急速に車輪ごとに圧力降下が達成可能である。
【0066】
図1の左側の第2のブレーキ回路2の機能は基本的に第1のブレーキ回路1に類似しているが、特に部分制動において、第2のブレーキ回路2は遮断弁19によりマスタ・ブレーキ・シリンダ9から完全に切離し可能であることが異なっている。遮断弁19は、弁10、10aとは異なり、遮断弁19が閉鎖位置にあるときにブレーキ・ペダルから第2のブレーキ回路への液の供給を可能にするであろう一方向バイパス弁もまた有していない。第2のブレーキ回路の機能方法の説明において、3つの基本的な状態が区別可能である。
【0067】
1.自動車の制動のない走行においては、車輪の5、6の車輪ブレーキが操作されないのみならず、例えば発電運転される駆動電動機の形の作用装置20もまた減速のために利用されない。
【0068】
2.部分制動の場合、回生制動が行われてもよく、即ち、作用装置20により車輪5、6に周知のブレーキ・トルクが作用する。ブレーキ・ペダル8の操作によってドライバにより表わされる減速希望は、センサ21により測定されるか、または他の測定パラメータにより評価され且つ制御装置22に伝送可能である。作用装置20の減速トルクが制御装置22に伝送されるか、または作用装置20の減速トルクが出力センサ23により測定され且つ伝送される。代替態様または追加態様として、作用装置20の負荷状態を特定するために、作用装置によって充電されるバッテリ25の充電状態が充電センサ24により測定され且つ制御装置22に与えられてもよい。
【0069】
ブレーキ希望と、第1のブレーキ回路1により実際に油圧経路において達成された減速作用と、および得られた作用装置20の減速トルクと、を考慮して、制御装置22は、第2のブレーキ回路により達成されるべきブレーキ減速を計算し、およびこれを、主として、例えば差圧制御弁として働く切換弁10aの操作によって設定する。これは切換弁10aの調節により可能である。さらに、ポンプが操作される。ポンプは油圧液を蓄積器26から吸い込み且つ弁11a、12aを介して油圧液を車輪5、6のブレーキに供給する。この制御プロセスにおいては車輪のブレーキ解放が必要な場合、油圧液は弁11a、12a、10aを通過し且つ場合により弁18aを介して蓄積器26内に戻される。車輪ごとの降圧は、第1のブレーキ回路内の弁13、14の機能と同様に、弁13a、14aを介して実行可能である。
【0070】
基本的に、追加蓄積器26は、たいていの場合、第2のグループのブレーキ回路の作動のために必要な油圧液を提供する。追加蓄積器26は、通常のブレーキ解放過程においてもそれぞれ再び充填される。第2のグループのブレーキ回路が一時的に作動していないとき、蓄積器26を充填するために、吸込弁18aが開放されてもよい。
【0071】
ブレーキ過程の終了後、本質的にピストン/シリンダ装置からなる追加蓄積器26は、特にピストン/シリンダ装置がピストンのばねバイアスによってばね付勢されているとき、油圧液を吸い込む。
【0072】
ピストンのばね力にしたがってバイアスは、それが存在するかぎり、ポンプがもはや液を吸い込むことが不可能になるほどに油圧ポンプ15aの吸込側の油圧を低下させないように、適切に選択されるべきである。他方で、追加蓄積器のバイアスは、ブレーキ回路2が作動していない適切な時間に特に吸込弁を開放して追加蓄積器を再び充填するのに十分大きくなければならない。
【0073】
したがって、追加蓄積器からの油圧液による第2のブレーキ回路の操作の可能性ができるかぎり確保される。
【0074】
第2のブレーキ回路2の操作の大きさは、駆動軸27を介して車輪5、6に与えられる作用装置20の追加減速作用によって基本的に低減され、およびそれに対応して作用装置を介してエネルギーが回収され且つ例えばバッテリ25内に蓄積される。
【0075】
作用装置20の減速トルクが変動する場合、即ち、例えば、バッテリ25が充満しているとき、車両が減速しているとき、または駆動系が変速機切換過程により車輪から切り離され、したがって駆動系内の伝動が遮断されたとき、全減速度を一定に保持するために、制御装置22により、それに対応して例えば電気消費機器28の投入により作用装置の減速トルクができるだけ上昇されなければならず、および/または第2のブレーキ回路2の操作が、変化されたブレーキ力が作用装置20の変化された減速トルクを補償するように変化されなければならない。
【0076】
これは、本発明によるブレーキ装置においては、通常のブレーキ装置においてよりも本質的により簡単に可能であり、その理由は、一方で、第1のブレーキ回路の直接操作によりそこで得られたブレーキ作用が一定のままであり且つドライバによって良好に制御可能であり、他方で、両方の独立の部分ブレーキ装置2、20の間の制御装置22によるブレーキ作用の調整が比較的簡単に、衝撃なく且つドライバによってほとんど気づかれずに実行可能であるからである。
【0077】
