説明

誘導無線通信方式

【課題】本発明の課題は、誘導無線移動局からの通信回線が成立しているか、否かを判別し、適切な誘導無線移動局を選択使用する誘導無線通信方式を提供することにある。
【解決手段】本発明は、車両11に搭載された誘導無線移動局15から集電装置17を介して第三軌条14に信号が伝送され、前記第三軌条14に電磁結合された誘導通信線により基地局に信号が伝送される誘導無線通信方式において、誘導無線移動局15で誘導無線移動局15から集電装置17に流れる信号電流の有無を検出し、前記信号電流が検出されたときは当該誘導無線移動局15で通信し、前記信号電流が検出されないときは他の誘導無線移動局16に切り替えて通信することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下鉄等の列車無線に用いられるもので、車両に搭載された誘導無線移動局から集電装置(パンタグラフ、集電舟等)を介して第三軌条もしくはトロリー線に信号が伝送され、前記第三軌条もしくはトロリー線に電磁結合された誘導通信線により基地局に信号が伝送される誘導無線通信方式に係り、特に誘導無線移動局からの通信回線が成立しているか、否かを判別し、適切な誘導無線移動局を選択使用するものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の地下鉄等の車両における誘導無線通信方式について説明する。すなわち、車両に搭載された誘導無線移動局からの通話及び非常発報信号は、集電装置を経由して第三軌条もしくはトロリー線に伝送される。前記第三軌条もしくはトロリー線に伝送された通話及び非常発報信号は、前記第三軌条もしくはトロリー線の電力供給区域等に対応して通信区域毎に張られた誘導通信線に電磁結合により伝送される。前記誘導通信線に伝送された通話及び非常発報信号は、前記誘導通信線に接続された基地局によって受信され、前記基地局から中央制御装置に伝送される。前記中央制御装置にあっては、通話信号を受信すれば、当該区間の移動局と通信通話を行い、非常発報信号を受信すると、該当する電力供給区域などの必要と思われる電力供給区域にある第三軌条もしくはトロリー線への電力供給を停止するための指令を変電所等に通知する。
【0003】
従来の集電装置と第三軌条もしくはトロリー線を通信媒体とした誘導無線通信方式において、集電装置と第三軌条もしくはトロリー線の離線(シーサス、クロッシング:ポイント切換部分等のセクション)による通信障害(通信不可)があった。
【0004】
この解決のために、特に列車を非常又は緊急に停止させるための非常発報通信等の重要な通信においては車両の前後に誘導無線移動局を搭載させて交互に送信させる、交互送信方式が用いられている。これは、車両の前後に誘導無線移動局で同時に送信させると受け側(地上設備)でビート障害を起し、信号の確実な受信が出来なくなるために、車両の前後に搭載させた誘導無線移動局を交互に送信させるものである。
【0005】
また、一方の誘導無線移動局に接続されている集電装置がポイント部分等のセクション上にあり第三軌条もしくはトロリー線から離線していた場合にも、車両の前後に搭載している誘導無線移動局の送信器を、交互に送信することにより、ある一定時間は、他方の誘導無線移動局の送信器から、非常発報通信等が行える。
【0006】
しかしながら、車両の前後に誘導無線移動局を設けた交互送信で、一方の送信器のみが有効である場合の通信は限られる。
【0007】
一方が送信、他方が待ち、他方が送信、一方が待ちの状態では、いずれの送信器も断続送信となり、断続時間により長い通信(音声信号による通信等)は制約を受ける。仮に、双方の送信器とも、集電装置と第三軌条もしくはトロリー線が接続されている状態でも、交互送信の境目(境界)で通信の不連続を起す。
【0008】
また当然であるが、一方の集電装置がポイント等で第三軌条もしくはトロリー線の無いところでの、通信は一方の送信は出来なく断続送信となる。
【特許文献1】特開2005−75268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、列車に搭載の誘導無線移動局の送信器から集電装置に流れる信号電流の有無を通信時又は通信開始前に検出し、前記信号電流が流れていないときに同列車搭載の他の誘導無線移動局に切り替えて通信することにより、通信の不感状態を回避して確実な通信(送信)が行える誘導無線通信方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、車両に搭載された誘導無線移動局から集電装置を介して第三軌条もしくはトロリー線に信号が伝送され、前記第三軌条もしくはトロリー線に電磁結合された誘導通信線により基地局に信号が伝送される誘導無線通信方式において、前記誘導無線移動局で誘導無線移動局から集電装置に流れる信号電流の有無を検出し、前記信号電流が検出されたときは当該誘導無線移動局で通信し、前記信号電流が検出されないときは他の誘導無線移動局に切り替えて通信することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の誘導無線通信方式は、列車に搭載の誘導無線移動局の送信器から集電装置に流れる信号電流の有無を通信時又は通信開始前に検出し、前記信号電流が流れていないときに同列車搭載の他の誘導無線移動局に切り替えて通信することにより、通信の不感状態を回避して確実な通信(送信)を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の実施形態に係る誘導無線通信方式を示す構成説明図である。図1において、11,12は列車を構成する車両、13はレール、14は第三軌条(もしくはトロリー線)、15,16は車両に搭載された誘導無線移動局、17,18は集電装置(パンタグラフ、集電舟等)、19,20は誘導無線移動局と集電装置を接続する接続線、21は誘導無線移動局15と誘導無線移動局16間を接続する引き通しケーブル、22は誘導通信線、23は基地局、24は中央制御装置、25は変電所である。
【0014】
