説明

走行経路案内装置

【課題】 無線通信方式を用いて渋滞の状況を車両間において送受信する場合において、所望の位置間の走行所要時間をさらに正確に予測することができる走行経路案内装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る走行経路案内システム100は、無線通信方式を用いて、所定時刻における他車両の車両位置及び所定時刻によって構成される時刻位置データを複数含む走行データを受信する受信部130と、受信した走行データを地図データに対応付けた走行経路案内用データを生成する走行データ処理部151と、生成された走行経路案内用データを用いて位置間の走行所要時間を演算する走行所要時間予測部171と、演算した走行所要時間に基づいて、指定された位置間の走行経路を決定する走行経路検索部170とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、指定された位置間の走行経路を案内する走行経路案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、渋滞や交通規制などの交通情報を車両に提供する道路交通情報通信システム(VICS:vehicle information and communication system)が広く知られている。
【0003】
VICSには、FM多重放送を利用して広域を中心とした交通情報を提供するFM多重方式と、道路上に設置されたビーコン送信機から車両の進行方向の道路状況を提供するビーコン方式とがある。
【0004】
このように、VICSによる交通情報の提供は、関連設備が配備された特定の地域に限定されるといった問題がある。そこで、付近を走行する車両間において、渋滞の有無を示す渋滞情報を提供する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
具体的には、車両の平均走行速度などに基づいて特定の位置間における渋滞の有無が判定される。車両から送信された渋滞情報は、無線通信方式(例えば、光通信)を用いて付近の他車両に送信される。
【0006】
このように、付近の車両間において渋滞情報が順次中継(いわゆるマルチホップ)されることによって、周辺の渋滞情報を車両に提供することができる。
【0007】
さらに、渋滞情報を受信した車両は、受信した渋滞情報に基づいて、渋滞が発生している道路を回避した走行経路を走行経路案内装置(カーナビゲーション装置)などに表示する。
【特許文献1】特開2004−206351号公報(第9−11頁、第3−4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した車両間における渋滞情報の提供方法には、次のような問題があった。すなわち、車両には、付近の車両から渋滞の有無を示す渋滞情報が提供されるだけであるため、渋滞に伴う走行所要時間を考慮した上で、適切な走行経路を案内することができないといった問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、無線通信方式を用いて渋滞の状況を車両間において送受信する場合において、所望の位置間の走行所要時間に基づいて走行経路を案内することができる走行経路案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した問題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、車両(例えば、車両C1)に搭載され、指定された位置(例えば、開始位置PS1〜目的位置PE1)間の走行経路を案内する走行経路案内装置(走行経路案内システム100)であって、無線通信方式(例えば、無線LAN方式)を用いて、所定時刻における他車両(例えば、車両C2)の車両位置(例えば、車両位置情報S22)及び前記所定時刻(例えば、時刻情報S21)によって構成される時刻位置データ(例えば、時刻位置データS20)を複数含む走行データ(走行データDT)を受信する走行データ受信部(受信部130)と、前記走行データ受信部が受信した前記走行データを地図データ(地図データM)に対応付けた走行経路案内用データ(走行経路案内用データDT)を生成する走行経路案内用データ生成部(走行データ処理部151)と、前記走行経路案内用データ生成部によって生成された前記走行経路案内用データを用いて前記位置間の走行所要時間を演算し、演算した前記走行所要時間に基づいて、前記位置間の走行経路を決定する走行経路処理部(走行経路検索部170及び走行所要時間予測部171)とを備えることを要旨とする。
【0011】
このような特徴によれば、所定時刻における他車両の車両位置及び当該所定時刻によって構成される時刻位置データを複数含む走行データが車両間において送受信される。
【0012】
このため、走行データを受信した車両は、当該走行データを用いることによって、渋滞に伴う特定の位置間の走行所要時間を正確に予測することが可能となる。すなわち、このような特徴によれば、無線通信方式を用いて渋滞の状況を車両間において送受信する場合において、所望の位置間の走行所要時間に基づいて走行経路を案内することができる。
【0013】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記走行データは、第1の所定時刻(例えば、時刻情報S21)と、前記第1の所定時刻よりも遅い第2の所定時刻(例えば、時刻情報S31)との間における前記他車両の走行速度の変化を示す走行速度履歴(例えば、走行速度履歴情報S40)をさらに含むことを要旨とする。
【0014】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1または第2の特徴に係り、前記走行データは、前記他車両を識別する識別情報(識別番号S10)をさらに含むことを要旨とする。
【0015】
本発明の第4の特徴は、本発明の第1乃至第3の特徴に係り、前記走行経路案内用データ生成部は、既に前記地図データに対応付けられた既存走行データと前記地図データ上において前記車両位置が重複する新規走行データを新たに受信した場合、前記既存走行データに前記新規走行データを上書きすることを要旨とする。
【0016】
本発明の第5の特徴は、本発明の第1乃至第4の特徴に係り、前記走行経路処理部は、指定された前記位置が前記走行経路案内用データに含まれている前記車両位置と一致しない場合、前記走行経路案内用データに含まれている複数の前記時刻位置データに基づいて、前記位置に対応する位置対応時刻(例えば、時刻S)を決定し、決定した前記位置対応時刻を用いて前記位置間の走行所要時間を予測することを要旨とする。
【0017】
本発明の第6の特徴は、本発明の第1乃至第5の特徴に係り、前記走行経路処理部は、前記走行経路案内用データにおいて前記走行データが対応付けられていない前記地図データの区間であるギャップ区間(ギャップ区間G)が前記指定された位置間に含まれている場合、前記ギャップ区間の前後に位置する前記走行データを用いて、前記ギャップ区間の走行所要時間を予測することを要旨とする。
