製品搬送台車、ロボット位置計測システム及びその計測方法
【課題】 製造ラインにおけるロボットの作業点を高精度で計測するとともに、作業性及び安全性の向上を図る。
【解決手段】 作業対象製品を載置して搬送レール上を搬送する製品搬送手段10を所定位置に停止させる。作業対象製品の設計指定位置9を目標に製品製造用ロボット12の作業部15を移動させ、製品搬送手段10に固定設置された計測手段11により上記ロボット12の作業部15の位置を計測する。そして、ロボット12の作業部15の位置と設計指定位置(指定点9)との誤差を計算し、その誤差に基づいて、ロボット12の作業部15の位置が設計指定位置に一致するようロボット12に対し補正指示を出す。
【解決手段】 作業対象製品を載置して搬送レール上を搬送する製品搬送手段10を所定位置に停止させる。作業対象製品の設計指定位置9を目標に製品製造用ロボット12の作業部15を移動させ、製品搬送手段10に固定設置された計測手段11により上記ロボット12の作業部15の位置を計測する。そして、ロボット12の作業部15の位置と設計指定位置(指定点9)との誤差を計算し、その誤差に基づいて、ロボット12の作業部15の位置が設計指定位置に一致するようロボット12に対し補正指示を出す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品搬送台車、ロボット位置計測システム及びその計測方法に関し、例えば自動車生産工場等の製造ラインにおける製品搬送台車、その製品搬送台車で搬送されてくる製品に対して作業するロボットの作業部の位置を計測するロボット位置計測システム及びその計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車生産工場などの製造ラインで多数用いられている産業用ロボットは、ロボット先端部に設けられたいわゆるハンドと呼ばれる作業部により、作業対象製品あるいは作業に必要な部品等を吸着又は把持して保持し、切削、ネジ締め、溶接等の様々な作業を実行可能とされている。ハンドはアームによって3次元的に移動可能となっている。また、アームは、ロボット設置領域あるいはロボット作業領域といわれる所定領域に作業対象製品が搬送されてくる毎に、作業空間内の予め複数定められた設計指定位置(「ティーチング位置」ともいう。)へハンドが順次移動するように駆動される。これにより、搬送台車に載り順次搬送されてくる作業対象製品に対し、予め定められた種々の作業が行われる。
【0003】
ロボットのハンドの移動目標とすべき設計指定位置は、コンピュータを利用して正確な解析及びシミュレーションが行われる。そして、これらの処理を経てデータ化された後、そのデータを使用して所定のプログラムに従い作業が実行される。しかし、ロボットが設置されている環境によって、実際にロボットが作業する位置(以下、作業位置ともいう。)と上記設計指定位置との間にずれが生じることがある。
【0004】
例えば、ロボットの高速化に伴う軽量化によってロボットのアーム等の剛性が低下した場合や、溶接ガンのような重心が偏心している重量物がロボットの一部に取り付けられた場合など、データ化の前提とした条件が実際の状況と合わないことがある。さらに、一般にロボットの駆動を制御するために内在しているサーボモータ等の駆動データから設計指定位置を算出しているが、これらはロボットが所定位置に正確に設置され、かつ、搬送台車が正確に敷設された搬送レール上の規定の位置へ正確に停止することが前提である。しかし、搬送台車が必ずしも規定の停止位置に正確に停止せず、設計指定位置と実際にロボットが作業する位置にずれが生じてしまう場合がある。この他に、ずれが生じる他の要因として、搬送レールの傾きやねじれ等による誤差等の理由が考えられる。
【0005】
したがって、ロボットを作業対象製品の設計指定位置に移動して正確に作業を行なわせるためには、設計指定位置とロボットの作業位置とのずれ量を計算し、ロボットのハンドが設計指定位置に正しく移動するよう、ずれ量に応じた補正を行う必要がある。
【0006】
ロボットのハンドが設計指定位置へ正確に移動するかどうかを計測する方法の1つに、作業対象製品と同形状の製品を用意し、その製品に対して設計指定位置にケガキを入れるなどし、そのケガキ位置とロボットの作業位置との誤差を手作業で実測する方法がある。
【0007】
上記手作業による計測の例を、図10A,Bを参照して説明する。まず、図10Aに示すように、搬送台車101に作業対象の車両102を載置し、不図示の搬送レール上を搬送して搬送台車101を決められた停止位置に停止させる。ロボット103はアーム104を自在に駆動し、その先端部のハンド105を予め車両102にケガキしておいた設計指定位置106へ移動させる。ロボット103は、搬送台車101の座標系上に設定されている車両原点107を移動の際の基準として、ハンド105の位置を決定している。
【0008】
図10Bは、図10Aの破線で囲まれた要部を拡大したものである。ケガキしておいた設計指定位置106と、ロボットの作業点105aとの距離L及び位置関係を計測する。そして、その計測結果に基づいて、設計指定位置106とロボットの位置との誤差を計算し、誤差を補正する。ハンド105が設計指定位置106に正確に停止したかどうかは、その誤差量で判断することができる。
【0009】
次に、上述した手作業による計測方法の他の方法として、3次元座標計測を行なう計測機器を利用した方法について説明する。計測機器を用いたロボット位置計測システムの例を、図11に示す。このシステムでは、製造ラインの外側に例えばレーザ測定器等からなる計測機器110が設置されている。そして、床の所定位置にロボット112の基台113が固定され、ロボット112が設置される。ロボット112はアーム114を備え、アーム先端部のハンド115に3次元計測用のマーカー120aが設置される。計測機器110は、レーザ入出力点111よりレーザを出射し、ロボット112に設けられたマーカーで反射するレーザ光を解析する。マーカー120aを3次元計測し、車両原点116を座標原点とするロボット112の作業点座標を取得する。
【0010】
図12は、図11に示したシステムにおける座標系を表した図である。図12に示すように、ロボット112の作業空間は、計測機器110が属する計測機器座標系、車両原点116を座標原点とする車両座標系、ロボットが作業を開始する際の基準となるロボット作業開始原点119を座標原点とするロボット座標系に分けられる。ロボット先端部のハンド115の位置を表す作業点120は計測機器座標系に属し、移動及び補正の際にはロボット座標系で制御される。また、ロボット112が作業すべき設計指定位置を表す指定点121は車両座標系に属する。
【0011】
計測機器110を製造ラインの外側に設置したシステムの場合、ロボット座標系とロボットの作業点120、搬送台車101の停止基準点を含む車両座標系(製品設計座標系)を三次元計測することによって、ロボットの作業点120と指定点121との差異を計算し、ハンド115の必要な補正量をロボット座標系で算出することができる。
【0012】
例えば、作業点120の座標を(Rx,Ry,Rz)、指定点121の座標を(Px,Py,Pz)、そして作業点120と指定点121のオフセット量をΔとすると、
指定点121の座標(Px,Py,Pz)は、次式で表される。
【0013】
【数1】
ただし、θ:作業点120を基準とした指定点121の仰角
φ:作業点120を基準とした指定点121の方向角
【0014】
他方、特許文献1には、自動車ボディ組立工程に、3次元の被計測物の形状を計測可能な3次元計測装置を組み込んだオンラインでの3次元計測システムが記載されている。
【特許文献1】特開2003−315023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上述の手作業による計測方法では、ロボットがティーチング位置に正確に停止したかどうかは、車両にケガキされた設計指定位置106とハンド105の作業点105aの位置を実測する必要がある。しかし、手作業による作業のために、設計指定位置106と作業点105aの位置を測る3次元計測の信頼性に問題があった。また、計測用にケガキを入れた製品を用意するなど前作業が面倒であり、かつ、数多くの作業点を手作業で測定し、その結果に基づき補正を行なうため、製造ラインの操業停止時間が長くなるという問題があった。さらに、上記計測結果に基づくロボット側の制御操作による補正は、作業者の勘によるところが多く、ロボット座標系と車両座標系が正確に一致しないという問題があった。またさらに、例えば自動車の車種が変更になると計測をやり直すというように、製品毎、ロボット毎に計測を行なう必要があり煩雑であるという問題があった。
