説明

覚醒度推定装置及びシステム並びに方法

【課題】弱い眠気を表す覚醒度の推定精度を高める
【解決手段】3種類以上の生理的な特徴量を時間軸上の密度の次元で時系列で取得する特徴量取得手段と、第1密度レベル判定処理手段と、2種類の特徴量の第1の組み合わせに関して、第1の組み合わせに係る第1混合値の時系列を出力する第1混合処理手段と、第1混合値の時系列に対して時間軸上での密度を算出する第1密度計算処理手段と、第1混合値の密度が所定基準密度以上であるか否かを判定し、判定処理結果を出力する第2密度レベル判定処理手段と、他の2種類の特徴量の第2の組み合わせに関して、第2の組み合わせに係る第2混合値の時系列を出力する第2混合処理手段と、第2混合値の時系列に対して時間軸上での密度を算出する第2密度計算処理手段と、第2混合値の密度が所定基準密度以上であるか否かを判定し、判定処理結果を出力する第3密度レベル判定処理手段とから前記被験者の覚醒度を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の覚醒度を高精度に推定する覚醒度推定装置及びシステム並びに方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被験者の瞳孔領域の形状変化から瞬きの時間及び頻度が所定値以上の時に被験者の覚醒度が低下している判断する覚醒状態検知装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−270711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の従来技術のように瞬きの時間及び頻度を用いるだけでは、弱い眠気、即ち強い眠気に襲われる前の段階を、検出することは非常に困難である。
【0004】
そこで、本発明は、弱い眠気を表す覚醒度の推定精度を高めることができる覚醒度推定装置及びシステム並びに方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る覚醒度推定装置は、被験者の3種類以上の生理的な特徴量を、時間軸上の密度の次元で、時系列で取得する特徴量取得手段と、
前記特徴量の種類毎に、特徴量が所定基準密度以上であるか否かを判定し、判定処理結果の時系列を出力する第1密度レベル判定処理手段と、
前記3種類以上の特徴量のうちの2種類の特徴量の第1の組み合わせに関して、それぞれの特徴量に対する前記第1密度レベル判定処理結果の時系列を時間軸上で同期させて混合することで、前記第1の組み合わせに係る第1混合値の時系列を出力する第1混合処理手段と、
前記第1混合値の時系列に対して時間軸上での密度を算出する第1密度計算処理手段と、
前記第1密度計算処理手段により算出される第1混合値の密度が所定基準密度以上であるか否かを判定し、判定処理結果を出力する第2密度レベル判定処理手段と、
前記3種類以上の特徴量のうちの他の2種類の特徴量の第2の組み合わせに関して、それぞれの特徴量に対する前記第1密度レベル判定処理結果の時系列を時間軸上で同期させて混合することで、前記第2の組み合わせに係る第2混合値の時系列を出力する第2混合処理手段と、
前記第2混合値の時系列に対して時間軸上での密度を算出する第2密度計算処理手段と、
前記第2密度計算処理手段により算出される第2混合値の密度が所定基準密度以上であるか否かを判定し、判定処理結果を出力する第3密度レベル判定処理手段と、
前記第2密度レベル判定処理手段による判定処理結果と前記第3密度レベル判定処理手段による判定処理結果とに基づいて、前記被験者の覚醒度を推定する覚醒度推定手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
第2の発明は、第1の発明に係る覚醒度推定装置において、
前記生理的な特徴量は、心拍揺らぎに関する特徴量、目及び口の動きに関する特徴量、及び、目の瞬きに関する特徴量であり、
前記2つの組み合わせは、前記3種類の特徴量の計3通りの組み合わせのうちの何れか2つであることを特徴とする。これにより、弱い眠気の検出に適した2種類の特徴量を総合的に用いて、被験者の覚醒度が推定されるので、弱い眠気に襲われている状態を高精度に検出することができる。
【0007】
第3の発明に係る覚醒度推定装置は、被験者の2種類以上の生理的な特徴量を、時間軸上の密度の次元で、時系列で取得する特徴量取得手段と、
取得した2種類の生理的な特徴量に対して、特徴量の種類毎に、特徴量が所定基準密度以上であるか否かを判定し、判定処理結果の時系列を出力する密度レベル判定処理手段と、
前記2種類の特徴量に対する各判定処理結果の時系列を時間軸上で同期させて混合することで、混合値の時系列を出力する特徴量混合処理手段と、
前記混合値の時系列に対して時間軸上での密度を算出する密度計算処理手段と、
前記密度計算処理手段により算出される密度に基づいて、前記被験者の覚醒度を推定する覚醒度推定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
第4の発明は、第3の発明に係る覚醒度推定装置において、
前記2種類の生理的な特徴量は、心拍揺らぎに関する特徴量及び目及び口の動きに関する特徴量、又は、心拍揺らぎに関する特徴量及び目の瞬きに関する特徴量であることを特徴とする。これにより、弱い眠気の検出に適した2種類の特徴量を総合的に用いて、被験者の覚醒度が推定されるので、弱い眠気に襲われている状態を高精度に検出することができる。
【0009】
第5の発明は、第3の発明に係る覚醒度推定装置において、
前記特徴量取得手段は、心拍揺らぎに関する特徴量、目及び口の動きに関する特徴量、及び、目の瞬きに関する特徴量を、前記特徴量として取得する手段であり、
前記特徴量混合処理手段、密度計算処理手段及び覚醒度推定手段は、前記特徴量取得手段による特徴量の取得状態に応じて、選択的に、心拍揺らぎに関する特徴量及び目及び口の動きに関する特徴量の2種類の特徴量、又は、心拍揺らぎに関する特徴量及び瞬目持続時間増加の2種類の特徴量に対して、前記各処理を実行することを特徴とする。これにより、上記の3種類の特徴量のうち、瞬目持続時間増加又は目及び口の動きに関する特徴量が取得できない状況下においても、2種類の特徴量を総合的に用いて、弱い眠気に襲われている状態を高精度に検出することができる。
【0010】
第6の発明に係る覚醒度推定システムは、上記の第1又は2の発明に係る覚醒度推定装置と、第3〜5の何れかの発明に係る覚醒度推定装置とを含む複数の覚醒度推定装置を有し、
複数の覚醒度推定装置の何れか1つを選択的に用いて、前記被験者の覚醒度を推定することを特徴とする。これにより、特徴量取得手段による特徴量の取得状態に応じて、選択的に適切な種類の特徴量を用いて、弱い眠気に襲われている状態を高精度に検出することができる。
【0011】
第7の発明に係る覚醒度推定方法は、被験者の3種類以上の生理的な特徴量を、時間軸上の密度の次元で、時系列で取得する特徴量取得ステップと、
前記特徴量毎に、時間軸上での特徴量の密度が所定基準密度以上であるか否かを判定し、判定処理結果の時系列を出力する第1密度レベル判定処理ステップと、
前記3種類以上の特徴量のうちの2種類の特徴量の第1の組み合わせに関して、それぞれの特徴量に対する前記第1密度レベル判定処理結果の時系列を時間軸上で同期させて混合することで、前記第1の組み合わせに係る第1混合値の時系列を出力する第1混合処理ステップと、
前記第1混合値の時系列に対して時間軸上での密度を算出する第1密度計算処理ステップと、
前記第1密度計算処理ステップにより算出される第1混合値の密度が所定基準密度以上であるか否かを判定し、判定処理結果を出力する第2密度レベル判定処理ステップと、
前記3種類以上の特徴量のうちのその他の2種類の特徴量の第2の組み合わせに関して、それぞれの特徴量に対する前記第1密度レベル判定処理結果の時系列を時間軸上で同期させて混合することで、前記第2の組み合わせに係る第2混合値の時系列を出力する第2混合処理ステップと、
