説明

表面実装型圧電発振器

【課題】 外形サイズの異なる圧電振動板の搭載が可能で、圧電振動板の傾きや配線パターンとのショートの問題をなくし、かつ周波数調整する際の悪影響を抑制することができる圧電発振器を提供する。
【解決手段】 集積回路素子2と圧電振動板と、前記集積回路素子を収納する第1の収納部10aと、第2の収納部10bとを有してなる絶縁性ベース1とを有する表面実装型圧電発振器であって、前記第2の収納部には、前記圧電振動板の一端を保持する絶縁性の保持台10cと前記第1の収納部を介して前記保持台と対向する位置に枕部10dが形成され、前記保持台の上面には、前記圧電振動板用の一対の配線パターン12,13が形成されてなり、前記保持台の第1の収納部に近接する領域には、前記配線パターンより高さの低い絶縁性の補助保持部101cが形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックベース上に集積回路素子と圧電振動板とが実装され、発振回路を構成してなる圧電発振器に関するものであって、表面実装型圧電発振器のパッケージ構造を改善するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、圧電発振器は部品の表面実装化の要求から、周囲に堤部が形成されたセラミックベースの収納部に圧電振動板を収納し、ろう材が形成された金属蓋を被せ、溶接により気密的に封止する構成が一般的である。近年、携帯用電子機器、例えば携帯電話器は軽量、薄型、小型化が進んでいる。これに伴って、圧電振動板もより小型化されたものが開発され、圧電発振器も小型化されているのが現状である。このような小型化された圧電振動板には、従来の圧電振動板に比較して、特定回路の特性に対応したものがあった。そこで、従来のパッケージを利用しながらより小型化された圧電振動板との組み合わせによる選択肢を増やし、より様々な回路特性に対応させる必要性が増大している。
【0003】
特に、小型化された圧電振動板では高周波化に対応されたものが従来の圧電振動板に比べて充実しており、集積回路素子についてもこのような小型で高周波向けの圧電振動板とのマッチングが行われたものが充実している。このため、あらかじめ高周波設計が完了した小型の圧電振動板と集積回路を従来のパッケージに利用するほうがコスト増大を抑制するばかりでなく、より信頼性の高い圧電発振器が得られる。
【特許文献1】特開2002−158558号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、サイズの異なる圧電振動板を一つのパッケージに搭載することが開示されているが、保持台と枕部の両方に接しないサイズの圧電振動板を搭載することはできない。つまり、小型化された圧電振動板をより大きな従来のパッケージに搭載するので、保持台より下側に圧電振動板が傾いて搭載され、例えば、パッケージと集積回路素子をワイヤーボンディング工法で接続している場合、圧電振動板の傾きによりワイヤーを傷つけたり、切断することがあった。また、小型化された圧電振動板が保持台より下側に傾いて搭載されると、圧電振動板の励振電極を介して保持台に形成された極性の異なる一対の配線パターン同士がショートして、集積回路素子の破壊を招く危険性もあった。さらに、小型化された圧電振動板をより大きな従来のパッケージに搭載すると、圧電振動板とパッケージに隙間が多くなり、圧電振動板の励振電極の質量を増減することで周波数調整する場合に、電極材料の一部が前記隙間を通って集積回路素子の端子部に付着し、特性に悪影響を与えることがあった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外形サイズの異なる圧電振動板の搭載が可能で、圧電振動板の傾きや配線パターンとのショートの問題をなくし、かつ周波数調整する際の悪影響を抑制することができるより信頼性の高い表面実装型圧電発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は次の構成により実現をすることができる。
【0007】
