説明

試料ステージ及び試料ステージを備えた測定,検査,観察装置

【課題】本発明は、不感帯等の存在に依らず、高速且つ安定した位置決めを行う試料ステージの提供を目的とする。
【解決手段】上記目的を達成するために、試料ステージのテーブルと駆動機構との間の結合を機械的に分離可能な結合部と、当該結合部を駆動機構によるテーブルの移動停止の前に分離するように制御する制御装置と、テーブル位置の位置を検出する位置検出器を備え、制御装置は、テーブルの粗動時には位置検出器によるテーブルの位置情報に基づいて、フィードバック制御を実施し、微動時には予め設定した速度変位パターンを用いて前記駆動機構をオープン制御するシーケンス制御を実施する試料ステージを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の測定,検査、或いは観察等に用いられる装置に搭載される試料ステージに係り、特に試料ステージの位置決めを高速且つ高精度に行い得る試料ステージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体素子の微細化に伴い、製造装置のみならず、半導体デバイスの測定や検査、或いは評価装置に対しても、微細化に見合った高精度化が要求されている。測定,検査装置の一例として、半導体ウェーハ上に形成されたパターンの寸法を測長する測長機能を備えた走査型電子顕微鏡(以下、測長SEMと称する)がある。
【0003】
測長SEMでは、ウェーハ上に電子線を照射し、得られた二次電子信号を画像処理し、その明暗の変化からパターンのエッジを判別して寸法を導き出している(特許文献1参照)。
【0004】
このため、35nmノードのデザインルールに対応させるためには、30万倍以上の観察倍率において、よりノイズの少ない二次電子像を得ることが重要な課題となっている。また、像を何枚も重ね合わせてコントラストを向上させるため、ウェーハを搭載保持しているステージは、nmオーダの振動やドリフトを抑える必要がある。
【0005】
また、測長SEMでは、評価したウェーハを製造ラインに戻すことから、ウェーハを小片に分割することはできない。従って、ウェーハ全面を評価するためには、それをカバーするストロークを持ったウェーハステージが必要である。
【0006】
現状、ウェーハサイズは300mmが主流になっており、そのためのステージはかなりの大型になる。同時にスループット向上の観点からステージの高速化のための高出力駆動機構が必要となり、モータや駆動軸の発熱による温度上昇が発生する。
【0007】
これらの熱膨張収縮によるテーブルのドリフトを回避する手段として、移動テーブルと駆動軸との間に20μmから100μmのギャップを設けて、停止時は駆動軸を切り離す技術(特許文献2)が考案されている。更に、ギャップにより生じる不感帯のため不得手となる微動移動時に位置検出器による測定値と事前に設定した目標値との偏差を監視しながらテーブルの駆動を停止させる技術(特許文献3)が考案されている。これら技術により、パルスモータを用いたオープンループによる制御が可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−166428号公報
【特許文献2】特開2004−134155号公報
【特許文献3】特開2007−80660号公報(対応米国特許USP7,435,974)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3に開示された技術によれば、駆動部にギャップを持つ構造を採用するため、仮の目標位置への高速移動において、ギャップの初期状態や、速度・加速度変化時によって生じるテーブルの振動により、仮目標位置での停止位置にばらつきが生じやすい。更に、停止時のテーブルのすべりなどにより、仮目標位置で駆動軸とテーブルが接合されていない(切り離された)状態となる。仮目標位置での停止位置がばらつくことや切り離された状態となることで、その後の本来の目標位置への低速移動において、長距離の移動、或いはギャップを解消するためのパルス出力を必要とすることになる。このため、目標位置に到達するのにより多くの時間を要してしまい、スループットが低下してしまうと同時に、機構の微妙な変更により特性が変化する可能性がある。
【0010】
