説明

表面欠陥検出装置及び表面欠陥検出方法

【課題】簡単な構成で被検査物の微小な凹凸や突起等の表面欠陥及び表面の濃度変化を伴う欠陥を識別して検出する。
【解決手段】2つの照明手段2a,2bから異なる光学特性で略平行なラインビームを被検査物4表面に照射し、2つの撮像手段3a,3bで照明手段2a,2bの異なる光学特性の反射光を区別して受光し、撮像手段3a,3bからの信号の明度変化から、撮像手段3a,3bの実撮像位置と欠陥検出をするためにあらかじめ設定された撮像条件となる想定撮像位置とのずれ量を演算して、照明手段3a,3bで投射された被検査物4表面のラインを撮像手段3aで撮像するときの読み出し間隔が短くて済むとともに、撮像手段3a,3bの位置ずれ修正を簡単な構成で安価に実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被測定物の微小な凹凸や突起等の表面欠陥及び表面の濃度変化を伴う欠陥を検出する表面欠陥検出装置及び表面欠陥検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一様な照明手段からの投射光を被測定物表面に照射し、その反射光分布から得られる画像に対して、物体表面の傷や凹凸および汚れ等を検出もしくは検査することは、従来一般的に行われている方法である。特に、ロール紙やシート等の平面状に広がる物体や円筒状の物体においては、特許文献1や特許文献2あるいは特許文献3に示すように、撮像素子としてラインセンサを用い、物体の相対的な移動や回転によって副走査して表面画像を得る方法が一般的である。
【0003】
このライン状の光を被検査物に照射するとともに被検査物を回転して被検査物により反射されるライン状の光をラインセンサで検出し、ラインセンサで得られる画像処理して欠陥処理を行う方法では、正反射光により近い位置で画像を取得したほうが、表面形状による光量の変化が激しくなり微小な凹凸に対する検出感度が高くなる。しかしながら、被検査物の形状の歪みや回転のムラや振動によって反射光とラインセンサの相対位置関係が変化するため、従来の表面欠陥検出装置では高感度な位置で検出できなかった。
【0004】
このような問題を解決するため、特許文献3に示された表面欠陥検査装置は、ライン型照明手段により光を被検査物表面に位置方向から照射し、その反射あるいは拡散する光をラインセンサで検出するとともに、被検査物表面にて反射する反射分布をエリアセンサで検出し、エリアセンサで検出した情報をもとに、ラインセンサと被検査物の観測表面とライン型照明手段の相対位置を調整して、反射光の位置に対してラインセンサが常に一定位置になるように制御している。
【特許文献1】特許第3341963号公報
【特許文献2】特許第3585225号公報
【特許文献3】特開2004−279367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に示すように、エリアセンサにより反射光分布を検出する方法では、追従精度を高精度化するには、画像を高精細化し、撮像フレームレートを高くする必要がある。しかしながら、高解像度で高フレームレートのエリアセンサは高価であり、また、画像処理量も膨大となるためシステムの価格が高くなってしまう。
【0006】
また、複数センサ間の相対位置関係の調整やキャリブレーションを行う必要があり、相対位置のずれによる検出精度低下やメンテナンス工数の増加要因となっていた。
【0007】
さらに、光量変化率が高いところにセンサを配置することにより、微小形状変化に対しても、高感度に信号の変化を検出することが可能となるが、その信号変化が発生する原因が、突起部であるか微小な濃度ムラであるかの区別ができない等の問題が生じていた。このような突起と濃度ムラの判別は、欠陥発生時の製品の製造工程チェックを行い、安定した製品を送り出すためには大変重要であるため、その検出と区別が非常に切望されている。
【0008】