すなわち請求項1に示すように、絶縁性ベースと蓋を有する表面実装型圧電発振器であって、圧電発振回路を構成してなる集積回路素子と励振電極が形成された圧電振動板と、上面に複数の前記集積回路素子用の配線パターンが形成されるとともに前記集積回路素子を収納する第1の収納部と、第1の収納部の上部に前記圧電振動板を収納する第2の収納部と、前記第1の収納部と第2の収納部の周囲に形成された堤部とを有してなる絶縁性ベースと、前記絶縁性ベースに被せて気密封止してなる蓋とを具備してなり、前記絶縁性ベースの第2の収納部には、前記圧電振動板の一端を保持する絶縁性の保持台と前記第1の収納部を介して前記保持台と対向する位置に枕部が形成され、前記保持台の上面には、前記圧電振動板と電気的機械的に接合される前記圧電振動板用の一対の配線パターンが形成されてなり、前記保持台の第1の収納部に近接する領域には、前記配線パターンより高さの低い絶縁性の補助保持部が形成されてなることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に示すように、上記構成に加えて、前記保持台は絶縁性材料からなり、前記一対の配線パターンは前記保持台のうち第1の収納部から離隔する領域のみに偏って形成されてなることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に示すように、上記構成に加えて、前記保持台は絶縁性材料からなり、前記一対の配線パターンは、前記保持台のうち前記第1の収納部から離隔する領域に高部配線パターン部と、前記第1の収納部へ近接する領域に低部配線パターン部とを有し、前記一対の低部配線パターン部の間に無電極部を形成し、かつ前記一対の低部配線パターン部はお互いに離隔する堤部側に偏って形成されてなることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に示すように、上記構成に加えて、前記一対の低部配線パターン部は、高部配線パターン部に近接する幅狭部と、前記第1の収納部に近接する幅広部が形成されてなることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に示すように、上記構成に加えて、前記一対の配線パターンは、お互いの配線パターンの上面が近接するに従い次第に高さが低くなるように形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
特許請求項1により、前記圧電振動子板用の一対の配線パターンに、外形サイズの異なる圧電振動板の搭載が可能となる。このとき、前記第1の収納部よりサイズが大きく、保持台と枕部の両方に接する圧電振動板は枕部に位置させることで傾きを抑制することができる。また、前記保持台の第1の収納部に近接する領域には、前記絶縁性の補助保持部が形成されているので、前記第1の収納部よりサイズが小さく、枕部に接しない圧電振動板の一端を前記配線パターンに搭載しても、圧電振動板の板面の一部が絶縁性の補助保持部に接して、圧電振動板の励振電極を介して極性の異なる配線パターン同士がショートすることなく、圧電振動板の傾きを抑制することができる。このため、第1の収納部に収納された集積回路素子と圧電振動板が接触することがなくなり、集積回路素子の端子部やワイヤーを傷つけることもなくなる。極性の異なる配線パターン間のショートによって集積回路素子の破壊を招くこともなくなる。また、補助保持部は、前記配線パターンより高さを低く形成しているので、前記圧電振動板を配線パターンと枕部に位置させる際に接触することがなく、前記配線パターンに搭載した際にも保持台との隙間が確保されるので、圧電振動板の振動を妨げることがなく特性を劣化させることがない。
【0013】
特許請求項2により、上述の作用効果に加え、前記保持台は絶縁性材料からなり、前記一対の配線パターンは前記保持台のうち第1の収納部から離隔する領域にのみに偏って形成されているので、特別な加工を施すことなく保持台の第1の収納部に近接した稜部分を補助保持部として利用できる。また、前記第1の収納部よりサイズが小さく、枕部に接しない圧電振動板の励振電極に対して質量を増減する周波数調整する実施する場合、励振電極の中心部を第1の収納部から隔離する方向へずらすことができるので、電極材料が圧電振動板との隙間を通って第1の収納部へ飛散するのが抑制される。このため、周波数調整に関連する電極材料が集積回路素子に付着することがなくなり、特性に悪影響を与えることがない。
【0014】