図1に示すように、車両11に搭載された誘導無線移動局15の送信器からの通話及び非常発報信号は、接続線19及び集電装置17を経由して第三軌条(もしくはトロリー線)14に伝送される。前記第三軌条(もしくはトロリー線)14に伝送された通話及び非常発報信号は、前記第三軌条(もしくはトロリー線)14の電力供給区域等に対応して通信区域毎に張られた誘導通信線22に電磁結合により伝送される。前記誘導通信線22に伝送された通話及び非常発報信号は、前記誘導通信線22に接続された基地局23によって受信され、前記基地局23から中央制御装置24に伝送される。前記中央制御装置24にあっては、通話信号を受信すれば、当該区間の移動局と通信通話を行い、非常発報信号を受信すると、該当する電力供給区域などの必要と思われる電力供給区域にある第三軌条(もしくはトロリー線)への電力供給を停止するための指令を変電所25に通知する。
【0015】
図2は本発明の実施形態に係る信号電流検出装置を示す構成説明図であり、(a)は信号電流が有の場合、(b)は信号電流が無の場合である。図2(a),(b)中、図1と同一部分は同一符号を付してその説明を省略する。図2(a),(b)において、31は誘導無線移動局15の送信器、32はピックアップコイル、33は磁性材料、Hは磁界、iは高周波信号電流である。
【0016】
図2(a)に示すように、集電装置17と第三軌条(もしくはトロリー線)14が接続されている場合には、誘導無線移動局15の送信器31から集電装置17に通話及び非常発報信号を送信すると、接続線19に高周波(例えば100KHz〜280KHz程度)信号電流iが流れる。尚、第三軌条14から集電装置17、接続線19を介して車両11、12に供給される電源は直流である。接続線19に高周波信号電流iが流れると、磁界Hが発生するため、前記磁界H中にピックアップコイル32を配置すると、磁界Hによりピックアップコイル32に電流が発生する。したがって、ピックアップコイル32に発生する電流を検出することにより、集電装置17と第三軌条(もしくはトロリー線)14が接続されていることを確認できる。尚、ピックアップコイル32は車両の適宜位置に設置され、接続線19との位置関係が固定される。
【0017】
また図2(b)に示すように、集電装置17と第三軌条(もしくはトロリー線)14が離線(シーサス、クロッシング:ポイント切換部分等のセクション)して接続されていない場合には、誘導無線移動局15の送信器31から集電装置17に通話及び非常発報信号を送信しても、接続線19に高周波信号電流iが流れない。接続線19に高周波信号電流iが流れないと、磁界Hが発生しないため、接続線19の近傍にピックアップコイル32を配置しても、ピックアップコイル32には電流が発生しない。したがって、ピックアップコイル32で電流を検出しないことにより、集電装置17と第三軌条(もしくはトロリー線)14が接続されていないことを確認できる。
【0018】
図3は本発明の実施形態に係る移動局切替を示すフローチャートである。すなわち、通信時に、車両11に搭載された誘導無線移動局15において誘導無線移動局15の送信器から通話信号または非常発報信号を送信(ステップS1)し、接続線19に流れる信号電流iの有無を検出(ステップS2)し、誘導無線移動局15の送信器から集電装置17に流れる信号電流iが検出されたならば(ステップS3)、車両11に搭載された誘導無線移動局15の送信器から通話信号または非常発報信号を送信し続ける。一方、誘導無線移動局15の送信器から通話信号または非常発報信号を送信(ステップS1)したにもかかわらず送信電流iが検出(ステップS2)されず、誘導無線移動局15の送信器から集電装置17に流れる信号電流iが流れていない(ステップS3)ときには、誘導無線移動局15から車両間の引き通しケーブル21を経由して同列車の他の車両12に搭載の誘導無線移動局16に切り替えて(ステップS4)通信する。すなわち、車両12に搭載された誘導無線移動局16の送信器からの通話信号または非常発報信号は、接続線20及び集電装置18を経由して第三軌条(もしくはトロリー線)14に伝送される。尚、接続線20を流れる信号電流iの有無も図示しないピックアップコイルで検出し、仮に移動局16から信号を送信しても信号電流iが検出されない場合には、移動局15、16のいずれかから再送する、あるいはアラームを発する等の処理を行っても良い。尚、高周波信号電流iを検出する手段は、ピックアップコイル32に限られるものではなく、他の電流検出手段を用いてもよい。
【0019】
また、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る誘導無線通信方式を示す構成説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る信号電流検出装置を示す構成説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る移動局切替を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0021】
11,12…列車を構成する車両、13…レール、14…第三軌条(もしくはトロリー線)、15,16…車両に搭載された誘導無線移動局、17,18…集電装置(パンタグラフ、集電舟等)、19,20…誘導無線移動局と集電装置を接続する接続線、21…誘導無線移動局15と誘導無線移動局16間を接続する引き通しケーブル、22…誘導通信線、23…基地局、24…中央制御装置、25…変電所。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された誘導無線移動局から集電装置を介して第三軌条もしくはトロリー線に信号が伝送され、前記第三軌条もしくはトロリー線に電磁結合された誘導通信線により基地局に信号が伝送される誘導無線通信方式において、
前記誘導無線移動局で誘導無線移動局から集電装置に流れる信号電流の有無を検出し、前記信号電流が検出されたときは当該誘導無線移動局で通信し、前記信号電流が検出されないときは他の誘導無線移動局に切り替えて通信することを特徴とする誘導無線通信方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−260726(P2009−260726A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108143(P2008−108143)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000166650)株式会社日立国際電気エンジニアリング (100)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】