説明

被検面形状測定方法および被検面形状測定装置と被検面形状測定プログラム

【課題】干渉計の撮像素子から出力される被検面のシェア像を利用し、被検面の形状に関わりなく其の実面形状を直接的に把握すること。
【解決手段】波面分布面Wを区画して得た各微小セルW〜WC1毎の波面分布面側法線k〜kC1の各々が干渉計1による測定時に被検体13の球心Oに収束する光路を辿って被検面13aに入射した照明光(入射光)の何れかの反射光の光路と一致することに基いて、波面分布面Wの微小セルW〜WC1における波面分布面側法線k〜kC1すなわち被検面13aからの反射光に相当する波面分布面側法線k〜kC1毎に、これに対応する照明光波面側法線l〜lC1つまり入射光の光路を突き止め、これら2つの光路すなわち波面分布面側法線k〜kC1と照明光波面側法線l〜lC1の交点位置R(1)〜R(C1)を求めて被検面13aの実面形状のデータとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉計の撮像素子から出力される被検面のシェア像を利用して被検面の実面形状のデータを得る被検面形状測定方法および被検面形状測定装置と被検面形状測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検面の状況を観察するために利用される干渉計としては、例えば、特許文献1に開示されるように、参照レンズの参照面から発生した波面と被検面から発生した波面とを直接的に干渉させて干渉縞を検出するものと、特許文献2に開示されるように、基準レンズを使用せず、横ずらしをした光線を被検面に照射して其の反射光を合成することでシェア像を検出するものとが知られている。
【0003】
特許文献1に開示されるような構成を適用した場合、被検面が球面であれば単純な球面形状の参照レンズを利用して被検面の形状誤差を直接的に波面収差分布から得ることができるが、被検面が非球面となった場合には参照球面の部分的な計測やデータの合成等が必要であり、干渉像の検出後、膨大な画像の合成処理が必要となるため、処理速度等の面で実用上の問題があった。
無論、このような構成であっても、参照面として精度良く製造した物理的な非球面や其れに相当する波面を生成するモジュールで参照非球面を作れば参照球面の部分的な計測やデータの合成等の処理は省略されるが、被検対象物毎に異なる物理的な参照非球面の製造が必要となり、多くの費用と準備期間が掛かるという欠点があり実用的ではない。
また、どのような手段を講じたとしても、干渉像の形成に必要とされる2つの検査光の光路が離間しているために振動や空気のゆらぎ等の測定環境の影響を受けやすい特性は解消され得ず、測定室等の環境整備に多くの設備投資が必要となる不都合が残る。
【0004】
一方、特許文献2に開示されるような構成を適用した場合にあっては、検出したシェア像に基いてフリンジスキャニング処理やフェイズアンラッピング処理を行って波面収差分布を得て、この波面収差分布から被検面の状況を推定するのが一般的である。
しかし、このようにして得られた波面収差分布は参照面から発生する波面と被検面からの波面とを直接的に比較した結果ではないので、絶対的な被検面の形状を特定すること、つまり、被検面の実面形状を直接的に把握することが困難であるという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2007−557049号
【特許文献2】特願2006−503124号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、干渉計の撮像素子から出力される被検面のシェア像を利用し、被検面の形状に関わりなく其の実面形状を直接的に把握することのできる被検面形状測定方法および被検面形状測定装置と被検面形状測定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の被検面形状測定方法は、干渉計の撮像素子から出力される被検面のシェア像を利用して被検面の実面形状を直接的に把握するための被検面形状測定方法であり、前記目的を達成するため、
干渉計の撮像素子から出力される被検面のシェア像の画像データをコンピュータで処理して得られる波面収差分布のデータで表される波面収差分布を算出するための参照球面を論理空間内に仮想し、
前記参照球面と前記波面収差分布のデータに基いて前記参照球面を基準とする波面分布面のデータを生成した後、
前記波面分布面のデータで表される波面分布面を区画して得た各微小セル毎に当該微小セルの中心を通る法線を求めて各微小セル毎の反射光を表す波面分布面側法線とすると共に、測定時に、光源から発せられた後、光学系により、1点に収束する光路を辿る様に構成されかつ同心円状の波面分布を持った照明光波面を区画して得た各微小セル毎に当該微小セルの中心を通る法線を求めて各微小セル毎の照明光波面側法線とし、
前記波面分布面側法線の各々が、前記干渉計による測定時に1点に収束する光路を辿って被検面に入射した入射光の何れかの反射光の光路と一致することに基いて、前記波面分布面のデータで表される波面分布面の各微小セル毎に、当該被検面で反射され当該微小セルに至る反射光を表す波面分布面側法線と此れに対応する入射光の光路を表す照明光波面側法線を特定し、
前記波面分布面の各微小セル毎に、対応する波面分布面側法線と照明光波面側法線との交点位置を求めて被検面の実面形状のデータとすることを特徴とした構成を有する。
【0008】
まず、干渉計の撮像素子から出力される被検面のシェア像の画像データをコンピュータで処理して得られる波面収差分布のデータで表される波面収差分布を算出するための参照球面を論理空間内に仮想し、この参照球面と波面収差分布のデータに基いて参照球面を基準とする波面分布面のデータを生成する。
被検面が完全な球面であれば、干渉計による測定に際して1点に収束(結像)する光路、つまり、照明光光学系から射出して、被検面に入射した入射光は、この照明光と同じ中心すなわち照明光の収束位置を中心とする球面からなる被検面で反射されて反射光となり、必ず入射時と同じ光路を辿って元来た方向に戻るが、被検面が完全な球面でない場合、例えば、本来は球面であるべき被検面の形状が加工の異常や損傷あるいは経年変化等によって球面でなくなった場合、または、元々の被検面の設計形状が非球面であって其の形状が適切に再現されている場合にあっては、被検面に入射した入射光は、被検面で反射されて反射光となった後、入射時とは異なる光路を辿って照明光光学系に戻ることになる。
何れの場合においても、これらの反射光は、最終的に干渉計の撮像素子によって被検面のシェア像を形成する画像の要素として検出されることになるが、既に述べた通り、被検面が完全な球面である場合には反射光の光路と入射光の光路とが完全に一致するにも関わらず、被検面が完全な球面でない場合には反射光の光路は入射光の光路とは全く一致しない。つまり、被検面が完全な球面でない場合に干渉計の撮像素子によって検出された反射光は、この反射光の光路とは一致しない別の入射光を反射して生成されたものであることを意味する。
要するに、従来の干渉計および干渉計に接続された処理装置は、撮像素子によって検出された反射光の光路が入射光の光路と一致したものであるのか、あるいは、反射光の光路とは一致しない別の入射光を反射して生成されたものであるのかを峻別せず、撮像素子によって検出された反射光の光路が入射光の光路と一致したものであることを前提として波面収差分布を最終結果として出力する構成であるため、被検面の実面形状を直接的に把握することができないのである。
そこで、本発明では、干渉計の撮像素子によって検出された反射光が完全な球面によって反射されたものであっても、あるいは、非球面によって反射されたものであっても、少なくとも、この反射光の生成原因となる入射光は、干渉計による測定に際して1点に収束する光路、つまり、仮想された照明光波面上の何れかの法線を辿って被検面に入射した入射光の1つであることに違いはないといった事実に基き、この反射光に対応する入射光の光路を突き止めることにより、これら2つの光路の交点位置を求めて被検面の実面形状のデータとすることを基本的な作用原理として利用する。
より具体的には、波面分布面のデータで表される波面分布面を区画して得た各微小セル毎に当該微小セルの中心を通る法線を求めて各微小セル毎の波面分布面側法線とすると共に、照明光波面を区画して得た各微小セル毎に当該微小セルの中心を通る法線を求めて各微小セル毎の照明光波面側法線とする。このうち、照明光波面側法線は、仮想された照明光波面上の何れかの法線を辿って被検面に入射した入射光の光路に相当し、また、波面分布面には被検面で反射された反射光が必ず直交して入射することから、波面分布面を区画して得た各微小セルの波面分布面側法線は、被検面で反射された反射光の光路に相当したものとなる。
従って、波面分布面側法線の各々が、干渉計による測定時に1点に収束する光路を辿って被検面に入射した照明光の何れかの反射光の光路と一致することを利用し、波面分布面のデータで表される波面分布面の各微小セル毎に、当該微小セルの波面分布面側法線と此れに対応する入射光の光路を特定し、波面分布面の各微小セル毎に、対応する波面分布面側法線と照明光波面側法線との交点位置を求めれば、被検面の実面形状のデータを得ることができる。
【0009】
より具体的には、例えば、被検面が凸面である場合において被検面が完全な球面となる場合には照明光波面から前記1点に収束する入射光の収束位置に至る距離から被検面の近軸曲率半径を減じた距離が照明光波面から被検面に至る距離と一致し、被検面が凹面である場合において被検面が完全な球面となる場合には照明光波面から前記1点に収束する入射光の収束位置に至る距離に被検面の近軸曲率半径を加算した距離が照明光波面から被検面に至る距離と一致するという原則に従って、波面分布面側法線と交差する照明光波面側法線および当該照明光波面側法線と当該波面分布面側法線との交点を全て求め、被検面が凸面である場合においては、波面分布面と交点との間の波面分布面側法線の長さと照明光波面と交点との間の照明光波面側法線の長さの和すなわち入射光と反射光の光路長の和が、前記1点に収束する照明光(入射光)の収束位置と前記照明光波面との間の離間距離に、一点に収束する照明光の収束位置と波面分布面の算出に用いた参照球面までの距離を加算し、この値から被検面の設計上の近軸曲率半径の2倍の値を減算した距離に最も近似する照明光波面側法線を求める一方、被検面が凹面である場合においては、波面分布面と交点との間の波面分布面側法線の長さと照明光波面と交点との間の照明光波面側法線の長さの和すなわち入射光と反射光の光路長の和が、前記1点に収束する照明光(入射光)の収束位置と前記照明光波面との間の離間距離に、1点に収束する照明光の収束位置から波面分布面の算出に用いた参照球面までの距離を加算し、この値に被検面の設計上の近軸曲率半径の2倍の値を加算した距離に最も近似する照明光波面側法線を求めることで、この照明光波面側法線と対応する波面分布面側法線を特定することができる。
