説明

自動車用内装部品並びにその製造方法

【課題】発泡樹脂基材とその裏面側に一体化される樹脂リブとからなる積層構造体を全体、あるいは一部に採用した自動車用内装部品並びにその製造方法において、樹脂リブの収縮歪みを抑え、表面ヒケを防止する。
【解決手段】ドアトリム10は、ドアトリムアッパー(積層構造体)20とドアトリムロア(樹脂単体品)30とから構成されている。ドアトリムアッパー20は、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材21と、その内面側に一体化される樹脂リブ22との積層構造体から構成され、樹脂リブ22の素材として、ガラス繊維等の強化繊維aと熱可塑性樹脂とからなる複合樹脂材料を使用することにより、樹脂リブ22の成形後における収縮歪みを抑え、表面ヒケを確実に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等の自動車用内装部品並びにその製造方法に係り、軽量でかつ外観意匠性、製品剛性を高めた自動車用内装部品並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用内装部品の構成について、ドアトリムを例示して図11,図12を基に説明する。ドアトリム1は、保形性及び車体パネルへの取付剛性を備え、製品面のほぼ全体にいきわたっている樹脂芯材2の表面に、表面外観に優れた表皮3を積層一体化して構成されている。上記樹脂芯材2としては、タルクを混入したポリプロピレン系樹脂を素材としており、また、表皮3は、それ自体保形性を備えておらず、塩ビシート等の合成樹脂シートの裏面にポリエチレンフォーム等のクッション材が積層された積層シート材料が使用され、最近では、環境面やリサイクル面を考慮して、サーモプラスチックオレフィン(以下TPOという)シート等のエラストマーシートの裏面にポリエチレンフォーム等のクッション材が積層された積層シート材料が多用される傾向にある。
【0003】
次に、上記ドアトリム1の成形方法における従来例について図13を基に説明する。まず、ドアトリム1を成形する成形金型4は、所定ストローク上下動可能な成形上型5と、成形上型5と対をなす固定側の成形下型6と、成形下型6と接続される射出機7とから大略構成されている。そして、成形上下型5,6を型締めした際、ドアトリム1の製品形状を形造るために成形上型5にはキャビティ部5aが形成され、成形下型6にはコア部6aが設けられている。上記成形上型5を所定ストローク上下動作させるために、昇降シリンダ5bが連結され、成形下型6には射出機7からの溶融樹脂Mの通路となるマニホールド6b、ゲート6cが設けられている。また、上下動作する成形上型5は、適正姿勢を維持させるために、成形下型6の4隅部にガイドポスト6dが設けられ、このガイドポスト6dに対応して成形上型5にはガイドブッシュ5cが設けられている。
【0004】
従って、成形上下型5,6が型開き状態にある時、表皮3を金型内にセットし、成形上下型5,6を型締めした後、両金型間の製品キャビティ内に射出機7からマニホールド6b、ゲート6cを通じて溶融樹脂Mを射出充填することにより、樹脂芯材2を所要の曲面形状に成形するとともに、樹脂芯材2の表面に表皮3を一体成形している(例えば、特許文献1参照。)。尚、図13では、説明の便宜上、コア部6aの型面にオープン状態で溶融樹脂Mが供給されているが、溶融樹脂Mは成形上下型5,6の型締め後にキャビティ内に射出充填されても良い。
【0005】
【特許文献1】特開平10−138268号公報 (第2頁、図3、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のドアトリム1においては、樹脂芯材2の投影面積が大きいため、材料コストが高く、かつ製品が重量化するという問題点が指摘されている。また、樹脂芯材2の投影面積が大きいことから、成形時における射出圧を高く設定せざるを得ず、高い射出圧に耐え得る金型構造が必要となり、金型の作製費用も嵩み、しかも、大量の溶融樹脂を冷却固化させるため、成形サイクルが長期化し、生産性を低下させる大きな要因となっている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ドアトリム等の自動車用内装部品並びにその製造方法に係り、特に、軽量化を促進でき、コストダウンを図れ、かつ外観品質、並びに製品剛性を向上させた自動車用内装部品並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意研究の結果、従来から表皮として使用していた発泡樹脂シートに保形性を付与することで、芯材としての機能をもたせ、より以上に剛性が必要