説明

複数枚の回路基板が所定距離を隔てて積層されているモジュールと、そのモジュール用の光コネクタ

【課題】 複数枚の回路基板20が固定部材10を介して積層されており、その固定部材10には光導波路12が貫通して伸びているモジュール100に用いられる光コネクタ70を提供すること。
【解決手段】 光コネクタ70は、本体715と、その本体715内に設けられているミラー74と、光導波路712と、連結手段714を備えている。光導波路712は、本体715の表面の一部に露出している第1端面712aから、ミラー74を介して屈曲し、その第1端面712に対して非平行な本体715の表面の一部に露出している第2端面712bまで伸びている。連結手段714は、第1端面712aを含んで形成されており、第1端面712aが固定部材10の光導波路12の第2端面12bに光接合する状態で、その固定部材10に連結する機構を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の回路基板が所定距離を隔てて積層されており、その回路基板間に光通信路が提供されているモジュールに関する。本発明はまた、その回路基板間に提供されている光通信路に対して、その光通信路の軸方向と異なる方向から光通信路を提供する光コネクタにも関する。
【背景技術】
【0002】
電子・電気部品等で構成された回路が作り込まれている回路基板の複数枚を、所定距離を隔てて積層したモジュールが開発されている。この種のモジュールでは、一の回路基板と他の回路基板が、固定部材を介して平行に固定されている。固定部材を介して複数枚の回路基板を積層化することによって、同一面内に複数枚の回路基板を配置する場合に比して、モジュールの省スペース化を図ることができる。この種のモジュールは、ハウジング等に収容されて用いられる。例えば、この種のモジュールは、車載用の情報処理装置等に用いられる。
積層化された回路基板間において、多量の情報を正確に伝送することが望まれている。特許文献1には、一方の回路基板に設けられた発光素子と他方の回路基板に設けられた受光素子が、積層方向に対峙する位置関係で配置されているモジュールが開示されている。特許文献1の技術では、発光素子が発光した光信号を受光素子が受光することによって、回路基板間で光通信を実現する。特許文献1のモジュールでは、光信号が回路基板間の空間を伝播する。
【0003】
【特許文献1】実開平5−77954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のモジュールでは、発光素子と受光素子の位置関係を積層方向に一致させることが難しい。特許文献1の技術では、固定部材(特許文献1では支柱という)を介して一の回路基板と他の回路基板が固定されている。このため、固定部材と発光素子の水平方向の位置関係が予め決められた位置関係に正確に形成され、固定部材と受光素子の水平方向の位置関係が予め決められた位置関係に正確に形成されていれば、発光素子と受光素子の位置関係を積層方向に一致させることができ得る。しかしながら、いずれか一方の水平方向の位置関係が予め決められた位置関係から外れていると、発光素子と受光素子の位置関係は、積層方向に一致することができない。また、温度変化等によって回路基板に膨張収縮が生じると、発光素子と受光素子の位置関係が変動し、発光素子と受光素子は、対峙した位置関係から外れてしまう。発光素子と受光素子の位置関係が不安定であれば、光信号の送受信が不安定となる。特許文献1の技術では、光通信の安定性が低い。積層された回路基板間で安定した光通信を達成できる光通信路の実現が望まれている。
【0005】
また、この種のモジュールでは、回路基板間の光通信路と外部との間に、光通信路を提供する必要がある。この光通信路は、回路基板間の光通信路に向けて外部から光信号を送信する場合や、回路基板間の光通信路から外部に向けて光信号を送信する場合に用いられる。この種のモジュールでは、設置するスペースを十分に確保できないことが多い。このため、回路基板間の光通信路と外部との間に設けられる光通信路は、設置するスペースに係る制約を受けることが多い。したがって、回路基板間の光通信路と外部との間に設けられる光通信路は、設置するスペースに係る制約に対応できることが望まれている。
【0006】
本発明は、積層された回路基板間で安定した光通信を達成する光通信路を提供することを目的とする。本発明はさらに、その回路基板間に提供されている光通信路に対して、その光通信路の軸方向と異なる方向から光通信路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一の回路基板と他の回路基板を固定している固定部材に、光信号を伝播するための光導波路を設けることを特徴としている。本発明はさらに、その固定部材に連結されるとともに、その固定部材の軸方向とは異なる方向に光通信路を提供する光コネクタを提供することを特徴としている。
本発明で提供される固定部材は、一の回路基板と他の回路基板を機械的に固定する役割と、光信号を伝播する光通信路を提供する役割を兼用している。本発明の固定部材は、特許文献1のように、固定部材と発光素子の水平方向の位置関係、及び固定部材と受光素子の水平方向の位置関係を正確に位置決めするという困難な仕組みを必要としない。また、本発明の固定部材は、温度変化等によって回路基板に膨張収縮が生じたとしても、固定部材に形成された光導波路を利用して、光通信機能を維持することができる。このため、本発明の固定部材を利用すれば、回路基板間において情報を正確に伝送することができる。
本発明で提供される光コネクタは、ミラーを備えている。光コネクタ内を伸びる光導波路は、そのミラーを介して屈曲する。これにより、光導波路の一方の端面と他方の端面は、光コネクタの表面において、異なる方向に露出する。したがって、光コネクタは、固定部材の軸方向とは異なる方向に光通信路を提供することができる。光コネクタは、回路基板間の光通信路と外部との間に、様々な方向に伸びる光通信路を提供することができる。光コネクタは、モジュールが設置されるスペースの制約を緩和し、回路基板間の光通信路と外部との間に光通信路を提供することができる。
本発明の固定部材と光コネクタを利用することによって、積層された回路基板間で安定した光通信が達成されるとともに、その回路基板間の光通信路と外部との間に光通信路が提供されたモジュールを実現することができる。
なお、本発明の技術は、単一波長又は多波長の光信号を利用する伝送技術のいずれにも適用することができる。本発明の技術範囲は、光信号の種類に限定されるものではない。
【0008】
本発明の一つのモジュールは、複数枚の回路基板と、その複数枚の回路基板を所定距離を隔てて固定するとともに回路基板間に光通信路を提供する固定部材と、その固定部材に連結されるとともにその固定部材の軸方向とは異なる方向に光通信路を提供する光コネクタを備えている。本発明の固定部材は、本体と、その本体を貫通して伸びている光導波路を有している。本発明の光コネクタは、本体と、その本体内に設けられているミラーと、その本体の表面の一部に露出している第1端面から、ミラーを介して屈曲し、その第1端面に対して非平行な本体の表面の一部に露出している第2端面まで伸びている光導波路を備えている。本発明の光コネクタはさらに、その第1端面を含んで形成されており、その第1端面が固定部材の光導波路の端面に光接合する状態で、その固定部材に連結する機構を有する連結手段を備えている。ここで、「光接合する」とは、光コネクタの光導波路の第1端面と固定部材の光導波路の端面が物理的に接触する場合に限らず、所定距離を隔てている場合や、他の部材が介在する場合等も含まれる。
本発明で創作された固定部材は、本体と、その本体を貫通して伸びている光導波路を備えている。固定部材は、複数枚の回路基板を所定距離を隔てて固定する。複数枚の回路基板を固定部材で固定すると、本体を貫通して伸びている光導波路が、回路基板間に光通信路を提供する。本発明の固定部材は、一の回路基板と他の回路基板を所定距離を隔てて機械的に固定することができる。さらに、本発明の固定部材は、本体を貫通して伸びている光導波路を利用して、回路基板間に伸びている光通信路を提供することができる。本発明の固定部材は、一の回路基板と他の回路基板を光通信可能に固定することができる。
本発明で創作された光コネクタは、光コネクタ内を伸びる光導波路をミラーを介して屈曲させることによって、光導波路の一方の第1端面と他方の第2端面を、光コネクタの表面において、異なる方向に露出させることができる。これにより、光コネクタは、固定部材の軸方向とは異なる方向に光通信路を提供することができる。
本発明のモジュールは、固定部材と光コネクタを備えている。これにより、本発明のモジュールは、積層された回路基板間で安定した光通信を達成するとともに、回路基板間の光通信路と外部との間に光通信路を提供することができる。
【0009】
本発明の光コネクタの連結手段は、固定部材と連結するときに、第1端面とその固定部材の光導波路の端面が、その対向方向回りの少なくとも複数の角度で光接合する機構を有していることが好ましい。なお、ここでいう機構には、光コネクタの光導波路の第1端面と固定部材の光導波路の端面が、その対向方向回りに回転可能に光接合するものも含まれる。
