説明

表示装置、表示方法及び車両

【課題】知覚される奥行き感の誤差を低減し、観視者の片目の位置の変化に対応させて映像を含む光束を片目に向けて投影する表示装置、表示方法及び車両を提供する。
【解決手段】表示オブジェクトを有する映像を含む光束112を観視者の片目101に向けて投影する映像投影部115と、片目101の位置と光束112の投影領域114の位置とを推定する位置推定部210と、推定された片目の位置と投影領域の位置との差に基づいて、片目の位置と投影領域とが重なるように投影領域の位置を変化させる制御部250と、を備える表示装置を提供する。制御部は、片目の位置が投影領域の内側部に位置するときよりも、片目の位置が投影領域の縁部または前記縁部よりも外側に位置するときの方が、投影領域の位置を大きく変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、表示方法及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一例としてHUD(Head-Up Display)がある。HUDは、例えば車両用の表示装置や航空機のコックピット用の表示装置として用いられ、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などの画像形成装置により形成された表示映像を、フロントガラス等に設けられるハーフミラー等のコンバイナ(半透過反射体)に反射させて、車両や航空機を操縦する観視者に与える。HUDは、コンバイナで反射して観視者に到る表示映像と、コンバイナを透過して観察者に到る外界映像と、を重畳させて観視者に与える。その結果、観視者は表示映像と外界映像とを同時に見ることが可能であり、自然で見易い映像を提供できる。
【0003】
通常のHUDの場合、HUDの表示は両眼で観視される。HUDによって表示される表示映像の奥行き位置は、光学的な虚像位置であり、多くの場合操縦者から2〜3m先の位置に設定される。従って、両眼視のHUDの場合、操縦者が操縦中に遠方を見ながらHUDの表示を同時に見ようとすると、HUDの表示映像は2重像となって認識されるため、見難い。逆に、HUDの表示映像を見ようとすると、両眼視差によって表示像は2〜3m先に認識されるために、背景の遠方を同時に認識し難い。
【0004】
さらに、HUDにおいては、表示映像は、所定の厚みを有するフロントガラス等のコンバイナで反射して観視者に投影されるので、この映像を両眼で見ると二重像が発生し、表示が見難くなる。
【0005】
このような両眼視差に起因した見難さを解決するために、片目で表示像を観察する単眼視HUDが提案されている。また、上記の二重像を防止する目的で、片目のみに表示像を呈示する技術が提案されている(特許文献1)。
【0006】
この時、表示映像は片目のみに呈示されるため、映像を含む光束が観視者の片目の位置に精度良く制御されて投影されることが必要である。
【0007】
このために、例えば、観視者の片目の位置を検出し、その検出結果に基づいて投影光学系の例えばミラーの角度等を調整して、片目の位置が光束の投影領域の内部に入るように、光束の投影領域の位置を制御することが考えられる。このようにして投影領域の位置を変化させた場合、片目から見たときの映像形成位置の角度、例えば俯角が変化する。片目での観視において俯角が変化すると、知覚される奥行き感が大きく変化してしまうため、設定された奥行き位置と知覚される奥行き感との間に誤差が生じ、実用上問題となる。
【0008】
従来の技術では、この問題を解決して、映像を含む光束を観視者の片目の位置に精度良く配置する技術は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−228172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、知覚される奥行き感の誤差を低減し、観視者の片目の位置の変化に対応させて映像を含む光束を片目に向けて投影する表示装置、表示方法及び車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、表示オブジェクトを有する映像を含む光束を観視者の片目に向けて投影する映像投影部と、前記片目の位置と前記光束の投影領域の位置とを推定する位置推定部と、前記位置推定部によって推定された前記片目の位置と前記投影領域の位置との差に基づいて、前記映像投影部を制御することにより、前記片目の位置と前記投影領域とが重なるように前記投影領域の位置を変化させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記片目の位置が前記投影領域の内側部に位置するときよりも、前記片目の位置が前記投影領域の縁部または前記縁部よりも外側に位置するときの方が、前記投影領域の位置を大きく変化させることを特徴とする表示装置が提供される。
【0012】
本発明の別の一態様によれば、表示オブジェクトを有する映像を含む光束を観視者の片目に向けて投影する映像投影部と、前記片目の位置と前記光束の投影領域の位置とを推定する位置推定部と、前記位置推定部によって推定された前記片目の位置と前記投影領域の位置との差に基づいて、前記映像投影部を制御することにより、前記片目の位置と前記投影領域とが重なるように前記投影領域の位置を変化させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記片目の位置が前記投影領域の縁部または前記縁部よりも外側に位置するときに、前記片目の位置と、前記投影領域の前記縁部よりも内側の内側部と、が重なるように前記投影領域の位置を変化させることを特徴とする表示装置が提供される。
【0013】
本発明の別の一態様によれば、観視者の片目の位置を推定し、表示オブジェクトを有する映像を含む光束を前記観視者の前記片目に投影して前記光束の投影領域の位置を推定し、推定された前記片目の位置が前記投影領域の内側部に位置するときよりも、前記片目の位置が前記投影領域の縁部または前記縁部よりも外側に位置するときの方が、前記投影領域の位置の移動距離を大きくして、前片目の位置が前記内側部に入るように、前記投影領域の位置を移動することを特徴とする表示方法が提供される。
【0014】
本発明の別の一態様によれば、上記のいずれかに記載の表示装置と、前記表示装置から出射される前記光束を前記観視者に向けて反射させるフロントガラスと、を備えたことを特徴とする車両が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、知覚される奥行き感の誤差を低減し、観視者の片目の位置の変化に対応させて映像を含む光束を片目に向けて投影する表示装置、表示方法及び車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の動作を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の要部の構成を示す模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の動作を示す模式図である。