【0018】
本発明の第7の特徴は、本発明の第2乃至第5の特徴に係り、前記走行経路処理部は、前記走行経路案内用データにおいて前記走行データが対応付けられていない前記地図データの区間であるギャップ区間(ギャップ区間G)が前記指定された位置の間に含まれている場合、前記ギャップ区間の前後に位置する前記走行データに含まれている前記走行速度履歴を用いて、前記ギャップ区間の走行所要時間を予測することを要旨とする。
【0019】
本発明の第8の特徴は、本発明の第1乃至第7の特徴に係り、前記無線通信方式を用いて、前記走行データ受信部が受信した前記走行データを他車両に中継する走行データ中継部(送信部110及び走行データ受信管理部140)をさらに備えることを要旨とする。
【0020】
本発明の第9の特徴は、本発明の第8の特徴に係り、前記走行データ中継部は、前記走行データ受信部が受信した前記走行データに含まれている前記他車両の最新の車両位置(例えば、車両位置情報S32)と、前記走行データの受信時における前記車両の車両位置から演算される前記他車両と前記車両との距離に基づいて、前記走行データを中継するか否かを決定することを要旨とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の特徴によれば、無線通信方式を用いて渋滞の状況を車両間において送受信する場合において、所望の位置間の走行所要時間に基づいて走行経路を案内することができる走行経路案内装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0023】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0024】
(走行経路案内システムの概略)
図1は、本実施形態に係る走行経路案内装置を含む走行経路案内システムの概略を説明するための説明図である。走行経路案内システム100(図1において不図示、図2参照)は、車両C1〜C7に搭載され、指定された位置(例えば、開始位置PS1〜目的位置PE1)間の走行所要時間を演算(予測)し、演算した走行所要時間に基づいて、当該指定された位置間の走行経路を案内する。
【0025】
走行経路案内システム100を搭載した車両C1〜C7は、無線通信方式を用いて、時刻情報及び車両位置情報によって構成される時刻位置データを複数含む走行データDT(図8参照)を送受信することができる。
【0026】
本実施形態では、走行経路案内システム100を搭載した車両C1〜C7は、IEEE802.11によって規定される無線LAN方式を用いて、走行データDTを送受信する。
【0027】
走行経路案内システム100を搭載した車両C1〜C7は、他車両から受信した走行データDTをさらに他車両に中継(いわゆるマルチホップ)することができる。例えば、車両C2は、車両C3から受信した走行データDTを車両C1に中継することができる。
【0028】
このように、走行データDTが順次中継されるため、車両C1〜C7は、周辺を走行する他車両が送信した走行データDTを受信することができる。
【0029】
なお、走行経路案内システム100において用いられる無線通信方式は、IEEE802.11によって規定される無線LAN方式に限定されるものではなく、例えば、UWB(ultra wide band)やBluetoothでもよい。
【0030】
また、本実施形態では、無線基地局を用いないアドホックモードを使用しているが、道路近傍に無線基地局を設置し、当該無線基地局を介して走行データDTを中継してもよい。
【0031】
(走行経路案内システムの論理ブロック構成)
図2は、図1に示した車両C1に搭載される走行経路案内システム100の論理ブロック構成を示す図である。なお、車両C2〜C7にも走行経路案内システム100が搭載される。
【0032】
図2に示すように、走行経路案内システム100は、走行データDTの送受信に関して、送信部110、走行データ送信管理部120、受信部130及び走行データ受信管理部140を備えている。
【0033】
また、走行経路案内システム100は、走行データDTの処理に関して、走行データ処理部151、走行データ保存部152及び地図データベース160を備えている。
【0034】
さらに、走行経路案内システム100は、指定された位置間の走行所要時間を演算、予測する走行所要時間予測部171、及び走行所要時間に基づいて指定された位置間の走行経路を検索する走行経路検索部170を備えている。
【0035】
また、走行経路案内システム100は、走行状況管理部180及びユーザインタフェース部190を備えている。
【0036】
なお、上述した受信部130、走行データ受信管理部140、走行データ処理部151、走行データ保存部152、地図データベース160、走行経路検索部170及び走行所要時間予測部171によって、走行経路案内装置を構成してもよい。
【0037】
送信部110は、走行データ送信管理部120(具体的には、走行データ生成部122)によって生成された走行データDTを、無線LAN方式(無線通信方式)を用いて送信する。
【0038】
具体的には、送信部110は、走行データ送信管理部120(走行データ生成部122)によって新たに走行データDT(新規走行データ)が生成され次第、当該走行データDTを他車両に向けて送信する。
【0039】
走行データ送信管理部120は、走行データ送信記録部121、走行データ生成部122及び走行速度記録部123によって構成されている。
【0040】
走行データ送信記録部121は、走行データ生成部122によって生成された走行データDTが送信部110に出力されたとき、つまり、走行データDTが他車両に向けて送信されたときの時刻(現在時刻)、車両位置及び送信した走行データDTの識別番号を記録する。
【0041】
走行データ生成部122は、所定時刻における車両位置及び当該所定時刻によって構成される時刻位置データを複数含む走行データDTを生成する。
【0042】
ここで、図8を参照して、走行データDTの構成について説明する。図8に示すように、走行データDTは、識別番号S10、時刻位置データS20、時刻位置データS30及び走行速度履歴情報S40によって構成されている。
【0043】
識別番号S10は、車両C1を識別する識別情報である。具体的には、識別番号S10は、車両C1を一意に特定することができる固有の番号と、走行データDT毎に付与されるシリアル番号とによって構成されている。なお、識別番号S10は、必ずしも走行データDTに含まれていなくてもよい。
【0044】
時刻位置データS20は、時刻情報S21と、車両位置情報S22とによって構成されている。同様に、時刻位置データS30は、時刻情報S31と、車両位置情報S32とによって構成されている。
【0045】
具体的には、時刻情報S21(時刻1)には、前回の走行データDTの送信時刻が格納される。また、時刻情報S31(時刻2)には、今回の走行データDTの送信時刻が格納される。
【0046】