光コネクタの光導波路の第1端面と固定部材の光導波路の端面が、その対向方向回りの複数の角度から選択された角度で光接合すると、光コネクタの光導波路の第2端面は、固定部材の半径方向に向けて複数の角度から選択された角度で露出する。本発明の光コネクタは、回路基板間の光通信路と外部との間に、複数の方向に伸び得る光通信路を提供することができる。
【0010】
本発明の固定部材及び/又は光コネクタの光導波路は、プラスチックファイバーを備えていることが好ましい。
プラスチックファイバーは、可塑性を有しており、加工が容易な材料である。プラスチックファイバーを利用すると、多様な形状の固定部材及び/又は光コネクタを形成し得る。
【0011】
本発明の固定部材の本体は、外径が大きい第1部分と、外径が小さい第2部分を備えていることが好ましい。これにより、本発明の固定部材の本体は、その第1部分と第2部分の間に段差面が形成されていることを特徴としている。
この段差面に回路基板の裏面(又は表面)を接触させることによって、回路基板と固定部材を所定の位置関係で組立てることができる。したがって、一の回路基板と他の回路基板の間の所定距離は、外径が大きい第1部分の高さによって調整することができる。
【0012】
固定部材の第1部分は、他の固定部材の第2部分を受入れる挿入穴を備えているのが好ましい。その挿入穴は、第1部分の端面から光導波路の貫通方向に沿って伸びていることが好ましい。さらに、その挿入穴の形状と、第2部分の形状が略一致していることが好ましい。この場合、一方の固定部材の挿入穴に他方の固定部材の第2部分を挿入すると、一方の固定部材の光導波路の端面と他方の固定部材の光導波路の端面が光接合されることを特徴としている。ここで、「光接合される」とは、一方の固定部材の光導波路の端面と他方の固定部材の光導波路の端面が物理的に接触する場合に限らず、所定距離を隔てている場合や、他の部材が介在する場合等も含まれる。
第1部分の挿入穴の形状と第2部分の形状が略一致していると、一方の固定部材の挿入穴に他方の固定部材の第2部分を嵌合させることができる。さらに、第1部分の挿入穴が光導波路の貫通方向に沿って伸びているので、一方の固定部材の挿入穴に他方の固定部材の第2部分を挿入させると、一方の固定部材の光導波路の端面と他方の固定部材の光導波路の端面が光接合する。これにより、光導波路は、複数の固定部材を亘って伸びることができる。複数の固定部材を連結した場合でも、複数の固定部材を亘って光信号を伝播させることができる。
【0013】
固定部材は、固定部材の挿入穴を画定する内壁の少なくとも一部に形成されている第1端子を備えているのが好ましい。固定部材はさらに、第2部分の外壁の少なくとも一部に形成されている第2端子を備えているのが好ましい。固定部材はその他に、光導波路外に設けられており、第1端子と第2端子を電気的に接続する導線を備えているのが好ましい。この場合、一方の固定部材の挿入穴に他方の固定部材の第2部分を挿入すると、一方の固定部材の第1端子と他方の固定部材の第2端子が電気的に接続されることを特徴としている。
この固定部材によると、一方の固定部材の挿入穴に他方の固定部材の第2部分を挿入すると、一方の固定部材の第1端子と他方の固定部材の第2端子が接触する。これにより、複数の固定部材を連結した場合でも、複数の固定部材の個々の導線は、一方の固定部材の第1端子と他方の固定部材の第2端子を介して電気的に接続される。複数の固定部材に亘って電気的に接続された導線は、複数枚の回路基板に対して電圧を供給することができる。
なお、第1端子、第2端子及び導線の組合せは、一つの固定部材に複数個形成されていてもよい。その組合せが複数個形成されていると、複数の電圧を供給することができる。
【0014】
本発明の光コネクタの連結手段は、固定部材の第2部分の形状に略一致した形状の突起部、及び/又は固定部材の挿入穴の形状に略一致した形状の嵌合穴を備えているのが好ましい。連結手段が突起部を備えている場合は、固定部材の挿入穴に突起部を挿入すると、固定部材の光導波路の端面と突起部の第1端面が光接合されることを特徴としている。連結手段が嵌合穴を備えている場合は、嵌合穴が固定部材の第2部分を受入れると、固定部材の光導波路の端面と嵌合穴の第1端面が光接合されることを特徴としている。
上記の態様によると、光コネクタの連結手段は、固定部材の第2部分及び/又は挿入穴と共通した形状を備えている。これにより、固定部材と固定部材が嵌合する仕組みと同一の仕組みを利用して、光コネクタと固定部材を嵌合することができる。嵌合する仕組みを共通化することによって、使用者の利便性を向上させることができる。
【0015】
本発明の光コネクタの連結手段は、固定部材の第2部分の形状に略一致した形状の突起部、及び/又は固定部材の挿入穴の形状に略一致した形状の嵌合穴を備えているのが好ましい。さらに、本発明の光コネクタは、固定部材が第1端子、第2端子及び導線の組合せを備えている場合には、以下の構成をさらに備えているのが好ましい。
本発明の光コネクタは、連結手段が突起部を備えている場合には、その突起部の外壁の少なくとも一部に形成されている第3端子と、突起部以外の本体の表面に形成されている第4端子と、光導波路外に設けられており、第3端子と第4端子を電気的に接続する導線をさらに備えているのが好ましい。この場合、固定部材の挿入穴に突起部を挿入すると、固定部材の光導波路の端面と突起部の第1端面が光接合されるとともに、固定部材の第1端子と突起部の第3端子が電気的に接続されることを特徴としている。
本発明の光コネクタは、連結手段が嵌合穴を備えている場合には、その嵌合穴を画定する内壁の少なくとも一部に形成されている第5端子と、嵌合穴以外の本体の表面の一部に形成されている第6端子と、光導波路外に設けられており、第5端子と第6端子を電気的に接続する導線をさらに備えているのが好ましい。この場合、嵌合穴が固定部材の第2部分を受入れると、固定部材の光導波路の端面と嵌合穴の第1端面が光接合されるとともに、固定部材の第2端子と嵌合穴の第5端子が電気的に接続されることを特徴としている。
これにより、固定部材と光コネクタを連結すると、固定部材の導線と光コネクタの導線が電気的に接続され、固定部材と光コネクタの両者に亘って伸びる導線を得ることができる。
【0016】
本発明の固定部材の第2部分及び光コネクタの連結手段の突起部は、円筒状の形状を有しているのが好ましい。本発明の固定部材の挿入穴及び光コネクタの連結手段の嵌合穴は、その円筒状の形状に略一致した形状を有していることが好ましい。
これにより、固定部材の光導波路の端面と光コネクタの光導波路の第1端面は、その対向方向回りに回転可能に光接合することができる。光コネクタは、回路基板間の光通信路と外部との間に、様々な方向に伸び得る光通信路を提供することができる。
【0017】
本発明の固定部材が、第1端子、第2端子及び導線の組合せを備えている場合、その組合せの複数個が固定部材に形成されているのが好ましい。そのうちの少なくとも一つの組合せは接地電圧用であり、そのうちの少なくとも一つの組合せは電源電圧用であることが好ましい。
この固定部材によると、接地電圧と電源電圧の両者を、複数枚の回路基板に対して供給することができる。
【0018】
本発明の固定部材は、第1反射手段を備えているのが好ましい。第1反射手段は、光導波路内に設けられており、光導波路内を伝播する光信号の一部を光導波路外に向けて反射する。固定部材はさらに、受光素子を備えているのが好ましい。受光素子は、光導波路外に設けられており、第1反射手段で反射された光信号を電気信号に変換する。
第1反射手段と受光素子は、光導波路を伝播する光信号を電気信号に変換することができる。第1反射手段と受光素子によって変換された電気信号は、この受光素子に接続されている回路基板上の回路に伝送される。
【0019】
第1反射手段にハーフミラーを利用することが好ましい。この場合、第1反射手段は、光導波路内を伝播する光信号の一部を反射するとともに、残部を透過することを特徴としている。
第1反射手段にハーフミラーを利用すると、ハーフミラーを透過した光信号は、他の固定部材の光導波路に伝播される。第1反射手段にハーフミラーを利用すれば、複数の固定部材に亘って伸びている光導波路を構築したときに、複数の固定部材に亘って光信号を伝播することができる。第1反射手段にハーフミラーを利用すると、複数の固定部材に亘って伸びている光導波路を利用して、複数枚の回路基板間で光通信することができる。
【0020】
第1反射手段に一対のハーフミラーを利用することが好ましい。この場合、第1反射手段は、光導波路内を一方から他方に伝播する光信号の一部と、光導波路内を他方から一方に伝播する光信号の一部を、受光素子に向けて反射することを特徴としている。
第1反射手段に一対のハーフミラーを利用すると、光導波路内を双方向に伝播する光信号を受光素子によって電気信号に変換することができる。第1反射手段に一対のハーフミラーを利用すると、双方向に設けられた回路基板からの情報を受信することができる。
【0021】
固定部材の表面に、受光素子に接続されている接続線の端部が露出していることが好ましい。これにより、受光素子と回路基板を電気的に接続する配線を確保することができる。光導波路を伝播する光信号は、受光素子で電気信号に変換され、この接続線を介して回路基板上の回路に伝送される。
【0022】
本発明の固定部材は、発光素子を備えているのが好ましい。発光素子は、光導波路外に設けられており、電気信号を光信号に変換する。固定部材はさらに、第2反射手段を備えているのが好ましい。第2反射手段は、光導波路内に設けられており、発光素子からの光信号を光導波路内に向けて反射する。