【図5】比較例の表示装置の動作を示す模式図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る表示装置及び比較例の表示装置の特性を示す模式図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の動作を示す模式図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の動作を示す模式図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の動作を示す模式図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る表示方法を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の動作を示す模式図である。
図2は、本実施形態に係る表示装置の構成を示す模式図である。
図3は、本実施形態に係る表示装置の要部の構成を示す模式図である。
まず、図2及び図3により、本実施形態に係る表示装置の構成の概要について説明する。
【0019】
図2及び図3に表したように、本発明の第1の実施形態に係る表示装置11は、映像投影部115と位置推定部210と制御部250とを備える。
【0020】
表示装置11は、片目で見る表示装置であり、任意の用途に用いることができるが、以下では、車載用のHUDとして用いる場合について説明する。
すなわち、表示装置11は、車両730(移動体)に搭載される。
車両730は、表示装置11が呈示する映像を観視する観視者100が搭乗する自動車、二輪車、列車及び航空機等の各種の移動体である。観視者100は、車両730に搭乗するヒトであり、例えば車両730を操縦する操縦者(運転者)とすることができる。
【0021】
表示装置11は、例えば車両730の中、すなわち、例えば、観視者100から見て車両730のダッシュボード720の奥に設けられる。
【0022】
映像投影部115は、表示オブジェクト180を有する映像を含む光束112を観視者100の片目101に向けて投影する。
【0023】
表示オブジェクト180とは、表示装置11が観視者100に呈示する映像に設けられるものであり、例えば、表示装置11が搭載される車両730の運行情報に関する各種の像である。表示オブジェクト180は、例えば、車両730の進路を示す矢印、注意及び警告等の表示内容である。また、表示オブジェクト180は、例えば、車両730の外界の任意の場所の番地等の位置情報、及び、道路の名称や周辺の建物等の名称情報等の任意の外界情報を含むことができる。さらに、表示オブジェクト180は、例えば、車両730の現在位置や速度や燃料等の任意の車両情報を含むことができる。
【0024】
映像投影部115は、例えば、映像生成部130と映像形成部110と投影部120とを有する。
【0025】
映像生成部130は、表示オブジェクト180を含む映像に対応する映像信号を生成し、映像形成部110に供給する。
【0026】
映像形成部110は、供給された映像信号に基づいて、映像形成部110の画面に映像を形成する。
映像形成部110としては、例えば、LCDを用いることができる。ただし、後述するように、映像形成部110にはLCD以外の任意の画像形成装置を用いることができる。
【0027】
投影部120は、映像形成部110で形成された映像を観視者100の片目101に投影する。
投影部120は、例えば、光源121とアパーチャ124とミラー126とを含む。光源121から出射した光は、映像形成部110に入射し、映像形成部110で形成された映像に基づいて変調された光束112となる。そして、アパーチャ124によって光束112の形状は整形され、光束112は、ミラー126を経て車両730の例えばフロントガラス710(ウインドシールド、透明板)に向けて出射する。この時、投影部120の図示しない各種の光学部品によって光束112の発散角(拡散角)が制御される。
【0028】
例えば、図3に表したように、映像投影部115においては、光源121と映像形成部110との間にライトガイド122が設けられ、光源121からの光源光が映像形成部110に導入される。映像形成部110の光出射側には、リレーレンズ123、凹レンズ125及びミラー126がこの順に設けられる。リレーレンズ123は、光の進む方向に順に配置された第1〜第4レンズ123a〜123dを有し、第2レンズ123bと第3レンズ123cとの間にアパーチャ124が設けられている。本具体例では、光源121、ライトガイド122、リレーレンズ123、凹レンズ125及びミラー126が、投影部120に含まれる。
【0029】
光源121から出射した光源光は、映像形成部110によって映像を含む光束112となり、光束112は、リレーレンズ123、アパーチャ124、凹レンズ125及びミラー126を経て、観視者100に投影される。
【0030】
すなわち、図2に表したように、ミラー126で反射された光束112は、例えばフロントガラス710に設けられる反射体711により反射され、観視者100の片目101に投影される。そして観視者100は、反射体711を介して、虚像形成位置181aの位置に形成された虚像181を知覚する。反射体711は、透光性と反射性の両方を有するように設計され、観視者100は、外界の背景と、光束112に含まれる表示オブジェクト180を有する映像と、を同時に見ることができる。このように、表示装置11は、HUDとして使用できる。
【0031】
すなわち、映像投影部115は、光束112を反射して観視者100の片目101に向けて投影する車両730のフロントガラス710を介して映像を観視者100に観視可能とさせる。このときフロントガラス710には、反射体711が含まれる。
【0032】
なお、本具体例は、投影部120と映像形成部110の構成の一例であり、映像を含む光束112を観視者100に投影できる構成であれば、投影部120及び映像形成部110には任意の構成を使用できる。
【0033】
観視者100の位置における光束112の投影領域114は、観視者100が片目101で映像を観視できるように制御される。例えば、観視者100の両眼の間隔は平均60mm(ミリメートル)であるので、観視者100の頭部105上における光束112の投影領域114の左右方向の幅は60mm程度に制御され、片目101に光束112が投影される。なお、映像の見易さから、観視者100の優位眼に映像を投影することが望ましく、片目101としては優位眼が用いられることが望ましい。また、投影領域114の投影位置及び投影範囲は、映像投影部115に用いられる光学部品を制御部250によって制御することで、制御される。
【0034】
一方、図1に例示した位置推定部210は、車両730に搭乗する観視者100の片目101の位置と、光束112の投影領域114の位置と、を推定する。
