説明

表示素子の製造方法、及び表示素子の製造装置

【課題】 シート基板が部分的に伸縮している場合でも高精度に表示素子を製造するため、高精度に位置検出できる表示素子用の製造装置を提供する。
【解決手段】 製造装置(100)は、所定幅の可撓性の長尺基板(FB)に表示素子(51)を製造する製造装置である。この製造装置(100)は、長尺基板(FB)を送り方向(X方向)に送り出す基板送り出し部(FR)と、長尺基板の幅方向の第1領域に対して加工する第1加工部(EX1)と、長尺基板の幅方向で第1領域と異なる第2領域に対して加工する第2加工部(EX3)と、長尺基板の幅方向に互いに離間して形成された第1マーク(AM1)、第2マーク(AM2)及び第3マーク(AM3)を検出するマーク検出部と、を備える。そして第1マークと第2マークとに基づいて第1加工部の位置調整を行い、第2マークと第3マークとに基づいて第2加工部の位置調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶表示素子又は電界放出ディスプレイ(FED:フィールドエミッション・ディスプレイ)などフラットパネル表示素子の製造技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL,液晶表示素子などの表示素子は、小型、薄型、低消費電力、及び軽量という特徴を有するため、現在、各種の電子機器に広く用いられている。これら表示素子は大型化が進んでいる。大型化したロール状に巻かれた帯状可撓性シート基板に表示素子を形成するには、帯状可撓性シート基板の変形が製品の歩留まりに大きく影響する。このため、製造工程における帯状可撓性シート基板の位置情報(アライメント情報)の正確な取得が液晶表示素子の製品の歩留まり向上に大きく影響することになる。
【0003】
特許文献1は有機ELの表示素子の低減、ランニング・コストの低減の対策として、ロール状の可撓性シート基板で有機ELの表示素子を製造する製造装置を開示する。特許文献1に開示されるように、可撓性シート基板を用いて基板上に有機EL素子を形成する場合、位置情報を得るためにディテクタを用いて可撓性シート基板のマークを検出している。特許文献1の開示する発明は、可撓性シート基板のマークは可撓性シート基板の幅方向の片側の端辺に形成されている。
【特許文献1】特開2003−133068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、可撓性のシート基板は、加工工程において熱が与えられて伸縮する場合がある。また、可撓性のシート基板が搬送される際には可撓性シート基板にしわが発生しないように、可撓性のシート基板に所定のテンションを掛ける必要がある。例えば厚さが100μmの可撓性のシート基板の一部が101μmの厚みであると、所定のテンションを掛けた際に可撓性シート基板の伸びにムラが生じてしまう。このような可撓性のシート基板の伸縮を高精度に把握しなければ精度良い表示素子を製造することができない。
そこで、可撓性のシート基板が部分的に伸縮している場合でも高精度に表示素子を製造するため、高精度に位置検出できる表示素子用の製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点の表示素子の製造装置は、所定幅の可撓性の長尺基板に表示素子を製造する製造装置である。この製造装置は、長尺基板を送り方向に送り出す基板送り出し部と、長尺基板の幅方向の第1領域に対して加工する第1加工部と、長尺基板の幅方向で第1領域と異なる第2領域に対して加工する第2加工部と、長尺基板の幅方向に互いに離間して形成された第1マーク、第2マーク及び第3マークを検出するマーク検出部と、を備える。そして第1マーク又は第2マークに基づいて第1加工部の位置調整を行い、第2マーク又は第3マークに基づいて第2加工部の位置調整を行う。
【0006】
第2の観点の表示素子の製造方法は、所定幅の可撓性の長尺基板に表示素子を製造する製造方法である。この製造方法は、長尺基板を送り方向に送り出す基板送り出し工程と、長尺基板の幅方向に互いに離間して形成された第1マーク、第2マーク及び第3マークを検出するマーク検出工程と、第1マーク又は第2マークに基づいて位置調整が行われ、長尺基板の幅方向の第1領域に加工する第1加工工程と、第2マーク又は第3マークに基づいて位置調整が行われ、長尺基板の幅方向の第1領域と異なる第2領域に対して加工する第2加工工程と、を備える。
【0007】
第3の観点の表示素子の製造装置は、所定幅の可撓性の長尺基板に表示素子を製造する製造装置である。この製造装置は、長尺基板を送り方向に送り出す基板送り出し部と、長尺基板の幅方向の第1領域に対して加工する第1加工部と、長尺基板の幅方向で第1領域と異なる第2領域に対して加工する第2加工部と、第1加工部が第1領域に加工した第1加工領域と及び第2加工部が第2領域に加工した第2加工領域とを検出するマーク検出部と、第1領域内の第1加工領域の第1位置情報と第2領域内の第2加工領域の第2位置情報とを算出する位置算出部と、第1位置情報と第2位置情報とに基づいて、第1加工部及び第2加工部の位置調整を行うフィードバック部と、を備える
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造装置及び製造方法は、幅方向に伸縮しやすい可撓性シート基板に対して、アライメントマークを検出することでシート基板の伸縮を計測することができる。また、シート基板の幅方向の部分的な伸縮に対して加工部の位置精度を高めることができ、不良の少ない表示素子を量産できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<<薄膜トランジスタTFTの製造方法:実施形態1>>
図1は、本実施形態の薄膜トランジスタTFTの製造装置100の一例を説明する説明図である。薄膜トランジスタTFTを製造した後、有機ELの発光層などが形成される。本実施形態では発光層の説明は割愛する。
【0010】
薄膜トランジスタTFTの製造装置100は、ロール状に巻かれた可撓性のシート基板FBを送り出すための供給ロールRLを備えている。供給ロールRLが所定速度の回転を行うことで、シート基板FBが搬送方向である矢印方向に送られる。
【0011】
本実施形態で用いるシート基板FBは、耐熱性の樹脂フィルムであり、具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂で光透過機能があるものを使うことができる。さらにシート基板FBは、熱を受けても寸法が変わらないように無機フィラーを樹脂フィルムに混合して、熱膨張係数を小さくすることができる。無機フィラーの例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素などが挙げられる。シート基板FBは例えば長さ200m、幅2m、厚さ100μmである。なお、本実施形態において、シート基板FBは、ロール状に巻かれた可撓性のシート基板に限定されず、ガラスプレートのような基板であってもよい。また、本実施形態におけるシート基板FBは、ロール状に巻かれている必要もない。さらに、本実施形態における製造装置100は、シート基板FBを供給ロールRLから搬送する構成に限らず、所定の大きさのシート基板FBを交換、又は複数の所定の大きさのシート基板FBを個別に搬送するような構成であってもよい。