3.全制動において、部分制動過程においては閉鎖されたままである遮断弁19が開放されたままとすることが可能であり、これにより、マスタ・ブレーキ・シリンダ9内において発生された高いブレーキ圧力が、遮断弁19、切換弁10aおよびブレーキ昇圧弁11a、12aを介して車輪5、6のブレーキ・シリンダに供給可能である。このようにして、ブレーキ・ペダル8における対応ブレーキ感覚により最適な即時ブレーキ作用が発生される。ペダル・ストロークの最小伸長が行われるが、非常制動の場合、これは許容可能である。
【0078】
図1内に、制御装置22の範囲内において、さらに、センサ29(横方向加速度センサ)、センサ30(滑りセンサ)およびセンサ31(回転速度センサ)が示されている。さらに、前進走行と後退走行との間を区別するために制御装置22を支援する走行方向センサが設けられていてもよく、これにより、後退走行においては後車軸のブレーキをより強く作動可能である。
【0079】
さらに、制御装置22は、車輪5、6における回転速度センサ並びに変速機クラッチの操作を指示するセンサと結合されていてもよい。
【0080】
対応する出力32が、制御可能な弁10a、11a、12a並びに場合により制御可能な弁13a、14aと結合されている。基本的に、制御可能な全ての弁は、同調された操作を可能にするために、制御装置と結合されている。
【0081】
図2に、図1に示されたものと同様なブレーキ装置が示されている。同じ部分に同じ符号が付けられている。
【0082】
図を見やすくするために、図2においては、制御装置22の構造および機能は省略されている。しかしながら、これらは図1に示されたものと基本的に同じである。
【0083】
図2に示されているブレーキ装置は、ピストン/シリンダ装置の形の追加蓄積器26の代わりに、拡張された差動ピストン装置33が設けられていることにより、図1に示されているブレーキ装置とは本質的に異なっている。差動ピストン装置33は差動ピストンを有し、差動ピストンはその一次側において大きな断面を有する蓄積容量34が形成され且つ二次側において差動ピストンはより小さい断面を有するより小さいピストン35を形成し、ピストン35はブレーキ回路の高圧側と結合されている。作動において、即ち圧力が加えられた状態において、小さいピストン35に作用した二次側の圧力は蓄圧器を空にさせるように支援し、したがって油圧ポンプ15aの吸込作用を容易にさせる。吸込過程において、即ち通常、ブレーキ回路に圧力がないとき、吸込作用はさらに本質的にバイアスばねによって与えられている。このようにして、ばね設計または場合により発生する不規則な摩擦力とは無関係に、両方向への差動ピストンの移動可能性が保証される。基本的に、断面がより小さいピストンおよびより大きいピストンは別々に形成されていてもよい。したがって、圧力による力は伝達可能であるが、ピストンは相互に独立に運動をし続ける。
【0084】
図3内に、大部分図1内に示されている部分に対応するブレーキ装置が示されている。しかしながら、図3内に快適性を向上させる装置が示され、必要とされないそれぞれの油圧ポンプ15は、それが必要とされなくなったとき、ポンプ駆動モータ36の駆動系から切り離されることによって、装置は快適性を向上させる。これは、駆動モータ36が対応する駆動軸37を基本的に両方の回転方向に駆動可能であること、および第2のブレーキ回路の油圧ポンプ15aが軸37の回転方向とは無関係に油圧を発生可能であること、によって行われる。軸37に、駆動モータ36と油圧ポンプ15との間に機械式フリーホイール装置38が形成され、フリーホイール装置38は、第1のブレーキ回路の油圧ポンプ15は軸37の一方の回転方向においてのみ駆動されるが、反対の回転方向には駆動されないように働く。これにより、例えば部分制動において、第2のグループの(即ちこの例においては後車軸の)ブレーキ回路内の油圧ポンプが圧力を形成するとき、前車軸のブレーキ回路内においては、ポンプ駆動装置による脈動が感じられることが阻止される。
【0085】
図4内に、図3内に示されたブレーキ装置と類似のブレーキ装置が表わされ、この場合、第1のブレーキ回路1の油圧発生を、第2のブレーキ回路2内の油圧発生から切り離すという課題は、油圧ポンプの駆動軸の機械式フリーホイールによって解決されるのではなく、第1のブレーキ回路1の油圧ポンプ15は確かに第2のブレーキ回路2の油圧ポンプ15aと同時に運転されるが、切り離す場合に、油圧ポンプ15の吐出側が、この場合に開放された切換弁39を介して、その油圧ポンプ15の吸込側と結合され、これにより、ポンプは油圧液を循環させる。これにより、油圧ポンプ15の無負荷運転が保証されるので、脈動は回避される。
【0086】
一方で、ポンプ15により、第1のブレーキ回路の高圧部分内への油圧液の供給を可能にするために、他方で、弁10、油圧ポンプ15および弁39を介してブレーキ・ペダルにより低圧部分即ち車輪ブレーキ・シリンダの出口の領域内に「液を供給すること」は圧力制御を妨害することがあるので、これを阻止するために、油圧ポンプ15は好ましくはばね付勢された逆止弁40を介して第1のブレーキ回路1の高圧側と結合されている。