車両位置情報S22には、時刻1における車両位置を示す情報(経度緯度情報)が格納される。また、車両位置情報S32には、時刻2における車両位置を示す情報(経度緯度情報)が格納される。
【0047】
なお、車両位置を示す情報としては、経度緯度情報ではなく、特定の基準点に対する距離及び方向の関係を示す座標情報などであってもよい。
【0048】
走行速度履歴情報S40には、時刻1〜時刻2の間における車両C1の走行速度を時系列に連続的に配列した情報(例えば、図13(b)に示すような情報)が格納される。
【0049】
また、走行データDTには、時刻情報S51と、車両位置情報S52とによって構成される時刻位置データS50、及び時刻2〜時刻3の間における車両C1の走行速度を時系列に連続的に配列した情報である速度履歴情報S60が含まれてもよい。
【0050】
時刻位置データS50及び速度履歴情報S60が含まれる場合、時刻情報S51(時刻3)に、今回の走行データDTの送信時刻が格納される。
【0051】
この場合、時刻情報S31(時刻2)は、時刻1〜時刻3の間の時刻である。時刻1〜時刻2、及び時刻2〜時刻3に関する時刻位置データを含む走行データDTを、時刻2ではなく時刻3においてまとめて送信する場合、時刻位置データS30が時刻2における情報として、また、走行速度履歴情報S40が時刻1〜時刻2までの情報として、走行データDTに含まれる。
【0052】
さらに、走行データDTには、走行速度履歴情報S40及び速度履歴情報S60が含まれていなくても構わない。また、走行データDTに走行速度履歴情報S40(及びS60)が含まれていると走行データDTのサイズが大きいため、無線通信の品質が劣化している場合に限って、走行速度履歴情報S40(及びS60)を含めないようにしてもよい。
【0053】
図8に示した走行データDTを生成する走行データ生成部122は、前回の走行データDTを送信してから車両C1が“所定距離”を走行した場合、新たな走行データDT(新規走行データ)を生成することができる。
【0054】
また、走行データ生成部122は、前回の走行データDTを送信してから“所定時間”が経過した場合、新たな走行データDT(新規走行データ)を生成することもできる。
【0055】
図2に示す走行速度記録部123は、走行データDTに含まれる走行速度履歴情報S40(S60)を生成するために、所定の時間毎に車両C1の走行速度を記録する。走行速度記録部123は、走行データ生成部122によって走行データDTが出力されると、記録した走行速度の情報を消去する。
【0056】
受信部130は、無線LAN方式を用いて、他車両(車両C2〜C7)によって送信された走行データDTを受信する。本実施形態において、受信部130は、走行データ受信部を構成する。
【0057】
走行データ受信管理部140は、走行データ受信記録部141と、中継待ち走行データ保存部142とによって構成されている。
【0058】
走行データ受信記録部141は、受信部130が受信した走行データDTに含まれる識別番号S10(図8参照)を記録する。
【0059】
中継待ち走行データ保存部142は、他車両(車両C2〜C7)から受信した走行データDTをさらに他車両に中継するため、受信部130が他車両から受信した走行データDTを保存する。
【0060】
具体的には、図9に示すように、中継待ち走行データ保存部142は、受信部130が他車両から受信した走行データDT、走行データDTを受信した時刻である走行データ受信時刻RT、及び走行データDTの受信時における車両C1の車両位置PRTによって構成される中継待ち走行データを保存する。
【0061】
本実施形態では、上述した送信部110と走行データ受信管理部140とによって、受信部130が他車両から受信した走行データDTを、無線LAN方式を用いてさらに他車両に中継する走行データ中継部が構成される。
【0062】
また、送信部110と走行データ受信管理部140とは、受信部130が受信した走行データDTに含まれている他車両(例えば、車両C2)の最新の車両位置(例えば、図8に示す車両位置情報S32)と、走行データDTの受信時における車両C1の車両位置PRTから演算される車両C2と車両C1との距離に基づいて、走行データDTを中継するか否かを決定することができる。
【0063】
さらに、走行データ受信管理部140は、受信部130が受信した走行データDTに含まれている識別番号S10(図8参照)を有する走行データDTが既に中継待ち走行データ保存部142に保存されている場合、該当する走行データDTを中継せずに破棄することができる。
【0064】
走行データ処理部151は、走行データ受信管理部140によって出力された走行データDTから走行経路案内用データDTを生成し、生成した走行経路案内用データDTを走行データ保存部152に保存する。
【0065】
具体的には、受信部130が受信した走行データDTを地図データMに対応付けた走行経路案内用データDTを生成する。本実施形態において、走行データ処理部151は、走行経路案内用データ生成部を構成する。
【0066】
ここで、図10を参照して、走行データ処理部151による走行経路案内用データDTの生成方法について説明する。図10に示すように、走行データ処理部151は、受信部130が受信した走行データDTを地図データMに対応付ける。
【0067】
具体的には、走行データ処理部151は、走行データDTに含まれている車両位置情報(例えば、図8に示す車両位置情報S22)に基づいて、走行データDTを地図データMに対応付ける。
【0068】
また、走行データ処理部151は、既に地図データMに対応付けられた走行データDT(既存走行データ)と地図データM上において車両位置が重複する走行データDT(新規走行データ)を新たに受信した場合、既に地図データMに対応付けられた走行データDTに、新たに受信した走行データDTを上書きする。
【0069】
具体的には、図12(c)に示すように、走行データNo.3及びNo.4と車両位置が重複する走行データNo.5を新たに受信した場合、走行データ処理部151は、走行データNo.3及びNo.4に、走行データNo.5を上書きする。
【0070】
図12(c)では、説明の便宜のため、図10に示した地図データMに対応付けられた走行データDT(走行データNo.1〜4)が直線上に並べて示されている。なお、走行データ処理部151による走行データDTの上書きに伴う処理の具体的な内容については後述する。
【0071】
また、走行データ処理部151は、受信した走行データDTの内容から、当該走行データDTが車両C1の進行方向の走行データDTに該当しないと判定し、判定した走行データDTを走行経路案内用データDTに含めないようにすることもできる。
【0072】
走行データ保存部152は、走行データ受信管理部140によって出力された走行データDT、及び走行データ処理部151において生成された走行経路案内用データDTを保存する。
【0073】
具体的には、図11に示すように、走行データ保存部152は、地図データMに含まれる所定区間の道路(St.1〜n、Ave.1〜n)毎に、当該道路に対応付けられている走行データDTを保存する。