【0016】
また、手作業による計測方法は、作業者が作業対象製品やロボットに近づいて作業するため、ロボットのアーム104やハンド105が作業者に当たらないよう十分に考慮する必要があった。
【0017】
一方、計測機器を利用した計測方法では、多くの計測ポイントを計測する必要があった。すなわち、1つの座標系を決定するには計測ポイントが3点以上必要であるが、車両座標系、ロボット座標系、計測機器座標系と3つの座標系があり、座標系の数だけ計測ポイントが増え、計算処理量も多くなる。また、計測機器を製造ライン外側の所定位置に正確に設置するための準備に時間がかかり、製造ラインの操業停止時間が長くなるという問題があった。
【0018】
また、計測機器を製造ラインの外側に設けた場合、各計測ポイントを計測した後の補正計算が複雑であるという問題があった。例えば、車両座標系、ロボット座標系等、それぞれに誤差要因があり、作業点を計測した後、その各々の誤差要因を考慮して補正計算しなければならなかった。また、作業点120は計測機器座標系にあるが制御はロボット座標系で行われ、一方指定点121は車体座標に属するので、これらの座標系間の変換処理が複雑であった。
【0019】
さらに、多くのロボットが稼動する狭く混雑した空間では、ロボット同士の重なり、あるいはロボット自身の動作によって計測機器から作業点までの見通しを確保することが難しくなる。さらにまた、近年では製品のライフサイクルが短くなっており、その都度新製品に合わせて計測機器の設置位置等の変更が必要である。そのため、同一の製造ラインにおける多品種製造や製造ラインの変更に対し迅速な対応が困難であるという問題があった。
【0020】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、上述の諸問題を解決し、製造ラインにおけるロボットの作業点を高精度で計測するとともに、作業性及び安全性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、製品製造用ロボットの作業対象製品を搬送する製品搬送台車に対し、その所定部分にロボットの作業部の位置を計測する計測手段を固定設置したことを特徴とする。
【0022】
上述した構成によれば、計測手段が作業対象製品と一体に移動するので、計測手段が属する計測手段座標系と、製品及び製品搬送台車が属する製品設計座標系を1つの座標系に統一することができる。
【0023】
また、本発明は、上述の製品搬送台車によって搬送される作業対象製品の設計指定位置を目標にして製品製造用のロボットの作業部を移動させ、その製品搬送台車に固定設置された計測手段により上記ロボットの作業部の位置を計測し、計測された上記ロボットの作業部の位置と上記設計指定位置との誤差を計算し、上記誤差に基づいて上記設計指定位置に一致するよう上記ロボットの作業部の位置を補正することを特徴とする。
【0024】
上述した構成によれば、計測手段と製品搬送台車を一体に移動させて、計測手段が属する計測手段座標系と、製品及び製品搬送台車が属する製品設計座標系を1つの座標系として処理するようにしている。これによって、実作業に近い環境で、かつ、各部のたわみや誤差等を吸収した状態で計測することができる。また、計測手段座標系と製品設計座標系を1つの座標系として処理できることにより、ロボットの作業部の位置を計測した後の補正計算が簡素化される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、計測手段と製品搬送台車を一体に移動させ、計測手段が属する計測手段座標系と、製品及び製品搬送台車が属する製品設計座標系を1つの座標系として処理するようにしたことにより、ロボットの作業部の位置が実作業に近い環境で、かつ、各部のたわみや誤差等を吸収した状態で計測されるので、高精度な計測結果を得ることができる。また、計測手段座標系と製品設計座標系を1つの座標系として処理できることにより、ロボットの作業部の位置を計測した後の補正計算が簡素化されるので、計算時間が短縮できるという効果がある。
【0026】
また、ケガキを入れた製品を用意するなど計測のための前準備が少なく、更に製造ラインや作業対象製品の変更に伴う計測手段の設置場所変更を必要としないため、製造ラインの操業停止時間を最小限に抑えることができる。このように、計測作業の効率化が図れるという効果がある。
【0027】
また、計測時に作業員がロボットのアームの可動範囲内に入ることがなくなるので、安全性が向上するという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態の例につき、図1〜図7を参照して説明する。
まず、ロボット位置計測システムの構成について説明する。本例では、製品製造用ロボット(以下、単に「ロボット」と称する。)の作業部の位置を精密に計測・補正するロボット位置計測システムを自動車の製造ラインに適用した例としている。なお、搬送台車により搬送されてくる作業対象の製品に対して、製品設計に基づき所定の作業を行なうロボットを使用した製造ラインであれば、この例に限らず、任意の製品の製造ラインについて適用することができる。
【0029】
図1は、本例のロボット位置計測システムの概念を示す図である。図1に示すように、ロボットの作業空間は、ロボットの位置を3次元計測する計測機器(計測手段)が属する計測機器座標系と、搬送台車と一体に移動する車両に対して設定され車両原点2を座標原点とする車両座標系と、ロボットが移動する際の基準となるロボット作業開始原点5を含むロボット座標系が存在している。車両座標系は製品を設計する際の基準となる座標系であり、製品設計座標系ともいう。また、作業点8は、ロボットが設計指定位置を目標に移動して実際に作業を行う位置を表し、計測機器座標系に属する。指定点9は、ロボットが作業すべき設計指定位置を表し、車両座標系に属する。
【0030】
x軸既定点3及びy軸既定点4は、それぞれ車両原点2からx方向あるいはy方向にある距離だけ離れた位置にあり、車両座標系のxy平面を決定するために予め任意に設定される座標である。例えば、x軸既定点3の座標を(1,0,0)、y軸既定点4の座標を(0,1,0)などとして、車両原点2の座標(0,0,0)と合わせた3点でxy平面を決定する。同様に、x軸既定点6、y軸既定点7、及びロボット作業開始原点5の3点によりロボット座標系のxy平面が決定される。
【0031】
本発明においては、計測機器を搬送台車上に搭載し、計測機器が作業対象の車両と一体に移動可能な構成とすることにより、上記計測機器座標系と上記車両座標系(製品設計座標系)を1つの座標系として処理することができるので、作業点と指定点の座標を車両座標系における座標として計測することができる。そして、ロボットの作業点を補正する際には、補正値を車両座標系からロボット座標系へ変換し、ロボット座標系で制御する。
【0032】
図2は、図1に示すロボット位置計測システムの概念を具現化した例を示す模式図である。図2に示すように、本例は、不図示の車両を各工程に搬送する剛性の保たれた搬送台車10に1台の計測機器11を固定設置し、計測機器11を車両座標系(製品設計座標系)に設置する。すなわち、計測機器座標系と車両座標系(製品設計座標系)を一致させる。このとき、計測機器11の設置に関しては、計測機器11を搬送台車上の所定位置に設置し、車両座標系との整合性を正確に取ることが必須である。すなわち、計測機器11による計測機器座標系のx,y,zの各軸を、車両座標系の各軸と平行になるように設置する。
【0033】
さらに、不図示の搬送レールが敷設されている床面の所定位置に基台13を固定し、その上にロボット12を設置する。なお、各車両は、各搬送台車の製品設計上決められた位置に載置されて搬送されることは勿論である。
【0034】
ロボット12は一端が基台13に固定されたアーム14を備え、アーム先端部のハンド15に計測用のマーカー8aが設けられる。マーカーは、ロボットの作業点を計測するための目印のようなものであり、レーザ光を反射する素材でできた球形の物体が採用される。さらに、本システムは、計測機器11及びロボット12とワイヤレス等で接続され、システム全体の制御を司る不図示のコンピュータからなる情報処理装置(制御手段)を備える。情報処理装置は、本システムを実現するプログラムと、各工程における指定点が登録されたデータベースが保存されている不揮発性メモリを備えている。
【0035】
まず、ロボット12を、ロボット作業開始原点5、x軸既定点6、y軸既定点7と移動させる。このとき、計測機器11は搬送台車10上から、上記3点に移動したときのハンド15のマーカー8aを3次元計測して、ロボット座標系を入手する。また、ロボット12のハンド15が作業を行なう作業点8を計測する。