【0035】
本具体例では、図1及び図2に例示したように、光束112の投影領域114の位置を推定するために、映像形成部110の近傍にマーカ光放射部410が設けられる。マーカ光放射部410から放射されたマーカ光450も、光束112と供に観視者100に投影される。
【0036】
マーカ光450は、光束112に対して予め定められた空間的な関係を有する。例えば、マーカ光450の進行方向は、光束112の進行方向に対応している。これにより、マーカ光450の位置によって、光束112の投影領域114の位置が推定される。マーカ光放射部410には、例えば赤外発光LED(Light Emitting Diode)等を用いることができる。
【0037】
例えば、マーカ光450の観視者100の頭部105における投影領域は、光束112の観視者100の頭部における投影領域114と同じに設定でき、マーカ光450の投影領域を推定することによって、光束112の投影領域114を推定することができる。
【0038】
位置推定部210は、例えば、観視者100及びマーカ光450を撮像する撮像部211と、撮像部211によって撮像された撮像画像を画像処理する画像処理部212と、画像処理部212で画像処理されたデータに基づいて、観視者100の片目101の位置を推定する演算部213と、を含むことができる。
【0039】
演算部213においては、例えば、特許第3279913号公報などに記載されている人物認証に関する技術を用いて、観視者100の顔認識と顔部品としての眼球位置を算出し、観視者100の映像を投影すべき片目101の位置を判断して推定する。
【0040】
さらに、演算部213は、マーカ光450の位置を推定する。
ただし、マーカ光450の位置は、画像処理部212によって画像処理された撮像画像のデータから直接求めても良い。
【0041】
なお、撮像部211は、例えば、車両730の運転席の前方や側方に配置され、例えば、操縦者である観視者100の顔面の像を撮像し、これを用いて上記のように、観視者100の片目101の位置、及び、マーカ光450の位置、すなわち、光束112の投影領域114の位置を推定できる。
【0042】
なお、後述するように、制御部250は、片目101の位置が光束112の投影領域114に重なるように投影領域114の位置を制御するので、例えば、投影領域114の端の位置によって投影領域114の位置を代表させることができる。
【0043】
また、投影領域114の形状と大きさは、映像投影部115における光学部品の特性によって定まるので、投影領域114の位置として投影領域114の中心の位置を採用し、投影領域114の端の位置を推定することによって、投影領域114の全体の位置を求めることができる。
【0044】
例えば、マーカ光450の位置が投影領域114の例えば端や外側に配置されていた場合においても、マーカ光450と光束112との空間的な関係によって、マーカ光450の位置を推定することで光束112の投影領域114の位置、すなわち、投影領域114の中心の位置及び、推定された投影領域114の端の位置を推定することができる。
【0045】
なお、光束112の投影領域114の位置、及び、片目101の位置の推定方法は任意であり、この変形例については後述する。
【0046】
一方、制御部250は、位置推定部210によって推定された観視者100の片目101の位置とマーカ光450の位置とに基づいて、映像投影部115を制御することにより、片目101の位置と投影領域114とが重なるように、光束112の投影領域114の位置を移動させる。すなわち、片目101の位置とマーカ光450の位置との相対的な差に基づいて、光束112の投影領域114の位置を移動する。
【0047】
例えば、映像投影部115の投影部120に用いられるミラー126の角度を、制御部250の駆動部260によって調整する。これにより、光束112の投影領域114の位置を調整する。なお、駆動部260は制御部250の内部に設けても良く、制御部250とは別に設けても良い。
【0048】
このように、制御部250は、光束112の投影領域114の境界の空間的な位置を、片目101の位置及びマーカ光450の位置の推定結果に基づいて制御する。具体的には、光束112の投影領域114の範囲内に片目101が入るように、投影領域114の境界の空間的な位置を制御する。
【0049】
この制御部250の動作について説明する。
図1に表したように、光束112の投影領域114は、縁部401と内側部402とに区分できる。すなわち、投影領域114は、投影領域114の縁部401と縁部401よりも内側の内側部402とを有している。
【0050】
縁部401は投影領域114の端であり、縁部401よりも外側の領域に片目101が位置する場合には、片目101は光束112に含まれる映像を観視できなくなる。
【0051】
内側部402は投影領域114の内側の領域であり、内側部402に片目101が位置する場合には、片目101は光束112に含まれる映像を良好に観視できる。
【0052】
縁部401は、投影領域114の端においてある幅を持った領域としても良いし、縁部401は、投影領域114の端における投影領域114とその外側の領域とを分ける、幅を持たない境界とすることもできる。縁部401の幅は、後述する制御部250による投影領域114の制御の特性に適合させて定めることができる。以下では、縁部401が所定の幅を有する場合として説明する。
【0053】
図1(a)〜(d)は、本実施形態に係る表示装置11の動作を例示しており、図1(a)は、片目101が内側部402に位置している状態を例示し、図1(b)は、片目101が縁部401に位置している状態を例示し、図1(c)は、片目101の位置が内側部402に重なるように投影領域114の位置が移動された後の状態を例示している。図1(d)は、内側部402が後述する第1部と第2部を有する状態を例示している。
【0054】
図1(a)に表したように、本実施形態に係る表示装置11においては、制御部250は、例えば、片目101が内側部402に位置するように、光束112の投影領域114の位置を制御する。この時、観視者100は光束112に含まれる映像を良好に観視できる。
【0055】
この状態において、例えば、観視者100の姿勢が変化すると、片目101の位置が移動する。例えば、図1(b)に例示したように、片目101が縁部401に位置する。この状態においては、観視者100は映像を良好に観視し難くなる。すなわち、片目101の位置がさらに移動したときに、片目101の位置がすぐに投影領域114の外側に出てしまうためである。そして、片目101が縁部401よりも外の領域に位置すると観視者は映像を観視できなくなる。
【0056】
この時、制御部250は、図1(c)に例示したように、片目101の位置が内側部402に重なるように、投影領域114の位置を移動する。すなわち、片目101が投影領域114の外に出ないように、投影領域114の位置を片目101の位置に連れて移動させる。これにより、観視者100は映像を良好に観視できるようになる。