な箇所、すなわち製品の周縁部分やパネル、あるいは部品取付箇所並びに荷重がかかる部位には、剛性に優れた樹脂リブを配置することで、従来の投影面積の広い樹脂芯材に比べ軽量で、かつコストが廉価な積層構造体を提供するとともに、樹脂リブの素材に創意工夫を加えることで、樹脂リブの成形後における収縮歪みを抑えることができることに着眼し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、所要形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面に一体化される所定パターン形状の樹脂リブとからなる積層構造体を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品において、前記積層構造体における発泡樹脂基材は、成形上下型間の型締めプレス圧で所要形状に成形される一方、樹脂リブは、成形下型の溝部内に強化繊維を混入した溶融樹脂を射出充填することにより成形されることで、剛性が強化されているとともに、樹脂リブの冷却固化時において、溶融樹脂内に混入される強化繊維により、収縮歪みが抑えられることを特徴とする。
【0010】
ここで、自動車用内装部品の用途としては、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等に適用できる。また、自動車用内装部品の全体構造に本発明構造を適用することもできるとともに、自動車用内装部品の一部、例えば、上下二分割体のドアトリムにおけるドアトリムアッパーにのみ本発明構造を適用することもできる。
【0011】
更に、保形性を有する発泡樹脂基材は、発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型内で所望の曲面形状に成形することで、リブ等の補強材がなくても、成形後、型から脱型しても形状を保持する程度の剛性(保形性)を有している。また、製品形状が高展開率部分を含む場合には、発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型に真空吸引機構を配設して成形金型の内面に沿って発泡樹脂シートに真空吸引力を作用させるようにしても良い。
【0012】
上記発泡樹脂シートとしては、熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した素材を使用する。尚、熱可塑性樹脂は、1種類の熱可塑性樹脂でも2種類以上の熱可塑性樹脂からなっても良い。好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用できる。また、発泡剤としては、アゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機発泡剤、あるいは重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤の使用が可能である。上記発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に成形して得た発泡樹脂基材は、製品の重量と強度とのバランスを考慮した場合、2〜10倍の発泡倍率が好ましい。その時の発泡樹脂基材のセル径は、0.1μm〜2.0mmの範囲であることが好ましく、厚みは0.5〜30mm、好ましくは1〜10mmのものが良い。
【0013】
一方、補強機能を持つ樹脂リブとして使用する熱可塑性樹脂材料は、熱可塑性樹脂と強化繊維とを混合した複合樹脂材料が使用される。熱可塑性樹脂材料としては、広範な樹脂から適宜選択することができる。通常好ましく使用できるものとして、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等がある。
【0014】
更に、混合する強化繊維としては、ガラス繊維、天然繊維を使用できる。ガラス繊維としては、5〜20mmの繊維長さを有するガラス繊維を5〜20重量部の配合割合で混入するのが良い。繊維長さが5mm未満であると収縮率を抑える効果が少なく、逆に繊維長さが20mmを超えると樹脂の流動性が損なわれ、射出機から射出することが難しいためである。また、天然繊維としては、竹、バサルト、ケナフ等を使用することができる。更に、添加物として、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤等の各種添加剤が配合されても良い。
【0015】