【0036】
ロボット12のハンド15の位置を3次元計測するには、計測機器11のレーザ入出力点1よりレーザを出射して、ハンド15に設けられたマーカー8aのミラーで反射したレーザ光を受光する。そして、計測機器11にて受光した反射光を解析し、その解析結果を情報処理装置へ送信する。
【0037】
また、情報処理装置は、受信した反射光の解析結果からマーカー8aの位置、すなわち車両座標系における作業点8の座標を取得する。そして、取得した作業点8の座標とデータベースに登録された指定点の座標との誤差を計算する。その結果に基づいてロボット12の補正量及び補正方向を計算する。情報処理装置は、補正量及び補正方向からなる補正情報を車両座標系(製品設計座標系)からロボット座標系の情報に換算して、ロボット12に補正指示を出す。ロボット12は、情報処理装置からの移動指示に従って、ハンド15の位置を補正し、溶接、ネジ締め、切削等、所定の作業を行う。なお、補正情報の車両座標系からロボット座標系への変換処理は、ロボット12で行なうようにしてもよい。
【0038】
一般に、作業工程の1ブロック内において、一つの車両に対し搬送台車を挟んで両側から複数のロボットによる作業が行われる。図2の例のように、計測機器11を搬送台車10の搬送方向に沿う中心線上かつその前部に設けた場合、ロボット同士のアームの重なりが減少するなどして、計測機器11から各ロボットに設けられたマーカーまでの見通しが良くなる。したがって、計測機器11から各ロボットのマーカーの位置を良好に計測できるようになる。なお、搬送台車10上の計測機器11を設置する位置は、計測機器11から各ロボットのマーカーを良好に見通すことができる位置であって、計測の支障とならない位置であれば、搬送台車10の中心線上の後部等、任意の位置に設置することができる。
【0039】
ここで、本システムの計測機器として用いられているレーザ測定器について説明する。
図3は、レーザ測定器の例を示した外観図である。図3に示すように、レーザ測定器11は、搬送台車10に固定される固定部17と、中心にセンサ部16が配置された回動部18から構成されている。回動部18(及びそれに設けられたセンサ部16)は固定部17を軸受けとして利用しxy平面上を旋回するとともに、xy平面に垂直なz軸方向へ回動できる構造となっている。センサ部16のレーザ入出力点1から出射されたレーザ光は、ロボットの作業点を計測するために設けられたマーカー8aで反射される。そして、計測機器11はレーザ入出力点1から反射光を受光し、解析処理を行なう。
【0040】
レーザ測定器11は、反射光を解析することでマーカー8aを追尾測定できるよう構成されているので、容易にロボットの作業点を計測することができる。したがって、ロボット12を制御してハンド15を指定点にガイドすることが容易である。
【0041】
なお、本例では計測機器としてレーザ測定器を使用するようにしたが、この例に限らず、計測対象の3次元座標が計測できるものであればよい。
【0042】
次に、上記ロボット位置計測システムによるロボット位置の計測処理について、図4〜図6を参照して説明する。図4は計測処理を示したフローチャートであり、図5Aは本システムが採用された製造ラインの例を示し、図5Bは図5Aの要部の拡大図である。また、図6は図5Aに示す製造ラインの1工程終了後の状態を示したものである。
【0043】
図4のフローチャートにおいて、まず、本例のロボット位置計測システムが採用された製造ラインで、情報処理装置は指定された全工程の作業が終了したかどうかを判定する(ステップS1)。全工程が終了している場合、計測処理を終了する。一方、全工程が終了していない場合は、搬送台車を次工程の所定の停止位置に停止させる(ステップS2)。搬送台車の停止誤差、搬送台車(車両)の傾きは、搬送台車上に計測機器が固定設置されていることによって構造的に吸収される。
【0044】
製品の製造工程毎に搬送台車の停止位置が決められている。図5Aの例では、Aブロック工程に搬送台車23が、Bブロック工程に搬送台車22が、Cブロック工程に搬送台車21が所定の位置で停止している例としている。以下では、搬送台車23に注目して説明するが、その他の搬送台車においても同様である。
【0045】
次に、搬送台車23上に固定設置された計測機器27により、車両原点、x軸既定点及びy軸既定点を計測し、車両座標系(製品設計座標系)を設定する(ステップS3)。このように、各工程において車両座標系を設定することにより、複数車種の車両が同じ製造ライン上を流れている場合に対応することができる。勿論、同一車種の車両のみが流れている場合には、車両座標を各工程で毎回計測・設定する必要はない。続いて、その車両座標系上で、ロボット31の1工程における指定点(設計指定位置)をデータベースから順に読み出し、設定する(ステップS4)。
【0046】
図7は、データベースに登録された指定点一覧表の例を示したものである。図7に示すように、指定点は各製造ラインのそれぞれの工程毎に登録され、さらに1つの工程の中でもその工程のブロック内に含まれるロボット毎にそれぞれの指定点が登録されている。ロボットは、この指定点一覧表に基づいて作業を行なう。例えばロボット31は、搬送された車両の第1指定点、第2指定点、第3指定点の3箇所について指定されているので、図5A,Bに示すようにこれら3箇所について作業を行なう。なお、指定点一覧表のフォーマットはこの例に限るものではない。
【0047】
そして、指定点一覧表に登録された1工程内における各ロボットの全指定点について、作業が終了したかどうかを判定する(ステップS5)。1つの工程の全作業が終了している場合、ステップS1に移行し、製造の全工程が終了したかどうかを再度判断し、終了していなければ搬送台車23を次のBブロック工程の停止位置に停止させて(図6参照)、計測処理を継続する。一方、全工程が終了していない場合には、ロボット作業開始原点、x軸既定点及びy軸既定点の座標を計測し、ロボット31のロボット座標系を設定する(ステップS6)。続いて、ロボット初期動作として、ロボット31をロボット作業開始原点(図2参照)に移動する(ステップS7)。
【0048】
ここで、ロボットの動作が終了したかどうかを判定する(ステップS8)。つまり、1つの工程において、1つのロボットが行なうべき作業が完了したかどうかを確認する。例えば、Aブロック工程のロボット31が第1〜第3指定点までの全作業を終了したかどうかを判断する。そして、ロボット31が動作終了の場合、ステップS5へ移行し、再度指定点一覧表の1工程の作業が全て終了したかどうかを確認する。ステップS5の判断ステップにおいて、1工程の作業が終了していない場合、計測機器27の計測対象をロボット32へ変更し、ロボット32の作業を継続する。このように、ロボット33,34,35,36と順に所定の作業を行い、1工程の作業を終了させる。
【0049】
一方、ロボット動作が終了していない場合、例えば図5Aにおいてロボット31が第2指定点の作業を終了していない場合、ロボット31を作動させる(ステップS9)。そして、計測装置27は、ロボット31のマーカーにレーザ光を照射して作業点を3次元計測する(ステップS10)。
【0050】
情報処理装置は、計測機器からハンドのマーカー位置の計測結果を受信し、その計測結果よりロボットの作業点と指定点との誤差を計算し、どのくらい補正が必要かを判断する(ステップS11)。例えば、予め許容する誤差量を設定しておき、実際の計測で得られた誤差が許容する誤差量を超えるかどうかで判断するようにしてもよい。実際の誤差が許容値より小さい場合、ロボットの補正は不要であるとしてステップS8の判断ステップに移行し、ロボット動作が終了したかどうかを再度確認する。
【0051】
一方、補正処理が必要と判断した場合には、情報処理装置からロボットに対し補正指令を出す。ロボットは、情報処理装置からの補正指令を受けて、作業点と設計指定位置(指定点)との差異分だけロボットを制御し、ハンドのマーカーの位置を設計指定位置に一致させるようにする(ステップS12)。なお、ロボット側では、情報処理装置で計算された車両座標系の補正情報がロボット座標系の補正情報へ変換されたものを使用して補正処理を行なう。
【0052】
ステップS12における補正処理が終了後、ステップS11に移行し、再度ロボット位置の補正が必要かどうかを判断する。例えば、一度の補正処理で完全には補正できなかった場合、ロボットの作業点が指定点に一致するまで補正処理の要否を監視する。
【0053】
