説明

走行機に連結される作業機

【課題】 水田等の圃場の作業残隅部の作業処理は、その作業がトラクタを反転させる等の困難な作業が多かった。また、畦等の被作業面が直線でない場合や、草や樹木などの異物がある場合正確に作業が行えない課題があった。
【解決手段】 作業機Aは、装着フレーム1等に設ける回動支点14を中心に回動可能かつ伸縮可能な回動部2と、回動部2に設けた作業部回動支点32を中心に回動可能な作業部3と、回動部2の回動変位量及び伸縮量と作業部3の回動変位量とを制御する制御部4と、制御部4を操作可能な操作部5を有し、作業部3は、走行機Bを走行させた状態で走行機Bの進行方向にほぼ平行な面を作業面34aとして作動することが可能であり、かつ走行機Bの後方に位置させた状態で走行機Bの進行方向とほぼ直交する面を作業面34bとして作動することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタ等の走行機に連結されて水田等の矩形の場所において、その周囲の作業を行う作業機、例えば畦形成機、溝形成機、草刈り機などの作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
水田の畦形成や水田の周囲の溝の形成等の主に水田周囲の場所において行う畦形成作業や溝掘り作業等において、トラクタ等の走行機に連結されて、走行機の進行方向に沿って進行しそれらの形成作業を行う作業機は、様々な形態が知られている。従来技術としては、走行機の進行方向に対して水平方向に180°回転する作業機や、作業機が走行機の進行方向に対して側方にオフセットした位置で作業する作業機などが公知である。
【0003】
水田等の畦形成においてトラクタに連結して側方に位置させた作業部の畦形成作業では、作業部はトラクタの側方後部にあるためトラクタが行き止まりになると作業部はその位置から前方の隅部は溝形成作業ができない。そのため残隅部の処理作業は、作業部をトラクタ進行方向に対して180°角水平方向に回動させ、更にトラクタも前後180°回転させて方向転換した後、トラクタを後進させて残隅部の作業処理を行っていた(従来技術1)。
【0004】
また、作業機が走行機の進行方向に対して側方にオフセットした位置で作業する作業機としては、以下のような公知例がある。特開2004−254522号公報(従来技術2)には、「オフセット作業方法」として、「走行機体にオフセット作業が行えるように装着された作業機による作業方法であって、作業機は水平面内での回動及び移動の自由度を有し、作業機自体の直進性を維持しながら、走行機体が圃場を走行しつつ作業を行う作業部分から走行機体が旋回する圃場隅部分までの仕上げ作業が行う。作業機は、走行機体から見て少なくとも2以上の水平回動、あるいは水平移動と水平回動の自由度を有し、直進性を制御し、前作業跡を基準に行う作業装置、作業機自身の作業跡を基準に行う作業装置、作業機自身の回動角度を基準に行う作業装置などを備えている。」が開示されている。
【0005】
更に、特開2004−267012号公報(従来技術3)には、「オフセット作業機」として「作業部のオフセット位置を調整自在にしたオフセット位置調整機構と、作業部の作業方向を回動調整自在にした作業方向調整機構と、作業部と作業部によって作業がなされる基準作業線との位置関係を検出する検出部と、検出部からの検出信号に基づいて、オフセット位置調整機構を動作させて作業部のオフセット位置を調整すると共に作業方向調整機構を動作させて作業部の作業方向を調整する制御手段とを備え、作業部の作業位置と作業方向を基準作業線に沿うように制御する」作業機が開示されている。
【0006】
更にまた、特開2004−275188号公報(従来技術4)には、「オフセット作業機」として、「オフセット作業機の一例である畦塗り機は、トラクタの後部に装着され、トラクタの走行にともなって進行してトラクタの走行位置に対して側方にオフセットした位置を作業する作業部を備え、少なくとも2以上の水平回動、又は、水平移動及び水平回動の自由度を有し、該自由度を制御するコントローラ(制御装置)を備える。作業部の自由度は、作業者による手動操作によっても制御可能である。」との記載がある。
【0007】
