説明

視覚支援装置

【課題】自車両周辺に存在して構造物などにより遮られる障害物を的確に表示することが可能な視覚支援装置を提供する。
【解決手段】自車両周辺の道路形状および構造物を含む3D画像と、構造物により遮蔽され得る他車両を示すイメージ画像とを同一のHUD15に重畳して表示させる処理部18を備え、さらに運転者の視点位置を検知する視線センサ17と、車室内に配置されて運転者による操作入力が可能なスイッチ16とを備え、構造物の位置と構造物に対応する運転者の視点位置とが一致した状態でスイッチ16への操作入力があったときに、処理部18は、構造物から所定距離以内に存在する他車両を示すイメージ画像を3D画像に重畳してHUD18に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両に搭載される視覚支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、衝突の危険性がある等、注意を要する障害物の情報をフロントガラスに設けられたヘッドアップディスプレイなどに表示する視覚支援装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この視覚支援装置においては、ヘッドアップディスプレイなどの画面に表示される障害物の手前にビル等の遮蔽物が重畳されて視認できない場合に、遮蔽物を半透明又はエッジのみ表示して対象物を透過表示させるようになっている。
【特許文献1】特開2007−172541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した視覚支援装置は、例えば市街地など自車両から所定の距離内に注意を要する障害物が多数存在する場合に、全ての障害物が同時にディスプレイ表示されてしまい、画面表示が煩雑になってしまうという課題がある。
【0004】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、自車両周辺に存在して構造物などにより遮られる障害物を的確に表示することが可能な視覚支援装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、自車両周辺の道路形状および構造物を含む周辺画像(例えば、実施の形態における3D画像)と、前記構造物により遮蔽され得る障害物(例えば、実施の形態における他車両)を示す画像(例えば、実施の形態におけるイメージ画像)とを同一の表示手段(例えば、実施の形態におけるHUD15)に重畳して表示させる表示制御手段(例えば、実施の形態における処理部18)を備えた視覚支援装置であって、運転者の視線方向を検知する視線検知手段(例えば、実施の形態における視線センサ17)と、車室内に配置されて運転者による操作入力が可能な入力手段(例えば、実施の形態におけるスイッチ16)とを備え、前記表示制御手段は、前記自車両から見た前記構造物の存在する方向と前記運転者の視線方向とが一致した状態で前記入力手段への操作入力があったときに、当該構造物から所定距離以内に存在する前記障害物を示す画像を前記周辺画像に重畳して前記表示手段に表示させることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載された発明において、前記表示制御手段が、前記障害物が存在する場合に当該障害物と前記自車両との間に存在する構造物を透過させた状態で前記周辺画像を前記表示手段に表示するとともに、前記障害物を示す画像を前記表示手段に表示し、前記障害物が存在しない場合にはその旨を前記表示手段に表示することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載した発明は、自車両周辺の道路形状及び構造物を含む周辺画像と、前記構造物により遮蔽され得る障害物を示す画像とを同一の表示手段に重畳して表示させる表示制御手段を備えた視覚支援装置であって、車室内に配置されて運転者による操作入力が可能な入力手段を備え、前記表示制御手段は、前記入力手段への操作入力がある毎に、自車両の位置から近い位置に存在する前記構造物から順に透過させた状態で前記周辺画像を表示するとともに、前記透過させた構造物から所定距離以内に存在する前記障害物を示す画像を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、視線検知手段によって運転者の視線方向を検知し、この検知した視線方向と自車両から見た構造物の存在する方向とが一致した状態で入力手段への操作入力があったときに、この視線方向と一致する方向に存在する構造物から所定距離以内の障害物、すなわち当該構造物により遮られてしまい直接視認できない障害物の画像を周辺画像に重畳して表示させることができるため、運転者の視線方向と一致しない方向に存在するその他の構造物に遮蔽された障害物の画像が周辺画像に重畳して表示手段に表示されるのを防止するとともに、的確に障害物の画像を周辺画像に重畳表示して視認性を向上することができる効果がある。