前記第2混合値の時系列に対して時間軸上での密度を算出する第2密度計算処理ステップと、
前記第2密度計算処理ステップにより算出される第2混合値の密度が所定基準密度以上であるか否かを判定し、判定処理結果を出力する第3密度レベル判定処理ステップと、
前記第2密度レベル判定処理ステップによる判定処理結果と前記第3密度レベル判定処理ステップによる判定処理結果とに基づいて、前記被験者の覚醒度を推定する覚醒度推定ステップとを備えることを特徴とする。
【0012】
第8の発明に係る覚醒度推定方法は、被験者の第1の生理的な特徴量及び第2の生理的な特徴量を、時間軸上の密度の次元で、時系列で取得する特徴量取得ステップと、
前記第1の特徴量と前記第2の特徴量とを時間軸上で同期させて混合することで、混合特徴量の時系列を出力する特徴量混合処理ステップと、
前記混合特徴量の時系列に対して時間軸上での密度を算出する密度計算処理ステップと、
前記密度計算処理ステップにより算出される密度に基づいて、前記被験者の覚醒度を推定する覚醒度推定ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弱い眠気を表す覚醒度の推定精度を高めることができる覚醒度推定装置及びシステム並びに方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0015】
図1は、本発明による覚醒度推定システムにおける主要構成の一実施例を示すシステム構成図である。
【0016】
本実施例の覚醒度推定システム100は、情報取得部110と、覚醒度推定部130、計測要求出力部140と、警報出力部160とを備える。尚、以下で説明する各部の機能(情報処理)は、特に明示した場合を除き、CPU、メモリ等からなるマイクロコンピュータにより実現することができる。メモリ(ROMや、RAM、ハードディスク等任意)には、各部の機能を実現すべくCPUが実行するプログラムやデータ(例えば、以下で説明する各種推定ロジック)が格納されている。
【0017】
情報取得部110は、被験者の生理的な特徴量に関する情報を取得する。情報取得部110は、例えばカラーカメラ、モノクロカメラ、赤外線カメラ、脳波計、心電計、眼電計、筋電計、脈波計ないし心拍計(例えば指先、前腕から計測)、呼吸計(胸、背中等から計測)等、被験者の生理的な特徴量(生理指標)を計測できるものであれば、如何なるものも含みうる。本例では、検出対象の生理的な特徴量は、心拍揺らぎトリガ数、目及び口の動き数、及び、瞬目持続時間増加の発生頻度の3種類とする。これらの詳細については後述する。情報取得部110は、取得した各種の生理的な特徴量のデータを、覚醒度推定部130に供給する。
【0018】
覚醒度推定部130は、第1〜第4覚醒度推定部131〜134と、推定ロジック選択部136と、データチェック部137と、ロジックデータベース138とを備える。
【0019】
ロジックデータベース138には、覚醒度の推定に用いる各種推定ロジックが格納される。本例では、4種類の推定ロジックL1〜L4が格納される。
【0020】
第1覚醒度推定部131は、推定ロジックL1を用いて、被験者の覚醒度を推定する。第2覚醒度推定部132は、推定ロジックL2を用いて、被験者の覚醒度を推定する。第3覚醒度推定部133は、推定ロジックL3を用いて、被験者の覚醒度を推定する。第4覚醒度推定部134は、推定ロジックL4を用いて、被験者の覚醒度を推定する。
【0021】
ここで、眠気度合いに関する覚醒度は、例えば、「眠たくない」、「眠たそう」、「明らかに眠たい」、「非常に眠たそう」、「かなり眠い」といったように、多段階的に分類可能である。但し、本実施例は、比較的弱い眠気を検出するのに好適であるため、以下では、覚醒度は、被験者が「眠たくない」状態にあるときが高い覚醒度であると推定され、被験者が「眠たそう」な状態にあるとき(弱い眠気に襲われているとき)が低い覚醒度であるいったように、2段階で推定されることとする。尚、覚醒度推定部131〜134による推定処理(推定ロジックL1〜L4)の詳細については後述する。
【0022】
推定ロジック選択部136は、情報取得部110から供給される生理的な特徴量の種類に応じて、覚醒度の推定に用いる推定ロジックを選択する。図2は、特徴量の種類と、選択される推定ロジックL1〜L4の対応表を示す。推定ロジック選択部136は、かかるマップに対応関係に従って、適切な推定ロジックを選択する。例えば、推定ロジック選択部136は、心拍揺らぎトリガ数、目及び口の動き数、及び、瞬目持続時間増加の発生頻度のすべてのデータが取得された場合には、推定ロジックL1を選択する。尚、この場合、推定ロジックL1〜L3による推定も可能であるが、推定ロジックL1の推定精度が最も良いことが本願発明者により確認されているため、推定ロジックL1が最優先的に選択される。その他は、同様に、例えば、心拍揺らぎトリガ数、及び、目及び口の動き数のみのデータしか取得されていない場合には、推定ロジックL2が選択され、心拍揺らぎトリガ数、及び、瞬目持続時間増加の発生頻度のみのデータしか取得されていない場合には、推定ロジックL3が選択される。尚、ここでは、4つの推定ロジックしか開示していないが、その他の推定ロジックL5〜LNが用意されていてもよい。例えば、心拍揺らぎトリガ数のみのデータしか取得されていない状況に備えて推定ロジックL5が用意されてもよい。
【0023】
このようにして、推定ロジック選択部136により推定ロジックが選択されると、選択された推定ロジックに応じた適切な覚醒度推定部(131〜134の何れか1つ)が、情報取得部110から供給される生理的な特徴量のデータに基づいて、覚醒度の推定処理を行う。例えば、心拍揺らぎトリガ数、目及び口の動き数、及び、瞬目持続時間増加の発生頻度のすべてのデータが供給された場合には、推定ロジックL1が選択され、これに応じて、第1覚醒度推定部131が、当該データに基づいて、推定ロジックL1に従って覚醒度の推定処理を行う。尚、覚醒度推定部131〜134による推定処理(推定ロジックL1〜L4)の詳細については後述する。覚醒度の推定結果は、警報出力部160に対して出力される。
【0024】
警報出力部160は、覚醒度の推定結果に基づいて、必要に応じて適切な警報を、被験者に対して音声や映像により出力する。警報の出力態様は多種多様でありえ、被験者がドライバである場合、シートに埋設した振動体により振動を発生したり、シート(座席)に設けた空気穴から空気を吹き出したり、覚醒を促進させるための匂いを発生したり、ステアリングハンドルの温度を変化させたり、メーター内に警告サインを出力したりしてもよい。
【0025】
データチェック部137は、情報取得部110から供給される生理的な特徴量の種類に不足があった場合に、計測要求出力部140に対してその旨(何が足りないかを含む)を通知する。このような事態としては、例えば、被験者がマスクやサングラスをつける等により、目及び口の動き数のデータが得られない場合や、情報取得部110の作動状態がONになっていない場合や、例えば装着型の検出器具を被験者が装着していない場合等がありうる。尚、かかる判断は、データチェック部137以外によって実現されてもよい。例えば、情報取得部110自身がデータの不足をチェックしてもよい。例えば、情報取得部110は、カメラを介して得られる被験者の顔画像に対する画像認識処理(エッジ抽出やパターンマッチング等)により、被験者がマスクやサングラスをつけていることが認識された場合には、情報取得部110が、その旨を計測要求出力部140に通知することも可能である。いずれにしても、上述の3種の全てのデータが適切に取得されるように、何れか1つが不足した場合には、計測要求出力部120にその旨が通知されることが望ましい。
【0026】