上述した構成によれば、搬送台車上の所定位置に計測機器を固定設置したので、車両座標系(製品設計座標系)と計測機器座標系を一致させることができる。それによって実作業に近い環境でロボット位置を高精度に計測できるとともに、計測後の補正計算が簡素化される。例えば、ロボット先端のハンドの傾きによる重心の偏心、ロボットアームのたわみなど実状態を反映した測定が行える。また、ロボット設置誤差、搬送台車の停止位置の誤差を吸収することができる。さらに、搬送レールのゆがみを吸収することができる。このように、各部の誤差やゆがみ等を吸収でき、かつ計算対象の座標系が少ないので、補正計算が簡素化され、補正計算に要する時間を短縮することができる。
【0054】
また、上述の構成によれば、計測作業の効率化が図れるという効果がある。例えば、計測用にケガキを入れた製品を用意する必要がなく、指定点一覧表を作成する等の軽微な前作業のみで済ませることができる。また、手作業による計測を行う必要がない。したがって、製造ラインの操業停止時間を最小限にすることができる。
【0055】
さらに、製造ラインや作業対象製品が変更になっても、従来のようにその都度計測機器の設置位置を変更する作業が必要ないため、指定点一覧表を作成しておくだけで製品の種類を問わず対応することができる。また、計測機器自体は一般的なものであり、搬送台車に固定するだけでほとんどのロボット等に対応することができる。また、計測準備が簡単なため、定期的な点検計測が実施できる。
【0056】
また、計測時に作業員がロボットのアームの可動範囲内に入ることがなくなるので、安全性が向上する。
【0057】
次に、本発明の他の実施の形態の例について、図8及び図9を参照して説明する。
図8は、本例のロボット位置計測システムの概念を示す図である。図8において、図1に対応する部分については同一符号を付してある。図8の例では、図1及び図2に示したロボット位置計測システムに対して、第1の計測機器11に加え、搬送台車上に後述する第2の計測機器を追設し、追設した計測機器のレーザ入出力点41よりレーザを出射し、各計測ポイントの3次元計測を行なう。これにより、第1の計測機器11による第1の計測機器座標系と、第2の計測機器による第2の計測機器座標系を車両座標系に一致させるようにしている。
【0058】
図9は、図8に示したロボット位置計測システムの概念を具現化した例を示す模式図である。本例は、図2に示すロボット位置計測システムに対し、搬送台車10の後部に第2の計測機器42を設けるようにしたものである。搬送台車10に2台の計測機器11,42を固定設置し、それぞれ計測機器11,42を車両座標系(製品設計座標系)に設置する。すなわち、それぞれの計測機器による計測機器座標系と車両座標系(製品設計座標系)を一致させる。このとき、計測機器11と同様に、計測機器42を搬送台車上の所定位置に設置し、車両座標系との整合性を正確に取るようにする。
【0059】
上述した構成によると、搬送台車10上に固定設置した2台の計測機器11,42を使用して作業点等、各計測ポイントの3次元計測を行うことにより、2つの計測機器から得られる計測結果を用いて作業点と指定点との誤差を計算することができ、ロボットのハンド位置の誤差を高い精度で計算できる。したがって、ロボットの補正処理が精度良く行える。
【0060】
また、ロボットに取り付けられている器具が障害になり、計測機器の設置場所によっては計測ポイントを計測できない場合もあるので、計測機器を1台追設して2台にすることでそのような問題を解決することができる。その他、図8及び図9の例は、図1〜図7の計測機器が1台の場合と同様の作用効果を奏する。
【0061】
なお、上述した実施の形態では、計測機器としてレーザ測定器を用いたが、CCD(Charge Coupled Devices)カメラ等の画像処理装置を用いることもできる。例えば、図8において、2台目の計測機器としてCCDカメラを設置してもよい。また、レーザ測定器とCCDカメラを一体構成とすると、計測機器を1台設置するだけで済み、省スペース化が図れる。さらに、計測機器を2台設置して状況に応じて選択的に使用するようにしてもよい。
【0062】
本発明は上述した実施の形態の例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を取り得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施の形態によるシステム概念図である。
【図2】本発明の一実施の形態によるシステム模式図である。
【図3】本発明の一実施の形態による計測機器の一例を示した図である。
【図4】本発明の一実施の形態による計測処理のフローチャートである。
【図5】本発明の一実施の形態による計測処理の説明に供する図(1)である。
【図6】本発明の一実施の形態による計測処理の説明に供する図(2)である。
【図7】本発明の一実施の形態による指定点一覧表の一例である。
【図8】本発明の他の実施の形態によるシステム概念図である。
【図9】本発明の他の実施の形態によるシステム模式図である。
【図10】従来例の説明に供する図である。
【図11】他の従来例のシステム模式図である。
【図12】他の従来例の説明に供する図である。
【符号の説明】
【0064】
1,41…レーザ入出力点、2…車両原点、3…x軸既定点、4…y軸既定点、5…ロボット作業開始原点、6…x軸既定点、7…y軸既定点、8…作業点、8a…マーカー、9…指定点、10,21,22,23,24…搬送台車、11,25,26,27,28,42…計測機器、12,31,32,33,34,35,36…ロボット、13…基台、14…アーム、15…ハンド、16…センサ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品搬送台車、ロボット位置計測システム及びその計測方法に関し、例えば自動車生産工場等の製造ラインにおける製品搬送台車、その製品搬送台車で搬送されてくる製品に対して作業するロボットの作業部の位置を計測するロボット位置計測システム及びその計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車生産工場などの製造ラインで多数用いられている産業用ロボットは、ロボット先端部に設けられたいわゆるハンドと呼ばれる作業部により、作業対象製品あるいは作業に必要な部品等を吸着又は把持して保持し、切削、ネジ締め、溶接等の様々な作業を実行可能とされている。ハンドはアームによって3次元的に移動可能となっている。また、アームは、ロボット設置領域あるいはロボット作業領域といわれる所定領域に作業対象製品が搬送されてくる毎に、作業空間内の予め複数定められた設計指定位置(「ティーチング位置」ともいう。)へハンドが順次移動するように駆動される。これにより、搬送台車に載り順次搬送されてくる作業対象製品に対し、予め定められた種々の作業が行われる。
【0003】
ロボットのハンドの移動目標とすべき設計指定位置は、コンピュータを利用して正確な解析及びシミュレーションが行われる。そして、これらの処理を経てデータ化された後、そのデータを使用して所定のプログラムに従い作業が実行される。しかし、ロボットが設置されている環境によって、実際にロボットが作業する位置(以下、作業位置ともいう。)と上記設計指定位置との間にずれが生じることがある。
【0004】
例えば、ロボットの高速化に伴う軽量化によってロボットのアーム等の剛性が低下した場合や、溶接ガンのような重心が偏心している重量物がロボットの一部に取り付けられた場合など、データ化の前提とした条件が実際の状況と合わないことがある。さらに、一般にロボットの駆動を制御するために内在しているサーボモータ等の駆動データから設計指定位置を算出しているが、これらはロボットが所定位置に正確に設置され、かつ、搬送台車が正確に敷設された搬送レール上の規定の位置へ正確に停止することが前提である。しかし、搬送台車が必ずしも規定の停止位置に正確に停止せず、設計指定位置と実際にロボットが作業する位置にずれが生じてしまう場合がある。この他に、ずれが生じる他の要因として、搬送レールの傾きやねじれ等による誤差等の理由が考えられる。
【0005】
したがって、ロボットを作業対象製品の設計指定位置に移動して正確に作業を行なわせるためには、設計指定位置とロボットの作業位置とのずれ量を計算し、ロボットのハンドが設計指定位置に正しく移動するよう、ずれ量に応じた補正を行う必要がある。
【0006】
ロボットのハンドが設計指定位置へ正確に移動するかどうかを計測する方法の1つに、作業対象製品と同形状の製品を用意し、その製品に対して設計指定位置にケガキを入れるなどし、そのケガキ位置とロボットの作業位置との誤差を手作業で実測する方法がある。
【0007】