以下に、不感帯等の存在に依らず、高速且つ安定した位置決めを行うことを目的とする試料ステージ及び当該試料ステージを備えた測定,検査,観察装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための一態様として、以下に試料を載置するためのテーブルと、当該テーブルを駆動する駆動機構を備えた試料ステージにおいて、当該テーブルと駆動機構との間の結合を機械的に分離可能な結合部と、当該結合部を前記駆動機構によるテーブルの移動停止の前に分離するように制御する制御装置と、前記テーブル位置の位置を検出する位置検出器を備え、前記制御装置は、前記テーブルの粗動時には前記位置検出器によるテーブルの位置情報に基づいて、フィードバック制御を実施し、微動時には予め設定した速度変位パターンを用いて前記駆動機構をオープン制御するシーケンス制御を実施する試料ステージを提案する。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、試料ステージの目標位置への移動を高速・且つ高安定に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電子顕微鏡装置の全体構成を示す図である。
【図2】制御装置100によって実行される位置決め制御方法の実行手順を示すフローチャートである。
【図3】位置決め制御装置(制御装置100)の内部構成を示すブロック図である。
【図4】制御装置100によって図2に示すフローチャートが実行された時のモータ回転速度と試料ステージの初期位置からの相対位置変位の時間経過の一例をグラフ化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて、目標位置への移動を高速且つ高安定に実現し得る試料ステージ、及び試料ステージを備えた測定,検査,観察装置を説明する。本実施例では、特に不感帯により特性の変化するステージ機能での高速且つ安定した位置決めを行うことができ、また、ステージ停止時における熱ドリフトや振動によるノイズを抑えることが可能な試料ステージを搭載した電子顕微鏡装置および同装置における試料ステージの位置決め制御方法を可能とする試料ステージを説明する。
【0015】
本実施例では、テーブルを駆動するボールネジ等の駆動部とテーブルとの結合部にギャップを設けると共に、予め設定したテーブル位置の時間変位に対し位置検出器による測定値が追従するようにリアルタイムに速度制御を行うフィードバック制御手段と、予め設定した速度変位パターンでモータをオープン制御するシーケンス制御手段を備え、それらを位置検出器による測定値、或いはその変位量に基づき一連の位置決め制御内で動的に切り替えることにより、粗動移動時(粗動時)はフィードバック制御を行い、微動移動或いは不感帯領域での移動(微動時)ではシーケンス制御を行うようにした。
【0016】
上述するような構成によれば、粗動移動を予め設定したテーブル位置の時間変位に対し位置検出器による測定値が追従するよう速度制御することにより、仮の目標位置への移動を高速・且つ高安定に行うことができる。これにより、低速の微動移動距離・時間を最小化することとなり、短時間での位置決めが可能となる。また、位置検出器による測定値が変化しない不感帯領域での動作となる駆動初期動作や切り離し動作では、位置検出器による測定値に寄らず予め定められた動作を行うシーケンス制御に切り替えることにより、フィードバック制御で発生しがちなサーボ振動問題を回避することが可能となる。このことにより、不感帯により特性の変化する試料ステージ機構での高速且つ安定した位置決めを行うことができ、また、ステージ停止時における熱ドリフトや振動によるノイズを抑えることが可能な試料ステージを搭載した電子顕微鏡装置および同装置における試料ステージの位置決め制御方法を提供することができる。
【0017】
以下、図面を参照しながら、電子顕微鏡装置および同装置における試料ステージの位置決め制御方法について、詳細に説明する。なお、以下の説明では、特に半導体デバイス用の測長SEMを例に採って説明するが、上述のような試料ステージは、測長SEMに限らず、欠陥を検査するSEMや集束イオンビームを試料に照射する装置のような他の荷電粒子線装置からなる検査装置や観察装置への適用が可能である。また、光学式の顕微鏡を備えた測定,検査,観察装置への適用も可能であるが、後述するような試料ステージは、一般的に光学顕微鏡に比べて高い分解能を持つ走査電子顕微鏡等へ適用することによって、より高い効果を発揮する。