【0074】
地図データベース160は、走行データ処理部151及び走行経路検索部170(走行所要時間予測部171)において用いられる地図データMを保存する。
【0075】
走行経路検索部170は、ユーザ(車両C1の運転者など)によって指定された位置間の走行経路を検索する。走行経路検索部170は、指定された位置間の複数の走行経路を検索し、各走行経路の走行所要時間を走行所要時間予測部171に演算(予測)させる。
【0076】
走行所要時間予測部171は、ユーザインタフェース部190(カーナビゲーションシステム)によって指定された位置間の走行所要時間を演算する。以下、走行所要時間予測部171の機能について説明し、次いで、走行経路検索部170の機能について説明する。
【0077】
走行所要時間予測部171は、走行データ保存部152に保存されている走行経路案内用データDTを用いて、指定された位置間(例えば、図1に示す開始位置PS1〜目的位置PE1)の走行所要時間を演算する。
【0078】
また、走行所要時間予測部171は、指定された位置が走行経路案内用データDT(具体的には、走行データDT)に含まれている車両位置と一致しない場合、走行経路案内用データDTに含まれている複数の時刻位置データに基づいて当該位置に対応する位置対応時刻を決定し、決定した位置対応時刻を用いて当該位置間の走行所要時間を予測する。
【0079】
ここで、図14〜図16を参照して、走行所要時間予測部171による走行所要時間を予測方法について説明する。図14に示すように、走行所要時間予測部171は、ユーザインタフェース部190(カーナビゲーションシステム)によって指定された開始位置PS1〜目的位置PE1の走行所要時間を演算する。
【0080】
具体的には、図15(a)に示すように、走行所要時間予測部171は、走行データNo.1に含まれている時刻1に関する時刻位置データS20、及び時刻2に関する時刻位置データS30(図8参照)を用いて線形補完することによって、開始位置(開始位置PS1)に対応する時刻S(位置対応時刻)を決定する。
【0081】
また、図16(a)に示すように、走行所要時間予測部171は、走行データNo.3に含まれている時刻1に関する時刻位置データS20、及び時刻2に関する時刻位置データS30(図8参照)を用いて線形補完することによって、目的位置(目的位置PE1)に対応する時刻E(位置対応時刻)を決定する。
【0082】
走行所要時間予測部171は、時刻S及び時刻Eを決定することによって、図11に示した(1)、(2)及び(3)の合計時間、つまり、開始位置PS1〜目的位置PE1の走行所要時間を予測することができる。
【0083】
なお、走行データNo.1及びNo.3に走行速度履歴(図8に示す走行速度履歴情報S40)が含まれている場合、図15(b)及び図16(b)に示すように、走行所要時間予測部171は、図15(a)及び図16(a)に示した線形補完ではなく、走行速度履歴を用いて、開始位置PS1に対応する時刻S、及び目的位置PE1に対応する時刻Eを決定することもできる。
【0084】
具体的には、走行所要時間予測部171は、走行速度履歴から求められる複数の走行速度と、所定の時間間隔とを用いて、開始位置PS1から走行データNo.1に含まれている時刻2における車両位置(図7に示す車両位置情報S32に含まれている車両位置)までの距離が、図15(b)の斜線部で示した面積と等しくなるときの時刻を演算によって求める。走行所要時間予測部171は、演算によって求めた当該時刻を開始位置PS1に対応する時刻Sとする。走行所要時間予測部171は、図16(b)に示すように、同様の方法によって時刻Eを決定する。
【0085】
また、走行所要時間予測部171は、走行経路案内用データDTにおいて走行データDTが対応付けられていない地図データMの区間であるギャップ区間が、ユーザインタフェース部190によって指定された位置間に含まれている場合、当該ギャップ区間の前後に位置する走行データDTを用いて、当該ギャップ区間の走行所要時間を予測する。
【0086】
具体的には、図17に示すように、走行経路案内用データDTにおいて、走行データDTが対応付けられていないギャップ区間Gが指定された位置(開始位置PS2〜目的位置PE2)間に含まれている場合、走行所要時間予測部171は、(式1)を用いてギャップ区間Gの走行所要時間(TGAP)を予測する。
【0087】
GAP=DGAP×{(T+T)/(D+D)} …(式1)
ここで、DGAPはギャップ区間Gが占める距離、Dは走行データNo.3が占める距離、Dは走行データNo.4が占める距離を示している。
【0088】
なお、上述したように、走行経路案内用データDTでは、地図データMに走行データDT(走行データNo.1〜No.4)が対応付けられている。このため、走行データDTに含まれている車両位置情報S22及び車両位置情報S32(図8参照)によって走行データが占める距離を取得することができる。
【0089】
また、(式1)において、Tは走行データNo.3の走行時間、Tは走行データNo.4の走行時間を示している。なお、T及びTは、走行データDTに含まれている時刻情報S21及び時刻情報S31との差分を演算することによって取得することができる。
【0090】
また、走行所要時間予測部171は、走行経路案内用データDTにおいて走行データDTが対応付けられていない地図データMの区間であるギャップ区間Gが、ユーザインタフェース部190によって指定された位置間に含まれている場合、当該ギャップ区間の前後に位置する走行データDTに含まれている走行速度履歴を用いて、当該ギャップ区間の走行所要時間を予測することもできる。
【0091】
具体的には、図17に示すように、走行経路案内用データDTにおいて、走行データDTが対応付けられていないギャップ区間Gが指定された位置(開始位置PS2〜目的位置PE2)の間に含まれている場合、走行所要時間予測部171は、走行データNo.3及びNo.4の走行速度履歴に基づいて、ギャップ区間Gの走行所要時間を予測する。
【0092】
より具体的には、図18に示すように、走行所要時間予測部171は、走行データNo.3の時刻2における走行速度と、走行データNo.4の時刻1における走行速度に基づいて、ギャップ区間Gの走行速度履歴を予測する。
【0093】
走行所要時間予測部171は、ギャップ区間Gの時刻1における走行速度を走行データNo.3の時刻2における走行速度とし、ギャップ区間Gの時刻2における走行速度を走行データNo.4の時刻1における走行速度とする。さらに、走行所要時間予測部171は、この2つの走行速度を結ぶ直線をギャップ区間Gの走行速度履歴とする。
【0094】
具体的には、走行所要時間予測部171は、ギャップ区間Gが占める距離DGAPが、図18の斜線部で示した面積と等しくなるときの時刻1及び時刻2を演算によって求め、「時刻2−時刻1」をギャップ区間Gの走行所要時間とする。
【0095】