【0057】
ただし、図1(a)に例示したように、片目101が内側部402の内側にある場合には、制御部250は、光束112の投影領域114の位置を動かさない。すなわち、制御部250における投影領域114の位置制御において、内側部402は不感領域であり、片目101が内側部402の内部にある場合には投影領域114の位置の移動操作が抑制され、片目101が内側部402を外れた場合、すなわち、片目101が縁部401に位置した場合、または、縁部401よりも外側に位置した場合に、投影領域114の位置の移動操作が行われる。
【0058】
この動作においては、片目101の位置が投影領域114を外れそうになる場合、または、投影領域114を外れた場合において、投影領域114の位置が移動されて、片目101が投影領域114の内部に入り、片目101が投影領域114の内側の内側部402にある場合には、投影領域114は動かない。これにより、片目101から見たときの映像が形成される位置の角度、すなわち、視角(特に上下方向の場合には俯角)の変化が抑制され、結果として、観視者100が得る奥行き感の誤差が縮小できる。
【0059】
さらに、図1(d)に表したように、内側部402は、内側部402の縁の第1部403と第1部403よりも内側の第2部404とを有することができる。そして、制御部250は、片目101が縁部401または縁部401よりも外側に位置したときに、片目101の位置が第1部403に重なるように、投影領域114の位置を制御することが望ましい。
【0060】
すなわち、片目101が縁部401に位置して投影領域114を外れそうになった場合、または、片目101が縁部401よりも外側に位置して投影領域114を外れた場合に、片目101が投影領域114の中心部である第2部404ではなく、内側部402の縁の第1部403に配置されるように、投影領域114の位置が移動される。これにより、投影領域114の位置の移動距離が最小限に抑えられ、これにより、片目101の視角の変化は最小限に抑えられる。これにより、観視者100が得る奥行き感の誤差がさらに縮小できる。
【0061】
なお、上記の動作においては、例えば、位置推定部210において、光束112の投影領域114が、片目101を推定するための画像上のどこに位置するかが推定される。そして、例えば位置推定部210または映像生成部130に設けられる判定部(図示しない)において、片目101の位置が投影領域114のどの位置(縁部401よりも外側、縁部401及び内側部402のいずれの位置)にあるかが判定される。そして、制御部250により、投影領域114の位置が上記のように制御される。
【0062】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の動作を示す模式図である。
すなわち、同図は、観視者100の側面から見たときの片目101の位置、光束112の進路、及び、映像の虚像181が形成される位置の関係を例示している。同図(a)は、片目101が投影領域114の内側部402の上側の端に位置している状態を例示し、同図(b)は、片目101が内側部402中心に位置している状態を例示し、同図(c)は、片目101が内側部402の下側の端に位置している状態を例示している。
【0063】
図4(a)〜(c)に表したように、本実施形態に係る表示装置11においては、片目101が、投影領域114の内側部402上側の端、中心及び下側の端に位置している場合において、投影領域114の位置は変化していない。このため、投影領域114の上側の端、中心及び下側の端に位置している場合のいずれにおいても、虚像形成位置181aにおいては、像の中心は実質的に位置Psに結像し、像の上端は実質的に位置Puに結像し、像の下端は実質的に位置Plに結像し、像の結像位置は実質的に変化しない。
【0064】
図5は、比較例の表示装置の動作を示す模式図である。
この比較例において、光束112の投影領域114は、片目101の位置に常に連動し、具体的には、投影領域114の中心に片目101が位置するように投影領域114の位置が移動される。
【0065】
図5(b)は、片目101が投影領域114の内側部402の中心に位置している状態を例示している。そして、図5(a)は、片目101が図5(a)に例示した位置から上方向に移動したときに、その片目101の移動に連動して投影領域114が上方向に移動させられた状態を例示している。そして、図5(c)は、片目101が図5(a)に例示した位置から下方向に移動したときに、その片目101の移動に連動して投影領域114が下方向に移動させられた状態を例示している。なお、この移動は、ミラー126の角度を変化させることによって行われる。
【0066】
図5(a)〜(c)に表したように、投影領域114の中心に片目101の位置が配置されるように投影領域114が制御された場合は、片目101の位置が、上方向に移動した場合と下方向に移動した場合とで、虚像形成位置181aにおける像の結像位置が変化する。すなわち、図5(a)に例示した虚像形成位置181aの像の中心、像の上端、及び像の下端の位置の結像位置は、図5(b)に例示した位置Ps、位置Pu及び位置Plから、それぞれ下方向にずれる。一方、図5(c)に例示した虚像形成位置181aの像の中心、像の上端、及び像の下端の位置の結像位置は、図5(b)に例示した位置Ps、位置Pu及び位置Plから、それぞれ上方向にずれる。
【0067】
すなわち、比較例の表示装置においては、片目101の位置が上方向または下方向にずれた場合に、像の結像位置が上下にずれて、俯角が大きく変化し、その結果、知覚される奥行き感が目的とする奥行き位置から大きく外れてしまう。
【0068】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置及び比較例の表示装置の特性を示す模式図である。
すなわち、同図は、上下方向に片目101の位置がずれたときの片目101から映像を見たときの視角(俯角)の変化をシミュレーションした結果を例示している。同図の横軸は、片目101のずれ量(基準位置からの移動距離Ye)を表し、縦軸は、視角の変化量Δθを表している。そして、同図中の特性Aは本実施形態に係る表示装置11における特性であり、特性Bは図5に関して説明した比較例の表示装置における特性である。
【0069】
なお、本シミュレーションでは、投影領域114の上下方向の幅は100mmであり、観視者100の片目101から反射体711までの距離は1000mmであり、観視者100から見たときの虚像形成位置181aまでの距離は3000mmとされた。同図において、例えば、移動距離Yeが0mm、50mm及び100mmのときは、それぞれ片目101が投影領域114の下端、中心及び上端に位置する状態に対応する。
【0070】
図6に表したように、特性Bの比較例の表示装置においては、片目101の移動距離Yeが大きくなると視角の変化量Δθが著しく増大している。例えば、移動距離Yeが100mmのときの視角の変化量Δθは5.7°である。
【0071】