また、特開2005−46040号公報(従来技術5)には、「圃場の隅まで連続的に畦塗り作業を行う畦塗り機及びその作業部位置調整方法」の開示がある。従来技術5の畦塗り機は、「作業部30を旧畦U0の一辺Faに沿うように設置可能な作業部位置調整装置61を有する。作業部位置調整装置61は、オフセットフレーム10の後端部に回動自在に設けられた作業部30が旧畦U0の設置位置に設置されたか否かを走行機体80から目視確認可能な第1マーカ62と、作業部30の向きが一辺Faと略平行にあるか否かを走行機体80から目視確認可能な第2マーカ64と、オフセットフレーム10を旋回動させる旋回シリンダ13及び作業部30を回動させる回動シリンダ57の動作を操作可能なアクチュエータ操作装置67を有する。走行機体80に搭乗した作業者Mは、第1マーカ62及び第2マーカ64を目視して作業部30が設置位置に設置され且つ作業部30の向きが一辺Faと略平行になるようにアクチュエータ操作手段67を操作する。」との記載がある。
【特許文献1】特開2004−254522号公報(従来技術2)
【特許文献2】特開2004−267012号公報(従来技術3)
【特許文献3】特開2004−275188号公報(従来技術4)
【特許文献4】特開2005−46040号公報(従来技術5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来技術1のように水田等の圃場の作業残隅部の作業処理を行うために、トラクタ進行方向に対して作業部をトラクタ進行方向に対して180°角水平方向に回動させ、更にトラクタも前後180°回転させて方向転換した後、トラクタを後進させるという複数の面倒な作業を行なわなければならないという問題点があった。特に、トラクタを後進させて残隅部の作業処理を行う場合は、作業者は後方を見ながらトラクタの後進操作を行うため運転技術や作業などに熟練を要するという課題があり、誰でもが容易に作業を行い難いという課題があった。
【0009】
更に、従来技術2乃至5に係る作業機は、畦等の被作業面に対して作業部のオフセット位置を調整したり、作業部の作業方向を調整したりする制御手段を有する技術であり、水田等の圃場の隅部を容易に作業できる技術とは言えない課題を有した。
【0010】
また、従来技術5の「圃場の隅まで連続的に畦塗り作業を行う畦塗り機及びその作業部位置調整方法」は、マーカを目視しながら畦等の被作業面に対して作業部の設置位置を操作するものであり、畦等の被作業面が直線でない場合や、草や樹木などの異物がある場合には、正確に作業が行えない課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記課題を解決するために、走行機に装着フレーム等により連結される作業機であり、作業機は、装着フレーム等に設ける回動支点を中心に水平方向に回動可能かつ伸縮可能な回動部と、回動部に設けた作業部回動支点を中心に回動可能な作業部と、回動アーム部の回動変位量及び伸縮量と作業部の回動変位量とを制御する制御部と、制御部を操作可能な操作部を有し、
作業部は、走行機を走行させた状態で走行機の進行方向にほぼ平行な面を作業面として作動することが可能であり、かつ走行機の後方に位置させ走行機の進行方向とほぼ直交する面を作業面として作動することが可能であることを特徴とする走行機に連結される作業機を提案する。
【0012】
また、走行機に装着フレーム等により連結される作業機であり、作業機は、装着フレーム等に設ける回動支点を中心に水平方向に回動可能かつ伸縮可能な回動部と、回動部に設けた作業部回動支点を中心に回動可能な作業部と、回動部の回動変位量及び伸縮量と作業部の回動変位量とを制御する制御部と、制御部を操作可能な操作部を有し、
作業部は、走行機を走行させた状態で走行機の進行方向にほぼ平行な面を作業面として作動することが可能であり、かつ走行機の後方に位置させ走行機の進行方向とほぼ直交する面を作業面として作動することが可能であり、かつ走行機の進行方向にほぼ直交する作業面と走行機の進行方向にほぼ平行な作業面との間を水平回動させつつ円弧状作業面として作動することが可能であることを特徴とする走行機に連結される作業機を提案する。
【0013】
更に、走行機に装着フレーム等により連結される作業機であり、作業機は、装着フレーム等に設ける回動支点を中心に水平方向に回動可能かつ伸縮可能な回動部と、回動部に設けた作業部回動支点を中心に回動可能な作業部と、回動部の回動変位量及び伸縮量と作業部の回動変位量とを自動的に制御する制御部と、制御部を操作可能な操作部と有し、