【0009】
請求項2に記載した発明によれば、視線方向と自車両から見た構造物の存在する方向とが一致した状態で入力手段への操作入力があり、障害物が存在した場合、障害物と自車両との間に存在する構造物を透過した状態で周辺画像を表示するとともに障害物を示す画像を表示する一方、障害物が存在しないときには障害物が存在しない旨を表示するため、障害物の存在の有無を明確に把握することができるとともに、障害物が存在するときには、構造物が透過表示されて運転者がより正確に障害物の位置を把握することができる効果がある。
【0010】
請求項3に記載した発明によれば、視線検知手段によって運転者の視線方向を検知し、この検知した視線方向と自車両から見た構造物の存在する方向とが一致した状態で入力手段への操作入力がある毎に、自車両から近い位置の構造物から順に透過しつつ、この構造物から所定距離内に存在する障害物、すなわち当該構造物に遮られると思われる障害物を示す画像を周辺画像に重畳して表示させることができるため、運転者が見たい障害物を示す画像のみを的確に重畳表示して視認性を向上することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、この発明の実施の形態における視覚支援装置について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、この実施の形態に係る視覚支援装置10は、自動車等の車両に搭載されるものであり、送受信部11と、自車位置検出部12と、データベース13と、HUD(ヘッドアップディスプレイ)15と、スイッチ16と、視線センサ17と、処理部18と、車内映像撮影カメラ20とを備えて構成されている。
【0012】
送受信部11は、自車両周辺の他車両と車車間通信によって様々な情報の送受を行うものであり、例えば、他車両の位置や速度等の走行情報や、他車両が取得しているその他の他車両の走行情報等を取得する一方、他車両に対して自車両の位置や速度等の走行情報や自車両が取得しているその他の他車両の走行情報等を送信する。なお、送受信部11により通信を行う相手が他車両の場合について説明したこれに限られず、例えば、人が所持する携帯端末から人の移動情報を取得するようにしたり、路側等に設けられたビーコン装置などから渋滞情報など道路交通情報を取得する路車間通信を行う構成としてもよい。
【0013】
自車位置検出部12は、例えば、人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS(Global Position System)信号や、GPS信号の誤差を補正して測位精度を向上させるためのD(Differential)GPS信号等の測位信号を処理する測位信号処理部(図示略)と、例えばVICS情報等のように車外の情報発信装置(図示略)から発信される車両位置検出用の信号波を処理する位置検出用信号波処理部(図示略)と、例えば適宜のジャイロセンサー及び加速度計を具備してなる自律航法部(図示略)とを備えて構成されている。
【0014】
ここで、測位信号処理部は、例えば人工衛星から受信したGPS信号や、適宜の基地局から受信したDGPS信号に基づいて車両の現在位置を算出する。
また、上記位置検出用信号波処理部は、例えばFM多重放送や路上等に配置されたビーコン装置からの光信号及び電波信号によって受信したVICS情報等の道路交通情報に基づいて車両の現在位置を算出する。
さらに、上記自律航法部は、例えばジャイロセンサーにより、水平面内での車両の向き及び鉛直方向に対する傾斜角度の角度変化量を検出すると共に、例えば加速度計により車両の加速度を検出して車両の現在位置を算出する。
【0015】
データベース13は、例えばハードディスク装置等の磁気ディスク装置や、DVD等の光ディスク装置等、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体からなり、高架道路や陸橋、ビル等の構造物、及び、山や丘や樹木等の自然物等からなるオブジェクトを、2次元的及び3次元的にディスプレイ15に表示するための地図データを格納している。
【0016】
HUD15は、車両のインスツルメントパネル上部の運転席の正面における、運転者の前方視界を妨げない位置に設けられ、その映像表示部として凹面ミラーを備え、インスツルメントパネル内部からの映像を反射・投影する。
【0017】