一方、特性Aの本実施形態に係る表示装置11においては、片目101の移動距離Yeが100mm以上の領域では、視角の変化量Δθは、比較例の表示装置の場合と同じ変化率で増大しているが、片目101の移動距離Yeが100mmよりも小さいときは、視角の変化量Δθは小さい。すなわち、片目101が移動した場合においても、投影領域114を移動させないので、視角の変化量Δθが小さくできる。例えば、移動距離Yeが100mmのときの視角の変化量Δθは1.9°であり、比較例に対して視角の変化量Δθを1/3に低減できる。
【0072】
このように、本実施形態に係る表示装置11においては、片目101が投影領域114の内側の内側部402にある場合には、投影領域114は動かないので、映像が形成される位置の視角の変化が抑制され、観視者100が得る奥行き感の誤差が縮小できる。そして、片目101の位置が投影領域114を外れそうになる場合や外れた場合において投影領域114の位置が移動されて、片目101の位置を投影領域114の内部に入れることで、片目101が投影領域114から外れることがなく、観視者100に所望の映像を呈示できる。すなわち、観視者100の頭部105の移動による映像呈示位置からの外れがなくなり、実用的な観視範囲を広くすることが可能になる。
【0073】
このように表示装置11によれば、知覚される奥行き感の誤差を低減し、観視者の片目の位置の変化に対応させて映像を含む光束を片目に向けて投影する表示装置が提供できる。
【0074】
このような動作は、例えば以下のようにして実施される。
図7は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の動作を示す模式図である。
すなわち同図は、投影領域114の座標を例示している。
以下では、説明の便宜上、x−y直交座標系を用いる。x軸方向は、投影領域114の左右方向であり、例えば片目101の左右方向である。y軸方向は、投影領域114の上下方向であり、例えば片目101の上下方向である。
【0075】
図7に表したように、投影領域114の中心の座標を基準座標P0(x0、y0)とする。そして、x軸方向の一方の端(正の端)において、縁部401の外側の端の位置をx11とし、縁部401と第1部403との境界(すなわち、縁部401と内側部402との境界)の位置をx12とし、第1部403と第2部404との境界の位置をx13とする。そして、x軸方向の他方の端(負の端)において、縁部401の外側の端の位置をx21とし、縁部401と第1部403との境界の位置をx22とし、第1部403と第2部404との境界の位置をx23とする。
【0076】
また、y軸方向の一方の端(正の端)において、縁部401の外側の端の位置をy11とし、縁部401と第1部403との境界の位置をy12とし、第1部403と第2部404との境界の位置をy13とする。そして、y軸方向の他方の端(負の端)において、縁部401の外側の端の位置をy21とし、縁部401と第1部403との境界の位置をy22とし、第1部403と第2部404との境界の位置をy23とする。
【0077】
そして、片目101の位置の座標を座標E(xe、ye)とする。
【0078】
制御部250は、位置推定部210によって推定された片目101の位置(座標E(xe、ye))と、投影領域114の位置(例えば基準座標P0(x0、y0))との差に基づいて、映像投影部115を制御する。投影領域114の位置の基準座標P0(x0、y0)を基準にすると、片目101の位置の座標E(xe、ye)によって、投影領域114を移動することができる。例えば、片目101の位置の座標E(xe、ye)によって、映像投影部115のミラーの角度を調整する。
【0079】
この時、座標E(xe、ye)の変化に対して、所定の係数RSで、投影領域114の位置を移動させることができる。係数RSは、片目101の位置と投影領域114の位置との差に対する投影領域114の位置の移動距離の比率の一例である。なお、係数RSは、x軸方向の係数RSxとy軸方向の係数RSyを有することができる。係数RSxと係数RSyとは同じであっても良く、また、互いに異なっていても良い。
【0080】
図8は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の動作を示す模式図である。
すなわち、同図(a)はy軸方向の係数RSyを例示し、同図(b)は制御部250による投影領域114の位置の移動におけるy軸方向の移動距離Lyを例示している。
図9は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の動作を示す模式図である。
すなわち、同図(a)はx軸方向の係数RSxを例示し、同図(b)は制御部250による投影領域114の位置の移動におけるx軸方向の移動距離Lxを例示している。
【0081】
本具体例では、y軸方向における投影領域114の移動距離Lyは、片目101の位置と基準座標との差のy軸方向における距離であるyeと係数RSyとの積とされ、x軸方向における投影領域114の移動距離Lxは、片目101の位置と基準座標との差のx軸方向における距離であるxeと係数RSxとの積とされる。
【0082】
そして、図8(a)に例示したように、y軸方向の片目101の位置の変化に対して係数RSyは一定でない。
【0083】
すなわち、片目101の位置が内側部402にある場合、すなわち、yeがy22〜y12である場合には、例えば係数RSyは零である。
これにより、図8(b)に表したように、投影領域114の移動距離Lyは零であり、投影領域114の位置は変化しない。
【0084】
そして、片目101の位置が縁部401または縁部401よりも外側にある場合の係数RSyは、片目101の位置が内側部402にあるときの係数RSyよりも大きくされる。例えば、yeがy22よりも小さい場合には、係数RSyは所定の大きさの係数RSyaとされ、yeがy12よりも大きい場合には、係数RSyは所定の大きさの係数RSybとされる。なお、ここでの大きさは、絶対値である。
【0085】
すなわち、上記の係数RSyaと係数RSybとは、それぞれ、片目101の位置が投影領域114の中(内側部402の中)に入るような係数であり、係数RSyaと係数RSybとによって移動させられる投影領域114のy軸方向の移動方向は互いに逆の方向である。
【0086】
これにより、図8(b)に表したように、片目101の位置が縁部401にある場合、または、縁部401よりも外側にある場合は、投影領域114の位置が移動距離Lyだけ移動され、片目101が投影領域114の中(内側部402の中)に入るように投影領域114が移動される。
【0087】
また、x軸方向に関しても同様であり、図9(a)に例示したように、例えば、x軸方向の片目101の位置の変化に対して係数RSxは一定でない。
【0088】
すなわち、片目101の位置が内側部402にある場合、すなわち、xeがx22〜x12の間にある場合には、例えば係数RSxは零である。