そして、外観意匠性を高めるために、発泡樹脂基材の表面に加飾材を積層一体化しても良い。この加飾材としては、TPOシート、TPU(サーモプラスチックウレタン)シート、塩ビシート等の合成樹脂シート、あるいは織布、不織布、編布等の布地シート、または合成樹脂フィルム、発泡体、網状物等の単体シートの形態で使用するか、または、合成樹脂シートや布地シートの裏面にポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリウレタンフォーム等のクッション材を裏打ちした積層シート材料の形態で使用することもできる。これら加飾材を構成する材料は特に限定されないが、織布、不織布、編布等、通気性を有する素材を使用したほうが、発泡樹脂基材の吸音性能を生かす上で好ましい。また、発泡樹脂基材の多孔質吸音機能により、吸音性能に優れた内装部品が得られるとともに、発泡樹脂基材及び樹脂リブの素材として、ポリオレフィン系樹脂を使用した場合、オールオレフィン系樹脂に統一されるため、分離工程が廃止でき、リサイクル作業を簡素化できる。
【0016】
次いで、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法は、所要形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面に一体化される所定パターン形状の樹脂リブとからなる積層構造体を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品の製造方法において、前記積層構造体は、上記発泡樹脂基材の素材である発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、型開き状態にある成形上下型内に投入し、成形上下型を型締めすることで、所要形状にプレス成形する発泡樹脂基材の成形工程と、上記成形上下型を型締めするとともに、強化繊維を混入した溶融樹脂を射出機から成形下型の溝部内に射出充填し、更に、この溶融樹脂を冷却固化させて、発泡樹脂基材の裏面に樹脂リブを一体化する際、溶融樹脂に混入した強化繊維により、樹脂リブの冷却固化時における収縮歪みを抑え、発泡樹脂基材と樹脂リブとの境界面をほぼフラット面状に規制しつつ、樹脂リブを成形する樹脂リブの成形工程とから製作されることを特徴とする。
【0017】
ここで、積層構造体を成形する際に使用する成形金型は、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面に一体化される樹脂リブとからなる積層構造体を成形する成形金型であって、前記成形金型は、相互に型締め、型開き可能な成形上型並びに成形下型と、成形下型に連結され、樹脂リブの素材である溶融樹脂を供給する射出機とから構成されている。そして、射出機から供給される溶融樹脂は、成形下型に設けられたマニホールド、ゲート等の樹脂通路を通じて成形下型の型面上に形成されている溝部に供給される。また、成形金型の型締めにより、発泡樹脂シートは、成形金型の型面形状に沿って賦形されるが、その際、成形工程の前工程で、ヒーター等により加熱軟化処理が行なわれ、加熱軟化状態の発泡樹脂シートが成形金型内にセットされる。そして、成形金型による発泡樹脂シートの成形工程には、発泡樹脂シートの冷却工程も含まれており、この冷却工程としては、成形金型の型締めにより冷却する他に、発泡樹脂シートを強制的に冷却するようにしても良い。例えば、発泡樹脂基材と成形下型の型面との間に所定クリアランスを設けて熱の解放を行なっても良く、また、発泡樹脂基材の裏面側から冷却用エア等の冷媒を吹き付けることにより、発泡樹脂基材を有効に冷却することもできる。この場合、エアブローは、型締め状態で行なっても良く、また、成形上型を上昇させて、発泡樹脂基材と成形下型との間にクリアランスを設け、このクリアランス内にエアブローするようにしても良い。
【0018】
従って、本発明によれば、従来の投影面積の広い樹脂芯材に比べ、樹脂リブだけを成形すれば良いため、射出圧力を従来に比べ低く設定することができ、かつ成形上型の負荷が少なくて済むとともに、材料費を節約することができる。
【0019】
更に、本発明においては、樹脂リブの素材として強化繊維を混入した溶融樹脂材料を使用したため、強化繊維により樹脂リブの成形後における収縮歪みが抑えられ、製品表面のヒケ発生を可及的に防止でき、外観見栄えを良好に維持できるとともに、強化繊維が混入されているため、製品剛性、並びに衝撃吸収性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明した通り、本発明に係る自動車用内装部品並びにその製造方法によれば、自動車用内装部品の全体、あるいは一部を構成する積層構造体は、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面に一体化される樹脂リブとから構成されているため、従来の重量の嵩む樹脂芯材を廃止できることから、軽量で低コスト、しかも多孔質素材であるため、吸音性能にも優れた自動車用内装部品を提供できるという効果を有する。
