説明

複合構造要素の製造方法

【課題】多要素成形品の製造方法に関する。
【解決手段】第1プラスチックフィルムおよび第2プラスチックフィルムをインジェクションモールドの第1キャビティに別々に導入し、第1および第2プラスチックをその間に空隙を形成するように第1キャビティ内にそれぞれ配置する。次いで、空隙に第1熱可塑性材料を注入し、これにより第1成形品を形成する。次いで、第1成形品を金型から外し、第1成形品および少なくとも1つの第2成形品を金型の第2キャビティに一緒に導入する。最後に、第2熱可塑性材料を金型の第2キャビティに注入し、これにより第1成形品および第2成形品を共に組み合わせ、このようにして多要素成形品を形成する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連特許出願の参照
本特許出願は、2005年7月13日に出願したドイツ特許出願第102005032664.1号(その全ては参照することにより本明細書に組み込まれる)に基づき米国特許法第119条(a)〜(d)項の下に優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、射出成形または圧縮射出成形による複合構造要素(または複合構成部材)の製造方法に関する。
【0003】
発明の背景
例えば自動車構造物の窓ガラス等の光学構造要素は大部分がガラスでできているため、これらは非常に良好な表面特性(例えば高いスクラッチ耐性等)を有する。これらの構造要素は高い材料コストを必要とし、また低い組み合わせ可能性を有する。このことは、これらの構造要素を他の成形品と組み合わせるために相当な努力が必要であることを意味する。
【0004】
しかしながら、透明な熱可塑性プラスチックから光学構造要素を製造することが既に知られている。これらはより軽くそしてより好都合であるだけでなく、はるかに容易に他の成形品(例えば金属またはプラスチック要素)と組み合わせることができる。しかしながら、透明な熱可塑性プラスチックの表面のスクラッチ耐性を、例えばラッカー等の保護層によって増加させる必要がある。
【0005】
従来技術によれば、透明な熱可塑性プラスチックの光学成形品でできているそのような複合構造要素は、幾つかの独立した工程で幾つかの別々のデバイスで手間の掛かる方法によって製造される。例えば、初めに射出成形によって透明なプラスチックシートを製造する。次いで、シートを適当なラッカーでコーティングして、その表面のスクラッチ耐性を増加させる。第3工程において、コーティングされたシートに例えば他のインジェクションモールドでシールを供給し、またはシートと例えばガイドレール等の他の成形品とを組み合わせる。
【0006】
発明の概要
本発明の目的は、両側がフィルムでコーティングされているプラスチック成形品および他の成形品から少なくとも構成される複合構造要素の製造方法を提供することである。該方法は、可能な限り簡単である必要があり、また、少ない工程数で実行する必要がある。
【0007】
本発明は、複合構造要素を製造する方法を提供し、該方法は:
(a) 第1プラスチックフィルムおよび第2プラスチックフィルムをインジェクションモールド(又は射出成形金型)の第1キャビティに導入(又は配置)し、第1プラスチックフィルムと第2プラスチックフィルムとの間に空隙を形成するように、第1プラスチックフィルムおよび第2プラスチックフィルムを第1キャビティ内に配置すること;
(b) 空隙に第1熱可塑性材料を(好ましくは溶融状態で)注入し、これにより第1成形品を形成すること;
(c) 工程(b)で形成した第1成形品を第1金型キャビティからリリースし(または離型もしくは解放し:release)、第1成形品および少なくとも1つの第2成形品を同じ又は他のインジェクションモールドに導入すること;ならびに
(d) 第2キャビティに第2熱可塑性材料を(好ましくは溶融状態で)注入し、これにより第1成形品と第2成形品とを組み合わせること(例えば、第1成形品および第2成形品を、注入する第2熱可塑性材料によって、また、第2熱可塑性材料と一緒に一方を他方に固定して取り付けて、多要素成形品を形成すること)
を含んで成る。
【0008】
発明の詳細な説明
本発明の方法を、少なくとも2つのキャビティを有するインジェクションモールドで実施する。本発明の枠内において、簡素化の目的で表現「射出成形」および「インジェクションモールド(または射出成形金型)」を使用するが、これらは、圧縮射出成形および圧縮インジェクションモールドを含むものとする。
【0009】
好ましい態様では、工程(d)において、第2キャビティにおいて第2熱可塑性材料を用いて第1成形品の縁領域でバックモールドのみ行い、その結果、第1成形品には透明な窓領域が残る。
【0010】
第1および第2フィルムは好ましくは透明であり、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)またはポリカーボネート/ポリメチルメタクリレートブレンドで好ましくはできている。2つのフィルムは同じプラスチックまたは異なるプラスチックでできていてよい。フィルムは0.1〜1mmの厚さを好ましくは有する。
【0011】
本方法の好ましい一態様において、これらを工程(a)に従ってインジェクションモールドに導入する前に、第1および第2フィルムを付形、切断、コーティングおよび/または印刷する。好ましくは、第1および第2フィルムをラッカーまたはPMMA層でコーティングする。例えばシロキサンラッカーまたはUV硬化性ラッカー等のハードコートラッカーが特に適している。フィルムコーティング方法は従来技術から既知である。PMMA層による第1および第2フィルムのコーティングは、例えば共押出によって実施することができる。ラッカーは例えば吹き付け(またはスプレーもしくは噴霧)によって適用することができる。コーティングのタイプに依っては、コーティング後にフィルムをもはや付形することができない場合、コーティング前に付形を行う必要がある。付形は、例えば深絞りによって実施する。コーティングおよび深絞りの前に、フィルムをスクリーン印刷用インクによって付加的にプリントすることができる。