特許請求項3により、上述の作用効果に加え、前記一対の配線パターンのうち、高部配線パターン部と低部配線パターン部にそれぞれ配置することで、外形サイズの異なる圧電振動板の選択的な搭載が可能となる。このとき、前記第1の収納部よりサイズの大きな圧電振動板は、低部配線パターン部から枕部までの寸法に対応したものと、高部配線パターン部から枕部までの寸法に対応したものの2種類搭載が行え、かつ、各圧電振動板について枕部に位置させることで傾きを抑制することができる。また、前記保持台は絶縁性材料からなり、前記一対の低部配線パターン部の間に無電極部を形成し、かつ前記一対の低部配線パターン部はお互いに離隔する堤部側に偏って形成されているので、前記第1の収納部よりサイズが小さく、枕部に接しない圧電振動板の一端を前記高部配線パターン部に搭載することができる。そして、圧電振動板の励振電極を介して一対の低部配線パターン部がお互いにショートすることなく、特別な加工を施すことなく保持台の第1の収納部に近接した稜部分を補助保持部として利用できる。また、前記第1の収納部よりサイズが小さく、枕部に接しない圧電振動板の一端を前記高部配線パターン部に搭載することで、当該圧電振動板の励振電極に対して質量を増減する周波数調整する実施する場合、励振電極の中心部を第1の収納部から隔離する方向へずらすことができる。従って、電極材料が圧電振動板との隙間を通って第1の収納部へ飛散するのが抑制され、結果として周波数調整に関連する電極材料が集積回路素子に付着することがなくなり、特性に悪影響を与えることがない。
【0015】
特許請求項4により、上述の作用効果に加え、前記一対の低部配線パターン部は、高部配線パターン部に近接する幅狭部と、前記第1の収納部に近接する幅広部が形成されてなるので、低部配線パターン部に搭載される圧電振動板の位置ズレが認識しやすくなる。また、低部配線パターン部に塗布される導電性接合材Sが、高部配線パターン部へ流れ出すのも抑制できる。このため、圧電振動板の接合強度バラツキをなくし、圧電振動板の上部への余分な導電性接合材Sの回り込みもなくなる。高部配線パターン部に搭載される圧電振動板の引出電極部と低部配線パターン部での電極同士の対向することが避けられるので、浮遊容量の影響を軽減できる。
【0016】
特許請求項5により、上述の作用効果に加え、前記一対の配線パターンは、お互いの配線パターンの上面が近接するに従い次第に高さが低くなるように形成されているので、サイズの異なる圧電振動板を配線パターンに搭載しても、一対の配線パターンの間に向かって圧電振動板が位置決めされる。このため、圧電振動板を保持台の中央に横ズレすることなく安定して搭載することができる。特に、前記第1の収納部よりサイズの小さく、枕部に接しない圧電振動板を高部配線パターン部に搭載した場合、堤部側に偏って搭載されることがなくなるので、圧電振動板の励振電極が低部配線パターン部の間にある無電極部に位置決めされ、低部配線パターン部とショートすることが一切なくなる。さらに、圧電振動板のサイズが大きくなれば、第1の収納部にある集積回路素子との高さ方向の距離を離すことができるので、接触の可能性の高いサイズの大きな圧電振動板によって、集積回路素子の端子部やワイヤーを傷つけることもなくなる。極性の異なる配線パターン間のショートによって集積回路素子の破壊を招くこともなくなる。また、配線パターンと圧電振動板の稜部が線接触した状態で搭載されるので、圧電振動板の下側の隙間に導電性接合材がたまり、接合強度を向上させることができる。
【0017】
本発明によれば、外形サイズの異なる圧電振動板の搭載が可能で、かつ圧電振動板の傾きなくし、周波数調整する際の悪影響を抑制することができるより信頼性の高い表面実装型圧電発振器を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。本発明による第1の実施の形態につき表面実装型水晶発振器を例にとり図1乃至図3とともに説明する。図1は第1の実施の形態を示す平面図である。図2は図1のセラミックベースに大型の圧電振動板を搭載した状態の平面図(a)と、その平面図のA−A線に沿った断面図(b)である。図3は図1のセラミックベースに小型の圧電振動板を搭載した状態の平面図(a)と、その平面図のB−B線に沿った断面図(b)である。表面実装型水晶発振器は、上部が開口した凹部を有するセラミックベース(絶縁性ベース)1と、当該セラミックベースの中に収納される集積回路素子2と、同じく当該セラミックベース中の上部に収納される圧電振動板3と、セラミックベースの開口部に接合される蓋(図示せず)とからなる。