この発明は、このような問題を解消し、簡単な構成でコストを低減して複数センサの相対位置の変化等による検出性能のばらつきや低下を抑えるとともに、被測定物の微小な凹凸や突起等の表面欠陥及び表面の濃度変化を伴う欠陥を識別して検出する表面欠陥検出装置及び表面欠陥検出方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の表面欠陥検出装置は、撮像手段に対し相対移動する被検査物の表面に照明手段から光を照射し、その反射光を撮像手段に順次取り込み被検査物表面画像を入力する表面欠陥検出装置であって、複数の照明手段と複数の撮像手段及び欠陥検出処理部を有し、前記複数の照明手段は、互いに分離可能な異なる光学特性で、かつ、前記撮像手段の主走査方向に対して略平行なライン状光源により構成され、前記複数の撮像手段は、前記複数の照明手段の異なる光学特性の反射光を区別して受光するラインセンサで構成され、前記欠陥検出処理部は、前記複数の撮像手段からの信号の明度変化から、前記複数の撮像手段の実撮像位置と欠陥検出をするためにあらかじめ設定された撮像条件となる想定撮像位置とのずれ量を演算する撮像位置ずれ量演算手段と、前記撮像位置ずれ量演算手段で演算した前記複数の撮像手段のずれ量を前記想定撮像位置となるように制御する撮像位置補正制御手段とを有することを特徴とする。
【0010】
この発明の他の表面欠陥検出装置は、撮像手段に対し相対移動する被検査物の表面に照明手段から光を照射し、その反射光を撮像手段に順次取り込み被検査物表面画像を入力する表面欠陥検出装置であって、複数の照明手段と複数の撮像手段及び欠陥検出処理手段を有し、前記複数の照明手段は、互いに分離可能な異なる光学特性で、かつ、被検査物と前記複数の撮像手段の光軸がなす平面の異なる側に配置され、前記撮像手段の主走査方向に対して略平行なライン状光源により構成され、前記複数の撮像手段は、前記複数の照明手段の異なる光学特性の反射光を区別して受光するラインセンサで構成され、前記欠陥検出処理手段は、前記複数の撮像手段からの信号の低周波成分から、前記複数の撮像手段の実撮像位置と欠陥検出をするためにあらかじめ設定された撮像条件となる想定撮像位置とのずれ量を演算する撮像位置ずれ量演算手段と、前記撮像位置ずれ量演算手段で演算した前記複数の撮像手段のずれ量を前記想定撮像位置となるように制御する撮像位置補正制御手段と、前記1又は複数の撮像手段からの信号の高周波成分から被検査物表面の局所的な傾きを検出する表面傾き検出手段と、前記表面傾き検出手段で検出した被検査物表面の局所的な傾きから被検査物の表面欠陥と濃度欠陥を検出する欠陥検出手段とを有することを特徴とする。
【0011】
前記撮像位置補正制御手段は、前記撮像位置ずれ量演算手段で演算した主走査方向全体に分布するずれ量の平均値成分から前記撮像手段の副走査方向の位置ずれを修正する位置制御を行い、主走査方向全体に分布するずれ量の傾き成分から前記撮像手段と被検査物の傾きのずれを修正する角度制御を行う。
【0012】
また、前記欠陥検出手段は、前記表面傾き検出手段で検出した被検査物表面の局所的な傾きから被検査物の表面の凹凸とその高さを検出する。
【0013】
さらに、前記複数の照明手段を、被検査物と前記撮像手段の光軸とのなす平面に対して同じ側又は異なる側に設ける。
【0014】
この発明の表面欠陥検出方法は、撮像手段に対し相対移動する被検査物の表面に照明手段から光を照射し、その反射光を撮像手段に順次取り込み被検査物表面画像を入力する表面欠陥検出方法であって、複数の照明手段から互いに分離可能な異なる光学特性で、かつ、前記撮像手段の主走査方向に対して略平行なラインビームを被検査物表面に照射し、複数の撮像手段で前記複数の照明手段の異なる光学特性の反射光を区別して受光し、前記複数の撮像手段からの信号の明度変化から、前記複数の撮像手段の実撮像位置と欠陥検出をするためにあらかじめ設定された撮像条件となる想定撮像位置とのずれ量を演算し、演算した前記複数の撮像手段のずれ量を前記想定撮像位置となるように制御して被検査物の欠陥を検出することを特徴とする。
【0015】
この発明の他の表面欠陥検出方法は、撮像手段に対し相対移動する被検査物の表面に照明手段から光を照射し、その反射光を撮像手段に順次取り込み被検査物表面画像を入力する表面欠陥検出方法であって、複数の照明手段から互いに分離可能な異なる光学特性で、かつ、前記撮像手段の主走査方向に対して略平行なラインビームを被検査物表面に照射し、複数の撮像手段で前記複数の照明手段の異なる光学特性の反射光を区別して受光し、前記複数の撮像手段からの信号の低周波成分から、前記複数の撮像手段の実撮像位置と欠陥検出をするためにあらかじめ設定された撮像条件となる想定撮像位置とのずれ量を演算し、演算した前記複数の撮像手段のずれ量を前記想定撮像位置となるように制御し、前記撮像手段からの信号の高周波成分から被検査物表面の局所的な傾きを検出し、検出した被検査物表面の局所的な傾きから被検査物の表面欠陥と濃度欠陥を検出することを特徴とする。