【0010】
また、均一な媒質中に置かれた任意の面での反射時において、その面上に存在し、かつその光線が反射する1点の接平面を考えた時、その点からその接平面に垂直に立てた法線に対して、光の入射角と反射角が等しいという原則(スネルの法則)に従って、波面分布面側法線と交差する照明光波面側法線を全て求め、波面分布面側法線と各照明光波面側法線とが交わる位置において想定される被検面の法線と当該波面分布面側法線とが成す角と被検面の法線と前記求められた照明光波面側法線とが成す角の差が最小となる照明光波面側法線を求め、この照明光波面側法線を当該波面分布面側法線に対応する照明光波面側法線として特定してもよい。
【0011】
あるいは、光が被検面の法線に対して対称的に入射反射するという原則に従って、波面分布面側法線と交差する照明光波面側法線を全て求め、波面分布面側法線と各照明光波面側法線とが交わる位置において想定される被検面の法線と、当該波面分布面側法線と、前記求められた照明光波面側法線とが同一平面上に位置する照明光波面側法線を求め、この照明光波面側法線を当該波面分布面側法線に対応する照明光波面側法線として特定してもよい。
【0012】
また、特に、非球面レンズ等を被検面とすることを前提とした場合にあっては、波面分布面側法線と各照明光波面側法線とが交わる位置に想定する被検面として、前記1点に収束する入射光の収束位置を中心として有する球の表面を利用することが妥当である。
【0013】
本発明の被検面形状測定装置は、前記と同様の目的を達成するため、
干渉計の撮像素子から出力される被検面のシェア像の画像データを処理して得られる波面収差分布のデータで表される波面収差分布を算出するための参照球面を論理空間内に仮想する参照球面生成手段と、
前記参照球面生成手段によって仮想された前記参照球面と前記波面収差分布のデータに基いて前記参照球面を基準とする波面分布面のデータを生成する波面分布面データ生成手段と、
演算用のデータを一時記憶するための記憶手段と、
前記波面分布面データ生成手段によって生成された波面分布面のデータで表される波面分布面を区画して得た各微小セル毎に当該微小セルの中心を通る法線を求めて各微小セル毎の反射光を表す波面分布面側法線として前記記憶手段に記憶させると共に、前記、照明光波面を区画して得た各微小セル毎に当該微小セルの中心を通る法線を求めて各微小セル毎の照明光波面側法線として前記記憶手段に記憶させる法線データ抽出手段と、前記記憶手段に記憶された波面分布面側法線の各々が、前記干渉計による測定時に1点に収束する光路を辿って被検面に入射した入射光の何れかの反射光の光路と一致することに基いて、前記波面分布面のデータで表される波面分布面の各微小セルに対応して前記記憶手段に記憶された反射光を表す波面分布面側法線と此れに対応する入射光の光路を表す照明光波面側法線を特定する照明光光路特定手段と、
前記波面分布面の各微小セル毎に、前記照明光光路特定手段によって対応関係を特定された波面分布面側法線と照明光波面側法線との交点位置を求めて被検面の実面形状のデータとする実面形状データ生成手段とを備えたことを特徴とする構成を有する。
【0014】
この被検面形状測定装置の作用原理については既に述べた通りである。
【0015】
また、本発明の被検面形状測定プログラムは、干渉計の撮像素子から出力される被検面のシェア像の画像データを処理するコンピュータを制御するための被検面形状測定プログラムであり、前記と同様の目的を達成するため、
コンピュータを、
干渉計の撮像素子から出力される被検面のシェア像の画像データを処理して得た波面収差分布のデータで表される波面収差分布を算出するための参照球面を論理空間内に仮想する参照球面生成手段、
前記参照球面生成手段によって仮想された前記参照球面と前記波面収差分布のデータに基いて前記参照球面を基準とする波面分布面のデータを生成する波面分布面データ生成手段、
前記波面分布面データ生成手段によって生成された波面分布面のデータで表される波面分布面を区画して得た各微小セル毎に当該微小セルの中心を通る法線を求めて各微小セル毎の反射光を表す波面分布面側法線として前記コンピュータの記憶装置に記憶させると共に、照明光波面を区画して得た各微小セル毎に当該微小セルの中心を通る法線を求めて各微小セル毎の照明光波面側法線として前記コンピュータの記憶装置に記憶させる法線データ抽出手段、
前記コンピュータの記憶装置に記憶された波面分布面側法線の各々が、前記干渉計による測定時に1点に収束する光路を辿って被検面に入射した入射光の何れかの反射光の光路と一致することに基いて、前記波面分布面のデータで表される波面分布面の各微小セルに対応して前記前記コンピュータの記憶装置に記憶された反射光を表す波面分布面側法線と此れに対応する入射光の光路を表す照明光波面側法線を特定する照明光光路特定手段、および、
前記波面分布面の各微小セル毎に、前記照明光光路特定手段によって対応関係を特定された波面分布面側法線と照明光波面側法線との交点位置を求めて被検面の実面形状のデータとする実面形状データ生成手段として機能させることを特徴とした構成を有する。
【0016】
この被検面形状測定プログラムをインストールしたコンピュータの作用原理については既に述べた通りである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の被検面形状測定方法および被検面形状測定装置と被検面形状測定プログラムは、被検面からの反射光に対応する入射光の光路を突き止め、これら2つの光路の交点位置を求めて被検面の実面形状のデータとするようにしているので、干渉計の撮像素子によって検出された反射光の光路が入射光の光路と一致する場合であっても、また、入射光の光路が反射光の光路とは一致しない場合つまり本来は球面であるべき被検面の形状が加工の異常や損傷あるいは経年変化等によって球面でなくなった場合や、元々の被検面の設計形状が非球面であった場合であっても、被検面の実面形状を直接的に把握することができる。
【0018】
従って、被検面が完全な球面でない場合、例えば、本来は球面であるべき被検面の形状が加工の異常や損傷あるいは経年変化等によって球面でなくなった場合、または、元々の被検面の設計形状が非球面であるような場合にあっても、参照面として機能する格別な非球面や其れに相当する波面を生成するモジュールを要することなく被検面の実面形状を容易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に関わる一実施形態の被検面形状測定装置の構成について簡略化して示した機能ブロック図である。
【図2】同実施形態で採用した干渉計の光学系について示した構成図である。
【図3】同実施形態の被検面形状測定装置のハードウェア構成について簡略化して示したブロック図である。
【図4】同実施形態の被検面形状測定装置のCPUによって実行される被検面形状測定プログラムの概略について示したフローチャートである。
【図5】被検面形状測定プログラムの概略について示したフローチャートの続きである。
【図6】被検面形状測定プログラムの概略について示したフローチャートの続きである。
【図7】被検面形状測定プログラムの概略について示したフローチャートの続きである。
【図8】被検面形状測定プログラムの概略について示したフローチャートの続きである。
【図9】被検面形状測定プログラムの概略について示したフローチャートの続きである。
【図10】被検面形状測定プログラムの概略について示したフローチャートの続きである。
【図11】被検面形状測定プログラムの概略について示したフローチャートの続きである。
【図12】被検面形状測定プログラムの概略について示したフローチャートの続きである。
【図13】照明光波面側法線と波面分布面側法線を記憶する記憶手段のデータテーブルの構成例を示した概念図である。
【図14】被検体の被検面に照射されて反射する第一,第二の検査光の幾つかの光路について例示した概念図である。
【図15】照明光の波面と波面分布面との対応関係の一例を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための形態について一例を挙げ、図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1は本発明に関わる一実施形態の被検面形状測定装置の構成について簡略化して示した機能ブロック図、図2は此の実施形態で採用した干渉計の光学系ついて示した構成図、図3は被検面形状測定装置のハードウェア構成について簡略化して示したブロック図である。
【0022】
まず、図2を参照して一種のシェアリング干渉計として機能する干渉計1の構成について簡単に説明する。
【0023】
干渉計1の主要部は、He-Ne レーザ等で構成されるレーザ光源2と直線偏光用の偏光子として機能する偏光板3およびビームエキスパンダ4と集光レンズ5、ならびに、ビームスプリッタ6と複屈折光学素子7、および、コリメータレンズ8と対物レンズ8’、非球面レンズ等の被検体13をセットするための支持具9、および、直線偏光用の検光子として機能する偏光板10と結像レンズ11、および、受光面として機能するCCD等の撮像素子12によって構成される。
【0024】
このうち、レーザ光源2,偏光板3,ビームエキスパンダ4,集光レンズ5,ビームスプリッタ6,複屈折光学素子7,コリメータレンズ8,対物レンズ8’,支持具9は此の順で単一の光軸L1上に備えられ、また、他の偏光板10,結像レンズ11,撮像素子12は、光路L1から側方に光路分割されるかたちでビームスプリッタ6の側方に配備されている。
【0025】
偏光板3は図2の紙面に垂直な方向の格子を備えたもので、レーザ光源2から出射された光を図2の紙面と垂直な方向の振動のみを有する偏光に直線偏光させる。
【0026】
複屈折光学素子7はウォーラストンプリズムあるいはノマルスキープリズム等で構成される。この複屈折光学素子7は、レーザ光源2から出て偏光板3で直線偏光され更にビームエキスパンダ4で拡径されて集光レンズ5およびビームスプリッタ6を透過した光S0を、光軸L1を含み図2の紙面に垂直な面、すなわち、偏光板3による直線偏光の偏光面に対して交差する向きに出射角度が微小に異なる2つの光束S1,S2に分割する向きに配置されている。2つの光束S1,S2の内の一方が常光線で他方が異常光線である。
【0027】
コリメータレンズ8、及び対物レンズ8’は、複屈折光学素子7から僅かに出射角度を違えて出射された光束S1,S2を相互に平行な光束とした上で、これらの光束S1,S2を第一,第二の検査光として非球面レンズ等の被検体13の被検面13aを照射するためのものである。
【0028】