【0012】
図1では薄膜トランジスタTFTの製造方法の最初の工程では、表面改質層SRFをシート基板FBに成膜する。図1に示されるように、この表面改質層SRFは、印刷ローラPR1に染み込ませた状態でオフセット印刷などによりシート基板FBに塗布される。表面改質層SRFとしては例えば自己組織化膜(self-assembled monolayer)が使用される。次に温風ヒータHTは200度C前後の温風を噴出し、表面改質層SRFを乾燥させる。
【0013】
次の工程ではインプリントローラ10及び転写ローラ15が設けられている。シート基板FBは、インプリントローラ10のローラ表面は鏡面仕上げされており、そのローラ表面にアライメントマークAM(図3を参照)用の凹凸パターンを有する微細インプリント用モールド11が取り付けられている。
【0014】
インプリントローラ10が押圧されるシート基板FBを支えるように転写ローラ15が配置されている。押圧した隔壁BAが形状を保つように転写ローラ15はシート基板FBをガラス転移点以上に熱する。微細インプリント用モールド11に形成されたアライメントマークAM(図3を参照)の凹凸パターンがシート基板FBの表面に転写される。
【0015】
次の工程では、露光装置EXは、薄膜トランジスタTFT用のパターンをシート基板FBに露光する。露光装置EXは光ファイバ41から紫外光を薄膜トランジスタTFT用のパターンに変化させて、投影光学系48でシート基板FBに投影される。露光装置EXの上流下流にはアライメントカメラCA1及びCA2が配置されている。
【0016】
露光装置EXの概略構成は次のとおりである。ファイバ41から射出した光ビームは、コリメート光学系42を通過し、ミラー43で反射される。反射された光ビームは、露光装置EXを構成するDMD(Digital Micro mirror Device)44を均一に照明する。DMD44は、微小領域に区分されたデバイスとしての多数のマイクロミラーからなり、各マイクロミラーの角度を変化させることにより光ビームを所定の画像データに応じて変調する可変成形マスクとして機能する。
【0017】
DMD44により反射された光ビームは、リレー光学系45に入射する。光ビームは、リレー光学系45を介することにより拡大されて、マイクロレンズアレイ46に入射する。
マイクロレンズアレイ46は、DMD44を構成するマイクロミラーのそれぞれに対応する多数の要素レンズを有している。
【0018】
マイクロレンズアレイ46の各要素レンズを通過した光ビームは、マイクロレンズアレイ46の焦点面またはその近傍に配置されている固定点像視野絞り47に入射する。固定点像視野絞り47の各開口部を通過することにより、露光装置EX内で発生するゴースト及びDMD44のオンオフ時に発生する像流れによる露光への悪影響を防止することができる。
【0019】
固定点像視野絞り47の各開口部を通過した光ビームは、投影光学系48に入射する。投影光学系48を通過した光ビームは、シート基板FB上の所定の露光領域に所定のパターン像を形成する。
【0020】
本実施形態では、シート基板FBの幅が長く1つの露光部を有する露光装置では幅全体を露光領域にすることはコストがかかるため、3つの露光部(EX1〜EX3)を有する露光装置EXを配置している。また、シート基板FBは厚み100μmであるが、例えばシート基板FBの厚みが102μmの箇所とか98μmの箇所とかのように、シート基板FBの厚みに数μm程度のムラがある場合、一定の張力をかけると箇所によって伸縮がかわってしまう。このようなシート基板FBの伸縮に対応するためにも複数の露光部を有する露光装置EXを配置している。
【0021】
露光装置EXが薄膜トランジスタTFT用のパターンをシート基板FBの表面改質層SRFに露光すると、表面改質層SRFが昇華する。これにより、薄膜トランジスタTFTの配線パターンがシート基板FBに形成される。
【0022】
次の工程では、液滴塗布装置30はメタルインクMTをゲート電極用の配線パターンに塗布する。液滴塗布装置30は、インクジェット方式又はディスペンサー方式を採用することができる。インクジェット方式としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。搬送ローラFRが回転することでシート基板FBが矢印方向に送り出される。次に温風ヒータHTは200度C前後の温風を噴出し、メタルインクMTを焼成する。これによりゲート電極GTが乾燥される。液滴塗布装置30の上流下流にはそれぞれアライメントカメラCA3及びCA4が配置されている。
【0023】
次の工程では、印刷ローラPR3によるオフセット印刷法などにより、シート基板FBに絶縁体ISの層が形成される。この絶縁体ISは温風ヒータHTなどを使用して乾燥される。印刷ローラPR3の上流下流にはそれぞれアライメントカメラCA5及びCA6が配置されている。
【0024】
図1では図示されていないが、その後ソース電極、ドレイン電極などが形成され、さらに有機半導体OGの層などが形成される。
薄膜トランジスタTFTの製造装置100は、搬送制御部90を有している。搬送制御部90は、供給ロールRL及び印刷ローラPR1から印刷ローラPR3の速度制御を行う。また、搬送制御部90は、複数のアライメントカメラCA(CA1からCA6)からアライメントマークAMの検出結果を受け取り、露光装置EXのDMD44の露光タイミングなどを制御する。
【0025】
<第1露光部ないし第3露光部の配置、アライメントカメラの配置>
図2は、薄膜トランジスタTFTの製造装置100の露光装置EX周辺を側面側から見た概略側面図である。図3は、露光装置EX周辺を上から見た図である。
【0026】
薄膜トランジスタの製造装置100において、特に薄膜トランジスタの性能を左右する露光処理におけるシート基板FBの位置決めが、製品の歩留まりと、コスト低減に大きな影響を与える。以下はシート基板FBと露光装置EXとの位置決めについて説明する。
【0027】
図2及び図3に示されるように、露光装置EXは第1露光部EX1、第2露光部EX2及び第3露光部EX3を備えている。第1露光部EX1と第2露光部EX2とが搬送方向(X軸方向)に同一位置に配置され、第3露光部EX3がその下流に配置されている。第1露光部EX1、第2露光部EX2及び第3露光部EX3の構成は同じなので、露光装置EXとして構成を説明する。
【0028】