【0016】
前記演算した主走査方向全体に分布するずれ量の平均値成分から前記撮像手段の副走査方向の位置ずれを修正する位置制御を行い、主走査方向全体に分布するずれ量の傾き成分から前記撮像手段と被検査物との傾きを修正する角度制御を行う。
【0017】
また、前記検出した被検査物表面の局所的な傾きから被検査物の表面の凹凸とその高さを検出する。
【0018】
さらに、前記被検査物の表面が曲面で形成されている場合、その曲率に応じて前記複数の照明手段の位置を可変する。
【発明の効果】
【0019】
この発明は、複数の照明手段から異なる光学特性で略平行なラインビームを被検査物表面に照射し、複数の撮像手段で複数の照明手段の異なる光学特性の反射光を区別して受光し、複数の撮像手段からの信号の明度変化から、複数の撮像手段の実撮像位置と欠陥検出をするためにあらかじめ設定された撮像条件となる想定撮像位置とのずれ量を演算するようにしたから、複数の照明手段で投射された被検査物表面のラインを複数の撮像手段で撮像するときの読み出し間隔が短くて済むとともに、1次元のデータのため、撮像手段の位置ずれ修正を簡単な構成で安価に実現することができる。
【0020】
また、被検査物個々の部品や一部品内で反射率が異なっても、撮像手段の位置を安定して想定撮像位置になるように修正することができ、被検査物表面の欠陥を精度良く検出することができる。
【0021】
また、複数の撮像手段からの信号を低周波成分と高周波成分に分離し、低周波成分で撮像手段の位置ずれ量を演算し、演算した位置ずれ量で撮像手段の位置を制御し、高周波成分で被検査物表面の局所的な傾きを検出して被検査物の欠陥を検出することにより、簡単な構成で被検査物表面の欠陥を精度良く検出することができる。
【0022】
さらに、主走査方向全体に分布するずれ量の平均値成分から撮像手段の副走査方向の位置ずれを修正する位置制御を行い、主走査方向全体に分布するずれ量の傾き成分から撮像手段と被検査物の傾きのずれを修正する角度制御を行うことにより、被検査物が回転ぶれ等により全体が傾いても、被検査物表面の欠陥を精度良く検出することができる。
【0023】
また、被検査物表面の局所的な傾きから被検査物の表面の凹凸とその高さを検出することにより、被検査物の表面の凹凸欠陥を高精度に検出することができる。
【0024】
また、被検査物の表面が曲面で形成されている場合、その曲率に応じて複数の照明手段の位置を可変することにより、表面が曲面で形成されている被検査物表面の欠陥を精度良く検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、この発明の表面欠陥検出装置の光学系の構成図である。図に示すように、表面欠陥検出装置は、例えば電子写真方式の画像形成装置に使用する感光体等の円筒状の物体表面や平面状に広がる物体表面の各種欠陥を検出するものであり、光学系1は複数、例えば2つの照明手段2a,2bと2つの撮像手段3a,3bを有する。照明手段2a,2bはそれぞれライン状光源により構成され、互いに分離可能な異なる光学特性を有し、例えば円筒状をして回転する被検査物4の表面にラインビームを投射する。この2つの撮像手段3a,3bはラインセンサからなり、照明手段2a,照明手段2bで被検査物4に照射したラインビームの反射光を受光する。
【0026】
照明手段2a,2bは、撮像手段3a,3bの主走査方向に対して略平行に配置されている。この照明手段2a,2bの光学特性を異ならせる方法としては、例えば異なる波長の光と対応した波長を透過するフィルタや、偏向状態の異なる投射光と偏向フィルタ、若しくは時分割して投射しそのタイミングと同期して撮像する等がある。最も簡単な方法としては、各撮像手段3a,3bにカラーのラインセンサを用い、各照明手段2a,2bをそれぞれ撮像手段3a,3bの対応色にする方法がある。撮像手段3a,3bは、主走査方向と直交するX方向に移動するとともに撮像手段3aの光軸を中心にして回動する撮像手段移動装置5に搭載されている。
【0027】