複屈折光学素子7には、複屈折光学素子7の姿勢を保持した状態で該複屈折素子7を光軸L1に沿って移動および位置決め固定するための調整具14が設けられている。
【0029】
被検体13をセットするための支持具9は、光軸L1に沿った直線移動と、光軸L1と直交する2軸の各軸方向の直線移動、および、光軸L1と直交する2軸の各軸の周りでの揺動動作を許容された支持具である。つまり、支持具9は、直線運動に関する自由度3と回転運動に関する自由度2を備えた5軸型の支持具であり、適切な操作によって非球面レンズ等の被検体13の中心軸を確実に光軸L1に合致させられるようになっている。
【0030】
調整具14および支持具9の構造に関しては、光学機器におけるテレスコピック機構やチルト/シフト機構等として公知であり、調整具14には、フリンジスキャニング処理に必要とされるπ/2の送りに必要とされる精度を備えた送り機構が設けられている。
【0031】
偏光板10は回転操作可能とされ、直線偏光に用いられる格子の配列方向を必要に応じて調整できるようになっている。
【0032】
以上の構成において、レーザ光源2から出射されたレーザビームは、まず、偏光板3により図2の紙面と垂直な方向に直線偏光されてビームエキスパンダ4で拡径され、集光レンズ5およびビームスプリッタ6を透過して、複屈折光学素子7に照射される。
【0033】
複屈折光学素子7に照射された光S0は、複屈折光学素子7を透過する過程で、偏光板3による直線偏光の偏光面に対して交差する向き、つまり、光軸L1を含み図2の紙面に垂直な面に対して交差する向きに出射角度が微小に異なる2つの光束S1,S2に分割され、更に、コリメータレンズ8、対物レンズ8’を透過する過程で相互に平行な光束とされて、支持具9にセットされた非球面レンズ等の被検体13の被検面13aに第一,第二の検査光として垂直に照射される。
【0034】
被検面13aに垂直に照射された第一,第二の検査光(光束S1,S2)は被検体13の被検面13aで反射され、照射時の経路に沿って逆行する向きで対物レンズ8’とコリメータレンズ8と複屈折光学素子7を透過することで再び重ね合わせられ、ビームスプリッタ6によって光軸L1の側方に反射され、光軸L1から側方に光路分割された位置に配備された偏光板10を透過して直線偏光された後、結像レンズ11を経て撮像素子12上に投影されて干渉縞を形成する。
但し、被検面13aが完全な球面でない場合にあっては、被検面13aに入射した入射光は被検面13aで反射されて入射時とは異なる光路を辿って反射し、対物レンズ8’,コリメータレンズ8,複屈折光学素子7,ビームスプリッタ6,偏光板10,結像レンズ11を経て撮像素子12上に投影されることになる。
【0035】
図14は被検体13の被検面13aに照射されて反射する第一,第二の検査光の幾つかの光路について例示した概念図である。l’〜l’は図2に示される対物レンズ8’から射出された第一,第二の検査光の光路の例であり、図14に示される通り、被検体13の被検面13aに対して垂直に、言い換えれば、被検体13の球心Oを1点として収束するようにして入射する。ここで、被検面13aが完全な球面であれば、例えば、入射光l’の反射光は入射時と全く同じ光路を辿ってk’のように球の接平面31の法線m’1に沿って垂直に反射するが、被検面13aが完全な球面でない場合には、入射光l’の反射光の光路は例えばk”のようになり、入射時の光路l’とは異なったものとなる。これは、被検面13aが非球面であるために入射光l’の反射位置における接平面32自体に傾きが生じているからであり、球でない部分の接平面32の法線m”を基準として見れば、当然、入射反射の関係から、入射光l’と接平面32の法線m”が成す角と反射光k”と接平面32の法線m”が成す角とは等しい値となり、また、光が被検面13aの法線m”に対して対称的に入反射することからも、入射光l’の光路と法線m”と反射光k”の光路とが同一平面上にあることは明らかである。
【0036】
なお、撮像素子12上に投影される干渉縞の位相を調整する場合には、調整具14を操作して複屈折光学素子7の配備位置を光軸L1の垂直方向に沿って移動させる。
【0037】
干渉縞の中心が撮像素子12の中心からずれている場合には、非球面レンズ等の被検体13の中心軸が光軸L1と一致していないことを意味するので、支持具9を操作して被検体13の位置および姿勢を調整することで被検体13の中心軸を光軸L1に一致させる。
【0038】
また、干渉縞が確認されない場合には、第一,第二の検査光が被検体13の被検面13aに対して垂直に照射されていないことを意味するので、支持具9を操作して被検体13と対物レンズ8’との離間距離を調整し、第一,第二の検査光が被検面13aに対して垂直に照射されるようにする。干渉縞の明度は偏光板10を回転させることで調整できる。
【0039】
図2に示される通り、レーザ光源2から出て偏光板3,ビームエキスパンダ4,集光レンズ5,ビームスプリッタ6を透過した光S0は複屈折光学素子7によって微小に出射角度の異なる2つの光束S1,S2に分割され、これらの光がコリメータレンズ8で相互に平行とされて、対物レンズ8’で被検体13の被検面13aに第一,第二の検査光として照射され、その反射光が対物レンズ8’,コリメータレンズ8,複屈折光学素子7,ビームスプリッタ6,偏光板10,結像レンズ11を経て撮像素子12に投影されるので、第一の検査光と其の反射光および第二の検査光と其の反射光の別に関わりなく、これらの光束が通る光学系は完全に同一のものとなり、理論上の測定精度や外乱に対する耐性は、従来型のフィゾー干渉計と比較して高い。
【0040】
また、第一の検査光と其の反射光および第二の検査光と其の反射光の別に関わりなく、これらの光束が通る光学系が完全に同一であるから、仮に、振動その他の外乱が作用した場合であっても、其の外乱が第一,第二の検査光と其の反射光の光路に対して同等に作用することになり、特に、振動に対する耐性に優れ、干渉縞の生成や維持を容易に行なうことができる。
【0041】
しかも、第一,第二の検査光が共に被検体13の被検面13aによって反射されているので、振動等による光学部品間の微小な位置ずれは必ずしも重大な問題とはならず、この振動に抗して干渉縞を維持することが可能である。
【0042】
結果として、干渉計1の設置に必要とされる防振対策の簡略化が可能であり、また、原器となる基準レンズを必要としないことから、非球面レンズ等を初めとする複雑な形状の被検体の被検面を測定する干渉計を低コストにて導入することが可能となる。
【0043】
光軸L1上に設置された偏光板3に代えてレーザ光源2からの光を受ける側のビームスプリッタ6の面(図2におけるビームスプリッタ6の左端面)に各種のコーティング技術を用いて偏光子を形成し、光軸L1から側方に光路分割された位置に配備された偏光板10の代わりに、撮像素子12と対向するビームスプリッタ6の面(図2におけるビームスプリッタ6の上端面)に各種のコーティング技術を用いて検光子を形成するようにしてもよい。これにより、干渉計1の更なるコンパクト化が可能となる。
【0044】
レーザ光源2,偏光板3,ビームエキスパンダ4,集光レンズ5,ビームスプリッタ6,複屈折光学素子7,コリメータレンズ8,対物レンズ8’,支持具9は、単一の光軸L1上に配置する必要があるが、光軸L1それ自体が単一の直線に沿っている必要はない。
【0045】
例えば、干渉計1の全長を短縮する必要があるような状況下では、ビームエキスパンダ4と集光レンズ5の間、および、複屈折光学素子7とコリメータレンズ8との間に、相対的に90°の角度を成す反射鏡を各1枚ずつ設置することで、全体としての光軸L1を略U字型に屈折させて装置全長の短縮が可能である。
【0046】
この実施形態の被検面形状測定装置16の主要部は、図1に示されるように、干渉計1の撮像素子12から出力される被検面のシェア像の画像データを処理して得られる波面収差分布のデータで表される波面収差分布と、波面分布を算出するための参照球面を論理空間内に仮想する参照球面生成手段aと、参照球面生成手段aによって仮想された参照球面と波面収差分布のデータに基いて参照球面を基準とする波面分布面のデータを生成する波面分布面データ生成手段bと、演算用のデータを一時記憶するための記憶手段dと、波面分布面データ生成手段bによって生成された波面分布面のデータで表される波面分布面を区画して得た各微小セル毎に当該微小セルの中心を通る法線を求めて各微小セル毎の反射光を表す波面分布面側法線として記憶手段dに記憶させると共に、照明光波面を区画して得た各微小セル毎に当該微小セルの中心を通る法線を求めて各微小セル毎の照明光波面側法線として記憶手段dに記憶させる法線データ抽出手段cと、波面分布面には被検面13aで反射された反射光が必ず直交して入射すること、つまり、記憶手段dに記憶された波面分布面側法線の各々が、干渉計1による測定時に1点に収束する光路を辿って被検面13aに入射した入射光の何れかの反射光の光路と一致することに基いて、波面分布面のデータで表される波面分布面の各微小セルに対応して記憶手段dに記憶された反射光を表す波面分布面側法線と此れに対応する入射光の光路を表す照明光波面側法線を特定する照明光光路特定手段eと、波面分布面の各微小セル毎に、照明光光路特定手段eによって対応関係を特定された波面分布面側法線と照明光波面側法線との交点位置を求めて被検面13aの実面形状のデータとする実面形状データ生成手段fによって構成される。
【0047】
照明光光路特定手段eは、記憶手段dに記憶された波面分布面側法線と交差する照明光波面側法線および当該波面分布面側法線と当該照明光波面側法線との交点を全て求め、波面分布面と交点との間の当該波面分布面側法線の長さと照明光波面と交点との間の照明光波面側法線の長さの和が、前記1点に収束する照明光(入射光)の収束位置と前記照明光波面との間の離間距離に、1点に収束する照明光の収束位置から波面分布面の算出に用いた参照球面までの距離を加算し、この値から被検面13aの設計上の近軸曲率半径の2倍の値を減算した距離に最も近似する照明光波面側法線を求め、この照明光波面側法線を当該波面分布面側法線に対応する照明光波面側法線として特定する光路長条件対応法線特定機能と、記憶手段dに記憶された波面分布面側法線と交差する照明光波面側法線を全て求め、当該波面分布面側法線と各照明光波面側法線とが交わる位置において想定される被検面13aの法線と当該波面分布面側法線とが成す角と被検面13aの法線と求められた照明光波面側法線とが成す角の差が最小となる照明光波面側法線を求め、この照明光波面側法線を当該波面分布面側法線に対応する照明光波面側法線として特定する入射反射角条件対応法線特定機能と、記憶手段dに記憶された波面分布面側法線と交差する照明光波面側法線を全て求め、当該波面分布面側法線と各照明光波面側法線とが交わる位置において想定される被検面13aの法線と、当該波面分布面側法線と、求められた照明光波面側法線とが同一平面上に位置する照明光波面側法線を求め、この照明光波面側法線を当該波面分布面側法線に対応する照明光波面側法線として特定する同一平面条件対応法線特定機能を備える。