走行経路検索部170は、走行所要時間予測部171によって演算(予測)された走行所要時間に基づいて、指定された位置(例えば、開始位置PS1〜目的位置PE1)間の走行経路を検索する。
【0096】
具体的には、走行経路検索部170は、走行所要時間予測部171によって演算された複数の走行経路の走行所要時間に基づいて、指定された位置間の走行所要時間が最も短くなる走行経路を検索する。
【0097】
走行経路検索部170は、指定された位置間の走行所要時間が最も短くなる走行経路をユーザインタフェース部190に出力する。
【0098】
なお、本実施形態では、走行経路検索部170と走行所要時間予測部171とによって、走行経路処理部が構成される。
【0099】
走行状況管理部180は、GPSレシーバ181と、車速センサ182とによって構成されている。走行状況管理部180は、GPSレシーバ181が取得した車両C1の車両位置を示す経度緯度、及び車速センサ182によって計測された車両C1の走行速度を示す情報を走行データ送信管理部120及び走行所要時間予測部171に出力する。
【0100】
ユーザインタフェース部190は、ユーザ指示入力部191、表示部192及び音声出力部193によって構成されている。なお、本実施形態では、車両C1に搭載されるカーナビゲーションシステムによって、ユーザインタフェース部190が構成される。
【0101】
ユーザ指示入力部191には、走行経路案内システム100のユーザ、つまり、車両C1の運転者などによる指示が入力される。具体的には、ユーザ指示入力部191は、カーナビゲーションシステムのリモコン信号受信機、音声認識装置、または表示部192を用いて実現されるタッチパネルなどによって構成される。
【0102】
特に、本実施形態では、ユーザ指示入力部191は、走行所要時間の予測対象とする少なくとも2つの位置(例えば、図1に示す開始位置PS1〜目的位置PE1間)を特定する情報を入力するために用いられる。
【0103】
表示部192は、走行経路検索部170によって出力された走行経路や地図データMを表示する。本実施形態では、表示部192は、小型の液晶表示機によって構成されている。
【0104】
また、表示部192は、走行所要時間予測部171によって演算、予測された走行所要時間を地図とともに表示することもできる。
【0105】
音声出力部193は、走行所要時間予測部171によって演算、予測された走行所要時間や、目的位置までの走行経路の案内に関する情報を音声によって出力する。
【0106】
(走行経路案内システムの動作)
次に、上述した走行経路案内システム100の動作について説明する。具体的には、(1)走行データの送信、(2)走行データの受信、(3)走行データの中継、及び(4)走行経路の案内の各動作について説明する。
【0107】
(1)走行データの送信
図3は、車両C2による走行データの送信処理フローを示している。図3に示すように、ステップS1において、走行経路案内システム100は、前回の走行データDTの送信時刻、及び前回の走行データDTの送信時における車両C2の車両位置を走行データ送信記録部121から読み込む。
【0108】
ステップS2において、走行経路案内システム100は、現在時刻、及び現在の車両C2の車両位置を走行状況管理部180から読み込む。
【0109】
ステップS3において、走行経路案内システム100は、前回の走行データDTの送信時から所定時間が経過したか否かを判定する。なお、所定時間は、特に長くなければ任意の時間(例えば、30秒)で構わない。また、所定時間は、車両C2の走行速度によって変化させてもよい。
【0110】
前回の走行データDTの送信時から所定時間が経過した場合(ステップS3のYES)、ステップS4において、走行経路案内システム100は、現在時刻、及び現在の車両C2の車両位置を走行データ送信記録部121に記録する。
【0111】
ステップS5において、走行経路案内システム100は、図8に示したような走行データDTを生成する。
【0112】
具体的には、図8に示すように、ステップS1において読み込んだ前回の走行データDTの送信時刻、及び前回の走行データDTの送信時における車両C2の車両位置は、時刻情報S21、車両位置情報S22に格納される。ステップS4において記録した現在時刻、及び現在の車両C2の車両位置は、時刻情報S31、車両位置情報S32に格納される。
【0113】
また、車両C2を一意に特定することができる固有の番号と、走行データDT毎に付与されるシリアル番号とが、識別番号S10に格納される。
【0114】
さらに、走行データDTには、前回の走行データDTの送信時刻からステップS4において記録した現在時刻までの車両C2の走行速度履歴を走行速度履歴情報S40に格納してもよい。
【0115】
ステップS6において、走行経路案内システム100は、無線LAN方式を用いて、生成した走行データDTを他車両に向けて送信する。
【0116】
ステップS7において、走行経路案内システム100は、ステップS6において送信した走行データDTの識別番号S10を走行データ送信記録部121に保存する。
【0117】
(2)走行データの受信
図4は、車両C1による走行データの送信処理フローを示している。図4に示すように、ステップS110において、走行経路案内システム100は、車両C2によって送信された走行データDTを受信する。
【0118】
ステップS120において、走行経路案内システム100は、ステップS110において受信した走行データDTが、中継待ち走行データ保存部142に既に保存されているか否かを判定する。
【0119】
具体的には、走行経路案内システム100は、走行データDTの識別番号S10(図8参照)を参照して、受信した走行データDTが中継待ち走行データ保存部142に既に保存されているか否かを判定する。
【0120】
受信した走行データDTが中継待ち走行データ保存部142に既に保存されている場合(ステップS120のYES)、ステップS130において、走行経路案内システム100は、既に中継待ち走行データ保存部142に保存されている走行データDTを破棄する。
【0121】
すなわち、中継待ち走行データ保存部142に既に保存されている走行データDTを再度受信した場合、車両C1以外の他の車両(例えば、図1に示す車両C7)が、車両C2によって送信された走行データDTを中継したことになる。
【0122】
ステップS140において、走行経路案内システム100は、破棄した走行データDTの識別番号S10を走行データ受信記録部141に記録する。
【0123】
一方、受信した走行データDTが中継待ち走行データ保存部142に保存されていない場合(ステップS120のNO)、ステップS150において、走行経路案内システム100は、受信した走行データDTの識別番号S10が走行データ送信記録部121または走行データ受信記録部141に既に保存されているか否かを判定する。
【0124】
受信した走行データDTの識別番号S10が走行データ送信記録部121または走行データ受信記録部141に既に保存されている場合(ステップS150のYES)、走行経路案内システム100は、走行データの受信処理を終了する。