【0087】
したがって、本発明によるブレーキ装置は、回生ブレーキ過程を快適に利用することを可能にし、この場合、ブレーキ装置の部分装置内の変動は検出され且つ補償可能であり、これにより、変動がドライバないしは車両の同乗者によって感知されることはない。さらに、調節過程から影響を受けることなく、通常のように機能する、ブレーキ装置の他の部分装置が設けられている。適切な制御装置は、発生する全てのブレーキ作用および減速作用を適切な方法で制御する。
【0088】
図5は第3の実施形態における本発明によるブレーキ装置を示す。
【0089】
以下の節に記載のブレーキ装置はハイブリッド車における使用のみに限定されない。その代わりに、このブレーキ装置は、通常の車両においても、例えばカーブ走行および/または後退走行の間の制動において車両の車輪への好ましいブレーキ力分配を保証するために使用可能である。
【0090】
図示のブレーキ装置は、前車輪3および4を制動するための第1のブレーキ回路1および後車輪5および6を制動するための第2のブレーキ回路2を含む。ブレーキ装置において、車輪3および4が車両の後車輪でありおよび車輪5および6が車両の前車輪である実施態様もまた可能であることは明らかである。同様に、車輪3および4および車輪5および6が車両の2つの異なる側に配置された、車輪3−6の2つの対であっても、または車両において対角方向に配置された、車輪3−6の2つの対であってもよい。さらに、図示のブレーキ装置は4つの車輪3−6の固定数に限定されない。ブレーキ装置は、4つを超えた数の車輪が制動可能なように拡張されてもよい。例えば、この場合、ブレーキ装置は第1のブレーキ回路1に対応する少なくとも2つのブレーキ回路を有している。
【0091】
ブレーキ装置の油圧ブレーキ操作装置7は、上記のように、ブレーキ・ペダル8およびマスタ・ブレーキ・シリンダ9を有している。さらに、油圧ブレーキ操作装置7がブレーキ力増幅器を含んでいてもよい。ブレーキ・ペダル8に、さらに、ペダル・ストローク・センサ、ブースタ膜ストローク・センサおよび/またはロッド・ストローク・センサが装着されていてもよい。ブレーキ・ペダル8の代わりにまたはそれに補足して、ブレーキ装置は、ドライバのブレーキ希望を測定するための他のブレーキ入力要素を有していてもよい。
【0092】
図5に示されているように、マスタ・ブレーキ・シリンダ9にブレーキ媒体貯蔵容器41、例えば充填ノズル42を介してブレーキ液を充填可能な油圧液容器が装着されていてもよい。ブレーキ媒体貯蔵容器41は、ブレーキ媒体がマスタ・ブレーキ・シリンダ9とブレーキ媒体貯蔵容器41との間で交換可能なようにマスタ・ブレーキ・シリンダ9に接続されている。
【0093】
マスタ・ブレーキ・シリンダ9の前車軸への接続口から第1の供給配管43が第1のブレーキ回路1の切換弁10まで伸長している。切換弁10に並列に、逆止弁44を含むバイパス配管が配置されている。切換弁10の機能にエラーがあるとき、切換弁10はマスタ・ブレーキ・シリンダ9と前車輪3および4のブレーキ・キャリパの(図示されていない)車輪ブレーキ・シリンダとの間の油圧結合を遮断するであろうが、このときにおいても、逆止弁44は、マスタ・ブレーキ・シリンダとブレーキ・キャリパの車輪ブレーキ・シリンダとの間の油圧結合の存続を保証する。それに対応して、前車輪3および4のブレーキ・キャリパは、切換弁10の故障の間においても、ブレーキ・ペダル8により操作可能である。切換弁10の機能は上で既に説明されているので、ここでは詳細に説明されない。
【0094】
分岐点45を介して吸込弁18もまた第1の供給配管43に接続されている。さらに、第1のブレーキ回路1内に作用しているブレーキ媒体の圧力が圧力センサ46により決定可能なように、圧力センサ46が供給配管43に接続されている。
【0095】
切換弁10の第1の供給配管43とは反対側から配管47が伸長し、配管47は切換弁10を昇圧弁11と結合している。昇圧弁11は前車輪4のブレーキ・キャリパの車輪ブレーキ・シリンダに付属されている。分岐点48を介して前車輪3のブレーキ・キャリパの車輪ブレーキ・シリンダに付属されている昇圧弁12が配管47に接続されている。昇圧弁11および12の各々に並列に、逆止弁49または50を含むそれぞれ1つのバイパス配管が配置されている。
【0096】
さらに、ポンプ15の吐出側が分岐点51を介して配管47に接続されている。好ましい一実施形態においては、ポンプ15は1ピストン・ポンプである。しかしながら、ポンプ15に対して、複数のピストンを備えたポンプ、非対称ポンプまたは歯車ポンプが使用されてもよい。したがって、ブレーキ装置は2ピストンESP装置に限定されない。
【0097】
ポンプ15の吸込側から配管52が伸長し、配管52内にばね付勢された逆止弁17が挿入されている。分岐点53を介して吸込弁18は配管52に接続されている。他の分岐点54は、配管52を、ブレーキ媒体を受け入れるための油圧蓄積器16と結合している。配管52は降圧弁14において終端し、降圧弁14は前車輪3のブレーキ・キャリパの車輪ブレーキ・シリンダに付属されている。前車輪4のブレーキ・キャリパの車輪ブレーキ・シリンダに付属された降圧弁13は同様に分岐点55を介して配管52に接続されている。