第2反射手段と発光素子は、光導波路に対して光信号を供給することができる。第2反射手段と発光素子は、この発光素子に接続されている回路基板上の回路からの電気信号を光信号に変換して、光導波路に供給することができる。
【0023】
第2反射手段にハーフミラーを利用することが好ましい。この場合、第2反射手段は、発光素子からの光信号を光導波路内に向けて反射するとともに、光導波路内を伝播する光信号を透過することを特徴としている。
第2反射手段にハーフミラーを利用すると、発光素子からの光信号を光導波路に導くとともに、光導波路を伝播してくる他の光信号を透過させることができる。
【0024】
第2反射手段は、一対のハーフミラーを利用するのが好ましい。この場合、第2反射手段は、発光素子からの光信号を光導波路の一方に向けて反射するとともに、発光素子からの光信号を光導波路の他方に向けて反射することを特徴としている。
第2反射手段に一対のハーフミラーを利用すると、発光素子からの光信号を光導波路内の双方向に向けて供給することができる。第2反射手段に一対のハーフミラーを利用すると、双方向に設けられた回路基板に向けて、情報を送信することができる。
【0025】
固定部材の表面に、発光素子に接続されている接続線の端部が露出していることが好ましい。これにより、発光素子と回路基板を電気的に接続する配線を確保することができる。回路基板上の回路からの電気信号は、この接続線を介して発光素子に伝送され、発光素子で光信号に変換した後に光導波路に供給される。
【0026】
本発明の他の一つのモジュールは、複数枚の回路基板と、その複数枚の回路基板を所定距離を隔てて固定するとともに回路基板間に光通信路を提供するシリーズ化された固定部材と、その固定部材に連結されるとともにその固定部材の軸方向とは異なる方向に光通信路を提供する光コネクタを備えている。
本発明の光コネクタは、本体と、その本体内に設けられているミラーと、その本体の表面の一部に露出している第1端面から、ミラーを介して屈曲し、その第1端面に対して非平行な本体の表面の一部に露出している第2端面まで伸びている光導波路を備えている。本発明の光コネクタはさらに、その第1端面を含んで形成されており、その第1端面が固定部材の光導波路の端面に光接合する状態で、その固定部材に連結する機構を有する連結手段を備えている。
本発明のシリーズ化された固定部材は、4つのタイプの固定部材を備えていることを特徴としている。
第1固定部材は、本体と、光導波路と、光導波路を伝播する光信号の一部を受光して電気信号に変換する受光素子と、光導波路に導入する光信号を発光する発光素子を備えている。
第2固定部材は、本体と、光導波路と、光導波路を伝播する光信号の一部を受光して電気信号に変換する受光素子を備えている。
第3固定部材は、本体と、光導波路と、光導波路に導入する光信号を発光する発光素子を備えている。
第4固定部材は、本体と、光導波路を備えている。
第1固定部材から第4固定部材は共通形状であって、間に回路基板を挟んだ状態で任意の固定部材に任意の固定部材を接続するとともに、その任意の固定部材の光導波路の端面と任意の固定部材の光導波路の端面を光接合することが可能であることを特徴としている。
第1固定部材から第4固定部材は、回路基板の役割に応じて適宜に選択されている。他の回路基板との間で信号を発信・受信する回路基板には、第1固定部材が選択される。他の回路基板から信号を受信する回路基板には、第2固定部材が選択される。他の回路基板に信号を発信する回路基板には、第3固定部材が選択される。他の回路基板と信号を発信も受信もしない回路基板には、第4固定部材が選択される。
第1固定部材から第4固定部材を組合せて用いることによって、多様な役割を有している複数枚の回路基板を、所定距離を隔てて固定することができる。さらに、固定部材は、複数枚の回路基板間に光通信路を構築し、情報の送受信を可能にする。
【発明の効果】
【0027】
本発明で提供される固定部材には、光導波路が設けられている。その光導波路を利用して、回路基板間において光信号を伝播することができる。本発明の固定部材によれば、一の回路基板と他の回路基板を固定部材で固定することによって、光信号を伝播するための光導波路も構築することができる。このため、本発明の固定部材は、回路基板間において、光信号を媒体にして情報を正確に伝送することができる。
本発明で提供される光コネクタには、ミラーが設けられている。光コネクタ内を伸びる光導波路は、そのミラーを介して屈曲する。これにより、光導波路の一方の端面と他方の端面は、光コネクタの表面において、異なる方向に露出する。したがって、光コネクタは、固定部材の軸方向とは異なる方向に光通信路を提供することができる。
本発明の固定部材と光コネクタを利用することによって、積層された回路基板間で安定した光通信が達成されるとともに、その回路基板間の光通信路と外部との間に光通信路が提供されたモジュールを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の特徴を列記する。
(第1形態) 光導波路に利用される材料は特に限定されるものではない。典型的には、プラスチックファイバー、ガラスファイバー等が利用される。光信号の伝播距離が短いので、加工性に優れたプラスチックファイバーを利用するのが好ましい。
(第2形態) 光信号の種類は特に限定されるものでない。単一波長又は多波長のいずれの光信号も利用することができる。
(第3形態) 光信号に多波長を利用する場合は、第1反射手段及び/又は第2反射手段に、複数の波長成分を分画するために、誘電体多層膜又は回折格子型合分波器等を好適に利用することができる。
【実施例】
【0029】
(第1実施例)
図1に、モジュール100の構成を概略的に示す。モジュール100は、略正方形状の複数枚の回路基板20と、その複数枚の回路基板20を所定距離を隔てて固定するとともに回路基板20の間に光通信路を提供する固定部材10と、その固定部材10に連結されるとともにその固定部材10の軸方向(Y方向)とは異なる方向(X方向)に光通信路を提供する光コネクタ70を備えている。複数枚の回路基板20は、所定距離を隔てて積層されている。一の回路基板20と他の回路基板20は、固定部材10を介して所定距離を隔てて平行に固定されている。光コネクタ70は、モジュール100の外部に設けられている外部コネクタ72と固定部材10を連結している。なお、図1では、明瞭化のために、取り付け前の回路基板20及び固定部材10も同時に図示されている。モジュール100は、ハウジング等に収容され、車載用の情報処理装置に利用される。
【0030】
回路基板20は、電子・電気部品等によって構成されている回路(図示せず)と、角部近傍に形成されている開口22を備えている。開口22は、回路基板20の表面から裏面まで貫通しており、その平面形状は略円形である。固定部材10の一部は、回路基板20の開口22に挿入されている。固定部材10は、開口22を通して他の固定部材10と軸方向(Y方向)に連結されている。開口22は、複数枚の回路基板20のそれぞれにおいて、共通した位置に形成されている。このため、モジュール100を平面視したときに、積層されている複数枚の回路基板20は、その輪郭が一致している。回路基板20は、上下の固定部材10によって狭持されている。あるいは、回路基板20と固定部材10は、ソケットを介して固定されていてもよい。
【0031】
固定部材10は、一の回路基板20と他の回路基板20を機械的に固定する役割を担っている。固定部材10は、後述するように、軸方向に伸びる光導波路12を備えている。このため、固定部材10は、他の固定部材10と連結したときに、光信号を伝播する光導波路12を回路基板20の間に提供する役割も担っている。
光コネクタ70は、回路基板20のうち最も外側に配置されている回路基板20に設けられている。光コネクタ70の一部もまた、回路基板20の開口22に挿入されている。光コネクタ70は、開口22を通して固定部材10と軸方向(Y方向)に連結されている。光コネクタ70はまた、X方向において、外部コネクタ72と連結されている。光コネクタ70は、後述するように、屈曲する光導波路712を備えている。光コネクタ70は、固定部材10と外部コネクタ72を連結することによって、固定部材10の光導波路12と外部コネクタ72の光導波路721の間に、屈曲する光導波路712を提供する。
【0032】
まず、固定部材10に関して説明する。図2に、固定部材10の拡大斜視図を概略的に示す。
固定部材10は、本体15と、その本体15を貫通して伸びている光導波路12を備えている。光導波路12は、貫通方向(紙面上下方向)の一方端に形成されている第1端面12aと、貫通方向の他方端に形成されている第2端面12bを備えている(図3及び図4を参照)。第1端面12aは、本体15の一方の端面に露出している。第2端面12bは、本体15の他方の端面に露出している。光導波路12は、プラスチックファイバーを備えている。プラスチックファイバーは、可塑性を有しているので、プラスチックファイバーを利用することによって多様な形状の固定部材10を得ることができる。
【0033】