この表面欠陥検出装置の欠陥検出処理部は、図2のブロック図に示すように、画像処理部6a,6bと撮像位置制御部7を有する。画像処理部6aは、撮像手段3aからの信号を処理する。画像処理部6bは、撮像手段3bからの信号を処理する。撮像位置制御部7は、撮像位置ずれ量演算部8と撮像位置補正制御部9を有する。撮像位置ずれ量演算部8は、画像処理部6aから入力する撮像手段3aの信号と画像処理部6bから入力する撮像手段3bの信号により、被検査物4の表面の撮像条件となっている撮像手段3a,3bの実撮像位置と欠陥検出をするためにあらかじめ設定された撮像条件となる想定撮像位置との位置ずれ量を算出する。撮像位置補正制御部9は、撮像位置ずれ量演算部8で算出した撮像手段3a,3bの位置ずれ量により撮像手段3a,3bの実撮像位置が欠陥検出をするために設定された撮像条件となる想定撮像位置になるように撮像手段移動装置5を制御する。
【0028】
前記のように構成した表面欠陥検出装置で、照明手段2a,2bから投射して被検査物4の表面で反射した光を撮像手段3a,3bで検出して、撮像手段3a,3bの実撮像位置と欠陥検出をするために設定された撮像条件となる想定撮像位置との位置ずれ量を検出する原理を説明する。
【0029】
例えば1つの照明手段2aから被検査物4に光を投射して1つの撮像手段3aで反射光を受光する場合、撮像手段3aの設定基準位置は、図3(a)の反射光の輝度分布に示すように、被検査物4表面からの反射光の分布Aのもっとも輝度が高いところからの偏差量dで規定している。この基準位置に撮像手段3aを設けて撮像しているとき、被検査物4の回転ぶれ等が生じて被検査物4表面の輝線の位置がずれると、図3(b)に示すように、により、被検査物4からの反射光の分布Aがずれて、もっとも輝度の高いところからの偏差量dが偏差量d1と変化して撮像手段3aの検出感度が変わってしまう。この反射光の輝度分布を特許文献3ではエリアセンサで検出して補正するようにしている。
【0030】
これに対して、この発明の表面欠陥検出装置では、光学系1に2つの照明手段2a,2bと2つの撮像手段3a,3bを設け、照明手段2a,2bから略平行な光を被検査物4表面に投射し、照明手段2aの投射光による反射光を撮像手段3aで受光し、照明手段2bの投射光による反射光を撮像手段3bで受光する。このときの撮像手段3a,3bの設定基準位置は、図4(a)の反射光の輝度分布に示すように、照明手段2aの投射光による反射光の分布Aと照明手段2bの投射光による反射光の分布Bのもっとも輝度が高いところの中間位置に規定している。この基準位置に撮像手段3a,3bを設けておくと、撮像手段3a,3bによる輝度の観測量は同じである。この状態で被検査物4の回転ぶれ等が生じて被検査物4表面の各輝線の位置がずれると、図4(b)に示すように、照明手段2aの投射光による反射光の分布Aと照明手段2bの投射光による反射光の分布Bが変化して、例えば撮像手段3aによる輝度の観測量が低くなり、撮像手段3bによる輝度の観測量が高くなる。この撮像手段3a,3bによる輝度の観測量が同じになるように撮像手段移動装置5を制御する。
【0031】
この表面欠陥検出装置で被検査物4の欠陥を検出しているときに、撮像位置制御部7で撮像手段3a,3bの撮像位置を修正するときの動作を図5のフローチャートを参照して説明する。
【0032】
被検査物4を回転しながら、照明手段2a,2bから略平行な光を被検査物4表面に投射して被検査物4の欠陥を検出しているとき、2つの撮像手段3a,3bは被検査物4からの反射光を検出して、反射光による信号をそれぞれ画像処理部6a,6bに出力する(ステップS1)。画像処理部6a,6bは、それぞれ入力した信号を処理して撮像位置制御部7の撮像位置ずれ量演算部8に輝度信号を出力する。撮像位置ずれ量演算部8は入力した2つの輝度信号を比較し、2つの輝度信号の強度から被検査物4の表面の撮像条件となっている撮像手段3a,3bの実撮像位置と欠陥検出をするためにあらかじめ設定された撮像条件となる想定撮像位置との位置ずれ量を算出して撮像位置補正制御部9に出力する(ステップS2)。撮像位置補正制御部9は、入力した撮像手段3a,3bの位置ずれ量により撮像手段3a,3bの実撮像位置が欠陥検出をするために設定された撮像条件となる想定撮像位置になるように撮像手段移動装置5を制御して撮像手段3a,3bの位置を修正する(ステップS3)。このように撮像手段3a,3bの位置を撮像条件となる想定撮像位置になるように修正した後、欠陥検出処理を実行する(ステップS4)。
【0033】