【0021】
更に、本発明に係る自動車用内装部品並びにその製造方法によれば、樹脂リブの素材として、ガラス繊維等の強化繊維と熱可塑性樹脂とを混合した樹脂材料を使用するため、樹脂リブ成形後における収縮歪みが低く抑えられ、収縮歪みを抑えることで製品表面に発生するヒケ等の表面不良を確実に防止できるとともに、強化繊維により樹脂リブの剛性を強化でき、かつ衝撃吸収性能を向上させることができる等、品質性能を高めることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る自動車用内装部品並びにその製造方法の好適な実施例について、自動車用ドアトリムを例示して説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例】
【0023】
図1乃至図10は本発明の一実施例を示すもので、図1はツートンタイプの自動車用ドアトリムを示す正面図、図2は同自動車用ドアトリムの構成を示す断面図、図3は同自動車用ドアトリムにおけるドアトリムアッパーの樹脂リブとドアトリムロアを示す正面図、図4は同自動車用ドアトリムにおけるドアトリムアッパーの構成を示す断面図、図5は同自動車用ドアトリムを成形する際に使用する成形金型の全体構成を示す説明図、図6乃至図10は同自動車用ドアトリムの製造方法の各工程を示し、図6は発泡樹脂シートの予熱工程、図7は発泡樹脂シートの成形金型へのセット工程、図8はドアトリムの成形工程、図9,図10は樹脂リブの成形工程をそれぞれ示す説明図である。
【0024】
まず、図1乃至図4に基づいて、本発明に係る自動車用内装部品の構成を適用したツートンタイプの自動車用ドアトリム10の構成について説明する。ツートンタイプの自動車用ドアトリム10は、積層構造体からなるドアトリムアッパー20と、樹脂単体品からなるドアトリムロア30との上下二分割体から構成されている。そして、ドアトリム10に装着される機能部品としては、ドアトリムアッパー20にインサイドハンドルエスカッション11、パワーウインドウスイッチエスカッション12が取り付けられている。ドアトリムロア30には、ドアポケット用開口13が開設され、その背面側には、図2に示すように、ポケットバックカバー(樹脂成形体から構成されている)14が取り付けられており、ドアトリムロア30のフロント側にスピーカグリル15がドアトリムロア30と一体、あるいは別体に設けられている。
【0025】
ところで、本発明に係る自動車用ドアトリム10は、積層構造体からなるドアトリムアッパー20の構造に特徴があり、製品の軽量化が図られているとともに、良好な表面外観と強固な製品剛性が確保されている。すなわち、ドアトリムアッパー20は、図2に示すように、所望の曲面形状に成形され、保形性を有する発泡樹脂基材21と、この発泡樹脂基材21の裏面側に一体化される樹脂リブ22と、発泡樹脂基材21の表面側に積層一体化される加飾機能をもつ加飾材23とから大略構成されている。尚、図中符号16は車体パネルを示し、加飾材23は、TPOシートからなるトップ層23aの裏面にポリプロピレンフォームからなるクッション層23bがラミネートされた積層シート材料が使用されている。
【0026】
上記発泡樹脂基材21は、保形性を備えるように、発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に熱成形、例えば、所望の型面を有する成形金型でコールドプレス成形して、形状が付与される。上記発泡樹脂シートは、汎用の熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した構成であり、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用でき、発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤や重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤が使用できる。この実施形態では、ポリプロピレン系樹脂に発泡剤として重炭酸ナトリウムを適宜添加した発泡樹脂シートを使用している。また、この発泡樹脂基材21の発泡倍率は、2〜10倍に設定され、厚みは0.5〜30mm、特に好ましくは1〜10mmの範囲に設定されている。
【0027】