上記手作業による計測の例を、図10A,Bを参照して説明する。まず、図10Aに示すように、搬送台車101に作業対象の車両102を載置し、不図示の搬送レール上を搬送して搬送台車101を決められた停止位置に停止させる。ロボット103はアーム104を自在に駆動し、その先端部のハンド105を予め車両102にケガキしておいた設計指定位置106へ移動させる。ロボット103は、搬送台車101の座標系上に設定されている車両原点107を移動の際の基準として、ハンド105の位置を決定している。
【0008】
図10Bは、図10Aの破線で囲まれた要部を拡大したものである。ケガキしておいた設計指定位置106と、ロボットの作業点105aとの距離L及び位置関係を計測する。そして、その計測結果に基づいて、設計指定位置106とロボットの位置との誤差を計算し、誤差を補正する。ハンド105が設計指定位置106に正確に停止したかどうかは、その誤差量で判断することができる。
【0009】
次に、上述した手作業による計測方法の他の方法として、3次元座標計測を行なう計測機器を利用した方法について説明する。計測機器を用いたロボット位置計測システムの例を、図11に示す。このシステムでは、製造ラインの外側に例えばレーザ測定器等からなる計測機器110が設置されている。そして、床の所定位置にロボット112の基台113が固定され、ロボット112が設置される。ロボット112はアーム114を備え、アーム先端部のハンド115に3次元計測用のマーカー120aが設置される。計測機器110は、レーザ入出力点111よりレーザを出射し、ロボット112に設けられたマーカーで反射するレーザ光を解析する。マーカー120aを3次元計測し、車両原点116を座標原点とするロボット112の作業点座標を取得する。
【0010】
図12は、図11に示したシステムにおける座標系を表した図である。図12に示すように、ロボット112の作業空間は、計測機器110が属する計測機器座標系、車両原点116を座標原点とする車両座標系、ロボットが作業を開始する際の基準となるロボット作業開始原点119を座標原点とするロボット座標系に分けられる。ロボット先端部のハンド115の位置を表す作業点120は計測機器座標系に属し、移動及び補正の際にはロボット座標系で制御される。また、ロボット112が作業すべき設計指定位置を表す指定点121は車両座標系に属する。
【0011】
計測機器110を製造ラインの外側に設置したシステムの場合、ロボット座標系とロボットの作業点120、搬送台車101の停止基準点を含む車両座標系(製品設計座標系)を三次元計測することによって、ロボットの作業点120と指定点121との差異を計算し、ハンド115の必要な補正量をロボット座標系で算出することができる。
【0012】
例えば、作業点120の座標を(Rx,Ry,Rz)、指定点121の座標を(Px,Py,Pz)、そして作業点120と指定点121のオフセット量をΔとすると、
指定点121の座標(Px,Py,Pz)は、次式で表される。
【0013】
【数1】
ただし、θ:作業点120を基準とした指定点121の仰角
φ:作業点120を基準とした指定点121の方向角
【0014】
他方、特許文献1には、自動車ボディ組立工程に、3次元の被計測物の形状を計測可能な3次元計測装置を組み込んだオンラインでの3次元計測システムが記載されている。
【特許文献1】特開2003−315023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上述の手作業による計測方法では、ロボットがティーチング位置に正確に停止したかどうかは、車両にケガキされた設計指定位置106とハンド105の作業点105aの位置を実測する必要がある。しかし、手作業による作業のために、設計指定位置106と作業点105aの位置を測る3次元計測の信頼性に問題があった。また、計測用にケガキを入れた製品を用意するなど前作業が面倒であり、かつ、数多くの作業点を手作業で測定し、その結果に基づき補正を行なうため、製造ラインの操業停止時間が長くなるという問題があった。さらに、上記計測結果に基づくロボット側の制御操作による補正は、作業者の勘によるところが多く、ロボット座標系と車両座標系が正確に一致しないという問題があった。またさらに、例えば自動車の車種が変更になると計測をやり直すというように、製品毎、ロボット毎に計測を行なう必要があり煩雑であるという問題があった。
【0016】
また、手作業による計測方法は、作業者が作業対象製品やロボットに近づいて作業するため、ロボットのアーム104やハンド105が作業者に当たらないよう十分に考慮する必要があった。
【0017】
一方、計測機器を利用した計測方法では、多くの計測ポイントを計測する必要があった。すなわち、1つの座標系を決定するには計測ポイントが3点以上必要であるが、車両座標系、ロボット座標系、計測機器座標系と3つの座標系があり、座標系の数だけ計測ポイントが増え、計算処理量も多くなる。また、計測機器を製造ライン外側の所定位置に正確に設置するための準備に時間がかかり、製造ラインの操業停止時間が長くなるという問題があった。
【0018】
また、計測機器を製造ラインの外側に設けた場合、各計測ポイントを計測した後の補正計算が複雑であるという問題があった。例えば、車両座標系、ロボット座標系等、それぞれに誤差要因があり、作業点を計測した後、その各々の誤差要因を考慮して補正計算しなければならなかった。また、作業点120は計測機器座標系にあるが制御はロボット座標系で行われ、一方指定点121は車体座標に属するので、これらの座標系間の変換処理が複雑であった。
【0019】
さらに、多くのロボットが稼動する狭く混雑した空間では、ロボット同士の重なり、あるいはロボット自身の動作によって計測機器から作業点までの見通しを確保することが難しくなる。さらにまた、近年では製品のライフサイクルが短くなっており、その都度新製品に合わせて計測機器の設置位置等の変更が必要である。そのため、同一の製造ラインにおける多品種製造や製造ラインの変更に対し迅速な対応が困難であるという問題があった。
【0020】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、上述の諸問題を解決し、製造ラインにおけるロボットの作業点を高精度で計測するとともに、作業性及び安全性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、製品製造用ロボットの作業対象製品を搬送する製品搬送台車に対し、その所定部分にロボットの作業部の位置を計測する計測手段を固定設置したことを特徴とする。
【0022】
上述した構成によれば、計測手段が作業対象製品と一体に移動するので、計測手段が属する計測手段座標系と、製品及び製品搬送台車が属する製品設計座標系を1つの座標系に統一することができる。
【0023】
また、本発明は、上述の製品搬送台車によって搬送される作業対象製品の設計指定位置を目標にして製品製造用のロボットの作業部を移動させ、その製品搬送台車に固定設置された計測手段により上記ロボットの作業部の位置を計測し、計測された上記ロボットの作業部の位置と上記設計指定位置との誤差を計算し、上記誤差に基づいて上記設計指定位置に一致するよう上記ロボットの作業部の位置を補正することを特徴とする。
【0024】
上述した構成によれば、計測手段と製品搬送台車を一体に移動させて、計測手段が属する計測手段座標系と、製品及び製品搬送台車が属する製品設計座標系を1つの座標系として処理するようにしている。これによって、実作業に近い環境で、かつ、各部のたわみや誤差等を吸収した状態で計測することができる。また、計測手段座標系と製品設計座標系を1つの座標系として処理できることにより、ロボットの作業部の位置を計測した後の補正計算が簡素化される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、計測手段と製品搬送台車を一体に移動させ、計測手段が属する計測手段座標系と、製品及び製品搬送台車が属する製品設計座標系を1つの座標系として処理するようにしたことにより、ロボットの作業部の位置が実作業に近い環境で、かつ、各部のたわみや誤差等を吸収した状態で計測されるので、高精度な計測結果を得ることができる。また、計測手段座標系と製品設計座標系を1つの座標系として処理できることにより、ロボットの作業部の位置を計測した後の補正計算が簡素化されるので、計算時間が短縮できるという効果がある。
【0026】
また、ケガキを入れた製品を用意するなど計測のための前準備が少なく、更に製造ラインや作業対象製品の変更に伴う計測手段の設置場所変更を必要としないため、製造ラインの操業停止時間を最小限に抑えることができる。このように、計測作業の効率化が図れるという効果がある。
【0027】