【0125】
受信した走行データDTの識別番号S10が走行データ送信記録部121または走行データ受信記録部141に既に保存されていない場合(ステップS150のNO)、ステップS160において、走行経路案内システム100は、既に生成されている走行経路案内用データDTの処理が必要か否かを判定する。
【0126】
具体的には、図12(a)に示す走行経路案内用データDTが生成されている場合において、新たに走行データNo.5を受信した場合、図12(b)に示すように、既に走行経路案内用データDTにおいて既に地図データM(図中の横軸)に対応付けられている走行データNo.3とNo.4との間に充分なギャップ区間Gが存在し、走行データNo.5が、走行データNo.3及びNo.4と重複しない場合、走行経路案内システム100は、走行経路案内用データDTの処理が不要と判定する。
【0127】
一方、図12(c)に示すように、新たに受信した走行データNo.5が、走行データNo.3とNo.4と重複する場合、走行経路案内システム100は、走行経路案内用データDTの処理が必要と判定する。
【0128】
走行経路案内用データDTの処理が不要な場合(ステップS160のNO)、ステップS180において、走行経路案内システム100は、未処理の走行経路案内用データDTに受信した走行データDTを対応付けて、走行データ保存部152に保存する。
【0129】
走行経路案内用データDTの処理が必要な場合(ステップS160のYES)、ステップS170において、走行経路案内システム100は、走行経路案内用データDTの処理を実行する。
【0130】
ステップS180において、走行経路案内システム100は、処理済みの走行経路案内用データDTに受信した走行データDTを対応付けて、走行データ保存部152に保存する。
【0131】
具体的には、走行経路案内用データDTにおいて、走行データNo.3及びNo.4に走行データNo.5が上書きされるため、走行経路案内システム100は、走行データNo.3に含まれている時刻位置データS30、及び走行データNo.4に含まれている時刻位置データS20(図8参照)の内容を変更する。
【0132】
ここで、図13(a)を参照して、走行データNo.3に含まれている時刻位置データS30の変更方法について説明する。
【0133】
走行データNo.3に走行データNo.5が上書きされるため、走行データNo.3の時刻2における車両位置(図中の時刻2の車両位置)は、走行データNo.5の時刻1における車両位置(図中の時刻2の車両位置(新))に変更される。
【0134】
走行経路案内システム100は、図13(a)に示すように、線形補完を用いて、変更された時刻2の車両位置(新)に対応する時刻2(新)を決定する。
【0135】
このように、走行データNo.3に含まれている時刻位置データS30では、時刻情報S31が時刻2から時刻2(新)へ変更される。また、走行データNo.3に含まれている車両位置情報S32では、時刻2の車両位置から、時刻2の車両位置(新)へ変更される。また、走行データNo.4に含まれている時刻位置データS20も上述した方法と同様の方法によって変更される。
【0136】
なお、走行データNo.3〜No.5に走行速度履歴(図8に示す走行速度履歴情報S40)が含まれている場合、図13(b)に示すように、走行経路案内システム100は、図13(a)に示した線形補完ではなく、走行速度履歴を用いて、時刻2(新)を決定することもできる。
【0137】
例えば、走行データNo.3の場合、走行経路案内システム100は、走行速度履歴から求められる複数の走行速度と、所定の時間間隔とを用いて、時刻1における車両位置から、時刻2における車両位置(新)まで、すなわち、時刻1における車両位置から走行データNo.5の時刻1における車両位置までの距離が、図13(b)の斜線部で示した面積と等しくなるときの時刻を演算によって求め、当該時刻を時刻2(新)とする。
【0138】
走行経路案内システム100は、当該演算を繰り返すことによって、時刻2の車両位置(新)までの距離に到達したときの時刻を時刻2(新)とする。
【0139】
ステップS180において、走行経路案内システム100は、ステップS110において受信した走行データDTの識別番号S10を走行データ受信記録部141に保存する。
【0140】
ステップS190において、走行経路案内システム100は、ステップS110において受信した走行データDTを、走行データDTの受信時刻、及び走行データDTの受信時における車両C1の車両位置とともに、中継待ち走行データ保存部142に保存する(図9参照)。
【0141】
(3)走行データの中継
図5は、車両C1による走行データの中継処理フローを示している。図5に示すように、ステップS210において、走行経路案内システム100は、中継待ち走行データ保存部142に保存されている走行データDTを読み出す。
【0142】
ステップS220において、走行経路案内システム100は、中継待ち走行データ保存部142から読み出した走行データDTを他車両に中継するか否かを判定する。
【0143】
具体的には、走行経路案内システム100は、(式2)に示す“走行データ中継判定式”に基づいて、走行データDTを他車両に中継するか否かを判定する。
【数1】

【0144】
車両C1と、走行データDTを送信してきた送信元(または中継)車両との距離は、走行データDTを送信してきた送信元(または中継)車両の車両位置、つまり、走行データDTに含まれている時刻2における車両位置情報S32(図7参照)と、当該走行データDTを受信したときの車両C1(自車両)の車両位置から求めることができる。
【0145】
走行データDTを他車両に中継する場合(ステップS220のYES)、ステップS230において、走行経路案内システム100は、から読み出した走行データDTを他車両に向けて送信する。
【0146】
一方、走行データDTを他車両に中継しない場合(ステップS220のNO)、走行経路案内システム100は、ステップS210からの処理を繰り返す。
【0147】
(4)走行経路の案内
図6は、車両C1による走行経路の案内処理フローを示している。図6に示すように、ステップS310において、走行経路案内システム100のユーザ(車両C1の運転手など)は、目的地を指定する。具体的には、図19に示すように、ユーザによって目的地GLが設定される。
【0148】
ステップS320において、走行経路案内システム100は、指定された目的地に基づいて、走行経路検索処理を実行する。
【0149】
ここで、図7は、走行経路検索処理フローを示している。図7に示すように、ステップS320−1において、走行経路案内システム100は、目的地までの走行経路の候補を複数決定する。
【0150】
ステップS320−2において、走行経路案内システム100は、候補とした各走行経路の候補の道路構成を決定する。例えば、当該目的地までは、Ave.3〜St.2を経由する走行経路があることを決定する。
【0151】