【0098】
降圧弁13および14はそれぞれ分岐点56および57を介して配管58または59に接続され、配管58または59は昇圧弁11または12のそれぞれ1つを付属の前車輪3または4のブレーキ・キャリパの車輪ブレーキ・シリンダと結合している。
【0099】
第1のブレーキ回路1の弁10、11、12、13、14および18は油圧弁として形成されていてもよい。切換弁10および昇圧弁11および12は無通電において開放された弁として形成されていることが好ましい。それに対応して、降圧弁13および14および吸込弁18は無通電において閉鎖された弁として形成されているとき、それは好ましい。これは、ドライバ側からブレーキ・ペダル8の操作を介して前車輪3および4のブレーキ・キャリパの車輪ブレーキ・シリンダ内の要求された昇圧が実行されることを保証する。この場合、ドライバは第1のブレーキ回路1内に直接ブレーキ液を供給する。上記の第1のブレーキ回路1の他の利点は、前車輪3および4のブレーキ・シリンダ内に形成された圧力が再び急速に低下可能であることにある。第1のブレーキ回路1の車輪ブレーキ・シリンダ内のブレーキ圧力の上昇および降下に関する詳細な記載に関しては上記の説明が参照される。
【0100】
マスタ・ブレーキ・シリンダ9の後車軸への接続口から第2の供給配管60が第2のブレーキ回路2の遮断弁19まで伸長している。遮断弁19の出口から、配管61が、並列に配置された、逆止弁44aを含むバイパス配管を備えた第2のブレーキ回路2の切換弁10aまで伸長している。分岐点62を介して配管63が配管61と結合され、配管63は第2のブレーキ回路2の吸込弁18aにおいて終端している。配管63内において、分岐点62と吸込弁18aとの間に逆止弁64が配置されている。この場合、逆止弁64は分岐点67から分岐点62へのブレーキ媒体の流れを遮断する。
【0101】
第1のブレーキ回路1に対応して、第2のブレーキ回路2の切換弁10aが配管47aを介して昇圧弁12aと結合され、および配管47a内に配置された分岐点48aを介して昇圧弁11aと結合されている。両方の昇圧弁11aおよび12aの各々は後車輪5または6のブレーキ・キャリパの(図示されていない)車輪ブレーキ・シリンダに付属されている。昇圧弁11aおよび12aから配管58aおよび59aが伸長し、配管58aおよび59aは昇圧弁11aおよび12aを後車輪5または6のブレーキ・キャリパのそれぞれ1つの車輪ブレーキ・シリンダと結合している。さらに、昇圧弁11aおよび12aに並列に、逆止弁49aまたは50aを含むそれぞれ1つのバイパス配管が伸長している。分岐点56aおよび57aを介して、それぞれ1つの降圧弁13aまたは14aが、それと協働する昇圧弁11aまたは12aの配管58aまたは59aに接続されている。
【0102】
降圧弁13aおよび14aは分岐点55aを介して配管52aに接続され、配管52aは降圧弁13aおよび14aをポンプ15aと結合している。配管52aはポンプ15aの吸込側において終端している。配管52aはばね付勢された逆止弁17aを有している。さらに、分岐点54aを介して油圧蓄積器16aが、および分岐点53aを介して第2のブレーキ回路2の吸込弁18aが、配管52aに接続されている。
【0103】
ポンプ15aの吐出側から配管65が伸長し、配管65はポンプ15aを切換弁10aと結合している。この場合、配管65は配管47a内の分岐点51aにおいて終端している。分岐点66を介して、外部蓄積器として働く差動ピストン装置33もまた配管65に、したがってポンプ15aに接続されている。
【0104】
差動ピストン装置33は差動ピストンを有し、差動ピストンは、その一次側に蓄積容量34を、および二次側にピストン35を含む。蓄積容量34は分岐点67を介して配管63と結合され、配管63は遮断弁19を第2のブレーキ回路2の吸込弁18aと結合している。蓄積容量34はピストン35とは反対側に明らかにより大きい断面を有しいてもよい。差動ピストン装置の対応する形態の利点である、例えば差動ピストンの有利な摩擦は、上記のとおりである。
【0105】
しかしながら、図5に示されている差動ピストン装置は、ここに記載のステップを実行するために使用可能な外部蓄積器に対する可能な一例にすぎない。当業者は差動ピストン装置33の下記の機能を保持しながら外部蓄積器に多少の修正を行うことが可能であることは明らかである。さらに、差動ピストン装置33は蓄積器ストローク・センサおよび/または蓄積器ストローク・スイッチを備えていてもよい。代替態様として、差動ピストン装置33の蓄積容量を間接測定するための測定センサもまた考えられる。
【0106】