【0048】
この実施形態の被検面形状測定装置16はワークステーションやパーソナルコンピュータ等の一般的なコンピュータによって構成されるもので、図3に示されるように、演算処理用のCPU17と、CPU17の駆動制御に必要とされる基本的な制御プログラムを格納したROM18(またはハードディスクドライブ21)、および、各種のパラメータ等を記憶するための不揮発性メモリ19と、演算データの一時記憶等に利用されるRAM20、ならびに、大容量記憶装置として機能するハードディスクドライブ21等を備え、CPU17の入出力回路22には、マン・マシン・インターフェイスとして機能するキーボード24およびマウス25とモニタ23等が接続されている。
【0049】
図2に示される干渉計1のレーザ光源2は、被検面形状測定装置16側の入出力インターフェイス26とレーザ駆動回路27を介してCPU17によってオン/オフ制御され、また、干渉計1の支持具9に設けられた送り機構15も、入出力インターフェイス26とドライバ28を介してCPU17によって駆動制御されるようになっている。なお、キーボード24からの手動操作でパルス発生器29を作動させてドライバ28にパルス信号を入力することにより送り機構15を駆動して調整具14に微小送りを掛けることも可能である。
【0050】
干渉計1に設けられたCCD等の撮像素子12によって撮像された干渉縞の画像は、CCD制御回路30と入出力インターフェイス26を介してCPU17に読み込まれる。
【0051】
被検面形状測定装置16のCPU17は、図1の機能ブロック図に示される参照球面生成手段a,波面分布面データ生成手段b,法線データ抽出手段c,照明光光路特定手段eおよび実面形状データ生成手段fとして機能するもので、CPU17を参照球面生成手段a,波面分布面データ生成手段b,法線データ抽出手段c,照明光光路特定手段eおよび実面形状データ生成手段fとして機能させるためのプログラム、および、CPU17を照明光光路特定手段eにおける光路長条件対応法線特定機能実現手段,入射反射角条件対応法線特定機能実現手段および同一平面条件対応法線特定機能実現手段として機能させるためのプログラムからなる被検面形状測定プログラムが、予めハードディスクドライブ21にインストールされている。
【0052】
また、RAM20は図1の機能ブロック図に示される記憶手段dに相当するもので、CPU17が入出力インターフェイス26およびCCD制御回路30を介して撮像素子12から読み取った干渉縞の画像を一時記憶するためのフレームメモリとしての機能や中間データの一時記憶の機能の他、参照球面生成手段aが仮想した参照球面や波面分布面データ生成手段bが生成した波面分布面のデータ、および、法線データ抽出手段cが求めた波面分布面側法線や照明光波面側法線に関連したデータを記憶する機能を有する。
【0053】
図4〜図12はコンピュータからなる被検面形状測定装置16のCPU17によって実行される被検面形状測定プログラムの概略について示したフローチャートである。
【0054】
この段階では既に被検体13が支持具9に適切にセットされてレーザ光源2の作動が開始されているものとし、図4〜図12を参照して本実施形態の被検面形状測定方法および被検面形状測定装置16における参照球面生成手段a,波面分布面データ生成手段b,法線データ抽出手段c,記憶手段d,照明光光路特定手段e,実面形状データ生成手段fの全体的な処理動作と被検面形状測定プログラムについて具体的に説明する。
【0055】
測定処理を開始したCPU17は、まず、撮像素子12からの画像の取り込み回数を計数する指標iの値を一旦0に初期化した後(ステップa1)、該指標iの値を1インクリメントして(ステップa2)、その現在値がフリンジスキャニングの必要回数たとえば4回に達しているか否かを判定する(ステップa3)。
【0056】
指標iの現在値がフリンジスキャニングの必要回数である4回に達していなければ、CPU17は、撮像素子12からシェア画像のデータを取り込んでRAM20の記憶領域の一部を利用して構成されたフレームメモリiに記憶してから撮像素子12をリフレッシュし(ステップa4)、入出力インターフェイス26およびドライバ28を介して送り機構15を駆動し、調整具14および調整具14に取り付けられた複屈折光学素子7に、レーザ光の波長の位相でπ/2に相当する量の送りを掛ける(ステップa5)。
【0057】
そして、CPU17は前記と同様にしてステップa2〜a5の処理を繰り返し実行し、フレームメモリ1〜フレームメモリ4の各々に0,π/2,π,3π/2の位相のシェア画像を取り込み、ステップa3の判定結果が偽となって必要数のシェア画像4枚の取り込みが確認された時点で、これらの画像に基いて従来と同様にしてフェイズアンラッピングによる位相接続の処理を実行して波面収差分布の数値データを得て(ステップa6)、その内容をRAM20に一時記憶する(ステップa7)。
【0058】
次いで、参照球面生成手段aとして機能するCPU17が、波面収差分布のデータで表される波面収差分布の算出に必要とされる参照球面Bを論理空間となるRAM20内に仮想する。この参照球面Bは被検体13の球心Oと同じ球心を有する球面であればどのようなものであっても構わないが、ここでは一例として、干渉計1の照明光学系の光軸上の射出瞳位置に頂点を置いた参照球面Bを利用している。被検体13および参照球面Bの球心Oと照明光学系の射出瞳面の位置は干渉計1の機械座標系上で固定的な位置を占めるので、参照球面Bを仮想するための格別の演算処理といったものは特に必要なく、参照球面Bを現す方程式をハードディスクドライブ21からRAM20に読み込めばこと足りる。そして、波面分布面データ生成手段bとして機能するCPU17が、ステップa7の処理でRAM20に一時記憶した波面収差分布の数値データと参照球面Bの方程式とに基いて、参照球面Bを基準とした波面分布面Wを表すデータを生成する(以上、ステップa8)。
【0059】
参照球面Bと波面分布面Wとの対応関係の一例を図15の概念図に示す。参照球面Bは既に述べた通り被検体13の球心Oと同じ球心を有して、この球心Oと干渉計1の照明光学系の射出瞳位置を結んだ長さを曲率半径に持つ仮想された球面であり、また、波面分布面Wは、RAM20に一時記憶した波面収差分布の数値データを参照球面Bと比較し算出して得たデータである。波面収差分布の数値データはステップa6の位相接続の処理によって得られた単純な偏差データの集合体であり、この偏差データの各々を参照球面Bに比較し算出して各データの偏差を参照球面Bの法線方向に反映させることで波面分布面Wを表すデータが得られる。
より具体的には、波面収差分布の各数値データを(y,z),球心Oを中心とする参照球面Bの半径をR1,使用するレーザ光源2の波長をλ1,参照球面が存在する媒質の屈折率をn1,波面収差をwとした場合、球心Oから波面分布面W上の(y,z)の対応位置までの距離R2はR2=n1×w×λ1+R1となり、波面分布面W上の(y,z)の対応位置と球心Oを結ぶ線分が光軸L1(図14参照)と成す角θがθ=cos−1〔(y)・(y/R2)〕となることから、波面分布面W上のzの対応位置zはz=R2・sin(θ)となる。
【0060】
次いで、CPU17は、波面分布面データ生成手段bによって生成されたデータで表される波面分布面Wを予め設定されたセル分割条件C1つまりセルの分割数の設定値に従ってC1個の区画に分割し、各微小セルを現すセルデータW〜WC1を生成してRAM20に記憶させる(ステップa9)。また、これと同様に、照明光波面Eを予め設定されたセル分割条件C2つまりセルの分割数の設定値に従ってC2個の区画に分割し、各微小セルを現すセルデータE〜EC2を生成してRAM20に記憶させる(ステップa10)。
【0061】
次いで、CPU17は、被検面13aの実面形状を表すデータの総数を計数するカウンタQの値と波面分布面Wを構成する各微小セルのデータW〜WC1を順に選択するための指標iの値を共に0に初期化した後(ステップa11,ステップa12)、指標iの値を1インクリメントし(ステップa13)、その現在値が波面分布面Wを構成する微小セルの総数C1に達しているか否かを判定する(ステップa14)。
【0062】
指標iの値が微小セルの総数C1に達していなければ、法線データ抽出手段cとして機能するCPU17が、指標iの現在値に基いてRAM20から波面分布面Wを構成する1つの微小セルのデータWを読み込み(ステップa15)、この微小セルWの中心Aの座標と中心Aを通る法線kつまり微小セルWに対応した波面分布面側法線kの方程式を求めて、記憶手段dとして機能するRAM20に記憶させる(ステップa16)。
【0063】
図15に示されるように、被検面13aで反射された反射光は必ず波面分布面Wに直交して入射することから、この波面分布面側法線kは、被検面13aで反射されて波面分布面Wを構成する1つの微小セルWに入射した反射光の光路に相当するものであるということができる。
【0064】
次いで、CPU17は、この段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kと交差する照明光波面側法線の総個数を計数するカウンタnの値と照明光波面Eを構成する各微小セルのデータE〜EC2を順に選択するための指標jの値を共に0に初期化した後(ステップa17,ステップa18)、指標jの値を1インクリメントし(ステップa19)、その現在値が照明光波面Eを構成する微小セルの総数C2に達しているか否かを判定する(ステップa20)。
【0065】
指標jの値が微小セルの総数C2に達していなければ、法線データ抽出手段cとして機能するCPU17は、指標jの現在値に基いてRAM20から照明光波面Eを構成する1つの微小セルのデータEを読み込み(ステップa21)、この微小セルEの中心Dの座標と中心Dを通る法線lつまり微小セルのデータEに対応した照明光波面側法線lの方程式を求める(ステップa22)。
ここでは、一例として、波面分布面Wの場合と同様の手続によって照明光波面Eを分割して入射光の光路を表す照明光波面側法線l〜lC2を立てるための微小セルE〜EC2を仮想し、その中心D〜DC2に照明光波面側法線l〜lC2を立てるようにしているが、照明光波面側法線l〜lC2を立てるために必ずしも照明光波面Eを分割する必要はなく、例えば、照明光波面E上の点D〜DC2を予めユーザが指定した任意の微小な刻み間隔で選択し、球心Oと点D〜DC2の各関係から照明光波面側法線l〜lC2を求めるようにしてもよい。この場合、選択された照明光波面E上の点D〜DC2それ自体が微小セルE〜EC2の中心を意味するので、照明光波面Eを分割する処理や微小セルE〜EC2の中心を計算するステップa10の処理は不要である。