固定部材10の本体15は、外径が大きい第1部分16と、外径が小さい第2部分14を備えている。第1部分16は、固定部材10の全体において、相対的に外径が大きいと観念できる部分をいう。第2部分14は、固定部材10の全体において、相対的に外径が小さいと観念できる部分をいう。外径の異なる第1部分16と第2部分14の間には、段差面18が形成されている。第2部分14の外径は、図1に示す回路基板20の開口22の径よりも小さく調整されている。第1部分16の外径は、図1に示す回路基板20の開口22の径よりも大きく調整されている。これにより、固定部材10の第2部分14は、回路基板10の開口22を通過することができる。一方、固定部材10の第1部分16は、回路基板20の開口22を通過することができない。したがって、固定部材10を回路基板20の開口22に挿入すると、固定部材10の段差面18に回路基板20の裏面が接触する。回路基板20の開口22から突出する第2部分14には、他の固定部材10が連結される(なお、後述するが、一の固定部材10と他の固定部材10は嵌合される)。これにより、回路基板20は、一の固定部材10と他の固定部材10によって狭持される。一の固定部材10と他の固定部材10の間の距離は、第1部分16の高さによって調整することができる。
【0034】
固定部材10には、複数の種類が用意されている。図3と図4に、代表的な固定部材10Aと固定部材10Bの断面図を概略的に示す。図3に示す第1種類の固定部材10Aは、受光部50と発光部40を備えている。図4に示す第2種類の固定部材10Bは、受光部50と発光部40を備えていない。ここで、固定部材10を固定部材10が有する機能毎に区別する場合は、「10A」「10B」などの符号を用いる。一方、固定部材10を機能毎に区別せずに総称として表現する場合は、「10」の符号を用いることとする。
なお、本実施例のモジュール100は、単一波長の光信号を利用して光通信する。したがって、受光部50が受光する波長と、発光部40が発光する波長は等しい。
【0035】
まず、第1種類の固定部材10Aを説明する。図3に示すように、第1種類の固定部材10Aは、受光部50と発光部40を備えている。
受光部50は、第1反射手段58と、受光素子52を備えている。第1反射手段58は、光導波路12内に設けられている一対のハーフミラー54、56を備えている。ハーフミラー54、56は、光導波路12の貫通方向(紙面上下方向)に対して傾斜して設けられている。ハーフミラー54は、光導波路12内を紙面下側から紙面上側に向けて伝播する光信号の一部を反射するとともに残部を透過する。ハーフミラー54で反射した光信号の一部は、受光素子52で電気信号に変換される。ハーフミラー54を透過した光信号は、他の固定部材10に設けられた受光部50でも受光され得る。ハーフミラー56は、光導波路12内を紙面上側から紙面下側に向けて伝播する光信号の一部を反射するとともに残部を透過する。ハーフミラー56で反射した光信号の一部は、受光素子52で電気信号に変換される。ハーフミラー56を透過した光信号は、他の固定部材10に設けられた受光部50でも受光され得る。一対のハーフミラー54、56を利用することによって、光導波路12内を双方向に伝播する光信号を受光素子52に導くことができる。なお、必要に応じて、一対のハーフミラー54、56の一方を除去してもよい。この場合、光導波路12内を伝播する光信号のうち、選択された方向に伝播する光信号のみを受光することができる。
【0036】
受光素子52は、光導波路12外に設けられており、光導波路12を伝播する光信号を物理的に遮らない位置に配置されている。受光素子52と光導波路12は、一対のハーフミラー54、56を介して光結合している。受光素子52には、半導体を利用した光電変換装置が用いられている。受光素子52には、変換された電気信号を取り出すための第1信号配線37が電気的に接続されている。第1信号配線37は、固定部材10を貫通して固定部材10の下端面にまで伸びており、その端部が固定部材10の下端面に露出している。第1信号配線37は、回路基板20上に設けられている回路に、受光素子用信号端子86を介して電気的に接続されている。受光素子用信号端子86には、板状の金属端子、ばね性の金属端子などが用いられている。これにより、受光素子52で変換された電気信号は、第1信号配線37及び受光素子用信号端子86を介して回路基板20上の回路に伝送される。
なお、実際には、第1信号配線37は、アノードとカソードの2つの信号配線を備えていることが多い。したがって、受光素子用信号端子86も、2つの受光素子用信号端子を備えていることが多い。本実施例では、図の明瞭化のために、1つの信号配線と1つの受光素子用信号端子のみを図示している。
【0037】
発光部40は、発光素子42と第2反射手段48を備えている。
発光素子42は、光導波路12外に設けられており、光導波路12を伝播する光信号を物理的に遮らない位置に配置されている。発光素子42と光導波路12は、一対のハーフミラー44、46を介して光結合している。発光素子42には、半導体を利用した半導体レーザ装置が用いられている。発光素子42には、回路基板20上に設けられている回路からの電気信号を入力するための第2信号配線34が電気的に接続されている。第2信号配線34は、固定部材10を貫通して固定部材10の下端面にまで伸びており、その端部が固定部材10の下端面に露出している。第2信号配線34は、回路基板20上に設けられている回路に、発光素子用信号端子84を介して電気的に接続されている。発光素子用信号端子84には、板状の金属端子、ばね性の金属端子などが用いられている。回路基板20上の回路からの電気信号は、発光素子用信号端子84及び第2信号配線34を介して発光素子42に入力される。発光素子42は、入力された電気信号に応じて光信号を生成する。
なお、実際には、第2信号配線34は、アノードとカソードの2つの信号配線を備えていることが多い。したがって、発光素子用信号端子84も、2つの発光素子用信号端子を備えていることが多い。本実施例では、図の明瞭化のために、1つの信号配線と1つの発光素子用信号端子のみを図示している。
【0038】
第2反射手段48は、光導波路12内に設けられている一対のハーフミラー44、46を備えている。ハーフミラー44、46は、光導波路12の貫通方向(紙面上下方向)に対して傾斜して設けられている。ハーフミラー44は、発光素子42からの光信号を反射して光導波路12に導く。ハーフミラー44で反射した光信号は、光導波路12内を紙面上側から紙面下側に向けて伝播する。ハーフミラー44は、他の固定部材10からの光信号の少なくとも一部を透過することができる。このため、他の固定部材10からの光信号は、ハーフミラー44を透過して、さらに他の固定部材10に向けて伝播することができる。ハーフミラー46は、発光素子42からの光信号を反射して光導波路12に導く。ハーフミラー46で反射した光信号は、光導波路12内を紙面下側から紙面上側に向けて伝播する。ハーフミラー46は、他の固定部材10からの光信号の少なくとも一部を透過することができる。このため、他の固定部材10からの光信号は、ハーフミラー46を透過して、さらに他の固定部材10に向けて伝播することができる。一対のハーフミラー44、46を利用することによって、発光素子42からの光信号を、光導波路12内の双方向に向けて供給することができる。なお、必要に応じて、一対のハーフミラー44、46のいずれか一方を除去してもよい。この場合、一対のハーフミラー44、46のいずれか一方を選択することによって、選択された方向にのみ光信号を供給することができる。
【0039】
以下に説明する構成要素は、特に説明が無い限り、複数種類の固定部材10が共通して備えているものである。図3の固定部材10Aを参照して、共通する構成要素に関して説明する。
図3に示すように、第1部分16は、他の固定部材10の第2部分14を受入れる挿入穴60を備えている。挿入穴60は、第1部分16の下端面から光導波路12の貫通方向(紙面上下方向)に沿って伸びている。光導波路12の第2端面12bは、挿入穴60に露出している。挿入穴60の形状は、第2部分14の形状と略一致するように形成されている。
第1部分16の挿入穴60の形状と、第2部分14の形状が略一致していると、第1部分16の挿入穴60に他の固定部材10の第2部分14を嵌合させることができる。第1部分16の挿入穴60と他の固定部材10の第2部分14を連結させる仕組みには、様々な技術を利用することができる。例えば、形状的に固定するもの、磁力等の物理力を利用するもの、バネ等の付勢によるもの等の様々な仕組みを採用することができる。さらに、第1部分16の挿入穴60は、光導波路12の貫通方向に沿って伸びているので、第1部分16の挿入穴60に他の固定部材10の第2部分14を嵌合させると、第1部分16の挿入穴60に露出している光導波路12の第2端面12bと、他の固定部材10の第2部分14の端面に露出している光導波路12の第1端面12aが光接合される。これにより、第1部分16の挿入穴60に他の固定部材10の第2部分14を嵌合させると、個々の固定部材10の光導波路12は、複数の固定部材10に亘って伸びることができる。複数の固定部材10を連結した場合でも、連続する光導波路12を利用して、複数の固定部材10に光信号を伝播させることができる。
【0040】
図3に示すように、固定部材10は、接地電圧用の接地用導線33と、電源電圧用の電源用導線38を備えている。