回動部は、回動部回動シリンダと、回動部回動変位量検知センサーと、回動部伸縮シリンダと、回動部伸縮量検知センサーとを有し、作業部は、作業部回動シリンダーと、作業部回動変位量検知センサーとを有し、制御部は、操作部から受ける操作信号と、回動部回動変位量検知センサーと回動部伸縮量検知センサーと作業部回動変位量検知センサーとから受ける検知信号とを予め組み込まれたプログラムによって計算して成る指示信号により回動部回動シリンダと回動部伸縮シリンダと作業部回動シリンダーを作動、制御することにより回動部及び作業部のそれぞれの位置を特定させ、
作業部は、走行機の側方に位置させて走行機の進行方向にほぼ平行な面を作業面として作動することが可能であり、かつ走行機の後方に位置させて走行機の進行方向とほぼ直交する面を作業面として作動することが可能であり、かつ走行機の進行方向にほぼ直交する作業面と走行機の進行方向にほぼ平行な作業面との間を水平回動しつつ円弧状作業面として作動することが可能であることを特徴とする走行機に連結される作業機を提案する。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、走行機の側方に位置させて走行機の進行方向にほぼ平行な面を作業面として作動すること、及び作業部を走行機の進行方向とほぼ直交する面を作業面として作動することができるため、作業機を前後反転させることなく非常に容易に水田等の隅部の処理作業を行うことが可能になった。更に、走行機の進行方向にほぼ直交する作業面と走行機の進行方向にほぼ平行な作業面との間を水平回動させつつ円弧状作業面として作動することにより、水田等の隅部を円弧状形成する処理作業を行うことが可能になった。
【0015】
更に、この発明は、水田の畦等の被作業面の形状や状態に関係なく、作業部を独立的に回動及び移動させて作業面を走行機の進行方向に対して平行直進作業、直交直進作業、円弧状作業を行うことができる。そのため、非常に容易に水田等の隅部の畦形成作業や溝形成作業を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の実施形態について、作業機の平面説明図である図1、作業部の側面説明図である図2、走行機を停止させた状態で走行機の進行方向とほぼ直交する面を作業面として作動する作業部の直線状移動を示す図3乃至図5、作業部を後方に位置させた状態で走行機の進行方向にほぼ直交する作業面と走行機の進行方向にほぼ平行な作業面との間を水平回動させつつ円弧状作業面として作動する作業部の円弧状移動を示す図6乃至図8、この発明の他の実施形態を示す一部拡大平面図を示す図9に基づいて説明する。
【0017】
この発明の実施形態である作業機Aは、走行機Bに機枠である装着フレーム1によって連結される。作業機Aは、装着フレーム1、回動部である回動アーム部2、作業部3、制御部4,操作部5、動力源部6を備えている。走行機Bは、この実施例ではトラクタである。
【0018】
装着フレーム1は、その前部で走行機Bにトップブラケット10、左右のロアピン11、11によって連結されており、走行機Bの駆動軸(図示せず)と連結する入力軸12を介してユニバーサルジョイント13が連結される。この実施形態ではユニバーサルジョイント13は、ダブル広角ジョイントである。装着フレーム1の後部にアーム回動支点であるアーム回動軸14を垂直方向に設けており、アーム回動軸14には、回動アーム部2の基部20を装着フレーム1に対して水平方向に左右側方との間で後方を経由して180度角前後、回動変位可能に設けている。
【0019】
回動アーム部2(2a、2b)は、基部側に位置し角筒状の内摺動アーム21と先部側に位置し内摺動アーム21より大きな角筒状の外摺動アーム22を摺動可能に接続しており、内摺動アーム21と外摺動アーム22の摺動により回動アーム部2の長さは伸縮する。
【0020】
図1に示す第1実施形態である回動アーム部2aは、基部20の中心でアーム回動軸14に固定され水平方向に回動可能であり基部外周に第2ギア23aを設ける。第2ギア23aは、内摺動アーム21方向以外の外周にギアを形成しており、装着フレーム1に設けられ水平方向に回動可能な第1ギア24aと噛合している。アーム回動軸14は、アーム回動シリンダ27aのシリンダロッド270a先端に回動可能に設けられる第1シリンダーアーム271aに固定されている。アーム回動シリンダ27aは、シリンダ本体272aの基部で第2シリンダーアーム273aの一端と回動可能に連結しており、第2シリンダーアーム273aは他端で装着フレーム1に回動可能に取り付けられている。アーム回動シリンダ27aは、この実施形態では油圧シリンダであるが、電動シリンダ等のシリンダでもよい。