或いは、球心Oを通る直線l〜lC2を予めユーザが指定した任意の微小な刻み角度で選択し、直線l〜lC2の各々を照明光波面側法線l〜lC2とし、照明光波面側法線l〜lC2と照明光波面Eとの交点を前述のD〜DC2としても同じことである。
【0066】
次いで、法線データ抽出手段cおよび実面形状データ生成手段fの一部として機能するCPU17は、ステップa16の処理で求められた波面分布面側法線kすなわち現時点で評価対象として選択されている波面分布面側法線kと照明光波面側法線lが交わるか否かを判定し(ステップa23)、両者が交わる場合に限ってカウンタnの値を1インクリメントし(ステップa24)、記憶手段dとして機能するRAM20内に構築されたデータテーブルgの第nアドレスに、照明光波面側法線lの方程式を方程式lとして記憶させ、また、波面分布面側法線kと照明光波面側法線lの交点の座標を交点Pとして記憶させ、更に、この微小セルEの中心Dの座標を中心Dとして記憶させる(ステップa25)。図13にデータテーブルgの論理構成の一例を示す。
なお、ステップa23の判定結果が偽となった場合、つまり、現時点で評価対象として選択されている波面分布面側法線kと照明光波面側法線lとが交わらないことが明らかとなった場合には、ステップa24〜ステップa25の処理は非実行とされ、カウンタnの値は其のままの状態に保持され、データテーブルgには何も書き込まれない。
【0067】
そして、CPU17は、指標jの値を改めて1インクリメントし(ステップa19)、その現在値が照明光波面Eを構成する微小セルの総数C2に達しているか否かを判定し(ステップa20)、達していなければ、前記と同様にしてステップa21〜ステップa25の処理とステップa19〜ステップa20の処理を繰り返し実行する。
【0068】
従って、指標jの値が照明光波面Eを構成する微小セルの総数C2に達してステップa20の判定結果が偽となった時点では、照明光波面Eを構成する微小セルのデータE〜EC2の各々に対応した照明光波面側法線l〜lC2のうちステップa16の処理で求められた波面分布面側法線kつまり現時点で評価対象として選択されている波面分布面側法線kと交差する全ての照明光波面側法線が抽出され、各照明光波面側法線の方程式および此れに関連する交点と中心の座標がデータテーブルgに全て記憶されることになる(図13参照)。
【0069】
そして、データテーブルgに記憶されるデータセットの個数はカウンタnの最終値に反映される。
【0070】
一例として、波面分布面Wを構成する1つの微小セルWを例にとり、その中心Aを通る波面分布面側法線kと此の波面分布面側法線kに交差する照明光波面側法線の幾つかの例について図15に示す。
既に述べた通り、波面分布面側法線kは波面分布面Wを構成する1つの微小セルWに入射した被検面13aからの反射光の光路に相当するものであり、照明光波面側法線l〜lの各々は、照明光波面E上の何れかの法線を辿って被検面13aに入射した入射光の光路に相当するものである。図15に示される例では、照明光波面側法線l〜lのうち照明光波面側法線l〜lが此の時点で評価対象とされている波面分布面側法線kと交差するが、照明光波面側法線l〜lは波面分布面側法線kとは交差しないので、これらの照明光波面側法線l〜lうちデータテーブルgに記憶されるのは照明光波面側法線l〜lの方程式および此れに関連する交点と中心の座標のみで、照明光波面側法線l〜lに関連するデータは全て無視されることになる。この場合、カウンタnの最終値は7となる。
また、被検面13aで反射された反射光は必ず波面分布面Wに直交して入射することとなるから、波面分布面側法線kが被検面13aで反射されて微小セルWに入射した反射光の光路と同等あることは自明である。
干渉計1の撮像素子12によって検出されたシェアリング像を作る反射光が完全な球面によって反射されたものであっても、あるいは、非球面によって反射されたものであっても、少なくとも、この反射光の生成原因となる入射光は、干渉計1による測定に際して1点に収束する光路、つまり、照明光波面Eの何れかの法線を辿って被検面13aに入射した入射光の1つであることには疑いの余地はなく、図15に示される照明光波面側法線l〜lのうち被検面13aで反射されて波面分布面側法線kと同等の光路を有する反射光を形成する可能性があるのは、反射光に相当する波面分布面側法線kと交差する入射光、つまり、照明光波面側法線l〜lに相当する入射光のみということになる。従って、これを一般化すれば、全ての照明光波面側法線l〜lC2のうちステップa25で抽出された照明光波面側法線、つまり、データテーブルgに記憶された照明光波面側法線l〜lのみが、波面分布面側法線kと同等の光路を有する反射光を形成する可能性のある入射光を表す方程式の候補となる。
【0071】
次いで、照明光光路特定手段eとして機能するCPU17は、データテーブルgに記憶された照明光波面側法線つまり反射光に対応する入射光の光路を表す照明光波面側法線を特定する際に乖離度の判定に用いる最小エラー値記憶レジスタDmin.に設定可能最大値を初期値として設定し(ステップa26)、この段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kと交差した照明光波面側法線の各々に関連したデータをデータテーブルgから順に読み出すための指標jの値を0に初期化した後(ステップa27)、指標jの値を1インクリメントし(ステップa28)、該指標jの値がデータテーブルgに記憶されたデータセットの総数nに達しているか否かを判定する(ステップa29)。
【0072】
そして、指標jの現在値がデータテーブルgに記憶されたデータセットの総数nに達していなければ、照明光光路特定手段eとして機能するCPU17は、指標jの現在値に基いてデータテーブルgから1セットのデータ、つまり、現段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kに交差する1つの照明光波面側法線の方程式lと、この照明光波面側法線lと波面分布面側法線kとの交点Pと、この照明光波面側法線lに対応する照明光波面Eの微小セルの中心Dとを読み出し(ステップa30)、更に、図15に示されるように、被検体13の球心Oを中心として照明光波面側法線lと波面分布面側法線kとの交点Pを通る球Rを想定して球R上の位置Pにおける法線の方程式mを求めた後(ステップa31)、照明光光路特定手段eを起動して、ステップa30の処理で読み出したデータセットに対応する照明光波面側法線が現段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kと対を成すものとして適当であるか否かを判定するための処理を開始する。
【0073】
既に述べた通り、この実施形態の照明光光路特定手段eには、現段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kと対を成す照明光波面側法線を特定するための機能として、光路長条件対応法線特定機能,入射反射角条件対応法線特定機能,同一平面条件対応法線特定機能といった3つの機能があり、ユーザからの要望に応じたフラグの切り替え処理等により、何れかの機能を選択して波面分布面側法線kと対を成す照明光波面側法線を特定することかできるようになっている。
【0074】
ここで、光路長条件対応法線特定機能が選択されていた場合、つまり、ステップa32の判定結果が真となった場合には、照明光光路特定手段eとして機能するCPU17はSUB(A)の処理に移行し、まず、現段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kに対応する波面分布面Wの微小セルWの中心としてステップa16の処理でRAM20に記憶された中心Aの値と、ステップa30の処理で読み出された照明光波面側法線lと波面分布面側法線kとの交点Pの値とに基いて、中心Aと交点Pとの間の離間距離AP、つまり、波面分布面Wから波面分布面側法線kと照明光波面側法線lとの交点Pに至る波面分布面側法線kの長さAPを求め(図15参照)、この値をレジスタAPに一時記憶する。
また、これと同様に、ステップa30の処理で読み出された照明光波面側法線lに対応する照明光波面Eの微小セルの中心Dの値と、ステップa30の処理で読み出された照明光波面側法線lと波面分布面側法線kとの交点Pの値とに基いて、中心Dと交点Pとの間の離間距離BP、要するに、照明光波面Eから波面分布面側法線kと照明光波面側法線lとの交点Pに至る照明光波面側法線lの長さBPを求め(図15参照)、この値をレジスタBPに一時記憶する(ステップb1)。
【0075】
次いで、照明光光路特定手段eとして機能するCPU17は、球心Oを1点として収束する照明光の収束位置Oと照明光波面Eとの間の離間距離に、1点に収束する照明光の収束位置Oから波面分布面の算出に用いた既知である参照球面までの距離を加算し、この値から既知である被検面13aの設計上の近軸曲率半径rの2倍の値を減算した距離の値V(以下、等光路長条件という)から、離間距離APと離間距離BPの加算値を減算することによりVとAP+BPとの間の偏差S=|V−(AP+BP)|を求め(ステップb2)、偏差Sと最小エラー値記憶レジスタDmin.の現在値との大小関係を比較する(ステップb3)。
但し、近軸曲率半径rの値を減じるのは被検面13aが凸面の場合であり、被検面13aが凹面の場合は近軸曲率半径rを球心Oを1点として収束する照明光の収束位置と照明光波面Eとの間の離間距離に加算することになる。
【0076】
ここで、ステップb3の判定結果が偽となった場合、つまり、これ以前に求められてきた全ての偏差の値よりも此の度の処理で求められた偏差Sの値の方が小さいと判定された場合には、照明光光路特定手段eとして機能するCPU17は、取り敢えず、今回のステップa30の処理で読み出された照明光波面側法線lに対応する入射光が現段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kに対応する反射光と対を成すものとなる可能性が最も高いと見做し、この照明光波面側法線lと波面分布面側法線kとの交点Pを、波面分布面Wの微小セルWに対応した被検面13a上の実面形状の位置を表すデータの1候補としてデータ候補記憶レジスタRに一時記憶すると共に(ステップb4)、最小エラー値記憶レジスタDmin.の値を偏差Sの現在値つまり現時点で最小となっている偏差の値Sに置き換える(ステップb5)。
【0077】