これにより、図9(b)に表したように、投影領域114の移動距離Lxは零であり、投影領域114の位置は変化しない。
【0089】
そして、片目101の位置が縁部401または縁部401よりも外側にある場合の係数RSxの絶対値は、片目101の位置が内側部402にあるときの係数RSxの絶対値よりも大きくされ、例えば、xeの値によって係数RSxa及び係数RSxbとされる。この場合も、係数RSxaと係数RSxbとは、それぞれ、片目101の位置が投影領域114の中(内側部402の中)に入るような係数であり、係数RSxaと係数RSxbとによって移動させられる投影領域114のx軸方向の移動方向は互いに逆の方向である。
【0090】
これにより、図9(b)に表したように、片目101の位置が縁部401にある場合、または、縁部401よりも外側にある場合は、投影領域114の位置が移動距離Lxだけ移動され、片目101が投影領域114の中(内側部402の中)に入るように投影領域114が移動される。
【0091】
すなわち、図8(a)及び図9(a)に例示したように、本実施形態に係る表示装置11においては、制御部250の投影領域114の位置の移動における、片目101の位置と投影領域114の位置との差に対する投影領域114の位置の移動距離の比率の絶対値は、片目101が縁部401または縁部401よりも外側に位置するときよりも、片目101が内側部402に位置するときの方が低い。
【0092】
そして、図8(b)及び図9(b)に例示したように、制御部250の投影領域114の位置の移動における投影領域114の位置の移動距離(移動距離Ly及びLxの少なくともいずれか)は、片目101が縁部401または縁部401よりも外側に位置するときよりも、片目101が内側部402に位置するときの方が短い。本具体例では、片目101が内側部402に位置するときの投影領域114の位置の移動距離(移動距離Ly及びLx)は、零である。
【0093】
これにより、片目101の位置が投影領域114を外れそうになる場合または投影領域114を外れた場合において投影領域114の位置が移動されて、片目101が投影領域114の内側(内側部402)に入り、片目101が投影領域114の内側の内側部402にある場合には、投影領域114は動かず、片目101から映像を見たときに視角の変化が抑制され、観視者100が得る奥行き感の誤差が縮小できる。
【0094】
この時、上記の係数RSxa、RSxb、RSya及びRSybを適切に設定することで、片目101が縁部401または縁部401よりも外側に位置するときに、片目101の位置が第1部403に重なるように、投影領域114の位置を制御することができる。これにより、投影領域114の位置の移動距離が最小限に抑えられ、これにより、片目101の視角の変化が小さくなり、観視者100が得る奥行き感の誤差がさらに縮小できる。
【0095】
上記においては、x軸方向及びy軸方向において、片目101の位置と縁部401との関係によって投影領域114の移動距離を変化させる例を説明したが、y軸方向またはx軸方向において上記の移動距離を変化させても良い。
【0096】
片目101における上下方向であるy軸方向に沿って片目101の位置が変化したときの視角の変化は、俯角の変化となる。このため、y軸方向に沿った片目101の位置の変化は、知覚される奥行き位置に大きな影響を与える。このため、y軸方向における片目101の位置の変化に対して、上記で説明した動作を適用すると大きな効果を得ることができる。
【0097】
これに対し、片目101における左右方向であるx軸方向に沿って片目101の位置が変化する場合には、視角の変化は方位角の変化となる。このため、x軸方向に沿った片目101の位置の変化が知覚される奥行き位置へ与える影響は小さい。従って、x軸方向に沿った片目101の位置の変化に対しては、上記の動作は必ずしも必要ではなく、例えば、比較例で説明したように、片目101の位置に常に投影領域114の中心が配置される動作を行っても良い。
【0098】
すなわち、本実施形態に係る表示装置11において、縁部401は、光束112の投影領域114の片目101の上下方向の端に設けられることができ、縁部401は、左右方向の端に設けられなくても良い。
【0099】
なお、図8(a)及び図9(a)では、係数RSが片目101の位置の変化に対してステップ状に変化する例が示されているが、係数RSの変化の特性は任意である。また、図8(b)及び図9(b)では、投影領域114の位置の移動距離Ly及びLxが、片目101の位置の変化に対して線形に変化する例であるが、移動距離Ly及びLxの変化の特性は任意である。
【0100】
例えば、係数RS、移動距離Ly及び移動距離Lxは、位置推定部210による片目101及び投影領域114の位置の推定精度と推定の過渡特性、制御部250による投影領域114の制御精度と制御の過渡特性、映像投影部115の特性等の他、観視者100の目の特性に合わせて、適切に設定することができる。
【0101】
また、縁部401の幅も、位置推定部210、制御部250及び映像投影部115、並びに、観視者の目の特性に合わせて、適切に設定することができる。
【0102】
そして、上記においては、投影領域114の縁部401が所定の幅を有する場合として説明したが、縁部401は、投影領域114の端における投影領域114とその外側の領域とを分ける、幅を持たない境界とすることもできる。
【0103】
この場合には、例えば、制御部250の投影領域114の位置の移動制御における、片目101の位置と投影領域114の位置との差に対する投影領域114の位置の移動距離の比率は、片目101が縁部401よりも外側に位置するときよりも、片目101が内側部402に位置するときの方が低く設定することができる。
【0104】
そして、制御部250の投影領域114の位置の移動における投影領域114の位置の移動距離(移動距離Ly及びLx)は、片目101が縁部401よりも外側に位置するときよりも、片目101が内側部402に位置するときの方が短く設定することができる。
【0105】
これにより、知覚される奥行き感の誤差を低減し、観視者の片目の位置の変化に対応させて映像を含む光束を片目に向けて投影することができる。
【0106】
なお、観視者100の片目101の推定を容易にするために、赤外光を発光する例えばLEDを用いた照明装置214を車両730の室内、特に操縦席の前方に設けることができる。照明装置214は撮像部211に付属させることができる。なお、この照明装置214は、周囲の明るさの環境に関係なく常時発光しても良く、また、周囲の明るさに応じて発光と非発光とを切り換えるようにしても良い。この照明装置214の明るさは、例えば太陽光に含まれる赤外線の強度と同程度かそれよりも弱く設定され得る。
【0107】
なお、映像の観視の邪魔にならないように、この照明光には例えば赤外光を用いることが望ましい。また、表示装置11が、車載用のHUD以外の用途である場合において、例えば表示装置11が用いられる環境が一定の明るさを有する場所であるならば、上記の照明装置214は省略できる。