【0021】
第1ギア24aは、第2ギア23aより大きい円の円弧部分に設けられたギアからなり装着フレーム1に垂直方向に設けられた第1ギア回動軸25を中心に回動可能であり、第1ギア回動軸25aには、ポテンショメータ28aが設けられており、第2ギア23aの回動を介して回動する第1ギア回動軸25aの回動変位量、すなわち回動アーム部2の走行機Bの前後方向に対する回動変位量は検知され制御部4に送信される。
【0022】
図9に示す第2実施形態である回動アーム部2bは、基部20の中心でアーム回動軸14に固定され水平方向に回動可能であり基部外周に第2ギア23bを設ける。第2ギア23bは、内摺動アーム21方向以外の外周にギアを形成しており、装着フレーム1に設けられ水平方向に回動可能な第1ギア24bと噛合している。第1ギア24bは、ギアアーム240を介してアーム回動シリンダ27bのシリンダロッド270bの先端と回動自在に連結している。アーム回動シリンダ27bは、この実施形態では電動シリンダであり、シリンダ駆動装置274bにより駆動するが、油圧シリンダ等のシリンダでもよい。アーム回動シリンダ27bは、シリンダ本体271bの基部と回動可能に連結するのでシリンダ駆動装置274bを介して装着フレーム1に回動可能に取り付けられている。第1ギア回動軸25bには、アーム回動変位量検知センサーであるポテンショメータ28bが取り付けられており、第1ギア回動軸25bの回動変位量度、すなわち回動アーム部2の走行機Bの前後方向に対する回動変位量を検知する。
【0023】
回動アーム部2(2a、2b)は、内摺動アーム21に沿った上方にアーム伸縮シリンダ26を設けており、アーム伸縮シリンダ26は、シリンダ本体260の基部をアーム回動軸14に回動自在に設けており、シリンダロッド261の先端を外摺動アーム22の基部側に固定して設ける。アーム伸縮シリンダ26に伸縮量検知センサー29を設けておりシリンダロッド261の伸縮量を検知し、外摺動アーム22の伸縮量を検知し、制御部4に送信する。
【0024】
作業部3は、この実施形態では畦形成部であり、畦成形装置3a、畦上面削土装置3b、掘削爪3c、盛土装置3d等からなり、作業部3の各装置はユニバーサルジョイント13に連結される伝動軸3eを介して伝達される駆動力によって駆動される。3fは、第1チェーンケースであり、3gは第2チェーンケースである。
【0025】
作業部3は、作業部回動シリンダ30と、作業部回動変位量検知センサー31とを有する。作業部3は、回動アーム部2の外摺動アーム22に垂直方向に設けた作業部回動支点である作業部回動軸32を中心に回動アーム部2の長さ方向に対して回動可能に取り付けられており、作業部回動シリンダ30のシリンダロッド301の伸縮によって回動する。作業部回動シリンダ30は、回動アーム部2の外摺動アーム22に固定されている作業部支持フレーム33と外摺動アーム22の先端部との間にそれぞれ回動可能に取り付けられている。この実施形態では作業部回動シリンダ30は、そのシリンダ本体300の基部を外摺動アーム22の先端に取り付けており、シリンダロッド301先端を作業部支持フレーム33に取り付けている。
【0026】
作業部回動変位量検知センサー31は、この実施形態では作業部回動シリンダ30に設けているシリンダロッド伸縮量検知センサーである。シリンダロッド伸縮量検知センサー31によってシリンダロッド301の伸縮量を検知して作業部3が、回動アーム部2の長さ方向に対してどの程度回動したかという回動変位量を検知する。他の作業部回動変位量検知センサー31としては、作業部回動軸32にポテンショメータを取り付けられており、作業部回動軸32の回動変位量度、すなわち作業部3の回動アーム部2に対する回動変位量を検知することも可能である。
【0027】
制御部4は、作業機A又は走行機Bに着脱自在または固定して設けられており、操作部5から受ける操作信号と、アーム回動変位量検知センサー28とアーム伸縮量検知センサー29と作業部回動変位量検知センサー31とから受ける検知信号を予め組み込まれたプログラムによって計算されて成る指示信号により、アーム回動シリンダ27と、アーム伸縮シリンダ26と、作業部回動シリンダー30とのそれぞれの駆動装置を適宜作動、制御させることにより回動アーム部2及び作業部3のそれぞれを回動又は移動の位置を特定させ、また作業部3の作業面の向きを変更させる。制御部4からの指示信号は、油圧バルブ、電気リレー等の装置を介して各駆動装置を制御している。この実施例では、回動アーム部2の回動変位量を基にアーム伸縮量と作業部回動変位量を計算して制御している。これら各駆動装置の制御は、操作部4からの一定の指示で全て全自動制御で行うことも可能であり、また一部操作を手動で行うことも可能である。