また、計測時に作業員がロボットのアームの可動範囲内に入ることがなくなるので、安全性が向上するという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態の例につき、図1〜図7を参照して説明する。
まず、ロボット位置計測システムの構成について説明する。本例では、製品製造用ロボット(以下、単に「ロボット」と称する。)の作業部の位置を精密に計測・補正するロボット位置計測システムを自動車の製造ラインに適用した例としている。なお、搬送台車により搬送されてくる作業対象の製品に対して、製品設計に基づき所定の作業を行なうロボットを使用した製造ラインであれば、この例に限らず、任意の製品の製造ラインについて適用することができる。
【0029】
図1は、本例のロボット位置計測システムの概念を示す図である。図1に示すように、ロボットの作業空間は、ロボットの位置を3次元計測する計測機器(計測手段)が属する計測機器座標系と、搬送台車と一体に移動する車両に対して設定され車両原点2を座標原点とする車両座標系と、ロボットが移動する際の基準となるロボット作業開始原点5を含むロボット座標系が存在している。車両座標系は製品を設計する際の基準となる座標系であり、製品設計座標系ともいう。また、作業点8は、ロボットが設計指定位置を目標に移動して実際に作業を行う位置を表し、計測機器座標系に属する。指定点9は、ロボットが作業すべき設計指定位置を表し、車両座標系に属する。
【0030】
x軸既定点3及びy軸既定点4は、それぞれ車両原点2からx方向あるいはy方向にある距離だけ離れた位置にあり、車両座標系のxy平面を決定するために予め任意に設定される座標である。例えば、x軸既定点3の座標を(1,0,0)、y軸既定点4の座標を(0,1,0)などとして、車両原点2の座標(0,0,0)と合わせた3点でxy平面を決定する。同様に、x軸既定点6、y軸既定点7、及びロボット作業開始原点5の3点によりロボット座標系のxy平面が決定される。
【0031】
本発明においては、計測機器を搬送台車上に搭載し、計測機器が作業対象の車両と一体に移動可能な構成とすることにより、上記計測機器座標系と上記車両座標系(製品設計座標系)を1つの座標系として処理することができるので、作業点と指定点の座標を車両座標系における座標として計測することができる。そして、ロボットの作業点を補正する際には、補正値を車両座標系からロボット座標系へ変換し、ロボット座標系で制御する。
【0032】
図2は、図1に示すロボット位置計測システムの概念を具現化した例を示す模式図である。図2に示すように、本例は、不図示の車両を各工程に搬送する剛性の保たれた搬送台車10に1台の計測機器11を固定設置し、計測機器11を車両座標系(製品設計座標系)に設置する。すなわち、計測機器座標系と車両座標系(製品設計座標系)を一致させる。このとき、計測機器11の設置に関しては、計測機器11を搬送台車上の所定位置に設置し、車両座標系との整合性を正確に取ることが必須である。すなわち、計測機器11による計測機器座標系のx,y,zの各軸を、車両座標系の各軸と平行になるように設置する。
【0033】
さらに、不図示の搬送レールが敷設されている床面の所定位置に基台13を固定し、その上にロボット12を設置する。なお、各車両は、各搬送台車の製品設計上決められた位置に載置されて搬送されることは勿論である。
【0034】
ロボット12は一端が基台13に固定されたアーム14を備え、アーム先端部のハンド15に計測用のマーカー8aが設けられる。マーカーは、ロボットの作業点を計測するための目印のようなものであり、レーザ光を反射する素材でできた球形の物体が採用される。さらに、本システムは、計測機器11及びロボット12とワイヤレス等で接続され、システム全体の制御を司る不図示のコンピュータからなる情報処理装置(制御手段)を備える。情報処理装置は、本システムを実現するプログラムと、各工程における指定点が登録されたデータベースが保存されている不揮発性メモリを備えている。
【0035】
まず、ロボット12を、ロボット作業開始原点5、x軸既定点6、y軸既定点7と移動させる。このとき、計測機器11は搬送台車10上から、上記3点に移動したときのハンド15のマーカー8aを3次元計測して、ロボット座標系を入手する。また、ロボット12のハンド15が作業を行なう作業点8を計測する。
【0036】
ロボット12のハンド15の位置を3次元計測するには、計測機器11のレーザ入出力点1よりレーザを出射して、ハンド15に設けられたマーカー8aのミラーで反射したレーザ光を受光する。そして、計測機器11にて受光した反射光を解析し、その解析結果を情報処理装置へ送信する。
【0037】
また、情報処理装置は、受信した反射光の解析結果からマーカー8aの位置、すなわち車両座標系における作業点8の座標を取得する。そして、取得した作業点8の座標とデータベースに登録された指定点の座標との誤差を計算する。その結果に基づいてロボット12の補正量及び補正方向を計算する。情報処理装置は、補正量及び補正方向からなる補正情報を車両座標系(製品設計座標系)からロボット座標系の情報に換算して、ロボット12に補正指示を出す。ロボット12は、情報処理装置からの移動指示に従って、ハンド15の位置を補正し、溶接、ネジ締め、切削等、所定の作業を行う。なお、補正情報の車両座標系からロボット座標系への変換処理は、ロボット12で行なうようにしてもよい。
【0038】
一般に、作業工程の1ブロック内において、一つの車両に対し搬送台車を挟んで両側から複数のロボットによる作業が行われる。図2の例のように、計測機器11を搬送台車10の搬送方向に沿う中心線上かつその前部に設けた場合、ロボット同士のアームの重なりが減少するなどして、計測機器11から各ロボットに設けられたマーカーまでの見通しが良くなる。したがって、計測機器11から各ロボットのマーカーの位置を良好に計測できるようになる。なお、搬送台車10上の計測機器11を設置する位置は、計測機器11から各ロボットのマーカーを良好に見通すことができる位置であって、計測の支障とならない位置であれば、搬送台車10の中心線上の後部等、任意の位置に設置することができる。
【0039】
ここで、本システムの計測機器として用いられているレーザ測定器について説明する。
図3は、レーザ測定器の例を示した外観図である。図3に示すように、レーザ測定器11は、搬送台車10に固定される固定部17と、中心にセンサ部16が配置された回動部18から構成されている。回動部18(及びそれに設けられたセンサ部16)は固定部17を軸受けとして利用しxy平面上を旋回するとともに、xy平面に垂直なz軸方向へ回動できる構造となっている。センサ部16のレーザ入出力点1から出射されたレーザ光は、ロボットの作業点を計測するために設けられたマーカー8aで反射される。そして、計測機器11はレーザ入出力点1から反射光を受光し、解析処理を行なう。
【0040】
レーザ測定器11は、反射光を解析することでマーカー8aを追尾測定できるよう構成されているので、容易にロボットの作業点を計測することができる。したがって、ロボット12を制御してハンド15を指定点にガイドすることが容易である。
【0041】
なお、本例では計測機器としてレーザ測定器を使用するようにしたが、この例に限らず、計測対象の3次元座標が計測できるものであればよい。
【0042】
次に、上記ロボット位置計測システムによるロボット位置の計測処理について、図4〜図6を参照して説明する。図4は計測処理を示したフローチャートであり、図5Aは本システムが採用された製造ラインの例を示し、図5Bは図5Aの要部の拡大図である。また、図6は図5Aに示す製造ラインの1工程終了後の状態を示したものである。
【0043】
図4のフローチャートにおいて、まず、本例のロボット位置計測システムが採用された製造ラインで、情報処理装置は指定された全工程の作業が終了したかどうかを判定する(ステップS1)。全工程が終了している場合、計測処理を終了する。一方、全工程が終了していない場合は、搬送台車を次工程の所定の停止位置に停止させる(ステップS2)。搬送台車の停止誤差、搬送台車(車両)の傾きは、搬送台車上に計測機器が固定設置されていることによって構造的に吸収される。
【0044】
製品の製造工程毎に搬送台車の停止位置が決められている。図5Aの例では、Aブロック工程に搬送台車23が、Bブロック工程に搬送台車22が、Cブロック工程に搬送台車21が所定の位置で停止している例としている。以下では、搬送台車23に注目して説明するが、その他の搬送台車においても同様である。
【0045】