第2のブレーキ回路2の弁10a、11a、12a、13a、14a、18aおよび19は油圧弁であってもよい。好ましい一実施形態において、切換弁10aおよび昇圧弁11aおよび12aは無通電において開放された弁として形成され、および降圧弁13aおよび14aおよび吸込弁18aは無通電において閉鎖された弁として形成されている。遮断弁19は無通電において開放された弁であることが好ましい。以下において、遮断弁19、逆止弁64および外部蓄積器として働く差動ピストン装置33の協働に関して説明される。
【0107】
遮断弁19により第2のブレーキ回路2はマスタ・ブレーキ・シリンダ9から切離し可能である。遮断弁19は、遮断弁19が開放されているときにブレーキ・ペダル8の操作が後車輪5および6の車輪ブレーキ・シリンダ内において昇圧させるように形成されていることが好ましい。しかしながら、遮断弁が閉鎖された場合、マスタ・ブレーキ・シリンダ9と第2のブレーキ回路2との間の結合が遮断され且つ第2のブレーキ回路2はマスタ・ブレーキ・シリンダ9から切り離されている。第2のブレーキ回路2をマスタ・ブレーキ・シリンダ9から切り離したのちにおいては、マスタ・ブレーキ・シリンダ9から後車輪5および6の車輪ブレーキ・シリンダへの直接係合はもはや可能ではない。したがって、ドライバは、第2のブレーキ回路2をマスタ・ブレーキ・シリンダ9から切り離したのちにおいては、ブレーキ・ペダル8の操作を介して第2のブレーキ回路2内にもはや直接液を供給しない。したがって、第2のブレーキ回路2がマスタ・ブレーキ・シリンダ9から切り離されたとき、後車輪5および6の車輪ブレーキ・シリンダに作用するブレーキ圧力を外部から且つブレーキ・ペダル8の操作とは全く無関係に制御する可能性が存在する。
【0108】
差動ピストン装置33は、外部制御による、後車輪5および6の車輪ブレーキ・シリンダにおける能動的昇圧のための容量貯蔵量を供給する一次側を有している。さらに、第2のブレーキ回路2の一次側は差動ピストン装置33の二次側における昇圧によって加圧され且つポンプ15aの呼び水が可能である。ポンプ15aの呼び水は遮断弁19と差動ピストン装置33との間に配置された逆止弁64によってもまた保証されている。さらに、逆止弁64は、遮断弁19が閉鎖されているとき、ブレーキ媒体が分岐点62を介して差動ピストン装置33内に逆流することを保証する。
【0109】
差動ピストン装置33は、後車輪5および6のブレーキ・キャリパの車輪ブレーキ・シリンダの確実な充満を可能にする設計容量を有していることが好ましい。この場合、動的空気隙間、容量制御等の効果による容量受入量の上昇が考慮されてもよい。差動ピストン装置33の有利な一形態においては、一次側と二次側との間に、明らかに1より大きい面積比が存在する。このようにして、呼び水のための必要容量が低減可能である。
【0110】
以下に、第2のブレーキ回路2により実行可能なブレーキ過程が説明される。しかしながら、実行可能なブレーキ過程はここに説明された例に限定されない。
【0111】
一般に、第2のブレーキ回路2の弁10a、11a、12a、13a、14aおよび18aは、ドライバがブレーキ・ペダル8または他のブレーキ入力要素を操作していない走行状態においては通電されていない。遮断弁19もまたこの走行状況において開放し且つマスタ・ブレーキ・シリンダ9と後車輪5および6のブレーキ・キャリパの車輪ブレーキ・シリンダとの間の油圧結合が存在する。
【0112】
しかしながら、ドライバがブレーキ・ペダル8または他のブレーキ入力要素を操作した場合、(図示されていない)制御ユニットから無通電において開放されている遮断弁19に通電信号が出力可能である。通電信号は遮断弁19の閉鎖にしたがって後車輪5および6のブレーキ・キャリパのマスタ・ブレーキ・シリンダ9からの切り離しを行う。この状況が存在した場合、ドライバはブレーキ・ペダル8または他のブレーキ入力要素を介して第1のブレーキ回路1内のみに直接液を供給する。この場合、ドライバのブレーキ希望は、ここには詳細に説明されていない適切なセンサ装置を介して測定され且つ希望の全ブレーキ圧力に関して評価可能である。同時に、第1のブレーキ回路1内において前車輪3および4に存在するブレーキ圧力が決定可能である。それに続いて、希望の全ブレーキ圧力と第1のブレーキ回路1内に存在するブレーキ圧力との間の差が計算可能である。
【0113】
その後に、計算された差に対応するブレーキ圧力が後車輪5および6に能動的に設定される。このために、第2のブレーキ回路2の吸込弁18aが開放され且つ第2のブレーキ回路2内に差圧を設定するために切換弁10aが閉鎖される。ポンプ15aの操作によりブレーキ媒体のある容量が差動ピストン装置33から後車輪5および6の車輪キャリパ内に供給される。後車輪5および6のブレーキ・キャリパの車輪ブレーキ・シリンダ内へのブレーキ媒体のポンピングは、後車輪5および6に希望されたブレーキ圧力が存在するまでの間行われることが好ましい。
【0114】
ドライバにより希望された全ブレーキ・トルクがより正確に保持されるので、ここに記載の方法ステップは改善されたペダル感覚を提供する。さらに、上記の方法ステップを介してより短いペダル・ストロークが実現可能である。