【0019】
セラミックベース1は全体として直方体で、アルミナ等のセラミックとタングステン等の導電材料を適宜積層した構成であり、断面でみて凹形の収納部10を有する構成である。収納部10は第1の収納部10a(下部収納部)と第2の収納部10b(上部収納部)からなり、それぞれ圧電振動板3と集積回路素子2が収納される。収納部周囲には堤部11が形成されており、堤部11の上面は平坦であり、当該堤部上に周状の第1の金属層11a(封止用部材)が形成されている。当該第1の金属層11aの上面も平坦になるよう形成されており、タングステン、ニッケル、金の順で金属膜層を構成している。タングステンは厚膜印刷技術を活用してメタライズ技術によりセラミック焼成時に一体的に形成され、またニッケル、金の各層はメッキ技術により形成される。
【0020】
セラミックベース側端部には上下方向に伸長する複数のキャスタレーションが形成されている。当該キャスタレーションは円弧状の切り欠きが上下方向に形成された構成である。なお、前記第1の金属層11aはセラミックベースの角部の堤部を上下に貫通接続する図示しない導電ビアにより、セラミックベース下面に形成された外部接続電極(図示せず)に電気的に導出されている。当該外部導出電極をアース接続することにより、後述の金属蓋が金属層11a、導電ビアを介して接地され、電子部品の電磁気的なシールド効果を得ることができる。なお、前述のとおり、当該導電ビアは周知のセラミック積層技術により形成することができる。
【0021】
セラミックベース1内部において、下方面には前述のとおり集積回路素子2を収納する第1の収納部10aと、後述する圧電振動板の一端を保持する保持台10cと、前記第1の収納部を介して前記保持台と対向位置する枕部10dが形成されており、前記第1の収納部10aの上方には、第2の収納部10bが形成されている。前記枕部の上面には、外部端子と接続されないダミーパターン14が形成されている。前記保持台の上面には、前記第1の収納部10aから離隔する領域のみに偏って前記圧電振動子板用の配線パターン12,13が短辺方向に並んで形成されている。このため、特別な加工を施すことなく保持台の第1の収納部に近接した稜部分101cを補助保持部として利用できる。そして、前記補助保持部101cは、前記枕部10dのダミーパターン14と前記配線パターン12,13に対して、パターンが形成されていない分だけ高さが低く設定されている。
【0022】
各配線パターンは導電ビアにより反対面にあるセラミックベース下面に形成された外部接続端子電極(図示せず)にそれぞれ入出力端子として引き出される。また、前記第1の収納部10aの周辺部分で前記保持台と枕部の間には、集積回路素子2との配線パターン16aが複数並んで形成されている。このような構成のセラミックベースは周知のセラミック積層技術やメタライズ技術を用いて形成され、配線パターンは前述の金属層11a形成と同様にタングステン等によるメタライズ層の上面にニッケルメッキ層、金メッキ層の各層が形成された構成である。なお、ダミーパターン14はタングステン等によるメタライズ層のみが形成された構成である。
【0023】
前記下部収納部に搭載される集積回路素子2は、圧電振動板3とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子であり、その上面には接続端子(図示せず)が複数形成されている。当該集積回路素子2は、集積回路素子の複数の接続端子と前記セラミックベースに形成された複数の接続パッド16aとをそれぞれワイヤーボンディング工法により接続される。
【0024】
前記集積回路素子2の上方には所定の間隔を持って圧電振動板3が搭載される。圧電振動板3は例えば矩形状のATカット水晶振動板であり、その表裏面に対向して一対の矩形状励振電極31,32(31のみ図示)と、当該励振電極を水晶振動板の外周に引き出す引出電極33,34とが形成されている。これら各電極は真空蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成手段により形成することができる。