【0018】
図1は、電子線顕微鏡装置の全体構成を示す図である。ここでは、試料ステージを搭載した測長SEMが例示されている。
【0019】
図1において、真空ポンプ1により真空排気可能な試料室2の内部には、試料ステージ3が搭載されている。試料ステージ3は、ベース4,センターテーブル5,トップテーブル6などから構成される。センターテーブル5は、ベース4上にある案内機構としてのX滑り案内部材7により拘束され、一方向(X方向(図1中左右方向))に移動が可能となっている。センターテーブル5はまた、駆動機構としてのXボールネジ8の回転によって直線運動を行うXロッド9により押し引きされるが、Xロッド9先端のピン10とセンターテーブル5のガイド11には50μmのギャップ12が空いている。Xボールネジ8は、真空シールを施したシャフト13に結合され、パルスモータ(PM)14により回転が可能である。
【0020】
また、センターテーブル5上には、X滑り案内部材7と直角に交差したY滑り案内部材15が同様に構成され、トップテーブル6はY滑り案内部材15に沿って一方向(Y方向(図1面に対して奥側・手前側方向))に移動する。トップテーブル6とYロッドの結合については、センターテーブル5と同様にYロッド先端のピンとガイド部の間にギャップが設けられている。なお、ここに列挙したYロッド,ピン,ガイド部,ギャップについてはいずれも不図示とする。
【0021】
一方、トップテーブル6上には、試料ホルダ16が搭載されており、試料ホルダ16上にはウェーハ17が固定されている。また、トップテーブル6上には、ステージ位置制御用にバーミラー18が取り付けられており、レーザー干渉計(図1中「干渉計」と略す)19等の位置検出器を用いて位置測定が行われる。
【0022】
制御装置100は、レーザー干渉計19によって測定された試料ステージ3の位置に基づいてPM14を制御してX方向およびY方向のステージ位置制御を行う。
【0023】
一方、試料室2の上部には、電子線源となる電子銃20,電子線21の軌道を変える偏向器22,電子線21を収束させる電子レンズ23,ウェーハ17から放射される二次電子24を取り込むための二次電子検出器25などが組み込まれた鏡筒26を搭載している。二次電子検出器25の信号は、制御部27により信号処理され、観察用のCRT(Cathode Ray Tube)28に送られる。
【0024】
ここで、図1に例示する電子顕微鏡の動作原理について説明する。通常、利用者は、ウェーハのパターン形状の評価方法として、(1)所望のパターンがチップ内のどの位置にあるか、(2)1枚のウェーハに対して配列されたどのチップのパターンを評価するか、のそれぞれについて座標を用いて予め登録しておく。
【0025】
評価時、制御装置100は、登録された内容に基づき、自動的にその座標位置まで試料ステージを移動した後、電子線21をウェーハ17上に照射し、偏向器22で走査して数万倍から数十万倍の二次電子像を取得し、CRT28上に表示する。そして、この二次電子像の明暗の変化からパターンの形状を判別し、指定した形状(パターン線幅やピッチ等)の寸法値を算出する。その後、次に登録されたチップの座標位置に移動し、同様に画像取得を繰り返し行う。
【0026】
次に、図2,図3及び図4を用いて、本実施形態に係る試料ステージの位置決め制御装置ならびに位置決め制御方法について説明する。
【0027】
図2は制御装置100によって実行される位置決め制御方法の実行手順を示すフローチャートである。図3は本実施形態に係る位置決め制御装置(制御装置100)の内部構成を示すブロック図である。図4は制御装置100によって図2に示すフローチャートが実行された時のモータ回転速度と試料ステージの初期位置からの相対位置変位の時間経過の一例をグラフ化した図である。
【0028】
制御装置100は、内蔵のメモリに記録されたプログラムを読み出し、図2のフローチャートに従う手順を逐次実行する制御CPU200を備えるものとする。また、パルスモータの回転速度,加速度,回転量等モータの回転動作を直接指定するパラメータの組合せからなるモータ回転シーケンス指示201に従い、PM14への駆動パルス202のパルス量、周波数を制御するシーケンス制御部203と、予め定められた試料ステージ3の位置の時間変位パターン204とレーザー干渉計19からもたらされる試料ステージ3の位置情報208との偏差が極力0となるようにPM14の回転速度を制御するフィードバック制御部205とを備え、更に、PM14への駆動パルス経路を、シーケンス制御部203の出力、もしくはフィードバック制御部205に制御CPU200の制御切替指示206により切り替えるセレクタ207を備えることとする。