接地用導線33の一方の端は、第1部分16の挿入穴60を画定している内壁に形成されている接地用第1端子35に電気的に接続されている。接地用導線33の他方の端は、第2部分14の外壁に形成されている接地用第2端子32に電気的に接続されている。接地用第1端子35は、挿入穴60を画定している内壁の周方向に一巡して形成されている。接地用第2端子32は、第2部分の外壁の周方向に一巡して形成されている。接地用第1端子35及び接地用第2端子32には、ばね性の金属端子又は板状の金属端子などが用いられている。接地用導線33は、光導波路12外に設けられており、本体15内を軸方向に貫通して伸びている。また、接地用導線33は分岐しており、接地用導線33の一部は、固定部材10の下端面に露出している。接地用導線33の一部は、回路基板20上に設けられている回路に、接地用基板端子82を介して電気的に接続されている。接地用基板端子82には、板状の金属端子、ばね性の金属端子などが用いられている。
【0041】
電源用導線38の一方の端は、第1部分16の挿入穴60を画定している内壁に形成されている電源用第1端子36に電気的に接続されている。電源用導線38の他方の端は、第2部分14の外壁に形成されている電源用第2端子31に電気的に接続されている。電源用第1端子36は、挿入穴60を画定している内壁の周方向に一巡して形成されている。電源用第2端子31は、第2部分の外壁の周方向に一巡して形成されている。電源用第1端子36及び電源用第2端子31には、ばね性の金属端子又は板状の金属端子などが用いられている。電源用導線38は、光導波路12外に設けられており、本体15内を軸方向に貫通して伸びている。また、電源用導線38は分岐しており、電源用導線38の一部は、固定部材10の下端面に露出している。電源用導線38の一部は、回路基板20上に設けられている回路に、電源用基板端子88を介して電気的に接続されている。電源用基板端子88には、板状の金属端子、ばね性の金属端子などが用いられている。
【0042】
第1部分16の挿入穴60を画定している内壁に形成されている接地用第1端子35と電源用第1端子36は、固定部材10の軸方向にオフセットされている。このため、接地用第1端子35と電源用第1端子36は、電気的に絶縁分離されている。第2部分14の外壁に形成されている接地用第2端子32と電源用第2端子31は、固定部材10Aの軸方向にオフセットされている。このため、接地用第2端子32と電源用第2端子31は、電気的に絶縁分離されている。
【0043】
固定部材10では、第1部分16の挿入穴60に他の固定部材10の第2部分14を嵌合すると、接地用第1端子35と他の固定部材10の接地用第2端子32が接触する。また、電源用第1端子36と他の固定部材10の電源用第2端子31も接触する。これにより、複数の固定部材10を連結した場合でも、複数の固定部材10の個々の接地用導線33は、接地用第1端子35及び接地用第2端子32を介して電気的に接続される。複数の固定部材10の個々の電源用導線38も、電源用第1端子36及び電源用第2端子31を介して電気的に接続される。このため、接地用第1端子35、接地用第2端子32、又は接地用基板端子82から接地用導線33に接地電圧を供給すると、接地用導線33の接地電圧は、嵌合されている複数の固定部材10において共通した大きさに保たれる。その接地電圧は、接地用基板端子82を介して回路基板20に供給される。したがって、複数の回路基板20に対して、共通した大きさの接地電圧を供給することができる。電源用第1端子36、電源用第2端子31、又は電源用基板端子88から電源用導線38に電源電圧を供給すると、電源用導線38の電源電圧は、嵌合されている複数の固定部材10において共通した大きさに保たれる。その電源電圧は、電源用基板端子88を介して回路基板20に供給される。したがって、複数の回路基板20に対して、共通した大きさの電源電圧を供給することができる。なお、一部の固定部材10において、接地用基板端子82と電源用基板端子88を除去してもよい。この場合、回路基板20上の回路が、接地用導線33及び電源用導線38から独立した接地電圧及び電源電圧によって動作するようにすることができる。
【0044】
図4には、第2種類の固定部材10Bの断面図が示されている。なお、図3に示す第1種類の固定部材10Aと同一構成には、同一符号が付されている。
図4に示すように、第2種類の固定部材10Bには、発光部40と受光部50が設けられていない。第2種類の固定部材10Bには、光導波路12が設けられており、光信号を伝播することができる。第2種類の固定部材10Bには、接地用導線33と電源用導線38が設けられており、回路基板20に対して接地電圧と電源電圧の供給を行うことができる。例えば、モジュール100内に非通信用の回路基板20を設けたいこともある。このような場合には、第2種類の固定部材10Bを用いるのが好ましい。第2種類の固定部材10Bは、回路基板20との間で情報の受け渡しをしない。第2種類の固定部材10Bは、他の固定部材10からの光信号をバイパスし、さらに他の固定部材10にその光信号を伝播させることができる。また、第2種類の固定部材10Bは、回路基板20に接地電圧及び電源電圧の供給が必要な場合は、接地用基板端子82と電源用基板端子88を介して、回路基板20に接地電圧及び電源電圧を供給することもできる。
なお、上記の2種類の固定部材10A及び固定部材10Bの他に、受光部50は備えているが発光部40を備えていない固定部材や、発光部40は備えているが受光部50を備えていない固定部材を利用することもある。これらの複数の種類の固定部材10は、共通した外的な形状とすることができる。これらの複数の種類の固定部材10を利用して、任意の回路基板20と回路基板20を積層してモジュールを構築することができる。
【0045】
図5に、複数の種類の固定部材10を用いて、複数枚の回路基板20が積層されたモジュール100を構築した例を示す。なお、固定部材10の種類が理解できるように、図面上では固定部材10に受光素子52と発光素子42のみが図示されている。複数の種類の固定部材10は、回路基板20に求められる機能に応じて適宜に選択される。
【0046】
回路基板20(A)及び(E)は、他の回路基板20との間で、光信号を発信・受信する機能が求められている。この場合、回路基板20(A)及び(E)には、受光素子52と発光素子42の両者を備えた固定部材10(10A)が利用される。
回路基板20(B)は、他の回路基板20から光信号を受信する機能が求められている。この場合、回路基板20(B)には、受光素子52のみが備えられた固定部材10が利用される。
回路基板20(C)は、他の回路基板20に光信号を発信する機能が求められている。この場合、回路基板20(C)には、発光素子42のみが備えられた固定部材10が利用される。
回路基板20(D)は、他の回路基板20と光信号を発信も受信もしないことが求められている。この場合、回路基板20(D)には、受光素子52も発光素子42も備えていない固定部材10(10B)が利用される。
【0047】
複数の種類の固定部材10を組合せて用いることによって、多様な役割を有している複数枚の回路基板20を、所定距離を隔てて固定することができる。さらに、固定部材10は、複数枚の回路基板20間に光通信路を構築し、情報の送受信を可能にする。
【0048】
前記したように、固定部材10は、光信号を伝播するための光導波路12を備えていることを特徴としている。固定部材10は、一の回路基板20と他の回路基板20を機械的に固定するための役割と、光信号を伝播するための光通信路としての役割を兼用している。固定部材10は、一の回路基板20と他の回路基板20を機械的に固定するとともに、光信号を伝播するための光導波路12を回路基板20間に提供することができる。複数枚の回路基板20を積層するために、複数個の固定部材10を連結したとしても、個々の固定部材10の光導波路12が光接合し、複数個の固定部材10に亘って伸びる光導波路12が提供される。固定部材10に設けられた受光部50及び発光部40は、光導波路12を伝播する光信号を受信したり、光導波路12に光信号を送信する。光導波路12、受光部50及び発光部40を利用して光信号を送受信すれば、複数枚の回路基板20の間で情報の送受信をすることができる。また、本実施例のように、受光部50及び発光部40のそれぞれが、固定部材10内に一体で設けられていると、受光素子52及び発光素子42の位置関係を正確に位置決めする必要がない。このため、一の固定部材10と他の固定部材10を連結すれば、受光部50及び発光部40の間において、安定した光信号の送受信を行うことができる。また、固定部材10内に光導波路12を設けることによって、温度変化等によって回路基板20に膨張収縮が生じたとしても、安定した光通信機能を維持することができる。このため、固定部材10は、複数枚の回路基板20に対して光信号を媒体にして情報を正確に伝送することを可能にする。光導波路12が設けられた複数の種類の固定部材10を利用することによって、複数の種類の回路基板20間で情報を正確に伝送することができる。
【0049】
次に、光コネクタ70に関して説明する。図6に、光コネクタ70の断面図を模式的に示す。図7に、外部コネクタ72の断面図を模式的に示す。図8に、固定部材10と光コネクタ70と外部コネクタ72が連結した状態を示す。モジュール100では、設置するスペースを十分に確保できないことが多い。このため、固定部材10と外部コネクタ72の間に光通信路を提供するときに、光コネクタ70を利用して、固定部材10と外部コネクタ72を様々な角度で連結する仕組みは有用である。
【0050】