【0115】
前節に記載の方法は回生制動に対しても利用可能である。発電運転される電動機により十分なブレーキ作用を有する回生制動を実行するために、車両は特定の最小速度を有していなければならない。走行中の車両を停止させるまで制動するために、発電運転される電動機の操作のみでは十分でないことがある。回生ブレーキ装置により通常のブレーキ装置に対応する制動距離を可能するために、通常のブレーキ装置が、低速度において、回生ブレーキの不足したブレーキ作用をより高いブレーキ・トルクにより補償しなければならない。
【0116】
しかしながら、車両の特定の運転状態において、できるだけ高い回生率を達成することが有利である。これは、切換過程ののちに切り離されていた発電機が回生ブレーキとして再び投入され且つブレーキ作用が再び回生ブレーキの方向にシフトされることにより実現可能である。
【0117】
さらに、回生ブレーキの操作において、電気エネルギー蓄積器が充満されているときには回生ブレーキが利用可能ではないことに注意することが有利である。したがって、このような状況においては、全ブレーキ・トルクが摩擦ブレーキを介して車輪3−6に提供されるべきである。
【0118】
詳細に記載された方法および図5のブレーキ装置により、油圧ブレーキ装置および回生ブレーキから形成された全ブレーキ・トルクを一定に保持することが可能である。この場合、油圧ブレーキ装置の作用が回生ブレーキの作用に適合される。これは、油圧ブレーキ装置と回生ブレーキとの重ね合わせとも呼ばれる。
【0119】
同時に実行された重ね合わせによる回生制動においては、後車輪5および6に、発電運転される電動機の一定ではないが大きさがわかっているブレーキ・トルクが作用する。同時に、上記のように、ドライバにより希望された全ブレーキ・トルクおよび前車輪3および4に作用しているブレーキ・トルクが決定可能である。したがって、コンピュータは希望された全ブレーキ・トルクと、回生ブレーキ・トルクおよび前車輪3および4に作用しているブレーキ・トルクの和との間の差を計算可能である。それに続いて、第2のブレーキ回路2をマスタ・ブレーキ・シリンダ9から切り離し且つポンプ15を操作することにより、この差に対応する油圧ブレーキ・トルクが上記の方法に対応して後車輪5および6に設定可能である。例えば、後車輪5および6における油圧ブレーキ圧力の設定は切換弁10aのΔp制御を介しての圧力設定により行うことが可能である。この代替態様として、後車輪5および6および/または第2のブレーキ回路2内に配置された少なくとも1つの圧力センサにより油圧ブレーキ圧力の圧力制御もまた可能である。
【0120】
重ね合わせにおいて実行された方法ステップはドライバによるブレーキ・ペダル8の追加の操作を必要としない。ドライバはより強いまたはより弱いブレーキ・ペダル8の操作による減速制御器の役目を果たす必要はない。さらに、ドライバは重ね合わせを直接感知しないので、走行快適性が損なわれることはない。重ね合わせはさらに車両の制動距離にも全く影響を与えることはない。
【0121】
同様な方法ステップにより、さらに、カーブ走行において後車輪に横方向加速度の関数としてのブレーキ力分配を設定することが可能である。両方の後車輪におけるタイヤ法線力の分配のための入力信号として、決定された横方向加速度が使用可能である。これはカーブ走行における車両のより安定な制動を保証する。さらに、動的カーブ制動において、カーブ内側車輪におけるブレーキ力の上昇により動的走行特性が達成可能である。さらに、上記の方法は後退走行のときに後車軸に対してより大きなブレーキ力を可能にする。このようにして達成されたより良好なブレーキ力分配は、下り坂における緩速後退走行において明らかにより安定な走行特性を導く。
【0122】
図5に示されたブレーキ装置により、高い動的制動もまた実現可能である。高い動的制動においては、遮断弁19は意識的に開放位置に保持可能である。これにより、ドライバによりブレーキ・ペダル8の操作を介して設定された動特性を用いて多量のブレーキ媒体がマスタ・ブレーキ・シリンダ9から後車輪5および6のブレーキ・キャリパの車輪ブレーキ・シリンダ内に供給される。後車輪5および6における昇圧動特性は、この場合、もはやポンプ15aに依存しない。したがって、制動動特性は通常のブレーキ装置の制動動特性に類似している。
【0123】
ブレーキ装置は急速に実行可能なブレーキ解放もまた可能にする。ブレーキ解放においては、吸込弁18が閉鎖され且つ切換弁10aは取り除かれたブレーキ希望に対応して開放される。したがって、ブレーキ媒体は比較的急速に差動ピストン装置33内に逆流する。
【0124】
さらに、図5に示されているブレーキ装置は、特にブレーキ・バイ・ワイヤ・ブレーキ装置に比較してコスト的に有利に製造可能である。十分な回生効率を達成するために実行された重ね合わせ過程はブレーキ装置の高価な追加構成要素を必要としない。
【0125】