スイッチ16は、例えば、ステアリングホイールに配置される押しボタン式等の入力装置であり、運転者がその視認方向に存在する障害物情報の確認意思があることを入力するためのものである。このスイッチ16が押下されるとその入力情報は処理部18へ出力される。
【0018】
視線センサ17は、車内映像撮影カメラ20から入力される画像データに対して、例えば運転者の顔や眼球を検知対象物とした特徴量算出および形状判別等の認識処理を行い、認識した検知対象物に基づき、運転者の視線方向を算出する。そして、算出した視線方向のデータを処理部18へ出力する。
【0019】
処理部18は、データベース13から検索された地図データに対して、自車位置検出部12における測位信号処理部及び道路交通情報処理部及び自律航法部のそれぞれ、又は、何れかから得られる車両の現在位置の情報に基づいてマップマッチング等を行うと共に、後述するように、検出された車両の現在位置から見た進行方向の3D画像(周辺画像)をデータベース13より読み出してHUD15へ表示する制御を行う。
【0020】
また、処理部18はデータベース13から検索された地図データと共に、送受信部11にて得られた他車両およびその他の他車両の走行情報に基づく他車両およびその他の他車両の走行位置を、視線センサ17およびスイッチ16からの入力情報に応じてHUD15へ表示させる。
このため、処理部18には、自車位置検出部12から出力される車両の現在位置の信号と、データベース13から検索される地図データとが入力されている。
【0021】
さらに、処理部18は、視線センサ17から入力される視線方向のデータ、およびデータベース13に記憶されている地図データに基づき、運転者の視線の先にある3D画像上の構造物を特定する。
また、処理部18は、スイッチ16が押下された旨の情報が入力されると、その時点で運転者の視線方向に存在する構造物のうち自車両に最も近いものを3D画像上で特定する。すなわち、自車両から見た構造物の存在する方向と運転者の視線方向とが一致した状態で、スイッチ16が押下されると、該当する3D画像上の構造物の内、最も自車両から近い構造物を特定する。そして、処理部18は、特定された構造物の所定距離内に存在する他車両などの障害物のイメージ画像をHUD15の3D画像へ重畳表示する。なお、イメージ画像は、車両など、障害物の種類毎に予めデータベース13に記憶される。
【0022】
処理部18は、上記重畳表示された状態でさらにスイッチ16が押下されると、運転者の視線方向に存在する3D画像上の構造物の内、特定する構造物を順次自車両に近いものから遠方のものへと切換える。そして、この切換えの都度、特定された構造物の所定距離内に存在する他車両などの障害物のイメージ画像をHUD15の3D画像へ重畳させて表示させる。ここで、所定距離とは、構造物の近傍に存在することでその構造物により遮蔽され、運転者の肉眼では視認が困難な状態であることを判定するために予め設定された距離である。
【0023】
また、処理部18は、障害物を3D画像へ重畳表示させる際に、上記構造物が他車両(障害物)の自車両側すなわち手前に存在して他車両の視認性を阻害する可能性があることから、当該構造物を透過表示させる。
【0024】
車内映像撮影カメラ20は、車室内のインストルメントパネルやダッシュボード上部等に設けられ、例えば可視光領域や赤外線領域にて撮像可能なCCDカメラやC−MOSカメラ等により構成される。車内映像撮影カメラ20は、運転者の顔や眼球に向けて照射された赤外線の反射や、運転者の顔や眼球から反射される可視光を撮影する。そして、車内映像撮影カメラ20は、撮影した画像に対してフィルタリングや二値化処理等の所定の画像処理を行い、二次元配列の画素からなる画像データを生成してこの画像データを視線センサ17へ出力する。
【0025】
この実施の形態における視覚支援装置10は上述した構成を備えており、次にこの視覚支援装置の動作について図2のフローチャートを参照しながら説明する。
まずステップS01においては、自車位置検出部12より自車両の現在位置を取得する。
次いでステップS02においては、送受信部11より他車両の走行情報などの車両周辺情報を取得する。
そしてステップS03においては、視線センサ17より運転者の視線方向を検出する。
ステップS04においては、視線センサ17の検出結果に基づいて、3D画像上において視線方向と一致する方向に存在する構造物を特定する。
【0026】
ステップS05においては、スイッチ16が押下されたか否かを判定する。
ステップS05における判定結果が「No」(押下されていない)である場合は、運転者に障害物を確認する意思がないため本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0027】