図6に示すように、光コネクタ70は、本体715と、その本体715内に設けられているミラー74と、本体を貫通して伸びている光導波路712を備えている。光導波路712は、一方端に形成されている第1端面712aと、他方端に形成されている第2端面712bを備えている。第1端面712aは、本体715の表面の一部に形成されており、外部に露出している。第2端面712bは、第1端面712aが形成されている表面とは非平行な本体715の表面の一部に形成されており、外部に露出している。光導波路712は、第1端面712aから、ミラー74を介して屈曲し、第2端面712bまで伸びている。ミラー74の利用は、光コネクタ70を小型にする場合に特に有効である。仮に、ミラー74を利用しないで光コネクタ70を小型にすると、光導波路712は、第1端面712aと第2端面712bの間で大きな曲率を持つことになる。この場合、光導波路712から漏れる光の割合が増大し、光損失が増大してしまう。一方、本実施例のように、ミラー74が設けられていると、ミラー74は、光損失の増大を抑制しながら、光導波路712を様々な角度に屈曲することができる。小型にした光コネクタ70では、ミラー74を利用することが極めて有効である。また、光導波路712は、プラスチックファイバーを備えている。プラスチックファイバーは、可塑性を有しているので、プラスチックファイバーを利用することによって多様な形状の光コネクタ70を得ることができる。多様な形状の光コネクタ70では、様々な角度から光導波路712を露出させたいことが多い。したがって、プラスチックファイバーの光導波路712とミラー74の組合せは、小型で多様な形状の光コネクタ70を提供する場合に極めて有効である。
【0051】
光コネクタ70はさらに、固定部材10と連結するための連結手段711を備えている。連結手段711は、固定部材10の第2部分14の形状に略一致した形状の突起部714を備えている。突起部714の頂面には、第1端面712aが露出している。突起部714の外径は、残部の本体715よりも小さく調整されている。連結手段711はさらに、突起部714と残部の本体715の間に形成されている段差面718を備えている。突起部714の外径は、図1に示す回路基板20の開口22の径よりも小さく調整されている。残部の本体715の外径は、図1に示す回路基板20の開口22の径よりも大きく調整されている。これにより、光コネクタ70の突起部714は、回路基板10の開口22を通過することができる。一方、光コネクタ70の残部の本体715は、回路基板20の開口22を通過することができない。したがって、光コネクタ70を回路基板20の開口22に挿入すると、光コネクタ70の段差面718に回路基板20の裏面が接触する。回路基板20の開口22から突出する突起部714には、固定部材10の挿入穴60が嵌合される。突起部714は、固定部材10の挿入穴60に挿入されると、固定部材10の光導波路12の第2端面12bと突起部714の光導波路712の第1端面712aが光接合される。
突起部714と固定部材10の第2部分14が共通した形状を備えている。これにより、固定部材10と固定部材10が嵌合する仕組みと同一の仕組みを利用して、光コネクタ70と固定部材10を連結することができる。
【0052】
光コネクタ70はさらに、外部コネクタ72と連結するための連結穴779aを備えている。連結穴779aは、固定部材10の挿入穴60の形状に略一致した形状を備えている。図7に示すように、外部コネクタ72は、固定部材10の第2部分14の形状に略一致した形状の連結突起779bを備えている。したがって、固定部材10と固定部材10が嵌合する仕組みと同一の仕組みを利用して、光コネクタ70と外部コネクタ72を連結することができる。外部コネクタ72の連結突起779bは、光コネクタ70の連結穴779aに挿入されると、光コネクタ70の第2端面712bと外部コネクタ72の光導波路721の端面が光接合される。
【0053】
光コネクタ70は、ミラー74を備えている。光コネクタ70内を伸びる光導波路712は、そのミラー74を介して屈曲する。これにより、光導波路712の第1端面712aと第2端面712bは、光コネクタ70の表面において、異なる方向に露出する。したがって、図8に示すように、光コネクタ70は、固定部材10の軸方向とは異なる方向に光通信路を提供することができる。
【0054】
図9に、光コネクタ70と外部コネクタ72が、固定部材10の軸方向回りに回転する様子を示す。
光コネクタ70の突起部714は、円筒状の形状を有している。また、固定部材10の挿入穴60は、その円筒状の形状に略一致した形状を有している。このため、図9に示すように、光コネクタ70は、固定部材10の軸方向回りに回転することが可能になる。即ち、固定部材10の光導波路12の第2端面12bと光コネクタ70の光導波路712の第1端面712aは、その対向方向回りに回転可能に光接合することができる。光コネクタ70の第1端面712aと固定部材の第2端面12bが対向方向回りに回転可能に光接合できれば、光コネクタ70の光導波路712の第2端面712bは、固定部材10の半径方向に向けて様々な角度で露出することができる。したがって、光コネクタ70は、固定部材10の光導波路12と外部との間に、様々な方向に伸びる光通信路を提供することができる。
【0055】
図6に示すように、光コネクタ70も、接地電圧用の接地用導線33と、電源電圧用の電源用導線38を備えている。
接地用導線33の一方の端は、突起部714の外壁に形成されている接地用第3端子772に電気的に接続されている。接地用導線33の他方の端は、連結穴779aを画定している内壁に形成されている接地用第4端子773に電気的に接続されている。接地用導線33は、光導波路712外に設けられており、本体715内を貫通して伸びている。
電源用導線38の一方の端は、突起部714の外壁に形成されている電源用第3端子771に電気的に接続されている。電源用導線38の他方の端は、連結穴779aを画定している内壁に形成されている電源用第4端子774に電気的に接続されている。電源用導線38は、光導波路712外に設けられており、本体715内を貫通して伸びている。
【0056】
また、図7に示すように、外部コネクタ72もまた、接地電圧用の接地用導線33と、電源電圧用の電源用導線38を備えている。
接地用導線33の一方の端は、連結突起部779bの外壁に形成されている接地用連結端子732に電気的に接続されている。接地用導線33の他方の端は、外部に向けて伸びている。
電源用導線38の一方の端は、連結突起部779bの外壁に形成されている電源用連結端子731に電気的に接続されている。電源用導線38の他方の端は、外部に向けて伸びている。
【0057】
図8に示すように、光コネクタ70を介して固定部材10と外部コネクタ72を連結すると、接地用導線33は、固定部材10と光コネクタ70と外部コネクタ72に亘って電気的に接続される。同様に、電源用導線38も、固定部材10と光コネクタ70と外部コネクタ72に亘って電気的に接続される。したがって、外部に露出している接地用導線33及び電源用導線38に、接地電圧及び電源電圧を供給すれば、光コネクタ70及び固定部材10を介して、積層されている複数の回路基板20に接地電圧及び電源電圧を供給することができる。
【0058】
図10及び図11に、第1変形例の光コネクタ170を示す。図12及び図13に第2変形例の光コネクタ270を示す。なお、光コネクタ70の構成要素と作用効果が同一のものに関しては同一符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
図10及び図11に示す光コネクタ170は、前記した光コネクタ70が設けられている回路基板20とは反対側の回路基板20に設けられている。光コネクタ170は、固定部材10と連結するために嵌合穴760を備えていることを特徴としている。
嵌合穴760は、固定部材10の挿入穴60の形状と略一致した形状を備えている。このため、嵌合穴760には、固定部材10の第2部分14が嵌合される。固定部材10と固定部材10が嵌合する仕組みと同一の仕組みを利用して、光コネクタ170と固定部材10を連結することができる。嵌合穴760は、固定部材10の第2部分14を受入れると、固定部材10の光導波路12の第1端面12aと光コネクタ170の光導波路712の第1端面712aが光接合される。
【0060】
光コネクタ170も、接地電圧用の接地用導線33と、電源電圧用の電源用導線38を備えている。
接地用導線33の一方の端は、嵌合穴760を画定している内壁に形成されている接地用第5端子776に電気的に接続されている。接地用導線33の他方の端は、連結穴779aを画定している内壁に形成されている接地用第6端子778に電気的に接続されている。接地用導線33は、光導波路712外に設けられており、本体715内を貫通して伸びている。
電源用導線38の一方の端は、嵌合穴760を画定している内壁に形成されている電源用第5端子775に電気的に接続されている。電源用導線38の他方の端は、連結穴779aを画定している内壁に形成されている電源用第6端子777に電気的に接続されている。電源用導線38は、光導波路712外に設けられており、本体715内を貫通して伸びている。
これにより、光コネクタ170の場合でも、接地用導線33は、固定部材10と光コネクタ170と外部コネクタ172に亘って電気的に接続される。同様に、電源用導線38も、固定部材10と光コネクタ170と外部コネクタ172に亘って電気的に接続される。