このように照明手段2a,2bから略平行な光を被検査物4表面に投射し、照明手段2aからの投射光の被検査物4からの反射光をラインセンサからなる撮像手段3aで検出し、照明手段2bからの投射光の被検査物4からの反射光をラインセンサからなる撮像手段3bで検出して撮像手段3a,3bで検出した輝度信号の強度により撮像手段3a,3bの位置ずれ量を算出して撮像手段3a,3bの位置を修正するとき、撮像手段3a,3bでは各ラインを撮像するたびにライン画像データを出力することにより、取り込み間隔が長いエリアセンサと比べて読み出し間隔が短くて済む。また、1次元のデータのためハードウエア化も容易であり、コスト的にも安価に実現できる。
【0034】
また、例えば複写機やレーザープリンタ等で使用している感光体ドラムでは、塗膜部材の塗布量のばらつきや、工程の変化により個々の部品ごとに反射率が異なるため、一部品内で一定にできても、部品間を一定感度で検出することは難しい。また、定着ローラ等の部品では、一部品内でも反射率が異なるものもある。このような場合でも、照明手段2a,2bから光学特性が異なる投射光を投射した場合は、反射率の違いは双方に影響し、この反射率の違い影響した反射光の強度を撮像手段3a,3bで検出するから、個々の部品や一部品内で反射率が異なっても、撮像手段3a,3bの位置を安定して想定撮像位置になるように修正することができる。
【0035】
この被検査物4からの反射光分布のずれは、被検査物4の表面の傾きによっても発生する。例えば図6の模式図に示すように、照明手段2から投射光を被検査物4の表面4aに投射してその反射光の輝度を撮像手段3で検出するとき、図6(a)に示すように、撮像手段3の光軸が被検査物4の表面4aと直交している正常なときと比べて、図6(b),(c)に示すように、被検査物4の回転ぶれ等により被検査物4の全体が傾くと、その傾きの状態により撮像手段3に入射する光は明るくなったり暗くなったりする。また、被検査物4の表面の微小な凹凸や突起等による局所的に傾きがある場合も、その形状変化により撮像手段3に入射する光は明るくなったり暗くなったりする。
【0036】
このように被検査物4の回転ぶれ等により被検査物4の全体が傾いた状態で撮像手段3a,3bにより被検査物4からの反射光を検出すると正常な場合と比べてその強度が変動して欠陥を精度良く検出できなくなる。この被検査物4の全体の傾きも修正して欠陥を検出する第2の表面欠陥検出装置について説明する。
【0037】
第2の表面欠陥検出装置の光学系1は、図7の構成図に示すように、照明手段2aに対して照明手段2bを撮像手段3a,3bの光軸に対して対称に配置している。この場合、照明手段2aで被検査物4に照射した反射した反射光は、図6に示すような分布になるがが、照明手段2bで被検査物4に照射した反射した反射光は、図8に示すような分布になり異なる。また、濃度変化が生ずる場合は、検出する値はともに増減するが、形状変化がある場合は増減方向が逆となる。
【0038】
この第2の表面欠陥検出装置の欠陥検出処理部10は、図9のブロック図に示すように、画像処理部6a,6bと撮像位置制御部7と表面傾き検出部11と欠陥検出部12及び出力部13を有する。画像処理部6aは、撮像手段3aからの信号を処理してフーリエ変換して得た空間周波数により低周波成分と高周波成分とに分離して、低周波成分を撮像位置制御部7に出力し、高周波成分を表面傾き検出部11に出力する。画像処理部6bは、撮像手段3bからの信号を処理してフーリエ変換して得た空間周波数により低周波成分と高周波成分とに分離して、低周波成分を撮像位置制御部7に出力する。撮像位置制御部7は、撮像位置ずれ量演算部8と撮像位置補正制御部9を有する。撮像位置ずれ量演算部8は、画像処理部6aから入力する撮像手段3aの信号の低周波成分と画像処理部6bから入力する撮像手段3bの信号の低周波成分により、被検査物4の表面の撮像条件となっている撮像手段3a,3bの実撮像位置と欠陥検出をするためにあらかじめ設定された撮像条件となる想定撮像位置との位置ずれ量を算出する。撮像位置補正制御部9は、撮像位置ずれ量演算部8で算出した撮像手段3a,3bの位置ずれ量の平均値成分から、その副走査方向にずれを修正するように撮像手段移動装置5の位置制御を行い、主走査方向全体に分布するずれ量の傾き成分から撮像手段3a,3bと被検査物4の傾きのずれを相殺するように撮像手段移動装置5の角度制御を行う。表面傾き検出部11は、画像処理部6aから入力する撮像手段3aの信号の高周波成分により被検査物4の表面の局部的な傾きを検出する。欠陥検出部12は、表面傾き検出部11で検出した被検査物4の局所的な傾きから、被検査物4の表面の微小な凹凸や突起等の表面欠陥や濃度欠陥を検出する。出力部13は、欠陥検出部12で検出した表面欠陥を表示装置14に表示するとともに外部記憶装置等に出力する。