【0025】
圧電振動板とセラミックベースとの接合は、例えば導電性接合材Sを配線パターン12,13の上面にディスペンサの塗布ノズルから適量供給される。その後圧電振動板2を配線パターン12,13に搭載する。これにより圧電振動板の引出電極と配線パターンとは電気的機械的接続されるが、必要に応じて搭載した圧電振動板の引出電極部分に再度導電性接合材(図示せず)を上塗り塗布してもよい。なお、導電性接合材Sはペースト状であり、例えば銀フィラー等の金属微小片を含有するシリコーン系導電樹脂接着剤をあげることができるが、シリコーン系以外に例えば、ウレタン系、イミド系、ポリイミド系、エポキシ系の導電樹脂接着剤を用いることができる。
【0026】
このとき、図2では、前記第1の収納部よりサイズが大きく、保持台の配線パターン12,13と枕部10dの両方に接する圧電振動板を本発明の実施形態のセラミックベースに搭載する状態を示している。配線パターン12,13と枕部のダミーパターン14に圧電振動板3を位置させることで、前記補助保持部101cと圧電振動板3が接触することがなく、圧電振動板3の傾きを抑制することができる。図3では、前記第1の収納部よりサイズが小さく、枕部10dに接しない圧電振動板を本発明の実施形態のセラミックベースに搭載する状態を示している。圧電振動板3の一端を前記配線パターン12,13に搭載することで、保持台の第1の収納部に近接した稜部分101cで圧電振動板3の傾きを抑制することができる。以上により、第1の収納部に収納された集積回路素子と圧電振動板が接触することがなくなり、集積回路素子の端子部やワイヤーを傷つけることも一切なくなる。また、前記補助保持部101cは、前記枕部10dのダミーパターン14と前記配線パターン12,13に対して、パターンが形成されていない分だけ高さが低く設定されている。このため、前記圧電振動板を前記配線パターン12,13に搭載した際にも、保持台10cとの隙間が確保されるので、圧電振動板3の振動を妨げることがなく特性が劣化することもない。
【0027】
セラミックベースを気密封止する蓋(図示せず)は、例えば、コバール等からなるコア材に金属ろう材(封止材)が形成された構成であり、より詳しくは、例えば上面からニッケル層、コバールコア材、銅層、銀ろう層の順の多層構成であり、銀ろう層がセラミックベースの第1の金属層と接合される構成となる。金属蓋の平面視外形はセラミックベースの当該外形とほぼ同じであるか、若干小さい構成となっている。
【0028】
セラミックベース1の収納部10に集積回路素子2と圧電振動板3を格納し、前記金属蓋にて被覆し、金属蓋の封止材とセラミックベースの封止用部材を溶融硬化させ、気密封止を行う。本実施の形態においては、封止用の金属リングを用いないシーム溶接による気密封止を行っており、前記金属蓋の長辺と短辺の稜部に沿ってシームローラを走行させることで、金属蓋に形成された銀ろう(封止材)とセラミックベース1の第1の金属層11a(封止用部材)を溶接させ、気密封止が行われる。
【0029】
次に、本発明による第2の実施の形態につき表面実装型水晶発振器を例にとり図4乃至図7とともに説明する。図4は第2の実施の形態を示す平面図である。図5は図4のセラミックベースに大型の圧電振動板を搭載した状態の平面図(a)と、その平面図のC−C線に沿った断面図(b)である。図6は図4のセラミックベースに中型の圧電振動板を搭載した状態の平面図(a)と、その平面図のD−D線に沿った断面図(b)である。図7は図4のセラミックベースに小型の圧電振動板を搭載した状態の平面図(a)と、その平面図のE−E線に沿った断面図(b)である。なお、基本構成は第1の実施形態と同じであるので、同じ構成部分については同番号を用いるとともに、一部説明を割愛する。
【0030】
セラミックベース1内部において、下方面には前述のとおり集積回路素子2を収納する第1の収納部10a(下部収納部)と、後述する圧電振動板の一端を保持する保持台10cと、前記第1の収納部を介して前記保持台と対向位置する枕部10dが形成されており、前記第1の収納部10aの上方には、第2の収納部10b(上部収納部)が形成されている。前記枕部の上面には、外部端子と接続されないダミーパターン14が形成されている。前記保持台の上面には、前記圧電振動子板用の配線パターン12,13が短辺方向に並んで形成されている。これらの配線パターン12,13は、前記第1の収納部10aから離隔する領域に高部配線パターン部121,131と、前記第1の収納部10aへ近接する領域に低部配線パターン部122,132とを有し、低部配線パターン部は、各配線パターンが近接する中央領域に無電極部123,133が形成されている。