【0061】
図12及び図13に示す光コネクタ270は、光コネクタ70と光コネクタ170を組合せた構造を備えている。光コネクタ270は、積層されている回路基板20の間の任意の回路基板20に対して設けることができる。光コネクタ270は、光コネクタ70の構成要素である突起部714と連結穴779aを備えている。これにより、光コネクタ270は、突起部714によって連結される固定部材10の光導波路12と、連結穴779aによって連結される外部コネクタ72の光導波路721の間に、光通信路を提供することができる。光コネクタ270はさらに、光コネクタ170の構成要素である嵌合穴760と連結穴779aを備えている。これにより、光コネクタ270は、嵌合穴760によって連結される固定部材10の光導波路12と、連結穴779aによって連結される外部コネクタ72の光導波路721の間に、光通信路を提供することができる。
図13に示すように、光コネクタ270は、一対のミラー174a、174bを備えている。これにより、外部コネクタ20を介して外部から送信された光信号は、軸方向に伸びる光導波路712の一方の端面712aと他方の端面712cから出射することができる。したがって、光コネクタ270の上下に積層されている回路基板20に対して、光信号を伝播することができる。あるいは、一対のミラー174a、174bは、光コネクタ270の上下に積層されている回路基板20からの光信号を外部コネクタ272に向けて伝播することができる。
なお、一対のミラー174a、174bは、ハーフミラーであることが好ましい。この場合、光コネクタ270の上下に積層されている回路基板20の間の光信号の送受信を良好に行うことができる。
また、光コネクタ270は、一の回路基板20と他の回路基板20を固定する役割も担っている。
【0062】
固定部材10は、その他に下記の特徴を備えている。
(1)固定部材10に光導波路12を設けることによって、回路基板20に光導波路用の部材を別個に設ける必要がない。このため、固定部材10の利用は、回路基板20の面積を小さくするとともに、モジュール100の小型化を実現することができる。
(2)固定部材10の利用は、複数の固定部材10を貫通して1系統のみの光導波路12を提供することができる。このため、固定部材10の利用は、回路基板20の面積を小さくするとともに、モジュール100の小型化を実現することができる。また、光導波路12を1系統のみにすることで、光通信用の構造が簡単化される。
(3)回路基板20は、上下の固定部材10に狭持して固定されている。回路基板20の開口22が略円形に形成されており、その開口22に挿入される固定部材10が略円筒状に形成されていることから、狭持する力を調整すれば、回路基板20を固定部材10の軸周りに回転させることができる。したがって、固定部材10の軸周りにおける回路基板20の位置を調整することができる。このため、一の回路基板20と他の回路基板20の積層方向の位置関係を正確に一致させることができる。
(4)固定部材10に発光部40と受光部50の両者が設けられているので、発光部40からの光信号を同一の固定部材10の受光部50で監視することもできる。これにより、受光部50で監視された発光部40の状態に基づいて、発光部40をフィードバック制御することも可能になる。この場合、発光部40と受光部50の間に接続されるマイコン等の処理回路を固定部材10内に設ければ、フィードバック制御が可能になる。
(5)同一の固定部材10に設けられた受光部50と発光部40において、その受光部50が他の固定部材10からの光信号を得たのを合図に、発光部40が光信号を生成するようにしてもよい。受光部50と発光部40を連動させることによって、他の固定部材10からの光信号を増幅して、さらに他の固定部材10に向けて光信号を伝播させることができる。例えば、多数の回路基板20が積層している場合でも、光信号のエネルギー損失を補償して、多数の回路基板20に対して光信号を伝播させることができる。また、光導波路12にプラスチックファイバー(一般的に、ガラスファイバーよりもエネルギー損失が大きい)を利用する場合でも、光信号のエネルギー損失を補償して、複数の回路基板20に対して光信号を伝播させることができる。この場合、発光部40と受光部50の間に接続されるマイコン等の処理回路を固定部材10内に設けることによって、受光部50と発光部40の間において、発光部40が光信号を生成するタイミングを調整することができる。
また、実施例に代えて以下の構造を採用することもできる。
(6)同一の固定部材10に設けられた受光部50と発光部40において、その受光部50が他の固定部材10からの光信号を得たのを合図に、発光部40が異なる波長の光信号を生成するようにしてもよい。異なる光信号を生成することによって、通信状態の情報を付加させることもできる。例えば、所定の回路基板20が光信号を受信したという情報を付加させることができる。
(7)光信号が、光導波路12内を選択された方向のみに伝播するようにしてもよい。この場合、反射手段には全反射する光ミラーを利用するのが好ましい。さらにこの場合、同一の固定部材10に設けられた受光部50と発光部40において、その受光部50が他の固定部材10からの光信号を得たのを合図に、発光部40が光信号を生成するようにするのが好ましい。さらにこの場合、連結された固定部材10に亘って伸びている光導波路12の一方端と他方端を光接合させ、光導波路をループ状に構築するのが好ましい。これにより、光導波路が選択された方向のみに伝播する場合でも、複数枚の回路基板20間において情報の送受信が可能になる。また、受光部50と発光部40を連動させることによって、光信号のエネルギー損失を補償して、多数の回路基板20に対して光信号を伝播させることもできる。
【0063】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】モジュールの構成を概略的に示す。
【図2】固定部材の拡大斜視図を概略的に示す。
【図3】受光部及び発光部を有する固定部材の断面図を概略的に示す。
【図4】受光部及び発光部を有しない固定部材の断面図を概略的に示す。
【図5】複数の種類の固定部材が用いられたモジュールの断面を概略的に示す。
【図6】光コネクタの断面図を模式的に示す。
【図7】外部コネクタの断面図を模式的に示す。
【図8】固定部材と光コネクタと外部コネクタが連結した状態を示す。
【図9】光コネクタが固定部材の軸方向回りに回転する様子を示す。
【図10】第1変形例の光コネクタを備えたモジュールの構成を示す。
【図11】第1変形例の光コネクタの断面図を模式的に示す。
【図12】第2変形例の光コネクタを備えたモジュールの構成を示す。
【図13】第2変形例の光コネクタの断面図を模式的に示す。
【符号の説明】
【0065】
10:固定部材
12、712、721:光導波路
12a、12b、712a、712b、712c:光導波路の端面
14:第2部分
15:固定部材の本体
16:第1部分
18:固定部材の段差面
20:回路基板
22:開口
31:電源用第2端子
32:接地用第2端子
33:接地導線
34:第2信号配線
35:接地用第1端子
36:電源用第1端子
37:第1信号配線
38:電源導線
40:発光部
42:発光素子
44、46、54、56:ハーフミラー
48:第2反射手段
50:受光部
52:受光素子
58:第1反射手段
60:挿入穴
70:光コネクタ
72:外部コネクタ
74、174a、174b:ミラー
82:接地用基板端子
84:発光素子用信号端子
86:受光素子用信号端子
88:電源用基板端子
100:モジュール
711:連結手段
714:光コネクタの突起部
715:光コネクタの本体
760:嵌合穴
771:電源用第3端子
772:接地用第3端子
773:接地用第4端子
774:電源用第4端子
775:電源用第5端子
776:接地用第5端子
777:電源用第6端子
778:接地用第6端子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の回路基板と、
その複数枚の回路基板を所定距離を隔てて固定するとともに、回路基板間に光通信路を提供する固定部材と、
その固定部材に連結されるとともに、その固定部材の軸方向とは異なる方向に光通信路を提供する光コネクタと、を備えているモジュールであって、
固定部材は、
本体と、
その本体を貫通して伸びている光導波路を有しており、
光コネクタは、
本体と、
その本体内に設けられているミラーと、
その本体の表面の一部に露出している第1端面から、前記ミラーを介して屈曲し、その第1端面に対して非平行な本体の表面に露出している第2端面まで伸びている光導波路と、
その第1端面を含んで形成されており、その第1端面が固定部材の光導波路の端面に光接合する状態で、その固定部材に連結する機構を有する連結手段と、
を備えていることを特徴とするモジュール。
【請求項2】
光コネクタの連結手段は、固定部材と連結するときに、第1端面とその固定部材の光導波路の端面が、その対向方向回りの少なくとも複数の角度で光接合する機構を有していることを特徴とする請求項1のモジュール。
【請求項3】
固定部材及び/又は光コネクタの光導波路は、プラスチックファイバーを備えていることを特徴とする請求項1又は2のモジュール。
【請求項4】
固定部材の本体は、