【0108】
上記の具体例では、光束112の投影領域114を推定するために、マーカ光450を用いている。マーカ光450は、映像を含む光束112の投影領域114の位置を示すものであれば、映像を含む光束112とは別の光源から放射された光でも良く、また、マーカ光450は光束112に含まれても良い。
【0109】
例えば、マーカ光450は、マーカ光放射部410から出射された光であり、例えば、マーカ光放射部410は、映像形成部110の表示画面のアクティブエリアの境界近傍や投影領域114の形状を決めるアパーチャ等の開口部の境界部分に設けることができる。
【0110】
また、マーカ光450には、光束112に含まれる映像の内容の視認を妨げないように、映像に用いられる光束112の波長とは異なる光を用いることが望ましい。映像を含む光束112には可視光が用いられるので、マーカ光450には、赤外光を用いることができる。
【0111】
一方、マーカ光450の強度は、例えば太陽光よりも強く、そして、照明装置214からの照明光よりも強く設定されることが望ましい。
【0112】
このようなマーカ光450を用いることによって、投影領域114の位置を推定できる。そして、例えば予め定めた投影領域114の形状と大きさから、上記の縁部401、内側部402、第1部403及び第2部404を定めることができ、これに基づいて上記の動作を行うことができる。
【0113】
片目101及びマーカ光450のそれぞれ推定の精度を向上するために、片目101の推定のための光と、マーカ光450の光と、を別の光とすることが望ましい。
【0114】
このために、片目101の推定のための光とマーカ光450との空間的な配置を変えることができる。これには、例えば、マーカ光450の光路の途中に所定に形状と所定の波長特性を有するフィルタを設置し、マーカ光450が投影される領域を所望の形状に制御する方法を採用することができる。
【0115】
また、片目101の推定のための光とマーカ光450とで、波長を変えても良い。これにより、片目101とマーカ光450との区別が容易になる。
【0116】
さらに、片目101の推定のための光とマーカ光450とで、時間的な特性を変えても良い。例えば、マーカ光450を間欠的に観視者100に向けて投影し、マーカ光450が投影されている期間において光束112の投影領域114を推定し、マーカ光450が投影されていない期間に片目101を推定する動作を行っても良い。
【0117】
このように、片目101の位置及び投影領域114の位置の推定方法は、各種の変形が可能である。
【0118】
なお、表示装置11において、映像形成部110としては、LCDの他に、DMD(Digital Micromirror Device)、及び、MEMS(Micro-electro-mechanical System)等の各種光スイッチを用いることができる。また、映像形成部110には、レーザプロジェクタやLEDプロジェクタなどを用いることもでき、その場合は、レーザビームやLEDからの光により映像を形成する。
【0119】
また、光源121には、LEDや高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザなど各種のものを用いることができる。
【0120】
また、投影部120のリレーレンズ123及び凹レンズ125は、任意の構成を有することができる。さらに、ミラー126には、例えばパワーを有する凹面鏡を用いることができ、映像を所定の比率で拡大または縮小できる。なお、投影部120には、例えば、非球面フレネルレンズ等を設け、フロントガラス710の形状に合わせて光束112の形(断面形状など)を制御できるように設計することもできる。
【0121】
また、位置推定部210の撮像部211は、映像投影部115に含まれる各種の光学部品(例えばミラー等)から得られる光を分離して、観視者100の顔面の像を間接的に撮像しても良い。この場合は、撮像部211は、映像投影部115に付設される。
【0122】
また、制御部250は、例えば、投影部120に用いられる各種の光学部品を制御して、光束112の投影範囲を制御しても良い。
【0123】
なお、制御部250は、例えば、映像形成部110を制御して映像の輝度やコントラストなどを調整しても良い。
【0124】
なお、上記においては、表示装置11が車両730等の移動体に搭載されるHUDとして応用される例について説明したが、本発明はこれに限らず、片目で見る任意の表示装置に応用できる。例えば、片目で見ることで奥行き知覚を増強して呈示する、ゲームなどの娯楽用の他、医療用や各種のデザイン用に用いられる各種の表示装置にも応用することが可能である。
【0125】
(第2の実施の形態)
図10は、本発明の第2の実施形態に係る表示方法を示すフローチャート図である。
図10に表したように、本実施形態に係る表示方法においては、まず、観視者100の片目101の位置を推定する(ステップS10)。
【0126】
そして、表示オブジェクト180を有する映像を含む光束112を観視者100の片目101に投影して光束112の投影領域114の位置を推定する(ステップS20)。
【0127】
上記のステップS10及びステップS20においては、既に説明した位置推定部210を用いることができる。
【0128】
そして、推定された片目101の位置が投影領域114の内側部402に位置するときよりも、片目101の位置が投影領域114の縁部401または縁部401よりも外側に位置するときの方が、投影領域114の位置の移動距離を大きくして、片目101の位置が内側部402に入るように、投影領域114の位置を移動する(ステップS30)。
すなわち、図1、図4、図7〜図9に関して説明した方法を実施する。
【0129】
例えば、片目101の位置と投影領域114の位置との差に対する投影領域114の位置の移動距離の比率を、片目101が内側部402に位置するときよりも、片目101が縁部401または縁部401よりも外側に位置するときの方が高くして、投影領域114の位置を移動させる。
【0130】
すなわち、例えば、片目101が内側部402に位置するときは投影領域114の位置を変えない。そして、片目101が縁部401または縁部401よりも外側に位置するときに片目101の位置が投影領域114の内側部402に重なるように投影領域114の位置を移動する。
【0131】
これにより、片目101が投影領域114から外れそうになった場合または外れた場合に投影領域114を移動させ、視角(例えば俯角)の変化を小さくすることで、知覚される奥行き感の誤差を低減し、観視者の片目の位置の変化に対応させて映像を含む光束を片目に向けて投影することができる。
【0132】
そして、この場合にも、内側部402に、内側部402の縁の第1部403と第1部403よりも内側の第2部404とを設け、片目101が縁部401または縁部401よりも外側に位置するときに、片目101の位置が第1部403に重なるように投影領域114の位置を移動することができ、これにより、投影領域114の移動距離がさらに小さくでき、知覚される奥行き感の誤差をさらに低減することができる。