図2において、露光装置EXの投影光学系48の前後には、シフト調整機構61及び倍率調整機構63が配置されている。シフト調整機構61は、回転可能に構成されている2枚のガラス板を有している。2枚のガラス板が回転することによりシート基板FB上におけるパターンの像がシフトする。倍率調整機構63は例えば凹レンズ、凸レンズ、凹レンズから構成されており、これらのレンズを上下に移動させることによりシート基板FB上に形成されるパターン像の倍率の調整を行なうことができる。倍率調整機構63を通過した光ビームは、シート基板FB上の所定の露光領域に所定のパターン像を形成する。また、上述した固定点像視野絞り47は、回転機構として、例えば、XY平面内において、回転可能としてもよい。その回転機構は、固定点像視野絞り47を微小量回転させることにより、形成されたパターン像を調整することができる。なお、回転機構は、固定点像視野絞り47以外にも、固定点像視野絞り47とマイクロレンズアレイ46とを一体的に回転させる構成であってもよい。
【0029】
搬送制御部90は、位置演算部92と調整駆動部94と接続されている。露光装置EXの上流に配置されたアライメントカメラCA1及び下流に配置されたアライメントカメラCA2は検出した画像信号を位置演算部92に送る。その位置演算部92は演算結果を搬送制御部90に送り、搬送制御部90は調整駆動部94に調整量の信号を送る。また、調整駆動部94は、上述の回転機構(ここでは、固定点像視野絞り47)、シフト調整機構61及び倍率調整機構63に調整量に応じた駆動信号を出力する。
【0030】
図3に示されるように、露光装置EXの下流には薄膜トランジスタ及び画素電極Pの表示領域51のパターンがシート基板FBに形成されている。露光装置EXの上流では薄膜トランジスタのパターンが形成されていないが、理解を助けるため便宜上シート基板FBに点線で描かれている。シート基板FBは、そのほぼ中央に矩形状の表示領域51のパターンが形成されている。表示領域51には、複数の画素電極Pがマトリクス状に形成されている。マトリクス状に配置された画素電極Pの外周部分には信号線駆動回路55及び走査駆動回路57が設けられている。
【0031】
図3に示すように、第1露光部EX1の露光領域は、矩形状でかつその一方が傾斜状であり、第2露光部EX2の露光領域も、矩形状でかつその一方が傾斜状である。また、第3露光部EX3の露光領域は台形形状である。第1露光部EX1の露光領域の傾斜部は、第3露光部EX3の露光領域における台形形状の傾斜部と重なり合っている。また、第2露光部EX2の露光領域の傾斜部は、第3露光部EX3の露光領域における台形形状の傾斜部と重なり合っている。すなわちX軸方向に伸びる領域TR(点線で囲まれた領域)において第1露光部EX1、第2露光部EX2及び第3露光部EX3の露光領域が重なっている。それらの露光領域のつなぎ目を目立たなくするためである。
【0032】
信号線駆動回路55の幅方向(Y軸方向)の外側にはアライメントマークAM1及びAM4が形成されている。また、アライメントマークAM2及びAM3はX軸方向に形成される表示領域51ごとに、シート基板FBの中央領域に、具体的にはX軸方向に伸びる領域TR(点線で囲まれた領域)に形成されている。また、アライメントマークAM1及びAM4は、アライメントマークAM2及びAM3のY方向側にも、並列してそれぞれ形成されている。これらのアライメントマークAM(アライメントマークAM1ないしAM4)はインプリントローラ10(図1参照)がシート基板FBを押圧して形成されたものである。
【0033】
なお、図3に示されるアライメントマークAM(アライメントマークAM1ないしAM4)は四角形で描かれているが、アライメントマークAMの形状は特に限定が無く、十字型のアライメントマークAMであってもよい。
【0034】
露光装置EXの上流にはアライメントカメラCA1が配置されており、Y軸方向に配置されたアライメントマークAM1ないしAM4を観察するために、アライメントカメラCA1もカメラCA1−1ないしカメラCA1−4が配置されている。同様に、露光装置EXの下流にはアライメントカメラCA2のカメラCA2−1ないしカメラCA2−4が配置されている。これらアライメントカメラCA1及びCA2は、アライメントマークAM1ないしAM4を観察するための波長λの観察光を照射する照明光源と画像を撮像するCCDとを備えている。
【0035】
シート基板FBがほとんど透明な部材である場合に、インプリントローラ10(図1参照)がシート基板FBをアライメントマークAM1ないしAM4を形成する際には、それらの段差dを調整すると観察光の波長λによる反射率を押さえることが可能になる。即ち、段差をdとしたとき、2×d=m×λ(mは整数)とすれば、段差がある部分と段差パターンの存在しない表面との間の区別がつかないことになり、像の情報が消える。一方、d=(2m+1)×λ/4のときに段差がある部分と段差パターンの存在しない表面との間の情報が最大になることになる。したがって、アライメントカメラCA1及びCA2の観察光の波長λを考慮してインプリントローラ10はアライメントマークAM1ないしAM4を形成する。
【0036】
<シート基板FBの搬送と露光装置EXの位置調整>
<フィードフォワード形式>
図4は、図2又は図3で示された露光装置EXの上流に配置されたアライメントカメラCA1(カメラCA1−1ないしカメラCA1−4)の検出結果に基づいて、第1露光部EX1、第2露光部EX2及び第3露光部EX3のX軸方向及びY軸方向の位置調整を行うフローチャートである。
【0037】
可撓性シート基板は、可撓性シート基板FBが搬送される際には、可撓性シート基板FBに所定のテンションがかけられている。この際に、例えば厚さが100μmの可撓性シート基板FBの一部が101μmの厚みであると、所定のテンションを掛けた際に可撓性シート基板の伸びにムラが生じてしまう。このような可撓性シート基板FBの伸縮を高精度に把握して、第1露光部EX1、第2露光部EX2及び第3露光部EX3のX軸方向及びY軸方向の位置調整を行う。
【0038】
ステップP1において、インプリントローラ10(図1参照)によりアライメントマークAM(アライメントマークAM1ないしAM4)が熱転写で形成される。
【0039】
ステップP2では、露光装置EXの上流に配置されたアライメントカメラCA1(カメラCA1−1ないしカメラCA1−4)で、搬送されてきたシート基板FBのアライメントマークAM1からAM4を撮像する。
【0040】
次に、ステップP3では、位置演算部92がアライメントマークAM1ないしAM4がある本来の位置から、撮像されたアライメントマークAM1ないしAM4がどれだけX軸方向及びY軸方向にずれているかを演算する。なお、例えば、図3に示したY軸方向に沿って並列に形成されたアライメントマークAM1からAM4をアライメントカメラCA1−1ないしCA1−4を用いて同時に計測することで、相対的な回転ずれやX軸方向のずれを算出することができる。
【0041】
ステップP4では、記憶された第1露光部EX1、第2露光部EX2及び第3露光部EX3の位置から搬送されてきたシート基板FBに対してX軸方向及びY軸方向のどれだけ移動させるべきかの補正量を、搬送制御部90が算出する。