計測要求出力部120は、データの不足を知らせる通知に応答して、音声や映像により、被験者に対して適切な指示を出力する。例えば、目及び口の動き数のデータが得られない場合には、「目や口に何か装着している場合には外してください」なる趣旨のメッセージを出力する。また、カメラの画像認識により被験者がマスクをつけている認識された場合には、「マスクを外してください」なる趣旨のメッセージを出力してもよい。
【0027】
次に、心拍揺らぎトリガ数、目及び口の動き数、及び、瞬目持続時間増加の発生頻度の3種類の生理的な特徴量の取得方法の一例について説明する。
【0028】
[心拍揺らぎトリガ数]
図3は、心拍数の時系列の一例を示す。この時系列の生理信号は、心電図のR波の間隔(R−R interval:RRI)の時系列(RRI時系列)に基づいて、生成される。この時系列の生理信号は、所定時間(解析区間)毎にFFT(fast Fourier transform)処理される。次いで、各解析区間におけるFFT処理の結果(パワースペクトル)に対して、例えば2つの周波数帯域(例えば、血圧性変動を示す0.1Hz付近を中心とした周波数帯域、呼吸性変動を示す0.3Hz付近を中心とした周波数帯域)を用いて、周波数帯域毎に、積分を実施し、それぞれの周波数帯域に対して心拍揺らぎ時系列を得る。即ち、例えば現時点から過去所定時間内のFFT処理の結果(パワースペクトル)に対して、上記の各周波数帯域(周波数区間)を積分区間として積分し、その結果それぞれの周波数帯域に対して得られる各値を、現時点の心拍揺らぎの各値とする。この結果、時間の経過と共に、それぞれの周波数帯域に対して心拍揺らぎ時系列が得られる。図4は、このようにして得られる心拍揺らぎ時系列を示す。次いで、心拍揺らぎ時系列に対して微分を実施し、その結果得られるパワースペクトル(時系列)に対して閾値処理を実施する。図5は、一の周波数帯域の心拍揺らぎ時系列の微分結果に対する閾値処理の実施態様を示すグラフである。現時点に対する閾値は、現時点から過去所定時間内のパワースペクトルの微分値の平均値や標準偏差を演算して、当該演算した平均値や標準偏差を用いて、図5に示すように、時間に応じて変化させてもよい。この際、閾値越えがあった時刻のデータを閾値設定に用いないようにしてもよい。この閾値処理により、心拍揺らぎ時系列の中で特徴的な変化が生じた時点(心拍揺らぎトリガ)が抽出される。即ち、検出したい軽い眠気が生じた際に現れる特徴的な変化が生じた時点が抽出される。尚、このような特徴的な変化は、被験者毎に個人差があるので、上記の閾値の設定態様は被験者毎に可変してもよい。閾値処理は、周波数帯域毎の心拍揺らぎ時系列の微分結果に対して、それぞれ実施される。この際、各時刻において1つ以上の周波数帯で閾値越えがあった場合には、その時点で閾値越えがあったものとしてよい。或いは、閾値越えがあった周波数帯の個数を、縦軸にプロットしてもよい。図6は、閾値を越えた時点の出現態様を示すグラフである。図6に示す例では、同時刻に2つの周波数帯で閾値越えがあった場合であっても、同時刻に1つの周波数帯で閾値越えがあった場合であっても、同一の値が縦軸にプロットされている。次いで、閾値を越えた時点(心拍揺らぎトリガ)の発生頻度が、心拍揺らぎトリガ数として導出される。心拍揺らぎトリガ数は、各時刻において、所定時間前からの心拍揺らぎトリガの数をカウントすることにより導出されてよい。即ち、所定時間幅の区間を設定し、現時点から過去所定時間内の心拍揺らぎトリガの数(累計)を、現時点の心拍揺らぎトリガ数として求めていく。図7は、心拍揺らぎトリガ数の時系列を表すグラフである。尚、上記の説明からも明らかのように、このようにして得られる特徴量たる心拍揺らぎトリガ数は、時間軸上の密度の次元をもつ。
【0029】
[目及び口の動き数]
目及び口の動き数は、検出したい軽い眠気が生じた際に現れる特徴的な目及び口の動きが生じた時点(トリガ)を抽出し、各時刻において、所定時間前からのトリガの数をカウントすることにより導出されてよい。即ち、所定時間幅の区間を設定し、現時点から過去所定時間内のトリガの数を、現時点の目及び口の動き数とする。この結果、時間の経過と共に、目及び口の動き数の時系列が得られる(図10(B)参照)。ここで、軽い眠気が生じた際に現れる特徴的な目及び口の動きとしては、例えば、しかめ顔のときに現れる口の動き(両唇の境界線の変形、唇周辺皮膚の変形)、目を強く閉じるときに現れる目の動き(目の周辺の皺の発生)、目を見開いたときの目の動き(目の縦方向の長さの拡大)等であってよい。これらの動きは、被験者の顔を撮像するように配置されたカメラを用いて、画像認識処理により検出される。例えば、カメラの画像に対して、アファイン変換等のより顔向きや顔大きさを補正し、次いでエッジ処理後、顔部の各パーツ(口、目)のマッチング処理により、顔部の各パーツが特定される。次いで、各パーツの特徴量、即ち、口の横長さ、両唇の境界線の座標列、唇周辺皮膚の変形のような口の特徴量や、目の縦長さ、まぶたの境界線の座標列、目周辺皮膚の変形を、各画像フレームに対して導出して、各特徴量の時系列を得る。そして、特徴量毎に、現時点の特徴量を、軽い眠気が生じた際に現れる同特徴量(基準特徴量)、及び/又は、全く眠くないときに現れる同特徴量(基準特徴量)と対比し、その適合度に基づいて、現時点において、軽い眠気が生じた際に現れる特徴的な目及び口の動きが生じたか否かを判定する。また、特徴量が座標列の場合については、同様の基準特徴量(座標列)とのパターンマッチングにより適合度が評価されてよい。現時点の特徴量と対比される基準特徴量は、好ましくは、官能評価を行うことで予め導出しておき、被験者毎にデータベース化しておく。尚、上記の説明からも明らかのように、このようにして得られる特徴量たる目及び口の動き数は、時間軸上の密度の次元をもつ。
【0030】
[瞬目持続時間増加の発生頻度]
図8は、瞬目持続時間の説明図である。瞬目持続時間は、図8に示すように、目を閉じる動作が開始される時(閉眼開始時)から、目が閉じた状態を経て、目が再び開く時(開眼復帰時)までの時間である。この瞬目持続時間は、上記の[目及び口の動き数]の段落で説明した方法と同様に、目の特徴量(目の縦長さ)を画像認識処理により導出し、目の特徴量の時系列での変化態様に基づいて算出されてよい。瞬目持続時間は、例えば開眼復帰時毎に測定される。瞬目持続時間増加の発生頻度は、瞬目持続時間の時系列に所定基準以上の増加傾向が現れた時点(トリガ)を抽出し、各時刻において、所定時間前からのトリガの数をカウントすることにより導出されてよい。即ち、所定時間幅の区間を設定し、現時点から過去所定時間内のトリガの数を、現時点の瞬目持続時間増加の発生頻度とする。この結果、時間の経過と共に、瞬目持続時間増加の発生頻度の時系列が得られる(図10(C)参照)。尚、上記の説明からも明らかのように、このようにして得られる特徴量たる瞬目持続時間増加の発生頻度は、時間軸上の密度の次元をもつ。
【0031】
次に、覚醒度推定部131〜134による推定処理(推定ロジックL1〜L4)の詳細について順に説明する。
【0032】
[推定ロジックL1]
図9は、第1覚醒度推定部131により実現される推定処理(推定ロジックL1)の流れを示すフローチャートである。ここでは、情報取得部110から、上述の3種類の特徴量(心拍揺らぎトリガ数、目及び口の動き数、及び、瞬目持続時間増加の発生頻度)の元データが、随時供給されるものとする。
【0033】
ステップ100では、前処理が実行される。即ち、第1覚醒度推定部131は、情報取得部110から供給される上述の3種類の特徴量の元データに基づいて、時間軸上の密度の次元をもつ3種類の特徴量を導出する。尚、上述からも明らかなように、3種類の特徴量は、ある程度の時間に亘って検出されたデータに基づいて生成されるものであるので、続くステップ110以降の処理は、所定時間以上に亘る3種類の特徴量の時系列が得られた段階で開始される。この場合、以後、ステップ100からステップ180までの処理は、3種類の特徴量の元データが供給される毎に、繰り返し実行される。ステップ100からステップ180までの処理は、3種類の特徴量の時系列を同期させて実行される。以下では、今回の処理の周期数(何番目の処理周期か)をm(m=1,2,...)で表す。