【0029】
図2に示すフローチャートによれば、まずステップS100にて目標位置400の設定を行う。目標位置400は、予め登録されているステージ座標や、装置オペレータの手入力やカーソルによる座標指定により決定される。次にステップS110にてレーザー干渉計19よりステージの現在座標を取得する。これまでのステップで現在座標と目標位置までの必要移動量が明らかになる。ここでは図示していないが、必要移動量が短い場合、後述するフィードバック制御による高速移動を行わず、シーケンス制御による低速移動のみ行うことも位置決め時間の短縮のためには有効である。
【0030】
続いて、ステップS120にて制御CPU200は制御切替指示206により制御手段をシーケンス制御部203に切り替える。移動開始時は後述する切り離し動作によりピン10とガイド11は非接触の状態であり、PM14が回転しピン10とガイド11が接触状態となるまでは、PM14が回転してもレーザー干渉計19の位置情報208が変化しない不感帯領域動作401となる。不感帯領域では、レーザー干渉計19からの位置情報208に基づきPM14を制御するフィードバック制御では過度のモータ回転上昇を招く恐れがあり有効ではない。フィードバック制御による高速移動を効果的に作用させるため、不感帯領域を取り除くことが重要となる。不感帯領域ではレーザー干渉計19からの位置情報208によらず、予め定められたモータ回転シーケンス指示201にてモータの回転を制御するシーケンス動作であれば、過度なモータ回転上昇を生じる恐れが無く制御できる。
【0031】
また、ギャップ量は予め定められた量(本実施例では50μm)であり、シーケンス動作で回転量の上限を予め定めておくことで、例えば回転量が上限に達してもレーザー干渉計19からの位置情報208がほとんど変化しない場合、制御装置100とPM14間のケーブル断線等のエラー判断に利用できる。ステップS130でモータの回転シーケンス指示201を設定し、それに基づきステップS140にてシーケンス制御にてギャップ除去動作402を行う。
【0032】
ギャップ除去動作中はステップS150にてレーザー干渉計19からの位置情報208を監視し、その変位量がある予め定められたしきい値を超えることで、ピン10とガイド11が接触しギャップが除去できたと判断し(ステップS160のY)、次の高速移動動作に推移する。変位量がしきい値以下の場合(ステップS160のN)、ギャップ除去動作を継続する。図4に示すギャップ除去動作402ではモータ回転速度を高速から低速に2段階に切り替えている。これはモータが回転しピン10とガイド11間が接触しギャップが無くなった状態になるとレーザー干渉計19からの位置情報208が変化し始めるが、駆動系の変形などのばね要素によるロストモーションによりモータの回転に対してステージの移動が線形的に追従していない状態である。この場合もギャップ除去動作と同様にシーケンス制御を行うが、ピン10とガイド11が非接触のため負荷が小さく比較的高速が可能な領域に比べ、接触直後のロストモーションの存在する領域は負荷が発生するため、脱調等や衝突による振動発生を避けるため回転速度を抑えることが望ましい。また、次の高速移動開始時での速度の急峻な変化を避ける作用もある。
【0033】
次にステップS170にて制御CPU200は、粗動送り移動制御403を行うため、制御切替指示206により制御手段をフィードバック制御部205に切り替える。制御CPU200はレーザー干渉計19からの位置情報208から現在位置を取得し、仮の目標位置404を設定する。図4に示す仮の目標位置404は目標位置400に対して一定量(オフセット405)手前に設定している。オフセット405は位置決め時間の短縮を考慮するとできるだけ小さいことが望ましく、粗動移動により十分な位置決め精度と停止後の低ドリフトが確保できるのであれば、目標位置400と仮の目標位置404は同一で構わない。また、仮の目標位置404を目標位置の奥側に設定し微動送りを粗動移動方向と反対側にすることも可能で、その場合、粗動移動によって生じるドリフトを打ち消す効果が期待できる。本実施例では、粗動移動後に停止位置精度の追い込みとドリフトの低減のため微動送りが必要な場合について記す。