次に、ステップP5では、搬送制御部90から補正量が調整駆動部94に送られ、調整駆動部94は、回転機構(例えば、固定点像視野絞り47)、シフト調整機構61及び倍率調整機構63に調整量に応じた駆動信号を出力する。
【0042】
またステップP6では、回転機構(例えば、固定点像視野絞り47)、シフト調整機構61及び倍率調整機構63によって第1露光部EX1、第2露光部EX2及び第3露光部EX3のX軸方向及びY軸方向の調整が行われる。以上により、露光装置EXの上流に配置されたアライメントカメラCA1による、第1露光部EX1、第2露光部EX2及び第3露光部EX3のX軸方向及びY軸方向の位置調整が完了する。なお、上述したように、図3に示したY軸方向に沿って並列に形成されたアライメントマークAM1からAM4をアライメントカメラCA1−1ないしCA1−4を用いて同時に計測することで、上述の回転調整、シフト調整及び倍率調整は、より高精度に行うことができる。
【0043】
<フィードバック形式 その1>
図5は、図3で示された第1露光部EX1と第1露光部EX1の下流に配置されたアライメントカメラCA2−1とを切り出した図であり、その下にアライメントマークAM1の状態を拡大して示してある。
【0044】
第1露光部EX1に搬送されてくるシート基板FBは、すでに正方形のアライメントマークAM1が形成されている。そのアライメントマークAM1は図中の左下に描かれた状態である。
【0045】
第1露光部EX1は、表示領域51及び信号線駆動回路55などをシート基板FBに露光するとともに、アライメントマークAM1に対して丸パターンEAを露光する。この丸パターンEAはシート基板FBの搬送速度を考慮して、第1露光部EX1によってアライメントマークAM1の中央に丸パターンEAを露光する。しかし、図中の中下に描かれたように丸パターンEAがアライメントマークAM1の中央からずれた位置に露光されている。
【0046】
図中の右下に描かれたアライメントマークAM1は、アライメントカメラCA2−1が撮像した画像である。位置演算部92は、画像処理によりアライメントマークAM1の外枠からアライメントマークAM1の中央位置を演算するとともに丸パターンEAの中央位置を演算する。そして位置演算部92は、アライメントマークAM1の中央位置と丸パターンEAの中央位置とのX軸方向のずれ量ΔX及びY軸方向のすれ量ΔYを演算する。
【0047】
図6は、図5で示された第1露光部EX1の下流に配置されたアライメントカメラCA2−1の検出結果に基づいて、第1露光部EX1のX軸及びY軸方向の位置調整を行うフローチャートである。
【0048】
ステップP11において、インプリントローラ10(図1参照)によりアライメントマークAM1が熱転写で形成される。
ステップP12において、シート基板FBの搬送速度を考慮して第1露光部EX1がアライメントマークAM1内に丸パターンEAを露光する。第1露光部EX1はアライメントマークAM1の中央に丸パターンEAを露光する。この丸パターンEAは図1で示されたDMD44で形成される。
【0049】
ステップP13では、露光装置EXの下流に配置されたアライメントカメラCA2−1で、搬送されてきたシート基板FBのアライメントマークAM1を撮像する。
【0050】
次に、ステップP14では、位置演算部92がアライメントマークAM1の中央から丸パターンEAがどれだけX軸方向又はY軸方向にずれているかを演算する。なお、搬送方向であるX軸方向はシート基板FBの搬送速度の変動もあるが、図3に示されたようにアライメントカメラCA1とアライメントカメラCA2とで同じアライメントマークAMを検出するなどして、位置演算部92が実際のシート基板FBの搬送速度を演算する。これによって、シート基板FBの搬送速度の誤差を考慮し、アライメントマークAM1の中央から丸パターンEAがどれだけX軸方向又はY軸方向にずれているかを演算する。また、説明の便宜上、アライメントマークAM1の中央から丸パターンEAのずれ量を演算しているが、アライメントマークAM1の辺を基準に丸パターンEAのずれ量を演算してもよい。
【0051】
ステップP15では、第1露光部EX1をシート基板FBに対してX軸方向及びY軸方向のどれだけ移動させるべきかの補正量を、搬送制御部90が算出する。
次に、ステップP16では、搬送制御部90から補正量が調整駆動部94に送られ、調整駆動部94は、回転機構(例えば、固定点像視野絞り47)、シフト調整機構61及び倍率調整機構63に調整量に応じた駆動信号をフィードバックする。
【0052】
またステップP17では、回転機構(例えば、固定点像視野絞り47)、シフト調整機構61及び倍率調整機構63によって第1露光部EX1のX軸方向及びY軸方向の調整が行われる。なお、アライメントマークAM1のみを説明したがアライメントマークAM2も同様に観察して第1露光部EX1の調整が行われる。以上により、露光装置EXの下流に配置されたアライメントカメラCA2−1による第1露光部EX1の位置調整が完了する。図5及び図6では説明しなかったが、第2露光部EX2及び第3露光部EX3のX軸方向及びY軸方向の調整も同様なフィードバック形式で調整可能である。
【0053】
<フィードバック形式 その2>
図7は、図3で示された第1露光部EX1及び第3露光部EX3と第1露光部EX1及び第3露光部EX3の下流に配置されたアライメントカメラCA2−2とを切り出した図であり、その下にアライメントマークAM2の状態を拡大して示してある。
【0054】
図3で説明されたように、第1露光部EX1及び第3露光部EX3の露光領域がともに重なる領域TR(点線で囲まれた領域)には、すでに正方形のアライメントマークAM2が形成されている。第1露光部EX1に搬送されてくるまでは、そのアライメントマークAM2は図中の左下に描かれた状態である。
【0055】
第1露光部EX1は、表示領域51などをシート基板FBに露光するとともに、アライメントマークAM2に対して四角枠パターンEBを露光する。この四角枠パターンEBはシート基板FBの搬送速度を考慮して、第1露光部EX1によってアライメントマークAM2の中央に四角枠パターンEBを露光する。しかし、図中の左から2番目に描かれたように四角枠パターンEBがアライメントマークAM2の中央からずれた位置に露光されている。
【0056】
第3露光部EX3は、表示領域51などをシート基板FBに露光するとともに、アライメントマークAM2に対して十字パターンECを露光する。この十字パターンECはシート基板FBの搬送速度を考慮して、第3露光部EX3によってアライメントマークAM2の中央に十字パターンECを露光する。しかし、図中の右から2番目に描かれたように十字パターンECがアライメントマークAM2の中央からずれた位置に露光されている。
【0057】