次に、搬送台車23上に固定設置された計測機器27により、車両原点、x軸既定点及びy軸既定点を計測し、車両座標系(製品設計座標系)を設定する(ステップS3)。このように、各工程において車両座標系を設定することにより、複数車種の車両が同じ製造ライン上を流れている場合に対応することができる。勿論、同一車種の車両のみが流れている場合には、車両座標を各工程で毎回計測・設定する必要はない。続いて、その車両座標系上で、ロボット31の1工程における指定点(設計指定位置)をデータベースから順に読み出し、設定する(ステップS4)。
【0046】
図7は、データベースに登録された指定点一覧表の例を示したものである。図7に示すように、指定点は各製造ラインのそれぞれの工程毎に登録され、さらに1つの工程の中でもその工程のブロック内に含まれるロボット毎にそれぞれの指定点が登録されている。ロボットは、この指定点一覧表に基づいて作業を行なう。例えばロボット31は、搬送された車両の第1指定点、第2指定点、第3指定点の3箇所について指定されているので、図5A,Bに示すようにこれら3箇所について作業を行なう。なお、指定点一覧表のフォーマットはこの例に限るものではない。
【0047】
そして、指定点一覧表に登録された1工程内における各ロボットの全指定点について、作業が終了したかどうかを判定する(ステップS5)。1つの工程の全作業が終了している場合、ステップS1に移行し、製造の全工程が終了したかどうかを再度判断し、終了していなければ搬送台車23を次のBブロック工程の停止位置に停止させて(図6参照)、計測処理を継続する。一方、全工程が終了していない場合には、ロボット作業開始原点、x軸既定点及びy軸既定点の座標を計測し、ロボット31のロボット座標系を設定する(ステップS6)。続いて、ロボット初期動作として、ロボット31をロボット作業開始原点(図2参照)に移動する(ステップS7)。
【0048】
ここで、ロボットの動作が終了したかどうかを判定する(ステップS8)。つまり、1つの工程において、1つのロボットが行なうべき作業が完了したかどうかを確認する。例えば、Aブロック工程のロボット31が第1〜第3指定点までの全作業を終了したかどうかを判断する。そして、ロボット31が動作終了の場合、ステップS5へ移行し、再度指定点一覧表の1工程の作業が全て終了したかどうかを確認する。ステップS5の判断ステップにおいて、1工程の作業が終了していない場合、計測機器27の計測対象をロボット32へ変更し、ロボット32の作業を継続する。このように、ロボット33,34,35,36と順に所定の作業を行い、1工程の作業を終了させる。
【0049】
一方、ロボット動作が終了していない場合、例えば図5Aにおいてロボット31が第2指定点の作業を終了していない場合、ロボット31を作動させる(ステップS9)。そして、計測装置27は、ロボット31のマーカーにレーザ光を照射して作業点を3次元計測する(ステップS10)。
【0050】
情報処理装置は、計測機器からハンドのマーカー位置の計測結果を受信し、その計測結果よりロボットの作業点と指定点との誤差を計算し、どのくらい補正が必要かを判断する(ステップS11)。例えば、予め許容する誤差量を設定しておき、実際の計測で得られた誤差が許容する誤差量を超えるかどうかで判断するようにしてもよい。実際の誤差が許容値より小さい場合、ロボットの補正は不要であるとしてステップS8の判断ステップに移行し、ロボット動作が終了したかどうかを再度確認する。
【0051】
一方、補正処理が必要と判断した場合には、情報処理装置からロボットに対し補正指令を出す。ロボットは、情報処理装置からの補正指令を受けて、作業点と設計指定位置(指定点)との差異分だけロボットを制御し、ハンドのマーカーの位置を設計指定位置に一致させるようにする(ステップS12)。なお、ロボット側では、情報処理装置で計算された車両座標系の補正情報がロボット座標系の補正情報へ変換されたものを使用して補正処理を行なう。
【0052】
ステップS12における補正処理が終了後、ステップS11に移行し、再度ロボット位置の補正が必要かどうかを判断する。例えば、一度の補正処理で完全には補正できなかった場合、ロボットの作業点が指定点に一致するまで補正処理の要否を監視する。
【0053】
上述した構成によれば、搬送台車上の所定位置に計測機器を固定設置したので、車両座標系(製品設計座標系)と計測機器座標系を一致させることができる。それによって実作業に近い環境でロボット位置を高精度に計測できるとともに、計測後の補正計算が簡素化される。例えば、ロボット先端のハンドの傾きによる重心の偏心、ロボットアームのたわみなど実状態を反映した測定が行える。また、ロボット設置誤差、搬送台車の停止位置の誤差を吸収することができる。さらに、搬送レールのゆがみを吸収することができる。このように、各部の誤差やゆがみ等を吸収でき、かつ計算対象の座標系が少ないので、補正計算が簡素化され、補正計算に要する時間を短縮することができる。
【0054】
また、上述の構成によれば、計測作業の効率化が図れるという効果がある。例えば、計測用にケガキを入れた製品を用意する必要がなく、指定点一覧表を作成する等の軽微な前作業のみで済ませることができる。また、手作業による計測を行う必要がない。したがって、製造ラインの操業停止時間を最小限にすることができる。
【0055】
さらに、製造ラインや作業対象製品が変更になっても、従来のようにその都度計測機器の設置位置を変更する作業が必要ないため、指定点一覧表を作成しておくだけで製品の種類を問わず対応することができる。また、計測機器自体は一般的なものであり、搬送台車に固定するだけでほとんどのロボット等に対応することができる。また、計測準備が簡単なため、定期的な点検計測が実施できる。
【0056】
また、計測時に作業員がロボットのアームの可動範囲内に入ることがなくなるので、安全性が向上する。
【0057】
次に、本発明の他の実施の形態の例について、図8及び図9を参照して説明する。
図8は、本例のロボット位置計測システムの概念を示す図である。図8において、図1に対応する部分については同一符号を付してある。図8の例では、図1及び図2に示したロボット位置計測システムに対して、第1の計測機器11に加え、搬送台車上に後述する第2の計測機器を追設し、追設した計測機器のレーザ入出力点41よりレーザを出射し、各計測ポイントの3次元計測を行なう。これにより、第1の計測機器11による第1の計測機器座標系と、第2の計測機器による第2の計測機器座標系を車両座標系に一致させるようにしている。
【0058】
図9は、図8に示したロボット位置計測システムの概念を具現化した例を示す模式図である。本例は、図2に示すロボット位置計測システムに対し、搬送台車10の後部に第2の計測機器42を設けるようにしたものである。搬送台車10に2台の計測機器11,42を固定設置し、それぞれ計測機器11,42を車両座標系(製品設計座標系)に設置する。すなわち、それぞれの計測機器による計測機器座標系と車両座標系(製品設計座標系)を一致させる。このとき、計測機器11と同様に、計測機器42を搬送台車上の所定位置に設置し、車両座標系との整合性を正確に取るようにする。
【0059】
上述した構成によると、搬送台車10上に固定設置した2台の計測機器11,42を使用して作業点等、各計測ポイントの3次元計測を行うことにより、2つの計測機器から得られる計測結果を用いて作業点と指定点との誤差を計算することができ、ロボットのハンド位置の誤差を高い精度で計算できる。したがって、ロボットの補正処理が精度良く行える。
【0060】
また、ロボットに取り付けられている器具が障害になり、計測機器の設置場所によっては計測ポイントを計測できない場合もあるので、計測機器を1台追設して2台にすることでそのような問題を解決することができる。その他、図8及び図9の例は、図1〜図7の計測機器が1台の場合と同様の作用効果を奏する。
【0061】
なお、上述した実施の形態では、計測機器としてレーザ測定器を用いたが、CCD(Charge Coupled Devices)カメラ等の画像処理装置を用いることもできる。例えば、図8において、2台目の計測機器としてCCDカメラを設置してもよい。また、レーザ測定器とCCDカメラを一体構成とすると、計測機器を1台設置するだけで済み、省スペース化が図れる。さらに、計測機器を2台設置して状況に応じて選択的に使用するようにしてもよい。
【0062】
本発明は上述した実施の形態の例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を取り得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施の形態によるシステム概念図である。
【図2】本発明の一実施の形態によるシステム模式図である。
【図3】本発明の一実施の形態による計測機器の一例を示した図である。
【図4】本発明の一実施の形態による計測処理のフローチャートである。