【0012】
工程(a)に従って第1および第2フィルムをインジェクションモールドの第1キャビティにそれぞれ導入する。キャビティにおいて離れた状態を維持するようにこれらをそれぞれ導入する。2つのフィルムを従来技術から既知の方法で(例えば機械的に、静電気的に(もしくは帯電させて)又は減圧によって)キャビティに固定することができる。第1および/または第2フィルムが金型の内面(例えば別々の内面)に当接するように(例えば、第1フィルムは第1金型ハーフの内面の少なくとも一部分に当接しており、また、第2フィルムは第2金型ハーフの内面の少なくとも一部分に当接している)、金型の第1キャビティ内にそれぞれ独立して(または独自に若しくは別々に)配置することができる。別法では、第1フィルムおよび/または第2フィルムが金型の内面に当接しないように、金型の第1キャビティ内にそれぞれ独立して配置することができる。更なる別法では、金型の内面とそのように当接する関係及び当接しない関係の組み合わせを、本発明の方法において金型の第1キャビティに第1フィルム及び第2フィルムを配置する場合に用いることができる。
【0013】
第1および第2フィルムを、例えば互いに実質的に平行に配置してよい。第1および第2フィルムの間のギャップは金型の第1キャビティに空隙をもたらし(または形成し)、工程(b)においてこの中に第1熱可塑性材料を注入(または射出)する。このことは結果として第1成形品の形成をもたらし、これは、その後、工程(c)に従って解放する(または離型する)。
【0014】
原則的には、第1成形品はいずれの所望の形状を有していてもよい。例えば、第1成形品はシート、プレートまたはポットの形状を有してよく、シートまたはプレートは、例えばフラットであってもよく、湾曲していてもよく、または曲がっていてもよい。第1成形品はその全領域に亘って同じ厚さを有してよく、または異なる領域において異なる厚さを有してもよい。シートの形状の成形品を製造するために、成形シートの厚さは例えば3〜6mmであってよい。
【0015】
第1熱可塑性材料は、好ましくは透明なプラスチック、特に好ましくはポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、透明ポリアミド(PA)および/またはシクロオレフィンコポリマー(COC)である。しかしながら、射出成形または圧縮射出成形に適する他のいずれかの熱可塑性材料を用いて透明でない第1成形品を形成してもよい。
【0016】
離型の後、第1成形品をインジェクションモールドの第2キャビティに導入する(工程(c))。第1成形品を既知の方法(例えば多色射出成形方法に用いられている方法)によって移動させることができる。本方法で用いることができる典型的な移動方法として、一方では、回転テーブル(rotary table)、回転ボード(turnover board)、スライドキャビティもしくはインデックスプレートを用いての移動、または第1成形品がコア上にとどまる同様の方法を含む。他方で、本発明の方法において成形品を移動させる方法として、成形品を1−キャビティから(例えばハンドリングシステムの補助によって)取り出して他のキャビティに置く当業者に認識されている方法を更に含む。
【0017】
さらに、少なくとも1つの第2成形品を第2キャビティに導入する。第2成形品は、いずれの所望のプラスチックおよび/または金属成形品であってもよい。第1成形品が例えば自動車構造物に用いられる透明なシートである場合、第2成形品はスチール、アルミニウム、ポリアミド、とりわけ充填ポリアミド(filled polyamide)、またはポリカーボネートでできているガイドレールであってよい。
【0018】
第2熱可塑性材料をインジェクションモールドの第2キャビティに注入することによって、第1および第2成形品を(例えば互いに固定して取り付けて)組み合わせる。第2熱可塑性材料は、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性ポリエチレン(TPE)、ポリカーボネート(PC)、PCブレンドおよび/またはポリ塩化ビニル(PVC)もしくは上述の透明なプラスチックまたはこれらのプラスチックの混合物から選択することができる。
【0019】
本発明は、本発明の方法によって得られるプラスチック窓、および輸送手段(例えば、自動車、船もしくは飛行機等)または家庭用品の製造のためのこれらの使用にも関する。
【0020】
本発明を説明の目的で先に詳細に記載したが、そのような詳細は単に説明目的であること、ならびに特許請求の範囲によって制限され得る場合を除き、本発明の概念および範囲から逸脱することなく当業者によって変更が可能であることが理解されよう。
【実施例】
【0021】
以下の実施例は、金属インサートによって強化され且つ外部から適用されるフィルムによってその表面がスクラッチから保護される、部分的に透明な構造要素の製造を説明する。金属インサートは強化目的だけでなく、取り付けパーツをネジで連結するための局所的な強化材として使用することができる。
【0022】
第1作業工程において、PC(ポリカーボネート)をベースにしたフィルムをPMMA(ポリメチルメタクリレート)層と一緒に共押出する。フィルムを三次元形状の金型キャビティにインサートするために、深絞りプロセスで前成形して切断してよく、または射出成形プロセスによって直接的にそのような形状にしてもよい。