一方、ステップS05における判定結果が「Yes」(押下された)である場合は、ステップS06へ進み、視線方向に構造物が存在するか否かを判定する。
ステップS06における判定結果が「No」(構造物なし)である場合は、HUD15上に他車両等の障害物が視認可能な状態で出現されるので本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0028】
ステップS06における判定結果が「Yes」(構造物あり)である場合は、ステップS07へ進み視線方向と一致する3D画像上の構造物のうち、最も自車両に近い構造物を特定し、当該構造物をHUD15上で透過表示してステップS08へ進む。
ステップS08においては、透過表示の対象となった構造物の所定距離以内に他車両(障害物)が存在するか否かを判定する。
【0029】
ステップS08における判定結果が「No」(他車両が存在しない)である場合は、ステップS11に進み他車両(障害物)が存在しない旨を表示して本ルーチンの実行を一旦終了する。ここで、他車両が存在しない旨の表示とは、構造物の所定距離以内に他車両が存在しているときと明らかに異なる表示方法であれば良く、例えば、構造物をグレーで表示するいわゆるグレーアウトなどの方法がある。
【0030】
ステップS08における判定結果が「Yes」(他車両が存在する)である場合はステップS09へ進みHUD15の3D画像上における他車両の位置に車両を示すイメージ画像を表示する。
次いで、ステップS10においては、後述する図3の右方注視時の「車内」に示すように、運転者の視線方向に応じた位置、例えば車室内のフロントピラーの位置などにそれぞれ設けられる複数の点灯装置Pのうち、上記視線方向に対応する位置に設置されたものを点灯させる。なお、上記点灯装置Pを設けることで、視線センサ17により検出された視線方向を運転者に認識させることができ、他車両の存在の認知を促すこともできる。
【0031】
次に、上述した動作すなわちHUD15の表示の一例について図3に示すテーブルを参照しながら説明する。この図3では、十字路において自車両C1の直進方向の右側から他車両C2が接近し、道路に沿って、自車両C1および他車両C2よりも十分に高い壁が存在する状況である。この図3において、「ダウンビュー」とは、説明の都合上、自車両C1と他車両C2との位置関係および運転者の視線方向を分かり易くするために上方から見た図であり、「車内」とは、運転者の後方の車室内から前方を見たときの景色を示している。また、「ディスプレイ」とは、HUD15に表示される全体画像を示している。また、図3中、運転者の視線方向を破線矢印で示し、運転者の頭部を符号「D」で示している。そして、この図3の一例の場合、他車両C2が自車両C1から最も近い車両である。
【0032】
まず、運転者が前方を注視している状態(図3中、前方注視時の「車内」参照)では、HUD15には、車室内から進行方向前方を見た景色と同等の3D画像が表示される(図3中、前方注視時の「ディスプレイ」参照)。そして、運転者が、自車両C1が走行している道路の左側の壁WLの方向を注視しながらスイッチ16を押下すると(図3中、左方注視時の「車内」参照)、HUD15に表示されている壁WLに相当する部分が透過表示されて、前方の十字路から左側に延びる道路が視認できるようになる(図3中、左方注視時の「ディスプレイ参照」)。なお、図3においては、図示都合上、他車両(障害物)が存在しない旨の表示を省略している。
【0033】
一方、運転者が、自車両C1が走行している道路の右側の壁WRの方向を注視しながらスイッチ16を押下すると(図3中、右方注視時の「車内」参照)、HUD15に表示されている壁WRに相当する部分が透過表示されて、前方の十字路から右側に延びる道路が視認できるようになるとともに、この壁WRから所定距離内に存在する他車両C2のイメージ画像G2が、車車間通信により得られた他車両C2の位置情報に基づいて、この他車両C2の位置に相当するHUD15上に表示される(図3中、右方注視時の「ディスプレイ」参照)。
【0034】
そして、この状態から運転者がさらにスイッチ16を押下すると、図示を省略するが、他車両のイメージ画像G2がHUD15上から消去されて他車両C2の次に自車両C1から近く且つ、視線方向に存在するその他の他車両のイメージ画像が、イメージ画像G2と同様にHUD15上に表示されると共に、その手前に存在する視線方向の壁などの構造物が全て透過表示されることとなる。そして、スイッチ16の押下に応じて順次遠方の他車両が表示される。
【0035】