図5に示されているブレーキ装置は、有利な一変更態様において、図3または4において説明された追加の構成要素を備えていてもよい。当業者には図5に示されているブレーキ装置のこのような拡張が図3または4の説明により容易に理解可能であるので、ここではより詳細には説明されない。このような変更態様の利点に関しては上記の説明箇所が参照される。
【符号の説明】
【0126】
1 第1のブレーキ回路
2 第2のブレーキ回路
3、4 前車輪
5、6 後車輪
7 ブレーキ操作装置
8 ブレーキ・ペダル(ブレーキ操作装置)
9 マスタ・ブレーキ・シリンダ
10、10a 切換弁(差圧制御器)
11、11a、12、12a ブレーキ昇圧弁
13、13a、14、14a ブレーキ降圧弁
15、15a 油圧ポンプ
16、16a 油圧蓄積器(蓄圧器)
17、17a、40、44、44a、49、49a、50、50a、64 逆止弁
18、18a 吸込弁
19 遮断弁
20 作用装置
21 減速希望センサ
22 制御装置
23 出力センサ
24 充電センサ
25 バッテリ
26 追加蓄積器(蓄積装置)
27 駆動軸
28 電気消費機器
29 横方向加速度センサ
30 滑りセンサ
31 回転速度センサ
32 出力
33 一次側ピストン(差動ピストン装置)(外部蓄積器)
34 蓄積容量
35 二次側ピストン(差動ピストン)
36 ポンプ駆動モータ
37 ポンプ駆動軸
38 フリーホイール・クラッチ(機械式フリーホイール装置)
39 切換弁
41 ブレーキ媒体貯蔵容器
42 充填ノズル
43、60 供給配管
45、48、48a、51、51a、53、53a、54、54a、55、55a、56、56a、57、57a、62、66、67 分岐点
46 圧力センサ
47、47a、52、52a、58、58a、59、59a、61、63、65 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ回路からなる第1および第2のグループを備えた自動車用ブレーキ装置であって、各ブレーキ回路(1、2)が車輪(3、4、5、6)からなる1つのグループに付属され、
少なくともブレーキ回路(1)からなる第1のグループが油圧ブレーキ回路として形成され、
車輪(5、6)からなる少なくとも1つのグループが少なくとも1つの作用装置(20)と結合され、
作用装置(20)は、車輪(5、6)を減速させることが可能である、
自動車用ブレーキ装置において、
前記第2のグループの1つまたは複数のブレーキ回路(2)のブレーキ作用並びに特に1つ/複数の前記作用装置(20)の減速作用を制御する制御装置(22)を備え、
ブレーキ回路(1)からなる前記第1のグループが、ブレーキ操作装置(8)を介して、直接ドライバにより操作可能である、
自動車用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記第2のグループのブレーキ回路(2)が油圧ブレーキ回路として形成され、油圧ブレーキ回路は制御要素として差圧制御器(10a)または圧力制御器を有することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記第2のグループのブレーキ回路(2)が油圧ブレーキ回路として形成され、且つ、前記ブレーキ操作装置(7、8)と直接油圧結合可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記第2のグループの油圧ブレーキ回路(2)が、ブレーキ回路の油圧ポンプ(15a)の吐出側に、吸込作用を発生するばねバイアスを有するピストン/シリンダ装置の形の油圧追加蓄積器(26)を有することを特徴とする請求項2または3に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記ピストン/シリンダ装置が差動ピストン(33、35)を有し、差動ピストン(33、35)の、断面積が小さいほうの二次側ピストン(35)が、蓄積容量を低減させるためにブレーキ回路の高圧配管と結合されていることを特徴とする請求項4に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
追加蓄積器(26)内に蓄積された油圧液の量を決定するための蓄積器センサが設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載のブレーキ装置。
【請求項7】
両方のグループのブレーキ回路(1、2)が油圧ブレーキ回路として形成され、且つ、それぞれ1つの油圧ポンプ(15、15a)を有し、
油圧ポンプ(15、15a)が共通のポンプ駆動装置と動的に結合されている、
ブレーキ装置において、
前記第1のグループのブレーキ回路(1)に付属された油圧ポンプ(15)が、特にポンプ駆動軸の回転方向によって制御可能なフリーホイール・クラッチ(38)により、ポンプ駆動装置から機械的に切離し可能であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のブレーキ装置。
【請求項8】