【0023】
図1に示すインジェクションモールド(射出成形型)の開いているハーフ(3)に、第1(1)および第2(2)共押出フィルムを導入する。この場合、フィルムはフラットであり、また、前もって付形されてはいない。金型の小さな穴(4)を介して真空状態をもたらす。この真空状態はフィルムを金型のキャビティに押し、所定のようにフィルムを固定させる。
【0024】
2つの金型ハーフ(3)を互いに押すことによりインジェクションモールドを閉じる(図2)。フィルムの間に空隙(5)ができ、PC(ポリカーボネート)熱可塑性材料を注入することによってこれを満たす。このようにして製造されるパネルの厚さは5mmである。
【0025】
金型には、次の作業工程で挿入する金属ブラケットのための新しいキャビティが必要である。この新しいキャビティを所謂回転可能プレート(垂直軸のまわりで180°回転して古いキャビティを移動させて新しいキャビティ(6)を所定のように配置する)に配置する(図3)。予め射出成形されたパネル(7)はノズル側にある金型ハーフ(3)に残存する。
【0026】
図4において、ハンドリングシステムによって新しいキャビティ(6)に金属ブラケット(8)を配置する。このキャビティは、高さ2.5mmのギャップ(9)がキャビティ(6)の壁と金属インサートとの間に存在するように形成する必要がある。
【0027】
2つの金型ハーフ(3)および(6)を互いに一度押圧する(図5)。ギャップ9に第2熱可塑性成分を注入し、ここで用いる材料はPC/PETブレンドである。図6に第2熱可塑性部材(10)を示す。この部材(10)は金属インサート(8)を完全に覆い、下に位置する射出成形パネルと非常にしっかりした結合を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、開いている金型を示す。
【図2】図2は、フィルムを含む閉じた金型を示す。
【図3】図3は、第2金型ハーフの供給を示す。
【図4】図4は、ブラケット8の挿入を示す。
【図5】図5は、金型ハーフの閉鎖を示す。
【図6】図6は、開いている金型ハーフ及び注入された第2プラスチックを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合構造要素の製造方法であって:
(a) 第1プラスチックフィルムおよび第2プラスチックフィルムをインジェクションモールドの第1キャビティに導入し、第1プラスチックフィルムと第2プラスチックフィルムとの間に空隙を形成するように、第1プラスチックフィルムおよび第2プラスチックフィルムを第1キャビティ内に配置すること;
(b) 空隙に第1熱可塑性材料を注入し、これにより第1成形品を形成すること;
(c) 工程(b)で形成した第1成形品を離型し、第1成形品および少なくとも1つの第2成形品を同じ又は他のインジェクションモールドの第2キャビティに導入すること;ならびに
(d) 第2キャビティに第2熱可塑性材料を注入し、これにより第1成形品と第2成形品とを組み合わせること
を含んで成る方法。
【請求項2】
工程(a)の前に、少なくとも1つの第1フィルムおよび第2フィルムを付形、切断、コーティング、印刷およびこれらの組み合わせから成る群から選択されるプロセスに付すことを更に含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1フィルムおよび第2フィルムを、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートおよびポリカーボネート/ポリメチルメタクリレートブレンドから成る群から選択される材料からそれぞれ独立して製造する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1熱可塑性材料は透明である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1熱可塑性材料は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、シクロオレフィンコポリマーおよびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第2成形品を、プラスチック、金属およびこれらの組み合わせから成る群から選択される材料から製造する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第2熱可塑性材料は、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートブレンド、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、シクロオレフィンコポリマーおよびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(d)において、第2キャビティにおいて第2熱可塑性材料を第1成形品の縁領域付近に射出成形し、これにより第1成形品において透明な窓を得る、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜9のいずれかによって製造されるプラスチック窓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−22081(P2007−22081A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−191670(P2006−191670)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】