【0039】
この第2の表面欠陥検出装置で撮像手段3a,3bの撮像位置を修正しながら被検査物4の欠陥を検出するときの動作を図10のフローチャートを参照して説明する。
【0040】
被検査物4を回転しながら、照明手段2a,2bから光を被検査物4表面に投射して被検査物4の欠陥を検出するとき、まず、2つの撮像手段3a,3bは被検査物4からの反射光を検出して、反射光による信号をそれぞれ画像処理部6a,6bに出力する(ステップS11)。画像処理部6aは、撮像手段3aからの信号を処理してフーリエ変換して得た空間周波数により低周波成分と高周波成分とに分離して、低周波成分を撮像位置制御部7の撮像位置ずれ量演算部8に出力し、高周波成分を表面傾き検出部11に出力する。画像処理部6bは、撮像手段3bからの信号を処理してフーリエ変換して得た空間周波数により低周波成分と高周波成分とに分離して、低周波成分を撮像位置ずれ量演算部8に出力する(ステップS12)。ここで示す高周波成分とは、主走査方向の検出輝度の空間分布を周波数変換したときの高周波数側の成分より構成される成分を示し、図11(a)に示す撮像手段3aからの信号Cを、図11(b)に示すように、低周波成分Dと高周波成分Eに分離すると、低周波成分Cは全体の変化に対応し、高周波成分Eは局所的な変化に対応する。
【0041】
撮像位置ずれ量演算部8は、画像処理部6a,6bから入力する撮像手段3a,3bから入力した低周波成分により、被検査物4の表面の撮像条件となっている撮像手段3a,3bの実撮像位置と欠陥検出をするためにあらかじめ設定された撮像条件となる想定撮像位置との位置ずれ量を算出して撮像位置補正制御部9に出力する(ステップS13)。撮像位置補正制御部9は、入力した位置ずれ量の平均値成分から、その副走査方向にずれを修正するように撮像手段移動装置5の位置制御を行い、主走査方向全体に分布するずれ量の傾き成分から撮像手段3a,3bと被検査物4の傾きのずれを相殺するように撮像手段移動装置5の角度制御を行う(ステップS14)。
【0042】
撮像手段3a,3bの撮像位置を修正すると、修正した撮影位置で撮像手段3a,3bにより被検査物4からの反射光を検出し(ステップS15)、画像処理部6aで撮像手段3aからの信号を低周波成分と高周波成分とに分離して、高周波成分を表面傾き検出部11に出力する(ステップS16)。表面傾き検出部11は、入力した高周波成分により被検査物4表面の局部的な傾きを検出して欠陥検出部12に出力する(ステップS17)。欠陥検出部12は、入力した被検査物4の局所的な傾きの信号を積分して、被検査物4の表面の微小な凹凸や突起等の表面欠陥及び濃度欠陥を検出する。出力部13は、欠陥検出部12で検出した欠陥を表示装置14に表示するとともに外部記憶装置等に出力する(ステップS18)。
【0043】
このようにラインセンサからなる照明手段2a,2bから被検査物4に投射した光の反射光により被検査物4と撮像手段3a,3bとの相対位置を修正して被検査物4の欠陥を検出するから、簡単な構成で被検査物4の各種欠陥を精度良く検出することができる。
【0044】
前記説明では撮像手段3aで撮像した信号の高周波成分から被検査物4の表面の局部的な傾きを検出する場合について説明したが、撮像手段3aで撮像した信号の高周波成分と撮像手段3bで撮像した信号の高周波成分の両方を使用して被検査物4の表面の局部的な傾きを検出しても良い。この場合は、図12に示すように、撮像手段3aで撮像した信号の高周波成分Fに対して撮像手段3bで撮像した信号の高周波成分Gは逆位相になる。この場合、照明手段2a,2bあるいは撮像手段3a,3bが傾いている状態では、図13のように、撮像手段3aの主走査方向の傾きHと撮像手段3bの主走査方向の傾きIはで逆に傾く。このため、両信号の差分信号Jの傾き(1次)成分が零となるように傾きを補正することによって、傾き変化に対しても撮像位置を一定となるように制御することができる。
【0045】