【0034】
ステップ110では、第1密度レベル判定処理が実行される。第1密度レベル判定処理は、各特徴量の種類毎に、実行される。第1密度レベル判定処理では、特徴量が所定の基準密度以上であるか否かが判定される。即ち、今回の周期mで得られる心拍揺らぎトリガ数が、所定の基準密度Th1以上であるか否かが判定される。この判定結果は、2値化される。例えば、今回の周期mで得られる心拍揺らぎトリガ数が、所定の基準密度Th1以上である場合には、“2”が出力され、所定の基準密度Th1より小さい場合には、“0”が出力される。同様に、今回の周期mで得られる目及び口の動き数が、所定の基準密度Th2以上であるか否かが判定され、その判定結果は、2値化される。同様に、今回の周期mで得られる瞬目持続時間増加の発生頻度が、所定の基準密度Th3以上であるか否かが判定され、その判定結果は、2値化される。このようにして、周期毎に、密度レベルの判定結果を出力することで、各特徴量の種類毎に、判定結果の時系列が生成される。尚、所定の基準密度Th1〜Th3は、弱い眠気の出現を確実に検出できるように幾分低め(感度が高め)の値に設定されてよく、究極的には、1のような小さい値であってもよい。これは、後述の更なる判定処理(例えば、ステップ140,170,180)により、弱い眠気が現れる状態とそうでない状態(高覚醒状態)が確実に判別されるからである。
【0035】
ステップ120〜ステップ140では、心拍揺らぎトリガ数及び瞬目持続時間増加の発生頻度からなる特徴量の第1の組み合わせに関して、各種処理が実行される。
【0036】
ステップ120では、先ず、第1データ混合処理が実行される。第1データ混合処理では、上記のステップ110で得られる心拍揺らぎトリガ数に対する第1密度レベル判定処理結果と、瞬目持続時間増加の発生頻度に対する第1密度レベル判定処理結果とが、時系列で同期して混合される。具体的には、周期毎に、それぞれの第1密度レベル判定処理結果の論理和をとる(ANDをとる)。即ち、今回の周期mで、それぞれの第1密度レベル判定処理結果が“2”であれば、正論理(ここでは、
“2”)を出力し、何れか一方又は双方の第1密度レベル判定処理結果が“0”であれば、負論理(ここでは、
“0”)を出力する。このようにして、周期毎に、第1の組み合わせに関して、それぞれの第1密度レベル判定処理結果に対して論理和を取ることで、論理和の演算結果の時系列が生成される。以下、このようにして第1の組み合わせに関する論理和の結果得られる時系列を、第1混合値εの時系列と称する。
【0037】
ステップ130では、第1混合値εの時系列に対して、第1密度計算処理が実行される。第1密度計算処理では、第1混合値εの時系列に対して時間軸上での密度が算出される。具体的には、所定時間(周期)幅の区間を設定し、今回周期mから過去所定周期数内の第1混合値εの累計(積分値)を、今回周期mにおける第1混合値εの密度ε’として算出する。即ち、今回周期mから過去所定周期前まで遡って、正論理が出力された周期の数をカウントする。所定周期数は、分の時間単位(例えば1分)に対応する周期数であってよい。このようにして、周期毎に、第1密度計算処理結果を出力することで、第1混合値の密度ε’の時系列が生成される。
【0038】
ステップ140では、第1混合値の密度ε’の時系列に対して、第2密度レベル判定処理が実行される。第2密度レベル判定処理では、第1混合値の密度ε’が所定の基準密度Th4よりも大きいか否かが判定される。即ち、今回の周期mで得られる第1混合値の密度ε’が、所定の基準密度Th4よりも大きいか否かが判定される。所定の基準密度Th4は、官能評価結果等に基づいて実験的に適合されたものが用いられてよい。この判定結果は、2値化される。例えば、第1混合値の密度ε’が所定の基準密度Th4よりも大きい場合には、“2”が出力され、所定の基準密度Th4以下の場合には、“0”が出力される。このようにして、周期毎に、第1混合値の密度ε’に対する第2密度レベル判定結果ε’’を出力することで、判定結果ε’’の時系列が生成される。
【0039】
ステップ150〜ステップ170では、目及び口の動き数及び瞬目持続時間増加の発生頻度からなる特徴量の第2の組み合わせに関して、各種処理が実行される。
【0040】
ステップ150では、先ず、第2データ混合処理が実行される。第2データ混合処理では、上記のステップ110で得られる目及び口の動き数に対する第1密度レベル判定処理結果と、瞬目持続時間増加の発生頻度に対する第1密度レベル判定処理結果とが、時系列で同期して混合される。具体的には、周期毎に、それぞれの第1密度レベル判定処理結果の論理和をとる。即ち、今回の周期mで、それぞれの第1密度レベル判定処理結果が“2”であれば、正論理(ここでは、“2”)を出力し、何れか一方又は双方の第1密度レベル判定処理結果が“0”であれば、負論理(ここでは、“0”)を出力する。このようにして、周期毎に、第2の組み合わせに関して、それぞれの第1密度レベル判定処理結果に対して論理和を取ることで、論理和の演算結果の時系列が生成される。以下、このようにして第2の組み合わせに関する論理和の結果得られる時系列を、第2混合値ηの時系列と称する。
【0041】
ステップ160では、第2混合値ηの時系列に対して、第2密度計算処理が実行される。第2密度計算処理では、第2混合値ηの時系列に対して時間軸上での密度が算出される。具体的には、所定時間(周期)幅の区間を設定し、今回周期mから過去所定周期数内の第2混合値ηの累計を、今回周期mにおける第2混合値ηの密度η’として算出する。即ち、今回周期mから過去所定周期前まで遡って、正論理が出力された周期の数をカウントする。所定周期数は、分の時間単位(例えば1分)に対応する周期数であってよい。このようにして、周期毎に、第2密度計算処理結果を出力することで、第2混合値ηの密度η’の時系列が生成される。
【0042】
ステップ170では、第2混合値ηの密度η’の時系列に対して、第3密度レベル判定処理が実行される。第3密度レベル判定処理では、第2混合値ηの密度η’が所定の基準密度Th5よりも大きいか否かが判定される。即ち、今回の周期mで得られる第2混合値ηの密度η’が、所定の基準密度Th5よりも大きいか否かが判定される。所定の基準密度Th5は、同様に、官能評価結果等に基づいて実験的に適合されたものが用いられてよい。この判定結果は、2値化される。例えば、第2混合値ηの密度η’が所定の基準密度Th5よりも大きい場合には、“2”が出力され、所定の基準密度Th5以下の場合には、“0”が出力される。このようにして、周期毎に、第2混合値ηの密度η’に対する第3密度レベル判定結果η’’を出力することで、判定結果η’’の時系列が生成される。
【0043】
ステップ180では、第3データ混合処理が実行される。第3データ混合処理では、上記のステップ140で得られる第1混合値の密度ε’に対する第2密度レベル判定結果ε’’と、上記のステップ170で得られる第2混合値ηの密度η’に対する第3密度レベル判定結果η’’とが、時系列で同期して混合される。具体的には、周期毎に、それぞれの密度レベル判定処理結果の論理和をとる。即ち、今回の周期mで、それぞれの密度レベル判定処理結果が“2”であれば、正論理(ここでは、“2”)を出力し、何れか一方又は双方の密度レベル判定処理結果が“0”であれば、負論理(ここでは、
“0”)を出力する。このようにして第3データ混合処理の結果、正論理が出力された場合には、第1覚醒度推定部131は、被験者の覚醒度が低下していると判断する。即ち、軽い眠気に襲われている虞があると判断する。一方、第3データ混合処理の結果、負論理が出力された場合には、第1覚醒度推定部131は、被験者の覚醒度は低下していないと判断する。即ち、高覚醒状態であると判断する。
【0044】
次に、比較的長い時間に亘って得られる各種特徴量に対して、上述の各種処理を行った場合の各種時系列について説明する。