図中の右下に描かれたアライメントマークAM2は、アライメントカメラCA2−2が撮像した画像である。位置演算部92は、画像処理によりアライメントマークAM2の中央位置と四角枠パターンEBの中央位置とのX軸方向のずれ量ΔX1及びY軸方向のすれ量ΔY1を演算する。また同様にしてアライメントマークAM2の中央位置と十字パターンECの中央位置とのX軸方向のずれ量ΔX2及びY軸方向のすれ量ΔY2を演算する。なお、四角枠パターンEBの中央位置と十字パターンECの中央位置とのずれ量を演算しても良い。
【0058】
図8は、図7で示された第1露光部EX1及び第3露光部EX3の下流に配置されたアライメントカメラCA2−2の検出結果に基づいて、第1露光部EX1及び第3露光部EX3のX軸及びY軸方向の位置調整を行うフローチャートである。
【0059】
ステップP21において、インプリントローラ10(図1参照)によりアライメントマークAM2が熱転写で形成される。
ステップP22において、シート基板FBの搬送速度を考慮して第1露光部EX1がアライメントマークAM2内に四角枠パターンEBを露光する。第1露光部EX1はアライメントマークAM2の中央に四角枠パターンEBを露光する。この四角枠パターンEBは図1で示されたDMD44で形成される。
【0060】
ステップP23において、同様に第3露光部EX3がアライメントマークAM2内に十字パターンECを露光する。第3露光部EX3はアライメントマークAM2の中央に十字パターンECを露光する。この十字パターンECは図1で示されたDMD44で形成される。
ステップP24では、露光装置EXの下流に配置されたアライメントカメラCA2−2で、搬送されてきたシート基板FBのアライメントマークAM2を撮像する。
【0061】
次に、ステップP25では、位置演算部92がアライメントマークAM2の中央から四角枠パターンEB及び十字パターンECがどれだけX軸方向又はY軸方向にずれているかを演算する。この際にステップP14で説明したようにシート基板FBの搬送速度の誤差を考慮する。
【0062】
ステップP26では、第1露光部EX1及び第3露光部EX3をシート基板FBに対してX軸方向及びY軸方向のどれだけ移動させるべきかの補正量を、搬送制御部90が算出する。
次に、ステップP27では、搬送制御部90から補正量が調整駆動部94に送られ、調整駆動部94は、回転機構(例えば、固定点像視野絞り47)、シフト調整機構61及び倍率調整機構63に調整量に応じた駆動信号をフィードバックする。
【0063】
またステップP28では、回転機構(例えば、固定点像視野絞り47)、シフト調整機構61及び倍率調整機構63によって第1露光部EX1及び第3露光部EX3のX軸方向及びY軸方向の調整が行われる。なお、アライメントマークAM2のみを説明したがアライメントマークAM1又はAM3も同様に観察して第1露光部EX1及び第3露光部EX3の調整が行われる。以上により、露光装置EXの下流に配置されたアライメントカメラCA2−2による第1露光部EX1及び第3露光部EX3の位置調整が完了する。図7及び図8では説明しなかったが、第2露光部EX2及び第3露光部EX3のX軸方向及びY軸方向の調整も同様なフィードバック形式で調整可能である。
【0064】
<シート基板FBの搬送と液滴塗布装置30の位置調整>
図9は、薄膜トランジスタTFTの製造装置100の液滴塗布装置30周辺を上から見た図である。
【0065】
図9に示されるように、液滴塗布装置30はY軸方向に伸びる第1液滴塗布部30−1、第2液滴塗布部30−2及び第3液滴塗布部30−3を備えている。第1液滴塗布部30−1と第2液滴塗布部30−2とは搬送方向(X軸方向)に同一位置に配置され、第3液摘塗布部30−3がその下流に配置されている。第1液摘塗布部30−1、第2液摘塗布部30−2及び第3液摘塗布部30−3の構成は同じなので、液摘塗布装置30として構成を説明する。
【0066】
液滴塗布装置30は、複数列のノズル33をY軸方向に配置している。また、X軸方向も2行のノズル33が配置されている。液滴塗布装置30は、搬送制御部90から送られてくる位置信号に応じて、ノズル33からメタルインクMTを塗布するタイミング、メタルインクMTを塗布するノズル33を切り換える。
【0067】
第1液摘塗布部30−1のノズル33は、第3液摘塗布部30−3のノズル33とX軸方向に伸びる領域TR(点線で囲まれた領域)において重なり合っている。また、第2液摘塗布部30−2のノズル33は、第3液摘塗布部30−3のノズル33とX軸方向に伸びる領域TR(点線で囲まれた領域)において重なり合っている。
【0068】
液摘塗布装置30の上流にはアライメントカメラCA3が配置されており、Y軸方向に配置されたアライメントマークAM1ないしAM4を観察するために、アライメントカメラCA3もカメラCA3−1ないしカメラCA3−4が配置されている。同様に、液摘塗布装置30の下流にはアライメントカメラCA4のカメラCA4−1ないしカメラCA4−4が配置されている。これらアライメントカメラCA3及びCA4は、アライメントマークAM1ないしAM4を観察するための波長λの観察光を照射する照明光源と画像を撮像するCCDとを備えている。
【0069】
液摘塗布装置30の上流に配置されたアライメントカメラCA3はアライメントマークAM1ないしAM4を観察する。そして図4で説明したと同様なフィードフォワード形式で、液摘塗布装置30の複数のノズル33の塗布位置を変えることができる。
【0070】
図10は、図9で示された第1液滴塗布部30−1の下流に配置されたアライメントカメラCA4−1の検出結果に基づいて、第1液滴塗布部30−1のノズル33の選択を行うフローチャートである。
【0071】
ステップP41において、インプリントローラ10(図1参照)によりアライメントマークAM1が熱転写で形成される。
ステップP42において、シート基板FBの搬送速度を考慮して第1液滴塗布部30−1がアライメントマークAM1内にメタルインクMTを塗布する。第1液滴塗布部30−1はアライメントマークAM1の中央にメタルインクMTを塗布する。
【0072】
ステップP43では、第1液滴塗布部30−1の下流に配置されたアライメントカメラCA4−1で、搬送されてきたシート基板FBのアライメントマークAM1を撮像する。
【0073】
次に、ステップP44では、シート基板FBの搬送速度の誤差を考慮し、アライメントマークAM1の中央からメタルインクMTがどれだけX軸方向又はY軸方向にずれているかを演算する。また、説明の便宜上、アライメントマークAM1の中央からメタルインクMTのずれ量を演算しているが、アライメントマークAM1の辺を基準にメタルインクMTのずれ量を演算してもよい。
【0074】
ステップP45では、第1液滴塗布部30−1の複数のノズル33のうちシート基板FBに対してどのノズル33を使うべきかの補正量を、搬送制御部90が算出する。
ステップP46では、所定の箇所にメタルインクMTを塗布する際のノズル33を選択が行われる。図9及び図10では説明しなかったが、第2液滴塗布部30−2及び第3液滴塗布部30−3のノズル33の選択も同様なフィードバック形式で調整可能である。
【0075】