【0031】
このため、高部配線パターン部121,131と低部配線パターン部122,132にそれぞれ配置することで、外形サイズの異なる圧電振動板の搭載が可能となる。このとき、図5,図6に示すように、前記第1の収納部よりサイズが大きく、保持台の配線パターン12,13と枕部10dの両方に接する圧電振動板3は、高部配線パターン部121,131から枕部のダミーパターン14までの寸法に対応した大型のものと、低部配線パターン部122,132から枕部10dまでの寸法に対応した中型のものの2種類の搭載が行え、かつ、各圧電振動板について枕部に位置させることで傾きを抑制することができる。
【0032】
また、前記保持台10dは絶縁性材料からなり、前記一対の低部配線パターン部122,132の間に無電極部123,133を形成し、かつ前記一対の低部配線パターン部122,132はお互いに離隔する堤部側に偏って形成されている。このとき無電極部123,133は、搭載される小型の圧電振動板の励振電極より大きく形成しており、搭載される小型の圧電振動板の励振電極の寸法に応じて寸法調整が必要となる。このため、図7に示すように、前記第1の収納部よりサイズが小さく、枕部10dに接しない圧電振動板3の一端を前記高部配線パターン部121,131に搭載することができる。そして、低部配線パターン部122,132とショートすることなく、特別な加工を施すことなく保持台の第1の収納部に近接した稜部分101cを補助保持部として利用できるので、圧電振動板3の傾きを抑制することができる。以上により、第1の収納部に収納された集積回路素子と圧電振動板が接触することがなくなり、集積回路素子の端子部やワイヤーを傷つけることも一切なくなる。圧電振動板の底面側の励振電極32を介して極性の異なる低部配線パターン部122,132がお互いにショートすることがなくなり、集積回路素子の破壊を招くことも一切なくなる。また、前記第1の収納部よりサイズが小さく枕部に接しない圧電振動板3の一端を前記高部配線パターン部121,131に搭載することで、当該圧電振動板の励振電極31に対して質量を増減する周波数調整する場合、励振電極31の中心部を第1の収納部10aから隔離する方向へずらすことができる。従って、電極材料が圧電振動板との隙間を通って下部収納部10aへ飛散するのが抑制され、結果として周波数調整に関連する電極材料が集積回路素子2に付着することがなくなり、特性に悪影響を与えることがない。
【0033】
そして、これらの各配線パターン12,13は、タングステン等のメタライズからなるとともに、厚膜印刷技術を活用することで低部配線パターン部122,132と高部配線パターン部121,131を極めて容易に作成することができる。例えば、低部配線パターン部122,132と高部配線パターン部121,131の全体については、単層のメタライズを形成し、高部配線パターン部121,131の領域については、前記メタライズの上面にさらに1層以上のメタライズを積層することで、メタライズバンプが構成されている。これらメタライズの高さ調整は、積層回数を変えることで極めて容易に調整することができる。このように構成することで、無電極部123,133である前記補助保持部101cが最も低く、次に低部配線パターン部122,132が低く、そして高部配線パターン部121,131が最も高くなるように構成している。また、前記枕部10dのダミーパターン14は、前記高部配線パターン部121,131と同じ高さに設定している。以上により、前記圧電振動板を、前記配線パターン12,13に搭載した際にも、保持台10cとの隙間が確保されるので、圧電振動板3の振動を妨げることがなく特性が劣化することもない。
【0034】