【0045】
図10は、上述のステップ100の前処理により得られる結果の時系列を示す。図10(A)には、心拍揺らぎトリガ数の時系列の一例、図10(B)には、目及び口の動き数の時系列の一例、図10(C)には、瞬目持続時間増加の発生頻度の時系列の一例が示されている。
【0046】
図11は、上述のステップ110の第1密度レベル判定処理の態様及び第1密度レベル判定処理結果の時系列を示す。図11(A)には、上から順に、心拍揺らぎトリガ数の時系列(処理前)に対する基準密度Th1の関係、及び、心拍揺らぎトリガ数の時系列に対する第1密度レベル判定処理結果の時系列(処理後)が示されている。図11(B)には、上から順に、目及び口の動き数の時系列(処理前)に対する基準密度Th2の関係、及び、目及び口の動き数の時系列に対する第1密度レベル判定処理結果の時系列(処理後)が示されている。図11(C)には、上から順に、瞬目持続時間増加の発生頻度の時系列(処理前)に対する基準密度Th3の関係、及び、瞬目持続時間増加の発生頻度の時系列に対する第1密度レベル判定処理結果の時系列(処理後)が示されている。
【0047】
図12は、上述のステップ120の第1データ混合処理の態様及び第1データ混合処理結果の時系列を示す。図12には、上から順に、心拍揺らぎトリガ数の時系列に対する第1密度レベル判定処理結果の時系列(処理前)、目及び口の動き数の時系列に対する第1密度レベル判定処理結果の時系列(処理前)、及び、第1混合値εの時系列(処理後)が示されている。
【0048】
図13は、上述のステップ150の第2データ混合処理の態様及び第2データ混合処理結果の時系列を示す。図13には、上から順に、目及び口の動き数の時系列の時系列に対する第1密度レベル判定処理結果の時系列(処理前)、瞬目持続時間増加の発生頻度の時系列に対する第1密度レベル判定処理結果の時系列(処理前)、及び、第2混合値ηの時系列(処理後)が示されている。
【0049】
図14は、上述のステップ130の第1密度計算処理の態様及び第1密度計算処理結果の時系列を示す。図14には、上から順に、第1混合値εの時系列(処理前)、及び、第1混合値εの密度ε’の時系列(処理後)が示されている。
【0050】
図15は、上述のステップ160の第2密度計算処理の態様及び第2密度計算処理結果の時系列を示す。図15には、上から順に、第2混合値ηの時系列(処理前)、及び、第2混合値ηの密度η’の時系列(処理後)が示されている。
【0051】
図16は、上述のステップ140の第2密度レベル判定処理の態様及び第2密度レベル判定処理結果の時系列を示す。図16には、上から順に、第1混合値εの密度ε’の時系列(処理前)に対する基準密度Th4の関係、及び、第1混合値εの密度ε’の時系列に対する第2密度レベル判定結果ε’’の時系列(処理後)が示されている。
【0052】
図17は、上述のステップ170の第3密度レベル判定処理の態様及び第3密度レベル判定処理結果の時系列を示す。図17には、上から順に、第2混合値ηの密度η’の時系列(処理前)に対する基準密度Th5の関係、及び、第2混合値ηの密度η’の時系列に対する第3密度レベル判定結果η’’の時系列(処理後)が示されている。
【0053】
図18は、上述のステップ180の第3データ混合処理の態様及び第3データ混合処理結果の時系列を示す。図18(A)は、処理前の時系列データを示し、上から順に、第2密度レベル判定結果ε’’の時系列、及び、第3密度レベル判定結果η’’の時系列である。図18(B)は、第3データ混合処理の結果の時系列、即ち、第1覚醒度推定部131による覚醒度推定結果の時系列を示す。
【0054】
図18に示す例では、例えば時刻t=t1にて、正論理が第3密度レベル判定結果η’’として出力されているが、このとき、第2密度レベル判定結果ε’’の出力は負論理(偽)であるので、覚醒度推定結果は、負論理(即ち高覚醒度)となる。一方、時刻t=t2では、図18(A)に示すように、第3密度レベル判定結果η’’及び第2密度レベル判定結果ε’’の出力が共に正論理となり、時刻t=t2にて、覚醒度推定結果が正論理に反転する。この結果、時刻t=t2にて、警報出力部160を介して必要な警告が実行されうる。時刻t=t2以降、時刻t=t3では、第3密度レベル判定結果η’’及び第2密度レベル判定結果ε’’の出力が共に負論理となり、時刻t=t3にて、覚醒度推定結果が負論理に反転する。そして、再び、時刻t=t4にて、密度レベル判定結果η’’及び第2密度レベル判定結果ε’’の出力が共に正論理となり、覚醒度推定結果が正論理に反転する。
【0055】
ところで、本実施例では、上述の如く、あくびのときの口の動きのような、低覚醒時に頻繁に現れる特徴量を用いるのではなく、上述の如く、弱い眠気に反応して出現しやすい特徴量を用いて、被験者の覚醒度を推定している。このような構成では、あくびのような特徴量を用いるでは検出が困難な、弱い眠気に襲われている状態を検出することができる。即ち、被験者が強い眠気に襲われる状態に陥る前に、覚醒度の低下の初期段階を検出することができる。しかしながら、その反面として、これらの弱い眠気に反応が出やすい特徴量は、個々では、高覚醒状態においても現れ得るので、これらの特徴量を単独で評価した場合には、高覚醒状態であるにも拘らず、弱い眠気に襲われている状態であると誤判定する虞がある。
【0056】
これに対して、上述の推定ロジックL1によれば、3種類の特徴量を総合的に用いて、被験者の覚醒度が推定されるので、弱い眠気に襲われている状態を高精度に検出することができる。また、上述の推定ロジックL1によれば、3種類の特徴量を個別的に評価すると共に(上記ステップ110参照)、3種類の特徴量を2組の特徴量の組み合わせに分け、それぞれの組み合わせに係る混合値の密度(ε’、η’)の密度レベルを、別々の閾値(Th4、Th5)を用いて評価し(上記ステップ140及びステップ170参照)、更に、各組み合わせに係る判定結果(ε’’、η’’)を統合して評価するので(ステップ180参照)、誤判定の起こり難い高精度の推定が可能となる。また、上述の推定ロジックL1によれば、3種類の特徴量に対する個別の評価結果を統合して評価するのではなく、上述の如く、3種類の特徴量を2組の特徴量の組み合わせに分けて、各組み合わせに対して個別に評価を行うので、それぞれの特徴量の組み合わせに適合した閾値(Th4、Th5)を設定することができる。この結果、3種類の特徴量に対する個別の評価結果を統合して評価する構成に比べて、高い精度で弱い眠気を検出することができる。
【0057】
尚、本実施例において、3種類の特徴量のうち、心拍揺らぎトリガ数及び瞬目持続時間増加の発生頻度からなる第1の組み合わせ、目及び口の動き数及び瞬目持続時間増加の発生頻度からなる第2の組み合わせの、2つの組み合わせに対して、各種処理(ステップ120〜180の処理)を実行しているが、他の2つの組み合わせに対して、同様の処理を実行することも可能である。例えば、心拍揺らぎトリガ数及び瞬目持続時間増加の発生頻度からなる第1の組み合わせ、及び、心拍揺らぎトリガ数及び瞬目持続時間増加の発生頻度からなる第1の組み合わせに対して同様の処理を実行することも可能であるし、或いは、心拍揺らぎトリガ数及び目及び口の動き数からなる第1の組み合わせ、及び、目及び口の動き数及び瞬目持続時間増加の発生頻度からなる第2の組み合わせに対して同様の処理を実行することも可能である。
【0058】
また、本実施例において、3種類の特徴量のうち2通りの組み合わせに対して2系統に分けて評価を行っているが、3種類の特徴量の3通りの組み合わせの全てに対して、3系統に分けて評価を行い、3系統の各評価結果を最終的に混合(統合)して、被験者の覚醒度を推定することも可能である。
【0059】
[推定ロジックL2]
図19は、第2覚醒度推定部132により実現される推定処理(推定ロジックL2)の流れを示すフローチャートである。ここでは、情報取得部110から、上述の3種類の特徴量のうちの心拍揺らぎトリガ数及び目及び口の動き数の2種類の特徴量の元データが、随時供給されるものとする。