前記説明では、照明手段2aに対して照明手段2bを撮像手段3a,3bの光軸に対して対称に配置して、撮像手段3a,3bからの信号の低周波成分で撮像手段3a,3bの位置と角度を修正し、高周波成分で被検査物4の局所的な傾きを検出して、被検査物4の欠陥を検出する場合について説明したが、照明手段2a,2bを撮像手段3a,3bの主走査方向に対して略平行に配置した場合も同様にして撮像手段3a,3bの位置と角度を修正し、被検査物4の局所的な傾きを検出して、被検査物4の欠陥を検出することができる。
【0046】
また、照明手段2a,2bを撮像手段3a,3bの主走査方向に対して略平行に配置したて円筒状の被検査物4の欠陥を検出する場合、図14(a)に示すように、被検査物4の直径が小径の場合と、図14(b)に示すように、被検査物4の直径が大径の場合とで反射方向が異なり、照明手段2a,2bの投射光による反射光分布のずれ量も変化する。そこで照明手段2a,2bによる検出輝度を同じになる位置が、所定感度になるようにするために、被検査物4の直径に応じて照明手段2a,2bの間隔を変化させる等を行い最適な画像入力条件に調整すると良い。このように被検査物4の直径に応じて照明手段2a,2bの間隔を変化させることにより、最適な感度の位置で照明手段2a,2bの検出輝度を同じになるように調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の表面欠陥検出装置の光学系の構成図である。
【図2】表面欠陥検出装置の撮像位置制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】1つの照明手段による反射光の輝度分布を示す模式図である。
【図4】2つの照明手段による反射光の輝度分布を示す模式図である。
【図5】撮像手段の撮像位置を修正する制御動作を示すフローチャートである。
【図6】被検査物が傾いた場合の反射光の輝度分布を示す模式図である。
【図7】第2の表面欠陥検出装置の光学系の構成図である。
【図8】被検査物が傾いた場合の他の反射光の輝度分布を示す模式図である。
【図9】表面欠陥検出装置の欠陥検出処理部の構成を示すブロック図である。
【図10】被検査物の欠陥検出動作を示すフローチャートとである。
【図11】撮像手段からの信号とその低周波成分と高周波成分を示す模式図である。
【図12】2つの撮像手段からの信号の高周波成分を示す模式図である。
【図13】2つの照明手段あるいは撮像手段が傾いている状態における撮像手段から出力する輝度信号の傾きを示す模式図である。
【図14】直径が異なる円筒状の被検査物からの反射信号を示す模式図である。
【符号の説明】
【0048】
1;光学系、2;照明手段、3;撮像手段、4;被検査物、5;撮像手段移動装置、
6;画像処理部、7;撮像位置制御部、8;撮像位置ずれ量演算部、
9;撮像位置補正制御部、10;欠陥検出処理部、11;表面傾き検出部、
12;欠陥検出部、13;出力部、14;表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段に対し相対移動する被検査物の表面に照明手段から光を照射し、その反射光を撮像手段に順次取り込み被検査物表面画像を入力する表面欠陥検出装置であって、
複数の照明手段と複数の撮像手段及び欠陥検出処理部を有し、
前記複数の照明手段は、互いに分離可能な異なる光学特性で、かつ、前記撮像手段の主走査方向に対して略平行なライン状光源により構成され、
前記複数の撮像手段は、前記複数の照明手段の異なる光学特性の反射光を区別して受光するラインセンサで構成され、
前記欠陥検出処理部は、前記複数の撮像手段からの信号の明度変化から、前記複数の撮像手段の実撮像位置と欠陥検出をするためにあらかじめ設定された撮像条件となる想定撮像位置とのずれ量を演算する撮像位置ずれ量演算手段と、前記撮像位置ずれ量演算手段で演算した前記複数の撮像手段のずれ量を前記想定撮像位置となるように制御する撮像位置補正制御手段とを有することを特徴とする表面欠陥検出装置。
【請求項2】
撮像手段に対し相対移動する被検査物の表面に照明手段から光を照射し、その反射光を撮像手段に順次取り込み被検査物表面画像を入力する表面欠陥検出装置であって、
複数の照明手段と複数の撮像手段及び欠陥検出処理手段を有し、
前記複数の照明手段は、互いに分離可能な異なる光学特性で、かつ、被検査物と前記複数の撮像手段の光軸がなす平面の異なる側に配置され、前記撮像手段の主走査方向に対して略平行なライン状光源により構成され、
前記複数の撮像手段は、前記複数の照明手段の異なる光学特性の反射光を区別して受光するラインセンサで構成され、