また、前記低部配線パターン部122,132は、高部配線パターン部に近接する幅狭部124,134と、前記第1の収納部に近接する幅広部125,135が形成されている。このため、低部配線パターン部122,132に搭載される圧電振動板3の位置ズレが認識しやすくなる。低部配線パターン部122,132に塗布される導電性接合材Sが、高部配線パターン部121,131へ流れ出すのを抑制できる。このため、圧電振動板の接合強度バラツキをなくし、圧電振動板の上部への余分な導電性接合材Sの回り込みもなくなる。高部配線パターン部121,131に搭載される圧電振動板3の引出電極33,34と低部配線パターン部122,132とがお互いに電極同士で対向して配置されることが避けられるので、浮遊容量の影響を軽減できる。
【0035】
セラミックベース1の収納部10に集積回路素子2と圧電振動板3を格納し、前記金属蓋にて被覆し、金属蓋の銀ろう(封止材)とセラミックベースの第1の金属層11a(封止用部材)を溶融硬化させ、シーム溶接による気密封止を行う。
【0036】
上述の実施形態の変形例について、図8、図9とともに説明する。図8は図4のセラミックベースの第1の変形例を示す平面図(a)と、その平面図のF−F線に沿った断面図(b)と、その平面図のG−G線に沿った断面図(c)である。図9は図4のセラミックベースの第2の変形例を示す平面図(a)と、その平面図のH−H線に沿った断面図(b)と、その平面図のI−I線に沿った断面図(c)である。なお、基本構成は第2の実施形態と同じであるので、同じ構成部分については同番号を用いるとともに、相違点のみを説明する。
【0037】
図8では、保持台10cの高さは一定で、前記配線パターン12,13の上面のみが、近接するに従い次第に高さが低くなるように傾斜させて形成している。図9では、前記配線パターン12,13の厚みは一定で、上面前記保持台10cの上面が、配線パターン12,13の近接するに従い次第に高さが低くなるように傾斜させて形成している。配線パターンに傾斜を設ける方法は、例えば、厚膜印刷で配線パターンを形成する際に近接するに従い次第に厚みが薄くなるように形成するか、形成された配線パターンに対して近接するに従い次第に厚みが薄くなるようにメタルエッチングするとよい。保持台に傾斜を設ける方法は、例えば、セラミック積層する際に配線パターンの近接するに従い細かな階段状に高さが低くなるように形成するか、配線パターンの近接するに従い次第に高さが低くなるように型を使用しプレスすることで実現できる。これらの変形例では、前記一対の配線パターン12,13は、お互いの配線パターンが近接するに従い次第に高さが低くなるように配置されているので、サイズの異なる圧電振動板3を配線パターン12,13に搭載しても、一対の配線パターン12,13の間に向かって圧電振動板3が位置決めされる。このため、圧電振動板3を保持台10cの中央に横ズレすることなく安定して搭載することができる。特に、前記第1の収納部よりサイズの小さく、枕部10dに接しない圧電振動板3を高部配線パターン部121,131に搭載した場合、圧電振動板の励振電極32が低部配線パターン部122,132の間にある無電極部125,135に位置決めされ、低部配線パターン部122,132とショートすることが一切なくなる。さらに、圧電振動板3のサイズが大きくなれば、第1の収納部にある集積回路素子2との高さ方向の距離を離すことができるので、接触の可能性が高いサイズの大きな圧電振動板3によって、集積回路素子2の端子部やワイヤーを傷つけることもなくなる。極性の異なる配線パターン間のショートによって集積回路素子の破壊を招くこともなくなる。また、配線パターン12,13と圧電振動板3の稜部が線接触した状態で搭載されるので、圧電振動板3の下側の隙間に導電性接合材Sがたまり、接合強度を向上させることができる。なお、図8と図9の構成を組み合わせることも可能である。
【0038】
上記第1の実施形態、および第2の実施形態では、封止用の金属リングを用いないシーム溶接による気密封止を例にしているが、封止用の金属リングを用いてもよく、レーザーや電子ビームなどのビーム封止や、封止材としてガラスを用いたガラス封止であってもよい。また、圧電振動板とセラミックベースとの接合に用いる導電性接合材は、樹脂接着剤に限らず、メッキバンプや金属バンプ、あるいは金属ろう材などであってもよい。さらに、集積回路素子とセラミックベースとの電気的接続は、ワイヤーボンディング工法に限らず、フリップチップボンディング工法などを採用してもよい。