【0060】
ステップ200では、前処理が実行される。即ち、第2覚醒度推定部132は、情報取得部110から供給される上述の2種類の特徴量の元データに基づいて、時間軸上の密度の次元をもつ3種類の特徴量を導出する。尚、上述からも明らかなように、2種類の特徴量は、ある程度の時間に亘って検出されたデータに基づいて生成されるものであるので、続くステップ210以降の処理は、所定時間以上に亘る2種類の特徴量の時系列が得られた段階で開始される。この場合、以後、ステップ200からステップ240までの処理は、2種類の特徴量の元データが供給される毎に、繰り返し実行される。ステップ200からステップ240までの処理は、2種類の特徴量の時系列を同期させて実行される。以下では、今回の処理の周期数(何番目の処理周期か)をm(m=1,2,...)で表す。
【0061】
ステップ210では、第1密度レベル判定処理が実行される。第1密度レベル判定処理は、各特徴量の種類毎に、実行される。第1密度レベル判定処理では、特徴量が所定の基準密度以上であるか否かが判定される。即ち、今回の周期mで得られる心拍揺らぎトリガ数が、所定の基準密度Th1’以上であるか否かが判定される。この判定結果は、2値化される。例えば、今回の周期mで得られる心拍揺らぎトリガ数が、所定の基準密度Th1’以上である場合には、“2”が出力され、所定の基準密度Th1’より小さい場合には、“0”が出力される。同様に、今回の周期mで得られる目及び口の動き数が、所定の基準密度Th2’以上であるか否かが判定され、その判定結果は、2値化される。このようにして、周期毎に、密度レベルの判定結果を出力することで、各特徴量の種類毎に、判定結果の時系列が生成される。尚、所定の基準密度Th1’及びTh2’は、上述の推定ロジックL1で用いられるTh1及びTh2と同様であってよく、同様に、弱い眠気の出現を確実に検出できるように幾分低め(感度が高め)の値に設定されてよく、究極的には、1のような小さい値であってもよい。
【0062】
ステップ220では、データ混合処理が実行される。データ混合処理では、上記のステップ210で得られる心拍揺らぎトリガ数に対する密度レベル判定処理結果と、目及び口の動き数に対する密度レベル判定処理結果とが、時系列で同期して混合される。具体的には、周期毎に、それぞれの密度レベル判定処理結果の論理和をとる(ANDをとる)。即ち、今回の周期mで、それぞれの密度レベル判定処理結果が“2”であれば、正論理(ここでは、“2”)を出力し、何れか一方又は双方の密度レベル判定処理結果が“0”であれば、負論理(ここでは、“0”)を出力する。このようにして、周期毎に、上記の2種類の特徴量に関して、それぞれの第1密度レベル判定処理結果に対して論理和を取ることで、論理和の演算結果の時系列が生成される。以下、このようにして論理和の結果得られる時系列を、混合値αの時系列と称する。
【0063】
ステップ230では、混合値αの時系列に対して、密度計算処理が実行される。密度計算処理では、混合値αの時系列に対して時間軸上での密度が算出される。具体的には、所定時間(周期)幅の区間を設定し、今回周期mから過去所定周期数内の混合値αの累計を、今回周期mにおける混合値αの密度α’として算出する。即ち、今回周期mから過去所定周期前まで遡って、正論理が出力された周期の数をカウントする。所定周期数は、分の時間単位(例えば1分)に対応する周期数であってよい。このようにして、周期毎に、第1密度計算処理結果を出力することで、混合値αの密度α’の時系列が生成される。
【0064】
ステップ240では、混合値αの密度α’の時系列に対して、第2密度レベル判定処理が実行される。第2密度レベル判定処理では、混合値αの密度α’が所定の基準密度Th6よりも大きいか否かが判定される。即ち、今回の周期mで得られる混合値αの密度α’が、所定の基準密度Th6よりも大きいか否かが判定される。所定の基準密度Th6は、官能評価結果等に基づいて実験的に適合されたものが用いられてよい。混合値αの密度α’が所定の基準密度Th6よりも大きい場合には、第2覚醒度推定部132は、被験者の覚醒度が低下していると判断する。即ち、軽い眠気に襲われている虞があると判断する。この場合、警報出力部160を介して必要な警告が実行されうる。一方、混合値αの密度α’が所定の基準密度Th6以下の場合には、第2覚醒度推定部132は、被験者の覚醒度は低下していないと判断する。即ち、高覚醒状態であると判断する。
【0065】
このように、上述の推定ロジックL2によれば、弱い眠気の検出に適した2種類の特徴量を総合的に用いて、被験者の覚醒度が推定されるので、弱い眠気に襲われている状態を高精度に検出することができる。また、上述の推定ロジックL2によれば、2種類の特徴量を個別的に評価すると共に(上記ステップ210参照)、2種類の特徴量の個別的な評価結果を混合して得られる混合値に対して、その密度(α’)の密度レベルを更に評価するので(上記ステップ240参照)、誤判定の起こり難い高精度の推定が可能となる。
【0066】
[推定ロジックL3]
図20は、第3覚醒度推定部133により実現される推定処理(推定ロジックL3)の流れを示すフローチャートである。ここでは、情報取得部110から、上述の3種類の特徴量のうちの心拍揺らぎトリガ数及び瞬目持続時間増加の発生頻度の2種類の特徴量の元データが、随時供給されるものとする。
【0067】
ステップ300では、前処理が実行される。即ち、第3覚醒度推定部133は、情報取得部110から供給される上述の2種類の特徴量の元データに基づいて、時間軸上の密度の次元をもつ3種類の特徴量を導出する。尚、上述からも明らかなように、2種類の特徴量は、ある程度の時間に亘って検出されたデータに基づいて生成されるものであるので、続くステップ310以降の処理は、所定時間以上に亘る2種類の特徴量の時系列が得られた段階で開始される。この場合、以後、ステップ300からステップ350までの処理は、2種類の特徴量の元データが供給される毎に、繰り返し実行される。ステップ300からステップ350までの処理は、2種類の特徴量の時系列を同期させて実行される。以下では、今回の処理の周期数(何番目の処理周期か)をm(m=1,2,...)で表す。
【0068】
ステップ310では、第1密度レベル判定処理が実行される。第1密度レベル判定処理は、各特徴量の種類毎に、実行される。第1密度レベル判定処理では、特徴量が所定の基準密度以上であるか否かが判定される。即ち、今回の周期mで得られる心拍揺らぎトリガ数が、所定の基準密度Th1’’以上であるか否かが判定される。この判定結果は、2値化される。例えば、今回の周期mで得られる心拍揺らぎトリガ数が、所定の基準密度Th1’’以上である場合には、“2”が出力され、所定の基準密度Th1’’より小さい場合には、“0”が出力される。同様に、今回の周期mで得られる瞬目持続時間増加の発生頻度が、所定の基準密度Th3’以上であるか否かが判定され、その判定結果は、2値化される。このようにして、周期毎に、密度レベルの判定結果を出力することで、各特徴量の種類毎に、判定結果の時系列が生成される。尚、所定の基準密度Th1’’及びTh3’は、上述の推定ロジックL1で用いられるTh1及びTh3と同様であってよく、同様に、弱い眠気の出現を確実に検出できるように幾分低め(感度が高め)の値に設定されてよく、究極的には、1のような小さい値であってもよい。
【0069】
ステップ320では、データ混合処理が実行される。データ混合処理では、上記のステップ310で得られる心拍揺らぎトリガ数に対する密度レベル判定処理結果と、瞬目持続時間増加の発生頻度に対する密度レベル判定処理結果とが、時系列で同期して混合される。具体的には、周期毎に、それぞれの密度レベル判定処理結果の論理和をとる(ANDをとる)。即ち、今回の周期mで、それぞれの密度レベル判定処理結果が“2”であれば、正論理(ここでは、“2”)を出力し、何れか一方又は双方の密度レベル判定処理結果が“0”であれば、負論理(ここでは、“0”)を出力する。このようにして、周期毎に、上記の2種類の特徴量に関して、それぞれの第1密度レベル判定処理結果に対して論理和を取ることで、論理和の演算結果の時系列が生成される。以下、このようにして論理和の結果得られる時系列を、混合値βの時系列と称する。