【0028】
操作部5は、コントローラであり、走行機Bの操作者が保持して制御部4を介して作業部3の作業面34(34a、34b、34c)の位置及びその向きを変更させ、また平面視で特定の直線方向、又は円弧状に移動させることができる。すなわち、作業部3は、図8に示すように走行機をBを走行させながら走行機Bの側方に位置させて走行機Bの進行方向にほぼ平行な面を作業面34aとして作動することが可能である。また作業部3は、図3乃至図5に示すように走行機Bを停止させた状態で、又は走行機Bを移動させながら走行機Bの後方に位置させて走行機Bの進行方向(前後方向)とほぼ直交する面を作業面34bとして作動することが可能である。更に作業部3は、図6乃至図8に示すように走行機Bの進行方向にほぼ直交する作業面34bと走行機Bの進行方向にほぼ平行な作業面34aとの間を水平回動しつつ円弧状作業面34cとして作動することも可能である。
【0029】
動力源部6は、バッテリー等の電源であり、制御部4及び各駆動装置の駆動源である。
【0030】
次に、この発明の実施形態である作業機Aの作動について説明する。作業機Aは、走行機Bに連結されて作業を行う。作業機Aの作業部3は、アーム回動変位量検知センサー28、アーム伸縮量検知センサー29、作業部回動変位量検知センサー31のそれぞれから受ける検知信号により、そのときの作業部3の位置及び作業面34の方向を検知する。これに基づき操作部5からの操作信号を受け、予め組み込まれたプログラムによりアーム回動シリンダ27、アーム伸縮シリンダ26、作業部回動シリンダー30のそれぞれの駆動装置に指示信号を同時又は順次に送信しそれぞれを作動させる。全自動制御の場合は、各アーム回動変位量検知センサー28、アーム伸縮量検知センサー29、作業部回動変位量検知センサー31のそれぞれから受ける検知信号とにより自動的にそれぞれのシリンダーロッドを伸縮させて作業部3の位置及び作業面34の向きを希望の位置及び方向に設定することができる。
【0031】
図1に示す第1実施形態では回動アーム部2aは、操作部5から制御部4を介して送信される指示信号によって駆動装置を作動させアーム回動シリンダ27aを伸縮させることにより第2ギア23aをアーム回動軸14を中心に回動させる。第2ギア23は、回動アーム部2の基部20の水平方向外周に形成されているため、回動アーム部2aもアーム回動軸14を中心に回動する。この回動アーム部2aの回動変位量は、第2ギア23aと噛合している第1ギア24aの第1ギア回動軸25aに設けられたポテンショメータ28aにより検知される。すなわち回動アーム部2の走行機Bの前後方向に対する回動変位量は、第1ギア回動軸25aの回動変位量として検知され制御部4に送信される。
【0032】
図9に示す第2実施形態である回動アーム部2bは、操作部5から制御部4を介して送信される指示信号によって駆動装置を作動させアーム回動シリンダ27bを伸縮させることにより第1ギア24bを第1ギア回動軸25bを中心に適宜量の回動変位をさせ、第1ギア24bと噛合している第2ギア23bをアーム回動軸14を中心に回動させる。第2ギア23bは、回動アーム部2bの基部20の水平方向外周に形成されているため、回動アーム部2もアーム回動軸14を中心に回動する。この回動アーム部2bの回動変位量は、第1ギア回動軸25aに設けられるポテンショメータ28aにより検知され制御部4に送信され、走行機Bの進行方向(前後方向)に対して後面を中心に左右側面までの180度角程度に水平方向に回動変位可能である。
【0033】
作業部3は、作業部回動シリンダ30のシリンダロッド301の伸縮により作業部回動軸32を中心に回動アーム部2に対して水平方向に回動する。この回動の変位量は、シリンダロッド301の伸縮量によって設定されている。
【0034】