外径が大きい第1部分と、
外径が小さい第2部分を備えており、
その第1部分と第2部分の間に段差面が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかのモジュール。
【請求項5】
固定部材の第1部分は、他の固定部材の第2部分を受入れる挿入穴を備えており、その挿入穴は、第1部分の端面から光導波路の貫通方向に沿って伸びており、その挿入穴の形状と、第2部分の形状が略一致しており、
一方の固定部材の挿入穴に他方の固定部材の第2部分を挿入すると、一方の固定部材の光導波路の端面と他方の固定部材の光導波路の端面が光接合されることを特徴とする請求項4のモジュール。
【請求項6】
固定部材は、
固定部材の挿入穴を画定する内壁の少なくとも一部に形成されている第1端子と、
第2部分の外壁の少なくとも一部に形成されている第2端子と、
光導波路外に設けられており、第1端子と第2端子を電気的に接続する導線をさらに備えており、
一方の固定部材の挿入穴に他方の固定部材の第2部分を挿入すると、一方の固定部材の第1端子と他方の固定部材の第2端子が電気的に接続されることを特徴とする請求項5のモジュール。
【請求項7】
光コネクタの連結手段は、
固定部材の第2部分の形状に略一致した形状の突起部、及び/又は固定部材の挿入穴の形状に略一致した形状の嵌合穴を備えており、
連結手段が突起部を備えている場合は、固定部材の挿入穴に突起部を挿入すると、固定部材の光導波路の端面と突起部の第1端面が光接合されることを特徴としており、
連結手段が嵌合穴を備えている場合は、嵌合穴が固定部材の第2部分を受入れると、固定部材の光導波路の端面と嵌合穴の第1端面が光接合されることを特徴とする請求項5又は6のモジュール。
【請求項8】
光コネクタの連結手段は、
固定部材の第2部分の形状に略一致した形状の突起部、及び/又は固定部材の挿入穴の形状に一致した形状の嵌合穴を備えており、
光コネクタは、連結手段が突起部を備えている場合には、
その突起部の外壁の少なくとも一部に形成されている第3端子と、
その突起部以外の本体の表面の一部に形成されている第4端子と、
光導波路外に設けられており、第3端子と第4端子を電気的に接続する導線をさらに備えており、
固定部材の挿入穴に突起部を挿入すると、固定部材の光導波路の端面と突起部の第1端面が光接合されるとともに、固定部材の第1端子と突起部の第3端子が電気的に接続されることを特徴としており、
光コネクタは、連結手段が嵌合穴を備えている場合には、
その嵌合穴を画定する内壁の少なくとも一部に形成されている第5端子と、
嵌合穴以外の本体の表面の一部に形成されている第6端子と、
光導波路外に設けられており、第5端子と第6端子を電気的に接続する導線をさらに備えており、
嵌合穴が固定部材の第2部分を受入れると、固定部材の光導波路の端面と嵌合穴の第1端面が光接合されるとともに、固定部材の第2端子と嵌合穴の第5端子が電気的に接続されることを特徴としている請求項6のモジュール。
【請求項9】
固定部材の第2部分及び光コネクタの連結手段の突起部は、円筒状の形状を有しており、
固定部材の挿入穴及び光コネクタの連結手段の嵌合穴は、その円筒状の形状に略一致した形状を有していることを特徴とする請求項7又は8のモジュール。
【請求項10】
第1端子、第2端子及び導線の組合せは、複数個が固定部材に形成されており、そのうちの少なくとも一つの組合せは接地電圧用であり、そのうちの少なくとも一つの組合せは電源電圧用であることを特徴とする請求項6〜9のいずれかのモジュール。
【請求項11】
前記固定部材は、
光導波路内に設けられており、光導波路内を伝播する光信号の一部を光導波路外に向けて反射する第1反射手段と、
光導波路外に設けられており、第1反射手段で反射された光信号を電気信号に変換する受光素子をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかのモジュール。
【請求項12】
前記固定部材の第1反射手段は、ハーフミラーを備えており、
第1反射手段は、光導波路内を伝播する光信号の一部を反射するとともに、残部を透過することを特徴とする請求項11のモジュール。
【請求項13】
前記固定部材の第1反射手段は、一対のハーフミラーを備えており、
第1反射手段は、光導波路内を一方から他方に伝播する光信号の一部と、光導波路内を他方から一方に伝播する光信号の一部を、受光素子に向けて反射することを特徴とする請求項12のモジュール。
【請求項14】
前記固定部材の表面に、受光素子に接続されている接続線の端部が露出しており、
受光素子と回路基板を電気的に接続する配線が確保されていることを特徴とする請求項11〜13のいずれかのモジュール。
【請求項15】
前記固定部材は、
光導波路外に設けられており、電気信号を光信号に変換する発光素子と、
光導波路内に設けられており、発光素子からの光信号を光導波路内に向けて反射する第2反射手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜14のいずれかのモジュール。
【請求項16】
前記固定部材の第2反射手段は、ハーフミラーを備えており、
第2反射手段は、発光素子からの光信号を光導波路内に向けて反射するとともに、光導波路内を伝播する光信号を透過することを特徴とする請求項15のモジュール。
【請求項17】
前記固定部材の第2反射手段は、一対のハーフミラーを備えており、
第2反射手段は、発光素子からの光信号を光導波路の一方に向けて反射するとともに、発光素子からの光信号を光導波路の他方に向けて反射することを特徴とする請求項16のモジュール。
【請求項18】
前記固定部材の表面に、発光素子に接続されている接続線の端部が露出しており、
発光素子と回路基板を電気的に接続する配線が確保されていることを特徴とする請求項15〜17のいずれかのモジュール。
【請求項19】
複数枚の回路基板と、
その複数枚の回路基板を所定距離を隔てて固定するとともに、回路基板間に光通信路を提供するシリーズ化された固定部材と、
その固定部材に連結されるとともに、その固定部材の軸方向とは異なる方向に光通信路を提供する光コネクタと、を有するモジュールであって、
固定部材は、
本体と、光導波路と、光導波路を伝播する光信号の一部を受光して電気信号に変換する受光素子と、光導波路に導入する光信号を発光する発光素子を備えている第1固定部材と、
本体と、光導波路と、光導波路を伝播する光信号の一部を受光して電気信号に変換する受光素子を備えている第2固定部材と、
本体と、光導波路と、光導波路に導入する光信号を発光する発光素子を備えている第3固定部材と、
本体と、光導波路を備えている第4固定部材を備えており、
第1固定部材から第4固定部材は共通形状であって、間に回路基板を挟んだ状態で任意の固定部材に任意の固定部材を接続するとともに、その任意の固定部材の光導波路の端面と任意の固定部材の端面を光接合することが可能であり、
他の回路基板と信号を発信・受信する回路基板には第1固定部材が選択され、
他の回路基板から信号を受信する回路基板には第2固定部材が選択され、
他の回路基板に信号を発信する回路基板には第3固定部材が選択され、
他の回路基板と信号を発信も受信もしない回路基板には第4固定部材が選択されて用いられることを特徴としており、
光コネクタは、
本体と、
その本体内に設けられているミラーと、
その本体の表面の一部に露出している第1端面から、前記ミラーを介して屈曲し、その第1端面に対して非平行な本体の表面の一部に露出している第2端面まで伸びている光導波路と、
その第1端面を含んで形成されており、その第1端面が固定部材の光導波路の端面に光接合する状態で、その固定部材に連結する機構を有する連結手段と、
を備えていることを特徴とするモジュール。
【請求項20】
光コネクタの連結手段は、固定部材と連結するときに、第1端面とその固定部材の光導波路の端面が、その対向方向回りの少なくとも複数の角度で光接合する機構を有していることを特徴とする請求項19のモジュール。
【請求項21】
複数枚の回路基板が固定部材を介して積層されており、その固定部材には光導波路が貫通して伸びており、その光導波路を利用して回路基板間に光通信路が提供されているモジュール用の光コネクタであって、
本体と、
その本体内に設けられているミラーと、
その本体の表面の一部に露出している第1端面から、前記ミラーを介して屈曲し、その第1端面に対して非平行な本体の表面の一部に露出している第2端面まで伸びている光導波路と、
その第1端面を含んで形成されており、その第1端面が前記固定部材の光導波路の端面に光接合する状態で、その固定部材に連結する機構を有する連結手段と、を備えている光コネクタ。
【請求項22】
光コネクタの連結手段は、固定部材と連結するときに、第1端面とその固定部材の光導波路の端面が、その対向方向回りの少なくとも複数の角度で光接合する機構を有していることを特徴とする請求項21の光コネクタ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−256470(P2007−256470A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78869(P2006−78869)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスアンプ株式会社 (340)
【Fターム(参考)】