次いで、樹脂リブ22は、図3に示すように、縦横方向、あるいは斜め方向等に延びる格子状パターンに設定されている。そして、この樹脂リブ22は、ガラス繊維、天然繊維等の強化繊維を添加した汎用の合成樹脂成形体からなり、通常好ましく使用できる合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等から適宜選択されて良く、本実施形態では、環境面、リサイクル面を考慮してポリプロピレン系樹脂が使用されている。
【0028】
このように、図1乃至図3に示すドアトリム10は、積層構造体からなるドアトリムアッパー20と、合成樹脂単体品であるドアトリムロア30とから構成され、外観上のアクセント効果により、優れた外観意匠性を備えている。更にドアトリムアッパー20は、保形性を有する発泡樹脂基材21と、発泡樹脂基材21の裏面に積層一体化される樹脂リブ22とから構成されているため、従来のように製品の全面に亘り占有していた樹脂芯材を廃止でき、かつ軽量な発泡樹脂基材21を使用する一方、樹脂リブ22は骨状であり、荷重が加わる部位、例えば、クリップ取付座、ウエストフランジ、アームレスト部上面等を除いた部位は、肉抜き構造となっている関係で、製品の重量について、従来例に比し40%以上の軽量化を図ることができるとともに、樹脂材料も大幅に節約でき、コストダウンにも貢献できる。更に、発泡樹脂基材21は、多孔質構造であるため、ドアトリムアッパー20は、吸音性能に優れ、車室内外の騒音を低減することができる。尚、廉価構成として、加飾材23を省略し、発泡樹脂基材21の表面に塗装や印刷処理を施すようにしても良い。
【0029】
次に、図4は、ドアトリムアッパー20の要部構成を示す断面図であり、発泡樹脂基材21と、樹脂リブ22との境界面Aはほぼフラット面状に規制され、樹脂リブ22設定箇所における製品外観には、ヒケの発生が目立たず、良好な外観見栄えが確保されている。このことは、樹脂リブ22の素材として、熱可塑性樹脂に強化繊維(図4中符号aで示す)を混合して樹脂リブ22の成形後における収縮歪みを抑えたことによる。この実施例では、強化繊維aとして、特に、繊維長さが5〜20mmのガラス繊維を5〜20重量部配合した樹脂材料を使用している。ガラス繊維の繊維長さを全体重量に対して5〜20mmに特定した理由としては、繊維長さが5mm未満であれば、収縮歪みを抑える効果が少なく、逆に繊維長さが20mmを超えた場合には、射出機から射出する際の樹脂の流動性に悪影響を及ぼすためである。また、表1において、収縮歪み(収縮率)のデータを比較例とともに示す。比較例としては、(1)フィラーを混入しないポリプロピレン樹脂、(2)フィラーとしてタルクを混入したポリプロピレン樹脂、次いで、本発明の実施例として(1)ガラス繊維を5重量部を混入したポリプロピレン樹脂、(2)ガラス繊維を20重量部混入したポリピロプレン樹脂のそれぞれの収縮率の値を示す。そして、表1の結果から明らかなように、ガラス繊維の配合割合が多くなれば、収縮率は少なくなるものの、配合割合を多くした場合には、樹脂の流動性に影響を及ぼすため、収縮率と成形性の両者のバランスを考えて配合割合を決定するのが好ましい。また、ガラス繊維を使用した場合に、樹脂リブ22自体の剛性が強化されるとともに、耐衝撃性もアップする。尚、ガラス繊維の他に、竹、バサルト、ケナフ等の天然繊維を使用することもできる。
【0030】
【表1】

【0031】
次いで、上述した構成のドアトリムアッパー20、ドアトリムロア30からなるドアトリム10の成形方法について、以下に説明する。その前に、図5に基づいて、成形金型40の構成について説明する。図5において、ドアトリム10の成形に使用する成形金型40は、所定ストローク上下動可能な成形上型41と、成形上型41と対をなす固定側の成形下型42と、成形下型42に接続される2基の射出機43a,43bとから大略構成されている。更に詳しくは、成形上型41は、製品形状に合致したキャビティ部411が形成されており、成形上型41の上面に連結された昇降シリンダ412により所定ストローク上下駆動される。また、成形上型41の4隅部には、ガイド機構となるガイドブッシュ413が設けられている。
【0032】
一方、成形下型42には、成形上型41のキャビティ部411に対応するコア部421が設けられている。また、このコア部421の型面に溶融樹脂を供給するために、マニホールド422a,422b、ゲート423a,423bが設けられており、このマニホールド422a,422b、ゲート423a,423bの樹脂通路を経て射出機43a,43bから供給される溶融樹脂M1,M2がコア部421の上面に供給される。尚、樹脂リブ22を形成するために、コア部421上面に溶融樹脂M1が供給される溝部424が穿設される一方、ドアトリムロア30を形成するために、成形上下型41,42間に所定クリアランスのキャビティ425が設定されている。また、成形下型42の4隅部には、ガイド機構となるガイドポスト426が突設され、このガイドポスト426は、成形上下型41,42が型締めされる際、ガイドブッシュ413内に案内されることで成形上型41のプレス姿勢を適正に維持できる。