次に、図3乃至図5に示す圃場の隅部Cにおいて、走行機Bを停止させた状態で、作業機Aを走行機Bの後方に位置させ、走行機Bの進行方向とほぼ直交する面を作業面34bとして作業部3が作動する作業状態を説明する。この実施例では走行機Bは停止しており、作業機Aは走行機Bの後方に位置している。被作業面Dは走行機Bの進行方向とほぼ直交する面を作業面34bとしており、作業部3は直交する直線状の被作業面Dに沿って移動することによって行う。この場合、制御部4がアーム回動変位量検知センサー28、アーム伸縮量検知センサー29、作業部回動変位量検知センサー31のそれぞれから受ける検知信号により、変化してゆく作業部3の位置及び作業面34の方向を検知し、予め組み込まれた直交直線移動プログラムによりアーム回動シリンダ27、アーム伸縮シリンダ26、作業部回動シリンダー30のそれぞれの駆動装置に適宜作動、制御させる指示信号を送信し、それぞれのシリンダーロッドを適宜伸縮させて作業部3の位置及び作業面34の方向を直交直進移動させることができる。
【0035】
次に、図6乃至図8に示す圃場の隅部Cにおいて、走行機Bを停止させた状態で、作業機Aを走行機Bの後方に位置させ、隅部Cを円弧状に作業するため作業部3を円弧状に移動する作業面34cとして作業状態を説明する。走行機Bは停止しており、円弧状の被作業面Eは、走行機Bの進行方向にほぼ直交する作業面34bから走行機Bの進行方向にほぼ平行な側方の作業面34aとの間を水平回動しつつ円弧状に移動する円弧状作業面34cによって成される。この場合、制御部4がアーム回動変位量検知センサー28、アーム伸縮量検知センサー29、作業部回動変位量検知センサー31のそれぞれから受ける検知信号により、変化してゆく作業部3の位置及び作業面34の方向を検知し、予め組み込まれた円弧状移動プログラムによりアーム回動シリンダ27、アーム伸縮シリンダ26、作業部回動シリンダー30のそれぞれに作動信号を送信し、それぞれのシリンダーロッドを適宜伸縮させて作業部3の位置及び作業面34を円弧状に移動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、水田等の矩形の圃場等の場所において、その周囲に設ける畦形成作業や溝堀作業、又は草刈り等の作業を行う場合に利用できる。特に水田等の矩形の圃場の隅部を非常に容易に短時間に作業を完了できるため作業効率が高く、例えば畦形成機、溝形成機、草刈り機など作業部を有する作業機に利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施形態であり、作業機の平面説明図
【図2】同じく作業部の側面説明図
【図3】走行機を停止させた状態で走行機の進行方向とほぼ直交する面を作業面として作動する作業部の直線状移動を示す平面説明図
【図4】走行機を停止させた状態で走行機の進行方向とほぼ直交する面を作業面として作動する作業部の直線状移動を示す平面説明図
【図5】走行機を停止させた状態で走行機の進行方向とほぼ直交する面を作業面として作動する作業部の直線状移動を示す平面説明図
【図6】走行機を停止させた状態で走行機の進行方向にほぼ直交する作業面と走行機の進行方向にほぼ平行な作業面との間を水平回動させつつ円弧状作業面として作動する作業部の円弧状移動を示す平面説明図
【図7】走行機を停止させた状態で走行機の進行方向にほぼ直交する作業面と走行機の進行方向にほぼ平行な作業面との間を水平回動させつつ円弧状作業面として作動する作業部の円弧状移動を示す平面説明図
【図8】走行機を停止させた状態で走行機の進行方向にほぼ直交する作業面と走行機の進行方向にほぼ平行な作業面との間を水平回動させつつ円弧状作業面として作動する作業部の円弧状移動を示す平面説明図
【図9】この発明の第2実施形態であり、作業機の一部拡大平面図
【符号の説明】
【0038】
A 作業機
1 装着フレーム(機枠)
10 トップブラケット
11 ロアピン
12 入力軸
13 ユニバーサルジョイント
14 アーム回動軸(アーム回動支点)
2(2a、2b) 回動アーム部(回動部)
20 基部
21 内摺動アーム
22 外摺動アーム
23a 第2ギア
23b 第2ギア
24a 第1ギア
24b 第1ギア
240 ギアアーム
25a 第1ギア回動軸
25b 第1ギア回動軸
26 アーム伸縮シリンダ(回動部伸縮シリンダ)
260 シリンダ本体
261 シリンダロッド
27a アーム回動シリンダ(回動部回動シリンダ)
270a シリンダロッド
271a 第1シリンダアーム
272a シリンダ本体
273a 第2シリンダアーム
27b アーム回動シリンダ(回動部回動シリンダ)