【図5】本発明の一実施の形態による計測処理の説明に供する図(1)である。
【図6】本発明の一実施の形態による計測処理の説明に供する図(2)である。
【図7】本発明の一実施の形態による指定点一覧表の一例である。
【図8】本発明の他の実施の形態によるシステム概念図である。
【図9】本発明の他の実施の形態によるシステム模式図である。
【図10】従来例の説明に供する図である。
【図11】他の従来例のシステム模式図である。
【図12】他の従来例の説明に供する図である。
【符号の説明】
【0064】
1,41…レーザ入出力点、2…車両原点、3…x軸既定点、4…y軸既定点、5…ロボット作業開始原点、6…x軸既定点、7…y軸既定点、8…作業点、8a…マーカー、9…指定点、10,21,22,23,24…搬送台車、11,25,26,27,28,42…計測機器、12,31,32,33,34,35,36…ロボット、13…基台、14…アーム、15…ハンド、16…センサ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品製造用ロボットの作業対象製品を搬送する製品搬送台車であって、
前記製品搬送台車の所定部分に、前記ロボットの作業部の位置を計測する計測手段が固定設置されている
ことを特徴とする製品搬送台車。
【請求項2】
前記計測手段は、前記製品搬送台車の搬送方向に沿った中心線上付近に固定設置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の製品搬送台車。
【請求項3】
前記計測手段は、前記製品搬送台車の前部又は後部あるいはその両方に固定設置されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の製品搬送台車。
【請求項4】
前記計測手段で計測された前記ロボットの作業部の位置情報を、当該位置情報と前記作業対象製品の設計指定位置との誤差を計算する制御手段へ送信する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製品搬送台車。
【請求項5】
製品製造用ロボットの作業部の位置を計測するロボット位置計測システムであって、
前記ロボットの作業対象製品を搬送する製品搬送手段と、
前記製品搬送手段の所定部分に固定され前記ロボットの作業部の位置を計測する計測手段と、
前記計測手段で計測された前記ロボットの作業部の位置と設計指定位置との誤差を計算し、前記誤差に基づいて前記ロボットに対し前記作業部の位置を補正するよう指示する制御手段と
から構成されることを特徴とするロボット位置計測システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記計測手段及び前記作業対象製品が属する製品設計座標系で前記誤差を計算し、その誤差に基づいて前記ロボットに対する補正情報を計算し、その補正情報を前記製品設計座標系から前記ロボットが属するロボット座標系の情報に変換して前記ロボットに補正指示を出す
ことを特徴とする請求項5に記載のロボット位置計測システム。
【請求項7】
前記計測手段は、前記製品搬送台車の搬送方向に沿った中心線上付近に固定設置されている
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のロボット位置計測システム。
【請求項8】
前記計測手段は、前記製品搬送台車の前部又は後部あるいはその両方に固定設置されている
ことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のロボット位置計測システム。
【請求項9】
搬送されてきた作業対象製品の設計指定位置を目標にして製品製造用ロボットの作業部を移動させ、
前記作業対象製品を搬送する製品搬送手段に固定設置された計測手段により、前記ロボットの作業部の位置を計測し、
計測された前記ロボットの作業部の位置と前記設計指定位置との誤差を計算し、
前記誤差に基づいて、前記設計指定位置に一致するよう前記ロボットの作業部の位置を補正する
ことを特徴とするロボット位置計測方法。
【請求項10】
前記計測手段及び前記作業対象製品が属する製品設計座標系で前記誤差を計算し、その誤差に基づいて前記ロボットに対する補正情報を計算し、その補正情報を前記製品設計座標系から前記ロボットが属するロボット座標系の情報に変換して前記ロボットに補正指示を出す
ことを特徴とする請求項9に記載のロボット位置計測方法。
【請求項1】
製品製造用ロボットの作業対象製品を搬送する製品搬送台車であって、
前記製品搬送台車の所定部分に、前記ロボットの作業部の位置を計測する計測手段が固定設置されている
ことを特徴とする製品搬送台車。
【請求項2】
前記計測手段は、前記製品搬送台車の搬送方向に沿った中心線上付近に固定設置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の製品搬送台車。
【請求項3】
前記計測手段は、前記製品搬送台車の前部又は後部あるいはその両方に固定設置されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の製品搬送台車。
【請求項4】
前記計測手段で計測された前記ロボットの作業部の位置情報を、当該位置情報と前記作業対象製品の設計指定位置との誤差を計算する制御手段へ送信する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製品搬送台車。
【請求項5】
製品製造用ロボットの作業部の位置を計測するロボット位置計測システムであって、
前記ロボットの作業対象製品を搬送する製品搬送手段と、
前記製品搬送手段の所定部分に固定され前記ロボットの作業部の位置を計測する計測手段と、
前記計測手段で計測された前記ロボットの作業部の位置と設計指定位置との誤差を計算し、前記誤差に基づいて前記ロボットに対し前記作業部の位置を補正するよう指示する制御手段と
から構成されることを特徴とするロボット位置計測システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記計測手段及び前記作業対象製品が属する製品設計座標系で前記誤差を計算し、その誤差に基づいて前記ロボットに対する補正情報を計算し、その補正情報を前記製品設計座標系から前記ロボットが属するロボット座標系の情報に変換して前記ロボットに補正指示を出す
ことを特徴とする請求項5に記載のロボット位置計測システム。
【請求項7】
前記計測手段は、前記製品搬送台車の搬送方向に沿った中心線上付近に固定設置されている
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のロボット位置計測システム。
【請求項8】
前記計測手段は、前記製品搬送台車の前部又は後部あるいはその両方に固定設置されている
ことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のロボット位置計測システム。
【請求項9】
搬送されてきた作業対象製品の設計指定位置を目標にして製品製造用ロボットの作業部を移動させ、
前記作業対象製品を搬送する製品搬送手段に固定設置された計測手段により、前記ロボットの作業部の位置を計測し、
計測された前記ロボットの作業部の位置と前記設計指定位置との誤差を計算し、
前記誤差に基づいて、前記設計指定位置に一致するよう前記ロボットの作業部の位置を補正する
ことを特徴とするロボット位置計測方法。
【請求項10】
前記計測手段及び前記作業対象製品が属する製品設計座標系で前記誤差を計算し、その誤差に基づいて前記ロボットに対する補正情報を計算し、その補正情報を前記製品設計座標系から前記ロボットが属するロボット座標系の情報に変換して前記ロボットに補正指示を出す
ことを特徴とする請求項9に記載のロボット位置計測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−334731(P2006−334731A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163003(P2005−163003)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000135771)株式会社パスコ (102)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000135771)株式会社パスコ (102)
【Fターム(参考)】
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