したがって、上述した実施の形態によれば、視線センサ17によって運転者の視線方向を検知し、この検知した視線方向と構造物(例えば、壁WR)の存在する方向とが一致した状態で入力手段への操作入力があったときに、この視線方向と存在する方向が一致した当該構造物から所定距離以内、すなわち当該構造物により遮られると思われる他車両(C2)を示す他車両のイメージ画像(G2)を3D画像に重畳して表示させることができる。この結果、運転者の視線方向と一致しないその他の構造物によって遮蔽されている他車両のイメージ画像が同時に3D画像に重畳して表示されるのを防止することができるとともに、的確に他車両などの障害物のイメージ画像を3D画像に重畳表示して視認性を向上することができる。
【0036】
また、運転者の視線方向と自車両から見た構造物の存在する方向とが一致した状態でスイッチ16への操作入力があり、障害物である他車両が存在すると、この他車両と自車両との間に存在する構造物を透過した状態で3D画像を表示するとともに車両のイメージ画像を表示する一方、他車両が存在しないときには他車両が存在しない旨の表示を行うため、他車両の存在の有無を明確に把握することができるとともに、他車両が存在するときに、運転者が他車両の存在の有無を明確に把握することができる。
【0037】
さらに、視線センサ17によって運転者の視線方向を検知し、この検知した視線方向と構造物の存在する方向とが一致した状態でスイッチ16への操作入力がある毎に、自車両から近い位置に存在する構造物から順に透過表示しつつ、この構造物から所定距離内に存在する他車両のイメージ画像を3D画像に重畳して表示させる一方、運転者の視線方向と一致しない構造物に他車両のイメージ画像が重畳してHUD15に表示されるのを防止することができるため、障害物を的確に重畳表示して視認性を向上することができる。
【0038】
なお、上述した実施の形態では、障害物が他車両である場合を一例に説明したが、走行情報や位置情報を取得可能な障害物であればよく、例えば、上述した携帯端末を所持した人などであってもよい。
また、上述の実施の形態では、スイッチ16の繰り返し操作入力に応じて自車両から近い順に他車両のイメージ画像を切換えて表示する際に対象となる他車両のイメージ画像の直前に表示していた他車両のイメージ画像を消去する場合について説明したが、消去せずに表示を維持するようにしてもよい。さらに、構造物を透過表示する場合について説明したが、構造物の輪郭のみを表示するようにしてもよい。
【0039】
さらに、上述した実施の形態では、視線センサ17により検出される視線方向に基づいて障害物である他車両を選択的にHUD15に表示する場合について説明したが、この構成に限られず、他の態様として、例えば、図4に示すように、視線センサ17の出力に無関係に、自車両に最も近い他車両C2からスイッチ16の操作毎に順次遠方の他車両へとHUD15に表示される他車両のイメージ画像の対象を切替えるようにしてもよい。
【0040】
この場合、例えば、図5のステアリングホイールWに示すように、上下方向に回転可能に設けられて所定間隔でクリック感が得られるホイールタイプのスイッチ16bを用いるのが好ましい。このスイッチ16bによれば、1クリックの操作が上述した押しボタン式のスイッチ16の1回の押下に相当するので、ホイールを回転させるだけで短時間のうちに相対的に多数のクリックを行うことができ、例えば、自車両から比較的遠い障害物(他車両)の情報を表示したい場合に、このイメージ画像G2を迅速に選択表示させることができる。また、図5においてホイールタイプのスイッチ16bの近傍には運転者の視認方向における障害物情報を確認する意思があることを入力するためのスイッチ16c及びこの入力をキャンセルする為のキャンセルスイッチ16dが設けられている。なお、スイッチ16b〜16cの配置は、運転者が操作し易い配置であれば良く図5のものに限られるものではない。
【0041】
また、上述した実施の形態では、交差点でのHUD15への表示の一例について説明したが、例えば、図6に示すように、見通しの悪いカーブにおいて構造物や、樹木および法面などに遮蔽される他車両C2のイメージ画像G2も表示するようにしてもよい。
【0042】
さらに、上述した実施の形態では、HUD15へ他車両を示すイメージ画像G2を表示する際に当該他車両C2を遮蔽する構造物の画像を透過表示して他車両C2の走行位置に相当する位置に他車両のイメージ画像G2を表示する場合について説明したが、この構成に限られるものではない。例えば、第2変形例として、構造物の透過表示又は輪郭表示を行わずに、簡略化した他車両C2のイメージ画像を視線方向に表示させるようにしてもよい。例えば、視線方向を左方向、前方向、右方向に3分割した場合、HUD15の最も前面側の左方向、前方向、又は、右方向の所定位置に他車両を示すイメージ画像を表示する。