270b シリンダロッド
271b シリンダ本体
272b シリンダ駆動装置
28a ポテンショメータ(アーム回動変位量検知センサー・回動部回動変位量検知センサー)
28b ポテンショメータ(アーム回動変位量検知センサー・回動部回動変位量検知センサー)
29 アーム伸縮量検知センサー(回動部伸縮量検知センサー)
3 作業部(畦形成装置)
3a 畦成形装置
3b 畦上面削土装置
3c 掘削爪
3d 盛土装置
3e 伝動軸
3f 第1チェーンケース
3g 第2チェーンケース
30 作業部回動シリンダ
300 シリンダ本体
301 シリンダロッド
31 作業部回動変位量検知センサー(シリンダロッド伸縮量検知センサー)
32 作業部回動軸(作業部回動支点)
33 作業部支持フレーム
34 作業面
34a 側方直進作業面
34b 後方直交作業面
34c 円弧状作業面
4 制御部
5 操作部(コントローラ)
6 動力源部
B 走行機
C 水田等の隅部
D 水田等の被作業面(走行機の進行方向に対して直交する面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機に装着フレーム等により連結される作業機であり、作業機は、装着フレーム等に設ける回動支点を中心に水平方向に回動可能かつ伸縮可能な回動部と、回動部に設けた作業部回動支点を中心に回動可能な作業部と、回動部の回動変位量及び伸縮量と作業部の回動変位量とを制御する制御部と、制御部を操作可能な操作部を有し、
作業部は、走行機を走行させた状態で走行機の進行方向にほぼ平行な面を作業面として作動することが可能であり、かつ走行機の後方に位置させ走行機の進行方向とほぼ直交する面を作業面として作動することが可能であることを特徴とする走行機に連結される作業機。
【請求項2】
走行機に装着フレーム等により連結される作業機であり、作業機は、装着フレーム等に設ける回動支点を中心に水平方向に回動可能かつ伸縮可能な回動部と、回動部に設けた作業部回動支点を中心に回動可能な作業部と、回動部の回動変位量及び伸縮量と作業部の回動変位量とを制御する制御部と、制御部を操作可能な操作部を有し、
作業部は、走行機を走行させた状態で走行機の進行方向にほぼ平行な面を作業面として作動することが可能であり、かつ走行機の後方に位置させ走行機の進行方向とほぼ直交する面を作業面として作動することが可能であり、かつ走行機の進行方向にほぼ直交する作業面と走行機の進行方向にほぼ平行な作業面との間を水平回動させつつ円弧状作業面として作動することが可能であることを特徴とする走行機に連結される作業機。
【請求項3】
走行機に装着フレーム等により連結される作業機であり、作業機は、装着フレーム等に設ける回動支点を中心に水平方向に回動可能かつ伸縮可能な回動部と、回動部に設けた作業部回動支点を中心に回動可能な作業部と、回動部の回動変位量及び伸縮量と作業部の回動変位量とを自動的に制御する制御部と、制御部を操作可能な操作部と有し、
回動部は、回動部回動シリンダと、回動部回動変位量検知センサーと、回動部伸縮シリンダと、回動部伸縮量検知センサーとを有し、作業部は、作業部回動シリンダーと、作業部回動変位量検知センサーとを有し、制御部は、操作部から受ける操作信号と、回動部回動変位量検知センサーと回動部伸縮量検知センサーと作業部回動変位量検知センサーとから受ける検知信号とを予め組み込まれたプログラムによって計算して成る指示信号により回動部回動シリンダと回動部伸縮シリンダと作業部回動シリンダーを作動、制御することにより回動部及び作業部のそれぞれの位置を特定させ、
作業部は、走行機の側方に位置させて走行機の進行方向にほぼ平行な面を作業面として作動することが可能であり、かつ走行機の後方に位置させて走行機の進行方向とほぼ直交する面を作業面として作動することが可能であり、かつ走行機の進行方向にほぼ直交する作業面と走行機の進行方向にほぼ平行な作業面との間を水平回動しつつ円弧状作業面として作動することが可能であることを特徴とする走行機に連結される作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−262771(P2006−262771A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85246(P2005−85246)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】