【0034】
次にステップS200にて試料ステージ3が仮の目標位置404に至るまでの理想とする位置の時間変位パターン204を算出し、それをフィードバック制御部205に指示し、フィードバック制御部205はレーザー干渉計19からの位置情報208をリアルタイムにモニタしながらPM14の回転速度を制御し仮の目標位置404へ移動する。理想とする位置の時間変位パターン204は、高速移動に加え、急峻な速度・加速度の変化を抑え仮の目標位置での試料ステージの停止位置と停止時のギャップの状態が安定するように設定する。
【0035】
シーケンス制御にて高速移動をした場合、停止した時の反動による慣性力でステージ移動してしまい、ギャップの状態が不安定となる。しかし、粗動移動前にギャップ除去動作にて不感帯を取り除いていることに加え、フィードバック制御がリアルタイムに位置情報208を監視しながら位置決め制御を行うため、不感帯のある状態でオープン制御にて粗動送りをした場合に比べ、仮の目標位置404での停止位置、ギャップの状態をばらつかせず安定化させることが可能となる。仮の目標位置404での停止位置、ギャップの状態を安定化させることにより、次に行う微動送りを最小化することが可能となる。つまりは、位置決め時間の短縮に繋がる。
【0036】
また、理想とする位置の時間変位パターン204の算出処理はある程度の時間を要するため、ギャップ除去動作終了後に行った場合、ギャップ除去動作402と粗動送り移動制御403の間に制御のデッドタイムが生じてしまい、スループットの低下や制御停止の反動による慣性力によりステージが移動してしまい、その後の動作に支障をきたすことになる。
【0037】
図4に示す制御装置100はシーケンス制御部203とフィードバック制御部205は並列実装しており、両者の並列処理が可能な構成となっている。シーケンス制御部203は事前に設定されたモータ回転シーケンス指示201に従い自立的に動作するため、ギャップ除去動作402中に理想とする位置の時間変位パターン204の算出処理を行いデッドタイムの発生を防ぐことが可能となる。
【0038】
制御CPU200はステップS220にてレーザー干渉計19からの位置情報208を監視し、ステップS230で現在位置と仮の目標位置404との偏差が予め定めたしきい値以下となったら(ステップS240のY)、微動送り移動制御406を行うため、ステップS240で制御CPU200は制御切替指示206により制御手段をシーケンス制御部203に切り替える。
【0039】
フィードバック制御ではリアルタイムに位置情報208を参照しながら位置決めを行うため、高速且つ高精度な位置決めが可能ではあるが、先に述べた不感帯での動作が不得手であることや、自動制御であるため細かな条件動作を行うことが難しい。また、ギャップやロストモーションの比較的多い機構での低速移動は、ばね特性が支配的となり、モータの回転に対するステージの挙動が高速移動時と大きく異なることが分かっている。そこで、仮の目標位置404から目標位置400までの制御を、条件制御が容易で、予め定められたモータ回転シーケンス指示201にてモータの回転を制御するシーケンス制御に切り替え微動送り移動制御406を行う。
【0040】
ステップS260にて現在位置を確認した後、ステップS270にて目標位置までのモータ回転シーケンス指示201を設定する。フィードバック制御による粗動送りにより仮の目標位置の停止位置並びにギャップの状態が安定していること、粗動送り移動制御から微動送り移動制御へ連続的に切り替わっていることから、ここでのギャップ除去動作は不要であり、微動送りの距離も最小化できる。これにより微動送り時間を短縮することが可能となり位置決め時間の低減が図れる。ステップS280にて位置情報208を監視し、現在位置と目標位置との偏差がしきい値以下となったと判断すると(ステップS290のY)、ステップS300にてモータを停止させる。図4に示す微動送り移動制御406では速度を高速から低速に2段階に切り替えている。目標位置から離れた位置ではモータの回転速度を上げ移動時間の短縮を図り、目標位置付近では停止後にドリフトを軽減させるために回転速度を落とす。このようにシーケンス制御で微動送りを行うことで、位置情報208に基づく条件制御が容易となり制御を簡素化することができる。