【0133】
なお、本実施形態に係る表示方法は、車両730におけるHUD表示に応用できるだけでなく、例えば、片目で見ることで奥行き知覚を増強して呈示する、ゲームなどの娯楽用の他、医療用や各種のデザイン用に用いられる各種の表示方法にも応用できる。
【0134】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施形態に係る車両には、上記の表示装置11が搭載される。
すなわち、図2に表したように、本実施形態に係る車両730は、本発明の実施形態に係る表示装置11と、表示装置11から出射される光束112を観視者100に向けて反射させるフロントガラス710と、を備える。フロントガラス710は、それに付設される反射体711を含む。
【0135】
本実施形態に係る車両によれば、知覚される奥行き感の誤差を低減し、観視者の片目の位置の変化に対応させて映像を含む光束を片目に向けて投影するHUDを備えた車両が提供でき、安全で便利な車両の運行が可能となる。
【0136】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、表示装置及び車両を構成する各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0137】
その他、本発明の実施の形態として上述した表示装置、表示方法及び車両を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置、表示方法及び車両も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0138】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0139】
11 表示装置
100 観視者
101 片目
105 頭部
110 映像形成部
112 光束
114 投影領域
115 映像投影部
120 投影部
121 光源
122 ライトガイド
123 リレーレンズ
123a〜123d 第1〜第4レンズ
124 アパーチャ
125 凹レンズ
126 ミラー
130 映像生成部
180 表示オブジェクト
181 虚像
181a 虚像形成位置
210 位置推定部
211 撮像部
212 画像処理部
213 演算部
214 照明装置
250 制御部
260 駆動部
401 縁部
402 内側部
403 第1部
404 第2部
410 マーカ光放射部
450 マーカ光
710 フロントガラス
711 反射体
720 ダッシュボード
730 車両(移動体)
E 座標
Lx、Ly 移動距離
P0 基準座標
Pl、Ps、Pu 位置
RS、RSx、RSxa、RSxb、RSy、RSya、RSyb 係数
x11、x12、x13、x21、x22、x23、y11、y12、y13、y21、y22、y23 位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示オブジェクトを有する映像を含む光束を観視者の片目に向けて投影する映像投影部と、
前記片目の位置と前記光束の投影領域の位置とを推定する位置推定部と、
前記位置推定部によって推定された前記片目の位置と前記投影領域の位置との差に基づいて、前記映像投影部を制御することにより、前記片目の位置と前記投影領域とが重なるように前記投影領域の位置を変化させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記片目の位置が前記投影領域の内側部に位置するときよりも、前記片目の位置が前記投影領域の縁部または前記縁部よりも外側に位置するときの方が、前記投影領域の位置を大きく変化させることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記片目が前記内側部に位置するときよりも、前記片目が前記縁部または前記縁部よりも外側に位置するときの方が、前記差に対する前記投影領域の位置の移動距離の比率の絶対値を大きくすることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
表示オブジェクトを有する映像を含む光束を観視者の片目に向けて投影する映像投影部と、
前記片目の位置と前記光束の投影領域の位置とを推定する位置推定部と、
前記位置推定部によって推定された前記片目の位置と前記投影領域の位置との差に基づいて、前記映像投影部を制御することにより、前記片目の位置と前記投影領域とが重なるように前記投影領域の位置を変化させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記片目の位置が前記投影領域の縁部または前記縁部よりも外側に位置するときに、前記片目の位置と、前記投影領域の前記縁部よりも内側の内側部と、が重なるように前記投影領域の位置を変化させることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記片目が前記内側部に位置するときは前記投影領域の位置を変えないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項5】
前記内側部は、前記内側部の縁の第1部と前記第1部よりも内側の第2部とを有し、
前記制御部は、前記片目が前記縁部または前記縁部よりも外側に位置するときに前記片目の位置が前記第1部に重なるように、前記投影領域の位置を移動させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項6】
前記縁部は、前記光束の前記投影領域の前記片目の上下方向の端に設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項7】
観視者の片目の位置を推定し、
表示オブジェクトを有する映像を含む光束を前記観視者の前記片目に投影して前記光束の投影領域の位置を推定し、
推定された前記片目の位置が前記投影領域の内側部に位置するときよりも、前記片目の位置が前記投影領域の縁部または前記縁部よりも外側に位置するときの方が、前記投影領域の位置の移動距離を大きくして、前片目の位置が前記内側部に入るように、前記投影領域の位置を移動することを特徴とする表示方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の表示装置と、
前記表示装置から出射される前記光束を前記観視者に向けて反射させるフロントガラスと、
を備えたことを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−224293(P2010−224293A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72358(P2009−72358)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】