ステップS320−3において、走行経路案内システム100は、各走行経路の候補の道路に関連する走行データDT(図11参照)を用いて、目的地GLまでの走行所要時間を演算、予測する。
【0152】
例えば、図14に示すように、走行所要時間を予測する区間として、開始位置PS1と目的位置PE1とが指定された場合、走行経路案内システム100は、図中の(1)〜(3)の走行所要時間を合計することによって、開始位置PS1〜目的位置PE1間の走行所要時間を予測する。
【0153】
なお、図14における開始位置PS1及び目的位置PE1は、上述したステップS320−2の処理において、走行経路案内システム100によって決定された道路構成に基づく位置である。例えば、開始位置PS1や目的位置PE1は、Ave.とSt.(図19参照)との交差点などとすることができる。
【0154】
また、図17に示すように、走行所要時間を予測する区間として、開始位置PS2と目的位置PE2とが指定された場合、走行経路案内システム100は、走行データDTが存在しないギャップ区間Gを含む図中の(1)〜(4)の走行所要時間を合計することによって、開始位置PS2〜目的位置PE2間の走行所要時間を予測する。
【0155】
なお、走行所要時間の具体的な演算、予測方法については、上述した走行所要時間予測部171の説明を参照されたい。
【0156】
ステップS320−4において、走行経路案内システム100は、ステップS320−3における走行所要時間の演算、予測結果に基づいて、各走行所要時間(例えば、開始位置PS1〜目的位置PE1間と開始位置PS2〜目的位置PE2間)を合計することによって、目的地GLまでの総走行所要時間が最も短い走行経路を選択する。
【0157】
次いで、図6に示すように、ステップS330において、走行経路案内システム100は、選択した走行経路を表示部192に表示する。
【0158】
具体的には、図19に示すように、目的地GLまでの総走行所要時間が最も短い走行経路R2が選択され、走行経路R2が表示部192に表示される。なお、車両C1の現在位置と目的地GLとの距離は、走行経路R1が最も短いが、目的地GLまでの総走行所要時間に基づいて、走行経路R2が選択されている。
【0159】
ステップS340において、走行経路案内システム100は、目的地GLまでの走行経路R2の案内を開始する。
【0160】
(作用・効果)
以上説明した本実施形態に係る走行経路案内システム100によれば、所定時刻における他車両の車両位置(例えば、車両位置情報S22に格納されている経度緯度情報)、及び当該所定時刻(例えば、時刻情報S21に格納されている時刻)によって構成される時刻位置データ(例えば、時刻位置データS20)を複数含む走行データDTが車両C1〜車両C7間において送受信される。
【0161】
このため、走行データDTを受信した車両は、当該走行データを用いることによって、特定の位置間の走行所要時間を正確に予測することが可能となる。すなわち、走行経路案内システム100によれば、無線通信方式を用いて渋滞の状況を車両間において送受信する場合において、所望の位置間の走行所要時間に基づいて走行経路を案内することができる。
【0162】
さらに、走行経路案内システム100によれば、走行データDTには、走行速度履歴情報S40(及びS60)を含めることができる。このため、当該速度履歴情報を用いることによって、所望の位置間の走行所要時間をさらに正確に予測することができる。
【0163】
走行経路案内システム100によれば、走行データDTには、車両を一意に特定することができる識別番号S10を含めることができる。このため、例えば、識別番号S10を参照することによって、特定の車両の走行データDTのみを用いて走行所要時間を予測することができる。
【0164】
さらに、既に同一の識別番号S10を有する走行データDTが保存されている場合には、再度同一の識別番号S10を有する走行データDTを受信(つまり、他車両によって当該走行データDTが中継されたことを意味する)しても、当該走行データDTを他車両に中継しないようにすることができる。
【0165】
すなわち、車両間において同一の走行データDTが重複して中継されることが防止され、車両間の無線通信ネットワークを効率的に利用することができる。
【0166】
走行経路案内システム100によれば、既に地図データMに対応付けられた走行データDT(既存走行データ)と地図データM上において車両位置が重複する走行データDT(新規走行データ)を新たに受信した場合、既に地図データMに対応付けられた走行データDTに、新たに受信した新規走行データが上書きされる。
【0167】
このため、地図データM上において車両位置が重複する走行データDTを複数受信した場合でも、当該複数の走行データDTを利用して走行所要時間を予測することができる。
【0168】
走行経路案内システム100によれば、走行所要時間の予測を開始する位置または目的とする位置が、走行経路案内用データDTに含まれている車両位置と一致しない場合、走行経路案内用データDTに含まれている複数の時刻位置データに基づいて、当該位置に対応する位置対応時刻(図15(a)及び(b)に示した時刻Sなど)が決定される。
【0169】
このため、走行所要時間の予測を開始する位置または目的とする位置が、走行経路案内用データDTに含まれている車両位置と一致しない場合でも、走行所要時間を正確に予測することができる。
【0170】
また、走行経路案内システム100によれば、走行経路案内用データDTにおいて走行データDTが対応付けられていないギャップ区間Gが、指定された走行所要時間の予測を開始する位置と目的とする位置との間に含まれている場合、ギャップ区間Gの前後に位置する走行データDTを用いて、ギャップ区間Gの走行所要時間が予測される。
【0171】
このため、指定された走行所要時間の予測を開始する位置と目的とする位置との間にギャップ区間Gが含まれている場合でも、走行所要時間を正確に予測することができる。
【0172】
走行経路案内システム100によれば、受信部130が受信した走行データDTに含まれている他車両(例えば、車両C2)の最新の車両位置と、当該走行データDTの受信時における自車両(例えば、車両C1)の車両位置から演算される車両C2と車両C1との距離に基づいて、走行データDTを中継するか否かが決定される。
【0173】
このため、走行データDTの中継回数を抑制しつつ、より遠くの他車両まで走行データDTを中継することができる。
【0174】
(その他の実施形態)
上述したように、本発明の一実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態が明らかとなろう。
【0175】
例えば、上述した本発明の実施形態では、走行経路案内システム100として、走行状況管理部180やユーザインタフェース部190が含まれる形態としたが、走行状況管理部180やユーザインタフェース部190は、必ずしも走行経路案内システム100に含まれていなくてもよい。