さらに、図7及び図8で示したフィードバック形式2と同様に、アライメントカメラCA4は第1液摘塗布部30−1のノズル33と第3液摘塗布部30−3のノズル33との関係をアライメントマークAM2に塗布したメタルインクMTを観察することで把握することもできる。
【0076】
<<薄膜トランジスタTFTの製造方法:実施形態2>>
図11は、実施形態2の薄膜トランジスタTFTの製造装置110の一例を説明する説明図である。薄膜トランジスタTFTを製造した後、有機ELの発光層などが形成される。実施形態2でも発光層の説明は割愛する。また、実施形態1と同じ符号は同じ部材であるため説明を割愛する。
【0077】
薄膜トランジスタTFTの製造装置110は、実施形態1の薄膜トランジスタTFTの製造装置100と以下の点で異なっている。
まず、インプリントローラ10の代わりにレーザー加工機20が配置されている。また、露光装置EXの上流及び下流に配置されたアライメントカメラCA1及びCA2の代わりに、シート基板FBを挟んで露光装置EXの反対側に配置されたアライメントカメラCA11及びCA12が配置されている。また、露光装置EXの上流及び下流にシート基板FBのバッファ領域BFが設けられている。さらに、液滴塗布装置30の代わりに、印刷ローラPR2が設けられている。
【0078】
図11では薄膜トランジスタTFTの製造方法の最初の工程では、表面改質層SRFをシート基板FBに成膜する。
次の工程ではレーザー加工機20がレーザー光LZを使ってアライメントマークAM(図12を参照)をシート基板FBに形成する。
【0079】
次の工程では、露光装置EXは薄膜トランジスタTFT用のパターンをシート基板FBに露光する。シート基板FBを挟んで露光装置EXの反対側に配置されたアライメントカメラCA11及びCA12が配置されている。アライメントカメラCA11及びCA12は露光装置EXの露光範囲においてシート基板FBを透過した像を撮像する。シート基板FBは透明でありメタルインクMTも未だ塗布されていないため、透過像が観察可能である。
【0080】
図11では示されていないが、実施形態1と同様に、Y軸方向に並んだアライメントマークAM(アライメントマークAM1ないしAM4)を観察するためアライメントカメラCA11(カメラCA11−1ないしカメラCA11−4)及びアライメントカメラCA12(カメラCA12−1ないしカメラCA12−4)もそれぞれ4つY軸方向に並んで配置されている。
【0081】
実施形態1と同様に、シート基板FBの伸縮に対応するため、3つの露光部(EX1〜EX3)を有する露光装置EXを配置している。露光装置EXの構造は実施形態1と同じである。なお、露光装置EXの露光条件などの変化に応じて必ずしもシート基板FBの搬送速度を一定にできないことがあるので、バッファ領域BFが設けられている。
【0082】
次の工程では、印刷ローラPR2はオフセット印刷法によりメタルインクMTをシート基板FBの電極用の配線パターンに塗布する。印刷ローラPR2には電極パターンに対応する箇所にメタルインクMTが染み込ませてある。印刷ローラPR2が回転することで基板FBが矢印方向に送り出されるとともに、シート基板FBの配線パターンを塗布する。
【0083】
図11では図示されていないが、その後ソース電極、ドレイン電極などが形成され、さらに有機半導体OGの層などが形成される。
【0084】
<アライメントマークAMを使ったフィードバック形式 その3>
図12は、図11で示された第1露光部EX1及び第3露光部EX3と、シート基板FBを挟んで第1露光部EX1及び第3露光部EX3の反対側に配置されたアライメントカメラCA11−2及びアライメントカメラCA12−2とを切り出した図である。その下に画素電極Pの状態を拡大して示してある。
【0085】
実施形態2でも、実施形態1と同様に、アライメントカメラCA11及びアライメントカメラCA12を使ってアライメントマークAMを観察することにより、第1露光部EX1及び第3露光部EX3の位置調整をすることは可能である。すなわち、アライメントカメラCA11及びアライメントカメラCA12は、上述したフィードフォワード形式、フィードバック形式1及びフィードバック形式2を実施することが可能である。フィードバック形式3は、アライメントマークAM2を使った例である。
【0086】
第1露光部EX1及び第3露光部EX3の露光領域がともに重なる領域TR(点線で囲まれた領域)が存在している。その領域に、第1露光部EX1は、薄膜トランジスタ及び画素電極Pを有する表示領域51をシート基板FBに露光する。通常画素電極Pは矩形形状でありその中央位置又は辺の位置を確認し易い。図中の左下に描かれたように第1露光部EX1は、画素電極Pを所定の位置に露光する。
【0087】
ここで、例えば、上述した第1露光部EX1及び第3露光部EX3による露光時においては、各投影光学系48には露光光による相当量の熱エネルギーが加わるため、各投影光学系48間でのパターン像の相対的なずれが生じる場合がある。このずれを画素電極P等の露光時においても補正することで、より高精度に画素電極P等を露光することができる。これは、アライメントマークAMによるフィードバック系を行うことで補正値を算出し、その補正値の状態を維持するように、アライメントカメラCAの画素を基準として、所定のDMD44の1素子からのスポット径の位置を常時計測し、上述の回転機構(例えば、固定点像視野絞り47)、シフト調整機構61及び倍率調整機構63を用いてパターン像のずれを補正するものである。
【0088】
具体的には、例えば、図12において、画素電極Pの露光前に、アライメントマークAM2上でDMD44の1素子をオンにして、アライメントマークAM2に露光されるDMD44の1素子のスポット径をアライメントカメラCA11−2で計測する。このとき、位置演算部92は、アライメントカメラCA11−2により送信された検出信号をもとに、計測されたDMD44の1素子のスポット位置に相当するアライメントカメラCA11−2の画素位置と、アライメントカメラCA11−2の基準となる画素位置との位置関係(例、距離など)をオフセット値として演算する。
【0089】
次に、アライメントカメラCA11−2は、上述の各露光部によって画素電極Pを露光する際に、アライメントマークAM2上でDMD44の1素子をオンにして、アライメントマークAM2に露光されるDMD44の1素子のスポット径を計測する。位置演算部92は、計測されたDMD44の1素子のスポット位置に相当するアライメントカメラCA11−2の画素位置と、アライメントカメラCA11−2の基準となる画素位置との位置関係を演算する。そして、位置演算部92は、その算出した位置関係と上述のオフセット値とを比較して、パターン像のずれ量を演算する。このパターン像のずれ量に基づいて、第1露光部EX1における上述の回転機構(例えば、固定点像視野絞り47)、シフト調整機構61及び倍率調整機構63を用いてパターン像のずれを補正する。なお、この補正は、1つ1つの画素電極Pの露光ごとに行ってもよいし、所定の画素電極Pごとに行ってもよい。また、本実施形態においては、第2露光部EX2及び第3露光部EX3においても、同様な補正を行ってもよいし、第1露光部EX1と組合せて相対的なずれ補正を行うようにしてもよい。