両方のグループのブレーキ回路(1、2)が油圧ブレーキ回路として形成され、且つ、それぞれ1つの油圧ポンプ(15、15a)を有し、
油圧ポンプ(15、15a)が共通のポンプ駆動装置と動的に結合されている、
ブレーキ装置において、
前記第1のグループのブレーキ回路(1)に付属された油圧ポンプ(15)の吸込側が、弁(39)を介して、その吐出側と結合可能であり、且つ、特にばね付勢された逆止弁(40)を介して、高圧側においてそれぞれのブレーキ回路と結合されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のブレーキ装置。
【請求項9】
前記ブレーキ操作装置(8)を操作したときに前記ブレーキ操作装置(8)の操作に対応する圧力信号が提供されるように前記ブレーキ操作装置(8)に結合されているマスタ・ブレーキ・シリンダ(9)であって、付属の車輪(5、6)に配置された少なくとも1つの車輪ブレーキ・シリンダを備えた前記第2のグループの少なくとも1つのブレーキ回路(2)は、前記圧力信号を、前記マスタ・ブレーキ・シリンダ(9)から前記車輪ブレーキ・シリンダに伝送可能なように、前記マスタ・ブレーキ・シリンダ(9)に結合され、前記車輪ブレーキ・シリンダは、前記圧力信号に対応する力を前記車輪(5、6)に与えるように設計されている、マスタ・ブレーキ・シリンダ(9)と、
前記マスタ・ブレーキ・シリンダ(9)と前記車輪ブレーキ・シリンダ(5、6)との間に配置された遮断弁(19)であって、遮断弁(19)は、提供された閉鎖信号を受け取ったときに閉鎖状態に移行し、且つ、前記車輪ブレーキ・シリンダへの前記圧力信号の伝送を阻止するように設計されている、遮断弁(19)と、
前記車輪ブレーキ・シリンダ内の昇圧のための容量を、外部蓄積器(33)から前記車輪ブレーキ・シリンダに提供可能なように、前記車輪ブレーキ・シリンダに結合されている、外部蓄積器(33)と、
を備えた請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項10】
前記外部蓄積器が差動ピストンとして形成され、差動ピストンは、一次側において、車輪ブレーキ・シリンダ内の圧力を上昇させるための容量蓄積量を有し、二次側において、ポンプ(15a)の吐出側と結合され、外部蓄積器およびポンプ(15a)が、前記制御装置(22)により、前記遮断弁(19)がその閉鎖状態にある限り、前記車輪ブレーキ・シリンダ内の圧力がポンプ(15a)および外部蓄積器を介して調節可能なように操作可能であることを特徴とする請求項9に記載のブレーキ装置。
【請求項11】
油圧ブレーキ回路からなる第1および第2のグループを備えた自動車のブレーキ装置用油圧装置であって、第1のグループのブレーキ回路(1)が、油圧的に直接、ドライバにより直接操作可能なブレーキ操作装置と結合され、第2のグループのブレーキ回路(2)が、ブレーキ操作装置と遮断弁により結合可能であり、且つ、ブレーキ操作装置から完全に切離し可能である、自動車のブレーキ装置用油圧装置において、
前記第2のグループの1つまたは複数のブレーキ回路(2)のブレーキ作用を制御する制御装置(22)を備えた、自動車のブレーキ装置用油圧装置。
【請求項12】
前記第2のグループのブレーキ回路(2)と結合されている蓄積装置(26)を備えた、請求項11に記載の油圧装置。
【請求項13】
前記第1のグループのブレーキ回路(1)が直接ブレーキ操作装置(8)により操作され、
前記第2のグループのブレーキ回路(2)は制御装置(22)によって操作され、
制御装置(22)は、測定されるかまたは他の方法により決定されたブレーキ希望を受け取り、作用装置(20)の減速作用並びにブレーキ回路からなる前記第1のグループのブレーキ作用および前記ブレーキ希望を考慮し、これらから前記第2のブレーキ回路の操作強度を決定する、
請求項1ないし10のいずれかに記載のブレーキ装置の作動方法。
【請求項14】
提供された閉鎖信号を受け取り且つ前記マスタ・ブレーキ・シリンダ(9)から車輪ブレーキ・シリンダへの圧力信号の伝送を阻止するために前記遮断弁(19)を閉鎖するステップと、
前記車輪ブレーキ・シリンダ内の昇圧のための容量を、前記外部蓄積器(33)から車輪ブレーキ・シリンダに供給することによって、車輪ブレーキ・シリンダから車輪(5、6)に与えられる力を制御するステップと、
を有する、請求項9または10に記載のブレーキ装置の作動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−524833(P2011−524833A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512919(P2011−512919)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056304
【国際公開番号】WO2009/150032
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】