前記欠陥検出処理手段は、前記複数の撮像手段からの信号の低周波成分から、前記複数の撮像手段の実撮像位置と欠陥検出をするためにあらかじめ設定された撮像条件となる想定撮像位置とのずれ量を演算する撮像位置ずれ量演算手段と、前記撮像位置ずれ量演算手段で演算した前記複数の撮像手段のずれ量を前記想定撮像位置となるように制御する撮像位置補正制御手段と、前記1又は複数の撮像手段からの信号の高周波成分から被検査物表面の局所的な傾きを検出する表面傾き検出手段と、前記表面傾き検出手段で検出した被検査物表面の局所的な傾きから被検査物の表面欠陥と濃度欠陥を検出する欠陥検出手段とを有することを特徴とする表面欠陥検出装置。
【請求項3】
前記撮像位置補正制御手段は、前記撮像位置ずれ量演算手段で演算した主走査方向全体に分布するずれ量の平均値成分から前記撮像手段の副走査方向の位置ずれを修正する位置制御を行い、主走査方向全体に分布するずれ量の傾き成分から前記撮像手段と被検査物との傾きを修正する角度制御を行う請求項2記載の表面欠陥検出装置。
【請求項4】
前記欠陥検出手段は、前記表面傾き検出手段で検出した被検査物表面の局所的な傾きから被検査物の表面の凹凸とその高さを検出する請求項2又は3記載の表面欠陥検出装置。
【請求項5】
前記複数の照明手段は、被検査物と前記撮像手段の光軸とのなす平面に対して同じ側に設けられている請求項1乃至4のいずれかに記載の表面欠陥検出装置。
【請求項6】
前記複数の照明手段は、被検査物と前記撮像手段の光軸とのなす平面に対して異なる側に設けられている請求項1乃至5のいずれかに記載の表面欠陥検出装置。
【請求項7】
撮像手段に対し相対移動する被検査物の表面に照明手段から光を照射し、その反射光を撮像手段に順次取り込み被検査物表面画像を入力する表面欠陥検出方法であって、
複数の照明手段から互いに分離可能な異なる光学特性で、かつ、前記撮像手段の主走査方向に対して略平行なラインビームを被検査物表面に照射し、
複数の撮像手段で前記複数の照明手段の異なる光学特性の反射光を区別して受光し、
前記複数の撮像手段からの信号の明度変化から、前記複数の撮像手段の実撮像位置と欠陥検出をするためにあらかじめ設定された撮像条件となる想定撮像位置とのずれ量を演算し、演算した前記複数の撮像手段のずれ量を前記想定撮像位置となるように制御して被検査物の欠陥を検出することを特徴とする表面欠陥検出方法。
【請求項8】
撮像手段に対し相対移動する被検査物の表面に照明手段から光を照射し、その反射光を撮像手段に順次取り込み被検査物表面画像を入力する表面欠陥検出方法であって、
複数の照明手段から互いに分離可能な異なる光学特性で、かつ、前記撮像手段の主走査方向に対して略平行なラインビームを被検査物表面に照射し、
複数の撮像手段で前記複数の照明手段の異なる光学特性の反射光を区別して受光し、
前記複数の撮像手段からの信号の低周波成分から、前記複数の撮像手段の実撮像位置と欠陥検出をするためにあらかじめ設定された撮像条件となる想定撮像位置とのずれ量を演算し、演算した前記複数の撮像手段のずれ量を前記想定撮像位置となるように制御し、前記撮像手段からの信号の高周波成分から被検査物表面の局所的な傾きを検出し、検出した被検査物表面の局所的な傾きから被検査物の表面欠陥と濃度欠陥を検出することを特徴とする表面欠陥検出方法。
【請求項9】
前記演算した主走査方向全体に分布するずれ量の平均値成分から前記撮像手段の副走査方向の位置ずれを修正する位置制御を行い、主走査方向全体に分布するずれ量の傾き成分から前記撮像手段と被検査物との傾きを修正する角度制御を行う請求項8記載の表面欠陥検出方法。
【請求項10】
前記検出した被検査物表面の局所的な傾きから被検査物の表面の凹凸とその高さを検出する請求項8又は9記載の表面欠陥検出方法。
【請求項11】
前記被検査物の表面が曲面で形成されている場合、その曲率に応じて前記複数の照明手段の位置を可変する8乃至10のいずれかに記載の表面欠陥検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−70273(P2008−70273A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250162(P2006−250162)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】