次いで、照明光光路特定手段eとして機能するCPU17は、この段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kと交差した照明光波面側法線の各々に関連したデータをデータテーブルgから順に読み出すための指標jの値を改めて1インクリメントし(ステップa28)、該指標jの値がデータテーブルgに記憶されたデータセットの総数nに達しているか否かを判定する(ステップa29)。
【0078】
指標jの現在値がデータセットの総数nに達していなければ、照明光光路特定手段eとして機能するCPU17は、指標jの現在値に基いて前記と同様にしてステップa30〜ステップa32およびSUB(A)の処理を繰り返し実行する。
【0079】
このようにして、指標jの値が順次インクリメントされ、その都度、指標jの値に対応した照明光波面側法線lに関連したデータセットがデータテーブルgから次々と読み出されてステップa29〜ステップa32およびSUB(A)の処理の対象とされる。
【0080】
従って、最終的にステップa29の判定結果が偽となった時点で、此れらの照明光波面側法線l〜lのうち偏差Sの値が最小となる照明光波面側法線、要するに、現段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kの表す反射光に対応した入射光の光路を表す照明光波面側法線として適切であると考えられる照明光波面側法線が一義的に特定され、この照明光波面側法線と波面分布面側法線kとの交点Pの値が実面形状データ生成手段fの一部として機能するCPU17によってデータ候補記憶レジスタRに保持されることとなる。
【0081】
次いで、実面形状データ生成手段fの一部として機能するCPU17は、現段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kが表す反射光に対応した照明光の光路を表す照明光波面側法線として特定された照明光波面側法線に対応して求められた偏差Sの値、つまり、最小エラー値記憶レジスタDmin.の最終値が許容値εの範囲内にあるか否かを判定する(ステップa34)。
【0082】
ここで、最小エラー値記憶レジスタDmin.の最終値が許容値εの範囲内にあれば、実面形状データ生成手段fの一部として機能するCPU17は、このDmin.の値を偏差Sとして備えた照明光波面側法線が、現段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kの表す反射光に対応した入射光の光路を示す照明光波面側法線として適切なものであると見做して、被検面13aの実面形状を表すデータの総数を計数するカウンタQの値を1インクリメントし(ステップa35)、カウンタQの現在値に対応する実面形状データ記憶レジスタR(Q)にデータ候補記憶レジスタRの値を其のまま記憶させる(ステップa36)。
また、最小エラー値記憶レジスタDmin.の最終値が許容値εの範囲を超えている場合には、実面形状データ生成手段fの一部として機能するCPU17は、このDmin.の値を偏差Sとして備えた照明光波面側法線は、現段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kの表す反射光に対応した照明光の光路を表す照明光波面側法線としては不適切なものであると見做してステップa35〜ステップa36の処理を非実行とする。従って、この場合、カウンタQの値は更新されず、データ候補記憶レジスタRの値も形状データ記憶レジスタには転送されない。
【0083】
つまり、ステップa28〜ステップa32およびSUB(A)によって形成されるループ処理とステップa34〜ステップa36の処理によって得られるのは、波面分布面W(W)と交点Pとの間の波面分布面側法線kの長さAPと照明光波面E(E)と交点Pとの間の照明光波面側法線lの長さBPの和であるAP+BPの値が、1点に収束する照明光(入射光)の収束位置である球心Oと照明光波面Eとの間の離間距離に、1点に収束する照明光の収束位置Oから波面分布面の算出に用いた既知である参照球面までの距離を加算し、この値から既知である被検面13aの設計上の近軸曲率半径rの2倍の値を減算した値Vに最も近似するようになる照明光波面側法線lと、この照明光波面側法線lと波面分布面側法線kとの交点P(R(Q))の値である。
【0084】
この実施形態では、被検面13aの実面形状と設計上の被検面13aの形状が完全に一致した際にS=|V−(AP+BP)|=0となることから、偏差Sの値が最小となる照明光波面側法線lを、その段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kが表す反射光に対応した入射光の光路を表す照明光波面側法線として最も適切なものとして判断するようにしている。
【0085】
次いで、CPU17は、波面分布面Wを構成する各微小セルのデータW〜WC1を順に選択するための指標iの値を改めて1インクリメントし(ステップa13)、その現在値が波面分布面Wを構成する微小セルの総数C1に達しているか否かを判定し(ステップa14)、達していなければ、指標iの現在値に基いてRAM20から波面分布面Wを構成する1つの微小セルのデータWを新たに読み込み(ステップa15)、前記と同様にして、ステップa16〜ステップa27の処理と、ステップa28〜ステップa32およびSUB(A)によって形成されるループ処理と、ステップa34〜ステップa36の処理を繰り返し実行する。
【0086】
従って、最終的にステップa14の判定結果が偽となった時点で、例えば、波面分布面Wを構成する各微小セルW〜WC1に対応する波面分布面側法線k〜kC1の全てについて、各波面分布面側法線k〜kC1の各々と対を成す照明光波面側法線l〜lC1が特定され、波面分布面側法線k〜kC1と照明光波面側法線l〜lC1との交点P〜PC1が求められ、交点P〜PC1の位置データが形状データ記憶レジスタR(1)〜R(C1)に格納されることになる。
【0087】
次いで、CPU17は、形状データ記憶レジスタR(1)〜R(C1)に格納された位置データR(1)〜R(C1)を公知のZernikeフィッティングや最少二乗近似法などを利用して最適化して補間し、これらの位置データR(1)〜R(C1)によって表される被検体13の実面形状の画像を例えばモニタ23等に出力して表示し(ステップa37)、更に、必要に応じて被検体13の設計データをハードディスクドライブ21等から読み出し、位置データR(1)〜R(C1)によって表される被検体13の実面形状と設計上の形状とを比較して両者間の偏差(加工誤差等)を被検体13の実面形状の要所要所に対応させてモニタ23に数値表示するなどの処理を行なう(ステップa38)。
【0088】
そして、CPU17は、キーボード24やマウス25を利用してユーザがリトライ要求を入力しているか否かを判定し(ステップa39)、リトライ要求があれば、このリトライ要求に応じてセル分割条件C1,C2の変更処理や照明光波面側法線を特定するための機能の切り替えに要するフラグの設定変更処理など実行した後(ステップa40)、改めてステップa9の処理に復帰して、再設定されたセル分割条件や再選択された照明光波面側法線の特定機能等に従って、前記と同等の処理操作を繰り返し実行する。
【0089】
次に、入射反射角条件対応法線特定機能が選択されていた場合の処理、つまり、ステップa32の判定結果が偽かつステップa33の判定結果が真となった場合の処理について説明する。
【0090】
この場合、照明光光路特定手段eとして機能するCPU17はSUB(B)の処理に移行し、まず、現段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kつまりステップa16の処理でRAM20に記憶された波面分布面側法線kと被検体13の球心Oを中心として照明光波面側法線lと波面分布面側法線kとの交点Pを通る球Rを想定して球R上の位置Pにおいて求めた法線mとが成す角θ1を求め(ステップc1/図15参照)、更に、ステップa30の処理で読み出された照明光波面側法線lと法線mとが成す角θ2を求めてから(ステップc2/図15参照)、両者間の角度の偏差S=|θ1−θ2|を求め(ステップc3)、偏差Sと最小エラー値記憶レジスタDmin.の現在値との大小関係を比較する(ステップc4)。
【0091】
ここで、ステップc4の判定結果が偽となった場合、つまり、これ以前に求められてきた全ての偏差の値よりも此の度の処理で求められた偏差Sの値の方が小さいと判定された場合には、照明光光路特定手段eとして機能するCPU17は、取り敢えず、今回のステップa30の処理で読み出された照明光波面側法線lに対応する入射光が現段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kに対応する反射光と対を成すものとなる可能性が最も高いと見做し、この照明光波面側法線lと波面分布面側法線kとの交点Pを、波面分布面Wの微小セルWに対応した被検面13a上の実面形状の位置を表すデータの1候補としてデータ候補記憶レジスタRに一時記憶すると共に(ステップc5)、最小エラー値記憶レジスタDmin.の値を偏差Sの現在値つまり現時点で最小となっている偏差の値Sに置き換える(ステップc6)。
【0092】
これ以降の処理に関しては、前述の光路長条件対応法線特定機能が選択されていた場合の処理と同様であり、最終的にステップa29の判定結果が偽となった時点で、照明光波面側法線l〜lのうち偏差Sの値が最小となる照明光波面側法線、要するに、現段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kの表す反射光に対応した照明光(入射光)の光路を表す照明光波面側法線として適切であると考えられる照明光波面側法線が一義的に特定され、この照明光波面側法線と波面分布面側法線kとの交点Pの値が実面形状データ生成手段fの一部として機能するCPU17によってデータ候補記憶レジスタRに保持されることとなる。
【0093】
この実施形態では、光の入射角と反射角が等しいという原則に従って、S=|θ1−θ2|の値が最小となる照明光波面側法線lつまりθ1の値とθ2の値が最も近似するようになる照明光波面側法線lを、その段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kが表す反射光に対応した入射光の光路を表す照明光波面側法線として最も適切なものとして判断するようにしている。
【0094】
また、照明光波面側法線lと波面分布面側法線kとの交点Pにおける被検面13aの実面形状として球心Oを中心として照明光波面側法線lと波面分布面側法線kとの交点Pを通る球Rを想定し、この球R上の接平面が入射光を反射しているものと想定するのは、被検体13となるものとしては球面レンズあるいは非球面レンズといったものが一般的であり、被検面13aの表面に不連続的な傾きの変化が生じないことを前提しているからである。
【0095】