【0033】
また、図示はしないが、成形下型42には、エアブロー機構が付設されていても良い。エアブロー機構としては、圧空ブロワとこれと接続するエアブロー管が成形下型42の空気室に連通しており、エアブロー管に設けられている開閉バルブの開閉操作により、成形下型42の空気室内に冷媒としての冷却用エアが供給され、成形下型42の型面に形成されているエアブロー孔を通じて、キャビティ内に冷却用エアが吹き付けられる。この冷媒としては、冷却用エアの他に液体窒素、液体空気、二酸化炭素等を使用することもできる。
【0034】
次いで、上述したドアトリム10の製造方法について、簡単に図6乃至図10に基づいて説明する。まず、図6に示すように、ヒーター装置50により発泡樹脂シートSを所定温度に加熱軟化させる発泡樹脂シートSの予熱工程が採用されている。この実施例では、発泡樹脂シートSとして、ポリプロピレン製発泡シート(住化プラステック製、商品名:スミセラー発泡PPシート、発泡倍率=3倍、厚み3mm)が使用されている。そして、図7に示すように、加熱軟化処理した発泡樹脂シートSをドアトリムアッパー20対応箇所における成形上型41のキャビティ部411と成形下型42のコア部421で画成されるキャビティの上半部分にセットする。尚、発泡樹脂シートSの一方面には加飾材23が予めラミネートされている。上記発泡樹脂シートSをセットした後、図8に示すように、成形上型41の昇降シリンダ412が動作して、成形上型41が所定ストローク下降して、成形上下型41,42が型締めされ、発泡樹脂シートSがキャビティ形状に沿って賦形される。
【0035】
次に、発泡樹脂シートSから発泡樹脂基材21を所望の曲面形状に成形した後、図9に示すように、第1の射出機43aからマニホールド422a、ゲート423aを通じてドアトリムアッパー20における樹脂リブ22を形成するために、強化繊維aを混入した溶融樹脂M1が成形下型42の溝部424内に射出充填される。更に、ドアトリムロア30を成形するために、第2の射出機43bからマニホールド422b、ゲート423bを通じてキャビティ425内に溶融樹脂M2が射出充填され、ドアトリムロア30が所要形状に成形される。尚、この溶融樹脂M1,M2としては、住友ノーブレンBUE81E6(住友化学工業製ポリプロピレン、メルトインデックス=80g/10分)にタルク等のフィラーが適宜割合で混入されている樹脂材料を使用している。従って、第1の射出機43aから溶融樹脂M1を溝部424内に射出充填する一方、第2の射出機43bから溶融樹脂M2をキャビティ425内に射出充填することにより、ドアトリムアッパー20における樹脂リブ22を所要形状に成形するとともに、これと一体にドアトリムロア30が一体成形される。
【0036】
そして、図10に示すように、成形下型42の溝部424内に強化繊維a(本実施例では、ガラス繊維)を添加した溶融樹脂M1が射出充填され、所定時間冷却されるが、この冷却固化時において、強化繊維aにより収縮歪みが抑えられるため、樹脂リブ22と発泡樹脂基材21との境界面Aは、樹脂リブ22側に引っ張られることがなく、ほぼフラット面状に規制されるため、ドアトリムアッパー20の製品表面にヒケ等が生じることがなく、良好な外観性能が期待できる。
【0037】
このように、本発明に係る自動車用ドアトリム10は、特に、ドアトリムアッパー20の構成として、発泡樹脂基材21とその裏面に一体化される樹脂リブ22とから構成することで軽量化を促進するとともに、樹脂リブ22の素材として、ガラス繊維等の強化繊維aと、熱可塑性樹脂を混合した溶融樹脂M1を使用することで、剛性、耐衝撃性を向上させるとともに、成形後における収縮歪みを有効に抑えることができ、製品表面にヒケ等の外観不良が生じることがなく、良好な外観見栄えを長期に亘り維持することができるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明した実施例は、ツートンタイプの自動車用ドアトリム10におけるドアトリムアッパー20に本発明構造を適用したが、一体型のドアトリム、あるいはドアトリム以外の内装部品、例えば、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、ラゲージトリム、ルーフトリム、リヤサイドトリム等、内装トリム全般に本発明構造を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る自動車用内装部品の一実施例であるドアトリムを示す正面図である。