【0090】
また、本実施形態では、第1露光部EX1ないし第3露光部EX3の各継ぎ部分に各アライメントカメラ(例、アライメントカメラCA11−2等)を配置したが、第1露光部EX1ないし第3露光部EX3の各継ぎ部分を含まない各露光領域の両端で、かつ露光終了位置近傍に、各アライメントカメラ(例、アライメントカメラCA11−2等)を配置することでも、ほぼ形成された画素電極Pに対するDMD44の1素子のスポット位置を計測し、ほぼリアルタイムにパターン像のずれを補正することができる。
【0091】
なお、本実施形態においては、画素電極Pそのものを使って、画素電極Pに対するパターン像のずれを補正するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本実施形態では、シート基板FBの幅方向にアライメントマークAM1からAM4が形成されており、これらのアライメントマークに対応するように3つの露光部と4つのアライメントカメラを配置した。しかし、シート基板FBの幅方向にアライメントマークAM1からAM3が形成され、2つの露光部と3つのアライメントカメラを配置してもよい。また、シート基板FBの幅方向にアライメントマークが5以上形成され、それに対応する露光部とアライメントカメラを配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施形態1の薄膜トランジスタTFTの製造装置100の一例を説明する説明図である。
【図2】薄膜トランジスタTFTの製造装置100の露光装置EX周辺を側面側から見た概略側面図である。
【図3】露光装置EX周辺を上から見た図である。
【図4】図2又は図3で示されたアライメントカメラCA1の検出結果に基づいて、第1露光部EX1、第2露光部EX2及び第3露光部EX3のY軸方向の位置調整を行うフローチャートである。
【図5】図3で示された第1露光部EX1とアライメントカメラCA2−1とを切り出した図である。
【図6】図5で示されたアライメントカメラCA2−1の検出結果に基づいて、第1露光部EX1のX軸及びY軸方向の位置調整を行うフローチャートである。
【図7】第1露光部EX1及び第3露光部EX3とアライメントカメラCA2−2とを切り出した図である。
【図8】図7で示されたアライメントカメラCA2−2の検出結果に基づいて、第1露光部EX1及び第3露光部EX3のX軸及びY軸方向の位置調整を行うフローチャートである。
【図9】薄膜トランジスタTFTの製造装置100の液滴塗布装置30周辺を上から見た図である。
【図10】図9で示されたアライメントカメラCA4−1の検出結果に基づいて、第1液滴塗布部30−1のノズル33の選択を行うフローチャートである。
【図11】実施形態2の薄膜トランジスタTFTの製造装置110の一例を説明する説明図である。
【図12】図11で示された第1露光部EX1及び第3露光部EX3と、アライメントカメラCA11−2及びアライメントカメラCA12−2とを切り出した図である。
【符号の説明】
【0094】
10 … インプリントローラ
15 … 転写ローラ
11 … 微細インプリント用モールド
30 … 液滴塗布装置
33 … 複数列のノズル
41 … 光ファイバ、42 … コリメート光学系、43 … ミラー
44 … DMD、45 … リレー光学系、46 … マイクロレンズアレイ
47 … 固定点像視野絞り、48 … 投影光学系
55 … 信号線駆動回路
57 … 走査駆動回路
61 … シフト調整機構
63 … 倍率調整機構
90 … 搬送制御部、92 … 位置演算部、94 … 調整駆動部
100 110 … 製造装置
AM … アライメントマーク
BA … 隔壁
CA … アライメントカメラ
EA … 丸パターン、EB … 四角枠パターン、EC … 十字パターン
EX … 露光装置
FB … シート基板
GT … ゲート電極
HT … 温風ヒータ
IS … 絶縁体
MT … メタルインク
OG … 有機半導体
P … 画素電極
PR … 印刷ローラ
RL … 供給ロール
SRF … 表面改質層
TFT … 薄膜トランジスタ
TR … 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定幅の可撓性の長尺基板に表示素子を製造する製造装置において、
前記長尺基板を送り方向に送り出す基板送り出し部と、
前記長尺基板の幅方向の第1領域に対して加工する第1加工部と、
前記長尺基板の幅方向で前記第1領域と異なる第2領域に対して加工する第2加工部と、
前記長尺基板の幅方向に互いに離間して形成された第1マーク、第2マーク及び第3マークを検出するマーク検出部と、を備え、
前記第1マーク又は前記第2マークに基づいて前記第1加工部の位置調整を行い、前記前記第2マーク又は第3マークに基づいて前記第2加工部の位置調整を行うことを特徴とする表示素子の製造装置。
【請求項2】
前記第1マークと第3マークとは、前記長尺基板の両幅端領域に形成され、前記第2マークは前記第1マークと前記第3マークとの間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示素子の製造装置。
【請求項3】
前記第2マークは前記第1領域と前記第2領域との重複領域に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の表示素子の製造装置。
【請求項4】
前記表示素子が形成されない領域に前記第2マークが形成されていることを特徴とする請求項3に記載の表示素子の製造装置。
【請求項5】
前記第1加工部及び前記第2加工部より前記送り方向の上流に、前記第1マーク、第2マーク及び第3マークを前記長尺基板に形成するマーク形成部を備えることを特徴と請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の表示素子の製造装置。
【請求項6】
前記マーク形成部は、前記長尺基板に光ビームを照射して前記第1マーク、第2マーク及び第3マークのうち少なくとも1つのマークを形成する光ビーム光源部を含むことを特徴とする請求項5に記載の表示素子の製造装置。
【請求項7】
前記マーク形成部は、前記長尺基板を型押しして前記第1マーク、第2マーク及び第3マークのうち少なくとも1つのマークを形成するプリント部を含むことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の表示素子の製造装置。
【請求項8】
前記第1マーク、第2マーク及び第3マークのうち少なくとも2つのマークは、前記マーク検出器の検出波長に応じて型押しされる深さが互いに異なって型押しされることを特徴とする請求項7に記載の表示素子の製造装置。
【請求項9】