【0176】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明の実施形態に係る走行経路案内システムの概略を説明するための説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る走行経路案内システムの論理ブロック構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る走行経路案内システムの動作フローを示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る走行経路案内システムの動作フローを示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る走行経路案内システムの動作フローを示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る走行経路案内システムの動作フローを示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る走行経路案内システムの動作フローを示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る走行データの構成を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る走行経路案内システムに保存される中継待ち走行データの構成を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る走行経路案内用データと地図データとの構成を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係る走行経路案内システムに保存される走行経路案内用データの構成を示す図である。
【図12】走行データの上書き処理を説明するための説明図である。
【図13】走行経路案内用データを用いた走行所要時間の予測方法を説明するための説明図である。
【図14】走行経路案内用データを用いた走行所要時間の予測方法を説明するための説明図である。
【図15】走行経路案内用データを用いた走行所要時間の予測方法を説明するための説明図である。
【図16】走行経路案内用データを用いた走行所要時間の予測方法を説明するための説明図である。
【図17】走行経路案内用データを用いた走行所要時間の予測方法を説明するための説明図である。
【図18】走行経路案内用データを用いた走行所要時間の予測方法を説明するための説明図である。
【図19】本発明の実施形態に係る走行経路案内システムによる走行経路の案内方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0178】
C1〜C7…車両、100…走行経路案内システム、110…送信部、120…走行データ送信管理部、121…走行データ送信記録部、122…走行データ生成部、123…走行速度記録部、130…受信部、140…走行データ受信管理部、141…走行データ受信記録部、142…中継待ち走行データ保存部、151…走行データ処理部、152…走行データ保存部、160…地図データベース、170…走行経路検索部、171…走行所要時間予測部、180…走行状況管理部、181…GPSレシーバ、182…車速センサ、190…ユーザインタフェース部、191…ユーザ指示入力部、192…表示部、193…音声出力部、DT…走行データ、DT…走行経路案内用データ、G…ギャップ区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、指定された位置間の走行経路を案内する走行経路案内装置であって、
無線通信方式を用いて、所定時刻における他車両の車両位置及び前記所定時刻によって構成される時刻位置データを複数含む走行データを受信する走行データ受信部と、
前記走行データ受信部が受信した前記走行データを地図データに対応付けた走行経路案内用データを生成する走行経路案内用データ生成部と、
前記走行経路案内用データ生成部によって生成された前記走行経路案内用データを用いて前記位置間の走行所要時間を演算し、演算した前記走行所要時間に基づいて、前記位置間の走行経路を決定する走行経路処理部と
を備える走行経路案内装置。
【請求項2】
前記走行データは、第1の所定時刻と、前記第1の所定時刻よりも遅い第2の所定時刻との間における前記他車両の走行速度の変化を示す走行速度履歴をさらに含む請求項1に記載の走行経路案内装置。
【請求項3】
前記走行データは、前記他車両を識別する識別情報をさらに含む請求項1または2に記載の走行経路案内装置。
【請求項4】
前記走行経路案内用データ生成部は、既に前記地図データに対応付けられた既存走行データと前記地図データ上において前記車両位置が重複する新規走行データを新たに受信した場合、前記既存走行データに前記新規走行データを上書きする請求項1乃至3の何れか一項に記載の走行経路案内装置。
【請求項5】
前記走行経路処理部は、指定された前記位置が前記走行経路案内用データに含まれている前記車両位置と一致しない場合、前記走行経路案内用データに含まれている複数の前記時刻位置データに基づいて、前記位置に対応する位置対応時刻を決定し、決定した前記位置対応時刻を用いて前記位置間の走行所要時間を予測する請求項1乃至4の何れか一項に記載の走行経路案内装置。
【請求項6】
前記走行経路処理部は、前記走行経路案内用データにおいて前記走行データが対応付けられていない前記地図データの区間であるギャップ区間が前記指定された位置間に含まれている場合、前記ギャップ区間の前後に位置する前記走行データを用いて、前記ギャップ区間の走行所要時間を予測する請求項1乃至5の何れか一項に記載の走行経路案内装置。
【請求項7】
前記走行経路処理部は、前記走行経路案内用データにおいて前記走行データが対応付けられていない前記地図データの区間であるギャップ区間が前記指定された位置間に含まれている場合、前記ギャップ区間の前後に位置する前記走行データに含まれている前記走行速度履歴を用いて、前記ギャップ区間の走行所要時間を予測する請求項2乃至5の何れか一項に記載の走行経路案内装置。
【請求項8】
前記無線通信方式を用いて、前記走行データ受信部が受信した前記走行データを他車両に中継する走行データ中継部をさらに備える請求項1乃至7の何れか一項に記載の走行経路案内装置。
【請求項9】
前記走行データ中継部は、前記走行データ受信部が受信した前記走行データに含まれている前記他車両の最新の車両位置と、前記走行データの受信時における前記車両の車両位置から演算される前記他車両と前記車両との距離に基づいて、前記走行データを中継するか否かを決定する請求項8に記載の走行経路案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−275870(P2006−275870A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97434(P2005−97434)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】