【図2】図1中II−II線断面図である。
【図3】図1に示すドアトリムにおけるドアトリムアッパーの樹脂リブとドアトリムロアとを示す正面図である。
【図4】図1に示すドアトリムにおけるドアトリムアッパーの要部構成を示す断面図である。
【図5】図1に示すドアトリムを成形する際に使用する成形金型の全体構成を示す説明図である。
【図6】図1に示すドアトリムの製造方法における発泡樹脂シートの予熱工程を示す説明図である。
【図7】図1に示すドアトリムの製造方法における発泡樹脂シートの型内セット工程を示す説明図である。
【図8】図1に示すドアトリムの製造方法における発泡樹脂基材の成形工程を示す説明図である。
【図9】図1に示すドアトリムの製造方法におけるドアトリムアッパーの樹脂リブ、並びにドアトリムロアの成形工程を示す説明図である。
【図10】図9に示す樹脂リブの成形工程における樹脂リブと発泡樹脂基材の境界部分の構成を示す断面図である。
【図11】従来のドアトリムを示す正面図である。
【図12】図11中XII −XII 線断面図である。
【図13】従来のドアトリムを成形する際に使用する成形金型の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
10 ツートンタイプの自動車用ドアトリム
20 ドアトリムアッパー
22 樹脂リブ
23 加飾材
23a トップ層
23b クッション層
30 ドアトリムロア
40 成形金型
41 成形上型
42 成形下型
424 溝部
43a,43b 射出機
A 境界面
M1 溶融樹脂(強化繊維入り)
M2 溶融樹脂
S 発泡樹脂シート
a 強化繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材(21)と、この発泡樹脂基材(21)の裏面に一体化される所定パターン形状の樹脂リブ(22)とからなる積層構造体(20)を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品(10)において、
前記積層構造体(20)における発泡樹脂基材(21)は、成形上下型(41,42)間の型締めプレス圧で所要形状に成形される一方、樹脂リブ(22)は、成形下型(42)の溝部(424)内に強化繊維(a)を混入した溶融樹脂(M1)を射出充填することにより成形されることで、剛性が強化されているとともに、樹脂リブ(22)の冷却固化時において、溶融樹脂(M1)内に混入される強化繊維(a)により、収縮歪みが抑えられることを特徴とする自動車用内装部品。
【請求項2】
前記樹脂リブ(22)の素材である溶融樹脂(M1)に混入される強化繊維(a)は、繊維長さが5〜20mmで、かつ溶融樹脂(M1)に対する配合割合が5〜20重量部に設定されたガラス繊維であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用内装部品。
【請求項3】
所要形状に成形され、軽量でかつ保形性を有する発泡樹脂基材(21)と、この発泡樹脂基材(21)の裏面に一体化される所定パターン形状の樹脂リブ(22)とからなる積層構造体(20)を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品(10)の製造方法において、
前記積層構造体は、上記発泡樹脂基材(21)の素材である発泡樹脂シート(S)を加熱軟化処理した後、型開き状態にある成形上下型(41,42)内に投入し、成形上下型(41,42)を型締めすることで、所要形状にプレス成形する発泡樹脂基材(21)の成形工程と、
上記成形上下型(41,42)を型締めするとともに、強化繊維(a)を混入した溶融樹脂(M1)を射出機(43a)から成形下型(42)の溝部(424)内に射出充填し、更に、この溶融樹脂(M1)を冷却固化させて、発泡樹脂基材(21)の裏面に樹脂リブ(22)を一体化する際、溶融樹脂(M1)に混入した強化繊維(a)により、樹脂リブ(22)の冷却固化時における収縮歪みを抑え、発泡樹脂基材(21)と樹脂リブ(22)との境界面(A)をほぼフラット面状に規制しつつ、樹脂リブ(22)を成形する樹脂リブ(22)の成形工程と、
から製作されることを特徴とする自動車用内装部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−55848(P2008−55848A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237995(P2006−237995)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】