【0039】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施できるので、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求範囲によって示すものであって、明細書本文に拘束されるものではない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のセラミックベースに大型の圧電振動板を搭載した状態の平面図(a)と、その平面図のA−A線に沿った断面図(b)である。
【図3】図1のセラミックベースに小型の圧電振動板を搭載した状態の平面図(a)と、その平面図のB−B線に沿った断面図(b)である。
【図4】第2の実施形態を示す平面図である。
【図5】図4のセラミックベースに大型の圧電振動板を搭載した状態の平面図(a)と、その平面図のC−C線に沿った断面図(b)である。
【図6】図4のセラミックベースに中型の圧電振動板を搭載した状態の平面図(a)と、その平面図のD−D線に沿った断面図(b)である。
【図7】図4のセラミックベースに小型の圧電振動板を搭載した状態の平面図(a)と、その平面図のE−E線に沿った断面図(b)である。
【図8】図4のセラミックベースの形態の第1の変形例を示す平面図(a)と、その平面図のF−F線に沿った断面図(b)と、その平面図のG−G線に沿った断面図(c)である。
【図9】図4のセラミックベースの形態の第2の変形例を示す平面図(a)と、その平面図のH−H線に沿った断面図(b)と、その平面図のI−I線に沿った断面図(c)である。
【符号の説明】
【0041】
1 セラミックベース
2 集積回路素子
3 圧電振動板
S 導電性接合材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性ベースと蓋を有する表面実装型圧電発振器であって、
圧電発振回路を構成してなる集積回路素子と励振電極が形成された圧電振動板と、
上面に複数の前記集積回路素子用の配線パターンが形成されるとともに前記集積回路素子を収納する第1の収納部と、第1の収納部の上部に前記圧電振動板を収納する第2の収納部と、前記第1の収納部と第2の収納部の周囲に形成された堤部とを有してなる絶縁性ベースと、
前記絶縁性ベースに被せて気密封止してなる蓋とを具備してなり、
前記絶縁性ベースの第2の収納部には、前記圧電振動板の一端を保持する絶縁性の保持台と前記第1の収納部を介して前記保持台と対向する位置に枕部が形成され、前記保持台の上面には、前記圧電振動板と電気的機械的に接合される前記圧電振動板用の一対の配線パターンが形成されてなり、前記保持台の第1の収納部に近接する領域には、前記配線パターンより高さの低い絶縁性の補助保持部が形成されてなることを特徴とする表面実装型圧電発振器。
【請求項2】
前記保持台は絶縁性材料からなり、前記一対の配線パターンは前記保持台のうち第1の収納部から離隔する領域のみに偏って形成されてなることを特徴とする特許請求項1記載の表面実装型圧電発振器。
【請求項3】
前記保持台は絶縁性材料からなり、前記一対の配線パターンは、前記保持台のうち前記第1の収納部から離隔する領域に高部配線パターン部と、前記第1の収納部へ近接する領域に低部配線パターン部とを有し、前記一対の低部配線パターン部の間に無電極部を形成し、かつ前記一対の低部配線パターン部はお互いに離隔する堤部側に偏って形成されてなることを特徴とする特許請求項1記載の表面実装型圧電発振器。
【請求項4】
前記一対の低部配線パターン部は、高部配線パターン部に近接する幅狭部と、前記第1の収納部に近接する幅広部が形成されてなることを特徴とする特許請求項3記載の表面実装型圧電発振器。
【請求項5】
前記一対の配線パターンは、お互いの配線パターンの上面が近接するに従い次第に高さが低くなるように形成されてなることを特徴とする特許請求項1乃至4記載の表面実装型圧電発振器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−345482(P2006−345482A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38149(P2006−38149)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】