前記マーク検出部は前記第1マーク、第2マーク及び第3マークの反射光を検出することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の表示素子の製造装置。
【請求項10】
前記マーク検出部は前記第1マーク、第2マーク及び第3マークの透過光を検出することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の表示素子の製造装置。
【請求項11】
前記第1加工部及び前記第2加工部より前記送り方向の上流で且つ前記マーク形成部より下流に、前記マーク検出部が配置されていることを特徴とする請求項5に記載の表示素子の製造装置。
【請求項12】
前記第1加工部及び前記第2加工部より前記送り方向の下流に前記マーク検出部が配置され、前記マーク検出部は前記第1加工部が前記第1マーク及び前記第2マークに加工した加工領域及び前記第2加工部が前記第2マーク及び前記第3マークに加工した加工領域を検出することを特徴とする請求項1ないし請求項10に記載の表示素子の製造装置。
【請求項13】
前記第1マーク、前記第2マーク及び前記第3マークに加工した加工領域の位置情報を算出する位置算出部と、
前記位置情報に基づいて、前記第1加工部及び前記第2加工部の位置調整を行うフィードバック部と、
を備えることを特徴とする請求項12に記載の表示素子の製造装置。
【請求項14】
前記フィードバック部は、前記基板送り出し部で前記長尺基板を送り出した送り出し量と前記位置情報とに基づいて、前記第1加工部及び前記第2加工部の位置調整を行うことを特徴とする請求項13に記載の表示素子の製造装置。
【請求項15】
前記第1加工部及び前記第2加工部は、前記長尺基板に紫外光を照射する紫外光照射装置であることを特徴とする請求項1ないし請求項14に記載の表示素子の製造装置。
【請求項16】
前記第1加工部及び前記第2加工部は、前記長尺基板に導電性インクを塗布するインク塗布装置であることを特徴とする請求項1ないし請求項14に記載の表示素子の製造装置。
【請求項17】
所定幅の可撓性の長尺基板に表示素子を製造する製造方法において、
前記長尺基板を送り方向に送り出す基板送り出し工程と、
前記長尺基板の幅方向に互いに離間して形成された第1マーク、第2マーク及び第3マークを検出するマーク検出工程と、
前記第1マーク又は前記第2マークに基づいて位置調整が行われ、前記長尺基板の幅方向の第1領域に加工する第1加工工程と、
前記前記第2マーク又は前記第3マークに基づいて位置調整が行われ、前記長尺基板の幅方向の第1領域と異なる第2領域に対して加工する第2加工工程と、
を備えることを特徴とする表示素子の製造方法。
【請求項18】
前記第1マークと第3マークとは、前記長尺基板の両幅端領域に形成され、前記第2マークは前記第1マークと前記第3マークとの間に形成されていることを特徴とする請求項17に記載の表示素子の製造方法。
【請求項19】
前記第2マークは前記第1領域と前記第2領域との重複領域に形成されていることを特徴とする請求項18に記載の表示素子の製造方法。
【請求項20】
前記表示素子が形成されない領域に前記第2マークが形成されていることを特徴とする請求項19に記載の表示素子の製造方法。
【請求項21】
前記第1加工工程及び前記第2加工工程より前記送り方向の上流に、前記第1マーク、第2マーク及び第3マークを前記長尺基板に形成するマーク形成工程を備えることを特徴と請求項17から請求項20のいずれか一項に記載の表示素子の製造方法。
【請求項22】
前記マーク形成工程は、前記長尺基板に光ビームを照射して前記第1マーク、第2マーク及び第3マークのうち少なくとも1つのマークを形成することを特徴とする請求項21に記載の表示素子の製造方法。
【請求項23】
前記マーク形成工程は、前記長尺基板を型押しして前記第1マーク、第2マーク及び第3マークのうち少なくとも1つのマークを形成することを特徴とする請求項21に記載の表示素子の製造方法。
【請求項24】
前記第1マーク、第2マーク及び第3マークのうち少なくとも2つのマークは、前記マーク検出工程で使用される検出波長に応じて型押しされる深さが互いに異なって型押しされることを特徴とする請求項23に記載の表示素子の製造方法。
【請求項25】
前記マーク検出工程で検出した結果に基づいて、前記幅方向の位置調整をフィードフォワード形式で行うことを特徴とする請求項17ないし請求項24のいずれか一項に記載の表示素子の製造方法。
【請求項26】
前記マーク検出工程で検出した結果に基づいて、前記幅方向の位置調整をフィードバック形式で行うことを特徴とする請求項17ないし請求項24のいずれか一項に記載の表示素子の製造方法。
【請求項27】
前記マーク検出工程で検出した結果に基づいて、前記送り方向の位置調整をフィードバック形式で行うことを特徴とする請求項17ないし請求項24のいずれか一項に記載の表示素子の製造方法。
【請求項28】
前記第1加工工程及び前記第2加工工程は、前記長尺基板に紫外光を照射する紫外光照射装置であることを特徴とする請求項17ないし請求項27に記載の表示素子の製造方法。
【請求項29】
前記第1加工部及び前記第2加工部は、前記長尺基板に導電性インクを塗布するインク塗布装置であることを特徴とする請求項17ないし請求項27に記載の表示素子の製造方法。
【請求項30】
所定幅の可撓性の長尺基板に表示素子を製造する製造装置において、
前記長尺基板を送り方向に送り出す基板送り出し部と、
前記長尺基板の幅方向の第1領域に対して加工する第1加工部と、
前記長尺基板の幅方向で前記第1領域と異なる第2領域に対して加工する第2加工部と、
前記第1加工部が前記第1領域に加工した第1加工領域と及び前記第2加工部が前記第2領域に加工した第2加工領域とを検出するマーク検出部と、
前記第1領域内の第1加工領域の第1位置情報と前記第2領域内の第2加工領域の第2位置情報とを算出する位置算出部と、
前記第1位置情報と第2位置情報とに基づいて、前記第1加工部及び前記第2加工部の位置調整を行うフィードバック部と、
を備えることを特徴とする表示素子の製造装置。
【請求項31】
前記第1加工領域及び前記第2加工領域が前記表示素子であることを特徴とする請求項30に記載の表示素子の製造装置。
【請求項32】
前記フィードバック部は、前記幅方向の位置調整を行うことを特徴とする請求項30又は請求項31に記載の表示素子の製造装置。
【請求項33】
前記マーク検出部で検出した結果に基づいて、前記幅方向の位置調整をフィードバック形式で行うことを特徴とする請求項30ないし請求項32のいずれか一項に記載の表示素子の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−91990(P2010−91990A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264570(P2008−264570)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】