次に、同一平面条件対応法線特定機能が選択されていた場合の処理、つまり、ステップa32およびステップa33の判定結果が共に偽となった場合の処理について説明する。
【0096】
この場合、照明光光路特定手段eとして機能するCPU17はSUB(C)の処理に移行し、まず、現段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kつまりステップa16の処理でRAM20に記憶された波面分布面側法線kの方向ベクトルと被検体13の球心Oを中心として照明光波面側法線lと波面分布面側法線kとの交点Pを通る球Rを想定して球R上の位置Pにおいて求めた法線mの方向ベクトルとの外積Vを求め(ステップd1)、更に、ステップa30の処理で読み出された照明光波面側法線lの方向ベクトルと外積Vの内積Vを求めてから(ステップd2)、内積Vと最小エラー値記憶レジスタDmin.の現在値との大小関係を比較する(ステップd3)。
【0097】
ここで、ステップd3の判定結果が偽となった場合、つまり、これ以前に求められてきた全ての内積の値よりも此の度の処理で求められた内積Vの値の方が小さいと判定された場合には、照明光光路特定手段eとして機能するCPU17は、取り敢えず、今回のステップa30の処理で読み出された照明光波面側法線lに対応する入射光が現段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kに対応する反射光と対を成すものとなる可能性が最も高いと見做し、この照明光波面側法線lと波面分布面側法線kとの交点Pを、波面分布面Wの微小セルWに対応した被検面13a上の実面形状の位置を表すデータの1候補としてデータ候補記憶レジスタRに一時記憶すると共に(ステップd4)、最小エラー値記憶レジスタDmin.の値を内積Vの現在値つまり現時点で最小となっている内積Vの値に置き換える(ステップd5)。
【0098】
これ以降の処理に関しては、前述の光路長条件対応法線特定機能が選択されていた場合の処理や入射反射角条件対応法線特定機能が選択されていた場合の処理と同様であり、最終的にステップa29の判定結果が偽となった時点で、照明光波面側法線l〜lのうち内積Vの値が最小となる照明光波面側法線、要するに、現段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kの表す反射光に対応した入射光の光路を表す照明光波面側法線として適切であると考えられる照明光波面側法線が一義的に特定され、この照明光波面側法線と波面分布面側法線kとの交点Pの値が実面形状データ生成手段fの一部として機能するCPU17によってデータ候補記憶レジスタRに保持されることとなる。
【0099】
この実施形態では、光が被検面13aの法線mに対して対称的に入射反射するという原則に従って、内積Vの値が最小となる照明光波面側法線lつまり被検面13aの法線mと照明光波面側法線lと波面分布面側法線kとが同一平面状にあることを条件として、その段階で評価対象として選択されている波面分布面側法線kが表す反射光に対応した入射光の光路を表す照明光波面側法線として最も適切な照明光波面側法線lを特定するようにしている。
【0100】
既に述べた通り、照明光波面側法線lと波面分布面側法線kとの交点Pにおける被検面13aの実面形状として球心Oを中心として照明光波面側法線lと波面分布面側法線kとの交点Pを通る球Rを想定し、この球R上の接平面が入射光を反射しているものと想定するのは、被検体13となるものとしては球面レンズあるいは非球面レンズといったものが一般的であり、被検面13aの表面に不連続的な傾きの変化が生じないことを前提しているからである。
【0101】
以上に述べた通り、この実施形態の被検面形状測定方法,被検面形状測定装置,被検面形状測定プログラムにあっては、波面分布面Wを区画して得た各微小セルW〜WC1毎の波面分布面側法線k〜kC1の各々が、干渉計1による測定時に被検体13の球心Oとなる1点に収束する光路を辿って被検面13aに入射した入射光の何れかの反射光の光路と一致することに基いて、波面分布面Wの微小セルW〜WC1における波面分布面側法線k〜kC1すなわち被検面13aからの反射光に相当する波面分布面側法線k〜kC1毎に、これに対応する照明光波面側法線l〜lC1つまり入射光の光路を突き止め、これら2つの光路すなわち波面分布面側法線k〜kC1と照明光波面側法線l〜lC1の交点位置R(1)〜R(C1)を求めて被検面13aの実面形状のデータとするようにしているので、干渉計1の撮像素子12によって検出された反射光の光路が入射光の光路と一致する場合(被検面13aが球面の場合)であっても、また、入射光の光路が反射光の光路とは一致しない場合(被検面13aが非球面の場合)であっても、被検体13の被検面13aの実面形状を直接的に把握して画像による表示もしくは数値データによる表示で的確に示すことができる。
【0102】
従って、被検面13aが完全な球面でない場合、例えば、本来は球面であるべき被検面13aの形状が加工の異常や損傷あるいは経年変化等によって球面でなくなった場合、または、元々の被検面13aの設計形状が非球面であるような場合にあっても、参照面として機能する物理的な非球面や其れに相当する波面を生成するモジュールを要することなく被検面13aの実面形状を容易かつ廉価に測定することができ、また、被検面13aの部分的な計測やデータの合成等も不要なことから演算に必要とされる所要時間も短縮され、非接触式の測定であるから高価な被検レンズ損傷させるといった心配もなく、製造現場において高価な被検レンズの全数検査を実施することも可能となる。
【0103】
以上に述べた実施形態では、照明光光路特定手段eが、光路長条件対応法線特定機能と入射反射角条件対応法線特定機能と同一平面条件対応法線特定機能のうちから何れか1つの機能をユーザからの要望に応じて選択し、選択した1つの機能のみに基いて波面分布面Wの各微小セルWに対応する反射光を表す波面分布面側法線kと此れに対応する入射光の光路を表す照明光波面側法線lを特定するようにした例について述べたが、光路長条件対応法線特定機能,入反射角条件対応法線特定機能,同一平面条件対応法線特定機能を2つ以上組み合わせて、或いは、全ての機能を併用して、波面分布面側法線kと此れに対応する入射光の光路を表す照明光波面側法線lを特定するようにしてもよい。
【0104】
また、以上に述べた実施形態では、シェアリング干渉計に対して被検面形状測定方法,被検面形状測定装置,被検面形状測定プログラムを適用する場合について例示したが、本発明の被検面形状測定方法,被検面形状測定装置,被検面形状測定プログラムの用途は、特にシェアリング干渉計に限定されるものではなく、物理的な参照球面の有無に関わらず、3次元的に波面収差分布を測定する機能を有する干渉計でさえあれば、被検面の形状を特定し、かつ、被検面と設計値の乖離量となる誤差等を計測することが可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 干渉計
2 レーザ光源
3 偏光板
4 ビームエキスパンダ
5 集光レンズ
6 ビームスプリッタ
7 複屈折光学素子
8 コリメータレンズ
8’ 対物レンズ
9 支持具
10 偏光板
11 結像レンズ
12 撮像素子
13 被検体
13a 被検面
14 調整具
15 送り機構
16 被検面形状測定装置
17 CPU(参照球面生成手段,波面分布面データ生成手段,法線データ抽出手段,照明光光路特定手段,実面形状データ生成手段)
18 ROM
19 不揮発性メモリ
20 RAM(記憶手段)
21 ハードディスクドライブ
22 入出力回路
23 モニタ
24 キーボード
25 マウス
26 入出力インターフェイス
27 レーザ駆動回路
28 ドライバ
29 パルス発生器
30 CCD制御回路
31,32 接平面
a 参照球面生成手段
b 波面分布面データ生成手段
c 法線データ抽出手段
d 記憶手段
e 照明光光路特定手段
f 実面形状データ生成手段
g データテーブル
B 参照球面
W 波面分布面
E 照明光の波面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉計の撮像素子から出力される被検面のシェア像の画像データをコンピュータで処理して得られる波面収差分布のデータで表される波面収差分布を算出するための参照球面を論理空間内に仮想し、
前記参照球面と前記波面収差分布のデータに基いて前記参照球面を基準とする波面分布面のデータを生成した後、
前記波面分布面のデータで表される波面分布面を区画して得た各微小セル毎に当該微小セルの中心を通る法線を求めて各微小セル毎の反射光を表す波面分布面側法線とすると共に、照明光波面を区画して得た各微小セル毎に当該微小セルの中心を通る法線を求めて各微小セル毎の照明光波面側法線とし、
前記波面分布面側法線の各々が、前記干渉計による測定時に1点に収束する光路を辿って被検面に入射した照明光(入射光)の何れかの反射光の光路と一致することに基いて、前記波面分布面のデータで表される波面分布面の各微小セル毎に、当該微小セルの反射光を表す波面分布面側法線と此れに対応する入射光の光路を表す照明光波面側法線を特定し、前記波面分布面の各微小セル毎に、対応する波面分布面側法線と照明光波面側法線との交点位置を求めて被検面の実面形状のデータとすることを特徴とした被検面形状測定方法。
【請求項2】
前記波面分布面の各微小セル毎に当該微小セルの反射光を表す波面分布面側法線と此れに対応する照明光(入射光)の光路を表す照明光波面側法線を特定するに際し、
当該波面分布面側法線と交差する照明光波面側法線および当該照明光波面側法線と当該波面分布面側法線との交点を全て求め、
前記被検面が凸面である場合には、前記波面分布面と前記交点との間の当該波面分布面側法線の長さと前記照明光波面と前記交点との間の照明光波面側法線の長さの和が、前記1点に収束する照明光(入射光)の収束位置と照明光波面との間の離間距離に、前記1点に収束する照明光(入射光)の収束位置から前記波面分布面の算出に用いた参照球面までの距離を加算し、この値から被検面の設計上の近軸曲率半径の2倍の値を減算した距離に最も近似する照明光波面側法線を求める一方、
前記被検面が凹面である場合には、前記波面分布面と前記交点との間の当該波面分布面側法線の長さと前記照明光波面と前記交点との間の照明光波面側法線の長さの和が、前記1点に収束する照明光(入射光)の収束位置と照明光波面との間の離間距離に、前記1点に収束する照明光(入射光)の収束位置から前記波面分布面の算出に用いた参照球面までの距離を加算し、この値に被検面の設計上の近軸曲率半径の2倍の値を加算した距離に最も近似する照明光波面側法線を求め、
前記求められた照明光波面側法線を当該波面分布面側法線に対応する照明光波面側法線として特定することを特徴とした請求項1記載の被検面形状測定方法。