【0070】
ステップ330では、混合値βの時系列に対して、密度計算処理が実行される。密度計算処理では、混合値βの時系列に対して時間軸上での密度が算出される。具体的には、所定時間(周期)幅の区間を設定し、今回周期mから過去所定周期数内の混合値βの累計を、今回周期mにおける混合値βの密度β’として算出する。即ち、今回周期mから過去所定周期前まで遡って、正論理が出力された周期の数をカウントする。所定周期数は、分の時間単位(例えば1分)に対応する周期数であってよく、上述の推定ロジックL2における所定周期数より大きい値が採用されてよい。このようにして、周期毎に、第1密度計算処理結果を出力することで、混合値βの密度β’の時系列が生成される。
【0071】
ステップ340では、混合値βの密度β’の時系列に対して、第2密度レベル判定処理が実行される。第2密度レベル判定処理では、混合値βの密度β’が所定の基準密度Th7よりも大きいか否かが判定される。即ち、今回の周期mで得られる混合値βの密度β’が、所定の基準密度Th7よりも大きいか否かが判定される。所定の基準密度Th7は、官能評価結果等に基づいて実験的に適合されたものが用いられてよい。混合値βの密度β’が所定の基準密度Th7よりも大きい場合には、第3覚醒度推定部133は、被験者の覚醒度が低下していると判断する。即ち、軽い眠気に襲われている虞があると判断する。この場合、警報出力部160を介して必要な警告が実行されうる。一方、混合値βの密度β’が所定の基準密度Th7以下の場合には、第3覚醒度推定部133は、被験者の覚醒度は低下していないと判断する。即ち、高覚醒状態であると判断する。
【0072】
このように、上述の推定ロジックL3によれば、上述の推定ロジックL2と同様、弱い眠気の検出に適した2種類の特徴量を総合的に用いて、被験者の覚醒度が推定されるので、弱い眠気に襲われている状態を高精度に検出することができる。また、上述の推定ロジックL3によれば、2種類の特徴量を個別的に評価すると共に(上記ステップ310参照)、2種類の特徴量の個別的な評価結果を混合して得られる混合値に対して、その密度(β’)の密度レベルを更に評価するので(上記ステップ340参照)、誤判定の起こり難い高精度の推定が可能となる。
【0073】
[推定ロジックL4]
図21は、第4覚醒度推定部134により実現される推定処理(推定ロジックL4)の流れを示すフローチャートである。ここでは、情報取得部110から、上述の3種類の特徴量のうちの目及び口の動き数及び瞬目持続時間増加の発生頻度の2種類の特徴量の元データが、随時供給されるものとする。
【0074】
ステップ400では、前処理が実行される。即ち、第4覚醒度推定部134は、情報取得部110から供給される上述の2種類の特徴量の元データに基づいて、時間軸上の密度の次元をもつ3種類の特徴量を導出する。ステップ400からステップ420までの処理は、2種類の特徴量の元データが供給される毎に、繰り返し実行される。ステップ400からステップ420までの処理は、2種類の特徴量の時系列を同期させて実行される。以下では、今回の処理の周期数(何番目の処理周期か)をm(m=1,2,...)で表す。
【0075】
ステップ410では、データ選別処理が実行される。データ選別処理では、先ず、瞬目持続時間増加の発生頻度が所定の基準密度以上であるか否かが判定される。即ち、今回の周期mで得られる瞬目持続時間増加の発生頻度が、所定の基準密度Th3’’以上であるか否かが判定される。尚、所定の基準密度T3’’は、1のような小さい値であってよい。即ち、瞬目持続時間増加の発生頻度がある値を有すれば、瞬目持続時間増加の発生頻度が所定の基準密度よりも大きいと判定されてよい。瞬目持続時間増加の発生頻度が所定の基準密度以上の場合には、同周期に係る目及び口の動き数のデータを抽出し、瞬目持続時間増加の発生頻度が所定の基準密度より小さい場合には、同周期に係る目及び口の動き数のデータを破棄する(抽出しない)。このようにして、周期毎に、データ選別処理を行うことで、瞬目持続時間増加の発生頻度が所定の基準密度以上であるときの目及び口の動き数の時系列が抽出(選別)される。以下、このようにして選別された目及び口の動き数の時系列を「目及び口の動き数γの時系列」という。
【0076】
ステップ420では、目及び口の動き数γの時系列に対して、密度レベル判定処理が実行される。密度レベル判定処理では、目及び口の動き数γが所定の基準密度Th8よりも大きいか否かが判定される。即ち、今回の周期mで得られる目及び口の動き数γが、所定の基準密度Th8よりも大きいか否かが判定される。所定の基準密度Th8は、ゼロよりも大きく、官能評価結果等に基づいて実験的に適合されたものが用いられてよい。目及び口の動き数γが所定の基準密度Th8よりも大きい場合には、第4覚醒度推定部134は、被験者の覚醒度が低下していると判断する。即ち、軽い眠気に襲われている虞があると判断する。この場合、警報出力部160を介して必要な警告が実行されうる。一方、目及び口の動き数γが所定の基準密度Th8以下の場合には、第4覚醒度推定部134は、被験者の覚醒度は低下していないと判断する。即ち、高覚醒状態であると判断する。
【0077】
このように、上述の推定ロジックL4によれば、弱い眠気の検出に適した2種類の特徴量を総合的に用いて、被験者の覚醒度が推定されるので、弱い眠気に襲われている状態を高精度に検出することができる。また、上述の推定ロジックL4は、心拍揺らぎトリガ数を取得できない場合であっても、カメラによる画像計測のみにより実現可能である。即ち、上述の推定ロジックL4は、簡易な構成で、弱い眠気に襲われている状態を高精度に検出することができる。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0079】
例えば、上述した実施例では、カメラ等による計測を介してリアルタイムに取得される特徴量を用いて、リアルタイムに覚醒度の推定を行っているが、取得された特徴量を事後的に用いて、オフラインで覚醒度の推定を行ってもよい。
【0080】
また、上述した実施例では、覚醒度推定部131〜134により各種前処理が実行されているが、かかる前処理は、例えば情報取得部110にて実行されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のとおり本発明は、車両におけるドライバの覚醒度を推定するアプリケーションを始めとして、被験者の覚醒度を推定することが有用なあらゆるアプリケーションにおいて利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明による覚醒度推定システムにおける主要構成の一実施例を示すシステム構成図である。
【図2】特徴量の種類と、選択される推定ロジックL1〜L4の対応表を示す図である。
【図3】心拍数の時系列の一例を示すグラフである。
【図4】心拍揺らぎ時系列の一例を示すグラフである。
【図5】閾値処理を示すグラフである。
【図6】閾値を越えた時刻の抽出結果を示すグラフである。
【図7】心拍揺らぎトリガ数の時系列を表すグラフである。
【図8】瞬目持続時間の説明図である。
【図9】第1覚醒度推定部131により実現される推定処理(推定ロジックL1)の流れを示すフローチャートである。
【図10】前処理により得られる結果の時系列を示すグラフである。
【図11】第1密度レベル判定処理の態様及び第1密度レベル判定処理結果の時系列を示すグラフである。
【図12】第1データ混合処理の態様及び第1データ混合処理結果の時系列を示すグラフである。