【0041】
停止後は、モータや駆動軸の熱膨張収縮によるドリフト発生を回避するため、ピン10とガイド11の切り離し動作407を行う。切り離し動作407はギャップ除去動作402と同様に不感帯での制御となる。そのため微動送りで使用したシーケンス制御のまま制御手段を切り替えずに行う。ギャップ量は予め定められた量(本実施例では50μm)であること、低速な微動送りによりステージ停止時の反動による慣性力が少ないことからギャップ位置は安定しており、予め定めたモータを予め定めた回転量だけ回転させることで、切り離し動作407を行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 真空ポンプ
2 試料室
3 試料ステージ
4 ベース
5 センターテーブル
6 トップテーブル
7 X滑り案内部材
8 Xボールネジ
9 Xロッド
10 ピン
11 ガイド
12 ギャップ
13 シャフト
14 パルスモータ(PM)
15 Y滑り案内部材
16 試料ホルダ
17 ウェーハ
18 バーミラー
19 レーザー干渉計
20 電子銃
21 電子線
22 偏向器
23 電子レンズ
24 二次電子
25 二次電子検出器
26 鏡筒
27 制御部
28 CRT
100 制御装置
200 制御CPU
201 モータ回転シーケンス指示
202 駆動パルス
203 シーケンス制御部
204 位置の時間変位パターン
205 フィードバック制御部
206 制御切替指示
207 セレクタ
208 位置情報
400 目標位置
401 不感帯領域動作
402 ギャップ除去動作
403 粗動送り移動制御
404 仮の目標位置
405 オフセット
406 微動送り移動制御
407 切り離し動作

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を載置するためのテーブルと、当該テーブルを駆動する駆動機構を備えた試料ステージにおいて、
当該テーブルと駆動機構との間の結合を機械的に分離可能な結合部と、当該結合部を前記駆動機構によるテーブルの移動停止の前に分離するように制御する制御装置と、前記テーブル位置の位置を検出する位置検出器を備え、前記制御装置は、前記テーブルの粗動時には前記位置検出器によるテーブルの位置情報に基づいて、フィードバック制御を実施し、微動時には予め設定した速度変位パターンを用いて前記駆動機構をオープン制御するシーケンス制御を実施することを特徴とする試料ステージ。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御装置は、前記位置検出器による位置変位量が所定のしきい値を超えたときに、前記シーケンス制御からフィードバック制御への切り替えを実行することを特徴とする試料ステージ。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御装置は、前記位置検出器による位置変位量が所定のしきい値を超える前に、前記駆動機構の回転速度を高速から低速に切り替えることを特徴とする試料ステージ。
【請求項4】
請求項1において、
前記制御装置は、前記試料ステージの現在の位置と仮の目標位置との偏差が所定のしきい値以下となったときに、前記フィードバック制御からシーケンス制御に切り替えを実行することを特徴とする試料ステージ。
【請求項5】
請求項4において、
前記制御装置は、前記位置検出器による位置変位量が所定のしきい値以下となった後に、前記駆動機構の回転速度を高速から低速に切り替えることを特徴とする試料ステージ。
【請求項6】
請求項1において、
前記試料ステージを備えた荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記試料ステージを備えた光学顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−9237(P2012−9237A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143285(P2010−143285)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】