【請求項3】
前記波面分布面の各微小セル毎に当該微小セルの反射光を表す波面分布面側法線と此れに対応する入射光の光路を表す照明光波面側法線を特定するに際し、
当該波面分布面側法線と交差する照明光波面側法線を全て求め、当該波面分布面側法線と各照明光波面側法線とが交わる位置において想定される被検面の法線と当該波面分布面側法線とが成す角と前記被検面の法線と前記求められた照明光波面側法線とが成す角の差が最小となる照明光波面側法線を求め、この照明光波面側法線を当該波面分布面側法線に対応する照明光波面側法線として特定することを特徴とした請求項1記載の被検面形状測定方法。
【請求項4】
前記波面分布面の各微小セル毎に当該微小セルの反射光を表す波面分布面側法線と此れに対応する入射光の光路を表す照明光波面側法線を特定するに際し、
当該波面分布面側法線と交差する照明光波面側法線を全て求め、当該波面分布面側法線と各照明光波面側法線とが交わる位置において想定される被検面の法線と、当該波面分布面側法線と、前記求められた照明光波面側法線とが同一平面上に位置する照明光波面側法線を求め、この照明光波面側法線を当該波面分布面側法線に対応する照明光波面側法線として特定することを特徴とした請求項1記載の被検面形状測定方法。
【請求項5】
前記波面分布面側法線と各照明光波面側法線とが交わる位置において想定される被検面として、前記1点に収束する入射光の収束位置を中心として有する球の表面を利用することを特徴とした請求項3または請求項4記載の被検面形状測定方法。
【請求項6】
干渉計の撮像素子から出力される被検面のシェア像の画像データを処理して得られる波面収差分布のデータで表される波面収差分布を算出するための参照球面を論理空間内に仮想する参照球面生成手段と、
前記参照球面生成手段によって仮想された前記参照球面と前記波面収差分布のデータに基いて前記参照球面を基準とする波面分布面のデータを生成する波面分布面データ生成手段と、
演算用のデータを一時記憶するための記憶手段と、
前記波面分布面データ生成手段によって生成された波面分布面のデータで表される波面分布面を区画して得た各微小セル毎に当該微小セルの中心を通る法線を求めて各微小セル毎の反射光を表す波面分布面側法線として前記記憶手段に記憶させると共に、照明光波面を区画して得た各微小セル毎に当該微小セルの中心を通る法線を求めて各微小セル毎の照明光波面側法線として前記記憶手段に記憶させる法線データ抽出手段と、
前記記憶手段に記憶された波面分布面側法線の各々が、前記干渉計による測定時に1点に収束する光路を辿って被検面に入射した照明光(入射光)の何れかの反射光の光路と一致することに基いて、前記波面分布面のデータで表される波面分布面の各微小セルに対応して前記記憶手段に記憶された反射光を表す波面分布面側法線と此れに対応する入射光の光路を表す照明光波面側法線を特定する照明光光路特定手段と、
前記波面分布面の各微小セル毎に、前記照明光光路特定手段によって対応関係を特定された波面分布面側法線と照明光波面側法線との交点位置を求めて被検面の実面形状のデータとする実面形状データ生成手段とを備えたことを特徴とする被検面形状測定装置。
【請求項7】
前記被検面が凸面である場合には、前記波面分布面と前記交点との間の当該波面分布面側法線の長さと前記照明光波面と前記交点との間の照明光波面側法線の長さの和が、前記1点に収束する照明光(入射光)の収束位置と照明光波面との間の離間距離に、前記1点に収束する照明光(入射光)の収束位置から前記波面分布面の算出に用いた参照球面までの距離を加算し、この値から被検面の設計上の近軸曲率半径の2倍の値を減算した距離に最も近似する照明光波面側法線を求める一方、
前記被検面が凹面である場合には、前記波面分布面と前記交点との間の当該波面分布面側法線の長さと前記照明光波面と前記交点との間の照明光波面側法線の長さの和が、前記1点に収束する照明光(入射光)の収束位置と照明光波面との間の離間距離に、前記1点に収束する照明光(入射光)の収束位置から前記波面分布面の算出に用いた参照球面までの距離を加算し、この値に被検面の設計上の近軸曲率半径の2倍の値を加算した距離に最も近似する照明光波面側法線を求め、前記求められた照明光波面側法線を当該波面分布面側法線に対応する照明光波面側法線として特定するように構成されていることを特徴とした請求項6記載の被検面形状測定装置。
【請求項8】
前記照明光光路特定手段が、前記記憶手段に記憶された波面分布面側法線と交差する照明光波面側法線を全て求め、当該波面分布面側法線と各照明光波面側法線とが交わる位置において想定される被検面の法線と当該波面分布面側法線とが成す角と前記被検面の法線と前記求められた照明光波面側法線とが成す角の差が最小となる照明光波面側法線を求め、この照明光波面側法線を当該波面分布面側法線に対応する照明光波面側法線として特定するように構成されていることを特徴とした請求項6記載の被検面形状測定装置。
【請求項9】
前記照明光光路特定手段が、前記記憶手段に記憶された波面分布面側法線と交差する照明光波面側法線を全て求め、当該波面分布面側法線と各照明光波面側法線とが交わる位置において想定される被検面の法線と、当該波面分布面側法線と、前記求められた照明光波面側法線とが同一平面上に位置する照明光波面側法線を求め、この照明光波面側法線を当該波面分布面側法線に対応する照明光波面側法線として特定するように構成されていることを特徴とした請求項6記載の被検面形状測定装置。
【請求項10】
前記照明光光路特定手段が、前記波面分布面側法線と各照明光波面側法線とが交わる位置において想定される被検面として、前記1点に収束する入射光の収束位置を中心として有する球の表面を想定することを特徴とした請求項8または請求項9記載の被検面形状測定装置。
【請求項11】
干渉計の撮像素子から出力される被検面のシェア像の画像データを処理するコンピュータを制御するための被検面形状測定プログラムであって、
前記コンピュータを、
干渉計の撮像素子から出力される被検面のシェア像の画像データを処理して得た波面収差分布のデータで表される波面収差分布を算出するための参照球面を論理空間内に仮想する参照球面生成手段、
前記参照球面生成手段によって仮想された前記参照球面と前記波面収差分布のデータに基いて前記参照球面を基準とする波面分布面のデータを生成する波面分布面データ生成手段、
前記波面分布面データ生成手段によって生成された波面分布面のデータで表される波面分布面を区画して得た各微小セル毎に当該微小セルの中心を通る法線を求めて各微小セル毎の反射光を表す波面分布面側法線として前記コンピュータの記憶装置に記憶させると共に、照明光波面を区画して得た各微小セル毎に当該微小セルの中心を通る法線を求めて各微小セル毎の照明光波面側法線として前記コンピュータの記憶装置に記憶させる法線データ抽出手段、
前記前記コンピュータの記憶装置に記憶された波面分布面側法線の各々が、前記干渉計による測定時に1点に収束する光路を辿って被検面に入射した入射光の何れかの反射光の光路と一致することに基いて、前記波面分布面のデータで表される波面分布面の各微小セルに対応して前記前記コンピュータの記憶装置に記憶された反射光を表す波面分布面側法線と此れに対応する入射光の光路を表す照明光波面側法線を特定する照明光光路特定手段、および、
前記波面分布面の各微小セル毎に、前記照明光光路特定手段によって対応関係を特定された波面分布面側法線と照明光波面側法線との交点位置を求めて被検面の実面形状のデータとする実面形状データ生成手段として機能させることを特徴とした被検面形状測定プログラム。
【請求項12】
前記被検面が凸面である場合には、前記波面分布面と前記交点との間の当該波面分布面側法線の長さと前記照明光波面と前記交点との間の照明光波面側法線の長さの和が、前記1点に収束する照明光(入射光)の収束位置と照明光波面との間の離間距離に、前記1点に収束する照明光(入射光)の収束位置から前記波面分布面の算出に用いた参照球面までの距離を加算し、この値から被検面の設計上の近軸曲率半径の2倍の値を減算した距離に最も近似する照明光波面側法線を求める一方、
前記被検面が凹面である場合には、前記波面分布面と前記交点との間の当該波面分布面側法線の長さと前記照明光波面と前記交点との間の照明光波面側法線の長さの和が、前記1点に収束する照明光(入射光)の収束位置と照明光波面との間の離間距離に、前記1点に収束する照明光(入射光)の収束位置から前記波面分布面の算出に用いた参照球面までの距離を加算し、この値に被検面の設計上の近軸曲率半径の2倍の値を加算した距離に最も近似する照明光波面側法線を求め、前記求められた照明光波面側法線を当該波面分布面側法線に対応する照明光波面側法線として特定するように構成されていることを特徴とした請求項11記載の被検面形状測定プログラム。
【請求項13】
前記照明光光路特定手段が、前記コンピュータの記憶装置に記憶された波面分布面側法線と交差する照明光波面側法線を全て求め、当該波面分布面側法線と各照明光波面側法線とが交わる位置において想定される被検面の法線と当該波面分布面側法線とが成す角と前記被検面の法線と前記求められた照明光波面側法線とが成す角の差が最小となる照明光波面側法線を求め、この照明光波面側法線を当該波面分布面側法線に対応する照明光波面側法線として特定するように構成されていることを特徴とした請求項11記載の被検面形状測定プログラム。
【請求項14】
前記照明光光路特定手段が、前記コンピュータの記憶装置に記憶された波面分布面側法線と交差する照明光波面側法線を全て求め、当該波面分布面側法線と各照明光波面側法線とが交わる位置において想定される被検面の法線と、当該波面分布面側法線と、前記求められた照明光波面側法線とが同一平面上に位置する照明光波面側法線を求め、この照明光波面側法線を当該波面分布面側法線に対応する照明光波面側法線として特定するように構成されていることを特徴とした請求項11記載の被検面形状測定プログラム。
【請求項15】
前記照明光光路特定手段が、前記波面分布面側法線と各照明光波面側法線とが交わる位置において想定される被検面として、前記1点に収束する入射光の収束位置を中心として有する球の表面を想定することを特徴とした請求項13または請求項14記載の被検面形状測定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−154650(P2012−154650A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11432(P2011−11432)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(592004404)中央精機株式会社 (16)
【出願人】(398011066)株式会社ベストメディア (2)
【Fターム(参考)】