【図13】第2データ混合処理の態様及び第2データ混合処理結果の時系列を示すグラフである。
【図14】第1密度計算処理の態様及び第1密度計算処理結果の時系列を示すグラフである。
【図15】第2密度計算処理の態様及び第2密度計算処理結果の時系列を示すグラフである。
【図16】第2密度レベル判定処理の態様及び第2密度レベル判定処理結果の時系列を示すグラフである。
【図17】第3密度レベル判定処理の態様及び第3密度レベル判定処理結果の時系列を示すグラフである。
【図18】第3データ混合処理の態様及び第3データ混合処理結果の時系列を示すグラフである。
【図19】第2覚醒度推定部132により実現される推定処理(推定ロジックL2)の流れを示すフローチャートである。
【図20】第3覚醒度推定部133により実現される推定処理(推定ロジックL3)の流れを示すフローチャートである。
【図21】第4覚醒度推定部134により実現される推定処理(推定ロジックL4)の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
100 覚醒度推定システム
110 情報取得部
130 覚醒度推定部
140 計測要求出力部
160 警報出力部
131 第1覚醒度推定部
132 第2覚醒度推定部
133 第3覚醒度推定部
134 第4覚醒度推定部
136 推定ロジック選択部
137 データチェック部
138 ロジックデータベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の3種類以上の生理的な特徴量を、時間軸上の密度の次元で、時系列で取得する特徴量取得手段と、
前記特徴量の種類毎に、特徴量が所定基準密度以上であるか否かを判定し、判定処理結果の時系列を出力する第1密度レベル判定処理手段と、
前記3種類以上の特徴量のうちの2種類の特徴量の第1の組み合わせに関して、それぞれの特徴量に対する前記第1密度レベル判定処理結果の時系列を時間軸上で同期させて混合することで、前記第1の組み合わせに係る第1混合値の時系列を出力する第1混合処理手段と、
前記第1混合値の時系列に対して時間軸上での密度を算出する第1密度計算処理手段と、
前記第1密度計算処理手段により算出される第1混合値の密度が所定基準密度以上であるか否かを判定し、判定処理結果を出力する第2密度レベル判定処理手段と、
前記3種類以上の特徴量のうちの他の2種類の特徴量の第2の組み合わせに関して、それぞれの特徴量に対する前記第1密度レベル判定処理結果の時系列を時間軸上で同期させて混合することで、前記第2の組み合わせに係る第2混合値の時系列を出力する第2混合処理手段と、
前記第2混合値の時系列に対して時間軸上での密度を算出する第2密度計算処理手段と、
前記第2密度計算処理手段により算出される第2混合値の密度が所定基準密度以上であるか否かを判定し、判定処理結果を出力する第3密度レベル判定処理手段と、
前記第2密度レベル判定処理手段による判定処理結果と前記第3密度レベル判定処理手段による判定処理結果とに基づいて、前記被験者の覚醒度を推定する覚醒度推定手段とを備えることを特徴とする、覚醒度推定装置。
【請求項2】
前記生理的な特徴量は、心拍揺らぎに関する特徴量、目及び口の動きに関する特徴量、及び、目の瞬きに関する特徴量であり、
前記2つの組み合わせは、前記3種類の特徴量の計3通りの組み合わせのうちの何れか2つである、請求項1に記載の覚醒度推定装置。
【請求項3】
被験者の2種類以上の生理的な特徴量を、時間軸上の密度の次元で、時系列で取得する特徴量取得手段と、
取得した2種類の生理的な特徴量に対して、特徴量の種類毎に、特徴量が所定基準密度以上であるか否かを判定し、判定処理結果の時系列を出力する密度レベル判定処理手段と、
前記2種類の特徴量に対する各判定処理結果の時系列を時間軸上で同期させて混合することで、混合値の時系列を出力する特徴量混合処理手段と、
前記混合値の時系列に対して時間軸上での密度を算出する密度計算処理手段と、
前記密度計算処理手段により算出される密度に基づいて、前記被験者の覚醒度を推定する覚醒度推定手段とを備えることを特徴とする、覚醒度推定装置。
【請求項4】
前記2種類の生理的な特徴量は、心拍揺らぎに関する特徴量及び目及び口の動きに関する特徴量、又は、心拍揺らぎに関する特徴量及び目の瞬きに関する特徴量である、請求項3に記載の覚醒度推定装置。
【請求項5】
前記特徴量取得手段は、心拍揺らぎに関する特徴量、目及び口の動きに関する特徴量、及び、目の瞬きに関する特徴量を、前記特徴量として取得する手段であり、
前記特徴量混合処理手段、密度計算処理手段及び覚醒度推定手段は、前記特徴量取得手段による特徴量の取得状態に応じて、選択的に、心拍揺らぎに関する特徴量及び目及び口の動きに関する特徴量の2種類の特徴量、又は、心拍揺らぎに関する特徴量及び瞬目持続時間増加の2種類の特徴量に対して、前記各処理を実行する、請求項3に記載の覚醒度推定装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の第1覚醒度推定装置と、請求項3〜5の何れか1項に記載の第2覚醒度推定装置とを含む複数の覚醒度推定装置を有し、
複数の覚醒度推定装置の何れか1つを選択的に用いて、前記被験者の覚醒度を推定することを特徴とする、覚醒度推定システム。
【請求項7】
被験者の3種類以上の生理的な特徴量を、時間軸上の密度の次元で、時系列で取得する特徴量取得ステップと、
前記特徴量毎に、時間軸上での特徴量の密度が所定基準密度以上であるか否かを判定し、判定処理結果の時系列を出力する第1密度レベル判定処理ステップと、
前記3種類以上の特徴量のうちの2種類の特徴量の第1の組み合わせに関して、それぞれの特徴量に対する前記第1密度レベル判定処理結果の時系列を時間軸上で同期させて混合することで、前記第1の組み合わせに係る第1混合値の時系列を出力する第1混合処理ステップと、
前記第1混合値の時系列に対して時間軸上での密度を算出する第1密度計算処理ステップと、
前記第1密度計算処理ステップにより算出される第1混合値の密度が所定基準密度以上であるか否かを判定し、判定処理結果を出力する第2密度レベル判定処理ステップと、
前記3種類以上の特徴量のうちのその他の2種類の特徴量の第2の組み合わせに関して、それぞれの特徴量に対する前記第1密度レベル判定処理結果の時系列を時間軸上で同期させて混合することで、前記第2の組み合わせに係る第2混合値の時系列を出力する第2混合処理ステップと、
前記第2混合値の時系列に対して時間軸上での密度を算出する第2密度計算処理ステップと、
前記第2密度計算処理ステップにより算出される第2混合値の密度が所定基準密度以上であるか否かを判定し、判定処理結果を出力する第3密度レベル判定処理ステップと、
前記第2密度レベル判定処理ステップによる判定処理結果と前記第3密度レベル判定処理ステップによる判定処理結果とに基づいて、前記被験者の覚醒度を推定する覚醒度推定ステップとを備えることを特徴とする、覚醒度推定方法。
【請求項8】
被験者の第1の生理的な特徴量及び第2の生理的な特徴量を、時間軸上の密度の次元で、時系列で取得する特徴量取得ステップと、
前記第1の特徴量と前記第2の特徴量とを時間軸上で同期させて混合することで、混合特徴量の時系列を出力する特徴量混合処理ステップと、
前記混合特徴量の時系列に対して時間軸上での密度を算出する密度計算処理ステップと、
前記密度計算処理ステップにより算出される密度に基づいて、前記被験者の覚醒度を推定する覚醒度推定ステップとを備えることを特徴とする、覚醒度推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−229218(P2007−229218A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54582(P2006−54582)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】