【0043】
図7は、上記第2の変形例における視覚支援装置の動作の一例を示したものであり、上述した図3に相当するものである。つまり、図7は、図3と同様に十字路において自車両C1の直進方向の右側から他車両C2が接近し、道路に沿って、自車両C1および他車両C2よりも十分に高い壁が存在する状況を示している。なお、「前方注視時」については上述した実施の形態の図3と同様であるため説明を省略する。
【0044】
図7に示すように、運転者が、自車両C1が走行している道路の左側の壁WLの方向を注視しながらスイッチ16を操作すると(図3中、左方注視時の「車内」参照)、HUD15に表示されている壁WLに相当する部分が透過表示されずに何も重畳表示されない(図7中、左方注視時の「ディスプレイ参照」)。ここで、他車両(障害物)が存在しない旨の表示をしてもよい。一方、運転者が、自車両C1が走行している道路の右側の壁WRの方向を注視しながらスイッチ16を押下すると(図7中、右方注視時の「車内」参照)、HUD15に表示される3D画像の右側部分に他車両C2のイメージ画像G3が重畳表示される。(図7中、右方注視時の「ディスプレイ」参照)。
【0045】
この第2変形例によれば、運転者が視認した方向の構造物である壁WRにより他車両C2が遮蔽されている場合にスイッチ16の操作が行われると、3D画像上の視認方向の所定の位置に簡略化された他車両C2のイメージ画像G3が表示されるため、簡単な構成で障害物である他車両C2が構造物である壁WRの向こう側に存在することを運転者に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態における視覚支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における視覚支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態における視覚支援装置のHUDへの表示例を示す図である。
【図4】他の態様における図3に相当する表示例を示す図である。
【図5】スイッチの変形例を示す図である。
【図6】見通しの悪いカーブの表示例を示す図である。
【図7】第2変形例における図3に相当する図である。
【符号の説明】
【0047】
15 HUD(表示手段)
18 処理部(表示制御手段)
17 視線センサ(視線検知手段)
16 スイッチ(入力手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周辺の道路形状および構造物を含む周辺画像と、前記構造物により遮蔽され得る障害物を示す画像とを同一の表示手段に重畳して表示させる表示制御手段を備えた視覚支援装置であって、
運転者の視線方向を検知する視線検知手段と、
車室内に配置されて運転者による操作入力が可能な入力手段とを備え、
前記表示制御手段は、前記自車両から見た前記構造物の存在する方向と前記運転者の視線方向とが一致した状態で前記入力手段への操作入力があったときに、当該構造物から所定距離以内に存在する前記障害物を示す画像を前記周辺画像に重畳して前記表示手段に表示させることを特徴とする視覚支援装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記障害物が存在する場合に当該障害物と前記視点位置との間に存在する構造物を透過させた状態で前記周辺画像を前記表示手段に表示するとともに、前記障害物を示す画像を前記表示手段に表示し、前記障害物が存在しない場合にはその旨を前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1に記載の視覚支援装置。
【請求項3】
自車両周辺の道路形状及び構造物を含む周辺画像と、前記構造物により遮蔽され得る障害物を示す画像とを同一の表示手段に重畳して表示させる表示制御手段を備えた視覚支援装置であって、
車室内に配置されて運転者による操作入力が可能な入力手段を備え、
前記表示制御手段は、前記入力手段への操作入力がある毎に、自車両の位置から近い位置に存在する前記構造物から順に透過させた状態で前記周辺画像を表示するとともに、前記透過させた構造物から所定距離以内に存在する前記障害物を示す画像を表示することを特徴とする視覚支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−134639(P2010−134639A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308907(P2008−308907)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】